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特許7187592実質的な定常状態薬物送達の迅速な確立及び/又は停止
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】実質的な定常状態薬物送達の迅速な確立及び/又は停止
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20221205BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20221205BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20221205BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20221205BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20221205BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221205BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20221205BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221205BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221205BHJP
   A61K 38/27 20060101ALI20221205BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
A61K38/17 ZMD
A61K9/10
A61P3/10
A61P3/04
A61K47/14
A61K47/10
A61K47/32
A61K39/395 M
A61K39/395 A
A61P43/00 121
A61K38/27
A61K38/18
A61P43/00 117
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021016605
(22)【出願日】2021-02-04
(62)【分割の表示】P 2019193440の分割
【原出願日】2010-09-21
(65)【公開番号】P2021066747
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】61/358,112
(32)【優先日】2010-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/277,724
(32)【優先日】2009-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508346561
【氏名又は名称】インターシア セラピューティクス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】トーマス アール.アレシ
(72)【発明者】
【氏名】ケニス エル.ラスキー
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】特許第6835933(JP,B2)
【文献】国際公開第2008/133908(WO,A2)
【文献】国際公開第2008/021133(WO,A2)
【文献】特表平10-502285(JP,A)
【文献】ROHLOFF CATHERINE M ET AL,DUROS technology delivers peptides and proteins at consistent rate continuously for 3 to 12 months,JOURNAL OF DIABETES SCIENCE AND TECHNOLOGY,米国,DIABETES TECHNOLOGY SOCIETY,2008年05月,vol. 2, no.3,pages 461-467
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の浸透圧式送達装置であって、
20mcg/日のエクセナチドの連続投与を提供するようにエクセナチドの懸濁液製剤を含むと共に、第1の投与期間における投与を行うように構成された、第1の埋め込み型浸透圧式送達装置と
60mcg/日のエクセナチドの連続投与を提供するようにエクセナチドの懸濁液製剤を含むと共に、第2の投与期間における投与を行うように構成された、第2の埋め込み型浸透圧式送達装置と
を含むと共に、
前記第1の浸透圧式送達装置の前記ヒト対象への埋め込み、前記第1の浸透圧式送達装置の前記ヒト対象からの除去、及び、前記第2の浸透圧式送達装置の前記ヒト対象への埋め込みによって、ヒト対象へのエクセナチドの用量増加を提供するように構成される、複数の浸透圧式送達装置。
【請求項2】
前記懸濁液製剤が、エクセナチドの粒子製剤を含む、請求項に記載の複数の浸透圧式送達装置。
【請求項3】
前記懸濁液製剤が、エクセナチドの粒子製剤及び媒体製剤を含み、前記媒体製剤が、溶媒及びポリマーを含むと共に、前記溶媒が、安息香酸ベンジル、乳酸ラウリル、及びラウリルアルコールからなる群より選択され、前記ポリマーが、ポリビニルピロリドンである、請求項に記載の複数の浸透圧式送達装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の埋め込み型浸透圧式送達装置の各々が、実質的に定常状態でのエクセナチドの送達を、少なくとも約3ヶ月から約1年に亘って連続的に提供する、請求項1に記載の複数の浸透圧式送達装置。
【請求項5】
前記第1の埋め込み型浸透圧式送達装置が、20mcg/日のエクセナチドの連続投与を約3ヶ月に亘って提供する、請求項1に記載の複数の浸透圧式送達装置。
【請求項6】
前記第1の埋め込み型浸透圧式送達装置が、20mcg/日のエクセナチドの連続投与を約3ヶ月に亘って提供し、前記第2の埋め込み型浸透圧式送達装置が、60mcg/日のエクセナチドの連続投与を約6ヶ月に亘って提供する、請求項1に記載の複数の浸透圧式送達装置。
【請求項7】
前記第1及び第2の埋め込み型浸透圧式送達装置の各々が、円筒状容器を含み、前記円筒状容器は、一方の端が速度制御式半透膜により覆われ、他方の端が拡散調節器により覆われる、請求項1に記載の複数の浸透圧式送達装置。
【請求項8】
各浸透圧式送達装置が、
内部及び外部表面、並びに、第1及び第2の開放端を含む不浸透性容器と、
前記容器の前記第1の開放端を密閉する半透膜と、
前記容器内部に前記半透膜に隣接するように設けられる浸透圧エンジンと、
前記浸透圧エンジンに隣接するように設けられ、前記容器の前記内部表面を可動式に密閉するピストンとを含み、
ここで前記ピストンが、前記容器を第1及び第2のチャンバーに分割し、前記浸透圧エンジンは前記第1のチャンバーに含まれ、
各浸透圧式送達装置が更に、
前記第2のチャンバーを含む懸濁液製剤と、
前記容器の前記第2の開放端に挿入され、前記懸濁液製剤に隣接するように設けられる拡散調節器と
を含む、請求項に記載の複数の浸透圧式送達装置。
【請求項9】
ヒト対象における2型糖尿病の治療用に構成される、請求項1に記載の複数の浸透圧式送達装置。
【請求項10】
ヒト対象における体重低減用に構成される、請求項1に記載の複数の浸透圧式送達装置。
【請求項11】
ヒト対象における体重減少促進用に構成される、請求項1に記載の複数の浸透圧式送達装置。
【請求項12】
ヒト対象における肥満治療用に構成される、請求項1に記載の複数の浸透圧式送達装置。
【請求項13】
ヒト対象における食欲抑制用に構成される、請求項1に記載の複数の浸透圧式送達装置。
【請求項14】
ヒト対象におけるHbA1c血漿濃度低減用に構成される、請求項1に記載の複数の浸透圧式送達装置。
【請求項15】
ヒト対象におけるLDL-C低減用に構成される、請求項1に記載の複数の浸透圧式送達装置。
【請求項16】
ヒト対象におけるグルコースレベル低減用に構成される、請求項1に記載の複数の浸透圧式送達装置。
【請求項17】
ヒト対象におけるフルクトサミンレベル低減用に構成される、請求項1に記載の複数の浸透圧式送達装置。
【請求項18】
ヒト対象における収縮期血圧低減用に構成される、請求項1に記載の複数の浸透圧式送達装置。
【請求項19】
前記第1及び第2の埋め込み型浸透圧式送達装置の各々が、各浸透圧式送達装置の各埋め込みの後、約5日以内に、実質的に定常状態での治療濃度のエクセナチドの送達を提供するように構成される、請求項1に記載の複数の浸透圧式送達装置。
【請求項20】
前記第1及び第2の埋め込み型浸透圧式送達装置の各々が更に、少なくとも約3ヶ月に亘って、実質的に定常状態でのエクセナチドの送達を連続的に提供するように構成される、請求項1に記載の複数の浸透圧式送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2009年9月28日に出願され、現在係属中の米国仮出願第61/277,724号、及び2010年6月24日に出願され、現在係属中の米国仮出願第61/358,112号の利益を主張し、その出願は、それらの全体において、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、薬学研究及び開発に適用される、有機化学、製剤化学、及びペプチド化学に関する。本発明の態様は、そのような治療を必要とする対象における疾患又は症状のための治療の方法を含むが、これに限定されない。一つの実施形態では、疾患は2型糖尿病である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
様々な薬物投与形態及び薬物投与の方法は、哺乳動物への薬物送達について、特にヒトへの薬物送達について開発されている(例えば、the Merck Manual of Diagnosis and Therapy,18th edition,Published by Merck Sharp & Dohme Corp.,Whitehouse Station,NJを参照のこと)。そのような投薬形態は、例えば、以下:経口;注射(例えば、静脈、筋肉、髄腔内、又は皮下);埋め込み(例えば、皮下);及び皮膚又は粘膜関門(例えば、舌下腺、直腸、膣、眼、鼻、肺内への吸引、局所、又は経皮)を越えての投与経路の使用を含む。それぞれの投与経路は、特定の目的、利点、及び不利益点を有する。
【0004】
投与の経口経路は、最も一般的であり、一般的に最も都合がよいと考えられている。経口投与は、しかしながら、この経路により投与される薬物は、消化系の過酷な条件に曝されるため、いくつかの制限をもたらす。経口経路を用いることができない場合、投与の他の経路が必要とされ得る。
【0005】
薬物が注射による投与のために調製される場合(例えば、皮下、筋肉、静脈又は髄腔内投与)、該薬物は、複数時間、複数日、又はより長く注射部位からの薬物吸収を持続させる製剤を含む様々な方法で、製剤化され得る。そのような製剤は、典型的には、皮下注射に用いられる。持続性のために製剤化された注射製品は、典型的には、より迅速な吸収を有する注射薬物製品として頻繁に投与されない。そのような薬物は経口で投与された場合、消化系により典型的に不活性な形態に分解されるので、皮下投与は、多くのタンパク質又はペプチド薬物のために用いられる。薬物の皮下投与は、典型的に頻繁な自己注射、例えば、1日に1回若しくは複数回、又は1週間に1回の注射を必要とする。
【0006】
大量の薬物製品が要求される場合、筋肉内投与は一般的に好ましい投与の経路である。典型的には、薬物の筋肉内投与は、上腕、大腿部、又は臀部の筋肉への注射による。血流への薬物吸収の速度は主に、筋肉への血液供給に依存する、すなわち、血液供給が多くなれば、薬物の吸収も速まる。
【0007】
静脈注射薬物投与は、針が直接静脈に挿入されることを必要とする。薬物は、単回投与で与えられ、又は連続的に点滴され得る。点滴については、薬物溶液は、重力を用い(例えば、折りたたみ式のプラスチックバッグから)、又は通常前腕の静脈に挿入されたチューブを通して注入ポンプを用いて送達される。例えば、静脈に針又はカテーテルを挿入することが困難であり得、薬物は典型的に投与の開始前に比較的短時間内で混合さなければならず、感染の増加した機会が存在し(例えば、衛生状態の欠如及び/又は正しい無菌技術の欠如により引き起こされる注射部位の膿んだ感染)、時間と共に末梢静脈に瘢痕損傷が存在するので、静脈注射は、皮下又は筋肉注射よりも投与することがより困難であり得る。
【0008】
薬物が、静脈注射により投与される場合、健康管理の実務者に、薬物が機能している、及び薬物が望まれない副作用を引き起こしていない兆候について、対象を注意深く観察することがしばしば望ましい。典型的には、静脈内投与された薬物の効果は、皮下注射又は筋肉注射により投与される薬物より、より短い期間続く傾向がある。それ故、いくつかの薬物は、適切な治療効果を提供するために、連続注入により投与されなければならない。静脈注射薬物投与に関する困難性のために、それは病院又は熟練した医療環境において最も典型的に用いられ;それは長期間に亘る自己投与治療のために、めったに用いられない。
【0009】
多数の厄介な問題は、下記を含むがこれに限定されない、注射治療計画に伴う服薬遵守にマイナスの影響を与える。針恐怖症である対象、それは薬物が長時間に亘って自己で注射しなければならない場合、それは対象にとって特に厄介である。服薬遵守はまた、例えば、対象が人前の場合、又は日常活動で忙しい場合、注射による薬物の投与の不便性により困難であり得る。また、薬物の頻繁な自己投与は、彼らの疾患の状態を思い出させ、疾患及び/又は治療に関連するスティグマ(stigma)をもたらす。
【0010】
本発明の埋め込み型浸透圧式薬物送達装置、及び治療を必要とする対象における疾患又は症状の治療のための方法におけるこれらの浸透圧式送達装置の使用は、先に記述される薬物用量形態及び治療の方法の満たされていない需要に独自に取り組む。例えば、本発明は、長時間に亘る実質的な定常状態の薬物送達を迅速に確立及び維持する能力を備え、一方でまた、薬物の投与を迅速に停止することができる能力を提供する、長時間に亘って連続的に投与される標的薬物用量での対象の治療を提供する。従来、注射を介した薬物投与は、典型的に、定常状態の薬物送達の迅速な確立及び長期間の維持(例えば、3ヶ月又はそれ以上)を提供することが不可能であり、たとえそれが可能であったとしても、注射により投与される薬物を使用する治療(例えば、長期に及ぶ送達について製剤化された薬物)は、迅速に停止することができなかった。本発明はまた、注射による薬物投与により行われる用量増加と比較して、薬物用量増加に対する対象の増大した忍容性を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
本発明は、一般的に、治療を必要とする対象における疾患又は症状を治療する改良された方法に関し、ここで、本発明の方法は、実質的な定常状態の薬物送達の迅速な確立及び/又は迅速な停止を提供する。さらに、本発明は、標準的な薬物注射方法よる用量増加と比較して増加した薬物用量レベルに対する対象の改良された忍容性を提供する、薬物用量を上昇させる方法に関する。本発明の方法のための好ましい対象は、ヒトである。
【0012】
第一の態様では、本発明は、治療を必要とする対象における2型糖尿病を治療する方法に関する。本方法は、浸透圧式送達装置からのインクレチン模倣薬の連続的な送達を提供することを含み、ここで、治療濃度でのインクレチン模倣薬の実質的な定常状態送達は対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後、約7日以下の期間内で達成される。浸透圧式送達装置からインクレチン模倣薬の実質的な定常状態送達は、典型的には、少なくとも約3ヶ月の投与期間に亘り、連続的である。本発明のいくつかの実施形態では、治療濃度でのインクレチン模倣薬の実質的な定常状態送達は、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後、約5日以下、約4日以下、約3日以下、約2日以下、又は約1日以下からなる群から選択される期間内で達成される。
【0013】
浸透式送達装置からのインクレチン模倣薬の実質的な定常状態送達は、例えば、少なくとも約3ヶ月~約1年、少なくとも約4ヶ月~約1年、少なくとも約5ヶ月~約1年、少なくとも約6ヶ月~約1年、少なくとも約8ヶ月~約1年、又は少なくとも約9ヶ月~約1年の投与期間に亘って連続的である。
【0014】
本方法は、浸透圧式送達装置の埋め込み前の対象の空腹時血漿グルコース濃度と比較して、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後、対象の空腹時血漿グルコース濃度の著しい減少を提供することをさらに含み得る。減少は、典型的に、例えば、約7日以内、約6日以内、約5日以内、約4日以内、約3日以内、約2日以内、又は約1日以内で得られる。通常、空腹時血漿グルコースの著しい減少は、投与期間に亘り維持される。
【0015】
また、本方法は、インクレチン模倣薬の濃度が、対象由来の血液サンプルにおいて、連続送達の停止後インクレチン模倣薬の約6半減期以内、約5半減期以内、約4半減期以内、又は約3半減期以内で実質的に検出できないほどに、インクレチン模倣薬の連続送達を停止する能力をさらに含み得る。エクセナチドがインクレチン模倣薬の濃度である場合、本方法は、約72時間未満、約48時間未満、約24時間未満、及び約12時間未満からなる群から選択される数時間において、連続的な送達の停止後、エクセナチドの濃度が、対象由来の血液サンプルにおいて実質的に検出できないほどに、連続送達を停止する能力をさらに含み得る。一つの実施形態では、連続送達の停止は、対象から浸透圧式送達装置の除去により達成される。インクレチン模倣薬は、例えば、ラジオイムノアッセイにより検出される。
【0016】
本発明の方法に使用のための浸透圧式送達装置は、容器、半透膜、浸透圧エンジン、ピストン、懸濁液製剤、及び拡散調節器を含むがこれに限定されない、本明細書に記述される構成要素を含み得る。
【0017】
本発明に使用のための懸濁液製剤は、典型的には、インクレチン模倣薬を含む粒子製剤、及び媒体製剤を含む。本発明の実施において有用なインクレチン模倣薬の例は、エクセナチドペプチド、エクセナチドペプチドアナログ、エクセナチドペプチド誘導体、GLP-1ペプチド、GLP-1ペプチドアナログ、又はGLP-1ペプチド誘導体、を含むがこれに限定されない。本発明の実施において有用な好ましいインクレチン模倣薬の例は、エキセンジン-4のアミノ酸配列を有するエクセナチド、リキシセナチド、GLP-l(7-36)、リラグルチド、アルビグルチド、及びタスポグルチドを含む。いくつかの実施形態では、媒体製剤は、溶媒(例えば、安息香酸ベンジル、乳酸ラウリル、及び/又はラウリルアルコール)、及びポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)を含む。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、連続送達は、対象に約10mcg/日、約20mcg/日、約30mcg/日、約40mcg/日、約60mcg/日、及び約80mcg/日からなる群から選択されるエクセナチドのmcg/日用量を提供する。
【0019】
本発明の別の実施形態では、本方法は、第一のmcg/日用量でのインクレチン模倣薬の第一の連続投与期間に続いて、第二のmcg/日用量までインクレチン模倣薬の用量増加を提供する第二の連続投与期間、ここで第二のmcg/日用量は第一のmcg/日用量より多い、をさらに含む。第一のmcg/日用量は、例えば、第一の浸透圧式送達装置により送達され、第二のmcg/日用量は、第二の浸透圧式送達装置により送達され、少なくとも第一又は第二の浸透圧式送達装置からのインクレチン模倣薬の送達は、少なくとも約3ヶ月の投与期間に亘り連続的である。一つの実施形態では、第二のmcg/日用量は、第一のmcg/日用量よりも少なくとも2倍多い。本方法は、第二のmcg/日用量と比較してより高いmcg/日用量までのインクレチン模倣薬の用量上昇を提供する、少なくとももう一つの連続投与期間をさらに含み得る。
【0020】
エクセナチドについての典型的な用量増加は、以下:約10mcg/日に続いて約20mcg/日;約10mcg/日に続いて約40mcg/日;約10mcg/日に続いて約60mcg/日;約10mcg/日に続いて約80mcg/日;約20mcg/日に続いて約40mcg/日;約20mcg/日に続いて約60mcg/日;約20mcg/日に続いて約80mcg/日;約40mcg/日に続いて約60mcg/日;約40mcg/日に続いて約80mcg/日;又は約60mcg/日に続いて約80mcg/日である。
【0021】
第二の態様では、本発明は、治療を必要とする対象における疾患又は症状を治療する方法に関する。本方法は、典型的には、浸透圧式送達装置から薬物の連続送達を提供することを含み、ここで治療濃度における薬物の実質的な定常状態送達は、対象における浸透圧式送達装置の埋め込み後、約7日以下の期間内で達成される。浸透圧式送達装置から薬物の実質的な定常状態送達は、通常少なくとも約3ヶ月の投与期間に亘り連続的であり、ここで薬物は半減期を有する。一つの実施形態では、本方法は、疾患又は症状が前立腺癌ではないという条件を含む。
【0022】
本方法は、連続送達の停止後、薬物の約6半減期以内、約5半減期以内、約4半減期以内、又は約3半減期以内で、薬物の濃度が対象由来の血液サンプルにおいて実質的に検出できないほどに、連続送達を停止する能力をさらに含み得る。一つの実施形態では、連続的な送達の停止は、対象からの浸透圧式送達装置の除去により達成される。薬物は、例えば、ラジオイムノアッセイ又はクロマトグラフィーにより検出される。
【0023】
本発明の別の実施形態では、本方法は、第一の用量/日での薬物の第一の連続投与期間に続いて、第二の用量/日まで用量増加を提供する第二の連続投与期間、ここで第二の用量/日は第一の用量/日より多い、をさらに含む。第一の用量/日は、例えば、第一の浸透圧式送達装置により送達され、第二の用量/日は、第二の浸透圧式送達装置により送達され、少なくとも第一又は第二の浸透圧式送達装置からの薬物の送達は、少なくとも約3ヶ月の投与期間に亘り連続的である。本方法は、さらに、本方法は、第二の用量/日と比較してより高い用量/日までの薬物の用量上昇を提供する少なくとももう一つの連続投与期間をさらに含み得る。
【0024】
本発明の方法に使用のための浸透圧式送達装置は、容器、半透膜、浸透圧エンジン、ピストン、薬物製剤又は懸濁液製剤、及び拡散調節器を含むがこれに限定されない、本明細書に記述される構成要素を含み得る。薬物製剤は、典型的には、薬物及び媒体製剤を含む。
【0025】
本発明に使用のための懸濁液製剤は、典型的に、薬物を含む粒子製剤、及び媒体製剤を含む。いくつかの実施形態では、薬物はポリペプチド、例えば、組み換え抗体、抗体フラグメント、ヒト化抗体、一本鎖抗体、モノクローナル抗体、アビマー、ヒト成長ホルモン、上皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来の増殖因子、形質転換増殖因子、神経成長因子、サイトカイン、又はインターフェロンである。いくつかの実施形態では、媒体製剤は、溶媒(例えば、安息香酸ベンジル、乳酸ラウリル、及び/又はラウリルアルコール)、及びポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)を含む。
【0026】
本発明のこれら及び他の実施形態は、本明細書での開示を考慮して、当業者は容易に思い付く。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、浸透圧式送達装置を用いたエクセナチドの連続皮下送達のランダム化、非盲検の29日の試験からのデータを表す。図は、28日の処置に亘る、時間に対する空腹時血漿グルコース濃度を示す。図では、縦軸は平均空腹時血漿グルコース(mg/dL)であり、横軸は、処置日数である。黒丸は、10mcg/日を送達する浸透圧式装置についてのデータ点を示す。黒三角は、20mcg/日を送達する浸透圧式装置についてのデータ点を示す。黒菱形は、40mcg/日を送達する浸透圧式装置についてのデータ点を示す。黒四角は、80mcg/日を送達する浸透圧式装置についてのデータ点を示す。
