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特許7187486PD-1およびCTLA-4二重インヒビターペプチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】PD-1およびCTLA-4二重インヒビターペプチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20221205BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20221205BHJP
   A61K 35/768 20150101ALI20221205BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20221205BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20221205BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20221205BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20221205BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221205BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20221205BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20221205BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221205BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221205BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20221205BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20221205BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221205BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20221205BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221205BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
A61K35/17 A
A61K35/768
A61K38/08
A61K38/10
A61K38/16
A61P1/16
A61P17/00
A61P31/00
A61P33/06
A61P35/00
A61P37/04
C07K7/08 ZNA
C07K14/00
C12N5/10
C12N7/01
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019564464
(86)(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 US2018034625
(87)【国際公開番号】W WO2018218137
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-03-30
(31)【優先権主張番号】62/510,900
(32)【優先日】2017-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519091317
【氏名又は名称】レイドス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】グティエレス, ガブリエル エム.
(72)【発明者】
【氏名】コトライア, ヴィナヤカ
(72)【発明者】
【氏名】ファレス, ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】パヌッチ, ジェイムズ
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/209804(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0071403(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/11
A61K 35/17
A61K 35/768
A61K 38/08
A61K 38/10
A61K 38/16
A61P 1/16
A61P 17/00
A61P 31/00
A61P 33/06
A61P 35/00
A61P 37/04
C07K 7/08
C07K 14/00
C12N 5/10
C12N 7/01
C12N 15/63
C12N 15/86
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)LD01(配列番号1)、LD11(配列番号5)、LD10(配列番号12)、LD10 R9A(配列番号15)、LD10 P15A(配列番号17)、LD17(配列番号21)、LD17m(配列番号22)、LD10da(配列番号24)、LD01 TQ19 aa(配列番号29)、ペプチドLD01(u)(配列番号36)、ペプチドLD17m(u)(配列番号37)、およびペプチドLD01 TQ19(u)(配列番号38)からなる群より選択されるか;または
(b)LD01(配列番号1)、LD11(配列番号5)、LD10(配列番号12)、LD10 R9A(配列番号15)、LD10 P15A(配列番号17)、LD17(配列番号21)、LD17m(配列番号22)、LD10da(配列番号24)、LD01 TQ19 aa(配列番号29)、およびLD04(配列番号7)、LD40(配列番号8)、およびLD01r(配列番号11)、ペプチドa(配列番号36)、ペプチドLD17m(u)(配列番号37)、およびペプチドLD01 TQ19(u)(配列番号38)からなる群より選択され、ここで該ペプチドは、C末端アミド化、N末端アセチル化、および1個のL-アミノ酸の、その相当するD-アミノ酸による置き換えからなる群より選択される1またはこれより多くの改変を含むか;あるいは
(c)LD01(配列番号l)、LD11(配列番号5)、LD10(配列番号12)、LD10 R9A(配列番号15)、LD10 P15A(配列番号17)、LD17(配列番号21)、LD17m(配列番号22)、LD01 TQ19 aa(配列番号29)、LD04(配列番号7)、LD40(配列番号8)、およびLD01r(配列番号11)、ペプチドLD01(u)(配列番号36)、ペプチドLD17m(u)(配列番号37)、およびペプチドLD01 TQ19(u)(配列番号38)からなる群より選択され、ここでそのN末端アミノ酸は、Dアミノ酸である、
ペプチドであって、
ここで前記ペプチドが、(i)PD-1のPD-L1への結合、および、(ii)CD86のCTLA-4への結合を阻害する、ペプチド
【請求項2】
請求項1に記載のペプチド、LD04、LD40、およびLD01rからなる群より選択されるペプチドをコードするヌクレオチドを含む、発現構築物。
【請求項3】
CAR-T細胞または腫瘍溶解性ウイルスに存在する、請求項2に記載の発現構築物。
【請求項4】
(a)以下からなる群より選択される活性薬剤:
(i)請求項1に記載のペプチド、LD04、LD40、およびLD01rからなる群より選択されるペプチド;
(ii)該ペプチドをコードする核酸;
(iii)該ペプチドを発現するCAR-T細胞;および
(iv)該ペプチドを発現する腫瘍溶解性ウイルス;ならびに
(b)薬学的に受容可能なキャリア、
を含む、薬学的組成物。
【請求項5】
前記活性薬剤は核酸であり、該核酸は、DNA、cDNA、PNA、およびRNAからなる群より選択される、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記核酸はRNAである、請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記RNAは、(i)リボース糖の改変、(ii)リン酸結合の改変、および(iii)塩基の改変からなる群より選択される改変を含む、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記改変は、リボ-ジフルオロトルイルヌクレオチド、4’-チオ改変RNA、ボラノリン酸結合、ホスホロチオエート結合、2’-O-メチル(2’-OMe)糖置換、2’-フルオロ(2’-F)、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)糖置換、ロックド核酸(LNA)、およびL-RNAからなる群より選択される、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記活性薬剤は前記ペプチドであり、該ペプチドは、微粒子、ポリマーナノ粒子、リポソーム、固体脂質ナノ粒子、親水性粘膜付着性ポリマー、チオール化ポリマー、ポリマーマトリクス、ナノエマルジョン、およびヒドロゲルからなる群より選択されるペプチドキャリアシステムとともに提供される、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
