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特許7187538アルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】アルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/031 20060101AFI20221205BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20221205BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20221205BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20221205BHJP
   C08G 59/17 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
G03F7/031
G03F7/004 505
G03F7/027 502
H05K3/28 D
C08G59/17
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020510744
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2019011477
(87)【国際公開番号】W WO2019188591
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2018069454
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018069455
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正人
(72)【発明者】
【氏名】播磨 英司
(72)【発明者】
【氏名】森口 史章
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-173560(JP,A)
【文献】特開2014-167510(JP,A)
【文献】特開2013-109165(JP,A)
【文献】特開2016-206216(JP,A)
【文献】特開2017-215569(JP,A)
【文献】特開2013-097355(JP,A)
【文献】特開2008-299294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
H05K 3/28
C08G 59/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性樹脂、オキシム結合を有する光重合開始剤、反応性希釈剤、熱硬化性樹脂、溶剤を少なくとも含有する光硬化性熱硬化性組成物であって、
前記オキシム結合を有する光重合開始剤は、前記アルカリ可溶性樹脂とは別の組成物に配合され、さらにオキシム結合を有する光重合開始剤と配合される溶剤は、ケトン系溶剤を溶剤中50質量%以上含むことを特徴とする、少なくとも2液系に組成されているアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記オキシム結合を有する光重合開始剤と配合される溶剤は、エーテル系溶剤を含まないことを特徴とする、請求項1に記載の少なくとも2液系に組成されているアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、着色剤を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の少なくとも2液系に組成されているアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記着色剤が、カーボンブラックおよび混色黒系着色剤を含み、前記アルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物全量あたり、固形分換算で、前記カーボンブラックの含有量が4~10質量%であり、且つ、前記混色黒系着色剤の含有量が8~20質量%であることを特徴とする、請求項3に記載の少なくとも2液系に組成されているアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記反応性希釈剤がアルキレンオキシドおよびラクトンのいずれかで変性された2官能以上の(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする、請求項4に記載の少なくとも2液系に組成されているアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
ガラス基材用であることを特徴とする、請求項5に記載の少なくとも2液系に組成されているアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2液に組成されているアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ現像型液状フォトソルダーレジスト組成物、アルカリ現像型感光性遮蔽剤等に使用可能な硬化性樹脂組成物の成分の一つとして、従来、オキシム結合を有する光重合開始剤が用いられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-022328号公報
【文献】国際公開第2012/043001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オキシム結合を有する光重合開始剤は、高感度が要求される高精細材料向けに使用される硬化性樹脂組成物にも用いることができる成分である一方、オキシム結合を有する光重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物は、保存時に、感度、解像性等の光特性が徐々に低下してしまう。そのため、長期保存後でも光特性等に優れた硬化性樹脂組成物を提供することが困難であった。
【0005】
このような課題に対し、例えば、特許文献2では、オキシム結合を有する光重合開始剤とカルボキシル基含有樹脂を2液に分けて保存し、失活を低減することが提案されている。
【0006】
しかしながら、アルカリ現像型感光性遮蔽剤等のように、黒色等の隠蔽性の高い組成物は光の透過が悪いため、このような組成物において感度を向上させる目的で高感度なオキシム結合を有する光重合開始剤の配合量を増やした場合、上述のように2液にすることで失活を低減できるものの完全ではなく、また、オキシム結合を有する光重合開始剤が再結晶して粗粒が発生するケースがあった。特に、遮蔽剤の場合、粗粒の発生により、遮蔽剤の硬化塗膜の粗粒が発生した場所にピンホールができ、外観不良となるおそれもあった。
【0007】
以上より、本発明の課題は、長期保存時にも、解像性、感度等、密着性に優れ、再結晶も防止できる樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、オキシム結合を有する光重合開始剤が特定の溶剤に溶解性が優れることを見出し、オキシム結合を有する光重合開始剤の失活を低減し、且つ再結晶も防止できることも見出した。
【0009】
本発明は、アルカリ可溶性樹脂、オキシム結合を有する光重合開始剤、反応性希釈剤、熱硬化性樹脂、溶剤を少なくとも含有する光硬化性熱硬化性組成物であって、
前記オキシム結合を有する光重合開始剤は、前記アルカリ可溶性樹脂とは別の組成物に配合され、さらにオキシム結合を有する光重合開始剤と配合される溶剤は、ケトン系溶剤を溶剤中50質量%以上含むことを特徴とする、少なくとも2液系に組成されているアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物である。
また、前記オキシム結合を有する光重合開始剤と配合される溶剤は、エーテル系溶剤を含まないことが好ましい。
さらに、着色剤を含有することが好ましい。
