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特許7187613可変傾斜上腕骨ヘッドコンポーネント付きの肩プロテーゼ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】可変傾斜上腕骨ヘッドコンポーネント付きの肩プロテーゼ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/40 20060101AFI20221205BHJP
【FI】
A61F2/40
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021095746
(22)【出願日】2021-06-08
(62)【分割の表示】P 2020033495の分割
【原出願日】2014-03-04
(65)【公開番号】P2021175506
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】61/774,969
(32)【優先日】2013-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510264187
【氏名又は名称】メイヨ フォンデーシヨン フォー メディカル エジュケーション アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】スパーリング、ジョン、ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】トリート、アーロン、シー
(72)【発明者】
【氏名】クライン、ブルース、アール
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0078375(US,A1)
【文献】特開2004-121849(JP,A)
【文献】特表2003-517337(JP,A)
【文献】特開2002-078724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/28 - 2/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節プロテーゼであって、
対象者の関節の第1の骨の中に埋め込まれるような寸法にされているステムと、
ヘッド組立体と、を備え、
前記ステムは、前記ヘッド組立体を受けるように構成された開口部を含み、
前記ヘッド組立体は、
前記関節の第2の骨の生体関節面または人工関節面との関節接合のための寸法にされている外面と、前記外面の反対側にあるソケットと、を有するプロテーゼヘッドと、
第1端部および第2端部を有する取り付け用スタッドと、を有し、
前記第2端部は、前記開口部の中への挿入のための寸法にされており、
前記第1端部は、前記ソケットの中への嵌め込みのための寸法にされ、これにより前記第1端部と前記ソケットとの間に締まり嵌めを形成するよう構成され、
前記第1端部は、前記第1端部と前記ソケットとの間の前記締まり締めを補強するよう構成された、変更された面を含み、
前記取り付け用スタッドの前記第1端部及び前記ソケットは、前記取り付け用スタッドに対する前記プロテーゼヘッドの姿勢を、前記開口部内の前記取り付け用スタッドの回転位置とは無関係に、傾斜角の範囲にわたって調整するよう構成され、
前記傾斜角の範囲内の選択された傾斜角は、前記関節プロテーゼが前記対象者に埋め込まれた後の状態において、ねじ部品を用いずに、前記取り付け用スタッドの前記第1端部と前記ソケットとの間の前記締まり嵌めによって固定されるものである
ことを特徴とする関節プロテーゼ。
【請求項2】
前記取り付け用スタッドの前記第2端部は、前記ステムの前記開口部の中への嵌め込みのための寸法にされ、これにより前記第2端部と前記ステムとの間に締まり嵌めを形成するよう構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の関節プロテーゼ。
【請求項3】
前記取り付け用スタッドの前記第1端部は、球面を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の関節プロテーゼ。
【請求項4】
前記取り付け用スタッドの前記第1端部の球面は、前記取り付け用スタッドの前記第1端部と前記ソケットとの間に締まり嵌めを形成する前に、前記ステムに関して前記プロテーゼヘッドの傾斜及び/又は転位を設定するために前記ソケット内で回転可能であるように構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の関節プロテーゼ。
【請求項5】
前記取り付け用スタッドの前記第2端部は、前記取り付け用スタッドの前記第2端部の中間セクションから最も外側のセクションまで内側に向かって先細になる外面を含む
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の関節プロテーゼ。
【請求項6】
前記取り付け用スタッドは、前記取り付け用スタッドの前記第1端部の前記球面と前記取り付け用スタッドの前記第2端部の前記外面との接合点又はその近傍に円周基準指標を含む