過剰増殖性障害の進行を阻害する、感染性疾患を処置する、ワクチン接種への応答を増強する、敗血症を処置する、毛の再着色を促進する、または色素沈着した皮膚病変の美白を促進するための、請求項4~9のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記過剰増殖性障害の進行を阻害するために投与される、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記過剰増殖性障害はがんである、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記がんは黒色腫である、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
第2の治療と組み合わせて投与されることを特徴とする、請求項10~13のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記第2の治療は、以下:
(i)がんワクチン;
(ii)キメラ抗原レセプター(CAR)T細胞;
(iii)PD-1、PD-L1、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)、T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリン抑制因子(VISTA)、T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3(TIM-3)、キラー免疫グロブリン様レセプター(KIR)、インドールアミン(2,3)-ジオキシゲナーゼ(IDO)、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、A2Aアデノシンレセプター(A2AR)からなる群より選択される分子の活性を低減または遮断する治
(iv)サイトカイン;
(v)CD40、OX40、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子関連タンパク質(GITR)、および誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)からなる群より選択される分子のアゴニスト;
(vi)腫瘍溶解性ウイルス;ならびに
(vii)4-1BBアゴニスト、4-1BBアンタゴニスト、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)のインヒビター、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)のインヒビター、およびVEGFRのインヒビターからなる群より選択される治療剤、
からなる群より選択される、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記薬学的組成物は、感染性疾患を処置するために、または該感染性疾患に対するワクチンへのワクチンアジュバントとして投与される、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記感染性疾患は、マラリアまたはB型肝炎である、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記薬学的組成物は、敗血症を処置するために投与される、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記薬学的組成物は、毛の再着色を促進するかまたは色素沈着した皮膚病変の美白を促進するために投与される、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
過剰増殖性障害の進行を阻害する、感染性疾患を処置する、ワクチン接種への応答を増強する、敗血症を処置する、毛の再着色を促進する、または色素沈着した皮膚病変の美白を促進するための医薬の製造における、請求項4~9のいずれかに記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第62/510,900号(2017年5月25日出願)の優先権を主張し、これを参考として援用する。
【0002】
本出願は、2018年5月25日に作成し、「00047900258sequencelisting.txt」という名称の、本出願の配列表である、提出された9.97kbのテキストの内容を参考として援用する。
【0003】
本開示で引用される各科学文献、特許、および公開特許出願は、その全体において本明細書に参考として援用される。
【0004】
技術分野
本開示は一般に、免疫調節性ペプチドに関する。
【背景技術】
【0005】
背景
Programmed cell death-1(PD-1)およびそのリガンド(PD-L1およびPD-L2)は、広く発現され、T細胞活性化において多くの免疫調節の役割(腫瘍細胞および感染性因子に対する免疫を弱めることを含む)を発揮する。PD-1は、従って、種々の治療適用にとって魅力的な標的である。細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA-4)は、T細胞に対して負のシグナルを提供し、同様に魅力的な治療標的である。免疫チェックポイント経路の有用な調節因子が継続して必要である。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
(a)LD01(配列番号1)、LD11(配列番号5)、LD10(配列番号12)、LD10 R9A(配列番号15)、LD10 P15A(配列番号17)、LD17(配列番号21)、LD17m(配列番号22)、LD10da(配列番号24)、LD01 TQ19 aa(配列番号29)、LD01 TQ19 da(配列番号30)、ペプチドLD01(u)(配列番号36)、ペプチドLD17m(u)(配列番号37)、およびペプチドLD01 TQ19(u)(配列番号38)からなる群より選択されるか;または
(b)LD01(配列番号1)、LD11(配列番号5)、LD10(配列番号12)、LD10 R9A(配列番号15)、LD10 P15A(配列番号17)、LD17(配列番号21)、LD17m(配列番号22)、LD10da(配列番号24)、LD01 TQ19 aa(配列番号29)、およびLD01 TQ19 da(配列番号30)、LD04(配列番号7)、LD40(配列番号8)、およびLD01r(配列番号11)、ペプチドa(配列番号36)、ペプチドLD17m(u)(配列番号37)、およびペプチドLD01 TQ19(u)(配列番号38)からなる群より選択され、ここで該ペプチドは、C末端アミド化、N末端アセチル化、および少なくとも1個のL-アミノ酸の、その相当するD-アミノ酸による置き換えからなる群より選択される1またはこれより多くの改変を含むか;あるいは
(c)LD01(配列番号l)、LD11(配列番号5)、LD10(配列番号12)、LD10 R9A(配列番号15)、LD10 P15A(配列番号17)、LD17(配列番号21)、LD17m(配列番号22)、LD01 TQ19 aa(配列番号29)、LD04(配列番号7)、LD40(配列番号8)、およびLD01r(配列番号11)、ペプチドLD01(u)(配列番号36)、ペプチドLD17m(u)(配列番号37)、およびペプチドLD01 TQ19(u)(配列番号38)からなる群より選択され、ここでそのN末端アミノ酸は、Dアミノ酸である、
ペプチド。
(項目2)
項目1に記載のペプチド、LD04、LD40、およびLD01rからなる群より選択されるペプチドをコードする、発現構築物。
(項目3)
CAR-T細胞または腫瘍溶解性ウイルスに存在する、項目2に記載の発現構築物。
(項目4)
(a)以下からなる群より選択される活性薬剤:
(i)項目1に記載のペプチド、LD04、LD40、およびLD01rからなる群より選択されるペプチド;
(ii)該ペプチドをコードする核酸;
(iii)該ペプチドを発現するCAR-T細胞;および
(iv)該ペプチドを発現する腫瘍溶解性ウイルス;ならびに
(b)薬学的に受容可能なキャリア、
を含む、薬学的組成物。
(項目5)
前記活性薬剤は核酸であり、該核酸は、DNA、cDNA、PNA、およびRNAからなる群より選択される、項目4に記載の薬学的組成物。
(項目6)
前記核酸はRNAである、項目5に記載の薬学的組成物。
(項目7)
前記RNAは、(i)リボース糖の改変、(ii)リン酸結合の改変、および(iii)塩基の改変からなる群より選択される改変を含む、項目6に記載の薬学的組成物。
(項目8)
前記改変は、リボ-ジフルオロトルイルヌクレオチド、4’-チオ改変RNA、ボラノリン酸結合、ホスホロチオエート結合、2’-O-メチル(2’-OMe)糖置換、2’-フルオロ(2’-F)、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)糖置換、ロックド核酸(LNA)、およびL-RNAからなる群より選択される、項目7に記載の薬学的組成物。
(項目9)
前記活性薬剤は前記ペプチドであり、該ペプチドは、微粒子、ポリマーナノ粒子、リポソーム、固体脂質ナノ粒子、親水性粘膜付着性ポリマー、チオール化ポリマー、ポリマーマトリクス、ナノエマルジョン、およびヒドロゲルからなる群より選択されるペプチドキャリアシステムとともに提供される、項目4に記載の薬学的組成物。
(項目10)
過剰増殖性障害の進行を阻害する、感染性疾患を処置する、ワクチン接種への応答を増強する、敗血症を処置する、毛の再着色を促進する、または色素沈着した皮膚病変の美白を促進するための方法であって、該方法は、それを必要とする個体に、有効量の、項目4~9のいずれかに記載の薬学的組成物を投与することを包含する方法。
(項目11)
