(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20221205BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20221205BHJP
H01M 50/595 20210101ALI20221205BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M50/586
H01M50/595
(21)【出願番号】P 2019558139
(86)(22)【出願日】2018-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2018043387
(87)【国際公開番号】W WO2019111742
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2017235897
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今西 洋裕
(72)【発明者】
【氏名】見澤 篤
(72)【発明者】
【氏名】中尾 隆希
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-533952(JP,A)
【文献】特開2008-091076(JP,A)
【文献】特開2010-212086(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146076(WO,A1)
【文献】特許第3466631(JP,B2)
【文献】特開2009-289570(JP,A)
【文献】特開2013-004195(JP,A)
【文献】特開2017-059395(JP,A)
【文献】特開2015-069730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0587
H01M 50/584 - 597
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体の両面に正極合剤層が形成されてなる正極と、負極集電体の両面に負極合剤層が形成されてなる負極と、前記正極及び前記負極の間に介在するセパレータとで構成された巻回型の電極体と、を備えた非水電解質二次電池であって、
前記電極体は、最外周面において、前記負極集電体が露出する露出部が設けられるとともに、前記負極の巻き終り側端部から前記電極体の巻き終り端を跨ぐように貼着されたテープを有し、
前記電極体の最外周面において、前記電極体の巻回中心に対し、前記負極合剤層の巻き終り側端に対応する位置から前記最外周面に沿って前記負極の巻き終り側に10°の点をa、前記正極合剤層の巻き終り側端に対応する位置から前記最外周面に沿って前記正極の巻き始め側に10°の点をb、前記負極合剤層の巻き終り側端に対応する位置と前記正極合剤層の巻き終り側端に対応する位置との中点をcとしたとき、前記テープは、劣弧ac及び劣弧bcの両方に対応する領域を避けて貼着されている、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記テープは、前記正極合剤層の巻き終り側端及び前記負極合剤層の巻き終り側端と前記電極体の径方向に重ならないように、前記電極体の最外周面に貼着されている、請求項
1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記テープは、前記電極体の軸方向両端から15mmの範囲の少なくとも一部に貼着されている、請求項1
又は2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記テープは、前記電極体の軸方向両端から15mmの範囲のみに貼着されている、請求項1
又は2に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池等の非水電解質二次電池は、電気自動車、大型蓄電設備などの電源として利用されている。非水電解質二次電池を構成する電極体としては、正極及び負極をセパレータを介して巻回してなる巻回型の電極体が挙げられる。一般的に、巻回型の電極体の最外周面には、電極体の巻回構造を維持するための巻き止めテープが貼着される(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-212086号公報
