(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】光源システム
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20221205BHJP
F21V 9/02 20180101ALI20221205BHJP
F21V 9/30 20180101ALI20221205BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20221205BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20221205BHJP
【FI】
H01L33/50
F21V9/02
F21V9/30
F21V9/40
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2021119607
(22)【出願日】2021-07-20
(62)【分割の表示】P 2019234487の分割
【原出願日】2016-06-23
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2015126776
(32)【優先日】2015-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016082968
(32)【優先日】2016-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507194969
【氏名又は名称】ソウル セミコンダクター カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SEOUL SEMICONDUCTOR CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】97-11, Sandan-ro 163 beon-gil, Danwon-gu,Ansan-si,Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山川 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】八木 典章
(72)【発明者】
【氏名】小林 薫平
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-123429(JP,A)
【文献】特表2011-529621(JP,A)
【文献】国際公開第2013/061942(WO,A1)
【文献】特開2005-093985(JP,A)
【文献】特開2014-170843(JP,A)
【文献】特開2009-260319(JP,A)
【文献】特開2012-113959(JP,A)
【文献】特開2015-133455(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0271029(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/50
F21V 9/00 - 9/45
F21S 2/00
F21V 8/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1色温度の第1光を発光する第1光源と、
第2色温度の第2光を発光する第2光源と、
を備えた光源システムであって、
前記第1光源および前記第2光源は、それぞれ複数の蛍光体を有し、
前記複数の蛍光体は、それぞれ33nm以上110nm以下である半値幅の発光スペクトルを示し、
前記第1光源の前記複数の蛍光体のうち少なくとも1つは、半値幅が50nm以上の発光スペクトルを示し、
前記第2光源の前記複数の蛍光体のうち少なくとも1つは、半値幅が50nm以上の発光スペクトルを示し、
前記第1光と前記第2光とが組み合わさり、黒体軌跡上の第3色温度又は黒体軌跡に近い特定の相関色温度の第3光を生成し、
前記第3光の発光スペクトルをP(λ)、対応する色温度の黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)、P(λ)×V(λ)が最大となる波長をλmax1、B(λ)×V(λ)が最大となる波長をλmax2とするとき、
前記第3光の発光スペクトルは、下記式(3)を満たす光源システム。
式(3)
-0.2≦[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))-(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]≦+0.2
【請求項2】
前記第3光の色温度の範囲は、黒体軌跡上で2000Kから6500Kである請求項1に記載の光源システム。
【請求項3】
前記第3光の色温度からの偏差が±0.005duvの範囲内にある何れかの相関色温度の白色光を再現可能である請求項1又は2に記載の光源システム。
【請求項4】
前記第1光源は、第1一次光を出射する第1LEDと、前記第1LEDを直接または間接的に覆う第1蛍光体層であって、それぞれ発光スペクトルのピーク波長が異なる2以上の蛍光体を含む第1蛍光体層とを備える請求項1乃至3の何れか一に記載の光源システム。
【請求項5】
前記第2光源は、第2一次光を出射する第2LEDと、前記第2LEDを直接または間接的に覆う第2蛍光体層であって、それぞれ発光スペクトルのピーク波長が異なる2以上の蛍光体を含む第2蛍光体層とを備える請求項1乃至4の何れか一に記載の光源システム。
【請求項6】
前記第1光の発光スペクトルのピーク波長と前記第2光の発光スペクトルのピーク波長とは異なる請求項1乃至5の何れか一に記載の光源システム。
【請求項7】
前記第1蛍光体層において、前記蛍光体の発光スペクトルの一部が他の前記蛍光体の発光スペクトルと重なる波長領域が少なくとも1か所存在する請求項4乃至6の何れか一に記載の光源システム。
【請求項8】
前記第2蛍光体層において、前記蛍光体の発光スペクトルの一部が他の前記蛍光体の発光スペクトルと重なる波長領域が少なくとも1か所存在する請求項
5に記載の光源システム。
【請求項9】
前記光源システムの点灯初期と連続6000時間点灯後の色度変化を、CIE色度図上の色度の変化で表すとき、前記色度変化が0.01未満である請求項1乃至8の何れか一に記載の光源システム。
【請求項10】
前記第1蛍光体層の前記2以上の前記蛍光体は、第1LEDから出射される前記第1一次光を変換する蛍光体と、前記変換された第1一次光を吸収して第1二次光を出射する蛍光体とを含む請求項4乃至9の何れか一に記載の光源システム。
【請求項11】
前記第2蛍光体層の前記2以上の前記蛍光体は、第2LEDから出射される前記第2一次光を変換する蛍光体と、前記変換された第2一次光を吸収して第2二次光を出射する蛍光体とを含む請求項5乃至10の何れか一に記載の光源システム。
【請求項12】
前記λが380nm乃至780nmの波長領域において、前記P(λ)、前記B(λ)、及び前記V(λ)が下記式(1)を満たす時、前記P(λ)及び前記B(λ)は、波長範囲400nmから495nmにおいて、下記式(5)を満たす請求項1乃至11の何れか一に記載の光源システム。
式(1)
式(5)
P(λ)/B(λ)≦1.5
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光と同等の自然光が求められる照明、例えば美術館等における展示物や、病院等で長期入院を余儀なくされる患者、更には高演色が要求される家庭内やオフィス等の照明に使用される白色光源および白色光源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
美術品や工芸品において、作品の持つ色彩は最重要特性の1つだが、例えば絵画や壷は自身が発光するわけではないため、美術館等において展示物を鑑賞する際の照明も、作品と同じほど重要な意味を持つ。何故なら、展示物の鑑賞者は照明光源から照射された可視光のうち、展示物の表面で反射された光を観察しているためである。芸術家がいくら美しい色彩を表現していたとしても、展示物に照射される光源に、特定の色彩に対応した発光成分が含まれていなければ、鑑賞者には薄暗くて色彩感覚に乏しい色調でしか展示物を観察することはできない。
【0003】
この様な照明用途に最も望ましい光源は太陽光である。太陽光は連続的な光の波長成分から成り立っている通り、可視光波長である400nmから780nmまでのあらゆる光成分を、ほぼ均等に含んでおり、自然界に存在するあらゆる色を、その物質が持つ本来の色として再現することができる。しかしながら、いくら太陽光が光源として優れていても、絵画等の高級美術品を屋外の明るい空間で、太陽光に直接曝して鑑賞することはない。美術館などの特定の場所に所蔵し鑑賞するのは、雨風や盗難などの事故から守る意味もあるが、それら以外で重要な理由は美術品を大量の光照射から保護するためである。
【0004】
これは、太陽光があらゆる波長の可視光を含むと同時に、紫外光や赤外光など可視光以外の発光成分も含んでいるためである。特に紫外光は可視光よりもエネルギー的に強いことから、太陽光に直接曝されると、歴史的な絵画等の退色や脆化等を早めてしまう。このため人工光源が必要となるが、光量の調節が可能であるとか、紫外線量を極力低減させる等の、人工光ならではの便利な特長に加えて、太陽光をなるべく忠実に再現できる光源が必要とされている。
【0005】
一方人工光源として、近年は、省エネや二酸化炭素排出量削減の観点からLED(発光ダイオード)を使った光源が注目されている。タングステンフィラメントを使った従来の白熱電球と比べて、長寿命かつ省エネが可能であり、その利便性からLED照明は急速に市場を伸ばしつつある。当初のLED照明は、青色発光のLEDと黄色発光の蛍光体を組み合わせて白色光を得るタイプのものが多く、暖かみに欠ける不自然な白色しか再現することができなかった。しかしながら、LED製品の市場拡大と共に性能向上も著しく、LEDと蛍光体の組み合わせに関する種々の改良が行われた結果、太陽光を再現可能な、白色光源もいくつか開発されている。
【0006】
特許文献1は太陽光と同等の発光スペクトルを有する白色光源に関する発明で、色温度の異なる太陽光を、同じ色温度の黒体輻射スペクトルで再現させたものである。この発明では、時間と共に変化する種々の色温度の太陽光に対し、見かけ上の白色光のみならず、スペクトル形状まで含めて近似させた白色光源を得ることができる。特許文献2は、白色光源を用いた照明システムに関する発明で、照明の対象は人間等を中心としたオフィス照明等に関するものである。屋外光の変化を検知しながら、屋内光の色温度や照度を調整できるシステムで、人類の生理現象や季節による変化に対応した白色照明を得ることができる。また特許文献3は、異なる色温度の複数個の発光ダイオードモジュールを組み合わせた人工太陽光システムに関する発明で、地球上の異なる緯度や経度の地点に照射される太陽光の色温度の変化を再現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2012/144087号公報
【文献】特開2011-23339号公報
【文献】特表2009-540599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、美術館等の展示品や長期入院患者の様に、太陽光と同等の自然な照明が必要とされる対象に対して使用可能な人工光源システムで、太陽光にできるだけ近く、かつ時間や場所によって変化する太陽光の微妙な差異までも連続的に再現できる照明システムに関する。
【0009】
近年、太陽光を再現できる人工光源については、特許文献1から3に示した通り、いくつかの特許提案がなされると共に、これらとは別に太陽光再現を売り物にした製品も、市場に多数出回っている。これらの照明製品では、ある瞬間の太陽光に近似させた光源や、太陽光の変化を捉えた場合でも、殆どのものは太陽光の見掛け上の色温度変化に着目して、太陽光近似を狙ったものばかりである。中には特許文献3の様に、時間や場所の違いによる太陽光の色温度及び光特性変化データをコントロールしようとの考え方もあるが、特許文献3の場合、色温度以外の光特性変化については、具体的な説明や改良が為されていない。
【0010】
しかしながら、太陽光の変化は色温度のみに限られるものではない。例えば、照射率や純度・濁度によっても変化する。色温度に加えてこれらの要素を含めた微妙な変化が、地域毎に異なる風土を生み出す大きな要因となっている。例えば日本国内を日本海側と太平洋側に分けた場合、日本海側の地域は、曇りや雨、雪の日が多く、大気中には水蒸気や埃等の浮遊物が多く含まれるため、太陽光に翳りが生じ、物の色は濁って見える。一方の太平洋側では、水蒸気が少ない為、大気の純度が高く、物は澄んだ色に見える。この様なことから、地域によって色の嗜好に違いが生じ、日本海側に住む人達は濁色を好み、太平洋側の人々は清色を好む傾向にある。
【0011】
絵画等の美術品は人間による創作である。従い、個人によるオリジナル作品だが、作品の持つ色彩表現は、環境の影響を回避することは出来ない。写実画であれば当然のことながら、抽象画であった場合でも、赤を強調したり青を強調したり、清色を好んだり、濁色を好んだり、それらの選択そのものが、既に風土等の影響を受けている可能性があり、仮に、それらの選択が純粋に個人の感性に基づくものであっても、創作物の色表現を光源からの反射光で識別している以上は影響を避けられないものである。つまり、作者が個人的な意図で赤色を強調したとしても、その程度については、光源中に含まれる同じ波長の赤色成分の量によって影響されるのが当然だからである。
【0012】
