(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】車両排気からの二酸化炭素の液体燃料および燃料添加剤への変換
(51)【国際特許分類】
C10L 1/02 20060101AFI20221205BHJP
C07C 31/04 20060101ALN20221205BHJP
C07C 29/151 20060101ALN20221205BHJP
C07C 43/04 20060101ALN20221205BHJP
C07C 41/01 20060101ALN20221205BHJP
B01J 31/22 20060101ALN20221205BHJP
B01J 31/02 20060101ALN20221205BHJP
【FI】
C10L1/02
C07C31/04
C07C29/151
C07C43/04 D
C07C41/01
B01J31/22 M ZAB
B01J31/02 102Z
(21)【出願番号】P 2020527829
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(86)【国際出願番号】 US2018061406
(87)【国際公開番号】W WO2019108410
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-11-16
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ハマド,エサム ズィー
(72)【発明者】
【氏名】バケル,フセイン エー
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-523046(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0289227(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0244208(US,A1)
【文献】特表2010-533784(JP,A)
【文献】特開平03-200734(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0347695(US,A1)
【文献】米国特許第8413420(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/02
C07C 31/04
C07C 29/151
C07C 43/04
C07C 41/01
B01J 31/22
B01J 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤へ
現場変換するためのシステムであって、
燃料補給所に設置された二酸化炭素収集システムと、
外部電源と、
電解槽と、
二酸化炭素変換システムと、
液体燃料混合システムと、
を含み、
前記二酸化炭素収集システムが、車両に搭載された車載二酸化炭素捕捉システムと連動して、車両排気から捕捉したCO
2を前記二酸化炭素収集システムの容器に移送し、
前記外部電源が、前記二酸化炭素変換システムおよび前記電解槽の動作に必要なエネルギーを提供し、
前記電解槽が、水供給を水素と酸素とに分離して、水素供給および酸素供給を発生させて、
前記二酸化炭素変換システムが、前記車両排気から前記二酸化炭素収集システムに移送された前記CO
2と、前記電解槽からの前記水素供給の、200℃以下の温度での、前記CO
2および前記水素供給からなる供給の電気化学的直接還元による有用な液体燃料および燃料添加剤への
現場変換を促進するように作られた
金属大員環を含む1つ以上の触媒を含み、前記液体燃料および燃料添加剤が、ジメチルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレン、およびメタンから選択され、
前記液体燃料混合システムが、前記二酸化炭素変換システムによって生成された前記液体燃料および燃料添加剤を様々な比率で組み合わせるか、または前記二酸化炭素変換システムによって生成された前記液体燃料および燃料添加剤のうちの1つ以上
を、ディーゼル燃料、ガソリン、またはその両方と様々な比率で組み合わせる
ように配置および構成された1つ以上の混合ユニットを含
み、
前記二酸化炭素収集システムは、圧縮CO
2
貯蔵のためのCO
2
貯蔵容器を含み、前記CO
2
貯蔵容器内の圧力は、CO
2
がその液体状態を維持するように、周囲温度で100~300バールの範囲である、システム。
【請求項2】
前記システムが、元の燃料、前記二酸化炭素変換システムによって発生した液体燃料および燃料添加剤、または両方の混合物を酸化させ、より高いオクタン価またはより高いセタン価を有する生成物にするように構成された酸化反応器をさらに含
み、
前記元の燃料は、外部から前記酸化反応器に供給される燃料であって、前記二酸化炭素変換システムの生成物ではない燃料である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムがディーゼル燃料貯槽を含み、前記液体燃料混合システムが、前記二酸化炭素変換システムの1つ以上の生成物を、該ディーゼル燃料貯槽からのディーゼル燃料と混合して、高セタン価ディーゼルを生成するように作られている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記システムがガソリン貯槽を含み、前記液体燃料混合システムが、前記二酸化炭素変換システムの1つ以上の生成物を、該ガソリン貯槽からのガソリンと混合して、高オクタン価ガソリンを生成するように作られている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記1つ以上の触媒が、前記二酸化炭素変換システム内でジメチルエーテルおよびメタノール生成するように作られており、前記液体燃料混合システムが、
前記二酸化炭素変換システムからの該ジメチルエーテルと該メタノールとを混合して、中間オクタン価液体燃料を形成するように作られている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記外部電源が非化石エネルギーを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記外部電源が、現場風力発電機、現場太陽光発電アレイ、または現場水力発電機のうちの1つ以上を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記酸化反応器が、前記電解槽で発生した前記酸素供給を酸化剤として利用して、前記元の燃料、前記二酸化炭素変換システムによって発生した前記液体燃料および前記燃料添加剤、または前記両方の混合物を酸化させ、より高いオクタン価またはより高いセタン価を有する生成物にする