【0028】
図2図2は、浸透圧式送達装置を用いたエクセナチドの連続皮下送達のランダム化、非盲検の29日の試験からのデータを表す。図は、29日目に停止する28日の処置、及び続く除去後7日に亘る、時間に対する血漿エクセナチド濃度に関する薬物動態データを示す。図では、縦軸はエクセナチド濃度(pg/mL)であり、横軸は、時間(日)である。黒菱形は、10mcg/日を送達する浸透圧式装置についてのデータ点を示す。黒四角は、20mcg/日を送達する浸透圧式装置についてのデータ点を示す。黒三角は、40mcg/日を送達する浸透圧式装置についてのデータ点を示す。「X」は、80mcg/日を送達する浸透圧式装置についてのデータ点を示す。29日目、浸透圧式送達装置の除去、及び付随する血漿エクセナチドの降下は、垂直の矢印で示される。
【0029】
図3図3は、浸透圧式送達装置を用いたエクセナチドの連続的皮下送達のランダム化、非盲検の29日の試験からのデータを表す。図は、10mcg/日、20mcg/日、40mcg/日、及び80mcg/日を送達する浸透圧式装置についての個別の対象における、時間に対する吐き気を示す。縦軸は吐き気を経験した患者(対象)の番号であり、横軸は、送達されたエクセナチドのそれぞれの濃度について、週で表される。吐き気の程度は、吐き気無し(空箱)、軽度の吐き気(垂直線)、中程度の吐き気(平行線)、深刻な吐き気(網目)のように下記の図で与えられる。
【0030】
図4図4は、本発明の実施に有用な浸透圧式送達装置の一つの実施形態の部分的断面図を表す。
【0031】
図5図5は、フェーズ2臨床試験計画の概略を表す。図では、一番上の線は、フェーズ2試験(12週)及び12週の延長フェーズの時系列を示す。延長フェーズは、13~24週であり、群は、図に示されるように、エクセナチドの連続送達に、1:1にランダム化された。群3である注射により投与されたエクセナチドでは、二番目の線である。線の分割は、群のランダム化、及び40mcg/日、及び60mcg/日での連続送達への切り替えを示す。群1である20mcg/日での連続送達を提供する浸透圧式送達装置を用いて投与されるエクセナチドは、3番目の線である。線の分割は、20mcg/日を継続する、又は及び60mcg/日の増加用量に増加する群のランダム化を示す。群2である40mcg/日での連続送達を提供する浸透圧式送達装置を用いて投与されるエクセナチドは、4番目の線である。線の分割は、40mcg/日を継続する、又は80mcg/日の増加した用量まで増加させり群のランダム化を示す。
【0032】
図6図6は、エクセナチドでの1日2回の注射による処置(群3)に対するエクセナチドの連続送達による処置(群1及び2)についての経時的な吐き気の発生率についてのデータを表す。縦軸は、吐き気の週ごとの発生率(%)であり、横軸は、週での処置期間である。図では、群1であるエクセナチドの20mcg/日の連続送達による処置は菱形により表され;群2であるエクセナチドの40mcg/日の連続送達による処置は四角により表され;群3である、4週間(矢印はおよその開始時点を表す)の5mcgBID(1日2回の注射)、それに続く8週間(矢印はおよその開始時点を表す)の10mcgBIDでの注射による処置は三角により表される。
【0033】
図7図7は、8週における全体的な生活の質(QOL)評価における基準値からの百分率変化を示すデータを表す。図では、棒グラフの上の数字は以下:改良されたQOLスコアを有するn/安定したQOLスコアを有するn/減少したQOLスコアを有するn;それぞれ、群3について、36/0/15;群1について、35/3/9;及び群2について、40/1/7を表す。縦軸は、スコアにおける基準値からの変化(%;全体のQOLスコア)である。群は、横軸に並べて配置され、群の大きさは、以下のそれぞれの群:群3、n=51;群1、n=47;及び群2、n=48で提供された。
【0034】
図8図8は、8週において実行されたQOLのサブスケール分析からのデータを表す。縦軸は、4つのQOLサブスケール:健康、医学的管理、ライフスタイル、及び簡便性のそれぞれについてのスコアにおける基準値からの百分率変化である。4つのQOLサブスケールは、横軸に並べて配置される。図では、グラフのそれぞれの棒は、群の数で表示される。それぞれのサブスケール内で、棒グラフは、以下:群3、群1、及び群2の順で配列される。
【0035】
図9図9は、20週における対象ステータスについて延長フェーズの概略を表す。図では、示された用量におけるエクセナチドの連続送達は、「CD」として示される。群の大きさは、延長フェーズ用量の隣に表される。13~24週の延長フェーズでは、それぞれの処置群からの対象は、20、40、60、又は80mcg/日でのエクセナチドの連続送達を受けるためにランダム化された。図では、群1は、最初の12週間の20mcg/日のエクセナチドの連続送達による処置である;群2は、最初の12週間の40mcg/日のエクセナチドの連続送達による処置である;群3は、4週間の5mcgBID(1日2回)注射に続いて8週間の10mcgBIDでの注射による、最初の12週間の注射による処置である。群における分割は、12週での群のランダム化を示し、箱は、12週後の用量増加のための用量を示す。20週におけるそれぞれの群の数は、「n」として示される。
【0036】
図10図10は、経時的な吐き気の発生率についての延長フェーズ(13~24週)のデータを表す。一番目の点(-1週)は、ランダム化及び延長フェーズ処置プロトコールの開始前の週の吐き気の発生率を示す。縦軸は、週ごとの吐き気の発生率の百分率(%)であり、横軸は、週における処置の期間である。図では、20mcg/日のエクセナチドを送達する埋め込み型浸透圧式装置を用いた連続送達のデータは、黒三角として表される;20mcg/日のエクセナチドを送達する埋め込み型浸透圧式装置を用いた連続送達のデータであって、対象が、延長フェーズにおいて、60mcg/日のエクセナチドを送達する埋め込み型浸透圧式装置を用いた連続送達に切り替えられるデータは、四角として表される;及びエクセナチドの1日2回の注射についてのデータであって、対象が、延長フェーズにおいて、60mcg/日のエクセナチドを送達する埋め込み型浸透圧式装置を用いた連続送達に切り替えられるデータは、黒丸で表される。
【0037】
図11図11は、20週での全体的なQOL評価における基準値からの百分率変化を示す延長フェーズデータをさらに表す。図では、それぞれの棒グラフの数は、QOL評価が行われた週(8週又は20週)を表す。群は、以下:40mcg/日でのエクセナチドの連続送達(CD40mcg/日)に切り替えられた群3(8週における);及び60mcg/日でのエクセナチドの連続送達(CD60mcg/日)に切り替えられた群3(8週における)、として横軸に左から並べられる。縦軸は、全体的なQOLスコアについての基準値からの%変化である。
【0038】
図12図12は、20週での全体的なQOL評価における基準値からの百分率変化を示すさらなる延長フェーズデータを表す。図では、それぞれの棒グラフの数は、QOL評価が行われた週(8週又は20週)を表す。群は、以下:60mcg/日でのエクセナチドの連続送達(CD60mcg/日)に切り替えられた群1(8週における);及び80mcg/日でのエクセナチドの連続送達(CD80mcg/日)に切り替えられた群2(8週における)、として横軸に左から並べられる。縦軸は、全体的なQOLスコアについての基準値からの%変化である。
【0039】
図13図13は、様々な2型糖尿病処置と組み合わされたメトホルミンのみのバックグラウンド処置に関する患者間の競合プロファイルを表す。縦軸は、HbA1c%である。処置は、以下:1日に2回の注射により投与されるエクセナチド(処置A);1週間に1回の注射により投与されるエクセナチド(処置B);1日に1回の注射により投与されるリラグルチド(処置C);1週間に1回の注射により投与されるトスポグルチド(処置D);及び20mcg/日及び60mcg/日でのエクセナチドの連続送達のための本発明の方法及び浸透圧式送達装置を用いた処置(処置E)のように横軸に表される。それぞれの処置に関連して棒グラフ(垂直線)内で上部近くの数字は、基準値HbA1c%(例えば、処置A、8.2)を与える。それぞれの処置に関連して棒グラフ(斜線)内で上部近くの数字は、試験の終了時点のHbA1c%(例えば、処置A、7.4)を与える。それぞれの処置に関連して棒グラフ(斜線)内で横軸近くの数字は、試験についてのHbA1cの変化(例えば、処置A、-0.8)を与える。
【0040】
図14図14は、様々な2型糖尿病処置と組み合わされたメトホルミンのみのバックグラウンド処置に関する患者間の競合プロファイルを表す。縦軸は、HbA1c%である。処置は、以下:シタグリプチンを用いた処置(処置F);及びピゴリタゾンを用いた処置(処置G);1週間に1回の注射により投与されるエクセナチド(処置B);20mcg/日及び60mcg/日でのエクセナチドの連続送達のための本発明の方法及び浸透圧式送達装置を用いた処置(処置E)のように横軸に表される。それぞれの処置に関連して棒グラフ(垂直線)内で上部近くの数字は、基準値HbA1c%(例えば、処置F、8.5)を与える。それぞれの処置に関連して棒グラフ(斜線)内で上部近くの数字は、試験の終了時点のHbA1c%(例えば、処置F、7.6)を与える。それぞれの処置に関連して棒グラフ(斜線)内で横軸近くの数字は、試験についてのHbA1cの変化(例えば、処置F、-0.9)を与える。
【0041】
図15図15は、エクセナチドの連続送達、又は1週に1度のエクセナチドの注射のいずれかと組み合わされたメトホルミンのみのバックグラウンド処置に関する患者間の競合プロファイルを表す。縦軸は、HbA1c%である。処置は、以下:20mcg/日及び60mcg/日でのエクセナチドの連続送達のための本発明の方法及び浸透圧式送達装置を用いた処置(処置E)、それは最初の3組の棒グラフを含む;及び1週間に1回の注射により投与されるエクセナチド(処置B)、それは点線の箱により仕切られる、のように図の上方に表される。横軸上で、処置Eについての対象は、以下:全ての対象;7.0超の基準値HbA1c;及び7.5以上の基準値HbA1c、のように基準値HbA1cに基づいて群に分類される。それぞれの処置に関連して棒グラフ(垂直線)内で上部近くの数字は、基準値HbA1c%(例えば、処置B、8.6)を与える。それぞれの処置に関連して棒グラフ(斜線)内でアスタリスク印の付けられた百分率は、7%以下のHbA1cを達成した対象の百分率を与える(例えば、処置B、58%*)。それぞれの処置に関連して棒グラフ(斜線)内で上部近くの数字は、試験の終了時点のHbA1c%(例えば、処置B、7.1)を与える。それぞれの処置に関連して点刻の棒グラフ内で横軸近くの数字は、試験についてのHbA1cの変化(例えば、処置B、-1.5)を与える。
【0042】
図16図16は、エクセナチドの連続送達、又は1週に1度のエクセナチドの注射のいずれかと組み合わされたメトホルミンのみのバックグラウンド処置に関する患者間の競合プロファイル、ここで基準値は標準化される、を表す。縦軸は、HbA1c%である。処置は、以下:1週間に1回の注射により投与されるエクセナチド(処置B);及び20mcg/日及び60mcg/日でのエクセナチドの連続送達のための本発明の方法及び浸透圧式送達装置を用いた処置(処置E)のように、図の上方に表される。図は、黒の垂直の線により、以下:9.0未満の基準値HbA1cを有する対象についてのデータは、左側に、横軸上に表示され;9.0以上の基準値HbA1cを有する対象についてのデータは、右側に、横軸上に表示さる、のように二つのパネルに分けられる。「基準値「HbA1c」≧9.0*を有する対象」のアスタリスクは、処置Bにおける対象の約三分の一が、9.0以上の基準値HbA1cを有し;処置Eの一人の対象のみが、9.0以上の基準値HbA1cを有することを表す。それぞれの処置に関連して棒グラフ(垂直線)内で上部近くの数字は、基準値HbA1c%(例えば、処置B、左パネル、7.8)を与える。それぞれの処置に関連して棒グラフ(斜線)内で上部近くの数字は、試験の終了時点のHbA1c%(例えば、処置B、左パネル、6.7)を与える。それぞれの処置に関連して棒グラフ(斜線)内で横軸近くの数字は、試験についてのHbA1cの変化(例えば、処置B、左パネル、-1.1)を与える。
【0043】
図17図17は、エクセナチド、又はシタグリプチンの連続送達と組み合わされたメトホルミンのみのバックグラウンド処置に関する患者間の競合プロファイルを表す。縦軸は、HbA1c%である。処置は、以下:20mcg/日及び60mcg/日でのエクセナチドの連続送達のための本発明の方法及び浸透圧式送達装置を用いた処置(処置E)、それは最初の3組の棒グラフを含む;及びシタグリプチンを用いた処置(処置F)、それは点線の箱で仕切られる、のように図の上方に表される。横軸上で、処置Eについての対象は、以下:全ての対象;7.0超の基準値HbA1c;及び7.5以上の基準値HbA1c、のように基準値HbA1cに基づいて群に分類される。それぞれの処置に関連して棒グラフ(垂直線)内で上部近くの数字は、基準値HbA1c%(例えば、処置F、8.5)を与える。それぞれの処置に関連して棒グラフ(垂直線)内でアスタリスク印の付けられた百分率は、7%以下のHbA1cを達成した対象の百分率を与える(例えば、処置F、31%*)。それぞれの処置に関連して棒グラフ(斜線)内で上部近くの数字は、試験の終了時点のHbA1c%(例えば、処置F、7.6)を与える。それぞれの処置に関連して棒グラフ(斜線)内で横軸近くの数字は、試験についてのHbA1cの変化(例えば、処置F、-9.0)を与える。
【0044】
図18図18は、エクセナチド、又はシタグリプチンの連続送達のいずれかと組み合わされたメトホルミンのみのバックグラウンド処置に関する患者間の競合プロファイル、ここで基準値は標準化される、を表す。縦軸は、HbA1c%である。処置は、以下:シタグリプチンを用いた処置(処置F);及び20mcg/日及び60mcg/日でのエクセナチドの連続送達のための本発明の方法及び浸透圧式送達装置を用いた処置(処置E)のように図の上方に表される。図は、黒の垂直の線により、以下:9.0未満の基準値HbA1cを有する対象についてのデータは、左側に、横軸上に表示され;9.0以上の基準値HbA1cを有する対象についてのデータは、右側に、横軸上に表示さる、の二つのパネルに分けられる。「基準値HbA1c≧9.0*を有する対象」のアスタリスクは、処置Fにおける対象の約三分の一が、9.0以上の基準値HbA1cを有し;処置Eの一人の対象のみが、9.0以上の基準値HbA1cを有することを表す。それぞれの処置に関連して棒グラフ(垂直線)内で上部近くの数字は、基準値HbA1c%(例えば、処置F、左パネル、7.7)を与える。それぞれの処置に関連して棒グラフ(斜線)内で上部近くの数字は、試験の終了時点のHbA1c%(例えば、処置F、左パネル、7.2)を与える。それぞれの処置に関連して棒グラフ(斜線)内で横軸近くの数字は、試験についてのHbA1c変化(例えば、処置F、左パネル、-0.5)を与える。
【0045】
図19図19は、エクセナチド、又はピオグリタゾンの連続送達のいずれかと組み合わされたメトホルミンのみのバックグラウンド処置に関する患者間の競合プロファイルを表す。縦軸は、HbA1c%である。処置は、以下:20mcg/日及び60mcg/日でのエクセナチドの連続送達のための本発明の方法及び浸透圧式送達装置を用いた処置(処置E)、それは最初の3組の棒グラフを含む;及びピオグリタゾンを用いた処置(処置G)、それは点線の箱で仕切られる、のように図の上方に表される。横軸上で、処置Eについての対象は、以下:全ての対象;7.0超の基準値HbA1c;及び7.5以上の基準値HbA1c、のように基準値HbA1cに基づいて群に分類される。それぞれの処置に関連して棒グラフ(垂直線)内で上部近くの数字は、基準値HbA1c%(例えば、処置G、8.5)を与える。それぞれの処置に関連して棒グラフ(垂直線)内でアスタリスク印の付けられた百分率は、7%以下のHbA1cを達成した対象の百分率を与える(例えば、処置G、43%*)。それぞれの処置に関連して棒グラフ(斜線)内で上部近くの数字は、試験の終了時点のHbA1c%(例えば、処置G、7.3)を与える。それぞれの処置に関連して棒グラフ(斜線)内で横軸近くの数字は、試験についてのHbA1cの変化(例えば、処置G、-1.2)を与える。
【0046】
図20図20は、エクセナチド、又はピオグリタゾンの連続送達のいずれかと組み合わされたメトホルミンのみのバックグラウンド処置に関する患者間の競合プロファイル、ここで基準値は標準化される、を表す。縦軸は、HbA1c%である。処置は、以下:ピオグリタゾンを用いた処置(処置G);及び20mcg/日及び60mcg/日でのエクセナチドの連続送達のための本発明の方法及び浸透圧式送達装置を用いた処置(処置E)、のように図の上方に表される。横軸上で、処置Eについての対象は、以下:全ての対象;7.0超の基準値HbA1c;及び7.5以上の基準値HbA1c、のように基準値HbA1cに基づいて群に分類される。図は、黒の垂直の線により、以下:9.0未満の基準値HbA1cを有する対象についてのデータは、左側に、横軸上に表示され;9.0以上の基準値HbA1cを有する対象についてのデータは、右側に、横軸上に表示さる、の二つのパネルに分けられる。「基準値HbA1c≧9.0*を有する対象」のアスタリスクは、処置Gにおける対象の約三分の一が、9.0以上の基準値HbA1cを有し;処置Eの一人の対象のみが、9.0以上の基準値HbA1cを有することを表す。それぞれの処置に関連して棒グラフ(垂直線)内で上部近くの数字は、基準値HbA1c%(例えば、処置G、左パネル、7.8)を与える。それぞれの処置に関連して棒グラフ(斜線)内で上部近くの数字は、試験の終了時点のHbA1c%(例えば、処置G、左パネル、6.9)を与える。それぞれの処置に関連して棒グラフ(斜線)内で横軸近くの数字は、試験についてのHbA1cの変化(例えば、処置G、左パネル、-0.9)を与える。
【0047】
図21図21は、様々な2型糖尿病処置で組み合わされたメトホルミンのみのバックグラウンド処置に関する患者間の相対的な体重減少を表す。縦軸は、体重減少%である。処置は、以下:ピオグリタゾンを用いた処置(処置G);シタグリプチンを用いた処置(処置F);1週間に1回の注射により投与されるエクセナチド(処置B);及び20mcg/日及び60mcg/日でのエクセナチドの連続送達のための本発明の方法及び浸透圧式送達装置を用いた処置(処置E)のように横軸に表される。それぞれの処置に関連して棒グラフ内の数字は、試験についての体重増加又は減少(例えば、処置G、+2.8kg)を与える。
【発明を実施するための形態】
【0048】
発明の詳細な説明
それぞれの個別の特許、出版物、又は特許出願は、全ての目的のためにその全体において参照により組み込まれることが特に、且つ個別に意図されるように、この明細書に引用される全ての特許、出版物、及び特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
1.0.0 定義
本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を記述する目的のためであって、限定されることを意図しないことは、理解される。この明細書及び添付の特許請求の範囲に用いられるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が他に明確に指定しない限り、複数形の指示対象を含む。従って、例えば、「溶媒(a solvent)」への言及は、二つ又はそれ以上のそのような溶媒の組み合わせを含み、「ペプチド(a peptide)」への言及は、一つ又は複数のペプチド、又はペプチドの混合物を含み、「薬物(a drug)」への言及は、一つ又は複数の薬物を含み、「浸透圧式装置(an osmotic device)」への言及は、一つ又は複数の浸透圧式装置などを含む。
【0050】
他に定義ない限り、本明細書に用いられる全ての技術及び科学用語は、発明に関連する当業者により一般に理解されるような同意義を有する。もっとも、本明細書に記述されるようなものと同様又は同等な他の方法及び物質は、本発明の実施に用いられ得、好ましい物質及び方法は、本明細書に記述される。
【0051】
本発明を記述する及び言及することにおいては、下記の用語は、下記に提示される定義に従って用いられる。
【0052】
用語「薬物」、「治療薬」、及び「有益な薬剤」は、区別せずに用いられ、所望の有益な効果を生み出すために対象に送達される任意の治療的活性物質を意味する。本発明の一つの実施形態では、薬物は、ポリペプチドである。本発明の別の実施形態では、薬物は、小分子、例えば、ホルモン、例えば、アンドロゲン又はエストロゲンである。本発明の装置及び方法は、タンパク質、小分子、及びそれらの組み合わせの送達に適している。
【0053】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」は、本明細書で区別しないで用いられ、典型的には、二つ又はそれ以上のアミノ酸(例えば、最も典型的にはL-アミノ酸であるがまた、例えばD-アミノ酸、修飾されたアミノ酸、アミノ酸アナログ、及び/又はアミノ酸模倣剤を含む)の鎖を含む分子を意味する。ペプチドは、自然に生じ、合成的に製造され、又は組み替え的に発現され得る。ペプチドはまた、アミノ酸を修飾する付加基、例えば、翻訳後修飾により付加された官能基を含む。翻訳後修飾の例は、アセチル化、アルキル化(メチル化を含む)、ビオチン化、グルタミル化、グリシル化、グリコシル化、イソプレニル化、リポイル化、ホスホパンテテイン化、ホスホリル化、セレン化(selenation)、及びC末端アミド化を含むがこれに限定されない。ペプチドなる用語はまた、アミノ末端及び/又はカルボキシ末端の修飾を含むペプチドを含む。末端のアミノ基の修飾は、des-アミノ、N-低級アルキル、N-ジ-低級アルキル、及びN-アシル修飾を含むがこれに限定されない。末端のカルボキシ基の修飾は、アミド、低級アルキルアミド、ジアルキルアミド、及び低級アルキルエステル修飾(例えば、ここで低級アルキルはC1~C4アルキル)を含むがこれに限定されない。ペプチドなる用語はまた、アミノ及びカルボキシ末端の間のアミノ酸の、例えば上述のそれらに限定されない修飾を含む。一つの実施形態では、ペプチドは、小分子薬物の付加により修飾され得る。
【0054】
ペプチド鎖の一端における末端のアミノ酸は、典型的には、遊離のアミノ基(すなわち、アミノ末端)を有する。鎖の他方の端における末端のアミノ酸は、典型的に遊離のカルボキシル基(すなわちカルボキシ末端)を有する。典型的には、ペプチドを形成するアミノ酸は、順番に番号が付けられ、アミノ末端で開始し、ペプチドのカルボキシ末端の方向に増加する。
【0055】
本明細書に用いられる語句「アミノ酸残基」とは、アミド結合、又はアミド結合模倣剤によりペプチドに組み込まれるアミノ酸を意味する。
【0056】
本明細書に用いられる語句「インクレチン模倣薬」とは、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)、並びにそれらのペプチド誘導体及びペプチドアナログ、並びにエクセナチド、並びにそれらのペプチド誘導体及びペプチドアナログを含むがこれに限定されない。インクレチン模倣薬はまた、「インスリン分泌刺激ペプチド」又は「GLP-1受容体アゴニスト」として文献において知られている。
【0057】
本明細書に用いられる用語「インスリン分泌刺激の」とは、典型的に、インスリンの産生及び/又は活性を刺激する又は影響を与える化合物、例えばペプチド(例えば、インスリン分泌刺激ホルモン)の能力を意味する。そのような化合物は、典型的に、対象においてインスリンの分泌又は生合成を刺激する。
