(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】機能検査を有するピペット操作装置及びピペット操作装置の機能検査をする方法
(51)【国際特許分類】
B01L 3/02 20060101AFI20221205BHJP
【FI】
B01L3/02 D
(21)【出願番号】P 2020504010
(86)(22)【出願日】2018-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2018070278
(87)【国際公開番号】W WO2019020740
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-10-13
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501186645
【氏名又は名称】エッペンドルフ・ソシエタス・エウロパエア
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf SE
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ウーベ ドゥンカー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シッケ
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ダービト
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00571100(EP,A1)
【文献】特開2008-176138(JP,A)
【文献】国際公開第2016/087046(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00-99/00
G01M 3/00- 3/40
G01N 1/00- 1/44
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペット操作装置(1、1’、1a、1b)のピペット操作に用いられる吸い込み機構の少なくとも1つの出力状態を認識する方法(200)であって、
前記吸い込み機構は、電気的に駆動されるモータ(14)、ピストンチャンバ(18)、及びその中に移動可能に配置されて、該モータによって駆動されるピストン部材を有し、
前記ピストン部材の運動によって、前記ピストンチャンバの開放した吸い込み通路(19)を通る流体の流れを形成しながら、流体の吸い込みをもたらすことができ、前記ピペット操作装置は、物理的な作業を特徴づける測定量として、モータによって消費されたモータ電流を検出するように、構成されており、
前記物理的な作業は、前記吸い込み機構による前記ピストン部材の電気的に駆動される移動によって行われ、
前記方法は、ピペット操作装置のデータ処理する制御装置(15)によって実施可能な以下のステップ:
a)ピストン部材の定められた運動に従って、前記測定量の少なくとも1つの値を検出し:(201)
b)少なくとも1つの測定量を少なくとも1つの参照値と比較し;(202)
c)ステップb)における比較を用いて、前記吸い込み機構の正常な出力状態が存在するか、エラーのある出力状態かを決定し、
d1)前記吸い込み機構のノーマルな出力状態が存在するか、エラーのある出力状態か、の情報を、光学的及び/又は音響的な出力装置を用いてユーザーに出力し、及び/又は、
d2)ステップb)の後に、前記測定量の時間的推移を不揮発性メモリに記憶する、
ステップを備える、方法。
【請求項2】
ステップa)が、ユーザーによって開始され、前記ピペット操作装置によって実施されるピペット操作プロセスの前の時点で実施される、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa)は、少なくとも1つの出力状態の認識のみに用いられる、前記ピストン部材の運動の間に実施される、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
ステップa)は、自動的に、前記ピペット操作装置の制御装置によって制御されて、機能検査プログラムの実施によって実施される、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記ピペット操作装置は、抵抗装置(20)を有し、前記抵抗装置によって、方法の実施の間に、前記モータによって行われる物理的な作業に対する吸い込み機構の機械的な抵抗が高められる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抵抗装置は、閉鎖部材(20)であって、前記閉鎖部材によって吸い込み通路(19)が少なくとも部分的にブロックされ、又は完全に閉鎖される、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記閉鎖部材は、閉鎖キャップ(20)である、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記ピストン部材の運動の間にステップa)で、測定量のNの数の値が測定され、ステップc)で記憶され、測定と記憶とが交互に行われる、請求項1から
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記モータは、直流モータ(14)であって、前記直流モータが、消費したモータ電流についての情報を電気的な接点を介して提供する、請求項1から
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
e)この測定量のこの少なくとも1つの値を、ピペット操作装置のデータメモリ装置(15a)に記憶する、(203)、
ステップを備える、請求項1から
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ラボ内で流体の試料をピペット操作するためのピペット操作装置(1;1’;1a)、であって、
電気的に駆動されるモータ(14)、ピストンチャンバ(18)、及びその中に移動可能に配置されて、前記モータによって駆動されるピストン部材(12)を有する吸い込み機構であって、前記ピストン部材の移動によって、前記ピストンチャンバの開放した吸い込み通路(19)を通る流体流を形成しながら、流体の吸い込みをもたらすことができる、吸い込み機構と、
データ処理する制御装置(15)であって、少なくとも1つのデータメモリ装置(15a)を有する、制御装置(15)と、
物理的な作業を特徴づけるための測定量として、モータによって消費されたモータ電流を検出するための測定装置(16a)と、を備え、
前記物理的な作業は、前記吸い込み機構によるこのピストン部材の電気的に駆動される移動によっておこなわれ、
前記制御装置は、前記ピペット操作装置の出力状態を認識するために、
a)前記ピストン部材の定められた運動に従って、前記測定量の少なくとも1つの値を検出し、
b)前記測定量の少なくとも1つの値を、少なくとも1つの参照値と比較し、
c1)選択的に、前記測定量の少なくとも1つの値をデータメモリ装置に記憶し、
c2)ステップb)における比較を用いて、前記吸い込み機構の正常な出力状態が存在するか、エラーのある出力状態か決定し、
d1)前記吸い込み機構のノーマルな出力状態が存在するか、エラーのある出力状態か、の情報を、光学的及び/又は音響的な出力装置を用いてユーザーに出力し、及び/又は、
d2)ステップb)の後に、前記測定量の時間的推移を不揮発性メモリに記憶する、
ように構成されている、ピペット操作装置。
【請求項12】
抵抗装置(20)をさらに備え、
前記抵抗装置によって、方法の実施の間に、前記モータによって行われる前記物理的な作業に対する前記吸い込み機構の機械的な抵抗が増大される、請求項
11に記載のピペット操作装置。
【請求項13】
請求項
11に記載のピペット操作装置と、抵抗装置と、からなるシステムであって、
前記抵抗装置によって、方法の実施の間に、前記モータによって行われる前記物理的な作業に対する前記吸い込み機構の機械的な抵抗を高めることができる、システム。
【請求項14】
請求項
1に記載の方法を前記ピペット操作装置内に実装するためのプログラムコードであって、
前記ピペット操作装置のデータ処理する制御装置によって、前記ピペット操作装置が請求項
11から
13のいずれか1項に記載の特徴を有するピペット操作装置であるか、あるいは前記ピペット操作装置によって請求項
1に記載の方法が実施可能であるように、実施可能である、プログラムコード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能検査を有する電気的なピペット操作装置及び電気的なピペット操作装置の機能検査をする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ここでは、ピペット操作装置と称するのは手で保持するラボ器具であって、そのラボ器具は通常、医療、バイオロジー、バイオケミカル、化学及び他のラボラトリーにおいて使用される。それらはラボ内で、小さい体積の流体の試料を正確に配量して移送するため、及びこの種の体積を様々な試料容器間で移送するために、用いられる。ピペット操作装置において、たとえば流体の試料が負圧を用いてピペット容器、たとえばピペットチップ内へ吸い上げられて、そこに保管され、かつ目標場所において再びこれらから放出される。電子的なピペット操作装置は、少なくとも1つの電子的な駆動パラメータを使用し、その駆動パラメータがピペット操作装置の駆動を少なくとも調節し、あるいは制御する。電子的なピペット操作装置は、以下においては短く「ピペット操作装置」とも称される。
【0003】
ピペット操作装置に属するのは、たとえば手で持つピペットと反復ピペットであって、その場合に後者はディスペンサーとも称される。ピペットというのは、器具に対応づけられた、特にピストンを有することができる運動装置を用いてピペット操作すべき試料を、ピペットと取り外し可能に結合されたピペット容器、特にピペットチップ内へ吸い上げることができる器具である。エアクッションピペットにおいては、器具にピストンが対応づけられており、かつピペット操作すべき試料とピストン端部との間にエアクッションが存在し、そのエアクッションは試料をピペット容器内へ収容する際に負圧下にあって、その負圧によって試料がピペット容器内へ吸い上げられ、かつ/又はピペット容器内に保持される。ディスペンサーというのは、特にピストンを有することができる運動装置を用いてピペット操作すべき試料を、ディスペンサーと接続されたピペット容器内へ、特に射出原理に基づいて形成されたディスペンサーチップ内へ吸い上げることができる器具であって、その場合に運動装置は、たとえばピストンがピペット容器内に配置されていることによって、少なくとも部分的にピペット容器に対応づけられている。ディスペンサーにおいては、ピストン端部はピペット操作すべき試料のきわめて近傍に位置し、あるいはそれと接触し、それによってディスペンサーはダイレクト押し出しピペットと称される。ピペットチップあるいはディスペンサーチップは、好ましくはプラスチックからなり、使い捨て製品として使用後は廃棄し、もしくは新鮮なピペットチップ又はディスペンサーチップと交換することができる。ピペットチップ又はディスペンサーチップは、種々の体積領域内で配量するために種々の大きさで提供される。