前記薬学的組成物は、前記過剰増殖性障害の進行を阻害するために投与される、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記過剰増殖性障害はがんである、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記がんは黒色腫である、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記患者に第2の治療を投与することをさらに包含する、項目10~13のいずれかに記載の方法。
(項目15)
前記第2の治療は、以下:
(i)がんワクチン;
(ii)キメラ抗原レセプター(CAR) T細胞療法;
(iii)PD-1、PD-L1、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)、T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリン抑制因子(VISTA)、T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3(TIM-3)、キラー免疫グロブリン様レセプター(KIR)、インドールアミン(2,3)-ジオキシゲナーゼ(IDO)、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、A2Aアデノシンレセプター(A2AR)からなる群より選択される分子の活性を低減または遮断することを含む治療;
(iv)サイトカイン;
(v)CD40、OX40、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子関連タンパク質(GITR)、および誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)からなる群より選択される分子のアゴニスト;
(vi)腫瘍溶解性ウイルス;ならびに
(vii)4-1BBアゴニスト、4-1BBアンタゴニスト、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)のインヒビター、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)のインヒビター、およびVEGFRのインヒビターからなる群より選択される治療剤、
からなる群より選択される、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記薬学的組成物は、感染性疾患を処置するために、または該感染性疾患に対するワクチンへのワクチンアジュバントとして投与される、項目10に記載の方法。
(項目17)
前記感染性疾患は、マラリアまたはB型肝炎である、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記少なくとも1つのペプチドは、敗血症を処置するために投与される、項目10に記載の方法。
(項目19)
前記少なくとも1つのペプチドは、毛の再着色を促進するかまたは色素沈着した皮膚病変の美白を促進するために投与される、項目10に記載の方法。
(項目20)
過剰増殖性障害の進行を阻害する、感染性疾患を処置する、ワクチン接種への応答を増強する、敗血症を処置する、毛の再着色を促進する、または色素沈着した皮膚病変の美白を促進することにおける使用のための、項目4~9のいずれかに記載の組成物。
(項目21)
過剰増殖性障害の進行を阻害する、感染性疾患を処置する、ワクチン接種への応答を増強する、敗血症を処置する、毛の再着色を促進する、または色素沈着した皮膚病変の美白を促進するための医薬の製造における、項目4~9のいずれかに記載の組成物の使用。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、ヒトPD-1に結合するペプチドLD01の単一濃度BIACORE(登録商標)データを提供するグラフである。
【0007】
図2図2は、マウスPD-1に結合するペプチドLD01の単一濃度BIACORE(登録商標)データを提供するグラフである。
【0008】
図3図3は、マウスPD-1に結合するペプチドLD01の反応速度論を示すグラフである。
【0009】
図4AB図4A~Cは、細胞表面に発現されたヒトPD-1へのPD-L1-Fc融合タンパク質の結合に対するペプチドの効果を示すグラフである。図4A, 低濃度範囲のペプチドLD01。図4B, 高濃度範囲のペプチドLD01。図4C, ペプチドLD01。
図4C】同上。
【0010】
図5図5は、無細胞アッセイにおいてPD-1へのPD-L1-Fc融合タンパク質の結合に対するペプチドLD01の効果を示すグラフである。
【0011】
図6図6は、抗CD3抗体濃度の関数として脾細胞増殖を示すグラフである。
【0012】
図7図7は、ペプチドLD01が、外因的に添加したPD-L1-Fc融合タンパク質の存在下および非存在下で抗CD3刺激脾細胞増殖の増殖を増強することを示すグラフである。
【0013】
図8図8は、マウス黒色腫モデルにおいて肺腫瘍結節の数に対するペプチドLD01の効果を示すグラフである。p<0.05。
【0014】
図9図9は、マウス黒色腫モデルにおいてペプチドLD01による肺腫瘍結節の%減少を示すグラフである。
【0015】
図10図10は、実施例5に記載されるとおりのマウス黒色腫モデルにおいて肺腫瘍結節に対するペプチドLD01の効果を比較する。左(コホート4)、200μg ペプチドLD01で処置。右(コホート1)、処置なし。
【0016】
図11図11は、マウス黒色腫モデルにおいて肺腫瘍結節の数に対するペプチドLD12、LD01、LD10da、およびLD16daの効果を示すグラフである。p<0.05。
【0017】
図12図12は、マラリアワクチンの免疫原性に対するペプチドLD01の効果を示すグラフである(実施例6)。
【0018】
図13図13は、マラリアワクチンの免疫原性に対するペプチドLD12、LD01、LD10da、およびLD16daの効果を示すグラフである(実施例6)。
【0019】
図14図14は、マウス敗血症モデルにおいて2×10 脾細胞あたりのIFNγ分泌T細胞の数に対するペプチドLD01の効果を示すグラフである。
【0020】
図15図15は、ペプチドLD01が、ぶどう球菌エンテロトキシンB(SEB)単独と比較してヒトPBMCによってIFNγ分泌を4倍増加させることを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
本開示は、チェックポイントレセプター「programmed death 1」(PD-1)とそのリガンドPD-L1との相互作用を遮断し、CTLA-4へのCD86の結合をも遮断するペプチドを提供する。いくつかの実施形態において、開示されるペプチドは、その安定性または他の薬物動態特性を増強するために、化学的方法または組換え方法を使用して改変される。例えば、US 2017/0020956を参照のこと。改変としては、1またはこれより多くのL-アミノ酸をその相当するD型で置き換えること、C末端および/またはN末端残基に対するアセチル化、C末端および/またはN末端残基に対するアミド化、環化、エステル化、グリコシル化、アシル化、ミリスチン酸もしくはパルミチン酸の結合、N末端グリシンの付加、親油性部分(例えば、長い脂肪酸鎖)の付加、およびPEG化が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
ペプチドおよびその改変されたバージョンの非限定的な例は、以下の表に含まれる。その中で、「NH」は、C末端アミド化を示し、「CHCO」は、N末端アセチル化を示し、小文字は、そのアミノ酸のD型を示す。
【化1】
【0023】
ペプチドは、当該分野で公知の任意の方法(合成法、組換え法、または両方を含む)によって作製され得る。合成法としては、固相法または液相法が挙げられ、保護基の使用を含み得る。例えば、Bodanszky et al.(1976)、McOmie(1973)、Merrifield(1963)、Neurath et al.(1976)、Stuart & Young(1984)を参照のこと。
【0024】
ペプチドの組換え生成は、任意の適切な発現系においてそのペプチドをコードする任意のヌクレオチド配列(複数可)を使用して行われ得る。その開示されるペプチドのうちの1またはこれより多くをコードする核酸分子は、そのコード配列に作動可能に連結された制御エレメントを含む発現カセットへと組み込まれ得る。制御エレメントとしては、イニシエーター、プロモーター(誘導性、抑制性、および構成性のプロモーターを含む)、エンハンサー、およびポリアデニル化シグナルが挙げられるが、これらに限定されない。シグナル配列は含まれ得る。その発現カセットは、そのペプチド(複数可)の生成に適切な宿主細胞へと導入され得るベクターの中に提供され得る。発現カセットおよび発現ベクターを構築するための方法は、周知である。発現ベクターは、1またはこれより多くのペプチド(配列番号5、7、8、11、12、15、17、36、37、38、または39を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる)をコードする1またはこれより多くの発現カセットを含み得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、1またはこれより多くのペプチドは、融合タンパク質の成分として発現される。その融合タンパク質の他の成分は、例えば、サイトカインまたは操作されたT細胞レセプター(TCR)であり得る。融合タンパク質は、その成分の間に1またはこれより多くのリンカーを含み得る。いくつかの実施形態において、ペプチドとその融合タンパク質の別の成分との間のリンカーは、その融合タンパク質の発現後にそのペプチドを放出するためのタンパク質分解切断部位を含み得る。例えば、US 2016/0138066;US 2018/0135060;US 2014/0343251;US 2012/0142891;Rodriguez et al.,2014を参照のこと。
