(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】導電体に接して又はその近傍で電流を検出するデバイス
(51)【国際特許分類】
G01R 19/165 20060101AFI20221205BHJP
【FI】
G01R19/165 L
(21)【出願番号】P 2020551953
(86)(22)【出願日】2018-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2018063426
(87)【国際公開番号】W WO2019185172
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】102018107481.6
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102018111308.0
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522067846
【氏名又は名称】デーン エスエー
【氏名又は名称原語表記】DEHN SE
【住所又は居所原語表記】Hans-Dehn-Strasse 1 92318 Neumarkt i.d.OPf. Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツァールマン、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ビルク、ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ベーム、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ビューラー、クラウス
(72)【発明者】
【氏名】マゲート、ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】エルハルト、アルント
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェンコ、エドゥアルト
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第19733268(DE,A1)
【文献】特開昭48-008281(JP,A)
【文献】実開昭56-110734(JP,U)
【文献】実開昭49-105868(JP,U)
【文献】特開昭57-106337(JP,A)
【文献】特開2007-303952(JP,A)
【文献】国際公開第2017/036793(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気応答スイッチとして、少なくとも1つのリード接点を備えた、導電体に接して又はその近傍で電流を検出するデバイスであって、該デバイスは、該導電体の近傍に配置され、その結果、50A以上200kA以下の大きな電流が該導電体を流れると、発生する磁場が該スイッチをトリガし、該スイッチに接続された評価用電子回路を起動し、
サージ電流変数を検出し、一方では長期パルス電流を、他方では短時間パルス電流を区別するために、複数のリード接点(4、5、6)が該導電体(8)から予め定義された距離に配置され、該評価用電子回路(2)は、該それぞれのリード接点(4、5、6)の応答及びスイッチング時間を判定し、判定された値を該それぞれのリード接点へ割り当てることにより、該サージ電流変数が検出され、スイッチング時間から、パルス形状が検出され、応答動作を設定するために、該リード接点(9)のうちの少なくとも1つは、該それぞれのリード接点(9)に作用する該磁場(B)に影響を与えるためのシールドを備えることを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
前記導電体は、雷電流避雷システム又はアレスタ・ロッドの不可欠な要素であることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記導電体は、サージ電流を流す過電圧アレスタの不可欠な要素であることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記評価用電子回路(2)は、マイクロコントローラ(100)及び少なくとも1つの低域フィルタ(90)を備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
データは、パルス状のサージ電流を長期に分析するために、無線又は有線で上位のユニットに伝送されることを特徴とする、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