前記着色剤が、カーボンブラックおよび混色黒系着色剤を含み、前記アルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物全量あたり、固形分換算で、前記カーボンブラックの含有量が4~10質量%であり、且つ、前記混色黒系着色剤の含有量が8~20質量%であることが好ましい。
前記反応性希釈剤がアルキレンオキシドおよびラクトンのいずれかで変性された2官能以上の(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
前記アルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物が、ガラス基材用であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長期保存時にも、解像性、感度、密着性に優れ、再結晶も防止できる樹脂組成物を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のアルカリ現像型の光硬化性熱硬化性樹脂組成物(以下、単に「硬化性樹脂組成物」等と称する場合がある。)について具体的に説明するが、本発明はこれらには何ら限定されない。
【0012】
なお、説明した化合物に異性体が存在する場合、特に断らない限り、存在し得る全ての異性体が本発明において使用可能である。
【0013】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0014】
固形分とは、特に断らない限り、溶媒(特に有機溶媒)以外の組成物を構成する成分、またはその質量や体積を意味する。
【0015】
本発明の硬化性樹脂組成物は、少なくとも、アルカリ可溶性樹脂、オキシム結合を有する光重合開始剤、反応性希釈剤、熱硬化性樹脂、および、溶剤を含有する光硬化性・熱硬化性組成物であって、前記オキシム結合を有する光重合開始剤は、少なくとも前記アルカリ可溶性樹脂とは別の組成物に配合され、さらにオキシム結合を有する光重合開始剤と配合される溶剤は、ケトン系溶剤である、少なくとも2液系に組成されているアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物である。
【0016】
本発明の硬化性樹脂組成物は、別の表現では、少なくとも、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)反応性希釈剤、(D)熱硬化性樹脂、および、(E)溶剤を含有する光硬化性熱硬化性組成物(光硬化性熱硬化性材料)であり、(A)アルカリ可溶性樹脂を少なくとも含有する第1組成物と、(B)光重合開始剤として(B-1)オキシム結合を有する光重合開始剤{以下、「オキシム系光重合開始剤」と称する。}、および、(E)溶剤として(E-1)ケトン系溶剤を溶剤中50質量%以上含有する第2組成物と、を含む少なくとも2液(3液以上であってもよい。)に組成されているアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物(アルカリ現像型光硬化性熱硬化性材料)材料である。
【0017】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、(F)その他の成分を含有していてもよい。
【0018】
本発明の硬化性樹脂組成物の各成分は、次のように分類される。
(必須成分であり、第1組成物に含まれる成分)
(A)アルカリ可溶性樹脂
(必須成分であり、第2組成物に含まれる成分)
(B-1)オキシム系光重合開始剤
(E-1)ケトン系溶剤
(必須成分であり、いずれかまたは全ての組成物に含まれていてもよい成分)
(C)反応性希釈剤
(D)熱硬化性樹脂
(任意成分)
(E)溶剤
(B-2)オキシム系以外の光重合開始剤
(F)その他の成分
【0019】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物の各成分について説明する。
【0020】
ここで、(F)その他の成分としては、とりわけ、着色剤を含むことが好ましい。以下では、成分(A)~成分(E)および着色剤について説明し、着色剤以外の(F)その他の成分について説明する。
【0021】
[(A)アルカリ可溶性樹脂]
アルカリ可溶性樹脂としては、公知のものを使用可能であり、カルボキシル基含有樹脂またはフェノール性水酸基含有樹脂を用いると好ましい。特に、カルボキシル基含有樹脂を用いると現像性の面からより好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
カルボキシル基含有樹脂としては、特に、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂が、アルカリ現像を行う感光性の組成物として、光硬化性や耐現像性の面からより好ましい。そして、その不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタアクリル酸、または、それらの誘導体由来のものが好ましい。
【0023】
(I)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0024】
(II)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0025】
(III)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0026】
(IV)前記(II)または(III)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0027】
(V)前記(II)または(III)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物等、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0028】
(VI)2官能またはそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0029】
(VII)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0030】
(VIII)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0031】
(IX)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0032】
(X)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0033】
(XI)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0034】
(XII)前記(I)~(XI)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0035】
カルボキシル基含有樹脂の酸価は、20~200mgKOH/gの範囲が好ましく、より好ましくは40~150mgKOH/gの範囲である。カルボキシル基含有樹脂の酸価が20mgKOH/g以上の場合、塗膜の密着性が良好となり、アルカリ現像が良好となる。一方、酸価が200mgKOH/g以下の場合には、現像液による露光部の溶解を抑制できるために、必要以上にラインが痩せたり、場合によっては、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離したりすることを抑制して、良好にレジストパターンを描画することができる。
【0036】
カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、2,000~150,000、さらには5,000~100,000の範囲が好ましい。重量平均分子量が2,000以上の場合、タックフリー性能が良好であり、露光後の塗膜の耐湿性が良好で、現像時に膜減りを抑制し、解像度の低下を抑制できる。一方、重量平均分子量が150,000以下の場合、現像性が良好で、貯蔵安定性にも優れる。
【0037】