【0026】
いくつかの実施形態において、融合タンパク質の成分は、そのペプチドの血漿半減期を増強し得る部分(例えば、アルブミンまたはトランスサイレチン)である。他の実施形態において、ペプチドまたはペプチドの改変されたバージョンは、その部分に結合体化される。このような結合体(conjugate)を調製するための方法は、当該分野で周知である(例えば、Penchala et al, 2015; Kontermann, 2016; Zorzi et al, 2017)。
【0027】
いくつかの実施形態において、融合タンパク質の成分は、パートナー分子(例えば、ペプチドまたはタンパク質(ペプチドもしくは改変されたペプチドの半減期をインビボで増加させる、および/または標的組織もしくは細胞への特異的送達を提供することが意図された抗体))である。あるいは、ペプチドまたはその改変されたバージョンは、そのパートナー分子へと結合体化され得る。結合体化は、直接であり得るか、またはリンカーを介するものであり得る。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、ペプチドまたはその改変されたバージョンは、1またはこれより多くのアミノ酸を、パートナー分子に結合させるために使用されるアミノ酸(例えば、リジン)で置換するために、またはそのペプチドを、例えば、1個、2個、3個、もしくは4個のグリシンスペーサー分子でN末端伸長することによって、変化させ得る。
【0028】
本開示はまた、その開示されるペプチドのうちの1またはこれより多くを発現するCAR-T細胞を提供する。CAR-T細胞を調製するための方法は、例えば、米国特許第9,328,156号;米国特許第9,845,362号;および米国特許第9,101,584号に開示される。
【0029】
本開示はまた、その開示されるペプチドのうちの1またはこれより多くをコードする核酸分子を含む腫瘍溶解性ウイルスを提供する。US 2017/0157188; Lawler et al., 2017; US 2015/0250837を参照のこと。腫瘍溶解性ウイルスとしては、レオウイルス、セネカバレーウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、単純ヘルペスウイルス、モルビリウイルス属のウイルス(morbillivirus virus)、レトロウイルス、インフルエンザウイルス、シンドビスウイルス、ポックスウイルス、およびアデノウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
腫瘍溶解性レオウイルスの例としては、REOLYSIN(登録商標)(pelareorep)およびUS 2017/0049829で開示されるレオウイルスが挙げられる。
【0031】
腫瘍溶解性セネカバレーウイルスの例としては、NTX-101(Rudin et al., 2011)が挙げられる。
【0032】
腫瘍溶解性水疱性口内炎ウイルスの例は、Stojdl et al., 2000;およびStojdl et al., 2003で開示される。
【0033】
腫瘍溶解性ニューカッスル病ウイルスの例としては、73-T PV701株およびHDV-HUJ株(Phuangsab et al., 2001; Lorence et al., 2007; およびFreeman et al., 2006もまた参照のこと)が挙げられる。
【0034】
腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスの例としては、NV1020(Geevarghese et al., 2010)およびT-VEC(Andtbacka et al., 2013)が挙げられる。
【0035】
腫瘍溶解性モルビリウイルス属のウイルスの例としては、腫瘍溶解性麻疹ウイルス(例えば、MV-Edm(McDonald et al., 2006)およびHMWMAA(Kaufmann et al., 2013)が挙げられる。
【0036】
腫瘍溶解性レトロウイルスの例は、Lu et al., 2012で開示される。
【0037】
腫瘍溶解性インフルエンザウイルスの例は、例えば、US 2018/0057594で開示される。
【0038】
腫瘍溶解性シンドビスウイルスの例は、例えば、Lundstrom, 2017で開示される。
【0039】
腫瘍溶解性ポックスウイルスの例は、例えば、Chan & McFadden, 2014で開示される。
【0040】
腫瘍溶解性アデノウイルスの例としては、ONYX-015(Khuri et al., 2000)およびH101またはOncorine(Liang, 2018)が挙げられる。
【0041】
治療的使用
本明細書で開示されるペプチドおよびその改変されたバージョンは、多くの治療的適用(過剰増殖性障害(がんを含む)を処置する、感染性疾患を処置する、ワクチン接種への応答を増強する、敗血症を処置する、毛の再着色を促進する、および色素沈着した皮膚病変の美白を促進することが挙げられる)を有する。「処置する」とは、本明細書で使用される場合、ペプチドまたはその改変されたバージョンが投与される状態の1またはこれより多くの症状の進行を低減するかまたは阻害することを含む。
【0042】
「投与する」とは、本明細書で使用される場合、開示されるペプチドまたはその改変されたバージョンの直接的投与、および間接的投与を含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、その開示されるペプチドおよび/またはその改変されたバージョンのうちの1またはこれより多くは、直接投与される。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、ペプチドキャリアシステムが使用される。多くのペプチドキャリアシステムが当該分野で公知である(微粒子、ポリマーナノ粒子、リポソーム、固体脂質ナノ粒子、親水性粘膜付着性ポリマー、チオール化ポリマー、ポリマーマトリクス、ナノエマルジョン、およびヒドロゲルが挙げられる)。Patel et al.(2014)、Bruno et al.(2013)、Feridooni et al.(2016)を参照のこと。任意の適切なシステムが使用され得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、1またはこれより多くの開示されるペプチドを発現および分泌する操作されたT細胞は、T細胞レセプターと抗原との結合(engagement)の部位においてPD-1阻害を果たすために使用され得る。そのT細胞ベースの治療は、例えば、その開示されるペプチドのうちの1またはこれより多くを発現するCAR-T細胞であり得る。誘導性または構成性のいずれかの発現が使用され得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、腫瘍溶解性ウイルスは、上記開示されるペプチドのうちの1またはこれより多くを送達するために使用され得る。誘導性または構成性のいずれかの発現が使用され得る。
【0046】
他の実施形態において、上記開示されるペプチドのうちの1またはこれより多くは、そのペプチド(複数可)をコードする1またはこれより多くの核酸(例えば、DNA、cDNA、PNA、RNAまたはこれらの組み合わせ)を使用して送達される;例えば、US 2017/0165335を参照のこと。1またはこれより多くのペプチドをコードする核酸は、当該分野で公知の種々の送達システムを使用して送達され得る。核酸送達システムとしては、遺伝子銃;カチオン性脂質およびカチオン性ポリマー;リポソーム、微粒子、またはマイクロカプセル中の被包;エレクトロポレーション;ウイルスベースのおよび細菌ベースの送達システムが挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスベースのシステムとしては、改変されたウイルス、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、または1もしくはこれより多くのウイルスのエレメントを含むハイブリッドウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。US 2002/0111323は、ペプチドを投与するために、「裸のDNA」、すなわち、「トランスフェクション促進タンパク質、ウイルス粒子、リポソーム製剤、荷電した脂質およびリン酸カルシウム沈殿剤」を含まない「非感染性、非免疫原性、非組み込みDNA配列」の使用を記載する。細菌ベースの送達システムは、例えば、Van Dessel et al.(2015)およびYang et al.(2007)で開示される。