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の関節プロテーゼ。
【請求項7】
前記取り付け用スタッドの前記第2端部の縦軸は、前記締まり嵌めが前記第1端部と前記ソケットとの間に形成されたとき、前記プロテーゼヘッドの軸に対して斜角を形成することを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の関節プロテーゼ。
【請求項8】
前記ヘッド組立体の前記ソケットは、前記ヘッド組立体の中心縦軸に関してオフセットしている
ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の関節プロテーゼ。
【請求項9】
前記ソケットの前記オフセットは、前記ソケットを有するアダプタと前記プロテーゼヘッドに設けられた陥没部との間に締まり嵌めを形成する前に、前記ステムに対する前記プロテーゼヘッドの径方向のオフセットをもたらすことを特徴とする請求項8に記載の関節プロテーゼ。
【請求項10】
前記プロテーゼヘッドは、前記アダプタ上の第2の基準マークとの位置合わせのための少なくとも1つの第1の基準マーキングを含む
ことを特徴とする請求項に記載の関節プロテーゼ。
【請求項11】
前記第1の骨は、上腕骨であり、
前記第2の骨は、肩甲骨である
ことを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の関節プロテーゼ。
【請求項12】
前記第1の骨は、肩甲骨であり、
前記第2の骨は、上腕骨である
ことを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の関節プロテーゼ。
【請求項13】
前記取り付け用スタッドの前記第1端部と前記ソケットは、前記ステム上の前記プロテーゼヘッドの転位角が転位角の範囲内の選択された転位角を含むよう、前記プロテーゼヘッドの前記取り付け用スタッドに対する姿勢を調整するよう構成されている
ことを特徴とする請求項1~12の何れか一項に記載の関節プロテーゼ。
【請求項14】
前記取り付け用スタッドの前記第1端部と前記ソケットとの間の締まり嵌めにより、前記プロテーゼヘッドが前記選択された傾斜角及び前記選択された転位角に保持される
ことを特徴とする請求項13に記載の関節プロテーゼ。
【請求項15】
前記取り付け用スタッドの前記第1端部は、前記第1端部と前記ソケットとの間の締まり嵌めを補強するよう構成された、変更された形状を備える
ことを特徴とする請求項1~14の何れか一項に記載の関節プロテーゼ。
【請求項16】
前記変更された球面は粗面を備える
ことを特徴とする請求項15に記載の関節プロテーゼ。
【請求項17】
前記変更された球面は機械加工線を備える
ことを特徴とする請求項15に記載の関節プロテーゼ。
【請求項18】
前記変更された球面は、前記ソケットの対向面と係合するよう構成された構造を備えることを特徴とする請求項15に記載の関節プロテーゼ。
【請求項19】
前記ソケットは、前記取り付け用スタッドの前記第1端部と前記ソケットの締まり嵌めを補強するよう構成された、変更された面を備える
ことを特徴とする請求項1~18の何れか一項に記載の関節プロテーゼ。
【請求項20】
前記変更された面は粗面を備える
ことを特徴とする請求項19に記載の関節プロテーゼ。
【請求項21】
前記変更された面は機械加工線を備える
ことを特徴とする請求項19に記載の関節プロテーゼ。
【請求項22】
前記変更された面は、前記取り付け用スタッドの前記第1端部の反対面と係合するよう構成された構造を備える
ことを特徴とする請求項19に記載の関節プロテーゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2013年3月8日付けで出願された米国特許出願第61/774,969号に基づく優先権を主張する。
【0002】
<米国連邦政府支援研究に関する陳述>
該当なし
【0003】
本発明は、肩関節形成のための上腕骨ヘッドコンポーネント、肩用関節窩球、肘用橈骨頭、または股関節形成のための大腿骨頭、の可変傾斜および/または転位(version)のためのプロテーゼおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
肩関節の置換のための様々なプロテーゼが知られている。一例の肩プロテーゼにおいて、上腕骨の上部は、(i)上腕骨の内部に形成された内腔の中へ延びるステム、すなわち、クリートと、(ii)ステムに連結されたほぼ半球状ヘッド部と、を含む上腕骨コンポーネントによって置換される。上腕骨コンポーネントの半球状ヘッドは、肩甲骨の関節窩の内部に取り付けられた関節窩コンポーネントの相補的な凹状セクションと関節接合する。この種の肩プロテーゼは、「基本(primary)」または「全(total)」プロテーゼと呼ばれることがある。また、半関節形成としばしば呼ばれる他のプロテーゼの例においては、上腕骨コンポーネントの半球状ヘッドは、生体関節窩と関節接合する。また、「逆(reverse)」または「反転(inverted)」プロテーゼとしばしば呼ばれる別の肩プロテーゼの例において、関節窩コンポーネントは、上腕骨コンポーネントのヘッドの相補的な凹状セクションと関節接合する凸状セクションを含む。