カルボキシル基含有樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてよい。本発明の硬化性樹脂組成物が2種以上のカルボキシル基含有樹脂を含有する場合、例えば、上述した(A1)カルボキシル基含有感光性樹脂を含有することが好ましい。
【0038】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、他の態様において、カルボキシル基含有樹脂として、上述した(A1)カルボキシル基含有感光性樹脂と、脂環式骨格を有さないカルボキシル基含有アクリル共重合体を含有していてもよい。脂環式骨格を有さないカルボキシル基含有アクリル共重合体としては、上記カルボキシル基含有樹脂の具体例として挙げた(1)スチレン共重合型のカルボキシル基含有樹脂が挙げられる。脂環式骨格を有さないカルボキシル基含有アクリル共重合体を配合する場合の配合率としては、カルボキシル基含有樹脂全体を100質量部としたとき、例えば、10~95質量部であり、好ましくは、10~80質量部である。
【0039】
フェノール性水酸基含有樹脂としては、主鎖もしくは側鎖にフェノール性水酸基、即ちベンゼン環に結合した水酸基を有していれば特に制限されない。好ましくは1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物である。1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物としては、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ジヒドロキシトルエン、ナフタレンジオール、t-ブチルカテコール、t-ブチルヒドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール、ビスフェノールA 、ビスフェノールF 、ビスフェノールS、ビフェノール、ビキシレノール、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型アルキルフェノール樹脂、ビスフェノールAのノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ザイロック(Xylok)型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物、1-ナフトールまたは2-ナフトールと芳香族アルデヒド類との縮合物等を挙げることができるが、これらに限られるものではない。フェノール性水酸基含有化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
アルカリ可溶性樹脂の含有量は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物あたり、固形分換算で、10~95質量%、好ましくは、10~80質量%等とすればよい。
【0041】
[(B)光重合開始剤]
<(B-1)オキシム系光重合開始剤>
オキシム系光重合開始剤としては、公知のものを使用可能である。また、オキシム系光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
オキシム系光重合開始剤は、オキシムエステル系光重合開始剤であり、以下に示す一般式(I)で表される構造部分を含むオキシムエステル系光重合開始剤が好ましく、さらにカルバゾール構造を有するオキシムエステル系光重合開始剤がより好ましい。カルバゾール構造を有するオキシムエステル系光重合開始剤として2量体のオキシムエステル系光重合開始剤を用いてもよい。
【0043】
【化1】
【0044】
一般式(I)中、R1は、水素原子、フェニル基、アルキル基、シクロアルキル基、アルカノイル基またはベンゾイル基を表わす。R2は、フェニル基、アルキル基、シクロアルキル基、アルカノイル基またはベンゾイル基を表す。
【0045】
R1およびR2により表されるフェニル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0046】
R1およびR2により表されるアルキル基としては、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、アルキル鎖中に1個以上の酸素原子を含んでいてもよい。また、1個以上の水酸基で置換されていてもよい。
【0047】
R1およびR2により表されるシクロアルキル基としては、炭素数5~8のシクロアルキル基が好ましい。
【0048】
R1およびR2により表されるアルカノイル基としては、炭素数2~20のアルカノイル基が好ましい。
【0049】
R1およびR2により表されるベンゾイル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、炭素数が1~6のアルキル基、フェニル基等が挙げられる。
【0050】
一般式(I)で表される構造部分を含むオキシムエステル系光重合開始剤としては、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、下記式(I-1)で表される化合物、2-(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン-9-オン、ならびに、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)および下記一般式(I-2)で表わされる化合物等のカルバゾール骨格を有るオキシムエステル系化合物等が挙げられる。
【0051】
【化2】
【0052】
一般式(I-2)中、R11は、一般式(I)におけるR1と同義であり、R12およびR14は、それぞれ独立に、一般式(I)におけるR2と同義である。R13は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、炭素数2~12のアルカノイル基、炭素数2~12のアルコキシカルボニル基(アルコキシル基を構成するアルキル基の炭素数が2以上の場合、アルキル基は1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有してもよい)またはフェノキシカルボン基を表す。
【0053】
このようなオキシムエステル系光重合開始剤は、例えば、ダイレクトイメージング用の露光に対して、本発明の硬化性樹脂組成物の感度を高くでき、解像性に優れるため好ましい。また、オキシムエステル系光重合開始剤は二量体であってもよい。
【0054】
二量体のオキシムエステル系光重合開始剤としては、下記一般式(I-3)で表される化合物であることがより好ましい。
【0055】
【化3】
【0056】
一般式(I-3)中、R23は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基を表す。R21、R22はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表す。
Arは、単結合、または、炭素数1~10のアルキレン基、ビニレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ピリジレン基、ナフチレン基、アントリレン基、チエニレン基、フリレン基、2,5-ピロール-ジイル基、4,4’-スチルベン-ジイル基、4,2’-スチレン-ジイル基を表す。
nは0~1の整数を表す。
【0057】
R23により表されるアルキル基としては、炭素数1~17のアルキル基が好ましい。
R23により表されるアルコキシ基としては、炭素数1~8のアルコキシ基が好ましい。
R23により表されるフェニル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1~17)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~8)、アミノ基、アルキルアミノ基(好ましくはアルキル基の炭素数1~8)またはジアルキルアミノ基(好ましくはアルキル基の炭素数1~8)等が挙げられる。
R23により表されるナフチル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、R23により表されるフェニル基が有し得る上記置換基と同様の基が挙げられる。
【0058】
