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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】回転電機の固定子配線方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/18 20060101AFI20221205BHJP
【FI】
H02K3/18 P
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021078702
(22)【出願日】2021-05-06
(65)【公開番号】P2022039944
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】202010885404.9
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】596039187
【氏名又は名称】台達電子工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DELTA ELECTRONICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】蔡 承勳
(72)【発明者】
【氏名】徐 雍智
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/111076(WO,A1)
【文献】特開2002-027694(JP,A)
【文献】特開2014-033550(JP,A)
【文献】特開2004-260985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/00- 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子が複数の第1の固定子の歯及び複数の第2の固定子の歯を有し、前記複数の第1の固定子の歯の1つが前記複数の第2の固定子の歯の隣接する2つの間に位置し、前記複数の第1の固定子の歯の前記1つと隣接する前記複数の第2の固定子の歯の1つとの間に溝が形成され、前記溝が前記固定子の固定子軸心から径方向に延伸する中心線により均等に分けられて、前記複数の第1の固定子の歯の前記1つに隣接する第1の配線領域、及び前記複数の第2の固定子の歯の前記1つに隣接する第2の配線領域が形成される回転電機の固定子配線方法であって、
前記固定子の外径側から前記固定子の内径側へ、前記第1の配線領域において第1の固定子コイルのm層を時計回りに巻き付ける工程と、
前記第1の固定子コイルの前記m層に重なり合うように、前記固定子の前記内径側から前記固定子の前記外径側へ前記第1の固定子コイルのm+1層を反時計回りに巻き付ける工程と、
前記第1の固定子コイルのn層と前記中心線との最小距離が閾値距離より小さい場合、コイルを崩壊させないことを原則として、前記第1の固定子コイルのn+1層を巻き付け続ける工程と、
前記固定子の前記外径側から前記固定子の前記内径側へ、前記第2の配線領域において第2の固定子コイルのm層を時計回りに巻き付ける工程と、
前記第2の固定子コイルの前記m層に重なり合うように、前記固定子の前記内径側から前記固定子の前記外径側へ前記第2の固定子コイルのm+1層を反時計回りに巻き付ける工程と、
前記第2の固定子コイルのn層を巻き付け、前記第2の固定子コイルの前記n層の巻数が、前記第1の固定子コイルの前記n層の巻数から2を引いたものである工程と、
前記溝の前記第2の配線領域及び/又は前記第1の配線領域を充填するように、順に前記第2の固定子コイルのn+1層から前記第2の固定子コイルの最終層までを巻き付け、前記第2の固定子コイルの前記最終層における前記固定子の前記外径側に近い巻が、前記第2の配線領域における前記中心線に最も近い端部位置に最も近接する工程と、
前記第1の配線領域及び/又は前記第2の配線領域を充填するように、前記溝内で順に前記第1の固定子コイルのn+2層から前記第1の固定子コイルの最終層までを巻き付ける工程と、
を含む回転電機の固定子配線方法。
【請求項2】
mは奇数であり、m≦nである請求項1に記載の配線方法。
【請求項3】
前記閾値距離は、前記第1の固定子コイルの線径の0.6倍である請求項1に記載の配線方法。
【請求項4】
nが奇数である場合、前記第1の固定子コイルの前記n+1層の巻数は、前記第1の固定子コイルの前記n層の巻数から1を引いたものである請求項1に記載の配線方法。
【請求項5】
nが偶数である場合、前記第1の固定子コイルの前記n+1層の巻数は、前記第1の固定子コイルの前記n層の巻数と同じである請求項1に記載の配線方法。
【請求項6】
前記第2の固定子コイルの前記n層の後の層は、奇数の層であると、その巻数がその前の層の巻数から1を引いたものであり、前記最終層を含まない請求項1に記載の配線方法。
【請求項7】
前記第2の固定子コイルの前記n層の後の層は、偶数の層であると、その巻数がその前の層の巻数から2を引いたものであり、前記最終層を含まない請求項1に記載の配線方法。
【請求項8】
前記第2の固定子コイルの前記最終層が時計回りに巻き付けられると、前記第2の固定子コイルの前記最終層の最終巻は、前記中心線に最も近く且つ前記中心線を超えない位置で終了する請求項1に記載の配線方法。
【請求項9】
前記第2の固定子コイルの前記最終層が反時計回りに巻き付けられると、前記第2の固定子コイルの前記最終層の巻数は、その前の層の巻数から2を引いたものである工程を更に含む請求項1に記載の配線方法。
【請求項10】
前記溝の前記第1の配線領域及び/又は前記第2の配線領域の空間を充填するように、前記第1の固定子コイルの前記n+2層から前記第1の固定子コイルの前記最終層までを巻き付ける請求項1に記載の配線方法。
【請求項11】