よう構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
前記酸化反応器内の燃料の酸化によって放出される熱エネルギーが、前記外部電源のエネルギー需要を低減するために利用される
よう構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記熱エネルギーが、代替の補助熱の必要性を低減または排除するため、開始のための熱を必要とする反応でのCO
2の化学変換のために、前記二酸化炭素変換システムで直接利用される
よう構成されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記熱エネルギーが、前記外部電源を増強する電力を発生する発電機を動作させるために間接的に利用される
よう構成されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記金属大員環が、Ni(I)およびNi(II)大員環、Co(I)テトラアザ大員環、Pd錯体、Ru(II)錯体、およびCu(II)錯体から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記1つ以上の触媒が、N-ヒドロキシフタルイミドを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記1つ以上の触媒が、N-ヒドロキシフタルイミドおよびコバルトを含む2つの触媒系である、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2017年12月1日に出願された米国出願第15/828,887号の優先権を主張し、その開示全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示の実施形態は、概して、二酸化炭素変換システムに関し、より具体的には、車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤へ現場変換するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
世界中の道路上および工場内を走行する車両は、それらの推進システムからの排気の一部として二酸化炭素を発生する。二酸化炭素は一般に、例えば、ガソリン、ディーゼル、または天然ガスを利用する内燃機関での炭化水素の燃焼からの廃棄物として形成される。温室効果ガスと考えられる二酸化炭素が大気中に持続的に放出されることが、科学者によって地球の気温上昇に寄与する要因と考えられている。車両の排気から二酸化炭素を捕捉し、代替形態でそれを隔離する能力は、環境への二酸化炭素の放出を減らすために望ましいと考えられている。
【0004】
二酸化炭素の捕捉および変換は、二酸化炭素は安定した化学物質であり、変換のエネルギー強度が高いため、困難なプロセスである。現在、二酸化炭素変換プロセスで使用されるエネルギーは、化石燃料に由来する。捕捉した二酸化炭素を変換するために化石燃料を利用することは、炭素捕捉プロセスの本来の目的にとって逆効果である。具体的には、二酸化炭素を発生させる化石燃料を燃焼して、捕捉した二酸化炭素を変換しても、変換プロセスの非効率性および二酸化炭素を最初に捕捉するために必要なエネルギーのため、環境に排出される二酸化炭素の正味の削減にはならない。
【0005】
したがって、二酸化炭素変換プロセスが環境に優しく、直ちに利用できる十分な熱効率を備えた燃料を生成する、効率的な炭素の捕捉および利用に対する継続的なニーズが存在する。
【発明の概要】
【0006】
本開示の実施形態は、車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤に現場変換するためのシステムを対象とする。車両排気から捕捉され、排出車両に保存された二酸化炭素は、燃料補給所に送達され、そこで、メタノールなどのオクタン価を向上させ、かつジメチルエーテルなどのセタン価を向上させるような様々な燃料ブレンドに変換できる。システムにより、複数のCO2変換ユニットを使用して、収集したCO2を1種類のみの燃料ブレンドまたは複数のブレンドに変換できる。作製された燃料は、必要に応じて、様々な車両タイプの最適な使用および構成のために混合することもできる。CO2の変換は、車両の給油と同じ場所で完了するため、システムは、変換のために捕捉したCO2を燃料補給所から輸送する必要性を排除し、車載二酸化炭素捕捉のためのインフラ需要を最小限に抑える。
【0007】
一実施形態によれば、車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤へ現場変換するためのシステムが提供される。このシステムは、二酸化炭素収集システム、外部電源、電解槽、および二酸化炭素変換システムを含む。二酸化炭素収集システムは、車両に搭載された車載二酸化炭素捕捉システムと連動して、車両排気から捕捉したCO2を二酸化炭素収集システムの容器に移送する。外部電源は、二酸化炭素変換システムおよび電解槽の動作に必要なエネルギーを提供する。電解槽は、水供給を水素と酸素とに分離して、水素供給および酸素供給を発生させる。二酸化炭素変換システムは、車両の排気から収集され、二酸化炭素収集システムに送達されたCO2と、電解槽からの水素供給とを電気化学的還元により有用な液体燃料および燃料添加剤に変換する。
【0008】
さらなる実施形態では、車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤に現場変換するための、さらなるシステムが提供される。このシステムは、二酸化炭素収集システム、外部電源、二酸化炭素変換システム、および液体燃料混合システムを含む。二酸化炭素収集システムは、車両に搭載された車載二酸化炭素捕捉システムと連動して、車両排気から捕捉したCO2を二酸化炭素収集システムの容器に移送する。外部電源は、二酸化炭素変換システムの動作に必要なエネルギーを提供する。二酸化炭素変換システムは、車両の排気から収集され、二酸化炭素収集に送達されたCO2を電気化学的還元により有用な液体燃料および燃料添加剤に変換する。液体燃料混合システムであって、二酸化炭素変換システムによって生成された液体燃料および燃料添加剤を様々な比率で組み合わせるか、または二酸化炭素変換システムによって生成された液体燃料および燃料添加剤のうちの1つ以上と、1つ以上の従来の化石燃料とを様々な比率で組み合わせた1つ以上の混合ユニットを含む、システム。
【0009】
