(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】ガラスシート処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C03B 35/20 20060101AFI20221205BHJP
【FI】
C03B35/20
(21)【出願番号】P 2020519441
(86)(22)【出願日】2018-10-02
(86)【国際出願番号】 US2018053888
(87)【国際公開番号】W WO2019070654
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-10-04
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジア
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,ウェイウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シー,ウェンユィ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,ナイユエ
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/077553(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/034978(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 35/00
B08B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに反対側の第1及び第2主表面を有するガラスシートを処理する方法であって、
前記ガラスシートを事前位置決めステーションに届けるステップと、
前記事前位置決めステーションを動作させ、液体を前記第1主表面に噴霧して前記ガラスシートを安定させるステップと、
前記安定させられたガラスシートを洗浄ステーションに届けるステップと、
前記ガラスシートを洗浄するステップと、
前記洗浄されたガラスシートを乾燥ステーションに届けるステップと、
前記ガラスシートを乾燥するステップと
を含み、
前記ガラスシートは1つの主要平面を画定し、前記ガラスシートを事前位置決めステーションに届ける前記ステップは、前記主要平面が概ね垂直になるように前記ガラスシートを方向付けするステップを含
み、
前記事前位置決めステーションを動作させる前記ステップは、
前記ガラスシートの前記第2主表面に気体流を当てるステップを更に含み、
前記安定させられたガラスシートを洗浄ステーションに届けるステップは、概ね垂直になるように方向付けられた前記ガラスシートを概ね垂直のまま前記洗浄ステーションに届けるステップを含み、
前記ガラスシートを洗浄するステップは、前記主要平面が概ね垂直のまま前記第1主表面および前記第2主表面の両方を前記洗浄ステーションで洗浄するステップを含み、
前記洗浄されたガラスシートを乾燥ステーションに届けるステップは、概ね垂直になるように方向付けられた前記ガラスシートを概ね垂直のまま前記乾燥ステーションに届けるステップを含み、
前記ガラスシートを乾燥するステップは、前記主要平面が概ね垂直のまま前記乾燥ステーションで乾燥するステップを含む、方法。
【請求項2】
互いに反対側の第1及び第2主表面を有するガラスシートを処理する方法であって、
前記ガラスシートを事前位置決めステーションに届けるステップと、
前記事前位置決めステーションを動作させ、液体を前記第1主表面に噴霧して前記ガラスシートを安定させるステップと、
前記安定させられたガラスシートを洗浄ステーションに届けるステップと、
前記ガラスシートを洗浄するステップと、
前記洗浄されたガラスシートを乾燥ステーションに届けるステップと、
前記ガラスシートを乾燥するステップと
を含み、
前記ガラスシートは1つの主要平面を画定し、前記ガラスシートを事前位置決めステーションに届ける前記ステップは、前記主要平面が概ね垂直になるように前記ガラスシートを方向付けするステップを含み、
前記ガラスシートを事前位置決めステーションに届ける前記ステップは、前記ガラスシートを保持装置で係合するステップを含
み、
前記ガラスシートを事前位置決めステーションに届ける前記ステップは、前記保持装置をトラックに沿って搬送するステップを更に含み、
前記事前位置決めステーションを動作させる前記ステップは、
前記保持装置を前記ガラスシートから離すステップと、
前記液体を前記第1主表面に噴霧して安定化させた前記ガラスシートを前記保持装置で再係合するステップと、
を更に含み、
前記安定させられたガラスシートを洗浄ステーションに届けるステップは、概ね垂直になるように方向付けられた前記ガラスシートを概ね垂直のまま前記洗浄ステーションに届けるステップを含み、
前記ガラスシートを洗浄するステップは、前記主要平面が概ね垂直のまま前記第1主表面および前記第2主表面の両方を前記洗浄ステーションで洗浄するステップを含み、
前記洗浄されたガラスシートを乾燥ステーションに届けるステップは、概ね垂直になるように方向付けられた前記ガラスシートを概ね垂直のまま前記乾燥ステーションに届けるステップを含み、
前記ガラスシートを乾燥するステップは、前記主要平面が概ね垂直のまま前記乾燥ステーションで乾燥するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ガラスシートを保持装置で係合する前記ステップは、前記ガラスシートの縁を前記保持装置でつかむステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記事前位置決めステーションを動作させる前記ステップは、
前記保持装置を前記ガラスシートから離すステップの前に、前記ガラスシートの縁に支持装置を接触させるステップを更に含む、請求項
2記載の方法。
【請求項5】
前記事前位置決めステーションを動作させる前記ステップは、
前記ガラスシートを前記保持装置で再係合する前記ステップに続いて前記ガラスシートの前記縁との接触から前記支持装置を引っ込めるステップを更に含む、請求項
4記載の方法。
【請求項6】
互いに反対側の第1及び第2主表面を有するガラスシートを処理するための装置であって、
液体を噴霧するように構成された液体噴霧組立体を備え、液体を前記第1主表面に噴霧して前記ガラスシートを安定させるように構成された事前位置決めステーションと、
前記事前位置決めステーションの下流に在り、
前記事前位置決めステーションから搬送された前記ガラスシートを洗浄するように構成された洗浄ステーションと、
前記洗浄ステーションの下流に在り、
前記洗浄ステーションから搬送された前記ガラスシートを乾燥するように構成された乾燥ステーションと
、
前記ガラスシートを前記事前位置決めステーションに、前記事前位置決めステーションから前記洗浄ステーションに、及び前記洗浄ステーションから前記乾燥ステーションに搬送するように構成された搬送装置と、を備え、
該搬送装置は、前記事前位置決めステーション、前記洗浄ステーション、前記乾燥ステーションに渡って延在する軌道組立体および、該軌道組立体の軌道に接続されて、該軌道に沿って平行移動する1つ以上の保持装置と、を含み、
該保持装置は、前記ガラスシートの縁に選択的に係合するように構成され、
前記搬送装置は、前記ガラスシートを概ね垂直な向きに保持したまま前記事前位置決めステーションから、前記洗浄ステーションを経て、前記乾燥ステーションまで搬送するように構成され、
前記事前位置決めステーションは、気体流方向付け組立体を更に備え、前記ガラスシートの前記第2主表面に気体流を当てるように構成されている装置。
【請求項7】
前記洗浄ステーションは第1組の液体分配器及び第2組の液体分配器を備え、前記第1組の液体分配器は隙間により前記第2組の液体分配器から横方向に離され、前記事前位置決めステーションは前記ガラスシートの実効横方向寸法を前記隙間より小さい寸法に減少させるように構成されている、請求項
6記載の装置。
【請求項8】
前記装置は前記ガラスシートの進行方向を規定するように構成され、前記液体噴霧組立体は複数の液体噴霧ノズルを含み画定するプレートと前記プレートを前記進行方向に対して横切る方向に移動させるための関節動作装置とを備える、請求項
6記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2017年10月6日に出願された米国仮特許出願第62/568985号の米国特許法第119条の下の優先権の利益を主張するものであり、その内容全体を本明細書に援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は概ね、ガラスシート処理装置及び方法に関する。特に、ガラスシート、例えば垂直向きのガラスシートのそのガラスシートの洗浄などの他のプロセスステップに関連した安定化に関する。
