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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】積層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20221205BHJP
【FI】
B32B27/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020551140
(86)(22)【出願日】2019-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2019039475
(87)【国際公開番号】W WO2020075669
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2018190996
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135265
【氏名又は名称】株式会社ネオス
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 桂太
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-206597(JP,A)
【文献】特表平07-504366(JP,A)
【文献】特開昭62-230832(JP,A)
【文献】特開2015-116801(JP,A)
【文献】特開2003-334888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 39/00-39/44
B29C 65/00-65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型体、接着剤および被覆物が積層された積層体であって、前記成型体が、樹脂よりなる支持体、支持体表面に一部が埋め込まれた微粒子、該微粒子表面および支持体表面のそれぞれの少なくとも一部に付着した離型剤よりなり、
前記微粒子が、100nm~20μmの粒子径を有し、
前記離型剤の内のワックスと前記微粒子が97:3~20:80(ワックス:微粒子)の重量比であることを特徴とする、前記積層体。
【請求項2】
被覆物が革、合成皮革、布、ガラス、金属、樹脂、炭素繊維、またはフィルムである、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
以下の製造工程(1)~(6)を経ることを特徴とする、積層体の製造方法:
(1)金型表面に、離型剤成分、100nm~20μmの粒子径を有する微粒子および水を含有し、かつ前記離型剤成分のワックスと前記微粒子が97:3~20:80(ワックス:微粒子)の重量比である水系離型剤を塗布する離型剤塗布工程、
(2)成型体の支持体原料を前記金型内に注入する支持体原料注入工程、
(3)前記支持体原料を硬化および所望により発泡させる硬化発泡工程、
(4)前記硬化発泡工程で得られた成型体を金型から取出す成型体取出工程、
(5)前記(4)の工程に続いて、前記成型体に接着剤を塗布する接着剤塗布工程、および
(6)前記接着剤が塗布された成型体に被覆物を積層する被覆物積層工程。
【請求項4】
被覆物が革、合成皮革、布、ガラス、金属、樹脂、炭素繊維、またはフィルムである、請求項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の製造方法により得られた積層体。
【請求項6】
以下の製造工程(1)~(6)を経ることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層体:
(1)金型表面に、水系離型剤を塗布する離型剤塗布工程、
(2)成型体の支持体原料を前記金型内に注入する支持体原料注入工程、
(3)前記支持体原料を硬化および所望により発泡させる硬化発泡工程、
(4)前記硬化発泡工程で得られた成型体を金型から取出す成型体取出工程、
(5)前記(4)の工程に続いて、前記成型体に接着剤を塗布する接着剤塗布工程、および
(6)前記接着剤が塗布された成型体に被覆物を積層する被覆物積層工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型体およびその被覆物よりなる積層体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
