(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】レーダターゲットエミュレータ、テストスタンド、および信号処理方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20221205BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20221205BHJP
【FI】
G01S7/40 195
G01S13/931
(21)【出願番号】P 2020519282
(86)(22)【出願日】2018-10-08
(86)【国際出願番号】 AT2018060237
(87)【国際公開番号】W WO2019068126
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-08-06
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】513131176
【氏名又は名称】アーファオエル・リスト・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・グルーバー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・エルンスト・ガートリンガー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート・シュライバー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・フォルダーダーフラー
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-221429(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0115378(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015121297(DE,A1)
【文献】米国特許第05892479(US,A)
【文献】特開2010-159998(JP,A)
【文献】国際公開第2016/025683(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に少なくとも一つのアナログ式レーダ信号(S)をデジタル処理するためのレーダターゲットエミュレータ(1)であって、
前記少なくとも一つのアナログ式レーダ信号(S)を、少なくとも一つ
のデジタル式レーダデータパケット(D)に変換するために構成されている第一の変換装置(3)と、
時間遅延装置(5)と修正装置(7)とを有するデータ処理装置(4)であって、前記時間遅延装置(5)は、前記少なくとも一つのデジタル式レーダデータパケット(D)に基づいて、時間的に遅延させられた複数のレーダデータパケット(Dz)を供給するために構成されており、前記修正装置(7)は、
エミュレートすべき一つまたは複数の対象物による反射によって、前記アナログ式レーダ信号の変調に相当するやり方で前記デジタル式レーダデータパケットを修正することによって、前記時間的に遅延させられた複数のレーダデータパケット(Dz)に基づいて、複数の修正されたレーダデータパケット(Dm)を供給するために構成されている、データ処理装置と、
第二の変換装置(9)であって、前記データ処理装置(4)によって処理された前記デジタル式レーダデータパケット(D)を変換することにより、処理されたアナログ式レーダ信号(S‘)を供給するために構成されている第二の変換装置と、
少なくとも二つの送信機器(TX)を備える送信装置(10)であって、前記送信機器は、前記第二の変換装置(9)により供給される処理されたアナログ式レーダ信号(S‘)を送信するために構成されている送信装置と、を有するレーダターゲットエミュレータ。
【請求項2】
前記時間遅延装置(5)は、前記少なくとも一つのデジタル式レーダデータパケット(D)を、一つ
の所定の持続時間または複数の所定の持続時間の分だけ、複数回時間的に遅延させるために構成されている、請求項1に記載のレーダターゲットエミュレータ(1)。
【請求項3】
前記時間遅延装置(5)は
、すでに以前に時間的に遅延させられた一つのレーダデータパケット(Dz)を新たに時間的に遅延させることにより
、前記時間的に遅延させられた複数のレーダデータパケット(Dz)の少なくとも一つを供給するために構成されている、請求項2に記載のレーダターゲットエミュレータ(1)。
【請求項4】
前記時間遅延装置(5)は、前記少なくとも一つのデジタル式レーダデータパケット(D)を少なくとも一時的に保存し、前記一つの所定の持続時間、あるいは前記複数の所定の持続時間によって特徴づけられている間隔で供給するために構成されている、請求項2に記載のレーダターゲットエミュレータ(1)。
【請求項5】
前記時間遅延装置(5)は
、前記データ処理装置(4)内で前記
少なくとも一つのデジタル式レーダデータパケット(D)をさらに処理するために必要とされる処理時間を考慮して、
前記少なくとも一つのデジタル式レーダデータパケット(D)を時間的に遅延させるために構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のレーダターゲットエミュレータ(1)。
【請求項6】
前記データ処理装置(4)は、第一のデータ処理機器(6)を有し、当該第一のデータ処理機器は、前記時間遅延装置(5)によって
前記時間的に遅延させられ
た複数のレーダデータパケット(Dz)の少なくとも二つを互いに組み合わせ、時間的に遅延させられたさらなるレーダデータパケット(Dz‘)として供給する、特に前記修正装置(7)に出力するために構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のレーダターゲットエミュレータ(1)。
【請求項7】
前記データ処理装置(4)は、第二のデータ処理機器(8)を有し、当該第二のデータ処理機器は、前記修正装置(7)により修正されたレーダデータパケット(Dm)の少なくとも二つを互いに組み合わせ、修正さ
れたさらなるレーダデータパケット(Dm‘)として供給する、特に前記第二の変換装置(9)に出力するために構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のレーダターゲットエミュレータ(1)。
