(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】ボイラ内の導管部品を連結するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
F23C 10/04 20060101AFI20221205BHJP
F16L 27/00 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
F23C10/04
F16L27/00 B
(21)【出願番号】P 2020500066
(86)(22)【出願日】2018-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2018068075
(87)【国際公開番号】W WO2019011747
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-06-28
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH-5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、クレッグ エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ、ジョセフ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ウッズ、ロバート イー.
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05383316(US,A)
【文献】特開2015-025491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 10/00-10/32
F22B 37/00-37/78
F16L 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ(10)の固形物回収装置(100)において導管セクションを相互に連結するシステム(200)であって、当該システム(200)が、
雌継手部
(203)を画定している第1の導管(30)と、
前記雌継手部
(203)によって収容される雄継手部を画定している第2の導管(32)と、
前記雄継手部の外周面(208)と前記雌継手部
(203)の内周面(206)との間に形成されている横方向の裂け目(202)と、
断熱軸受け(218)と、
前記横方向の裂け目(202)内に配置され、前記横方向の裂け目(202)へと固形物が侵入するのを防止するように構成されたロープシール(204)と
を備え
ており、
前記ロープシール(204)
が、前記雄継手部の外周面(208)の半径方向外側に、かつ前記雌継手部
(203)の内周面(206)の半径方向内側に配置
されており、
前記断熱軸受け(218)が、前記雄継手部の周りに収容され、かつ前記雌継手部(203)の先端面に当接している、システム(200)。
【請求項2】
前記ロープシール(204)
が、前記横方向の裂け目(202)内で軸方向に互いに隣り合う第1のファイバーロープ(210)
及び第2のファイバーロープ(212)を有する、二重ロープシール(204)である、請求項1に記載のシステム(200)。
【請求項3】
前記第1のファイバーロープ(210)
及び前記第2のファイバーロープ(212)
がセラミックファイバーロープである、請求項2に記載のシステム(200)。
【請求項4】
前記第1のファイバーロープ(210)
及び前記第2のファイバーロープ(212)を前記第2の導管(32)に固着させる鋼線(214)をさらに備える、請求項2
又は請求項3に記載のシステム(200)。
【請求項5】
前記第2の導管(32)の内周内側を被覆している第2の耐火材料(34)と、
前記第2の耐火材料(34)を前記第2の導管(32)へと固定している六角形メッシュ(216)と
をさらに備える、請求項4に記載のシステム(200)。
【請求項6】
前記六角形メッシュ(216)
が、内側ランスを備える
25
mm~
50
mmのステンレス鋼六角形メッシュである、請求項5に記載のシステム(200)。
【請求項7】
前記断熱軸受け(218)を前記雌継手部
(203)に固定している第2の鋼線(220)をさらに備える、請求項
1乃至請求項6のいずれか1項に記載のシステム(200)。
【請求項8】
前記第1の導管(30)
が、炉(12)に分離固形物を戻すように構成された固形物回収導管(30)の一部を形成しており、前記第2の導管(32)