成型体、例えば、多孔質のプラスチックフォームの成型体を製造するに際しては、不揮発性成分としてワックスまたはシリコーン、もしくはこれらの混合物を含有した離型剤が使用されている。このような離型剤としては種々開発市販されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
成型後の成型体は、離型剤由来の成分が成型体表面に付着しているため、成型体を他の物質と接着させることは困難となる。そのため、成型後の成型体は、ショットブラスト処理、サンドブラスト処理、火炎処理、コロナ処理、プラズマ処理等またはアルコール、ケトン、エステル、炭化水素等の溶剤による洗浄が行われる(例えば、特許文献2)。
【0004】
ショットブラスト、サンドブラスト処理は強力な被接着性を持たせることができるが、作業環境の悪化と長い処理時間が問題となる。火炎処理は熱による変形、溶融並びに引火、火災が起こる危険性がある。コロナ処理は真空にするため時間がかかり、また設備に要する費用が高い。アルコール、ケトン、エステル、炭化水素等の溶剤による洗浄は簡便である一方で離型剤の種類によっては成型体に十分な被接着性を持たせることができない。かつ、危険物の使用により使用環境の制限もある。
【0005】
従来、被覆物が積層された樹脂成型体は、成型体樹脂材料を離型剤を使用して成型し、型から離型後成型体表面に付着した離型剤を除去するため、上記のような後処理を行い、その後、成型体に被覆物を積層被覆させていた。すなわち、後処理工程をなくして、成型体の離型性と接着性を両立させることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-39845号公報
【文献】特開2003-221458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、成型体の離型性と接着性を両立させ、かつ、効率よく成型体およびその被覆物よりなる積層体を製造する方法、およびその製造方法により製造された積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、以下の製造工程(1)~(6)を経ることを特徴とする、積層体の製造方法によって達成される。
(1)金型表面に、水系離型剤を塗布する離型剤塗布工程、
(2)成型体の支持体原料を前記金型内に注入する支持体原料注入工程、
(3)前記支持体原料を硬化および所望により発泡させる硬化発泡工程、
(4)前記硬化発泡工程で得られた成型体を金型から取出す成型体取出工程、
(5)前記(4)の工程に続いて、前記成型体に接着剤を塗布する接着剤塗布工程、および
(6)前記接着剤が塗布された成型体に被覆物を積層する被覆物積層工程。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、製造工程における成型体の離型性の維持と、成型後の成型体表面の処理をすることなく被覆物の成型体への良好な接着力といった離型性の維持とは相反する効果との両立、向上が達成できるものである。
本発明により、従来にはなかった新規な積層体の製造方法および積層体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の積層体の概略断面図。
図2】実施例で成型した成型体Aの斜視図。
図3】実施例で成型した成型体Bの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の重要な側面は、以下の製造工程(1)~(6)を経ることを特徴とする、積層体の製造方法が提供されることある。
(1)金型表面に、水系離型剤を塗布する離型剤塗布工程、
(2)支持体原料を前記金型内に注入する支持体原料注入工程、
(3)前記支持体原料を硬化および所望により発泡させる硬化発泡工程、
(4)前記硬化発泡工程で得られた成型体を金型から取出す成型体取出工程、
(5)前記(4)の工程に続いて、前記成型体に接着剤を塗布する接着剤塗布工程、および
(6)前記接着剤が塗布された成型体に被覆物を積層する被覆物積層工程。
【0012】