R21およびR22により表されるアルキル基としては、炭素数1~17のアルキル基が好ましい。
R21およびR22により表されるアルコキシ基としては、炭素数1~8のアルコキシ基が好ましい。
R21およびR22により表されるフェニル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1~17)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~8)、アミノ基、アルキルアミノ基(好ましくはアルキル基の炭素数1~8)またはジアルキルアミノ基(好ましくはアルキル基の炭素数1~8)等が挙げられる。
R21およびR22により表されるナフチル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、R21およびR22により表されるフェニル基が有し得る上記置換基と同様の基が挙げられる。
【0059】
さらに、一般式(I-3)中、R21、R23が、それぞれ独立に、メチル基またはエチル基であり、R22はメチルまたはフェニルであり、Arは、単結合か、フェニレン基、ナフチレン基またはチエニレン基、nは0であることが好ましい。
【0060】
一般式(I-3)で表される化合物としては、下記化合物がより好ましい。
【0061】
【化4】
【0062】
(B)オキシムエステル系光重合開始剤としては、市販品として、BASFジャパン社製のCGI-325、イルガキュアーOXE01(1.2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)])、イルガキュアーOXE02(エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム))、ADEKA社製N-1919、NCI-831、常州強力電子新材料有限公司社製のTR―PBG-304、日本化学工業所社製のTOE-04-A3等が挙げられる。
【0063】
オキシムエステル系光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.01~20質量部等とすればよい。
【0064】
本発明の硬化性樹脂組成物は、他の光重合開始剤を含有してもよい。他の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、アミノアセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、アシルホスフィンオキシド系、オキシムエーテル系、チタノセン系等の公知慣用の化合物が挙げられる。
【0065】
露光に対する感度を向上させるため、一般式(II)で表される構造部分を含むα-アミノアセトフェノン系光重合開始剤等を併用することが好ましい。
【0066】
【化5】
【0067】
一般式(II)中、R3およびR4は、各々独立に、炭素数1~12のアルキル基またはアリールアルキル基を表し、R5およびR6は、各々独立に、水素原子、または炭素数1~6のアルキル基を表し、あるいは2つが結合して環状アルキルエーテル基を形成していてもよい。
【0068】
一般式(II)で表される構造部分を含むα-アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等が挙げられる。
【0069】
[(B-2)オキシム系以外の光重合開始剤]
オキシム系以外の光重合開始剤としては、公知のものを使用可能である。また、オキシム系光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
オキシム系以外の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、アミノアセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、アシルホスフィンオキシド系、オキシムエーテル系、チタノセン系等の公知慣用の化合物が挙げられる。
【0071】
[(C)反応性希釈剤]
反応性希釈剤としては、公知のものを使用可能である。また、反応性希釈剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
反応性希釈剤は、分子中に炭素間多重結合(二重結合および三重結合)を有する化合物であり、換言すれば光硬化性モノマーである。このような反応性希釈剤としては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレンオキシド誘導体のモノまたはジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコールまたはこれらのエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の多価(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール類のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリジジルエーテルの(メタ)アクリレート類;およびメラミン(メタ)アクリレート;等の公知の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0073】
本発明の硬化性樹脂組成物における反応性希釈剤の含有量は、特に限定されないが、例えばアルカリ可溶性樹脂100質量部に対して5~45質量部(好ましくは、5~40質量部)等とすればよい。
【0074】
ここで、本発明の硬化性樹脂組成物は、オキシム結合を有する光重合開始剤の失活を低減し得るため、高感度な光重合開始剤を含有する黒色遮蔽剤等に好適に用いることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物を黒色遮蔽剤(アルカリ現像型感光性黒色遮蔽剤)として用いる場合、本発明に係る反応性希釈剤、即ち、光硬化性モノマーとして、アルキレンオキシドおよびラクトンのいずれかで変性された2官能以上(好ましくは3官能以上)の(メタ)アクリレート{以下、「(メタ)アクリレート(c)」と称する。}を含有することが好ましい。これにより、ガラス基材への密着性に優れた黒色遮蔽剤を提供することができる。また、この(メタ)アクリレート(c)を含有する場合、(A)アルカリ可溶性樹脂が、カルボキシル基含有樹脂であることが好ましい。
【0075】
ここで、(メタ)アクリレート(c)は、2官能以上の(メタ)アクリレートの、少なくとも一部が、アルキレンオキシドまたはラクトンにより変性されていればよい。なお、(メタ)アクリレート(c)は、アルキレンオキシドおよびラクトンの両方により変性されていてもよい。
【0076】
アルキレンオキシドは、特に限定されないが、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドであることが好ましい。
【0077】
ラクトンは、特に限定されないが、カプロラクトンであることが好ましい。
【0078】
(メタ)アクリレート(c)におけるアルキレンオキシドおよびラクトンの変性部分は、繰り返し構造を有していてもよい。
【0079】
具体的な(メタ)アクリレート(c)としては、例えば、上述した公知の(メタ)アクリレートの中で2官能以上の(メタ)アクリレートが、アルキレンオキシドおよびラクトンのいずれかで変性されたもの、例えば、アルキレンオキシド付加物ポリオールまたはラクトン付加物ポリオールの(メタ)アクリレートが例示できる。(メタ)アクリレート(c)は、より具体的には、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、EO変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、EO変性トリスアクリロキシエチルトリイソシアヌレート、EO変性フルオレンジアクリレート、EO変性ビスフェノールAエポキシジアクリレート、EO変性ビスフェノールFエポキシジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、EO変性グリセリンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート、EO変性トリグリシジルイソシアヌレートの(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性イソシアヌル酸トリアクリレート等が挙げられる。この中でも、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートであることが好ましい。