【0058】
本明細書で用いられる用語「媒体(vehicle)」は、化合物、例えば薬物を運ぶために用いられる媒体(medium)を意味する。本発明の媒体は、典型的に、ポリマー、及び溶媒などの成分を含む。本発明の懸濁液媒体は、典型的に、薬物粒子製剤をさらに含む懸濁液製剤を調製するために用いられる溶媒、及びポリマーを含む。
【0059】
本発明に用いられる語句「相分離」は、例えば懸濁液媒体が水性環境と接触する場合など、懸濁液媒体における多相(例えば、液体又はゲル相)の製剤を意味する。本発明のいくつかの実施形態では、懸濁液媒体は、製剤化され、約10%未満の水を有する水性の環境と接触した場合、相分離を示す。
【0060】
本明細書で用いられる語句「単相」とは、物理的及び化学的に完全に単一である、固体、半固体、又は液体均一系を意味する。
【0061】
本明細書で用いられる用語「分散した」とは、化合物、例えば、懸濁液媒体中の薬物粒子製剤を溶解すること、分散すること、懸濁すること、または他には分配すること意味する。
【0062】
本明細書で用いられる語句「化学的に安定である」とは、化学的経路、例えば、脱アミド化(通常加水分解による)、凝集、又は酸化により、所定の期間に亘って製造された分解生成物の許容できる百分率の製剤における形成を意味する。
【0063】
本明細書で用いられる語句「物理的に安定である」とは、凝集(例えば、ダイマー及び/又は他の高い分子量生成物)の許容できる百分率の製剤における形成を意味する。さらに、物理的に安定な製剤は、例えば、液体から固体へ、非結晶質から結晶形態へ、のようにその物理的状態を変えない。
【0064】
本明細書に用いられる用語「粘度」とは、典型的には、本質的には下記のように、せん断率に対するせん断応力の割合から決定される値を意味する(例えば、Considine,D.M.&Considine,G.D.,Encyclopedia of Chemistry,4th Edition,Van Nostrand,Reinhold,NY,1984を参照のこと):
【0065】
F/A=μ*V/L(式1)
[式中、F/A=せん断応力(単位面積あたりの力)、
μ=比例定数(粘度)、及び
V/L=層厚あたりの速度(せん断率)]
【0066】
この関係性から、せん断率に対するせん断応力の比は、粘度を定義する。せん断応力及びせん断率の測定は、典型的に、選択された条件下(例えば、約37℃の温度)で行われる平衡板レオメトリーを用いて決定される。粘度の決定のための他の方法は、粘度計、例えばキャノン・フェンスケ粘度計、キャノン・フェンスケ不透明溶液のためのウベローデ粘度計、又はオストワルド粘度計を用いた動粘性の測定を含む。一般的に、本発明の懸濁液媒体は、送達の方法、例えば、埋め込み型、薬物送達装置における、保存及び使用の間、それらの中に懸濁された粒子製剤を沈殿から防ぐために十分な粘度を有する。
【0067】
本明細書で用いられるように用語「非水の」とは、例えば、典型的に約10重量%以下、好ましくは約7重量%以下、より好ましくは約5重量%以下、及びより好ましくは約4重量%以下の懸濁液製剤の全体的な水分含量を意味する。
【0068】
本明細書で用いられる用語「対象」とは、ヒト、及びヒトでない霊長類、例えばアカゲザル、及び他のサル種、及びチンパンジー及び他の類人猿種を含む他の霊長類;家畜、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、及びウマ;家畜化された哺乳動物、例えばイヌ及びネコ;囓歯動物、例えばマウス、ラット、テンジクネズミを含む実験動物;家禽、野生鳥、狩猟鳥、例えばニワトリ、シチメンチョウ、及び他の家禽、アヒル、ガチョウなどを含む鳥を含むが、これに限定されない、脊索動物亜門の任意のメンバーを意味する。用語は、特定の年齢又は性別を意味しない。従って、成人及び新生児の個人の双方が、網羅されることを意図する。
【0069】
本明細書で用いられる用語「浸透圧式送達装置」とは、典型的に、対象への薬物(例えば、インスリン模倣薬)の送達に用いられる装置であって、例えば、薬物(例えばインクレチン模倣薬)を含む懸濁液製剤、及び浸透圧薬剤製剤を含む内腔を有する容器(例えばチタン合金から作られる)を含む装置を意味する。内腔中に置かれるピストンアセンブリは、浸透圧薬剤製剤から懸濁液製剤を区分けする。半透膜は、浸透圧薬剤製剤に隣接する容器の第一の遠位末端に置かれ、拡散調節器(それは懸濁液製剤がそれを通して装置を出る送達オリフィスを特徴付ける)は、懸濁液製剤に隣接した容器の第二の遠位末端に置かれる。典型的には、浸透圧式送達装置は、対象に、例えば、皮下に(例えば、上腕の内側、外側、又は後側に;又は腹部に)、埋め込まれる。典型的な浸透圧式送達装置は、DUROS(登録商標)(ALZA Corporation,Mountain View,CA)送達装置である。
【0070】
本明細書で用いられる用語「連続送達」とは、典型的に、浸透圧式送達装置からの薬物の実質的な連続的放出を意味する。例えば、DUROS(登録商標)送達装置は、浸透圧の原理に基づいて所定の割合で原則的に薬物を放出する。細胞外液は、DUROS(登録商標)装置に入り、半透膜を通して、ゆっくりとした一定の循環速度でピストンを動かすまでに拡大する浸透圧エンジンに直接入る。ピストンの動作は、拡散調節器のオリフィスを通して薬物製剤を放出させる。従って、浸透圧式送達装置からの薬物の放出は、緩徐であり、制御された、一定の速度である。
【0071】
本明細書で用いられる用語「実質的な定常状態送達」とは、典型的に、所定の期間に亘って、目的濃度で又は近い濃度での薬物の送達、ここで浸透圧式装置から送達される薬物の量は実質的にゼロ次送達である、を意味する。活性薬剤(例えば、エクセナチド)の実質的なゼロ次送達は、送達される薬物の速度が一定であり、送達システムに利用可能な薬物に依存しないことを意味する;例えば、ゼロ次送達について、送達される薬物の速度が、時間に対してグラフに描かれ、線がデータに合わされた場合、線は、標準的な方法(例えば、直線回帰)により決定されるように、およそゼロの傾きを有する。
【0072】
本明細書で用いられる語句「薬物半減期」とは、薬物がその濃度の二分の一まで血漿から取り除かれるのにかかる時間を意味する。薬物の半減期は、通常、注射又は静脈を介して投与された場合、薬物分解の仕方を観察することにより測定される。薬物は、通常、例えばラジオイムノアッセイ、又はクロマトグラフィー法を用いて検出される。
【0073】
2.0.0 発明の一般的な概要
本発明を詳細に記述する前に、この発明は、そのような特定の使用が本明細書の技術を考慮して選択され得るように、薬物送達の特定の種類、薬物の特定の供給源、特定の溶媒、特定のポリマーなどに限定されないことは理解される。本明細書で用いられる用語は、本発明の特定の実施形態を記述する目的のみのためであり、限定することを意図しないことはまた、理解される。
【0074】
第一の態様では、本発明は、治療を必要とする対象における2型糖尿病を治療する方法に関する。本方法は、浸透圧式送達装置からのインクレチン模倣薬の連続送達を提供することを含み、ここで、治療濃度でのインクレチン模倣薬の実質的な定常状態送達が、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後、約7日以下の期間内で達成される。浸透圧式送達装置からのインクレチン模倣薬の実質的な定常状態送達は、投与期間に亘って連続的である。ヒトは、本発明の実施のための好ましい対象である。本発明は、インクレチン模倣薬(例えば、エクセナチド)、及び治療を必要とする対象における2型糖尿病を治療する本方法に使用のためのインクレチン模倣薬(例えば、エクセナチド)を含む浸透圧式装置を含む。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態では、投与期間は、例えば、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約3ヶ月~約1年、少なくとも約4ヶ月~約1年、少なくとも約5ヶ月~約1年、少なくとも約6ヶ月~約1年、少なくとも約8ヶ月~約1年、少なくとも約9ヶ月~約1年、又は少なくとも約10ヶ月~約1年である。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態では、治療濃度でのインクレチン模倣薬の実質的な定常状態送達は、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約5日以内で、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約4日以内で、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約3日以内で、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約2日以内で、又は対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約1日以内で達成される。本発明の好ましい実施形態では、治療濃度でのインクレチン模倣薬の実質的な定常状態送達は、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後、約2日以内で、より好ましくは約1日以内で達成される。
【0077】
さらなる実施形態では、本発明の治療方法は、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約7日以内で、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約6日以内で、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約5日以内で、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約4日以内で、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約3日以内で、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約2日以内で、又は対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約1日以内で達成される、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後の対象の空腹時血漿グルコース濃度の著しい減少(浸透圧式送達装置の埋め込み前の対象の空腹時血漿グルコース濃度と比較して)を提供する。本発明の好ましい実施形態では、埋め込み前の対象の空腹時血漿グルコース濃度と比較した、浸透圧式装置の埋め込み後の対象の空腹時血漿グルコース濃度の著しい減少は、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約2日以内で、好ましくは約1日以内で、又はより好ましくは対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約1日で達成される。空腹時血漿グルコースの著しい減少は、典型的に、適切な統計的試験の適用により実証されるように統計的に有意であり、又は医師により対象について有意であると考えられる。埋め込み前の基準値に対する空腹時血漿グルコース濃度の著しい減少は、典型的に、投与期間に亘って、維持される。
【0078】
本発明の第一の態様のなおさらなる実施形態では、治療方法は、インクレチン模倣薬の濃度が、対象からの血液サンプルにおいて、連続送達の停止後インクレチン模倣薬の約6半減期以内に、連続送達の停止後インクレチン模倣薬の約5半減期以内に、連続送達の停止後インクレチン模倣薬の約4半減期以内に、連続送達の停止後インクレチン模倣薬の約3半減期以内に、実質的に検出できないほどに、インクレチン模倣薬の連続送達を停止することのできる能力をさらに含む。インクレチン模倣薬の半減期の例は、エクセナチド、約2.5時間、及びGLP-1、約2分である。インクレチン模倣薬は、例えば、ラジオイムノアッセイにより検出され得る。連続送達の停止は、例えば、対象からの浸透圧式送達装置の除去により達成され得る。
【0079】
本発明の関連する実施形態では、治療方法は、エクセナチドの濃度が、対象由来の血液サンプルにおいて、連続送達の停止後約72時間未満に、連続送達の停止後約48時間未満に、連続送達の停止後約24時間未満に、連続送達の停止後約18時間未満に、連続送達の停止後約14時間未満に、連続送達の停止後約12時間未満に、連続送達の停止後約6時間未満に、又は連続送達の停止後約4時間未満に、実質的に検出できないほどに、エクセナチドの連続送達を停止することができる能力をさらに含み得る。好ましい実施形態では、エクセナチドは、対象由来の血液サンプルにおいて、連続送達の停止後約24時間未満に、連続送達の停止後約18時間未満に、又はより好ましくは連続送達の停止後約14時間未満に実質的に検出できない。
【0080】
本発明の第一の態様の好ましい実施形態では、インクレチン模倣薬は、エクセナチドペプチド、それらのペプチドアナログ、又はそれらのペプチド誘導体;GLP-1ペプチド(例えば、GLP-l(7-36)アミドペプチド)、それらのペプチドアナログ、又はそれらのペプチド誘導体を含む。本発明の実施に有用な好ましいインクレチン模倣薬の特定の例は、エキセンジン-4のアミノ酸配列を有するエクセナチド、リキシセナチド、GLP-l(7-36)、リラグルチド、アルビグルチド、及びタスポグルチドを含む。
【0081】
インクレチン模倣薬がエクセナチドである、本発明の第一の態様のいくつかの実施形態では、連続送達は、エクセナチドのmcg/日用量、例えば、約10mcg/日、約20mcg/日、約30mcg/日、約40mcg/日、約60mcg/日、又は約80mcg/日を対象に提供し得る。
【0082】
インクレチン模倣薬がエクセナチドである、本発明の第一の態様のいくつかの実施形態では、2型糖尿病を治療する方法は、エクセナチドの濃度が、血液サンプルにおいて、連続送達の停止後、例えば、約72時間未満、約48時間未満、約24時間未満、又は約12時間未満で実質的に検出することができないほどに、連続送達を停止することができる能力をさらに含む。
【0083】
本発明の第一の態様のさらなる実施形態では、2型糖尿病を治療する方法は、第一のmcg/日用量でのインクレチン模倣薬の第一の連続投与期間に続いて、第二のmcg/日用量へのインクレチン模倣薬の用量増加を提供する第二の連続投与期間をさらに含み、ここで、第二のmcg/日用量は、第一のmcg/日用量よりも多い。いくつかの実施形態では、第一のmcg/日用量は第一の浸透圧式送達装置により送達され、第二のmcg/日用量は第二の浸透圧式送達装置により送達され、さらに少なくとも第一又は第二の浸透圧式送達装置からのインクレチン模倣薬の送達は、少なくとも約3ヶ月の投与期間に亘って連続的である。一つの実施形態では、第二のmcg/日用量は、第一のmcg/日用量よりも少なくとも2倍多い。さらに、本方法は、第二のmcg/日用と比較して高いmcg/日用量への、インクレチン模倣薬の用量増加を提供する少なくとももう一つの連続投与期間を含み得る。用量増加は、例えば、第一の浸透圧式送達装置の除去及び第二の浸透圧式送達装置の埋め込みにより、又は第一及び第二の浸透圧式送達装置により送達される全用量が所望の用量増加をもたらす、第二の若しくはさらなる浸透圧式送達装置の埋め込みにより、達成され得る。
【0084】
用量増加を含む本発明の好ましい実施形態では、インクレチン模倣薬は、エクセナチドであり、連続的な送達についての第一のmcg/日用量に続く第二のmcg/日用量は、以下:約10mcg/日に続いて約20mcg/日;約10mcg/日に続いて約40mcg/日;約10mcg/日に続いて約60mcg/日;約10mcg/日に続いて約80mcg/日;約20mcg/日に続いて約40mcg/日;約20mcg/日に続いて約60mcg/日;約20mcg/日に続いて約80mcg/日;約40mcg/日に続いて約60mcg/日;約40mcg/日に続いて約80mcg/日;及び約60mcg/日に続いて約80mcg/日からなる群から選択される。
【0085】
第二の態様では、本発明は、治療を必要とする対象において2型糖尿病を治療する方法に関する。本方法は、埋め込み型浸透圧式送達装置からインクレチン模倣薬(例えば、エクセナチド)の連続送達を提供することを含み、ここで、(i)空腹時血漿グルコース濃度の著しい減少が、対象への浸透圧式装置の埋め込みの約7日以内に、埋め込み前の空腹時血漿グルコース濃度と比較して、対象への浸透圧式装置の埋め込み後に達成され、(ii)インクレチン模倣薬の送達が投与期間に亘って継続し、(iii)空腹時血漿グルコースの著しい減少が期間に亘って維持される。空腹時血漿グルコースの著しい減少は、典型的に、適切な統計的検定の適用により実証されるように、統計学的に有意であり、又は医師により対象について有意と考えられる。
【0086】
第三の態様では、本発明は、インクレチン模倣薬の濃度が、対象からの血液サンプルにおいて、連続送達の停止後インクレチン模倣薬の約6半減期以内に、連続送達の停止後インクレチン模倣薬の約5半減期以内に、連続送達の停止後インクレチン模倣薬の約4半減期以内に、連続送達の停止後インクレチン模倣薬の約3半減期以内に実質的に検出できないほどに、インクレチン模倣薬の連続送達を停止することのできる能力を含む、治療を必要とする対象において2型糖尿病を治療する方法に関する。インクレチン模倣薬の半減期の例は、エクセナチド、約2.5時間、及びGLP-1、約2分を含む。
【0087】
第四の態様では、本発明は、第一のmcg/日用量でのインクレチン模倣薬の第一の連続投与期間に続いて、第二のmcg/日用量へのインクレチン模倣薬の用量増加を提供する第二の連続投与期間、ここで第二のmcg/日用量は、第一のmcg/日用量よりも多い、を含む、2型糖尿病を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、第一のmcg/日用量は第一の浸透圧式送達装置により送達され、第二のmcg/日用量は第二の浸透圧式送達装置により送達され、さらに、少なくとも第一又は第二の浸透圧式送達装置からのインクレチン模倣薬の送達は、少なくとも約3ヶ月の投与期間に亘って連続的である。一つの実施形態では、第二のmcg/日用量は、第一のmcg/日用量よりも少なくとも2倍多い。さらに本方法は、第二のmcg/日用量と比較してより高いmcg/日用量へのインクレチン模倣薬の用量増加を提供する少なくとも一つのさらなる連続投与期間を含み得る。用量増加は、例えば、第一の浸透圧式送達装置の除去及び第二の浸透圧式送達装置の埋め込みにより、又は第一及び第二の(又はさらなる)浸透圧式送達装置により送達される全用量が所望の用量増加をもたらす、第二の又はさらなる浸透圧式送達装置の埋め込みにより、達成され得る。本発明のこの態様(それは、インクレチン模倣薬の用量を増加する複数の順次的な連続投与期間を含む)は、インクレチン模倣薬の注射に基づく用量増加と比較して、インクレチン模倣薬の用量増加に対する改良された忍容性を提供する。
【0088】
2型糖尿病を治療する方法に関する本発明の全ての態様の実施形態では、典型的な浸透圧式送達装置は、以下:内部及び外部表面、並びに第一及び第二の開放端を含む不浸透性容器;容器の第一の開放端との関係を密封する半透膜;容器内部で半透膜に隣接した浸透圧エンジン;浸透圧エンジンに隣接したピストン、ここでピストンは容器の内部表面と可動の密閉を形成し、ピストンは容器を第一のチャンバーと第二のチャンバーに分割し、第一のチャンバーは浸透圧エンジンを含む;懸濁液製剤、ここで第二のチャンバーは懸濁液製剤を含み、懸濁液製剤は、流動性を有し、インクレチン模倣薬を含む;及び容器の第二の開放端に挿入される拡散調節器、懸濁液製剤に隣接した拡散調節器を含む。好ましい実施形態では、容器はチタン又はチタン合金を含む。
【0089】
2型糖尿病を治療する方法に関する本発明の全ての態様の実施形態では、本方法に使用のための懸濁液製剤は、例えば、インクレチン模倣薬を含む粒子製剤、及び媒体製剤を含む。インクレチン模倣薬の例は、エクセナチドペプチド、そのペプチドアナログ、又はそのペプチド誘導体;GLP-1ペプチド、そのペプチドアナログ、又はそのペプチド誘導体を含むがこれに限定されない。好ましいインクレチン模倣薬の特定の例は、エキセンジン-4のアミノ酸配列を有するエクセナチド、リキシセナチド、GLP-l(7-36)、リラグルチド、アルビグルチド、及びタスポグルチドを含む。本発明の懸濁液製剤の形成に使用のための媒体製剤は、例えば、溶媒及びポリマーを含む。溶媒の例は、安息香酸ベンジル、乳酸ラウリル、ラウリルアルコール、又はそれらの組み合わせを含むがこれに限定されない。ポリマーの例は、ポリビニルピロリドンである。好ましい実施形態では、懸濁液媒体は、本質的に、一つの溶媒及び一つのポリマー、例えば、安息香酸ベンジル溶媒、及びポリビニルピロリドンポリマーから成る。
【0090】
浸透圧式送達装置の容器は、例えば、チタン又はチタン合金を含み得る。
【0091】
第五の態様では、本発明は、治療を必要とする対象において疾患又は症状を治療する方法に関する。本方法は、浸透圧式送達装置から薬物の連続的な送達を提供することを含み、ここで、治療濃度での薬物の実質的な定常状態送達が、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約7日以下の期間内で達成される。浸透圧式送達装置からの薬物の実質的な定常状態送達は、少なくとも約3ヶ月の投与期間に亘って、連続的である。薬物は、典型的な対象において、既知の、又は測定された半減期を有する。ヒトは、本発明の実施に好適な対象である。本発明は、疾患又は症状の治療に効果的な薬物、及び治療を必要とする対象において疾患又は症状を治療する本方法に使用のための薬物を含む浸透圧式装置を含む。本発明の有用性は、ピークに関連する薬物毒性の緩和、及びトラフに関連する準最適薬物治療の減衰を含む。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態では、投与期間は、例えば、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約3ヶ月~約1年、少なくとも約4ヶ月~約1年、少なくとも約5ヶ月~約1年、少なくとも約6ヶ月~約1年、少なくとも約8ヶ月~約1年、少なくとも約9ヶ月~約1年、又は少なくとも約10ヶ月~約1年である。
【0093】
本発明のこの態様の一つの実施形態では、疾患又は症状を治療する方法は、疾患又は症状が前立腺癌ではないという条件を含む。
【0094】
本発明のこの態様のいくつかの実施形態では、治療濃度での薬物の実質的な定常状態送達は、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約7日以下、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約5日以下、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約4日以下、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約3日以下、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約2日以下、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後約1日以下の期間内で達成される。
【0095】
本発明のこの態様のいくつかの実施形態では、治療濃度での薬物の実質的な定常状態送達の確立は、対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後、長期間、例えば、約2週間以下の期間内、又は装置の埋め込み後対象内の薬物の約6半減期未満かかり得る。
【0096】
