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特許7187552分析デバイスおよびそれとともに使用するための分析装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】分析デバイスおよびそれとともに使用するための分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20221205BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
G01N1/28 W
G01N21/27 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020520857
(86)(22)【出願日】2018-06-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 IL2018050671
(87)【国際公開番号】W WO2018235073
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】253067
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】519454899
【氏名又は名称】ジンツールズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】レブ-サジー,メナケム
(72)【発明者】
【氏名】レブ,ニムロド
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-039457(JP,A)
【文献】特開平07-159309(JP,A)
【文献】特表2004-503223(JP,A)
【文献】特開昭61-184443(JP,A)
【文献】特表2016-531282(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0002834(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 - 1/44
G01N 35/00 - 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本の電磁放射線(EMR)検査を少なくとも1つの所定のEMRスペクトルにおいて可能にするための分析デバイスであって、
(a)ハウジング底面、前記ハウジング底面に対向するハウジング頂面、およびハウジング外周面を有する手持ち式ハウジングであって、
前記ハウジング外周面に前記ハウジング内への前記標本の導入を可能にするための標本導入口を有し、
前記ハウジング底面が、ハウジング底面パネルを有し、前記ハウジング頂面が、前記ハウジング底面パネルと位置合わせされたハウジング頂面パネルを有して、前記分析デバイスを通る検査線を画定し、
前記ハウジング底面パネルおよび前記ハウジング頂面パネルが、前記少なくとも1つの所定のEMRスペクトルに対して透明である、ハウジングと、
(b)少なくともいくらかの標本がその上に堆積される標本スライドパネルを有する標本スライドであって、
前記標本スライドパネルが、前記少なくとも1つの所定のEMRスペクトルに対して透明であり、かつ、前記検査線に沿って前記ハウジング頂面パネルおよび前記ハウジング底面パネルと相互に位置合わせされている、標本スライドと、を備え、
前記標本スライドは、初期最下標本導入位置において前記少なくともいくらかの標本が前記標本スライドパネル上に堆積された後で、前記ハウジング頂面から離れた前記初期最下標本導入位置から前記ハウジング頂面に隣接する最終最上標本検査位置まで前記ハウジングで摺動可能に上昇させられ、
前記標本スライドパネルが、前記最終最上標本検査位置において前記ハウジング頂面パネルに密接に並置されて、前記少なくともいくらかの標本を前記標本スライドパネルと前記ハウジング頂面パネルとの間で圧迫する、標本スライド上昇機構と、
を備える、分析デバイス。
【請求項2】
前記標本スライドが、前記標本のpH値に関する可視色表示を提供するためのpH化学的検出器を含む、請求項1に記載の分析デバイス。
【請求項3】