従い美術鑑賞等において、作品の本当の価値を理解するには、単に太陽の自然光を再現するだけでは無く、作品が製作されたのと同じ光環境を再現することが非常に重要になる。つまり作品の製作された国や地域、季節や時間、更には時代や天候等々、作者が体験したものと同じ光の下で鑑賞してはじめて、作者と同じ立ち位置で、作品を理解することができるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の白色光源では、各種色温度の太陽光を再現することを基本とする。即ち、特定の色温度の太陽光を再現するに当り、太陽光と同じ色温度の黒体輻射スペクトルを、太陽光線によるスペクトルと看做し、その形状まで近似させることを基本とする。太陽は黒体の1種であると考えることが出来、黒体の輻射スペクトル曲線と太陽光の発光スペクトル曲線の一致は良好で、実際の太陽光線のスペクトル分布は5800Kの黒体輻射スペクトルに近いとされている。
【0014】
しかし地球上に到達した実際の太陽光の発光スペクトルは、黒体輻射スペクトルとは若干のズレが生じている。太陽から照射される白色光が黒体輻射のスペクトルと近似していても、地上に到達するまでの間に、地表上の空気や水蒸気更には塵埃等の層を通過し、特定波長の光が散乱されてしまうためである。青色光の散乱等によるマクロの変化は、色温度の変化として対応することは可能だが、発光スペクトルの特定波長域に生ずる微小な凹凸波形まで人工的に再現することは困難である。
【0015】
しかしながら、この様な微小な差異が、地域による風土の違いを生み出す要因であり、本発明は微小な差異を含めて対応できる様に工夫したものである。具体的には、地上に到達した太陽光のスペクトルと太陽光と同じ色温度の黒体輻射スペクトルのズレについて、その相違の程度を黒体軌跡からの偏差に換算し、所定の偏差を有した相関色温度の白色光を再現するものである。
【0016】
本発明の白色光源では、前記した様な、地域差による微妙な色変化を再現することに加えて、時々刻々変化する太陽光の色温度変化をも、連続的に再現し、極めて自然な太陽光を人工光源により提供するものである。そして本発明の白色光源では、絵画や人体にとって有害であると看做されている、紫外光や青色光の発光成分を、従来の人工光源に比べて大きく低減させており、あらゆる意味で太陽光の長所を採り入れ、かつ自然な白色光を提供するものである。
【0017】
実施形態によれば、以下の発明を提供することが可能である。
【0018】
[1]黒体輻射軌跡に対する偏差duvが±0.005以下の特定の相関色温度を有する白色光源の発光スペクトルをP(λ)、対応する色温度の黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)、P(λ)×V(λ)が最大となる波長をλmax1、B(λ)×V(λ)が最大となる波長をλmax2としたとき、
-0.2≦[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))-(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]≦+0.2、を満たすことを特徴とする白色光源。
【0019】
[2]白色光源は、相関色温度が2600~6500Kであることを特徴とする[1]に記載の白色光源。
【0020】
[3]任意の2種類の色温度の白色光に対する偏差duvが±0.005である4種類の色度点で囲まれた領域内で、黒体軌跡のプラス側に偏差を有する少なくとも2点と、黒体軌跡のマイナス側に偏差を有する少なくとも2点の色度点を持つ白色発光を示す[1]~[2]に記載の白色光源からなる夫々のLEDモジュールと、LEDモジュールの発光強度を制御する制御部を備え、任意の強度に制御された少なくとも4種類のLEDモジュールからの発光を混合した白色光の得られる白色光源システム。
【0021】
[4][3]の白色光源システムにおいて、国内外の主要地域における経時変化に伴って変化する太陽光のスペクトルを保存したデータベースを備え、前記データベース中の所望の太陽スペクトルデータに基づき、前記複数個のLEDモジュールの発光強度を制御して、特定地域の特定時期に相当する太陽光を再現できる白色光源システム。
【0022】
[5][3]ないし[4]の白色光源システムにおいて、前記LEDモジュールがLEDと蛍光体を具備し、前記蛍光体は、蛍光体と樹脂を混合した蛍光体層を形成していることを特徴とする白色光源システム。
【0023】
[6][5]の白色光源システムにおいて、前記LEDがピーク波長360nm~420nmである紫外ないし紫色の一次光を放射し、前記LEDを覆うように形成された蛍光体層がLEDからの一次光を吸収して白色の2次光を出射する前記白色光源において、白色光源から出射されるLED一次光の強度が0.4mW/lm以下であることを特徴とする白色光源。
【0024】
[7][3]ないし[6]の白色光源システムが美術館や博物館等で展示される美術工芸品の照明に利用されることを特徴とする白色光源システム。
【0025】
{1}黒体輻射の軌跡上の特定色温度の白色光および、前記黒体軌跡からの特定偏差のズレを有する相関色温度の白色光を再現可能な白色光源システムにおいて、前記白色光源から出射される白色光の発光スペクトルをP(λ)、対応する色温度の黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)とした場合に、λが380nm乃至780nmの波長領域において、P(λ)、B(λ)、V(λ)が下記式(1)を満たす時、前記P(λ)、B(λ)は、波長範囲400nmから495nmにおいて、下記式(2)を満たすことを特徴とする白色光源システム。
【0026】
【0027】
P(λ)/B(λ)≦1.8 (2)
{2} {1}の白色光源システムにおいて、黒体輻射の軌跡上の特定範囲の色温度の白色光と、前記白色光の色温度からの偏差が±0.005duvの範囲内にある何れかの相関色温度の白色光を再現可能な白色光源システム。
【0028】
{3} {2}の白色光源システムにおいて、黒体輻射の軌跡上の2000K乃至6500Kの色温度の白色光と、前記白色光の色温度からの偏差が±0.005duvの範囲内にある何れかの相関色温度の白色光を再現可能な白色光源システム。
【0029】
{4} {1}乃至{3}の白色光源システムにおいて、前記システムから出射される白色光の発光スペクトルをP(λ)、対応する色温度の黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)、P(λ)×V(λ)が最大となる波長をλmax1、B(λ)×V(λ)が最大となる波長をλmax2としたとき、下記式(3)を満たすことを特徴とする白色光源システム。-0.2≦[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))-(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]≦+0.2 (3)
{5} {4}の白色光源システムにおいて、下記式(4)を満たすことを特徴とする白色光源システム。-0.1≦[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))-(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]≦+0.1 (4)
{6} 黒体輻射の軌跡上の特定範囲の色温度の白色光と、前記黒体軌跡から特定偏差のズレを有する相関色温度の白色光を再現可能な白色光源システムにおいて、前記白色光源システムから出射される白色光の平均演色評価数Raが95以上、演色評価数R1からR8および特殊演色評価数R9からR15の全てが85以上であること特徴とする白色光源システム。
【0030】
{7} {6}記載の白色光源システムにおいて、黒体輻射の軌跡上の2000K乃至6500Kの色温度の白色光と、前記白色光の色温度からの偏差が±0.005duvの範囲内にある何れかの相関色温度の白色光を再現可能な白色光源システム。
【0031】
{8} {7}記載の白色光源システムにおいて、前記白色光源システムから出射される白色光の平均演色評価数Raが97以上、演色評価数R1からR8および特殊演色評価数R9からR15の全てが90以上であること特徴とする白色光源システム。
【0032】
{9} {6}乃至{8}の白色光源システムにおいて、前記白色光源から出射される白色光の発光スペクトルをP(λ)、対応する色温度の黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)とした場合に、λが380nm乃至780nmの波長領域において、P(λ)、B(λ)、V(λ)が下記式(1)を満たす時、前記P(λ)、B(λ)は、波長範囲400nmから495nmにおいて、下記式(2)を満たすことを特徴とする白色光源システム。
【0033】
【0034】
P(λ)/B(λ)≦1.8 (2)
{10} 黒体輻射の軌跡上の特定範囲の色温度の白色光と、前記白色光の色温度からの偏差が±0.005duvの範囲内にある何れかの相関色温度の白色光を再現可能な白色光源システムにおいて、黒体軌跡のプラス側に偏差を有するxy色度図上の少なくとも2点と、黒体軌跡のマイナス側に偏差を有するxy色度図上の少なくとも2点の色度点の白色発光を示す夫々のLEDモジュールと、LEDモジュールの発光強度を制御する制御部を備え、任意の強度に制御された少なくとも4種類のLEDモジュールからの発光を混合することにより白色光を得ることを特徴とする白色光源システム。
【0035】
{11} 黒体輻射の軌跡上の2000K乃至6500Kの色温度の白色光と、前記白色光の色温度からの偏差が±0.005duvの範囲内にある何れかの相関色温度の白色光を再現可能な白色光源システムにおいて、黒体軌跡のプラス側に偏差を有するxy色度図上の少なくとも3点と、黒体軌跡のマイナス側に偏差を有するxy色度図上の少なくとも3点の色度点の白色発光を示す夫々のLEDモジュールと、LEDモジュールの発光強度を制御する制御部を備え、任意の強度に制御された少なくとも6種類のLEDモジュールからの発光を混合することにより白色光を得ることを特徴とする白色光源システム。
【0036】
{12} {10}乃至{11}の白色光源システムにおいて、前記白色光源から出射される白色光の発光スペクトルをP(λ)、対応する色温度の黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)とした場合に、λが380nm乃至780nmの波長領域において、P(λ)、B(λ)、V(λ)が下記式(1)を満たす時、前記P(λ)、B(λ)は、波長範囲400nmから495nmにおいて、下記式(2)を満たすことを特徴とする白色光源システム。
【0037】
【0038】
P(λ)/B(λ)≦1.8 (2)
{13} {10}乃至{12}の白色光源システムにおいて、前記LEDモジュールは、発光ピーク波長が360nm~420nmである紫外ないし紫色の一次光を出射するLEDと、前記LEDからの一次光を吸収して白色の2次光を出射する蛍光体の組合せからなることを特徴とする白色光源システム。
【0039】
{14} {13}の白色光源システムにおいて、前記蛍光体は、蛍光体と樹脂を混合した蛍光体層を形成していることを特徴とする白色光源システム。
【0040】
{15} {14}の白色光源システムにおいて、前記蛍光体層が前記LEDを覆うように形成されており、白色光源から出射されるLED一次光の強度が0.4mW/lm(ルーメン)以下であることを特徴とする白色光源システム。
【0041】
{16} {15}の白色光源システムにおいて、前記蛍光体層の外部に、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミのうち、少なくとも1種の粉末材料と樹脂材料からなる粉末材料層が前記蛍光体層を被覆する様に形成されているか、もしくは、前記白色光源システムの外囲器を構成する透明部材に、前記酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミのうち、少なくとも1種による薄膜が形成されていることを特徴とする白色光源システム。
【0042】
{17} {15}乃至{16}の白色光源システムにおいて、前記蛍光体層の外部に、酸化ケイ素、酸化ジルコニウムのうち、少なくとも1種の粉末材料と樹脂材料からなる粉末材料層が前記蛍光体層を被覆する様に形成されているか、もしくは、前記白色光源システムの外囲器を構成する透明部材に、前記酸化ケイ素、酸化ジルコニウムのうち、少なくとも1種による薄膜が形成されていることを特徴とする白色光源システム。
【0043】
{18} {13}乃至{17}の白色光源システムにおいて、前記蛍光体が、青色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体、赤色蛍光体からなる少なくとも4種類以上の混合物であることを特徴とする白色光源システム。
【0044】
{19} {18}の白色光源システムにおいて、前記蛍光体混合物に青緑色蛍光体が更に含有されていることを特徴とする白色光源システム。
【0045】
{20} {18}の白色光源システムにおいて、前記青色蛍光体が、発光ピーク波長が480乃至500nmであるユーロピウム付活ストロンチウムアルミン酸塩蛍光体、もしくは発光ピーク波長が440乃至460nmであるユーロピウム付活アルカリ土類リン酸塩蛍光体のうち、少なくとも1種であることを特徴とする白色光源システム。
【0046】
{21} {18}乃至{20}の白色光源システムにおいて、前記緑色蛍光体が、発光ピーク波長が520乃至550nmであるユーロピウム付活オルソ珪酸塩蛍光体、及び発光ピーク波長が535~545nmであるユーロピウム付活βサイアロン蛍光体、及び発光ピーク波長が520乃至540nmであるユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体のうち、少なくとも1種であることを特徴とする白色光源システム。
【0047】
{22} {18}乃至{21}の白色光源システムにおいて、前記黄色蛍光体が、発光ピーク波長が550乃至580nmであるユーロピウム付活オルソ珪酸塩蛍光体、もしくは発光ピーク波長が550~580nmであるセリウム付活希土類アルミニウムガーネット蛍光体であることを特徴とする白色光源システム。
【0048】
