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  • 特許-波力発電システム及びその制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】波力発電システム及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/16 20060101AFI20221205BHJP
   F16H 39/02 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
F03B13/16
F16H39/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020547127
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 KR2019002727
(87)【国際公開番号】W WO2019172706
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-09-08
(31)【優先権主張番号】10-2018-0028032
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515338391
【氏名又は名称】インジン,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヨン ジュン
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/122839(WO,A1)
【文献】特開2006-189018(JP,A)
【文献】特表2016-521819(JP,A)
【文献】特表2014-509715(JP,A)
【文献】特表2014-506659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/16
F16H 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波に浮遊する可動物体の6自由度運動によって運動エネルギーを伝達する複数の張力伝達部材であって、前記可動物体の少なくとも3ヶ所以上の位置に接続された複数の張力伝達部材の一方向運動時に運動エネルギーを油圧と体積の形態に格納し、前記複数の張力伝達部材の他方向運動時に格納されているエネルギーによって前記張力伝達部材の張力を保持する油圧モータを含み、
前記張力伝達部材は変換体に接続され、
前記変換体の一側には前記油圧モータが接続され、他側には電力生産部が接続され、
前記油圧モータは、流体が格納されるタンクと前記流体が格納されるアキュムレータが備えられ、
前記複数の張力伝達部材の両方向運動によって電気エネルギーを生産する、波力発電システム。
【請求項2】
前記張力伝達部材が引っ張られた時は、前記油圧モータが一方向に回転して前記タンクから前記アキュムレータに流体を移動させ、
前記張力伝達部材が引っ張られていない時は、前記アキュムレータから前記タンクに流体が移動することにより前記油圧モータが反対方向に回転する、請求項に記載の波力発電システム。
【請求項3】
前記変換体の回転速度を増速させる増速機を含み、
前記増速機は、前記変換体と前記油圧モータとの間、前記変換体と前記電力生産部との間にそれぞれ備えられる、請求項に記載の波力発電システム。
【請求項4】
前記電力生産部にはフライホイールが備えられる、請求項に記載の波力発電システム。
【請求項5】
前記複数の張力伝達部材にそれぞれ油圧モータが備えられる、請求項1に記載の波力発電システム。
【請求項6】
前記複数の張力伝達部材が1つの油圧モータと接続される、請求項1に記載の波力発電システム。
【請求項7】
波に浮遊しながら波により動く可動物体と、
前記可動物体の6自由度運動が可能なように前記可動物体の少なくとも3ヶ所以上の位置に接続され、前記可動物体の運動エネルギーを一方向に伝達する張力伝達部材を含む運動伝達部と、
前記張力伝達部材が接続される変換体と、
前記変換体の一側に備えられる油圧モータと、
前記変換体の他側に備えられる電力生産部と、
を含み、
前記張力伝達部材は変換体に接続され、
前記変換体の一側には前記油圧モータが接続され、他側には電力生産部が接続され、
前記油圧モータは、流体が格納されるタンクと前記流体が格納されるアキュムレータが備えられ、
前記張力伝達部材が引っ張られた時は、前記油圧モータが一方向に回転して前記タンクから前記アキュムレータに流体を移動させ、
前記張力伝達部材が引っ張られていない時は、前記アキュムレータから前記タンクに流体が移動することにより、前記油圧モータが反対方向に回転して前記変換体に接続された前記張力伝達部材の張力を保持する、波力発電システム。