本明細書に記載の実施形態の付加的な特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載され、その説明から当業者には部分的に容易に明らかであるか、または特許請求の範囲、ならびに添付の図面に従う詳細な説明を含む本明細書に記載の実施形態の実施により認識されるであろう。
【0010】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することが意図されることを理解されたい。添付の図面は、様々な実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本明細書で説明される様々な実施形態を例示し、説明とともに、特許請求される主題の原理および動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の1つ以上の実施形態に従って、車両排気からの二酸化炭素を液体燃料に現場変換するためのシステムのフローチャートである。
【
図2】本開示の1つ以上の実施形態に従って、車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤へ現場変換するためのシステムのフローチャートである。
【
図3】本開示の1つ以上の実施形態に従って、酸化反応器を用いて、車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤へ現場変換するためのシステムのフローチャートである。
【
図4】トルエンからセタン価増強添加剤およびオクタン価増強添加剤を形成する一連の酸化化学反応の例を示す反応スキームである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、本開示の車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤に現場変換するためのシステムの実施形態が詳細に参照される。
図1、2、および3の車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤に現場変換するためのシステムが、例示として提供されているが、本システムが他の構成を包含することを理解されたい。
【0013】
車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤に現場変換するためのシステムは、車両から捕捉した圧縮CO2を、捕捉したCO2の収集場所および燃料補給所で、燃料および混合成分に現場で変換することを目的とする。車両排気からの二酸化炭素を、液体燃料および燃料添加剤へ現場変換するためのシステムで処理された二酸化炭素が、車載発生源から捕捉され、車載発生源のカーボンフットプリントを削減し、次に利用もされ、高価値の液体燃料に変換される相乗効果が提供される。車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤に現場変換するためのシステムは、太陽および風などの非化石源からエネルギーを取得し、収集したエネルギーを高エネルギー液体燃料の形で保存できる。車載収集を介して車両から二酸化炭素を収集し、燃料補給所で二酸化炭素を液体燃料に変換することにより、車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤に現場変換するためのシステムは、捕捉した二酸化炭素を変換プラントへ二次的に輸送する必要性を排除する。二酸化炭素は、車両が、同じ場所で発生した液体燃料を燃料タンクに充填すると同時に、車両から送達される。
【0014】
図1を参照すると、車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤へ現場変換するためのシステムは、二酸化炭素収集システム10、外部電源20、電解槽30、および二酸化炭素変換システム40を含む。車載二酸化炭素捕捉システムは、車両の排気流から車両に搭載されたCO
2を捕捉し、それを燃料補給所および二酸化炭素収集システム10に送達する。車載二酸化炭素捕捉システムで捕捉したCO
2は、車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤に現場変換するためのシステムで利用するために、二酸化炭素収集システム10に送達される。外部電源20は、二酸化炭素変換システム40および電解槽30の動作に必要なエネルギーを提供する。電解槽30は、水供給36の水を、電解槽30でその構成部分の水素および水に分解して、二酸化炭素変換システム40に水素供給32を提供する。二酸化炭素収集システム10からの圧縮CO
2、電解槽30からの水素供給32、および外部電源20からのエネルギーを利用して、二酸化炭素変換システム40は、様々な異なる車両およびエンジン形式で使用できる有用な燃料を発生させる。
【0015】
燃料補給所で車両に燃料を補給しながらそれを降ろし、具体的には同時にまたは順次燃料を補給し、CO2を降ろしてから、より大きな集中型変換プラントにそれを輸送するか、またはエリアがそのような技術に適合することができる場合、燃料補給所でそれを変換することにより、CO2が変換され得る。燃料補給所でCO2を変換すると、輸送コストおよび燃料を変換プラントへ輸送するために燃やされた燃料から生じる排出物が削減される。
【0016】
車載二酸化炭素捕捉システムは、車両の排気流からCO2を捕捉するように構成された車両の排気システムに取り付けられた、またはそれと統合された任意のシステムであり得る。車両に搭載されたCO2捕捉、収集、および貯蔵のための特定の構成および機構は、本開示の範囲外である。車載二酸化炭素捕捉システムの非限定的な例は、2015年11月3日に発行された米国特許第9,175,591号に記載されており、a Process and System Employing Phase-Changing Absorbents and Magnetically Responsive Sorbent Particles for On-Board Recovery of Carbon Dioxide from Mobile Sourcesを対象とし、その内容は、参照により組み込まれる。さらに、車載二酸化炭素捕捉システムの非限定的な例は、2015年11月10日に発行された米国特許第9,180,401号に記載されており、a Liquid, Slurry and Flowable Powder Adsorption/Absorption Method and System Utilizing Waste Heat for On-Board Recovery and Storage of CO2 from Motor Vehicle Internal Combustion Engine Exhaust Gasesを対象とし、その内容は、参照により組み込まれる。