前記第1の固定子コイルの前記最終層を巻き付けた後、前記第1の配線領域及び前記第2の配線領域の余剰空間を埋めるように、前記第2の固定子コイルの前記n+1層から前記第2の固定子コイルの前記最終層までの少なくとも1層の巻数を増やす工程を更に含む請求項10に記載の配線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の固定子配線方法に関し、特に、占積率を高める回転電機の固定子配線方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電動機と発電機等の回転電機の固定子(stator)は、通常、歯毎に同じ巻数の配線を巻き付けて巻線を行い、且つ隣接する2つの歯部の間における配線は、同じピッチで固定子の中心軸線から対称軸線に放射状に延伸する。言い換えると、従来の回転電機では、各歯におけるコイルの配列形状及び巻数は全て同じである。しかし、従来の回転電機では、同じ巻線で配列され、2つの歯の間における使用可能な巻線空間において、コイルが2巻より小さい場合に巻線できなくなり、そのような配線が巻線空間を十分に利用できなくなり、回転電機のトルク性能を効果的に向上させることは困難である。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、固定子が複数の第1の固定子の歯及び複数の第2の固定子の歯を有し、複数の第1の固定子の歯の1つが複数の第2の固定子の歯の隣接する2つの間に位置し、複数の第1の固定子の歯の前記1つと隣接する複数の第2の固定子の歯の1つとの間に溝が形成され、当該溝が固定子の固定子軸心から径方向に延伸する中心線により均等に分けられて、複数の第1の固定子の歯の前記1つに隣接する第1の配線領域、及び複数の第2の固定子の歯の前記1つに隣接する第2の配線領域が形成される回転電機の固定子配線方法であって、固定子の外径側から固定子の内径側へ、第1の配線領域において第1の固定子コイルのm層を時計回りに巻き付ける工程と、第1の固定子コイルのm層に重なり合うように、固定子の内径側から固定子の外径側へ、第1の固定子コイルのm+1層を反時計回りに巻き付ける工程と、第1の固定子コイルのn層と中心線との最小距離が閾値距離より小さい場合、コイルを崩壊させないことを原則として、第1の固定子コイルのn+1層を巻き付け続ける工程と、固定子の外径側から固定子の内径側へ、第2の配線領域において第2の固定子コイルのm層を時計回りに巻き付ける工程と、第2の固定子コイルのm層に重なり合うように、固定子の内径側から固定子の外径側へ、第2の固定子コイルのm+1層を反時計回りに巻き付ける工程と、第2の固定子コイルのn層を巻き付け、第2の固定子コイルのn層の巻数が、第1の固定子コイルのn層の巻数から2を引いたものである工程と、溝の第2の配線領域及び/又は第1の配線領域を充填するように、順に第2の固定子コイルのn+1層から第2の固定子コイルの最終層までを巻き付け、第2の固定子コイルの最終層における固定子の外径側に近い巻が、第2の配線領域における中心線に最も近い端部位置に最も近接する工程と、第1の配線領域及び/又は第2の配線領域を充填するように、溝内で順に第1の固定子コイルのn+2層から第1の固定子コイルの最終層までを巻き付ける工程と、を含む回転電機の固定子配線方法を提供することにある。
【0004】
いくつかの実施例において、mは奇数であり、m≦nである。
【0005】
いくつかの実施例において、上記閾値距離は、第1の固定子コイルの線径の0.6倍である。
【0006】
いくつかの実施例において、nが奇数であると、第1の固定子コイルのn+1層の巻数は、第1の固定子コイルのn層の巻数から1を引いたものである。
【0007】
いくつかの実施例において、nが偶数であると、第1の固定子コイルのn+1層の巻数は、第1の固定子コイルのn層の巻数と同じである。
【0008】
いくつかの実施例において、第2の固定子コイルのn層の後の層は、奇数の層であると、その巻数がその前の層の巻数から1を引いたものであり、最終層を含まない。
【0009】
いくつかの実施例において、第2の固定子コイルのn層の後の層は、偶数の層であると、その巻数がその前の層の巻数から2を引いたものであり、最終層を含まない。
【0010】
いくつかの実施例において、第2の固定子コイルの最終層が時計回りに巻き付けられると、第2の固定子コイルの最終層の最終巻は、中心線に最も近く且つ中心線を超えない位置で終了する。
【0011】
いくつかの実施例において、前記配線方法は、第2の固定子コイルの最終層が反時計回りに巻き付けられると、第2の固定子コイルの最終層の巻数は、その前の層の巻数から2を引いたものである工程を更に含む。
【0012】
いくつかの実施例において、第1の配線領域及び/又は第2の配線領域の空間を充填するように、第1の固定子コイルのn+2層から第1の固定子コイルの最終層までを巻き付ける。
【0013】
いくつかの実施例において、前記配線方法は、第1の固定子コイルの最終層を巻き付けた後、第1の配線領域及び第2の配線領域の余剰空間を埋めるように、第2の固定子コイルのn+1層から第2の固定子コイルの最終層までの少なくとも1つの巻数を増やす工程を更に含む。
【0014】
本発明の上記特徴とメリットを更に分かりやすくするために、以下、実施例により、図面を参照しながら、以下の通りに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下、添付図面を参照して詳しく説明することにより、本発明の態様をよりよく了解することができる。注意すべきなのは、業界標準の慣行によれば、各特徴は一定の縮尺で描かれていない。実質的に、検討をより明確にするために、各特徴のサイズを任意に拡大又は縮小することができる。
図1】本発明の実施例による回転電機の固定子を示す断面模式図である。
図2a】本発明の第1の実施例による局所的な固定子のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
図2b】本発明の第1の実施例による局所的な固定子のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
図2c】本発明の第1の実施例による局所的な固定子のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
図2d】本発明の第1の実施例による局所的な固定子のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
図3a】本発明の第2の実施例による局所的な固定子のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
図3b】本発明の第2の実施例による局所的な固定子のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
図3c】本発明の第2の実施例による局所的な固定子のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