本発明の積層体の製造方法は、成型体を金型から取出した後、従来行われていた後処理、すなわち、成型体をショットブラスト処理、サンドブラスト処理、火炎処理、コロナ処理、プラズマ処理またはアルコール、ケトン、エステル、炭化水素等の溶剤による洗浄等の処理を施すことなく、金型から取出された成型体に、接着剤を直接塗布し、この接着剤が塗布された成型体に被覆物を積層することに大きな特徴がある。上記「(5)前記(4)の工程に続いて、前記成型体に接着剤を塗布する工程」は、そのような順序の工程を意味している。
本発明の積層体の製造方法により、効率よく積層体を製造することができ、かつ、得られた積層体は、成型体と被覆物との接着性に優れている。従来技術では決して果たせなかった、離型性と接着性の両立が達成できる。
【0013】
離型剤塗布工程
離型剤塗布工程で使用する水系離型剤は、微粒子を含有するものであり、少なくとも離型剤成分、微粒子および水を含有する。
水は、該少なくとも離型剤成分、微粒子以外の水系離型剤の残余の部分を構成する。
離型剤成分としては、従来から知られている水系離型剤に使用されているワックス、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、オレフィン重合体、高級脂肪酸エステル、酸化ワックス等、フッ素成分、例えば、パーフルオロ基含有炭化水素化合物等および/またはシリコーン成分、例えば、シリコーンオイル、シリコーンレジン、ストレートシリコーン、変性シリコーン等を使用するようにすればよい。フッ素成分およびシリコーン成分は離型性の向上のために使用される。ワックス成分の使用のみでもよいが、フッ素成分および/またはシリコーン成分と共に使用されてもよい。フッ素成分および/またはシリコーン成分は、ワックス成分に対して、通常、0~300重量%、好ましくは2~100重量%程度使用される。
【0014】
水系離型剤に含まれる微粒子は、特に限定されず、従来から使用されているもの、例えば、シリカ粒子、アクリル粒子、ウレタン粒子、シリコーンゴムパウダー、プラスチックパウダー、PTFEパウダー等を使用することができ、その種類は特に限定されるものではないが、微粒子の粒子径は100nm~20μm、好ましくは、1μm~20μm、より好ましくは1μm~18μm、さらにより好ましくは2μm~15μmの範囲のものを使用するようにする。100nm以下だと、成型体と、後の工程で積層される被覆物との接着性の達成が困難となる。20μm以上だと水系離型剤である分散溶液の分散安定性に懸念がある。なお、本発明にいう粒子径は、平均粒子径を意味している。
【0015】
微粒子は、離型剤の内のワックス成分との重量比で、97:3~20:80(ワックス:微粒子)、好ましくは、96:4~25:75、より好ましくは、95:5~30:70の範囲で使用するようにする。成型時の離型性が損なわれず、また、得られる積層体の成型体と被覆物の良好な接着性が達成される。微粒子成分の使用量が多いほど、成型体と被覆物との接着力が高くなる傾向がある。
【0016】
水系離型剤における離型剤成分の含有量は、特に、限定されるものではなく、従来から知られている範囲の量で使用すればよい。例えば、水系離型剤における離型剤成分の含有量は、0.1~70重量%程度、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%、さらにより好ましくは0.5~3重量%なるような量で使用すればよい。
【0017】
上記成分以外にも防腐剤、抗菌剤、防錆剤、乳化剤、界面活性剤等を、本発明の効果を損なわない範囲の量で含ませてもよい。その量は、離型剤のワックス成分に対して、通常、0.1~300重量%程度である。
【0018】
離型剤塗布工程において使用される金型は、従来から存在する、または新たに作成した所望の金型を使用すればよく、水系離型剤の塗布方法、塗布量は特に限定されるものではなく、従来から公知の塗布方法、例えば、スプレー塗布、刷毛塗り、浸漬等、塗布量、例えば、50~150g/m、好ましくは70~120g/mを適用すればよい。
【0019】
支持体原料注入工程
支持体原料注入工程においては、支持体原料を前記金型内に注入する。
支持体原料としては、ウレタン樹脂原料を金型内で硬化し、樹脂成型体として得られるものが好ましい。ウレタン樹脂原料は種々知られており、市販もされている。それらの公知のものを使用すればよい。
上記した支持体原料の他、金型内に注入できる熱硬化性樹脂材料、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂原料、繊維強化プリプレグ等の熱硬化性樹脂材料も使用可能である。