{23} {18}乃至{22}の白色光源システムにおいて、前記赤色蛍光体が、発光ピーク波長が600~630nmであるユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体、及び発光ピーク波長が620~660nmであるユーロピウム付活カルシウムニトリドアルミノシリケート蛍光体、及び発光ピーク波長が620~630nmであるユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体、及び発光ピーク波長が640~660nmであるマンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体のうち、少なくとも1種であることを特徴とする白色光源システム。
【0049】
{24} {1}乃至{5}の白色光源システムにおいて、前記P(λ)、B(λ)は、波長範囲400nmから495nmにおいて、下記式(5)を満たすことを特徴とする白色光源システム。P(λ)/B(λ)≦1.5 (5)
{25} {9}または{12}の白色光源システムにおいて、前記P(λ)、B(λ)は、波長範囲400nmから495nmにおいて、下記式(5)を満たすことを特徴とする白色光源システム。P(λ)/B(λ)≦1.5 (5)
{26} {1}乃至{25}の白色光源システムにおいて、地球上の特定地点における緯度、経度、および固有環境の違いに応じて変化する太陽光を、特定の相関色温度を有する白色光として再現すると共に、時々刻々変化する前記相関色温度を連続的に再現することを特徴とする白色光源システム。
【0050】
{27} {26}の白色光源システムにおいて、国内外の主要地域における経時変化に伴って変化する太陽光のスペクトルを保存したデータベースを備え、前記データベース中の所望の太陽スペクトルデータに基づき、前記複数個のLEDモジュールの発光強度を制御して、特定地域の特定時期に相当する太陽光を再現できる白色光源システム。
【0051】
{28} {1}乃至{27}の白色光源システムがオフィスや家庭用の照明に利用されることを特徴とする白色光源システム。
【0052】
{29} {1}乃至{27}の白色光源システムが美術館や博物館等で展示される美術工芸品の照明に利用されることを特徴とする白色光源システム。
【0053】
黒体輻射の軌跡上の特定色温度の白色光および、前記黒体輻射の軌跡からの特定偏差のズレを有する相関色温度の白色光を再現可能な白色光源システムにおいて、前記白色光源システムから出射される白色光の発光スペクトルをP(λ)、対応する色温度の黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)とした場合に、λが380nm乃至780nmの波長領域において、P(λ)、B(λ)、V(λ)が下記式(1)を満たす時、前記P(λ)及び前記B(λ)は、波長範囲400nmから495nmにおいて、下記式(2)を満たすことを特徴とする白色光源システム。
【0054】
【0055】
P(λ)/B(λ)≦1.8 (2)
黒体輻射の軌跡上の特定範囲の色温度の白色光と、前記黒体輻射の軌跡から特定偏差のズレを有する相関色温度の白色光を再現可能な白色光源システムにおいて、前記白色光源システムから出射される白色光の平均演色評価数Raが95以上、演色評価数R1からR8および特殊演色評価数R9からR15の全てが85以上であること特徴とする白色光源システム。
【発明の効果】
【0056】
本発明の白色光源は黒体輻射のスペクトル形状を再現した上で、時間差や地域差を含めて、地上に到達した太陽光と同じ形状を有する発光スペクトルに近似させることが可能である。そのため、美術品等の展示物にかかる館内照明に利用すると、展示物が作成された時期や場所と同じ太陽光に近づけることができ、作者の意図をより忠実に再現できる照明を得ることができる。
【0057】
また本発明の白色光源は、太陽光の一日の変化、つまり日の出から日の入りまでの間に時々刻々変化する太陽光の色温度変化を連続的に再現することができる。そのため、美術品等の照明に用いた場合には、美術館の屋内に居ながら、朝の太陽から夕方の太陽までの様々な太陽光に照射された絵画の色彩を自然な変化で楽しむことができる。また、病院等の屋内照明に用いた場合、病院内に居ながら、一日中の太陽光を、色温度変化を含めて体感することができる。特に、その変化する様子については、人間が知覚できない微小な差異として再現しているため、例えば入院患者は色温度の変化する瞬間に気付くことができず、患者にとって極めて自然な、受け入れ易い照明である。また従来の人工白色光源に比べて、青色発光成分等の強度を大きく低減させており、人体等に優しい照明であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】イタリアのミラノ市における冬の昼間の太陽光の発光スペクトルを示す図。
【
図2】日本の東京都における春の夕方の太陽光の発光スペクトルを示す図。
【
図3】本発明の白色光源が示す発光色度域を示す図。
【
図4】春の日本、東京都における1日の太陽光の色温度および照度変化を示す図。
【
図5】春の日本、横浜市における朝・昼・夕方の太陽光の発光スペクトルを示す図。
【
図6】春の日本、横浜市における朝・昼・夕方の太陽光の発光スペクトルを再現した本発明の白色光源の発光スペクトルを示す図。
【
図7】光源Aの発光スペクトルと、同じ色温度を持つ黒体輻射スペクトルとの差分スペクトルを示す図。
【
図8】光源Bの発光スペクトルと、同じ色温度を持つ黒体輻射スペクトルとの差分スペクトルを示す図。
【
図9】光源Cの発光スペクトルと、同じ色温度を持つ黒体輻射スペクトルとの差分スペクトルを示す図。
【
図10】光源CのP(λ)V(λ)と、同じ色温度を持つ黒体輻射のB(λ)V(λ)のスペクトル強度を比較した図。
【
図11】光源BのP(λ)V(λ)と、同じ色温度を持つ黒体輻射のB(λ)V(λ)のスペクトル強度を比較した図。
【
図12】光源AのP(λ)V(λ)と、同じ色温度を持つ黒体輻射のB(λ)V(λ)のスペクトル強度を比較した図。
【
図13】春の日本、横浜市における1日の太陽光の色温度および照度変化を示す図。
【
図14】比較例1の白色光源の発光スペクトル特性、(P(λ)×V(λ)/(P(λmax1)×V(λmax1))を表した図。
【
図15】比較例1の白色光源に対応する色温度の黒体輻射スペクトルに関し、B(λ)×V(λ)/(B(λmax2)×V(λmax2))を表した図。
【
図16】比較例1の白色光源と、対応する色温度の黒体輻射スペクトル、両者間の差分スペクトルを表した図。
【
図17】比較例1の白色光源のP(λ)V(λ)と、同じ色温度を持つ黒体輻射のB(λ)V(λ)のスペクトル強度を比較した図。
【
図18】実施例2の白色光源(5)のP(λ)V(λ)と、同じ色温度を持つ黒体輻射のB(λ)V(λ)のスペクトル強度を比較した図。
【
図19】実施例2の白色光源(6)のP(λ)V(λ)と、同じ色温度を持つ黒体輻射のB(λ)V(λ)のスペクトル強度を比較した図。
【
図20】実施例2の白色光源の(7)P(λ)V(λ)と、同じ色温度を持つ黒体輻射のB(λ)V(λ)のスペクトル強度を比較した図。
【
図21】比較例の白色光源(9)のP(λ)V(λ)と、同じ色温度を持つ黒体輻射のB(λ)V(λ)のスペクトル強度を比較した図。
【
図22】春の日本、稚内市(北海道)における1日の太陽光の色温度および照度変化を示す図。
【
図23】夏の台湾、台北市における1日の太陽光の色温度および照度変化を示す図。
【
図24】夏の米国、ロサンゼルス市における1日の太陽光の色温度および照度変化を示す図。
【
図25】秋の日本、堺市(大阪)における1日の太陽光の色温度および照度変化を示す図。
【
図26】冬の日本、那覇市(沖縄)における1日の太陽光の色温度および照度変化を示す図。
【
図27】実施形態の白色光源システムの一例の概略図。
【
図28】実施形態の白色光源システムの第二例の概略図。
【
図29】白色光源システムに用いられるLEDモジュールの第一例を示す断面図。
【
図30】白色光源システムに用いられるLEDモジュールの第二例を示す断面図。
【
図31】白色光源システムに用いられるLEDモジュールの第三例を示す断面図。
【
図32】白色光源システムに用いられるLEDモジュールの第四例を示す断面図。
【
図33】白色光源システムに用いられるLEDモジュールの第五例を示す断面図。
【
図34】蛍光体の発光スペクトル及び励起スペクトルの第一例を示す図。
【
図35】蛍光体の発光スペクトル及び励起スペクトルの第二例を示す図。
【
図36】比較例の白色光源(10)のP(λ)V(λ)と、同じ色温度を持つ黒体輻射のB(λ)V(λ)のスペクトル強度を比較した図。
【
図37】実施例Aの白色光源システムによる色温度の再現領域を示す図。
【
図38】実施例Aの白色光源システムのLEDモジュールを示す概略図。
【
図39】実施例Aの白色光源7のP(λ)V(λ)と、同じ色温度を持つ黒体輻射のB(λ)V(λ)のスペクトル強度を比較した図。
【
図40】実施例Aの白色光源8のP(λ)V(λ)と、同じ色温度を持つ黒体輻射のB(λ)V(λ)のスペクトル強度を比較した図。
【
図41】実施例Aの白色光源9のP(λ)V(λ)と、同じ色温度を持つ黒体輻射のB(λ)V(λ)のスペクトル強度を比較した図。
【
図42】実施例Aの白色光源10のP(λ)V(λ)と、同じ色温度を持つ黒体輻射のB(λ)V(λ)のスペクトル強度を比較した図。
【
図43】実施例Cの白色光源システム中の蛍光体層を示す平面図。
【
図44】実施例Aの白色光源11のP(λ)V(λ)と、同じ色温度を持つ黒体輻射のB(λ)V(λ)のスペクトル強度を比較した図。
【発明を実施するための形態】
【0059】
(白色光源の発光特性)
本発明の白色光源は、太陽の光をより忠実に再現することを目的としている。忠実に再現するためには、時間や場所により変化する太陽光の発光スペクトルを正確に捉える必要がある。このうち地球の緯度や経度の違いによる変化は、太陽の入射角度の違いにより、地球表面の大気圏を通過する距離が異なることによって生ずる。つまり、太陽光が大気中を通過する際、空気中に浮遊するガス分子等により、太陽光が散乱され、通過距離によって青色光等の散乱程度に違いが生じるためである。このような太陽光の変化は、色温度の違いとしてマクロに捉えることができる。この場合、色温度の異なる太陽光の発光スペクトルは、対応する色温度の黒体輻射スペクトルで近似させることができ、下記に示される式により、色温度の異なる様々な発光スペクトルを比較的容易に再現することが可能である。式中、hはプランク定数、kはボルツマン定数、cは光速、eは自然対数の底であり、一定の数値で固定されるため、色温度Tが決まれば、各波長λに対応したスペクトル分布B(λ)を容易に求めることができる。
【0060】
【0061】
一方、太陽光の発光スペクトルは単なる緯度や経度の違いばかりでなく、地域差によっても変化する。この場合、変化する要因には様々なものが考えられる。まずは光散乱の影響だが、散乱には空気やガスの分子ばかりでなく、水蒸気や塵埃等の微粒子も関係する。しかしながら、例えば水蒸気や塵埃等の濃度は、地域によって様々である。海に近い地域と、砂漠に近い地域では、当然のことながら大きな相違がある。そして、散乱ばかりでなく、反射による影響も無視できない。つまり、人間が太陽光として知覚している光には、太陽から降り注ぐ直接光に加えて、地上に到達後、反射された光も含まれている。海に近い地域や、森に近い地域、そして建物の密集した都会では、反射光に含まれる光成分の違いがあって当然である。この様に、地域差による太陽光の変化は、多くの要因が複雑に絡まっており、一般的な規則性は無く、地域固有の要因に基づくものと捉える必要がある。
【0062】
この様な太陽光の変化を再現するため、本発明では、地域や時間毎に変化する太陽光の発光スペクトルを実測した上で、出来るだけ多くのデータを収集し、保存活用することにより、再現することとした。具体的には、太陽光の発光スペクトルを、世界中の主要地域において測定し、時間毎に移り変わる一日の変化、季節毎に移り変わる1年の変化をデータとして集積した。なお本発明において集積したデータは、原則として晴れの日に関するものであり、曇りや、雨、雪等の影響は考慮していない。
【0063】
図1はイタリアのミラノにおける冬(12月16日)の昼間(午後12時)の太陽光の発光スペクトル、
図2は東京都における春(5月27日)の夕方(17時)の太陽光の発光スペクトルの一例である。これらの発光スペクトルは、以下の方法により測定したものである。
【0064】
回折格子が組み込まれ光強度の波長成分分解機能を有する測色装置(分光分布測定器)の光検出部分を太陽に向け、太陽光を直接分光分布測定器に取り込み発光スペクトルを測定した。測定の波長範囲は可視光域を網羅した360nmから780nmとした。分光分布測定器に取り込む光強度の調整は、測定器に組み込まれている露光時間調節機能により、発光の強度が大きい波長領域においても飽和現象がないことを確認した。測定結果は電子データから波長毎の光強度を算出し、その結果を基にCIE色度座標値と相関色温度、偏差を算出した。CIEは、国際照明委員会(Commission International del’E’clairage)の略称である。
【0065】
いずれの発光スペクトルもギザギザの曲線からなるが、これらをスムージングすると特定の色温度の黒体輻射スペクトルの形状に近似させることができる。2つの図を比較すると、スペクトル曲線中の凹凸の位置が重なっていることから、それぞれがノイズ等ではなく、特定浮遊物等の固有の要因に基づくものであることがわかる。特に長波長域において特徴的な凹凸を示す箇所があり、その程度も最も大きく現われていることから、これらの波長域のスペクトル形状が、地域差等を生じる要因のひとつと推定される。
図1、
図2のスペクトル形状を基に発光色を計算すると、
図1が5991K+0.001duv、
図2が4483K-0.001duvの相関色温度を示す白色光であることが判明した。
【0066】