無線モジュール(111、140)は、データ送信用に設けられ、データ送信は、最後のサージ電流パルスが減衰した後、所定の時間が経過した後にのみトリガされることを特徴とする、請求項4又は5に記載のデバイス。
【請求項7】
自律的な長期電流源(3、50)を備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
少なくとも前記リード接点(4、5、6)は、平面配線キャリア上に固定されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記導電体(8)に対する前記リード接点群(4、5、6)のある角度をなす位置は、固定的に予め定義されることを特徴とする、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
いずれの場合も、風力タービンのロータ・ブレードの雷アレスタ・ケーブルに接して又はその近傍に配置されることを特徴とする、請求項1から
9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
パルス・イベントとデータ伝送との間の、所定の又は設定可能な時間が経過した後に、タイム・スタンプを生成できることを特徴とする、請求項1から
10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記導電体(8)は、雷保護のために設けられてはいないが、構成要素又は設備にわたって部分的な雷電流が流れる可能性がある、該構成要素又は該設備の、不可欠な要素であることを特徴とする、請求項1から
11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記導電体(8)は、索道又はクレーンの巻上げケーブル又はキャリア・ケーブルの、不可欠な要素である、請求項
12に記載のデバイス。
【請求項14】
50Aから200kAの範囲のサージ電流特性、並びにT≧10msの長期パルスのパルス形状と10/350μs及び8/20μsのパルス形状とを有する、雷電流及び過電流イベントを検出し分類する、請求項1から
10のいずれか一項に記載のデバイスの使用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気応答スイッチとして、少なくとも1つのリード接点を備えた、導電体に接して又はその近傍で電流を検出するデバイスであって、導電体の近傍に配置され、その結果、大きな電流が導体を流れると、発生する磁場がスイッチをトリガし、スイッチに接続された評価用電子回路を起動する、請求項1によるデバイスと、雷電流及び過電流イベントを検出し分類する、請求項14による、かかるデバイスの使用法とに関する。
【背景技術】
【0002】
DE2 826 247C2より、電線の短絡インジケータが既に知られている。
【0003】
短絡インジケータは、電線の磁場及び電子自己保持回路によって制御されるリード接点を備える。自己保持回路は、電子カウンタ及びクロック発生器の両方を制御するフリップ・フロップ回路として形成される。クロック発生器は、フラッシュ・ライト信号発生器をトリガする。電子カウンタは、時間経過後にフリップ・フロップ回路をリセットし、クロック発生器を停止する。
【0004】
使用されるリード接点は、短絡の瞬間に、それに対応して、リード接点に作用し少なくとも短時間リード接点を閉じる、大きな磁場が生成されるように、電流導体に平行な平面に配置される。
【0005】
したがって、電源電圧はフリップ・フロップ回路の入力に到達し、それにより、フリップ・フロップ回路は自己保持位置に遷移する。
【0006】
筐体の仮想の長手方向軸を中心にしてリード接点をねじることにより、リード接点の感度が低下する。これにより、短絡インジケータを、工場で、たとえば200から400Aの範囲の、特定の階段状のトリップ電流に設定できる。
【0007】
DE103 29 223B9は、短絡電流の磁場の力を利用してリード接点を閉じる短絡センサについて開示しており、短絡センサは、0°から90°の間で回転することによって特定のトリガ電流に設定可能となるように、プリント回路基板上に装着される。
【0008】
DE27 00 995A1は、そこを通って電流が流れる電気負荷の、監視システムに関する。
【0009】
負荷は、具体的には、自動車のブレーキ又は尾灯を指す。負荷の電源線を通って流れる電流によって発生する磁場の中に、磁場に応じるスイッチが配置され、スイッチは表示デバイスにつながる。スイッチとして、具体的にはリード接点が使用される。