がシールポット出口(32)の一部を形成している、請求項
7に記載のシステム(200)。
【請求項9】
前記第1の導管(30)
がシールポット入口の一部を形成しており、
前記第2の導管(32)
が、分離器(22)から固形物を受け取るように構成されたディップレグ
(28)の一部を形成している
、請求項
7に記載のシステム(200)。
【請求項10】
固形物回収装置(100)の導管セクションを相互に連結する方法であって、当該方法が、
第2の導管(32)の雄継手部にシール要素(204)を固定するステップと、
第1の導管(30)の雌継手部
(203)に断熱軸受け(218)を固定するステップと、
前記第2の導管(32)の前記雄継手部を第1の導管(30)の雌継手部
(203)と軸方向に位置合わせして、前記雄継手部の外周面(208)と前記雌継手部
(203)の内周面(206)との間に横方向の裂け目(202)を形成するステップと、
前記横方向の裂け目(202)内に前記シール要素(204)を配置するステップと
を含
んでおり、
前記断熱軸受け(218)が、前記第2の導管(32)を前記第1の導管(30)と位置合わせしたときに、前記雄継手部の周りに収容され、かつ前記雌継手部
(203)の先端面に当接するように
構成されており、
前記シール要素(204)が、前記第1の導管(30)と前記第2の導管(32)との間の横方向運動を吸収するように
構成されており、
前記断熱軸受け(218)が、前記第1の導管(30)と前記第2の導管(32)との間の軸方向運動を吸収するように
構成されている、方法。
【請求項11】
前記シール要素(204)
が、前記横方向の裂け目(202)内で軸方向に互いに隣り合う第1のセラミックファイバーロープ(210)
及び第2のセラミックファイバーロープ(212)を有する、二重ロープシール(204)である、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
第2の耐火材料(34)を六角形メッシュ(216)で前記雄継手部へと固定するステップをさらに含む、請求項
11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は概して発電に関し、より詳細には、循環流動層(CFB)ボイラの導管部品を、そのような部品間の相対的な運動を吸収するように連結するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の燃焼炉を備える発熱システムは、有用な作業を行う目的で制御された熱を生成するために、長年使用されてきた。たとえば、ここで生成された熱を、電力発電タービンを駆動する蒸気を生成するために利用することができる。蒸気生成用の水管式炉には現在、流動層ボイラを含むさまざまなタイプのものがある。この流動層ボイラにはさまざまなタイプがあるが、燃焼室で燃焼させる前に固形物を流動化する目的で、ガスを注入するという原理で、これらはすべて動作している。循環流動層(CFB:circulating fluidized‐bed)タイプのボイラでは、気体、たとえば空気が固体粒子層を通過して、これらの粒子を相互から分離させやすくする力を発生している。気体流量が増加すると、粒子にかかる力が分離を引き起こすのにちょうど十分となる地点へと到達する。その後、この層は流動化し、その際、固形物間のガスクッションにより粒子が自由に移動し、この層が液体のような特性を示すようになる。この層のかさ比重は底部で比較的高くなり、燃料を燃焼させることで熱を発生する燃焼室を通って上方に流れるにつれて、その比重が低下する。
【0003】
循環流動層ボイラの層を形成している固体粒子は通常、粉砕石炭または他の固体燃料などの燃料粒子と、粉砕石灰石、ドロマイトまたは他のアルカリ土類材料などの吸着剤粒子とを含む。ボイラの燃焼室内で燃料が燃焼すると、煙道ガスと灰とが発生する。燃焼プロセス中に、燃料中の硫黄が酸化して二酸化硫黄(SO2)が形成され、これが炉内の他の気体と混合されることで煙道ガスが形成される。この灰は、主として未燃焼燃料、燃料中の不活性物質、および吸着剤粒子から構成され、また、流動媒体または再循環固形物と呼ばれる場合もある。
【0004】
この灰は煙道ガスに同伴して上方へと搬送され、高温の煙道ガスと共に炉から排出される。炉から排出された後、煙道ガスおよび灰は分離器、たとえばサイクロンなどへと送られ、これによって煙道ガスから灰が除去される。ここで分離された灰は、回収導管を経由してボイラ炉に向かって再循環される。この回収導管では通常、固形物流量制御弁(シールポットとも呼ばれる)を使用して、分離固形物が炉に向かって再循環するのを制御している。