【文献】特開2009-199974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、非水電解質二次電池の充放電サイクルに伴って電極体が膨張し、電極体には外装缶からの圧力が作用する。このとき、電極体を構成する極板が屈曲する極板変形(後述の
図8参照)が発生する場合がある。そして、大きな極板変形が発生すると、内部短絡につながる場合がある。非水電解質二次電池において、内部短絡の一因となり得る極板変形を十分に抑制することは重要な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様である非水電解質二次電池は、正極集電体の両面に正極合剤層が形成されてなる正極と、負極集電体の両面に負極合剤層が形成されてなる負極と、前記正極及び前記負極の間に介在するセパレータとで構成された巻回型の電極体を備えた非水電解質二次電池であって、前記電極体は、最外周面において、前記負極集電体が露出する露出部が設けられるとともに、前記負極の巻き終り側端部から前記電極体の巻き終り端を跨ぐように貼着されたテープを有し、前記テープは、前記正極合剤層の巻き終り側端及び前記負極合剤層の巻き終り側端の少なくとも一方と前記電極体の径方向に重ならないように、前記電極体の最外周面に貼着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様である非水電解質二次電池によれば、内部短絡の一因となり得る極板変形を十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は実施形態の一例である非水電解質二次電池の縦方向断面図である。
【
図2】
図2は実施形態の一例である非水電解質二次電池の横方向断面図である。
【
図3】
図3は実施形態の一例である電極体の斜視図である。
【
図4】
図4は実施形態の他の一例である電極体の斜視図である。
【
図5】
図5は実施形態の他の一例である電極体の斜視図である。
【
図6】
図6は実施形態の他の一例である電極体の斜視図である。
【
図7】
図7は実施形態の他の一例である電極体の斜視図である。
【
図8】
図8は極板変形の評価方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上述のように、巻回型の電極体を備えた非水電解質二次電池において、内部短絡の一因となり得る極板変形を十分に抑制することは重要な課題である。本発明者らの検討の結果、電極体の最外周面に貼着されるテープが極板変形に大きく寄与していることが判明した。そして、正極合剤層の巻き終り側端及び負極合剤層の巻き終り側端の少なくとも一方と電極体の径方向に重なる位置を避けてテープを貼着することにより、極板変形が抑制されることを見出した。合剤層は集電体と比較して厚みが大きく合剤層の巻き終り側端には段差が形成されるので、電極体の膨張に伴って発生する応力が当該巻き終り側端に集中して極板変形の一因になると考えられる。合剤層の巻き終り側端と重なる位置を避けてテープを配置することで、かかる応力の集中を緩和でき、極板変形が抑制されると推測される。
【0009】
以下、本開示の実施形態の一例について詳細に説明する。以下では、本開示に係る非水電解質二次電池の実施形態の一例として、巻回型の電極体14が円筒形状の電池ケース15に収容された円筒形電池を例示するが、電池は角形の電池ケースを備えた角形電池、金属層と樹脂層が積層したラミネートシートで構成される電池ケースを備えたラミネート電池等であってもよい。なお、本明細書では、説明の便宜上、電池ケース15の封口体17側を「上」、外装缶16の底部側を「下」として説明する。
【0010】
図1は、実施形態の一例である非水電解質二次電池10の縦方向(軸方向)断面図、
図2は非水電解質二次電池10の横方向(径方向)断面図である。
図1及び
図2に例示するように、非水電解質二次電池10は、電極体14と、非水電解質(図示せず)と、電極体14及び非水電解質を収容する電池ケース15とを備える。電極体14は、正極集電体30の両面に正極合剤層31が形成されてなる正極11と、負極集電体40の両面に負極合剤層41が形成されてなる負極12と、正極11及び負極12の間に介在するセパレータ13とで構成される。電極体14は、正極11と負極12がセパレータ13を介して巻回されてなる巻回構造を有する。電池ケース15は、有底筒状の外装缶16と、外装缶16の開口部を塞ぐ封口体17とで構成される。また、非水電解質二次電池10は、外装缶16と封口体17との間に配置される樹脂製のガスケット28を備える。