【請求項8】
前記第一および/または第二のデータ処理機器(6,8)は、複数回、特に互いに並行して、
前記時間遅延装置(5)によって供給される前記時間的に遅延させられたレーダデータパケット(Dz)の一つ、もしくは前記修正装置(7)により供給される前記修正されたレーダデータパケット(Dm)の一つを第一の入力データ(E1)として受信し、前記時間遅延装置(5)により時間的に遅延させられ、もしくは前記修正装置(7)により修正され、すでに互いに組み合わせられた少なくとも二つのレーダデータパケット(Dz,Dm)を第二の入力データ(E2)として受信し、
前記受信された第一の入力データ(E1)を前記受信された第二の入力データ(E2)と組み合わせ、それぞれ出力データ(A)として供給し、
前記出力データ(A)に基づいて、前記時間的に遅延させられたさらなるレーダデータパケット(Dz‘)を、修正を行うための前記修正装置(7)に供給し、もしくは前記修正されたさらなるレーダデータパケット(Dm‘)を、対応する処理されたアナログ式レーダ信号(S‘)への変換を行うための前記第二の変換装置(9)に、前記少なくとも二つの送信機器(TX)を用いて送信を行うために供給する、
ために構成されている請求項6または7に記載のレーダターゲットエミュレータ(1)。
【請求項9】
前記第一および/または第二のデータ処理機器(6,8)は、前記時間遅延装置(5)によって時間的に遅延させられたレーダデータパケット(Dz)、もしくは前記修正装置(7)により修正されたレーダデータパケット(Dm)を互いに組み合わせる際に、重みづけするために構成されている、請求項6から8のいずれか一項に記載のレーダターゲットエミュレータ(1)。
【請求項10】
受信装置(2)を有し、当該受信装置は、レーダセンサ(RS)から送信されるアナログ式レーダ信号(S)を受信するために構成されており、前記第一の変換装置(3)は、前記アナログ式レーダ信号(S)を特に並行して、対応するデジタル式レーダデータパケット(D)に変換するために構成されている、請求項1から9のいずれか一項に記載のレーダターゲットエミュレータ(1)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のレーダターゲットエミュレータ(1)を備える、特に車両(200)のためのテストスタンド(100)。
【請求項12】
少なくとも一つのアナログ式レーダ信号(S)をデジタル処理するための方法であって、
前記少なくとも一つのアナログ式レーダ信号(S)を、少なくとも一つ
のデジタル式レーダデータパケット(D)に変換するステップと、
データ処理装置(4)の時間遅延装置(5)により、前記少なくとも一つのデジタル式レーダデータパケット(D)に基づいて、時間的に遅延させられた複数のレーダデータパケット(Dz)を供給するステップと、
前記データ処理装置(4)の修正装置(7)により、
エミュレートすべき一つまたは複数の対象物による反射によって、前記アナログ式レーダ信号の変調に相当するやり方で前記デジタル式レーダデータパケットを修正することによって、前記時間的に遅延させられた複数のレーダデータパケット(Dz)に基づいて、複数の修正されたレーダデータパケット(Dm)を供給するステップと、
前記データ処理装置(4)によっ
て前記デジタル式レーダデータパケット(D)を変換することにより、少なくとも一つの処理されたアナログ式レーダ信号(S‘)を供給するステップと、
前記少なくとも一つの処理されたアナログ式レーダ信号(S‘)を送信するステップと、を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に少なくとも一つのアナログ式レーダ信号をデジタル処理するためのレーダターゲットエミュレータと、そのようなレーダターゲットエミュレータを備えるテストスタンドと、少なくとも一つのアナログ式レーダ信号をデジタル処理するための方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
特に地上に配備される車両、例えば乗用車、トラック、またはオートバイなどのモバイルシステムの複雑性は、近年増大し続けている。排気および/または燃料消費を低減すること、あるいは運転の快適さを増大させることと並んで、モバイルシステムの複雑化はまた、とりわけ、まさに大都市圏において常に増大する交通量を処理するために生じている。これを担うのは通常、運転者支援システムもしくは支援システムであり、当該支援システムは車両内センサを介して、および/または他の車両および/または定置箇所もしくは施設との通信を介して、車両環境に関する情報、特に予測されるルートの情報を、標準的運転状況および/または極端な状況において指示の型式で運転者を支援するため、および/または車両挙動にアクティブに介入するために用いる。
【0003】
多くの場合、少なくとも上記のセンサシステムの構成要素として、レーダセンサが用いられ、当該レーダセンサは障害物および/または先行車両などに関して車両の直接的な周囲を監視する。支援システムを評価するために、当該支援システムに対して、レーダセンサによって特定された、一つの特に仮想的なテスト場面に関する情報を供給し、当該支援システムの反応を分析することが知られている。このときレーダセンサに対して、テスト場面に基づいて変調されたレーダ信号が送信される。
【0004】
多くの場合、上記のレーダセンサは水平面(アジマス面)および垂直面(エレベーション面)において回動可能であり、それによりとりわけ空間的分解能を向上させることができ、例えばポイントターゲットのような非現実的なターゲットを認識可能である。支援システムを評価するためには、レーダセンサに対して、特に仮想的なテスト場面に関する情報を異なる方向から相応に送信しなければならない。
【0005】
特許文献1はレーダ性能を監視するための装置に関する。当該文献においてレーダ作動監視装置には閉鎖型ループが備えられ、当該閉鎖型ループは遅延線構成体を含み、それにより複数のシミュレートされたレーダ目標反射信号を生成する。一連のシミュレートされたレーダ目標反射は、マルチプレクサ制御部の影響下で生成される。生成される目標反射の数は、マルチプレクサ制御部がマルチプレクサのRポートを動作可能にする持続時間によって決定されている。一つの実施の形態においてレーダ作動監視装置は、自己完結型の遅延線を有する。これにより、例えば当該文献の