【0005】
循環流動層ボイラを含む多くのボイラでは、高温で固形物流が形成されるために耐火被覆配管が利用されている。炉、サイクロン、および灰回収装置間で伸縮運動による差が生じるため、サイクロンとシールポットとの間、およびシールポットと炉との間で伸縮継手を通常使用している。主要なCFBユニットの部品間で自由に伸縮移動できるようにこれらの継手を設計する必要があり、またCFB内からの灰の浸入および/または漏れを、これらの継手が防止できるようにする必要がある。
【0006】
大きな横方向運動を吸収する際に残存している課題の1つは、伸縮継手の空洞が灰および固形物で充填されるのを防止することであった。具体的には、伸縮継手が加熱サイクルおよび冷却サイクルを経ると、侵入する灰および固体粒子が継手の空洞内で凝集する場合があり、これによって伸縮継手または周囲の要素の完全性が損なわれる恐れがある。空洞を封止するか、または空洞の排水を行う手段を設ける試みが従前より行われてきたが、成功事例は限られていた。
【0007】
上記に鑑みて、部品間における大きな横方向かつ軸方向の運動を吸収する効果的で非メンテナンス集約型の手段をもたらし、かつ断熱および封止の両方を実現するように、ボイラの灰回収装置内で導管セクションを連結するシステムおよび方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
一実施形態では、ボイラの固形物回収装置において導管セクションを相互に連結するシステムを提供する。本システムは、雌継手部を画定している第1の導管と、この雌継手部によって収容される雄継手部を画定している第2の導管と、雄継手部の外周面と雌継手部の内周面との間に形成されている横方向の裂け目と、この横方向の裂け目内に配置され、この横方向の裂け目へと固形物が侵入するのを防止するように構成されたロープシールとを備える。このロープシールを、雄継手部の外周面の半径方向外側に、かつ雌継手部の内周面の半径方向内側に配置している。
【0009】
本発明の別の実施形態によれば、固形物回収装置の伸縮継手は、雌継手部と、この雌継手部によって収容される雄継手部であって、これらの雄継手部および雌継手部は相互間に横方向の裂け目を形成している、雄継手部と、この横方向の裂け目内に配置される二重ロープシールであって、この二重ロープシールは、雌継手部と雄継手部との間の相対的な横方向運動を吸収するように構成されている、二重ロープシールと、雄継手部の周りに収容され、かつ雌継手部の先端面に当接している断熱軸受けであって、この断熱軸受けは、雌継手部と雄継手部との間の相対的な軸方向運動を吸収するように構成されている、断熱軸受けとを備える。
【0010】
本発明のさらに別の実施形態によれば、固形物回収装置の導管セクションを相互に連結するシステムを提供する。本方法は、第2の導管の雄継手部にシール要素を固定するステップと、第1の導管の雌継手部に断熱軸受けを固定するステップと、第2の導管の雄継手部を第1の導管の雌継手部と軸方向に位置合わせして、雄継手部の外周面と雌継手部の内周面との間に横方向の裂け目を形成するステップと、この横方向の裂け目内にシール要素を配置するステップとを含む。第2の導管を第1の導管と位置合わせしたときに、雄継手部の周りに収容され、かつ雌継手部の先端面に当接するように、断熱軸受けを構成している。第1の導管と第2の導管との間の横方向運動を吸収するように、シール要素を構成し、また第1の導管と第2の導管との間の軸方向運動を吸収するように、断熱軸受けを構成している。
【0011】
非限定的な実施形態に関する以下の説明を、添付の図面を参照しながら読解することにより、本発明をより効果的に理解することになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図1の流動層ボイラにおける灰回収装置の一部を示す概略図である。
【
図3】本発明の伸縮継手を使用することができる、灰回収装置のシールポット出口と固形物回収導管との間の例示的な接合面を示す簡略概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、灰回収装置のシールポット出口と固形物回収導管との間にある伸縮継手を示す、
図2の範囲Aの断面図である。
【
図5】本伸縮継手の構成を示す、