図3d】本発明の第2の実施例による局所的な固定子のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
図4a】本発明の第3の実施例による局所的な固定子のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
図4b】本発明の第3の実施例による局所的な固定子のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
図4c】本発明の第3の実施例による局所的な固定子のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
図4d】本発明の第3の実施例による局所的な固定子のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
図4e】本発明の第3の実施例による局所的な固定子のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
図5a】本発明の第4の実施例による局所的な固定子のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
図5b】本発明の第4の実施例による局所的な固定子のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
図5c】本発明の第4の実施例による局所的な固定子のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
図5d】本発明の第4の実施例による局所的な固定子のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を詳しく検討する。しかしながら、理解すべきなのは、実施例は、様々な特定の内容で実施されることができる多くの適用可能な概念を提供する。検討及び開示された特定の実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、説明するためのものだけである。本文に使用された「第1の」、「第2の」等については、次序又は順位を特定する意味ではなく、単に同一の技術用語で説明される素子や操作を区別するためのものだけである。
【0017】
図1は、本発明の実施例による回転電機の固定子100を示す断面模式図である。固定子100は、複数の第1の固定子の歯10A及び複数の第2の固定子の歯10Bを有し、複数の第1の固定子の歯10Aと複数の第2の固定子の歯10Bは、互いに間隔を置いて設けられる。言い換えると、1つの第1の固定子の歯10Aは、2つの隣接する第2の固定子の歯10Bの間に設けられ、且つ1つの第2の固定子の歯10Bは、2つの隣接する第1の固定子の歯10Aの間に設けられる。
【0018】
互いに隣接する1つの第1の固定子の歯10Aと1つの第2の固定子の歯10Bとの間に溝20が形成され、この溝20の内部空間は、固定子100の固定子軸心から径方向に延伸する中心線16により均等に分けられて、対応する第1の固定子の歯10Aに隣接する第1の配線領域20A、及び対応する第2の固定子の歯10Bに隣接する第2の配線領域20Bが形成される。
【0019】
第1の配線領域20A及び第2の配線領域20Bは、コイルを巻き付けるために用いられ、具体的には、第1の固定子の歯10Aに第1の固定子コイル(図1に示せず)が巻き付けられ、第1の固定子コイルは、第1の固定子の歯10Aに隣接する第1の配線領域20A内から巻き付けられ、一部の第1の固定子コイルは、第1の配線領域20Aを超える可能性があり、第2の固定子の歯10Bに第2の固定子コイル(図1に示せず)が巻き付けられ、第2の固定子コイルは、第2の固定子の歯10Bに隣接する第2の配線領域20B内から巻き付けられ、一部の第2の固定子コイルは、第2の配線領域20Bを超える場合がある。
【0020】
本発明は、2つの隣接する固定子の歯の間にある溝の内部空間を十分に利用して巻線を行って、回転電機のトルク性能を効果的に向上させることができる配線方法を提供する。注意すべきなのは、図1に8つの固定子の歯(4つの第1の固定子の歯10A及び4つの第1の固定子の歯10B)を含む固定子100が示されたが、本発明はこれに限定されず、偶数の固定子の歯を含む固定子の回転電機であれば、何れも本発明で説明される配線方法に適用される。
【0021】
本発明の配線方法は、以下の工程を含む。
【0022】
工程(S1):溝20の第1の配線領域20A内において、固定子100の外径側から固定子100の内径側へ、第1の固定子コイルのm層を時計回りに巻き付け、続いて、同様に第1の配線領域20A内において、第1の固定子コイルのm層に重なり合うように、固定子100の内径側から固定子100の外径側へ、第1の固定子コイルのm+1層を反時計回りに巻き付け、mは奇数である。第1の固定子コイルの現在の層と中心線16との間の最小距離が閾値距離より小さくなるまで、上記方法で工程(S1)を繰り返して行い、そして、この時の第1の固定子コイルの現在の層を第1の固定子コイルのn層として定義し、m≦nである。本発明の実施例において、上記閾値距離は、第1の固定子コイルの線径の0.6倍であるが、本発明はこれに限定されず、閾値距離は、設定された他の長さの数値であってもよい。本発明の実施例において、工程(S1)における第1の固定子コイルの各層の巻数の巻き付け原則は、第1の配線領域20Aを充填するように最大空間の配線を行うことである。
【0023】
工程(S2):溝20内で、コイルを崩壊させないことを原則として、第1の固定子コイルのn+1層を時計回り又は反時計回りに巻き付け続け、一部の第1の固定子コイルは、第1の配線領域20Aを超えるように巻き付けられる可能性がある。工程(S1)では第1の固定子コイルのn層が時計回りに巻き付けられると、工程(S2)では第1の固定子コイルのn+1層を反時計回りに巻き付け、工程(S1)では第1の固定子コイルのn層が反時計回りに巻き付けられると、工程(S2)では第1の固定子コイルのn+1層を時計回りに巻き付ける。本発明の実施例において、上記したコイルを崩壊させないことを原則とする詳細としては、nが奇数であると、第1の固定子コイルのn+1層の巻数は、第1の固定子コイルのn層の巻数から1を引いたものであり、nが偶数であると、第1の固定子コイルのn+1層の巻数は、第1の固定子コイルのn層の巻数と同じである。
【0024】
