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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】非プラズマエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20221205BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020567118
(86)(22)【出願日】2019-03-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 CN2019079014
(87)【国際公開番号】W WO2019228027
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-12-01
(31)【優先権主張番号】201810560809.8
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509047535
【氏名又は名称】北京北方華創微電子装備有限公司
【氏名又は名称原語表記】Beijing NAURA Microelectronics Equipment Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.8 Wenchang Avenue,Beijing Economic-Technological Development Area,Beijing 100176,China
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】王 春
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 波
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼ 振国
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲暁▼娟
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-012609(JP,A)
【文献】特開平09-237775(JP,A)
【文献】特開2015-073035(JP,A)
【文献】国際公開第2016/056300(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非プラズマエッチング方法であって、
反応チャンバー内にエッチングガス及び触媒ガスを含むガス混合物を注入することにより、二酸化ケイ素及び窒化ケイ素をエッチングするステップS1を含み、
ここで、前記エッチングガスは二酸化ケイ素及び窒化ケイ素をエッチングすることに用いられ、前記触媒ガスはエッチング速度を向上させることに用いられ、前記ガス混合物中の各ガス成分の流量比は所要の二酸化ケイ素/窒化ケイ素のエッチング選択比に応じて決定され、
前記エッチングガスはフッ化水素を含み、
前記触媒ガスは、前記フッ化水素と二酸化ケイ素の反応を促進することに用いられる第1触媒ガス、及び前記フッ化水素と窒化ケイ素の反応を促進することに用いられる第2触媒ガスを含み、ここで、前記第1触媒ガスはヒドロキシ化合物を含み、前記第2触媒ガスはフッ素含有ガスを含み、
前記ステップS1は
前記反応チャンバーに前記フッ化水素及びヒドロキシ化合物を注入することで、二酸化ケイ素をエッチングするサブS11と、
前記反応チャンバーに前記フッ化水素及びフッ素含有ガスを注入することで、窒化ケイ素をエッチングするサブS12と、
をさらに含むか、
または
前記ステップS1は
S11、前記反応チャンバーに前記フッ化水素及びフッ素含有ガスを注入することで、窒化ケイ素をエッチングするサブS11と、
S12、前記反応チャンバーに前記フッ化水素及びヒドロキシ化合物を注入することで、二酸化ケイ素をエッチングするサブS12と、
をさらに含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
記ステップS11と前記ステップS12との間に、
前記ステップS11のエッチング厚さが所定範囲に達するか否かを判断し、NOである場合、前記ステップS11に戻り、YESである場合、前記ステップS12を行うステップS21をさらに含み、
前記ステップS12の後、前記ステップS12のエッチング厚さが所定範囲に達するか否かを判断し、NOである場合、前記ステップS12に戻り、YESである場合、プロセスが終了するステップS22をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の非プラズマエッチング方法。