【0020】
支持体原料を前記金型内に注入する方法は、特に限定されるものではなく、従来から公知の注入方法、例えば、注入機、ハンドミキシング等を使用するようにすればよい。
【0021】
硬化発泡工程
硬化発泡工程においては、金型内に注入された支持体原料を硬化および所望により発泡させる。硬化方法、硬化条件、または、発泡方法、発泡条件等は、特に限定されるものではく、従来から知られている方法、条件を適用するようにすればよい。
例えば、支持体原料として発泡性材料を使用している場合は、最終製品に要求される特性に合わせて発泡硬化させればよい。例えば、発泡ウレタン樹脂原料を使用した場合は、0.01~1.0g/cm程度に発泡され、革巻きハンドル積層品の支持体に使用される。
【0022】
成型体取出工程
次に、成型体取出工程においては、前記硬化発泡工程で得られた成型体を金型から取出す。金型からの取出しは、特に、制限されるものではなく、従来から公知の取出し方法を採用するようにすればよい。離型性を損なわない範囲で微粒子が添加されているため、成型体取出工程における成型体の離型性は、従来の離型性が確保された良好なものである。
【0023】
接着剤塗布工程
接着剤塗布工程においては、前記成型体取出し工程に続いて、取出した成型体に接着剤を塗布する。取出した成型体を後処理することなく、金型から取出した成型体に、接着剤を直接塗布する。
塗布する接着剤は、支持体原料、後の被覆物積層工程で成型体に積層され接着剤に接着される被覆物の材料を考慮して適宜選択して使用すればよく、特に、制限されるものではない。例えば、成型体が発泡ポリウレタンで、被覆物が合成皮革または革、布、PETフィルムの場合、例えば、クロロプレンゴム系接着剤、酢酸ビニル系接着剤を使用することができる。
【0024】
接着剤塗布工程における、接着剤塗布方法、条件は、特に制限されるものではなく、従来から公知の方法、条件を採用するようにすればよい。
被覆物積層工程
被覆物積層工程においては、接着剤塗布工程で得られた接着剤が塗布された成型体の表面の少なくとも一部または全部に、被覆物、例えば、革、合成皮革、布、ガラス、金属、樹脂、炭素繊維、各種フィルム等、望ましくは、革、合成皮革、布、PETフィルム等のフィルムを積層する。積層する方法、条件等は従来から公知の方法、条件を採用するようにすればよい。
上記したように、被覆物、成型体材料、積層する方法を考えあわせ、使用する接着剤が選ばれる。
積層体
【0025】
本発明の別の重要な側面は、上記製造工程を経て得られる積層体が提供されることにある。
即ち、成型体、接着剤および被覆物が積層された積層体であって、前記成型体が、樹脂よりなる支持体、支持体表面に一部が埋め込まれた微粒子、該微粒子表面および支持体表面のそれぞれの少なくとも一部に付着した離型剤よりなることを特徴とする、前記積層体が提供される。
本発明で提供される積層体の構造の概略断面図を図1に示す。
【0026】
本発明の積層体1は、支持体2、微粒子3および離型剤4よりなる成型体5、接着剤6および被覆物7が積層された構成を有している。成型体5は、成型体取出工程で金型から取出された成型体である。
【0027】
支持体2は、支持体原料を硬化および所望により発泡させてなるものである。
【0028】
微粒子3は、金型表面に塗布された水系離型剤に含まれていた微粒子であり、原料注入工程、硬化発泡工程、成型体取出工程を経て、金型表面に塗布された微粒子が、支持体表面にその一部が埋め込まれた状態で存在するものである。
【0029】
離型剤4は、金型表面に塗布された水系離型剤に含まれていた離型剤であり、原料注入工程、硬化発泡工程、成型体取出工程を経て、微粒子表面および支持体表面のそれぞれの少なくとも一部に転写付着したワックス等の離型剤である。
【0030】
接着剤は、接着剤塗布工程で塗布された接着剤である。
【0031】
被覆物は、被覆物積層工程で積層された被覆物である。
【0032】
本発明の積層体は、支持体表面に一部が埋め込まれた微粒子3のアンカー効果により、成型後該微粒子表面および支持体表面のそれぞれの少なくとも一部に付着した離型剤が存在しているにもかかわらず、被覆物7が接着剤6を介して支持体2に十分な強度を持って付着していると考えられている。
【0033】