【0004】
ピペット操作装置において、1回の操作によって放出される試料量は、器具内へ吸い上げられる試料量に相当することができる。しかしまた、複数の放出量に相当する、収容されている試料量をステップ毎に再び放出することもできる。さらに、シングルチャネルピペット操作装置とマルチチャネルピペット操作装置の間で区別され、その場合にシングルチャネルピペット操作装置は唯一の放出/収容通路のみを有し、マルチチャネルピペット操作装置は複数の放出/収容通路を有しており、それらは特に複数の試料を並列に放出又は収容することを許す。
【0005】
手で持つ電子ピペットの例が、ドイツ、ハンブルクのEppendorf AGの登録商標Eppendorf Xplorerと登録商標Xplorer plusである。手で持つディスペンサーの例は、ドイツ、ハンブルクのEppendorf AGの登録商標Multipette E3と登録商標Mutiptte E3xである。本発明に係るピペット操作装置と同様に、これらの器具は、ピペット操作移動可能な部分、特にピストンがピペット操作装置の電気的なモータ装置によって移動されることにより、電気的に駆動される。
【0006】
電気的なピペット操作装置は、非電子的なピペット操作装置に比較して多数の利点を提供する。というのは、多数の機能が簡単なやり方で実装できるからである。特に、電子的なピペット操作装置においては、プログラム制御される所定のピペット操作プロセスが自動化され、あるいは部分自動化されることによって、それらの実施が簡略化される。しかるべきピペット操作プログラムを用いてこの種のピペット操作プロセスを制御するための典型的な駆動パラメータは、液体を吸い上げ、あるいは放出する場合の体積、その順序及び繰り返し、そして場合によってはこれらのプロセスを時間的に分割する場合の時間的なパラメータに関する。
【0007】
ピペット操作装置は、液体体積の配量とそれに伴って測定に用いられる。測定手段として、ピペット操作装置は多くの場合において測定手段監視を受ける。その場合に機器の規則的な較正が必要である。較正は、定められた物理的条件のもとで資格のある人によってISO8655に留意して実施されなければならない。典型的に、この比較的時間とコストのかかるプロセスは、6から12ヶ月の間隔で行われる。ピペット操作装置を仕様に従って使用する場合に、通常、この種のインターバルで充分である。しかし、ラボ作業の典型的なシナリオは、特に複数の適用者が同一の器具を使用する場合に、適用者は器具ステータスに関して疑いをもつ状況を含んでいる。したがって適用者の側においては、各時点で実施可能な、ピペット操作装置のための簡単な機能検査が望まれ、その機能検査がピペット操作装置の出力状態を求め、かつ特に確実な良/否説明を許す。
【0008】
特許文献1(欧州特許第0658769(B1)号明細書)と特許文献2(国際公開第96/41200(A1)号)は、内蔵された密閉性検査を有する固定のピペット操作自動機を記述しており、それにおいて自動化された密閉性検査が適用される。これにおいて、吸い込みシステムと接続されたピペット操作ヘッドが自動的に位置決めされ、それによって種々の位置においてその吸い込みシステム内に存在する(負)圧が、吸い込みシステムに内蔵された圧力センサによって測定される。このコンセプトは、全自動で作動しない、手動で取り扱われるピペット操作装置のためには、適用できない。
【0009】
したがって特許文献3(欧州特許第2494328(B1)号明細書)には、密閉性検査装置を用いて手で持つピペット操作装置の密閉性を検査する方法が提案され、その密閉性検査装置は、あらかじめ定められた検査条件のもとでピペットチップに生じる圧力を測定して、参照値と比較することによって、ピペット操作装置と組み合わせて使用される。そのためにこの密閉性検査装置は、真空ポンプ、ピペットチップ収容部、導管、弁、データメモリと表示装置を備えた電子的な制御装置及び圧力センサを有している。この解決は、複数のピペット操作装置を検査するために唯一の密閉性検査装置しか必要としない、という利点を提供する。他方では、ラボ内の複数のピペット操作装置の機能検査は、唯一の検査装置の機能能力に著しく依存し、その検査装置は別体の測定器具として別に保守されなければならず、かつ提供可能でなければならない。
【0010】
同様なやり方で、特許文献4(欧州特許出願公開第0571100(A1)号明細書)は、手で持つピペット操作装置を記述しており、その負圧シリンダが外部から圧力センサと接続され、それによって所望の体積をピペット操作する場合に、前もって獲得されている参照圧力カーブと比較することにより、負圧シリンダの密閉性の推定が可能となる。このコンセプトも、同様に、ピペットにおける密閉性問題を求めることに向けられている。
【0011】
特許文献5(米国特許出願公開第2014/0137980(A1)号明細書)も、ピペット操作装置によって所望の体積をピペット操作する場合の異常を認識する方法を記述しており、そのピペット操作装置は内蔵された圧力センサを有している。前もって2つの参照圧力カーブが求められて、任意の体積をピペット操作する際に求められた圧力推移が予測される領域内にあるか、を評価するために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】欧州特許第0658769(B1)号明細書
【文献】国際公開第96/41200(A1)号
【文献】欧州特許第2494328(B1)号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0571100(A1)号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0137980(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ピペット操作装置において機能検査するための上述したコンセプトは、部分的に適用可能であり、かつ機能検査の範囲内に限定されている。したがって本発明の課題は、ピペット操作装置において機能検査する、改良された方法及び機能検査を有する改良されたピペット操作装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明はこの課題を、特に、請求項1に記載の方法、請求項2に記載の方法、請求項12に記載のピペット操作装置及び請求項15に記載のピペット操作装置によって解決する。好ましい形態が、特に下位請求項の対象である。
【0015】
第1の好ましい実施形態における本発明に係る方法は、特にピペット又は反復ピペットの、ピペット操作装置のピペット操作に用いられる吸い込み機構の少なくとも1つの出力状態を認識するために、用いられ、その場合に吸い込み機構は電気的に駆動されるモータ、ピストンチャンバ及びその中に移動可能に配置されて、モータによって駆動されるピストン部材を有しており、そのピストン部材の運動によって、ピストンチャンバの開放した吸い込み通路を通る流体流を形成しながら、流体の吸い込みをもたらすことができ、その場合にピペット操作装置は、物理的な作業を特徴づけるための測定量として、モータによって消費されるモータ電流を検出するように、整えられており、その物理的な作業は、吸い込み機構によってこのピストン部材の電気的に駆動される運動によっておこなわれ、かつ
その場合に方法は、ピペット操作装置のデータ処理する制御装置によって実施可能な以下のステップを有する:
a)ピストン部材の定められた運動に従って、この測定量の少なくとも1つの値を検出し、
b)少なくとも1つの測定量を少なくとも1つの参照値と比較する。
【0016】
好ましくは、この測定量のこの少なくとも1つの値を、ピペット操作装置のデータメモリ装置に記憶する、ステップが設けられている。このステップは、好ましくはステップa)の後に、かつ特にステップb)の前に実施される。ステップb)においてデータ処理の目的で記憶することは、特に揮発性のデータメモリにおいて行うことができ、不揮発性のデータメモリ内の記憶は、特にステップb)の後に行うことができる。
【0017】
ピストン部材の定められた運動は、特に1つ又は複数の位置におけるピストンの滞留時間とすることもできる。この滞留時間の間にモータ電流が参照値からずれた場合、特にピストンの滞留位置内でモータ電流が変化した場合、特にあらかじめ定められた許容される許容誤差領域の外部にくる程度に減少した場合に、それに基づいて、吸い込み機構もしくはピストンチャンバ内の非密閉性を推定することができる。
【0018】
出力状態を定めるため、特にピストンチャンバの非密閉性を求めるための、本発明に係る方法の他の好ましい実施形態は、ピストン部材をあらかじめ定められた位置へ、かつ/又は測定量のためのあらかじめ定められた位置が存在するまで、移動させ、その後ピストン部材を停止させ、かつ/又はモータをオフにし、そして、たとえば5msと5sの間で選択することができる滞留時間後に、あらたにモータを始動させて、ピストン部材をさらに移動させ、かつ/又は測定量を求める、ステップを有している。代替的又は付加的に、測定量のあらかじめ定められた値あるいは測定量の他のあらかじめ定められた値が存在するまでの間、モータが駆動されると、効果的であって、それは、特に測定量を繰り返し求めることによって求めることができる。測定量のこのあらかじめ定められた値は、特に最大許容されるモータ電流(最大のモータ電流)とすることができる。最大のモータ電流は、モータ内、あるいは電子的な制御装置、特にピペット操作装置のデータ処理する制御装置内、特に電子基板上に組み込まれた安全装置がモータをオフにする値とすることができる。最大のモータ電流は、ピペット操作装置のメーカーによって定められた他の値とすることもできる。方法は、特に、ピストン部材を最大の電流に達するまで移動させ、その後モータをオフにすることができる;上述した安全装置の場合においては、モータは自動的にオフに切り替わり、その場合に特にモータの新たな始動とオフの間の期間を求めることができる。あらかじめ定められた滞留時間後に、モータが新たに始動される。最大のモータ電流に即座に達することによってモータが即座にオフになった場合に、ピストンチャンバが密閉されていると、推定することができる。それに対してモータが再び即座にオフにならない場合には、非密閉性が推定される。というのは、この場合においては、ピストンチャンバからあらたに空気が引き出され、もしくは代替的に、最大のモータ電流に達するまで、チャンバ内に存在する空気があらたに圧縮されるからである。
【0019】