工程(S3):溝20の第2の配線領域20B内において、固定子100の外径側から固定子100の内径側へ、第2の固定子コイルのm層を時計回りに巻き付け、続いて、同様に第2の配線領域20Bに、第2の固定子コイルのm層に重なり合うように、固定子100の内径側から固定子100の外径側へ、第2の固定子コイルのm+1層を反時計回りに巻き付ける。第2の固定子コイルのn-1層が全て巻き付けられるまで、上記方法で工程(S3)を繰り返して行う。本発明の実施例において、工程(S3)における第2の固定子コイルの各層の巻数の巻き付け原則は、第2の配線領域20Bを充填するように最大空間の配線を行うことである。
【0025】
工程(S4):溝20内で、第2の固定子コイルのn層を時計回り又は反時計回りに巻き付ける。第2の固定子コイルのn層の巻数は、第1の固定子コイルのn層の巻数から2を引いたものである。工程(S3)では第2の固定子コイルのn-1層が時計回りに巻き付けられると、工程(S4)では第2の固定子コイルのn層を反時計回りに巻き付け、工程(S3)では第2の固定子コイルのn-1層が反時計回りに巻き付けられると、工程(S4)では第2の固定子コイルのn層を時計回りに巻き付ける。
【0026】
工程(S5):第2の配線領域20Bを充填するように、溝20内で、第2の固定子コイルのn層の後の層を時計回り又は反時計回りに巻き付け続け、一部の第2の固定子コイルは、第2の配線領域20Bを超えるように巻き付けられる可能性があり、第2の固定子コイルの現在の層における固定子100の外径側に隣接する巻が、第2の配線領域20Bにおける中心線16に最も近い端部位置に最も近接するようになるまで行い、この時の第2の固定子コイルの現在の層を第2の固定子コイルの最終層として定義する。工程(S4)では第2の固定子コイルのn層が時計回りに巻き付けられると、工程(S5)では第2の固定子コイルのn+1層を反時計回りに巻き付け、且つ第2の固定子コイルのn+2層を時計回りに巻き付け、このように類推し、工程(S4)では第2の固定子コイルのn層が反時計回りに巻き付けられると、工程(S5)では第2の固定子コイルのn+1層を時計回りに巻き付け、且つ第2の固定子コイルのn+2層を反時計回りに巻き付け、このように類推する。本発明の実施例において、第2の固定子コイルのn層の後の層(最終層を含まない)は、奇数の層であると、その巻数がその前の層の巻数から1を引いたものであり、第2の固定子コイルのn層の後の層(最終層を含まない)は、偶数の層であると、その巻数がその前の層の巻数から2を引いたものである。
【0027】
工程(S6):第2の固定子コイルの最終層が時計回りに巻き付けられると、第2の固定子コイルの最終層の最終巻は、中心線16に最も近く且つ中心線16を超えない位置で終了し、第2の固定子コイルの最終層が反時計回りに巻き付けられると、第2の固定子コイルの最終層の巻数は、その前の層の巻数から2を引いたものである。
【0028】
工程(S7):第1の配線領域20A及び/又は第2の配線領域20Bを含む溝20を充填するように、溝20内で、コイルを崩壊させないことを原則として、第1の固定子コイルのn+1層の後の層を時計回り又は反時計回りに巻き付け続ける。工程(S2)では第1の固定子コイルのn+1層が時計回りに巻き付けられると、工程(S7)では第1の固定子コイルのn+2層を反時計回りに巻き付け、且つ第1の固定子コイルのn+3層を時計回りに巻き付け、このように類推し、工程(S2)では第1の固定子コイルのn+1層が反時計回りに巻き付けられると、工程(S7)では第1の固定子コイルのn+2層を時計回りに巻き付け、且つ第1の固定子コイルのn+3層を反時計回りに巻き付け、このように類推する。本発明の実施例において、第1の固定子コイルで第1の配線領域20A及び/又は第2の配線領域20Bを含む溝20の余剰空間を埋めるまで、工程(S7)を行い、この時の第1の固定子コイルの現在の層を第1の固定子コイルの最終層として定義する。
【0029】
また、本発明の配線方法は、工程(S7)の後に、以下のような工程(S8)を選択的に行ってもよい。第1の固定子コイルの最終層を全て巻き付けた後、第1の配線領域20A及び第2の配線領域20Bにまだ十分な余剰空間がある場合、第1の配線領域20A及び第2の配線領域20Bの余剰空間を埋めるように、第2の固定子コイルのn+1層から第2の固定子コイルの最終層までの少なくとも1層の巻数を増やす。
【0030】
以下、図2a~図2dにより本発明の配線方法を説明する。図2a~図2dは、本発明の第1の実施例による局所的な固定子100のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
【0031】
本発明の第1の実施例による配線方法において、工程(S1)では、図2aに示すように、溝20の第1の配線領域20A内において、固定子100の外径側から固定子100の内径側へ、第1の固定子コイル30Aの第1層を時計回りに巻き付け、続いて、同様に第1の配線領域20A内において、第1の固定子コイル30Aの第1層に重なり合うように、固定子100の内径側から固定子100の外径側へ、第1の固定子コイル30Aの第2層を反時計回りに巻き付け、第1の固定子コイル30Aの第3層と中心線16との間の最小距離が閾値距離(第1の固定子コイル30Aの線径の0.6倍)より小さくなるまで、上記方法で第1の固定子コイル30Aを繰り返して巻き付ける。この時の第1の固定子コイル30Aの第3層を第1の固定子コイル30Aのn層として定義し、即ち、n=3とする。図2aに示すように、矢印1、2、3の順で第1の固定子コイル30Aの第1層から第3層までを巻き付ける。図2aに示すように、工程(S1)における第1の固定子コイル30Aの第1層から第3層までの巻数の巻き付け原則は、第1の配線領域20Aを充填するように最大空間の配線を行うことであるため、第1の固定子コイル30Aの第1層及び第2層の巻数は13であり、第1の固定子コイル30Aの第3層の巻数は14である。
【0032】
本発明の第1の実施例による配線方法において、工程(S1)では、図2aに示すように、溝20内で、コイルを崩壊させないことを原則として、第1の固定子コイル30Aの第4層を巻き付け続ける。図2aに示すように、矢印4の順で第1の固定子コイル30Aの第4層を巻き付け続け、一部の第1の固定子コイル30Aは、第1の配線領域20Aを超えるように巻き付けられる場合がある。n=3が奇数であるため、第1の固定子コイル30Aの第4層(n+1層)の巻数は、第1の固定子コイル30Aの第3層(n層)の巻数(即ち、14)から1を引いたものであるため、第1の固定子コイル30Aの第4層の巻数は13である。