本発明の第五の態様のなおさらなる実施形態では、疾患又は症状を治療する方法は、薬物の濃度が、対象からの血液サンプルにおいて、連続送達の停止後薬物の約6半減期以内に、連続送達の停止後薬物の約5半減期以内に、連続送達の停止後薬物の約4半減期以内に、又は連続送達の停止後薬物の約3半減期以内に、実質的に検出できないほどに、薬物の連続送達を停止することのできる能力をさらに含む。薬物半減期のいくつかの例は以下:エクセナチド、約2.5時間;GLP-1、約2分;GIP、約5分;PYY、約8分;グルカゴン、約6分;オキシントモジュリン(oxynotomodulin)、約6分;及びGLP-2、約6分;である。二以上の薬物が投与される状況では、一以上の薬物の連続送達を停止する能力は、二以上の薬物の濃度が、対象からの血液サンプル中において、連続送達の停止後、長い半減期を有する二以上の薬物の約6半減期以内に、実質的に検出することができないことである。連続送達の停止は、例えば、対象からの浸透圧式送達装置の除去により達成され得る。いくつかの実施形態では、薬物は、ラジオイムノアッセイ又はクロマトグラフィーにより、血液サンプル中で検出される。
【0097】
本発明の第五の態様の好ましい実施形態では、薬物は、例えば、以下:組み換え抗体、抗体フラグメント、ヒト化抗体、一本鎖抗体、モノクローナル抗体、アビマー;ヒト成長ホルモン、上皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、形質転換増殖因子、及び神経成長因子;サイトカイン;及びインターフェロンから選択されるポリペプチドを含む。他の実施形態では、薬物は小分子を含む。
【0098】
本発明の第五の態様のさらなる実施形態では、疾患又は症状を治療する方法は、第一の用量/日での薬物の第一の連続投与期間に続いて、第二の用量/日への薬物の用量増加を提供する第二の連続投与期間をさらに含み、ここで第二の用量/日は、第一の用量/日よりも多い。いくつかの実施形態では、第一の用量/日は、第一の浸透圧式送達装置により送達され、第二の用量/日は、第二の浸透圧式送達装置により送達され、さらに少なくとも第一又は第二の浸透圧式送達装置からの薬物の送達は、少なくとも約3ヶ月の投与期間に亘って連続的である。一つの実施形態では、第二の用量/日は、第一の用量/日よりも少なくとも2倍多い。さらに、本方法は、第二の用量/日と比較して高い用量/日への薬物の用量増加を提供する少なくとももう一つの連続投与期間を含み得る。用量増加は、例えば、第一の浸透圧式送達装置の除去及び第二の浸透圧式送達装置の埋め込みにより、又は第一及び第二の浸透圧式装置により送達される全用量が、所望の用量増加をもたらす、第二の又はさらなる浸透圧式送達装置の埋め込みにより、達成され得る。
【0099】
第六の態様では、本発明は、薬物の濃度が、対象からの血液サンプルにおいて、連続送達の停止後薬物の約6半減期以内に、連続送達の停止後薬物の約5半減期以内に、連続送達の停止後薬物の約4半減期以内に、連続送達の停止後薬物の約3半減期以内に、実質的に検出できないほどに、薬物の連続送達を停止することのできる能力を含む、治療を必要とする患者において疾患又は症状を治療する方法に関する。薬物の半減期のいくつかの例は、以下:エクセナチド、約2.5時間、GLP-1、約2分;GIP、約5分;PYY、約8分;グルカゴン、約6分;オキシントモジュリン、約6分;及びGLP-2、約6分;である。いくつかの実施形態では、連続送達の停止は、対象からの浸透圧式送達装置の除去を含む。いくつかの実施形態では、薬物は、ラジオイムノアッセイ又はクロマトグラフィーにより、血液サンプル中で検出される。
【0100】
第七の態様では、本発明は、第一の用量/日での薬物の第一の連続投与期間に続いて、第二の用量/日への薬物の用量増加を提供する第二の連続投与期間、ここで第二の用量/日は、第一の用量/日よりも多い、を含む、治療を必要とする対象における、疾患又は症状を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、第一の用量/日は第一の浸透圧式送達装置により送達され、第二の用量/日は第二の浸透圧式送達装置により送達され、さらに少なくとも第一又は第二の浸透圧式送達装置からの薬物の送達は、少なくとも約3ヶ月の投与期間に亘って連続的である。一つの実施形態では、第二の用量/日は、第一の用量/日よりも少なくとも2倍多い。さらに、本方法は、第二の用量/日と比較して高い用量/日への薬物の用量増加を提供する少なくとも一つのさらなる連続投与期間を含み得る。用量増加は、例えば、第一の浸透圧式送達装置の除去及び第二の浸透圧式送達装置の埋め込みにより、又は第一及び第二の(又はさらなる)浸透圧式送達装置により送達される全用量が、所望の用量増加をもたらす、第二の又はさらなる浸透圧式送達装置の埋め込みにより、達成され得る。本発明のこの態様(それは、薬物の用量を増加する複数の順次的な連続投与期間を含む)は、例えば、薬物の注射に基づく用量増加と比較して、薬物の用量増加に対する改良された忍容性を提供する。
【0101】
対象において疾患又は症状を治療する方法に関する本発明の全ての態様の実施形態では、典型的な浸透圧式送達装置は、以下:内部及び外部表面、並びに第一及び第二の開放端を含む不浸透性容器;容器の第一の開放端との関係を密封する半透膜;容器内部で半透膜に隣接した浸透圧エンジン;浸透圧エンジンに隣接したピストン、ここでピストンは容器の内部表面と可動の密閉を形成し、ピストンは容器を第一のチャンバーと第二のチャンバーに分割し、第一のチャンバーは浸透圧エンジンを含む;薬物製剤又は懸濁液製剤、ここで第二のチャンバーは薬物製剤又は懸濁液製剤を含み、薬物製剤又は懸濁液製剤流動性を有する;及び容器の第二の開放端に挿入される拡散調節器、拡散調節器は懸濁液製剤に隣接する、を含む。好ましい実施形態では、容器はチタン又はチタン合金を含む。
【0102】
対象において疾患又は症状を治療する方法に関する本発明の全ての態様の実施形態では、薬物製剤は、薬物及び媒体製剤を含む。あるいは、懸濁液製剤は、本方法に用いられ、例えば、薬物及び媒体製剤を含む粒子製剤を含み得る。本発明の懸濁液製剤の形成に使用のための媒体製剤は、例えば、溶媒及びポリマーを含み得る。溶媒の例は、安息香酸ベンジル、乳酸ラウリル、ラウリルアルコール、又はそれらの組み合わせを含むがこれに限定されない。ポリマーの例は、ポリビニルピロリドンである。好ましい実施形態では、懸濁液媒体は、本質的に、一つの溶媒、及び一つのポリマー、例えば、安息香酸ベンジル溶媒、及びポリビニルピロリドンポリマーから成る。
【0103】
浸透圧式送達装置の容器は、例えば、チタン又はチタン合金を含み得る。
【0104】
本発明の全ての態様の実施形態では、埋め込み型浸透圧式送達装置は、皮下送達を提供するために用いられ得る。
【0105】
本発明の全ての態様の実施形態では、例えば、ゼロ次の、制御された、連続送達であり得る。
【0106】
3.0.0 製剤及び組成物
本発明の実施に用いられるための薬物は、典型的には、懸濁液媒体中に均一に懸濁され、溶解され、又は分散され、懸濁液製剤を形成する。
【0107】
3.1.0 薬物粒子製剤
一つの態様では、本発明は、製薬学的用途のための薬物粒子製剤を提供する。粒子製剤は、典型的には、薬物を含み、一つ又は複数の安定化成分を含む。安定化成分の例は、糖質、抗酸化剤、アミノ酸、バッファ、無機化合物、及び界面活性剤を含むがこれに限定されない。
【0108】
3.1.1 典型的な薬物
薬物粒子製剤は、薬物を含む。薬物は、任意の生理学的に又は薬理学的に活性な物質であり、特にヒト又は動物の体に送達されることが知られるものであり得る。本発明の浸透圧式送達システムにより送達され得る薬物は、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン作動性受容体、骨格筋、心臓血管系、平滑筋、血管系、シナプス(synoptic)部位、神経交換器接合部位、内分泌及びホルモン系、免疫系、生殖器系、骨格系、局所ホルモン系、消化器及び排泄系、ヒスタミン系、又は中枢神経系に作用する薬物を含むがこれに限定されない。さらに、本発明の浸透圧式送達システムにより送達され得る薬物は、感染症、慢性痛、糖尿病、自己免疫疾患、内分泌疾患、代謝異常、及びリウマチ性疾患の治療に用いられる薬物を含むがこれに限定されない。
【0109】
好適な薬物は、以下:ペプチド、タンパク質、ポリペプチド(例えば、酵素、ホルモン、サイトカイン)、核酸、核タンパク質、多糖、糖タンパク質、リポタンパク質、ステロイド、鎮痛薬、局所麻酔薬、抗生物質製剤、抗炎症性コルチコステロイド、眼薬、製薬学的用途の他の小分子(例えば、リバビリン)、又はこれらの種の合成アナログ、及びこれらの混合物を含むがこれに限定されない。
【0110】
一つの実施形態では、好ましい薬物は、巨大分子を含む。そのような巨大分子は、薬理学的に活性なペプチド、タンパク質、ポリペプチド、遺伝子、遺伝子産物、他の遺伝子治療薬剤、又は他の小分子を含むがこれに限定されない。好ましい実施形態では、巨大分子は、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質である。本発明の実施に有用である多数のペプチド、タンパク質、又はポリペプチドは、本明細書に記述される。記述されるペプチド、タンパク質、又はポリペプチドに加えて、これらのペプチド、タンパク質、又はポリペプチドの修飾はまた、当業者に知られており、本明細書に表されるガイダンスに従って、本発明の実施に用いられ得る。そのような修飾は、アミノ酸アナログ、アミノ酸模倣物、アナログポリペプチド、又は誘導体ポリペプチドを含むがこれに限定されない。さらに、本明細書に開示される薬物は、単独で又は組み合わせて、製剤化され、又は投与され得る(例えば、薬物の混合物又は複数の装置が用いられる;米国特許出願公開第2009/0202608号)。
【0111】
本発明の薬物粒子製剤に製剤化され得るタンパク質の例は、以下:ヒト成長ホルモン;ソマトスタチン;ソマトロピン、ソマトトロピン、ソマトトロピンアナログ、ソマトメジン-C、ソマトトロピン+アミノ酸、ソマトトロピン+タンパク質;卵胞刺激ホルモン;黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアナログ、例えば、ロイプロリド又は酢酸ロイプロリド、ナファレリン、及びゴセレリン、LHRHアゴニスト又はアンタゴニスト;成長ホルモン放出因子;カルシトニン;コルヒチン;性腺刺激ホルモン;ゴナドトロピン、例えば、絨毛性ゴナドトロピン、オキシトシン、オクトレオチド;バソプレシン;副腎皮質刺激ホルモン;上皮細胞増殖因子;線維芽細胞増殖因子;血小板由来増殖因子;形質転換成長因子;神経成長因子;プロラクチン;コシントロピン;リプレシンポリペプチド、例えば、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;セクレチン;パンクレオザイミン;エンケフェリン;グルカゴン、インクレチン模倣薬;内部で分泌され、血流により分配される内分泌薬剤などを含むがこれに限定されない。
【0112】
薬物粒子製剤に製剤化され得るさらなるタンパク質は、以下:アルファ抗トリプシン;第VII因子;第VIII因子;第IX因子、及び他の凝固因子;インスリン、インスリン関連化合物(例えば、イソフェンインスリン懸濁液、プロタミン亜鉛インスリン懸濁液、グロブリン亜鉛インスリン、持続型インスリン亜鉛懸濁液);ペプチドホルモン;副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、及び他の下垂体ホルモン;エリスロポエチン;成長因子、例えば、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、インスリン様成長因子1;組織プラスミノゲン活性化因子;CD4;1-デアミノ-8-D-アルギニン・バソプレシン;インターロイキン-1受容体アンタゴニスト;腫瘍壊死因子、腫瘍壊死因子受容体;腫瘍抑制タンパク質;膵酵素;ラクターゼ;リンホカイン、ケモカイン、又はインターロイキン、例えばインターロイキン-1、インターロイキン-2を含むサイトカイン;細胞毒性タンパク質;スーパーオキシドジスムターゼ;内部で分泌され、血流により分配される内分泌薬剤;組み換え抗体、抗体フラグメント、ヒト化抗体、一本鎖抗体、モノクローナル抗体;アビマーなどを含むがこれに限定されない。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態は、ペプチドホルモン、例えば、インクレチン模倣薬(例えば、GLP-1又はエクセナチド)、並びにそれらのペプチドアナログ及びペプチド誘導体;PYY(YYペプチド、ペプチドチロシンチロシンとしても知られる)、並びにそれらのペプチドアナログ及びペプチド誘導体、例えば、PYY(3-36);オキシントモジュリン、並びにそれらのペプチドアナログ及びペプチド誘導体;並びに胃抑制ペプチド(GIP)、並びにそれらのペプチドアナログ及びペプチド誘導体の使用を含む。
【0114】
他の実施形態は、インターフェロンペプチド(例えば、アルファ、ベータ、ガンマ、ラムダ、オメガ、タウ、コンセンサス、及び変異体インターフェロン、並びにそれらのペプチドアナログ及びペプチド誘導体、例えば、ペグ化形態、並びにそれらの混合物;例えば、Anthony Meager(Editor),Wiley-VCHによるThe Interferons:Characterization and Application(May 1,2006))を参照のこと)の使用を含む。
【0115】
ペプチドの3つの形態、GLP-l(l-37)、GLP-l(7-37)、及びGLP-1(7-36)アミドを含むGLP-1、並びにGLP-1のペプチドアナログは、インスリン分泌を刺激すること(すなわちインスリン分泌刺激性である)が示され、それは、細胞によるグルコース摂取を誘導し、血清グルコース濃度の減少をもたらす(例えば、Mojsov,S.,Int.J.Peptide Protein Research,40:333-343(1992)を参照のこと)。
【0116】
インスリン分泌刺激作用を示す、多数のGLP-1ペプチド誘導体及びペプチドアナログは、当該記述分野(例えば、米国特許第5,118,666号;同第5,120,712号;同第5,512,549号;同第5,545,618号;同第5,574,008号;同第5,574,008号;同第5,614,492号;同第5,958,909号;同第6,191,102号;同第6,268,343号;同第6,329,336号;同第6,451,974号;同第6,458,924号;同第6,514,500号;同第6,593,295号;同第6,703,359号;同第6,706,689号;同第6,720,407号;同第6,821,949号;同第6,849,708号;同第6,849,714号;同第6,887,470号;同第6,887,849号;同第6,903,186号;同第7,022,674号;同第7,041,646号;7,084,243号;同第7,101,843号;同第7,138,486号;同第7,141,547号;同第7,144,863号;及び7,199,217号を参照のこと)、及び臨床試験(例えば、タスポグルチド及びアルビグルチド)において知られている。本発明の実施に有用なGLP-1誘導体の一つの例は、Victoza(登録商標)(Novo Nordisk A/S,Bagsvaerd DK)(リラグルチド;米国特許第6,268,343号、同第6,458,924号、同第7,235,627号)である。1日1回の注射用Victoza(登録商標)(リラグルチド)は、米国、ヨーロッパ、及び日本で市販されている。本明細書で容易に参照できるように、インスリン分泌刺激活性を有するGLP-1ペプチドのファミリー、GLP-1ペプチド誘導体、及びGLP-1ペプチドアナログは、「GLP-1」として集合的に称される。
【0117】
エクセナチド分子は、エキセンジン-4(Kolterman O.G.,et al.,J.Clin.Endocrinol.Metab.88(7):3082-9(2003))のアミノ酸配列を有し、化学的合成又は組み換え発現により生産される。1日2回の注射用エクセナチドは、米国、及びヨーロッパで市販されており、Byetta(登録商標)(Amylin Pharmaceuticals,Inc.,San Diego CA)の商標名で販売されている。エキセンジン-3及びエキセンジン-4は、当業者に知られており、ドクトカゲ属から最初に単離された(Eng,J.,et al.,J.Biol.Chem.,265:20259-62(1990);Eng.,J.,et al,J.Biol.Chem,267:7402-05(1992))。2型糖尿病、及び高血糖の予防のためのエキセンジン-3及びエキセンジン-4の使用は、提案されている(例えば、米国特許第5,424,286号を参照のこと)。多数のエクセナチドペプチド誘導体及びペプチドアナログ(例えば、エキセンジン-4アナログを含む)は、当該技術分野において知られている(例えば、米国特許第5,424,286号;同第6,268,343号;同第6,329,336号;同第6,506,724号;同第6,514,500号;同第6,528,486号;同第6,593,295号;同第6,703,359号;同第6,706,689号;同第6,767,887号;同第6,821,949号;同第6,849,714号;同第6,858,576号;同第6,872,700号;同第6,887,470号;同第6,887,849号;同第6,924,264号;同第6,956,026号;同第6,989,366号;同第7,022,674号;同第7,041,646号;同第7,115,569号;同第7,138,375号;同第7,141,547号;同第7,153,825号;及び7,157,555号を参照のこと)。本発明の実施に有用なエクセナチド誘導体の一つの例は、臨床試験中にある、リキセナチドである(ZP10、AVE0010としても知られる)(例えば、米国特許第6,528,486号を参照のこと)。本明細書での参照を容易にするために、エクセナチドペプチドのファミリー(例えば、エキセンジン-3、エキセンジン-4、及びエキセンジン-4-アミドを含む)、エクセナチドペプチド誘導体、及びエクセナチドペプチドアナログは、「エクセナチド」として集合的に称される。
【0118】
PYYは、36個のアミノ酸残基のペプチドアミドである。PYYは、腸運動性及び血流を抑制し(Laburthe,M,Trends Endocrinol Metab.1(3):168-74(1990)、腸内分泌を仲介し(Cox,H.M,et al,Br J Pharmacol 101(2):247-52(1990);Playford,R.J,et al.Lancet 335(8705):1555-7(1990))、正味吸収を刺激する(MacFayden,R.J,et al.Neuropeptides 7(3):219-27(1986))。二つの主なインビボ変異体であるPYY(1-36)及びPYY(3-36)は、同定された(例えば、Eberlein,G.A,et al.Peptides 10(4),797-803(1989))。PYYの配列、並びにそれらのペプチドアナログ及びペプチド誘導体は、当該技術分野において知られている(例えば、米国特許第5,574,010号、及び同第5,552,520号)。
【0119】
オキシントモジュリンは、食欲を抑制し、減量を促進することが知られている、結腸で発見された天然に生ずる37個のアミノ酸のペプチドホルモンである(Wynne K,et al,Int J Obes(Lond)30(12):1729-36(2006))。オキシントモジュリンの配列、並びにそれらのペプチドアナログ及びペプチド誘導体は、当該技術分野において知られている(例えば、Bataille D,et al.,Peptides 2(Suppl 2):41-44 (1981);及び米国特許出願公開第2005/0070469、及び2006/0094652)。
【0120】
GIPは、インスリン分泌刺激ペプチドホルモン(Efendic,S.,et al.,Horm Metab Res.36:742-6(2004))であり、インスリンを分泌する膵臓を刺激する吸収された脂肪及び糖類に応答して、十二指腸及び空腸の粘膜より分泌される。GIPは、生物学的に活性な42個のアミノ酸ペプチドとして循環する。GIPはまた、グルコース依存性インスリン分泌刺激タンパク質である。GIPは、グルコースの存在下で膵臓のベータ細胞からのインスリン分泌を刺激する42個のアミノ酸の胃腸調節ペプチドである(Tseng,C,et al.,PNAS 90:1992-1996(1993))。GIPの配列、並びにそれらのペプチドアナログ及びペプチド誘導体は、当該技術分野において知られている(例えば、Meier J.J.,Diabetes Metab Res Rev.21(2):91-117(2005);Efendic S.,Horm Metab Res.36(ll-12):742-6(2004))。
【0121】
いくつかのペプチドの半減期の例は、以下:エクセナチド、約2.5時間;GLP-1、約2分;GIP、約5分;PYY、約8分;グルカゴン、約6分;オキシントモジュリン、約6分;及びGLP-2、約6分;である。
【0122】
本発明の実施に使用のための薬物粒子製剤は、エクセナチドを用いて例証される。実施例は、限定されることを意図しない。
【0123】
別の実施形態では、好ましい薬物は、小分子を含む。本発明の実施に用いられ得る薬物の例は、以下:化学療法薬;睡眠薬及び鎮静薬、例えば、ペントバルビタールナトリウム、フェノバルビタール、セコバルビタール、チオペンタール、ジエチルイソバレルアミド及びアルファ-ブロモ-イソバレリル尿素により例示されるアミド及び尿素、ウレタン、又はジスルファン;ヘテロ環式睡眠薬、例えば、ジオキソピペリジン、及びグルタルイミド;抗鬱薬、例えば、イソカルボキサジド、ニアラミド、フェネルジン、イミプラミン、トラニルシプロミン、パルギリン;精神安定剤、例えば、クロロプロマジン、プロマジン、フルフェナジン、レセルピン、デセルピジン、メプロバメート、ベンゾジアゼピン、例えば、クロルジアゼポキシド;抗痙攣薬(anticonvulsant)、例えば、プリミドン、ジフェニルヒダントイン、エトトイン(ethltoin)、フェネツリッド、エトスクシミド;筋弛緩薬及び抗パーキンソン薬、例えば、メフェネシン、メトカルボマール(methocarbomal)、トリヘキシルフェニジル(trihexylphenidyl)、ビペリデン、L-ドーパ及びL-ベータ-3-4-ジヒドロキシフェニルアラニンとして知られるレボ-ドーパ(levo-dopa);鎮痛薬、例えば、モルヒネ、コデイン、メペリジン、ナロルフィン;解熱薬及び抗炎症薬、例えば、アスピリン、サリチルアミド、サリチルアミドナトリウム、ナプロキセン(naproxin)、イブプロフェン;局所麻酔薬、例えば、プロカイン、リドカイン、ネーパイン、ピペロカイン、テトラカイン、ジブカイン;抗痙攣薬(antispasmodics)及び抗潰瘍薬、例えば、アトロピン、スコポラミン、メトスコポラミン、オキシフェノニウム、パパベリン、プロスタグランジン、例えばPGE1、PGE2、PGF1alpha、PGF2alpha、PGA;抗菌薬、例えば、ペニシリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン(chlorotetracycline)、クロラムフェニコール、スルホンアミド、テトラサイクリン、バシトラシン、クロルテトラサイクリン、エリスロマイシン、イソニアジド、リファンピン、エタンブトール、ピラジンアミド、リファブチン、リファペンチン、サイクロセリン、エチオナミド、ストレプトマイシン、アミカシン/カナマイシン、カプレオマイシン、p-アミノサリチル酸、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、及びガチフロキサシン;抗マラリア薬、例えば、4-アミノキノリン、8-アミノキノリン、ピリメタミン、クロロキン、スルファドキシン-ピリメタミン;メフロキン;アドバクオン-プログアニル;キニン;ドキシサイクリン;アルテミシニン(セスキテルペンラクトン)、及び誘導体;抗リーシュマニア症薬(例えば、アンチモン酸メグルミン、スチボグルコン酸ナトリウム、アンフォテリン、ミルテホシン、及びパロモマイシン);抗トリパノソーマ症薬(例えば、ベンズニダゾール及びニフルチモクス);抗アメーバ症薬(例えば、メトロニダゾール、チニダゾール、及びジロキサニドフロエート);抗原虫症薬(例えば、エフロルニチン、フラゾリドン、メラルソプロール、メトロニダゾール、オルニダゾール、硫酸パロモマイシン、ペンタミジン、ピリメタミン、及びチニダゾール);ホルモン剤、例えば、プレドニゾロン、コルチゾン、コルチゾール、及びトリアムシノロン、アンドロゲンステロイド(例えば、メチルテストステロン、フルオキシメステロン)、エストロゲンステロイド(例えば、17-ベータ-エストラジオール(estradoil)、及びチニル(thinyl)エストラジオール)、プロゲステロンステロイド(例えば、17-アルファ-ヒドロキシプロゲステロン酢酸、19-ノル-プロゲステロン、ノルエチンドロン);交感神経興奮作用薬、例えば、エピネフリン、アンフェタミン、エフェドリン、ノルエピネフリン;心臓血管薬、例えば、プロカインアミド、硝酸アミル、ニトログリセリン、ジピリダモール、硝酸ナトリウム、硝酸マンニトール;利尿薬、例えば、アセタゾールアミド、クロロチアジド、フルメチアジド;駆虫薬、例えば、ベフェニウムヒドロキシナフトエート、ジクロロフェン、エニタバス、ダプソーン;新生物薬、例えば、メクロレタミン、ウラシルマスタード、5-フルオロウラシル、6-チオグアニン、及びプロカルバジン;血糖低下薬、例えば、トルブタミド、アセトヘキサミド、トラザミド、栄養剤、例えば、ビタミン、必須アミノ酸、及び必須脂質;目薬、例えば、ピロカルピン塩基、ピロカルピン塩酸塩、ピロカルピン硝酸塩;抗ウイルス薬、例えば、ジソプロキシルフマル酸塩、アシクロビル、シドフォビル、ドコサノール、ファムシクロビル、ホミビルセン、フォスカネット、ガンシクロビル、イドクスウリジン、ペンシクロビル、トリフルリジン、トロマンタジン、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビダラビン、アマンタジン、アルビドール、オセルタミビル、ペラミビル、リマンタジン、ザナミビル、アバカビル、ディダノシン、エムトリシタビン、ラミブジン、スタブジン、ザルシタビン、ジドブジン、テノフォビル、エファビレンツ、デラビルジン、ネビラピン、ロビリド、アンプレナビル、アタザナビル、ダルナビル、ホスアンプレナビル、インジナビル、ロピナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル、チプラナビル、エンフビルチド、アデフォビル、ホミビルセン、イミキモド、イノシン、ポドフィロトキシン、リバビリン、ビラミジン、ウイルス表面タンパク質又はウイルス受容体を特異的に標的とする融合遮断薬(例えば、gp-41阻害剤(T-20)、CCR-5阻害剤);抗嘔吐薬、例えば、スコポラミン、ジメンヒドリナート;イドクスウリジン、ヒドロコルチゾン、エゼリン、ホスホリン、ヨウ化物、及び他の有益な薬物を含むがこれに限定されない。
