(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 15/00 20060101AFI20221205BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20221205BHJP
C08F 236/04 20060101ALI20221205BHJP
C08F 210/02 20060101ALI20221205BHJP
C08F 8/42 20060101ALI20221205BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K3/36
C08F236/04
C08F210/02
C08F8/42
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2019567700
(86)(22)【出願日】2018-06-06
(86)【国際出願番号】 FR2018051307
(87)【国際公開番号】W WO2018224776
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-28
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】テュイリエ ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】モレソ エマ
(72)【発明者】
【氏名】ラファキエール ヴィンセント
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-505697(JP,A)
【文献】国際公開第2009/051073(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/143755(WO,A1)
【文献】特開2013-144720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,C08F,B60C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の補強無機充填剤と、
1,3-ジエン単位およびエチレン単位を含み、鎖末端にシラノールまたはアルコキシシラン官能基である官能基F
1を有
し、エチレン単位が、エラストマーの全モノマー単位の50mol%超を占める、高飽和エラストマーとを含み、
前記少なくとも一種の補強無機充填剤がシリカであり、前記シリカの含有量が、30phrから200phrである、ゴム組成物。
【請求項2】
エラストマーが式(I)のUD単位を含有する、請求項1に記載の組成物。
【化1】
(I).
【請求項3】
エラストマーが、1,3-ブタジエンとエチレンとのコポリマー、または1,3-ブタジエンとエチレンとα-モノオレフィンとのターポリマーであり、好ましくは1,3-ブタジエンとエチレンとのコポリマーである、請求項1から2
のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項4】
官能基F
1が式(III-a)または(III-b)のものである、
Si(OR
1)
3-f(R
2)
f (III-a)
Si(OH)(R
2)
2 (III-b)
(式中、記号R
1は同一でありまたは異なり、アルキルを表し、
記号R
2は同一でありまたは異なり、水素原子、炭化水素鎖、または化学官能基F
2によって置換されている炭化水素鎖を表し、
fは0~2の範囲の整数である)
請求項1から3
のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
記号R
1が、最大6個の炭素原子を有するアルキルであり、記号R
2が、最大6個の炭素原子を有するアルキル、または最大6個の炭素原子を有し、化学官能基F
2によって置換されているアルカンジイル鎖を表す、請求項4記載のゴム組成物。
【請求項6】
記号R
1およびR
2によって表されるアルキルが、メチルまたはエチル、優先的にはメチルである、請求項4から5
のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
化学官能基F
2が、第一級、第二級もしくは第三級アミン官能基またはチオール官能基であり、前記第一級もしくは第二級アミンまたはチオール官能基が、保護基によって保護されている、または保護されていない、請求項4から6
のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
官能基F
1が
ジメチルシラノール、ジエチルシラノール、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルメチルシラノール、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルエチルシラノール、3-アミノプロピルメチルシラノール、3-アミノプロピルエチルシラノール、3-チオプロピルエチルシラノール、3-チオプロピルメチルシラノール
であるか、または
3-アミノプロピルメチルシラノール、3-アミノプロピルエチルシラノール、3-チオプロピルエチルシラノール、3-チオプロピルメチルシラノールのアミンもしくはチオール官能基
が保護された形態である、請求項1から7
のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか1項に記載のゴム組成物を含む、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にタイヤ製造のために用いることができるゴム組成物であって、少なくとも1種の補強無機充填剤と、エチレン単位が豊富であるため、官能性で高飽和のジエンエラストマーとを含む、ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは公知のように、低転がり抵抗、高耐摩耗性、高ドライグリップ、および高ウェットグリップを含む、対立することの多い多数の技術的要件を満たさなければならない。特性におけるこの折衷は、近年、特に乗用車を意図した省エネルギー型の「グリーンタイヤ」について、特に、補強力の観点から従来のタイヤグレードカーボンブラックに対抗することができる、主として高分散性シリカ(HDS)により補強されている特徴を有する新規低ヒステリシスゴム組成物を用いることにより、特に転がり抵抗および耐摩耗性の観点で改善することができている。
タイヤ用ゴム組成物は一般に、ポリブタジエン、ポリイソプレン、および1,3-ブタジエンまたはイソプレンとスチレンとのコポリマーなどの、ジエン単位が豊富なエラストマーを含む。これらの同じ組成物において、ジエン単位が豊富なこれらのエラストマーを、エチレン単位が豊富なジエンエラストマーに置き換えると、ゴム組成物のヒステリシスの減少と、その剛性の上昇との両方が伴い、これは転がり抵抗と摩耗との間の性能の折衷が改良されることを示す。例えば、国際公開第2014114607号の文献が参照されうる。国際公開第2016012259号の文献に記載されるように、これらのエチレン単位が豊富なジエンエラストマーはまた、ゴム組成物に、極限条件下の耐摩耗性能の改善をもたらす特性を有する。
【0003】
転がり抵抗性能をさらに改善するため、補強充填剤と相互作用する1つまたは複数の官能基を有するエラストマーを用いることが知られている。官能性エラストマーはアニオン重合によって調製することができ、官能化は開始反応または停止反応中に生じる。アニオン重合によって生成したポリマー鎖の末端の修飾は、ポリマー鎖のリビングな性質に基づき、リビングな性質は、重合反応中に移動反応および停止反応がないことを表す。リビング重合は、開始剤1モル当たり、または金属1つ当たりに1つのポリマー鎖が生成するという事実によっても特徴づけられる。不均一チーグラー-ナッタ触媒系を用いた触媒的重合によって合成されるポリマーについての、アルコキシシランまたはシラノール官能基によるポリマーの鎖末端の修飾は、なおのこと記載されない。例として、ネオジムカルボキシレートを含む触媒系を用いた配位触媒によって調製される、高含有率のcis-1,4-結合を有するポリブタジエンの官能化を記載している、国際公開第2001034658号の文献を挙げることができる。しかし、これらの合成経路は、エチレン単位が豊富なジエンエラストマーをもたらさない。