【請求項3】
前記ステップS11と前記ステップS12との間に、前記反応チャンバー内にパージガスを注入することで、前記反応チャンバー内の残留ガスを除去するステップS3をさらに
含むことを特徴とする請求項1に記載の非プラズマエッチング方法。
【請求項4】
前記ステップS11及び前記ステップS12を少なくとも2回交互に行うことで、前記二酸化ケイ素及び窒化ケイ素のエッチング厚さを最終要件に達させることを特徴とする請求項1に記載の非プラズマエッチング方法。
【請求項5】
前記ステップS11及び前記ステップS12は同一反応チャンバー又は異なる反応チャンバー内で行われることを特徴とする請求項1に記載の非プラズマエッチング方法。
【請求項6】
前記フッ素含有ガスはF、XeF、及びClFのうちの1種又は複数種を含むことを特徴とする請求項1に記載の非プラズマエッチング方法。
【請求項7】
前記ヒドロキシ化合物はアルコール系化合物又はフェノール系化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の非プラズマエッチング方法。
【請求項8】
前記フッ素含有ガスの流量は前記フッ化水素の流量の0.5倍であることを特徴とする請求項1に記載の非プラズマエッチング方法。
【請求項9】
前記ヒドロキシ化合物の流量は前記フッ化水素の流量の1~2倍であることを特徴とする請求項1に記載の非プラズマエッチング方法。
【請求項10】
前記フッ素含有ガスと前記ヒドロキシ化合物との流量比の値の範囲は10:1~1:10であることを特徴とする請求項1に記載の非プラズマエッチング方法。
【請求項11】
前記フッ素含有ガスの流量は400sccm以下であることを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の非プラズマエッチング方法。
【請求項12】
前記ヒドロキシ化合物の流量は1000sccm以下であることを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の非プラズマエッチング方法。
【請求項13】
前記フッ化水素の流量の値の範囲は50~1000sccmであることを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の非プラズマエッチング方法。
【請求項14】
前記反応チャンバーの圧力は300Torr以下であり、前記反応チャンバーの温度は15~105℃であることを特徴とする請求項1に記載の非プラズマエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は半導体分野に属し、具体的には非プラズマエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体フロントエンドプロセスでは、設計ニーズを満たすために、複数回のエッチングプロセスを行うことによって特定のパターンを形成する必要がある。従来のエッチングプロセスはほとんど二酸化ケイ素(SiO)及び窒化ケイ素(SiN)へのエッチングに集中している。被加工ワークでは、これら2種の薄膜が通常隣接するため、両方ともにエッチングプロセスの影響を受ける。
【0003】
異なる応用に対しては、エッチングプロセスを行う際に、二酸化ケイ素/窒化ケイ素のエッチング選択比(selectivity)に対する要件も異なる。たとえば、SiNスペーサー(spacer)を形成する際に、高い窒化ケイ素/二酸化ケイ素エッチング選択比を必要とし、それによってシャロートレンチアイソレーション酸化層(STI oxide)のオーバーエッチングを回避する。またたとえば、自然酸化層(native oxide)を除去する際に、スペーサー上の窒化ケイ素と二酸化ケイ素の厚さが一致することを確保するために、窒化ケイ素/二酸化ケイ素エッチング選択比ができるだけ1:1に達する必要がある。さらにたとえば、ゲート(gate)表面上の自然酸化層を除去する際に、比較的高い二酸化ケイ素/窒化ケイ素のエッチング選択比が求められ、それによってSiNスペーサーの損傷をもたらすことを回避する。
【0004】
従来技術の解決手段はほとんど、そのうちの1種の応用を満たすしかできず、たとえば、従来技術の1種の常用の技術的解決手段は湿式エッチングを採用することである。フッ化水素酸溶液(HF)及び熱リン酸溶液(HPO)を利用してそれぞれ二酸化ケイ素及び窒化ケイ素をエッチングする。エッチング生成物はいずれも水溶性物質であり、反応終了後、脱イオン水(DI water)を利用して洗浄する。その反応原理は以下の通りである。
