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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】トシル基を含有する化学発泡剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20221205BHJP
   C08J 9/06 20060101ALI20221205BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
C09K3/00 111B
C08J9/06 CES
H01B7/02 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020569025
(86)(22)【出願日】2018-06-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 CN2018091433
(87)【国際公開番号】W WO2019237318
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】スン、コアンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ホンユウ
(72)【発明者】
【氏名】エッセガー、モハメッド
(72)【発明者】
【氏名】ファン、レンホア
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ショーエン
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03374190(US,A)
【文献】特表2016-501962(JP,A)
【文献】米国特許第05346926(US,A)
【文献】国際公開第2014/099335(WO,A2)
【文献】特表2008-500702(JP,A)
【文献】国際公開第2005/119703(WO,A1)
【文献】特開2003-208823(JP,A)
【文献】特公昭46-001859(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C08J 9/06
H01B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造(I)~(IX)として示される以下の化合物のうちの1つ以上を含む化学発泡剤であって、
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
式中、Tsが、p-トルエンスルホニル基である、化学発泡剤。
【請求項2】
構造(I)~(III)として示される前記化合物のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の化学発泡剤。
【請求項3】
構造(I)~(III)として示される前記化合物のうちの1つ以上からなる、請求項1に記載の化学発泡剤。
【請求項4】
ポリオレフィンと、請求項1に記載の化学発泡剤とを含む発泡性ポリオレフィン組成物。
【請求項5】
前記ポリオレフィンが、エチレン系ポリマーを含み、前記発泡性ポリオレフィン組成物が、酸化防止剤、セル安定剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項4に記載の発泡性ポリオレフィン組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の発泡性ポリオレフィン組成物から調製された発泡ポリオレフィン。
【請求項7】
絶縁層を含むケーブルであって、前記絶縁層が、請求項6に記載の発泡ポリオレフィンを含む、ケーブル。
【請求項8】
ポリオレフィンを発泡させるプロセスであって、前記プロセスが、
(a) ポリオレフィンを化学発泡剤と組み合わせて、発泡性ポリオレフィン組成物を形成することと、
(b) 前記発泡性ポリオレフィン組成物を発泡プロセスに供することと、を含み、
前記化学発泡剤が、構造(I)~(IX)として示される以下の化合物のうちの1つ以上を含み、
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
式中、Tsが、p-トルエンスルホニル基である、プロセス。
【請求項9】
前記化学発泡剤が、前記発泡性ポリオレフィン組成物の総重量を基準として、0.1~1.0重量パーセントの範囲の量で存在し、前記ポリオレフィンが、エチレン系ポリマーを含み、前記ポリオレフィンが、前記発泡性ポリオレフィン組成物の総重量を基準として、90~99.9重量パーセントの範囲の量で存在する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記発泡性ポリオレフィン組成物が、酸化防止剤、セル安定剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項9に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
様々な実施形態は、トシル基を含有する化学発泡剤に関する。追加の実施形態は、発泡性ポリオレフィン組成物中にトシル基含有化学発泡剤を用いて、発泡ポリオレフィンを形成することに関する。さらなる実施形態は、通信ケーブル、具体的には高周波同軸ケーブルにおいて、このような発泡ポリオレフィンを絶縁層として使用することに関する。
【0002】
導入