前記ハウジング底面が、前記標本スライドの前記最終最上標本検査位置への上昇に従って前記標本スライドから変位される液体残留物を吸収するために、吸湿性物質で覆われる、請求項1または2に記載の分析デバイス。
【請求項4】
前記ハウジング頂面が、前記初期最下標本導入位置において液体試薬を前記標本スライド上へ案内して前記標本スライドパネル上の前記少なくともいくらかの標本と反応させるための液体試薬ポートを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の分析デバイス。
【請求項5】
前記ハウジングが、前記初期最下標本導入位置における前記少なくともいくらかの標本と反応させるために液体試薬を前記標本スライド上へ圧送するための一体的な液体試薬圧送機構を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の分析デバイス。
【請求項6】
前記ハウジングが、前記初期最下標本導入位置では前記標本スライドの下に位置する少なくとも1つの手動操作標本スライド上昇アクチュエータを含み、前記少なくとも1つの手動操作標本スライド上昇アクチュエータが、前記初期最下標本導入位置に対応する初期セットアップ位置と、前記最終最上標本検査位置に対応する最終検査位置とを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の分析デバイス。
【請求項7】
前記ハウジングが、
前記初期最下標本導入位置では前記標本スライドの下に位置する前側手動操作標本スライド上昇アクチュエータであって、それぞれが少なくとも1つの傾斜上昇脚状部を含む前記ハウジング外周面内の前側の標本スライド上昇軌道の対向対に沿って摺動する、前側手動操作標本スライド上昇アクチュエータと、
前記初期最下標本導入位置では前記標本スライドの下に位置する後側手動操作標本スライド上昇アクチュエータであって、それぞれが少なくとも1つの傾斜上昇脚状部を含む前記ハウジング外周面内の後側の標本スライド上昇軌道の対向対に沿って摺動する、後側手動操作標本スライド上昇アクチュエータと、
を含み、
前記前側手動操作標本スライド上昇アクチュエータおよび後側手動操作標本スライド上昇アクチュエータが、初期セットアップ位置から最終検査位置までそれらの対応する標本スライド上昇軌道の対向対に沿って互いに向かって手動で変位されるように離間されており、前記初期セットアップ位置が、前記初期最下標本導入位置に対応し、前記最終検査位置が、前記最終最上標本検査位置に対応する、請求項6に記載の分析デバイス。
【請求項8】
前記ハウジングが、前記ハウジング外周面内のスロットであって、標本スライド上昇部材の前記ハウジング内への摺動挿入のために、前記初期最下標本導入位置において前記標本スライドの下に位置する、スロットを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の分析デバイス。
【請求項9】
請求項8に記載の分析デバイスとともに使用するための分析装置であって、前記分析デバイスに挿入するための前記標本スライド上昇部材を含む、分析装置。
【請求項10】
前記分析デバイスが、前記標本から臭気情報を得るための臭気センサを含む、請求項9に記載の分析装置。
【請求項11】
前記一体的な液体試薬圧送機構が、液体試薬を収容する試薬リザーバを含み、前記ハウジング頂面が、下向きに垂れ下がるプランジャを含み、前記標本スライドの上昇により前記プランジャが前記試薬リザーバ内へ進入させられて、液体試薬を前記試薬リザーバから前記標本スライドパネル上へ圧送する、
請求項に記載の分析デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析デバイスおよび分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分析は、1つまたは複数の標本(換言すれば、試料)の存在、量、または機能活動を定性的に評価または測定するための複数ステップ調査手順の一部である。分析は、事前および事後の分析的手順を含む。事前分析的ステップは、とりわけ、情報処理、標本取扱い、などを含む。事後分析的ステップは、とりわけ、報告の文書化、報告の伝達、などを含む。分析は、化学的標本、生物学的標本、有機的標本、および非有機的標本を調査するために用いられ得る。標本は、固体、液体、ゲル、などであり得る。調査は、とりわけ、1つまたは複数の所定のEMRスペクトル、特に可視スペクトル、IRスペクトル、UVスペクトル、などを含むEMRスペクトルにおける、電磁放射線(EMR)検査を含み得る。そのようなEMR検査は、とりわけ、肉眼目視検査、例えば顕微鏡などの光学装置を使用する光学的検査、および、画像処理目的のためのデジタル走査を含む。