【0124】
薬物はまた、以下:非荷電性分子;分子錯体の成分;及び医薬的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ラウリン酸塩、パルミチン酸塩(palmatate)、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、又はサリチル酸塩を含むがこれに限定されない、様々な形態であり得る。酸性薬物について、金属の塩、アミン、又は有機陽イオン、例えば、第4級アンモニウムが用いられ得る。さらに、薬物の単純誘導体、例えば、エステル、エーテル、アミド、及び、本発明の目的に適した溶解性の特徴を有するものなどはまた、本明細書で用いられ得る。
【0125】
当業者に知られている上記の薬物及び他の薬物は、以下:慢性痛、血友病、及び他の血液疾患、内分泌疾患、代謝異常、リウマチ疾患、糖尿病(1型及び2型糖尿病を含む)、白血病、肝炎、腎不全、感染症(細菌感染症、ウイルス感染症(例えば、ヒト免疫不全ウイルス、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、ウエスト・ナイル・ウイルス、テング熱ウイルス、マールブルグ・ウイルス、エボラウイルスなど)、及び寄生虫感染症を含む)、遺伝性疾患(例えば、セレブロシダーゼ欠損症、及びアデノシン・デアミナーゼ欠損症)、高血圧、敗血性ショック、自己免疫疾患(例えば、グレーブス病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、及びリウマチ性関節炎)、ショック症及び消耗病、嚢胞性繊維症、乳糖不耐症、クローン病、炎症性腸疾患、消化管癌(結腸癌及び直腸癌を含む)、乳癌、白血病、肺癌、膀胱癌、腎臓癌、非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、甲状腺癌、子宮内膜癌、及び他の癌を含むがこれに限定されない、様々な症状のための治療の方法に有用である。さらに、いくつかの上述の薬剤は、結核、マラリア、リーシュマニア症、トリパノソーマ症(睡眠病、及びシャーガス病)、及び寄生虫を含むがこれに限られない長期的治療を必要とする感染症の治療に有用である。
【0126】
薬物粒子製剤における薬物の量は、その薬物が送達される対象における所望の治療結果を達成するための治療的有効量の薬剤を送達するために必要な量である。特に、これはそのような変数、例えば、特定の薬剤、症状の重症度、及び所望の治療効果に応じて変化する。有益な薬剤及びそれらの用量単位量は、Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,11th Ed.,(2005),McGraw Hill;Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,(1995),Mack Publishing Co.;及びMartin’s Physical Pharmacy and Pharmaceutical Sciences,1.00 edition(2005),Lippincott Williams & Wilkinsにおける従来技術分野に知られている。さらに、高濃縮薬物粒子は、米国特許出願公開第2010/0092566号に記述されている。典型的には、浸透圧式送達システムについて、薬物製剤を含むチャンバーの容量は、約100μl~約1000μl、より好ましくは、約140μl~約200μlである。一つの実施形態では、薬物製剤を含むチャンバーの容量は、約150μlである。
【0127】
本発明の薬物粒子製剤は、送達温度で、少なくとも1ヶ月、好ましくは少なくとも3ヶ月、より好ましくは少なくとも3ヶ月、より好ましくは少なくとも12ヶ月、好ましくは化学的に及び物理的に安定である。送達温度は、典型的には、通常のヒトの体温、例えば約37℃、又はわずかに高く、例えば、約40℃である。さらに、本発明の薬物粒子製剤は、保存温度で、少なくとも3ヶ月、好ましくは少なくとも6ヶ月、より好ましくは少なくとも12ヶ月、好ましくは化学的に及び物理的に安定である。保存温度の例は、冷蔵温度、例えば約5℃;又は室温、例えば約25℃を含む。
【0128】
薬物粒子製剤は、約25%未満、好ましくは約20%未満、より好ましくは約15%未満、より好ましくは約10%未満、及びより好ましくは約5%未満の薬物粒子の分解産物が、送達温度で約3ヵ月後、好ましくは約6ヵ月後、好ましくは約12ヵ月後、且つ保存温度で約6ヵ月後、約12ヵ月後、及び好ましくは約24ヵ月後に形成される場合、化学的に安定であると考えられ得る。
【0129】
薬物粒子製剤は、約10%未満、好ましくは約5%未満、より好ましくは約3%未満、より好ましくは1%未満の薬物の凝集が、送達温度で約3ヵ月後、好ましくは約6ヵ月後、且つ保存温度で約6ヶ月後、好ましくは約12ヵ月後に形成される場合、物理的に安定であると考えられ得る。
【0130】
薬物粒子製剤中の薬物がタンパク質である場合、タンパク質溶液は、凍結状態で保持され、固体状態まで凍結乾燥又はスプレー乾燥される。Tg(ガラス転移温度)は、タンパク質の安定的な組成物を得ることを考慮するための一つの要素であり得る。任意の特定の理論により縛られることを意図しない一方で、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質を安定化するための高いTgの不定形固体の形成の理論は、製薬産業において利用されている。一般的に、不定形固体が高いTg、例えば100℃を有する場合に、ペプチド生成物が室温又は40℃程度で保存された場合、保存温度はTg下回るので、移動性を有さない。分子情報を用いた計算は、ガラス転移温度が保存温度の50℃を上回る場合、分子についてゼロ移動性が存在することを示す。分子のゼロ移動性は、よりよい安定性と相互に関係する。Tgはまた、生成物製剤中の水分濃度に依存する。一般的に、より多い水分は、組成物のTgを低くする。
【0131】
従って、本発明のいくつかの態様では、高いTgを有する賦形剤、例えば、スクロース(Tg=75℃)、及びトレハロース(Tg=110℃)は、安定性を向上するために、タンパク質製剤に含まれ得る。好ましくは、粒子製剤は、プロセス、例えば、スプレー乾燥、凍結乾燥(lyophilization)、乾燥、凍結乾燥(freeze-drying)、粉砕、顆粒化、超音波ドロップ形成(ultrasonic drop creation)、結晶化、沈殿、又は成分の混合物から粒子を形成するための当該技術分野で利用可能な他の技術を用いて粒子に成形することができる。本発明の一つの実施形態では、粒子はスプレー乾燥される。粒子は、好ましくは、形状及び大きさにおいて実質的に均一である。
【0132】
粒子は、典型的に、埋め込み型浸透圧式薬物送達装置により送達され得るような大きさにされる。粒子の均一な形状及び大きさは、典型的に、そのような送達装置からの放出の一定の均一な速度を提供するのに役立つ;しかしながら、標準的でない粒度分布プロファイルを有する粒子調製はまた、用いられ得る。例えば、送達オリフィスを有する典型的な埋め込み型浸透圧式送達装置では、粒子の大きさは、送達オリフィスの直径の約30%未満であり、より好ましくは約20%未満であり、より好ましくは約10%未満である。埋め込み物の送達オリフィスの直径が約0.5mmである浸透圧式送達システムと使用のための粒子製剤の実施形態では、粒子径は、例えば、約150ミクロンから約50ミクロン未満であり得る。埋め込み物の送達オリフィスの直径が約0.1mmである浸透圧式送達システムと使用のための粒子製剤の実施形態では、粒子径は、例えば、約30ミクロンから約10ミクロン未満であり得る。一つの実施形態では、オリフィスは、約0.25mm(250ミクロン)であり、粒子径は約2ミクロン~約5ミクロンである。
【0133】
典型的には、粒子製剤の粒子は、懸濁液媒体に組み込まれる場合、約3ヶ月未満沈殿しない、好ましくは約6ヶ月未満沈殿しない、より好ましくは約12ヶ月未満沈殿しない、より好ましくは送達温度で約24ヶ月未満沈殿しない、及びもっとも好ましくは送達温度で約36ヶ月未満沈殿しない。懸濁液媒体は、典型的に、約5,000~約30,000ポイズ、好ましくは約8,000~約25,000ポイズ、より好ましくは約10,000~約20,000ポイズの粘度を有する。一つの実施形態では、懸濁液媒体は、約15,000ポイズ、プラスマイナス約3,000ポイズの粘度を有する。一般的に言えば、より小さい粒子は、粘性懸濁液媒体において、大きい粒子よりもより低い沈降速度を有する傾向がある。従って、ミクロン~ナノサイズの粒子は、典型的に望ましい。粘性懸濁液製剤では、本発明の約2ミクロン~約7ミクロンの粒子は、シミュレーションモデル試験に基づいて、室温で、少なくとも20年間沈殿しない。本発明の粒子製剤の実施形態では、埋め込み型浸透圧式送達装置で使用のために、約50ミクロン未満、より好ましくは約10ミクロン未満、より好ましくは約2ミクロン~約7ミクロンの範囲の粒子を含む。
【0134】
一つの実施形態では、薬物粒子製剤は、上述のように、薬物、一つ又は複数の安定化剤、及び任意でバッファを含む。安定化剤は、例えば、糖類、抗酸化物、アミノ酸、バッファ、無機化合物、又は界面活性剤であり得る。粒子製剤中の安定化剤及びバッファの量は、本明細書の技術を考慮して、安定化剤及びバッファの活性、及び製剤の所望の特性に基づいて実験的に、決定され得る。典型的には、本製剤中の糖質の量は、凝集の懸念により決定される。一般的には、薬物に未結合の過剰な糖質による、水の存在下で結晶成長を促進することを避けるために、糖質の量は、多すぎるべきではない。典型的には、製剤中の抗酸化物の量は、酸化の懸念により決定される一方で、製剤中のアミノ酸の量は、酸化の懸念及び/又はスプレー乾燥の間の粒子の成形性により決定される。典型的には、製剤中のバッファの量は、前処理の懸念、安定性の懸念、及びスプレー乾燥の間の粒子の成形性により決定される。バッファは、全ての賦形剤が可溶化する場合、例えば、溶液調製、及びスプレー乾燥などの処理の間、薬物を安定化するために要求され得る。
【0135】
粒子製剤に含まれ得る糖類の例は、単糖(例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、及びソルボース)、二糖(例えば、ラクトース、スクロース、トレハロース、及びセロビオース)、多糖(例えば、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、及びデンプン)、及びアルジトール(非環式重合体;例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール、ピラノシルソルビトール、及びミオイノシトール(myoinsitol))を含むがこれに限定されない。好ましい糖類は、二糖、及び/又は非還元糖、例えば、スクロース、トレハロース、及びラフィノースである。
【0136】
粒子製剤に含まれ得る抗酸化剤の例は、メチオニン、アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム、カタラーゼ、プラチナ、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、システイン、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオソルビトール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、及びプロピルガラートを含むがこれに限定されない。さらに、容易に酸化するアミノ酸、例えば、システイン、メチオニン、及びトリプトファンは、抗酸化剤として用いられ得る。好ましい抗酸化剤は、メチオニンである。
【0137】
粒子製剤に含まれ得るアミノ酸の例は、アルギニン、メチオニン、グリシン、ヒスチジン、アラニン、L-ロイシン、グルタミン酸、イソ-ロイシン、L-スレオニン、2-フェニルアラニン、バリン、ノルバリン、プロリン(praline)、フェニルアラニン、トリプトファン(trytophan)、セリン、アスパラギン、システイン、チロシン、リジン、及びノルロイシンを含むがこれに限定されない。好ましいアミノ酸は、容易に酸化するアミノ酸、例えば、システイン、メチオニン、及びトリプトファン(trytophan)を含む。
【0138】
粒子製剤に含まれ得るバッファの例は、クエン酸、ヒスチジン、コハク酸、リン酸、マレイン酸、トリス、酢酸、糖類、及びgly-glyを含むがこれに限定されない。好ましいバッファは、クエン酸、ヒスチジン、コハク酸、及びトリスを含む。
【0139】
粒子製剤に含まれ得る無機化合物の例は、NaCl、Na2SO4、NaHCO3、KCl、KH2PO4、CaCl2、及びMgCl2を含むがこれに限定されない。
【0140】
加えて、粒子製剤は、他の賦形剤、例えば、界面活性剤、及び塩を含み得る。界面活性剤の例は、Polysorbate 20、Polysorbate 80、PLURONIC(登録商標)(BASF Corporation,Mount Olive,NJ)F68、及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含むがこれに限定されない。塩の例は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムを含むがこれに限定されない。
【0141】
粒子製剤に含まれる全ての成分は、典型的には、哺乳動物、特にヒトにおいて、医薬的な使用について許容される。
【0142】
要約すれば、選択された薬物又は薬物の組み合わせは、薬物の最大の化学的及び生物学的安定性を保存する、固体状態中の乾燥粉末に製剤化される。粒子製剤は、高温での長期保存安定性を提供し、従って、長期間の、安定的で生物学的に有効な薬物の患者への送達を可能にする。
【0143】
3.2.0 媒体製剤及び懸濁液製剤
一つの態様では、懸濁液媒体は、薬物粒子製剤が分散された安定的な環境を提供する。薬物粒子製剤は、懸濁液媒体中で化学的及び物理学的に安定(上述のように)である。懸濁液媒体は、典型的には、一つ又は複数のポリマー、及び薬物を含む粒子を均一に懸濁するのに十分な粘度の溶液を形成する一つ又は複数の溶媒を含む。懸濁液媒体は、界面活性剤、抗酸化剤、及び/又は媒体に溶解性の他の化合物を含むがこれに限定されない、さらなる成分を含み得る。
【0144】
懸濁液媒体の粘度は、典型的に、送達の方法、例えば、埋め込み型浸透圧式送達装置における保存及び使用の間、薬物粒子製剤が沈殿することを防ぐのに十分である。薬物粒子が生物額的環境に溶解され、粒子中の活性薬剤成分(すなわち、薬物)が吸収される一方で、懸濁液媒体が生物学的環境に反応して長期間に亘り分解され、又は破壊される点で、懸濁液媒体は生物分解性である。
【0145】
ポリマーが溶解される溶媒は、懸濁液製剤の特性、例えば、保存の間の薬物粒子製剤の性質に影響を及ぼす。溶媒は、得られる懸濁液媒体が水性環境と接触した場合に相分離を示すように、ポリマーと組み合わせて選択され得る。本発明のいくつかの実施形態では、溶媒は、得られる懸濁液媒体がおよそ約10%未満の水を有する水性の環境と接触した場合に相分離を示すように、ポリマーと組み合わせて選択され得る。
【0146】
溶媒は、水と混和しない許容される溶媒でもよい。溶媒はまた、ポリマーが高い濃度で、例えば、約30%超のポリマー濃度で溶媒に溶解できるように、選択される。本発明の実施に有用な溶媒の例は、ラウリルアルコール、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、乳酸ラウリル、デカノール(デシルアルコールとも称される)、エチルヘキシル乳酸、及び長鎖(C8~C24)脂肪族アルコール、エステル、又はそれらの混合物を含むがこれに限定されない。懸濁液媒体に用いられる溶媒は、それが低水分含量を有する「乾燥状態」でもよい。懸濁液媒体の製剤化に使用のための好ましい媒体は、乳酸ラウリル、ラウリルアルコール、安息香酸ベンジル、及びそれらの混合物を含む。
【0147】
本発明の懸濁媒体の製剤化のためのポリマーの例は、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、又はポリ乳酸ポリグリコール酸)、ピロリドンを含むポリマー(例えば、約2,000~約1,000,000に及ぶ分子量を有するポリビニルピロリドン)、不飽和アルコールのエステル又はエーテル(例えば、酢酸ビニル)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、又はそれらの混合体を含むが、これに限定されない。ポリビニルピロリドンは、粘度指数であるそのK-値(例えば、K-17)により、特徴付けられ得る。一つの実施形態では、ポリマーは、2,000~1,000,000の分子量を有するポリビニルピロリドンである。好ましい実施形態では、ポリマーは、ポリビニルピロリドンK-17(典型的には、7,900~10,800の範囲のおよその平均分子量を有する)である。懸濁媒体に用いられるポリマーは、一つ又は複数の様々なポリマーを含み得、又は一つのポリマーの様々なグレードを含み得る。懸濁媒体に用いられるポリマーはまた、乾燥している、又は低水分含量を有する。
【0148】
一般的に言えば、本発明において使用のための懸濁液媒体は、所望のパフォーマンス特性に基づく組成に変更し得る。一つの実施形態では、懸濁液媒体は、約40重量超%~約80重量%ポリマー(単数又は複数)、及び約20重量%~約60重量%溶媒(単数又は複数)を含み得る。懸濁液媒体の好ましい実施形態は、以下の比:約25重量%溶媒及び約75重量%ポリマー;約50重量%溶媒及び約50重量%ポリマー;約75重量%溶媒及び約25重量%ポリマーで合わされたポリマー(単数又は複数)及び溶媒(単数又は複数)で形成される媒体を含む。従って、いくつかの実施形態では、懸濁液媒体は、選択された成分を含み得、他の実施形態では、実質的に選択された成分から成る。
【0149】
懸濁液媒体は、ニュートン挙動を示し得る。懸濁液媒体は、典型的に、所定の時間、粒子製剤の均一分散を維持する粘度を提供するために製剤化される。この助けは、薬物粒子製剤に含まれる薬物の制御された送達を提供するために、懸濁液製剤を適合させることを容易にする。懸濁液媒体の粘度は、所望の適用、粒子製剤の大きさ及び種類、並びに懸濁液媒体における粒子製剤の充填に応じて変更し得る。懸濁液媒体の粘度は、用いられる溶媒又はポリマーの種類又は相対量を変えることにより変更し得る。
【0150】
懸濁液媒体は、約100ポアズ~約1,000,000ポアズ、好ましくは約1,000ポアズ~約100,000ポアズに及ぶ粘度を有し得る。好ましい実施形態では、懸濁液媒体は、典型的には、33℃で約5,000ポアズ~約30,000ポアズ、好ましくは約8,000ポアズ~約25,000ポアズ、より好ましくは約10,000ポアズ~約20,000ポアズの粘度を有する。一つの実施形態では、懸濁液媒体は、33℃で約15,000ポアズ、プラスマイナス約3,000ポアズの粘度を有する。粘度は、平行板レオメーターを用いて、33℃で、10-4/秒のせん断率で測定され得る。
【0151】
懸濁液媒体は、水性の環境と接触した場合、相分離を示し得る;しかしながら、典型的には、懸濁液媒体は、温度に応じて実質的に相分離を示さない。例えば、約0℃~約70℃に及ぶ温度で、及び温度循環、例えば、4℃~37℃~4℃の循環において、懸濁液製剤は、典型的に相分離を示さない。
【0152】
懸濁液媒体は、乾燥条件下で、例えば乾燥箱内で、ポリマー及び溶媒を混合することにより調製され得る。ポリマー及び溶媒は、上昇した温度、例えば、約40℃~約70℃で混合さられ、液化され、単一相を形成され得る。原料は、乾燥原料から生じる気泡を除去するために真空下で混合され得る。原料は、従来の混合器、例えば、約40rpmの速度で設定された二重螺旋回転羽、又は同様の混合器、を用いて混合され得る。しかしながら、高速度はまた、原料を混合するために用いられ得る。一度、原料の溶液が得られると、懸濁液媒体は室温まで冷却され得る。示差走査熱量測定法(DSC)は、懸濁液媒体が単一相であることを確認するために用いられ得る。さらに、媒体の成分(例えば、溶媒及び/又はポリマー)は、ペルオキシダーゼを実質的に減少、又は実質的に除去するために処置され得る(例えば、メチオニンでの処置による;例えば、米国特許出願公開第2007/0027105号を参照のこと)。
【0153】
薬物粒子製剤は、懸濁液製剤を形成するために懸濁液媒体に添加される。いくつかの実施形態では、懸濁液製剤は、薬物粒子製剤、及び懸濁液媒体を含み得、他の実施形態では、本質的に、薬物粒子製剤、及び懸濁液媒体から成る。
【0154】
懸濁液製剤は、懸濁媒体中に粒子製剤を分散させることにより調製され得る。懸濁液媒体は加熱され得、粒子製剤は乾燥条件下で懸濁液媒体に添加され得る。原料は、真空下で、上昇した温度、例えば、約40℃~約70℃で混合され得る。原料は、十分な速度で、例えば、約40rpm~約120rpmで、十分な時間、例えば約15分、懸濁液製剤中での粒子製剤の均一な分散を達成するために、混合され得る。混合器は、二重螺旋回転羽又は他の好適な混合器でもよい。得られた混合物は、混合器から取り除かれ、水が懸濁液製剤に混入することから防ぐために乾燥容器に密閉され、さらなる使用、例えば、埋め込み型薬物送達装置、単一の用量容器、又は複数用量容器への充填の前に、室温に冷却され得る。