【0033】
本発明の第1の実施例による配線方法において、工程(S3)では、図2bに示すように、溝20の第2の配線領域20B内において、固定子100の外径側から固定子100の内径側へ、第2の固定子コイル30Bの第1層を時計回りに巻き付け、続いて、同様に第2の配線領域20B内において、第2の固定子コイル30Bの第1層に重なり合うように、固定子100の内径側から固定子100の外径側へ、第2の固定子コイル30Bの第2層を反時計回りに巻き付ける。第2の固定子コイル30Bの第2層(n-1層)が全て巻き付けられるまで、上記方法で工程(S3)を繰り返して行う。図2bに示すように、矢印1、2の順で第2の固定子コイル30Bの第1層から第2層までを巻き付ける。図2bに示すように、工程(S3)における第2の固定子コイル30Bの第1層から第2層までの巻数の巻き付け原則は、第2の配線領域20Bを充填するように最大空間の配線を行うことであるため、第2の固定子コイル30Bの第1層及び第2層の巻数は13である。
【0034】
本発明の第1の実施例による配線方法において、工程(S4)では、図2bに示すように、溝20内で、第2の固定子コイル30Bの第3層(n層)を巻き付け続ける。図2bに示すように、矢印3の順で第2の固定子コイル30Bの第3層を巻き付け続ける。第2の固定子コイル30Bの第3層(n層)の巻数は、第1の固定子コイル30Aの第3層(n層)の巻数(即ち、14)から2を引いたものであるため、第2の固定子コイル30Bの第3層の巻数は12である。
【0035】
本発明の第1の実施例による配線方法において、工程(S5)では、図2cに示すように、第2の配線領域20Bを充填するように、溝20内で、第2の固定子コイル30Bの第3層(n層)の後の層を巻き付け続け、一部の第2の固定子コイル30Bは、第2の配線領域20Bを超えるように巻き付けられる場合があり、第2の固定子コイル30Bの第7層における固定子100の外径側に隣接する巻が、第2の配線領域20Bにおける中心線16に最も近い端部位置に最も近接するようになるまで行い、この時の第2の固定子コイル30Bの第7層を第2の固定子コイル30Bの最終層として定義する。図2cに示すように、矢印1、2、3、4の順で第2の固定子コイル30Bの第4層から第7層までを巻き付ける。図2cに示すように、第2の固定子コイル30Bの第3層(n層)の後の層(最終層を含まない)は、偶数の層(即ち、第2の固定子コイル30Bの第4層及び第6層)であると、その巻数がその前の層の巻数から2を引いたものであり、第2の固定子コイル30Bの第3層(n層)の後の層(最終層を含まない)は、奇数の層(即ち、第5層)であると、その巻数がその前の層の巻数から1を引いたものである。よって、第2の固定子コイル30Bの第4層の巻数は、第2の固定子コイル30Bの第3層の巻数(即ち、12)から2を引いたものであり、即ち、第2の固定子コイル30Bの第4層の巻数は10であり、第2の固定子コイル30Bの第5層の巻数は、第2の固定子コイル30Bの第4層の巻数(即ち、10)から1を引いたものであり、即ち、第2の固定子コイル30Bの第5層の巻数は9であり、第2の固定子コイル30Bの第6層の巻数は、第2の固定子コイル30Bの第5層の巻数(即ち、9)から2を引いたものであり、即ち、第2の固定子コイル30Bの第6層の巻数は7である。
【0036】
本発明の第1の実施例による配線方法において、工程(S6)では、図2cに示すように、第2の固定子コイル30Bの第7層(最終層)が時計回りに巻き付けられるため、第2の固定子コイル30Bの第7層(最終層)の最終巻は、中心線16に最も近く且つ中心線16を超えない位置で終了する。よって、第2の固定子コイル30Bの第7層(最終層)の巻数は1である。
【0037】
本発明の第1の実施例による配線方法において、工程(S7)では、図2dに示すように、第1の固定子コイル30Aで溝20の余剰空間を埋めるまで、溝20を充填するように、溝20内で、コイルを崩壊させないことを原則として、第1の固定子コイル30Aの第4層(n+1層)の後の層を巻き付け続け、この時の第1の固定子コイル30Aの第7層を第1の固定子コイル30Aの最終層として定義する。図2dに示すように、矢印1、2、3の順で第1の固定子コイル30Aの第5層から第7層までを巻き付け続ける。よって、図2dに示すように、第1の固定子コイル30Aの第5層、第6層及び第7層の巻数は、それぞれ5、3及び2である。
【0038】
以下、図3a~図3dにより本発明の配線方法を説明する。図3a~図3dは、本発明の第2の実施例による局所的な固定子100のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
【0039】
本発明の第2の実施例による配線方法において、工程(S1)では、図3aに示すように、溝20の第1の配線領域20A内において、固定子100の外径側から固定子100の内径側へ、第1の固定子コイル30Aの第1層を時計回りに巻き付け、続いて、同様に第1の配線領域20A内において、第1の固定子コイル30Aの第1層に重なり合うように、固定子100の内径側から固定子100の外径側へ、第1の固定子コイル30Aの第2層を反時計回りに巻き付け、第1の固定子コイル30Aの第4層と中心線16との間の最小距離が閾値距離(第1の固定子コイル30Aの線径の0.6倍)より小さくなるまで、上記方法で第1の固定子コイル30Aを繰り返して巻き付ける。この時の第1の固定子コイル30Aの第4層を第1の固定子コイル30Aのn層として定義し、即ち、n=4とする。図3aに示すように、矢印1、2、3、4の順で第1の固定子コイル30Aの第1層から第4層までを巻き付ける。図3aに示すように、工程(S1)における第1の固定子コイル30Aの第1層から第4層までの巻数の巻き付け原則は、第1の配線領域20Aを充填するように最大空間の配線を行うことであるため、第1の固定子コイル30Aの第1層及び第2層の巻数は8であり、第1の固定子コイル30Aの第3層及び第4層の巻数は9である。
【0040】
