(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】遠心圧縮機及びこの遠心圧縮機を備えたターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20221205BHJP
【FI】
F04D29/44 R
(21)【出願番号】P 2020512157
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(86)【国際出願番号】 JP2018014422
(87)【国際公開番号】W WO2019193683
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-08-26
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 豊
(72)【発明者】
【氏名】本田 浩範
(72)【発明者】
【氏名】岡 信仁
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】長馬 望
【審判官】田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-175124(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0097297(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に回転可能に設けられたインペラを備える遠心圧縮機であって、
前記ハウジングは、前記インペラの出口に連通するディフューザ通路を画定するシュラウド壁及びハブ壁を含み、
前記ディフューザ通路は、
前記インペラの出口から前記遠心圧縮機の径方向外側に向かって前記シュラウド壁が前記ハブ壁に近づくよう構成されたピンチド部と、
前記ピンチド部よりも前記遠心圧縮機の径方向外側で前記ピンチド部に連通するとともに前記シュラウド壁及び前記ハブ壁が互いに平行に構成された平行部と
を含み、
前記インペラ及び前記ハブ壁に面する前記シュラウド壁の表面は、前記インペラの軸線を含む断面において任意の位置で接線が存在し得る断面形状を有し、
前記インペラの軸線から前記遠心圧縮機の径方向外側に向かう距離であるRに関し、前記インペラの軸線から前記インペラの出口までの距離をR
0とし、前記インペラの軸線から前記ピンチド部と前記平行部との境界部分までの距離をR
1とすると、
R
0≦R≦R
1の範囲における前記断面形状は、
R
0≦R≦R
2(R
0<R
2<R
1)の範囲において前記ハブ壁に対して凹状に湾曲した第1曲線と、
R
2≦R≦R
1の範囲において前記ハブ壁に対して凸状に湾曲した第2曲線と
を含む曲線であ
り、
前記インペラの軸線を含む断面において、前記インペラの翼の外周縁部の径方向最外部を径方向外側に向けて延長した直線と前記接線とのなす角度をλとし、前記Rと前記λとの関係を関数fによってλ=f(R)と表すと、関数λ=f(R)は、任意のRにおいて微分可能である遠心圧縮機。
【請求項2】
f(R)の1次導関数をf’(R)とすると、R
0≦R<R
1においてf’(R)<0である、請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の遠心圧縮機を備えるターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心圧縮機及びこの遠心圧縮機を備えたターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャ等の遠心圧縮機は、インペラの吐出側にディフューザ通路及びスクロール通路を有している。インペラによって圧縮された流体は、ディフューザ通路において流速が低下してその動圧成分の一部が静圧に変換された後、スクロール通路に流入する。ディフューザ通路の形状は一般的に、ディフューザ通路を画定する2つの壁が互いに平行なもの(平行壁)と、2つの壁間の間隔が径方向外側に向かって減少する部分を有するもの(ピンチド壁)とがある。ピンチド壁で形成されたディフューザ通路を有する遠心圧縮機が、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピンチド壁で形成されるディフューザ通路として、例えば