【0004】
メタロセンを含む触媒配位系による重合によって、エチレン豊富なジエンコポリマーを得ることが可能になる。しかし、この重合は、アニオン重合およびチーグラーナッタ触媒による重合とは異なる化学に基づいている。第1の違いは触媒系に関するものであり、例えば文献欧州特許第1092731号、国際公開第2004035639号、および欧州特許第1954706号の文献に記載されており、典型的にはメタロセン、および共触媒、オルガノマグネシウム化合物から構成される。第2の違いは関与する反応に関するものであり、これはメタロセンの金属と共触媒のマグネシウムとの間の数多くの移動反応を含み、また、メタロセン金属による多数のコポリマー鎖の生成を可能にする。第3の違いは生成するポリマー鎖に関するものであり、ジエン単位などの不飽和単位と、エチレン性飽和単位との両方を含む。別の違いは、修飾される鎖末端の化学構造に関するものであり、この構造は非常に特異的な重合機構から生じる。例えば、文献ACS Catalysis, 2016, Volume 6, Issue 2, pages 1028-1036が参照されうる。これらのコポリマーの合成に関与する種および反応の特異性のため、これらのコポリマーの鎖末端における修飾、次いでこれらのコポリマーを含有するシリカ補強ゴム組成物のヒステリシスの低減を可能にするプロセスは、今日に至るまで存在しない。
国際公開第2016012258号の文献において、エチレン単位が豊富なジエンエラストマーを、その合成後に、1,3-双極化合物をエラストマーのジエン単位にグラフト化する反応によって、結合性基で官能化することにより、修飾することが提案されている。修飾されたエラストマーは、ゴム組成物に、ヒステリシスの低減をもたらす。しかし、組成物の剛性は修飾する前と同様に高いままであり、これによって、タイヤ用の半完成物品における使用には不適となりうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、剛性を低減させながら、エチレン単位が豊富なジエンエラストマーを含む低ヒステリシスゴム組成物を提案することである。この目的は、剛性とヒステリシスとの間のこのような折衷は、エチレン単位が豊富なジエンエラストマーの鎖末端を、シラノールまたはアルコキシシラン官能基によって修飾することにより得られることを、本発明者が発見したことによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の第1の主題は、少なくとも1種の補強無機充填剤と、1,3-ジエン単位およびエチレン単位を含み、鎖末端にシラノールまたはアルコキシシラン官能基を有する、高飽和エラストマーとを含み、エチレン単位が、エラストマーの全モノマー単位の50mol%超を占める、ゴム組成物である。
本発明の別の主題は、本発明によるゴム組成物を含む半完成物品である。
本発明のさらなる主題は、本発明によるゴム組成物、または本発明による半完成物品を含む、タイヤである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
I.本発明の詳細な説明
「aからbの間」という表現によって表記される値同士の間隔はいずれも、「a」を超え、かつ「b」より小さい値の範囲を表し(すなわち、境界値aおよびbは除外される)、一方、「a~b」という表現によって表記される値同士の間隔はいずれも、「a」から「b」までにわたる値の範囲を意味する(すなわち、厳密な境界値aおよびbを含む)。略語「phr」は、100部のエラストマー(複数のエラストマーが存在する場合、エラストマーの合計)当たりの質量部を意味する。
本明細書で言及される化合物は、化石またはバイオベースの起源であってもよい。後者の場合、これらは、部分的にまたは完全に、バイオマスから生じたものでもよく、またはバイオマスから生じる再生可能な出発材料から得られるものでもよい。エラストマー、可塑剤、充填剤などが、特に関係している。
【0008】
本出願では、「エラストマーの全モノマー単位」は、重合によってモノマーをエラストマー鎖に挿入することから生じる、エラストマーの全構成繰返し単位を意味するものと理解されたい。
本発明の要件に有用なエラストマーは、エチレンの重合から生じる、エチレン単位を含むエラストマーである。公知のように、「エチレン単位」という表現は、エチレンをエラストマー鎖に挿入することから生じる-(CH2-CH2)-単位を指す。エチレン単位が豊富なエラストマーは、エチレン単位が、エラストマーの全モノマー単位の50mol%超を占めるため、高飽和エラストマーとして記載される。好ましくは、これらは、エラストマーの全モノマー単位の60mol%超を占める。より優先的には、エラストマー中のエチレン単位の含有率は、エラストマーの全モノマー単位の少なくとも65mol%である。
本発明の要件に有用なエラストマーは、1,3-ジエンの重合から生じる、1,3-ジエン単位も含む。公知のように、「1,3-ジエン単位」という表現は、イソプレンの場合、1,4-挿入、2,1-挿入、または3,4-挿入によって、1,3-ジエンを挿入することから生じる単位を指す。1,3-ジエン単位は、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、またはアリール-1,3-ブタジエンなどの、4~12個の炭素原子を有する1,3-ジエンのものである。好ましくは、1,3-ジエンは1,3-ブタジエンである。
本発明の第1の態様によれば、エラストマーは、式(I)のUD単位を含有し、式(II)のUE単位を含有しうる。
【0009】
【0010】
好ましくは、エラストマーは、以下に示すモル百分率に従って、ランダムに分布した以下のUA、UB、UC、UD、およびUE単位を含有し、
UA) m%のモル百分率の-CH2-CH2-
UB) n%のモル百分率の-CH2-CH=CH-CH2-
UC) o%のモル百分率の-CH2-CH(CH=CH2)-
UD) p%のモル百分率の
【0011】
【0012】
【化3】
m、n、o、p、およびqは0~100の範囲の数値であり、
m>50
n+o>0
p>0
q≧0であり、
m、n、o、p、およびqのそれぞれのモル百分率は、m+n+o+p+qの合計を基準として算出され、合計は100に等しい。
より優先的には、
0<o+p≦25
o+p+q≧5
n+o>0
q≧0であり、
m、n、o、p、およびqのそれぞれのモル百分率は、m+n+o+p+qの合計を基準として算出され、合計は100に等しい。
【0013】
さらにより優先的には、エラストマーは、以下の基準の少なくとも1つ、優先的にはこれらのすべてを有する:
m≧65
n+o+p+q≧15、好ましくはn+o+p+q≧20
12≧p+q≧2
1≧n/(o+p+q)
qが0でないとき、20≧p/q≧1である。
有利には、qは0に等しい。
【0014】
本発明の第2の実施形態によれば、エラストマーは、エラストマーの1,3-ジエン単位の80mol%超のtrans-1,4-単位を含有する。言い換えれば、実施形態によれば、エラストマーの1,3-ジエン単位は、trans-1,4-単位の80mol%超を含有する。周知のように、trans-1,4-単位は、トランス配置を有する1,4-単位である。
【0015】
第2の実施形態によれば、エラストマーは式(I)のUD単位を含んでよく、UD単位は好ましくは、エラストマーの全モノマー単位の1mol%未満を占める。
第2の実施形態の変形形態によれば、エラストマーは、エラストマー中にランダムに分布したα-モノオレフィン単位を含む。この変形形態によれば、エラストマーは、優先的には、1,3-ブタジエンとエチレンとα-モノオレフィンとのターポリマーである。アルファ-オレフィン(α-オレフィン)は末端オレフィンを意味し、すなわち、式-CH=CH2のビニル基を含有するものと理解されたい。モノオレフィンは、芳香族基のベンゼン環のものは別として、単一の炭素-炭素二重結合を含有するモノマーを意味するものと理解されたい。α-モノオレフィンは脂肪族であってよく、これに関して、プロペン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘキサデセン、またはこれらの混合物などの、3~18個の炭素原子を有する脂肪族α-モノオレフィンを挙げることができる。α-モノオレフィンはまた、芳香族α-モノオレフィンであってもよい。典型的には、芳香族α-モノオレフィンは、式CH2=CH-Arのものであり、式中、記号Arは芳香族基を表す。芳香族基は、置換されている、または非置換のフェニルであってもよい。芳香族α-モノオレフィンとして好適なのは、スチレン、パラ、メタもしくはオルト位が、1つもしくは複数のアルキル基によって置換されているスチレン、またはこれらの混合物である。