図2に示されているように、遅延線を介する信号の遅延は、レーダ目標の複数の個々の信号の生成後に初めて行われる。
【0006】
特許文献2は電磁環境をシミュレートするためのシステムおよび方法に関し、一つまたは複数のホーン放射体からなるアレイは、電磁信号を見かけ角度で受信アンテナに放射する。
【0007】
特許文献3はレーダセンサユニットのミスアラインメントを特定するための方法および装置に関し、複数のターゲットが一つの構成体においてアラインメント装置により利用可能とされ、それぞれ二つのターゲットが水平方向もしくは垂直方向において互いに相対的に位置調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第3888993号明細書
【文献】米国特許第5247843号明細書
【文献】国際公開第2016025683号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の点に鑑み、本発明はレーダターゲットエミュレータ、もしくはそのようなレーダターゲットエミュレータを備えるテストスタンドと、少なくとも一つのアナログ式レーダ信号をデジタル処理するための方法とであって、従来技術に対して改善されているものを記載することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば上記の課題は、請求項1に記載のレーダターゲットエミュレータと、請求項11に記載のそのようなレーダターゲットエミュレータを備えるテストスタンドと、請求項12に記載の少なくとも一つのアナログ式レーダ信号をデジタル処理するための方法とによって解決される。
【0011】
本発明の一つの態様は、特に少なくとも一つのアナログ式レーダ信号をデジタル処理するためのレーダターゲットエミュレータに関し、当該レーダターゲットエミュレータは、前記少なくとも一つのアナログ式レーダ信号を、少なくとも一つの対応するデジタル式レーダデータパケットに変換するために構成されている第一の変換装置を有する。レーダターゲットエミュレータのデータ処理装置は好ましくは、時間遅延装置と修正装置とを有し、時間遅延装置は特に、前記少なくとも一つのデジタル式レーダデータパケットに基づいて、時間的に遅延させられた複数のレーダデータパケットを供給するために構成されており、修正装置は特に、前記時間的に遅延させられた複数のレーダデータパケットに基づいて、複数の修正されたレーダデータパケットを供給するために構成されている。第二の変換装置は好ましくは、データ処理装置によって処理された前記デジタル式レーダデータパケットを変換することにより、処理されたアナログ式レーダ信号を供給するために構成されており、送信装置は少なくとも二つの送信機器を有し、当該送信機器は特に、第二の変換装置により供給される、処理されたアナログ式レーダ信号を送信するために構成されている。
【0012】
本発明による「レーダターゲットエミュレータ」とは特に、特に車両のレーダセンサをシミュレーションするための装置であり、好適なやり方でレーダセンサから送信されるレーダ信号を受信し、当該レーダ信号に基づいて生成されたレーダデータパケットを修正し、処理されたレーダ信号としてセンサに戻す。修正によって好ましくは一つの特に仮想的なテスト場面が写像され、それにより例えば当該テスト場面に対する車両の制御機器の反応を決定するとともに評価する。この意味でレーダターゲットエミュレータとは、シミュレーションユニットと理解することもでき、当該シミュレーションユニットは好適なやり方で、一つまたは複数のレーダデータパケットを修正することにより、処理されたレーダ信号に対して、シミュレートされたテスト場面を調整するために構成されている。
【0013】
本発明による「変換装置」とは特に、アナログ式レーダ信号を、当該アナログ式レーダ信号を特徴づけるデジタル式レーダデータパケットに変換する、もしくはデジタル式レーダデータパケットを、当該デジタル式レーダデータパケットを特徴づけるアナログ式レーダ信号に変換する装置である。変換装置は好ましくは、アナログ式レーダ信号もしくはデジタル式レーダデータパケットを受信し、対応するデジタル式レーダデータパケットもしくは対応するアナログ式レーダ信号を生じさせるために構成されている。変換装置は例えば、アナログ・デジタルコンバータもしくはデジタル・アナログコンバータであってよい。
【0014】
本発明による「データ処理装置」とは特に、好ましくはデジタルデータを処理するため、例えば複製する、保存する、修正する、組み合わせる、結合する、管理する、および/またはそのようなことをするために構成されている装置である。データ処理装置は例えば、コンピュータ、またはコンピュータシステムとして、特に少なくとも一つのプロセッサ、および少なくとも一つのストレージを有して形成されていてよい。
【0015】
本発明による「時間遅延装置」とは特に、レーダデータパケットを受信し、時間遅延させられた状態で再び供給する装置、例えばソフトウェアモジュールである。時間遅延装置は例えば、ソフトウェア関数であって、少なくともレーダデータパケットが入力値として入力され、時間的に遅延させられたレーダデータパケットを出力値として出力するソフトウェア関数として形成されていてよい。
【0016】
本発明による「修正装置」とは特に、レーダデータパケットを受信し、当該レーダデータパケットにおいて、特にテスト場面に基づいて修正を行う装置、例えばソフトウェアモジュールである。修正装置は例えば、ソフトウェアモジュールとして形成されていてよく、当該ソフトウェアモジュールには少なくとも前記レーダデータパケットが入力値として入力され、当該ソフトウェアモジュールは当該レーダデータパケットを変化させ、それにより修正されたレーダデータパケットは、テスト場面の少なくとも一部、例えば一つの対象物を特徴づける。
【0017】