【0017】
1つ以上の実施形態では、二酸化炭素収集システム10は、車載二酸化炭素捕捉システムと連動して、車両排気から捕捉したCO2を二酸化炭素収集システム10内の容器に移送する。インターフェースは、当業者に既知の任意の移送機構および構成であり得る。例えば、CO2は、二酸化炭素収集システム10および車載二酸化炭素捕捉システムの貯槽のポートに接続した加圧ホースを介して移送され得る。車載二酸化炭素捕捉システムの貯槽から二酸化炭素収集システム10にCO2を降ろすための移送機構は、両方のシステムが圧縮ガスの移送用に構成されているため、圧縮天然ガス(CNG)エンジン車両に天然ガスを充填するために利用されるものと同じまたは同様であり得る。さらに、CNGエンジン車両に天然ガスを充填するために利用される安全対策は、二酸化炭素収集システム10と車載二酸化炭素捕捉システムの貯槽との間の移送においても実施され得る。
【0018】
一つ以上の実施形態では、二酸化炭素収集システム10は、圧縮CO2の貯蔵のためのCO2貯蔵容器を含む。CO2貯蔵容器は、燃料補給所、実際のCO2変換プラント、または各場所で少なくとも1つのCO2貯蔵容器に配置され得る。CO2貯蔵容器は、二酸化炭素変換システム40の要求および車載二酸化炭素捕捉システムによって堆積したCO2の体積に従ってサイズ設定されてもよいことが理解されよう。CO2は、高圧でCO2貯蔵容器に保持され得る。様々な実施形態では、CO2貯蔵容器内の圧力が、液状でCO2保持するのに十分に高い。CO2は、72°F(22.2℃)にて、約860ポンド/平方インチ(psi)または58.5気圧(atm)で液状になる。CO2を確保するために、その液体状態を維持する。様々な実施形態では、CO2貯蔵容器内の圧力は、周囲温度で100~300バールの範囲であり得る。
【0019】
1つ以上の実施形態では、外部電源20は、二酸化炭素変換システム40および電解槽30の動作に必要なエネルギーを提供する。外部電源20は、車載二酸化炭素捕捉システムで収集され、二酸化炭素収集システム10に送達されたCO2を液体燃料および燃料添加剤に変換するのに電力を供給するエネルギーを提供する。1つ以上の実施形態では、外部電源20は、二酸化炭素変換システム40、電解槽30、またはその両方に電力を提供する非化石エネルギーを含む。1つ以上の実施形態で使用される非化石エネルギーの例には、現場風力発電機からの風力、現場太陽光発電アレイからの太陽光発電、または現場水力発電機からの水力発電が含まれる。
【0020】
1つ以上の実施形態では、電解槽30は、水供給を水素と酸素とに分離して、電解プロセスを通じて水素供給32および酸素供給34を発生させる。具体的には、水の電気分解とは、電流が水を通過する結果として、水を酸素および水素ガスに分解することである。実際には、電解槽30において、外部電源20からのDC電流は、水中に配置された2つの電極、または2つのプレートに接続される。電極またはプレートは、典型的には、プラチナ、ステンレス鋼またはイリジウムなどの不活性金属から製造される。水素は、電子が水に入ったカソード電極またはプレートに現れ、酸素は、アノード電極またはプレートに現れる。理想的なファラデー効率を仮定すると、発生する水素の量は酸素の量の2倍であり、どちらも溶液によって伝導される総電荷に比例する。水素供給32は、CO2を有用な液体燃料および燃料添加剤に変換する際に利用するために、二酸化炭素変換システム40に提供される。
【0021】
純水での負帯電カソードでは、カソードからの電子(e-)を水素カチオンに供与して、水素ガスを生成する還元反応が起こる。カソードでの半反応は、反応(1)に従う。
2H+(aq)+2e-→H2(g) (1)
同様に、正帯電アノードで酸化反応が起こり、酸素ガスを発生させ、アノードに電子を供与して、反応(2)に従って回路を完成させる。
2H2O(l)→O2(g)+4H+(aq)+4e- (2)
2つの半反応を組み合わせた場合の全体的な反応により、反応(3)に従って2分子毎の水(H2O)から2分子の水素ガス(H2)および1分子の酸素ガス(O2)が生成される。
2H2O(l)→2H2(g)+O2(g) (3)
水素および水への水の電気分解反応の標準電位は-1.23Vであり、水を分解するために、理想的には1.23ボルトの電位差を必要とすることを意味する。しかし、純水の電気分解は、様々な活性化障壁を克服するために、過電圧の形で過剰なエネルギーを必要とする。過剰なエネルギーがなければ、水の自己イオン化が制限されるため、純水の電気分解は非常にゆっくりと起こるか、またはまったく起こらない。電解槽30の効率は、塩、酸または塩基などの電解質の添加、および電極触媒の使用によって増加され得る。
【0022】
二酸化炭素変換システム40は、車両の排気から収集され、二酸化炭素収集システム10に送達されたCO2を、有用な液体燃料および燃料添加剤42に実際に変換する。二酸化炭素変換システム40は、CO2を当業者に既知の液体燃料または燃料添加剤42への任意の既知の化学変換に従って動作する。1つ以上の実施形態では、CO2は、2ステッププロセスで燃料および燃料添加剤42に変換される。具体的には、水素は、第1のステップで電解槽30での電解によって水から生成され、次に、H2を二酸化炭素変換システム40への供給として使用して、第2のステップでCO2から燃料42を生成する。H2およびCO2を有用な燃料42に変換するためのシステムおよびプロセスは、当業者に既知である。H2およびCO2を有用な燃料42に変換するための任意の既知のプロセスを、本開示の車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤に現場変換するためのシステムで利用し得る。
【0023】
二酸化炭素変換システム40は、触媒を利用して、液体燃料および燃料添加剤42へのCO2の電気化学的還元を促進することができる。様々な実施形態では、CO2電気化学的還元に使用される触媒には、Ni(I)およびNi(II)大員環、Co(I)テトラアザ大員環、Pd錯体、Ru(II)錯体、およびCu(II)錯体などの金属大員環が含まれる。有機過酸化物を生成するために、N-ヒドロキシフタルイミドなどの触媒を利用することができる。アルコールまたはアルデヒドを生成するために、N-ヒドロキシフタルイミドおよびコバルトまたは類似の金属などの2つの触媒系を利用することができる。
【0024】
CO
2の電気化学的還元により、様々な生成物を生成し得る。一部の生成物は自発的に発生し、他の生成物は、反応を促進するために追加のエネルギーの投入を必要とする。一般原則として、ギブスの自由エネルギー(ΔG