【0010】
好ましい実施形態では、スイッチは、負荷の電源線によって形成されるコイルの内側に配置され、それにより、隣接するコイル巻線のそれぞれ個々の導体の周囲の磁場は、十分な応答感度を得るように重なる。
【0011】
該特許の中での教示の実現において、コイルと、磁場に応じて作動し得るスイッチとは、負荷の電源線にループが設けられ得る構造上の単位として組み合わされる。
【0012】
直列接続され、選択的に始動される回路遮断器を、選択的にトリガする配置構成では、DE199 30 089A1に従って、短絡によって直接影響を受ける回路遮断器が、トリガ・システムにブロック信号を出力し、リード接点は、下流の回路遮断器の各主回路に磁気的に結合され、且つ上流の回路遮断器のトリガ・システムに電気的に接続される。
【0013】
保護管接点は、回路遮断器の接続端子の近傍に配置されることが好ましい。
【0014】
上記で示した最新技術の解決策では、共通して、リード接点がスイッチのベースを形成し、スイッチは磁場によって作動可能である。十分な磁気エネルギーがあれば、それ自体は既知のリード・スイッチの接点リードが、接点が閉じる位置になり、その結果、スイッチが配置されている電気回路が閉じられるであろう。かかるリード・スイッチの使用に基づいて、電気回路は監視され、電気回路の機能が信号化され得る。さらに、短絡電流自体が閾値として定義され、短絡電流の磁場がリード接点、すなわちスイッチを閉じることができるので、短絡電流を判定できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述から、本発明の課題は、導電体に接して又はその近傍で電流を検出するために、小さな設置スペースしか占有せず、磁気応答スイッチとして少なくとも1つのリード接点を備える、さらに開発されたデバイスを提案することであって、該デバイスは、いわゆる雷カウンタに当てはまるような、複雑な電子回路を、つまりコストが高く障害が発生しがちな回路を必要とすることなく、導電体に所定の電流が流れたときのスイッチング状態を定義できるだけでなく、電流パルス及びサージ電流を検出して評価する可能性もある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の課題の解決策は、請求項1に記載の特徴の組合せによるデバイス、並びに請求項14に記載の教示による使用法によって実行され、従属請求項は、少なくとも適切な構成及びさらなる開発を示す。
【0017】
広範な研究の結果、驚くべきことに、導電体に対して間隔を空けて配置され、且つ/又はその感度で段階的に配列された複数のリード接点の、ほぼ空間的にずらされた配置構成によって、サージ電流変数を判定し、区別できることが示されている。この場合、特に驚くべきやり方で、長期パルス電流が認識できるだけでなく、短期パルス電流も評価できることが示されている。この場合、本発明によるデバイスは、特定の適用例、たとえば風力タービンにおける落雷の監視に関しては驚くべきことであるが、過酷な環境においても、機械的衝撃及び振動の影響下でも問題なく動作する。
【0018】
リード接点自体はその構造上、機械的な慣性があり、極端に短期のパルス負荷時に、再現性のある応答を期待することはできない。高感度の接点の判定される所定の応答は、部分的にはパルスのプロセス中に既に、どんなさらなる衝撃の磁場もないパルス負荷のかなり後でさえも、より低感度又はより大きい機械的慣性を有する接点の、同様に再現可能な応答と同じほどには、たぶん予測できない。さらに、特に高感度のリード接点の過負荷抵抗は驚くべきものである。<100Aのパルス電流ばかりでなく小さな長期電流も、安全に検出できる。磁気負荷で最大250kAの著しくより大きいパルス負荷があり、応答電圧を1000倍以上上回っている場合、それぞれのリード接点の機械的構成部品は、大きい動的な力によって機械的に破壊されることも損傷することもなく、それにより、かかる複数の負荷がかかった後でさえも、パルス電流の再現性のある検出が可能である。
【0019】
本発明に従ってそれぞれのリード接点を配置し、ループがほとんどないやり方で接続部に給電することにより、接点の経路への電流の不利な結合を、非常に低いスイッチング電流の、必要な高感度の接点が、破壊させるスパークを回避することによって、場合によっては高周波の跳ね返りと共に閉じる間に誘導される電流による損傷を受けることがない程度まで、減らすことができる。リード接点の配線を追加することにより、スパークを回避できる。リード接点の接続ループへの望ましからざる電流の結合は、能動的又は受動的な過電圧保護対策によって減らすことができる。
【0020】