図6に示されるように、シュラウド壁102とハブ壁103との間に画定されたディフューザ通路100において、シュラウド壁102がインペラ105の出口部分101から径方向外側に向かってハブ壁103に近づくように一定の傾きで傾斜するピンチド部110と、ピンチド部110よりも径方向外側でシュラウド壁102及びハブ壁103が互いに平行な平行部111とをディフューザ通路100が含む構成を想定する。インペラ105の軸線Lを含む断面において、インペラ105の翼106の外周縁部106aの径方向最外部106a1を径方向外側に向けて延長した直線L
3と、シュラウド壁102の表面上の任意の位置における接線とのなす角度をλとする。また、インペラ105の軸線Lから径方向外側に向かう距離であるRに関して、インペラ105の軸線Lからインペラ105の出口部分101までの距離をR
0とし、インペラ105の軸線Lからピンチド部110と平行部111との境界部分104までの距離をR
1とする。
【0005】
図7に、横軸にRをとるとともに縦軸にλをとったR-λ平面において、Rとλとの関係を関数fによってλ=f(R)と表す。R≦R
0の範囲では、シュラウド壁102の表面は滑らかな減少関数となるが、R=R
0においてλが不連続的に上昇し、R
0≦R<R
1の範囲では、シュラウド壁102が一定の傾きで傾斜するため、λが一定値をとる。また、R=R
1においてλが不連続的に低下し、R≧R
1の範囲では、シュラウド壁102とハブ壁103とが互いに平行となっているため、λが一定値をとる。このように、インペラ105の出口部分101や、ピンチド部110と平行部111との境界部分104で、シュラウド壁102に不連続な部分が存在してしまう。このような不連続な部分では、損失が生じたり、剥離が生じたりするといった問題点があった。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも1つの実施形態は、ディフューザ通路における損失又は剥離の発生を抑制した遠心圧縮機及びこの遠心圧縮機を備えたターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも1つの実施形態に係る遠心圧縮機は、
ハウジング内に回転可能に設けられたインペラを備える遠心圧縮機であって、
前記ハウジングは、前記インペラの出口に連通するディフューザ通路を画定するシュラウド壁及びハブ壁を含み、
前記ディフューザ通路は、
前記インペラの出口から前記遠心圧縮機の径方向外側に向かって前記シュラウド壁が前記ハブ壁に近づくよう構成されたピンチド部と、
前記ピンチド部よりも前記遠心圧縮機の径方向外側で前記ピンチド部に連通するとともに前記シュラウド壁及び前記ハブ壁が互いに平行に構成された平行部と
を含み、
前記インペラ及び前記ハブ壁に面する前記シュラウド壁の表面は、前記インペラの軸線を含む断面において任意の位置で接線が存在し得る断面形状を有し、
前記インペラの軸線から前記遠心圧縮機の径方向外側に向かう距離であるRに関し、前記インペラの軸線から前記インペラの出口までの距離をR0とし、前記インペラの軸線から前記ピンチド部と前記平行部との境界部分までの距離をR1とすると、
R0≦R≦R1の範囲における前記断面形状は、
R0≦R≦R2(R0<R2<R1)の範囲において前記ハブ壁に対して凹状に湾曲した第1曲線と、
R2≦R≦R1の範囲において前記ハブ壁に対して凸状に湾曲した第2曲線と
を含む曲線であり、
前記インペラの軸線を含む断面において、前記インペラの翼の外周縁部の径方向最外部を径方向外側に向けて延長した直線と前記接線とのなす角度をλとし、前記Rと前記λとの関係を関数fによってλ=f(R)と表すと、関数λ=f(R)は、任意のRにおいて微分可能である。
【0008】
上記(1)の構成によると、インペラ及びハブ壁に面するシュラウド壁の表面は、インペラの軸線を含む断面において任意の位置で接線が存在し得る断面形状を有していることにより、シュラウド壁の表面が滑らかな形状でありシュラウド壁の表面に不連続な部分が存在しないので、ディフューザ通路における損失又は剥離の発生を抑制することができる。
【0009】
R
0
≦R≦R
1
の範囲におけるシュラウド壁の表面の断面形状がハブ壁に対して凸状に湾曲した曲線のみから構成されると、ディフューザ通路の形状に制約が生じる場合がある。しかし、上記(1)の構成によると、R
0
≦R≦R
1
の範囲における断面形状を、R
0
≦R≦R
2
(R
0
<R
2
<R
1
)の範囲においてハブ壁に対して凹状に湾曲した第1曲線と、R
2
≦R≦R
1