【0005】
HF+SiO→SiF+HO (1)
PO(hot)+SiN+HO→Si(OH)+NHPO (2)
【0006】
二酸化ケイ素をエッチングする際に、被加工ワークをフッ化水素酸溶液内に投入し、生成されるエッチング生成物SiF4が該溶液内に溶解し、その後、脱イオン水を利用して洗浄して乾燥させる。窒化ケイ素をエッチングする際に、被加工ワークを熱リン酸溶液内に投入し、生成されるエッチング生成物Si(OH)及びNHPOが該溶液内に溶解し、その後、脱イオン水を利用して洗浄して乾燥させる。フッ化水素酸溶液及び熱リン酸溶液の腐食時間を変更することによって、二酸化ケイ素/窒化ケイ素のエッチング選択比(n:1~1:n、n≧1)を効果的に調整することができる。
【0007】
このような技術的解決手段における2種のエッチングプロセスはいずれも比較的高い選択比を有し、たとえば、フッ化水素酸溶液が二酸化ケイ素をエッチングする場合、窒化ケイ素に対するエッチング選択比は10:1に達することができるが、熱リン酸溶液が窒化ケイ素をエッチングする場合、二酸化ケイ素に対するエッチング選択比は150:1に達することができる。従って、それぞれ二酸化ケイ素及び窒化ケイ素膜に対するエッチングを実現でき、且つ、これらの2種のエッチングプロセスのエッチング時間を変更することによって、窒化ケイ素及び二酸化ケイ素のエッチング量を効果的に調整することができる。
【0008】
本開示を実現する過程では、出願人は従来技術に以下の欠陥が存在することを見出した。
【0009】
湿式エッチングは2種の機器を使用する必要があり、プロセスのステップが比較的複雑で、生産性が比較的低い。また、表面張力の作用があるため、湿式エッチング過程では、被加工ワーク表面の微細構造が粘着を発生させやすく、図1に示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術に存在する上記問題を解決するために、本開示は非プラズマエッチング方法を提案し、それは二酸化ケイ素/窒化ケイ素のエッチング選択比を広範囲にわたって効果的に調整でき、それにより異なる応用の要件を満たし、プロセスの複雑性及び機器のコストを低減させることができるだけでなく、プラズマ損傷及び微細構造粘着の発生を回避することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本開示は非プラズマエッチング方法を提案し、以下のステップS1を含み、S1、反応チャンバー内にエッチングガス及び触媒ガスを含むガス混合物を注入することで、二酸化ケイ素及び窒化ケイ素をエッチングし、
ここで、エッチングガスは二酸化ケイ素及び窒化ケイ素をエッチングすることに用いられ、触媒ガスはエッチング速度を向上させることに用いられ、ガス混合物中の各ガス成分の流量比は所要の二酸化ケイ素/窒化ケイ素のエッチング選択比に応じて決定される。
【0012】
本開示のいくつかの実施例では、エッチングガスはフッ化水素を含み、触媒ガスはフッ化水素と二酸化ケイ素の反応を促進することに用いられる第1触媒ガス、及びフッ化水素と窒化ケイ素の反応を促進することに用いられる第2触媒ガスを含み、ここで、第1触媒ガスはヒドロキシ化合物を含み、第2触媒ガスはフッ素含有ガスを含む。
【0013】
本開示のいくつかの実施例では、ステップS1では、反応チャンバーにフッ化水素、ヒドロキシ化合物及びフッ素含有ガスを同時に注入することで、二酸化ケイ素及び窒化ケイ素を同時にエッチングする。
【0014】
本開示のいくつかの実施例では、ステップS1はさらに以下のサブステップS11~S12を含み、
S11、反応チャンバーにフッ化水素及びヒドロキシ化合物を注入することで、二酸化ケイ素をエッチングし、
S12、反応チャンバーにフッ化水素及びフッ素含有ガスを注入することで、窒化ケイ素をエッチングする。
【0015】
本開示のいくつかの実施例では、ステップS1はさらに以下のサブステップS11~S12を含み、
S11、反応チャンバーにフッ化水素及びフッ素含有ガスを注入することで、窒化ケイ素をエッチングし、
S12、反応チャンバーにフッ化水素及びヒドロキシ化合物を注入することで、二酸化ケイ素をエッチングする。
【0016】
本開示のいくつかの実施例では、ステップS1の後、さらに以下のステップS2を含み、
S2、ステップS1のエッチング厚さが所定範囲に達するか否かを判断し、NOである場合、ステップS1に戻り、YESである場合、プロセスが終了する。
【0017】
本開示のいくつかの実施例では、ステップS11とステップS12との間に、さらに以下のステップS21を含み、