0)は、反応が一定の温度および圧力で自発的に生じるためには、負でなければならない。同様に、標準電位(E
0)は、反応が一定の温度および圧力で自発的に生じるためには、正でなければならない。自発的に生じる唯一のCO
2の反応は、金属炭酸塩を形成する金属酸化物または金属水酸化物との反応、および過酸化物などの高エネルギー分子との一部の反応である。表1は、CO
2の様々な電気化学的還元のギブスの自由エネルギーおよび標準電位を提供する。非自発的反応では、反応物質と比較して生成物のギブスエネルギーを増加させるためにエネルギーの投入が必要である。
【表1】
【0025】
さらなる実施形態では、CO2はまた、水およびCO2が直接使用される単一ステッププロセスにおいて、液体燃料42に変換され得る。すなわち、電解槽30は、車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤へ現場変換するためのシステムから省略され、水およびCO2は、二酸化炭素変換システム40に直接供給される。例えば、銅ナノ粒子/nドープグラフェン電極を使用したCO2のエタノールへの電気化学的変換は、単一ステッププロセスで変換を完了する。このような単一ステッププロセスは、Yang Songら、“High-Selectivity Electrochemical Conversion of CO2 to Ethanol using a Copper Nanoparticle/N-Doped Graphene Electrode” ChemistrySelect 2016、1、1~8に詳細に記載されており、その全体が参照により組み込まれる。このプロセスでは、CO2および水が、エタノールを直接生成するために電気化学反応が行われる燃料電池の反応物質として使用される。
【0026】
二酸化炭素変換システム40は、H
2およびCO
2または水およびCO
2を有用な燃料および燃料添加剤42に変換する。様々な燃料42は、直接燃料として、ならびに従来の燃料と混合するためのオクタン価またはセタン価向上剤の両方として使用して形成され得る。リサーチオクタン価(RON)は、燃料の自己発火抵抗を測定するために使用され、内燃機関の重要な仕様である。表2は、形成された様々な液体燃料の特性、および高レベルの合成手順および使用を示す。
【表2】
【0027】
収集されたCO2からどの特定の液体燃料および燃料添加剤42が形成されるかは、燃料補給所レベルで決定され得る。例えば、ジメチルエーテル、メタノール、またはその両方を生成する選択肢は、CO2を収集し、液体燃料および燃料添加剤42を発生させる燃料貯蔵庫で行われ得る。所与の触媒は、一般に、二酸化炭素変換システム40で生成することができるすべての潜在的な液体燃料および燃料添加剤から単一の種を生成する。1つ以上の実施形態では、車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤へ現場変換するためのシステムは、単一の燃料または燃料添加剤42を生成できる単一の触媒を有する単一の二酸化炭素変換システム40を含み得る。さらなる実施形態では、車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤へ現場変換するためのシステムは、それぞれが単一の燃料または燃料添加剤42を生成することができる単一の触媒を有する複数の二酸化炭素変換システム40を含み得、複数の液体燃料および燃料添加剤を同時に生成することができる。単一の二酸化炭素変換システム40はまた、燃料補給所で利用可能な現在の需要および供給に基づいて、異なる液体燃料および燃料添加剤42a/42bを発生させるように選択可能な複数の触媒を含み得ると理解されよう。
【0028】
図2を参照すると、1つ以上の実施形態では、車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤へ現場変換するためのシステムは、液体燃料混合システム50をさらに含む。液体燃料混合システム50は、二酸化炭素変換システム40の生成物を様々な比率で組み合わせるか、または二酸化炭素変換システム40の生成物のうちの1つ以上を、様々な比率で1つ以上の従来の化石燃料と組み合わせる1つ以上の混合ユニット52を含む。二酸化炭素変換システム40の生成物は、液体燃料および燃料添加剤42である。例えば、1つ以上の実施形態では、二酸化炭素変換システム40の1つ以上の生成物を、ディーゼル燃料貯槽60からのディーゼル燃料と混合して、高セタン価ディーゼル54を生成する。具体的には、二酸化炭素変換システム40からのジメチルエーテルをディーゼル燃料と混合して、高セタン価ディーゼル54を生成することができる。さらに、1つ以上の実施形態では、二酸化炭素変換システム40の1つ以上の生成物は、ガソリン貯槽70からのガソリンと混合されて、高オクタン価ガソリン56を生成する。具体的には、二酸化炭素変換システム40からのメタノールをガソリンと混合して、高オクタン価ガソリン56を生成することができる。中間オクタン価液体燃料58はまた、二酸化炭素変換システム40からのジメチルエーテルとメタノールとを様々な比率で混合することによって形成されてもよい。最終的なブレンドに含まれるジメチルエーテルとメタノールとの比率は、ブレンドが使用される地域に特有の規格および仕様に基づいて異なる場合がある。例えば、ヨーロッパでは、ブレンドが成分のうちの1つしか含まない場合、現在のブレンドの最大酸素含有量は3.7重量%(約11重量%のジメチルエーテルまたは7.4重量%のメタノール)を超えないようにする必要がある。同様に、現在の米国での酸素仕様は2.7重量%(約8重量%のジメチルエーテルおよび5.4%のメタノール)である。そのため、範囲は0%から、その地域の規制当局によって設定された最大仕様重量%までのいずれかであり得る。
【0029】
1つ以上の実施形態では、二酸化炭素変換システム40用の水素供給32を発生させるために水の電気分解から電解槽30によって生成される酸素供給34は、液体燃料との混合のために低オクタン価成分を高オクタン価成分に変換するために利用される。例えば、パラフィンなどの低オクタン価成分は、部分酸化を使用して、アルコール、ケトン、およびアルデヒドなどの高オクタン価成分に変換され得る。同様に、過酸化物などの高セタン価成分が形成され得る。
【0030】