リード接点を使用して電流を検出する本発明によるデバイスは、雷イベントを評価することができるように、いわゆるスマート・アレスタ・ロッド内に統合され得るか、又はかかるアレスタ・ロッドの不可欠な要素を表し得る。
【0021】
別の適用例によれば、電流を検出する本発明によるデバイスは、構成上の不可欠な要素であり、避雷(arresting)デバイスとしてEN62305-3に従って利用される、かかる導体に使用され得る。リード接点は、導電性の構成要素に接して又はその近傍に設置することもでき、導電性の構成要素は、原理的に、雷保護のために設けられてはいないが、導電性の構成要素にわたって部分的な雷電流が流れる可能性がある。例として、索道の巻上げケーブル、クレーンの保持ロープなどを、参照すべきである。この件に関しては、部分的な雷電流による潜在的な損傷が、適切な措置、たとえば、損傷したロープ又はケーブルの交換を開始するために、首尾よく早期に認識され得る。
【0022】
リード接点の使用によるガルバニック分離、並びにデバイスとデバイスの電子部品との、それを通って雷電流が流れるアレスタからの距離により、どんなメンテナンスの手間もかけずに長期間にわたって問題なく動作できる。
【0023】
同様に、本発明によるデバイスは、それぞれの電流経路に統合されるか、又は割り当てられるので、本発明によるデバイスは、過電圧アレスタの不可欠な要素であるか、又は過電圧アレスタの負荷を評価するために使用できる。
【0024】
したがって、本発明によるデバイスは、他の方法で使用される、たとえば、いわゆるRogowskiコイルを使用する複雑な測定システムの、費用対効果の高い代替手段を表す。
【0025】
本発明によるデバイスは、その適用例において、一方で、たとえば雷イベントに基づく寄生電流パルスが検出され、これがパルス形状及びパルス持続時間ばかりでなく、電流レベルに関して区別され得るという点で、2重の機能の実現を可能にする。
【0026】
導電体に接して又はその近傍で電流を検出するデバイスは、したがって、磁気応答スイッチとして、リード接点をベースとして使用し、デバイスは、大きな電流が導体を流れる場合、発生する磁場がスイッチをトリガし、スイッチに接続された評価用電子回路を起動するように、導電体の近傍に配置される。
【0027】
本発明によれば、サージ電流変数を検出し、一方では長期パルス電流を、他方では短期パルス電流を区別するために、複数のリード接点が導電体から予め定義された距離に配置される。
【0028】
さらに、本発明によれば、応答動作を設定するために、リード接点の少なくとも1つは、それぞれのリード接点に作用する磁場に影響を与えるシールドを備える。
【0029】
評価用電子回路は、それぞれのリード接点の応答及びスイッチング時間を判定する。判定された値のリード接点への割当て、リード接点それぞれの空間配置構成及び導電体からの距離、サージ電流変数から、並びにスイッチング時間から、好ましくはマイクロコントローラを使用してパルス形状を検出又は判定できる。
【0030】
本発明によれば、閉じる機能を有するリード接点以外も使用できる。同様に、開くリード接点を利用する可能性もある。対応する開く接点は、接点の応答動作が設定可能であるように、永久磁石と組み合わせて実現できる。
【0031】
したがって、本発明の検知では、空間的に間隔を空けて配置される構成によるだけでなく、別の基準を参照して、電流の区別に関連する応答動作を設定する。それぞれのリード接点の応答動作に制限を設定するために、上記のシールドを提案する。このシールドは、金属スリーブ又は金属層として実現できる。たとえば、高周波プロセスに対して、銅又はアルミニウム材料をベースとする金属スリーブ又は層は、渦電流を生成することを目的としている。低周波プロセスの場合、感度を下げるために、高透磁率の材料、たとえば、軟磁性鋼を使用できる。
【0032】
両方の効果を利用するために、高い透磁率を有する材料を、たとえば銅の導電性コーティングに加えて使用できる。強磁場の場合、透磁率の高い材料が飽和するため、それぞれのリード接点を囲繞するシールド材料の段階的配列が有益である。
【0033】
シールドにより、リード接点の感度を個別に設定及び変更でき、その結果、同じ感度で同一の設計の標準的なリード接点が使用可能となる。
【0034】
導電体からのリード接点の、異なる空間的間隔の制限により、同じ設計で異なる対向する界磁磁石を備えた開く接点を、代替手段又は補完手段として使用できる。同様に、距離をとる他に、磁場の影響に対してシールドされた閉じる接点の使用が可能である。
【0035】
本発明の一実施形態では、導電体は、雷電流避雷システム、アレスタ・ロッド、又は原理的に雷電流がそれを通って流れる可能性がある導電性構成要素の、不可欠な要素である。