【0016】
本発明の要件に有用なエラストマーは、非常に優先的には、エチレンと1,3-ブタジエンとのコポリマーである。
変形形態を含めて、本発明のどのような実施形態であっても、本発明の要件に有用なエラストマーは、優先的にはランダムである。
本発明によれば、シラノールまたはアルコキシシラン官能基は、エラストマーの鎖の末端に位置する。本出願において、末端の一方が有するアルコキシシランまたはシラノール官能基は、本出願において、官能性基F1の名称で呼ばれる。好ましくは、官能性基F1は、共有結合によってエラストマーの末端単位に直接付着しており、これは、官能基のケイ素原子が共有結合的に、エラストマーの末端単位の炭素原子に、直接結合していることを意味する。官能性基F1が直接付着している末端単位は、好ましくは、エチレン単位にまたはUD単位に結合したメチレンからなり、Si原子がメチレンに結合している。末端単位は、共重合によってコポリマー鎖に挿入された最後の単位を意味し、この単位には末端から2番目の単位が先行し、末端から2番目の単位自身には3番目の単位が先行するものとして理解されたい。
【0017】
本発明の第1の変形形態によれば、官能性基F1は式(III-a)のものであり、
Si(OR1)3-f(R2)f (III-a)
記号R1は同一でありまたは異なり、アルキルを表し、
記号R2は同一でありまたは異なり、水素原子、炭化水素鎖、または化学官能基F2によって置換されている炭化水素鎖を表し、
fは0~2の範囲の整数である。
式(III-a)において、記号R1が、優先的には最大6個の炭素原子を有するアルキル、より優先的にはメチルまたはエチル、さらにより優先的にはメチルである。3-fが1を超える場合、記号R1は有利には同一であり、特にメチルまたはエチルであり、より詳細にはメチルである。
【0018】
本発明の第2の変形形態によれば、官能性基F1が式(III-b)のものであり、
Si(OH)(R2)2 (III-b)
記号R2は同一でありまたは異なり、水素原子、炭化水素鎖、または化学官能基F2によって置換されている炭化水素鎖を表す。
式(III-a)および(III-b)において記号R2によって表される炭化水素鎖の中でも、アルキル、特に1~6個の炭素原子を有するもの、優先的にはメチルまたはエチル、より優先的にはメチルを挙げることができる。
式(III-a)および(III-b)において記号R2によって表される化学官能基F2によって置換されている炭化水素鎖の中でも、アルカンジイル鎖、特に最大6個の炭素原子を含むもの、非常に詳細には1,3-プロパンジイル基を挙げることができるが、アルカンジイル鎖は置換基、化学官能基F2を有し、言い換えれば、アルカンジイル鎖の一方の原子価は官能基F2のため、他方の原子価はシラノールまたはアルコキシシラン官能基のケイ素原子のためである。
【0019】
式(III-a)および(III-b)において、化学官能基F2は、飽和炭化水素とは異なる基であり、化学反応に関与しうる基を意味するものと理解されたい。好適でありうる化学官能基の中でも、エーテル官能基、チオエーテル官能基、第一級、第二級または第三級アミン官能基、チオール官能基、シリル官能基を挙げることができる。第一級もしくは第二級アミンまたはチオール官能基は、保護されていてもよく、保護されていなくてもよい。アミンおよびチオール官能基の保護基は、例えばシリル基、特にトリメチルシリル、またはtert-ブチルジメチルシリル基である。好ましくは、化学官能基F2が、第一級、第二級もしくは第三級アミン官能基、またはチオール官能基であり、第一級もしくは第二級アミンまたはチオール官能基が、保護基によって保護されている、または保護されていない。
好ましくは、記号R2は同一でありまたは異なり、最大6個の炭素原子を有するアルキル、または最大6個の炭素原子を有し、式(III-a)および(III-b)における化学官能基F2によって置換されているアルカンジイル鎖を表す。
【0020】
官能性基F1としては、ジメトキシメチルシリル、ジメトキシエチルシリル、ジエトキシメチルシリル(diethoxymethysilyl)、ジエトキシエチルシリル(diethoxyethysilyl)、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルジメトキシシリル、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルジエトキシシリル、3-アミノプロピルジメトキシシリル、3-アミノプロピルジエトキシシリル、3-チオプロピルジメトキシシリル、3-チオプロピルジエトキシシリル、メトキシジメチルシリル、メトキシジエチルシリル、エトキシジメチルシリル(ethoxydimethysilyl)、エトキシジエチルシリル(ethoxydiethysilyl)、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルメトキシメチルシリル、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルメトキシエチルシリル、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルエトキシメチルシリル、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルエトキシエチルシリル、3-アミノプロピルメトキシメチルシリル、3-アミノプロピルメトキシエチルシリル、3-アミノプロピルエトキシメチルシリル、3-アミノプロピルエトキシエチルシリル、3-チオプロピルメトキシメチルシリル、3-チオプロピルエトキシメチルシリル、3-チオプロピルメトキシエチルシリル、および3-チオプロピルエトキシエチルシリル基を挙げることができる。
【0021】
官能性基F1としては、1つおよび1つだけのエトキシまたはメトキシ官能基を含有する、上に言及した官能性基のシラノール型も挙げることができ、シラノール型は、エトキシまたはメトキシ官能基の加水分解によって得ることができる。これに関して、ジメチルシラノール、ジエチルシラノール、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルメチルシラノール、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルエチルシラノール、3-アミノプロピルメチルシラノール、3-アミノプロピルエチルシラノール、3-チオプロピルエチルシラノール、および3-チオプロピルメチルシラノール基が好適である。
官能性基F1としては、アルコキシまたはシラノール型であっても、上に言及した、シリル基によって保護された形態におけるアミンまたはチオール官能基を含む官能性基、特にトリメチルシリルまたはtert-ブチルジメチルシリル基も挙げることができる。
【0022】
本発明の非常に優先的な実施形態によれば、官能性基F1は式(III-a)のものであり、fは1に等しい。この非常に優先的な実施形態によれば、例えばジメトキシメチルシリル、ジメトキシエチルシリル、ジエトキシメチルシリル(diethoxymethysilyl)、ジエトキシエチルシリル(diethoxyethysilyl)、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルジメトキシシリル、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルジエトキシシリル、3-アミノプロピルジメトキシシリル、3-アミノプロピル-ジエトキシシリル、3-チオプロピルジメトキシシリル、および3-チオプロピルジエトキシシリル基などの、R1がメチルまたはエチルである基が、非常に特に好適である。シリル基、特にトリメチルシリルまたはtert-ブチルジメチルシリル基によって保護された、先行するリストにおいて言及した最後の4つの官能性基のアミンまたはチオール官能基を保護された形態も好適である。