上記は2ケ所のみの比較であったが各地域、各時間の太陽光のスペクトルデータを比較評価し、全体の傾向を確認したところ、発光色が(x、y)色度図上の黒体軌跡に近い点を示すことは当然ながら、黒体軌跡上の点と完全に一致するとは限らないこと、そしてほぼ全てのデータが、色温度が2000Kから6500Kの間の黒体軌跡を挟み、偏差が±0.005duvの相関色温度の範囲内におさまることが判明した。
【0067】
本発明の白色光源では、前記範囲内の全ての発光色を再現することができる。具体的には例えば
図3に示す通り、図中のX1,X2、X3、X4、X5、X6で囲まれた範囲内の発光色を再現することができる。そのため、本発明の白色光源は、X1,X2、X3、X4、X5、X6に相当する6種類の白色光源を備えている。つまり、前記6種類の白色光源のうち、少なくとも2種以上の白色光源を任意の強度割合で混合することにより、多角形状の範囲内の全ての発光色を再現できるものである。
図3より、この形状の範囲は、色温度が2000Kから6500Kまでの黒体軌跡上の発光色と、黒体軌跡からの偏差が±0.005duvの範囲内の白色光領域の全てを網羅していることがわかる。従い、本発明の白色光源では、単純に黒体軌跡上の白色光のみでなく、地球上の様々な環境要因によって変化する、微妙な色温度のズレも含めて再現することが可能となる。
【0068】
上記は特定の多角形等の範囲内の色再現について説明したが、多角形の各頂点に相当する発光色を様々な相関色温度の白色に設定することで、種々の白色光が再現できるのは当然である。また前記白色光源では、6種類の白色光源を任意に混合し、本発明の白色発光を得ていたが、基になる白色光源の種類は、8種類更には10種類等々、より多くの白色光源を利用したほうが、よりきめ細かに種々の色温度の太陽光を再現できるのは勿論である。特に、1つの白色光源システムで、より幅広い範囲の色温度の白色光を再現する場合には有利となる。しかし、基になる光源の種類が余り多くなるとシステムの設計が複雑となるため、最低4種類の光源を使用すれば、本発明の効果を少なくとも発揮することが可能である。また再現する白色光の色温度の範囲は、2000Kから6500Kであり、両者を上下限として、2種類以上の任意の光源間の色温度を再現範囲として選択することが可能である。
【0069】
また本発明の白色光源システムでは、太陽光の発光色ばかりでなく、発光スペクトル形状も含めて、再現することが可能である。前記したX1~X6等、少なくとも4種類以上の白色光源を備えた白色光源システムにおいて、各々の白色光源には、太陽光の発光スペクトルを再現することが可能な全ての発光成分が備わっている。従って、前記4種類以上の白色光源のうち少なくとも2種以上の白色光源を組合せて、黒体軌跡上の特定の色温度の白色光、もしくは黒体軌跡に近い特定の相関色温度の白色光を再現した場合、混合白色光の発光スペクトル形状は、それらに対応する色温度の黒体輻射の発光スペクトル形状と良好に一致したものとなる。
【0070】
具体的には、白色光源システムから発せられる混合白色光の発光スペクトルをP(λ)、白色光源と同じ色温度を示す黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)、P(λ)×V(λ)が最大となる波長をλmax1、B(λ)×V(λ)が最大となる波長をλmax2としたとき、本発明の白色光源の発光スペクトルは下記式(3)
-0.2≦[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))-(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]≦+0.2 (3)を満たすことを特徴としている。
【0071】
(P(λ)×V(λ))は、分光視感効率V(λ)領域における白色光源の発光スペクトルの強さを示すものである。(P(λ)×V(λ))を、最大値である(P(λmax1)×V(λmax1))で割ることにより、1.0を上限とした値とすることができる。また、(B(λ)×V(λ))は、分光視感効率V(λ)領域における黒体輻射の発光スペクトルの強さを示すものであり、(B(λ)×V(λ))を、最大値である(B(λmax2)×V(λmax2))で割ることにより、1.0を上限とした値とすることができる。次に、差異A(λ)=[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))-(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]を求める。この差異A(λ)が-0.2≦A(λ)≦+0.2であるということは、分光視感効率V(λ)領域における白色光源の発光スペクトルが黒体輻射の発光スペクトル、つまりは自然光の発光スペクトルに近似していることを示している。つまり、差異A(λ)=0であれば、自然光と同じ発光スペクトルを再現できるという意味である。
【0072】
さらに本発明の白色光源は、黒体輻射の発光スペクトルを、より厳密に再現する意味で、下記式(4)を満足することが望ましい。
-0.1≦[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))-(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]≦+0.1 (4)
このように本発明の白色光源システムでは、基礎となる少なくとも4種類の白色光源は、太陽光の持つ各発光色成分を、過不足なく保有しており、少なく共4種類の光源を任意の割合で混合した各白色光も、太陽光の持つ発光成分を備えていることになる。つまり、本発明の白色光源システムで得られる白色光は、各色温度の黒体輻射スペクトルの特徴を有した上で、特定波長域の微妙な変動を含めて再現可能なことを特徴とするものである。
【0073】
また本発明の白色光源システムでは、太陽光の一日の変化について、人間の眼には極めて自然な連続的な変化として表すことができる。David Lewis MacAdam が視覚の等色実験から導き出した結果によると(色彩工学 第2版, 東京電機大学出版局)、特定の中心色に対する識別変動の標準偏差をxy色度図に表すと、“マクアダム楕円”と呼ばれる形状の範囲に表され、人間が識別できるのは前記標準偏差の3倍であることを見出している。この所見に従い、5000Kの白色光に当て嵌めて計算すると、識別できる閾値は330K(4850K~5180K)との値が得られた。従い、例えば5000Kの白色光であれば、約330K以下の色温度の差異を人間の眼では識別することができないことになる。
【0074】
図4は、北緯35度に位置する東京の春の一日について、午前6時から午後6時までの太陽光の色温度変化および照度変化を示したグラフである。
図4において符号1で示すグラフが色温度変化を示し、符号2で示すグラフが照度変化を示す。このグラフは、太陽光の経時変化を3分毎に実測した結果に基づき作成した。図表中の照度は、特定の値を基準として相対比較を行い、照度比(%)として表したものである。また、太陽光の一日の色温度変化は、3分間で概ね200K弱の速度であるため、本発明における測定単位毎の色温度の違いは、人間の目で識別することはできない。従い、この測定データを用いて色温度変化を再現しても、光源の色温度が変化する瞬間を認識することができず、さも連続的に変化した様に、自然な形で変化を受け入れることができる。
【0075】
(LEDモジュール)
本発明の白色光源は、発光特性に特徴を有するものであり、太陽光の再現が可能であれば、どの様な構成部材を用いても構わない。このため、様々な光源の応用が可能だが、様々な相関色温度の白色光を得るには、蛍光体を用いて発光色の調整を行う方法が最も簡便であり、蛍光体応用製品が望ましい。特にLED(発光ダイオード、light emitting diode)と蛍光体の組み合わせによる光源が、特性面のみならず、製造面や応用面でも優位な特徴を持っており最適である。
【0076】
一方、本発明の光源において、より望ましい白色光を得るには、ピーク波長が紫外線~紫色領域にあるものを使用することが望ましく、具体的には360~420nmの範囲とする。発光ピーク波長が420nmを超えるLEDを使用した場合、LEDの発光は、特定波長でシャープな発光を示すため、一般的にブロードなスペクトル形状を持つ蛍光体の発光とのバランスが悪くなり、前記した式(3)、(4)の関係を満足することができない場合がある。しかしLEDの発光色が紫外ないしは紫色であれば、視感度が低いため、白色光に与える影響は少なく、かつLEDからの一次光を発光装置の外部に出ない様、カットすることで、前記式の関係を容易に満足することができる。
【0077】
白色光源の発光スペクトルが、前記式(3)、(4)の関係を満足するには、LEDに組み合わせる蛍光体として、青色蛍光体、青緑色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体および赤色蛍光体の中から3種以上、さらには5種以上用いることが好ましい。これらの蛍光体を、対応する黒体輻射のスペクトルに合わせ任意に混合することにより、任意の色温度もしくは、任意の偏差を持つ白色発光を得ることができる。蛍光体は、発光ピーク波長が350~420nmのLEDに励起され、420~700nmの範囲に発光ピークを示す蛍光体を使用することが好ましい。また、各蛍光体のピーク波長は、150nm以下、さらには10~100nm、さらには10~50nmずれていることが好ましい。すなわち、あるピーク波長と隣り合うピーク波長との距離が150nm以下、さらには10~100nm、さらには10~50nmであることが好ましい。このような関係を、蛍光体の混合物を構成する少なくとも2種類の蛍光体の発光スペクトルが満足していることが望ましい。そして、蛍光体の混合物を構成する少なくとも1種類の蛍光体の発光スペクトルの半値幅は50nm以上、さらには50~100nmと広いものが好ましい。これらの条件を満足する蛍光体を使用することで、各蛍光体の発光スペクトルが他の蛍光体の発光スペクトルと重なり易くなり、各発光スペクトル間で重なる面積が増大するにつれ、得られる混合白色光のスペクトル曲線において、凹凸の少ない、より平滑で、黒体輻射のスペクトルにより近似した特性を得ることができる。
【0078】
また、発光スペクトルが重なり合う複数の蛍光体を使用することにより、長時間連続点灯時の発光色変化を抑制することができる。本発明で使用される蛍光体の中には、幅広い吸収帯を持つ蛍光体が存在する。この様な蛍光体は、紫外光や紫色光で励起されるだけでなく、青色光や緑色光にも同時励起され、緑色光や赤色光に発光することができる。この様な蛍光体で、発光スペクトルが重なり合う複数の蛍光体を使用すると、蛍光体間の再吸収や二重励起が起こり易くなり、発光色変化を抑えることができるものである。例えば緑色蛍光体を例にとると、LEDから出射される紫外乃至紫色光に励起されて緑色光に発光するだけでなく、LEDにより励起され青色光を発する青色蛍光体の発光をも吸収して、緑色に発光することができる。つまり緑色蛍光体は、LEDと青色蛍光体の2重励起により、発光できることになる。一般に人工の白色光源では、赤緑青等の複数の蛍光体の発光を装置内部で混合することにより、白色光を得ている。この様な白色光源を連続点灯した場合、蛍光体の明るさは、時間の経過と共に低下してゆくのが通常である。この時、各蛍光体の明るさが、同じ程度に経時変化するのであれば、得られる白色光の色度は変化しないことになる。しかし、複数種の蛍光体のうち、特定種の蛍光体の輝度劣化速度が、他の幾つかの蛍光体の輝度劣化速度と異なっていると、得られた白色光には特定成分の発光に過不足が生じ、得られる発光色に変化が生じるものである。しかしながら、本発明の様に相互吸収や二重励起が発生していると、蛍光体間の劣化速度が平均化され、特定の蛍光体のみが劣化するのを抑制することができるため、結果として得られる白色光の色度変化が少なくなるものである。
【0079】
なお、特定の蛍光体について、どの様な波長で励起され、どの様な波長に発光するかは、蛍光体の励起スペクトルや発光スペクトルを測定することにより、容易に確認することができる。従い、予め発光スペクトル特性の測定を行った上で、使用蛍光体の組合せを選択すれば、連続点灯中の色度変化を極力低減できるものである。以上の効果を利用することにより、本発明の白色光源システムは、CIE色度図を用いた白色光源の点灯初期と連続6000時間点灯後の色度変化の大きさを0.010未満とすることができる。色度変化の大きさの測定方法では、JIS-Z-8518に準じて、白色光源の点灯初期と連続6000時間後の色度座標u’、v’をそれぞれ測定する。このときの色度座標の差である△u’、△v’を求め、色度変化の大きさ=[(△u’)2+(△v’)2]1/2にて求めるものである。本発明の白色光源システムは、この色度変化の大きさが0.010未満、さらには0.009未満と小さくすることができる。色度変化の大きさが0.010未満であるということは、長時間使用したとしても初期点灯時から色の変化がほとんどない状態を示す。そのため、長期に渡り、太陽光を再現することができる。
【0080】
本発明の白色光源システムに使用できる具体的な蛍光体は以下の通りである。青色蛍光体として、ユーロピウム付活アルカリ土類リン酸塩蛍光体(ピーク波長440~455nm)やユーロピウム付活バリウムマグネシウムアルミン酸塩蛍光体(ピーク波長450~460nm)などが挙げられる。また、青緑色蛍光体として、ユーロピウム付活ストロンチウムアルミン酸塩蛍光体(ピーク波長480~500nm)や、ユーロピウム、マンガン付活バリウムマグネシウムアルミン酸塩蛍光体(ピーク波長510~520nm)などが挙げられる。緑色蛍光体として、ユーロピウム付活オルソ珪酸塩蛍光体(ピーク波長520~550nm)、ユーロピウム付活βサイアロン蛍光体(ピーク波長535~545nm)、ユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体(ピーク波長520~540nm)などが挙げられる。また、黄色蛍光体として、ユーロピウム付活オルソ珪酸塩蛍光体(ピーク波長550~580nm)やセリウム付活希土類アルミニウムガーネット蛍光体(ピーク波長550~580nm)などが挙げられる。また、赤色蛍光体として、ユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体(ピーク波長600~630nm)、ユーロピウム付活カルシウムニトリドアルミノシリケート蛍光体(ピーク波長620~660nm)、ユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体(ピーク波長620~630nm)やマンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体(ピーク波長640~660nm)などが挙げられる。