【0011】
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、およびこれらの2種以上の混合溶媒等を用いてもよい。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。なお、非水電解質は液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。電解質塩には、例えばLiPF6等のリチウム塩が使用される。
【0012】
電極体14は、長尺状の正極11と、長尺状の負極12と、長尺状の2枚のセパレータ13と、正極11に接合された正極タブ20と、負極12に接合された負極タブ21とで構成される。負極12は、リチウムの析出を抑制するために、正極11よりも一回り大きな寸法で形成される。即ち、負極12は、正極11より長手方向及び短手方向(上下方向)に長く形成される。2枚のセパレータ13は、少なくとも正極11よりも一回り大きな寸法で形成され、例えば正極11を挟むように配置される。
【0013】
電極体14の上下には、絶縁板18,19がそれぞれ配置される。
図1に示す例では、正極11に取り付けられた正極タブ20が絶縁板18の貫通孔を通って封口体17側に延び、負極12に取り付けられた負極タブ21が絶縁板19の外側を通って外装缶16の底部側に延びている。正極タブ20は封口体17の底板であるフィルタ23の下面に溶接等で接続され、フィルタ23と電気的に接続された封口体17の天板であるキャップ27が正極端子となる。負極タブ21は外装缶16の底部内面に溶接等で接続され、外装缶16が負極端子となる。
【0014】
外装缶16は、例えば有底円筒形状の金属製容器である。上述のように、外装缶16と封口体17との間にはガスケット28が設けられ、電池ケース15の内部空間が密閉される。外装缶16は、例えば側面部を外側からプレスして形成された、封口体17を支持する溝入れ部22を有する。溝入れ部22は、外装缶16の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面で封口体17を支持する。また、外装缶16の上端部は、内側に折り曲げられ封口体17の周縁部に加締められている。
【0015】
封口体17は、電極体14側から順に、フィルタ23、下弁体24、絶縁部材25、上弁体26、及びキャップ27が積層された構造を有する。封口体17を構成する各部材は、例えば円板形状又はリング形状を有し、絶縁部材25を除く各部材は互いに電気的に接続されている。下弁体24と上弁体26は各々の中央部で互いに接続され、各々の周縁部の間には絶縁部材25が介在している。異常発熱で電池の内圧が上昇すると、下弁体24が上弁体26をキャップ27側に押し上げるように変形して破断することにより、下弁体24と上弁体26の間の電流経路が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体26が破断し、キャップ27の開口部からガスが排出される。
【0016】
本実施形態では、正極タブ20が正極11の長手方向中央部であって、電極体14の巻き始め側端及び巻き終り側端から離れた位置に設けられている。他方、負極タブ21は電極体14の巻き終り側に位置する負極12の長手方向一端部に設けられている。なお、電極タブの配置は特に限定されず、例えば負極タブ21に加えて、他の負極タブが電極体14の巻き始め側に位置する負極12の長手方向他端部に設けられていてもよい。
【0017】
本明細書では、電極体14の巻き終り側に位置する正極11の長手方向一端を正極11の巻き終り側端、負極12の長手方向一端を負極12の巻き終り側端12eとする。また、電極体14の巻き始め側に位置する正極11の長手方向他端を正極11の巻き始め側端、負極12の長手方向他端を負極12の巻き始め側端とする。同様に、電極体14の巻き終り側に位置する負極合剤層41の長手方向一端を負極合剤層41の巻き終り側端41eとする。本実施形態では、正極11の巻き終り側端と正極合剤層31の巻き終り側端31eとが一致している。
【0018】
図2に示すように、正極11は、帯状の正極集電体30と、当該集電体の両面に形成された正極合剤層31とを有する。正極11には、例えば集電体の長手方向中間部に正極集電体の表面が露出した露出部が形成され、当該露出部に正極タブ20が接合されている。正極合剤層31は、正極活物質と、導電剤と、結着剤とで構成される。正極活物質としては、Co、Mn、及びNiから選ばれる少なくとも1つの遷移金属元素を含有するリチウム複合金属酸化物が例示できる。リチウム複合金属酸化物はAl、Mg、及びZr等の異種金属元素を含むことができる。