【背景技術】
【0003】
通常のガラス製造システムでは、様々な原材料成分又はバッチ材料が溶融炉に導入又は「投入」される。バッチ材料は溶けて、システムの成形部へ流されうる粘性の溶けた材料を形成する。粘性の溶けた材料は冷えるとガラスを形成する。
【0004】
原材料を溶かすことによるガラスシート又は他のガラス物品の製造は既知である。融合プロセスとして知られる1つのこのようなプロセスでは、溶けたガラスは成形本体内の槽の縁を越えてあふれる。別々の流れは、成形本体の底において再合流又は融合してガラスの連続するリボンを形成する。次に、そのガラスリボンから別々のガラスシートが分離(例えば、切り出)される。例えば、幾つかの手法で、ビーズがガラスリボンの両縁に形成され、分離(及びもしかしたら他の)プロセスのための取り扱い表面として働きうる。提供された場合、ビーズは後でガラスシートの残りから分離(即ち、切断)される。融合プロセスは、平面パネルディスプレイを含む多様な製品に使用される薄いガラスシートを作製するガラス製造工程で使用される。
【0005】
ガラスリボンが形成される方法又はガラスシートがガラスリボンから分離される方法に拘らず、破片(例えば、ガラス片及び粒子)が分離(例えば、切断)ステップ中にしばしば生成される。また、台を形成するガラスリボン及び/又はガラスシートに関連する環境条件は他の源から空気中を運ばれる粒子を含むかもしれない。これらの破片及び粒子はガラスシートの表面に着きうる。初めは、これらのガラス片及び粒子はガラスシート表面に相対的に弱いファンデルワールス、静電気、及び毛管相互作用により結合される。しかし、輸送及び保管中の経時変化後、ずっと強い共有結合がガラスシート表面とガラス片/粒子の間に形成され、結果として、そのようなガラス片/粒子は取り除くのが極端に難しくなり品質の心配を生じさせる可能性がある。
【0006】
上記を考慮して、幾つかのガラスシート製造システム又はラインは、分離プロセスの直後にガラスシートを清浄にする1つ以上の洗浄ステーションと乾燥ステーションを含む。従来、洗浄ステーションは水(又は他の液体)をガラスシートの両主表面上に、例えば液体噴霧孔(例えば、水ベアリング)を介して吹き付ける。ガラスシートの両主表面において洗浄を行うために、互いに対向する複数組の液体噴霧孔が通常設けられ、それらの組はガラスシートの2つの主表面のうちそれぞれに液体を吹き付けるように配置されている。言い換えると、隙間が対向する組の液体噴霧孔の間に設けられ、ガラスシートは洗浄工程中この隙間を通過する。所望のレベルの洗浄を達成するために、液体噴霧孔はガラスシートの極めて近くに位置するのが望ましい。従って、幾つかの例では、対向する組の液体噴霧孔間の隙間は相対的に小さくなりうる。ガラスシートが不完全に支持されている状況では(例えば、ガラスシートが縁保持装置で垂直向きに保持されている場合)、ガラスシートの実効厚み(例えば、平面度のずれ、ガラスシートの振動など)はその隙間の大きさより大きい場合がある。同様な心配が乾燥ステーション(その中には、例えば対向するエアナイフが気体の流れをガラスシートの2つの主表面のうち対応する主表面に向けるように配置されている)についても生じうる。
【0007】
従って、例えば、ガラスシート製造プロセスの一部としてのガラスシートを処理するための他の装置及び方法が本明細書に開示される。
【発明の概要】
【0008】
本開示の幾つかの実施形態はガラスシートを処理する方法に関する。そのガラスシートは互いに反対側の第1及び第2主表面を有するか又は画定する。前記ガラスシートは事前位置決めステーションに届けられる。前記事前位置決めステーションは動作させられ、液体を前記第1主表面に噴霧して前記ガラスシートを安定させる。前記安定させられたガラスシートは洗浄ステーションに届けられる。洗浄ステーションは動作させられ、前記ガラスシートを洗浄する。前記洗浄されたガラスシートは乾燥ステーションに届けられる。乾燥ステーションは動作させられ、前記ガラスシートを乾燥する。本開示の方法では、洗浄ステーションの直前の前記事前位置決めステーションでガラスシートを安定させることで、ガラスシートと洗浄ステーションの構成要素の間の物理的接触の可能性を最小にする。幾つかの実施形態では、前記事前位置決めステーションを動作させるステップは、気体流を前記第2主面に向けることを含む。他の実施形態では、前記事前位置決めステーションを動作させるステップは、噴霧された液体がガラスシートを垂直向きに維持することを含む。他の実施形態では、前記ガラスシートを事前位置決めステーションに届けるステップは、前記ガラスシートの縁を保持装置で係合することと、前記保持装置を前記事前位置決めステーションに向けて移動させることとを含む。関連する実施形態では、前記事前位置決めステーションを動作させるステップは、前記保持装置を前記ガラスシートから離し、次に前記ガラスシートを前記保持装置で再係合することを含む。
【0009】
本開示の更に他の実施形態はガラスシートを処理するための装置に関する。そのガラスシートは互いに反対側の第1及び第2主表面を有するか又は画定する。その装置は事前位置決めステーションと洗浄ステーションと乾燥ステーションとを備える。事前位置決めステーションは液体を噴霧するように構成された液体噴霧組立体を備える。また、事前位置決めステーションは液体をガラスシートの第1主表面に噴霧して前記ガラスシートを安定させるように構成されている。洗浄ステーションは前記事前位置決めステーションの下流に在り、前記ガラスシートを洗浄するように構成されている。乾燥ステーションは前記洗浄ステーションの下流に在り、前記ガラスシートを乾燥するように構成されている。本開示の装置では、前記洗浄ステーションは互いに対向する第1及び第2組の液体分配器を備えてよく、前記第1組の液体分配器は隙間により前記第2組の液体分配器から横方向に離され、前記事前位置決めステーションは前記ガラスシートの実効横方向寸法を前記隙間より小さい寸法に減少させるように構成されている。
【0010】
本開示の更に他の実施形態はガラスシートを作製するための方法に関する。その方法はガラスウェブを形成するステップを含む。ガラスシートは前記ガラスウェブから分離され、互いに反対側の第1及び第2主表面を有する。前記ガラスシートは事前位置決めステーションに届けられる。前記事前位置決めステーションは動作させられ、液体を前記第1主表面に噴霧して前記ガラスシートを安定させる。前記安定させられたガラスシートは洗浄ステーションに届けられる。洗浄ステーションは動作させられ、前記ガラスシートを洗浄する。前記洗浄されたガラスシートは乾燥ステーションに届けられる。乾燥ステーションは動作させられ、前記ガラスシートを乾燥する。幾つかの実施形態では、本開示のこれら及び他の方法で、ガラスシートをインラインで形成し、安定させ、清浄しうる。
【0011】
追加の特徴と利点は下記の詳細な説明において記述され、その説明から当業者にとって容易に明白となるか、又は下記の詳細な説明、請求項、及び添付図面を含めて本明細書に記載した実施形態を実施することにより認識されるであろう。
【0012】
上記概要説明と下記の詳細な説明の両方とも様々な実施形態を説明し、請求項に記載された対象物の特質及び特性を理解するための概観又は枠組みを提供するよう意図されていることは理解されるべきである。添付図面はそれら様々な実施形態の更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ一部をなしている。図面は本明細書に記載された様々な実施形態を例示し、記述内容と共に請求項に記載された対象物の原理と動作を説明するよう働く。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の原理に係るガラス製造システムの概略図である。
【
図2】
図1のシステムで有用な本開示の原理に係る取扱装置の側面図である。
【
図3A】ガラスシートの簡略化された上面図である。
【
図4】本開示の原理に係る事前位置決めステーション、例えば
図2の取扱装置に設けられた事前位置決めステーションで有用な噴霧バーの平面図である。
【
図5】事前位置決めステーションと洗浄ステーションの一部を含む
図2の取扱装置の一部の簡略化された上面図である。
【
図6】本開示の原理に係る別の事前位置決めステーションを含む取扱装置の一部の簡略化された上面図である。
【
図7】ガラスシートの側面図であり、期待される厚みからの可能なずれを例示する。
【
図8】本開示の原理に係るガラスシートを処理する代表的なステップを例示するフローチャートである。