図4の範囲Bの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下で、本発明の例示的な実施形態について詳細に言及することとし、これらの実施形態の例を添付の図面に示している。図面全体を通して同一の部分または類似の部分を指すために、可能な限り同一の参照符号を使用している。本発明の実施形態は循環流動層ボイラで使用するのに適しているが、本発明は、より普遍的に他のボイラシステムでも使用することができる。さらに、本発明のシステムおよび方法を活用して、自身を流体または固形物が流れるように構成された隣り合う2つの導管セクションまたは部品を連結することにより、特定の用途や業界に関係なく、熱膨張、収縮、または他の力に起因して起こる部品の相対的な運動(軸方向かつ/または横方向の両方)を吸収させることができると考えられる。具体的には、本発明の実施形態は、当該部品が使用される環境、または当該部品を透過する流体または固形物のタイプに関係なく、それぞれの部品間の相対的な運動を吸収するように、流体流路または固体流路構成部品を相互に連結するのに適している。
【0014】
本明細書で使用する場合、「動作可能に連結された」は、直接的または間接的としてもよいある連結を指す。この連結は必ずしも機械的連結である必要はない。本明細書で使用する場合、「流体連結された」または「流体連通」とは、2つ以上の特徴部の間に流体が流れるようにし、かつ流体を搬送できるようにする態様でこれらの特徴部が連結されるように、これらの特徴部を配置することを指す。本明細書で使用する場合、「固形物」とは、燃焼プロセスまたは化学反応で使用することを目的とした固体粒子を意味しており、一例として石炭粒子または金属酸化物(たとえば、カルシウム)などが挙げられる。
【0015】
本発明の実施形態は、灰/固形物回収装置の導管セクションを連結するための伸縮継手、ならびに関連システムおよび方法に関する。固形物回収装置の伸縮継手は、雌継手部と、この雌継手部によって収容される雄継手部であって、これらの雄継手部および雌継手部は相互間に横方向の裂け目を形成している、雄継手部と、この横方向の裂け目内に配置される二重ロープシールであって、この二重ロープシールは、雌継手部と雄継手部との間の横方向運動を吸収するように構成されている、二重ロープシールと、雄継手部の周りに収容され、かつ雌継手部の先端面に当接している断熱軸受けであって、この断熱軸受けは、雌継手部と雄継手部との間の軸方向運動を吸収するように構成されている、断熱軸受けとを備える。
【0016】
図1を参照すると、循環流動層(CFB:circulating fluidized bed)ボイラ10が示されている。ここに示すように、ボイラ10は、流動層14を有する炉または燃焼室12を備え、この流動層14には、たとえば微粉炭などの燃料が搬送ライン16を介して供給されており、また、たとえば破砕石灰石などの吸着剤が搬送ライン18を介して供給されている。本ボイラは、炉12から延出している煙道ガス通路20と、この煙道ガス通路20と流体連通している分離器22とをさらに備える。分離器22をサイクロン分離器として示しているが、本発明のより広義の態様から逸脱することなく、他のタイプの分離器を同様に利用することができる。
【0017】
循環流動層ボイラ10の炉12で発生する煙道ガスおよび灰は、煙道ガス通路20を介して炉12から排出される。よく理解されているように、この煙道ガスは担体として機能し、これに同伴する灰を炉12から搬送している。分離器22を使用して、煙道ガスに同伴する灰をこれから分離させている。煙道ガスは、それ以前にこの煙道ガスに同伴させていた灰をこの時点では実質的に含まず、分離器から排気通路24を介して下流の処理装置、たとえば熱交換器、大気汚染制御(APC:air pollution control)装置に搬送され、その後最終的に排気筒へと搬送される。
【0018】
この灰を、本明細書では分離固形物とも呼んでいるが、灰は分離器22で煙道ガスから分離された後、灰回収装置100を介して炉12へと送り戻されている。
図1に示すように、灰回収装置100は、固形物流量制御弁またはシールポット26を備える。分離固形物は、その下端がシールポット26の下肢部(本明細書ではシールポット出口とも呼んでいる)を構成しているスタンドパイプまたはディップレグ28を介して、分離器22からシールポット26へと移動し、次いで下方傾斜している固形物回収導管30に沿って、シールポット26から炉12へと戻る。したがって、灰回収装置100は、ディップレグ28と、シールポット26と、固形物回収導管30とを備える。
【0019】