典型的には、高周波通信ケーブルの絶縁層は、ポリオレフィンと核形成剤(例えば、化学発泡剤)との混合物から生成され、混合物は、ガス注入押出プロセスを使用して発泡される。発泡プロセスでは、窒素または二酸化炭素などのブロー剤を、ポリオレフィン溶融混合物中に直接圧力下で注入して、溶融物内で溶解するようにし、溶融物と均質な混合物を形成する。この均質な混合物は、圧力下で維持され(その量は、使用するガスおよび溶融圧力によって決定される)、この圧力は、ガスが早期に溶融物を膨張させるのを防止するために押出機全体に保持される。ダイを出ると、溶融圧力は大気圧まで減少し、溶解したガスは溶融物中で直ちに膨張して、導体、例えば、銅線上にコーティングされた発泡絶縁を形成する。
【0003】
通信ケーブルの高い伝送効率を満たすためには、より高い膨張比、より細かいセルサイズ、およびより均一なセル分布を有する絶縁が望ましい。化学発泡剤などの核形成剤を添加することは、セルサイズを小さくし、セル集団を増強し、かつ均一なセル分布を促進するために使用される有効な技術である。押出機中で熱分解し、多数の細かい核をポリマー溶融物中に形成することができる、アゾジカルボナミド(「ADCA」)および4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(「OBSH」)が、通信ケーブル絶縁のための核形成剤として使用されている。しかしながら、ADCAおよびOBSHの分解副生成物は極性であり、発泡ポリマーの電気的性能に悪影響を及ぼす場合がある。したがって、化学発泡剤の改善が望まれる。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態は、構造(I)~(IX)として示される以下の化合物のうちの1つ以上を含む化学発泡剤であって、
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
式中、Tsが、p-トルエンスルホニル基である、化学発泡剤である。
【0005】
別の実施形態は、ポリオレフィンを発泡させるプロセスであって、プロセスが、
(a) ポリオレフィンを化学発泡剤と組み合わせて、発泡性ポリオレフィン組成物を形成することと、
(b) 発泡性ポリオレフィン組成物を発泡プロセスに供することと、を含み、
化学発泡剤が、構造(I)~(IX)として示される以下の化合物のうちの1つ以上を含み、
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
式中、Tsが、p-トルエンスルホニル基である、プロセス、である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
添付の図面を参照すると、
図1】本開示の一態様による、トシル基含有化学発泡剤のプロトンNMRスペクトルである。
図2】本開示の別の態様による、トシル基含有化学発泡剤のプロトンNMRスペクトルである。
図3】本開示のさらに別の態様による、トシル基含有化学発泡剤のプロトンNMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の様々な実施形態は、トシル基を含有する化学発泡剤に関する。本発明のさらなる実施形態は、ポリオレフィンおよび化学発泡剤を含む発泡性ポリオレフィン組成物に関する。さらなる実施形態は、発泡性ポリオレフィン組成物を発泡させるためのプロセスと、得られた発泡ポリオレフィン組成物とに関する。加えて、様々な実施形態は、通信ケーブルにおける絶縁層などの、このような発泡ポリオレフィン組成物から調製された製品に関する。
【0008】
化学発泡剤
先に述べたように、本開示の様々な実施形態は、トシル基を含有する化学発泡剤に関する。本明細書で使用される場合、「化学発泡剤」という用語は、特定の閾値を超える温度での分解などの化学反応の結果としてガスを遊離する化合物または化合物の組み合わせを示す。当業者に既知であるように、「トシル」という用語は、以下の構造を有するp-トルエンスルホニル官能基を示す。
【化19】
【0009】
本明細書の化学発泡剤構造に示される場合、トシル基は、略語「Ts」によって示され得る。
【0010】
好適なトシル基含有化学発泡剤は、200℃未満、190℃未満、180℃未満、170℃未満、または160℃未満の分解温度を有し得る。加えて、好適なトシル基含有化学発泡剤は、少なくとも90℃、少なくとも100℃、または少なくとも110℃の分解温度を有し得る。
【0011】
分解時に、好適なトシル基含有化学発泡剤からの遊離ガスは、主に、窒素(N)、一酸化炭素(CO)、または窒素および一酸化炭素の両方の組み合わせから構成され得る。本明細書で使用される場合、「主に」は、50体積%を超えることを意味する。1つ以上の実施形態では、分解時に好適なトシル基含有化学発泡剤から遊離したガスは、少なくとも60体積%、少なくとも70体積%、少なくとも80体積%、少なくとも90体積%、または少なくとも99体積%の窒素、一酸化炭素、または窒素および一酸化炭素の両方の組み合わせから構成され得る。さらなる実施形態では、分解時に好適なトシル基含有化学発泡剤から遊離したガスは、50体積%未満の水、40体積%未満の水、30体積%未満の水、20体積%未満の水、10体積%未満の水、または1体積%未満の水を含有し得る。またさらなる実施形態では、分解時に好適なトシル基含有化学発泡剤から遊離したガスは、50体積%未満、40体積%未満、30体積%未満、20体積%未満、10体積%未満、または1体積%未満の組み合わせた極性化合物を含有し得る。本明細書で使用される場合、「極性」という用語は、非対称に配置された極性結合から対向する電荷の結果として正味双極を有する(すなわち、部分的な正電荷および部分的な負電荷を有する)分子を示す。極性結合は、炭素原子と、O、N、F、およびClなどの比較的高い電気陰性度を有する他の原子との間の結合である。
【0012】