【
図9A】
図8の方法に関連するステップを実行する事前位置決めステーションの簡略化された側面図である。
【
図9B】
図8の方法に関連するステップを実行する事前位置決めステーションの簡略化された側面図である。
【
図9C】
図8の方法に関連するステップを実行する事前位置決めステーションの簡略化された側面図である。
【
図9D】
図8の方法に関連するステップを実行する事前位置決めステーションの簡略化された側面図である。
【
図9E】
図8の方法に関連するステップを実行する事前位置決めステーションの簡略化された側面図である。
【
図9F】
図8の方法に関連するステップを実行する事前位置決めステーションの簡略化された側面図である。
【
図9G】
図8の方法に関連するステップを実行する事前位置決めステーションの簡略化された側面図である。
【
図10】本開示の事前位置決めステーションの液体噴霧装置とガラスシートの間の横方向間隔対働く力のプロットである。
【
図11】
図1のシステムで有用な洗浄ステーション及び乾燥ステーションの概略斜視図である。
【
図12】ガラスシートを処理する本開示の原理に係る取扱装置の簡略化された上面図である。
【
図13】本開示の原理に係るガラス製造システムの一部の概略図である。
【
図14】事前位置決めステーションの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ガラスシートを処理するための装置及び方法とガラスシート製造工程の様々な実施形態を詳細に記述する。可能ならいつでも、同じ又は類似の部品を指すために同じ符号を全図面に亘って使用する。しかし、本開示は多くの異なる形態で具体化されてよいし、本明細書に明記された実施形態に限定されると解釈されるべきではない。
【0015】
ガラスシートは通常、ガラスリボン形成装置でガラスリボンを形成し、分離装置でガラスリボンからガラスシートを分離し、取扱装置で分離されたガラスシートを清浄して製造される。ガラスリボンは溶融ガラスを成形本体に流すことで通常作製される。成形本体では、ガラスリボンがフロート、スロットドロー、下方ドロー、融合下方ドロー、上方ドロー、又は任意の他の形成プロセスを含む多様なリボン形成プロセスにより形成されてよい。これらのプロセスのいずれによるガラスリボンも次に分割され、これに限定されないが表示用途を含む所望の用途への更なる加工に適した1つ以上のガラスシートを提供してもよい。例えば、1つ以上のガラスシートは液晶ディスプレイ(LCD)、電気泳動ディスプレイ(EPD)、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)などを含む多様な表示用途で使用されうる。ガラスシートは1つの位置から別の位置へ搬送されてもよい。ガラスシートは、積み重ねたガラスシートを適切な位置に固定するように設計された従来の支持枠に入れて搬送されてもよい。また、インターリーフ材を隣接するガラスシート間に、ガラスシートの清浄な表面間の接触を防止してそれらを保存するのを助けるために入れてもよい。
【0016】
本明細書に開示された詳細な実施形態は代表的であり、従ってこれらに限定されないことが意図されていることは理解されるべきである。このように、本開示はガラスリボン及びガラスシートの少なくとも1つを処理するための方法及び装置に関する。幾つかの実施形態では、処理されるガラスリボンは、ガラス製造装置から形成放出されうるか、ガラス製造装置から形成されながら提供されうるか、前に形成され伸ばし出し可能なガラスリボンの一巻きから提供されうるか、又は自立したガラスリボンとして提供されうる。幾つかの実施形態では、処理されるガラスシートは、ガラス製造装置により形成されうるか、ガラスリボンから分離されたガラスシートとして提供されうるか、別のガラスシートから分離されたガラスシートとして提供されうるか、ガラスシートの一巻きから伸ばし出されたガラスシートとして提供されうるか、積み重ねたガラスシートから得られたガラスシートとして提供されうるか、又は自立したガラスシートとして提供されうる。
【0017】
図1は本開示のガラス製造システム20を概略的に描く。ガラス製造システムはガラスウェブ又はリボン形成装置30、分離装置32、及び取扱装置34を含む。ガラスウェブ形成装置30はガラスウェブ40(例えば、ガラスリボン)を生成し、分離装置32はガラスウェブ40から個々のガラスシート42を分割又は分離するように動作する。ガラスシート42は取扱装置34に届けられ清浄される(例えば、洗浄及び乾燥される)。ガラスシート42は取扱装置34による処理に続いて他のプロセス(例えば、塗布、保管、出荷など)を受けうる。本開示の態様は取扱装置34及びそれにより実行される方法の特徴に関する。従って、ガラスウェブ形成装置30及び分離装置32は多種多様な形態を取りうる。それらの幾つかの非限定の例を下記に説明する。
【0018】
取扱装置34の1つの実施形態が
図2により詳細に示されている。取扱装置34は事前位置決めステーション50、洗浄ステーション52、乾燥ステーション54、及び随意の搬送装置56を含む。様々な構成要素の詳細が下記に提供される。概括的には、取扱装置34は、例えばガラスシート42の両主表面を清浄することでガラスシート42を処理する(例えば、一連の個別のガラスシート42を連続的に処理する)ように構成されている。基準点として、
図3A及び3Bは代表的なガラスシート42の簡略化された前面及び側面図である。ガラスシート42は縁64、66、68、70などの外周縁により相互接続された互いに反対側の第1及び第2主表面60、62を形成又は画定する(本開示のガラスシートはおよそ4つの外周縁を有しうることが分かる)。縁64、66、68、70は図示のように真っ直ぐ又は主表面60、62に垂直であっても、或いは縁64、66、68、70の1つ以上が主表面60、62の一方又は両方に対して他の角度をなしていても、曲がって又は面取りされてなどしていてもよい。それにも拘らず、ガラスシート42の形状は主要平面Pを生成し、主表面60、62の一方又は両方は主要平面Pと概ね平行(即ち、真の平行関係から5度以内)である。これらの規定を念頭に置いて
図2に戻ると、取扱装置34はガラスシート42を概ね垂直配置(即ち、ガラスシート42の主要平面Pが概ね垂直(真の垂直な向きから5度以内)である)で主表面60、62両方を洗浄(洗浄ステーション52で)及び乾燥(乾燥ステーション54で)して処理するように構成されている(
図2では第2主表面62が見える)。事前位置決めステーション50はガラスシート42を洗浄ステーション52に届ける(及びそれによる処理の)前に安定させるように動作する。ガラスシート42は事前位置決めステーション50から洗浄ステーション52へ進行方向(T)に進行する。搬送装置56は、設けられた場合、ガラスシート42を事前位置決めステーション50へ届ける、ガラスシート42を事前位置決めステーション50から洗浄ステーション52へ搬送し通過させる(例えば、進行方向Tに)、及びガラスシート42を洗浄ステーション52から乾燥ステーション54へ搬送し通過させる(例えば、進行方向Tに)のうち少なくとも1つを行うように構成されている。
【0019】
事前位置決めステーション50は、液体を処理中のガラスシート42の第1主表面60(
図3B)に噴霧するように構成及び配置された液体噴霧組立体80を含む。液体噴霧組立体80は多様な形態を取ることができ、幾つかの実施形態では、水噴霧又はベアリング装置に似ているかもしれない。例えば、液体噴霧組立体80は、流路(不図示)を形成しその流路と流体連通する複数の孔84(
図2におおまかに示されている)が形成された又は設けられた1つ以上の管又はバー82を含みうる。バー82の非限定の例がより詳細に
図4に示されている。他の配置も許されるが、例示のように、これらの孔84はバー82の長さに亘って繰り返しパターンで配列されうる。バー82の長さ(従って、最も外側の孔84a、84b間の縦方向距離)は、事前位置決めステーション50により処理されるガラスシートの予想される寸法に応じて選択され(例えば、最も外側の孔84a、84b間の縦方向距離はその予想される寸法に近いか又はより大きい)、幾つかの実施形態では、他の寸法も大きくても小さくても等しく許されるが、約650mmでありうる。幾つかの実施形態では、孔84の1つ以上はノズルであっても、或いは、ノズルがバー82に組み付けられるか又は保持され対応する孔84と流体連通してもよい。
図2に戻ると、幾つかの実施形態では、バー82は概ね水平(即ち、真の水平配置から5度以内)にバーを配置する枠86により支持されてよい。2つ以上のバー82が設けられ枠86により共に支持される実施形態では、選択肢としての実施形態において、それらのバー82は水平に整列され垂直方向に互いに等距離間隔でありうる。各バー82の流路(不図示)は共に加圧液体(例えば、水)の1つの液体供給源(不図示)に流体接続されうるか、又はそれぞれバー82に流体接続された2つ以上の別々の液体供給源が設けられうる。