【0019】
負極12は、帯状の負極集電体40と、当該負極集電体の両面に形成された負極合剤層41とを有する。負極合剤層41は、負極活物質と、結着剤とで構成され、必要により導電剤を含んでいてもよい。負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、例えば天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料、リチウムチタン複合酸化物、Si、Sn等のリチウムと合金化する金属、又はこれらを含む合金、複合酸化物などを用いることができる。
【0020】
電極体14の最外周面には、負極集電体40の表面が露出する露出部42が設けられている。非水電解質二次電池10では、露出部42が負極端子である外装缶16の内面に接触することで、負極12と負極端子が電気的に接続され良好な集電性を確保できる。なお、露出部42には負極タブ21が溶接等により接続される。負極タブ21を用いる場合、負極12の集電性が向上する。他方、露出部42と外装缶16との接触により負極12の集電性を確保できるため、負極タブ21を設けない構成としてもよい。この場合、例えばリードの厚み分、電極体14の体積を大きくでき、電池の高容量化を図ることができる。
【0021】
露出部42は、電極体14の最外周面の一部に設けられてもよく、例えば負極12の巻き終り側端12eの巻内面から延出したセパレータ13が電極体14の最外周面の一部に存在してもよいが、好ましくは後述のテープ50を貼着していない状態において最外周面の全域に設けられる。本実施形態では、露出部42のうち負極集電体40の両面に負極合剤層41が形成されていない部分が、電極体14の1周分以上の長さで設けられている。しかし、露出部42のうち負極集電体40の巻外面にのみ負極合剤層41が形成されていない部分を電極体14の最外周面に配置してもよい。
【0022】
セパレータ13には、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。セパレータ13は、単層構造、積層構造のいずれであってもよく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、セルロースなどで構成される。ポリオレフィン樹脂を用いる場合、ポリオレフィン樹脂からなる基材表面にアラミド樹脂を塗布して表面に耐熱層を設けることが好ましい。セラミック粒子を含む樹脂を用いて耐熱層を設けることもできる。
【0023】
以下、電極体14の構成について、特に電極体14の最外周面に貼着されるテープ50について詳説する。
【0024】
電極体14の最外周面には、負極12の巻き終り側端部(巻き終り側端12e及びその近傍)から電極体14の巻き終り端を跨ぐようにテープ50(
図3参照)が貼着されている。テープ50は、電極体14の巻回構造を維持するための巻き止めテープである。電極体14の最外周面の全域に露出部42が設けられている場合は、負極12の巻き終り側端12eが電極体14の巻き終り端となる。負極12の巻き終り側端12eの巻内面からセパレータ13が延出することで電極体14の最外周面の一部にセパレータ13が存在する場合は、セパレータ13の巻き終り側端が電極体14の巻き終り端となる。
【0025】
テープ50を用いて負極12の巻き終り側端部を固定することで、電極体14の巻回構造が維持され、例えば電池の製造工程において外装缶16に電極体14をスムーズに収容できる。電極体14の最外周面には負極集電体40の表面が露出した露出部42が形成されているので、テープ50は露出部42に貼着される。本実施形態では、電極体14の最外周面の全域が露出部42であって、テープ50は露出部42のみに貼着されている。
【0026】
テープ50は、例えば絶縁性の有機材料で構成された基材層と、電極体14に対して接着性を有する接着剤層とを有する。テープ50は、実質的に導電性を有さない絶縁テープであることが好ましい。テープ50は、3層以上の層構造を有していてもよく、基材層が2層以上の同種又は異種積層フィルムで構成されてもよい。テープ50の厚みは、例えば10μm~60μmであり、好ましくは15μm~40μmである。また、テープ50には、チタニア、アルミナ、シリカ、ジルコニアなどの無機物フィラーが含有されていてもよく、基材層、接着剤層とは別に無機物フィラーを含有する層が設けられていてもよい。