【0023】
本発明のさらにより優先的な一実施形態によれば、官能性基F1は式(III-a)のものであり、fは1に等しく、R1はメチルである。このさらにより優先的な実施形態によれば、ジメトキシメチルシリル、ジメトキシエチルシリル、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルジメトキシシリル、3-アミノプロピルジメトキシシリル、および3-チオプロピルジメトキシシリル基、ならびにまた、トリメチルシリルまたはtert-ブチルジメチルシリルによって保護された、3-アミノプロピルジメトキシシリル、または3-チオプロピルジメトキシシリルのアミンまたはチオール官能基を保護された形態が、非常に特に好適である。
本発明の要件に有用なエラストマーは、以下のステップ(a)および(b)、ならびに必要であればステップ(c):
a) オルガノマグネシウム化合物とメタロセンとを含む触媒系の存在下、モノマー混合物を共重合させるステップ、
b) 官能化剤を、ステップa)で得られたポリマーと反応させるステップ、
c) 必要であれば、加水分解反応させるステップ
を含む方法によって調製されうる。
【0024】
ステップa)は、モノマーの混合物の共重合である。モノマー混合物は、エチレンの、1,3-ジエンの、好ましくは1,3-ブタジエンの、および任意選択でα-モノオレフィンの混合物である。共重合は、それぞれ触媒および共触媒として用いられる、メタロセンとオルガノマグネシウム化合物とから構成される触媒系を用いて、出願、欧州特許出願公開第1092731号、国際公開第2004035639号、同第2007054223号、および同第2007054224号に従って実施することができる。
【0025】
当業者は、これらの文献に記載される重合条件を、コポリマー鎖の所望のミクロ構造とマクロ構造とを達成するように適応させる。本発明の実施形態のいずれか1つによれば、オルガノマグネシウム化合物の、メタロセンを構成している金属Metに対するモル比は、好ましくは1~100にわたる範囲、より優先的には1以上10未満である。1~10未満にわたる値の範囲は、高モル質量のコポリマーを得るために特により好ましい。
当業者はまた、重合条件および反応物質(触媒系の構成成分、モノマー)のそれぞれの濃度を、重合および各種化学反応を実施するために用いる装置(器具、反応器)に応じて適合させる。当業者に公知のように、共重合、ならびにモノマーの、触媒系の、および重合溶媒の取り扱いは、無水条件下および不活性雰囲気下で行われる。重合溶媒は、典型的には、脂肪族または芳香族炭化水素溶媒である。
【0026】
有利には、オルガノマグネシウム化合物がブチルオクチルマグネシウムまたはブチルエチルマグネシウムであり、メタロセンが[{Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)2Li(THF)}2]、[Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)2Li(THF)]、[Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)(THF)]、[{Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)(THF)}2]、[Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)]、[Me2Si(C5H4)(C13H8)NdCl]、[Me2Si(C5H4)(C13H8)Nd(BH4)2Li(THF)]、[Me2Si(C5H4)(C13H8)Nd(BH4)(THF)]から選択され、記号FluはC13H8基を表す。
【0027】
ステップb)は、コポリマーの鎖末端を官能化させるため、官能化剤を、ステップa)で得られたコポリマーと反応させることにある。官能化剤は、式(IV)の化合物であり、
Si(Fc1)4-g(Rc2)g (IV)
記号Fc1は同一でありまたは異なり、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、
記号Rc2は同一でありまたは異なり、水素原子、炭化水素鎖、または化学官能基Fc2によって置換されている炭化水素鎖を表し、gが0~2の範囲の整数である。
記号Fc1がアルコキシ基を表す場合、アルコキシ基は、好ましくはメトキシまたはエトキシである。Fc1記号がハロゲン原子を表す場合、ハロゲン原子は、好ましくは塩素である。
【0028】
本発明の優先的な一実施形態によれば、記号Fc1の少なくとも1つが、アルコキシ基、特にメトキシまたはエトキシを表す。有利には、このとき官能化剤が式(IV-1)のものであり、
MeOSi(Fc1)3-g(Rc2)g (IV-1)
記号Fc1およびRc2ならびにgは、式(IV)において定義される通りである。
本発明のより優先的な一実施形態によれば、記号Fc1の少なくとも2つが、アルコキシ基、特にメトキシまたはエトキシを表す。有利には、このとき官能化剤が式(IV-2)のものであり、
(MeO)2Si(Fc1)2-g(Rc2)g (IV-2)
記号Fc1およびRc2ならびにgは、式(IV)において定義される通りである。
本発明のさらにより優先的な一実施形態によれば、記号Fc1の少なくとも3つは、アルコキシ基、特にメトキシまたはエトキシを表す。有利には、このとき官能化剤は式(IV-3)のものであり、
(MeO)3Si(Fc1)1-g(Rc2)g (IV-3)
記号Fc1およびRc2は、式(IV)において定義される通りであり、gが0~1の範囲の整数である。
さらにより有利な一実施形態によれば、官能化剤は式(IV-4)のものである。
(MeO)3SiRc2 (IV-4)
Rc2は式(IV)において定義される通りである。
【0029】
式(III)、(IV-1)、(IV-2)、(IV-3)、および(IV-4)において記号Rc2によって表される炭化水素鎖の中でも、アルキル、好ましくは最大6個の炭素原子を有するアルキル、より優先的にはメチルまたはエチル、さらに良好にはメチルを挙げることができる。
式(IV)、(IV-1)、(IV-2)、(IV-3)、および(IV-4)において記号Rc2によって表される、化学官能基Fc2によって置換されている炭化水素鎖の中でも、アルカンジイル鎖、好ましくは最大6個の炭素原子を含むもの、より優先的には1,3-プロパンジイル基を挙げることができるが、アルカンジイル基は置換基、化学官能基Fc2を有し、言い換えれば、アルカンジイル鎖の一方の原子価は官能基F2のため、他方の原子価はシラノールまたはアルコキシシラン官能基のケイ素原子のためである。
式(IV)、(IV-1)、(IV-2)、(IV-3)、および(IV-4)において、化学官能基は、飽和炭化水素基とは異なる基であり、化学反応に関与しうる基を意味するものと理解されたい。当業者は、化学官能基Fc2が、重合媒体中に存在する化学種に対して化学的に不活性な基であることを理解する。化学官能基Fc2は、例えば第一級アミン、第二級アミン、またはチオール官能基の場合などには、保護された形態であってもよい。化学官能基Fc2としては、エーテル、チオエーテル、保護された第一級アミン、保護された第二級アミン、第三級アミン、保護されたチオール、およびシリル官能基を挙げることができる。好ましくは、化学官能基Fc2が、保護された第一級アミン官能基、保護された第二級アミン官能基、第三級アミン官能基、または保護されたチオール官能基である。第一級アミン、第二級アミン、およびチオール官能基の保護基としては、シリル基、例えばトリメチルシリルおよびtert-ブチルジメチルシリル基を挙げることができる。
【0030】
gは好ましくは0以外であり、このことは官能化剤が、少なくとも1つのSi-Rc2結合を含むことを意味する。