【0020】
幾つかの実施形態では、事前位置決めステーション50はバー82(及び特にそれらに形成又は設けられた孔84)に(直接又は間接)接続され進行方向Tを横切る方向に孔84を平行移動するよう動作可能な作動装置90を随意に含みうる。例えば、
図5は事前位置決めステーション50と事前位置決めステーション50内に位置するガラスシート42と洗浄ステーション52の一部との簡略化した上面図を例示する。作動装置90は枠86に結合又は繋がれている。作動装置90の枠86及び/又は枠86を支える他の構造体(不図示)との接続は、作動装置90の動作により枠86を進行方向Tを横切る(例えば、垂直な)方向Dに移動させる接続である。言い換えると、事前位置決めステーション50内に位置するガラスシート42に対して、枠86及びバー82を主要平面Pに対して横切って(例えば、垂直に)移動させ、孔84(おおまかに示す)をガラスシート42の第1主表面60のより近くに又はより離して選択的に位置させる。作動装置90は、上記横切る移動を実行するのに適した様々な形態を取ることができ、例えばモーター又は他の駆動装置と作動装置90の動作を制御する制御装置(例えば、PLC、コンピュータなど)とを含みうる。他の実施形態では、作動装置90は省略できる。
【0021】
図2に戻って、事前位置決めステーション50は支持装置100を随意に更に含みうる。設けられた場合、支持装置100は床102と床102を垂直方向に選択的に移動させるように構成された駆動装置104(おおまかに示す)とを含む。床102は様々な形態を取ることができ、ガラスシート42の縁に破損することなく接触又は整合するように概ね構成されている。例えば、床102は、ガラスシートに接触した時にガラスシートに最小の損傷を与えるか又は全く損傷を与えないように選択された材料から形成されるか又はで被覆されても、又はその材料から形成されるか又はで被覆された1つ以上の物体を支持してもよい。駆動装置104は、床102の垂直移動を実行するのに適した様々な形態を取ることができ、例えばモーター又は他の駆動装置と駆動装置104の動作を制御する制御装置(例えば、PLC、コンピュータなど)とを含みうる。この構成で、床102を選択的に上げ下げするように支持装置100を動作させて、床102を下記に明らかにされる理由のために事前位置決めステーション50内に位置するガラスシート42の下部縁(
図2に示された縁66)と支持接触させたり離したりできる。支持装置100は事前位置決めステーション50内に位置するガラスシート42を選択的に支持するように構成された他の形態を取りうる。他の実施形態では、支持装置100は省略されうる。
【0022】
図2に示されていないが、事前位置決めステーション50は液体噴霧組立体80と対向して位置する気体流方向付け組立体を随意に含みうる。例えば、
図6の簡略化された上面図は、気体流方向付け組立体110を簡略的にかつ液体噴霧組立体80及び事前位置決めステーション50内に位置するガラスシート42に相対して示す。気体流方向付け組立体110は加圧気体流をガラスシート42の第2主表面62に向けるように構成され配置されている(液体噴霧組立体80は液体を第1主表面60に噴霧するように構成され配置されていることが思い出される)。気体流方向付け組立体110は様々な形態を取ることができ、幾つかの実施形態では、エアナイフであっても、エアナイフに似ていてもよい。他の実施形態では、気体流方向付け組立体110は加圧気体、例えば空気源(不図示)と流体連通する1つ以上のノズルを含み、それらのノズルはガラスシート42の様々な領域に加圧気体を当てるために事前位置決めステーション50の1つの領域内に分布していてもよい。他の実施形態では、気体流方向付け組立体110を省略できる。
【0023】
図2に戻って、幾つかの実施形態では、搬送装置56及び/又はその動作の一部は、事前位置決めステーション50及び/又は事前位置決めステーション50による方法の実行の一部であると考えられうる。この事を念頭に置いて、幾つかの実施形態では、搬送装置56は1つ以上の保持装置120及び軌道組立体122を含みうる。保持装置は、例えばガラスシート42の縁(例えば、
図2に示された縁64)においてガラスシート42に選択的に係合するように構成され、当技術で既知の多様な形態を有しうる。保持装置120は軌道組立体122の軌道124に接続され、軌道組立体122は保持装置120を軌道124に沿って平行移動(例えば、進行方向T)させるように動作可能である。この構成により、搬送装置56はガラスシート42を図示のように概ね垂直な向きに保持し搬送するように構成されている。下記により詳細に説明するように、搬送装置56(例えば、保持装置120の1つ以上)の動作は、事前位置決めステーション50の動作と連係するか又はにより制御されうる。
【0024】
事前位置決めステーション50は1つ以上の追加の構成要素を含みうる。例えば、平鍋130が液体噴霧組立体80により放出された液体を集めるために設けられうる。また、液体噴霧組立体80、作動装置90、支持装置100、気体流方向付け組立体110、及び搬送装置56のうち1つ以上に電子的に接続されそれらの動作を制御する制御装置132が設けられうる。制御装置132はコンピュータであっても、コンピュータに似ていてもよく、下記の動作ステップを実行するようプログラムされたソフトウェア又はハードウェアで動作するメモリを含みうる。制御装置132は取扱装置34の他の構成要素、例えば洗浄ステーション52及び/又は乾燥ステーション54の構成要素の動作を制御するように随意に更にプログラムされうる。
【0025】
上記のように、事前位置決めステーション50は洗浄ステーション52に届ける前にガラスシート42を安定させるように構成されている。基準点として、事前位置決めステーション50に初めに提供された時、ガラスシート42は平面度のずれを示すことがある。例えば、ガラスシート42がガラスリボン40(
図1)から分離され相対的に直ちに事前位置決めステーション50に届けられる(例えば、ガラスリボンドロー動作の下端での垂直ビーズ分離動作後直ちに)場合、ガラスシート42は、例えばガラスシート42の機械及び熱履歴のために真には平板でないことがある。また、ガラスシート42は曲がっていることがある。また、搬送装置56(又はガラスシート42を事前位置決めステーション50に届けるのに使用される他の装置)の動作は、ガラスシート42に進行方向Tを横切る振動又は他の動きをさせることがある。これらの状況は
図7の簡略化された側面図により概略的に表されている。図示のように、ガラスシート42の主表面60、62の一方又は両方は平面度のずれを示しうる。また、振動又は他の横方向の移動/動きがガラスシート42に伝えられうる(破線で表される)。従って、ガラスシート42は事前位置決めステーション50(
図2)に提供される時に均一な厚みU(即ち、両主表面60、62間の距離)を有することが期待されるが、代わりに、ガラスシート42は期待される均一な厚みUより大きい実効横方向寸法Eを示す。事前位置決めステーション50はガラスシート42を安定させ、実効横方向寸法Eを減少させて期待される均一な厚みUにより近く一致するように動作する。
【0026】
事前位置決めステーション50によりガラスシート42を処理するための方法150の非限定例が
図8に概略的に示されている。ステップ152から始まり、
図9Aを追加参照すると、ガラスシート42は事前位置決めステーション50に届けられる。例えば、搬送装置56(
図2)はグリッパー120によりガラスシート42とその上部縁(例えば、縁64)において係合するように動作しうる。グリッパー120はガラスシート42を事前位置決めステーション50に運び込み液体噴霧組立体80と概ね整列させる(例えば、ガラスシート42の第1主表面60が液体噴霧組立体80に設けられた孔84(おおまかに示す)に面する)ように関節動作する。幾つかの実施形態では、液体噴霧組立体80は、ガラスシート42が事前位置決めステーション50内に届けられる時、液体Lを第1主表面60に向けて配る又は吹き付けるように動作しうる。それにも拘らず、
図9Aの動作段階では、液体噴霧組立体80はガラスシート42に対して孔84と第1主表面60の間に初めの横方向間隔S1をとるように配置される。また、
図9Aの動作段階では、ガラスシート42は静止している場合といない場合がある(即ち、進行方向T(
図2)に移動させられている場合といない場合がある)。
【0027】
ステップ154では、
図9Bを追加参照すると、ガラスシート42が静止のままである場合とでない場合があるが、液体噴霧組立体80は第1主表面60に向かって移動させられ、孔84(おおまかに示す)と第1主表面60の間の横方向間隔を第1中間横方向間隔SM1(初めの横方向間隔S1(