ボイラ10の稼働中、加熱サイクルおよび冷却サイクルにより、炉12と、分離器22と、灰回収装置100との間で、比較的大きな横方向かつ軸方向の運動が起こる可能性がある。したがって、分離器22とシールポット26との間に、またシールポット26と炉12との間に本伸縮継手を使用している。より具体的には、一実施形態では、本伸縮継手を使用して、ディップレグ28をシールポット26に、またシールポット26を回収導管30に流体連結している。たとえば
図2は、灰回収装置100の一部を図示しながら、シールポット26と回収導管30との間における伸縮継手200の位置を示しているが、
図3は、そのような部品間の接合面の概略的構成を示しており、この内部で伸縮継手200を使用することができる。たとえば、
図3に示すように、伸縮継手200を使用して雄管部、たとえばシールポット26のシールポット出口32を雌管部、たとえば固形物回収導管30へと連結してもよい。
図3に示すように、雄管部32および雌管部の内面に各自、耐火性ライニング34、36をそれぞれ装備してもよい。
【0020】
ここで
図4~
図5を参照すると、伸縮継手200の詳細図が示されている。伸縮継手200は、第1の導管(たとえば、固形物回収導管30)と、第2の導管(たとえば、シールポット出口32)と、第1の導管と第2の導管との中間にあり、第1の導管と第2の導管とを相互に連結するためのほぼ円筒状のリング201とを備える。具体的には、自身の下端で固形物回収導管30の上端を収容し、自身の上端でシールポット出口32の下端を収容するように、この連結リング201を構成している。たとえば、
図4に最良に示すように、円筒状連結リング201はその上端に、第2の導管(たとえば、シールポット出口32)の雄継手部を収容するように構成された雌継手部203を含む。
【0021】
図5に最良に示すように、連結リング201の雌継手部203と第2の導管32の雄継手部とは、相互間に横方向の裂け目202を画定している。図示のように、伸縮継手200は、雌継手部の内周面206と雄継手部の片持ち部の外周面208との間にある裂け目202内に配置された、ロープシール204をさらに備える。すなわち、雄継手部の半径方向外側かつ雌継手部の半径方向内側に、このロープシール204を配置している。
【0022】
一実施形態では、ロープシール204は、横方向の裂け目202内で軸方向に互いに隣り合う第1のファイバーロープ210および第2のファイバーロープ212を有する、二重ロープシールである。一実施形態では、これらのファイバーロープ210、212はセラミックファイバーロープであるが、本発明のより広義の態様から逸脱することなく、他の材料を利用することができる。ファイバーロープ210が、裂け目202に灰および他の固形物が侵入するのを防止するための主要な封止部として機能する一方、ファイバーロープ212は予備部として機能している。隣り合うセラミックファイバーロープで形成された二重ロープシールは、灰回収装置内の高温加圧環境下でとりわけ効果的に機能し、また長時間にわたってすべての動作条件でその完全性を実質的に維持している。その結果、この二重ロープシールが、継手部において灰およびその他の固形物がバイパスしたり、蓄積/固まったりするのを実質的に防止することが分かっている。
【0023】
図5に示すように、鋼線214で、ファイバーロープ210、212を伸縮継手200の雄継手部に固定している。たとえば、図示のように、この鋼線214を両方のファイバーロープ210、212に固定することにより、これらのロープ210、212を互いに対して所定の位置に保持するだけでなく、横方向の裂け目202内の所定の位置に保持することができる。すなわち、鋼線214は、ロープ210、212自体の間に起こり、かつロープ210、212とこれらが固定される雄継手部との間に起こる相対的な運動を防止する。
【0024】
図5にも示すように、伸縮継手200は、耐火性ライニング34を雄継手部の片持ち部に固着させるか、または固定することにより、スポーリングおよび破損を防止することを目的として使用される六角形メッシュ216をさらに備える。また、六角形メッシュ固着部216は耐火性ライニング34の真円度(すなわち、耐火性ライニング34の円筒状性質)を維持し、このことは円滑な動作を確保するのに役立っている。一実施形態では、この六角形メッシュ216を、ランスの有無にかかわらず、約25ミリメートル~約50ミリメートルの六角形メッシュとすることができる。一実施形態では、この六角形メッシュを、ランスを備える25ミリメートルのステンレス鋼六角形メッシュとすることができる。
【0025】