【請求項8】
前記変換体の回転速度を増速させる増速機が備えられ、
前記増速機は、前記変換体と前記油圧モータとの間、前記変換体と前記電力生産部との間にそれぞれ備えられる、請求項に記載の波力発電システム。
【請求項9】
波に浮遊する可動物体の6自由度運動によって、前記可動物体の少なくとも3ヶ所以上の位置に接続された複数の張力伝達部材に張力が加えられれば、油圧モータが一方向に回転してタンクからアキュムレータに流体を格納するステップであって、前記張力伝達部材は変換体に接続され、前記変換体の一側には前記油圧モータが接続され、他側には電力生産部が接続され、前記油圧モータは、流体が格納される前記タンクと前記流体が格納される前記アキュムレータが備えられている、流体を格納するステップと、
前記張力伝達部材で張力が加えられない時は、前記アキュムレータから前記タンクに流体が移動することにより、前記油圧モータが反対方向に移動して前記張力伝達部材の張力を保持させるステップと、
前記可動物体の運動によって前記張力伝達部材に印加される張力と前記油圧モータによって前記張力伝達部材に印加される張力によって交番に電気エネルギーを生産するステップと、
を含む、波力発電システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の本発明は、波力発電システム及びそのシステムを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気を発生させる発電方法として、水力発電、火力発電、原子力発電などが挙げられるが、このような発電方法は、大規模な発電設備が求められる。それだけでなく、火力発電の場合、発電設備を可動させるために膨大な量の石油又は石炭エネルギーが必須的に供給されなければならないため、石油、石炭資源が枯渇している現時点では多くの困難が予想されており、公害も大きい問題となっている。また、原子力発電の場合、放射能の流出と核廃棄物処理という深刻な問題を抱いている。水力発電の場合に水の落差を使用するため、大規模のダムを建設しなければならないことから、周囲環境に変化を招くだけではなく、水資源の豊かな河川などが前提にならなければ建設されることができないなど、環境的な制約のある問題がある。従って、このような一般的な発電方法によって、安価、安全、かつ環境にやさしい画期的な発電方法が要求されているが、そのうちの1つが波の動きを用いて電気エネルギーを生産できるという波力発電である。
【0003】
潮満差を用いて電気エネルギーを生産する潮力発電と、海水のはやい流速を用いて電気エネルギーを生産する潮流発電、及び波の動きを用いて電気エネルギーを生産する波力発電が注目されている。特に、波力発電は、絶えずに発生する波の動きを用いて電気エネルギーを生産する技術であって、持続的にエネルギーを生産することができる。波力発電は、波による海水面の周期的な上下運動と水の粒子の前後運動をエネルギー変換装置を用いて機械的な回転運動又は軸方向運動に変換させた後も電気エネルギーに変換させる。波力発電方式として、波高の高低によるエネルギーを1次変換する方式により様々に分類し、代表的に、水面に浮かんでいる浮標が波の動きに応じて上下又は回転運動することで発電機を作動させる可動物体型方式が挙げられる。
【0004】
可動物体型の場合、波の動きに応じて動いている物体、例えば、浮標の動きが伝達され、これを往復または回転運動に変換させてから発電機を介して発電する方式であって、その一例が特許文献1(韓国特許公開第10-2015-00120896号公報)又は特許文献2(日本特許第5260092号公報)に開示されている。
【0005】
但し、波の特性上、不規則的な運動エネルギーが提供されることから、これを用いて安定的にエネルギーを生産するためには、波エネルギーを伝達する運動伝達部及び伝達された運動エネルギーを発電に用いられる回転運動エネルギーに変換する油圧モータにおいて、電気エネルギーを効率よく生産できるシステム及び制御方法が求められている。
【0006】
前述した背景技術で説明された内容は、発明者が本発明の導出過程で保持したり習得したものであり、必ず本発明の出願前に一般公衆に公開された公知技術であると認められたものとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国特許公開第10-2015-00120896号公報
【文献】特許第5260092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
実施形態によれば、エネルギー変換の効率を向上させ、高い制御自由度を有する波力発電設備の制御システム及び方法を提示することにある。
【0009】