図9A)より小さい)に減少させる。ステップ154に関して、液体噴霧組立体80は液体Lを第1主表面60に向けて配る又は吹き付けるように随意に動作させられうる。事前位置決めステーション50が随意の気体流方向付け組立体110を含む実施形態では、本開示の方法は、気体流方向付け組立体110が加圧気体Aの流れを第2主表面62に向けるように動作するステップ156を随意に含みうる。これら及び関連する実施形態では、随意の気体流方向付け組立体110は下記の後に続くステップのうち幾つかに亘って加圧気体Aを第2主表面62に向けるように連続的に動作しうる。
【0028】
ステップ158(例えば、ステップ154及び/又は156の短い滞在時間後)では、
図9Cを追加参照すると、ガラスシート42が静止のままである場合とでない場合があるが、液体噴霧組立体80は第1主表面60に向かって移動させられ、孔84(おおまかに示す)と第1主表面60の間の横方向間隔を第2中間横方向間隔SM2(第1中間横方向間隔SM1(
図9B)より小さい)に減少させる。ステップ158に関して、液体噴霧組立体80は液体Lを第1主表面60に向けて配る又は吹き付けるように随意に動作させられうる。
【0029】
図9Dを追加参照すると、事前位置決めステーション50が随意の支持装置100を含む実施形態では、本開示の方法はステップ160を随意に含みうる。ステップ160では、ガラスシート42が静止のままである間、支持装置100は床102を(例えば、上げて)ガラスシート42の縁66に接触させるように動作する。この動作では、支持装置100はガラスシート42を垂直向きに支持するように働く。
【0030】
ステップ162では、
図9Eを追加参照すると、ガラスシート42が静止のままである場合とでない場合があるが、保持装置120はガラスシート42を離す又は解放するように動作する。ステップ162に続いて、ガラスシート42は、例えば液体L、気体A、及び床102により加えられる力により垂直向きのままである。
【0031】
ステップ164では、
図9Fを追加参照すると、ガラスシート42が静止のままである場合とでない場合があるが、液体噴霧組立体80は第1主表面60に向かって移動させられ、孔84(おおまかに示す)と第1主表面60の間の横方向間隔を最終横方向間隔SF(第2中間横方向間隔SM2(
図9C)より小さい)に減少させる。
【0032】
ステップ166では、ガラスシート42が静止のままである場合とでない場合があるが、液体噴霧組立体80は液体Lを第1主表面60に吹き付けるように動作させられる。上記のように、1つ以上の前のステップの一部として液体噴霧組立体80は液体Lを吹き付けるように動作させられうる。それにも拘らず、ステップ166で、孔84が最終横方向間隔SF(例えば、選択肢として0.1~10mmの範囲、或いは10mm未満、或いは5mm未満、選択肢として約1mm)に位置しながら、液体噴霧組立体80は液体Lを第1主表面60にガラスシート42を安定させるのに適切な流量で吹き付ける。例えば、幾つかの非限定の実施形態では、0.5~10gal/min(1.89~37.85L/min)の範囲の液体流量が液体噴霧組立体80全体に亘って均一に供給される。或いは9gal/min(34.07L/min)未満、或いは5gal/min(18.93L/min)未満、選択肢として1~2gal/min(3.79~7.57L/min)の範囲であってもよい。他の流量も想定される。気体流方向付け組立体110を含む選択肢としての実施形態では、気体流方向付け組立体110流出側(例えば、
図9Fのノズル112)と第2主表面62との間の横方向距離は1~15mmの範囲、或いは12mm未満、或いは10mm未満、選択肢として約5mmでありうる。他の距離も許される。それにも拘らず、第1主表面60に吹き付けられた液体Lは水(又は他の液体)ベアリングとして実際上働く。これに関して、最終横方向間隔SF及び液体噴霧流量(従って、水ベアリング力)はガラスシート42を垂直向きに支持又は維持するために順に選択されうる。基準点として、
図10はガラスシート42に作用する液体ベアリング力の最終横方向間隔又は距離の関数としてプロットである。プロットにおいて強調表示されているように、ある噴霧又はベアリング力及び距離において、ガラスシート42は正味斥力を受け、他の噴霧又はベアリング力及び距離において、ガラスシート42は正味引力を受ける。流量/ベアリング力と横方向距離との適切な組み合わせを選択することで、全液体噴霧はどんな横方向動き又は振動も効果的に減衰又は除去しながらガラスシート42に「係合」し垂直向きに維持する。
図8及び9Fに戻ると、ガラスシート42を安定させることに加えて、噴霧された液体Lは冷却することでガラスシート42を平板にするように作用する。幾つかの非限定の実施形態では、ステップ166は15~180秒の範囲の期間を有しうる。
【0033】
図9Gを追加参照すると、ステップ168では、保持装置120はガラスシート42に(例えば、縁64において)再係合するように動作する。ステップ170では、床102がガラスシート42との接触から引き離される。ステップ172では、ガラスシート42は事前位置決めステーション50から取り出される。例えば、搬送装置56(
図2)は保持装置120(従って、今係合されたガラスシート42)を事前位置決めステーション50から進行方向T(
図2)に搬送するように動作する。
【0034】
図8に示唆された方法は本開示の一例に過ぎない。他の実施形態では、例えば
図8のステップのうち1つ以上を省略できる。加えて又は或いは、他のステップを追加できる。それにも拘らず、
図2に戻って、ガラスシート42は洗浄ステーション52に届けるために事前位置決めステーション50において安定させられる。
【0035】
洗浄ステーション52及び乾燥ステーション54はガラスシート42を洗浄し乾燥するのに適した様々な形態を取ることができ、幾つかの実施形態では、共通のハウジング200を共有できる。洗浄ステーション52及び乾燥ステーション54の非限定の例を
図11に示す。
図11に進行方向矢印Tにより示すように、ガラスシート42が事前位置決めステーション50(
図2)で安定させられた後、比較的直ちに洗浄ステーション52はガラスシート42を受け取ることができる。例えば、ハウジング200の入口又はスロット202は事前位置決めステーション50の出口(不図示)と直線上に位置する。幾つかの実施形態では、ガラスシート42は事前位置決めステーション50と洗浄ステーション52の間を速く移動させられうる。幾つかの実施形態では、ガラスシート42の相対的に速い移動(進行方向Tで表す)は、ガラスシート42が事前位置決めステーション50を離れる時からガラスシート42が洗浄ステーション52に受け入れられ始めるまで約1秒~約15秒など約1秒~約20秒の時間経過を伴いうる。
【0036】
洗浄ステーション52はハウジング200を含んでもよく、ガラスシート42の主表面60、62に対して液体を分配するよう方向付けされた第1液体ノズル206(例えば、複数の第1液体ノズル206)を含む第1液体分配器204(例えば、複数の第1液体分配器204)を備える。図示されていないが、代表的な洗浄ステーション52はガラスシート42の第1主表面60及び第2主表面62(
図3B)両方に対して液体を分配できる。例えば、
図5は洗浄ステーション52を互いに対向する第1及び第2組の液体分配器204a、204bを含むとして表す。第1組204aはガラスシート42の第1主表面60に液体を向けるように配置され、第2組204bは第2主表面62に液体を向けるように配置されている。従って、
図11に戻って、片側分配の描写は、そうでないと記述しない限り、添付の請求項の範囲を限定すべきでなく、そのような描写は視覚的明瞭さの目的のためになされた。図示のように、第1液体ノズル206は、回転矢印208が示すように回転軸の周りを随意に回転できる。幾つかの実施形態(不図示)では、第1液体ノズル206は固定され非回転であってもよい。適切なノズルはどんな1つ以上の円錐ノズル、フラットノズル、高密度ストリームノズル、中空円錐ノズル、細かい霧吹きノズル、卵形ノズル、正方形ノズルなども含みうる。幾つかの実施形態では、ノズルは約0.25~約2500ガロン/分(gpm)(約0.95~約9463.25L/min)の流量を含み、約0psi~約4000psi(約0~約27.6MPa)の圧力で動作しうる。幾つかの実施形態では、本書に明確には開示されていないノズルを含む他のノズルタイプ及び構成を設けてもよい。
【0037】
幾つかの実施形態では、