【発明の概要】
【0003】
概して言えば、本発明は、とりわけ注射器、ピペット、標本サンプリングデバイス、などを含む手持ち式標本取扱いツールとともに使用するための分析デバイスを対象とする。標本取扱いツールは、サンプリングされる標本に応じて様々な形態を取り得る前標本サンプル収集端部を有する。適切な標本サンプリング収集端部は、とりわけ、ブラシ、スワブ、浅いボウル、針、などを含む。分析デバイスは、調査目的のために顕微鏡スライド上に設置された標本の上に設置するための従来のカバースリップの構成に相当するように設計される。
【0004】
分析デバイスは、標本スライドをハウジング頂面から離れた初期最下標本導入位置からハウジング頂面に隣接する最終最上標本検査位置まで上昇させるための標本スライド上昇機構を有するハウジングを含む。ハウジング頂面、標本スライド、およびハウジング頂面に対向するハウジング底面は、それぞれパネルを有し、パネルは相互に位置合わせされてそこを通る検査線(line of examination)を画定する。パネルは、少なくとも1つの所定のEMRスペクトルに対して透明である。ハウジング頂面パネルおよび標本スライドパネルは、それらの間に圧迫ゾーンを境界する。手持ち式標本取扱いツールは、標本スライドパネルの初期最下標本導入位置において標本スライドパネル上に標本を配置するために用いられる。標本スライド上昇機構は、標本スライドを上昇させ、その標本スライドパネルをハウジング頂面パネルに密接に並置させて、従来の顕微鏡スライドおよびカバースリップの構成に類似した態様で標本スライドパネルとハウジング頂面パネルとの間で標本を圧迫するために、配備される。手持ち式標本サンプリングデバイスは、標本スライドの上昇中に圧迫ゾーンから取り出される必要がある。
【0005】
次に、本発明を理解するため、また、本発明が実際にはどのようにして実施され得るかを知るために、類似部品が同じように番号付けされている添付の図面を参照しながら、単なる非限定的な例として好ましい実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】試料スライドが初期最下標本導入位置にあり、手持ち式標本取扱いツールが標本を有する、分析デバイスの第1の好ましい実施形態の正面斜視図である。
図2】標本スライドが標本の肉眼目視検査のための最終最上標本検査位置にある、図1の分析デバイスの正面斜視図である。
図3図1の分析デバイスの分解組立図である。
図4図1における線4-4に沿った、標本を標本スライドに載せた後の図1の分析デバイスの長手方向断面図である。
図5図2における線5-5に沿った、図1の分析デバイスの長手方向断面図である。
図6】標本スライドが初期最下標本導入位置にある、分析デバイスの第2の好ましい実施形態の正面斜視図である。
図7】標本スライドが標本のIR結像のための最終最上標本検査位置にある、図6の分析デバイスの正面斜視図である。
図8図6の分析デバイスの分解組立図である。
図9図6における線9-9に沿った、図6の分析デバイスの長手方向断面図である。
図10図7における線10-10に沿った、図6の分析デバイスの長手方向断面図である。
図11】標本スライドが初期最下標本導入位置にあり、事前配備された手持ち式引通し長尺スワブが標本を有する、分析デバイスの第3の好ましい実施形態の正面斜視図である。
図12図11の分析デバイスの分解組立図である。
図13図11の分析デバイスのハウジングの正面図である。
図14図11の分析デバイスの標本スライドの正面斜視図である。
図15】標本スライドが初期最下標本検査位置にある、図11の分析デバイスの部分的な分解組立図である。
図16】標本スライドが肉眼目視検査のための最終最上標本検査位置にある、図11の分析デバイスの正面斜視図である。
図17A図11における線17A-17Aに沿った、図11の分析デバイスの横断面図である。
図17B図11における線17B-17Bに沿った、標本スライドがその初期最下標本導入位置にある、図11の分析デバイスの部分破断図である。
図17C図16における線17C-17Cに沿った、図11の分析デバイスの横断面図である。