図5に示すように、伸縮継手200は、裂け目202の外側(たとえば、雌継手部)に第2の鋼線220を使用して固着される、断熱軸受け218をさらに備える。一実施形態では、この断熱軸受け218は雄継手部の外周面の周りに収容され、かつ雌継手部の先端面に当接して係合している。この断熱軸受け218を、たとえばセラミックファイバーなどの断熱材料から形成していてもよい。動作温度まで加熱されると、雌継手部(すなわち、灰回収導管30)が軸方向に(垂直に)変位できるようにこの断熱軸受け218を構成しており、その結果として任意の軸方向の裂け目224へのシール機能をもたらしている。
【0026】
上記のように、二重ロープシール、六角形メッシュおよび断熱軸受けによる構成を利用して、シールポット出口を本伸縮継手の連結リング201の上端へと接合している。
図4に示すように、同様のシール構成を利用して、固形物回収導管の上端を連結リング201の下端へと接合してもよい。したがって、上部および下部のシール構成は、
図5に示すベローズおよび他の金物と共に、本発明の伸縮継手を含む。
【0027】
本明細書に記載の伸縮継手では、連結リング201を介して(すなわち、それぞれが二重ロープシール、六角形メッシュおよび断熱軸受けを含む上部および下部のシール構成を両方利用して)、シールポット出口を固形物回収導管に接合し得ることを想定しているが、特定の実施形態ではこの連結リング201を省略でき、これにより、シールポット出口(雄継手部を画定している)を固形物回収導管(雌継手部を画定している)に直接連結することができると考えられている。
【0028】
上記のように、灰/固形物回収装置の導管部品を連結する伸縮継手ならびに関連システムおよび方法では、高温で固形物流が形成されることから起こる大きな軸方向かつ横方向の運動を吸収し、それぞれの導管部品間において灰および固形物が蓄積するのを防止するか、または実質的に最小限に抑えている。これにより、導管部品の耐用年数の延長が促進されることになる。既存のシステムおよび装置とは対照的に、本発明の伸縮継手は、大きな横方向運動を吸収する効果的で非メンテナンス集約型の手段を提供するだけでなく、断熱および封止の両方を実現している。性能試験により、本明細書に記載の伸縮継手は、2200ミリメートルのトグル長さで、80ミリメートルを超える運動を吸収できることが分かっている。
【0029】
一実施形態では、ボイラの固形物回収装置において導管セクションを相互に連結するシステムを提供する。本システムは、雌継手部を画定している第1の導管と、この雌継手部によって収容される雄継手部を画定している第2の導管と、雄継手部の外周面と雌継手部の内周面との間に形成されている横方向の裂け目と、この横方向の裂け目内に配置され、この横方向の裂け目へと固形物が侵入するのを防止するように構成されたロープシールとを備える。このロープシールを、雄継手部の外周面の半径方向外側に、かつ雌継手部の内周面の半径方向内側に配置している。一実施形態では、このロープシールは、横方向の裂け目内で軸方向に互いに隣り合う第1のファイバーロープおよび第2のファイバーロープを有する、二重ロープシールである。一実施形態では、これら第1のファイバーロープおよび第2のファイバーロープはセラミックファイバーロープである。一実施形態では、本システムは、第1のファイバーロープおよび第2のファイバーロープを第2の導管に固着させる鋼線をさらに備えていてもよい。一実施形態では、本システムは、第2の導管の内周内側を被覆している第2の耐火材料と、この第2の耐火材料を第2の導管へと固定している六角形メッシュとをさらに備えていてもよい。一実施形態では、この六角形メッシュは、ランスを備える25ミリメートルのステンレス鋼六角形メッシュである。一実施形態では、断熱軸受けは雄継手部の周りに収容され、かつ雌継手部の先端面に当接している。一実施形態では、この断熱軸受けを鋼線で雌継手部に固定している。一実施形態では、第1の導管は、炉に分離固形物を戻すように構成された固形物回収導管の一部を形成しており、第2の導管はシールポット出口の一部を形成している。一実施形態では、第1の導管はシールポット入口の一部を形成しており、第2の導管は、分離器から固形物を受け取るように構成されたディップレグの一部を形成している。
【0030】