以下の説明は、はっきりと異なる記載がない場合に、同様に本発明に係るピペット操作装置及び本発明に係る方法に関する。上述した選択的かつ好ましい措置は、本発明に係る方法の選択的な方法ステップとして、特にしかるべく整えられたピペット操作装置もしくはピペット操作装置の電子的な制御装置に実装することができる方法ステップとして、設けることができる。これは特に、電子的な制御装置によって実施することができる、しかるべく適合された制御プログラムコードによって実現することができる。
【0020】
本発明の第1の視点によれば、モータ電流とも称される、電気モータによって消費される電流は、ピペット操作装置の出力状態を求めるために、パラメータとして利用される。本発明の基礎となる実験において、吸い込み機構のエラー状態を求めるだけでなく、出力状態も差別化して判断するために、モータ電流が選択的なパラメータとして求められた。そのために、測定量の少なくとも1つの測定値が記憶されて、本発明の所定の実施形態においては永続的に記憶され、したがって後の比較のために提供可能であり続けると、効果的である。
【0021】
本発明の他の視点によれば、特に好ましくは、ピペット操作装置に抵抗装置、特に吸い込み通路のための別体の閉鎖部材が設けられ、それによって吸い込み機構の駆動中に生じ、かつ検出すべきしかるべきモータ出力を必要とする、機械的及び/又は油圧的な抵抗が好ましいやり方で高められる。
【0022】
電気的なモータ、特に直流モータは、電気的な出力Pelを使用して、それを機械的出力Pmechに変換する。損失出力が発生し、それはノーマルな状態のものでは、モータの電気的出力と機械的な出力(作業出力)との差から生じる。作業出力は、所望の体積をピペット操作する場合に、ノーマルな状況のもとでそのために生じる機械/油圧作業を実施するために適用される出力である。適切な直流モータは、日本、大阪のC.I.Takiron Corporationから、特に「DCコアレスモータA12シリーズ」タイプのモータ、たとえばA12B-24-Sとして提供される。
【0023】
モータの作業出力は、典型的なやり方で、回転数n(単位時間あたりの回転の数)で乗算した、モータ軸に生じるトルクMに比例する。モータの損失出力は、ノーマルな摩擦出力を有し、それはもたらすべき機械的な作業出力の一部と見なすことができる。損失出力は、さらに、モータ巻き線の電気的抵抗Rによる熱損失PWを有している。この熱損失は、PW=R*I2として示すことができる。したがってモータ単独でもたらすべき出力は、Pel=Pmech+PWである。ピペット操作する際にモータがピストンチャンバ内のピストン部材を、特に機械的なギア機構を介して、駆動する場合に、他の摩擦損失と吸い込み/放出する際の油圧出力が生じる。エアクッションピペットの場合においては、ピストンが近位の方向に、したがってピペットチップから離れるように移動する場合に、ピストン部材と流体の試料との間でエアクッションが膨張し、放出する場合には(重力に基づく放出速度を超えて)圧縮される。ダイレクト排除器の場合には、流体は実質的に液状の試料であって、その試料がディスペンサー容器内へ吸い込まれ、もしくはそこから放出される。
【0024】
あらかじめ定められたピペット操作速度Vpipによって所望の体積Vのピペット操作の作業出力Parbをもたらす際の、ノーマルな状況におけるモータ電流の通常の時間的推移Imot(t;Parb)は、既知であることを前提とすることができる。というのは、この情報は、工場側の参照測定によって、あるいはピペット操作装置の駆動において行われた参照測定によって求められて、ピペット操作装置のデータメモリ装置内に記憶されるからである。この既知の推移Iref=Imot(t;Vpip;V)は、参照推移として、もしくは参照データの形式で、記憶することができる。この時間的な推移は、複数の値ペア(Imot;t)からなることができ、あるいはピペット操作する場合に定められた時点t0で検出された、1つの値Imotからなることができる。
【0025】
モータ電流Imot(t;Parb)は、実際の駆動においては、ピペット操作装置の種々の他の状態変量に依存している。しかるべき作業出力をもたらすためのあらかじめ定められた負荷におけるモータ電流の時間的推移の偏差は、ピペット操作装置の出力変化、特に出力損失の尺度として利用することができる。ピペット操作装置の所定のエラー状態は、モータを介しての出力消費の増大をもたらす。参照データとしてまえもって所定の、特に負荷に依存する、電流値が利用されることにより、測定データと参照データの比較評価によって、ピペット操作装置のエラー状態が存在すか否かについての決定を行うことができる。
【0026】
可能なエラー状態は、特に、吸い込み機構内の非密閉性又は汚れ、特にピストン部材-ピストンチャンバ-吸い込み通路系内の非密閉性と汚れ、電気モータ、その軸及び選択的なギア機構を含めた駆動システム内の汚れ、電気モータの可能な大まかなステップエラー、かつ/又は吸い込み機構に含まれる1つ又は複数の構成要素の著しい損耗もしくは摩耗に、基づいている。この種のエラー状態は、ピペット操作装置の駆動中に突然生じて、ピペット操作する際に問題をもたらすことがあり得る。したがって特に、この種のエラー状態に関して、特に簡単に実施できる、好ましくはシステマティックな、あるいは少なくともユーザーによって開始される、ピペット装置の観察もしくは試験が望ましい。
【0027】
好ましくはステップa)は、ピペット操作装置の駆動中にユーザーによって開始される(レギュラーな)ピペット操作プロセスの実施の前に実施される。この場合においてステップa)は、特に少なくとも1つの出力状態の認識のためだけに用いられる、ピストン部材の運動の間に実施される。これは、この運動が-レギュラーな-ピペットプロセスの実施には用いられず、かつ機能検査の間、特にラボ試料はピペット操作されないことを、意味している。好ましくは代替的に、ステップa)はピペット装置の駆動中にユーザーによって開始される(レギュラーな)ピペット操作プロセスの間に実施され、それにおいて特にラボ試料がピペット操作される。
【0028】
本発明のそれぞれ好ましい実施形態において、機能検査は、ピペット操作装置のレギュラーな駆動の前、後あるいはその間に実施される。-レギュラーな-ピペット操作プロセスの実施の間に機能検査を実施するために、この種のレギュラーなピペット操作プロセスは、あらかじめ定められた負荷とみなされる。ピペット操作プロセスにおいて、ユーザーによって選択された体積を有する液状の試料が、あらかじめ定められた、あるいはユーザーによって調節されたピペット操作速度でピペット操作される。その場合に好ましくは、ユーザーによって選択された、その体積とピペット操作速度が提供可能な参照データにも基づいている、ピペット操作プロセスが利用される。それによって、測定されたモータ電流-及びそれに伴って果たされた作業出力-とこれらの条件のもとで有効な参照値、したがって理想値との間の正確な比較を実施することができる。これは、特に方法のステップb)において行われる。
【0029】
好ましくは、ステップa)は、ピペット操作装置の駆動中にユーザーによって開始される(レギュラーな)ピペット操作プロセスの間に、特にピペット操作プロセスの開始時に、特にピペット操作プロセスの始動から複数ミリ秒以内に、特にピペット操作プロセスのN秒以内に実施され、Nは、好ましくは100から1000、100から2000あるいは100から4000の領域から選択される。それによってエラー状態は、早期に認識することができる。ステップa)で行われる測定プロセスにおいて、特にピストン部材の移動の間に測定量のNの数の測定値が検出され、それらは、たとえば時間的に等間隔のステップにおいて、あるいはモータ回転の等間隔の間隔において、もしくはピストン部材の位置の等間隔の間隔において、求めることができる。比較に利用される参照データは、同様に好ましくはNの電流値を有している。測定量の測定データセット内の電流値の数が、参照データ内の電流値の数と異なる場合には、補間又は補外を行うことができる。
【0030】
ピストン運動の間に、ピストンチャンバ内に負圧が発生され、その負圧によって流体が吸い上げられる。圧力pと体積Vの積は、空気の場合においてはボイル-マリオット法則に従って理想的には一定(p*V=一定)であるので、理想的な場合において圧力上昇は、膨張する体積もしくはピストン部材の移動距離に間接的に比例する。その場合に測定されたモータ電流推移は、ピストンチャンバ内の圧力推移に実質的に比例する。同様なことが、流体の試料を放出するためにピストンチャンバ内に過圧を発生させる場合についても言える。
【0031】
ピストン運動の間に、あらかじめ定められた電流値が存在する時点を求めることもできる。たとえば、-ステップa)におけるピストン運動の時点から間隔をおいて-、測定量の少なくとも1つのあらかじめ定められた値が生じる少なくとも1つの時点を求めることができる。
【0032】
好ましい展開においては、ピペット操作プロセスに適した参照データを定めるために、少なくとも第1の参照データと第2の参照データが使用される。データ操作、特に補間又は補外によって、第1と第2の参照データから第3の参照データを求めることができる。ピペット操作装置内で、たとえば、ノーマル速度においてピペット操作すべき体積V1のための第1の参照データIref1と、ノーマル速度においてピペット操作すべき体積V2のための第2の参照データIref2が提供可能であり、かつユーザーによって選択されたピペット操作体積V3がV1とV2の間にあり、したがってV 1<V3<V2である場合に、第2の参照データIref3を定めるために、補間機能、たとえばIref1=(V3-V1)/(V2-V1)*(Iref1+Iref2)に基づいて、線形の補間を使用することができる。
【0033】
本発明の他の好ましい実施形態において、機能検査は、ピペット操作装置のレギュラー駆動の外部で実施される。この好ましい実施形態において、機能検査は好ましくは専用の機能検査プログラムの間に実施され、したがってその場合にユーザーによって開始されるレギュラーのピペット操作は実施されない。本発明のこの好ましい実施形態において、機能検査は特に好ましくは、ピペット操作装置のピペット操作プロセスの実施前の時点で実施される。この時点は、特に、機能検査がユーザーによって、ピペット操作装置のユーザーインターフェース装置による能動化によって開始されることにより、ユーザーによって定めることができる。しかしこの時点は、特に本発明のいくつかの実施形態においては、制御装置によって定めることもできる。この好ましい実施形態において、機能検査は好ましくは専用の機能検査プログラムの間に実施され、したがってそれにおいては、ユーザーによって開始されるレギュラーのピペット操作は実施されない。この機能検査プログラムは、特にピペット操作プロセスの前に実施される。
【0034】
好ましくはピペット操作装置は、少なくとも1つの機能検査プログラムを実施するように整えられている。機能検査プログラム内で、好ましくは本発明に係る方法が実現される。好ましくはピペット操作装置は、ユーザーインターフェース装置を有し、かつ好ましくは、ユーザーが少なくとも1つの機能検査プログラムを開始することができるように、整えられている。機能検査プログラムは、機能検査を実施する際にユーザーを支援するように、整えることができる。そのために特に、ユーザーに、ピペット操作装置のユーザーインターフェース装置を介して指示を出力することができ、その指示は特に、ピペット操作装置に抵抗装置、特に閉鎖部材を固定し、あるいは能動化することを、有することができる。l