本発明は特に、好ましくはレーダセンサから送信されたものである一つまたは複数の受信されたアナログ式レーダ信号を、少なくとも一つまたは複数の対応するデジタル式レーダデータパケットに、すなわち前記一つまたは複数のアナログ式レーダ信号のデジタル式表示に変換し、時間遅延装置、特にいわゆるデジタルディレイラインを用いて、前記一つまたは複数のレーダデータパケットに基づいて、時間的に遅延させられた複数のレーダデータパケットを供給する、特に生じさせるというアプローチに基づいている。これは特に有利であるが、それはこれにより、特に仮想的なテスト場面のエミュレートすべき個々の対象物に対して、特に単独の時間遅延装置のみを用いて、時間的に遅延させられたレーダデータパケットを供給できるからであり、時間遅延は元のアナログ式レーダ信号の実行時間をエミュレートし、それによりレーダセンサに対する対象物の、特に仮想的な距離を特徴づける。加えて好ましくは、このように時間遅延させられたレーダデータパケットをテスト場面に関して適合させるための修正装置が構成されており、当該修正は特に、デジタル式レーダデータパケットが、テスト場面の一つまたは複数の対象物における反射によって、対応するアナログ式レーダ信号が変調されることに相当するやり方で変更されることにより行われる。これは、デジタル式データ処理装置において、特に少なくとも一つのアナログ式レーダ信号に基づいて、テスト場面を迅速に、特にリアルタイム性を有して供給することを可能にする。
【0018】
さらに複数のレーダターゲット、すなわちテスト場面の対象物は代替的または付加的に、仮想的距離を調整するために時間遅延装置により、アジマス面およびエレベーション面における異なる位置において簡単なやり方でエミュレートすることができるが、それは好ましくは、特に第二の変換装置が、送信機器に分配された修正されたレーダデータパケットを処理されたアナログ式レーダ信号に変換する前に、修正されたレーダデータパケットが少なくとも二つの送信機器に分配されるか、もしくは少なくとも二つの送信機器に割り当てられることによって行われる。代替的または付加的に、個々のターゲットの拡張もアジマス面およびエレベーション面に沿ってエミュレートすることができるが、それは好ましくは特に第二の変換装置が、送信機器に分配された修正されたレーダデータパケットを処理されたアナログ式レーダ信号に変換する前に、修正されたレーダデータパケットが少なくとも二つの隣接する送信機器に分配されるか、もしくは少なくとも二つの隣接する送信機器に割り当てられることによって行われる。
【0019】
全体として本発明は、特にエミュレート可能なレーダターゲットの数および/または可能なターゲット距離もしくはターゲットの位置に関して、簡単かつ柔軟なレーダターゲットの写像を行わせる。
【0020】
本発明の一つの好適な実施の形態において時間遅延装置は、少なくとも一つのデジタル式レーダデータパケットを、一つまたは複数の、特に異なる所定の持続時間の分だけ、複数回時間的に遅延させるために構成されている。このとき時間遅延装置は、デジタル式レーダデータパケットを好適なやり方で、テスト場面のエミュレートすべき個々の対象物について、それぞれ所定の持続時間の分だけ一回、好ましくはレーダセンサに対する対象物の所望の仮想的距離に基づいて遅延させることができ、時間遅延させられたレーダデータパケットのそれぞれは、さらなる処理の際に修正装置によって直接的に修正され、それによりそれぞれエミュレートされた対象物を写像する。代替的または付加的にデジタル式レーダデータパケットは、一つの特に同一の所定の持続時間の分だけ、複数回遅延させることができ、それによりさらなる処理の際に、特に好ましくはレーダセンサに対する対象物の所望の仮想的距離に基づいて、時間的に遅延させられたレーダデータパケットの少なくとも二つを組み合わせることにより、所望の時間的遅延を備えるそれぞれ一つの時間的に遅延させられたレーダデータパケットが形成され、修正装置によって修正される。これによりレーダデータパケットの時間的遅延を例えばテスト場面の変化に対して、柔軟に適合させることが可能となる。
【0021】
本発明の一つのさらなる好適な実施の形態において時間遅延装置は、時間的に遅延させられた複数のレーダデータパケットの少なくとも一つを、すでに以前に時間的に遅延させられた一つのレーダデータパケットを新たに時間的に遅延させることによって供給するために構成されている。この目的のために時間遅延装置は好ましくは、前記以前に時間的に遅延させられたレーダデータパケットをあらためて受信し、一つの特に同一の所定の時間遅延によって遅延させるために構成されている。代替的または付加的に時間遅延装置は、複数の時間遅延モジュールを有してよく、当該時間遅延モジュールはデジタル式レーダデータパケットを逐次的に、特に一つまたは複数の所定の持続時間の分だけ遅延させ、それぞれ一つの時間的に遅延させられたレーダデータパケットを供給するために構成されている。これにより時間遅延装置の複雑性を有利に低減させること、および/または時間的に遅延させられたレーダデータパケットを特に確実に供給することができる。
【0022】
本発明の一つのさらなる好適な実施の形態において時間遅延装置は、少なくとも一つのデジタル式レーダデータパケットを少なくとも一時的に保存し、一つの所定の持続時間、あるいは複数の所定の持続時間によって特徴づけられている間隔で供給するために構成されている。時間遅延装置は特に、デジタル式レーダデータパケットを保持し、好ましくはレーダセンサに対するテスト場面の対象物の所望の仮想的距離に依存する持続時間の繰り返しの後に、さらなる処理のために放出することができる。これにより時間遅延装置の複雑性を有利にさらに低減させ、時間的に遅延させられたレーダデータパケットの供給を柔軟にし、もしくは必要に応じて周期化することができる。
【0023】
本発明の一つのさらなる好適な実施の形態によれば時間遅延装置は、データ処理装置内でレーダデータパケットをさらに処理するために必要とされる処理時間を考慮して、レーダデータパケットを時間的に遅延させるために構成されている。加えて時間遅延装置は好ましくは、デジタル式レーダデータパケットの時間遅延を、特にレーダセンサに対するテスト場面の対象物の所望の仮想的距離を考慮しながら、上記の処理時間の変化、特に変動に適合させるために構成されている。これにより例えば、仮想的なテスト場面の複雑性が特に増大することに基づいて、テスト場面をシミュレーションするために必要とされる計算能力の増大が確認されるか、あるいは少なくとも予見可能であるとき、時間遅延装置により生じさせられるデジタル式レーダデータパケットの時間遅延を低減させることができる。このようなやり方で、レーダデータパケットを処理する際の待機時間による時間的な遅延を補償することができ、そうしなければ当該待機時間による時間的な遅延は、レーダセンサに対するテスト場面の対象物の仮想的距離の正確性を損なうものと想定される。
【0024】