【0005】
肩関節形成において上腕骨コンポーネントを可変傾斜にする重要な理論的かつ実際的な必要性が示されている。このことは、肩関節形成における市場で強く受け入れられ、かつ、この特徴が明らかに要求されていることで示されている。肘関節形成および股関節形成は、可変調整に対する同様の必要性を共有している。さらに、肩、肘、および股関節形成において患者の固有器具に向けた将来動向がある。可変傾斜は、外科医が手術前計画中に上腕骨ヘッドコンポーネントのため選択された傾斜を正確に一致させ、この個々の患者のための器具に一致させることを可能にするために、肩関節形成システムの、必須ではないとしても、非常に望ましいコンポーネントである。
【0006】
しかしながら、市場における競合システムの再検討で、これらのシステムによって提供された傾斜の範囲が肩関節形成時に引き起こされた上腕骨ヘッドコンポーネント傾斜の範囲を適切に取り扱わないことが明らかになった。さらに、肩関節形成システムによって提供された範囲の多くは、生理学的ではなく、結果として重大なコンポーネント位置異常を生じることがある。現在利用可能なシステムにおける傾斜の範囲は、真の解剖学的根拠なしで無作為に選ばれているように思われる。
【0007】
上腕骨コンポーネントのため必要である適切な傾斜範囲の理解の欠如に加えて、この傾斜を達成する方法は、課題を伴っている。市場で利用可能な上腕骨の傾斜を変えるためにいくつかの戦略候補が存在する。これらの方法の各々は、欠点がある。
【0008】
傾斜の量が固定している種々の上腕骨ステムを製造することができる。しかしながら、これは、結果として、幅の広いステム直径に対して複数のステム傾斜を必要とする在庫の著しい増加を生じる恐れがある。
【0009】
1つの代替的な方法において、位置決めねじが上腕骨コンポーネントの傾斜角を固定するためにステムの内部で使用される。このことは、位置決めねじを設計において「弱連結(weak link)」にすることができ、取り外しの試みの間に問題になることがあり得る。
【0010】
別の代替的な方法において、傾斜の量を固定するために、上腕骨ステム内の横方向開口部を通って上腕骨ヘッドコンポーネントに入り込むねじを使用する可能性がある。これは、結果として上腕骨ステムを取り外すことなしに上腕骨ヘッドコンポーネントを取り外すことを不可能にする可能性がある。このシステムは、位置決めねじなしで使用されることがあるが、製造業者は、上腕骨内に挿入する前にヘッドおよびステムを一体として衝突させることを推奨する。しかしながら、上腕骨ステム内の横方向開口部は、セメントと共に使用された場合、上腕骨ステムの取り外しをより一層困難にさせる状態となる。
【0011】
さらに別の代替的な方法において、複雑な組立体は、上腕骨ステムと上腕骨ヘッドコンポーネントとを連結するロック機構を使って行われる可能性があり、10を超えるステップを必要とする。この方法は、上腕骨ヘッドコンポーネントとは独立にステムを上腕管内に入れることもできない。このことは、縫合線を回旋筋間隔に入れる能力を低下させ、安定性および結果に影響を与えることがある。
【0012】
このように、肩関節形成において上腕骨ヘッドコンポーネントの可変傾斜および/または転位を提供する改良されたプロテーゼおよび方法の必要性があると共に、肘関節形成および股関節形成における可変性の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、関節(たとえば、肩)形成のための改良された方法および装置を提供することにより上記必要性に対処する。関節(たとえば、肩)プロテーゼが提供される。プロテーゼステムに関してプロテーゼヘッドの傾斜および/または転位を決定する装置がさらに提供される。関節(たとえば、肩)の骨の中に埋め込まれた、または、埋め込まれるステムに関してプロテーゼヘッドの傾斜角および/または転位角を設定する方法がさらに提供される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様において、本発明は、対象者の関節の第1の骨の中に埋め込まれるような寸法にされているステムと、関節の第2の骨の生体または人工関節面の関節面との関節接合のための寸法にされている外面を有するプロテーゼヘッドと、プロテーゼヘッドの外面と反対側にあるプロテーゼヘッドの端部面内の陥没部の中に嵌め込まれるような寸法にされ、その結果、陥没部との間に締まり嵌めを形成するアダプタと、第1端部および第2端部を有し、第1端部は、アダプタ内のソケットの中への嵌め込みのための寸法にされ、その結果、第1端部とソケットとの間に締まり嵌めを形成し、第2端部は、ステム内の開口部の中への挿入のための寸法にされている、取り付け用スタッドと、を含む関節プロテーゼを提供する。
【0015】
関節プロテーゼの1つの変形では、取り付け用スタッドの第2端部は、ステム内の開口部の中への嵌め込みのための寸法にされ、その結果、第2端部とステムとの間に締まり嵌めを形成する。
【0016】