【0035】
機能検査プログラムは、好ましくは自動的に、ピストン部材のあらかじめ定められた運動を発生させる。このあらかじめ定められた運動は、好ましくは少なくともあらかじめ定められた目標体積を少なくともあらかじめ定められたピペット操作速度で吸い上げる(あるいは放出する)ように、整えられている。正確に1つの目標体積を1つのピペット操作速度でピペット操作することができ、あるいは複数の体積を同じピペット操作速度で、あるいは複数の異なるピペット操作速度で、セクション的にピペット操作することができる。この場合において「目標体積のピペット操作」というのは、特に、ピストン部材が初期位置から、ノーマルな状況において所望の目標体積のピペット操作をもたらす距離だけ移動されることを、意味している。吸い込み通路が、たとえば閉鎖部材によって閉鎖されている場合に、体積は吸い込まれず、ピストンチャンバ内のしかるべき圧力変化のみがもたらされ、その圧力変化はモータ出力Umot*Imotによってもたらされる。しかし機能検査プログラムは、実際の液状の参照資料においても実施することができる。
【0036】
代替的に、あらかじめ定められた運動は、好ましくは、あらかじめ定められた時間内にあらかじめ定められた目標体積を吸い込む(あるいは放出する)ように、整えられている。代替的に、このあらかじめ定められた運動は、好ましくは測定量の少なくとも1つのあらかじめ定められた値に達し、かつその場合に以下の値の少なくとも1つを測定して記憶するように、整えられている:ピストン運動の開始から少なくとも1つの値に達するまでの期間;少なくとも1つの値に達した場合の最終体積もしくはピストン位置;少なくとも1つの値に達するまでのモータ回転の数。
【0037】
吸い込み通路に、流体のピペット操作の際にあらかじめ定められたやり方で抵抗を高める、抵抗装置が設けられている場合には、ピストンが移動する場合にあらかじめ定められた物理的な作業がなされ、かつ機能検査プログラムの間にあらかじめ定められた出力が必要とされ、その出力はピストンチャンバ内の圧力のあらかじめ定められた上昇に表れ、かつ/又はそれにあらかじめ定められたやり方で依存する、モータ電流に対する関係に表れる。これらの予測値は、特に実験的に前もって定められており、かつピペット操作装置には参照データとして知られている。ステップa)において、測定量の少なくとも1つの値を測定することによって、特にピペット操作装置が抵抗装置を有している場合に、効率的な機能検査を実施することができる。
【0038】
抵抗装置は、好ましくは別体の部分であって、それは特に、ピペット操作装置の吸い込み通路に取り付け可能であって、それによってピペット操作する際に流体流に対してあらかじめ定められた抵抗を加えることができ、特に、吸い込み通路が閉鎖部材によって完全に閉鎖される場合には、実際に無限に高い抵抗を加えることができる。
【0039】
好ましくは抵抗装置は、閉鎖部材として実現されており、その閉鎖部材は、吸い込み通路が閉鎖部材によって完全に閉鎖される場合に、ピペット操作する際に流体流に実際に無限に高い抵抗を加える。この場合において、ピストン部材が引き戻される場合に、ピストンチャンバ内及び吸い込み通路内に含まれている空気が膨張し、もしくはピスト部材が押し下げられる場合に、圧縮される。このようにして、ピペット操作装置のきわめて効率的に適した負荷状況を発生させることができ、その負荷状況内で機能検査を確実に実施することができる。
【0040】
閉鎖部材は、閉鎖キャップとすることができ、その閉鎖キャップは特に、レギュラーなピペットチップ又はディスペンサーチップのように、ピペット操作装置の接続セクション、特に作業円錐(ワーキングコーン、Arbeitskonus)上に取り付けること、もしくはかぶせることができる。閉鎖キャップは、特にピペット容器、たとえばピペットチップ又はディスペンサーチップとすることができ、その通過通路、特にその流出開口部は、閉鎖されている。閉鎖キャップは、特にピペット容器、たとえば市場で一般的なピペットチップ又はディスペンサーチップのように成形することができ、その通過通路、特にその流出開口部は、閉鎖されている。通過通路は、ピペット容器のボディから形成され、そのボディの両方の端部は開放されている。ボディは、円錐状かつ/又は円筒状に成形された端部を備えた、実質的に円筒ジャケットの形状を有しており、その場合に一方の端部がピペットの作業円錐のための係合開口部を有し、他方の端部は流出開口部を有している。ピペット操作装置の吸い込み通路は、特に接続セクションもしくは作業円錐の外側の端部内で終了している。その場合に閉鎖キャップは、閉鎖位置において、接続セクションもしくは作業円錐に気密に添接している。これは特に、接続セクションもしくは作業円錐をあらかじめ定められた高さにおいて包囲することができる、エラストマーのシールリングによって達成される。作業円錐は、エアクッションピペットの場合には、ピペットチップを吸い込み通路と気密に接続するために、好ましい形態を有している。
【0041】
単純な閉鎖キャップとしての形態は、効率的な解決である。閉鎖キャップは、ポリマーを有し、あるいはポリマーから、特に鋳造方法、たとえば射出成形方法によって、形成することができる。閉鎖キャップは、金属から形成し、あるいは金属、特に鋼又はアルミニウムを有することもできる。
【0042】
閉鎖部材を取り付ける場合に、閉鎖部材が吸い込み通路もしくは接続セクション(作業円錐)の気密な接続の瞬間からさらにはめ込まれた場合に、ピストンチャンバ内に望ましくない、かつ測定結果を変化させる圧力上昇が生じることがあり得る。したがって、定められた開放横断面を備えた開口部を有する、閉鎖部材の実施形態が可能かつ好ましく、場合によっては取り付けによってピストンチャンバ内に発生される圧力上昇は、その開口部を通して周囲圧との圧力補償によって、機能検査プログラムが開始される前に、再び元の状態に戻ることができる。定められた開口部を有するこの種の閉鎖部材は、特に従来のピペットチップもしくはディスペンサーチップとすることができる。好ましくは、閉鎖部材を使用する場合に、機能検査プログラムが始動される前に、吸い込み通路が気密に閉鎖される。特に好ましくは、閉鎖部材がその終端位置において接続セクションもしくは作業円錐に支持される場合に、吸い込み通路は気密に閉鎖される。
代替的に、閉鎖部材は弁、たとえば逆止め弁、あるいは閉鎖可能な開口部を有することができるので、閉鎖位置において圧力補償が手動で、あるいはピペット操作装置によって制御されて、可能である。接続セクションは、弁を有することができ、その弁によって吸い込み通路が1方向又は両方向に閉鎖可能とすることができ、もしくはその開口横断面をあらかじめ定められたやり方で変化させることができる。弁は手動で制御可能とすることができ、あるいは制御装置によって電気的に制御可能とすることができる。
【0043】
好ましくは抵抗装置、特に閉鎖部材が、ピペット操作装置に内蔵され、あるいはピペット操作装置と接続されている。好ましくは閉鎖部材は、ピペット操作装置の移動可能な部分として設けられており、その部分は、閉鎖位置を形成するために、手動又は電気的に制御されて移動可能であって、その閉鎖位置において閉鎖部材が吸い込み通路にあらかじめ定められた流れ抵抗を加え、特に流れ通路を閉鎖する。閉鎖部材は、たとえば吸い込み通路内へ、それを閉鎖するために進入可能であり、特に長手方向又は横方向に進入可能な、構成部材とすることができる。閉鎖部材は、たとえばラッチ、堰板又はフラップとすることができる。
【0044】
ピペット操作装置は、好ましくは接続セクションを有しており、その中へ吸い込み通路が連通する。接続セクションは、好ましくはピペット操作装置の作業円錐である。好ましくは接続セクションが移動可能な閉鎖部材を有しており、その閉鎖部材が第1の位置と第2の位置の間で移動可能、特に並進及び/又は回転によって移動可能である。閉鎖部材と接続セクションは、好ましくは吸い込み通路が第1の位置において、特に完全に、開放され、第2の位置においては、特に完全に、閉鎖され、特に気密に閉鎖されるように、形成されている。移動可能な閉鎖部材は、作業円錐の一部、特に円錐台の外側形状を有することができる、作業円錐の尖端を形成することができる。閉鎖部材は、ピストン部材の好ましくは線形の運動のバーチャルな軸線を中心に第1の位置と第2の位置の間で回転可能に、作業円錐と接続することができる。
【0045】
移動可能な閉鎖部材は、手動で変位可能に整えることができる。付加的又は代替的に、移動可能な閉鎖部材は、特にギア装置によって、かつ/又はピペット操作装置の制御装置によって操作されて、装置的に変位可能に整えることができる。好ましくはピペット操作装置はアクチュータ装置を有しており、それによって移動可能な閉鎖部材が装置的に変位可能である。移動可能な閉鎖部材が接続セクションもしくは作業円錐に配置されている場合に、手動で駆動されるアクチュエータ部材、特に押しボタン、あるいはアクチュエータ装置の機械的に駆動されるアクチュエータ部材、たとえばモータ駆動される構成部分は、接続セクションから離隔してピペット操作装置に配置することができ、特にピペット操作装置の、長手軸に沿って離隔して配置されたハウジングセクション内に、あるいはそれに、配置することができる。その場合にアクチュエータ装置は、遠隔部材を有することができ、その遠隔部材によってアクチュエータ部材の能動が上述した距離を介して移動可能な閉鎖部材へ伝達される。
【0046】
移動可能な閉鎖部材を作動させるための、アクチュエータ装置もしくはアクチュータ部材かつ/又は遠隔部材は、ピペットチップを放出するための放出装置の構成要素とすることができる。この種の放出装置は、ピペット操作装置の長手軸に沿って変位可能な構成部分、特に放出スリーブを有し、その構成部分は、それが放出運動を移動可能な閉鎖部材の運動と結合するように整えられている場合に、特に遠隔部材として使用することができる。したがって閉鎖部材の閉鎖位置は、ピペット操作装置の他の構成部分によって、特にピペットチップを放出するための放出装置によって閉鎖部材の位置を調節することによって、調節可能とすることができる。これは、制御装置によって電気的に制御可能とすることができるので、閉鎖部材の閉鎖位置の調節は、自動的に、すなわちユーザーの介入なしで、行うこともできる。好ましくは、ピペット操作装置は、始動後に機能検査プログラムをユーザーによって、あるいは制御装置によって自動的に、実施するように、整えられている。
【0047】