【0027】
基材層を構成する好適な樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドなどが例示できる。接着剤層は、例えば、基材層の一方の面上に接着剤を塗工して形成される。接着剤層を構成する接着剤は、加熱することで粘着性を発現するホットメルト型又は加熱により硬化する熱硬化型であってもよいが、生産性等の観点から、室温で粘着性を有するものが好ましい。接着剤層を構成する接着剤の一例は、アクリル系接着剤、合成ゴム系接着剤である。
【0028】
テープ50は、正極合剤層31の巻き終り側端31e及び負極合剤層41の巻き終り側端41eの少なくとも一方と電極体14の径方向に重ならないように、電極体14の最外周面(露出部42)に貼着されている。本実施形態では、正極11の巻き終り側端と正極合剤層31の巻き終り側端31eとが一致している。合剤層の巻き終り側端31e,41eと重なる位置を避けてテープ50を貼着することで、電極体14の膨張に伴う極板変形が抑制される。
【0029】
図3に示す例では、正極合剤層31の巻き終り側端31e及び負極合剤層41の巻き終り側端41eと電極体14の径方向に重ならないように、テープ50が電極体14の最外周面に貼着されている。つまり、テープ50は負極12の巻き終り側端部から電極体14の巻き終り端である負極12の巻き終り側端12eを跨ぐように電極体14の最外周面に貼着されるとともに、テープ50は合剤層の巻き終り側端31e,41eと電極体14の径方向に重ならないように配置される。テープ50は、細長い帯状に形成され、長手方向が電極体14の周方向に沿うように貼着されている。テープ50は、電極体14の周方向に沿って、例えば最外周面の周長の50%以上、好ましくは80%以上の長さ範囲に貼着される。
【0030】
テープ50は、電極体14の軸方向両端から15mmの範囲の少なくとも一部に貼着されることが好ましい。電極体14の軸方向両端部、特に下端部にテープ50を貼着することで、電極体14を外装缶16に挿入する際に、電極体14の端部が外装缶16と接触して極板の捲れ、破断、損傷等が生じることを防止できる。
図3に示す例では、電極体14の軸方向両端から15mmの範囲のみにテープ50が貼着されている。後述の実施例に示すように、電極体14の軸方向中央部を避けて軸方向両端部のみにテープ50を貼着することにより、極板変形の抑制効果が向上する。
【0031】
電極体14の軸方向両端部に貼着される2つのテープ50は、互いに異なる形状、寸法を有していてもよいが、一般的には同じものを用いる。各テープ50の幅は、例えば5mm~12mmである。各テープ50は、電極体14の最外周面の上下両端にテープ50の端を合わせてそれぞれ貼着されてもよいが、上下両端から食み出さないことが好ましいため、貼着誤差を考慮して上下両端との間に所定の間隔をあけて貼着されてもよい。
【0032】
テープ50は、電極体14の最外周面において、
図2に示す劣弧acに対応する第1領域42ac及び劣弧bcに対応する第2領域42bcの少なくとも一方を避けて貼着されることが好ましい。より好ましくは、第1領域42ac及び第2領域42bcの両方を避けてテープ50が貼着される。即ち、テープ50は、電極体14の最外周面のうち、優弧abに対応する第3領域42abに貼着されることが好ましい。
【0033】
ここで、点a~cはいずれも、電極体14の最外周面に存在する。点aは、電極体14の巻回中心αに対し、負極合剤層41の巻き終り側端41eに対応する位置から最外周面に沿って負極12の巻き終り側に10°の点を意味する。点bは、正極合剤層31の巻き終り側端31eに対応する位置から最外周面に沿って正極11の巻き始め側に10°の点を意味する。また、点cは、巻き終り側端31eに対応する位置と巻き終り側端41eに対応する位置との中点である。
【0034】
巻き終り側端31e,41eは、電極体14の径方向に重ならないことが好ましく、例えば電極体14の巻回中心αに対して、巻き終り側端31eと巻き終り端41eとがなす角度は10°~60°が好適である。電極体14の最外周面の第3領域42abにテープ50を貼着することで、製造過程でテープ50の位置ずれが多少発生したとしてもテープ50が巻き終り側端31e,41eと重なる位置に貼着されることを防止できる。テープ50は、第3領域42abの上下両端部に電極体14の周方向に沿って貼着されることが好適である。テープ50は、例えば電極体14の周方向に沿った第3領域42abの長さの80%以上又は90%以上の長さ範囲に貼着される。