関節プロテーゼの別の変形では、取り付け用スタッドの第1端部は、球面を含む。取り付け用スタッドの第1端部の球面は、取り付け用スタッドの第1端部とソケットとの間に締まり嵌めを形成する前に、ステムに関してヘッドの傾斜および/または転位を設定するためにソケット内で回転させられ得る。
【0017】
関節プロテーゼの別の変形では、取り付け用スタッドの第2端部は、取り付け用スタッドの第2端部の中間セクションから最も外側のセクションまで内向きに先細になる外面を含む。
【0018】
関節プロテーゼの別の変形では、取り付け用スタッドは、取り付け用スタッドの第1端部の球面と取り付け用スタッドの第2端部の外面との接合点またはその近傍に円周基準指標を含む。
【0019】
関節プロテーゼの別の変形では、取り付け用スタッドの第2端部の縦軸は、第1端部とソケットとの間に締まり嵌めが形成されたとき、プロテーゼヘッドの軸に関して斜角を形成する。
【0020】
関節プロテーゼの別の変形では、アダプタのソケットは、アダプタの中心縦軸に関してオフセットしている。
【0021】
関節プロテーゼの別の変形では、アダプタと陥没部との間に締まり嵌めを形成する前にアダプタがステムに関してヘッドの半径方向オフセットを設定するために陥没部の中で回転させられ得るように、アダプタは、円形外面を有し、陥没部は、円形内面を有する。
【0022】
関節プロテーゼの別の変形では、ヘッドは、アダプタ上の第2の基準マークとの位置合わせのための少なくとも1つの第1の基準マーキングを含む。
【0023】
関節プロテーゼは、様々な関節で用いるため適している。たとえば、第1の骨は、上腕骨となることがあり、第2の骨は、肩甲骨となることがある。第1の骨は、肩甲骨となり、第2の骨は、上腕骨となることもある。第1の骨は、大腿骨となることがあり、第2の骨は、骨盤となることがある。第1の骨は、上腕骨となることがあり、第2の骨は、橈骨となることがある。
【0024】
別の態様において、本発明は、プロテーゼヘッドがステムに結合されているときに使用される、ステムに関してプロテーゼヘッドの傾斜および/または転位を決定する装置を提供する。プロテーゼヘッドは、対象者の関節の骨の生体または人工関節面の関節面との関節接合のための外面を有する。この装置は、ウェル部を有する本体と、第1端部および第2端部を有し、第1端部は、ウェル部に位置決めされ、第2端部は、第2端部の縦軸が本体の軸に関して角度をなす位置の間で移動できる、関節要素と、を含んでもよい。
【0025】
装置の1つの変形は、第1側面と反対側にある第2側面との間に延在する開口部を有するリテーナーを含み、リテーナーは、ウェル部に配置され、リテーナーは、ウェル部の中での移転のための寸法にされている。関節要素の第1端部は、関節要素の第2端部がリテーナーの開口部を通って、外向きに延在するように、本体とリテーナーの第1側面との間に位置決めされる寸法にされ、関節要素の第2端部は、第2端部の縦軸がリテーナーの開口部の軸に関して角度をなす位置の間で移動できる寸法にされている。リテーナーは、1対の側面が平行である縦長形状を有する。
【0026】
装置の別の変形は、リテーナーがウェル部の中で移転することを可能にする第1の位置とウェル部の中でのリテーナーの移転を防ぐ第2の位置との間で移動できる締結部を含む。締結部は、第2の位置にあるとき、関節要素の第1端部を本体とリテーナーとの間で動かなくさせるねじであることがある。
【0027】
装置の1つの変形において、関節要素の第1端部は、球状座面を含み、関節要素の第2端部は、関節要素の第2端部の中間セクションから最も外側のセクションまで減少する外径を含む。関節要素の第2端部は、ステム内の開口部の内面に接触する寸法にされることがある。
【0028】
装置の1つの変形において、本体およびリテーナーは、本体に関してリテーナーの位置的関係を決定する基準マーキングを含む。
【0029】
装置は、様々な関節のためのプロテーゼのステムに関してプロテーゼヘッドの傾斜および/または転位を決定するため適している。たとえば、プロテーゼヘッドは、関節が肩であるとき、肩甲骨と関節接合することがある。プロテーゼヘッドは、関節が肩であるとき、上腕骨と関節接合することがある。プロテーゼヘッドは、関節が股関節であるとき、骨盤と関節接合することがある。プロテーゼヘッドは、関節が肘であるとき、橈骨と関節接合することがある。
【0030】
別の態様において、本発明は、対象者の関節の骨の中に埋め込まれた、または、埋め込まれるステムに関してプロテーゼヘッドの傾斜角および/または転位角を設定する方法を提供する。この方法は、(i)ウェル部を有する本体と、(ii)第1端部および第2端部を有し、第1端部は、ウェル部の中に位置決めされ、第2端部は、第2端部の縦軸が本体の軸に関して角度をなす位置の間で移動できる、関節要素と、を含むトライアル装置を使用する。関節要素の第2端部は、ステム内の開口部の中に挿入され、関節要素は、本体に関して動かなくさせられる。取り付け用スタッドは、本体に関して動かなくされた関節要素の姿勢を一致させるように、プロテーゼヘッドに関して固定した位置においてプロテーゼヘッドに締め付けられている。取り付け用スタッドの端部は、ステム内の開口部の中で締め付けられることがある。