官能化剤としては、化合物ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)メチルジメトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)メチルジエトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)エチルジメトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)エチルジエトキシシラン、3-メトキシ-3,8,8,9,9-ペンタメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリエトキシエチルシラン、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(N-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-N-(トリメチルシリル)シランアミン、(N-(3-トリエトキシシリル)プロピル)-N-(トリメチルシリル)シランアミンおよび3,3-ジメトキシ-8,8,9,9-テトラメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカン、好ましくはジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)メチルジメトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)エチルジメトキシシラン、3-メトキシ-3,8,8,9,9-ペンタメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカントリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(N-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-N-(トリメチルシリル)シランアミンおよび3,3-ジメトキシ-8,8,9,9-テトラメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカン、より優先的には、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(N-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-N-(トリメチルシリル)シランアミン、および3,3-ジメトキシ-8,8,9,9-テトラメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカンを挙げることができる。
【0031】
官能化剤は、典型的には、ステップa)から生じる重合媒体に添加される。官能化剤は、典型的には、エラストマーの所望のマクロ構造に応じて、当業者によって選択されるモノマーが変換される程度に、重合媒体に添加される。ステップa)は一般に、エチレン圧力下で実施されるため、重合反応器の脱気は、官能化剤を添加する前に実施されうる。官能化剤は不活性かつ無水条件下で、重合温度に維持している重合媒体に添加される。典型的には、1molの共触媒当たり0.25~10molの官能化剤、好ましくは、1molの共触媒当たり2~4molの官能化剤が使用される。
官能化剤は、官能化反応をさせるのに十分な時間、重合媒体と接触させる。この接触時間は、反応媒体の濃度の関数、および反応媒体の温度の関数として、当業者によって適切に選択される。典型的には、官能化反応は、撹拌下、17℃~80℃の範囲の温度において、0.01~24時間実施される。
【0032】
エラストマーは、官能化したら、特に反応媒体から単離することによって、回収することができる。エラストマーを反応媒体から分離するための技法は、当業者に周知であり、分離するエラストマーの量、マクロ構造、および当業者が利用可能な器具に応じて、当業者によって選択される。例えば、メタノールなどの溶媒中のエラストマーを凝固させる技法、例えば減圧下、反応媒体および残留モノマーの溶媒を蒸発させる技法を挙げることができる。
【0033】
官能化剤が式(IV)、(IV-1)、または(IV-2)のものであり、gが2に等しい場合、鎖末端にシラノール官能基を有するエラストマーを形成するため、ステップb)の後に加水分解反応を行ってもよい。加水分解は、当業者に公知の方法において、ステップb)の終わりに、エラストマーを含有する溶液をストリッピングするステップによって実施されうる。
官能化剤が式(IV)、(IV-1)、(IV-2)、(IV-3)、または(IV-4)のものである場合、gが0以外である場合、およびRc2が官能基Fc2によって置換され、保護された形態の炭化水素鎖を表す場合も、エラストマーの鎖の末端における官能基を脱保護するため、ステップb)の後に加水分解反応を行ってもよい。加水分解反応、官能基を脱保護するステップは、一般に、脱保護する官能基の化学的性質に応じて、酸性または塩基性媒体中で実施される。例えば、アミンまたはチオール官能基を保護するシリル基、特にトリメチルシリルまたはtert-ブチルジメチルシリル基は、当業者に公知の方法において、酸性または塩基性媒体中で加水分解されうる。脱保護条件の選択は、脱保護する基質の化学的構造を考慮して、当業者によって適切になされる。
【0034】
ステップc)は、官能性基をシラノール官能基に変換することを所望するか否か、または保護された官能基を脱保護することを所望するか否かに応じた、任意選択のステップである。優先的には、ステップc)は、ステップb)の終わりにエラストマーを反応媒体から分離する前に、またはこの分離ステップと同時に、実施される。
好ましくは、ゴム組成物は、50phr超の本発明の要件に有用な高飽和エラストマー、より優先的には少なくとも80phrの本発明の要件に有用なエラストマーを含有する。有利には、高飽和エラストマーの含有量は100phrである。高飽和エラストマーは、ミクロ構造において、またはマクロ構造において互いに異なる、本発明の要件に有用なエラストマーの混合物からなりうる。
【0035】
「補強無機充填剤」は、本出願において、定義により、カーボンブラックとは対照的に「白色充填剤」、「透明充填剤」、またはさらには実際に「非黒色充填剤」としても知られる、タイヤの製造を意図したゴム組成物を、中間カップリング剤以外の手段によらず、それ自体単独で補強することができる、任意の無機または鉱物充填剤(色および起源、天然または合成にかかわらず)を意味するものとして理解されるべきであり、言い換えれば、補強する役割において、従来のタイヤグレードカーボンブラックを置き換えることができ、このような充填剤は一般に、公知のように、表面にヒドロキシル(-OH)基が存在することによって特徴づけられる。
ケイ質型の鉱物充填剤、好ましくはシリカ(SiO2)が、補強無機充填剤として特に好適である。用いられるシリカは、当業者に公知の任意の補強シリカ、とりわけBET表面積とCTAB比表面積との両方が、450m2/g未満、好ましくは30~400m2/g、とりわけ60m2/gから300m2/gの間である、任意の沈降または焼成シリカでありうる。高分散性沈降シリカ(「HDS」)としては、出願、国際公開第03/016387号に記載されるように、例えば、DegussaのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ、RhodiaのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ、PPGのHi-Sil EZ150Gシリカ、HuberのZeopol 8715、8745および8755シリカ、または高比表面積を有するシリカが挙げられる。
【0036】
本記述において、BET比表面積は、公知のように、The Journal of the American Chemical Society, Vol. 60, page 309, February 1938に記載される、Brunauer-Emmett-Teller法を用いたガス吸着によって、より詳細には、1996年12月のフランス規格NF ISO 9277(多点(5点)体積測定法、ガス:窒素、脱気:160℃において1時間、相対圧力p/p0範囲:0.05~0.17)に従って決定される。CTAB比表面積は、1987年11月のフランス規格NF T 45-007(方法B)に従って決定される外表面積である。