【0155】
懸濁液製剤は、典型的に、約10重量%未満、好ましくは、約5重量%未満、より好ましくは、約4重量%未満の全体の水分含量を有する。
【0156】
好ましい実施形態では、本発明の懸濁液製剤は、実質的に均一であり、対象への浸透圧式送達装置から薬物粒子製剤の送達を提供するために流動性を有する。
【0157】
要約するに、懸濁液媒体の成分は、生体適合性を提供する。懸濁液媒体の成分は、薬物粒子製剤の安定的な懸濁液を形成するために好適な物理化学的性質を提供する。これらの性質は、以下:懸濁液の粘度;媒体の純度;媒体の残余水分;媒体の密度;乾燥粉末との親和性;埋め込み型装置との適合性;ポリマーの分子量;媒体の安定性;及び媒体の疎水性及び親水性を含むがこれに限定されない。これらの性質は、例えば、媒体組成物のバリエーション、及び懸濁液媒体に用いられる成分の割合の操作により、操作され、制御され得る。
【0158】
4.0.0 懸濁液製剤の送達
本明細書で記述される懸濁液製剤は、長期間に亘って、例えば、複数週間、複数月間、若しくは約1年又はそれ以上に亘って、ゼロ次の、連続的な、制御された、且つ持続した化合物の送達を提供する埋め込み型浸透圧式送達装置に用いられ得る。そのような埋め込み型浸透圧式送達装置は、典型的に、所望の期間に亘って、所望の流速で、薬物を含む懸濁液製剤を送達することができる。懸濁液製剤は、従来の技術により、埋め込み型浸透圧式薬物送達装置に充填され得る。
【0159】
用量及び送達速度は、一般的に、装置の埋め込み後対象内での薬物の約6半減期未満内で、薬物の所望の血液濃度を達成するために選択され得る。薬物の血液濃度は、薬物の過剰な濃度により引き起こされ得る望ましくない副作用を回避し、薬物の血漿濃度のピーク又はトラフに関連する副作用を誘導し得るピーク及びトラフを同時に回避する一方で、薬物の最適な治療的効果を与えるために選択される。
【0160】
埋め込み型浸透圧式薬物送達装置は、典型的に、少なくとも一つのオリフィスを有する容器を含み、それを通して懸濁液製剤が送達される。懸濁液製剤は、容器内に保存され得る。好ましい実施形態では、埋め込み型薬物送達装置は、薬物の送達が浸透圧的に駆動される浸透圧式送達装置である。いくつかの浸透圧式送達装置及びそれらの構成部分、例えば、DUROS(登録商標)送達装置、又は同様の装置は記述される(例えば、米国特許第5,609,885号;同第5,728,396号;同第5,985,305号;同第5,997,527号;同第6,113,938号;同第6,132,420号;同第6,156,331号;同第6,217,906号;同第6,261,584号;同第6,270,787号;同第6,287,295号;同第6,375,978号;同第6,395,292号;同第6,508,808号;同第6,544,252号;同第6,635,268号;同第6,682,522号;同第6,923,800号;同第6,939,556号;同第6,976,981号;同第6,997,922号;同第7,014,636号;同第7,207,982号;同第7,112,335号;同第7,163,688号;米国特許出願公開第2005/0175701号、同第2007/0281024号、同第2008/0091176号、及び同第2009/0202608号を参照のこと)。
【0161】
DUROS(登録商標)送達装置は、典型的に、浸透圧エンジン、ピストン、及び薬物製剤を含む円筒状容器から成る。容器は、一方の端において、所定の速度の半透膜により覆われ、他方の端において、薬物を含む懸濁液製剤がそれを通して薬物容器から放出される拡散調節器に覆われる。ピストンは、浸透圧エンジンから薬物製剤を分離し、密閉を利用し、浸透圧エンジン成分において水が薬物容器に浸入することから防ぐ。拡散調節器は、体液がオリフィスを通して薬物容器に浸入することを防ぐために、薬物製剤とあわせて、設計される。
【0162】
DUROS(登録商標)送達装置は、浸透圧の原理に基づいて所定の速度で薬物を放出する。細胞外液は、半透膜を通してDUROS(登録商標)装置に入り、遅く、一定の送達速度でのピストンを駆動するために拡大する塩エンジンに直接入る。ピストンの動作は、所定のせん断率(sheer rate)で、オリフィス又は出口を通して放出させる。本発明の一つの実施形態では、DUROS(登録商標)装置の容器は、懸濁液製剤で充填され、ここで、装置は、長期間(例えば、約1、約3、約6、約9、約10、又は約12ヶ月)に亘って、所定の治療的に有効な送達速度で、対象に懸濁液製剤を送達することができる。
【0163】
浸透圧式送達装置からの薬物の放出速度は、典型的に、薬物の所定の目的の用量、例えば、1日に亘って送達される治療的に有効な一日の用量で対象に提供され;つまり、装置からの薬物の放出速度は、対象への治療濃度での薬物の実質的な定常状態送達を提供する。
【0164】
典型的には、浸透圧式送達装置のための、有益な試薬製剤を含む有益な試薬チャンバーの容量は、約100μl~約1000μl、より好ましくは、約120μl~約5000μl、より好ましくは、約150μl~約200μlである。
【0165】
典型的には、浸透圧式装置は、例えば、皮下薬物送達を提供するために、対象へ皮下に埋め込まれる。装置(単数又は複数)は、腕(例えば、上腕の内側、外側、又は後側に)、又は腹部のいずれか、又は双方に、皮下に埋め込まれ得る。腹部における好ましい場所は、肋骨の下、且つベルトのラインの上に及ぶ領域の腹部皮膚下である。腹部内で、一つ又は複数の浸透圧式送達装置の埋め込みのための多数の場所を提供するために、腹壁は、以下:右肋骨の下5~8センチメートル且つ、正中線の右に約5~8センチメートルに及ぶ右上の四半部、ベルトラインの上5~8センチメートル且つ、正中線の右に5~8センチメートルに及ぶ右下の四半部、左肋骨の下5~8センチメートル且つ、正中線の左に約5~8センチメートルに及ぶ左上の四半部、ベルトラインの上5~8センチメートル且つ、正中線の左に約5~8センチメートルに及ぶ左下の四半部の4つの四半部に分けられ得る。これは、一つ又は複数の機会に関する一つ又は複数の装置の埋め込みのための複数の可能な位置を提供する。浸透圧式送達装置の埋め込み及び除去は、一般的に、局所麻酔(例えば、リドカイン)を用いて、医学の専門家により行われる。
【0166】
対象からの浸透圧式送達装置の除去による処置の停止は、直接的であり、対象に対する薬物の送達の即時停止の重大な有用性を提供する。
【0167】
懸濁液製剤はまた、輸液ポンプ、例えば、実験動物(例えば、マウス及びラット)の連続的投与のための小型の輸液ポンプであるALZET(登録商標)(DURECT Corporation,Cupertino CA)浸透圧式ポンプに用いられ得る。
【0168】
5.0.0 本発明の特定の態様の典型的な利点
一つの態様では、本発明は、例えば、埋め込み型浸透圧式送達装置の使用により、インクレチン模倣薬(例えば、エクセナチド)の連続送達を伴う治療の方法に関する。本明細書に記述される実験は、埋め込み型浸透圧式送達装置を用いたエクセナチドの連続送達が、治療を必要とする対象に以下の恩恵:2型糖尿病を治療すること、血糖コントロール(例えば、グルコースレベル、HbA1c、及び/又はフルクトサミンにより測定されるような)を改善すること、HbA1cを減少させること、空腹時血漿グルコースを減少させること、食後血液グルコースレベルを減少させること、1日2回の注射と比較して有害な消化管イベントを減少させること(例えば、吐き気及び嘔吐)、体重減少、LDL-Cを減少させること、収縮期血圧を減少させること、高血圧を治療すること、フルクトサミンレベルを減少させること、及び治療を受ける対象の生活の質を改善すること、を与えることを実証している。
【0169】
加えて、インクレチン模倣薬(例えば、エクセナチド)の連続送達は、以下:肥満を治療すること、食欲を制御すること、カロリー摂取量を減少させること、食糧摂取量を減少させること、食欲を抑制すること、食欲不振を誘導すること、耐糖能異常症を治療すること、食後高血糖を治療すること、食後タンピング症候群を治療すること、高血糖状態を治療すること、トリグリセリドを減少させること、コレステロールを減少させること、尿流量を増加させること、尿中のカリウム濃度を減少させること、毒性の循環血液量過多を軽減すること、迅速な利尿を誘導すること、術後患者準備、術後患者処置、腎血漿流量及び糸球体濾過流速を増加させること、妊娠中の子癇前症及び子癇を治療すること、心筋収縮能を増加させること、腎不全を治療すること、鬱血性心不全を治療すること、ネフローゼ症候群を治療すること、肺水腫を治療すること、全身性水腫を治療すること、肝硬変を治療すること、耐糖能異常を治療すること、前糖尿病(正常よりも高いが、糖尿病として診断されるのに十分であるほど高くない、血液グルコースレベル)を治療すること、1型糖尿病を治療すること(例えば、インスリンと組み合わせて)、耐糖能異常による心血管イベントのリスクを減少させること、耐糖能異常による脳血管系イベントのリスクを減少させること、糖尿病の進行を遅らせること、糖尿病を改善すること、糖尿病の発症を遅らせること、β細胞再生を誘導すること、正常血糖を回復すること、正常血糖値コントロールを提供すること、末梢血管疾患を治療すること、急性冠不全症候群を治療すること、心筋症を治療すること、妊娠性糖尿病を治療すること、多嚢胞性卵巣症候群を治療すること、腎症を治療すること又は防ぐこと、及び様々な疾患又は症状により誘導される糖尿病を治療すること(例えば、ステロイド誘導性糖尿病、ヒト免疫不全ウイルス治療誘導性糖尿病、成人における潜在性自己免疫性糖尿病、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪肝疾患、無自覚性低血糖、拘束性肺疾患、慢性閉塞性肺疾患、皮下脂肪萎縮、及び代謝症候群)の方法の実施に用いられ得る。
【0170】
本発明はまた、下記の有益性を有するインクレチン模倣薬の送達のための治療方法を提供する。例えば、浸透圧式送達装置からの連続送達は、本明細書で記述される装置が約1年又はそれ以上までの期間、インクレチン模倣薬を送達し得るので、対象についての100%治療服薬遵守を保障し、1日2回、毎日、毎週、又は毎月の注射の必要性を回避する。自己注射の回避は、針嫌いの対象にとって、特に有益である。さらに、連続送達のための埋め込み型装置の使用は、治療の簡便性を提供し、例えば、食事とのスケジュール不一致を回避し、また、例えば、対象が人前にいる場合、又は日常活動で忙しい場合、注射による薬物の投与の不便性を取り除く。また、薬物の頻繁な自己投与は、彼らの病状を対象に思い起こさせ、疾患及び/又は治療に関連するスティグマをもたらし;一方で、埋め込み型浸透圧式装置からの薬物の連続送達は、対象にそのような思い起こさせるもの及びスティグマから小休止を与え得る。
【0171】
本発明はまた、耐えられる用量レベルより高いと以前では考えられたインクレチン模倣薬の用量レベルで対象を治療するための方法を提供する。例えば、エクセナチドの連続送達は、少なくとも80mcg/日までの耐えられる用量について本明細書で記述される。
【0172】
別の態様では、本発明は、用量増加の方法を提供する。一つの実施形態では、薬物、例えば、インクレチン模倣薬の連続送達のための複数の装置は、提供される。それぞれの装置は、1日あたりの特定の薬物用量を送達することが可能である。低用量装置は、最初に埋め込まれ、その後取り除かれ、高い1日用量装置が埋め込まれる。あるいは、第一の装置はその場所に置かれたままで、1日用量を増加させるために、第二の装置が埋め込まれる。別の選択しでは、対象は、薬物の注射形態(例えば、1日2回、1日1回、1週間に1回、または1ヶ月に1又は2回の注射)で投与することにより開始され、最初の期間後、連続送達が提供されるように埋め込み型装置に移行し得る。そのような注射から埋め込み型への移行は、例えば、対象又は医者に薬物を試験することを可能にし、装置の埋め込み前に、何らかの即時の悪影響についておそらく観察される。注射から埋め込み型への移行はまた、特に、薬物副作用の可能性について特に神経質な対象の治療に有用である。また、注射による、又は低用量での連続送達による薬物の提供は、より高く、より効果的な治療用量に変更する前に、低用量での薬物の忍容性を許容する。
【0173】
最適な期間は、高い用量の送達装置で置き換えられる前に、最初の装置がどのくらい長く置かれたままであるかに関して、薬物について決定される。同様に、最適な期間は、浸透圧式送達装置の埋め込み前に、注射による治療の最初のフェーズがどのくらい長く続くかについて決定される。例えば、治療は、副作用の低い発生率で、低用量で開始される(例えば、約2週間、約3ヶ月、約6ヶ月、約9ヶ月、約1年)。対象は、その用量に順応し、その後、用量増加を提供する、より高い用量送達装置は埋め込まれる。あるいは、注射形態用量で処置された対象は、埋め込み型浸透圧式送達装置まで増加する。そのような用量増加は、本明細書で表されるデータから示され、グルコース調節及び体重減少におけるさらなる利点を達成する。初期の用量の例は、約1mcg/日~約20mcg/日の送達に続く約5mcg/日~約1,000mcg/日までの用量増加を含むが、これに限定されない。好ましくは、インクレチン模倣薬用量の増加は、以下:約10mcg/日に続いて約20mcg/日;約10mcg/日に続いて約40mcg/日;約10mcg/日に続いて約60mcg/日;約10mcg/日に続いて約80mcg/日;約20mcg/日に続いて約40mcg/日;約20mcg/日に続いて約60mcg/日;約20mcg/日に続いて約80mcg/日;約40mcg/日に続いて約60mcg/日;約40mcg/日に続いて約80mcg/日;及び約60mcg/日に続いて約80mcg/日を含むがこれに限定されない。一つの実施形態では、本発明は、一つ又は複数の低用量浸透圧式送達装置、及び一つ又は複数の高用量浸透圧式送達装置(キットにおける他の装置と比較して低い及び高い用量)を含むキットを製造するためのキット及び方法を含む。そのようなキットは、任意で、埋め込み物、リドカイン、及び滅菌場/供給品を含む。
【0174】
一般的に、用量増加は、インクレチン模倣薬の低用量、例えば、約1mcg/日~約30mcg/日から、約80mcg/日までの低用量より高い高用量までである。
【0175】
別の態様では、本発明は、インクレチン模倣薬を用いたインスリン分泌を実質的に増加させることなく、糖尿病を治療する方法を提供する。本発明のこの態様の好ましい実施形態では、インクレチン模倣薬はエクセナチドである。本明細書に記述される試験の過程において得られるデータは、エクセナチドの高い用量の連続送達(例えば、20mcg/日、40mcg/日、及び80mcg/日)において、糖尿病の効果的治療は、インスリン産成の増加の不在において達成された。インスリンレベルは、ラジオイムノアッセイにより測定された。
【0176】
別の態様では、本発明の方法は、長期に亘って維持される送達を提供する蓄積注射(例えば、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド-共-グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-共-グリコール酸)、並びにそれらの混合物及び共重合体を用いて製剤化された蓄積注射)で典型的に、引き起こされる実質的な初期薬物破裂(例えば、蓄積製剤中全薬物の約5%から蓄積製剤中全薬物の約1%の初期薬物破裂)させることなく、薬物、例えば、インクレチン模倣薬の投与について許容する。
【0177】
さらなる態様では、本発明は、1日2回の毎日の注射を用いて達成され得るよりも、短期間(例えば、1~5日以内)で血漿血中グルコースの著しい減少を提供する方法を対象とし、インクレチン模倣薬、例えば、エクセナチドの連続送達を提供することを含む。一つの実施形態では、連続送達は、埋め込み型浸透圧式送達装置の使用により達成される。
【0178】
本発明の別の有益な点は、薬物の連続送達を提供する送達装置を取り除くことができることであり、何らかの理由、例えば、心筋梗塞、妊娠、膵炎、又は疑わしい膵炎、緊急医療(例えば、薬物治療の停止)、又は有害な薬物反応の場合において、薬物送達の迅速な停止を提供する。
【0179】
本発明は、注射用インクレチン模倣薬と比較して満たされていない要求に独自に取り組む。例えば、1日2回の注射用エクセナチドの一つの欠点は、対象の65%超が、HbA1c治療目標まで治療されない、又は保たれないことである。1日2回の注射用エクセナチドの別の不利益な点は、注射治療スケジュールを忠実に遵守することを試みる場合、これらの対象の65%超は、6~12ヶ月の間非遵守となることである。また、1日2回の注射用エクセナチドで治療される65%の対象は、過体重であり、継続した体重減少の必要がある。
【0180】
本明細書で記述される実験(例えば、実施例3)は、本発明により示されるように、連続送達による2型糖尿病を治療する方法及びその方法に使用のためのインクレチン模倣薬を含む浸透圧式装置が、標的用量での対象の継続した処置、完全な対象の処置の服薬遵守、及び継続した体重減少を提供することを実証した。標的用量は、典型的に、対象への治療濃度でのインクレチン模倣薬の実質的な定常状態送達を提供する。
【0181】
本明細書の実験的部分で表されるデータは、本発明が、連続送達による2型糖尿病を治療する方法及びその方法に使用のためのインクレチン模倣薬を含む浸透圧式装置、ここで、治療濃度でのインクレチン模倣薬の実質的な定常状態送達が、対象における浸透圧式送達装置の埋め込み後、約7日以下、約6日以下、約5日以下、約4日以下、約3日以下、好ましくは約2日以下、及びより好ましくは約1日以下の期間内で達成される、を提供することを示す。
【0182】
データはまた、連続送達による2型糖尿病を治療する方法及びその方法に使用のためのインクレチン模倣薬を含む浸透圧式装置、ここで、対象における浸透圧式送達装置の埋め込み後、約7日以下、約6日以下、約5日以下、約4日以下、約3日以下、好ましくは約2日以下、及びより好ましくは約1日以下の期間内で、浸透圧式送達装置の埋め込み前の空腹時血漿グルコース濃度と比較して、空腹時血漿グルコース濃度の著しい減少が対象における浸透圧式送達装置の埋め込み後に達成される、を提供することを実証する。
【0183】
データはまた、本発明が、連続送達の停止後、連続送達の停止後にインクレチンの約6半減期以内に、連続送達の停止後にインクレチンの約5半減期以内に、連続送達の停止後にインクレチンの約4半減期以内に、連続送達の停止後にインクレチンの約3半減期以内に、対象からの血液サンプルにおいて、インクレチン模倣薬の濃度が実質的に検出できないほどに、連続送達を停止することのできる能力を提供することを実証する。さらに、データは、インクレチン模倣薬の連続送達による治療が、注射による治療よりも、HbA1cの優れた減少を提供することを実証した。
【0184】
また、データは、本明細書に記述されるように、連続送達による2型糖尿病を治療する方法及びその方法に使用のためのインクレチン模倣薬を含む浸透圧式装置が、インクレチン模倣薬の注射と比較して、インクレチン模倣薬の用量増加に対する改良された忍容性を提供することを説明する。
【0185】
加えて、本明細書で表されるこれらのデータは、報告された治療された対象の生活の質の観点から、注射によるインクレチン模倣薬投与を上回る、本発明の埋め込み型浸透圧式送達装置の重要な利点を実証する。
【0186】
下記に記述される比較データは、他の治療方法と比較して、メトホルンミン療法と組み合わせた、本発明の連続送達による2型糖尿病を治療する方法及びその方法に使用のためのインクレチン模倣薬を含む浸透圧式装置を用いる優れた治療結果を実証する。そのような他の治療方法は、1日2回のエクセナチドの注射、1週間に1回のエクセナチドの注射、1日1回のリラグルチドの注射、1週間に1回のタスポグルチドの注射、1日1回の経口投与されるシタグリプチン、及び1日1回の経口投与されるピオグリタゾンを含む。
【0187】
要約すれば、本明細書で記述されるように、連続送達による2型糖尿病を治療する方法及びその方法に使用のためのインクレチン模倣薬、例えばエクセナチドを含む浸透圧式装置は、効果的な治療の新しい基準を提供する。本発明は、優れたHbA1c減少、改善された体重減少、及びは完全な服薬遵守、並びにジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害剤(例えば、シタグリプチン)、チアゾリジンジオン(TZD)(例えば、ピオグリタゾン)、他の注射用インクレチン模倣薬(例えば、リラグルチド及びタスポグルチド)、及び1日2回、又は1週間に1回のエクセナチド注射の使用に関連した長期間の血糖コントロールを提供する。さらに、本発明は、自己注射が必要とされないので、優れたインクレチン模倣薬治療忍容性を提供し、連続送達による2型糖尿病を治療する方法及びその方法に使用のためのインクレチン模倣薬を含む浸透圧式装置は、向上した胃腸忍容性を提供する。
【実施例
【0188】
下記の実施例は、当業者に完全な開示及びを本発明の実施の仕方の記述を提供するために提示されるが、発明者が発明としてみなすものの範囲を限定することを意図しない。尽力は用いられる数字(例えば、量、濃度、百分率変化など)に関して正確性を保障するためになされるが、しかしいくつかの実験誤差及び偏差は計上されるべきである。他に指示のない限り、温度はセ氏で、圧力は大気圧又は大気圧近くである。
【0189】
本発明の方法を実施するために用いられる組成物は、医薬製品に要求される含有量及び純度についての仕様に適合する。インクレチン模倣薬を含む懸濁液製剤のさらなる例は、米国特許出願公開第2006/0193918号、同第2008/0260840号、及び同第2010/0092566号に見られ得る。
【0190】
実施例1
典型的な浸透圧式送達装置の説明
溶媒/ポリマー媒体に懸濁されたエクセナチド粒子を含む懸濁液製剤は、2型糖尿病の治療のために開発された。懸濁液製剤は、連続的に、一定速度でエクセナチドを送達するための皮下埋め込みのためのDUROS(登録商標)装置に充填された。
【0191】
図4は、本発明の実施に有用なDUROS(登録商標)送達システムの例を表す。図4では、浸透圧式送達装置10は、容器12を含むことが示される。ピストンアセンブリ14は、容器の内腔に置かれ、内腔を二つのチャンバーに分ける。この実施例では、チャンバー16は有益な薬剤製剤を含み、チャンバー20は浸透圧薬剤製剤を含む。半透膜18は、浸透圧薬剤製剤を含むチャンバー20に隣接して、容器の第一の遠位末端に置かれる。拡散調節器22は、薬剤を含む懸濁液製剤を含むチャンバー16に隣接して、容器12の第二の遠位末端に、はめ込みの関係で置かれる。拡散調節器22は、送達オリフィス24を含む。拡散調節器22は、送達オリフィスを有する任意の好適な流動装置でもよい。この実施形態では、流路26は、ねじ状の拡散調節器22と、容器12の内部表面上に形成されたねじ山28の間に形成される。代替の実施形態では、拡散調節器は、例えば、(i)容器の平滑な内部表面を開けること及び接触することを介して圧入(又は摩擦適合)され得る、又は(ii)オープニングにおける位置について構築され調整される外殻とあわせて2つのピース、外殻に挿入される内核、及び外殻及び内核の間で定義される螺旋形状を有する液体チャネルを含み得る(例えば、米国特許出願公開第2007/0281024号)。
【0192】
液体は、半透膜18を通してチャンバー20に吸収される。有益な薬剤製剤は、拡散調節器22に送達オリフィス24を通してチャンバー16から分散される。ピストンアセンブリ14は、容器12の内壁に対してかみ合い、密閉し、従って、チャンバー20中の浸透圧薬剤製剤、及びチャンバー16中の有益な薬剤製剤からの半透膜18を通して吸収された液体を単離する。定常状態において、懸濁液製剤は、外部液体が半透膜18を通してチャンバー20に吸収されるその速度に応じた速度で、拡散調節器22中の送達オリフィス24を通して放出される。つまり、DUROS(登録商標)送達装置は、浸透圧の原理に基づいた、所定の速度で薬物を放出する。細胞外液は、半透膜を通してDUROS(登録商標)送達装置に入り、遅く一定の循環の速度でピストンを駆動させるまでに及ぶ浸透圧エンジンに直接入る。ピストンの動作は、拡散調節器のオリフィスを通して薬物製剤を放出させる。