同様に、ピペット操作装置において、機能検査プログラムが完全に遂行できるようにするために、ユーザーが少なくとも1つの措置を手動で実施しなければならないことも、可能であり、かつ好ましい。好ましくはこの措置は、ユーザーがピペット操作装置に抵抗装置を設け、その抵抗装置によってピペット操作(吸い込みあるいは放出)する際に、吸い込み通路内の流体の流れに対して抵抗がもたらされることを有している。この抵抗装置は、特に閉鎖部材とすることができ、その閉鎖部材がユーザーによって作業円錐上へ取り付けられ、その作業円錐内で吸い込み通路が終了しており、それによって流体流のための抵抗があらかじめ定められたやり方で増大され、あるいは吸い込み通路を完全に密閉閉鎖することができる。
【0048】
機能検査プログラムは、好ましくは、光学的及び/又は音響的な出力装置(ディスプレイ、LED、ラウドスピーカー)によって、機能検査プログラムの進行に従ってユーザーのために情報を出力するように、整えられている。このようにして特に、ソフトウェアウィザードを実現することができ、それが機能検査プログラムによってユーザーを案内し、かつそれが必要である場合には、可能な措置を実施することを要請する。
【0049】
モータ電流Imot(t;Parb)は、実際の駆動において、ピペット操作装置の種々の状態変量に依存している。この種の状態は、計算可能あるいは評価可能である限りにおいて、本発明の好ましい実施形態において、提供可能な参照データの一部、したがって参照値及び/又は参照カーブとして、考慮される。
【0050】
たとえば効率は、特にモータの消費される電気的出力に対する放出される機械的出力の比として、定めることができる。
【0051】
本発明は、さらに、好ましい実施形態において、特にピペット又は反復ピペットの、ピペット操作装置のピペット操作に用いられる吸い込み機構の少なくとも1つの出力状態を認識する方法に関するものであり、その場合に吸い込み機構は電気的に駆動されるモータ、ピストンチャンバ及びその中に移動可能に配置されて、モータによって駆動されるピストン部材を有しており、そのピストン部材の運動によって、ピストンチャンバの開放した吸い込み通路を通る流体流を形成しながら、流体の吸い込みをもたらすことができ、その場合にピペット操作装置が抵抗装置を有し、その抵抗装置によって、方法を実施する間に、モータによって行われる物理的な作業に対する吸い込み機構の機械的、特に油圧的な抵抗が増大され、かつその場合にピペット操作装置は、ピストンチャンバ内の圧力を測定する圧力センサを有し、かつ圧力センサによって測定された圧力を物理的な作業を特徴づける測定量として検出するように整えられており、その作業は吸い込み機構によって、このピストン部材の電気的に駆動される運動によってもたらされ、かつ
その場合に方法は、ピペット操作装置のデータ処理する制御装置によって実施可能な、以下のステップを有している:
a)ピストン部材の定められた運動に従って、この測定量の少なくとも1つの値を検出し、
b)少なくとも1つの測定量を少なくとも1つの参照値と比較し、
c)選択的に:この測定量のこの少なくとも1つの値を、ピペット操作装置のデータメモリ装置に記憶する。
【0052】
抵抗装置、特に閉鎖部材、を用いて、ピペット操作装置の吸い込み機構があらかじめ定められたやり方でブロックされ、もしくは完全に閉鎖される。ピストン部材の上方の位置においてピペット操作装置の封じ込められたデッド体積は、好ましくは知られている。ピストン部材の走行によって、ピストンチャンバ内に含まれる空気が圧縮され、もしくは膨張し、それが閉鎖されたピストン部材-ピストンチャンバ-組み込み空間内の圧力変化をもたらす。特にp*V=一定(理想的なガスのためのボイル-マリオット法則)。したがって空気についての圧力変化は、押し出された体積もしくはピストン部材の走行距離に対して、近似的に、間接的に比例しなければならない。
【0053】
理論的に計算され、あるいは実験によって求められた推移に比較しての、圧力上昇(もしくはピストン部材が逆に走行する場合には、圧力降下)の測定は、ピペット操作装置の機能能力もしくは性能及び/又はエラー状態の推定を許す。
【0054】
圧力差の測定は、ピペット操作装置内に付加的に組み込まれた圧力センサを用いて行うことができる。第2の圧力センサは、外部圧を測定することができる。
・好ましくはピペット操作装置は、ワイヤレスあるいはワイヤ接続で外部のデータ処理装置とデータ交換するように整えられており、それによって測定量が外部のデータ処理装置と交換される。それによって一方で、1つのピペット操作装置、特に複数のピペット操作装置を、たとえば保守を行わせるために、中央で監視することができる。他方で、特に複数のピペット操作装置の多数の値データを検出することによって、値データを中央で、特に静的に、処理し、特に平均することができ、それによって改良された情報が得られる。
【0055】
測定量を測定するための測定装置は、好ましくは電気的なモータ装置内に統合されている。電気的なモータ装置は、好ましくは、モータ装置の駆動パラメータを検出して、提供することができるように、形成されているので、この駆動パラメータは特に電気的な制御装置によって読み出すことができる。駆動パラメータは、好ましくはモータ装置のモータ電流である。モータ装置は、ピペット操作装置の電気的な制御装置の一部を有することができる。特にモータ装置の制御装置は、この測定装置を有することができる。モータ装置は、特にプログラム制御で作動することができ、ソフトウェア制御で形成することができ、かつ/又はモータ装置の制御装置内に統合された閉ループ制御装置を有することができる。電気的な制御装置は、特に、モータ装置を制御するように、形成されており、かつ/又は特に、制御装置の閉ループ制御装置によってモータ装置を閉ループ制御するように形成されており、その場合に少なくとも1つの測定値が、特にこの閉ループ制御の測定量であることができ、かつ少なくとも1つの速度値が、この閉ループ制御の操作量であることができる。閉ループ制御装置は、好ましくは比例-差-制御器(PD-コントローラ)として形成されている。
【0056】
ピペット操作装置の電気的なモータ装置は、電気的に駆動されるステッピングモータを有することができ、特に電気的なモータは、ステッピングモータとすることができる。モータ装置がリニアモータを有することも、可能である。好ましくは電気的なモータ装置は直流モータを有しており、その直流モータが好ましくは一定の直流電圧によって駆動され、その直流電圧は特に4Vから40Vであり、特に5Vである。直流モータは、好ましくは歩進的に駆動される。これは、直流モータが電気的な制御装置によって矩形電圧により駆動されることによって、行うことができ、その矩形電圧のデューティサイクルが特にステップ長さを定める。矩形電圧は、特に0Vと15Vの間に延びることができる。1つのステップは、周期的な矩形電圧の1つの周期によって定めることができる。
【0057】
直流モータは、好ましくはパルス幅変調(PWM)によって駆動される。制御信号のデューティサイクルを介して、回転数とそれに伴って速度が制御される。制御装置は、好ましくは、制御信号によって直流モータを制御するように、整えられており、その制御信号は、特にパルス幅変調により、特にデューティサイクルの調節によって回転数を定めるために、脈動されている。
【0058】
好ましくはピペット操作装置は、回転数センサ及び/又は回転角度センサを有し、それを用いてピペット装置は、電気モータのロータ装置あるいはロータ装置によって駆動される部材、たとえばギア部材の回転の数もしくは回転角度を検出するように、整えられている。好ましくはピペット操作装置、特にその制御装置は、回転数センサによって測定された回転の数を介して、かつロータ装置又はロータ装置によって駆動される部材、たとえばギア機構部材の回転角度を用いて、ピストンストロークを調節するように、整えられている。吸い込み機構は、特に、電気モータのロータ装置を停止させるために、電気モータ及び/又はそれに結合されたギア装置のセルフロックが使用されるように、形成されている。
【0059】
ピペット操作装置がギア装置を有することが可能であって、そのギア装置は、モータ装置によって発生された運動を、特に回転数を増大させ、あるいは減少させるように、ピストン部材へ伝達するために、特にモータ装置とピストン部材との間に配置されている。モータ装置は、ロータを有することができる。ロータは、ギア装置のスピンドルを回転させることができ、そのスピンドルがまた、ピペット操作装置のピストン部材の(並進)運動をもたらすことができる。
【0060】
吸い込み機構は、電気的に駆動されるモータ、ピストンチャンバ及びその中に移動可能に配置されて、モータによって駆動されるピストン部材を有しており、そのピストン部材の運動によって、ピストンチャンバの開放した吸い込み通路を通る流体流を形成しながら、流体の吸い込みをもたらすことができる。同様に、圧力の元で試料放出する場合において、吸い込み機構によってピストンチャンバ内に圧力を発生させ、吸い込み通路内の流体流を外側へ向けさせて、それによって試料を、たとえばピペットチップから放出する。
【0061】
データ処理するように形成された、電気的な制御装置は、電気的な切替え回路、特に集積された切替え回路を有することができ、かつ/又はマイクロプロセッサ、及び/又はCPU、データメモリ及び/又はプログラムメモリを有することができる。制御装置は、プログラムコードを処理し、もしくは実施するように形成することができる。プログラムコードは、ステップa)において測定量の少なくとも1つの測定値を定めるように、形成することができ、かつ特に、本発明の枠内で記述されている、ピペット操作装置のこの機能の好ましい形態を実装するように、形成することができる。
【0062】
電気的な制御装置は、ピペット操作装置を少なくとも1つ、特に複数の駆動パラメータに従って制御するように、特に自動又は半自動で制御するように、形成されている。自動的に制御するというのは、ピペット操作プロセスを実施するために、ピペット操作装置のユーザーインターフェース装置を介してユーザーによって始動信号のみが入力されること、かつ/又は特にピペット操作装置と結合された少なくとも1つの移送容器内への少なくとも1つの流体試料の収容プロセスが、ユーザー入力を必要とせずに、行うことができ、もしくは行われること、かつ/又は特にピペット操作装置と結合された少なくとも1つの移送容器からの少なくとも1つの流体試料の放出プロセスが、ユーザー入力を必要とせずに、行うことができ、もしくは行われることを、意味している。半自動の制御においては、収容プロセスもしくは放出プロセスを実施するために、始動信号の入力の他に、少なくとも1つの他のユーザー入力、たとえば始動信号の入力後かつピペット操作プロセスの実施前に、ユーザーが少なくとも1つの使用すべき駆動パラメータを確認する入力が、必要である。ピペット操作プロセスの自動と半自動の両方の制御においては、ピペット操作プロセスにおいて移動可能な部分の移動は、モータ装置の駆動によって実施されれる。
【0063】