【0037】
補強無機充填剤が供給される物理的状態は、粉末、ミクロパール、顆粒、またはビーズの形態であろうと、重要ではない。当然、補強無機充填剤は、上に記載したように、異なる補強無機充填剤、特に高分散性シリカの混合物も意味するものと理解されたい。
当業者は、本セクションにおいて記載する補強無機充填剤と同等の充填剤として、その補強充填剤がシリカなどの無機層で覆われ、またはその表面に、充填剤とエラストマーとの間に結合を構築するために、カップリング剤の使用を必要とする官能部分、とりわけヒドロキシル部分を含む限りは、別の性質、特にカーボンブラックなどの有機的性質の補強充填剤を用いてもよいことを理解するであろう。例として、例えば国際公開第96/37547号および同第99/28380号の特許文献に記載されるような、例えばタイヤ用カーボンブラックを挙げることができる。
好ましくは、補強無機充填剤の含有量は、30phrから200phrの間、より優先的には40phrから160phrの間である。補強無機充填剤の含有量のこれらの範囲のいずれか1つを、本発明の実施形態のいずれか1つに適用することができる。
【0038】
ゴム組成物はさらに、カーボンブラックを含んでもよい。従来タイヤ用ゴム組成物に用いられるすべてのカーボンブラック、特にHAF、ISAF、SAF、FF、FEF、GPF、およびSRF型のブラック(「タイヤグレード」のブラック)が、カーボンブラックとして好適である。存在する場合、カーボンブラックは、好ましくは、20phr未満の、より好ましくは10phr未満(例えば、0.5phrから20phrの間、特に2phrから10phrの間)の含有量で用いられる。示されている間隔の中では、カーボンブラックの着色特性(黒色顔料着色剤)およびUV安定化特性は有益であり、その上、補強無機充填剤、特にシリカに起因する典型的な性能品質に悪影響を及ぼさない。
【0039】
補強無機充填剤をジエンエラストマーにカップリングさせるため、周知のように、無機充填剤(粒子の表面)とジエンエラストマーとの間に良好な連結をもたらすことを意図して、少なくとも二官能価のカップリング剤、特にシラン(または結合剤)が使用される。特に、少なくとも二官能価の、オルガノシランまたはポリオルガノシロキサンが使用される。
特に、例えば出願、国際公開第03/002648号(または米国特許出願公開第2005/016651号)、および国際公開第03/002649号(または米国特許出願公開第2005/016650号)において記載されるように、個別の構造に応じて「対称」または「非対称」と呼ばれる、シランポリスルフィドが使用される。
【0040】
下の定義は限定するものではないが、一般式(V)に対応するシランポリスルフィドが特に好適であり、
Z-G-Sx-G-Z (V)
式中、
xは2~8(好ましくは2~5)の整数であり、
記号Gは同一でありまたは異なり、二価炭化水素基(好ましくはC1-C18アルキレン基またはC6-C12アリーレン基、より詳細にはC1-C10、とりわけC1-C4アルキレン、特にプロピレン)を表し、
記号Zは同一でありまたは異なり、下の3つの式の1つに対応し、
【0041】
【化4】
式中、
R
1基は置換されておりまたは非置換であり、互いに同一でありまたは異なり、C
1-C
18アルキル、C
5-C
18シクロアルキル、またはC
6-C
18アリール基(好ましくはC
1-C
6アルキル、シクロヘキシル、またはフェニル基、特にC
1-C
4アルキル基、より詳細にはメチルおよび/またはエチル)を表し、
R
2基は置換されておりまたは非置換であり、互いに同一でありまたは異なり、C
1-C
18アルコキシ、またはC
5-C
18シクロアルコキシ基(好ましくは、C
1-C
8アルコキシ、およびC
5-C
8シクロアルコキシから選択される基、より優先的にはさらに、C
1-C
4アルコキシから選択される基、特にメトキシおよびエトキシ)を表す。
上の式(I)に対応するアルコキシシランポリスルフィドの混合物、とりわけ通常の市販の混合物の場合、「x」の平均値は、好ましくは2から5の間の分数であり、より優先的には4に近い。しかし、本発明はまた、有利には、例えばアルコキシシランジスルフィド(x=2)によって実施することができる。
【0042】
シランポリスルフィドの例としては、より詳細には、ビス((C1-C4)アルコキシ(C1-C4)アルキルシリル(C1-C4)アルキル)ポリスルフィド(特にジスルフィド、トリスルフィド、またはテトラスルフィド)、例えばビス(3-トリメトキシシリルプロピル)またはビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドなどが挙げられる。これらの化合物の中でも、特に、TESPTと略される、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2のビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、またはTESPDと略される、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S]2のビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが使用される。
【0043】
アルコキシシランポリスルフィド以外のカップリング剤としては、特に出願、国際公開第02/30939号(もしくは米国特許第6774255号)および国際公開第02/31041号(もしくは米国特許出願公開2004/051210号)に記載されるような、二官能価のPOS(ポリオルガノシロキサン)もしくはヒドロキシシランポリスルフィド、または例えば出願、国際公開第2006/125532号、同第2006/125533号、および同第2006/125534号に記載されるような、アゾジカルボニル官能性基を有するシランもしくはPOSが挙げられる。
カップリング剤の含有量は有利には30phr未満であり、一般に、可能な限り少ない使用が望ましいものと理解されたい。典型的には、カップリング剤の含有量は、無機充填剤の量に対して、0.5質量%~15質量%を占める。カップリング剤の含有量は、優先的には0.5phrから16phrの間であり、より優先的には3~10phrにわたる範囲である。この含有量は、組成物に用いられる無機充填剤の含有量に応じて、当業者によって容易に調整される。
本発明によるゴム組成物は、カップリング剤に加えて、カップリング活性剤、無機充填剤を被覆する薬剤、または公知の方法で、ゴムマトリックス中の充填剤の分散を改善すること、および組成物の粘性を低下させることによって、未加工の状態における加工性を改善することができる、より一般的な加工助剤も含んでよい。
ゴム組成物は、架橋系を含有してもよい。化学架橋によって、エラストマー鎖同士の間に共有結合を形成することができる。架橋系は、加硫系、または1つもしくは複数のペルオキシド化合物であってもよい。
【0044】
適切な加硫系は、硫黄(または硫黄供与剤)、および一次加硫促進剤をベースとする。後述するように、酸化亜鉛、ステアリン酸もしくは同等の化合物、またはグアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)などの各種公知の二次加硫促進剤または加硫活性剤が、このベース加硫系に添加され、これは非生産第1段階中、および/または生産段階中に組み込まれる。硫黄は、0.5~12phr、特に1~10phrの優先的含有量で用いられる。一次加硫促進剤は、0.5phrから10phrの間、より優先的には0.5phrから5phrの間の優先的含有量で用いられる。(一次または二次)促進剤として、硫黄の存在下、ジエンエラストマーの加硫の促進剤として作用することができる任意の化合物、特に、チアゾール型の促進剤およびその誘導体、またはチウラムもしくは亜鉛ジチオカルバメート型の促進剤が使用されうる。好ましくは、スルフェンアミド型の一次促進剤が使用される。
【0045】