【0080】
光硬化性モノマーとして(メタ)アクリレート(c)を使用する場合、1種の(メタ)アクリレート(c)を単独で用いてもよく、2種以上の(メタ)アクリレート(c)を組み合わせて用いてもよい。さらには、(メタ)アクリレート(c)と(メタ)アクリレート(c)以外の光硬化性モノマー(以下、「その他の光硬化性モノマー」と称する。)とを組み合わせて用いてもよい。
【0081】
その他の光硬化性モノマーとしては特に限定されず、上述した公知の(メタ)アクリレート等を使用すればよい。
【0082】
(メタ)アクリレート(c)の含有量は、(A)アルカリ可溶性樹脂(好ましくは、カルボキシル基含有樹脂)100質量部に対して、好ましくは10~45質量部である。(メタ)アクリレート(c)の含有量が、10質量部以上の場合、良好な解像性を得ることができる。また、45質量部以下の場合、良好なタック性(ネガの貼り付きが無い)塗膜を得ることができる。
【0083】
その他の光硬化性モノマーを配合する場合、(メタ)アクリレート(c)とその他の光硬化性モノマーの合計含有量が(A)アルカリ可溶性樹脂(好ましくは、カルボキシル基含有樹脂)100質量部に対して10~45質量部であることが好ましく、且つ、その中でその他の光硬化性モノマーが0~50重量%であることが好ましい。
【0084】
[(D)熱硬化性樹脂]
熱硬化性樹脂としては、公知のものを使用可能である。また、熱硬化性樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、ビスマレイミド、カルボジイミド樹脂等が挙げられる。
【0086】
熱硬化性樹脂としては、分子中に複数の環状エーテル基または環状チオエーテル基{以下、「環状(チオ)エーテル基」と称する。}を有する熱硬化性樹脂が好ましい。
【0087】
上記の分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性樹脂は、分子中に3、4または5員環の環状(チオ)エーテル基を複数有する化合物であり、例えば、分子内に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子内に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子内に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0088】
多官能エポキシ化合物としては、エポキシ化植物油;ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;ビスフェノール型エポキシ樹脂;チオエーテル型エポキシ樹脂;ブロム化エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;ビフェノールノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;ヒダントイン型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;ジグリシジルフタレート樹脂;テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;ナフタレン基含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体;CTBN変性エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0089】
多官能オキセタン化合物としては、例えば、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂とのエーテル化物等が挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等も挙げられる。
【0090】
分子中に複数の環状チオエーテル基を有する化合物としては、ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂等が挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂等も用いることができる。
【0091】
メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂としては、メチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物およびメチロール尿素化合物等が挙げられる。
【0092】
イソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート化合物を配合することができる。ポリイソシアネート化合物としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネートおよび2,4-トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;ならびに先に挙げたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体およびイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0093】
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物を用いることができる。イソシアネートブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、例えば、上述のポリイソシアネート化合物等が挙げられる。イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール系ブロック剤;ラクタム系ブロック剤;活性メチレン系ブロック剤;アルコール系ブロック剤;オキシム系ブロック剤;メルカプタン系ブロック剤;酸アミド系ブロック剤;イミド系ブロック剤;アミン系ブロック剤;イミダゾール系ブロック剤;イミン系ブロック剤等が挙げられる。
【0094】
熱硬化性樹脂の含有量は、特に限定されないが、アルカリ可溶性樹脂のアルカリ可溶性基(カルボキシル基やフェノール性水酸基)1当量に対し、0.6~2.8当量等とすればよい。
【0095】
[(E)溶剤]
(E)溶剤は、(E-1)ケトン系溶剤と、(E-2)ケトン系溶剤以外の溶剤とがある。以下、それぞれについて説明する。
【0096】
(E-1)ケトン系溶剤
ケトン系溶剤としては、公知のものを使用可能である。また、ケトン系溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。中でもシクロヘキサノンが好ましい。
【0098】
(E-2)ケトン系以外の溶剤
ケトン系以外の溶剤としては、公知のものを使用可能である。また、ケトン系以外の溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
ケトン系以外の溶剤としては、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル系溶剤;エタノール、プロパノール、2-メトキシプロパノール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系溶剤;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等の他、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラクロロエチレン、テレビン油等が挙げられる。
【0100】