図17D図16における線17D-17Dに沿った、標本スライドがその最終最上標本検査位置にある、図11の分析デバイスの部分破断図である。
図18】分析装置とともに使用するための分析デバイスの第4の好ましい実施形態の正面斜視図である。
図19図18の分析装置の標本スライド上昇部材の詳細図である。
図20図19における線20-20に沿った、標本スライド上昇部材上に取り付けられた図18の分析デバイスの長手方向断面図である。
図21図18の分析デバイスが標本検査のために挿入された、分析装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1から図5は、浅いボウルの形態の標本収集先端部101が付いたスプーンの形態をなす手持ち式標本取扱いツール100とともに使用するための、分析デバイス10Aを示す。ボウル101は、標本Sを収容する。分析デバイス10Aは、その中に挿入された標本の検査のために、それを通る検査線11を利用可能にする。
【0008】
分析デバイス10Aは、ベース13およびカバー14を有する、2つの構成要素からなる円筒状のハウジング12を含む。ベース13は、ハウジング底面16およびハウジング外周面17を構成する。カバー14は、ハウジング底面16に対向するハウジング頂面18を構成する。ハウジング外周面17は、ハウジング12内への標本の導入を可能にするための標本導入口19を有して形成される。
【0009】
分析デバイス10Aは、初期最下標本導入位置では標本導入口19より下にある標本スライド21を含む(図1および図4参照)。検査線11を使用可能にするために、ハウジング底面16は透明なハウジング底面パネル22を、ハウジング頂面18は透明なハウジング頂面パネル23を、また、標本スライド21は透明な標本スライドパネル24を、相互に位置合わせされた形で有する。ハウジング頂面パネル23および標本スライドパネル24は、それらの間に圧迫(換言すれば、圧縮)ゾーンを画定する。パネル22、23、および24は、検査線11に沿って分析デバイス10Aを通過する肉眼検査のための可視スペクトルに対して透明である(換言すれば、透過性を有する)。標本は、分析デバイス10Aの下方の可視光源150から、さらに背面光を当てられ得る。
【0010】
分析デバイス10Aは、標本スライド21をハウジング頂面18から離れたその初期最下標本導入位置(図1および図4参照)からハウジング頂面18に隣接する最終最上標本検査位置(図2および図5参照)まで上昇させるための標本スライド上昇機構26を含む。標本スライド上昇機構26は、ハウジング外周面17内に形成された上昇軌道28の直径方向の対を貫通して延在する径方向外向きの標本スライド上昇部材27の直径方向の対を有する標本スライド21の形態をなす、手動で操作される標本スライド上昇メカニズムによって構成される。直径方向対の上昇軌道28は、それぞれ、ハウジング底面16に隣接した上昇軌道最下端部29から、ハウジング頂面18に隣接した上昇軌道最上端部31まで、螺旋を描く。上昇軌道28は、約4分の1巻きの長さであることが好ましい。
【0011】
上昇軌道最下端部29における標本スライド上昇部材27の直径方向対の配置は、初期最下標本導入位置に対応する。上昇軌道最上端部31における標本スライド上昇部材27の直径方向対の配置は、最終最上標本検査位置に対応する。標本スライド上昇機構26は、使用者がハウジング12に対する標本スライド21の回転運動を与えて標本スライド21をその初期最下標本導入位置からその最終最上標本検査位置まで上昇させることを可能にする。
【0012】
最終最上標本検査位置では、透明な標本スライドパネル24は、透明なハウジング頂面パネル23に対して密接に並置されて、それらの間で標本Sを圧迫する。標本の圧迫は、従来の顕微鏡スライド上でのカバースリップの配置と同様に、標本を薄く広げる。分析デバイス10Aは、様々な標本の様々な程度の圧迫を適用するように設計され得る。ハウジング底面16は、標本スライド21のその最終最上標本検査位置への上昇に従って標本スライド21から押し出される液体残留物を吸収するために、吸湿性物質32で覆われ得る。液体残留物は、標本残留物を含む可能性があり、また、標本上に液体試薬を分注して標本と反応させる場合には試薬残留物を含む可能性がある。標本スライド21は、標本スライドパネル24から吸湿性物質32への排液を促進するために、排液穴21Aの環状配置が設けられることが好ましい。