図11の側壁はハウジング200の内部の特徴を示すために取り去られているが、ハウジング200は概ね囲われていてもよい。幾つかの実施形態では、ハウジング200は、ハウジング200の内部を第1領域212a(例えば、洗浄ステーション52)と第2領域212b(例えば、乾燥ステーション54)に分割する仕切り210を含みうる。第2領域212bは第1領域212aの下流(例えば、進行方向Tに沿って)に位置してよい。例示の実施形態では、第1領域212aは第1液体分配器204を含みうる。排水路214を 第1領域212a内での洗浄プロセスからの液体により運ばれるどんな破片も一緒に液体を取り除くために設けてよい。また通気孔216も圧力上昇を防ぎ、蒸気及び/又は気体をハウジング200の第1領域212aから逃がすために設けてもよい。図示のように、代表的な実施形態は垂直向きのガラスシート42を処理できる。このような垂直向き及び移動に使用される適切な機構は搬送装置56(
図2)により提供されうる。他の非限定の例が2014年10月21日に出願された米国特許出願第62/066656号明細書に記載されている。その内容全体を本明細書に引用する。
【0038】
乾燥ステーション54は第1液体分配器204の下流(例えば、進行方向Tに沿って)に、例えば図示のようにハウジング200の第2領域212b内に位置する気体ナイフ218を含みうる。気体ナイフ218は、ガラスシート42の全長「L」に沿って延びるように方向付けされかつ気体をガラスシート42の主表面60、62に分配してガラスシート42の主表面60、62から液体を取り除くように方向付けされた気体ノズル220(例えば、細長いノズル)を含みうる。気体ナイフ218は乾燥ステーション54全域でガラスシート42の進行方向Tに対して第1角度「A1」に方向付けされてもよい。幾つかの実施形態では、第1角度「A1」は約90°(例えば、垂直)、約45°、約45°~約90°、例えば約60°~約85°、例えば約70°~約80°、及びそれらの間の全ての範囲及び小範囲であってよい。幾つかの実施形態では、第1角度「A1」は約135°、約90°~約135°、例えば約95°~約120°、例えば約100°~約110°、及びそれらの間の全ての範囲及び小範囲であってよい。気体ナイフ218は気体をガラスシート42の主表面60、62に分配してガラスシート42の主表面60、62から液体を取り除くように設計されうる。適した気体はこれらに限定されないが、空気、窒素、低湿度気体などを含む。
【0039】
更に例示されているように、乾燥ステーション54は、気体ナイフ218の上流(例えば、進行方向Tに沿って)の位置でガラスシート42の主表面60、62を水洗いするように方向付けされた第2液体ノズル224を含む第2液体分配器222を随意に含みうる。幾つかの実施形態では、第2液体分配器222は、洗浄ステーション52内の第1液体分配器204により生成される液体流の圧力に比べてより低圧の液体流を含みうる。実際、第2液体分配器222のより低圧の液体流はガラスシート42の主表面60、62を水浸しにしてガラスシート42上に残るどんな洗剤、化学物質、破片、又は他の不純物も除去できる。図示のように、幾つかの実施形態では、そらせ板226を第2液体分配器222の下流(例えば、進行方向Tに沿って)で気体ナイフ218の上流に配置できる。そらせ板226は 第2液体分配器222からのある量の液体を気体ナイフ218から離すように方向付けされうる。図示のように、そらせ板226、例えばワイパーブレードはガラスシート104の進行方向Tに対して第2角度「A2」に方向付けされてもよい。図示のように、第1角度「A1」及び第2角度「A2」は概ね互いに等しいが、そのような描写は、そうでないと記述しない限り、添付の請求項の範囲を限定すべきでなく、幾つかの実施形態では、異なる角度(進行方向に対して斜め、鋭角など)であってもよい。また、図示のように、第2液体分配器222もまた、ガラスシート42の進行方向Tに対してそらせ板226及び気体ナイフ218と類似又は同じ角度に方向付けされた第2液体ノズル224(例えば、細長い液体ノズル)を随意に含んでもよい。そらせ板226は 第2液体分配器222からの液体を下方へ気体ナイフ218から離すように向けることができ、これにより気体ナイフ218がガラスシート42から除去するよう求められる液体の量を減らす。
【0040】
図11の特徴はガラスシート42の主表面60、62の一方に作用するとして例示されているが、類似又は同じ特徴が、ガラスシート42の第1主表面60及び第2主表面62両方を完全に洗浄し乾燥するためにガラスシート42の両側に設けられてもよいことは理解されよう。従って、洗浄ステーション52及び乾燥ステーション54の左側面斜視図は
図11に例示した右側面斜視図のミラー反転であり、上記説明及び
図11の描写は視覚的明瞭さの目的のためになされた。
【0041】
図2に戻って、洗浄ステーション52及び乾燥ステーション54はそれぞれ当業者には明白でガラスシート42の洗浄及び乾燥に適した多種多様な他の形態を取ることができ、それらの形態は上記説明によって直接示唆されている場合といない場合がある(即ち、本開示は
図11に関して上述した洗浄ステーション52及び乾燥ステーション54に決して限定されない)。より概括的には、
図12の概略上面図に表されているように、本開示の方法は、ガラスシート42が事前位置決めステーション50に届けられることを含む。事前位置決めステーション50に初めに渡された時、ガラスシート42は、
図7に関して上述した期待される均一な厚みUより大きな実効横方向寸法Eを呈しうる(
図12の破線で表す)。実効横方向寸法Eは洗浄ステーション52の対向する第1及び第2組の液体分配器204a、204bの間の隙間又は横方向間隔より大きい場合がある。即ち、もしガラスシート42が事前位置決めステーション50での処理なしに洗浄ステーション52に届けられたら、ガラスシート42の主表面60、62の一方又は両方が対応する組の液体分配器204a、204bに望ましくないことに物理的に接触しガラスシート42を損傷する可能性がある。同様の心配が乾燥ステーション54の対向する気体ナイフ218a、218bについても存在する。しかし、ガラスシート42を事前位置決めステーション50において上述したように処理することで(例えば、液体噴霧組立体80はガラスシート42を安定させ、自由選択で冷却する/平板にするように動作する)、続いてガラスシート42は洗浄ステーション52に届けられながら(進行方向Tに沿って)、ガラスシート42は安定させられ実効横方向寸法Eを減少させ、
図12に安定したガラスシート42Sにより表される実効均一厚みUに近づく。この安定した状態で、ガラスシート42Sは洗浄ステーション52に容易に入り、洗浄される。特に、主表面60、62の両方が洗浄ステーション52内で洗浄され、対応する組の液体分配器204a、204bと物理的接触しない。ガラスシート42は次に乾燥ステーション54に(進行方向Tに沿って)届けられる。主表面60、62の両方が乾燥ステーション54で乾燥され対応する気体ナイフ218a、218bと物理的接触しない。幾つかの実施形態では、ガラスシート42は洗浄及び乾燥ステーション52、54を通って連続的に移送又は搬送される。
【0042】
乾燥ステーション54を出ると直ぐ、追加の処理を乾燥されたガラスシート42に実行できる。例えば、幾つかの非限定の実施形態では、例えば2017年3月2日に公開された国際公開第2017/034978号に記載されているようにガラスシート42に被膜を付けることができる。その内容全体を本明細書に引用する。他の処理はパッケージング、保管、及び/又は出荷を随意に含みうる。
【0043】
図1に戻って、上記のように、ガラスウェブ又はリボン形成装置30及び分離装置32は多種多様な形態を取ることができる。幾つかの非限定の実施形態が
図13に提供されている。
図13はドロー動作によるガラス製作に使用されるガラス製造装置を概略的に描く。ガラス製造装置はバッチ材料を処理して溶けたガラスにし、次に溶けたガラスは形成装置に導入され、そこから溶けたガラスが流れ出てガラスリボンを形成する。下記の説明は融合ガラス作製プロセスによりガラスシートを形成する文脈で提示されるが、本書に記載した原理は、溶けたガラスが閉じた又は部分的に閉じた空間内に入れられ溶けたガラスから生成されるガラスリボンの冷却が望まれる広い範囲の工程に適用できる。従って、本書に開示した原理は、下記の特定の実施形態によって限定されず、例えば、フロート、上方ドロー、スロット式、及びフーコー式プロセスなどの他のガラス作製プロセスにおいて使用されてもよい。
【0044】