図3を参照すると、車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤に現場変換するためのシステムは、元の燃料90、二酸化炭素変換システム40によって発生した液体燃料、または両方の混合による、より高いオクタン価もしくはより高いセタン価を有する生成物を酸化するために酸化反応器80を含み得る。本開示では、「元の燃料」という用語は、二酸化炭素変換システム40の生成物ではなく、システムに直接導入される炭化水素を意味する。元の燃料は、二酸化炭素変換システム40の外部の製油所または同様のプラントから提供されてもよい。酸化反応器80は、電解槽30から酸素供給源34内の酸素を受け取って、燃料の供給流をアルコール、アルデヒド、ケトン、過酸化物、および当業者に既知の他の変換生成物に酸化することができる。酸化反応器80に供給される炭化水素は、原料供給源として提供されるナフサなどの元の燃料90、二酸化炭素変換システム40によって発生させた1つ以上の液体燃料の混合物、または両方の混合物を含むことができる。
【0031】
表3は、燃料流の酸化から形成される可能性がある一般的なオクタン価およびセタン価向上剤のいくつかの例を示す。酸化反応器80は、二酸化炭素変換システム40用に水から水素供給32を発生させる際、および増加したオクタン価または増加したセタン価強化品質燃料を発生させるプロセスで、電解槽30によって生成される廃酸素を利用するという追加の利点を提供する。酸化反応器80で発生した高品質の燃料は、二酸化炭素変換システム40により発生した液体燃料とは別に保管および利用するか、または様々な比率で混合および組み合わせて、様々なエンジン形式の燃料需要を満たすために多数の燃料生成物を発生させることができる。
【表3】
【0032】
図4を参照すると、およびオクタン価およびセタン価向上剤の発生のための例示的なスキームを示す。具体的には、
図4は、トルエンを酸化して、セタン価増強添加剤としてベンジルヒドロペルオキシド、および、続いて、オクタン価増強添加剤として安息香酸を発生させる方法のスキームを示す。このスキームはまた、変換の各ステップを達成するために利用できる例示的な触媒を示す。
【0033】
酸化反応器80で生じる酸化反応は、発熱反応である。酸化反応器80における発熱反応によって放出される熱エネルギーは、外部電源20のエネルギー需要を低減するために利用され得る。発熱反応から発生した熱エネルギーを直接利用して、二酸化炭素変換システム40または電解槽30への供給流を加熱することができる。酸化反応器80での発熱反応から発生した熱は、代替の補助熱の必要をなくすために開始に熱を必要とする反応におけるCO2の化学変換に直接使用することもできる。同様に、発熱反応から発生した熱エネルギーを間接的に利用して発電機を動作させ、電力を発生させて外部電源20を増強することができる。電気は、熱電装置などの廃熱回収用の装置を使用するか、またはランキンサイクルを使用して発生させることもできる。
【0034】
1つ以上の実施形態では、電解槽30からの酸素は、酸素貯槽(図示せず)に保持されており、車両が、車両の排気流から車両に搭載されたCO2を捕捉する車載二酸化炭素捕捉システムから収集したCO2を降ろし、車両の排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤に現場変換するためのシステムで発生した液体燃料とともに、またはその両方を車両に補給するときに、車両に提供される。次に、車両は、搭載酸化システム(図示せず)で搭載燃料を酸化して、増加したセタン価またはオクタン価燃料を生成することができる。
【0035】
1つ以上の実施形態では、車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤へ現場変換するためのシステムはまた、外部電源20に電気的に接続したバッテリー22を含む。バッテリー22は、二酸化炭素変換システム40および電解槽30が、外部電源20によって発生した電力の全部を利用しないときに外部電源20から余剰電気エネルギーを収集することができる。1つ以上の実施形態では、バッテリー22は、連続的にバッテリー22を再充電する外部電源20を用いて、二酸化炭素変換システム40および電解槽30に直接電力を供給し得る。さらなる実施形態では、外部電源20は、動作時間中に二酸化炭素変換システム40および電解槽30に電力を供給することができ、バッテリー22は、二酸化炭素変換システム40および電解槽30の動作の休止中にのみ充電される。電気エネルギーを貯蔵するためのバッテリー22は、外部電源20が電力を発生させる能力に変動性または間欠性を有する場合に特に有利である。例えば、風力発電は、時間、気象条件、または風速および風向に影響し、その結果として発電に影響する他の変数に基づいて変化する可能性がある。同様に、太陽光発電は、時刻、太陽暦、気象条件、または太陽電池に到達する太陽エネルギーの強度、位置、および持続時間に影響を与えるその他の変数に基づいて変化する可能性がある。水力発電であっても、水力発電機を介した水の放出を減少させる干ばつ状況の結果としての流量の変動性に基づいて発電の変動性を経る可能性がある。
【0036】
計算例
非化石燃料源からの液体燃料および燃料添加剤の形成は、算術的に実現可能であると確認し得る。具体的には、車両の排気から捕捉したCO2を処理し、それを様々な液体燃料および燃料添加剤に変換するために必要な原材料およびエネルギーを計算することができる。CO2の60%が捕捉され、車両に搭載されて、二酸化炭素収集システム10に送達されるとすると、各車両は燃料サイクルあたり約137キログラム(kg)または3113モルのCO2を供給する。さらに、捕捉したCO2を、CO2のΔfG°が-394.39であり、H2Oのそれが-237.14kJ/molである液体燃料に100%転換すると仮定すると、特定の液体燃料および燃料添加剤への変換に必要なエネルギーが決定され得る。
【0037】
車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤に現場変換するためのシステムの様々な態様が記載されており、そのような態様は、様々な他の態様と関連して利用され得ることが理解されるはずである。
【0038】
第1の態様では、本開示は、車両の排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤へ現場変換するためのシステムを提供する。このシステムは、二酸化炭素収集システム、外部電源、電解槽、および二酸化炭素変換システムを含む。二酸化炭素収集システムは、車両に搭載された車載二酸化炭素捕捉システムと連動して、車両排気から捕捉したCO2を二酸化炭素収集システムの容器に移送する。外部電源は、二酸化炭素変換システムおよび電解槽の動作に必要なエネルギーを提供する。電解槽は、水供給を水素と酸素とに分離して、水素供給および酸素供給を発生させる。二酸化炭素変換システムは、車両の排気から収集され、二酸化炭素収集システムに送達されたCO2と、電解槽からの水素供給とを電気化学的還元により有用な液体燃料および燃料添加剤に変換する。