【0031】
方法の1つの変形において、トライアル装置は、ウェル部の中に配置されたリテーナーをさらに含み、関節要素の第1端部は、本体とリテーナーとの間で動かなくさせられることがある。リテーナーは、ウェル部の中での移転のための寸法にされることがあり、この方法は、ウェル部の中のリテーナーの移転を防ぐことを備えることがある。締結部は、締結部がウェル部の中のリテーナーの移転を防ぐ位置へ動かすことができることがある。
【0032】
方法の別の変形において、テンプレートが動かなくされた関節要素の上に置かれ、本体上の第1の基準点に関してテンプレート上の基準線の位置に注目させられる。テンプレートは、次に、取り付け用スタッドの上に置かれ、基準線がプロテーゼヘッド上の第2の基準点と一直線にされる。取り付け用スタッドは、次に、プロテーゼヘッドに関して固定した位置でプロテーゼヘッドに締め付けられる。テンプレートは、開口部を含むことがあり、開口部は、本体上の第1の基準点に関してテンプレート上の基準線の位置に注目する前に、動かなくされた関節要素の上に置かれることがある。開口部は、基準線をプロテーゼヘッド上の第2の基準点と一直線にする前に取り付け用スタッドの上に置かれることがある。
【0033】
方法の別の変形において、取り付け用スタッドは、取り付け用スタッドが固定した位置でプロテーゼヘッドに締め付けられる前に、プロテーゼヘッドに関して第1の角度まで動かされ得る。第1の角度は、本体に関して動かなくされた関節要素の第2の角度とおよそ同じ(たとえば、±20°、または±10°、または±5°)である。この第1の角度は、取り付け用スタッドを取り囲む第1の基準円を使用して決定してもよく、第2の角度は、関節要素を取り囲む第2の基準円を使用して決定される。第1の角度は、取り付け用スタッドを取り囲む第1の基準円およびテンプレート上の基準線を使用して決定してもよく、第2の角度は、関節要素を取り囲む第2の基準円およびテンプレート上の基準線を使用して決定してもよい。
【0034】
この方法は、対象者の様々な関節の骨の中に埋め込まれた、または、埋め込まれるステムに関してプロテーゼヘッドの傾斜角および/または転位角を設定するため適している。骨は、肩甲骨であってもよく、関節は、肩であってもよい。また、骨は、上腕骨であってもよく、関節は、肩であってもよい。骨は、大腿骨であってもよく、関節は、股関節であってもよい。骨は、上腕骨であってもよく、関節は、肘であってもよい。
【発明の効果】
【0035】
1つの限定されない実施形態において、肩プロテーゼの傾斜/転位を設定するために先細部を含んでいる上腕骨ヘッド組立体を使用することは本発明の利点である。この構造は、既存のステム設計の使用を可能にさせる。可変傾斜は、上腕骨ヘッド組立体の一部分である。上腕骨ヘッド組立体の内部での先細部の使用は、上腕骨傾斜を変えるだけでなく、上腕骨転位も変える能力を与える。これは、傾斜および転位の調整を可能にするために別個の上腕骨ステムを作る必要性を取り除く。上腕骨ヘッド組立体の先細部は、回転して、その後、上腕骨ヘッド内の望ましい傾斜/転位で所定の位置にロックする能力がある。これは、外科医が望ましい量の傾斜および転位を実現するために1つのステム設計を使用して手術中の順応性を最大化することを可能にさせる。これは、上腕骨コンポーネントの在庫を減らすのに役立ち、ステムを取り外すことなく、上腕骨傾斜/転位を変えることを可能にする。
【0036】
適切な傾斜の範囲は、患者に応えることがある傾斜の範囲を適切に定義するために患者研究を使って確立される。これは、システムのため欠くことのできない精密な傾斜の範囲を決定するために可変傾斜システムの正確かつ効率的な設計を実現し易くする。
【0037】
上腕骨傾斜の調整は、肩関節形成市場において明らかに必要なものになっている。解剖学的分布に基づかない傾斜の範囲を含めて、重大な欠陥が現在利用可能なシステムにおいて認識されている。その上、可変傾斜を作り出すために現在利用可能なシステムは、重大な技術的欠点がある。その結果、本発明の方法は、これらの重要な市場ニーズに対処するように設計されている。さらに、同様の調整機能から恩恵を受けることになる用途は、肩の関節窩球、肘の橈骨頭、股関節の大腿骨頭などを含む。
【0038】
上記および本発明のその他の特徴、態様および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲を考慮した上でより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】従来型の肩プロテーゼの断面図である。
図2】発明による肩プロテーゼの一実施形態の部分断面前面図である。
図3図2の線3-3による図2の肩プロテーゼの図である。
図4】発明による肩プロテーゼを埋め込む際に使用される試験的なヘッド組立体の底面図である。
図5】発明による肩プロテーゼの上腕骨ヘッド組立体キットのテンプレートおよびコンポーネントを示す図である。
図6】発明による肩プロテーゼの上腕骨ヘッド組立体を組み立てるときのステップの上面斜視図である。
図7】発明による肩プロテーゼの上腕骨ヘッド組立体を組み立てるときの図6の後に続くステップの上面図である。