【0047】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、そのペプチドをコードするRNA分子を介して投与される。いくつかの実施形態において、そのRNA分子は、ナノ粒子中に被包される。いくつかの実施形態において、そのナノ粒子は、カチオン性ポリマー(例えば、ポリ-L-リジン、ポリアミドアミン、ポリエチレンイミン、キトサン、ポリ(β-アミノエステル)を含む。いくつかの実施形態において、そのナノ粒子は、カチオン性脂質またはイオン化可能な脂質を含む。いくつかの実施形態において、そのRNA分子は、生体活性リガンド(例えば、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、コレステロール、ビタミンE、抗体、細胞透過性ペプチド)に結合体化される。例えば、Akinc et al.(2008)、Akinc et al.(2009)、Anderson et al.(2003)、Behr(1997)、Boussif et al.(1995)、Chen et al.(2012)、Dahlman et al.(2014)、Desigaux et al.(2007)、Dong et al.(2014)、Dosta et al.(2015)、Fenton et al.(2016)、Guo et al.(2012)、Howard et al.(2006)、Kaczmarek et al.(2016)、Kanasty et al.(2013)、Kauffman et al.(2015)、Kozielski et al.(2013)、Leus et al.(2014)、Lorenz et al.(2004)、Love et al.(2010)、Lynn & Langer(2000)、Moschos et al.(2007)、Nair et al.(2014)、Nishina et al.(2008)、Pack et al.(2005)、Rehman et al.(2013)、Schroeder et al.(2010)、Tsutsumi et al.(2007)、Tzeng et al.(2012)、Won et al.(2009)、Xia et al.(2009)、Yu et al.(2016)を参照のこと。
【0048】
いくつかの実施形態において、RNA分子は、免疫系によるその分解の機会または認識を低減するために改変され得る。リボース糖、リン酸結合、および/または個々の塩基は、改変され得る。例えば、Behlke(2008)、Bramsen(2009)、Chiu(2003)、Judge & MacLachlan(2008)、Kauffman(2016)、Li(2016)、Morrissey(2005)、Prakash(2005)、Pratt & MacRae(2009)、Sahin(2014)、Soutschek(2004)、Wittrup & Lieberman(2015)を参照のこと。いくつかの実施形態において、その改変は、リボ-ジフルオロトルイルヌクレオチド、4’-チオ改変RNA、ボラノリン酸結合、ホスホロチオエート結合、2’-O-メチル(2’-OMe)糖置換、2’-フルオロ(2’-F)、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)糖置換、ロックド核酸(LNA)、およびL-RNAのうちの1またはこれより多くである。
【0049】
いくつかの実施形態において、投与は、1またはこれより多くの他の治療とともに行われる。「とともに(in conjunction with)」は、その1またはこれより多くの他の治療の投与と一緒の、その投与の前の、またはその投与の後の、投与を含む。
【0050】
薬学的組成物、投与経路、およびデバイス
1またはこれより多くのペプチド、改変されたペプチド、核酸分子、CAR-T細胞、および/または腫瘍溶解性ウイルス(上記で考察されるとおり)は、代表的には、薬学的に受容可能なビヒクルを含む薬学的組成物において投与される。「薬学的に受容可能なビヒクル」は、そのペプチドまたはその改変されたバージョンの生物学的活性に影響を及ぼさず、患者に投与される場合、有害反応を引き起こさない1またはこれより多くの物質を含み得る。薬学的組成物は、液体であってもよいし、凍結乾燥されていてもよい。凍結乾燥された組成物は、適切な液体(代表的には、その組成物を再構成するにあたって使用するための注射用水(WFI))とともにキットの中に提供され得る。薬学的組成物の他の適切な形態としては、懸濁剤、エマルジョン、および錠剤が挙げられる。
【0051】
薬学的組成物は、任意の適切な経路によって投与され得る(静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、硬膜外、腫瘍内、経皮(例えば、US 2017/0281672)、粘膜(例えば、鼻内または口腔)、肺、および局所(例えば、US 2017/0274010)の経路が挙げられるが、これらに限定されない)。例えば、US 2017/0101474を参照のこと。
【0052】
投与は、全身性または局所であり得る。局所の注入および注射に加えて、埋込物(implant)が局所投与を達成するために使用され得る。適切な材料の例としては、シラスティック膜(sialastic membrane)、ポリマー、線維性マトリクス、およびコラーゲンマトリクスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
局所投与は、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、経皮パッチ(例えば、マイクロニードルパッチ)、または当該分野で周知の他の適切な形態によるものであり得る。
【0054】
投与はまた、制御放出によるもの、例えば、マイクロニードルパッチ、ポンプおよび/または適切なポリマー材料を使用するものであり得る。適切な材料の例としては、ポリ(メタクリル酸2-ヒドロキシエチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ酸無水物、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、およびポリオルトエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
上に記載されるペプチド、改変されたペプチド、核酸分子、CAR-T細胞、および/または腫瘍溶解性ウイルスのうちのいずれかを含むデバイスとしては、シリンジ、ポンプ、経皮パッチ、スプレーデバイス、膣リング、およびペッサリーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
過剰増殖性障害(がんを含む)の処置
いくつかの実施形態において、上に記載されるペプチド、改変されたペプチド、核酸分子、CAR-T細胞、および/または腫瘍溶解性ウイルスのうちの1またはこれより多くは、過剰増殖性障害(がんを含む)の進行を阻害するために患者に投与される。このような阻害としては、例えば、新生物または前新生物細胞の増殖を低減すること;新生物または前新生物細胞を破壊すること;および腫瘍の転移を阻害することまたは腫瘍のサイズを減少させることが挙げられ得る。
【0057】
がんの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:黒色腫(皮膚または眼内の悪性黒色腫を含む)、腎臓がん、前立腺がん、乳がん、結腸がん、肺がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頚部のがん、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、卵管の癌、子宮内膜の癌、子宮頸部の癌、膣の癌、外陰部の癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、慢性もしくは急性の白血病(急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、リンパ球性リンパ腫が挙げられる)、膀胱のがん、腎臓もしくは尿管のがん、腎盂の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸の腫瘍(spinal axis tumor)、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、およびT細胞リンパ腫。
【0058】
がん併用療法
いくつかの実施形態において、上に記載されるペプチド、改変されたペプチド、核酸分子、CAR-T細胞、および/または腫瘍溶解性ウイルスのうちの1またはこれより多くは、1またはこれより多くの他のがん治療または免疫療法(例えば、以下で記載されるもの)とともに投与される。
【0059】
いくつかの実施形態において、その第2の治療は、PD-1の活性を低減または遮断するか(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、デュルバルマブ)またはCTLA-4の活性を低減または遮断する(例えば、イピリムマブ、トレメリムマブ)第2の薬剤を含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、その第2の治療は、PD-L1の活性を低減または遮断する薬剤(例えば、アテゾリズマブ)を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、その第2の治療は、他の阻害性チェックポイント分子および/または免疫系を抑制する分子の活性を低減または遮断する薬剤を含む。これらの分子としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
1.リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3;He et al., 2016; Triebel et al., 1990を参照のこと);
2.T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリン抑制因子(V-domain Immunoglobulin Suppressor of T cell Activation)(VISTA(c10orf54、PD-1H、DD1α、Gi24、Dies1、およびSISP1としても公知);US 2017/0334990、US 2017/0112929、Gao et al., 2017、Wang et al., 2011;Liu et al, 2015を参照のこと);