本発明の第2の実施例による配線方法において、工程(S2)では、図3aに示すように、溝20内で、コイルを崩壊させないことを原則として、第1の固定子コイル30Aの第5層(n+1層)を巻き付け続ける。図3aに示すように、矢印5の順で第1の固定子コイル30Aの第5層を巻き付け続け、一部の第1の固定子コイル30Aは、第1の配線領域20Aを超えるように巻き付けられる場合がある。n=4が偶数であるため、第1の固定子コイル30Aの第5層(n+1層)の巻数は、第1の固定子コイル30Aの第4層(n層)の巻数(即ち、9)と同じであるため、第1の固定子コイル30Aの第5層の巻数は9である。
【0041】
本発明の第2の実施例による配線方法において、工程(S3)では、図3bに示すように、溝20の第2の配線領域20B内において、固定子100の外径側から固定子100の内径側へ、第2の固定子コイル30Bの第1層を時計回りに巻き付け、続いて、同様に第2の配線領域20B内において、第2の固定子コイル30Bの第1層に重なり合うように、固定子100の内径側から固定子100の外径側へ、第2の固定子コイル30Bの第2層を反時計回りに巻き付ける。第2の固定子コイル30Bの第3層(n-1層)が全て巻き付けられるまで、上記方法で工程(S3)を繰り返して行う。図3bに示すように、矢印1、2、3の順で第2の固定子コイル30Bの第1層から第3層までを巻き付ける。図3bに示すように、工程(S3)の第2の固定子コイル30Bの第1層から第3層までの巻数の巻き付け原則は、第2の配線領域20Bを充填するように最大空間の配線を行うことであるため、第2の固定子コイル30Bの第1層及び第2層の巻数は8であり、第2の固定子コイル30Bの第3層の巻数は9である。
【0042】
本発明の第2の実施例による配線方法において、工程(S4)では、図3bに示すように、溝20内で、第2の固定子コイル30Bの第4層(n層)を巻き付け続ける。図3bに示すように、矢印4の順で第2の固定子コイル30Bの第4層を巻き付け続ける。第2の固定子コイル30Bの第4層(n層)の巻数は、第1の固定子コイル30Aの第4層(n層)の巻数(即ち、9)から2を引いたものであるため、第2の固定子コイル30Bの第4層の巻数は7である。
【0043】
本発明の第2の実施例による配線方法において、工程(S5)では、図3cに示すように、第2の配線領域20Bを充填するように、溝20内で、第2の固定子コイル30Bの第4層(n層)の後の層を巻き付け続け、第2の固定子コイル30Bの第7層における固定子100の外径側に隣接する巻が、第2の配線領域20Bにおける中心線16に最も近い端部位置に最も近接するようになるまで行い、この時の第2の固定子コイル30Bの第7層を第2の固定子コイル30Bの最終層として定義する。図3cに示すように、矢印1、2、3の順で第2の固定子コイル30Bの第5層から第7層までを巻き付ける。図3cに示すように、第2の固定子コイル30Bの第4層(n層)の後の層(最終層を含まない)は、奇数の層(即ち第5層)であると、その巻数がその前の層の巻数から1を引いたものであり、第2の固定子コイル30Bの第4層(n層)の後の層(最終層を含まない)は、偶数の層(即ち、第2の固定子コイル30Bの第6層)であると、その巻数がその前の層の巻数から2を引いたものである。よって、第2の固定子コイル30Bの第5層の巻数は、第2の固定子コイル30Bの第4層の巻数(即ち、7)から1を引いたものであり、即ち、第2の固定子コイル30Bの第5層の巻数は6であり、第2の固定子コイル30Bの第6層の巻数は、第2の固定子コイル30Bの第5層の巻数(即ち、6)から2を引いたものであり、即ち、第2の固定子コイル30Bの第6層の巻数は4である。
【0044】
本発明の第2の実施例による配線方法において、工程(S6)では、図3cに示すように、第2の固定子コイル30Bの第7層(最終層)が時計回りに巻き付けられるため、第2の固定子コイル30Bの第7層(最終層)の最終巻は、中心線16に最も近く且つ中心線16を超えない位置で終了する。よって、第2の固定子コイル30Bの第7層(最終層)の巻数は2である。
【0045】
本発明の第2の実施例による配線方法において、工程(S7)では、図3dに示すように、溝20を充填するように、溝20内で、コイルを崩壊させないことを原則として、第1の固定子コイル30Aの第5層(n+1層)の後の層を巻き付け続け、第1の固定子コイル30Aで溝20の余剰空間が埋まるようになるまで行い、この時の第1の固定子コイル30Aの第7層を第1の固定子コイル30Aの最終層として定義する。図3dに示すように、矢印1、2の順で第1の固定子コイル30Aの第6層から第7層までを巻き付け続ける。よって、図3dに示すように、第1の固定子コイル30Aの第6層及び第7層の巻数は、それぞれ8及び3である。
【0046】
以下、図4a~図4eにより本発明の配線方法を説明する。図4a~図4eは、本発明の第3の実施例による局所的な固定子100のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
【0047】
本発明の第3の実施例による配線方法において、工程(S1)では、図4aに示すように、溝20の第1の配線領域20A内において、固定子100の外径側から固定子100の内径側へ、第1の固定子コイル30Aの第1層を時計回りに巻き付け、続いて、同様に第1の配線領域20A内において、第1の固定子コイル30Aの第1層に重なり合うように、固定子100の内径側から固定子100の外径側へ、第1の固定子コイル30Aの第2層を反時計回りに巻き付け、第1の固定子コイル30Aの第5層と中心線16との間の最小距離が閾値距離(第1の固定子コイル30Aの線径の0.6倍)より小さくなるまで、上記方法で第1の固定子コイル30Aを繰り返して巻き付ける。この時の第1の固定子コイル30Aの第5層を第1の固定子コイル30Aのn層として定義し、即ち、n=5とする。図4aに示すように、矢印1、2、3、4、5の順で第1の固定子コイル30Aの第1層から第5層までを巻き付ける。図4aに示すように、工程(S1)の第1の固定子コイル30Aの第1層から第5層までの巻数の巻き付け原則は、第1の配線領域20Aを充填するように最大空間の配線を行うことであるため、第1の固定子コイル30Aの第1層及び第2層の巻数は8であり、第1の固定子コイル30Aの第3層、第4層及び第5層の巻数は9である。
【0048】
本発明の第3の実施例による配線方法において、工程(S2)では、図4aに示すように、溝20内で、コイルを崩壊させないことを原則として、第1の固定子コイル30Aの第6層(n+1層)を巻き付け続け、一部の第1の固定子コイル30Aは、第1の配線領域20Aを超えるように巻き付けられる場合がある。図4aに示すように、矢印6の順で第1の固定子コイル30Aの第6層を巻き付け続ける。n=5が奇数であるため、第1の固定子コイル30Aの第6層(n+1層)の巻数は、第1の固定子コイル30Aの第5層(n層)の巻数(即ち、9)から1を引いたものであるため、第1の固定子コイル30Aの第6層の巻数は8である。