【0193】
半透膜18は、容器12の内部表面と関係を密閉して弾性的にかみ合わされるプラグの形態であり得る。図4では、半透膜18と容器12の内部表面とを摩擦でかみ合わせる役割を果たす頭部を有することが示される。
【0194】
これらのDUROS(登録商標)送達装置は、ゼロ次で、連続的で、且つ制御された一定速度でのエクセナチドの皮下送達を可能にし、それは、2型糖尿病の治療としていくつかの利点を提供し;例えば、エクセナチドの比較的一定の血液治療濃度は、血液グルコース濃度の優れた制御を許容し、管理の行き届いてない2型糖尿病に関連した他の第二の疾患のリスクを抑制し得る。これらのDUROS(登録商標)送達装置は、エクセナチドの保たれた安定性を伴う広範囲の用量に亘って、約3~約12ヶ月の治療期間を提供する。
【0195】
エクセナチドの毎日又は1日2回の注射とは異なって、DUROS(登録商標)送達装置は、エクセナチドの一定の血液濃度を維持する。これは、全ての食事の時間、及び夜の間、特に重要である。DUROS(登録商標)送達装置は、治療服薬遵守を確実にするために、対象の一部に対する何らかの行動を要求しない。
【0196】
加えて、これらのDUROS(登録商標)送達装置は、エクセナチドの毎日又は1日2回の注射、又はエクセナチドの蓄積製剤と比較して、安定性の利点を有し得る。ゼロ次送達は、有害反応、例えば、頻繁な吐き気、及び減少した有効性に関連し得るトラフ濃度に関連するように見える毎日又は1日2回の注射で典型的に観察されるエクセナチドのピーク血液濃度を取り除く。これらのDUROS(登録商標)送達装置のさらに望ましい特徴は、それらが有害な薬物反応のイベント、又は治療の中止が要求される任意のイベントにおいて、薬物投与を停止するために、病院で迅速に、容易に取り除かれ得ることである。
【0197】
実施例2
フェーズ1b エクセナチドの連続送達についての臨床試験データ
フェーズ1b臨床試験は、3つの部位及び合計44人の対象を含む、多角的にランダム化された、非盲検の試験として計画された。フェーズ1b臨床試験は、管理の不十分な2型糖尿病の対象においてDUROS(登録商標)送達装置(ITCA 650)を用いてエキセンジン-4のアミノ酸配列を有する未修飾の合成エクセナチドの連続的な皮下送達の安全性、及び忍容性を評価するために、計画され、実行された。この試験では、浸透圧式送達装置は、腹部皮膚の下の腹部領域において、皮下に埋め込まれた。
【0198】
試験では、対象は、ITCA650の10mcg/日、20mcg/日、40mcg/日、又は80mcg/日の用量を受けるために、ランダム化された。これらは、4つの用量群のそれぞれについて、群あたり10~12人の対象であった。処置は、7日間の追跡期間を含む28日間であった。従って、これは、合計28日の処置に相当する29日の試験であった。
【0199】
A.試験群の人口動態
【0200】
参入/排除基準は以下である:対象は、30~70歳であり、スクリーニングの6ヶ月超前に2型糖尿病を有するとして診断された。対象は、管理が不十分である2型糖尿病を有し、しかし食事療法及び運動の単独又はメトホルミン単独治療との組み合わせ、TZD単独治療、又はメトホルミンに加えてTZDの併用治療の組み合わせの安定した治療計画にある。対象のヘモグロビンA1c(HbA1c)レベルは、6.5%以上、及び10%以下であった。対象は、270mg/dL未満の空腹時血漿グルコース、及び0.8ng/ml超の空腹時C-ペプチドを有した。
【0201】
以下の4つの用量の群:群1、DUROS(登録商標)送達装置により送達される10mcg/日エクセナチド;群2、DUROS(登録商標)送達装置により送達される20mcg/日エクセナチド;群3、DUROS(登録商標)送達装置により送達される40mcg/日エクセナチド;群4、DUROS(登録商標)送達装置により送達される80mcg/日エクセナチドは、試験された。
【0202】
試験群の人口動態は表1に表される。
【0203】
【表1】
【0204】
試験における対象の人口動態は表2に表される。
【0205】
【表2】
【0206】
B.薬力学的データ
【0207】
下記の薬力学的測定データは、DUROS(登録商標)送達装置によって送達されたエクセナチドの試験から得られた。
【0208】
空腹時血漿グルコース(標準的な方法により測定された)は、治療の開始(すなわち、DUROS(登録商標)送達装置の埋め込み)後、24時間(図1)以内に減少し、表3に示されるように、20mcg/日群、40mcg/日群、及び80mcg/日群において、基準値から終了点まで著しく異なった。表3では、データは、浸透圧式送達装置を用いたエクセナチドの連続皮下送達のランダム化された非盲検の29日の試験から示される。表は、10mcg/日、20mcg/日、40mcg/日、及び80mcg/日を送達する浸透圧式装置について、28日の治療の終了時点での、空腹時血漿グルコース濃度における変化を示す。表中の平均値は、mg/dL単位で与えられる。20mcg/日、40mcg/日、及び80mcg/日を送達する浸透圧式装置についての空腹時血漿グルコース濃度の減少は、統計学的に有意であった。
【0209】
従って、一つの実施形態では、本発明は、エクセナチドの連続送達により2型糖尿病を治療する方法、及びその方法において使用のためのエクセナチドを含む浸透圧式装置に関連し、ここで、治療濃度でのエクセナチドの実質的な定常状態送達が対象への浸透圧式送達装置の埋め込み後、約7日以下、好ましくは約2日以下、及びより好ましくは約1日以下の期間内で達成される。関連する実施形態では、本発明は、対象における浸透圧式送達装置の埋め込み後、約7日以下、好ましくは約2日以下、及びより好ましくは約1日以下の期間内で、対象における浸透圧式送達装置の埋め込み後に達成される、埋め込み前の空腹時血漿グルコース濃度と比較して、空腹時血漿グルコース濃度の著しい減少を提供する。
【0210】
【表3】
【0211】
20mcg/日、40mcg/日、及び80mcg/日でのDUROS(登録商標)送達装置により送達されるエクセナチドを用いた処置は、表4に示されるように、前処理から終了時点までの、食後2時間のグルコースにおける臨床的に及び著しい平均減少をもたらした。明らかな用量反応関係は観察された。食後2時間のグルコースの減少の測定は、標準的な方法により、行われた。表4では、データは、10mcg/日、20mcg/日、40mcg/日、及び80mcg/日を送達する浸透圧式装置について、28日の処置の終了時での食後2時間のグルコース濃度における変化を示す。表中の平均値は、mg/dL単位で与えられる。20mcg/日、40mcg/日、及び80mcg/日を送達する浸透圧式装置についての食後2時間のグルコース濃度の減少は、統計学的に有意であった。
【0212】
【表4】
【0213】
グルコースAUC(曲線下面積)、及び前処理に亘る終了時点の割合は、20mcg/日群、40mcg/日群、及び80mcg/日群における基準値AUCから著しく異なり;10mcg/日用量におけるこれらのパラメータの減少の傾向が存在した。AUC算出は、標準的な方法により行われた。
【0214】
DUROS(登録商標)送達装置の埋め込み後、エクセナチド血漿濃度は、24~48時間以内に定常状態曝露濃度まで上昇し、治療期間を通して維持された(図2)。DUROS(登録商標)送達装置の除去後、エクセナチド濃度は、24時間以内に検出できない濃度にまで下がった(図2)。エクセナチドは、ラジオイムノアッセイを用いて検出された。従って、一つの実施形態では、本発明は、連続送達の停止後、約72時間未満、好ましくは約24時間未満に、対象からの血液サンプルにおいてエクセナチドの濃度が実質的に検出できないほどに連続送達を停止させることができる能力を提供する、エクセナチドの連続送達により2型糖尿病を治療する方法、及びその方法に使用のためのエクセナチドを含む浸透圧式装置に関する。
【0215】
HbA1c(表5に示すように)及びフルクトサミンレベルは、全ての処置群において基準値から終了時まで、著しく異なった。HbA1c及びフルクトサミン検出は、標準的な方法により行われた。表5では、データは、ランダム化され、非盲検の29日の、浸透圧式送達装置を用いたエクセナチドの連続皮下送達の試験から示される。表は、10mcg/日、20mcg/日、40mcg/日、及び80mcg/日を送達する浸透圧式装置について、29日目におけるHbA1cの変化を示す(試験の1日目と比較して、すなわち連続送達の開始)。表中の平均値は、HbA1cプラスマイナス標準偏差(S.D.)の変化である。全ての浸透圧式装置(すなわち、10mcg/日、20mcg/日、40mcg/日、及び80mcg/日を送達する)についてのHbA1cの減少は、統計学的に有意であった。
【0216】
【表5】
【0217】
体重は、全ての処置群において減少し、80mcg/日群において、基準値から終了時点まで著しく異なった(表6)。表6では、データは、ランダム化された、非盲検の29日の、浸透圧式送達装置を用いたエクセナチドの連続皮下送達の試験から示される。表は、10mcg/日、20mcg/日、40mcg/日、及び80mcg/日を送達する浸透圧式装置について、28日の治療の終了時点での体重の変化を示す。表中の平均値は、キログラム(kg)で与えられる。
【0218】
【表6】
【0219】
一方で、胃腸の有害イベント(吐き気及び嘔吐)に関して、明らかな用量反応関係は存在し、これらの効果は、装置(単数又は複数)の埋め込み後、早期に起こり、ほとんどの対象において、第一週以内に減少した。個別の対象における時間に対する吐き気についてのデータは、図3に表される。
【0220】
要約すると、10、20、及び40mcg/日の用量でのDUROS(登録商標)送達装置を用いて送達されたエクセナチドを用いた治療は、治療の28日について良好な忍容性であった。エクセナチドの定常状態濃度は、迅速に達成され、治療の経過を通して維持された。DUROS(登録商標)送達装置の除去は、治療の迅速な停止を提供し、エクセナチド濃度は、24時間以内に検出できない濃度にまで下がる。空腹時血漿グルコース、及び食後2時間の血漿グルコースの著しい減少は、1~5日以内で観察され、20、40、80mcg/日用量群における28日の治療期間を通して、維持された。HbA1cの著しい減少は、全ての処置群で観察された。体重は、全ての処置群において減少した。
【0221】
10mcg/日、20mcg/日、40mcg/日、及び80mcg/日を提供するDUROS(登録商標)送達装置を用いた2型糖尿病に罹患した対象の治療は、安全で良好な忍容性を有し;安全、バイタルサイン、又は理学的検査所見において、臨床的に著しい治療に関連する傾向は、観察されなかった。胃腸有害イベント(吐き気及び嘔吐)に関する明らかな用量反応関係が存在する一方で、これらの効果は、装置(単数又は複数)の埋め込み後早期(第一週以内)に起こるように見え、時間とともに減少する傾向があった。
【0222】
これらのデータは、エクセナチドの連続送達を提供するDUROS(登録商標)送達装置が、下記の恩恵:グルコースの非常に効果的な制御;副作用の頻度、重症度、及び持続の減少;自己注射の必要性の排除;著しい体重減少;及び処方された治療の100%服薬遵守を提供することを実証した。これらの装置を用いる2型糖尿病の治療についてのさらなる利点は、埋め込み後、対象におけるエクセナチドの定常状態治療濃度を迅速に達成することのできる能力;エクセナチドの長期の定常状態送達を提供する能力;空腹時血漿グルコース濃度の著しい減少を提供する能力(浸透圧式装置の埋め込み前の空腹時血漿グルコース濃度に対して);及びもし望むなら、治療を迅速に停止することができる能力であった。
【0223】
実施例3
フェーズ2 エクセナチドの連続送達についての臨床試験データ
フェーズ2臨床試験は、50の部位及び合計155人の対象を含む、多角的にランダム化された、非盲検の試験として計画された。フェーズ2試験は、管理の不十分なメトホルミン処置された2型糖尿病の対象において、エキセンジン-4のアミノ酸配列を有する未修飾の合成エクセナチドの1日2回の注射に対して、DUROS(登録商標)送達装置(ITCA650)によるエキセンジン-4のアミノ酸配列を有する未修飾の合成エクセナチドの連続的な皮下送達の効果、安全性、及び忍容性を比較するために、計画され、実行された。試験では、対象は、12週間のITCA650の20又は40mcg/日、又は4週間の5mcgBID、その後8週間の10mcgBIDが続く1日2回(BID)エクセナチド注射、のいずれかを受けるために、最初にランダム化された。その後、対象は、さらに12週間、20、40、60、又は80mcg/日のITCA650を受けるためにランダム化された。この試験では、浸透圧式送達装置(ITCA650)は、腹部皮膚の下の腹部領域において、皮下に埋め込まれた。
【0224】
以下:群1、20mcg/日を送達する本発明の埋め込み型浸透圧式送達装置で処置される群;群2、40mcg/日を送達する本発明の埋め込み型浸透圧式送達装置で処置される群;及び群3、4週間の5mcgBIDに続いて8週間の10mcgBIDでの1日2回のエクセナチド注射で処置される群のように3つの群のそれぞれについて、1群あたり約50人の対象が存在した。試験計画の概説は、図5に表される。延長フェーズは、13~24週であり、図に示されるように、エクセナチドの連続送達に1:1にランダム化された。それぞれの対象について延長フェーズの開始時に、任意の埋め込み型送達装置は取り除かれ、割り当てられた用量でのエクセナチドの連続送達を提供する浸透圧式送達装置は埋め込まれた。例えば、対象が、最初に20mcg/日でのエクセナチドの連続送達により処置される群1であり、60mcg/日の用量まで増加する場合、その後、延長フェーズの開始時に、20mcg/日を送達する浸透圧式装置は取り除かれ、60mcg/日を送達する新しい装置は埋め込まれた。注射により最初に処置される対象について、注射は中断され、浸透圧式送達装置は延長フェーズの開始時に埋め込まれた。試験は2010年7月15日に完了した。
【0225】
従って、フェーズ2試験の結果は、13~24週の治療期間に亘り、2型糖尿病においてエクセナチドの1日2回の注射に対するエクセナチドの連続送達を用いる治療の安全性及び効果の評価を可能にする。さらに、試験は、エクセナチドの連続送達による治療用量増加、及び対象を1日2回注射のエクセナチドを用いた治療から連続送達による治療に移行する能力の評価を可能にする。
【0226】
A.試験群の人口動態
【0227】
参入/排除基準は以下である。対象は、18~70歳の年齢で、スクリーニングの6ヶ月以上前に2型糖尿病を有するとして診断された。対象は、管理が不十分である2型糖尿病を有し、しかし食事療法及び運動の単独、又はメトホルミン単独治療と組み合わせて安定した治療計画にある。対象のHbA1cレベルは、7.0%以上、10%以下である。対象は、240mg/dL未満の空腹時血漿グルコース、40kg/m2以下のボディ/マス指数(BMI)を有する。
【0228】
試験群の人口動態は、表7に表される。
【0229】
【表7】
【0230】
12週での試験における対象の傾向は、表8に表される。
【0231】
【表8】
【0232】
B.薬力学的データ
【0233】
(i)12週におけるデータ
【0234】
以下の薬力学測定データは、このエクセナチドのフェーズ2臨床試験から得られた。
【0235】
処置の12週間後のHbA1cにおける変化は、表9に表される。
【0236】
【表9】
【0237】
データは、治療の12週後、全ての群が基準値から終了時までのHbA1cの減少を示したことを実証した。連続送達(群1及び2)によるエクセナチド処置は、注射(図3)によるエクセナチド処置よりも、HbA1cの優れた減少を提供した。HbA1cの全ての減少は、基準値と比較して12週において統計的に異なった;しかし互いの間では異ならなかった。試験は、群間の違いを検出するために、尽力されなかった。
【0238】
データのさらなる分析は、1日2回の注射と比べて、浸透圧式送達装置からのエクセナチドの連続送達を用いる本発明の方法に従って治療された場合、対象の高い百分率が、12週間で7%以下、及び6.5%以下のHbA1cを達成したことを示した(図10)。
【0239】
【表10】
【0240】
体重は全ての処置群において減少し、全ての群において、基準値から治療の12週後の終了時点まで著しく異なった(表11)。
【0241】
【表11】
【0242】
胃腸の有害イベント(吐き気及び嘔吐)に関して、明らかな用量反応関係存在する一方で、これらの結果は、装置(単数又は複数)の埋め込み後早期に起こり、多くの対象において数週間以内で典型的に減少した(図6)。図6では、1日2回の注射の用量が5mcg/日から10mcg/日に増加された場合、吐き気の発生率は増加し、最初の治療用量レベルを用いたものより高いまま維持したことが、見ることができる。その結果は、連続送達で見られるデータに対照的であり、ここで、全体的な傾向は、時間とともに吐き気の発生率は減少に向かう。
【0243】
図6については、エクセナチド注射に伴う吐き気の初期の頻度は、5mcgBIDの開始用量において20%を上回った。4週間において、用量が10mcgBIDまで増加する場合、吐き気の頻度は、20%超までさらに増加し、12週間の残余期間についてその割合で継続した。
【0244】
連続送達による20mcg/日での処置に伴って、初期の吐き気の頻度は、約25%であり、週ごとに段階的に減少した。最初の4週に亘り、吐き気の頻度は、2倍の量のエクセナチドが送達されるにも関わらず、エクセナチド注射と同様であった。6週以降、吐き気の頻度は、低下し続け、12週終わりでは10%未満であった。吐き気の持続は、20mcg/日連続送達群において、エクセナチド注射での47.7/日に対して、17日の吐き気の平均持続期間とより少なかった。
【0245】
連続送達により投与される40mcg/日のより高い用量において、吐き気の頻度は、高かったが、対象が受けるエクセナチドの量がエクセナチド注射のそれの2倍であるにも関わらず、6週以降、エクセナチド注射と比較して同様の割合に低下した。吐き気の多くは、軽度から中程度であった。
【0246】
図6におけるデータは、浸透圧式送達装置から連続送達による20mcg/日の送達は、12週の治療期間に亘り、吐き気の症状の継続した改善をもたらしたことを実証する。さらに、データは、長期に亘り、浸透圧式送達装置からの連続送達による40mcg/日の送達は、低用量の1日2回のエクセナチド注射よりも高い吐き気をもたらさなかったことを実証する。これらのデータは、エクセナチドの1日2回の注射に対して、連続送達を用いるエクセナチド治療の改善された忍容性を示す。従って、一つの実施形態では、本発明は、エクセナチドの用量増加に対する改善された忍容性を提供するエクセナチドの連続送達による2型糖尿病を治療する方法、及びその方法に使用のためのエクセナチドを含む浸透圧式送達装置に関する。
【0247】
加えて、生活の質は、DM-SAT生活の質調査(Anderson,RT,et al.,Diabetes Care 32:51(2009))を用いて、基準値及び8週において、試験対象の間で評価された。16の基準は、調査され、対象は0~10のスコアで自己評価した。変化の比較は、全ての処置腕(n~50対象/腕)に亘る基準値及び、16の基準から得られた集まった全てのスコアから行われた。加えて、16の基準は、健康、ライフスタイル、医学的管理、及び簡便性の4つのサブスケールにより、分類される。
【0248】
図7に表されたデータは、8週においての全体的なQOL評価における、基準値からの百分率変化を示す。図では、棒グラフの上の数字は以下:それぞれ、改良されたQOLスコアを含むn/安定したQOLスコアを含むn/減少したQOLスコアを含むn;群3について、36/0/15;群1について35/3/9;群2について40/1/7を表す。データは、エクセナチドが1日2回の注射により投与された場合(群3)に対して、治療が埋め込み型浸透圧式送達装置を用いて20mcg/日(群1)、及び40mcg/日(群2)での連続送達により提供された場合に、平均して、対象がエクセナチド治療に対して全体的に高いQOL評価を与えたことを示した。エクセナチド注射(群3)について、QOLの向上は、10%をやや上回った。群1及び2について、QOLの向上は、高く、20~30%であった。エクセナチド注射(群3)を受けた対象の多くは、連続送達群(群1及び2)のどちらかよりもQOLの減少を報告した。これらのデータは、治療された対象について、報告された生活の質の点から、注射によるエクセナチド投与を超える、埋め込み型浸透圧式送達装置の著しい利点を実証した。
【0249】
さらに、QOLのサブスケール分析は8週において行われ、基準値からの百分率変化は、図8に表される。図では、棒は群の番号で標識され、つまり、それぞれ群3、1、及び2である。データは、健康、医学的管理、ライフスタイル、及び簡便性の4つのサブスケールにより、対象が浸透圧式ポンプを用いたエクセナチドの連続送達を、注射により投与されるエクセナチドに比べて一貫してより高いQOLを提供するとして評価したことを示した。これらのデータは、治療される対象についての4つのサブスケールのそれぞれにおける報告された生活の質の点から、注射によるエクセナチド投与を上回る、埋め込み型浸透圧式送達装置の著しい利点を実証した。
【0250】
連続送達によるエクセナチドを用いた治療は、12週におけるエクセナチド注射を用いた治療と比較して、他のパラメータの潜在的な、有益な変化をもたらした。例えば、表12に示されるように、基準値から8週までの低比重リポタンパク質コレステロール(LDL-C)値の変化は、存在した。
【0251】
【表12】
【0252】
LDL-Cは、注射によるエクセナチド治療を用いて1.2mg/dLに増加したのに対して、それぞれ20及び40mcg/日での連続送達によるエクセナチド治療を用いて、それは、4.8及び5.4mg/dLに減少した。これらのデータは、1日2回の注射に対して、エクセナチドの連続送達を用いた治療によるLDL-Cの減少に対するより有益な効果を実証した。
【0253】
さらに、表13に示されるように、基準値から8週までに、座位での収縮期血圧の変化は、存在した。
【0254】
【表13】
【0255】
収縮期血圧は、それぞれ20及び40mcg/日での連続送達によるエクセナチド治療を用いて、3.6及び6.8mmHgに減少し、注射によるエクセナチド治療を用いて4.2mmHgに減少した。これらのデータは、全ての治療方法がエクセナチドの連続送達、及び1日2回の注射を用いた治療により収縮期血圧の減少に対して同様に有益な効果を提供することを実証した。
【0256】
(ii)20週におけるデータ
【0257】
20週における対象状態についての延長フェーズデータは、図9に表される。13~24週間についての延長フェーズでは、それぞれの処置群からの対象は、20、40、60、又は80mcg/日でのエクセナチドの連続送達を受けるためにランダム化された。治療の20週におけるHbA1c百分率の変化は、図14に表される。
【0258】
【表14】
【0259】
これらのデータは、60~80mcg/日の高い用量における連続送達までの用量増加は、基準値と比較してHbA1cレベルのさらなる減少をもたらしたことが実証された。加えて、継続した体重減少は、観察された。
【0260】
表15に表されるデータは、20週においてHbA1c治療目標に到達する対象を示す。データは、ランダム化された群におけるHbA1cの持続する減少を実証した。さらに、データは、用量増加がHbA1c治療目標に到達する多くの対象をもたらすことを実証した。
【0261】
【表15】
【0262】