1つ以上の実施形態では、好適なトシル基含有化学発泡剤は、発泡剤1グラム当たり少なくとも100ミリリットル(「ml/g」)、少なくとも110ml/g、少なくとも120ml/g、少なくとも130ml/g、少なくとも140ml/g、少なくとも150ml/g、少なくとも160ml/g、少なくとも170ml/g、少なくとも180ml/g、少なくとも190ml/g、または少なくとも200ml/gのガスのガス収率を分解時に有し得る。加えて、好適なトシル基含有化学発泡剤は、最大300ml/g、最大275ml/g、または最大225ml/gのガス収率を分解時に有し得る。
【0013】
様々な実施形態では、好適なトシル基含有化学発泡剤は、少なくとも50重量パーセント(「重量%」)、少なくとも55重量%、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、または少なくとも80重量%の重量損失を分解時に有し得る。加えて、好適なトシル基含有化学発泡剤は、最大90重量%、または最大85重量%の重量損失を分解時に有し得る。
【0014】
本明細書で有用なトシル基含有化学発泡剤は、構造(I)~(IX)に示される以下の化合物のうちの1つ以上を含み得る。
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【0015】
1つ以上の実施形態では、化学発泡剤は、上記の構造(I)~(III)に示される化合物のうちの1つ以上を含み得る。他の実施形態では、化学発泡剤は、上記の構造(I)~(III)に示される化合物のうちの1つ以上からなり得る。
【0016】
トシル基含有化学発泡剤は、当技術分野において既知であるか、または今後発見される任意の方法によって調製され得る。構造(I)~(III)のトシル基含有化合物を調製するための詳細な合成手順を、以下の実施例セクションに提供する。
【0017】
ポリオレフィン
上記のように、本開示の態様は、ポリオレフィンを含む発泡性ポリオレフィン組成物に関する。「ポリオレフィン」とは、1つ以上の単純オレフィンモノマー、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどから誘導されるポリマーを意味する。オレフィンモノマーは、置換または非置換であってもよく、置換されている場合、置換基は幅広く変化し得る。ポリオレフィンが不飽和を含有する場合、ポリオレフィンは、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン、1,11-ドデカジエン、1,13-テトラデカジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、9-メチル-1,8-デカジエンなどの1つ以上の非共役ジエンコモノマーを含有し得る。多くのポリオレフィンは、熱可塑性である。ポリオレフィンには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、およびそれらの様々なインターポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
1つ以上の実施形態では、ポリオレフィンは、エチレン系ポリマーを含み得る。本明細書で使用される場合、「エチレン系」ポリマーは、主な(すなわち、50重量パーセント(「重量%」)を超える)モノマー成分としてエチレンモノマーから調製されるポリマーであるが、他のコモノマーも用いてもよい。「ポリマー」とは、同じ種類または異なる種類のモノマーを反応(すなわち、重合)させることによって調製される巨大分子化合物を意味し、ホモポリマーおよびインターポリマーを含む。「インターポリマー」とは、少なくとも2種類の異なるモノマーの重合によって調製されるポリマーを意味する。この総称には、コポリマー(通常、2種類の異なるモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)、および3種類以上の異なるモノマーから調製されるポリマー(例えば、ターポリマー(3種類の異なるモノマー)およびクォーターポリマー(4種類の異なるモノマー))が含まれる。
【0019】
様々な実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマーであり得る。本明細書で使用される場合、「ホモポリマー」は、単一の種類のモノマーに由来する反復単位を含むポリマーを示すが、連鎖移動剤などのホモポリマーの調製に使用される他の成分の残留量を除外しない。
【0020】
1つ以上の実施形態では、エチレン系ポリマーは、インターポリマーの全重量を基準として、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、または少なくとも25重量%のα-オレフィン含有量を有するエチレン/アルファオレフィン(「αオレフィン」)インターポリマーであり得る。これらのインターポリマーは、インターポリマーの全重量を基準として、50重量%未満、45重量%未満、40重量%未満、または35重量%未満のα-オレフィン含量を有し得る。α-オレフィンを用いる場合、α-オレフィンは、C3~20(すなわち、3~20個の炭素原子を有する)直鎖状、分枝状、または環状α-オレフィンであり得る。C3~20α-オレフィンの例として、プロペン、1ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1ドデセン、1テトラデセン、1ヘキサデセン、および1-オクタデセンが挙げられる。α-オレフィンは、3-シクロヘキシル-1-プロペン(アリルシクロヘキサン)およびビニルシクロヘキサンなどのα-オレフィンをもたらす、シクロヘキサンまたはシクロペンタンなどの環状構造を有し得る。例示的なエチレン/α-オレフィンインターポリマーには、エチレン/プロピレン、エチレン/1-ブテン、エチレン/1-ヘキセン、エチレン/1-オクテン、エチレン/プロピレン/1-オクテン、エチレン/プロピレン/1-ブテン、およびエチレン/1-ブテン/1-オクテンが含まれる。