電気的なピペット操作装置は、1つの駆動モードあるいは複数の駆動モードにおいて駆動されるように、形成することができる。1つの駆動モードにおいて、ピペット操作装置のピペット操作プロセスを調節し、あるいは制御する、ピペット操作装置の1つ又は複数の駆動パラメータを有するセットが自動的に照会され、調節され、かつ/又は提供される。駆動パラメータの値をどのようにすべきかの決定は、ピペット操作装置を利用する場合に、通常、ユーザーによってそれぞれ行われ、かつそれに応じて駆動パラメータが定められる。駆動パラメータセットの少なくとも1つの駆動パラメータ、特に速度パラメータのこの少なくとも1つの速度値は、電気的な制御装置によって照会され、かつ特にユーザーがユーザーインターフェース装置を用いて入力することによって定められる。ある駆動モードにおいて、ピペット操作装置の出力状態を定めるための少なくとも1つの機能検査プログラムが実施される。したがって機能検査プログラムは、駆動パラメータのセットによって定めることができ、その駆動パラメータはデータメモリ装置に記憶することができる。
【0064】
ある駆動モードは、試料の「ディスペンス」(DIS)に関することができ、それは駆動パラメータ「個別試料の体積」、「放出ステップの数」、「1つ(複数)の試料を収容する際の速度」、「1つ(複数)の試料を放出する際の速度」を用いて定めることができる。駆動モードはさらに、試料の「自動ディスペンス」(ADS)、試料の「ピペット操作」(Pip)、試料の「次の混合を伴うピペット操作」(P/Mix)、「逆のディスペンス」あるいは吸引用の「ASP」とも称される、試料の「多重収容」、「薄める」とも称される、試料の「希釈」(Dil)、試料の「シーケンシャルディスペンス」(SeqD)、試料の「シーケンシャルピペット操作」(SeqP)、あるいは試料の「リバースピペット操作」(rPip)とすることができる。
【0065】
プログラミング可能なピペット操作装置のピペット操作プロセスにおいて、特にステップa)の間、もしくは機能検査プログラムの間、典型的に、ピペット操作プログラムに従って所定の試料量が始動容器から、ピペット操作装置と接続されたピペット容器内へ収容されて、特に次に再び目標容器内へ放出され、特に配量して放出される。それぞれ適用もしくは機能検査に応じて、1つ(複数)の試料の収容及び/又は放出は、収容及び放出ステップの所定の秩序パターン、特に順序に従い、時間に従って行うことができ、かつ時間的に調整することができる。ピペット操作プロセスは、好ましくは駆動パラメータのセットによって制御され、それらの駆動パラメータによって上述したプロセスが所望のやり方で調節可能である。
【0066】
ピペット操作プログラムを制御するための駆動パラメータは、好ましくは、ピペット操作すべき体積の調節、ピペット操作装置と接続されたピペット容器内へ試料を吸い上げるステップにおいて、あるいはこのピペット容器から試料を放出するステップにおいては、場合によってはこれらのステップの順序と繰り返し、及び場合によってはこれらのプロセスを時間的に分割する際の時間的なパラメータ、特にこの種のプロセスの時間的な変化、特にこの速度値による速度及び/又は試料の吸い込み又は放出の加速に関する。本発明によれば、本発明に係る方法のステップa)の間、少なくとも1つの駆動パラメータ、特に速度パラメータの速度値が、制御装置によって使用される。駆動パラメータの少なくとも1つの値は、データメモリ装置に記憶することができ、本発明に係る方法を実施するために、制御装置がそのデータメモリ装置にアクセスすることができる。
【0067】
ピペット操作プロセスは、特にステップa)の間、もしくは機能検査プログラムの間、好ましくは駆動パラメータセットによって一義的に定められている。この駆動パラメータセットは、好ましくは少なくとも部分的に、かつ好ましくは完全に、ユーザーによって特にピペット操作装置の操作装置を介して、選択され、かつ/又は入力される。駆動パラメータセットによって、好ましくは、所望のピペット操作プロセスを実施するための制御プログラムが制御される。制御プログラムは、それぞれ制御装置の電気的な切替え回路の形式で形成することができ、かつ/又は実施可能なプログラムコードによって形成することができ、そのプログラムコードは、好ましくはプログラムコード制御可能かつ好ましくはプログラミング可能な制御装置を制御するのに、適している。
【0068】
ピペット操作装置は、好ましくはユーザーによって入力されたパラメータ値、特に機能検査を定めるために入力された駆動パラメータを、自動的に検査し、かつそれぞれの駆動パラメータの許容領域と比較するために、形成されている。ユーザーによって入力されたパラメータが、許容領域の外部にある場合には、好ましくは入力は受け入れられず、あるいはデフォルト値にセットされ、そのデフォルト値は、たとえば平均値又は最大値あるいは最後に入力を許された値とすることができる。
【0069】
ピペット操作装置の駆動状態は、ピペット操作装置の準備完了状態を示し、その準備完了状態においてピペット操作プロセスを実施するために必要な駆動パラメータは1つの値を有しているので、ピペット操作プロセスはこの値を用いて実施することができる。駆動状態は、ピペット操作装置の最少のエネルギ消費を有するスタンバイ状態とすることができる。これは、好ましくは、スタンバイモードが存在する場合に、自動的に実施可能な機能検査プログラムが、特にあらかじめ定められた時間間隔で、かつ/又はあらかじめ定められた時点で、たとえば夜間に、実施されるように、形成することができる。そのためにピペット操作装置は、リアルタイマーを有することができる。ピペット操作装置の加速度センサを用いて、自動的に、ユーザーによってピペット操作装置の非使用の相を求めることもでき、その後その相内で自動的に機能検査プログラムが実施される。
【0070】
好ましくは電気的な制御装置は、測定量の少なくとも1つの測定値を自動的に評価し、特に参照値と比較する(ステップb)ように、形成されている。ピペット操作装置がしかるべき入力及び/又は選択可能性を提供することによって、ユーザーによって機能検査プログラムの実施の機能が能動化可能もしくは非能動化可能であることが、可能である。したがってこの機能は、特にピペット操作装置の少なくとも1つの駆動状態において能動化されており、一方で、この機能がピペット操作装置内に存在しているが、非能動化されている、駆動状態も存在することができる。
【0071】
測定装置の代わりに、あるいはそれを補って、特に、電動駆動装置の回転数及び/又は移動可能な部分の、特にピペットのピストン又はディスペンサーチップの射出ピストンの、移動の速度が、ピペット操作装置のセンサによって測定される。そのためにそれに応じて複数のセンサを設けることもできる。
【0072】
出力状態は、ピペット操作装置の、特に吸い込み機構の、状態である。それは、測定量を少なくとも1つの参照値もしくは参照データと比較することによって、ピペット操作装置の性能を特徴づける。その場合に「ノーマル」と特徴づけられた出力状態は、参照出力状態に相当し、その参照出力状態においてピペット操作装置はメーカー側で定められた出力値をもたらすことができる。出力状態が参照出力状態に相当するか、-もしくはピペット操作装置が測定された測定量に基づいてメーカー規格を満たしているか-の評価は、許容誤差領域を考慮して行われ、その許容誤差領域内では参照出力状態からの偏差は、まだノーマルとみなされる。この許容誤差領域は、特に測定量の許容誤差領域であって、したがって電流消費の、もしくはピストンチャンバ圧の、ノーマルと受け入れられる所定の領域である。この場合において出力状態、特に測定量は、ノーマルとみなされる値領域の外部にある。
【0073】
好ましくはピペット操作装置は、ユーザーインターフェース装置を有している。これは、タッチスクリーン及び/又はディスプレイとも称される、接触を感知するディスプレイ、かつ/又は少なくとも1つの操作ボタン、操作ロッカー、操作レバー、かつ/又は操作回転ホイールを有することができる。ユーザーインターフェース装置は、さらにラウドスピーカーを有することができ、それによって特に測定された少なくとも1つの測定値に従って音響信号を出力することができ、それによってユーザーは、特に測定値について、かつ/又は少なくとも1つの参照値からの測定量の少なくとも1つの測定値の偏差について、かつ/又はピペット操作プロセスの自動的な中断について知らされ、もしくは警告される。
【0074】
好ましくはピペット操作装置は、ユーザーインターフェース装置、タイマー及びデジタルデータを記憶するためのデータメモリ装置を有しており、その場合に制御装置は、好ましくは計算装置、特にCPUもしくはマイクロプロセッサを有し、かつ、本発明に係る方法もしくは機能検査プログラムを実施するように、形成されている。
【0075】
データメモリ装置は、好ましくは、制御装置によって照会可能な、特にソフトウェアによって定義される、大きいメモリ領域内のメモリ部分領域である。メモリ部分領域は、データファイルとすることができる。メモリ領域は、データメモリとすることができる。メモリ領域は、ハードウェアメモリ内に物理的に配置されている、ソフトウェアによって管理される非物理的なメモリ空間とすることができる。データメモリ装置は、ハードウェアメモリを有することができる。データメモリもしくはハードウェアメモリは、好ましくは恒久的な、したがって不揮発性の、データメモリ、好ましくはFLASHメモリである。ハードウェアメモリは、好ましくは、少なくとも100000、好ましくは少なくとも150000あるいは好ましくは300000の書込みサイクルもしくは消去サイクルを実施することができるように、形成されている。ハードウェアメモリは、さらに、揮発性のデータメモリ、たとえばDRAM又はSRAMメモリとすることもできる。
【0076】
好ましくはピペット操作装置は、本出願人の欧州特許出願公開第1825915(A2)号明細書として公開された、欧州特許出願第06027038.6号の請求項1から30に、もしくはこの特許出願に記述されるようなシステムの好ましい形態に、記載されているような、液体を滴定するシステムの配量装置として形成されており、その特許出願のこれに関する開示は、参照によって本出願に取り入れられている。この種のピペット操作装置は、特に、ピペット操作装置の他の保持装置によって保持された、取り外し可能に結合されたピペット容器、特に噴射器、チップの記号を読み取るための読取り装置を有している。この種のピペット容器、特に噴射器又はチップは、少なくとも1つの記号を有しており、その記号は、たとえばピペット容器のそれぞれのタイプ及び/又は状態についての情報を有している。情報は、たとえば公称体積及び/又は構造(たとえば形態及び/又は寸法)及び/又は材料及び/又は純度及び/又はメーカー及び/又は製造日付及び/又はピペット容器の行われた利用に関する。配量装置は、読み取り装置を有しており、その読み取り装置は、噴射器又はチップが他の保持装置によって配量装置に保持されている場合に、それの記号を読み取るように、形成されている。制御装置は、読み取り装置によって読み取られた記号に従って、移動可能な部分の、特にピストンの、移動を制御する。
【0077】
本発明に係るピペット操作装置は、シングルチャネルピペット又はマルチチャネルピペットとすることができる。それはさらに、ピペット又は反復ピペット(ディスペンサー)とすることができる。このピペット操作装置は、手で持つ駆動用に形成されており、したがって好ましくはユーザーによって片手で操作可能である。