3.T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3(T-cell Immunoglobulin domain and Mucin domain 3)(TIM-3;US 2017/0198041、US 2017/0029485、US 2014/0348842、Sakuishi et al, 2010を参照のこと);
4.キラー免疫グロブリン様レセプター(KIR;US 2015/0290316を参照のこと);
5.インドールアミン(2,3)-ジオキシゲナーゼを阻害する薬剤(IDO;Mellemgaard et al, 2017を参照のこと);
6.BおよびTリンパ球アテニュエーター(B and T Lymphocyte Attenuator)(BTLA;US 2016/09222114を参照のこと);ならびに
7.A2Aアデノシンレセプター(A2AR;Beavis et al, 2015;US 2013/0267515;US 2017/0166878;Leone et al, 2015;Mediavilla-Varela et al, 2017;Young et al, 2016を参照のこと)。
【0062】
LAG-3の活性を低減または遮断する薬剤としては、BMS-986016、IMP321、およびGSK2831781(He et al, 2016)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
VISTAの活性を低減または遮断する薬剤としては、低分子(例えば、CA-170)および抗体(例えば、Le Mercier et al, 2014)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
TIΜ-3の活性を低減または遮断する薬剤としては、抗体(例えば、MBG453およびTSR-022;Dempke et al, 2017を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
KIRの活性を低減または遮断する薬剤としては、モノクローナル抗体(例えば、IPH2101およびリリルマブ(BMS-986015、以前のIPH2102);Benson & Caligiuri, 2014を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
IDOの活性を低減または遮断する薬剤としては、エパカドスタットおよびUS 2017/0037125に開示される薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
BTLAの活性を低減または遮断する薬剤としては、ペプチド(例えば、Spodzieja et al., 2017)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
A2ARの活性を低減または遮断する薬剤としては、低分子(例えば、CPI-444およびビパデナント)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
いくつかの実施形態において、その第2の治療は、サイトカイン(例えば、インターロイキン7)を含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、その第2の治療は、刺激性チェックポイント分子のアゴニストを含む。これらの分子としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
1.CD40;
2.OX40;
3.グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子関連タンパク質(GITR);および
4.誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)。
【0071】
CD40のアゴニストとしては、CD40アゴニストモノクローナル抗体(例えば、cp-870,893、ChiLob7/4、ダセツズマブ、およびルカツムマブ)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Vonderheide et al., 2007; Khubchandani et al., 2009;Johnson et al., 2010;Bensinger et al., 2012;Vonderheide and Glennie, 2013;Johnson et al., 2015を参照のこと。
【0072】
OX40のアゴニストとしては、OX40アゴニスト抗体(例えば、MOXR0916、MED16469、MED10562、PF-045618600、GSK3174998、およびINCCAGN01949)、およびOX40L-Fc融合タンパク質(例えば、MEDI6383)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Huseni et al., 2014;Linch et al., 2015;Messenheimer et al., 2017を参照のこと。Shrimali et al., 2017もまた参照のこと。
【0073】
GITRのアゴニストとしては、MEDI1873が挙げられるが、これに限定されない。例えば、Schaer et al., 2012;Tigue et al., 2017を参照のこと。
【0074】
ICOSのアゴニストとしては、ICOSアゴニスト抗体JTX-2011およびGSK3359609が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Harvey et al, 2015;Michaelson et al., 2016を参照のこと。
【0075】
他の実施形態において、その第2の治療は、4-1BBアゴニスト(Shindo et al., 2015)(例えば、ウレルマブ);4-1BBアンタゴニスト(US 2017/0174773を参照のこと);未分化リンパ腫キナーゼのインヒビター(ALK; Wang et al., 2014; US 2017/0274074)(例えば、クリゾチニブ、セリチニブ、アレクチニブ、PF-06463922、NVP-TAE684、AP26113、TSR-011、X-396、CEP-37440、RXDX-101);ヒストンデアセチラーゼのインヒビター(HDAC;US 2017/0327582を参照のこと);VEGFRインヒビター(例えば、アキシチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、チボザニブ、ベバシズマブ);および/または抗CD27抗体(例えば、バルリルマブ)を含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、その第2の治療は、がんワクチン(例えば、Duraiswamy et al., 2013)を含む。「がんワクチン」は、そのがんワクチンが投与される個体において、特定の抗原に対して免疫応答を引き出すことが意図された免疫原性組成物である。がんワクチンは代表的には、腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導または刺激し得る腫瘍抗原を含む。「腫瘍抗原」とは、標的腫瘍の表面上に存在する抗原である。腫瘍抗原は、非腫瘍細胞によって発現されていない分子であってもよいし、例えば、非腫瘍細胞によって発現される分子の変化したバージョン(altered version)(例えば、誤って折りたたまれたか、短縮化されたか、または他の方法で変異したタンパク質)であってもよい。
【0077】
いくつかの実施形態において、その第2の治療は、キメラ抗原レセプター(CAR)T細胞療法を含む。例えば、John et al, 2013;Chong et al, 2016を参照のこと。
【0078】
いくつかの実施形態において、上に記載されるペプチド、改変されたペプチド、核酸分子、CAR-T細胞、および/または腫瘍溶解性ウイルスのうちの1またはこれより多くは、CAR-T細胞がん治療の有効性を増加させるために、そのCAR-T細胞がん治療とともに投与される。
【0079】
いくつかの実施形態において、上に記載されるペプチド、改変されたペプチド、核酸分子、CAR-T細胞、および/または腫瘍溶解性ウイルスのうちの1またはこれより多くは、例えば、US 2017/0143780で開示されるとおりの腫瘍溶解性ウイルスとともに投与される。腫瘍溶解性ウイルスの非限定的な例は、上に記載される。
【0080】
さらなる治療的使用
いくつかの実施形態において、上に記載されるペプチド、改変されたペプチド、核酸分子、CAR-T細胞、および/または腫瘍溶解性ウイルスのうちの1またはこれより多くは、感染性疾患(例えば、ウイルス、真菌、細菌、および原生動物、ならびに蠕虫によって引き起こされる慢性感染症を含む)を処置するために患者に投与される。
【0081】
ウイルス因子の例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)(HSV1およびHSV2を含む)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、およびC型肝炎ウイルスが挙げられる。
【0082】
真菌因子の例としては、Aspergillus、Candida、Coccidioides、Cryptococcus、およびHistoplasma capsulatumが挙げられる。
【0083】