【0081】
図34は緑色発光のユーロピウム付活オルソ珪酸塩蛍光体の発光特性を示すものであり、527nmにピークを有する発光スペクトル57と、ピーク波長527nmの発光に対応する励起スペクトル58が描かれている。
図34からもわかる通り、この蛍光体の励起スペクトル58の長波長端は約525nmまで拡がっており、紫外光や紫色光、更には青色光や青緑色光に励起されて緑色発光を示すことがわかる。同様に
図35は赤色発光のユーロピウム付活カルシウムニトリドアルミノシリケート蛍光体の発光スペクトル59および励起スペクトル60を示す図である。この蛍光体の励起スペクトル60は、紫外域から黄色域にまでに拡がっており、紫外光や紫色光、更には青色光や緑色光更に黄色光に励起されて赤色発光を示すことがわかる。以上の2種類の蛍光体に、紫色LEDと青色蛍光体を組合せて白色発光の光源を構成したとき、青色蛍光体はLEDにより励起され、緑色蛍光体はLEDと青色蛍光体により励起され、赤色蛍光体はLEDと青色蛍光体と緑色蛍光体に励起され、蛍光体間の再吸収や多重励起が生ずることになる。この様な光源において、仮に青色蛍光体のみが経時変化で大きく輝度劣化したとしても、青色光の輝度変化が、緑色蛍光体や赤色蛍光体の輝度にも影響を及ぼして、全体としての輝度変化が平均化されることから、結果的に白色光の色度変化の抑制効果が得られるものである。
【0082】
表1-1は、本発明に使用される蛍光体の発光スペクトルについて、半値幅のデータを纏めたものである。表中の数値は、各蛍光体の発光スペクトルにおいて、メインピークに相当する発光スペクトルの半値幅を代表値として示したものである。表1-1からもわかる通り、一部に例外はあるものの、殆どの蛍光体の半値幅は50nm以上であり、使用する蛍光体を適宜選択すれば、全ての蛍光体の半値幅が50nm以上の組合せとした白色光源を構成することが可能である。
【0083】
【0084】
蛍光体は樹脂材料と混ぜ合わされ、蛍光膜(蛍光体層)の形で使用される。LEDチップの周囲を直接または間接的に蛍光体層で被覆することにより、LEDから出射された一次光が、蛍光体層で二次光(白色光)に変換され、光源の外部に放射されることになる。
【0085】
(LEDモジュールの発光特性)
前記したLEDと蛍光体の組合せを使用することにより、本発明の白色光源は、太陽光とほぼ同等の発光スペクトル分布を示すことができる。従って、本発明の白色光源を照明用として用いた場合、太陽光同等の高い演色特性を示し、平均演色評価数Raを95以上とすることができる。そして単なる平均値ではなく、演色評価数R1からR8および特殊演色評価数R9からR15の全てを85以上とすることも可能である。
【0086】
更に、本発明のより望ましい白色光源によると、平均演色評価数Raを97以上、演色評価数R1からR8および特殊演色評価数R9からR15の全てを90以上とすることも可能である。
【0087】
また、本発明の白色光源を、美術品等の無機物の照明として利用するのではなく、人体を対象とした照明用として利用した場合には、あたかも太陽光であるかの様な、人体に優しい照明とすることができる。最近LED照明が普及する様になって、ブルーライトハザードの問題がクローズアップされる様になっている。白色発光中に含まれる青色光成分の強度が強すぎるため、長時間使用し続けると眼精疲労の原因となったり、また夜間にLED白色光を浴びすぎると、人体の持つサーカディアンリズムが乱れる等、人体への様々な障害が懸念される問題である。従来のLED白色光では、青色LEDに黄色蛍光体等を組み合わせて白色光を得ており、これが前記障害をもたらす原因と考えられている。蛍光体は一般的にブロードな発光スペクトルを示すのに対し、青色LEDが特定の青色波長にピークを持つ極端にシャープなスペクトル形状を有しているため、両者を組み合わると、青色波長領域の突出した不自然な白色発光スペクトル分布しか得られないためである。一方、本発明の白色光源の発光スペクトル分布は、先に説明した通り、青色波長領域に不自然な突出部分が無く、青色波長域を含めて、太陽光の発光スペクトルを再現することができる。従って、本発明の白色光源は、ブルーライトハザード等を起こすことのない、人体にやさしい照明光源として活用することができる。
【0088】
青色光が人体にとって有害となる可能性があっても、高演色な白色照明を得る為には、白色光中に一定強度の青色成分を含有することが必要である。単に青色成分の少ない白色光を得るのが目的であれば、色温度の低い白色光源を選択すれば良い。何故なら、色温度が低くなれば低くなる程、白色光中に含有される赤色成分等の相対含有量が増加し、青色光等の相対含有量が減少する為である。しかしながら、本発明の白色光源では、あらゆる色温度の太陽光を再現するのが本来の目的である。従い、人体への有害性に配慮して、特定色温度の再現のみに限定することはできない。このため本発明では、照明用途としての演色性と、人体への安全性を同時に満たす判断基準として、以下に説明するP(λ)/B(λ)値を、本発明の白色光源の特性を特徴づける指標として採用することにした。
【0089】
本発明の白色光源の発光スペクトルをP(λ)、対応する相関色温度の黒体輻射の発光スペクトル分布をB(λ)、そして分光視感効率のスペクトルをV(λ)とし、それぞれが、下記式
【0090】
【0091】
を満たすときに、本発明の白色光源の発光スペクトルは、波長範囲400nmから495nmにおいて、関係式:P(λ)/B(λ)≦1.8 (2)を満たすことができる。従って、400nmから495nmの波長範囲において、P(λ)の強度がB(λ)の強度を上回る波長域が存在しても、その波長域での両者の強度比(P(λ)/B(λ))は最大でも1.8を超えることが無い。なお本発明のより望ましい白色光源では、P(λ)V(λ)とB(λ)V(λ)が前記式を満足する時、波長範囲400nmから495nm間において、関係式(5):P(λ)/B(λ)≦1.5 (5)満たすことができる。従って、本発明の白色光源は、青色波長領域で特定波長の発光強度が極端に突出することなく、よりなだらかで平滑な連続スペクトルを示すものである。
【0092】
前記P(λ)/B(λ)値に関し、下限値については特に限定しない。太陽光を再現するのであれば前記P(λ)/B(λ)値は、1に近い値を示すことが望まれる。495nm以下の波長の光が不足していると、照明対象物の色を自然な色に再現できないためである。しかしながら本発明の白色光源は、既に説明した通り、平均演色評価数や特殊演色評価数が一定値以上を示すことのできる光源である。また、前記式(3)(4)に示される通り、本発明の白色光源では、可視光波長全域に亘り、黒体輻射の発光スペクトルと近似させることを特徴としている。従って、P(λ)/B(λ)値の下限値を特に設定しなくても、本発明の白色光源に求められる実質的な特性は、満足されることになる。白色光源のP(λ)/B(λ)値は、同じ色温度の黒体輻射の発光スペクトルと比較して過剰に含まれる青色光成分の割合を示すものであり、人体に対する影響度等から、その上限値が特に重要となるものである。
【0093】
本発明の白色光源では蛍光体発光の組み合わせにより白色発光を得るものであり、LEDからの一次光は、なるべく多くのエネルギーが蛍光体に吸収されることが望ましく、同時に、LED光が光源外部に漏出することを避ける必要がある。特にLED光に紫外線が含まれる場合には、美術品等の体色を損ねたり、人体の皮膚等に悪影響を及ぼす可能性がある為、漏出防止が強く求められる。
【0094】
本発明のLEDモジュールでは、紫外線の漏出を防止するために、蛍光体層の厚さを十分な厚膜に形成している。個々の蛍光体粒子表面で反射されたLED光が、蛍光体層を透過して光源の外部に漏出しない様、蛍光体層を厚膜化したものである。この時、蛍光体層の厚さが極端に厚すぎると、蛍光体の発光自身も蛍光体層の外に出ることができず、蛍光体層の発光強度が低下してしまう。一般的に、蛍光体の粒子径と最適膜厚は比例関係にあることが知られており、本発明の蛍光体層は実用上できるだけ大粒子となる蛍光体を用い、蛍光体層をできるだけ厚膜化することとした。この様な目的のため、本発明のLEDモジュールに用いられる蛍光体は、平均粒子径が5μm以上50μm以下の範囲が望ましい。より望ましい範囲は平均粒子径が10μm以上40μm以下の範囲である。そして、これら平均粒子径に対応する蛍光体層の厚さは、0.07mm以上1.5mm以下の範囲にすることが望ましい。より好ましい範囲は、100μm以上1000μm以下である。また、蛍光体層中の蛍光体の含有量としては、蛍光体層中の蛍光体の質量比が60質量%以上90質量%以下となることが望ましい。蛍光体含有量が60質量%未満である場合には、蛍光体層を厚くしても、蛍光体層中の蛍光体含量が不足する可能性がある。蛍光体含量が不足すると、蛍光体粒子間の隙間をLED光の一部が突き抜けて、白色光源の外部に漏出することになる。一方、蛍光体含有量が多すぎる場合は、LED光の漏出に関しては問題ないが、蛍光体粒子相互を結びつけるバインダー量が少なすぎるため、蛍光体層の物理的強度が問題となる。以上の様にして、蛍光体層の発光は極力低下させず、かつ紫外線の漏出を0.4mW/lm以下に抑制したLEDモジュールを得ることができる。
【0095】
また紫外線漏出防止を更に徹底するために、蛍光体層の外側に紫外線吸膜を形成しても良い。この場合、紫外線の吸収・反射材料として酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミ等の微粒子白色顔料を使用することができる。これらの微粒子顔料を蛍光体層同様に、樹脂中に分散し、蛍光体層の外側に直接的もしくは間接的に、紫外線吸収膜を形成することにより、目的のLEDモジュールを得ることができる。この様にして得られる本発明のLEDモジュールでは、モジュール外部に漏出される紫外線の量を0.4mW/lm以下に低減することが可能である。
【0096】
前記紫外線量の数値は以下の方法により求めることができる。発光装置より出射される白色光の発光スペクトルをP(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)として、両者を掛け合わせて積分し下記φを求める。
【0097】
【0098】
(7)式中の683は、555nmの波長において、1W=683Lmを満たす定数である。
【0099】
LEDより出射される一次光エネルギーは、下記式よりスペクトルF(λ)を360~420nmの範囲で積分して下記UVを求める。
【0100】
【0101】
発光装置より出射される発光の光束あたりの1次光エネルギーはUV/φにより求めることができる。
【0102】
本発明の白色光源は、太陽光の発光スペクトルと略同等の形状を有し、青色光の波長領域における発光スペクトルの強度も、太陽光と略同等レベルにあることは、前記に説明した通りだが、青色光や紫色光の強度をより確実に低減したい場合、或は太陽光に含まれる青色成分や紫色成分の発光強度よりも更に低減させたい場合には、それらの発光の漏出防止膜を形成すれば良い。この場合、紫色光や青色光の吸収材料として酸化ジルコニウム、酸化ケイ素の微粒子顔料を使用することができる。これらの微粒子顔料を蛍光体層同様に、樹脂中に分散し、蛍光体層の外側に直接的もしくは間接的に吸収膜を形成することにより、目的のLEDモジュールを得ることができる。また前記した間接的な方法と同様の効果を得る方法として、白色光源の透明外囲器、例えばLED電球の透明グローブ材に、酸化ジルコニウムや酸化ケイ素の蒸着膜を形成して対策することができる。
【0103】
(白色光源システム)
実施形態の白色光源システムの一例を
図27に示す。図に示す通り、実施例の白色光源システムは、白色光源部21と、制御部22とを含む。白色光源部21は、基板23と、基板23上に配置された複数の白色光源24と、複数の白色光源を覆うように基板23に固定された発光装置外囲器25とを含む。複数の白色光源24は、それぞれ、LEDモジュールからなる。LEDモジュールは、基板23上に配置されたLEDチップ26と、基板23上に配置され、LEDチップ26を覆う蛍光体層27とを含む。基板23には配線網が設けられており、LEDチップ26の電極は基板23の配線網と電気的に接続されている。なお、発光装置外囲器25は、基板23と対向する側の壁部の外側の面に、レンズ(図示しない)を配置することができる。また、発光装置外囲器25の少なくとも一部を光取り出しの可能な透明部とすることも可能である。透明部は、基板23と対向する側の壁部に形成することが望ましい。さらに、リフレクタ(図示しない)を、例えば、発光装置外囲器25の内側面に配置することができる。
【0104】
制御部22は、コントロール部28と、メモリー部29と、データ入出力部30とを備える。LEDモジュールからなる白色光源24は、コントロール部28の電子回路(図示しない)と配線31により接続されており、コントロール部28から配線31を通して流れる電流により白色光源24が発光する。コントロール部28の電子回路メモリー部29には、太陽光の一日の変化データが場所毎並びに季節(時期)毎に保存されている。希望するパターンの照明光源を得るために、システム使用者が、都市名または緯度・経度などの場所情報、季節等の時間情報を、データ入出力部30に入力し、得られたデータをコントロール部28に送り出す。コントロール部28は、入力データに対応する保存データを抽出し、場所と季節の特定された太陽光の相関色温度と照度のデータを読み取り、これらデータを元に、各白色光源の混合強度比を計算する。計算結果を元にコントロール部28の電子回路が、各白色光源24に印加する電流値を制御して、必要とする太陽光の特性変化を再現することができる。