【0036】
本発明のさらなる実施形態では、導電体は、サージ電流を流す過電圧アレスタの不可欠な要素である。
【0037】
評価用電子回路は、好適なマイクロコントローラの他に、データ記憶部も特徴とする。
【0038】
記憶されたデータは、パルス状のサージ電流又は長期電流を長期に分析するために、無線若しくは有線で、又は光ファイバ(OWG)を使用して上位のユニットに伝送され得る。
【0039】
この結果、たとえば、本発明による複数のデバイスを複雑な建物内に統合することにより、現場又はリスク分析のための、過電流イベントに関する負荷の検出、記憶、及び評価が可能である。
【0040】
デバイスを確実に、永続的にメンテナンス不要で使用するために、デバイスには、長期の電流源が装備されている。
【0041】
本発明によるデバイスは、通常、いわゆるスリープモードにあり、過電流イベントが発生したときにしか作動しないので、極端に低いスタンバイ電流しか発生せず、電池又は蓄電池へのどんな変更もなしに所望の長時間使用がもたらされる。
【0042】
本発明の1つの構成では、本発明によるデバイスはまた、電流を流す導体が通常接続されている配電網からエネルギーを引き出し得る。
【0043】
パルス登録又は評価回路の動作に必要なエネルギーは、実際の干渉信号又は測定信号から、つまりパルス自体から取得できる。
【0044】
動作可能なエネルギーを取得する別の可能性は、いわゆる環境発電である。この場合、エネルギー生成は、動きから、でなければ光起電素子にフォール・バックすることによって実現できる。
【0045】
本発明のさらなる開発において、デバイスは、データ送信用の無線モジュールを特徴とし、本発明によれば、データ送信は、最後のサージ電流パルスが減衰した後、所定の時間が経過した後にのみトリガされる。このようにして、確実に干渉のないデータ送信が行われる。
【0046】
本発明の一実施形態では、少なくともリード接点は、平面配線キャリア、たとえば、銅でコーティングされたプリント回路基板上に固定される。
【0047】
本発明の好ましい実現例において、導電体に対するリード接点群のある角度をなす位置は、再現可能な測定結果を実現させるために、固定的に予め定義され、可変ではない。
【0048】
さらに、デバイスの構成部品を収容する筐体が、本発明に従って形成され、筐体は、導電体の位置を特定し、且つ/又は導電体を取り付ける手段を備えた、前面又は側面を有する。
【0049】
このようにして、電流が流れる場合に導体の周囲に発生する磁場と筐体内に配置されたリード接点との間の正しい配置が、デバイスが導電体に接して又はその近傍で使用されるか又は装着されたときに確保される。
【0050】
筐体は、導電体を受容するか又は通す開口を必要としないので、最高の保護レベルで、つまり屋外及び危険な環境条件下で使用されるよう構成され得る。
【0051】
本発明によるデバイスの特殊な変形例では、デバイスは、風力タービンのロータ・ブレードの雷アレスタ・ケーブルに接して又はその近傍に配置構成されるよう構成される。風力タービンのロータ・ブレードの上面に配置される、いわゆるレセプタが既に過度に負荷をかけられているか又は溶けている可能性がある場合、下位のカウンタ・デバイスを用いて、雷電流イベントの数だけでなく強度及びパルス形状も検出され、これから結論を下すことができ、それによって、メンテナンスの割当て又は修理をスケジュールできる。
【0052】
本発明のデバイスはまた、たとえば索道の巻上げケーブルにおける、起こり得る落雷を監視及び評価するために利用できる。巻上げケーブルでの雷電流の検出は、それに対応して配置及び構成された、説明した教示におけるリード接点を備えるセンサによって実現される。雷電流又は部分的な雷電流が検出されると、上位の制御メカニズムへの通知が行われる。次いで、これから、巻上げケーブルの点検の必要性を決定し、必要に応じて運転中断を要求できる。長期電流の検出は、かかる適用例では特に問題がある。巻上げケーブルで発生する溶融プロセスには、特に冬の雷雨時に可能性のある長期電流が必ず存在する。
【0053】
本発明による、電源ネットワークへのどんなガルバニック接続もない検出デバイスの、提案するエネルギー自律動作モードは、測定デバイスから分離する距離を守る必要がないという利点を有する。
【0054】
提示されたデバイスの本発明による使用は、雷サージ電流で生じていないが、>50Aから最大200kAの範囲のサージ電流特性を特徴とする、その種の雷及び過電流イベントでさえも検出及び分類すること、且つT≧10msの長期パルスのパルス形状、並びに10/350μs及び8/20μsの種類のパルス形状のイベントを検出することを目標とする。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、例示的な実施形態ばかりでなく図にも基づいて、以下でより詳細に説明することにする。