細菌因子の例としては、連鎖球菌(例えば、pyogenes、agalactiae、pneumoniae)、Chlamydia pneumoniae、Listeria monocytogenes、およびMycobacterium tuberculosisが挙げられる。
【0084】
原生動物の例としては、Sarcodina(例えば、Entamoeba)、Mastigophora(例えば、Giardia)、Ciliophora(例えば、Balantidium)、およびSporozoa(例えば、Plasmodium falciparum、Cryptosporidium)が挙げられる。
【0085】
蠕虫の例としては、Platyhelminths(例えば、吸虫、条虫)、Acanthocephalins、およびNematodesが挙げられる。
【0086】
いくつかの実施形態において、上に記載されるペプチド、改変されたペプチド、核酸分子、CAR-T細胞、および/または腫瘍溶解性ウイルスのうちの1またはこれより多くは、ワクチン接種への応答を(例えば、エフェクターT細胞を増やすおよび/またはT細胞疲弊を低減することによって)増強するために、ワクチンアジュバントとして投与される。そのワクチンは、例えば、RNAワクチン(例えば、US 2016/0130345、US 2017/0182150)、DNAワクチン、組換えベクター、タンパク質ワクチン、またはペプチドワクチンであり得る。このようなワクチンは、当該分野で周知であるように、例えば、ウイルス様粒子を使用して送達され得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、上に記載されるペプチド、改変されたペプチド、核酸分子、CAR-T細胞、および/または腫瘍溶解性ウイルスのうちの1またはこれより多くは、敗血症を処置するために投与される。
【0088】
いくつかの実施形態において、上に記載されるペプチド、改変されたペプチド、核酸分子、CAR-T細胞、および/または腫瘍溶解性ウイルスのうちの1またはこれより多くは、毛色の再着色を促進するために投与される。いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるペプチド、改変されたペプチド、核酸分子、CAR-T細胞、および/または腫瘍溶解性ウイルスのうちの1またはこれより多くは、色素沈着した皮膚病変の美白を促進するために投与される。
【実施例
【0089】
実施例1. ペプチドLD01は、ヒトおよびマウスのPD-1に結合する
BIACORE(登録商標)アッセイを、BIACORE(登録商標) T-200を使用して25℃で行った。そのアッセイおよび再生緩衝液は、10mM HEPES(pH7.4)、150mM NaCl、3mM EDTA、および0.05% P20を含んだ。固定化緩衝液は、10mM 酢酸ナトリウム(pH5.0)であった。リガンドを固定するために使用した流速は、5μl/分であった。反応速度論分析のための流速は、30μl/分であった。
【0090】
スカウティング。 ペプチドLD01の4400 RUを、アミンカップリング法(EDC/NHS)によって、CM5チップのフローセル2上に直接固定した。占有されなかった部位を、1M エタノールアミンでブロッキングした。スカウティングを単一分析物濃度290nMで行って、結合のあり/なしを確認した。フローセル1をブランクのまま維持し、参照差し引きのために使用した。リガンドへの分析物の結合を、リアルタイムでモニターした。
【0091】
完全な反応速度論. そのスカウティングの結果に基づいて、完全な反応速度論(full kinetics)を、分析物濃度100nMにおいて、続いて、50nM、25nM、12.5nM、6.25nM、3.125nM、1.562nMおよび0nMの濃度への段階希釈において、または示されるとおりに行った。Kを、その観察されたkon(オンレート)およびkoff(オフレート)から、または迅速なオフレートとの相互作用に関する定常状態平衡反応速度論によって決定した。
【0092】
カイ2乗(χ)分析を、実際のセンサーグラムとBIAnalysisソフトウェアから生成されたセンサーグラムとの間で行って、その分析の精度を決定した。1~2以内のχ値は、有意(正確)と見做し、1未満を高度に有意(高度に正確)と見做す。
【0093】
単一濃度結合データを、ヒトおよびマウスのPD1に関して、それぞれ、図1および図2に示す。マウスPD-1への結合に関する反応速度論データを、図3に示す。これらのデータは、ペプチドLD01がヒトおよびマウス両方のPD-1に結合し、以下の実施例におけるマウスモデルの使用を支持することを示す。
【0094】
実施例2. ペプチドLD01は、Jurkat細胞の表面上で発現されたヒトPD-1へのヒトPD-L1-Fc融合タンパク質の結合を増強する
表面上でヒトPD-1を安定して発現するヒトT細胞株(Jurkat)を、Promegaから購入した。この細胞株を、無菌技術を使用して培養し、対数増殖期において維持した。PD-1タンパク質発現レベルを、品質評価のためにアロフィコシアニン(APC)で標識した抗ヒトPD-1を使用して測定した。
【0095】
実験のために、200μLの2.5×10 細胞を、染色緩衝液中でマイクロタイタープレートへとプレーティングした。これらの細胞を、染色緩衝液中の種々の濃度のペプチドLD01とともに1時間インキュベートし、洗浄し、次いで、PD-L1-Fc融合タンパク質とともに1時間インキュベートした。さらなる洗浄工程の後に、その細胞を、AF647で標識した抗ヒトFcとともに30分間インキュベートした。数回洗浄した後、PD-1へのPD-L1-Fc結合に起因する平均蛍光強度を、フローサイトメトリーによって測定した。
【0096】
その結果を、図4A~Cに示す。これらの結果は、ペプチドLD01が、ヒトPD-1発現Jurkat細胞へのヒトPD-L1-Fc融合タンパク質の結合を増強し、用量応答傾向が増加することを示す。
【0097】
実施例3. ペプチドLD01は、無細胞アッセイにおいてPD-1へのPD-L1 Fcの結合を増強する
マイクロタイタープレートを、ペプチドLD01で4℃において一晩コーティングした。そのプレートを洗浄し、1% BSAで1時間、室温においてブロッキングした。次いで、そのプレートを、100μLの1μg/mL PD-1とともに室温において1時間インキュベートした。そのプレートを再び洗浄し、PD-L1とともに室温において1時間インキュベートした。もう一度洗浄した後に、そのプレートを、抗ヒトIgG-HRPとともにインキュベートした。1時間インキュベートし、洗浄した後、そのHRPを、TMB基質とともにインキュベートすることによって検出し、そのODをマイクロプレートリーダーで読み取った。
【0098】
その結果を図5に示す。これらの結果は、ペプチドLD01が、無細胞アッセイにおいてヒトPD-1へのヒトPD-L1-Fc融合タンパク質の結合を増強することを確認する。
【0099】
実施例4. マウス脾細胞増殖に対するペプチドLD01の効果
PD-L1-Fc融合タンパク質は、抗CD3誘導性脾細胞増殖を低減すると仮定する。PD-L1-Fc媒介性増殖に対するペプチドLD01の効果を決定するために、実験を行った。
【0100】
カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)標識マウス脾細胞(400,000 細胞、5μM CFSE)を、1μg/mL 抗CD3抗体および種々のレベルのPD-L1-Fcまたは無関係のコントロールFcを使用して刺激した。PD-1に対するペプチドLD01の効果をモニターするために、種々の濃度のペプチドLD01(1μM、5μM、および25μM)を、その脾細胞の増殖に対するそれらの効果に関して試験した。CFSE希釈プロフィールを、3日間の処理の後にフローサイトメトリーによって分析した。
【0101】
細胞数および抗CD3抗体濃度の滴定結果を図6に示し、ペプチドLD01データを図7に示す。これらの結果は、ペプチドLD01が、抗CD3刺激したマウス脾細胞の増殖を、外因的に添加したPD-L1-Fcの存在下および非存在下で増強することを示す。
【0102】
実施例5. マウス黒色腫モデルにおけるペプチドLD01の効果
ペプチドLD01のインビボでの機能性を評価するために、抗転移活性を、免疫適格C57/BL6マウスにおいてB16-F-10マウス黒色腫の同系モデルにおいて評価した。簡潔には、ATCCから得たマウスB16-F10-LacZ細胞を、10% FBSを補充したRPMI-1640培地中で培養した。一旦コンフルエントになった後、細胞を集め、200μlのPBS中の2×10 細胞を、尾静脈を介して各マウスに静脈内注射した。細胞を送達した後、動物を、研究コホートへと無作為に割り当てた(各群において5匹のマウス)。試験サンプル、処置経路および処置日数を、表1Aに詳述する。ペプチドのインビボ半減期は、抗体(数週間)と比較して比較的短い(数時間)であることから、ペプチドを静脈内送達し、より頻繁に与えた。
【表1A】
【0103】
この研究において使用した陰性コントロールペプチドは、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)ペプチド(MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK、配列番号33)であった。200μgのペプチドまたは抗体を、処置日ごとに投与した。細胞注射後14日目に、そのマウスを安楽死させ、肺を除去し、Feketeの溶液中で固定した。その腫瘍結節を計数した。
【0104】