【0105】
白色光源システムには、LEDと蛍光体を含むLEDモジュールが用いられる。LEDモジュールは、基板と、基板上に載置されたLEDチップと、LEDチップの周囲を覆うように形成された蛍光体層とを含む。
【0106】
基板には、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、ガラスエポキシ等の材料を使用することが好ましい。特に、アルミナ基板、ガラスエポキシ基板を選択することが、熱伝導性や紫外乃至紫色光に対する耐性、絶縁性、反射率、コスト等の観点から総合的に判断して、より好ましいものである。基板を構成する材料の種類は1種類又は2種類以上にすることができる。
【0107】
LEDについては、紫外乃至紫色に発光する材料なら、どのような材料を使用しても構わないが、例えばGaN系のInGaN、GaNまたはAlGaN等を使用することができる。
【0108】
LEDモジュール50では、例えば
図28に示される様に、多数個のLEDチップ52が、基板51上に線状に配列される。チップ列は、一列以上にすることができる。使用個数に応じて複数のチップ列を配列することができる。例えば
図28では、複数のチップ列がマトリックス状に配列されている。LEDチップ52は、出来るだけ高密度に配列されるのが望ましいが、LEDチップ52間の距離が余り近づきすぎると、LEDチップ52同士によるLED発光の相互吸収が生じるため好ましくなく、また連続点灯時にLEDチップ52により発生する熱の放熱を促す為にも、LEDチップ52は適当な間隔を置いて配列するのが望ましい。なお、チップの配列は、線状に限定されることなく、千鳥格子状等に配列しても、同様に高密度な配列とすることができる。
【0109】
図28において、各LEDチップ52はワイヤ53で接続されると共に、電極54と繋がっている。電極54は特定パターンを有し、基板51上の導電部を兼ねている。導電部の材料には、Ag、Pt、Ru、PdおよびAl等から選択される少なくとも一種類の金属を使用することが望ましい。そして金属の表面には、腐食等を防止する目的でAu膜が形成されることが望ましい。Au膜は、印刷法、蒸着法およびメッキ法のいずれを用いて形成してもかまわない。
【0110】
基板51上のLEDチップ52の周囲は、直接または間接的に蛍光体層で被覆される。蛍光体層の配置例を
図29~
図33に示す。
図29に示すように、LEDチップ52の表面上に直接蛍光体層55を形成しても良い。
図30に示すように、LEDチップ52の周囲を蛍光体層55で被覆した後、蛍光体層の周囲を透明樹脂層56で被覆しても良い。また、
図31に示す様に、LEDチップ52の表面を透明樹脂層56で被覆した後、透明樹脂層56のほぼ全面を蛍光体層55で被覆しても良い。さらに
図29~
図31では複数個のLEDチップ52を単一の蛍光体層55もしくは透明樹脂層56で被覆する構造としたが、
図32、
図33の様に単一のLEDチップ52を、単一の蛍光体層55または単一の透明樹脂層56で被覆しても良い。更に応用例の1つとして、単独または複数のLEDチップの周囲を、透明樹脂層で被覆し、その外側に蛍光体層を形成し、更に外側に透明樹脂層を形成する積層構造にしても良い。
【0111】
前記の種々の膜構成において、透明樹脂層を形成する目的は、発光強度の均一化である。複数個のLEDチップが、あるパターンで配列されている場合、基板上にはLEDチップの存在する箇所と、存在しない箇所が共存する。この様なパターンのLEDチップの周囲を蛍光体層で被覆した場合、LEDチップの存在する部分では発光強度が強く、LEDチップの存在しない部分では発光強度が弱くなるため、蛍光体層全面に亘る均一な発光が得られなくなる。この時、蛍光体層の内面または外面に透明樹脂層が形成されていると、層全体で均一な光を得やすくなる。蛍光体層の内面に透明樹脂層が形成されていると、LEDからの一次光が透明樹脂層内で散乱されるためである。一方、蛍光体層の外面に透明樹脂層が形成されていると、蛍光体からの二次光が透明樹脂層内で散乱されるためである。また、LEDチップの個数が複数個でなく、1個の場合でも同様の効果が得られる。LEDチップの一般的な形状は直方体だが、直方体の各面から出射される発光強度は同一ではなく、出射される方向によって、発光の強度分布が生じている。従って、LEDチップの周囲を被覆する蛍光体層の内面または外面に透明樹脂層が形成されていると、LEDチップが複数個の場合と同様に、発光強度の均一化を図ることができる。
【0112】
以上の通り、発光強度の均一化は、透明樹脂層内での光散乱効果により得られる。単なる透明樹脂層ではなく、樹脂層内に微粒子状の無機化合物粉末を含有させることで、より一層の散乱効果が発揮される。樹脂層内に含有させる無機材料粉末としては、フュームドシリカ(乾式シリカ)あるいは沈降性シリカ(湿式シリカ)等のシリカ粉末、フュームドアルミナあるいは粉砕アルミナ等のアルミナ粉末、酸化セリウム粉末、酸化ジルコニウム粉末、酸化チタン粉末、チタン酸バリウム粉末等の金属酸化物粉末が挙げられる。使用する無機材料の種類は1種類又は2種類以上にすることができる。これらのうちでも、シリカ粉末及びアルミナ粉末は、それぞれ、安価でかつ微粒子化が容易であるため、透明樹脂層中に含有させる無機化合物粉末として好ましい。特に、フュームドシリカ及びフュームドアルミナは、それぞれ、球状の超微粒子を得やすいことから好適である。
【0113】
また無機材料粉末の最大粒子径は、透明樹脂層内を通過する光の波長の1/4以下であることが望ましい。最大粒子径が光の波長の1/4以下の無機化合物粉末を用いれば、透過する光が適度に散乱されるため、光源から出射される光の強度が均一化されて、光の配向性を改善することができる。最大粒子径が光の波長の1/4を超える場合には、LEDもしくは蛍光体より出射された光が、無機材料の微粉末によって反射され、光源の内部(LEDチップ側)に戻される確率が高くなる。無機材料粉末の最大粒子径の下限値は、散乱効果の面からは特に限定されるものでは無いが、極端な微粒子を工業的に得ることは難しく、また粉末の取り扱いの面からも、数nmより大きいことが望ましく、より望ましくは数十nm以上である。
【0114】
無機材料粉末の具体的な最大粒径は、560nmの黄色光に対しては140nm以下、420nmの紫色光に対しては105nm以下となる。透過する光の最小波長は、360nmに発光ピークを有するLEDを用いた場合の紫外光である。最大粒径が90nmである無機材料粉末を用いれば、どのようなケースの透明樹脂層にも対応できることになる。
【0115】
上述したような無機化合物粉末は、透明樹脂層に0.1~5質量%の範囲で含有させることが好ましい。透明樹脂層中の無機化合物粉末の含有量が0.1質量%未満であると、無機化合物粉末による光の散乱効果を十分に得ることができないおそれがある。一方、無機化合物粉末の含有量が5質量%を超えると、光の多重散乱等が生じやすくなり、光源の外部に取り出される光が減少するおそれがある。透明樹脂層中の無機化合物粉末の含有量は1質量%以上とすることがより好ましい。
【0116】
蛍光体層には、透明樹脂材料が含有されていても良い。一方、透明樹脂層は、透明樹脂材料を主体とするものであっても良いが、蛍光体あるいは無機材料粉末等の他成分を含有していても良い。このような透明樹脂材料としては、強度、耐熱性および透明性を満足する材料であるなら、どのような材料を用いても構わないが、具体的にはシリコーン樹脂、エポキシ樹脂等を使用することが望ましい。特に本発明の様に、透明樹脂層を、紫外線発光のLEDと組み合わせて使用する場合には、紫外線への耐劣化特性に優れるシリコーン樹脂を用いるのが更に望ましい。
【0117】
透明樹脂材料として前記シリコーン樹脂を使用する場合、基板材料には、吸水率が5~60%の範囲のアルミナ基板を用いるのが望ましい。このような適度な吸水率を有するアルミナ基板を用いることによって、シリコーン樹脂含有層(例えば、シリコーン樹脂を含む透明樹脂層及び蛍光体層)との密着強度が向上する。具体的には、アルミナ基板とシリコーン樹脂含有層との密着強度を1N(100gf)以上とすることが可能となる。アルミナ基板の吸水率は、EMAS-9101に開示される吸水率評価手法により測定した値を示すものとする。アルミナ基板とシリコーン樹脂含有層との密着強度は、シリコーン樹脂含有層(蛍光体層)を側面からテンションゲージで押し、シリコーン樹脂含有層(蛍光体層)が剥離した際の押力を示すものとする。
【0118】
吸水率が5%以上のアルミナ基板によれば、シリコーン樹脂が適度に浸み込むため、シリコーン樹脂含有層との密着強度を高めることができる。アルミナ基板の吸水率が5%未満の場合には、シリコーン樹脂の浸み込みが弱く、十分な密着強度を得ることができない。ただし、アルミナ基板の吸水率が60%を超えるとシリコーン樹脂が浸み込みすぎて、シリコーン樹脂含有層(蛍光体層)を所定形状に成形することが困難となる。アルミナ基板の吸水率は20~50%の範囲であることがより好ましい。
【0119】
アルミナ基板の吸水率は、例えば基板焼成時の焼成温度を変化させることにより調整することができる。具体的には、アルミナ基板の形成材料等に応じて、基板焼成時の温度を1100~1500℃の範囲で適宜に調整することによって、適度な吸水率(5~60%の範囲)を有するアルミナ基板を得ることができる。
【0120】
上述したアルミナ基板を使用することによって、アルミナ基板とシリコーン樹脂含有層との密着強度を1N以上とすることができる。LEDチップと蛍光体層との間に透明なシリコーン樹脂含有層を介在させる場合も同様であり、アルミナ基板と透明なシリコーン樹脂含有層との密着強度を1N以上とすることができる。このように、アルミナ基板とシリコーン樹脂含有層や透明なシリコーン樹脂含有層との密着強度を1N以上とすることによって、LEDモジュールの取扱い性が向上する。すなわち、取扱い時におけるシリコーン樹脂含有層の剥離が抑制される。従って、シリコーン樹脂含有層の剥離による不点灯や破壊を再現性よく抑制することが可能となる。
【0121】
(実施例)
以下においては、太陽光の変化を連続的に再現する方法と共に、再現する白色光に含まれる紫外光や青色光成分を適正量まで低減する方法について、具体的に説明する。
(実施例1)
先ず、青色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体、赤色蛍光体の4種類の蛍光体とLEDの組み合わせによる6種類の白色光源を作成した。具体的には表1-2に記載した組成の蛍光体を表中に記載の所定の割合で混合し、6種類の色温度の白色光としたものである。各蛍光体は平均粒径が25~35μmの粉末を用い、シリコーン樹脂に分散させたスラリーをLEDチップの周囲に塗布することで、LEDモジュールを作成した。蛍光体層の膜厚は、500~700μmとし、蛍光体層中の蛍光体粉末の密度は、70~80質量%の範囲となる様調整した。またLEDには410nmに発光ピークを有するGaN系のLEDを用いた。以上の様なLEDモジュールに、リフレクタ、レンズ、外囲器を取り付け、さらに電子回路を接続して実施例の白色光源とした。
【0122】
【0123】
次に、前記6種類の白色光源を用い、特定場所における、太陽光の一日の変化を再現した。再現したのは、春(2015年5月14日)の横浜市における一日の変化である。再現のために利用したデータは、同日の日の入りから日の出まで、約3分毎の太陽光発光スペクトルを測定したものである。
図5は、前記データのうち、同日午前7時00分、午後12時00分、および午後6時45分の夫々の太陽光の発光スペクトル分布を抜き出し、図示したものである。3種類の時刻の太陽光について、発光スペクトルデータを元に、夫々の相関色温度を計算すると、午前7時00分が4236K+0.004duv、午後12時00分が5704K+0.001duv、また午後6時45分が2990K-0.004duvであった。
【0124】
まず、3種類の時刻の太陽光発光スペクトルを、本発明の前記6種類の白色光源(白色光源1~6)を用いて、再現した。各光源色の混合比率は表2に示す通りである。なお表中の数字は強度比(相対値)を示したものである。また3種類の白色光源の発光スペクトル分布は、
図6中の曲線6から8に示す通りである。これらの発光スペクトル形状と、同じ色温度の黒体輻射の発光スペクトルを比較すると、発光スペクトル曲線にミクロの凹凸が存在するかどうかは別にして、両者の全体形状は良好な一致を示すことがわかる。特に人間の眼の感度が高い400nmから650nmの波長領域において、両者は非常によく近似した曲線を示していた。
【0125】
【0126】
光源A-Cの発光スペクトルと、各光源の相関色温度と同じ色温度の黒体輻射の発光スペクトルについて、両者の差分スペクトルを求めた。差分スペクトルとは、各白色光源の発光スペクトルをP(λ)、白色光源と同じ色温度を示す黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)、P(λ)×V(λ)が最大となる波長をλmax1、B(λ)×V(λ)が最大となる波長をλmax2としたとき、[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))-(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]を求め、可視光波長域380nmから780nmに亘ってプロットしたものである。
図7~
図9を見れば判る通り、光源A、B、C共に差分スペクトルは±0.1以下の範囲内にあり、前記式(3)を満足することから、いずれの光源も本発明の白色光源に相応しい特性を有するものである。
【0127】
続いて、これらの各光源の演色評価数を求めた。3種類の光源について、380nmから780nmの波長範囲に亘って、5nm間隔で各スペクトル強度のデータを求めた後、JIS-8726に記載の方法に従って計算を行い、平均演色評価数と特殊演色評価数を求めた。結果は下記の表3に示す通り、実施例1の白色光源は、全ての評価指数で高い値を示し、太陽光と略同等の優れた演色性を示すものであった。
【0128】
【0129】