【0039】
第2の態様では、本開示は、システムが、様々な比率で二酸化炭素変換システムによって生成された液体燃料および燃料添加剤を組み合わせるか、または様々な比率で二酸化炭素変換システムによって生成された液体燃料および燃料添加剤のうちの1つ以上を1つ以上の従来の化石燃料と組み合わせた1つ以上の混合ユニットを含む、液体燃料混合システムをさらに含む、第1の態様のシステムを提供する。
【0040】
第3の態様では、本開示は、二酸化炭素変換システムの1つ以上の生成物をディーゼル燃料と混合して、高セタン価ディーゼルを生成する、第1または第2の態様のシステムを提供する。
【0041】
第4の態様では、本開示は、二酸化炭素変換システムからのジメチルエーテルをディーゼル燃料と混合して、高セタン価ディーゼルを生成する、第3の態様のシステムを提供する。
【0042】
第5の態様では、本開示は、二酸化炭素変換システムの1つ以上の生成物をガソリンと混合して、高セタン価ガソリンを生成する、第1~4の態様のいずれか1つのシステムを提供する。
【0043】
第6の態様では、本開示は、二酸化炭素変換システムからのメタノールをガソリンと混合して、高オクタン価ガソリンを生成する、第5の態様のシステムを提供する。
【0044】
第7の態様では、本開示は、二酸化炭素変換システムからのジメチルエーテルとメタノールとを混合して、中間オクタン価液体燃料を生成する、第1~6の態様のいずれか1つのシステムを提供する。
【0045】
第8の態様では、本開示は、外部電源が、非化石エネルギーを含む、第1~7の態様のいずれか1つのシステムを提供する。
【0046】
第9の態様では、本開示は、外部電源が、現場風力発電機、現場太陽光発電アレイ、または現場水力発電機のうちの1つ以上を含む、第8の態様のシステムを提供する。
【0047】
第10の態様では、本開示は、二酸化炭素変換システムが触媒を利用し、液体燃料および燃料添加剤へのCO2の電気化学的還元を促進する、第1~9の態様のいずれか1つのシステムを提供する。
【0048】
第11の態様では、本開示は、CO2の電気化学的還元のために使用される触媒が、金属大員環、Pd錯体、Ru(II)錯体、およびCu(II)錯体のうちの1つ以上を含む、第10の態様のシステムを提供する。
【0049】
第12の態様では、本開示は、システムが、元の燃料、二酸化炭素変換システムによって発生した液体燃料、または両方の混合による、より高いオクタン価もしくはより高いセタン価を有する生成物を酸化するように構成された酸化反応器をさらに含む、第1~11の態様のいずれか1つのシステムを提供する。
【0050】
第13の態様では、本開示は、酸化反応器が、電解槽で発生した酸素供給を酸化剤として利用して、元の燃料、二酸化炭素変換システムによって発生した液体燃料および燃料添加剤、または両方の混合による、より高いオクタン価もしくはより高いセタン価を含む生成物を酸化する、第12の態様のいずれか1つのシステムを提供する。
【0051】
第14の態様では、本開示は、酸化反応器内の燃料の酸化によって放出される熱エネルギーが、外部電源のエネルギー需要を低減するために利用される、第12または第13の態様のシステムを提供する。
【0052】
第15の態様では、本開示は、酸化反応器内の燃料の酸化によって放出される熱エネルギーが、代替の補助熱の必要性を低減または排除するため、開始のための熱を必要とする反応でのCO2の化学変換のために二酸化炭素変換システムで直接利用される、第14の態様のシステムを提供する。
【0053】
第16の態様では、本開示は、酸化反応器内の燃料の酸化によって放出される熱エネルギーは、外部電源を増強する電力を発生する発電機を動作させるために間接的に利用される、第14または第15の態様のシステムを提供する。
【0054】
第17の態様では、本開示は、車両の排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤へ現場変換するためのシステムを提供する。このシステムは、二酸化炭素収集システム、外部電源、二酸化炭素変換システム、および液体燃料混合システムを含む。二酸化炭素収集システムは、車両に搭載された車載二酸化炭素捕捉システムと連動して、車両排気から捕捉したCO2を二酸化炭素収集システムの容器に移送する。外部電源は、二酸化炭素変換システムの動作に必要なエネルギーを提供する。二酸化炭素変換システムは、車両の排気から収集され、二酸化炭素収集に送達されたCO2を電気化学的還元により有用な液体燃料および燃料添加剤に変換する。液体燃料混合システムであって、二酸化炭素変換システムによって生成された液体燃料および燃料添加剤を様々な比率で組み合わせるか、または二酸化炭素変換システムによって生成された液体燃料および燃料添加剤のうちの1つ以上と、1つ以上の従来の化石燃料とを様々な比率で組み合わせた1つ以上の混合ユニットを含む、システム。
【0055】
第18の態様では、本開示は、二酸化炭素変換システムの1つ以上の生成物をディーゼル燃料と混合して、高セタン価ディーゼルを生成する、第17の態様のシステムを提供する。
【0056】
第19の態様では、本開示は、二酸化炭素変換システムからのジメチルエーテルをディーゼル燃料と混合して、高セタン価ディーゼルを生成する、第18の態様のシステムを提供する。
【0057】
第20の態様では、本開示は、二酸化炭素変換システムの1つ以上の生成物をガソリンと混合して、高オクタン価ガソリンを生成する、第17~19の態様のいずれか1つのシステムを提供する。
【0058】
第21の態様では、本開示は、二酸化炭素変換システムからのメタノールをガソリンと混合して、高オクタン価ガソリンを生成する、第20の態様のシステムを提供する。
【0059】
第22の態様では、本開示は、二酸化炭素変換システムからのジメチルエーテルとメタノールとを混合して、中間オクタン価液体燃料を生成する、第17~21の態様のいずれか1つのシステムを提供する。
【0060】
第23の態様では、本開示は、外部電源が、非化石エネルギーを含む、第17~22の態様のいずれか1つのシステムを提供する。
【0061】
第24の態様では、本開示は、外部電源が、現場風力発電機、現場太陽光発電アレイ、または現場水力発電機のうちの1つ以上を含む、第23の態様のシステムを提供する。
【0062】
第25の態様では、本開示は、システムが、元の燃料、二酸化炭素変換システムによって生成される液体燃料および燃料添加剤、または両方の混合による、より高いオクタン価もしくはより高いセタン価を含む生成物を酸化するように構成された酸化反応器をさらに含む、第17~24の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0063】