ここで、従来においては、溶剤としてエーテル系等の溶剤が用いられていたが、エーテル系溶剤をオキシム系重合光開始剤と同時に配合し保存した場合、オキシム系光重合開始剤が失活することが判った。エーテル系の溶剤の代わりにケトン系溶剤と配合することで、失活および再結晶せず、カルボキシル基と同時に配合せず2液とすることで保存安定性に優れ遮蔽材としても好適に使用可能となる。従って、オキシム系光重合開始剤を含有する第2組成物においては、ケトン系以外の溶剤を含まないことが好ましい。より詳細には、第1組成物においては、特に溶剤を限定する必要はなく、(E-1)ケトン系溶剤でも、(E-2)ケトン系以外の溶剤でもよく、且つ、第2組成物においては、(E-1)ケトン系溶剤の中から溶剤を選択することが好ましく、ケトン系溶剤は溶剤中50質量%以上含む必要がある。なお、第2組成物における溶剤中、ケトン系溶剤の含有量は、55質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上、100質量%のいずれかであってもよい。第2組成物において、ケトン系溶剤以外の溶剤を含む場合は、エステル系溶剤が好ましく、その他本発明の効果を損なわない程度にケトン系溶剤以外の溶剤を含んでもよい。但し、エーテル系溶剤は、オキシム系光重合開始剤が失活するため、第2組成物の溶剤としては用いないことが好ましい。
【0101】
溶剤は、一般に、組成物の調製や基材上に塗布する際の粘度調整等の目的で使用される。従って、溶剤の含有量は、目的に応じて適宜変更可能である。
【0102】
[着色剤]
着色剤としては、公知のものを使用可能である。また、着色剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この着色剤は、第1組成物および第2組成物を含むいずれか1種以上の組成物または全ての組成物に含まれていればよい。
【0103】
着色剤としては、赤、青、緑、黄、白、黒等の慣用公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。より具体的には、着色剤としては、下記のようなカラーインデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyers and Colourists)発行)番号が付されているものを挙げられる。
【0104】
赤色着色剤としては、モノアゾ系、ジズアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系等がある。青色着色剤としては、フタロシアニン系、アントラキノン系等があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物を使用することができる。これら以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。緑色着色剤としては、同様にフタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系がある。これら以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等がある。白色着色剤としては、ルチル型またはアナターゼ型酸化チタン等が挙げられる。黒色着色剤としては、カーボンブラック系、黒鉛系、酸化鉄系、チタンブラック、酸化鉄、アンスラキノン系、酸化コバルト系、酸化銅系、マンガン系、酸化アンチモン系、酸化ニッケル系、ペリレン系、アニリン系、硫化モリブデン、硫化ビスマス等がある。その他、色調を調整する目的で紫、オレンジ、茶色等の着色剤を加えてもよい。
【0105】
本発明の硬化性樹脂組成物をソルダーレジスト組成物として用いる場合、着色剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物全量(第1組成物および第2組成物を含む全ての組成物の合計量)あたり、固形分換算で0.03~7質量%、より好ましくは、0.05質量%~5質量%である。
【0106】
ここで、本発明の硬化性樹脂組成物は、オキシム結合を有する光重合開始剤の失活を低減し得るため、高感度な光重合開始剤を含有する黒色遮蔽剤等に好適に用いることができる。
【0107】
本発明の硬化性樹脂組成物を黒色遮蔽剤(アルカリ現像型感光性黒色遮蔽剤)等として用いる場合、着色剤の含有量は、硬化物の隠蔽性を向上させる観点から、アルカリ現像型感光性黒色遮蔽剤全量あたり、固形分換算で5~50質量%含有することで遮蔽性と解像性を両立でき好ましい。より好ましくは、10質量%~30質量%である。
【0108】
ここで、本発明の硬化性樹脂組成物を黒色遮蔽剤(アルカリ現像型感光性黒色遮蔽剤)等として用いる場合、着色剤としては、カーボンブラックを含むことが好ましく、カーボンブラックと混色黒系着色剤とを併用することが好ましい。特にカーボンブラックと混色黒系着色剤とを併用する場合、アルカリ現像型感光性黒色遮蔽剤全量あたり、固形分換算で、カーボンブラックを4~10質量%、好ましくは4~8質量%とし、且つ、混色黒系着色剤を8~20質量%、好ましくは12~16質量%とすることが好ましい。
【0109】
なお、混色黒系着色剤とは、黒色または黒色に近い色となるように、赤色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、橙色着色剤等の着色剤を混合して得られた着色剤を示す。混色黒系着色剤は、予め各着色剤を混合した上で樹脂組成物に添加することが好ましいが、混色黒系着色剤を構成する各着色剤を個別に樹脂組成物に添加してもよい。
【0110】
[(F)その他の成分]
その他の成分としては、硬化性樹脂組成物に一般に使用される公知の添加剤、例えば、充填剤、熱硬化触媒、光開始助剤、シアネート化合物、エラストマー、メルカプト化合物、ウレタン化触媒、チキソ化剤、密着促進剤、ブロック共重合体、連鎖移動剤、重合禁止剤、銅害防止剤、酸化防止剤、防錆剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤および/またはレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、ホスフィン酸塩、燐酸エステル誘導体、フォスファゼン化合物等のリン化合物等の難燃剤等が挙げられる。
【0111】
<効果>
本発明のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂を少なくとも含有する第1組成物と、(B-1)オキシム系光重合開始剤、および、(E-1)ケトン系溶剤、を少なくとも含有する第2組成物と、を少なくとも含む。各組成物は、例えば別々の容器に収容されることで、各々接触しないまたは接触し難い状態で保管可能である。このように構成することで、硬化性樹脂組成物において好ましく使用される溶剤がオキシム系光重合開始剤に作用してオキシム系光重合開始剤を失活および再結晶することを防止し、長期保存性を達成することができる。
【0112】
<用途>
本発明の硬化性樹脂組成物は、プリント配線板やフレキシブルプリント配線板のソルダーレジスト、カバーレイ、層間絶縁層、FPD(フラットパネルディスプレイ)に用いられる遮蔽剤等の永久塗膜の形成やエッチングレジスト膜の形成に適しており、特に、光特性に優れることから、高密度化および高細線化のプリント配線板の形成に適している。本発明の硬化性樹脂組成物は、その他、印刷インク、インクジェットインク、フォトマスク作製材料、印刷用プルーフ作製材料、誘電体パターン、電極(導体回路)パターン、電子部品の配線パターン、導電ペースト、導電フィルム、ブラックマトリックス等の遮蔽画像等の作製に用いることができる。
【0113】
<使用方法>
次に、本発明のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物の使用方法の一例として、基材上にアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物の硬化物を形成する方法について説明する。
【0114】