S21、ステップS11のエッチング厚さが所定範囲に達するか否かを判断し、NOである場合、ステップS11に戻り、YESである場合、ステップS12を行い、
ステップS12の後、さらに以下のステップS22を含み、
S22、ステップS12のエッチング厚さが所定範囲に達するか否かを判断し、NOである場合、ステップS12に戻り、YESである場合、プロセスが終了する。
【0018】
本開示のいくつかの実施例では、ステップS11とステップS12との間に、さらに以下のステップS3を含み、
S3、反応チャンバー内にパージガスを注入することで、反応チャンバー内の残留ガスを除去する。
【0019】
本開示のいくつかの実施例では、1回又は複数回の二酸化ケイ素及び窒化ケイ素のエッチングによって、二酸化ケイ素及び窒化ケイ素のエッチング厚さを最終要件に達させる。
【0020】
本開示のいくつかの実施例では、ステップS11及びステップS12を少なくとも2回交互に行うことで、二酸化ケイ素及び窒化ケイ素のエッチング厚さを最終要件に達させる。
【0021】
本開示のいくつかの実施例では、ステップS11及びステップS12は同一反応チャンバー又は異なる反応チャンバー内で行われる。
【0022】
本開示のいくつかの実施例では、フッ素含有ガスはF、XeF、及びClFのうちの1種又は複数種を含む。
【0023】
本開示のいくつかの実施例では、ヒドロキシ化合物はアルコール系化合物又はフェノール系化合物を含む。
【0024】
本開示のいくつかの実施例では、フッ素含有ガスの流量はフッ化水素の流量の0.5倍である。
【0025】
本開示のいくつかの実施例では、ヒドロキシ化合物の流量はフッ化水素の流量の1~2倍である。
【0026】
本開示のいくつかの実施例では、フッ素含有ガスとヒドロキシ化合物との流量比の値の範囲は10:1~1:10である。
【0027】
本開示のいくつかの実施例では、フッ素含有ガスの流量は400sccm以下である。
【0028】
本開示のいくつかの実施例では、ヒドロキシ化合物の流量は1000sccm以下である。
【0029】
本開示のいくつかの実施例では、フッ化水素の流量の値の範囲は50~1000sccmである。
【0030】
本開示のいくつかの実施例では、反応チャンバーの圧力は300Torr以下であり、反応チャンバーの温度は15~105℃である。
【発明の効果】
【0031】
本開示が提供する非プラズマエッチング方法によれば、それは反応チャンバー内にエッチングガス及び触媒ガスを含むガス混合物に注入し、非プラズマの方式を採用して二酸化ケイ素及び窒化ケイ素のエッチングを実現でき、それによって、プラズマ損傷及び微細構造粘着の発生を回避できる。それと同時に、上記ガス混合物中の各ガス成分の流量比が所要の二酸化ケイ素/窒化ケイ素のエッチング選択比に応じて決定されることによって、二酸化ケイ素/窒化ケイ素のエッチング選択比を広範囲にわたって効果的に調整でき、さらに異なる応用の要件を満たし、プロセスの複雑性及び機器のコストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は従来技術における湿式プロセス後の微細構造粘着の模式図である。
図2図2は本開示の第1実施例が提供する非プラズマ乾式エッチング方法のフローチャートである。
図3図3は本開示の第2実施例が提供する非プラズマ乾式エッチング方法のフローチャートである。
図4図4は本開示の第3実施例が提供する非プラズマ乾式エッチング方法のフローチャートである。
図5図5は本開示の第4実施例が提供する非プラズマ乾式エッチング方法のフローチャートである。
図6図6は本開示の第5実施例が提供する非プラズマ乾式エッチング方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本開示の目的、技術的解決手段及び利点をさらに明瞭にするために、以下、具体的な実施例に合わせて、且つ図面を参照しながら本開示をさらに詳細に説明する。
【0034】
図2を参照して、本開示の第1実施例が提供する非プラズマ乾式エッチング方法であり、それは以下のステップS1を含み、
S1、反応チャンバー内にエッチングガス及び触媒ガスを含むガス混合物を注入することで、二酸化ケイ素及び窒化ケイ素をエッチングする。
【0035】
ここで、エッチングガスは二酸化ケイ素及び窒化ケイ素をエッチングすることに用いられ、触媒ガスはエッチング速度を向上させることに用いられる。ガス混合物中の各ガス成分の流量比は所要の二酸化ケイ素/窒化ケイ素のエッチング選択比に応じて決定される。
【0036】