【0056】
これに関して、
図1は、たとえば導電体から所定の距離にある、3つのリード接点を備えた本発明によるデバイスの主な配置構成を示している。
【0057】
図2は、それぞれのリード・センサ4、5、6の下流に配置された低域通過フィルタ90を備える、評価用電子回路の簡略化した構成図を示し、該フィルタのそれぞれの出力は、フィルタ90の出力側で無線インタフェース110と通信するマイクロコントローラ100につながる。
【0058】
図3による構成図では、リード・センサ4、5、6はやはり、R-C低域通過フィルタ90と通信するベースとして使用される。
【0059】
それぞれのリード・センサ4、5、6のスイッチング時間を判定するために、低域通過フィルタはそれぞれ、比較器12の入力と通信し、比較器12の出力は、メモリ・ユニットを備えたマイクロコントローラ100につながる。
【0060】
これに関して、比較器120の比較入力につながる計時モジュール130が存在する。電圧源について、既に
図1に関連して説明した電池5を使用する。計時モジュール130及びマイクロコントローラ100を用いて、検出されたパルス形状は、信号処理の手法で、それぞれのリード・センサ又はリード接点4、5、6のスイッチング時間から判定され得る。
【0061】
組立体110及び140は、エア・インタフェースを形成し、検出されたサージ電流変数を、確実に無線でデータ送信する。
【0062】
GSMを介したクラウド接続を保証するために、別の信号処理及び制御ユニット150が通信モジュール160と通信する。別法として、モジュール170を用いて、データ評価ばかりでなく長期分析のための典型的なインタネット接続を実現できる。
【0063】
図1による例示的な実施形態に従うデバイスは、ベースとしてプリント回路基板1を使用し、無線モジュール2を備えた評価ユニットばかりでなく、電池3の形態の長期に安定した電流源も備える。
【0064】
プリント回路基板1又は配線キャリアの平面側部に、又はその上に、3つの隔置されたリード接点4、5、及び6が、互いにほぼ平行に配置されている。応答動作を設定するために、リード接点の少なくとも1つはシールドを備え得る。
【0065】
導電体8は、プリント回路基板1の疑似係止縁(quasi stop edge)7に引っ張られる。導電体8は、たとえば、風力タービンのロータのアレスタ・ケーブルであり得る。
【0066】
サージ電流がアレスタ・ケーブル8を流れる場合、磁場がアレスタ・ケーブルの周囲に形成され、それは、様々な強度で隔置されたリード接点4、5、6を貫通する。
【0067】
たとえば、リード接点4は導体から5mmの距離にあり、リード接点5は導体から15mmの距離にあり、リード接点6は導体から105mmの距離にあると仮定する。
【0068】
リード接点4は、Imin≧50Aでパルス持続時間T≧10msの長期パルスを検出できる。その上、アレスタ・ケーブル8から最も近い距離にあるリード接点4は、Imin≧60Aでパルス形状10/350μsのサージ電流パルス及びImin≧70Aでパルス形状8/20μsのサージ電流パルスを検出できる。
【0069】
リード接点5は、Imin≧200Aでパルス形状10/350μsのパルス電流及びImin≧750Aで8/20μsのパルス電流を検出できる。
【0070】
アレスタ・ケーブル8から約105mmの距離に配置されたリード接点リレー6は、Imin≧4.5kAでパルス形状10/350μsのパルス及びImin≧67kAでパルス形状8/20μsのパルスを検出できる。
【0071】
デバイスに統合された評価用電子回路の補助を受けて、リード接点の様々なスイッチング時間をパルス形状に応じて検出及び評価でき、それにより、どのパルス持続時間を有するどのパルス形状が関係しているかを認識できる。
【0072】
対応するサージ電流がある場合の、リード接点の選択的応答により、約60Aから250kAまでの範囲の区別も実行できる。
【0073】
雷又はサージ電流イベントがある場合、これは最初に、応答する少なくとも1つのリード接点によって検出される。この後、測定された電流強度の区別は、個々のリード接点の応答動作によって行われる。検出されたデータは、時間の経過又は後続イベントに関する時間デルタを観察しながら保存され、次いで、さらに評価するために利用可能である。
【0074】