【0021】
様々な実施形態では、エチレン系ポリマーは、低密度ポリエチレン(「LDPE」)であり得る。LDPEは、概して、高度に分枝状のエチレンホモポリマーであり、高圧プロセスを介して調製され得る(すなわち、HP-LDPE)。本明細書での使用に好適なLDPEは、0.91~0.94g/cm3の範囲の密度を有し得る。様々な実施形態では、エチレン系ポリマーは、少なくとも0.915g/cm、ただし0.94g/cm未満、または0.93g/cm未満の密度を有する高圧LDPEである。本明細書で提供するポリマー密度は、ASTMInternational(「ASTM」)方法D792に従って決定される。本明細書での使用に好適なLDPEは、20g/10分未満、または0.1~10g/10分の範囲、0.5~5g/10分の範囲、1~3g/10分の範囲、または2g/10分のIのメルトインデックス(I)を有し得る。本明細書に提供するメルトインデックスは、ASTM方法D1238に従って決定される。特記しない限り、メルトインデックスは、190℃および2.16kgで決定される(すなわち、I)。概して、LDPEは、広範な分子量分布(「MWD」)を有し、比較的高い多分散性指数(「PDI」、重量平均分子量の数平均分子量に対する比率)をもたらす。
【0022】
様々な実施形態では、エチレン系ポリマーは、直鎖状低密度ポリエチレン(「LLDPE」)であり得るLLDPEは、概して、コモノマー(例えば、α-オレフィンモノマー)の不均質分布を有するエチレン系ポリマーであり、短鎖分岐を特徴とする。例えば、LLDPEは、上述のものなどのエチレンモノマーおよびα-オレフィンモノマーのコポリマーであり得る。本明細書での使用に好適なLLDPEは、0.916~0.925g/cmの範囲の密度を有し得る。本明細書での使用に好適なLLDPEは、1~20g/10分の範囲、または3~8g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有し得る。
【0023】
様々な実施形態では、エチレン系ポリマーは、非常に低密度のポリエチレン(「VLDPE」)であり得る。VLDPEは、当技術分野において、超低密度ポリエチレン、またはULDPEとしても既知である。VLDPEは、概して、コモノマー(例えば、α-オレフィンモノマー)の不均質分布を有するエチレン系ポリマーであり、短鎖分岐を特徴とする。例えば、VLDPEは、エチレンモノマーおよびα-オレフィンモノマーのコポリマー、例えば、上述のそれらのα-オレフィンモノマーのうちの1つ以上であり得る。本明細書での使用に好適なVLDPEは、0.87~0.915g/cmの範囲の密度を有し得る。本明細書での使用に好適なVLDPEは、0.1~20g/10分の範囲、または0.3~5g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有し得る。
【0024】
様々な実施形態では、エチレン系ポリマーは、中密度ポリエチレン(「MDPE」)であり得る。MDPEは、概して0.926~0.940g/cmの範囲の密度を有するエチレン系ポリマーである。様々な実施形態では、MDPEは、0.930~0.940g/cmの範囲の密度を有し得る。MDPEは、ASTMD-1238(190°C/2.16kg)に従って決定される、0.1g/10分、または0.2g/10分、または0.3g/10分、または0.4g/10分、最大5.0g/10分、または4.0g/10分、または3.0g/10分、または2.0g/10分、または1.0g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有し得る。
【0025】
様々な実施形態では、エチレン系ポリマーは、高密度ポリエチレン(「HDPE」)であり得る。HDPEは、0.940g/cmを超える密度を有するエチレン系ポリマーである。ある実施形態では、HDPEは、ASTM D-792に従って決定される、0.945~0.97g/cmの密度を有する。HDPEは、少なくとも130℃、または132~134℃のピーク溶融温度を有し得る。HDPEは、ASTM D-1238(190°C/2.16kg)に従って決定される、0.1g/10分、または0.2g/10分、または0.3g/10分、または0.4g/10分、最大5.0g/10分、または4.0g/10分、または3.0g/10分、または2.0g/10分、または1.0g/10分、または0.5g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有し得る。また、HDPEは、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定される、1.0~30.0の範囲、または2.0~15.0の範囲のPDIを有し得る。
【0026】
様々な実施形態では、エチレン系ポリマーは、単独で、または1つ以上の他の種類のエチレン系ポリマー(例えば、モノマー組成物および含有量、触媒調製方法などによって互いに異なる2つ以上のエチレン系ポリマーのブレンド)と組み合わせて使用することができる。
【0027】
エチレン系ポリマーを調製するために使用される生成プロセスは、当技術分野において広範囲であり、多様であり、既知である。本明細書に記載のエチレン系ポリマーを調製するために、上述の特性を有するエチレン系ポリマーを生成するための任意の従来のまたは今後発見される生成プロセスを用いてもよい。一般に、重合は、ジーグラー-ナッタまたはカミンスキー-シン型重合反応のための当技術分野で既知の条件、すなわち、0~250℃、または30もしくは200℃の温度、および大気圧~10,000大気圧(1,013メガパスカル(「MPa」))の圧力で達成することができる。ほとんどの重合反応では、用いられる触媒対重合性化合物のモル比は、10-12:1~101:1、または10-9:1~10-5:1である。