の範囲においてハブ壁に対して凸状に湾曲した第2曲線とを含む曲線とすることにより、ディフューザ通路の形状の制約を緩和しながら、シュラウド壁の表面に不連続な部分が形成されないようにピンチド部を構成することができる。
【0013】
(2)いくつかの実施形態では、上記(1)の構成において、
f(R)の1次導関数をf’(R)とすると、R0≦R<R1においてf’(R)<0である。
【0014】
上記(2)の構成によると、ピンチド部において径方向外側に向かってシュラウド壁が滑らかにハブ壁に近づくよう構成されているので、ディフューザ通路における損失又は剥離の発生を抑制することができる。
【0015】
(3)本発明の少なくとも1つの実施形態に係るターボチャージャは、
上記(1)または(2)の遠心圧縮機を備える。
【0016】
上記(3)の構成によると、インペラ及びハブ壁に面するシュラウド壁の表面は、インペラの軸線を含む断面において任意の位置で接線が存在し得る断面形状を有していることにより、シュラウド壁の表面が滑らかな形状でありシュラウド壁の表面に不連続な部分が存在しないので、ディフューザ通路における損失又は剥離の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、インペラ及びハブ壁に面するシュラウド壁の表面は、インペラの軸線を含む断面において任意の位置で接線が存在し得る断面形状を有していることにより、シュラウド壁の表面が滑らかな形状でありシュラウド壁の表面に不連続な部分が存在しないので、ディフューザ通路における損失又は剥離の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の実施形態1に係る遠心圧縮機の断面図である。
【
図2】本開示の実施形態1に係る遠心圧縮機におけるディフューザ通路の部分拡大断面図である。
【
図3】本開示の実施形態1に係る遠心圧縮機におけるディフューザ通路におけるRとλとの関係を示す模式的なグラフである。
【
図4】本開示の実施形態2に係る遠心圧縮機におけるディフューザ通路の部分拡大断面図である。
【
図5】本開示の実施形態2に係る遠心圧縮機におけるディフューザ通路におけるRとλとの関係を示す模式的なグラフである。
【
図7】従来の遠心圧縮機におけるディフューザ通路におけるRとλとの関係を示す模式的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明のいくつかの実施形態について説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、本発明の範囲をそれにのみ限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0020】
以下に示す本開示のいくつかの実施形態に係る遠心圧縮機を、ターボチャージャの遠心圧縮機を例にして説明する。ただし、本開示における遠心圧縮機は、ターボチャージャの遠心圧縮機に限定するものではなく、単独で動作する任意の遠心圧縮機であってもよい。以下の説明において、この圧縮機によって圧縮される流体は空気であるが、任意の流体に置き換えることが可能である。
【0021】
(実施形態1)
図1に示されるように、本開示の実施形態1に係る遠心圧縮機1は、ハウジング2と、ハウジング2内において軸線Lを中心に回転可能に設けられたインペラ3とを備えている。ハウジング2はシュラウド壁4及びハブ壁5を含み、シュラウド壁4とハブ壁5との間には、インペラ3の周囲に沿ってインペラ3の出口に連通するディフューザ通路10が画定されている。
【0022】
ディフューザ通路10は、インペラ3の出口から遠心圧縮機1の径方向外側(以下、単に「径方向外側」という)に向かって延びるピンチド部11と、ピンチド部11よりも径方向外側でピンチド部11に連通するとともに径方向外側に向かって延びる平行部12とを含んでいる。ピンチド部11は、径方向外側に向かってシュラウド壁4がハブ壁5に近づくよう構成されている。すなわち、ピンチド部11は、径方向外側に向かってインペラ3の軸線Lの方向の流路幅が減少するように構成されている。平行部12は、シュラウド壁4及びハブ壁5が互いに平行となるように構成されている。
【0023】
インペラ3及びハブ壁5に面するシュラウド壁4の表面4aは、インペラ3の軸線Lを含む断面において、インペラ3の翼6の外周縁部6aに沿った部分で凸状に滑らかに湾曲した曲線7aと、ピンチド部11を画定する部分で凸状に滑らかに湾曲した曲線7bと、平行部12を画定する部分で径方向外側に向かって水平に延びる直線7cとによって形成された断面形状7を有している。曲線7aと曲線7bとは、インペラ3の出口に位置する境界部分18において滑らかに接続されている。曲線7bと直線7cとは、境界部分18よりも径方向外側に位置する境界部分19において滑らかに接続されている。