図13を参照すると、融合プロセスを実行してガラスリボンを作製するように構成されたガラスウェブ形成装置30を内蔵するガラス製造システム20が描かれている。ガラスウェブ形成装置30は溶融容器250、清澄容器252、混合容器254、送達容器256、形成機258、及びドロー装置260を含む。ガラスウェブ形成装置30は、バッチ材料を溶融し結合して溶けたガラスにし、溶けたガラスを分散させ暫定形状にし、ガラスが冷え粘度が増すと共に張力をガラスリボン262に加えてガラスリボン262の寸法を制御することで、バッチ材料から途切れのないガラスリボン262を作製し、ガラスが粘弾性遷移を経てガラスシート42に安定な寸法特性を与える機械的特性を持った後、ガラスリボン262から個別のガラスシート42を切り出す。ガラスリボン262の粘弾性領域はほぼガラスの軟化点からガラスの歪み点まで延びる。歪み点未満ではガラスは弾性的に振舞うと考えられる。
【0045】
動作時、ガラスを形成するためのバッチ材料は矢印264が示すように溶融容器250に導入され、溶融されて溶けたガラス266を形成する。溶けたガラス266は、溶融容器250の温度より高い温度に維持された清澄容器252内に流れ込む。清澄容器252から溶けたガラス266は混合容器254に流れ込み、そこで溶けたガラス266は、溶けたガラス266を均質にする混合プロセスを経る。溶けたガラス266は混合容器254から送達容器256へ流れ、送達容器256は溶けたガラス266を、下降管268を通して入口270へ及び形成機258内へ届ける。
【0046】
図13に描かれた形成機258は融合ドロープロセスで使用され高い表面品質と小さい厚みばらつきとを有するガラスリボン262を作製する。形成機258は溶けたガラス266を受ける開口272を有する。溶けたガラス266は槽274に流れ込み、次にあふれ出て槽274の側面を2つの部分的なリボン部分に分かれて流れ落ち形成機258の底縁(根元)276の下で融合する。溶けたままのガラス266の2つの部分的なリボン部分は形成機258の根元276の下の位置で互いに再結合(例えば、融合)してガラスリボン262を形成する。ガラスリボン262は形成機258からドロー装置260により下方へ引っ張られる。図示し本書に記載した形成機258は融合ドロープロセスを実行するが、これに限定されないがスロットドロー装置などを含む他の形成機を使用してもよいことは理解されるべきである。ドロー装置260は当業者に既知の1つ以上のローラー組立体(不図示)を含みうる。ローラー組立体はドロー装置260に沿った位置に配置され、ガラスリボン262がドロー装置260を通る間ガラスリボン262に接触する。
【0047】
分離装置32はガラス分離器300を含みうる。多様なガラス分離器300が本開示の実施形態において提供されるかもしれない。例えば、切れ目を入れ切れ目線に沿ってガラスリボン262を切断できる移動アンビル機が設けられてもよい。幾つかの実施形態では、ガラス分離器300は、ガラスシート42をガラスリボン262に対して曲げガラスシート42をガラスリボン262から切れ目線に対応する横方向分離路301に沿って分離するのに適合したロボット(例えば、ロボットアーム)を含みうる。幾つかの実施形態では、けがき針302(例えば、切れ目ホイール、ダイアモンド先刃など)を当業者により理解されるように使用できる。幾つかの実施形態では、レーザー使用分離装置303を下記及び2014年11月19日に出願された米国特許出願第14/547688号明細書に記載されているように設けてもよい。その内容全体を本明細書に引用する。そのようなレーザー使用分離装置はこれに限定されないが、ガラスリボン262を加熱し次に冷却してガラスリボン262に通気孔をあけてガラスリボン262を切断するレーザー切れ目入れ手法を含みうる。そのようなレーザー使用分離装置はまた、ガラスリボン262を加熱しガラスリボン262に応力領域を作り次にガラスリボン262の応力領域に欠陥を作って亀裂を生じさせてガラスリボン262を切断するレーザー切断手法を含んでもよい。
図1は代表的なガラス分離器300の概略図を例示する。
【0048】
幾つかの実施形態では、分離装置32はガラスシート42の外側部分304をガラスシート42の中央部分306からガラスシート42の第1横方向縁310と第2横方向縁312の間の長さ「L」に沿って延びる垂直分離路308に沿って分離できる。例示のように、このような手法は垂直向きに実行されうるが、幾つかの実施形態では水平向きが提供されてもよい。幾つかの実施形態では、垂直向きは重力によるガラス粒子の除去を容易にし、ガラスリボン262の汚染されなければ清浄な主表面の汚染を低減するか又は防ぐ場合がある。
【0049】
分離装置32により提供又は実行される他の随意の特徴が、例えば2017年3月2日に公開された国際公開第2017/024978号に記載されている。その内容全体を本明細書に引用する。それにも拘らず、分離装置での処理に続いて、ガラスシート42は
図13に矢印314で示すように取扱装置34(
図1)に届けられる(例えば、直ちに届けられる)。
【0050】
本開示の特徴の実施形態及び利点が下記の非限定の実施例により更に例示されるが、これらの実施例に記述されたそれらの特定の材料、量、寸法、状態、及び他の詳細が本開示の範囲を過度に限定すると解釈されるべきでない。
【実施例】
【0051】
実施例1
本開示のガラスシート安定化装置及び方法を評価するために、
図2に関して上述した事前位置決めステーション50に類似の事前位置決めステーションが作製された。液体噴霧組立体は
図4に示した水バーの1つの構成を有する5つの水平で平行な水バーから成っていた。直接隣接する水バーの中心間距離は180mmであった。6つの超音波センサーが引き続く処理の間、ガラスシートの位置を監視するために液体噴霧組立体に装着された。気体流方向付け組立体が液体噴霧組立体に対向して配置され、6つの空気ノズルから成っていた。実施例の項の事前位置決めステーションの概略構成を
図14に示す。図中、黒丸は6つの空気ノズルを表し、塗りつぶした正方形は6つの超音波位置センサーを表す。
【0052】
試験ガラスシートが得られ、液体噴霧組立体と気体流方向付け組立体の間で垂直向けにされた。試験ガラスシートの第1主表面は液体噴霧組立体に面し、試験ガラスシートの反対側の第2主表面は気体流方向付け組立体に面した。第1主表面と液体噴霧組立体の孔の距離は1mmであった。第2主表面と気体流方向付け組立体のノズルの先端の距離は5mmであった。実施例事前位置決めステーションは水流を(液体噴霧組立体を介して)第1主表面に向け、空気流を(気体流方向付け組立体を介して)第2主表面に向けるよう動作させられ、液体噴霧組立体に供給される水の異なる流量で異なる試験が下記のように実行された。全ての試験の間、気体流方向付け装置への総流量は500SLPM(6つの空気ノズルの間で均等に分配された)であった。ガラスシートは30m/minの搬送速度で実施例事前位置決めステーションに届けられ、20m/minの搬送速度で実施例事前位置決めステーションから搬送された。液体噴霧組立体に対する第1主表面の位置が6つの超音波位置センサーのそれぞれで記録された。試験は1gal/min(3.785L/min)、1.5gal/min(5.678L/min)、及び2gal/min(7.571L/min)の水流量で行われた。全ての場合でガラスシートは液体噴霧組立体に決して接触せず、液体噴霧組立体により確立された液体ベアリングは頭上グリッパーが外された時でもガラスシートを支持できることが視覚的に観察された。試験結果の概要を下記の表1、2、及び3に示す(全ての数値はmm単位)。負の位置値が報告されているのは、位置センサーが試験ガラスシートの第1主表面に面する側に装着されていたためであり、そのガラスシートが気体流方向付け組立体に向け手動で押された時に読取値はゼロにリセットされた。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
表1~3の結果から、標準偏差は相対的に小さく、ガラスシートが良く安定させられていたことを示す。異なる水流量に対応する3つのケースのうち、1.5gal/minで行った試験が最良の全般シート安定性を示した。流量を2gal/minに更に増やすと安定性の最小の追加改善を示した。水ベアリングがより大きな距離からシートに接近するにつれ試験ガラスシートに当たる水噴射が大きな斥力を示しガラスシートを押し離す傾向であったため、水ベアリングと係合することが困難になった。
【0057】
実施例2
追加の試験が実施例事前位置決めステーションと実施例1の試験プロトコルとを使用して実行された。ただし、水ベアリング面位置が搬送装置中心線位置と一致するように、液体噴霧組立体の係合位置を試験対象のガラスシート側に1mmだけずらした。この配置で、液体噴霧がない時に液体噴霧組立体がガラスシートと接触することが予想された。実施例2の結果の概要を下記の表4及び5に示す。
【0058】
【0059】
【0060】
表4及び5に示した結果から、水ベアリングがガラスシートに十分な支持を提供し、ガラスシートは液体噴霧組立体と接触しなかった。