化学架橋が1つまたは複数のペルオキシド化合物を用いて実施される場合、該ペルオキシド化合物は、好ましくは0.01~10phrである。化学架橋系として用いることができるペルオキシド化合物としては、アシルペルオキシド、例えばベンゾイルペルオキシドもしくはpークロロベンゾイルペルオキシド、ケトンペルオキシド、例えばメチルエチルケトンペルオキシド、ペルオキシエステル、例えばt-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、およびt-ブチルペルオキシフタレート、アルキルペルオキシド、例えばジクミルペルオキシド、ジ(t-ブチル)ペルオキシベンゾエート、および1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、またはヒドロペルオキシド、例えばt-ブチルヒドロペルオキシドを挙げることができる。
【0046】
ゴム組成物は、高飽和エラストマーに加えて、第2のエラストマーを含有してもよい。第2のエラストマーは、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、およびこれらの混合物からなるジエンエラストマーの群から選択されうる。
本発明によるゴム組成物は、タイヤ、特にトレッドなどの完成ゴム物品の外部混合物を構成することを意図したエラストマー組成物において、例えば可塑剤またはエクステンダー油などの、一般に用いられる通常の添加剤のすべてまたは一部も、これらが本質的に芳香族または非芳香族、特に非常に弱い芳香族または非芳香族の油(例えば液体パラフィン、水素化ナフテン油、MESまたはTDAE油)、植物油、特にグリセリルトリオレエートなどのグリセロールエステル、顔料、オゾン劣化防止ワックス、化学的オゾン分解防止剤、老化防止剤などの保護剤であろうと、含みうる。
本発明によるゴム組成物は、当業者に周知の一般的な手順、すなわち、130℃から200℃の間、好ましくは145℃から185℃の間の最高温度までの高温における、熱機械的作業または混練の第1段階(ときとして「非生産」段階と称される)、続いて、典型的には120℃未満、例えば60℃から100℃の間の低温における、機械的作業の第2段階(ときとして「生産」段階と称される)により、2つの連続段階の調製を用いて、適当なミキサーにおいて製造することができ、最終段階中に、化学架橋剤、特に加硫系が組み込まれる。
【0047】
一般に、本発明のタイヤに含まれる組成物の全ベース構成成分は、架橋系、すなわち補強無機充填剤およびカップリング剤を除いて、適当である場合、第1「非生産」段階中にジエンエラストマーに混練することによって均質に組み込まれ、すなわち、少なくともこれらの各種ベース構成成分はミキサーに導入され、1つまたは複数のステップにおいて、130℃から200℃の間、好ましくは145℃から185℃の間の最高温度に達するまで、熱機械的に混練される。
【0048】
例として、第1(非生産)段階は、単一の熱機械的ステップにおいて実施され、その間に、化学架橋剤を除いて、全必要成分、任意選択の追加の加工助剤、および各種他の添加剤が、標準的な密閉式ミキサーなどの適当なミキサーに導入される。この非生産段階における混練の合計継続時間は、好ましくは1分から15分の間である。第1非生産段階中にこのようにして得た混合物を冷却した後、次いで架橋系を、一般にオープンミルなどの開放式ミキサーに、低温で組み込み、次いで数分間、例えば2分から15分の間、すべてを混合する(生産段階)。
このようにして得た完成組成物を、続いて、特に試験場での特性評価のため、例えばシートもしくはスラブの形態にカレンダー加工し、または車両用半完成タイヤ製品として用いることができるゴム異形押出要素の形態に押出成形する。
したがって、本発明の詳細な実施形態によれば、本発明による、未硬化の状態(架橋もしくは加硫前)、または硬化した状態(架橋もしくは加硫後)のいずれかであってよいゴム組成物は、タイヤにおいて、とりわけタイヤトレッドとして用いられうる半完成製品である。
【0049】
前述の本発明および他の特徴のより良好な理解は、例示として限定することなく与えられる、以下の本発明の複数の例示的な実施形態の記載に接することによって得られるであろう。
【実施例】
【0050】
II.本発明の例示的な実施形態
II.1-特性評価法
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
a)測定の原理
サイズ排除クロマトグラフィー、すなわちSECは、多孔質ゲルを充填したカラムを通じて、サイズに応じて溶液中の巨大分子を分離することができる。巨大分子は、水力学的体積に応じて分離され、最も嵩高いものが最初に溶出する。
3種の検出器(3D)、屈折計、粘度計、および90°光散乱検出器と合わせて、SECにより、ポリマーの絶対モル質量分布を知ることができる。各種数平均(Mn)および質量平均(Mw)絶対モル質量、ならびに多分散指数(PI=Mw/Mn)も、算出することができる。
【0051】
b)ポリマーの調製
分析前のポリマーサンプルの特定の処理はない。該サンプルを、テトラヒドロフラン+1体積%のジイソプロピルアミン+1体積%のトリエチルアミンに、約1g/lの濃度において、単純に溶解させる。次いで溶液を、0.45μmの多孔性を有するフィルタを通して濾過してから、注入する。
【0052】
c)SEC3D分析
用いた装置は、WatersのAllianceクロマトグラフである。溶出溶媒はテトラヒドロフラン+1体積%のジイソプロピルアミン+1体積%のトリエチルアミンであり、流速は0.5ml/分であり、システム温度は35℃である。4つのPolymer Laboratoriesカラムのセットを直列に使用し、2つは「Mixed A LS」の商品名であり、2つは「Mixed B LS」の商品名である。
注入したポリマーサンプルの溶液の体積は、100μlである。使用した検出システムはViscotekのTDA 302であり、示差屈折計、示差粘度計、および90°光散乱検出器から構成される。これら3種の検出器について、波長は670nmである。平均モル質量の算出のため、ポリマー溶液の屈折率増分dn/dCの値を積分するが、この値は、35℃および670nmにおける、テトラヒドロフラン+1体積%のジイソプロピルアミン+1体積%のトリエチルアミンにおいてあらかじめ定義した。データを評価するためのソフトウェアは、ViscotekのOmnisecシステムである。
【0053】
核磁気共鳴(NMR)
エチレンと1,3-ブタジエンとのコポリマーのすべての官能化生成物を、1H、13C、29Si NMR分光測定によって特性評価する。NMRスペクトルは、5mm BBI Z-grad「広帯域」クライオプローブを備えた、Bruker Avance III 500MHz分光光度計に記録する。定量的1H NMR実験は、単純30°パルスシーケンスを用い、各取得の間の繰返し時間は5秒である。64~256回の積算を実施する。定量的13C NMR実験は、プロトンデカップリングと共に30°シングルパルスシーケンスを用い、各取得の間のプロトン繰返し時間は10秒である。1024~10240回の積算を実施する。コポリマーのミクロ構造の決定は、Llauro et al., Macromolecules 2001, 34, 6304-6311による記事により、文献中に定義される。スチレン部分を有するターポリマーの特定の場合、この方法を下に記載するように補足した。
1H NMRスペクトルによって、スチレン、1,3-ブタジエン、およびエチレン単位を定量することができる。
編集2D 1H/13C 1J HSQC NMR相関スペクトルによって、炭素原子およびプロトンシグナルの化学シフトによって、部分の性質を検証することができる。3J HMBC 1H/13C長距離相関スペクトルによって、スチレン、1,3-ブタジエン、およびエチレン単位の間の共有結合の存在を検証することができる。定量に用いたプロトンの帰属を表1に示す。
【0054】
【表1】
2次元
1H/
13Cおよび
1H/
29Si実験は、官能性ポリマーの構造を決定することを目的として用いる。
各官能性ポリマーの最終的な化学構造は、
1H、
13C、および
29Si NMRによって同定される。
【0055】
動的特性