本開示が提供する非プラズマエッチング方法では、それは反応チャンバー内にエッチングガス及び触媒ガスを含むガス混合物に注入し、非プラズマの方式を採用して二酸化ケイ素及び窒化ケイ素のエッチングを実現でき、それによって、プラズマ損傷及び微細構造粘着の発生を回避できる。それと同時に、上記ガス混合物中の各ガス成分の流量比が所要の二酸化ケイ素/窒化ケイ素のエッチング選択比に応じて決定されることによって、二酸化ケイ素/窒化ケイ素のエッチング選択比を広範囲にわたって効果的に調整でき、さらに異なる応用の要件を満たし、プロセスの複雑性及び機器のコストを低減させることができる。
【0037】
選択可能に、エッチングガスはフッ化水素(HF)を含む。
【0038】
フッ化水素は二酸化ケイ素をエッチングすることに用いられてもよく、窒化ケイ素をエッチングすることに用いられてもよい。しかし、フッ化水素単独を採用してエッチングを行う場合、速度が比較的低く、従って、本開示は触媒ガスを利用してエッチング速度を向上させる。
【0039】
選択可能に、触媒ガスはフッ化水素と二酸化ケイ素の反応を促進することに用いられる第1触媒ガス、及びフッ化水素と窒化ケイ素の反応を促進することに用いられる第2触媒ガスを含み、ここで、第1触媒ガスはヒドロキシ化合物を含む。ヒドロキシ化合物はアルコール系化合物又はフェノール系化合物を含み、ここで、アルコール系化合物はメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、及びイソブタノール等のうちの1種又は複数種を含み、フェノール系化合物はフェノール、ハイドロキノン、及びメチルフェノール等のうちの1種又は複数種を含む。
【0040】
好適には、第1触媒ガスは、メタノール等のような沸点が比較的低いヒドロキシ化合物を選択して用い、それは反応によって生じる少量の水を取り去り、被加工ワーク表面における水の残存量を減少させ、それにより微細構造粘着の発生を回避できる。たとえば、フッ化水素、メタノール及び二酸化ケイ素の反応原理は以下の通りである。
【0041】
HF+CHOH→HF2‐+CH3OH+(3)
HF2‐+CHOH +SiO→SiF+CHOH+HO(4)
【0042】
上記フッ化水素及びメタノールのガス混合物はSiO/SiNのエッチング選択比がn:1(n≧1)であることが要求されたプロセスに応用できる。
【0043】
第2触媒ガスはフッ素含有ガスを含む。フッ素含有ガスはF、XeF、ClF等のうちの1種又は複数種を含む。フッ素含有ガスはエッチング速度を向上させると同時に、二酸化ケイ素に対する窒化ケイ素のエッチング選択比を向上させ、微細構造粘着の発生を回避することができる。たとえば、第2触媒ガスはFである。フッ化水素、F及び窒化ケイ素の反応原理は以下の通りである。
【0044】
SiN+HF+F→SiF+N (5)
【0045】
上記フッ化水素及びF2のガス混合物はSiO/SiNのエッチング選択比が1:n(n≧1)であることが要求されたプロセスに応用できる。
【0046】
本開示の第2実施例が提供する非プラズマ乾式エッチング方法では、それは上記第1実施例をもとに行われるさらなる改良である。具体的には、上記ステップS1では、反応チャンバーにフッ化水素、ヒドロキシ化合物及びフッ素含有ガスを同時に注入することで、二酸化ケイ素及び窒化ケイ素を同時にエッチングする。
【0047】
同一反応チャンバーでは、二酸化ケイ素及び窒化ケイ素を同時にエッチングすることによって、1セットのプロセス機器だけで二酸化ケイ素及び窒化ケイ素のエッチングを実現でき、プロセスの複雑性及び機器コストを低減できるだけでなく、生産性を向上させることができる。
【0048】
図3を参照して、以下、エッチングガスがフッ化水素、第1触媒ガスがメタノール、第2触媒ガスがFであることを例に、本開示の第2実施例が提供する非プラズマエッチング方法を説明する。具体的には、該非プラズマエッチング方法は以下のステップ101~103を含み、
101、反応チャンバーにフッ化水素、メタノール及びFを同時に注入することで、二酸化ケイ素及び窒化ケイ素を同時にエッチングし、
102、反応チャンバーへのフッ化水素、メタノール及びFの注入を停止し、
103、ステップ101のエッチング厚さが所定範囲に達するか否かを判断し、NOである場合、ステップ101に戻り、YESである場合、プロセスが終了する。
【0049】
上記ステップ101では、ガス混合物中の各ガス成分の流量比は所要の二酸化ケイ素/窒化ケイ素のエッチング選択比に応じて決定される。具体的には、フッ化水素、F及びメタノールの流量比を調整することによって、二酸化ケイ素/窒化ケイ素のエッチング選択比(n:1~1:n、n≧1)を広範囲にわたって効果的に調整でき、エッチング選択比の範囲がn:1~1:n(SiO/SiN、n≧1)であることが要求されたプロセスに応用でき、それによりプロセスの複雑性及び機器のコストを低減させることができる。