一つのさらなる好適な実施の形態においてデータ処理装置は、第一のデータ処理機器を有し、当該第一のデータ処理機器は、時間遅延装置によって時間的に遅延させられた複数のレーダデータパケットの少なくとも二つを互いに組み合わせ、時間的に遅延させられたさらなるレーダデータパケットとして供給する、特に修正装置に出力するために構成されている。第一のデータ処理機器は特に、時間的に遅延させられた複数のレーダデータパケットであって、当該レーダデータパケットに基づいてエミュレートすべき対象物もしくはテスト場面を、特に修正装置による相応の修正の後に写像することができる時間的に遅延させられた複数のレーダデータパケットを供給するために構成されている。このとき第一のデータ処理機器により供給される、時間的に遅延させられたさらなるレーダデータパケットの数は好ましくは、時間処理装置により供給される、時間的に遅延させられたレーダデータパケットの数に依存していない。これにより時間遅延装置と修正装置とを連結解除することが可能となり、それにより時間遅延装置および/または修正装置は、特に効率的に利用および/または設計することができる。
【0025】
本発明の一つのさらなる好適な実施の形態においてデータ処理装置は、第二のデータ処理機器を有し、当該第二のデータ処理機器は、修正装置により修正されたレーダデータパケットの少なくとも二つを互いに組み合わせ、修正されたさらなるレーダデータパケットとして供給する、特に第二の変換装置に出力するために構成されている。第二のデータ処理機器は特に、複数の修正されたさらなるレーダデータパケットであって、当該レーダデータパケットに基づいて、特に第二の変換装置による相応の変換の後に、少なくとも二つの送信機器に対するエミュレートされた対象物の所定の分配が行われる、複数の修正されたさらなるレーダデータパケットを供給するために構成されている。このとき第二のデータ処理機器により供給される、修正されたさらなるレーダデータパケットの数は好ましくは、修正装置により供給される、修正されたレーダデータパケットの数に依存していない。これによりエミュレートされた対象物を、アジマス面および/またはエレベーション面においてレーダセンサに関して自由に位置決めする、および/または移動させることが可能となる。
【0026】
第一および/または第二のデータ処理機器は好ましくは、少なくとも二つのデータ処理モジュールを有し、当該データ処理モジュールはそれぞれ、時間的に遅延させられた、もしくは修正されたレーダデータパケットの少なくとも二つを実質的に同時に、特に並行して互いに組み合わせるために構成されている。したがって例えばテスト場面の一つまたは複数のエミュレートすべき対象物に対して、それぞれ一つのデータ処理モジュールが設けられていてよく、当該データ処理モジュールは、時間的に遅延させられた、もしくは修正されたレーダデータパケットの少なくとも二つを互いに組み合わせる。これによりそれぞれ、レーダセンサに対するエミュレートすべき対象物の距離に対応する時間的遅延を備えるレーダデータパケットを形成することができる。代替的または付加的にレーダデータパケットであって、当該レーダデータパケットを用いて、レーダセンサに関するエミュレートすべき対象物の所望の横方向の位置決めが可能となるレーダデータパケットが形成されてよい。
【0027】
しかしながら第一および/または第二のデータ処理機器はまた、時間的に遅延させられた、もしくは修正されたレーダデータパケットの少なくとも一つを変化なしに供給する、特に修正装置もしくは第二の変換装置に出力するために構成されていてよい。
【0028】
本発明の一つのさらなる好適な実施の形態において第一および/または第二のデータ処理機器は、複数回、特に互いに並行して、遅延装置によって供給される時間的に遅延させられたレーダデータパケットの一つ、もしくは修正装置により供給される修正されたレーダデータパケットの一つを第一の入力データとして受信し、時間遅延装置により時間的に遅延させられ、もしくは修正装置により修正され、すでに互いに組み合わせられた少なくとも二つのレーダデータパケットを第二の入力データとして受信し、受信された第一の入力データを受信された第二の入力データと組み合わせ、それぞれ出力データとして供給するために構成されている。好ましくは、時間的に遅延させられたさらなるレーダデータパケットは、修正を行うための修正装置に供給され、もしくは修正されたさらなるレーダデータパケットは、対応する処理されたアナログ式レーダ信号への変換を行うための第二の変換装置に、出力データに基づいて少なくとも二つの送信機器を用いて送信を行うために供給される。時間的に遅延させられた、もしくは修正されたレーダデータパケットはこれにより、テスト場面もしくはテスト場面内部のエミュレートすべき対象物の空間的配分に関して、柔軟に適合させることができる。
第一および/または第二のデータ処理機器はこの目的のために、好ましくは複数のデータ処理モジュールを有し、当該複数のデータ処理モジュールはそれぞれ、第一および第二の入力データを受信し、互いに組み合わせ、それぞれ出力データとして供給するために構成されている。データ処理モジュールの数は好ましくは、時間遅延装置によって供給される時間的に遅延させられたレーダデータパケットの数と、テスト場面のエミュレートすべき対象物の数との積により、もしくはテスト場面のエミュレートすべき対象物の数と送信機器の数との積から与えられる。このときデータ処理モジュールは有利にはソフトウェアによって形成されるか、ソフトウェアの部分であってよく、当該ソフトウェアは対応する第一および第二の入力データを受信するとともに処理し、対応する出力データを出力する。
【0029】
複数のデータ処理モジュールのうちの一つのデータ処理モジュールの出力データは有利には、複数のデータ処理モジュールのうちの一つの他のデータ処理モジュールの第二の入力データを形成することができ、それにより修正装置に供給される、時間的に遅延させられたさらなるレーダデータパケット、もしくは第二の変換装置に供給される、修正されたさらなるレーダデータパケットはカスケード式に形成される。代替的に第一および/または第二のデータ処理機器、特に一つのデータ処理モジュールに対して、データ処理機器によって供給された出力データを再び第二の入力データとして供給することも可能であり、それにより時間遅延させられたさらなるレーダデータパケット、もしくは修正されたさらなるレーダデータパケットは、反復式に形成される。
【0030】