動的特性は、規格ASTM D 5992-96に従って、粘度分析装置(Metravib VA4000)によって測定する。規格ASTM D 1349-99に従って、標準温度条件下(23℃)、10Hzの周波数において、単純交互正弦剪断応力に供した、加硫組成物(4mmの厚さおよび400mm2の断面を有する円筒形試験片)のサンプルの応答を記録する。ひずみ振幅掃引を、0.1%から50%まで(アウトワードサイクル)、次いで50%から0.1%まで(リターンサイクル)実施する。使用する結果は、複素剪断弾性率G*、損失係数tan(δ)、ならびに0.1%および50%ひずみにおける値の間の弾性率の差ΔG*(Payne効果)である。リターンサイクルについて、観測されたtan(δ)の最大値を示し、tan(δ)maxと表記する。G*と表記する、50%ひずみにおける複素弾性率G*、0.1%および50%ひずみにおける値の間の弾性率の差ΔG*(Payne効果)、ならびにtan(δ)maxの値を、100を基準として示し、値100は対照組成物(C)に対応する。ΔG*の値が低いほど、非線形性が低い。tan(δ)maxの値が低いほど、ゴム組成物のヒステリシスは低い。G*の値が低いほど、組成物の剛性は低い。
【0056】
温度掃引中に単純交互正弦剪断応力に供した、すなわち0.7MPaの負荷荷重および10Hzの周波数、1.5℃毎分の速度で-60℃から100℃の範囲の温度において正弦応力に供した、組成物のサンプルの応答も記録する。混合物のTgは、tan(δ)の最大値の温度によって示され、「Tg(℃)tan(δ)max」と表記する。別の使用する結果は、例えば60℃における複素動的剪断弾性率(G*)であり、G*弾性率と表記する。可読性を高めるため、G*の結果をベース100において示し、値100は対照に対応する。100未満の結果は、対象の値の減少を示し、反対に、100超の結果は、対象の値の増加を示すことになる。
【0057】
II.2-本発明によるコポリマーの調製
原材料
メタロセン[{Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)2Li(THF)}2](メタロセンA)および[{Me2SiCpFluNd(μ-BH4)2Li(THF)}2](メタロセンB)(CpおよびFluはそれぞれ、C5H4およびC8H13を指す)を除いて、すべての反応物質は商業的に得ており、メタロセンは、国際公開第2007054224号および同第2007054223号の文献に記載される手順に従って調製されうる。
ブチルオクチルマグネシウムBOMAG(ヘプタン中20%、C=0.88molL-1)はChemturaからのものであり、不活性雰囲気下、シュレンクチューブに保管する。エチレンはN35グレードで、Air Liquideからのものであり、予備精製することなく用いる。1,3-ブタジエンはアルミナガード上で精製する。官能化剤は予備精製することなく用いる。(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)メチルジメトキシシラン(AB252529)はABCRからのものであり、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシランはNitrochemieからのものである。
BioSolveからのメチルシクロヘキサン溶媒を乾燥させ、不活性雰囲気下で用いるmBraunからの溶媒精製装置中、アルミナカラムで精製する。メタノール(99%、クラス3、グレードII)はLaurylasからのものであり、C6D6(99.6原子%D)はAldrichからのものであり、低温で保管する。すべての反応は不活性雰囲気下で実施する。
【0058】
装置
エチレンと1,3-ブタジエンとのコポリマー、またはエチレンと1,3-ブタジエンとスチレンとのターポリマーのすべての重合および官能化反応は、ステンレス鋼撹拌ブレードを備えた使い捨て500mlガラスタンク(Schottフラスコ)を有する反応器中で実施する。温度は、ポリカーボネートジャケットに連結された、サーモスタット制御の油浴によって確実に制御する。この反応器は、取り扱い操作に必要なすべての入り口または出口を有する。
【0059】
重合手順
30mgのメタロセンを、グローブボックス中の第1のSteinieボトルに導入する。第2のSteinieボトル中の、300mlのメチルシクロヘキサンにあらかじめ溶解させたブチルオクチルマグネシウムを、メタロセンを含有する第1のSteinieボトルに、表2に示す割合で導入する。周囲温度における10分間の接触後、触媒溶液を得る。次いで、触媒溶液を重合反応器に導入する。
次いで、メタロセンA、[{Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)2Li(THF)}2]の場合、反応器の温度を80℃に上昇させる。この温度に達したら、エチレン(Eth)と1,3-ブタジエン(But)とのガス状混合物(80/20mol%)を反応器に注入することによって、反応を開始させる。重合反応は、8barで行う例6の場合を除いて、4barの圧力で行う。
次いで、メタロセンB、[{Me2SiCpFluNd(μ-BH4)2Li(THF)}2]の場合、反応器の温度を50℃に上昇させる。この温度に達したら、エチレン(Eth)と1,3-ブタジエン(But)とのガス状混合物を、表2に規定する割合で反応器に注入することによって、反応を開始させる。重合反応は、4barの圧力で行う。
このメタロセンによる、エチレンと1,3-ブタジエンとスチレンとのターポリマーの合成中、スチレンは、触媒溶液の導入の直後に、重合反応器に注入する。
【0060】
官能化手順
所望のモノマー変換を達成したら、反応機の内容物を脱気し、次いで、不活性雰囲気下、過剰圧力によって、官能化剤を導入する。表2に示す時間および温度で、反応媒体を撹拌する。反応後、媒体を脱気し、次いでメタノール中で沈殿させる。ポリマーをトルエン中に再溶解させ、次いでグラフト化していない「シラン」分子を除去するため、メタノール中に沈殿させ、これによって、官能性基含有率の定量および各種シグナルの積分のための、スペクトルのシグナルの質を改善することができる。ポリマーを老化防止剤によって処理し、次いで、減圧下、60℃で乾燥させて恒量とする。次いでこれを、SEC(THF)、1H、13C、29Si NMRによって分析する。
【0061】
用いた官能化剤はそれぞれ、
(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)メチルジメトキシシラン A1
(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシラン A2
である。
官能化反応の実験条件を、表2に記載する。
【0062】
ゴム組成物の調製の手順
phr(100部のエラストマー当たりの質量部)で表した配合を表3に示すゴム組成物を、以下の手順に従って調製した。すなわち、コポリマー、シリカ、およびまた加硫系を除く各種他の成分を、連続的に密閉式ミキサーに導入し(最終的な粉砕の程度は約70体積%)、その容器の初期温度は約80℃である。次いで、熱機械的作業(非生産段階)を1ステップにおいて実施するが、これは150℃の最大「ドロッピング」温度に達するまで、合計約5分間継続する。このようにして得た混合物を回収して冷却し、次いで、硫黄および促進剤を40℃でミキサー(ホモフィニッシャー)に組み込み、約10分間、すべてを混合する(生産段階)。このようにして得た組成物を、続いて、物理的または機械的特性の測定のため、ゴムのスラブ(2~3mmの厚さ)または薄いシートのいずれかの形態にカレンダー加工する。
【0063】
II.3-結果
結果を表4および5に示す。
用いた官能化剤およびメタロセンとは独立に、コポリマーは鎖末端に、アルコキシシランまたはシラノール官能化を有する。官能化剤A1およびA2を用いた場合、メタロセンAによって、鎖の3分の1が、または半分さえ官能化されうる。メタロセンBを使用した場合、官能化剤A1およびA2によって、官能性基の含有率は90%超に達しうる。
本発明によるコポリマーを含む組成物IのΔG
*およびTanδmaxの値は、対照組成物Cの値よりはるかに低い。同時に、G
*の値も低い。本発明によるゴム組成物は、対照組成物より低いヒステリシスを有すると同時に、対照組成物より硬くない。
【表2】
【0064】
【0065】
【0066】