なお、以下においては、本発明のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物を、第1組成物および第2組成物からなる2液系とした場合について説明する。第1組成物および第2組成物は、アルカリ可溶性樹脂とオキシム系光重合開始剤とが異なる組成物に配合され、且つ、オキシム系光重合開始剤を含む組成物の溶剤がケトン系溶剤となるように、予め各原料を混合して得られたものである。なお、本発明のアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物は、通常、所定の保管期間を経た状態で使用されることを想定しているが、所定の保管期間を設けずに直ちに使用されてもよい。
【0115】
[硬化物の形成方法]
硬化物は、一般に、樹脂層形成工程と、露光工程と、現像工程と、熱硬化工程と、を実行することで得られる。以下それぞれの工程について説明する。
【0116】
(樹脂層形成工程)
第1組成物および第2組成物を混合し、必要に応じて有機溶剤により粘度調整し、塗布用組成物とする。次に、塗布用組成物を基材上に所望の厚みで塗布する。次に、塗布用組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥させ、基材上に樹脂層を形成する。
【0117】
基材としては、あらかじめ回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0118】
特に本発明がアルカリ現像型感光性黒色遮蔽剤である場合、基材がガラス基材であることが好ましい。
【0119】
ガラス基材の形状および種類は、用途に応じて適宜変更可能である。上述したアルカリ現像型感光性黒色遮蔽剤は、高い解像性およびガラス基材への高い密着性を有することから、平板状のガラス基材のみならず、曲面状のガラス基材を使用することも可能である。
【0120】
塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等が挙げられる。
【0121】
塗布膜厚は、例えば、乾燥後の膜厚で0.5~100μm、0.5~50μm、2~40μm、または2~20μmの範囲となるように適宜設定すればよい。
【0122】
乾燥手段としては、例えば、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等が挙げられる。
【0123】
乾燥条件は、例えば、乾燥温度を50~130℃、乾燥時間を1~30分間等とすればよい。
【0124】
(露光工程)
樹脂層に対して、選択的な活性光線の照射(露光)を行う。
【0125】
露光方法としては特に限定されず、所定の露光パターンが形成されたフォトマスクを介してパターニングする方法であってもよいし、h線ダイレクトイメージング(HDI)等のレーザーダイレクトイメージングによりパターニングする方法であってもよい。
【0126】
活性光線の照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプおよびメタルハライドランプ等が挙げられる。
【0127】
ここで、露光方法は、フォトマスクと樹脂層とが接触された状態にて露光を行う接触露光法と、フォトマスクと樹脂層とが非接触となる状態にて露光を行う非接触露光法と、に分類可能である。
【0128】
接触露光法は、フォトマスクと樹脂層とが接触していることから、解像性が高い一方で、露光後にフォトマスクを除去する際に、フォトマスクに樹脂層が付着してしまい、フォトマスクを汚したり、自動露光機の異常停止が起きる等、連続的な生産性が悪くなる場合がある。非接触露光法は、フォトマスクと樹脂層との距離が離れていることから、連続的な生産性が高い一方で、解像性が低くなりやすい。
【0129】
本発明の好ましいアルカリ現像型感光性黒色遮蔽剤を用いて得られた樹脂層は、上述した非接触露光法および接触露光法のいずれにおいても使用できる。
【0130】
(現像工程)
露光工程後、アルカリ水溶液により現像することで、樹脂層の未露光部を除去してパターン形成する。
【0131】
現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等が挙げられる。
【0132】
アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液等が挙げられる。
【0133】
(熱硬化工程)
樹脂層の露光部を熱硬化させ、ガラス基材等の上に所定のパターンを有する硬化物(例えば、黒色遮蔽部)を形成する。
【0134】
熱硬化条件は、例えば、140~180℃等とすればよい。
【0135】
ここで、本発明のアルカリ現像型感光性黒色遮蔽剤の硬化物(黒色遮蔽部)を備えるガラス基材は、種々の用途に使用可能であるが、各種の表示装置用とすることが好ましく、車載ディスプレイ用とすることが特に好ましい。
【実施例
【0136】
<<第1の実施例>>
[(A)カルボキシル基含有樹脂の合成]
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、登録商標“エピクロン”N-695、エポキシ当量:220)220部を撹拌機および還流冷却器の付いた四つ口フラスコに入れ、カルビトールアセテート214部を加え、加熱溶解した。次に、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1部と、反応触媒としてジメチルベンジルアミン2.0部を加えた。この混合物を95~105℃に加熱し、アクリル酸72部を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を80~90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物106部を加え、8時間反応させ、冷却後、取り出した。
このようにして得られたエチレン性不飽和結合およびカルボキシル基を併せ持つ感光性樹脂は、不揮発分65%、固形物の酸価85mgKOH/g、重量平均分子量Mw約3,500であった。以下、この樹脂溶液をA-1ワニスと称す。
なお、得られた樹脂の重量平均分子量の測定は、(株)島津製作所製ポンプLC-804、KF-803、KF-802を三本つないだ高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
【0137】
<アルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物の原料>
[(A)カルボキシル基含有樹脂]
A-1ワニス
[(B)光重合開始剤]
(B-1)オキシム系光重合開始剤
TOE-04-A3(日本化学工業所社製)
(B-2)オキシム系以外の光重合開始剤
Omnirad(オムニラッド)TPO(IGM Resins社製)
[(C)反応性希釈剤]
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬社製)
[(D)熱硬化性樹脂]
JER828(三菱化成社製)
[(E)溶剤]
(E-1)ケトン系溶剤
シクロヘキサノン
(E-2)ケトン系以外の溶剤
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
1-メトキシ-2-プロパノール
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
[(F)その他の成分(着色剤)]
ペリレン系赤色着色剤(C.I.Pigment Red 149)
フタロシアニン系青色着色剤(C.I.Pigment Blue 15:3)
アントラキノン系黄色着色剤(C.I.Pigment Yellow 147)
カーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)
【0138】
<実施例および比較例に係るアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物の調製>
表1に示す成分組成に基づき、各成分を配合し、攪拌機にて予備混合した後、混練して分散させ、実施例および比較例に係る、第1組成物および第2組成物からなるアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物を調製した。表中の含有量は、質量部を示す。また、表中、(E)溶剤以外の成分については、固形分換算での含有量を示す。
【0139】
【表1】
【0140】