実施形態で解決しようとする課題は、以上で言及した課題に制限されることなく、言及されない更なる課題は下記の記載によって当業者に明確に理解されるものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した解決しようとする課題を達成するための実施形態によれば、波力発電システムは、波に浮遊する可動物体の6自由度運動によって運動エネルギーを伝達する複数の張力伝達部材の一方向運動時に運動エネルギーを油圧と体積の形態に格納し、他方向運動時に格納されているエネルギーによって前記張力伝達部材の張力を保持する油圧モータを含み、前記複数の張力伝達部材の両方向運動によって電気エネルギーを生産する。
【0011】
一側面によると、前記張力伝達部材は変換体に接続され、前記変換体の一側には前記油圧モータが接続され、他側には電力生産部が接続されることができる。前記油圧モータは、流体が格納されるタンクと前記流体が格納されるアキュムレータが備えられることができる。前記張力伝達部材が引っ張られた時は、前記油圧モータが一方向に回転して前記タンクから前記アキュムレータに流体を移動させ、前記張力伝達部材が引っ張られていない時は、前記アキュムレータから前記タンクに流体が移動することにより前記油圧モータが反対方向に回転することになる。
【0012】
一側面によると、前記変換体の回転速度を増速させる増速機を含み、前記増速機は、前記変換体と前記油圧モータとの間、前記変換体と前記電力生産部との間にそれぞれ備えられることができる。
【0013】
一側面によると、前記電力生産部にはフライホイールが備えられることができる。
【0014】
一側面によると、前記張力伝達部材は、前記可動物体の3ヶ所以上の位置に接続される複数備えられることができる。前記複数の張力伝達部材にそれぞれ油圧モータが備えられることができる。前記複数の張力伝達部材が1つの油圧モータと接続されることができる。
【0015】
一方、前述した解決しようとする課題を達成するための実施形態によると、波力発電システムは、波に浮遊しながら波により動く可動物体と、前記可動物体の6自由度運動が可能なように前記可動物体の少なくとも3ヶ所以上の位置に接続され、前記可動物体の運動エネルギーを一方向に伝達する張力伝達部材を含む運動伝達部と、前記張力伝達部材が接続される変換体と、前記変換体の一側に備えられる油圧モータと、前記変換体の他側に備えられる電力生産部とを含み、前記張力伝達部材が引っ張られた時は、前記油圧モータが一方向に回転してタンクからアキュムレータに流体を移動させ、前記張力伝達部材が引っ張られていない時は、前記アキュムレータから前記タンクに流体が移動することにより、前記油圧モータが反対方向に回転して前記変換体に接続された前記張力伝達部材の張力を保持するようになる。
【0016】
一側面によると、前記変換体の回転速度を増速させる増速機が備えられ、前記増速機は、前記変換体と前記油圧モータとの間、前記変換体と前記電力生産部との間にそれぞれ備えられることができる。
【0017】
一方、前述した解決しようとする課題を達成するための実施形態によると、波力発電システムの制御方法は、波に浮遊する可動物体の6自由度運動によって張力伝達部材に張力が加えられれば、油圧モータが一方向に回転してタンクからアキュムレータに流体を格納するステップと、前記張力伝達部材で張力が加えられない時は、前記アキュムレータから前記タンクに流体が移動することにより、前記油圧モータが反対方向に移動して前記張力伝達部材の張力を保持させるステップと、前記可動物体の運動によって前記張力伝達部材に印加される張力と前記油圧モータによって前記張力伝達部材に印加される張力によって交番に電気エネルギーを生産するステップとを含んで構成される。
【発明の効果】
【0018】
前述したように、実施形態によれば、油圧モータによって可動物体の一方向運動エネルギーが流体の圧力と体積の形態に格納され、可動物体の他方向運動の時には張力伝達部材の張力を保持させることになる。また、可動物体によって印加される張力と油圧モータにより印加される張力によって電力生産部が交番に電気エネルギーを生産することができる。
【0019】
一実施形態に係る波力発電システム及びその制御方法の効果は、以上記載したものなどに限定されず、言及されていない他の効果は、下記の記載によって当業者に明確に理解できるものである。
【0020】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の好ましい一実施形態を例示するものであって、発明の詳細な説明と共に本発明の技術的な思想をより理解させる役割を果たすものであるため、本発明は、図面に記載されている事項だけに限定されて解釈されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、一実施形態に係る波力発電システムの概念図である。
図2図2は、図1に示す波力発電システムの構成及び動作を説明するためのブロック図である。