【0049】
本発明の第3の実施例による配線方法において、工程(S3)では、図4bに示すように、溝20の第2の配線領域20B内において、固定子100の外径側から固定子100の内径側へ、第2の固定子コイル30Bの第1層を時計回りに巻き付け、続いて、同様に第2の配線領域20B内において、第2の固定子コイル30Bの第1層に重なり合うように、固定子100の内径側から固定子100の外径側へ、第2の固定子コイル30Bの第2層を反時計回りに巻き付ける。第2の固定子コイルの第4層(n-1層)が全て巻き付けられるまで、上記方法で工程(S3)を繰り返して行う。図4bに示すように、矢印1、2、3、4の順で第2の固定子コイル30Bの第1層から第4層までを巻き付ける。図4bに示すように、工程(S3)における第2の固定子コイル30Bの第1層から第4層までの巻数の巻き付け原則は、第2の配線領域20Bを充填するように最大空間の配線を行うことであるため、第2の固定子コイル30Bの第1層及び第2層の巻数は8であり、第2の固定子コイル30Bの第3層及び第4層の巻数は9である。
【0050】
本発明の第3の実施例による配線方法において、工程(S4)では、図4bに示すように、溝20内で、第2の固定子コイル30Bの第5層(n層)を巻き付け続ける。図4bに示すように、矢印5の順で第2の固定子コイル30Bの第5層を巻き付け続ける。第2の固定子コイル30Bの第5層(n層)の巻数は、第1の固定子コイル30Aの第5層(n層)の巻数(即ち、9)から2を引いたものであるため、第2の固定子コイル30Bの第5層の巻数は7である。
【0051】
本発明の第3の実施例による配線方法において、工程(S5)では、図4cに示すように、第2の配線領域20Bを充填するように、溝20内で、第2の固定子コイル30Bの第5層の後の層(n層)を巻き付け、一部の第2の固定子コイル30Bは、第2の配線領域20Bを超えるように巻き付けられる場合があり、第2の固定子コイル30Bの第8層における固定子100の外径側に隣接する巻が、第2の配線領域20Bにおける中心線16に最も近い端部位置に最も近接するようになるまで行い、この時の第2の固定子コイル30Bの第8層を第2の固定子コイル30Bの最終層として定義する。図4cに示すように、矢印1、2、3の順で第2の固定子コイル30Bの第6層から第8層までを巻き付ける。図4cに示すように、第2の固定子コイル30Bの第5層(n層)の後の層(最終層を含まない)は、偶数の層(即ち、第2の固定子コイル30Bの第6層)であると、その巻数がその前の層の巻数から2を引いたものであり、第2の固定子コイル30Bの第5層(n層)の後の層(最終層を含まない)は、奇数の層(即ち、第7層)であると、その巻数がその前の層の巻数から1を引いたものである。よって、第2の固定子コイル30Bの第6層の巻数は、第2の固定子コイル30Bの第5層の巻数(即ち、7)から2を引いたものであり、即ち、第2の固定子コイル30Bの第6層の巻数は5であり、第2の固定子コイル30Bの第7層の巻数は、第2の固定子コイル30Bの第6層の巻数(即ち、5)から1を引いたものであり、即ち、第2の固定子コイル30Bの第7層の巻数は4である。
【0052】
本発明の第3の実施例による配線方法において、工程(S6)では、図4cに示すように、第2の固定子コイル30Bの第8層(最終層)が反時計回りに巻き付けられるため、第2の固定子コイル30Bの第8層(最終層)の巻数は、その前の層(即ち、第2の固定子コイル30Bの第7層)の巻数(即ち、4)から2を引いたものであるため、第2の固定子コイル30Bの第8層の巻数は2である。
【0053】
本発明の第3の実施例による配線方法において、工程(S7)では、図4dに示すように、第1の配線領域20Aを充填するように、溝20内で、コイルを崩壊させないことを原則として、第1の固定子コイル30Aの第6層(n+1層)の後の層を巻き付け続け、第1の固定子コイル30Aで第1の配線領域20Aの余剰空間を埋めるまで行い、この時の第1の固定子コイル30Aの第7層は、第1の固定子コイル30Aの最終層として定義する。図4dに示すように、矢印1の順で第1の固定子コイル30Aの第7層を巻き付け続ける。よって、図4dに示すように、第1の固定子コイル30Aの第7層の巻数は1である。
【0054】
本発明の第3の実施例による配線方法において、工程(S8)では、図4eに示すように、第1の固定子コイル30Aの第7層(最終層)が全て巻き付けられた後、第1の配線領域20A及び第2の配線領域20Bに、まだ十分な余剰空間(線径を満たす必要がある)がある場合、第1の配線領域20A及び第2の配線領域20Bの余剰空間を埋めるように、第2の固定子コイル30Bの第6層(n+1層)から第2の固定子コイルの第8層(最終層)までの少なくとも1層の巻数を増やしてから、巻線を行う。よって、図4eに示すように、第1の配線領域20A及び第2の配線領域20Bの余剰空間を埋めるように、第2の固定子コイル30Bの第6層、第7層及び第8層の巻数を1つずつ増やす(図4eに示されるダーク巻線)。言い換えると、第2の固定子コイル30Bの第6層、第7層及び第8層の巻数をそれぞれ6、5及び3とする。
【0055】
以下、図5a~図5dにより本発明の配線方法を説明する。図5a~図5dは、本発明の第4の実施例による局所的な固定子100のコイル巻き付けフローを示す模式図である。
【0056】
本発明の実施例4による配線方法において、工程(S1)では、図5aに示すように、溝20の第1の配線領域20A内において、固定子100の外径側から固定子100の内径側へ、第1の固定子コイル30Aの第1層を時計回りに巻き付け、続いて、同様に第1の配線領域20A内において、第1の固定子コイル30Aの第1層に重なり合うように、固定子100の内径側から固定子100の外径側へ、第1の固定子コイル30Aの第2層を反時計回りに巻き付け、第1の固定子コイル30Aの第6層と中心線16との間の最小距離が閾値距離(第1の固定子コイル30Aの線径の0.6倍)より小さくなるまで、上記方法で第1の固定子コイル30Aを繰り返して巻き付ける。この時の第1の固定子コイル30Aの第6層を第1の固定子コイル30Aのn層として定義し、即ち、n=6とする。図5aに示すように、矢印1、2、3、4、5、6の順で第1の固定子コイル30Aの第1層から第6層までを巻き付ける。図5aに示すように、工程(S1)における第1の固定子コイル30Aの第1層から第6層までの巻数の巻き付け原則は、第1の配線領域20Aを充填するように最大空間の配線を行うことであるため、第1の固定子コイル30Aの第1層及び第2層の巻数は5であり、第1の固定子コイル30Aの第3層及び第4層の巻数は6であり、第1の固定子コイル30Aの第5層及び第6層の巻数は7である。