【0013】
分析デバイス10Aの使用法は、以下の通りである。使用者が、手持ち式標本取扱いツール100を使用して標本Sを収集する。使用者は、標本Sをハウジング12内に導入し、標本Sの少なくとも一部を標本スライドパネル24上に置く。使用者は、標本スライド21の上昇を妨げないように、標本取扱いツール100を圧迫ゾーンから引き抜く。使用者は、液体試薬を標本上に分注して標本と反応させるか標本を希釈するために、標本導入口19を通じて液体試薬分注器を任意選択で導入することができる。
【0014】
使用者は、標本Sをハウジング頂面パネル23に押し付けるために、片方の手でハウジング12をつかみ、もう片方の手を使用してハウジング12に対する標本スライド21の回転運動を与えて、標本スライド21をその初期最下標本導入位置からその最終最上標本検査位置まで上昇させる。使用者は、標本Sの目視検査のために、ハウジング頂面パネル23を通して標本Sを見ることができる。使用者は、標本Sに背面光を当てて目視検査を支援するための可視光照明源150上に分析デバイス10Aを設置することができる。あるいは、使用者は、標本Sの光学的検査のために、従来の顕微鏡スライドと同様の態様で、顕微鏡上に分析デバイス10Aを設置してもよい。
【0015】
図6から図10は、構造が分析デバイス10Aに似ておりしたがって類似部品が同じように番号付けされている、分析デバイス10Bを示す。分析デバイス10Bは、以下の3つの点で分析デバイス10Aとは異なる。第1に、標本スライド上昇機構26である。第2に、分析デバイス10Bは、標本のIR検査を対象とし、肉眼目視検査は対象としない。したがって、分析デバイス10Bは、肉眼に対して不透明であってもよい。そして第3に、分析デバイス10Bは、とりわけ正方形、長方形、楕円形、などを含む、様々な形状を有し得る。
【0016】
分析デバイス10Bは、標本スライド21の初期最下標本導入位置では標本スライド21の下方に配置される標本スライド上昇アクチュエータ33によって構成された標本スライド上昇機構26を有する。標本スライド上昇アクチュエータ33は、標本スライドの初期最下標本導入位置(図6および図9参照)と標本スライドの最終最上標本検査位置(図7および図10参照)に対応する最終検査位置とにそれぞれ対応する、初期セットアップ位置および最終検査位置を有する。使用者が、標本スライド上昇アクチュエータ33を、その初期セットアップ位置からその最終検査位置まで、4分の1の時計回りの回転Aにわたって回転させる。
【0017】
分析デバイス10Bの使用法は、使用者がハウジング12に対して標本スライド21を回転させるのではなく標本スライド上昇アクチュエータ33を回転させることを除いては、分析デバイス10Aに似ている。使用者は、分析デバイス10BをIR放射線源160とIR放射線検出器170との間に設置する。IR放射線検出器170は、IR放射線源160からのIR放射線を検出し、このIR放射線は、検査線11に沿って分析デバイス10Bおよびその標本を通過する。
【0018】
図11から図17は、構造が分析デバイス10Aに似ておりしたがって類似部品が同じように番号付けされている、分析デバイス10Cを示す。分析デバイス10Cは、引通し(pull through)スワブの形態をなす事前配備された手持ち式標本取扱いツール100を供給される。引通しスワブ100は、軸部102、前スワブ頭部103、および後持ち手104を含む。スワブ頭部103は、軸部102よりも大きい直径を有し、また、比較的小さな取外し力の印加に応じて軸部102から意図的に取り外せることが好ましい。そのような取外しは、スワブ頭部103との接触を避けることによる分析デバイス10Cの安全な取扱いを促進する。
【0019】