本発明の一つのさらなる好適な実施の形態において第一および/または第二のデータ処理機器は、時間遅延装置によって時間的に遅延させられたレーダデータパケット、もしくは修正装置により修正されたレーダデータパケットを互いに組み合わせる際に、重みづけするために構成されている。これによりレーダデータパケットをほぼ任意に時間遅延させること、もしくはレーダデータパケットを少なくとも二つの送信機器に割り当てることを確実に行うことができる。例えば修正されたレーダデータパケットは、対応する処理されたアナログ式レーダ信号が二つの異なる角、特にアジマス角および/またはエレベーション角でレーダセンサによって受信され、それにより対象物の拡張がエミュレートされるように重みづけされ、少なくとも二つの隣接する送信機器に分配される。
【0031】
本発明の一つのさらなる好適な実施の形態においてレーダターゲットエミュレータは、少なくとも二つの受信機器を備える受信装置を有し、当該受信機器は、レーダセンサから送信されるアナログ式レーダ信号を受信するために構成されており、第一の変換装置はアナログ式レーダ信号を特に並行して、対応するデジタル式レーダデータパケットに変換するために構成されている。少なくとも二つの受信機器は特に、レーダセンサにより、異なる送信領域内に、異なる周波数で、および/または異なる変調方式で変調されて送信されたレーダ信号を受信するために構成されている。対応するデジタル式レーダデータパケットはその後、特に互いに独立して、および/または並行して、データ処理装置によって処理することができ、それによりテスト場面は、複雑なレーダ信号に対してもデジタル式に、特に簡単かつ柔軟に、および/または迅速に写像することができる。
【0032】
本発明の第二の態様は、本発明の第一の態様によるレーダターゲットエミュレータを備える、特に車両のためのテストスタンドに関する。このとき少なくとも実質的に完全にデジタル式に実施されたレーダターゲットエミュレータであって、場合により少なくとも二つの受信機器および少なくとも二つの送信機器を有するレーダターゲットエミュレータにより、テストスタンドにおいて、空間的に拡張された、および/または複雑なレーダセンサのレーダ信号を供給すること、もしくは処理すること、特にアジマス面および/またはエレベーション面に関して空間的に分解され、処理されたレーダ信号をレーダセンサに供給することが可能であり、テストスタンドは可動式もしくは機械式構成要素を有していない。したがってテストスタンドはコンパクトに実施されていてよい。
【0033】
本発明の第三の態様は、少なくとも一つのアナログ式レーダ信号をデジタル処理するための方法であって、以下のステップ、すなわち少なくとも一つのアナログ式レーダ信号を、少なくとも一つの対応するデジタル式レーダデータパケットに変換するステップと、データ処理装置の時間遅延装置により、少なくとも一つのデジタル式レーダデータパケットに基づいて、時間的に遅延させられた複数のレーダデータパケットを供給するステップと、データ処理装置の修正装置により、時間的に遅延させられた複数のレーダデータパケットに基づいて、複数の修正されたレーダデータパケットを供給するステップと、データ処理装置によって処理されたデジタル式レーダデータパケットを変換することにより、少なくとも一つの処理されたアナログ式レーダ信号を供給するステップと、少なくとも一つの処理されたアナログ式レーダ信号を送信するステップと、を備える方法に関する。
【0034】
本発明の第一の態様と、当該第一の態様の有利な構成に関して説明された特徴および有利点は、少なくとも技術的に有意義である場合、本発明の第二の態様および第三の態様と、それらの有利な構成にも当てはまり、その逆も成り立つ。
【0035】
図に表示されている限定的でない実施の形態に基づき、以下において本発明をより詳しく説明する。図において少なくとも部分的に概略的に示すのは以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】テストスタンドの一つの好適な実施の形態を示す図である。
【
図2】データ処理機器の一つの好適な実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1はテストスタンド100の一つの好適な実施の形態を示し、当該テストスタンドは好ましくは、アナログ式レーダ信号S,S'を送信および受信するためのレーダセンサRSを備える車両200をテストするために構成されており、レーダターゲットエミュレータ1を有する。このとき見やすくするために、図のそれぞれ同一の要素は一度だけ参照番号によって表され、レーダセンサRSは、レーダ信号Sの送信と、レーダターゲットエミュレータ1により処理されたレーダ信号S'の受信とに関して、それぞれ一度、点線で表示されている。
【0038】
レーダターゲットエミュレータ1は好ましくは、レーダセンサRSから送信されたレーダ信号Sに対して、テスト場面、例えば交通状況に基づいて影響を及ぼし、特に修正を行うために構成されており、それによりこのように処理されるとともに、レーダセンサRSに返されたレーダ信号S'はテスト場面を写像する。これにより車両200の構成要素であって、当該構成要素の機能は反射されたレーダ信号S'に基づいている車両の構成要素を検査することができる。
【0039】
レーダセンサRSは好ましくは複数の送信領域RS1,RS2を有し、当該送信領域は特に少なくとも実質的に空間的に分離され、および/または軸、特に車両長手軸に関して対称的に形成されている。このとき送信領域RS1,RS2内に送信されるレーダ信号Sは、異なる方向において伝播し、異なる周波数を有するか、あるいは異なる変調方式で変調されていてよく、それによりレーダ信号Sをレーダセンサに戻すように反射する対象物を異なる送信領域RS1,RS2に割り当てること、および/または高度な空間的分解能で検出することができる。
【0040】
図に示す例においてレーダターゲットエミュレータ1は、受信装置2、例えばアンテナアレイであって、好ましくは少なくとも二つの受信機器RX、例えば線に沿って、または平面上に配分された三個のアンテナを備える受信装置を有し、当該受信装置はレーダセンサRSから送信されたアナログ式のレーダ信号Sを受信するために構成されており、第一の変換装置3と結合されており、当該第一の変換装置は受信されたレーダ信号Sをデジタル化し、対応するデジタル式レーダデータパケットDとして、データ処理装置4、特に時間遅延装置5に出力する。このとき個々の受信されたレーダ信号Sに対して、好ましくは一つのデジタル式レーダデータパケットDが供給されるが、それは例えば第一の変換装置3がアナログ・デジタルコンバータとして形成されており、供給された異なるデジタル式レーダデータパケットDが、例えばそれぞれ送信領域RS1,RS2に割り当てられていることにより行われる。