【0035】
図4~
図7は、実施形態の他の一例であるテープ50,51の貼着状態を示す図である。
図4に示す例では、露出部42の上下両端部において、正極合剤層31の巻き終り側端31eと電極体14の径方向に重ならない位置にテープ50が貼着されている。他方、テープ50は負極合剤層41の巻き終り側端41eと重なる位置に貼着されている。
図5に示す例では、露出部42の上下両端部において、巻き終り側端41eと重ならない位置であって、巻き終り側端31eと重なる位置にテープ50が貼着されている。
【0036】
図6及び
図7に示す例では、巻き終り側端31e,41eと重なる位置を避けて露出部42にテープ50,51が貼着されている点で、
図3に示す例と共通する。他方、
図6に示す例では、テープ51の幅(上下方向長さ)がテープ50の幅よりも大きく、電極体14の軸方向略全長にわたって貼着されている点で、
図3に示す例と異なる。テープ51は、例えば第3領域42ab(
図2参照)において、上下方向の両端部及び中央部を含む広範囲に貼着されている。
図7に示す例では、テープ50が露出部42(第3領域42ab)の上下方向中央部のみに貼着されている点で、
図3に示す例と異なる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
<実施例1>
[正極の作製]
100質量部のLiNi0.88Co0.09Al0.03O2と、1質量部のアセチレンブラックと、0.9質量部のポリフッ化ビニリデンとを混合し、N-メチル-2-ピロリドンを適量加えて、正極合剤スラリーを調製した。次に、当該正極合剤スラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる長尺状の正極集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。乾燥した塗膜をローラーを用いて圧縮した後、所定の電極サイズに切断し、正極集電体の両面に正極合剤層が形成された正極(厚さ0.144mm、幅62.6mm、長さ861mm)を作製した。正極の長手方向中央部に、合剤層が存在せず集電体表面が露出した露出部を設け、アルミニウム製の正極タブを露出部に溶接した。
【0039】
[負極の作製]
95質量部の黒鉛粉末と、5質量部のSi酸化物と、1質量部のカルボキシメチルセルロースナトリウムと、1質量部のスチレン-ブタジエンゴムのディスパージョンとを混合し、水を適量加えて、負極合剤スラリーを調製した。次に、当該負極合剤スラリーを厚さ8μmの銅箔からなる長尺状の負極集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。乾燥した塗膜をローラーを用いて圧縮した後、所定の電極サイズに切断し、負極集電体の両面に負極合剤層が形成された負極(厚さ0.160mm、幅64.2mm、長さ959mm)を作製した。負極の長手方向一端部(電極体の巻き終り側に位置する端部)に合剤層が存在せず集電体表面が露出した露出部を設け、ニッケル製の負極タブを露出部に溶接した。
【0040】
[電極体の作製]
上記正極及び上記負極をポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータを介して巻回することで、巻回型の電極体を作製した。電極体の最外周面は、その全域が負極集電体の表面が露出した露出部である。正極合剤層の巻き終り側端及び負極合剤層の巻き終り側端と電極体の径方向に重ならないように、負極の巻き終り端を含む電極体の最外周面にテープを貼着して、電極体の巻回構造を維持した。テープには、厚さ30μm、幅(電極体の上下方向に沿った長さ)9mm、長さ(電極体の周方向に沿った長さ)50mmのポリプロピレン製のテープを用いた。
図3に示すように、2つのテープを電極体の軸方向両端部から15mmの範囲のみにそれぞれ貼着した。
【0041】
[非水電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを、EC:DMC=3:7の体積比で混合した。当該混合溶媒に5質量%のビニレンカーボネートを添加し、LiPF6を1.5mol/Lの濃度で溶解させて非水電解液を調製した。
【0042】
[電池の作製]