実施例1の白色光源は、410nmに発光ピークを有する紫色発光LEDと4種類の蛍光体を組み合わせたLEDモジュールを使用している。一般にLEDは発光ピーク波長においてシャープな形状の発光スペクトルを有し、蛍光体はブロードな発光スペクトルを有するため、全体のスペクトル形状は、LEDの発光が突出した不自然なものとなりやすい。しかしながら実施例1で使用されるLEDの発光ピーク波長は青色領域になく、紫色波長域にあり、青色光が目立たない上、LEDから出射される紫色光は、その殆どが蛍光体により吸収されるため、モジュール外に漏出されるLED光は僅かな光量となる。従って、本発明の白色光源ではブルーライトハザード等の心配のない、人体に優しい白色光源とすることができる。
【0130】
本発明の白色光源について、上記効果を定量的に評価するため、各白色光源のP(λ)/B(λ)の値を計算により求めた。P(λ)/B(λ)値の求め方は、例えば前記光源Cを例にすると以下の通りである。まず、分光分布測定器を用いて光源Cの発光スペクトル分布を測定する。測定装置としては、最近では多数の装置が市販されており、精度上の問題が無ければ、特に機種限定等を行う必要はない。具体的な発光スペクトルの形状は、既に説明した様に、
図6の曲線8に示す通りであり、この発光スペクトルをP(λ)とする。このP(λ)の発光スペクトル分布データを用いて、xy色度図上の発光色度点を求めると、光源Cは2990K-0.004duvの相関色温度の白色光源であることが判る。従って、これに対応する黒体輻射の発光スペクトルB(λ)は、色温度が2990Kとなるから、前記式(6)において、色温度(T)に2990Kを代入することにより、具体的なスペクトル形状を求めることができる。
【0131】
得られたP(λ)とB(λ)の発光強度を比較することにより、P(λ)/B(λ)値を求めることができるが、得られた発光スペクトル分布をそのまま比較すると、求め方次第で結果は如何様にも変化するため、両者の総エネルギーが同じ値となる条件を設定し、その条件を満たしうるP(λ)、B(λ)を求めた後、両者を比較した。具体的な条件は下記式(1)を満たすことである。
【0132】
【0133】
式中V(λ)は分光視感効率のスペクトル分布であり、上記(1)式を満足するP(λ)およびB(λ)の各スペクトル分布を計算により求めた。補正後のP(λ)およびB(λ)を1つのグラフに纏めると、
図10に示すスペクトル分布が得られる。曲線9が補正後のB(λ)、曲線10が補正後のP(λ)である。
【0134】
図10において、400nmから495nmの範囲における、両スペクトル分布の強度を比較すると、P(λ)の発光強度がB(λ)の発光強度を上回る箇所が約3ケ所存在するが、それらの波長領域の中で、P(λ)/B(λ)比の最大値を求めると、1.37との値が得られた。つまり400nmから495nmの間の全ての波長において、P(λ)の発光強度はB(λ)の発光強度の1.37倍またはそれ以下であることを意味している。
【0135】
本発明では、各白色光源のP(λ)/B(λ)を、上記で求めた様にP(λ)/B(λ)比の最大値を代表値として採用し、各白色光源の評価基準とした。つまり、P(λ)/B(λ)値が1を超え、かつ、より大きな値を示すほど、各白色光源に含まれる400nm乃至495nmの可視光、とりわけ青色光が、黒体輻射の発光スペクトル中に含まれる同じ波長範囲の可視光に対して、過剰かつ大量に含まれていることを意味するものである。以上により、光源Cは波長範囲400nmから495nmにおいて、下記式(9)の関係を満たすことがわかる。
P(λ)/B(λ)≦1.37 (9)
表3中の光源B,Aについても同様の関係を確認すると、それぞれ
図11、
図12のスペクトル曲線を得ることができ、
光源Bは下記式(10)
P(λ)/B(λ)≦1.26 (10)
光源Aは下記式(11)
P(λ)/B(λ)≦1.07 (11)
を夫々満たすことがわかった。したがって、前記白色光源C,B,Aは、青色波長域で、凹凸の少ない平滑な発光スペクトルを示し、人体のサーカディアンリズムに対して悪影響を及ぼすことの少ない、優しい光源と看做すことができる。
また実施例1のLEDモジュールでは、モジュールから漏出される紫外線量も低減されている。実施例の光源から漏出されるLED一次光を、前記式(7)、(8)を用いて計算すると、全て0.1mW/lmであり、非常に微弱なものであった。従って、実施例1の白色光源を、美術品等の照明に用いた場合は、美術品で使用される絵具等を劣化させることはなく、また人体の照明用に用いた場合、人体の皮膚や眼を損傷させることもなく、これら用途に好適な照明とすることができた。
【0136】
以上において、実施例1の白色光源の種々の特徴を説明したが、上記は朝昼晩の代表的な白色光を取り上げたに過ぎず、実際には上記特徴を有する白色光を、1日の連続的な変化として再現することができる。
図13は、春(2015年5月14日)の横浜市における1日の変化をあらわしたグラフである。3分毎に測定した太陽光の発光スペクトルデータを用いて、各相関色温度の値を求め、所定の相関色温度が得られる様に、光源1~光源6の混合割合を決定し再現した。また照度の変化は実測値をもとに、特定の値を基準とした相対値を計算し、照度比(%)としてプロットしたものである。
【0137】
図13において、曲線15は相関色温度の変化、曲線16は照度変化を示すものである。春の横浜市における1日の変化は、日の出と共に照度は明るくなり、午前11時頃に照度は最も高くなり、その後午後1時過ぎまで高い状態が継続した後、日の入にむけて照度は徐々に低下していった。一方の色温度については、日の出に約2200Kの真っ赤な太陽が現れ、照度の増加と共に色温度も上昇し、温白色から白色さらに昼白色と変化し、午後12時頃には、最高度に達して約6000Kとなった。その後は午前中と逆の経過を辿り、午後7時頃には2300Kに戻り、日の入となった。
【0138】
本発明の白色光源システムでは、
図13に示された色温度や照度の経時変化を、白色光源に印加する電流値をコントロールして再現した。まず特定の相関色温度の白色光を得るため、光源1~光源6に加える電流の強度比率を決定した。次に、照度の変化に対応するため、前記の電流比率を保ったまま、所定の照度が得られる様に、トータル電流の強度を調整した。本発明の白色光源では、
図13に示された経時変化のデータについて、3分毎の実測値を基に調整できる様、電流値のプログラム制御を行い、太陽光の経時変化を再現した。
【0139】
この様な白色光源システムを美術館や病院、更には家庭用の照明として適用した。この照明では太陽光の瞬間的な特性を再現するのではなく、時々刻々変化する発光特性を再現しており、人体の持つサーカディアンリズム等への好影響が期待される。更に、白色照明による特性変化は、人間の眼では識別することのできない穏やかな変化を再現しているため、太陽光同様の極めて自然な変化として、人間に知覚されるものである。従い、体力的に劣る病院患者等においても、無理のない照明として受け入れられることが、可能なものである。
【0140】
(比較例1)
太陽光のスペクトル形状に関係なく、黒体輻射の軌跡上に位置する特定色温度の白色光源を作成した。使用したLEDモジュールは青色LEDと黄色蛍光体の組合せによるもので、LEDには発光ピーク波長が448nmであるInGaN系のLEDを、蛍光体にはピーク波長が560nmであるユーロピウム付活オルソ珪酸塩蛍光体を用いた。蛍光体の平均粒子径は7μmであった。この蛍光体粒子をシリコーン樹脂中に分散させて蛍光体スラリーを作成し、基板上に載置されたLEDチップを覆うように均一にスラリーを塗布することで、LEDモジュールを作成した。蛍光体層の膜厚は、LEDの青色光と蛍光体の黄色光が混合して、所望の白色光となる厚さに調整した結果、約65μmであった。
【0141】
前記LEDモジュールに、リフレクタ、レンズ、外囲器を取り付け、さらに電子回路を接続して比較例の白色光源とした。得られた白色光源の色温度は6338Kであり、発光スペクトル特性、(P(λ)×V(λ)/(P(λmax1)×V(λmax1))は
図14に示す通りであった。また、対応する6338Kの色温度の黒体輻射スペクトルに関し、B(λ)×V(λ)/(B(λmax2)×V(λmax2))を求めると、
図15の曲線が得られた。更に
図14と
図15の差分スペクトル(P(λ)×V(λ)/(P(λmax1)×V(λmax1))―B(λ)×V(λ)/(B(λmax2)×V(λmax2))は、
図16に示す通りである。
図16からわかる通り、差分スペクトルは-0.32~+0.02の範囲内に分布されており、差分スペクトルの絶対値が全ての波長範囲で0.2以下との前記式(2)の条件を満たすことができず、太陽光のスペクトルを再現したものでは無かった。
【0142】
比較例1の白色光源は、黒体輻射の軌跡上の色温度と一致していたものの、発光スペクトル形状が異なるため、太陽光の様な高い演色性を示すことはできなかった。平均演色評価数Raは約70と低く、R1~R15についても下表の通りで、太陽光の特性とはほど遠いものであった。
【0143】
【0144】
続いて、比較例1の白色光源について、青色波長域の特性を確認した。比較例1の白色光源の発光スペクトルをP(λ)、対応する相関色温度の黒体輻射の発光スペクトル分布をB(λ)、そして分光視感効率のスペクトルをV(λ)とし、それぞれが、下記式(1)を満たす時
【0145】
【0146】
比較例1の白色光源の発光スペクトルは、波長範囲400nmから495nm間で、下記式(12)
P(λ)/B(λ)≦1.87 (12)
との関係を示し、本発明の白色光源の上限値1.8を超えるものであった。具体的には
図17に示す通りである。
図17からも判る通り、比較例1の白色光源は、450nm近辺にピークを持つシャープな発光スペクトル形状を有しており、黒体輻射の発光スペクトル形状と比較すると、450nm近辺に過大な凸部を有すると共に、500nmの手前で過大な凹部を有し、明らかに黒体輻射(太陽光)とは異なる特徴を有する発光スペクトルを示すものであった。なお、青色LEDを用いた白色光源は、この様に際立った凸部を示すのが特徴であり、白色光源の色温度が低くなればなるほど、この凸部が目立つ様になる。従って比較例1の白色光源は6338Kと高い色温度の白色光源であったが、より色温度が低くなると、前記P(λ)/B(λ)値は、1.87より大きくなる傾向にある。
【0147】
このように比較例1の白色光源は、見かけ上は本発明と同様の白色発光を示したものの、赤みが乏しく、演色性に劣る特性を示した。そしてこの様な白色光源を病院用の照明として用いた場合、青色領域に強い発光波長成分が含まれるため、ブルーライトハザード等の問題や、人体のサーカディアンリズムへの悪影響が懸念されるものである。また、比較例1の白色光源ではLEDモジュールとして青色発光LEDを使用したため、比較例1の白色光源において、紫外線は殆ど含有されていないが、もし紫外発光LEDを使用していた場合、多量の紫外線の漏出することは明らかであり、もし美術館用照明として用いた場合には、絵画の退色を早める等、有害な影響が懸念されることは当然である。なお、比較例1の白色光源は、太陽光の有する発光特性とは、あらゆる面で違いが大きすぎるため、この様な光源を用いて1日の太陽光変化を再現しても意味はなく、本発明の白色光源システムは作成しなかった。
【0148】
(実施例2)
本発明の白色光源に含有される青色発光成分が、どの様に人体に感知されるのか、評価実験を行った。本発明では、白色光源に含有される青色光の強度について、前記式(1)に示されるP(λ)/B(λ)値を、評価の判断基準としている。この数値が1に近いほど、照明光源の演色性および人体への安全性の面から、総合的に最も望ましい値となる。一方、安全性の面からは、この数値が小さい程望ましいものだが、上限値として、どの程度まで許容されるのか、確認実験を行った。
【0149】
実験では、種々のP(λ)/B(λ)値の白色光源を用意し、その白色光源から放射される光を見た人間が、どの程度の眩しさを感知するかにより、人体への影響度を調査した。つまり青色光の強度差により、人体における眩しさの感知程度に差異が生じる事を確認できれば、青色光が影響していることの証左となる。ここで問題となるのは実験の方法である。人間が光源を見て眩しさを感じるのは、光源からの光の強度により左右される。実験の対象となる光源は白色光源であり、仮にある白色光源の眩しさを特定したとしても、眩しさの原因が、白色光全体の強度や、赤色発光成分等の強度ではなく、青色発光成分の強度が主要因であることを、先ず確認できる必要がある。その上で、感知された眩しさの程度と、青色成分の強度変化との間に、相関関係の認められることが必要である。
【0150】
青色光の眼に対する影響の度合いを、他の可視光による影響の度合いと区別して評価する方法として、本発明では青色光の持つ、物理特性を利用することとした。青色光を含む400から495nmの波長範囲の発光成分は、他の波長の可視光成分よりも高いエネルギーを有している。一般に高いエネルギーを持つ電磁波は、空間を移動中に種々の障害物と衝突し、散乱され易い。つまり青色光は他の可視光成分より散乱され易いことが知られている。従って、白色光源から放射された発光のうち、青色発光成分は、空気中のガス分子やごみ等の浮遊物の影響により散乱されると同時に、眼の中に到達した青色光もまた水晶体を移動中に散乱の影響を強く受けることになる。一方、水晶体を透過した後に達する網膜の視細胞には、主に網膜の中心部にあって普段は明るい画像を見る錐体と、主に網膜の周辺部にあって暗い画像を見る杆体から構成されている。そうすると、散乱した青色光は、本来は暗い画像を感知すべき杆体に到達することになる。通常は感じることのない明るい散乱光が杆体に届くと、瞳孔の括約筋が過剰に収縮することになり、人間は眩しさを強く感じることになる。
【0151】
以上の現象では、人が眩しさを感知する場合に、青色光の場合は主として杆体に過剰な光が到達することに起因するものであり、一方青色光以外の可視光では、主として錐体に過剰な光が到達することに起因するものであるから、両者間では眩しさを感じるメカニズムが異なることになる。従って、この様な現象を利用して、例えば白色光源全体の強度を一定に保った上で、白色光を構成する青色光成分の含有比率を変化させる事により、人が感知する眩しさの程度を正しく評価できることになる。つまり錐体に達する光量が一定もしくは若干減少する場合でも、杆体に達する光量が増加すれば、人は眩しさをより強く感知することになり、この変化を測定することが、青色光による人体への影響を評価する最も有効な手段となる。