図8】発明による肩プロテーゼの上腕骨ヘッド組立体を組み立てるときの図7の後に続くステップの上面斜視図である。
図9】発明による肩プロテーゼの上腕骨ヘッド組立体を組み立てるときの図8の後に続くステップの上面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
同様の符号は、以下の図面の説明において全ての図を通じて同様の部品を参照するために使用される。
【0041】
最初に図1を検討すると、従来型の肩プロテーゼ10の例が示されている。上腕骨12の上部は、上腕骨12の内部に形成された内腔の中へ延びるステム16を含む上腕骨コンポーネント14によって置換されている。一般的に、ステム16は、上腕骨12の内部に形成された内腔の内部に固定されている。ステム16は、縦方向ステム軸Sを有する。ほぼ半球状のヘッド18がステム16に連結されている。代替的に、ヘッド18は、ステム16と一体になっている。半球状ヘッド18は、底面19と縦方向ヘッド軸Hとを有する。上腕骨コンポーネント14の半球状ヘッド18は、セメントまたは非セメント支柱28を使用して肩甲骨26の関節窩の内部に固定されている関節窩コンポーネント24の相補的な凹状セクション22と関節接合する。関節窩コンポーネント24は、関節窩コンポーネント24の関節面としての役目を果たす凹状セクション22の反対側にある底面27を含む。
【0042】
図2図3を参照すると、本発明による肩プロテーゼの実施形態の例が示されている。上腕骨コンポーネント34は、上腕骨12の内部に形成された内腔の中へ延びるステム36を含む。ステム36は、縦方向ステム軸Sを有する。上腕骨ヘッド組立体37は、ほぼ半球状のヘッド38を有する。上腕骨ヘッド組立体37は、ステム36に連結されている。上腕骨コンポーネント34の半球状ヘッド38の外面41は、図1に示されるように肩甲骨26の関節窩の内部に固定されている関節窩コンポーネント24の相補的な凹状セクション22と関節接合する。上腕骨ヘッド組立体37において、ヘッド38は、アダプタ46を受容する陥没部43を含む。陥没部43は、ソケット48を備えた本体47を有する。ソケット48は、偏心している、すなわち、ソケット48の中心軸が、本体47の中心軸からオフセットしている。上腕骨ヘッド組立体37は、球状座面54を含む第1端部53と先細状シャフト57を備える第2端部56とを有する取り付け用スタッド51をさらに含む。取り付け用スタッド51の第1端部53は、取り付け用スタッド51をソケット48の中へ嵌め込むことにより形成された締まり嵌め(interference fit)を用いてアダプタ本体47のソケット48内に締め付けられている。取り付け用スタッド51の第2端部56は、取り付け用スタッド51をステム開口部61内に嵌め込むことにより形成された先細ロックを用いてステム36のステム開口部61内に締め付けられている。
【0043】
上腕骨コンポーネント34の部品は、たとえば、(i)チタン合金(たとえば、チタン-6-アルミニウム-4-バナジウム)、コバルト合金、ステンレス鋼合金、もしくはタンタルのような金属または金属合金、(ii)酸化アルミニウムもしくはジルコニアのような非吸収性セラミック、(iii)ポリエチレンのような非吸収性ポリマー材料、あるいは(iv)炭素繊維強化ポリマー(たとえば、ポリスルホン)のような非吸収性複合材料から形成される。プロテーゼコンポーネントは、これらの材料から形成された品物を機械加工することにより、または、これらの材料を適当な金型で成形することにより製造することができる。
【0044】
図2において、ステム軸Sとヘッド軸Hとの間で前面像内のねじ山の角度を度単位で取得し、180°から差し引くことは、上腕骨ヘッド38の傾斜角Ainclinationを度単位で定義する1つの方法である。上腕骨ヘッド38の傾斜角は、前述のとおり、上腕骨ヘッド組立体37をヘッド38に対して選択された位置においてアダプタ本体47のソケット48と、および、アダプタ本体47のソケット48内の選択された姿勢において取り付け用スタッド51と組み立てることにより、縦方向ヘッド軸Hと縦方向ステム軸Sとの間で選択された角を有するように調整される。
【0045】
図3において、ステム軸Sとヘッド軸Hとの間で内側像内のねじ山の角度を度単位で取得することは、上腕骨ヘッド38の転位角Aversionを度単位で定義する1つの方法である。上腕骨ヘッド38の転位角は、ステム軸Sに関して正または負の角度として表現される。上腕骨ヘッド38の転位角は、前述のとおり、上腕骨ヘッド組立体37をヘッド38に関して選択された位置においてアダプタ本体47のソケット48と、および、アダプタ本体47のソケット48内の選択された姿勢において取り付け用スタッド51と組み立てることにより、縦方向ヘッド軸Hと縦方向ステム軸Sとの間で選択された正または負の角度を有するように調整される。
【0046】