上記電極体の上下に絶縁板をそれぞれ配置し、負極リードを電池ケースに溶接すると共に正極リードを封口体に溶接し、電極体を外装缶内に収容した。その後、上記非水電解液を外装缶内に注入し、外装缶の開口端部をガスケットを介して封口体にかしめ固定することにより電池ケースを密閉して円筒形の非水電解質二次電池を作製した。電池の容量は、4600mAhであった。
【0043】
<実施例2>
実施例1で用いたテープを、負極合剤層の巻き終り側端と電極体の径方向に重なり、正極合剤層の巻き終り側端とは重ならないように、電極体の最外周面に貼着(
図4参照)したこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0044】
<実施例3>
実施例1で用いたテープを、正極合剤層の巻き終り側端と電極体の径方向に重なり、負極合剤層の巻き終り側端とは重ならないように、電極体の最外周面に貼着(
図5参照)したこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0045】
<実施例4>
幅62mmのポリプロピレン製のテープ(1つ)を、電極体の軸方向中央部及び両端部を含む範囲に貼着(
図6参照)したこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0046】
<実施例5>
実施例1で用いたテープ(1つ)を、電極体の軸方向中央部に貼着(
図7参照)したこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0047】
<比較例1>
長さ62mmのポリプロピレン製のテープ(2つ)を、正極合剤層の巻き終り側端及び負極合剤層の巻き終り側端と電極体の径方向に重なるように、電極体の軸方向両端部から15mmの範囲にそれぞれ貼着したこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0048】
[サイクル試験]
実施例及び比較例の各電池を、25℃の温度環境において1380mA(0.3時間率)の定電流で電池電圧4.2Vまで充電し、終止電流を92mAとした定電圧充電を行った。その後、20分間休止し、4600mA(1時間率)で定電流放電を行い、20分間休止した。この充放電サイクルを500サイクル繰り返した。
【0049】
[極板変形評価(
図8参照)]
上記サイクル試験後の電池を、1380mA(0.3時間率)の定電流で電池電圧4.2Vまで充電し、終止電流を92mAとした定電圧充電を行った後、X線CT装置(SMX-225CT FPD HR、島津製作所製)を用いて電極体の巻回中心近傍の断面観察を行った。
図8に示すように、角度θが150°以下となる極板(正極及び負極の少なくとも一方)の変形(屈曲)が確認された場合に極板変形ありと判定した。下記の基準に基づいて極板変形を評価し、評価結果を表1に示した。
〇:極板変形は確認されず
△:1層の極板変形を確認
×:2層以上の極板変形を確認
【0050】
【0051】
表1に示す結果から、実施例の電池はいずれも、比較例の電池と比べて、サイクル試験後における極板変形が発生し難いことが分かる。特に、電極体の軸方向両端部のみにテープを貼着した場合(実施例1~3)に、極板変形の抑制効果が向上する。電極体の軸方向中央部は充放電サイクルにより電極体が膨張し易い部分であるため、当該部分を避けてテープを貼着することにより、極板変形の抑制効果が向上したと考えられる。
【0052】
合剤層は集電体と比較して厚みが大きく合剤層の巻き終り側端には段差が形成されるので、電極体の膨張に伴って発生する応力が当該巻き終り側端に集中して極板変形の一因になると考えられる。そして、当該極板変形にはテープの貼着形態が大きく関与している。実施例の電池では、合剤層の巻き終り側端と重なる位置を避けてテープを配置することで、上記応力の集中を緩和でき極板変形が抑制される。他方、比較例の電池では、応力の集中を十分に緩和できず、極板変形が発生したものと考えられる。
【符号の説明】
【0053】
10 非水電解質二次電池、11 正極、12e,31e,41e 巻き終り側端、12 負極、13 セパレータ、14 電極体、15 電池ケース、16 外装缶、17 封口体、18,19 絶縁板、20 正極タブ、21 負極タブ、22 溝入れ部、23 フィルタ、24 下弁体、25 絶縁部材、26 上弁体、27 キャップ、28 ガスケット、30 正極集電体、31 正極合剤層、40 負極集電体、41 負極合剤層、42 露出部、42ac 第1領域、42bc 第2領域、42ab 第3領域、50,51 テープ