要約すれば、20及び40mcg/日の用量での埋め込み型浸透圧式送達装置を用いた連続送達によるエクセナチド治療は、強固なグルコース低下活性と共に、12週に亘って良好な忍容性を示した。HbA1cは、エクセナチド注射を用いた0.82%の減少と比較して、20及び40mcg/日の用量での連続送達によるエクセナチド治療を用いて、それぞれ0.96%及び1.04%まで減少した。より多くの対象は、エクセナチド注射を用いたよりも、連続送達によるエクセナチド治療を用いて、7%又は6.5%のHbA1c治療目標に達した。体重減少は、全ての治療群で観察された。治療の最初の4週の間、2倍以上のエクセナチドを受けたものを除いて、吐き気が週あたり≧20%の発生率で4~12週間継続したエクセナチド注射を用いた治療と比較して、吐き気は、20mcg/日での連続送達によるエクセナチド治療を用いた最初の6週間に亘って、徐々に減少した。連続送達によるエクセナチド治療の双方の用量は、全体的に、及び治療の8週間後に行われたQOL調査の4つの全てのサブスケール(健康、医学的管理、ライフスタイル、及び簡便性)において、エクセナチド注射よりも優れて機能した。
【0263】
加えて、13週での連続送達によるエクセナチド治療を用いた用量増加は、治療の8週後、HbA1cのさらなる減少をもたらした。13~20週に60mcg/日での連続送達によるエクセナチド治療を用いて治療された対象は、基準値から1.27%のHbA1cの減少を有した。13~20週に80mcg/日での連続送達によるエクセナチド治療を用いて治療された対象は、基準値から1.39%のHbA1cの減少を有した。
【0264】
(iii)フェーズ2試験の完了における最終データ
【0265】
試験の完了における対象の全体的な傾向は、表16に表される。
【0266】
【表16】
【0267】
表16では、「1~12週」は、最初の治療期間に亘る試験傾向を表す。連続送達(群1及び2)を提供する処置群において、93%の大変高い完了率が存在した。群1及び2のそれぞれは、吐き気のために2人の対象を離脱させ、群3は、吐き気のために3人の対象を離脱させた。表では、「再ランダム化される前の離脱」は、治療の最初の12週を完了したが、12週の延長フェーズ治療期間を通して継続することを選択しなかった対象である。特定の理由は、これらの離脱について与えられなかった。
【0268】
表16では、「13~24週」について、全ての対象は、埋め込み型浸透圧式送達装置からの連続送達を用いて治療された。試験のこの治療期間は、大変高い完了率を有した。一人の対象のみが、吐き気のために離脱した。この対象は、エクセナチド注射に供され、その後60mcg/日での連続送達による治療を受けた。対象は、5日間吐き気を認め、試験から離脱した。
【0269】
治療の13~24週についてのHbA1c百分率の変化は、表17に表される。
【0270】
【表17】
【0271】
図17では、12週について与えられたデータは、対象について、治療の開始(基準値)から、ランダム化後、及び延長フェーズの治療期間に入る前(13~24週)の12週(最初の治療期間の終了時点)までのHbA1c値の平均変化を示す(図5を参照のこと)。24週について示されるデータは、特定の用量での連続送達による治療の終了時点でのそれぞれの用量に関連したHbA1cの変化を示す。連続送達によるエクセナチドでの治療後、24週において、HbA1cのさらなる減少は、全ての処置群において見られた。HbA1cのこれらの減少の全ては、基準値と比較して統計学的に有意であり、HbA1cの連続した減少は、エクセナチドの連続送達を用いて得られ得ることを実証する。二つの高い用量(すなわち、60mcg/日、及び80mcg/日)について、双方の群は、連続送達により投与されたエクセナチドの用量を増加させることは、治療期間に亘りHbA1cの継続した減少を提供することを実証する、1.3%超の変化を有した。7%以下のHbA1cを有する対象の百分率は、全ての群について、良好な治療結果を実証し、高い用量(60mcg/日、73%;及び80mcg/日、79%)において、優れた改良が見られた。試験は、群の間での違いを検出するために尽力されなかった。
【0272】
HbA1c及び7%未満のHbA1cを達成した対象の百分率の減少は、異なる用量の範囲に亘るエクセナチドの連続送達を用いた2型糖尿病に罹患した対象の治療の臨床値を実証する。
【0273】
エクセナチドの60mcg/日の連続送達を受ける対象について、13~24週からのHbA1cデータのさらなる分析は、延長フェーズ治療期間における最初の基準値HbA1cが高いほど、延長フェーズ治療期間の終了時点で見られるHbA1cの優れた減少が高いことを示した(表18)。
【0274】
【表18】
【0275】
表18では、「基準値」は、臨床試験の開始において治療の開始における対象の平均HbA1cである。13~24週からの60mcg/日のエクセナチドの連続送達により治療を受ける41人の対象について、平均HbA1cは、8.05%であり、治療後に1.38%の降下を伴った。これらの41人の対象の中で、7超の基準値HbA1cを有する36人の対象は、8.22%の平均HbA1cを有し、治療後に1.49%の降下を伴った。これらの41人の対象の中で、7.5以下の基準値HbA1cを有する27人の対象は、8.54%の平均HbA1cを有し、治療後に1.77%の大幅な降下を伴った。HbA1cの継続した改善が治療期間に亘って見られ、治療期間の開始の高い基準値を有する対象が、低い基準値を有する対象よりも、HbA1cのより優れた減少の望ましい結果を示したので、これらの結果は、エクセナチドの連続送達を用いた2型糖尿病の治療が望ましい治療結果を提供することをさらに実証する。
【0276】
全ての処置群において体重は減少し、全ての群において、基準値から治療の24週の終了時点まで、著しく異なった(表19)。
【0277】
【表19】
【0278】
20mcg/日の低用量は、0.8kgの平均体重減少を有した。全ての高用量は、3kg超の体重減少を有し;値はまた、統計学的に有意であった。
【0279】
図10に表されるデータは、13~24週の治療期間に亘る吐き気の発生率を示す。図では、最初の時間の点(-1週)は、延長フェーズ投薬のための対象ランダム化の前の週の吐き気の発生率を示す。20mcg/日のエクセナチドの連続送達に伴い、吐き気の発生率は、治療期間を通して大変低いままであった。20mcg/日から60mcg/日までのエクセナチドの連続送達用量の増加に伴い、吐き気の発生率の増加が存在したが;治療は、下記に記述されるように、優れた忍容性を示した。1日2回の注射のとしてエクセナチドの20mcg/日を受けた対象が、60mcg/日のエクセナチドの連続送達を用いた延長フェーズにおいて治療された場合、吐き気の発生率は、用量増加後4週の間、50%超であった。従って、エクセナチドの連続送達を用いた治療が、エクセナチドの増加した用量の胃腸副作用に対して対象の忍容性を提供する一方で、1日2回のエクセナチド注射を用いた治療は、エクセナチドの増加した用量の胃腸副作用に対して対象の忍容性に有用ではない。従って、一つの実施形態では、本発明は、エクセナチドの用量増加に対する改良された忍容性を提供するエクセナチドの連続送達による2型糖尿病を治療する方法及びその方法に使用のためのエクセナチドを含む浸透圧式装置に関する。
【0280】
優れた忍容性を示す治療に関して、20~60mcg/日のエクセナチドの連続送達を用いて治療される対象について、治療からの離脱はなく、6人の対象は13~24週の間に吐き気を報告し、4人は1~12週の間に吐き気を報告した。嘔吐の報告はなかった。これらの対象のうちの4人は、25~48週の治療を許容する連続フェーズにおいて、部分的に参加し、4人の全ては、連続送達を用いた連続治療を選択した。さらに、全ての処置群において、全ての適格な対象の85%は、連続フェーズにおける継続治療を選択した。
【0281】
加えて、試験の延長フェーズにおける対象のQOLスコアの変化は、上述のように本質的に上昇した。図9に関して、図11に表されるデータは、群3(エクセナチドの1日2回の注射)の元の対象の延長フェーズにおける、続く2つの処置群(すなわち、40mcg/日、又は60mcg/日のエクセナチドの連続送達)へのランダム化に基づくQOLスコアについての基準値からの変化を表す。40mcg/日の連続送達にランダム化される群3の元の対象についてのQOLは、8週からのそれらのQOLデータ、及び20週において得られるそれらのQOLデータを用いて比較される。60mcg/日の連続送達にランダム化される群3の元の対象についてのQOLデータは、8週からのそれらのQOLデータ、及び20週において得られるそれらのQOLデータを用いて比較される。図11におけるデータから分かるように、1日2回のエクセナチド注射(群3)から埋め込み型浸透圧式装置からの連続送達(エクセナチドの40mcg/日、又は60mcg/日の用量での)に切り替えられた対象は、QOLスコアの実質的な上昇を報告した。
【0282】
図9に関して、図12に表されるデータは、延長フェーズにおいて60mcg/日の連続送達に続いてランダム化された群1(エクセナチドの20mcg/日の連続送達)の元の対象、及び延長フェーズにおいて80mcg/日の連続送達に続いてランダム化された群2(エクセナチドの40mcg/日の連続送達)の元の対象に基づいて、QOLスコアについての基準値からの変化を表す。これらの対象についてのQOLデータは、8週からのそれらのQOLデータ、及び20週において得られるそれらのQOLデータを用いて比較される。図12で表されるデータから分かるように、延長フェーズにおいて2~3倍増加したそれらの用量を有する連続送達により治療される対象についてのQOLスコアは、高い用量においてさえ、高いQOLスコアが維持された(1日2回の注射により治療されたものと比較して、図7及び図8と比較して)。従って、本発明は、エクセナチドを用いた治療を受ける対象に対する向上したQOLを提供する、エクセナチドの連続送達により2型糖尿病を治療する方法、及びその方法に使用のためのエクセナチドを含む方法及び浸透圧式送達装置を提供する。
【0283】
要約すれば、埋め込み型浸透圧式装置からのエクセナチドの連続送達を用いた2型糖尿病の治療は、全ての用量において血糖コントロールが提供される。20mcg/日の連続送達が開始され、続いて60mcg/日まで用量増加される対象は、優れた忍容性、並びにHbA1c及び体重の減少を経験した。加えて、対象が報告したQOLの改善は、エクセナチドの1日2回の注射に対する連続送達により投与された全てのエクセナチド用量において観察された。QOLの優れた改善は、1日2回のエクセナチドの注射に対する連続送達により治療される対象において観察された。また、著しいQOL改善は、1日2回のエクセナチド注射から埋め込み型浸透圧式送達装置を用いた連続送達に切り替えた対象において見られた。
【0284】
本発明の方法及び埋め込み型浸透圧式送達装置は、対象の遵守を確実にし、自己注射の必要性を取り除く、最初のインクレチン模倣薬治療であるため、2型糖尿病の長期間の最適な治療について独自の可能性を提供する。
【0285】
C.比較治療データ
【0286】
この実験は、メトホルミンのみの治療バックグラウンドの対象において、2型糖尿病の治療についての様々な治療手法の比較を議論する。埋め込み型浸透圧式装置からの連続送達を用いた治療の上述のフェーズ2臨床試験からのデータは、1日2回及び1週間に1回のエクセナチド注射、並びに経口抗糖尿病薬についての治療結果と比較された。
【0287】
図13図21は、表20に説明される薬物及び治療方法についての比較治療データを表す。
【0288】
【表20】
【0289】
リラグルチド及びタスポグルチドは、双方共にペプチドであり、インクレチン模倣薬である。シタグチプチンは、小分子DDP-4阻害剤である。ピオグリタゾンは、TZDであり、ペルオキシソーム増殖活性化受容体γの強力なアゴニストである。
【0290】
図13に表される比較のデータは、エクセナチドの連続送達(処置E)のための本発明の方法及び浸透圧式送達装置を用いた治療は、試験の治療期間に亘ってHbA1cの優れた減少を提供したことを実証する。従って、本明細書に記述されるように、エクセナチドの連続送達は、1日2回(処置A)、又は1週間に1回(処置B)のいずれかの注射により投与されるエクセナチドと比較して、優れたHbA1c減少、及びリラグルチド(1日1回の注射;処置C)、及びタスポグルチド(1週間に1回;処置D)の二つの異なるインクレチン模倣薬による処置と比較して、HbA1cの優れた減少を提供した。
【0291】
図14に表される比較のデータは、エクセナチドの連続送達(処置E)のための本発明の方法及び浸透圧式装置を用いた治療がシタグリプチン(処置F)、ピオグリタゾン(処置G)、又は1週間に1度のエクセナチドの注射(処置B)を用いた処置と比較して試験開始時の低い基準値にも関わらず、優れたHbA1c低下を提供したことを実証する。Bergenstal RMらの試験では、対象の約3分の1は、9%超のHbA1cを有したが;しかしながら、エクセナチドの20mcg/日、又は60mcg/日の連続送達を用いた本明細書に記述される実験では、9を上回るHbA1cを有する上記の一人の対象がのみ存在した。これは、平均HbA1c基準値における違いを説明する。
【0292】
図15に表される比較データは、エクセナチドの連続送達(処置E)についての本発明の方法及び浸透圧式送達装置を用いた治療が、エクセナチドの1週間に1度の投与と比較した場合、低い基準値にも関わらず、HbA1cの減少の増加を提供したことを実証する。米国において全体的に行われた、本明細書で記述されるフェーズ2臨床試験とは異なって、Bergenstal RMらの試験は、米国、メキシコ、インドで行われた。この地域分布は、メトホルミン単独療法で十分に管理されていない、及び高い基準値HbA1cレベルを有する試験に参加する対象の加入をもたらす。Bergenstal RMらの試験からのエクセナチドの1週間に1回の注射(処置B)で治療される対象、及びBergenstal RMらの試験に参加した対象の3分の1の平均基準値HbA1cは、9%超の基準値HbA1cレベルを有した。高い基準値HbA1cレベルを有する処置Eからの対象のみを分析することは、HbA1cの絶対的な低下が、エクセナチドの連続送達(処置E)についての本発明の方法及び浸透圧式送達装置を用いた治療における対象の中で、より高いことが実証された。これは、本発明により記述されるようなエクセナチドの連続送達が、高い基準値HbA1cを有する同様の試験集団において、エクセナチドの1週間に1回の注射よりも、より優れ得ることが提案される。
【0293】
図16に表される比較のデータは、エクセナチドの連続送達(処置E)についての本発明の方法及び浸透圧式送達装置を用いた治療が、1週間に1回のエクセナチドの注射(処置B)を用いた処置と比較して、HbA1cの強固な減少を提供したことを実証する。Bergenstal RMらによる試験からのHbA1c変化は、9%未満の基準値HbA1cを有する対象、と9%以上の基準値HbA1cを有する対象の間で、さらに分析される。同様の分析に従って、本発明の連続送達によるエクセナチド処置(処置E)の結果と1週間に1回のエクセナチド注射を用いた処置(処置B)との比較は、本発明の治療方法に続くHbA1c減少は、1週間に1度のエクセナチド注射を用いて見られるそれらよりも、よりよく又は優れていることを示した。
【0294】
本発明の治療方法(処置E)の結果と、Bergenstal RMらによる試験からのシタグリプチンに関する対象からの結果との同様の比較は、シタグリプチンと比較してHbA1cのより優れた減少を提供するために、エクセナチドの連続送達についてよりさらに優れた利点を提案した(図17)。これらの結果は、DPP-4阻害剤(例えば、シタグリプチン)と比較してメタホルミンへの好ましい追加治療として、連続送達を提供する治療についての本発明の浸透圧式送達装置の使用を支持する。さらに、Bergenstal RMらによる試験からの9%以下のHbA1cを有する対象と、本明細書で記述されるフェーズ2臨床試験からの同様の対象とを比較した場合、本発明の治療方法及び浸透圧式装置がHbA1cのより多くの実質的な減少を提供することが分かった(図18)。
【0295】
同様に、本発明の治療方法(処置E)の結果と、Bergenstal RMらによる試験からのピオグリタゾンにおける対象からの結果との同様の比較は、ピオグリタゾンと比較して、エクセナチドの連続送達がHbA1cのより優れた減少を提供することを提案した(図19)。これらの結果は、TZD(例えば、ピオグリタゾン)と比較して、好ましいメトホルミンへの追加治療として連続送達を提供する治療のための本発明の浸透圧式送達装置の使用を支持する。さらに、Bergenstal RMらによる試験からの9%以下のHbA1cを有する対象と、本明細書で記述されるフェーズ2臨床試験から同様の対象とを比較した場合、本発明の治療方法及び浸透圧式送達装置がHbA1cのより多くの実質的な減少を提供することが分かった(図20)。
【0296】
さらに、図21は、エクセナチドの連続送達(処置E)についての本発明の方法及び浸透圧式送達装置を用いた処置に対する、シタグリプチン(処置F)、ピオグリタゾン(処置G)、又はエクセナチドの1週間に1回の注射(処置B)を用いて得られた体重減少の比較を表す。図に表されるデータは、処置を比較した場合、本発明の方法及び浸透圧式送達装置が最大の体重減少を提供することを実証する。
【0297】
最終的に、フェーズ2臨床試験に登録された全ての対象は、試験の開始前に、彼らの2型糖尿病の治療のためにメトホルミン療法のみを受けた。メトホルミン用量は、フェーズ2臨床試験の経過に亘って変更されなかった。対象は、12週間のエクセナチドの20mcg/日又は40mcg/日の連続送達を用いて治療され、又は1日2回の自己注射エクセナチド(5mcgBIDでの4週間に続き10mcgBIDでの8週間)により治療される群にランダム化された。
【0298】
メトホルミンは、特定の胃腸有害イベント、例えば下痢、吐き気、及び嘔吐を引き起こすことが知られている。エクセナチドの20mcg/日の連続投与により処置を受け、エクセナチドのその用量が連続的に投与されるエクセナチドのより高い用量までその後増加される対象は、20mcg/日でのエクセナチド注射を受け、その後連続的に投与されるエクセナチドのより高い用量までその後増加される対象よりも、少ない有害な胃腸副作用を有する。
【0299】
従って、エクセナチド連続送達治療を開始する対象は、メトホルミンと共に与えられるエクセナチド注射を最初に受けるものよりも、メトホルミンと共に与えられるエクセナチドの組み合わせ効果に対してより優れた忍容性を示した。従って、浸透圧式送達装置からのエクセナチドの連続投与を用いることは、エクセナチドの1日2回の注射と比較して、メトホルミン治療と組み合わせについての最もよいエクセナチド治療オプションである。
【0300】
フェーズ2臨床試験データは、連続送達によるエクセナチド処置は、以下の潜在的な利益:グルコースの高い効果的な管理;注射による治療に対して胃腸副作用の減少;自己注射の必要性の除去;実質的な体重減少;及び所定の治療に対する100%の服薬遵守を提供する。
【0301】
実施例4
エクセナチドの連続送達についてのフェーズ3臨床試験の計画
下記の試験計画は、説明の目的のためにのみに表され、他のフェーズ3臨床試験計画は、当業者によって理解されるように、容易である。
【0302】
A.第一試験の計画
【0303】
一つのフェーズ3臨床試験計画は以下の通りである。試験は、ランダム化され、二重盲検で、プラセボ対照試験である。試験群は、メトホルミン、TZD、スルホニル尿素、及びメトホルミン、TZD、又はスルホニル尿素の任意の組み合わせを用いて処置される2型糖尿病に罹患した対照を含む。対象は、7%超のHbA1cを有する。対象は、プラセボと埋め込み型浸透圧式送達装置を用いたエキセンジン-4のアミノ酸配列を有する未修飾の合成エクセナチドの連続送達に、それぞれ1:2にランダム化される。総計300人の対象が存在した。連続送達に用いられるエクセナチドの用量は、忍容性、グルコース低下活性、及び体重減少活性を含むフェーズ2の完了時における結果に基づいて選択される。連続送達についての用量は、20mcg/日での3ヶ月の処置、及び60mcg/日での3ヶ月の処置を含み得る。ランダム化は、スルホニル尿素使用及びHbA1c(9%未満対9%以上)に基づいて階層化された。
【0304】
得られ、評価されるデータは、以下:HbA1c(主要評価項目)、空腹時血漿グルコース、体重、脂質、血圧、アディポネクチン、C反応性タンパク質(CRP)、カルシトニン、及びアミラーゼ/リパーゼを含む。加えて、QOL評価は行われる。
【0305】
埋め込み型浸透圧式送達装置からの連続送達を用いた長期治療についての非盲検又は盲検のいずれかの26週の延長フェーズが存在する。
【0306】
B.第二の試験計画
【0307】
第二のフェーズ3臨床試験計画は以下の通りである。試験は、26週の盲検試験及び必須の26週の延長を有する、ランダム化された、二重盲検、プラセボを対照としたフェーズ3臨床試験である。試験群は、食事療法及び運動療法、及び/又は以下:メトホルミンのみの処置を除いて、TZD、スルホニル尿素、TZD及びメトホルミン、スルホニル尿素及びメトホルミン、又はTZD及びスルホニル尿素から選択される経口処置を用いて治療される2型糖尿病に罹患した対象を含む。メトホルミンのみの処置の排除は、安全性評価についてのより大きいスルホニル尿素サブ集団を提供する。対象の参入基準は、安定した最大用量バックグラウンド治療を含む。心臓血管リスクについては排除されない。
【0308】
対象は、7.5%以上のHbA1cを有する。対象は、プラセボと、埋め込み型浸透圧式送達装置を用いたエキセンジン-4のアミノ酸配列を有する未修飾の合成エクセナチドの連続送達とに、それぞれ1:2にランダム化される。総計375人の対象が存在する。エクセナチドの連続送達のために用いられる用量は、以下:群A(n=150)、20mcg/日での13週の処置に続いて、60mcg/日での13週の処置;群B(n=150)、20mcg/日での13週の処置に続いて、40mcg/日での13週の処置;及び群C(n=75)、プラセボ対照群、プラセボでの13週の処置に続いて、プラセボでの13週の処置を含む。試験の主要評価項目は、26週である。以下の処置:群A、60mcg/日での26週の処置;群B、40mcg/日での26週の処置;及び群C、20mcg/日での26週の処置;を含む必須の盲検の延長フェーズが存在する。
【0309】
得られ、評価され得るデータは、以下:HbA1c(主要評価項目)、空腹時血漿グルコース、体重、脂質、血圧、アディポネクチン、C反応性タンパク質(CRP)、カルシトニン、及びアミラーゼ/リパーゼを含む。加えて、QOL評価は行われる。
【0310】
この試験のさらなる変更は、以下を含み得る。ランダム化の付加、二重盲検、プラセボを対照としたフェーズ3臨床試験、ここで、試験群は、メトホルミン治療への追加として、DPP-4阻害剤又はTZDを用いて治療される(すなわち、対象は、DPP-4阻害剤及びメトホルミン、又はTZD及びメトホルミンの治療を受ける)2型糖尿病に罹患した対象を含む。試験は、必須の26週の延長を含む、26週の盲検試験である。試験は、エクセナチドの連続送達、及び経口投与される薬物の双方について、プラセボを用いたプラセボ対照にされた。対照のこの群の総数は、約500人である。処置用量は以下:群A(n=170)、20mcg/日でのエクセナチドの連続送達による13週の処置に続いて、60mcg/日での13週の処置;群B(n=170)、45mg/日のピオグリタゾン(TZD)での26週の処置;及び群C(n=170)、100mg/日のシタグリプチン(DPP-4阻害剤)での26週の処置を含む。試験の主要評価項目は、26週である。以下の処置:群A、60mcg/日でのエクセナチドの連続送達での26週の処置;群B、45mg/日のピオグリタゾンでの26週の処置;群C、シタグリプチンの100mg/日での26週の処置での必須の盲検延長フェーズは、存在する。
【0311】
この試験の目的は、DPP-4阻害剤、及びTZDを用いた治療に対して、浸透圧式送達装置を用いたエクセナチドの連続送達を用いた治療の優位性を実証することである。
【0312】
当業者に明らかなように、上記の実施形態の様々な変更及びバリエーションは、この発明の趣旨及び範囲から離れることなく行われ得る。そのような変更及びバリエーションは本発明の範囲内である。
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