【0041】
時間遅延装置5は好ましくは、供給されるデジタル式レーダデータパケットDを受信し、異なる時間的な遅延を有して複数回、第一のデータ処理機器6に出力するために構成されている。時間遅延装置5は供給されるデジタル式レーダデータパケットDのそれぞれに関して、特に一つまたは複数の所定の持続時間の分だけ、好ましくは実質的に同時に、および/または並行して、すなわち表示される例では3回、時間的遅延を実施する。その後、時間遅延装置5により供給される時間的に遅延させられたレーダデータパケットDzは、見やすくするために本図では、供給されたデジタル式レーダデータパケットDの一つについてのみ示されている。
【0042】
第一のデータ処理機器6は特に、時間的に遅延させられたレーダデータパケットDzに基づいて、時間的に遅延させられたさらなるレーダデータパケットDz‘を供給するのに好適であるが、それは例えば供給される時間的に遅延させられたレーダデータパケットDzの少なくとも二つが互いに組み合わされることによって行われる。したがって供給される時間的に遅延させられたレーダデータパケットDzの少なくとも二つを組み合わせることに基づいて、特に時間的に遅延させられた付加的なレーダデータパケットDz‘を形成することができる。図に示す例において、時間遅延装置5により供給される時間的に遅延させられた両方のレーダ信号Dzは、第一のデータ処理機器6によって変えられることなく、時間的に遅延させられたさらなるレーダデータパケットDz‘として、時間的に遅延させられた一つのさらなるレーダデータパケットDz‘であって、例えば第一のデータ処理機器6により供給される時間的に遅延させられたレーダデータパケットDzの両方を組み合わせたものに基づく、時間的に遅延させられた一つのさらなるレーダデータパケットDz‘と共に供給される。したがって時間遅延装置5により供給されるレーダデータパケットDzの数は、第一のデータ処理機器6により供給される時間的に遅延させられたさらなるレーダデータパケットDz‘の数と異なってよい。
【0043】
第一のデータ処理機器6は特に、時間遅延装置5により供給されるレーダデータパケットDzの少なくとも二つを組み合わせたものに基づいて、十分な数の時間的に遅延させられたさらなるレーダデータパケットDz‘を供給するために構成されており、それにより修正装置7によるレーダデータパケットDz‘の修正を介して、テスト場面の写像を可能にする。第一のデータ処理機器6は特に、時間遅延装置5により供給されるレーダデータパケットDzの少なくとも二つを組み合わせたものに基づいて、テスト場面の個々のエミュレートすべき対象物に関して、それぞれ時間的に遅延させられた一つのさらなるレーダデータパケットDz‘を供給し、それによりこれらの対象物のそれぞれに対して、供給されたそれぞれのレーダデータパケットDz‘の時間的遅延に依存する仮想的な距離が割り当てられる。
【0044】
テスト場面に基づく上記の修正の後、修正装置7により供給される修正されたレーダデータパケットDmは、第二のデータ処理機器8によって受信され、場合により互いに組み合わされ、それにより送信装置10、例えばアンテナアレイであって、少なくとも二つの送信機器TX、本図の例では例えば線に沿って、あるいは平面上に設けられた4個のアンテナを備える送信装置に対して、第二の変換装置9による変換の後に、処理されたアナログ式レーダ信号S'として出力される。
【0045】
好ましくはそれぞれ、テスト場面の一つのエミュレートされた対象物を特徴づける修正されたレーダデータパケットDmは、第二のデータ処理機器8により、特にテスト場面におけるエミュレートされた対象物の空間的配分を考慮して、修正されたさらなるレーダデータパケットDm‘として出力もしくは供給される。当該出力もしくは供給は例えば、修正されたさらなるレーダデータパケットDm‘もしくは対応する処理されたアナログ式レーダ信号S‘が、テスト場面におけるエミュレートされた対象物の構成に応じて、送信機器TXに分配される、もしくは送信機器TXに割り当てられるように行われる。したがって修正装置7により供給される、修正されたレーダデータパケットDmの数は、第二のデータ処理機器8内での処理の後に供給される、修正されたさらなるレーダデータパケットDm‘もしくは対応する処理されたアナログ式レーダ信号S'の数と異なっていてよい。このとき、修正装置7により供給される、修正されたレーダデータパケットDmの数は好ましくは、テスト場面のエミュレートすべき対象物の数に相当する一方、第二のデータ処理機器8により供給される、修正されたさらなるレーダデータパケットDm‘もしくは対応する処理されたアナログ式レーダ信号S‘の数は、エミュレートされた対象物の所望の空間的な横方向の配分に依存している。
【0046】
このとき修正されたさらなるレーダデータパケットDm‘を、第二のデータ処理機器8により、送信機器TXに対して供給もしくは出力することは特に、シミュレートされた対象物をレーダセンサRSに関して、送信機器TXの空間的位置により決定される角度、特にアジマス角および/またはエレベーション角で写像することを可能にする。第二のデータ処理機器8はまた、供給される修正されたレーダデータパケットDmの少なくとも一つを、複数の、特に隣接する送信機器TXに供給するために構成されていてよく、それによりレーダセンサRSに関して、修正されたレーダデータパケットDmによって特徴づけられるエミュレートされた対象物の拡張が写像される。修正されたレーダデータパケットDmを送信機器TXに対してダイナミックに割り当てることも可能であり、それにより対応するエミュレートされた対象物の移動が写像される。
【0047】
データ処理装置4は好ましくは、少なくとも一つのプロセッサと、少なくとも一つのストレージを有し、それにより時間遅延装置5と、第一および第二のデータ処理機器6,8と、修正装置7とは、ソフトウェアモジュールとしてデータ処理装置4上で実施可能である。プロセッサ上での前記のソフトウェアモジュールによるデジタル式レーダデータパケットD,Dz,Dz‘,Dm,Dm‘の処理の間に、デジタル式レーダデータパケットD,Dz,Dz‘,Dm,Dm‘は少なくとも一時的にストレージに保存することができる。これにより、送信されたアナログ式レーダ信号Sに基づいて処理されたアナログ式レーダ信号S‘を介し、レーダセンサRSに関してテスト場面を柔軟に、廉価に、確実かつ迅速に表示することが可能となる。