図3図3は、図1に示す波力発電システムの構成及び動作を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態を例示的な図を参照して詳説する。各図面の構成要素に参照符号を付加することにおいて、同じ構成要素については、たとえ他の図面上に表示されていても、可能な限り同じ符号を有するようにしたことに留意しなければならない。また、実施形態の説明にあたり、関連する公知構成又は機能の具体的な説明が実施形態についての理解を妨げると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0023】
また、実施形態の構成要素を説明することにおいて、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用することができる。これらの用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものにすぎず、その用語によって当該の構成要素の本質や順序などが限定されることはない。いずれかの構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」、又は「接続」されていると言及されたときには、その他の構成要素に直接的に連結されているか又は接続されているが、各構成要素との間にさらなる構成要素が「連結」、「結合」、又は「接続」され得るものと理解されなければならない。
【0024】
以下、図1ないし図3を参照して実施形態に係る波力発電システム10について説明する。参考として、図1は、一実施形態に係る波力発電システム10の模式図であり、図2ないし図3は、図1に示す波力発電システム10の構成と動作を説明するためのブロック図である。
【0025】
図面を参照すると、波力発電システム10は、可動物体110、運動伝達部120、油圧モータ140、及び電力生産部160を含んで構成される。そして、運動伝達部120と油圧モータ140との間には変換体130が備えられ、電力生産部160の一側にはフライホイール150が備えられてもよい。
【0026】
可動物体110は、波の上に浮遊しながら波の動きに応じて6自由度で運動する。具体的に、可動物体110は、波の動きに応じてx、y、z軸に沿って変移運動(heave、surge、sway)したり、ヨー(yaw)、ピッチ(pitch)、ロール(roll)の回転運動することで、合わせて6自由度(6 Degree of Freedom)運動することになる。
【0027】
例えば、可動物体110は、波に浮遊しながら波の動きに応じて動くように形成され、ブイ又は浮標である。可動物体110は、波に浮遊可能に形成された本体部111と運動伝達部120とが結合する結合部112を含んで構成される。
【0028】
可動物体110の本体部111は様々な形状に形成されるが、例えば、円盤型やチューブ型であってもよく、円柱、多角柱、ドーム形状、円盤状などの様々な形態を有することができる。本体部111は、それぞれの形、形状、材質、機能、特性、効果、結合関係によって円盤状に構成されるが、これらに限定されることなく、様々な形に構成されてもよい。また、本体部111は、その材質が波に浮遊できる材質であればよく、これに限定されることはない。
【0029】
結合部112は、本体部111に運動伝達部120が結合されるように形成し、一例として、360度の運動角度を有するボールジョイントの形態を有してもよい。結合部112は、可動物体110が波の動きに応じて、多方向に一定の範囲内で自由に動くことができるように結合し、可動物体110の6自由度運動を伝達できるように本体部111の少なくとも互いに異なる3ヶ所以上に結合されている。但し、これは一例示に過ぎず、結合部112は、運動伝達部120が可動物体110に結合して制限された範囲内で可動物体110が自由に動くことを可能にする様々な方式の結合が可能である。また、結合部112の位置は図面により限定さることなく、本体部111の様々な位置で可動物体110が一定範囲から離脱することを防止すると共に、その一定範囲内で自由に流動できる位置であれば、多様に変更され得る。
【0030】
また、結合部112は、本体部111の下部に垂直方向に形成された隔壁形態を有する。このような結合部112は、可動物体110が波の動きに応じて積極的に連動するよう、水平面と垂直に形成され、結合部112に波の力が垂直に作用することで、波の動きによって可動物体110を効率よく動かせることができる。しかし、これは一実施形態に過ぎず、結合部112は、可動物体110が全ての方向に波の力を受けることができ、波の動き又はエネルギーが可動物体110の動きに効率よく伝達されるよう構成できる。
【0031】