【0028】
1つ以上の実施形態では、ポリオレフィンは、高密度ポリエチレン(「HDPE」)、低密度ポリエチレン(「LDPE」)、またはそれらのブレンドを含み得る。様々な実施形態では、ポリオレフィンは、HDPEおよびLDPEのブレンドである。
【0029】
好適な市販のHDPEの非限定的な例として、各々The Dow Chemical Company Midland,Michigan,USAから入手可能なDOW高密度ポリエチレン樹脂、CONTINUUM(商標)、UNIVAL(商標)、およびAXELERON(商標)高密度ポリエチレン樹脂、ELITE(商標)5960G、HDPE KT 10000 UE、HDPE KS 10100 UE、およびHDPE 35057Eと、Nova Chemicals Corporation,Calgary,Alberta,Canadaから入手可能なSURPASS(商標)と、Borealisから入手可能なBS2581と、Lyondell/Basellから入手可能なHostalen ACP 5831Dと、INEOS Olefins&Polymers Europeから入手可能なRIGIDEX(商標)HD5502Sと、Sabicから入手可能なSABIC(商標)B5823およびSABIC(商標)B5421と、Totalから入手可能なHDPE5802およびBM593が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
市販のLDPE樹脂には、The Dow Chemical Companyから入手可能なDOW低密度ポリエチレン樹脂、例えば、AXELERON(商標)LDPE(例えば、AXELERON(商標)CX1258NT)および、一般に、Borealis、Basel、Sabic、および他から入手可能なものなどの、重包装紙袋または農業用フィルムで使用するための任意の分画メルトフローインデックス(「MFI」)樹脂が含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
2つ以上のエチレン系ポリマーのブレンド(例えば、HDPE/LDPEブレンド)は、所望の割合でのペレット化形態での乾燥ブレンド、それに続く、スクリュー押出機またはBANBURY(商標)ミキサーなどの好適な装置での溶融ブレンドなど、当技術分野で既知の任意の好適な手段によって調製され得る。乾燥ブレンドされたペレットは、例えば、押出成形または注入成形によって、最終固体物品に直接溶融加工され得る。ブレンドは、直接重合によっても作製されてもよい。直接重合は、例えば、動作条件、モノマー混合物、および触媒選択のうちの少なくとも1つを変化させながら、単一の反応器中または直列もしくは並列の2つ以上の反応器中で1つ以上の触媒を使用し得る。
【0032】
HDPE/LDPEブレンドをポリオレフィンとして用いる場合、発泡性ポリオレフィン組成物中のHDPEの量は、組成物の総重量を基準として、少なくとも45重量%、少なくとも55重量%、または少なくとも60重量%であり得る。発泡性ポリオレフィン組成物中のHDPEの量は、組成物の総重量を基準として、95重量%以下、85重量%以下、または80重量%以下であり得る。発泡性ポリオレフィン組成物中のLDPEの量は、組成物の総重量を基準として、少なくとも4重量%、少なくとも14重量%、または少なくとも19重量%であり得る。発泡性ポリオレフィン組成物中のLDPEの量は、組成物の総重量を基準として、54重量%以下、44重量%以下、または39重量%以下であり得る。加えて、ブレンドのHDPE成分は、2つ以上のグレードのHDPEを含み得、ブレンドのLDPE成分は、2つ以上のグレードのLDPEを含み得る。HDPE/LDPEブレンドは、0.1~4g/10分の範囲、または0.15~4g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有し得る。
【0033】
発泡性ポリオレフィン組成物
上記のように、化学発泡剤およびポリオレフィンは、発泡性ポリオレフィン組成物を形成するために組み合わせることができる。様々な実施形態では、化学発泡剤は、発泡性ポリオレフィン組成物の総重量を基準として、0.01~1重量%、0.05~0.6重量%、0.1~0.4重量%、0.1~0.2重量%、または0.14~0.16重量%の範囲の量で発泡性ポリオレフィン組成物中に存在し得る。
【0034】
化学発泡剤は、任意の従来の手段によって発泡性ポリオレフィン組成物に添加することができる。化学発泡剤は、1つ以上の他の添加剤、例えば、酸化防止剤、セル安定剤などと組み合わせて、またはマスターバッチの一部として、整然と添加することができる。化学発泡剤は、発泡性ポリオレフィン組成物と混合して、発泡性ポリオレフィン組成物中の化学発泡剤の本質的に均質な分散を達成することができ、この目的のために、例えば、バンベリーミキサーの使用によるバッチ混合を用いてもよい。代替として、発泡性ポリオレフィン組成物は、例えば、二軸押出機またはBUSS(商標)混錬機の使用を通じて、連続ミキサー中で調製することができる。化学発泡剤を最初に押出機中で発泡性ポリオレフィン組成物と混合する場合、化学発泡剤は、典型的には、発泡のためのブロー剤を注入する前に発泡性ポリオレフィン組成物に添加される。
【0035】
添加剤