【0050】
実際の応用では、さらにフェノールを利用して上記メタノールを代替してもよく、この場合、同様に微細構造粘着の発生を効果的に回避でき、且つフッ化水素、F及びフェノールの流量比を調整することによって、二酸化ケイ素/窒化ケイ素のエッチング選択比(n:1~1:n、n≧1)を広範囲にわたって効果的に調整できる。
【0051】
選択可能に、フッ素含有ガスの流量はフッ化水素の流量の0.5倍である。好適には、フッ素含有ガスの流量は400sccm以下であり、さらに好適には20~200sccmである。
【0052】
選択可能に、ヒドロキシ化合物の流量はフッ化水素の流量の1~2倍である。好適には、ヒドロキシ化合物の流量は1000sccm以下であり、さらに好適には400sccmm以下である。
【0053】
選択可能に、フッ化水素の流量の値の範囲は50~1000sccmであり、さらに好適には20~400sccmである。
【0054】
選択可能に、フッ素含有ガスとヒドロキシ化合物の流量比の値の範囲は10:1~1:10であり、好適には2:1~1:4である。
【0055】
選択可能に、上記ステップ101では、プロセス圧力は0~300Torrであり、好適には20~150Torrであり、プロセス温度は15~105℃であり、好適には60~80℃である。
【0056】
本実施例では、二酸化ケイ素及び窒化ケイ素のエッチング厚さがいずれも最終要件に達するまで、所定の流量比でフッ化水素、ヒドロキシ化合物及びフッ素含有ガスを連続的に注入する。つまり、1回のエッチングによって二酸化ケイ素及び窒化ケイ素の目標エッチング厚さに達する。
【0057】
本開示の第3実施例が提供する非プラズマエッチング方法では、それは上記第2実施例に比べて、相違点が、二酸化ケイ素及び窒化ケイ素のエッチングを複数回のサブステップに分けて行い、サブステップごとに、所定の流量比でフッ化水素、ヒドロキシ化合物及びフッ素含有ガスを所定時間注入することで、二酸化ケイ素及び窒化ケイ素の両方を所定のエッチング厚さに達させることである。複数回のサブステップの完了後、二酸化ケイ素及び窒化ケイ素のエッチング厚さがいずれも最終要件に達する。
【0058】
複数回のサブステップで採用されるフッ化水素、ヒドロキシ化合物及びフッ素含有ガスの流量比は同じであってもよく、又は異なってもよい。
【0059】
図4を参照して、以下、エッチングガスがフッ化水素、第1触媒ガスがメタノール、及び第2触媒ガスがFであることを例に、本開示の第3実施例が提供する非プラズマエッチング方法を説明する。具体的には、該非プラズマエッチング方法は二酸化ケイ素及び窒化ケイ素のエッチングを複数回のサブステップに分けて行い、それぞれ第1回のサブステップ、第2回のサブステップ、…である。
【0060】
ここで、第1回のサブステップは以下のステップ201~203を含み、
201、反応チャンバーにフッ化水素、メタノール及びFを同時に注入することで、二酸化ケイ素及び窒化ケイ素を同時にエッチングし、
202、反応チャンバーへのフッ化水素、メタノール及びFの注入を停止し、
203、ステップ201のエッチング厚さが第1エッチング厚さに達するか否かを判断し、NOである場合、ステップ201に戻り、YESである場合、第2回のサブステップを行う。
【0061】
第2回のサブステップは以下のステップ301~303を含み、
301、反応チャンバーにフッ化水素、メタノール及びFを同時に注入することで、二酸化ケイ素及び窒化ケイ素を同時にエッチングし、
302、反応チャンバーへのフッ化水素、メタノール及びFの注入を停止し、
303、ステップ301のエッチング厚さが第2エッチング厚さに達するか否かを判断し、NOである場合、ステップ301に戻り、YESである場合、第3回のサブステップを行う。
【0062】
このようにして、複数回のサブステップを完了した後、二酸化ケイ素及び窒化ケイ素のエッチング厚さがいずれも最終要件に達するか否かを判断し、YESである場合、プロセスが終了する。
【0063】
本開示の第4実施例が提供する非プラズマエッチング方法では、それは上記第2実施例に比べて、相違点が、まず、二酸化ケイ素をエッチングし、その後、窒化ケイ素をエッチングすることである。又は、まず、窒化ケイ素をエッチングし、その後、二酸化ケイ素をエッチングすることである。
【0064】
具体的には、ステップS1はさらに以下のサブステップS11~S12を含み、
S11、反応チャンバーにフッ化水素及びフッ素含有ガスを注入することで、二酸化ケイ素をエッチングし、