第26の態様では、本開示は、酸化反応器内の燃料の酸化によって放出される熱エネルギーを利用して、外部電源のエネルギー需要を低減する、第25の態様の方法を提供する。
【0064】
第27の態様では、本開示は、熱エネルギーが、代替の補助熱の必要性を低減または排除するため、開始のための熱を必要とする反応でのCO2の化学変換のために二酸化炭素変換システムで直接利用される、第26の態様の方法を提供する。
【0065】
第28の態様では、本開示は、熱エネルギーが、外部電源を増強する電力を発生する発電機を動作させるために間接的に利用される、第26または第27の態様の方法を提供する。
【0066】
当業者には、特許請求される主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された実施形態に対して様々な修正および変更がなされ得ることが明らかであろう。したがって、本明細書は、本明細書に記載された様々な実施形態の修正および変更を包含することが意図されるが、そのような修正および変更が、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内であることを条件とする。
【0067】
以下の特許請求の範囲のうちの1つ以上は、用語「wherein」を移行句として利用することに留意すべきである。本発明を定義する目的で、この用語は、特許請求される主題の構造の一連の特性の説明を導入するために使用される開放型移行句として特許請求の範囲に導入され、より一般的に使用される開放型前置き用語(preamble term)「含む(comprising)」と同様の方法で解釈されるべきであることに留意されたい。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤へ変換するためのシステムであって、
二酸化炭素収集システムと、
外部電源と、
電解槽と、
二酸化炭素変換システムと、
を含み、
前記二酸化炭素収集システムが、車両に搭載された車載二酸化炭素捕捉システムと連動して、車両排気から捕捉したCO
2
を前記二酸化炭素収集システムの容器に移送し、
前記外部電源が、前記二酸化炭素変換システムおよび前記電解槽の動作に必要なエネルギーを提供し、
前記電解槽が、水供給を水素と酸素とに分離して、水素供給および酸素供給を発生させて、
前記二酸化炭素変換システムが、車両の排気から収集され、前記二酸化炭素収集システムに送達されたCO
2
と、前記電解槽からの前記水素供給を、電気化学的還元により有用な液体燃料および燃料添加剤に変換する、システム。
実施形態2
前記システムが、前記二酸化炭素変換システムによって生成された前記液体燃料および燃料添加剤を様々な比率で組み合わせるか、または前記二酸化炭素変換システムによって生成された前記液体燃料および燃料添加剤のうちの1つ以上と、1つ以上の従来の化石燃料とを様々な比率で組み合わせる1つ以上の混合ユニットを含む、液体燃料混合システムをさらに含む、実施形態1に記載のシステム。
実施形態3
前記二酸化炭素変換システムの1つ以上の生成物をディーゼル燃料と混合して、高セタン価ディーゼルを生成する、実施形態2に記載のシステム。
実施形態4
前記二酸化炭素変換システムの1つ以上の生成物をガソリンと混合して、高オクタン価ガソリンを生成する、実施形態2に記載のシステム。
実施形態5
前記二酸化炭素変換システムからのジメチルエーテルとメタノールとを混合して、中間オクタン価液体燃料を形成する、実施形態2に記載のシステム。
実施形態6
前記外部電源が、非化石エネルギーを含む、実施形態1に記載のシステム。
実施形態7
前記二酸化炭素変換システムが触媒を利用して、液体燃料および燃料添加剤へのCO
2
の前記電気化学的還元を促進する、実施形態1に記載のシステム。
実施形態8
前記システムが、元の燃料、前記二酸化炭素変換システムによって発生した液体燃料、または両方の混合物を酸化させ、より高いオクタン価またはより高いセタン価を有する生成物にするように構成された酸化反応器をさらに含む、実施形態1に記載のシステム。
実施形態9
前記酸化反応器が、前記電解槽で発生した前記酸素供給を酸化剤として利用して、前記元の燃料、前記二酸化炭素変換システムによって発生した前記液体燃料および燃料添加剤、または前記両方の混合物を酸化させ、より高いオクタン価またはより高いセタン価を有する生成物にする、実施形態8に記載のシステム。
実施形態10
前記酸化反応器内の燃料の酸化によって放出される熱エネルギーが、前記外部電源のエネルギー需要を低減するために利用される、実施形態8に記載のシステム。
実施形態11
前記熱エネルギーが、代替の補助熱の必要性を低減または排除するため、開始のための熱を必要とする反応でのCO
2
の化学変換のために、前記二酸化炭素変換システムで直接利用される、実施形態10に記載のシステム。
実施形態12
前記熱エネルギーが、前記外部電源を増強する電力を発生する発電機を動作させるために間接的に利用される、実施形態10に記載のシステム。
実施形態13
車両排気からの二酸化炭素を液体燃料および燃料添加剤に変換するためのシステムであって、
二酸化炭素収集システムと、
外部電源と、
二酸化炭素変換システムと、
液体燃料混合システムと、
を含み、
前記二酸化炭素収集システムが、車両に搭載された車載二酸化炭素捕捉システムと連動して、車両排気から捕捉したCO
2
を前記二酸化炭素収集システムの容器に移送し、
前記外部電源が、前記二酸化炭素変換システムの動作に必要なエネルギーを提供し、
前記二酸化炭素変換システムが、車両の排気から収集され、前記二酸化炭素収集に送達されたCO
2
を、電気化学的還元により有用な液体燃料および燃料添加剤に変換し、
前記二酸化炭素変換システムによって生成された前記液体燃料および燃料添加剤を様々な比率で組み合わせるか、または前記二酸化炭素変換システムによって生成された前記液体燃料および燃料添加剤のうちの1つ以上と、1つ以上の従来の化石燃料とを様々な比率で組み合わせる1つ以上の混合ユニットを含む、前記液体燃料混合システム、を含むシステム。
実施形態14
前記外部電源が、現場風力発電機、現場太陽光発電アレイ、または現場水力発電機のうちの1つ以上を含む、実施形態13に記載のシステム。
実施形態15
前記システムが、元の燃料、前記二酸化炭素変換システムによって発生した液体燃料および燃料添加剤、または両方の混合物を酸化させ、より高いオクタン価もしくはより高いセタン価を有する生成物にするように構成された酸化反応器をさらに含む、実施形態13に記載のシステム。