発泡性ポリオレフィン組成物は、必要に応じてまたは所望に応じて1つ以上の添加剤を含有し得る。代表的な添加剤として、加工助剤、潤滑剤、安定剤(酸化防止剤)、発泡助剤、核形成剤、界面活性剤、流動助剤、粘度制御剤、着色剤、銅害防止剤などが含まれるが、これらに限定されない。これらの添加剤は、加工前または加工中のいずれかでポリマーに添加することができる。ポリオレフィン組成物中の任意の特定の添加剤の量は、0.01~1重量%、0.01~0.5重量%、または0.01~0.3重量%であり得、仮に存在する場合、ポリオレフィン組成物中の添加剤の総量は、0.01~5重量%、0.01~2重量%、または0.01~1重量%であり得る。
【0036】
物理的ブロー剤
発泡ポリオレフィンを調製する際には、上述の化学発泡剤に加えて、物理的ブロー剤も用いてもよい。物理的ブロー剤は、選択された押出温度、発泡条件、発形形成方法などに好適な1つ以上の薬剤である。最終形態の絶縁発泡層を押出形成と同時に形成する場合、窒素、炭素ガス(例えば、CO、COなど)、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス、メタン、プロパン、ブタン、ペンタンなどの炭化水素ガス、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン、モノクロロジフルオロメタン、トリクロロモノフルオロメタン、モノクロロペンタフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素ガスを使用することができる。使用される物理的ブロー剤の量は、変化し得る。典型的には、物理的ブロー剤の量は、発泡されるポリオレフィン組成物100重量部当たり、0.001~0.1重量部、または0.005~0.05重量部であり得る。物理的ブロー剤は、発泡されるポリオレフィンと事前に混合されてもよく、または押出機のバレル上に形成される供給開口部から押出機に供給されてもよい。
【0037】
発泡プロセス
本明細書に記載の発泡性ポリオレフィン組成物は、任意の従来または今後発見される方法および設備を使用して発泡され得る。典型的には、発泡ポリオレフィンは、発泡押出条件下で動作する押出機を使用して、核剤または化学発泡剤を含有する発泡性ポリオレフィン組成物を押出し、例えば、組成物が高圧ゾーンにある間に物理的ブロー剤を注入し、次いで組成物を低圧ゾーンに押出することによって生成される。発泡プロセスについては、C.P.ParkによってPolyolefin Foam,Chapter 9,Handbook of Polymer Foams and Technology,edited by D.Klempner and K.C.Frisch,Hanser Publishers(1991)に記載されている。
【0038】
一実施形態では、典型的な押出発泡プロセスは、CA 2 523 861 C,Low Loss Foam Composition and Cable Having Low Loss Foam Layerに記載の発泡ケーブル絶縁を生成するために物理的ブロー剤(例えば、CO)を使用する。物理的ブロー剤のポリマー溶融物への溶解は、例えばH.Zhang(以下)らの研究で報告されるように、ヘンリーの法則に準拠する。溶解度は、飽和圧力とヘンリー定数との関数であり、それ自体は温度の関数である。H.Zhang,Scale-Up of Extrustion Foaming Process for Manufacture of Polystyrene Foams Using Carbon Dioxide,Master’s Thesis,University of Toronto,2010(https://tspace.library.utoronto.ca/bitstream/1807/25536/1/ Zhang_Hongtao_201011_MASc_thesis.pdf )。編集者であるShau-Tang LeeによるFoam Extrusion: Principles and Practiceも参照されたい。
【0039】
発泡組成物
得られた発泡ポリオレフィン組成物は、整ったポリオレフィンと発泡ポリオレフィン組成物との密度を比較することによって測定された、少なくとも70パーセント、少なくとも75パーセント、少なくとも77パーセント、または少なくとも78パーセントの発泡レベル(「多孔性」)を有し得る。様々な実施形態では、発泡ポリオレフィン組成物の発泡レベルは、80パーセント未満であり得る。様々な実施形態では、発泡ポリオレフィン組成物は、215μm未満、210μm未満、または207μm未満の平均セル径を有し得る。加えて、発泡ポリオレフィン組成物は、少なくとも180μm、または少なくとも190μmの平均セル径を有し得る。様々な実施形態では、発泡組成物は、cm当たり少なくとも9.80E+04、cm当たり少なくとも9.90E+04、cm当たり少なくとも1.00E+05、またはcm当たり少なくとも1.05E+05のセル密度を有し得る。発泡レベル、平均セル径、およびセル密度は、PCT公開第WO/2017/166004号に記載の方法に従って決定することができる。
【0040】
製品
ある実施形態では、本開示の発泡性または発泡組成物は、既知の量で、かつ既知の方法によって、例えば、USP5,246,783、USP6,714,707、USP6,496,629、およびUSPA2006/0045439に記載の設備および方法で、シースまたは絶縁層としてケーブル、ワイヤ、または導体に適用され得る。典型的には、発泡ポリオレフィン組成物は、ケーブルコーティングダイを備えた反応器押出機中で調製することができ、組成物の成分が配合された後、ケーブルまたは導体がダイを通って引き出されると、組成物がケーブルまたは導体上で押出される。ポリオレフィン組成物の発泡は、ケーブルまたは導体上の押出時に実行することができる。このような実施形態では、押出は、化学発泡剤の分解温度を超える温度で実行することができる。