【0024】
インペラ3の軸線Lを含む断面において、曲線7a及び7bが凸状に滑らかに湾曲していることと、曲線7aと曲線7bとが滑らかに接続されていることと、曲線7bと直線7cとが滑らかに接続されていることとによって、シュラウド壁4の表面4aは滑らかに連続しており、表面4aに不連続な部分、例えば、急激な出っ張りや窪み等が存在していない。尚、インペラ3の翼6の後縁部6bはインペラ3の軸線Lと平行に構成されている。
【0025】
次に、シュラウド壁4の表面4aが滑らかに連続した形状であることをさらに詳細に説明する。
図2に示されるように、インペラ3の軸線Lを含む断面において、インペラ3の翼6の外周縁部6aの径方向最外部6a1を径方向外側に向けて延長した直線L
1と、表面4a上の任意の位置における接線L
2とのなす角度をλとする。また、インペラ3の軸線Lから径方向外側に向かう距離であるRに関して、インペラ3の軸線Lからインペラ3の出口すなわち境界部分18までの距離をR
0とし、インペラ3の軸線Lからピンチド部11と平行部12との境界部分19までの距離をR
1とする。
【0026】
図3に示されるように、横軸にRをとるとともに縦軸にλをとったR-λ平面において、Rとλとの関係を関数fによってλ=f(R)と表す。R≦R
0の範囲では、表面4aが翼6の外周縁部6aに沿っているため(
図2参照)、関数λ=f(R)は下に凸の滑らかな減少関数となる。R
0≦R<R
1の範囲では、径方向外側に向かってシュラウド壁4がハブ壁5に近づく構成となっているため(
図1参照)、関数λ=f(R)は下に凸の滑らかな減少関数となる。R≧R
1の範囲では、シュラウド壁4とハブ壁5とが互いに平行となっているため(
図1参照)、λが一定値、すなわち、関数λ=f(R)がR軸に平行な直線となっている。
【0027】
表面4aは、上述したように、インペラ3の軸線Lを含む断面において滑らかに連続した断面形状を有しているため(
図2参照)、関数λ=f(R)には不連続な点が存在せず、関数λ=f(R)は、任意のRにおいて微分可能となっている。言い換えると、表面4aは、インペラ3の軸線Lを含む断面において任意の位置で接線L
2が存在し得る断面形状を有していると言い換えることができ、不連続な部分が存在しない滑らかに連続した形状である。
【0028】
これに対し、
図3には、ピンチド壁で形成された従来技術のディフューザ通路として、
図7に示されるシュラウド壁102におけるRとλとの関係も、一点鎖線で示している。上述したように、
図6に示されるような構成では、インペラ105の出口部分101や、ピンチド部110と平行部111との境界部分104で、シュラウド壁102に不連続な部分が存在する。
【0029】
このように、ピンチド壁で形成された従来技術のディフューザ通路では、R=R
0及びR=R
1のそれぞれにおいて、シュラウド壁102の表面の断面形状におけるRとλとの関係が不連続となる。すなわち、シュラウド壁102の表面の断面形状におけるRとλとの関係を表す関数は、R=R
0及びR=R
1のそれぞれにおいて微分可能ではない。さらに言い換えると、シュラウド壁102の断面形状では、出口部分101(
図6参照)及び境界部分104(
図6参照)において接線が存在しない。
【0030】
また、実施形態1に係る関数λ=f(R)は、ピンチド部11(
図2参照)を構成するR
0≦R≦R
1の範囲で下に凸の曲線となっているので、R
0≦R≦R
1の範囲における下に凸の曲線は、R≦R
0の範囲における下に凸の曲線と、R≧R
1の範囲におけるR軸に平行な直線とのそれぞれに滑らかに接続することができる。このため、シュラウド壁4の表面4aに不連続な部分が形成されないようにピンチド部11を構成することができる。
【0031】
さらに、関数λ=f(R)は、R=R
1では、R≧R
1の範囲において一定のλを表すR軸に平行な直線に滑らかに接続されているので、1階微分係数f’(R
1)はゼロとなっている。しかし、R
0≦R<R
1の範囲では、Rの増加に伴ってλが減少している。すなわち、f(R)の1次導関数f’(R)は、R
0≦R<R
1の範囲においてf’(R)<0となっている。これにより、ピンチド部11(
図2参照)において径方向外側に向かってシュラウド壁4(
図2参照)が滑らかにハブ壁5(
図2参照)に近づくよう構成される。