【0078】
本発明は、さらに、ラボ内で流体の試料をピペット操作するための、特にピペット又は反復ピペットのピペット操作装置に関するものであり、
吸い込み機構を有し、その吸い込み機構が電気的に駆動されるモータ、ピストンチャンバ及びその中に移動可能に配置されて、モータによって駆動されるピストン部材を有しており、そのピストン部材の移動によって、ピストンチャンバの開放した吸い込み通路を通る流体流を形成しながら、流体の吸い込みをもたらすことができ、
データ処理する制御装置を有し、その制御装置が少なくとも1つのデータメモリ装置を有しており、
物理的な作業を特徴づけるための測定量として、モータによって消費されるモータ電流を検出するための測定装置を有し、その物理的な作業は吸い込み機構によってこのピストン部材の電気的に駆動される運動により行われ、かつ
その場合にピペット操作装置委の出力状態を認識するために、制御装置は、
a)ピストン部材の定められた移動に従ってこの測定量の少なくとも1つの値を検出し、
b)この測定量の少なくとも1つの値をデータメモリ装置に記憶し、
c)選択的に:測定量の少なくとも1つの値を少なくとも1つの参照値と比較する、
ように、整えられている。
【0079】
本発明は、さらに、ラボ内で流体の試料をピペット操作するための、特にピペット又は反復ピペットの、ピペット操作装置に関するものであって、
吸い込み機構を有し、その吸い込み機構が電気的に駆動されるモータ、ピストンチャンバ及びその中に移動可能に配置されて、モータによって駆動されるピストン部材を有しており、そのピストン部材の移動によって、ピストンチャンバの開放した吸い込み通路を通る流体流を形成しながら、流体の吸い込みをもたらすことができ、
データ処理する制御装置を有し、その制御装置が少なくとも1つのデータメモリ装置を有しており、
物理的な作業を特徴づけるための測定量として、ピストンチャンバ内にもたらされる圧力を検出するための、圧力センサを備えた測定装置を有し、その物理的な作業が吸い込み機構によってこのピストン部材の電気的に駆動される移動によって行われ、
その場合にピペット操作装置が抵抗装置を有しており、その抵抗装置によって、方法を実施する間に、モータによって行われる物理的な作業に対する吸い込み機構の機械的な、特に油圧的な抵抗が増大され、
その場合に制御装置が、ピペット操作装置の出力状態を認識するために、
a)ピストン部材の定められた運動に従ってこの測定量の少なくとも1つの値を検出し、
b)測定量の少なくとも1つの値を少なくとも1つの参照値と比較し、
c)選択的に:この測定量の少なくとも1つの値をデータメモリ装置に記憶する、
ように、整えられている。
【0080】
本発明に係るピペット操作装置の特徴と好ましい形態が、本発明に係る方法及びその好ましい形態の説明から読み取ることができる。
【0081】
本発明は、さらに、特にピペット又は反復ピペットの、ソフトウェア制御可能なピペット操作装置のプログラムコードに関するものであり、かつそれによって本発明に係る方法がこの種のピペット操作装置内に実装可能である。
【0082】
このソフトウェア制御可能なピペット操作装置は、プログラムコードの使用によって、特にプログラムコードをこのソフトウェア制御されるピペット操作装置のプログラムメモリ内にロードすることによって、本発明に係る方法及び場合によってはその好ましい形態を実施することができる。したがって本発明は、ソフトウェア制御されるピペット操作装置のためのプログラムコードに関するものでもあって、そのピペット操作装置は、本発明に係るプログラムコードを使用することによって、本発明に係るピペット操作装置に変換され、もしくは拡張される。このようにして、本発明に係る特性を有するようにするために、電子的なピペット操作装置が後付けされる。本発明は、この本発明に係るプログラムコードを有する、特にデータ担体、たとえば光学的なデータ担体、たとえばCD、フラッシュメモリ又はハードディスクに関するものである。
【0083】
本発明に係るピペット操作装置と本発明に係る方法の好ましい形態が、図及びその説明に関連する実施例についての以下の説明から明らかにされる。実施例の同じ構成部分は、異なる記載がない場合、あるいは文脈から異なることが生じない場合に、実質的に同一の参照符号で示されている。この説明の個々の特徴は、本発明の好ましい形態を定義するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図1a】本発明に係るピペット操作装置を斜視図で示しており、そのピペット操作装置は電子的なエアクッションピペットとして形成されており、かつピペットチップの作業円錐と接続されている。
【
図1b】好ましい実施形態に基づいて、反復ピペットとして形成された本発明に係るピペット操作装置を側面図で示しており、そのピペット操作装置にはディスペンサーチップが接続されている。
【
図2a】本発明に係るピペット操作装置の第1の好ましい実施形態を示しており、それにおいてモータ電流が吸い込み機構の出力状態を判断するための測定量として利用される。
【
図2b】閉鎖部材を有する本発明に係るピペット操作装置の第2の好ましい実施形態を示しており、それにおいてピストンチャンバ圧力が吸い込み機構の出力状態を判断するための測定量として利用される。
【
図2c】機能検査において使用することができる、閉鎖部材を示している。
【
図3a】一連のピストン部材位置を示しており、それらは測定値の参照カーブを測定する場合、及び本発明に係る方法に従って機能検査する場合に使用することができる。
【
図3b】
図1a、b、
図2a、bに示すピペット操作装置において、本発明に係る方法を用いて実施される2つの可能な機能検査の許容誤差領域を有する参照値カーブ「+」と測定値「0」と「x」を示している。
【
図4】実施例に基づいて本発明に係る方法のシーケンスを図式的に示している。
【
図5a】一連のピストン部材位置を示しており、それらは測定値の参照推移の測定において、かつ本発明に係る方法に基づく他の機能検査において、使用することができる。
【
図5b】
図1a、b、
図2a、bに示すピペット操作装置において、本発明に係る方法を用いて実施される2つの可能な機能検査の許容誤差領域を有する参照値カーブ「+」と測定値「0」と「x」を示している。
【発明を実施するための形態】
【0085】
図1aは、本発明に係るピペット操作装置1を斜視図で示しており、ピペット操作装置は電子的なエアクッションピペット1として形成されており、ピペットチップ11の作業円錐11aと接続されている。エアクッションピペットは、内蔵されたピストン(ハウジング2の内部にあるので、見えない)を有し、そのピストンは、ピストン部材がピストンチャンバ内で電気モータによって上方へ移動された場合に、ピペットチップの内部に真空を発生させることができる。ピペット操作すべき試料が、ピペットチップ内へ吸い上げられて、ピストンチャンバ内の過圧によって試料が再びピペットチップから放出される。この種のエアクッションピペットの典型的な最大の収容能力は、100ナノリットルから10ミリリットルである。エアクッションピペット1は、利用者インターフェース装置、特に選択ホイール3a、ディスプレイ3、操作ロッカー4を有している。選択ホイール3aによって、ピペット操作装置の駆動モードが調節される。この駆動モードの1つ「機能検査」が、場合によっては1つ又は複数の駆動パラメータによって定められて、本発明に基づく方法の実施もしくは少なくとも機能検査する方法を選択するためのディスプレイ側の選択に用いられる。投下ヘッド3bによって、ピペットチップが投下される。エアクッションピペット1は、さらに、電気的な制御装置と測定量を測定するための測定装置(それぞれ見えない)を有している。
【0086】
図1bは、好ましい実施形態に基づいて、反復ピペット1'として形成された、本発明に係るピペット操作装置1’を示しており、そのピペット操作装置にディスペンサーチップ11’が接続されている。ピペット操作装置は、ユーザーインターフェース装置を有しており、それがディスプレイ3'を有し、そのディスプレイは特に、ピペット操作装置の駆動パラメータの値を表示するため、特に駆動パラメータを説明するために、用いられる。選択ホイール3'を用いてディスペンサーの駆動モードが調節され、ある駆動モードにおいてはそれぞれ自動化された好ましいディスペンシングプロセスが駆動パラメータのセットによって定められており、もしくはユーザーがこの駆動パラメータの値を設定又は選択することによって定めることができる。ユーザーインターフェース装置はさらに、操作部材としての操作ロッカー4’を有し、その操作ロッカーは上方と下方の揺動領域を有している。この操作ロッカーによってユーザーは、グラフィックのユーザーサーフェスの選択メニューによってナビゲートし、その選択メニューによって制御装置が少なくとも1つの駆動パラメータを照会する。ピペット操作装置のディスペンシングモードにおいて、液体体積の収容は、作動ヘッド4a’の最初の操作によって、初期容器(図示せず)からディスペンサーチップのストック容器内へ吸い上げることによって行われ、それに続く作動ヘッド4a’のすべての操作は、それぞれ放出ステップを作動させる。試料を吸い上げ、もしくは放出する際に使用される駆動パラメータは、特に吸い上げるべき試料体積とその際に使用すべき収容速度(時間あたりの体積)又は-容器幾何学配置がわかっている場合に、それに対して等価で-吸い上げるために使用すべき期間に関する。ピペット操作プロセスを定める際に使用されるこれらの駆動パラメータは、機能検査を定めるためにも、同様に使用することができる。容器幾何学配置もしくは容器タイプは、特に移送容器内のコードを介して、好ましくは設けられている読み取り装置を用いてピペット操作装置によって自動的に読み出すことができる。ディスペンサーチップ11’を用いて試料を移動させる場合に、冒頭で説明したように、ダイレクト押し出し原理が利用される。
【0087】
ディスペンサーチップ11’のピストン部材14’を有するピストン13’は、外側へ張り出した接続突出部15’を有しており、それがピペット操作装置のスピンドル12’と結合可能であり-かつそれから再び取り外し可能である。作動ヘッド4a’は、特に放出プロセスを開始させ、それにおいて移送容器11’内に含まれる液状の試料があらかじめ定められた駆動パラメータに従って放出される。これらの駆動パラメータは、特に放出ステップの数、放出ステップの放出体積及び放出速度(時間あたりの体積)もしくはそれに比例する値を定め、それは1つの放出ステップあるいは複数の放出ステップあるいは各放出ステップの間維持されなければならない。ピペット操作装置1’は、特にプログラム制御されており、すなわち、それぞれピペット操作プログラムとそれに伴って所定の駆動モードに対応づけられている、種々の駆動パラメータセットは、プログラム制御で定めることができるので、ユーザーは所望のピペット操作プロセスを実施するために、場合によっては所望のピペット操作プログラムを選択し、かつ望ましい場合には、少なくとも1つの駆動パラメータを調節する。
【0088】