【0041】
本開示の発泡ポリマー組成物から調製され得る他の製品には、ファイバー、リボン、シート、テープ、チューブ、パイプ、ウェザーストリッピング、シール、ガスケット、ホース、フォーム、靴用ベローズ、ボトル、およびフィルムが含まれる。これらの物品は、既知の設備および技術を使用して製造することができる。
【0042】
定義
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、2つ以上の項目の列挙で使用される場合、列挙された項目のうちのいずれか1つをそれ自体で用いるか、または列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせを用いることができることを意味する。例えば、組成物が、成分A、B、および/またはCを含有すると記載されている場合、組成物は、A単独、B単独、C単独、AおよびBの組み合わせ、AおよびCの組み合わせ、BおよびCの組み合わせ、またはA、B、およびCの組み合わせを含有し得る。
【0043】
「ワイヤ」とは、導電性金属、例えば、銅もしくはアルミニウムの単一の撚り線、または光ファイバーの単一の撚り線を意味する。
【0044】
「ケーブル」とは、シース内の少なくとも1つのワイヤまたは光ファイバー、例えば、絶縁被覆または保護アウタージャケットを意味する。典型的には、ケーブルは、典型的には共通の絶縁被覆および/または保護ジャケット内で、一緒に結合された2つ以上のワイヤまたは光ファイバーである。シース内の個々のワイヤまたはファイバーは、露出しても、被覆されても、または絶縁されてもよい。組み合わせケーブルは、電線および光ファイバーの両方を含有してもよい。典型的なケーブル設計は、USP5,246,783、6,496,629、および6,714,707に例示されている。
【0045】
「導体」は、熱、光、および/または電気を伝導するための1つ以上のワイヤ(複数可)またはファイバー(複数可)を示す。導体は、単一ワイヤ/ファイバーまたは複数ワイヤ/ファイバーであってもよく、撚り線形態または管状形態であってもよい。好適な導体の非限定的な例として、銀、金、銅、炭素、およびアルミニウムなどの金属が挙げられる。導体は、ガラスまたはプラスチックのいずれかから作製された光ファイバーであってもよい。
【0046】
「マスターバッチ」などの用語は、担体樹脂中の添加剤の濃縮混合物を示す。本発明の文脈において、マスターバッチは、ポリオレフィン樹脂中の核剤の濃縮混合物を含む。マスターバッチは、核剤をポリオレフィンに効率的に添加および分散させることを可能にする。マスターバッチの製造および使用は、プラスチックおよび発泡物品の製造および加工の当業者に周知である。
【0047】
試験方法
分解温度
TA Instruments(登録商標)TGA-Q500熱重量分析器上の熱重量分析(TGA)によって、N下で25~800℃の10℃/分のランプで分解温度を決定する。
【0048】
重量損失
TA Instruments(登録商標)TGA-Q500熱重量分析器上の熱重量分析(TGA)によって、N下で25~800℃の10℃/分のランプで重量損失を決定する。
【0049】
遊離ガス検知
発泡剤(1グラム)加熱装置に接続したガスビレット内の排水量(mL)でガス収率を測定する。
【0050】
プロトンNMRスペクトル
H NMRスペクトルをBruker(登録商標)AVANCE III HD(400MHz)分光光度計に記録する。化学シフト(δ)を、内部標準物として溶媒共鳴からppm単位で決定する(DMSO-D:2.50ppm)。
【0051】
材料
以下の材料を以下の実施例で用いる。
シアヌル酸塩化物は、Adamas-beta,Shanghai,Chinaから市販されている。
ヒドラジン(「N」)は、Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USAから市販されている。
アセトニトリル(「MeCN」)は、Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USAから市販されている。
p-トルエンスルホニルヒドラジド(「TsNHNH」)は、Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USAから市販されている。
トリエチルアミン(「EtN」)は、Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USAから市販されている。
マロン酸ジエチルは、Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USAから市販されている。
硫酸(「HSO」)は、Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USAから市販されている。
酢酸エチルは、Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USAから市販されている。
メタノールは、Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USAから市販されている。
n-ヘキサンは、Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USAから市販されている。
1H-テトラゾール-5-カルボン酸は、Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USAから市販されている。
【実施例
【0052】