本発明による、試験場で試験されたデバイスでは、検出可能な最小電流強度は約45Aである。たとえば、3つのリード接点を使用して、3種のパルス閾値を定義及び評価できる。対応するマイクロコントローラの拡張版が評価に使用される場合、本発明の基本原理から離れることなく、さらなる多様化を実行できる。
【0075】
場合によっては必要となる、検出値の長期保存及び分析のための構成部品は、EMI保護された施設内で、本発明によるデバイスから空間的に離れて取付けできる。これは、好ましくは、デバイスから下流の評価ユニットへ供給される測定値の無線送信が実行され、この送信は最後の障害イベントが減衰した後にしかトリガできないので、実現可能である。
【0076】
発生する雷イベントとイベント・プロトコルの送信との間の遅延時間を固定的に設定することにより、ミリ秒まで正確な時間割当て又はミリ秒まで正確なタイム・スタンプを実現できる。
【0077】
リード接点の以下の例示的な閾値は、試験を実行した結果である。
【0078】
【0079】
リード接点のトリガ閾値は、距離及び接点の種類によって大きく異なり得る。これらのトリガ閾値を使って、Iccのみと短期パルスとを区別できる。3番目のリード接点が、より大きい電流強度でトリガすることを目的としている場合は、距離をさらに長くしてもよい。10Aのトリガ閾値の誤差は、様々な避雷ケーブル(95mm2、φ=11mm、絶縁壁の厚さ=2.5mm、50mm2、φ=8mm、絶縁壁の厚さ=2.5mm)で観察できた。トリガ閾値は、8/20パルスと比較して、10/350パルスで大幅に低い。
【0080】
以下の応答の依存性は、とりわけ、避雷ケーブルから特定の距離にあるシールドされていないリード接点の、パルス8/20μsのトリガ閾値と10/350μsのトリガ閾値との間で認識できる。
【数1】
【0081】
図4によれば、それを通って電流が流れるケーブル又はそれを通って電流が流れる導体8が、周囲の磁力線Bと共に概略的に示されている。対応するリード接点9は、導体8の磁場に向かって径方向に向けられており、それによりリード接点の接続部及び接点は、磁束密度Bに晒される。リード接点9の応答磁束密度又は磁気感度に達すると、接点が閉じるようになる。
【0082】
リード接点9の応答磁束密度に達するかどうかは、この場合、ケーブル8内の電流強度、リード接点9の距離、リード接点9の感度、及びリード接点9の導体ケーブル8に向かう方向によって変わる。
【0083】
さらに、応答動作は、たとえば、より透磁率の高い材料を導入することで、磁束Bに影響を与えることによって、変わり得る。
【0084】
図4では、磁束密度のレベルは、原則として、導体ケーブル8の中心軸からの距離Rの関数として示されている。図示された軸は、対数的に理解されるべきである。この場合、リード接点9の最小距離は、導体8、及び必要な、場合によっては絶縁された取付物の幾何形状によって制限される。
図4で、線10は、電流強度が大きい場合の磁束密度を表し、線11は電流強度が小さい場合の磁束密度を表す。線13は、低感度のリード接点9のトリガ閾値の特性を示し、線12は、感度の高いリード接点9の特性を示す。
【0085】
導体ケーブル8を通る電流が小さく、それに対応して低い磁束密度11である場合、技術的に実現されるべき導体ケーブル8からリード接点9までの最小距離の場合でさえも、低感度のリード接点9のトリガ閾値13に達しないであろう。こうした状況下では、電流の検出は実行されないであろう。それにもかかわらず、かかるリード接点9によって検出させるために、たとえば強磁性材料を使って、特定のエリアで同軸に導体ケーブル8を囲繞し、リード接点の接続部と接触して、磁力線の集中を増すことが可能である。
【0086】
ただし、かかる配置構成はコストがかかる可能性があり、場合によっては、より感度の高いリード接点(線12)を使用することにより回避され得る。かかる接点は、数ミリメートル又は数センチメートルの距離でさえも、対応する電流又はその磁束密度を検出できる。より長い距離又は隙間がある場合だけは、電流の磁気流密度(線11)が対応するリード接点の感度(線12)を下回り、それによって、場合によっては検出がもはや不可能となる。
【0087】
一方、大電流の場合は、磁束密度(線10)は、長距離になるまで、リード接点の高感度(線12)をはるかに上回る。デバイスのサイズが限られているため、かかる距離は、技術的な適用に関して多くの場合実効性がない。
【0088】
利用可能なリード接点の感度の帯域幅は、制限されている。さらに、リード接点の応答時間は、一般に感度の低下と共に増加し、それにより、短期間のパルス電流の所望の検出が不可能になるか、又はただ大幅に時間的に遅延することは、不都合である。
【0089】