【0048】
図2は、データ処理機器6,8の一つの好適な実施の形態を示し、当該データ処理機器は供給されるデジタル式レーダデータパケット、図に示す例では時間遅延装置5により供給される時間的に遅延させられたレーダデータパケットDz1,Dz2,Dz3,Dz4を受信し、受信されたレーダデータパケットの少なくとも二つを互いに組み合わせ、および/または図に示す例では修正装置7に出力するために構成されている。データ処理機器6,8は代替的に、修正装置7によって供給される修正されたレーダデータパケットを受信し、変換装置に出力することもできる。図に示すデータ処理機器6,8は、特に
図1に示す第一または第二のデータ処理機器であってよい。見やすくするために、
図2において同一の要素は一度だけ参照番号によって表されている。
【0049】
データ処理機器6,8の機能は好ましくは、いわゆる切り替えマトリックスの機能と同等であり、当該切り替えマトリックス内で切り替えマトリックスの複数の入力部に供給されている信号は、切り替えマトリックスの個々のマトリックス要素によって次々に伝えられ、その際処理され、特に分割され、増強され、または減衰され、および/または互いに組み合わされる。
【0050】
データ処理機器6,8は好ましくは、カスケード式に動作する。この目的のためにデータ処理機器6,8は複数のデータ処理モジュール11,11a,11b,11c,11dを有し、当該データ処理モジュールはそれぞれ、第一および第二の入力データE1,E2を受信し、場合により互いに組み合わせ、出力データAとして供給もしくは出力することができる。このとき第一の入力データE1は特に、供給される時間的に遅延させられた複数のレーダデータパケットDz1-Dz4の一つによって形成され、第二の入力データE2は特に、レーダデータパケットDz1-Dz4の一つの他のもの、あるいはすでに互いに組み合わされた時間的に遅延させられた少なくとも二つのレーダデータパケットDz1-Dz4によって形成される。
【0051】
これは例えば、4個のデータ処理モジュール11a-11dに関して示されている。第一および第二の入力データE1,E2の組み合わせは、充填された黒い円によって暗示されている。点線は、時間遅延装置5により供給される時間的に遅延させられたレーダデータパケットDz1-Dz4と、データ処理機器6,8により修正装置7に出力される、時間的に遅延させられたさらなるレーダデータパケットDz‘との関連を表している。
【0052】
第一のデータ処理モジュール11aにおい第一の入力データE1は、第二の時間的に遅延させられたレーダデータパケットDz2により形成され、第二の入力データE2は、第一の時間的に遅延させられたレーダデータパケットDz1により形成され、互いに組み合わされ、出力データAとして第二のデータ処理モジュール11bに出力される。第一のデータ処理モジュール11aにより出力される出力データAは、第二のデータ処理モジュール11bにおいて第二の入力データE2を形成し、第一の入力データE1は第三の時間的に遅延させられたレーダデータパケットDz3により形成される。第二のデータ処理モジュール11bにおいて互いに組み合わされた第一および第二の入力信号E1,E2は、出力データAとして第三のデータ処理モジュール11cに出力され、当該第三のデータ処理モジュールにより、再び第二の入力データE2として受信される。これら第二の入力データE2と、第四の時間的に遅延させられたレーダデータパケットDz4により形成される第一の入力データE1との組み合わせは、第三のデータ処理モジュール11c内で最終的に、時間的に遅延させられたさらなるレーダデータパケットDz‘として修正装置7に出力される。したがってこのように出力された、時間的に遅延させられたさらなるレーダデータパケットDz‘は全体として、時間的に遅延させられた4個のレーダデータパケットDz1-Dz4全ての成分を含んでいる。
【0053】
第四のデータ処理モジュール11dにおいて、第一の時間的に遅延させられたレーダデータパケットDz1は第二の入力データE2を形成し、第三の時間的に遅延させられたレーダデータパケットDz3は第一の入力データE1を形成する。第一および第二の入力信号E1,E2の組み合わせは、出力データAとして、もしくは、時間的に遅延させられたさらなるレーダデータパケットDz‘として修正装置7に出力される。したがってこのように出力された、時間的に遅延させられたさらなるレーダデータパケットDz‘は全体として、第一および第三の時間的に遅延させられたレーダデータパケットDz1,Dz3の成分のみを含んでいる。
【0054】
より詳しく表されていない残りのデータ処理モジュール11は図に示す例において、時間遅延装置5により供給される時間的に遅延させられたレーダデータパケットDz、またはそれらから成る組み合わせに対して、操作を行わない。したがってデータ処理機器6,8により修正装置7に出力される時間的に遅延させられたさらなるレーダデータパケットDz‘は、第一の時間的に遅延させられたレーダデータパケットDz1のみにより形成される。
【0055】
当業者は、データ処理モジュール11、11a-11dに関する上記の説明は、純粋に例として理解すべきであって、データ処理機器6,8、特にデータ処理モジュール11によって、供給される時間的に遅延させられたレーダデータパケットDz1-Dz4の任意の他の組み合わせも可能であることを理解している。
【符号の説明】
【0056】
1 レーダターゲットエミュレータ
2 受信装置
3 第一の変換装置
4 データ処理装置
5 時間遅延装置
6 第一のデータ処理機器
7 修正装置
8 第二のデータ処理機器
9 第二の変換装置
10 送信装置
11 データ処理モジュール
11a-11d 第一から第四のデータ処理モジュール
100 テストスタンド
200 車両
RS レーダセンサ
RS1,RS2 送信領域
RX 受信機器
TX 送信機器
S アナログ式レーダ信号
S‘ 処理されたアナログ式レーダ信号
D デジタル式レーダデータパケット
Dz 時間的に遅延させられたレーダデータパケット
Dz‘ 時間的に遅延させられたさらなるレーダデータパケット
Dz1-Dz4 第一から第四の時間的に遅延させられたレーダデータパケット
Dm 修正されたレーダデータパケット
Dm‘ 修正されたさらなるレーダデータパケット
E1,E2 第一、第二の入力データ
A 出力データ