図4図9を参照すると、外科医は、上腕骨コンポーネント34が関節窩コンポーネント24の相補的な凹状セクション22と関節接合するように、上腕骨コンポーネント34を埋め込むことができる。肩甲骨26の関節窩内部での関節窩コンポーネント24の固定は、従来とおりの方法で行われる。本発明の方法では、トライアルヘッド組立体63を使用する(図4を参照のこと)。トライアルヘッド組立体63が準備されると、次に、アダプタ46の姿勢と上腕骨ヘッド組立体37の取り付け用スタッド51とが、トライアルヘッド組立体63に一致させられる。
【0047】
トライアルヘッド組立体63は、本体65を含む。図4を参照すると、本体65の一方の側面は、ほぼ縦長形状のウェル部66を有し、ウェル部66の平行側面セクションにオフセットしたマーキング67(A,B,C,D,E)がある。ウェル部66を有する本体65の側面の反対側に、上腕骨コンポーネント34の半球状ヘッド38の外面41と全く同一のまたは実質的に類似するほぼ半球状の面を有する本体65の側面がある。リテーナー69は、図4にLで示されるように、本体65のウェル部66内を摺動することができる。トライアルヘッド組立体63において、位置決めねじ70は、ウェル部66内でリテーナー69の位置をロックできる。ウェル部66の縦長形状は、位置決めねじ70が締められている間にリテーナー69がウェル部66の内部で回転するのを防ぐ(同様に、隙間が密着したスロットに沿って摺動するピンなどは、リテーナー69の回転を防ぐために使用されることがある)。リテーナー69は、開口部71と、十字線マーキング72と、を有する。トライアルヘッド組立体63の球関節要素75は、球状座面78を含んでいる第1端部77と、先細状シャフト80の形をした第2端部79と、を有する。球関節要素75の第2端部79は、リテーナー開口部71を通って外向きに突出し、球関節要素75の第1端部77は、リテーナー69とウェル部66の面との間に位置決めされている。位置決めねじ70が締められるとき、球関節要素75の第2端部79は、リテーナー69の面およびウェル部66の面との接触によって締め付けられる。3つの同心円状基準円81は、球状座面78と先細状シャフト80との接合点の近くで球関節要素75を取り囲む。
【0048】
図5に示されているのは、上腕骨ヘッド組立体37のコンポーネントの姿勢とトライアルヘッド組立体63とを一致させるために使用される透明テンプレート82である。テンプレート82は、開口部83と、基準線84と、十字線マーキング85とを有する。テンプレート82は、ヘッドがその最大オフセットまで回転させられている間にヘッドが上に載っている無損失、低摩擦面を含んでいるプラットフォームのような他の形をしていることがあるが、それでもなお、開口部83および基準線84を保持している。
【0049】
トライアルヘッド組立体63を準備することは、トライアルヘッド組立体63上の2個の位置決めねじ70が緩んでいることを確実にすることから始まる。球関節要素75があらゆる方向に回転自在であり、リテーナー69がウェル部66内で摺動自在であることを証明する。ステム36は、上腕骨12の内部に形成された内腔の内部に固定される(図2を参照のこと)。球関節要素75の第2端部79は、次に、患者の上腕骨12の中に埋め込まれているステム36のステム開口部61内に取り付けられる。トライアルヘッド組立体63の本体65は、望ましい半径方向オフセット、患者内の傾斜および/または転位に調整され、2個の位置決めねじ70は、このオフセットと、トライアルヘッド組立体63の球関節要素75の角度とをロックするために締め付けされる。位置決めねじ70は、リテーナー69の反対側にある本体65の側面でアクセスすることができる。トライアルヘッド組立体63は、次に、ステム36から取り外される。
【0050】
トライアルヘッド組立体63は、その後、図4の場合と同様に、リテーナー69および球関節要素75が外科医に見えるように裏返しにされる。外科医は、リテーナー69の面上の90度離れている4個の十字線マーキング72に注目する。オフセットは、本体65上のA、B、C、D、およびEオフセットマーキング67と相対的なリテーナー69の十字線マーキング72の垂直マーキングの位置によって指し示される。外科医は、球関節要素75上の同心円状基準円81によって指示された基準角にも注目する。図示された限定的ではない構成例において、黒、赤および青のような異なった色の3個の同心円状基準円81が球関節要素75の上に存在する。基準角は、十字線マーキング72のうち1つがリテーナー69の内側開口部71の円周と交差することになるロケーションで同心円状基準円81の位置に注目することによって読み取られる。これらの直交ロケーションのうち2つで(すなわち、2個の隣接する十字線マーキング72で)、同心円状基準円81の位置に注目することにより、基準角が完全に特徴付けられる。
【0051】
上腕骨ヘッド組立体37は、トライアルヘッド組立体63内の球関節要素75の姿勢と一致するように組み立てられる。アダプタ46は、ヘッド38の中へ挿入され、アダプタ46は、ヘッド38上のオフセットした基準マーキング44がアダプタ46上の適切なオフセットした基準マーク49と一直線になるように回転させられる。図6を参照のこと。
【0052】