本発明の積層体の具体例としては、シートクッション、アームレスト、フットレスト、ハンドル等があげられる。それらの積層体を製造するに際しては、既存の設備を使用し、かつ、効率よく製造することができる。
【0034】
以下、具体的に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はそれらの実施例に限定的に解釈されるべきでなく、本発明の概念に接した当業者が想到し、実施可能であると観念するであろうあらゆる技術的思想、その具体的態様が本発明に含まれるものとして理解されるべきものである
【実施例
【0035】
離型剤サンプルの調製
離型剤として以下のワックスA、B、C、フッ素、シリコーンを使用した。
ワックスA:自社製造ワックス混合物;主成分パラフィンワックス
ワックスB:自社製造ワックス混合物;主成分マイクロクリスタリンワックス
ワックスC:自社製造ワックス混合物;主成分マイクロクリスタリンワックス
フッ素:自社製造フッ素製品
シリコーン:変性シリコーンオイル
【0036】
微粒子成分として、以下の微粒子A、B、Cを用いた。
微粒子Aは、シリコーンゴムパウダーI(平均粒径:4μm);
微粒子Bは、シリコーンゴムパウダーII(平均粒径:2μm);
微粒子Cは、ウレタンビーズ(平均粒径:15μm)。
微粒子Dは、シリカ粒子(平均粒径:15nm);
微粒子Eは、プラスチックビーズ(平均粒径:40μm)。
【0037】
上記の離型剤、微粒子成分を表1~5に示した重量部を界面活性剤を用いて水に分散させ、水系離型剤を調製した。なお、離型剤サンプル中、ワックス成分が2重量%になるように水を添加し、ワックス成分と微粒子成分が100:0~10:90の範囲となるように調製した。
【0038】
樹脂成型
50℃に加温したアルミニウム製試験用金型の内壁面に、離型剤サンプルをスプレーガン(アネスト岩田社製:W-101)を用いて所定量(100g/m)塗布した。所定量の成型体原料撹拌混合物(イソシアネートおよびポリオールを50kg/mになるように混合したもの)を前記金型内に注入し、金型上蓋を閉じ、90秒硬化させることで成型体A(図2),および成型体B(図3)を得た。
【0039】
液安定性評価
製造した離型剤サンプルを室温で1日間静置した後、離型剤サンプルの液状態を目視観察した。
液安定性は配合成分が均一に分散していれば「○」、不均一になっていたら「×」とランク付けした。
【0040】
離型性評価
樹脂硬化後、金型の上蓋開放にかかる荷重をプッシュプルスケールで測定した。
結果を表1~表3に示す。
離型性は60N未満で「○」(良好)、60N以上で「×」(不良)とランク付けした。
【0041】
接着性評価
接着剤:クロロプレンゴム系接着剤、酢酸ビニル系接着剤
被覆物:革、布(金巾3号)、PETフィルム
表1に示した組合せで上記接着剤、被覆物を使用し、被覆物の接着面および成型体Aまたは成型体Bの接着面8(図2)または接着面9(図3)に接着剤をそれぞれ約1g塗布し、100秒程乾燥させた後に被覆物と成型体を張り付けた(積層した)。
接着剤は被覆物および成型体Aまたは成型体Bの接着面に2.5cm×7cmの範囲に均一になるよう塗布した。
室温で約12時間静置後、被覆物の端部に輪状の金具を取り付け、プッシュプルスケールを用いて被覆物を成型体から剥離する際に要する荷重を測定した。
結果を表1~5中に示した。
接着性は、接着力が10N以上で「○」(良好)、10N未満で「×」(不良)とランク付けした。
【0042】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0043】
実施例1~13に示されているように、製造工程における成型体の離型性の維持と、成型後の成型体表面の処理をすることなく被覆物の成型体への良好な接着力の両立が達成できている。
比較例1、3、4、5、8は、微粒子を使用してないので、被覆物の成型体への接着力に劣る。比較例8においては、離型性にも劣る。
比較例2は、ワックス成分に対して微粒子成分の量が多すぎるため、被覆物の成型体への接着力は優れるものの、製造工程における成型体の離型性に劣る。
比較例6は、使用した粒子の粒径が小さすぎるため、離型性、接着性に劣る。
比較例7は、使用した粒子の粒径が大きすぎるため、分散溶液である水系離型剤の安定性に欠けるものである。
【符号の説明】
【0044】
1:積層体
2:支持体
3;微粒子
4:離型剤
5:成型体
6:接着剤
7:被覆物
8:接着面
9:接着面
図1
図2
図3