ただし、数十Aの長期電流と数百kAのパルス電流との磁束密度は大きく異なり、それにより、雷電流の場合、望ましい高い検出閾値である低感度のセンサの場合でも、必要な距離は相当なものであって、最大数メートルに達する場合があり、その結果使用が制限される。
【0090】
小型のデバイスで、パルス電流、具体的には10/350μsのパルス形状の雷電流に対して、高い電流閾値を実現できるようにするために、センサに完全又は部分的なシールドが設けられ得る。感度が指向性をもつように、シールドには窓が付いている場合もある。したがって、シールドには、それを通って磁場が部分的に貫通できる弱化部(weakening)又はくぼみがある。
【0091】
図5によると、前述のシールドの動作モードが、例として説明されている。
【0092】
この図では、導体ケーブル8からセンサ9までの距離rswはミリメートル単位で描かれ、最大その距離までに、約15ATの感度を有するシールドされていないリード接点9は、雷電流のレベルに応じて依然として閉じる。
【0093】
実験的に判定された、描かれた測定点(灰色の陰影)による成り行き(progress)は、200kA以上の閾値が望まれる場合、リード接点を、導体ケーブルから数メートルの距離に装着する必要があることを明らかにしている。
【0094】
わずか20kAの比較的低い雷電流において、導体ケーブル8でかかる電流レベルを超えることを検出する必要がある場合、既に、約75cmの、かなりの距離が守られる必要があることが明らかになる。
【0095】
非常に高い電流閾値では、小型の測定装置又は筐体内に構成された測定装置は、ほとんど実現できない。より低感度のリード接点は、こうした距離をわずかにずらすだけに過ぎず、実際の現在のイベントに閉じることを一時的に割り当てるという欠点を有する。リード接点を導体ケーブルの低感度の位置へ向けることは、配置及び取付けに関して極めて影響を受けやすく、対応するデバイスの構造及びその設置において、非常に高い構成上の要求を伴う。
【0096】
図5によると、構造的に同一のリード接点が、たとえば、壁の厚さが1から最大数ミリメートルの範囲の鋼管と共に使用される。これは、簡略化された形で、参照番号14で示されている。矢印15は、この単純な配置構成の、又は電流源(電流>50kA、10/350μs)を検出できる場合の距離の作用を示している。距離は、シールドされていないリード接点又はセンサの約2mの距離から、数ミリメートル又はセンチメートルに移る。
【0097】
さらに大きいパルス電流の場合、単純なシールドではなく2重シールド16又は3重シールド17も使用できる。
【0098】
この場合、たとえばシールドと鋼管とは、中間層又は空気によって分離される。
【0099】
こうした例では、同じリード接点である場合、電流>100kA又は>150kAの閾値を検出するための距離は、数メートルの範囲から数センチメートルに短縮される。
【0100】
シールドのアイデアを使用して、非常に様々な電流閾値を検出する、極めて小型のデバイスを実現できることが明らかになる。同じリード接点及び導体ケーブルからの同じ距離が使用される場合、リード接点又はかかる使用されるセンサは、パルス電流の複数の様々な閾値に対して様々なシールドを使用することにより構成され得る。
【0101】
補足的に、シールドを部分的に縮小するか、又はシールドに開口を導入する可能性がある。この点に関して、グリッド状又はメッシュ状のシールドも使用する可能性がある。この対策は、向きによる特性の実現を可能にするだけではない。むしろ、同じ幾何形状のシールドを使っても、感度に影響を与え得る。
【0102】
基本的に単純なシールド14の幾何形状に対応する、部分的な開口を備えたシールド18は、それによって、
図5では、数ミリメートルの距離で20kAの電流閾値を検出できる。弱化部のない単純なシールド14を使用した場合、遮蔽が強すぎるため、この電流閾値は、場合によっては、技術的に実現できなかった。
【0103】
強磁性材料によるシールドの作用は、この場合、遮蔽材料のより高い透磁率に基づく。磁力線は、材料が飽和に達するまで偏向され、それによって、リード接点のエリア内の磁場が大幅に弱められ、したがって、シールドが飽和に達するまで、リード接点が閉まることが回避される。
【0104】
シールドの作用は、強磁性材料又はかかる材料の組合せ、並びに該材料の磁気特性の選択の他に、シールド内のリード接点の幾何形状及び配置によって影響を受け得る。
【0105】
したがって、これにより、リード接点を使用するためのシールドを、小型のデバイス又は装置での長期電流又はパルス電流を検出及び評価する作業に適合させるための、多数の選択肢がもたらされる。