運動伝達部120は、可動物体110に結合して可動物体110の動きを伝達するための張力伝達部材121と、張力伝達部材121を海底などに固定させる固定部材122を含む。
【0032】
張力伝達部材121は、可動物体110の波による多方向の動きを線形の往復運動に変換して油圧モータ140に伝達する。一例として、張力伝達部材121は、所定のワイヤ形態を有し、一端が可動物体110に結合され、他端が油圧モータ140に接続される。また、張力伝達部材121は、ワイヤの他にも、ロープ、チェーン、スプロケット、ベルトなどの形態を有してもよい。その他にも、張力伝達部材121は、可動物体110と油圧モータ140を結合して動きを伝達することのできる様々な手段が使用されてもよい。
【0033】
このような張力伝達部材121は、可動物体110の6自由も運動に連動して、張力伝達部材121が可動物体110のあらゆる動きに反応して伝達することから、最も効率よく可動物体110の運動を油圧モータ140に伝達することができる。また、張力伝達部材121は、可動物体110の3ヶ所以上の位置で接続され、可動物体110が一定の範囲から離脱することを防止すると共に、一定の範囲内で可動物体110が自由に流動されるようにし、可動物体110の運動エネルギーを全般的に伝達する役割を果たす。
【0034】
詳細には、張力伝達部材121は、可動物体110が波によって多方向の力で海面を浮遊しながら、いずれか一方向に可動物体110が力を受けると、当該の力を受ける部分の一方向の張力伝達部材121が引っ張られながら、当該の張力伝達部材121で作用する張力によって変換体130に張力が伝達される。そして、可動物体110に他の方向の力が加えられれば、再度動物体110から力を受ける部分の張力伝達部材121が引っ張られながら、当該の張力伝達部材121で作用する張力により変換体130に張力が伝達される。そして。このように可動物体110に波の力が多方向に持続的に発生することによる可動物体110が多方向に動くことになるが、このような可動物体110の動きに応じて複数の張力伝達部材121が往復線形運動することになる。張力伝達部材121は、可動物体110の動きを線形往復運動に切り替えて変換体130を介して油圧モータ140に伝達する。
【0035】
固定部材122は、海底や他の所に設けられて張力伝達部材121を固定させると共に、張力伝達部材121の方向を変える役割をする。即ち、張力伝達部材121は、固定部材122を中心軸にして一定の範囲内で動く。また、固定部材122は、1つの張力伝達部材121の長手方向に沿って少なくとも1ヶ所以上、複数の位置に備えられる。また、固定部材122は、張力伝達部材121の方向を変えるための位置に設けられ、張力伝達部材121の方向を変えることで力の伝達方向を変えることができる。例えば、固定部材122は、複数のローラ又は滑車を含む。
【0036】
変換体131は張力伝達部材121が接続され、張力伝達部材121の往復線形運動を一方向の回転運動に変換する回転軸又はドラムなどの形態を有する。また、変換体130は、張力伝達部材121の往復線形運動を一方向の回転運動に変換できるようにワンウェークラッチ(one way clutch)が含まれる。但し、これは一例にすぎず、変換体130は、張力伝達部材121の動きを往復回転運動又は往復直線運動に変換可能であれば、実質的に様々な手段が使用されてもよい。
【0037】
変換体130の一側には油圧モータ140が接続され、他側には電力生産部160が接続されている。そして、変換体130と油圧モータ140との間、そして、変換体130と電力生産部160との間にはそれぞれ変換体130の低速回転を高速回転に増速させる増速機131,132が備えられる。
【0038】
一方、張力伝達部材121は、ワイヤなどの形態を有するため、可動物体110が引っ張られなければ、変換体130に力が加えられることができない。即ち、可動物体110の動きに応じて一方向に動く時は変換体130に張力が加えられ、反対方向に動く時は変換体130に力が加えられない。このように変換体130に力が加えられない場合、油圧モータ140に格納されている油圧によって電力生産部160を作動させることができる。
【0039】
油圧モータ140は、張力伝達部材121の往復運動によって発生するエネルギーを油圧として格納する役割を果たす。そして、このように油圧モータ140に格納されているエネルギーが張力伝達部材121で張力が解除されたとき、変換体130の張力を保持させると共に、電力生産部160を駆動して電気エネルギーを生産することになる。
【0040】
電力生産部160は、変換体130から伝達される張力伝達部材121の往復回転運動によって発電機を駆動し、電気エネルギーを生産する。そして、電力生産部160には、変換体130から達される回転運動を機械エネルギーに格納するフライホイール150が備えられる。
【0041】