本発明の別の実施形態によれば、固形物回収装置の伸縮継手は、雌継手部と、この雌継手部によって収容される雄継手部であって、これらの雄継手部および雌継手部は相互間に横方向の裂け目を形成している、雄継手部と、この横方向の裂け目内に配置される二重ロープシールであって、この二重ロープシールは、雌継手部と雄継手部との間の相対的な横方向運動を吸収するように構成されている、二重ロープシールと、雄継手部の周りに収容され、かつ雌継手部の先端面に当接している断熱軸受けであって、この断熱軸受けは、雌継手部と雄継手部との間の相対的な軸方向運動を吸収するように構成されている、断熱軸受けとを備える。一実施形態では、二重ロープシールを雄継手部に固定している。一実施形態では、この二重ロープシールは、横方向の裂け目内で軸方向に互いに隣り合う第1のファイバーロープおよび第2のファイバーロープを含む。一実施形態では、これら第1のファイバーロープおよび第2のファイバーロープはセラミックファイバーロープである。一実施形態では、断熱軸受けを雌継手部に固定している。一実施形態では、本伸縮継手は、雄継手部の内周内側を被覆している第2の耐火材料と、この第2の耐火材料を雄継手部へと固定している六角形メッシュとをさらに備える。一実施形態では、雌継手部は、炉に分離固形物を戻すように構成された固形物回収導管の一部を形成しており、雄継手部はシールポット出口の一部を形成している。
【0031】
本発明のさらに別の実施形態によれば、固形物回収装置の導管セクションを相互に連結するシステムを提供する。本方法は、第2の導管の雄継手部にシール要素を固定するステップと、第1の導管の雌継手部に断熱軸受けを固定するステップと、第2の導管の雄継手部を第1の導管の雌継手部と軸方向に位置合わせして、雄継手部の外周面と雌継手部の内周面との間に横方向の裂け目を形成するステップと、この横方向の裂け目内にシール要素を配置するステップとを含む。第2の導管を第1の導管と位置合わせしたときに、雄継手部の周りに収容され、かつ雌継手部の先端面に当接するように、断熱軸受けを構成している。第1の導管と第2の導管との間の横方向運動を吸収するように、シール要素を構成し、また第1の導管と第2の導管との間の軸方向運動を吸収するように、断熱軸受けを構成している。一実施形態では、このシール要素は、横方向の裂け目内で軸方向に互いに隣り合う第1のセラミックファイバーロープおよび第2のセラミックファイバーロープを有する、二重ロープシールである。一実施形態では、本方法は、第2の耐火材料を六角形メッシュで雄継手部へと固定するステップをさらに含む。
【0032】
本明細書で使用する場合、単数形で記載され、なおかつ単語「1つの(a)」または「1つの(an)」の後に続いている要素またはステップは、複数の前記要素またはステップを除外しないものとして理解すべきであるが、そのような除外が明示的に述べられている場合は除く。また、本発明の「一実施形態」への言及が、記載した特徴も組み込んだ別の実施形態の存在を除外するものと解釈されることを意図してはいない。加えて、明示的に相反する記載がない限り、特定の特性を有する要素または複数の要素を「備える(comprising)」、「含む(including)」または「有する(having)」実施形態は、その特性を有しない別の当該要素を含んでいてもよい。
【0033】
本明細書ではいくつかの実施例を用いることで、本発明のいくつかの実施形態を最良の形態を含めて開示し、また、任意の装置またはシステムの製作および使用、ならびに組み込まれた任意の方法の実行を含めて、当業者が本発明の実施形態を実践することができるようにしている。本発明の特許可能な範囲は特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到する他の実施例を含み得る。このような他の実施例は、特許請求の範囲の文言との差がない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言との実質的な差がない等価の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることを意図している。
【符号の説明】
【0034】
10 循環流動層ボイラ
12 炉または燃焼室
14 流動層
16 搬送ライン
18 搬送ライン
20 煙道ガス通路
22 分離器
24 排気通路
26 シールポット
28 ディップレグ
30 固形物回収導管、灰回収導管
32 シールポット出口、雄管部、第2の導管
34 耐火性ライニング
36 耐火性ライニング
100 灰回収装置
200 伸縮継手
201 円筒状連結リング
202 横方向の裂け目
203 雌継手部
204 ロープシール
206 内周面
208 外周面
210 第1のファイバーロープ
212 第2のファイバーロープ
214 鋼線
216 六角形メッシュ、六角形メッシュ固着部
218 断熱軸受け
220 第2の鋼線
224 任意の軸方向の裂け目