分析デバイス10Cは、長手方向分析デバイス中心線34と、主前面36と、主前面36に対向する主背面37と、前副端面38と、前副端面38に対向する後副端面39とを有する箱状のハウジング12を含む。前副端面38は前副端面ポート41を有して形成され、後副端面39は後副端面ポート42を有して形成される。前副端面ポート41は、スワブ頭部103が分析デバイス10C内に引き込まれ得るように、スワブ頭部103よりも大きい直径を有する。後副端面ポート42は、当接部材43の対を有して形成され、この当接部材43の対は、分析デバイス10Cを通してスワブ100を引っ張ることによりスワブ頭部103が当接部43の対に当接して軸部102から分離するように、スワブ頭部103よりも小さな開口部をそれらの間に画定する。スワブ100は、分析デバイス10Cにおける初期セットアップ位置を有し、この初期セットアップ位置では、スワブ100のスワブ頭部103は、前副端面38から離れており、スワブ100の持ち手104は、後副端面39に隣接している。スワブ頭部103は、典型的には、初期セットアップ位置において前副端面38から例えば15cm突出し得る。
【0020】
分析デバイス10Cは、前副端面38に隣接する前標本スライド上昇アクチュエータ44Aと後副端面39に隣接する後標本スライド上昇アクチュエータ44Bとによって構成される、標本スライド上昇機構26を含む。前標本スライド上昇アクチュエータ44Aは、ハウジング12にわたって横方向に延在し、かつ、手動作動目的のために、主前面36および主背面37内の標本スライド上昇軌道46Aの対向する対から突出する。標本スライド上昇軌道46Aは、それぞれ、下側傾斜上昇脚状部47Aと、ハウジング頂面18に隣接しかつその下側傾斜上昇脚状部47Aから後副端面39に向かって延在する上側水平固定脚状部48Aとを有する。後標本スライド上昇アクチュエータ44Bは、ハウジング12にわたって横方向に延在し、かつ、手動作動目的のために、主前面36および主背面37内の標本スライド上昇軌道46Bの対向する対から突出する。標本スライド上昇軌道46Bは、それぞれ、傾斜上昇脚状部47Bと、ハウジング頂面18に隣接しかつその下側傾斜上昇脚状部47Bから前副端面38に向かって延在する水平固定脚状部48Bとを有する。傾斜上昇脚状部47Aおよび傾斜上昇脚状部47Bは、標本スライド上昇アクチュエータ44Aおよび44Bが、ハウジング底面16に隣接する初期セットアップ位置と、ハウジング頂面18に向かう最終検査位置とを有するように、ハウジング底面16からハウジング頂面18に向かって互いに収束する(換言すれば、互いに近づく)。初期セットアップ位置は、初期最下標本導入位置に対応し、最終検査位置は、最終最上標本検査位置に対応する。
【0021】
分析デバイス10Cは、以下の通りの3つの個別の作業表面、すなわち、前副端面38に隣接する前作業表面51と、前副端面38と後副端面39との間の中ほどにある中央作業表面52と、後副端面39に隣接する後作業表面53とを有する、標本スライド21を含む。分析デバイス10Cは、軸部102を分析デバイス10Cから引き抜いてスワブ頭部103をハウジング12内に残すためにスワブ100がその初期セットアップ位置から分析デバイス10Cを通して引っ張られるときにスワブ端部103が作業表面51、52、および53上に標本を塗りつけるように、設計される。前作業表面51は、その上に塗りつけられた標本のpH値に関する可視色表示を提供するためのpH検出表面54を有する。前作業表面51は、分析デバイス10Cを通る互いに平行な検査線を利用可能にするために中央作業表面52および後作業表面53が必然的に透明であるのとは対照的に、必然的に透明でなくても構わない。透明なハウジング頂面パネル23は、3つの作業表面51、52、および53に沿って縦に延在するか、あるいは、それぞれが単一の作業表面を覆う個別のサブパネル23Aおよび23Bを有して形成され得る。
【0022】
分析デバイス10Cは、標本スライド21のその最終最上標本検査位置への上昇中に対応する数の標本サンプルと反応する1つまたは複数の液体試薬を圧送してするための、一体的な液体試薬圧送機構56を含む。液体試薬は、標本サンプルとの反応に応じて色を変えるか、別の識別可能な変化を経験し得る。液体試薬圧送機構56は、液体試薬Xを収容する中央試薬リザーバ57と、中央液体試薬リザーバ57に挿入されて液体試薬Xをそこから中央作業表面52上の標本の上へ圧送するための中央プランジャ58とを含む。中央液体試薬リザーバ57は、典型的には、例えば生理食塩水を収容する。液体試薬圧送機構56は、液体試薬Yを収容する後液体試薬リザーバ59と、後液体試薬リザーバ59に挿入されて液体試薬Yをそこから後作業表面53上の標本の上へ圧送するための後プランジャ61とを含む。後液体試薬リザーバ59は、例えば水酸化カリウムを収容する。中央液体試薬リザーバ57および後液体試薬リザーバ59は、標本スライド21上に形成される。中央プランジャ58および後プランジャ61は、ハウジング頂面18からハウジング底面16に向かう方向に下向きに垂れ下がっている。