個々のマウスの腫瘍結節の数を図8に示す一方で、処置なし(コホート1)と比較した各コホートにおける腫瘍結節のパーセンテージ低減を図9に示す。処置なし(コホート1)とペプチドLD01(コホート3)または抗PD-1抗体(コホート6)との間の有意差を、対応のないt検定を使用して検出し、図8においてp<0.05によって示した。処置なし(コホート1)およびペプチドLD01(コホート4)の顕微鏡による肺画像の例を図10に示す。これらの結果は、ペプチドLD01(コホート3および4)が、インビボで機能的に活性であり、処置なし(コホート1)と比較して肺転移を約50%低減することを示す。さらに、ペプチドLD01(コホート3および4)の有効性は、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体での処置(コホート5および6)に類似であるかまたはわずかに上回った。
【0105】
ペプチドLD01、LD10da、およびLD16daを、上記のように試験し、このとき、ペプチドLD12(コホート2)を陰性コントロールとして使用した。試験サンプル、処置経路、および処置日数を、表1Bに詳述する。
【表1B】
【0106】
個々のマウスの腫瘍結節の数を図11に示す。処置なし食塩水(コホート1)とLD01(コホート3)、LD16da(コホート5)またはα-PD-1 mAb(コホート6)との間の有意差を、図11において一元配置ANOVA検定を使用して検出した(p<0.05)。これらの結果は、LD01(コホート3)およびLD16da(コホート5)が、インビボで機能的に活性であり、処置なし食塩水(コホート1)と比較して約30%肺転移を低減することを示す。
【0107】
実施例6. マラリアワクチンの免疫原性に対するペプチドLD01の効果
マラリアワクチンの免疫原性に対するペプチドLD01の効果を、免疫適格Balb/cマウスにおいて評価した。Balb/cマウスを、Plasmodium yoelliスポロゾイト周囲タンパク質(AdPyCSP)を発現する組換え複製欠損アデノウイルスの1010 ウイルス粒子で筋肉内に免疫した。試験サンプル、マウス数、処置経路、および処置日数を表2Aに示す。
【表2A】
【0108】
この研究において使用した陰性コントロールペプチドは、オボアルブミン(OVA)ペプチド(SIINFEKL、配列番号34)であった。免疫後12日目に、マウスを安楽死させ、個々の脾臓を除去し、脾CSP特異的、IFNγ分泌CD8 T細胞の数を、ELISPOTアッセイによって決定した。ELISPOTアッセイのために、脾細胞を、ペプチドSYVPSAEQI(配列番号35)、PyCSPのH-2Kd拘束CD8 T細胞エピトープで刺激した。
【0109】
各コホートに関して0.5×10 脾細胞あたりのCSP特異的、IFNγ分泌CD8 T細胞の平均数±標準偏差を、図12に示す。AdPyCSP単独(コホート1)とペプチドLD01(コホート3)、抗PD-1抗体(コホート4)または抗PD-L1抗体(コホート5)との間の有意差を、一元配置ANOVA検定を使用して検出した(****p<0.0005、***p<0.001、およびp<0.05)。これらの結果は、ペプチドLD01(コホート3)が、インビボで機能的に活性であり、CSP特異的、IFNγ分泌CD8 T細胞の数をAdPyCSP単独(コホート1)と比較して約2倍増加させることをさらに示す。さらに、ペプチドLD01(コホート3)の免疫原性は、抗PD-1または抗PD-L1抗体(コホート4および5)での処置をわずかに上回った。
【0110】
ペプチドLD01、LD10da、およびLD16daを、上に記載されるように試験し、このとき、陰性コントロールとしてペプチドLD12(コホート2)を使用した。試験サンプル、処置経路および処置日数を、表2Bに詳述する。
【表2B】
【0111】
免疫後12日目に、マウスを安楽死させ、個々の脾臓を除去し、脾臓CSP特異的、IFNγ分泌CD8 T細胞の数を、ELISPOTアッセイによって決定した。そのELISPOTアッセイのために、脾細胞を、ペプチドSYVPSAEQI(配列番号35)、PyCSPのH-2Kd拘束CD8 T細胞エピトープで刺激した。
【0112】
各コホートの5×10 脾細胞あたりのCSP特異的、IFNγ分泌CD8 T細胞の平均数±標準偏差を、図13に示す。AdPyCSP単独と比較した有意差を、一元配置ANOVA検定を使用して検出した(****p<0.0001、**p<0.005)。これらの結果は、LD01(コホート3)およびLD10da(コホート4)が、インビボで機能的に活性であり、CSP特異的、IFNγ分泌CD8 T細胞の数を、AdPyCSP単独(コホート1)と比較して、それぞれ、約1.5~2.5倍増加させることをさらに示す。さらに、LD10da(コホート4)の免疫原性は、α-PD-1 mAb(コホート6)での処置をわずかに上回った。
【0113】
実施例7. マウス敗血症モデルにおけるペプチドLD01の効果
ペプチドLD01の効果を、代表的な臨床上関連する敗血症モデル、すなわち、盲腸結紮および穿刺(CLP)によって誘発された腹部内の腹膜炎を有するCD1マウスにおいて研究した。
【0114】
CD1マウスに麻酔をかけ、腹部正中線切開を行い、盲腸を結紮し、穿刺し、次いで、その切開部を閉じた。200μgのペプチドLD01またはコントロールペプチド(配列番号2)を、手術後6時間、24時間、および48時間で腹腔内投与した。ペプチドLD01の投与は、生存の利益を与え、ペプチドLD01コホートは、コントロールペプチドの生存率の2倍を超える生存率を有した(それぞれ、70%(7/10) 対 30%(3/10))。
【0115】
別個の研究では、敗血症の間のT細胞によるIFNγ生成を増加させることに対するペプチドLD01の効果を評価した。CLP手術後、6時間、24時間、48時間、72時間および96時間に、マウスをペプチドLD01またはコントロールペプチドで処置した。24時間後、マウスを安楽死させ、個々の脾臓を除去し、脾臓IFNγ分泌T細胞の数を、ELISPOTアッセイによって決定した。ELISPOTアッセイのために、脾細胞を、抗CD3および抗CD28を介して刺激した。2×10 脾細胞あたりのIFNγ分泌T細胞の数を、図14に示す。ペプチドLD01処置は、コントロールペプチドと比較して、IFNγ分泌T細胞の数の増加を引き起こした。これは、T細胞によるIFNγ分泌の敗血症誘発性欠陥を逆転させることにおけるペプチドLD01の有用性を裏付ける。
【0116】
実施例8. PATHHUNTER(登録商標)チェックポイントシグナル伝達アッセイ
ペプチドを、PATHHUNTER(登録商標)チェックポイントシグナル伝達アッセイ(DiscoverX)を使用して、PD-1へのPD-L1の結合またはCTLA-4へのCD86の結合を阻害するそれらの能力に関して試験した。
【0117】
PATHHUNTER(登録商標) PD-1およびPD-L1ならびにCTLA4およびCD86細胞株を、標準的手順に従って冷凍ストックから拡大した。PD-1細胞を、ペプチドとともに予備インキュベートし、続いて、PD-L1細胞とともにインキュベートした。PD-1 Jurkat細胞(20,000 細胞/ウェル)を、総容積50μLにおいて、白色壁96ウェルマイクロプレートへとアッセイ緩衝液中で播種した。ペプチドストックの段階希釈を行って、アッセイ緩衝液中に11×サンプルを生成した。10μLの11×サンプルをPD-1細胞へと添加し、37℃において60分間インキュベートした。50μL U-2 OS PD-L1細胞(アッセイ緩衝液中30,000 細胞/ウェル)を添加し、その細胞を、室温において2時間共培養した。同様に、CTLA4細胞をペプチドとともに予備インキュベートし、続いて、CD86細胞とともにインキュベートした。CTLA4 Jurkat細胞(20,000 細胞/ウェル)を、総容積50μLにおいて、白色壁96ウェルマイクロプレートへとアッセイ緩衝液中で播種した。ペプチドストックの段階希釈を行って、アッセイ緩衝液中に11×サンプルを生成した。10μLの11×サンプルをCTLA4細胞へと添加し、37℃において60分間インキュベートした。50μL U-2 OS CD86細胞(アッセイ緩衝液中30,000 細胞/ウェル)を添加し、その細胞を、室温において4時間共培養した。
【0118】
化合物活性を、CBISデータ分析スイート(ChemInnovation, CA)を使用して分析した。その結果を、表3および表4に示す。アンタゴニストモードアッセイのために、阻害有効性のパーセンテージを、以下の式を使用して計算した(ここでRLUは、相対的発光単位を意味する):
【数1】
【0119】
その試験したペプチドは、表3および表4に示されるように、PD-1において、およびCTLA-4 PATHHUNTER(登録商標)アッセイにおいて、広い範囲の阻害有効性を示した。驚くべきことに、そのペプチドのうちの多くは、両方のアッセイにおいて高い有効性を示し、これは、PD-1およびCTLA-4に関してそれらの二重特異性を示した。
【表3】
【表4】
【0120】
実施例9. ヒトPBMCによるIFNγ分泌に対するLD01の効果
健康な個体に由来するヒトPBMCを、5ng/mlのぶどう球菌エンテロトキシンB(SEB) +/- LD01(100μM)で刺激した。72時間で、上清を集め、IFNγを、サイトメトリックビーズアレイによって測定した。その結果(図15に示す)は、LD01が、ヒトPBMCによるIFNγ分泌をSEB単独と比較して4倍増加させることを示す。
【0121】
参考文献
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【表5-6】
【表5-7】
【表5-8】
【表5-9】
【表5-10】
図1
図2
図3
図4AB
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
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