S12、反応チャンバーにフッ化水素及びヒドロキシ化合物を注入することで、窒化ケイ素をエッチングする。
【0065】
又は、ステップS1はさらに以下のサブステップS11~S12を含み、
S11、反応チャンバーにフッ化水素及びフッ素含有ガスを注入することで、窒化ケイ素をエッチングし、
S12、反応チャンバーにフッ化水素及びヒドロキシ化合物を注入することで、二酸化ケイ素をエッチングする。
【0066】
選択可能に、上記ステップS11とステップS12との間に、さらに以下のステップS3を含み、
S3、反応チャンバー内にパージガスを注入することで、反応チャンバー内の残留ガスを除去する。
【0067】
それにより、ステップS12がステップS11における残留ガスの影響を受けないことを確保できる。
【0068】
選択可能に、パージガスは不活性ガスを含む。
【0069】
図5を参照して、以下、まず、窒化ケイ素をエッチングし、その後、二酸化ケイ素をエッチングし、及びエッチングガスがフッ化水素、第1触媒ガスがメタノール、及び第2触媒ガスがFであることを例に、本開示の第4実施例が提供する非プラズマエッチング方法を説明する。具体的には、該非プラズマエッチング方法は以下のステップ401~407を含み、
401、反応チャンバーにフッ化水素及びメタノールを注入することで、窒化ケイ素をエッチングし、
402、反応チャンバーへのフッ化水素及びメタノールの注入を停止し、
403、ステップ401のエッチング厚さが所定範囲に達するか否かを判断し、NOである場合、ステップ401に戻り、YESである場合、ステップ404を行い、
404、反応チャンバー内にパージガスを注入することで、反応チャンバー内の残留ガスを除去し、
405、反応チャンバーにフッ化水素及びFを注入することで、二酸化ケイ素をエッチングし、
406、反応チャンバーへのフッ化水素及びFの注入を停止し、
407、ステップ405のエッチング厚さが所定範囲に達するか否かを判断し、NOである場合、ステップ405に戻り、YESである場合、プロセスが終了する。
【0070】
本実施例では、窒化ケイ素のエッチング厚さが最終要件に達するまで、所定の流量比でフッ化水素及びヒドロキシ化合物を連続的に注入し、つまり、1回のエッチングによって窒化ケイ素の目標エッチング厚さに達する。同様に、二酸化ケイ素のエッチング厚さが最終要件に達するまで、所定の流量比でフッ化水素及びフッ素含有ガスを連続的に注入し、つまり、1回のエッチングによって二酸化ケイ素の目標エッチング厚さに達する。
【0071】
本開示の第5実施例が提供する非プラズマエッチング方法では、それは上記第4実施例に比べて、相違点が、二酸化ケイ素のエッチングを複数回のサブステップに分けて行い、及び窒化ケイ素のエッチングを複数回のサブステップに分けて行うことである。且つ、二酸化ケイ素及び窒化ケイ素のエッチング厚さが最終要件に達するまで、二酸化ケイ素をエッチングする複数回のサブステップと窒化ケイ素をエッチングする複数回のサブステップを交互に行う。
【0072】
図6を参照して、以下、まず、窒化ケイ素をエッチングし、その後、二酸化ケイ素をエッチングし、エッチングガスがフッ化水素、第1触媒ガスがメタノール、及び第2触媒ガスがFであることを例に、本開示の第5実施例が提供する非プラズマエッチング方法を説明する。具体的には、該非プラズマエッチング方法は以下のステップ501~508を含み、
501、反応チャンバーにフッ化水素及びメタノールを注入することで、窒化ケイ素をエッチングし、
502、反応チャンバーへのフッ化水素及びメタノールの注入を停止し、
503、ステップ501のエッチング厚さが第1エッチング厚さに達するか否かを判断し、NOである場合、ステップ501に戻り、YESである場合、ステップ504を行い、
504、反応チャンバー内にパージガスを注入することで、反応チャンバー内の残留ガスを除去し、
505、反応チャンバーにフッ化水素及びFを注入することで、二酸化ケイ素をエッチングし、
506、反応チャンバーへのフッ化水素及びFの注入を停止し、
507、ステップ505のエッチング厚さが第2エッチング厚さに達するか否かを判断し、NOである場合、ステップ505に戻り、YESである場合、ステップ508を行い、
508、二酸化ケイ素及び窒化ケイ素のエッチング厚さがいずれも最終要件に達するか否かを判断し、NOである場合、ステップ501に戻り、YESである場合、プロセスが終了する。
【0073】