【0023】
中央プランジャ58は、標本スライド21がその初期最下標本導入位置からその最終最上標本検査位置へ移動されるときに液体試薬Xを中央液体試薬リザーバ57から中央作業表面52上へ圧送するための中央プランジャ溝58Aを備える。同様に、後プランジャ61は、標本スライド21がその初期最下標本導入位置からその最終最上標本検査位置へ移動されるときに液体試薬Yを後液体試薬リザーバ59から後作業表面53上へ圧送するための後プランジャ溝61Aを同様に備える。
【0024】
図17Aは、液体試薬Xで満たされた中央液体試薬リザーバ57と、そのセットアップ位置にある中央プランジャ58とを示す。図17Bは、液体試薬Yで満たされた後液体試薬リザーバ59と、そのセットアップ位置にある後プランジャ61とを示す。図17Cは、標本スライド21のその初期最下標本導入位置からその最終最上標本検査位置への上昇が、中央プランジャ58を中央液体試薬リザーバ57内へ進入させられて(換言すれば、押し込まれて)、中央プランジャ溝58Aを介して液体試薬Xを中央作業表面52上の標本上に分注させることを示す。同様に、図17Dは、後プランジャ溝61Aを介して液体試薬Yを後作業表面53上の標本上に分注するために後液体試薬リザーバ59内へ進入させられている後プランジャ61を示す。
【0025】
分析デバイス10Cの使用法は、分析デバイス10Aに似ている。使用者が、スワブ頭部103上に標本を収集し、前作業表面51、中央作業表面52、および後作業表面53上に標本を塗りつける前にスワブ頭部103が前副端面ポート41を通過するように、分析デバイス10Cを通してスワブ100を引っ張る。使用者は、スワブ頭部103が当接部材43に当接して軸部102から分離するように、持ち手104を引っ張り続ける。
【0026】
pH検出表面54は、標本のpHに従って色を変え、かつ、ハウジング頂面パネル23を通して目に見える。使用者は、一方の手でハウジング12を保持し、もう一方の手の人差し指と親指を使用して、標本スライド上昇アクチュエータ44Aと標本スライド上昇アクチュエータ44Bとを互いに向かって変位させる。そのような変位は、最初に、中央液体試薬リザーバ57および後液体試薬リザーバ59から液体試薬を中央作業表面52および後作業表面53上へ相応に圧送して、それらの作業表面上に塗りつけられた標本と反応させる。そのような変位は、標本スライドパネル24がハウジング頂面パネル23に接して並置された状態で終了する。余分の液体試薬および標本は、中央作業表面52および後作業表面53からハウジング底面16を覆っている吸湿性物質32上へ排出される。使用者は、中央作業表面52および後作業表面53上の反応した標本を、分析デバイス10Cを通るそれらの対応する検査線11に沿って視覚的に検査することができる。あるいは、反応した標本は、非可視EMRスペクトルなどの下で検査され得る。
【0027】
図18から図21は、構造が分析デバイス10Cに似ておりしたがって類似部品が同じように番号付けされている、分析デバイス10Dを示す。分析デバイス10Dもまた、長尺引通しスワブの形態をなす事前配備された手持ち式標本取扱いツール100を供給される。分析デバイス10Dは、デジタル顕微鏡などの形態をなす分析装置200とともに使用されることが意図されている。適切なデジタル顕微鏡は、とりわけ、Leica DVM6などを含む。分析装置200は、標本を検査するための組込み診断機能を有する独立型デバイスであってもよい。あるいは、分析装置200は、標本から取得された画像および他の情報を遠隔処理のために送信してもよい。
【0028】
分析装置200は、分析装置ハウジング201および往復式分析デバイストレイ202を含む。分析装置200は、分析デバイストレイ202が分析デバイスアクセス位置(図18参照)および分析デバイス検査位置(図21参照)を有する限り、ディスクドライブを有するパーソナルコンピュータと同様に動作することが好ましい。分析デバイストレイ202は、分析デバイス検査位置よりも分析デバイスアクセス位置において、分析装置ハウジング201からさらに突出する。分析デバイストレイ202は、分析デバイスアクセス位置での分析デバイストレイ202上への分析デバイス10Dの配置、およびそこからの除去を可能にする。分析デバイストレイ202は、標本検査目的のために分析装置ハウジング201に挿入される。分析デバイストレイ202は、分析デバイス10Dに挿入されてその標本スライド21をその初期最下標本導入位置からその最終最上標本検査位置まで上昇させるための標本スライド上昇部材203を含む。標本スライド上昇部材203は、分析デバイス10Dを通る検査線11を妨害しない離間された標本スライド上昇突起204を有する分岐した形状であることが好ましい。標本スライド上昇部材203は、適合する分析デバイス複数ピンコネクタへの接続のための複数ピンコネクタ206を含むことが好ましい。