【0057】
本発明の実施例4による配線方法において、工程(S2)では、図5aに示すように、溝20内で、コイルを崩壊させないことを原則として、第1の固定子コイル30Aの第7層(n+1層)を巻き付け続ける。図5aに示すように、矢印7の順で第1の固定子コイル30Aの第7層を巻き付け、一部の第1の固定子コイル30Aは、第1の配線領域20Aを超えるように巻き付けられる場合がある。n=6が偶数であるため、第1の固定子コイル30Aの第7層(n+1層)の巻数は、第1の固定子コイル30Aの第6層(n層)の巻数(即ち、7)と同じであるため、第1の固定子コイル30Aの第7層の巻数は7である。
【0058】
本発明の実施例4による配線方法において、工程(S3)では、図5bに示すように、溝20の第2の配線領域20B内において、固定子100の外径側から固定子100の内径側へ、第2の固定子コイル30Bの第1層を時計回りに巻き付け、続いて、同様に第2の配線領域20B内において、第2の固定子コイル30Bの第1層に重なり合うように、固定子100の内径側から固定子100の外径側へ、第2の固定子コイル30Bの第2層を反時計回りに巻き付ける。第2の固定子コイルの第5層(n-1層)が全て巻き付けられるまで、上記方法で工程(S3)を繰り返して行う。図5bに示すように、矢印1、2、3、4、5の順で第2の固定子コイル30Bの第1層から第5層までを巻き付ける。図5bに示すように、工程(S3)における第2の固定子コイル30Bの第1層から第5層までの巻数の巻き付け原則は、第2の配線領域20Bを充填するように最大空間の配線を行うことであるため、第2の固定子コイル30Bの第1層及び第2層の巻数は5であり、第2の固定子コイル30Bの第3層及び第4層の巻数は6であり、第2の固定子コイル30Bの第5層の巻数は7である。
【0059】
本発明の実施例4による配線方法において、工程(S4)では、図5bに示すように、溝20内で、第2の固定子コイル30Bの第6層(n層)を巻き付け続ける。図5bに示すように、矢印6の順で第2の固定子コイル30Bの第6層を巻き付け続ける。第2の固定子コイル30Bの第6層(n層)の巻数は、第1の固定子コイル30Aの第6層(n層)の巻数(即ち、7)から2を引いたものであるため、第2の固定子コイル30Bの第6層の巻数は5である。
【0060】
本発明の実施例4による配線方法において、工程(S5)では、図5cに示すように、第2の配線領域20Bを充填するように、溝20内で、第2の固定子コイル30Bの第6層(n層)の後の層を巻き付け続け、一部の第2の固定子コイル30Bは、第2の配線領域20Bを超えるように巻き付けられる場合があり、第2の固定子コイル30Bの第8層における固定子100の外径側に隣接する巻が、第2の配線領域20Bにおける中心線16に最も近い端部位置に最も近接するようになるまで行い、この時の第2の固定子コイル30Bの第8層を第2の固定子コイル30Bの最終層として定義する。図5cに示すように、矢印1、2の順で第2の固定子コイル30Bの第7層から第8層までを巻き付け続ける。図5cに示すように、第2の固定子コイル30Bの第6層(n層)の後の層(最終層を含まない)は、奇数の層(即ち第7層)であると、その巻数がその前の層の巻数から1を引いたものである。よって、第2の固定子コイル30Bの第7層の巻数は、第2の固定子コイル30Bの第6層の巻数(即ち、5)から1を引いたものであるため、第2の固定子コイル30Bの第7層の巻数は4である。
【0061】
本発明の実施例4による配線方法において、工程(S6)では、図5cに示すように、第2の固定子コイル30Bの第8層(最終層)が反時計回りに巻き付けられるため、第2の固定子コイルの第8層(最終層)の巻数は、その前の層(即ち、第2の固定子コイルの第7層)の巻数(即ち、4)から2を引いたものであり、よって、第2の固定子コイル30Bの第8層の巻数は2である。
【0062】
本発明の実施例4による配線方法において、工程(S7)では、図5dに示すように、溝20を充填するように、溝20内で、コイルを崩壊させないことを原則として、第1の固定子コイル30Aの第7層(n+1層)の後の層を巻き付け続け、第1の固定子コイル30Aで溝20の余剰空間を埋めるまで行い、この時の第1の固定子コイル30Aの第8層を第1の固定子コイル30Aの最終層として定義する。図5dに示すように、矢印1の順で第1の固定子コイル30Aの第8層を巻き付け続ける。よって、図5dに示すように、第1の固定子コイル30Aの第8層の巻数は1である。
【0063】
回転電機の固定子の巻線の巻数が高いほど、回転電機のトルク性能を更に向上させることができ、且つ、巻線の空間使用率が大きいほど、良い性能の回転電機を獲得できることを表す。上記実施例によれば、本発明は、第1の配線領域の巻線と第2の配線領域の巻線とが中心線に対して対称ではなく、且つ巻数が一致しないため、巻線空間を十分に利用することができ、占積率を向上させるとともに、回転電機のトルク性能を明らかに向上させることができる回転電機の固定子配線方法を提供する。
【0064】
以上で複数の実施例の特徴を叙述したため、当業者は本発明の態様をより良く理解することができる。当業者は、本発明を容易に他のプロセス及び構造を設計又は修正する基礎として、ここで記載されるこれらの実施例と同じ目標及び/又は同じメリットを達成することができることを理解すべきである。当業者は、これらの同等の構造が本発明の精神と範囲から逸脱せず、且つ本発明の精神と範囲から逸脱せずに様々な変形、置換及び変更を加えることができることも理解すべきである。
【符号の説明】
【0065】
100 回転電機の固定子
10A 第1の固定子の歯
10B 第2の固定子の歯
16 中心線
20 溝
20A 第1の配線領域
20B 第2の配線領域
30A 第1の固定子コイル
30B 第2の固定子コイル
1、2、3、4、5、6、7 矢印
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図5a
図5b
図5c
図5d