一方、本実施形態において、1つの可動物体110に複数の張力伝達部材121が接続され、複数の張力伝達部材121に1つの油圧モータ140と1つの電力生産部160が接続される構成を例示している。但し、これは一例示に過ぎず、複数の張力伝達部材121にそれぞれ油圧モータ140と電力生産部160が接続されるよう構成することも可能である。
【0042】
また、上述した実施形態では、波力発電システム10が沿岸(onshore)方式で設けられていると例示しているが、これは一例にすぎず、海岸方式によって設けられるシステムにおいても本実施形態に係る波力発電システム10を適用することができる。
【0043】
以下では、図2図3を参照して実施形態に係る波力発電システム10における構成と動作について説明する。
【0044】
まず、図2を参照すると、張力伝達部材121が引っ張られたとき(図面において矢印Aに表示する)、変換体130の一側に接続された油圧モータ140が作動する。
【0045】
詳細には、張力伝達部材121が引っ張られれば、変換体130が一方向に回転が増速機131を介して一定の速度以上に増速して油圧モータ140に伝達される。
【0046】
油圧モータ140は、変換体130によって一方向に回転する場合には、油圧モータ140が油圧ポンプの役割を果たし、低圧側であるタンク141で高圧側であるアキュムレータ142側に流体を流動させる(矢印の(1)方向)。アキュムレータ142では流入する流体によって圧力と流体の体積が増加及び格納される。即ち、張力伝達部材121が引っ張られた時の運動エネルギーが、アキュムレータ142において流体の圧力と体積の形態に格納される。
【0047】
そして、変換体130の他側に接続された側では、増速機132を介して変換体130の回転が一定の速度以上に増速し、フライホイール150及び電力生産部160に伝達される。電力生産部160では、回転エネルギーが伝達されて電気エネルギーを生産する。
【0048】
次に、図3を参照すると、張力伝達部材121が引っ張られていない時は(図面において矢印Bに表示する)、アキュムレータ142に格納されている流体がタンク141側に流動する(矢印の(2)方向)。この場合、高圧側であるアキュムレータ142に格納されている流体が低圧側であるタンク141に自然に流動し、このような流体の流れによって油圧モータ140が回転する。この場合の油圧モータ140の回転方向は、上述した場合と反対方向に回転することになる。
【0049】
油圧モータ140の反対方向回転によって変換体130が反対方向に回転すると共に、変換体130に接続された張力伝達部材121の張力を保持することになる。
【0050】
そして、変換体130の他側に接続された側では、増速機132を介して変換体130の回転が一定の速度以上に増速し、フライホイール150及び電力生産部160に伝達される。この場合にも、電力生産部160では回転エネルギーが伝達されて電気エネルギーを生産する。
【0051】
本実施形態によれば、油圧モータ140によって張力伝達部材121の両方向運動エネルギーを電力生産部160に伝達して電気エネルギーを生産することができる。また、張力伝達部材121で張力が加えられれば、油圧モータ140によってアキュムレータ142に油圧が圧力と体積の形態に格納され、張力伝達部材121で張力が加えられない場合には、油圧モータ140にて格納されている油圧を用いて電力生産部160を作動させることができる。また、複数の張力伝達部材121ごとに油圧モータ140を分離て個別的に設けることで、より効率的に電気エネルギーを生産することができる。また、波力発電システム10の電力の設備容量を小型化し、油圧モータ140の装置の大きさを小型化することができる。
【0052】
上述したように実施形態をたとえ限定された図面によって説明したが、当技術分野で通常の知識を有する者であれば、上記の説明に基づいて様々な技術的な修正及び変形を適用することができる。例えば、説明された技術が説明された方法と異なる順で実行されるし、及び/又は説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が説明された方法と異なる形態で結合又は組み合わせられてもよく、他の構成要素又は均等物によって置き換え又は置換されたとしても適切な結果を達成することができる。
【0053】
したがって、他の具現、他の実施例、及び特許請求の範囲と均等なものなどについても後述する請求範囲の範囲に属する。
【符号の説明】
【0054】
10:波力発電システム
110:可動物体
111:本体部
112:結合部
120:運動伝達部
121:張力伝達部材
122:固定部材
130:変換体
131、132:増速機
140:油圧モータ
141:アキュムレータ(accumulator)
142:タンク
150:フライホイール
160:電力生産部
図1
図2
図3