本実施例が提供する非プラズマエッチング方法は、比較的良い柔軟性を有し、且つ、窒化ケイ素及び二酸化ケイ素のエッチングを同一反応チャンバー内で行うことができ、すなわち、1セットのプロセス機器だけで二酸化ケイ素及び窒化ケイ素のエッチングを実現でき、プロセスの複雑性及び機器のコストを低減できるだけでなく、生産性を向上させることができる。勿論、1つの反応チャンバー内で窒化ケイ素をエッチングし、次に被加工ワークをもう1つの反応チャンバー内に投入して二酸化ケイ素をエッチングするようにしてもよい。
【0074】
また、二酸化ケイ素のエッチングを行う際に、フッ化水素及びフッ素含有ガスのみを注入するが、ヒドロキシ化合物を注入していないため、この場合、窒化ケイ素に対するエッチング速度が比較的遅く、それにより二酸化ケイ素の窒化ケイ素に対するエッチング選択比を大幅に向上させることができ、逆には、フッ化水素及びヒドロキシ化合物のみを注入する場合、窒化ケイ素の二酸化ケイ素に対するエッチング選択比を大幅に向上させることができる。
【0075】
なお、本開示の第3~第5実施例が提供する非プラズマ乾式エッチング方法のほかの技術的解決手段は本開示の第2実施例が提供する非プラズマ乾式エッチング方法と同じであり、ここでは重複説明をしない。
【0076】
以上のように、本開示の上記各実施例が提供する非プラズマエッチング方法では、それは反応チャンバー内にエッチングガス及び触媒ガスを含むガス混合物に注入し、非プラズマの方式を採用して二酸化ケイ素及び窒化ケイ素のエッチングを実現でき、それによって、プラズマ損傷及び微細構造粘着の発生を回避できる。それと同時に、上記ガス混合物中の各ガス成分の流量比が所要の二酸化ケイ素/窒化ケイ素のエッチング選択比に応じて決定されることによって、二酸化ケイ素/窒化ケイ素のエッチング選択比を広範囲にわたって効果的に調整でき、さらに異なる応用の要件を満たし、プロセスの複雑性及び機器のコストを低減させることができる。
【0077】
上記具体的な実施例は、本開示の目的、技術的解決手段及び有益な効果をさらに詳細に説明したが、理解すべきことは、上記は単に本開示の具体的な実施例であり、本開示を限定することに使用されず、本開示の精神及び原則内で行われる任意の変更、同等置換、改良等はいずれも本開示の保護範囲に含まれるべきである。
【0078】
なお、実施例に言及されている方向用語、たとえば「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」等は、単に図面を参照する方向であり、本開示の保護範囲を限定することに使用されない。図面を通して、同一の要素は同一又は類似の符号で示される。本開示の理解に曖昧さをもたらす可能性がある場合、通常の構成又は構造を省略する。
【0079】
反対の意味と知られていない限り、本明細書及び添付請求項における数値パラメータは近似値であり、本開示の内容によって得られる所要の特性に応じて変更可能である。具体的には、明細書及び請求項で成分の含有量、反応条件等を示すためのすべての数値は、すべての場合に「約」の用語で修飾されると理解すべきである。一般には、それが表現する意味とは、特定の数について、いくつかの実施例では±10%の変化、いくつかの実施例では±5%の変化、いくつかの実施例では±1%の変化、いくつかの実施例では±0.5%の変化を含むことである。
【0080】
また、単語「含む」は請求項に列挙されていない素子又はステップを除外しない。素子の前にある単語「一」又は「1つ」はこのような素子が複数存在することを除外しない。
【0081】
明細書及び請求項に使用される序数、たとえば「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、対応する素子を修飾するためであり、それ自体は該素子が何らかの序数を有することを意味及び代表せず、ある1つの素子ともう1つの素子の順序、又は製造方法での順序を代表することもなく、これらの序数は単にある名称を有する1つの素子を同一名称を有するもう1つの素子と明確に区別できるために使用される。
【0082】
同様に、理解すべきなのは、本開示を簡略化し、且つ各開示の態様のうちの1つ又は複数を理解することに寄与するために、以上の本開示の例示的な実施例についての説明では、本開示の各特徴がともに1つの実施例、図、又はその説明にグループ化される場合がある。しかしながら、該開示の方法を、以下の意図を反映すると解釈すべきではない。すなわち、保護を要求する本開示は各請求項に明確に記載される特徴よりも多い特徴を要求する。より正確には、以下の特許請求の範囲に反映されるように、開示の態様はその前に開示されている1つの実施例のすべての特徴よりも少ないことである。従って、具体的な実施形態に遵守する特許請求の範囲はそれにより該具体的な実施形態に明確に組み込まれ、そのうち、各請求項自体はいずれも本開示の単独実施例とする。
図1
図2
図3
図4
図5
【図 】
図6