以下の手順に従って、3つの比較試料(CS1~CS3)および3つの試料(S1~S3)を調製する。
CS1を、以下の合成経路を使用して調製する。
【化29】
【0053】
シアヌル酸塩化物(3.68g、20.0mmol)をHO(150mL)中に懸濁し、NのHO(4.0mL、103.0mmol)中の80%溶液を25℃で10分間にわたって滴加する。混合物を100℃で一晩撹拌する。次いで、得られた生成物(CS1)を濾過し、アセトニトリルで完全に洗浄し、真空下で乾燥させる。収率=3.21g(94%)、白色粉末。
【0054】
S1を、類似の合成経路を介して調製するが、p-トルエンスルホニルヒドラジドをヒドラジンの代わりに使用する。
【化30】
【0055】
シアヌル酸塩化物(3.68g、20.0mmol)をアセトニトリル(150mL)中に懸濁し、p-トルエンスルホニルヒドラジド(11.16g、60.0mmol)およびトリエチルアミン(404mg、4.0mmol)をそれぞれ添加する。混合物を90°Cで一晩撹拌する。反応の完了後、混合物を、室温まで冷却し、得られた懸濁液を濾過し、アセトニトリルで洗浄した。収率=10.61g(84%)、白色粉末。
【0056】
S2およびCS2を、以下の合成経路に従って調製し、式中、Rは、S2についてTsであり、CS2についてHである。
【化31】
【0057】
メタノール(150mL)中のマロン酸ジエチル(3.20g、20.0mmol)の溶液に、ヒドラジン(CS2用)またはp-トルエンスルホニルヒドラジド(S2用)(40.0mmol)のいずれかを添加した。反応混合物を0℃で強く撹拌しながら、98%の硫酸(0.22mL、4.0mmol)を滴加し、混合物を0℃に維持する。添加の完了後、溶液を70℃に一晩加熱する。次いで、溶液を室温まで冷却し、形成沈殿物を濾過して粗生成物を得る。粗生成物を酢酸エチル/n-ヘキサン中で再結晶させて、最終生成物S2およびCS2を得た。
【0058】
S3およびCS3を、以下の合成経路に従って調製し、式中、Rは、S3についてTsであり、CS3についてHである。
【化32】
【0059】
メタノール(150mL)中の1H-テトラゾール-5-カルボン酸(2.28g、20mmol)の溶液に、98%の硫酸(0.22mL、4.0mmol)を0℃で滴加する。次いで、反応混合物を70℃に6時間加熱する。次いで、ヒドラジン(CS3用)またはp-トルエンスルホニルヒドラジド(S3用)(20mmol)のいずれかを一度に添加する。反応混合物を、一晩還流で撹拌する。次いで、溶液を室温まで冷却し、形成沈殿物を濾過して粗生成物を得た。粗生成物を酢酸エチル/n-ヘキサン中で再結晶させて、最終生成物S3およびCS3を得た。
【0060】
試料S1~S3および比較試料CS1~CS3を、上述の試験方法を使用して分析し、それらの分解温度および重量損失を決定する。以下の表1は、S1~S3、CS1~CS3、および参照のためにアゾジカルボンアミド(「ADC」)の分解性能を提供する。
【表1】
【0061】
試料S1~S3および比較試料CS1~CS3を、上述の試験方法を使用して分析し、分解時に遊離したガスの種類を決定する。以下の表2は、S1~S3、CS1~CS3、および参照のためにアゾジカルボンアミドの分解性能を提供する。
【表2】
(態様)
(態様1)
構造(I)~(IX)として示される以下の化合物のうちの1つ以上を含む化学発泡剤であって、
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
式中、Tsが、p-トルエンスルホニル基である、化学発泡剤。
(態様2)
構造(I)~(III)として示される前記化合物のうちの1つ以上を含む、態様1に記載の化学発泡剤。
(態様3)
構造(I)~(III)として示される前記化合物のうちの1つ以上からなる、態様1に記載の化学発泡剤。
(態様4)
ポリオレフィンおよび態様1~3のいずれかに記載の化学発泡剤を含む、発泡性ポリオレフィン組成物。
(態様5)
前記ポリオレフィンが、エチレン系ポリマーを含み、前記発泡性ポリオレフィン組成物が、酸化防止剤、セル安定剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤をさらに含む、態様4に記載の発泡性ポリオレフィン組成物。
(態様6)
態様4または5のいずれかに記載の発泡性ポリオレフィン組成物から調製された、発泡ポリオレフィン。
(態様7)
絶縁層を含むケーブルであって、前記絶縁層が、態様6に記載の発泡ポリオレフィンを含む、ケーブル。
(態様8)
ポリオレフィンを発泡させるプロセスであって、前記プロセスが、
(a) ポリオレフィンを化学発泡剤と組み合わせて、発泡性ポリオレフィン組成物を形成することと、
(b) 前記発泡性ポリオレフィン組成物を発泡プロセスに供することと、を含み、
前記化学発泡剤が、構造(I)~(IX)として示される以下の化合物のうちの1つ以上を含み、
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
式中、Tsが、p-トルエンスルホニル基である、プロセス。
(態様9)
前記化学発泡剤が、前記発泡性ポリオレフィン組成物の総重量を基準として、0.1~1.0重量パーセントの範囲の量で存在し、前記ポリオレフィンが、エチレン系ポリマーを含み、前記ポリオレフィンが、前記発泡性ポリオレフィン組成物の総重量を基準として、90~99.9重量パーセントの範囲の量で存在する、態様8に記載のプロセス。
(態様10)
前記発泡性ポリオレフィン組成物が、酸化防止剤、セル安定剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤をさらに含む、態様8または9のいずれかに記載のプロセス。
図1
図2
図3