【0029】
分析デバイス10Dは、以下のような3つの点で分析デバイス10Cとは異なる。第1に、分析デバイス10Dは、手動で操作される標本スライド上昇機構を含まない。標本スライド上昇部材203を含む分析装置200とともに使用するための一代替形態として、別個の標本スライド上昇部材203が分析デバイス10Dに挿入されて、その標本スライド21をその初期最下標本導入位置からその最終最上標本検査位置まで上昇させ得る。第2に、分析デバイス10Dは、液体試薬圧送機構の代わりに、液体試薬の手作業での導入を必要とする。そして第3に、分析デバイス10Dは、標本から臭気情報を得るために、市販されているいわゆる電気化学的嗅覚器(electrochemcal nose)を含む。そのような電気化学的嗅覚器は、e-ノーズおよびマイクロノーズとしても知られている。市販されている電気化学的嗅覚器は、とりわけFigaro TGS8100などを含む。
【0030】
前副端面38は、前副端面38の幅にわたって離間されかつ標本スライド21の初期最下標本導入位置において標本スライド21より下に位置するスロット対62を有して形成される。スロット対62は、その中に標本スライド上昇部材203を摺動可能に受け入れるように意図されている。ハウジング12は、その中への標本スライド上昇部材203の摺動挿入に応じて標本スライド21をその初期最下標本導入位置からその最終最上標本検査位置まで案内するための標本スライド案内軌道63を有して形成される。
【0031】
分析デバイス10Dは、中央作業表面52および後作業表面53上の標本と反応する2つの液体試薬を導入するための2つの液体試薬ポート64および66を有するハウジング頂面18を含む。
【0032】
分析デバイス10Dは、標本Sから臭気情報を得るための電気化学的嗅覚器70と、複数ピンコネクタ206への適合する複数ピンコネクタ71とを含む。複数ピンコネクタ206および71は、電気化学的嗅覚器70に電力を供給するための電力線と、標本Sに関する臭気情報のためのデータ線とを含み得る。
【0033】
分析デバイス10Dの使用法は、中央作業表面52および後作業表面53上の標本に手動で液体試薬を加えることが使用者に求められることを除けば、分析デバイス10Cと同じである。また、使用者は、標本スライド上昇アクチュエータ44を作動させるのとは対照的に、分析デバイス10Dを分析デバイストレイ202上に取り付けて、その中への標本スライド上昇部材203の正しい挿入を確実にすることが求められる。分析トレイ202を分析装置ハウジング201内に引き込むように分析装置200を操作すると、分析装置200は、中央作業表面52および後作業表面53上の反応した標本を、分析デバイス10Dを通るそれらの対応する検査線11に沿って検査する。また、分析装置200は、pH検出表面54から標本のpH値を検出する。
【0034】
本発明は限られた数の実施形態に関して説明されたが、添付の特許請求の範囲に記載の範囲内で本発明の多くの変形形態、修正形態、および他の適用がなされ得ることが、理解されるであろう。
図1
図2
図3
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図5
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図8
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図10
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図17A
図17B
図17C
図17D
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