さらに図6を参照すると、衝撃部材88が本発明の方法において使用される。衝撃部材88は、丸く平らな端部面89と、端部面91を含んでいる第1の側壁90と、端部面93を含んでいる第2側面壁92とを有する。衝撃部材88の端部面91、93は、アダプタ46の上端に置かれ、木槌は、アダプタ46をヘッド38の陥没部43の内側に着座させるように衝撃部材88の平らな端部面89を打つために使用される。
【0053】
図7を参照すると、取り付け用スタッド51の第1端部53は、アダプタ46のソケット48の上へ垂直方向に置かれ、取り付け用スタッド51は、この取り付け用スタッドを辛うじて装着させるのにちょうど十分な力を使用して押し下げられる。ソケット48は、スタッド51を所定の位置に保持するために作用することがあるゴムのような材料で裏打ちされることもある。透明テンプレート82の開口部83は、取り付け用スタッド51の第2端部56の上に置かれることがあり、テンプレート82の基準線84は、ヘッド38の最大オフセット方向をトライアルヘッド組立体63の本体65の最大オフセット方向と一直線にするために使用される。テンプレート82は、ヘッド38と相対的なその位置に注意して、取り外される。図7は、参考のためトライアルヘッド組立体63がどのようにして組立中に上腕骨ヘッド組立体37に隣接して位置決めされ得るかを示す。
【0054】
次に図8を参照すると、アパーチャ96を有する衝撃部材リング95が取り付け用スタッド51の上に置かれ、衝撃部材リング95がアダプタ46の指標特徴形状と一直線になるように回転する。前述のとおり、スタッド51は、組立中に姿勢を変えるべきではなく、衝撃部材リング95は、動きを阻止するためにゴムのような材料で裏打ちされることがある。衝撃部材リング95は、アダプタ46のポケットの中へ押し込まれる。テンプレートは、テンプレート82が取り外されたときと同じ位置において取り付け用スタッド51の上にもう一度置かれる。透明テンプレート82上の十字線マーキング85が基準にされ、取り付け用スタッド51は、球状座面54と取り付け用スタッド51の先細状シャフト57との接合点の近くで取り付け用スタッド51を取り囲む同心円状基準円59を使用してトライアルヘッド組立体63の球関節要素75の同じ角度まで動かされる。テンプレート82は、その後に取り外される。
【0055】
図9を参照すると、ヘッド38の取り付け用スタッド51の角度とトライアルヘッド組立体63の球関節要素75の角度は、2つの直交する方向から水平方向にこれらを見ることにより視覚的に比較される。これらの角度が許容できる形で一致する場合、衝撃部材リング95を穏やかに押し下げて、取り付け用スタッド51の周りに均一な圧力を印加する。衝撃部材リング95は、後に続くステップの間、正しい角度で取り付け用スタッド51を保持する。その後、上腕骨ヘッド組立体37の取り付け用スタッド51の角度が依然として許容できることを視覚的に再確認する。
【0056】
衝撃部材88は、衝撃部材88の端部面91、93が衝撃部材リング95と接触している状態で衝撃部材リング95と同心円状に位置決めされる。衝撃部材88を簡単に所定の位置で保持するために片手で下向き圧力を使用し、次に、木槌を使って衝撃部材88の端部面89を叩く。これは、衝撃部材リング95を押し下げ、この衝撃部材リングが、今度は、取り付け用スタッド51をアダプタ46のソケット48との締まり嵌めに至らせる。締まり嵌めは、ブラスト加工、粗面化、粗い機械加工線の切断、もしくは、反対面を係合する鋭利な刃のような構造体の追加などにより、取り付け用スタッド51もしくはソケット48のいずれかの面を変更することによって、あるいは、取り付け用スタッド51もしくはソケット48のいずれかの形状を変更することによって、補強されてもよい。取り付け用スタッド51は、衝撃部材リング95の上面がアダプタ46の上面とおおよそ同一平面にあるとき、完全に取り付けられる。その後、上腕骨ヘッド組立体37の取り付け用スタッド51の角度が依然として許容できることを視覚的に再確認する。
【0057】
衝撃部材リング95は、2個のつまみ部97を親指と人差し指とを使ってつまみ、上向きに引っ張ることによって取り外される。上腕骨ヘッド組立体37は、このとき、埋め込みの準備が整っている。上腕骨ヘッド組立体37の取り付け用スタッド51の第2端部56は、ステム36のステム開口部61内に締め付けられる。木槌を使用して上腕骨ステム36内に上腕骨ヘッド組立体37を装着させることは、図2に示されるように、組み付けられたコンポーネントを一体として装着させる。
【0058】
このようにして、本発明は、肩関節形成において上腕骨ヘッドコンポーネントの可変傾斜および/または転位および/またはオフセットを提供する改良されたプロテーゼおよび方法を提供する。死体検証は、これらの方法および肩関節形成コンポーネントに関して行われているが、この方法は、他の関節(たとえば、股関節、膝、肘、足、足首など)のため使用することができる。
【0059】
本発明は、いくつかの実施形態に関連して詳細に説明されているが、当業者は、限定の目的ではなく、例示の目的のため説明された実施形態以外の実施形態によって本発明が実施され得ることが分かるであろう。従って、請求項の範囲は、本明細書に含まれている実施形態の説明に限定されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9