また、比較例3~6として、各実施例および各比較例に係るアルカリ現像型光硬化性熱硬化性樹脂組成物の、第1組成物と第2組成物とを予め混合した組成物を準備した。
【0141】
<評価>
このようにして得られた各組成物について、室温で7日間または120日間放置後、再結晶粒子の有無と大きさを確認した。次に、第1組成物および第2組成物を混合し、感光性、解像性、密着性を以下の評価方法に基づき評価した。これらの評価結果を表2に示す。
【0142】
[塗膜作製条件]
ガラス基板に乾燥後の膜厚が10μmになるようアプリケーターにて塗布し、熱風循環式乾燥炉において80℃で30分乾燥させ、塗膜を作製した。
【0143】
[感度]
乾燥後の塗膜にステップタブレット(コダックNo.2)を密着させ、メタルハライドランプの露光機を用いて1000mJ/cm露光し、現像した後ステップタブレットから得られた段数より感度を評価した。なお、評価基準は以下の通りである。
〇・・・得られた段数が7以上である。
×・・・得られた段数が7未満である。
【0144】
[解像性]
乾燥後の塗膜に、メタルハライドランプの露光機を用いて1000mJ/cm露光し、現像した後、形成されている最小幅のラインを読み取り、解像性を評価した。
〇・・・L/S=100/100が残る。
×・・・L/S=100/100が残らない。
【0145】
[密着性]
JIS(日本工業規格)D-0202の試験方法に従って、テストピースの硬化塗膜に碁盤目状に100個のクロスカットを入れ、次いでセロハン粘着テープによるピーリング試験後の剥がれた箇所を目視により判定した。なお、評価基準は以下の通りである。
〇・・・100マスが残る。
×・・・100マスが残らない。
【0146】
[再結晶]
グラインドメーター(0-25μm)にて再結晶粒子の大きさを確認した。再結晶粒子の大きさが5μm以上になると、各組成物の硬化塗膜の膜厚が10μmの場合でピンホールが発生し外観不良となるため、5μm以上を×とした。尚、再結晶粒子が無い場合および再結晶粒子の大きさが5μm未満の場合は、各組成物の硬化塗膜の膜厚が10μmの場合でもピンホールは発生しなかった。
〇・・・再結晶粒子無し。
△・・・再結晶粒子の大きさ 5μm未満。
×・・・再結晶粒子の大きさ 5μm以上。
[OD値]
ガラス基材の皮膜側を測定器に向けて透過濃度計(サカタインクスエンジニアリング社製、型番:X-Rite 361T、光源波長:400~800nm)に装着してOD値を評価した。
○・・・OD値が4超
△・・・OD値が3以上4以下
×・・・OD値が3未満
【0147】
【表2】
【0148】
<<第2の実施例>>
<アルカリ現像感光性黒色遮蔽剤の原料>
(A)カルボキシル基含有樹脂
・A-1ワニス
(B)光重合開始剤
・B-1:TOE-04-A3(日本化学工業所社製)
・B-2:Omnirad(オムニラッド)TPO(IGM Resins社製)
(C)光硬化性モノマー(反応性希釈剤)
・C-1:M-360(東亞合成社製、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート)
・C-2:DPCA-120(日本化薬社製、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
・C-3:TMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)
・C-4:DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
(D)熱硬化性樹脂
・jER834(三菱ケミカル社製、エポキシ樹脂)
(E)溶剤
・シクロヘキサノン
・DPM(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)
(F-1)着色剤
・カーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)
・ペリレン系赤色着色剤(C.I.Pigment Red 149)
・フタロシアニン系青色着色剤(C.I.Pigment Blue 15:3)
・アントラキノン系黄色着色剤(C.I.Pigment Yellow 147)
(F-2)その他の成分
・レベリング剤:BYK-361N(ビックケミー・ジャパン社製)
【0149】
<実施例および比較例に係るアルカリ現像感光性黒色遮蔽剤の調製>
表3~表4に示す成分組成に基づき、各成分を配合し、攪拌機にて予備混合した後、混練して分散させ、実施例および比較例に係る、第1組成物および第2組成物からなるアルカリ現像感光性黒色遮蔽剤を調製した。なお、表中の含有量は、質量部を示す。また、表中、(E)有機溶剤以外の成分については、固形分換算での含有量を示す。
【0150】
<評価>
実施例3~14につき、実施例1と同一の塗膜作成条件および評価方法で、感度、解像性、密着性、再結晶、OD値の各評価を実施した。
実施例3~14の各評価結果は、実施例1と同等であった。
比較例7~9の各評価結果は、比較例1と同等であった。
【0151】
更に、このようにして得られた感光性黒色遮蔽剤について、解像性、密着性、タック性、OD値を、以下の評価方法に基づき評価した。これらの評価結果を表3~表4に併せて示す。
【0152】
[解像性2]
化学強化ガラス板(Dragontrail,AGC社製)上に乾燥後の膜厚が10umになるようエアースプレーにて遮蔽材を塗布し、乾燥(80℃,30min)後、所定のフォトマスクを塗膜に密着させ露光(遮蔽材上の露光量700mJ/cm)し、次いで現像(1wt%NaCO,30℃,0.2MPa,60sec)して試験片を作製した。その試験片の中で最も細い残存ラインを目視で確認した。なお、評価基準は以下の通りである。
◎:現像後の最小残存ライン幅が50μm以下である。
○:最小残存ライン幅が50μm超100um以下である。
△:最小残存ライン幅が100μm超150um以下である。
×:最小残存ライン幅が150μm超である。
【0153】
[密着性2(クロスカット)]
化学強化ガラス板(Dragontrail,AGC社製)上に乾燥後の膜厚が10umになるようエアースプレーにて遮蔽材を塗布し、乾燥(80℃,30min)後、所定のフォトマスクを塗膜に密着させ露光(遮蔽材上の露光量700mJ/cm)した。次いで現像(1wt%NaCO,30℃,0.2MPa,60sec)、ポストUV(メタルハライドランプ,1000mJ/cm)、熱硬化(150℃,60min)を順次行い試験片を作製した。
JISK5400に準拠して、試験片の皮膜に、1mmの碁盤目100個(10×10)を作り、碁盤目上に透明粘着テープ(ニチバン社製、幅:18mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端をガラス基材に対して直角に保ちながら瞬間的に引き離し、完全に剥がれないで残った碁盤目の数を調べた。評価基準は以下の通りである。
○:碁盤目が100%残存した。
△:碁盤目が95%以上100%未満残存した。
×:碁盤目が95%未満残存した。
【0154】
[タック性]
化学強化ガラス板(Dragontrail,AGC社製)上に乾燥後の膜厚が10umになるようエアースプレーにて遮蔽材を塗布し、乾燥(80℃,30min)後、所定のフォトマスクを塗膜に密着させ露光(遮蔽材上の露光量700mJ/cm)した。次いでフォトマスクを塗膜から手で剥がし、その時のマスクの剥がしやすさと、フォトマスクの密着痕の有無を目視で確認した。なお、評価基準は以下の通りである。
◎:剥がすときの抵抗が無く且つ密着痕がない
○:剥がすときの抵抗が無く且つ密着痕が目立たない
△:剥がすときの抵抗を感じ且つ密着痕が目立たない
×:剥がすときの抵抗を感じ且つフォトマスクに遮蔽材が転写する
【0155】
[OD値2(光遮蔽性)]
ガラス基材の皮膜側を測定器に向けて透過濃度計(サカタインクスエンジニアリング社製、型番:X-Rite 361T、光源波長:400~800nm)に装着してOD値を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:OD値が6以上
○:OD値が5以上6未満
△:OD値が4以上5未満
×:OD値が4未満
【0156】
【表3】
【0157】
【表4】