【0032】
図1に示されるように、実施形態1に係る遠心圧縮機1では、インペラ3の回転によって圧縮された空気がディフューザ通路10を流通する。上述したようにシュラウド壁4の表面4aに不連続な部分が存在しないので、インペラ3の回転によって圧縮された空気がディフューザ通路10を流通する際に、表面4aの不連続な部分に起因する損失又は剥離が発生することはない。このため、ディフューザ通路10における損失又は剥離の発生を抑制することができる。
【0033】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る遠心圧縮機について説明する。実施形態2に係る遠心圧縮機は、実施形態1に対して、ピンチド部11を画定する部分のシュラウド壁4の表面4aの形状を変更したものである。尚、実施形態2において、実施形態1の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0034】
図4に示されるように、インペラ3の軸線Lを含む断面において、シュラウド壁4の表面4aの断面形状7の曲線7bは、R
0≦R≦R
2(R
0<R
2<R
1)の範囲においてハブ壁5(
図1参照)に対して凹状に湾曲した第1曲線7b1と、R
2≦R≦R
1の範囲においてハブ壁5に対して凸状に湾曲した第2曲線7b2とを含んでいる。第1曲線7b1と第2曲線7b2とは滑らかに接続されている。その他の構成は実施形態1と同じである。
【0035】
図5には、実施形態2に係る遠心圧縮機において、インペラ3の軸線Lを含む断面におけるシュラウド壁4の表面4aの断面形状7のRとλとの関係を表す関数λ=f(R)を示している。R≦R
0の範囲及びR≧R
1の範囲は、実施形態1に係る関数λ=f(R)と同じである。一方、R
0≦R≦R
2の範囲では、関数λ=f(R)は上に凸の減少関数となり、R
2≦R≦R
1の範囲では、関数λ=f(R)は下に凸の減少関数となる。
【0036】
実施形態2でも、表面4aは、上述したように、インペラ3の軸線Lを含む断面において滑らかに連続した断面形状を有しているため(
図4参照)、関数λ=f(R)には不連続な点が存在せず、関数λ=f(R)は、任意のRにおいて微分可能となっている。言い換えると、表面4aは、インペラ3の軸線Lを含む断面において任意の位置で接線L
2が存在し得る断面形状を有していると言い換えることができ、不連続な部分が存在しない滑らかに連続した形状である。
【0037】
ここで、実施形態1のように曲線7bがハブ壁5(
図1参照)に対して凸状に湾曲した曲線のみから構成される場合、曲線7bと直線7cとを滑らかに接続するためには、平行部12の軸線Lの方向の流路幅をある程度の大きさにする必要があったり、平行部12の軸線Lの方向の流路幅を小さくするためにピンチド部11の径方向の長さを長くしたりといったディフューザ通路10の形状に制約が生じる場合がある。また、ディフューザ通路10を所望の形状にするために、インペラ3の翼6の形状を変えなければならない場合も考えられる。
【0038】
しかしながら、実施形態2では、曲線7bが、R0≦R≦R2(R0<R2<R1)の範囲においてハブ壁5に対して凹状に湾曲した第1曲線7b1と、R2≦R≦R1の範囲においてハブ壁5に対して凸状に湾曲した第2曲線7b2とを含むことにより、平行部12の軸線Lの方向の流路幅やピンチド部11の径方向の長さのようなディフューザ通路10の形状の制約を緩和しながら、シュラウド壁4の表面4aに不連続な部分が形成されないようにピンチド部11を構成することができる。
【0039】
実施形態2においても、シュラウド壁4の表面4aに不連続な部分が存在しないので、実施形態1と同様に、インペラ3の回転によって圧縮された空気がディフューザ通路10を流通する際に、表面4aの不連続な部分に起因する損失又は剥離が発生することはない。このため、ディフューザ通路10における損失又は剥離の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 遠心圧縮機
2 ハウジング
3 インペラ
4 シュラウド壁
4a (シュラウド壁の)表面
5 ハブ壁
6 翼
6a (翼の)外周縁部
6a1 (翼の外周縁部の)径方向最外部
6b (翼の)後縁部
7 (シュラウド壁の表面の)断面形状
7a 曲線
7b 曲線
7b1 第1曲線
7b2 第2曲線
7c 直線
10 ディフューザ通路
11 ピンチド部
12 平行部
18 境界部分
19 境界部分
L (インペラの)軸線
R 距離