【0061】
本開示の取扱装置、処理ステーション、ガラス製造システム、及び方法は従来の構成に比べて著しい改善を提供する。洗浄ステーションに届ける直前に垂直向きガラスシートを安定させることで、ガラスシートの表面と洗浄ステーションの構成要素の間の望ましくない接触の可能性を避けることができ、インラインで実行できる。本開示の随意の気体流送達付き片側液体ベアリング事前位置決めステーション及び方法は、ガラスシートの安定化及び平板化を達成する重要な処理能力及び柔軟性を提供する。片側液体ベアリングは斥力と引力の両方を提供でき、係合すると本質的に安定である。また、液体ベアリング(例えば、水ベアリング)はより大きい冷却能力(空気ベアリングに比べて)を提供でき、室温超のガラスシートの平板化を容易にすると期待されうる。
【0062】
本明細書に記載された実施形態に対して様々な部分変更及び変形が請求項に記載された対象物の範囲から逸脱することなくされうる。従って、本明細書は、そのような部分変更及び変形が添付の請求項とそれらの等価物の範囲内に入る場合、本明細書に記載された様々な実施形態の部分変更及び変形を包含することが意図されている。
【0063】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0064】
実施形態1
互いに反対側の第1及び第2主表面を有するガラスシートを処理する方法であって、
前記ガラスシートを事前位置決めステーションに届けるステップと、
前記事前位置決めステーションを動作させ、液体を前記第1主表面に噴霧して前記ガラスシートを安定させるステップと、
前記安定させられたガラスシートを洗浄ステーションに届けるステップと、
前記ガラスシートを洗浄するステップと、
前記洗浄されたガラスシートを乾燥ステーションに届けるステップと、
前記ガラスシートを乾燥するステップと
を含み、
前記ガラスシートは1つの主要平面を画定し、前記ガラスシートを事前位置決めステーションに届ける前記ステップは、前記主要平面が概ね垂直になるように前記ガラスシートを方向付けするステップを含む、方法。
【0065】
実施形態2
前記ガラスシートを事前位置決めステーションに届ける前記ステップは、前記ガラスシートを保持装置で係合するステップを含む、実施形態1記載の方法。
【0066】
実施形態3
前記ガラスシートを保持装置で係合する前記ステップは、前記ガラスシートの縁を前記保持装置でつかむステップを含む、実施形態2記載の方法。
【0067】
実施形態4
前記ガラスシートを事前位置決めステーションに届ける前記ステップは、前記保持装置をトラックに沿って搬送するステップを更に含む、実施形態2記載の方法。
【0068】
実施形態5
前記事前位置決めステーションを動作させる前記ステップは、
前記保持装置を前記ガラスシートから離すステップと、
前記液体を前記第1主表面に噴霧して前記ガラスシートを安定させるステップと、
前記ガラスシートを前記保持装置で再係合するステップと
を更に含む、実施形態4記載の方法。
【0069】
実施形態6
前記事前位置決めステーションを動作させる前記ステップは、
前記保持装置を前記ガラスシートから離すステップの前に、前記ガラスシートの縁に支持装置を接触させるステップを更に含む、実施形態5記載の方法。
【0070】
実施形態7
前記事前位置決めステーションを動作させる前記ステップは、
前記ガラスシートを前記保持装置で再係合する前記ステップに続いて前記ガラスシートの前記縁との接触から前記支持装置を引っ込めるステップを更に含む、実施形態6記載の方法。
【0071】
実施形態8
前記安定させられたガラスシートを洗浄ステーションに届ける前記ステップは、前記保持装置を前記トラックに沿って搬送するステップを含む、実施形態4記載の方法。
【0072】
実施形態9
前記洗浄されたガラスシートを乾燥ステーションに届ける前記ステップは、前記保持装置を前記トラックに沿って搬送するステップを含む、実施形態8記載の方法。
【0073】
実施形態10
前記事前位置決めステーションを動作させる前記ステップは、
前記ガラスシートの前記第2主表面に気体流を当てるステップを更に含む、実施形態1記載の方法。
【0074】
実施形態11
前記事前位置決めステーションは複数の液体噴霧ノズルを含み画定するプレートを備え、 前記事前位置決めステーションを動作させる前記ステップは、前記液体を前記第1主表面に連続的に噴霧しながら前記プレートと前記第1主表面の間の距離を縮めるステップを更に含む、実施形態1記載の方法。
【0075】
実施形態12
前記液体は水である、実施形態1記載の方法。
【0076】
実施形態13
前記洗浄ステーションを動作させるステップは、液体を前記第1及び第2主表面の両方に噴霧するステップを含む、実施形態1記載の方法。
【0077】
実施形態14
互いに反対側の第1及び第2主表面を有するガラスシートを処理するための装置であって、
液体を噴霧するように構成された液体噴霧組立体を備え、液体を前記第1主表面に噴霧して前記ガラスシートを安定させるように構成された事前位置決めステーションと、
前記事前位置決めステーションの下流に在り、前記ガラスシートを洗浄するように構成された洗浄ステーションと、
前記洗浄ステーションの下流に在り、前記ガラスシートを乾燥するように構成された乾燥ステーションと
を備える装置。
【0078】
実施形態15
前記ガラスシートを前記事前位置決めステーションに、前記事前位置決めステーションから前記洗浄ステーションに、及び前記洗浄ステーションから前記乾燥ステーションに搬送するように構成された搬送装置を更に備える実施形態14記載の装置。
【0079】
実施形態16
前記洗浄ステーションは第1組の液体分配器及び第2組の液体分配器を備え、前記第1組の液体分配器は隙間により前記第2組の液体分配器から横方向に離され、前記事前位置決めステーションは前記ガラスシートの実効横方向寸法を前記隙間より小さい寸法に減少させるように構成されている、実施形態14記載の装置。
【0080】
実施形態17
前記事前位置決めステーションは、気体流方向付け組立体を更に備え、前記ガラスシートの前記第2主表面に気体流を当てるように更に構成されている、実施形態14記載の装置。
【0081】
実施形態18
前記装置は前記ガラスシートの進行方向を規定するように構成され、前記液体噴霧組立体は複数の液体噴霧ノズルを含み画定するプレートと前記プレートを前記進行方向に対して横切る方向に移動させるための関節動作装置とを備える、実施形態14記載の装置。
【0082】
実施形態19
ガラスシートを作製するための方法であって、
ガラスウェブを形成するステップと、
前記ガラスウェブから互いに反対側の第1及び第2主表面を有するガラスシートを分離するステップと、
前記ガラスシートを事前位置決めステーションに届けるステップと、
前記事前位置決めステーションを動作させ、液体を前記第1主表面に噴霧して前記ガラスシートを安定させるステップと、
前記安定させられたガラスシートを洗浄ステーションに届けるステップと、
前記ガラスシートを洗浄するステップと、
前記洗浄されたガラスシートを乾燥ステーションに届けるステップと、
前記ガラスシートを乾燥するステップと
を含み、
前記ガラスシートは1つの主要平面を画定し、前記ガラスシートを事前位置決めステーションに届ける前記ステップは、前記主要平面が概ね垂直になるように前記ガラスシートを方向付けするステップを含む、方法。
【符号の説明】
【0083】
20 ガラス製造システム
30 ガラスウェブ形成装置
32 分離装置
34 取扱装置
40 ガラスウェブ(ガラスリボン)
42 ガラスシート
50 事前位置決めステーション
52 洗浄ステーション
54 乾燥ステーション
56 搬送装置
60 第1主表面
62 第2主表面
64、66、68、70 縁
80 液体噴霧組立体
82 バー
84 孔
86 枠
90 作動装置
100 支持装置
102 床
104 駆動装置
110 気体流方向付け組立体
120 保持装置
122 軌道組立体
124 軌道
130 平鍋
132 制御装置
200 ハウジング
202 入口
204 第1液体分配器
206 第1液体ノズル
210 仕切り
212a 第1領域
212b 第2領域
214 排水路
216 通気孔
218 気体ナイフ
220 気体ノズル
222 第2液体分配器
224 第2液体ノズル
226 そらせ板
250 溶融容器
252 清澄容器
254 混合容器
256 送達容器
258 形成機
260 ドロー装置
262 ガラスリボン
266 溶けたガラス
268 下降管
270 入口
272 開口
274 槽
276 底縁
300 ガラス分離器
301 横方向分離路
303 レーザー使用分離装置
304 外側部分
306 中央部分
308 垂直分離路
310 第1横方向縁
312 第2横方向縁