ディスペンサーチップ11’は、より大きい直径d2を有するストック容器を備えており、かつより小さい直径d1を有する開口部を有している。d1<d2。小さい開口部d1は、ディスペンサーチップ11’を用いてピペット操作する際に生じる流れ抵抗の大部分をもたらす。したがってより小さい直径は、あらかじめ定められた抵抗を定め、その抵抗は所定のピペット操作速度で所定の体積をピペット操作する際に、ノーマル場合において参照データに相当するモータ出力、もしくは測定量の、特にモータ電流の、参照推移を必要とする。ピペット操作装置は、ステップa)において測定量のための値を測定し、ステップb)において参照データと比較し、かつ、選択的にステップc)においてそれを不揮発性のデータメモリに記憶させる。一般的に測定量の推移の許容誤差領域あるいは少なくとも1つの測定量のための少なくとも1つの許容誤差値を量的に上回ることによって特徴づけられる、偏差が存在する場合に、それがユーザーに知らされ、かつ/又は結果がデータメモリ装置に記憶される。
【0089】
図2aに示すように、ピペット操作装置1は、第1の好ましい実施形態において、特に以下のコンポーネントを有している:電子的にデータ処理する制御装置15と接続されたユーザーインターフェース13、その制御装置によってピペット操作プロセスが電気的に制御可能である;ピストンロッド12aに設けられてピストン部材12、それがピストンチャンバ18内で移動することによって流体の試料が吸い上げ通路19を通してピペット操作可能であり、その吸い上げ通路が作業円錐11aの基部側の開口部内へ連通している;制御装置によって電気的に駆動可能なモータ装置14、そのモータ装置によってギア機構17を介してピストン部材の運動が駆動可能である。
【0090】
回転数測定器16aを有する測定装置は、ここではモータ装置14、ここでは直流モータ、の電子的な閉ループ制御装置の構成要素であり、かつ電気的な制御装置15の構成要素とみることができ、その制御装置と測定装置16aが信号接続されている。測定装置16aは、電流センサを有している。
【0091】
モータは、最小の増分でロータ装置(図示せず)を歩進的に回転させ、そのロータ装置がまた、ギア機構17のスピンドルを歩進的に移動させ、そのスピンドルの回転が方向A(
図1c)に沿って歩進的にピストン12aの並進的な移動をもたらし、このようにしてそのピストンが試料の移送容器内への収容とそこからの放出をもたらす。
【0092】
図2bのピペット操作装置1bは、同一の参照符号において認識できるように、
図2aのピペット操作装置1aと同様に構成されている。ピペット操作装置に内蔵されている測定装置16bは圧力センサを有しており、その圧力センサが測定量としてピストンチャンバ内の圧力を測定する。作業円錐11aの下方の端部に、閉鎖部材20が配置されている。閉鎖部材20は、ここでは、閉鎖位置において吸い込み通路19を完全に閉鎖するために、作業円錐上に取り付け可能な閉鎖栓である。閉鎖部材20は、機能検査における抵抗装置として用いられ、それによって流体流、ここではエアクッションピペット1bの空気流が抵抗にさらされる。吸い込み通路は、完全にブロックされている。(「
図1cに関連するすべてのものは、無効であるとみなされる」)閉鎖部材20は、ピペット操作装置1、1’において機能検査を実施する場合にも、使用することができる。
【0093】
ピペット操作装置1、1’、1a、1bは、ラボ内で流体の試料をピペット操作するために用いられる。ピペット操作装置は、吸い込み機構を有しており、その吸い込み機構は電気的に駆動可能なモータ(14)、ピストンチャンバ(18)及びその中に移動可能に配置され、かつモータによって駆動されるピストン部材(12)を有しており、そのピストン部材の移動によって、ピストンチャンバの開放した吸い込み通路(19)を通る流体の流れを形成しながら、流体の吸い込みをもたらすことができる。ピペット操作装置は、さらに、データ処理する制御装置15を有しており、その制御装置が少なくとも1つのデータメモリ装置15aを有している。制御装置は、吸い込み機構を用いてこのピストン部材12の電気的に駆動される運動によって行われる、物理的な作業を特徴づけるための測定量として、モータ14によって消費されるモータ電流を検出するための測定装置16a、あるいはチャンバ圧を検出するための圧力センサ16bを有している。
【0094】
制御装置15は、ピペット操作装置1、1’、1a、1bの出力状態を認識するように整えられており、特に:
a)ピストン部材12の定められた運動に従ってこの測定量の少なくとも1つの値を検出し(
図4のステップ201)、
b)測定量の少なくとも1つの値を少なくとも1つの参照値と比較し(
図4のステップ202)、
c)この測定量の少なくとも1つの値をデータメモリ装置15a内に記憶する(
図4のステップ203)。
その場合にステップc)(203)は、-代替的又は付加的に-ステップb)(202)の前に行うこともできる。
【0095】
少なくとも1つの参照値は、データメモリ装置に記憶されており、したがって提供可能である。参照値は、メーカーによってピペット操作装置の製造プロセスにおいて求められて、記憶される。付加的に参照値は、コンポーネント(たとえばモータ、スピンドル)がピペット操作装置の保守の際に交換される場合に、サービスによって新たに記憶することができる。ステップa)に挙げられた、定められた運動は、ここでは試料を吸い上げるためのピストン部材12の吸い込み運動(ピストン部材12の上昇運動)あるいは試料を放出するための放出運動である。この運動は、目標体積によって定められ、その目標体積はピストン部材12の所定の理想の終端位置に相当する。したがってピストン部材12は、ピストンチャンバ内に外気圧が存在する初期状況から出発して、体積を定める終端位置まで移動し、その終端位置内ではピストンチャンバ内に負圧が存在する。運動は、さらに、ピペット操作速度によって定められている。少なくとも1つの参照値は、少なくとも1つの電流値、特に一連の電流値を有し、それらは前もって、たとえばメーカー側で、実験的にこのピペット又は少なくとも構造の等しいピペットによって、特に正確にステップa)で使用された、上述した目標体積と定められたピペット操作速度を有する運動において、求められたものである。参照推移の電流値Iref(t)は、運動の間に求められており、かつ、ノーマル条件における試料チャンバ内の圧力に実質的に比例する。
【0096】
図3aは、ピストン12が定められた速度で上方へ向かって定められた終端位置へ移動することによって、ピストンチャンバ18内の空気が膨張する場合の、
図2aと2bのピペット操作装置の種々のピストン位置を示している。吸い込み通路は、閉鎖部材によって閉鎖されている。
図3aのこれらのピストン位置に対して、
図3bに参照測定値の推移I
mot(t)が、ダイアグラムI
mot(t)内に「+」のシンボルで、示されている。ダイアグラム内の中央のカーブは、参照値に基づく理想推移に相当することができ、上と下のカーブは許容誤差領域を定め、その許容誤差領域がピペットのエラーのない状態領域をマークしている。機能検査は、同様に行われ、かつダイアグラム内に「x」と「0」によって示されている測定値をもたらす。この方法を実施するために、特に唯一の測定値を参照測定値と、特に一番右の、目標体積に達する際の値と比較すれば充分であった。測定列「x」は、エラー状態を示す。というのは、このピストン位置において、もしくはピストンが終端位置に達する時点で、測定されたモータ電流は、許容誤差領域の外部に位置するからである。
図3a、3bに示す機能検査の方法によって、吸い込み機構の非密閉性を求めることができる。吸い込み機構の汚れ又は摩耗も検出することができ、それは特に、測定されたモータ電流の値が高くなることに表れる。
【0097】
図3aと同様に、
図5aも、ピストン12が定められた速度で上方へ向かって定められた終端位置まで移動することによって、ピストンチャンバ18内の空気が膨張する場合において、
図2aと2bに示すピペット操作装置の種々のピストン位置を示している。ここでも吸い込み通路は閉鎖部材によって閉鎖されている。
図5aに示すピストン位置に対して、
図5bには参照測定値の推移I
mot(t)の推移が、ダイアグラムI
mot(t)内で「+」のシンボルで示されている。ダイアグラム内の中央のカーブは、参照値に基づく理想カーブに相当することができ、上と下のカーブは許容誤差領域を定め、それがピペットのエラーのない状態領域をマークしている。機能検査は同様に行われ、かつ、ダイアグラム内で「x」と「0」によって示される測定値をもたらす。
図3a、3b内の方法とは異なり、
図5a、5bにおいては-付加的な方法ステップにおいて-、ピストンは定められた期間の間、特に最大のモータ電流に達した場合に、ピストンチャンバからもっとも遠く引き出された位置にとどめられ、モータがオフにされる。たとえば50msから5sの遅延時間の後に、モータが再び始動されて、測定量「モータ電流」が求められる。吸い込み機構がきちんと作動していた場合、特にピストンチャンバが密閉されていた場合には、モータは最大のモータ電流に即座に達することにより、即座に再びオフにされ-測定量の最後の値は許容誤差の枠内で測定量の最後の1つ前の値に相当し、それが測定カーブのプラトー領域として示されることになる。しかしここに示される、ピストンチャンバが密閉されていない場合においては、測定されたモータ電流は許容誤差領域の外部に位置し、それは、ピペット操作装置の欠陥のある出力状態を表す。該当する情報が、特にピペット操作装置の表示を介して、ユーサーに出力され、かつ/又は記録及び/又は後続の評価の目的で、測定量が記憶される。測定列「x」は、ここでもエラー状態を示す。というのは、測定されたモータ電流は、ピストンが終端位置へ達した時点で、かつ待機時間後に、許容誤差領域の外部にあるからである。それによって特に吸い込み機構における非機密性が検出される。
【0098】
図4aは、実施例に基づいて、ピペット操作装置において、本発明に係る方法200のシーケンスを図式的に示しており、その場合にピペット操作装置(1;1’;1a)のピペット操作に用いられる吸い込み機構の少なくとも1つの出力状態を認識するために利用された測定量が、モータ電流である。測定量の4つの測定値(1+n=3 繰り返し)を検出し(201)かつ記憶する(202)ために、ステップa)とb)が全部で4回実施される。次に、比較によって、測定値が許容誤差領域内にあるか(203)が検査される。この方法は好ましくは、吸い込み通路19が閉鎖栓によってシールされている場合に、実施される。このようにして、機能検査に特に適している、ピペット操作装置の負荷状態を効率的にもたらすことができる。
【0099】
図4bは、実施例に基づいて、ピペット操作装置において本発明に係る方法200’のシーケンスを図式的に示しており、その場合にピペット操作装置(1、1’、1a、1b)のピペット操作に用いられる吸い込み機構の少なくとも1つの出力状態を認識するために利用される測定量は、ピストンチャンバ圧である。方法は、さらに、
図4aの方法200と同様に遂行される。