【0152】
以下において、具体的な実験の内容とその結果を纏める。
調査を目的に、種々のP(λ)/B(λ)値の光源を得るため、以下5種類の光源を追加試作し、実施例や比較例の光源とした。
【0153】
まず、白色光の発光スペクトルにおいて、青色波長域の発光強度を極力低減させた白色光源を作成した。具体的には、実施例1の光源BのLEDモジュールに、紫外乃至青色光吸収膜を形成して対応した。実施例1の光源BのLEDチップの周囲を被覆する蛍光体層の周りに、3層膜を形成した、最も内側には平均粒径0.3μmの酸化亜鉛顔料による約3μmの薄い膜(第1の層)を、中間には平均粒径0.08μmの酸化ジルコニウムによる約0.9μmの膜(第2の層)、そして最も外側には平均粒径0.5μmの酸化ケイ素による約6μmの薄い膜(第3の層)を形成した。夫々の薄膜は、各微粒子粉末をシリコーン樹脂中に分散し、比重、粘度を調整した後、所定量をスラリー塗布し、形成した。
【0154】
得られたLEDモジュールに所定の電流を印加し、白色に発光することを確認した。LEDモジュールから出射される白色光の発光スペクトル分布を、分光分布測定器を用いて測定した。得られた発光スペクトルデータを基に、(x、y)色度図上の色度点を計算すると、5110K-0.002duvとなり、紫色乃至青色成分をカットする前の光源Bの相関色温度5704K+0.001duvに対して、約600K低い色温度にシフトしていることが判明した。
【0155】
紫色乃至青色光成分カット後の白色光源の発光スペクトルをP(λ)、対応する相関色温度の黒体輻射の発光スペクトル分布をB(λ)、そして分光視感効率のスペクトルをV(λ)とし、それぞれが下記式(1)を満たす時、
【0156】
【0157】
P(λ)/B(λ)の比率は、400nmから495nmの波長間で、最大でも0.98となり、下記式(13)を満足することができた。
P(λ)/B(λ)<1 (13)
つまり、得られた白色光源の発光強度を黒体輻射の発光強度と比較した時、400nmから495nmの全ての波長において、実施例2の光源の発光強度が黒体輻射の発光強度を上回ることは無かった。
【0158】
次に、前記P(λ)/B(λ)値が比較的大きな値を示す、実施例2の白色光源4種類(4)~(7)を作成した。試作に用いた材料や部品は全て実施例1と同じものとし、それらを実施例1と同様に組み立てた。すなわち、実施例1の白色光源1~6の光源色を表5-2に示す混合比率で混合することにより、実施例2の白色光源4種類(4)~(7)を得た。なお、表5-2中の数字は強度比(相対値)を示したものである。強度比の制御は、白色光源1~6に印加する電流値を制御することにより行った。また、得られた白色光源のP(λ)/B(λ)値を評価する為、追加試作の白色光源(5)~(7)と、前記白色光源に対応する黒体輻射の発光スペクトルを比較すると、
図18、
図19、
図20のグラフが得られた。これらの図からも判る通り、それぞれの光源において、400nmから495nmの波長域における、P(λ)/B(λ)値の最大値は、
図18の光源が1.47、
図19の光源が1.69、
図20の光源が1.76であった。
【0159】
また、白色光源(4)~(7)の差分スペクトルは±0.1以下の範囲内にあり、前記式(3)を満足していた。
【0160】
【0161】
【0162】
また、比較例の白色光源を2種類追加試作した。比較例の1つ白色光源(9)は、使用した材料や部品は比較例1と全く同じだが、LEDに組み合わせる蛍光体量を蛍光体層の膜厚を62μmに低減させることで変更し、異なるP(λ)/B(λ)値を示す白色光源とした。具体的な発光スペクトル形状は
図21に示す通りであり、400nmから495nmの波長域における、P(λ)/B(λ)値の最大値は、2.11であった。また、比較例の他の1つ白色光源(10)も同様に使用した材料や部品は比較例1と全く同じだが、LEDに組み合わせる蛍光体量を蛍光体層の膜厚を55μmに低減させることで変更し、異なるP(λ)/B(λ)値を示す白色光源とした。具体的な発光スペクトル形状は
図36に示す通りであり、400nmから495nmの波長域における、P(λ)/B(λ)値の最大値は、3.28であった。
【0163】
以上の試作品に加え、今回の評価に用いる光源の諸特性を纏めると表5-1~5-2の通りとなる。評価用の光源には、実施例2で試作した光源に加え、比較の為に実施例1、比較例1の光源も追加した。また表6には、実施例2で試作した主要な光源の演色評価数の特性を一覧表にまとめた。
【0164】
【0165】
白色光源を評価するために、人間の感覚による主観試験を行った。実験には上記表5-1の10種類の光源を準備した。10種類の光源を、光源の輝度が同一となる動作条件で順次点灯させた。光源の点灯試験中は、窓のカーテンを閉じると共に、室内照度が変化しない様、天井照明の明るさを常に一定値にキープした。そして光源から3m離れた位置に人間が立ち、各光源を直接眺めて、光源から受ける刺激の強さを比較評価した。評価の基準は、単純化を図るため、光源を眩しく感じるかどうかについて、YesまたはNoの2種類の回答を得る方法とした。また被験者は、色覚正常な成人男女の合計50名とした。なお眼鏡着用者については、ブル-カットタイプの眼鏡を使用していないことを確認の上、試験を実施した。
【0166】
10種類の白色光源サンプルについて、主観評価の結果を、光源の主要特性と共に表7に纏めた。
【0167】
【0168】
10種類の白色光源は全て同じ輝度となる条件下で比較評価されており、本来であるなら全ての光源に対して同じ程度の眩しさを、人は感知するはずである。しかしながら、結果は表6に示す通り、白色光源の種類に拠って大きく異なるものであった。この様な結果が得られたのは、青色光の特異性により生じたものであり、このデータは実験方法の正しさを裏付けるものであった。例えば、表6を見てわかる通り、P(λ)/B(λ)値が大きい程、眩しさを感知する人の割合は概ね増加する傾向にあり、このことは、眼に入射され、眼が感知した光の強度に変わりは無くても、青色成分の量が多いほど散乱光の量が多くなるため、人が眩しさをより強く感じたことを意味している。
【0169】
上記現象をより明確な形で示しているのは、表7の光源(1)と光源(6)、もしくは表7の光源(4)と光源(5)の2種類の組合せを比較した結果である。これらの白色光源では、ペアを構成するお互いの光源の色温度はほぼ同一である。しかも輝度は全て同一であるから、これらの光源を人間が観察した場合、ペア同士の光源は両者共に、明るさも色も同じに見えるはずである。それにも拘らず、眩しさの感知程度に大きな差異が生じている。具体的には、例えば表7の光源(4)と光源(5)を比較した場合、色温度は両者共に約5100Kであるが、光源(4)を眩しく感じた人の割合が14%であるのに対し、光源(5)では28%であり、大きな開きが認められた。両者のP(λ)/B(λ)値を確認すると、光源(4)が0.98であるのに対し、光源(5)は1.47であり、P(λ)/B(λ)値の大きさに対応して眼に入射した散乱光の割合が増加し、眩しさの感知程度に影響を与えたものである。
【0170】
一方、上記の例外として、表7の光源(2)と光源(3)の関係では、人が眩しさを感知する程度と、P(λ)/B(λ)値の間に逆転現象が見られる。光源(2)のP(λ)/B(λ)値は1.26であり、光源(3)の1.37より小さいにも拘らず、光源(2)を眩しく感じる人は22%であるのに対し、光源(3)の18%より大きい値を示し、お互いの関係が逆転していた。一見すると矛盾したデータではあるが、このような結果は白色光源の色温度の相違により生じたものである。P(λ)/B(λ)値は、対応する黒体輻射に比較して過剰に含まれる青色光の含有量を規定したものである。ところが比較の基準となる黒体輻射の色温度は、光源(3)が2990Kであるのに対し、光源(2)が5704Kであった。一般に白色光の色温度は、値が高くなる程、青色発光成分の相対比率が増加するものである。従って、P(λ)/B(λ)値を求める際に比較基準となった黒体輻射のスペクトルでは、光源(2)の青色光成分の方が、光源(3)の青色光成分より多くなっていた。このため、黒体輻射に対して過剰分となる青色光は光源(3)の方が多かったが、青色光の全体量としては光源(2)の方が多くなったものであり、青色光の含有量に応じて、眩しさの感知程度が変化していることに変わりはない。
【0171】
以上の結果より、白色光源中の青色光成分の含有量が、人が眩しさを感知する程度に影響を与えており、しかもP(λ)/B(λ)値が大きいほど、人間には眩しく感じられることが確認された。この結果は、当初の推論を裏付ける内容であり、白色光源を眩しく感じた原因として、過剰な青色発光成分による影響が特に重要と考えられる。そして比較例の白色光源(8)~(10)は、P(λ)/B(λ)値が1.87と2.11および3.28であって、1.8を超える大きな値を示し、被験者のうちの過半数が青色光の眩しさを感知するレベルであった。この様に眩しさを強く感じる光源は、近年注目されているブルーライトハザード等の問題が懸念される照明であり、今後の真相究明や改善検討が待たれる光源である。一方、実施例の白色光源は、P(λ)/B(λ)値が0.98~1.76の範囲にあり、従来光源である比較例より青色成分が少ない方向に改善されており、また眩しさを感じる人の割合が50%未満であり、ブルーライトハザード等の問題に対して、改善された光であると判断される。
【0172】
なお、表5-1~表5-2では、実施例の白色光源としては、色温度が2990Kから5704Kであり、P(λ)/B(λ)値が0.98から1.76の範囲のものを例示したが、本発明の白色光源は、色温度が2000Kから6500Kにあり、P(λ)/B(λ)値が1.8以下の範囲にあることを特徴としている。従って、本発明の白色光源における、青色光成分の含有量は、従来光源である比較例1の白色光源より、確実に少ないものとなる。何故なら比較例1の白色光源は6338Kであり、ほぼ上限値に近いものである。一方本発明の白色光源は、比較例1と略同等の色温度か、より低い色温度の白色光源であるから、青色光成分の含有量は比較例1と同等もしくは、それ以下である。その上でP(λ)/B(λ)値が比較例1より小さい値となるから、本発明の白色光源における青色光成分の含有量は、比較例1の白色光源に対して確実に低い値となる。そして、P(λ)/B(λ)値が1.5以下となる本発明の白色光源(例えば白色光源V)では、眩しさを感知する人の割合が、比較例1の光源に対してほぼ半減されており、青色光成分の影響をより顕著に低減できるものである。この様に、本発明の白色光源は、比較例である従来光源に比べて、明らかな改善効果を有するものである。
(実施例A)
4種類の白色光源からなる白色光源システムを作成した。このシステムでは、システムを構成する白色光源の個数を必要最小個数に限定しているため、黒体輻射のスペクトルを忠実に再現できる範囲が狭くなる。具体的には
図37に示す光源7~10を備えた白色光源システムであり、図中の光源7から光源10に囲まれた四角形内の色温度領域、つまり、4500Kから6500Kの色温度に亘り、±0.005duvの偏差内の相関色温度の再現が可能である。このようなシステムでは、太陽光の1日の変化を再現することは難しいが、明るく輝く昼間の太陽を再現するには十分な色温度の範囲をカバーしている為、例えばオフィス用の高演色照明として活用するには十分な特性である。
【0173】
4種類の白色光源は、以下の手順で作成した。
図38に示すように、外形が30×30mmのアルミナ基板71に、チップ形状が0.4×0.4mmのLEDチップ72を5直列×5並列に配置した。LEDには発光ピーク波長が405nmである紫色発光のGaNを用いた。またアルミナ基板の吸水率は20~30%のものを使用した、
図38に示すLEDモジュール70では、LEDチップ72を直列接続したチップ列それぞれを独立に透明樹脂層(図示せず)で被覆し、複数列の透明樹脂層の夫々の全面を蛍光体層73で被覆した。なお、透明樹脂層内には平均一次粒子径が7nmで、最大粒子径が25nmのフェームドシリカを微粒子シリカ粉末として、透明樹脂に対して3質量%添加した。また、蛍光体層中に含有させる各蛍光体粉末は平均粒径が30~40μmのものを用いた。微粒子シリカ粉末をシリコーン樹脂に分散させたスラリーをLEDチップの周囲に塗布することにより透明樹脂層を形成した。次いで、蛍光体粉末をシリコーン樹脂に分散させたスラリーを透明樹脂層の全面に塗布することにより蛍光体層73を形成した。蛍光体層73の膜厚は、500~750μmとし、蛍光体層中の蛍光体粉末の密度は、75~85質量%の範囲となる様調整した。また基板71上に電極として導電部75が形成され、各LEDチップ72が電極と繋がっている。電極の材料には、Pd金属を使用し、表面には電極材の保護の為、印刷法によるAu膜を形成した。ダム74は、基板71上にLEDチップ72の列を囲むように配置されている。以上の様なLEDモジュール70に、リフレクタ、レンズ、外囲器を取り付け、さらに電子回路を接続して実施例Aの白色光源システムに含まれる白色光源とした。
【0174】
各白色光源は、青色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体、赤色蛍光体の4種類の蛍光体とLEDの組み合わせたもので、各蛍光体の種類と配合割合、および得られる光源の相関色温度は下表の表8に示す通りである。
【0175】
【0176】
4種類の白色光源の発光スペクトルについて、対応する色温度の黒体輻射のスペクトルと対比させたグラフを
図39から
図42に示す。
図39~42を見ればわかる通り、4種類の光源は黒体輻射のスペクトルに高いレベルで一致しており、各白色光源と、対応する黒体輻射スペクトルとの差分スペクトルを求めたところ、4種類とも全て±0.2以下の範囲内にあり、前記関係式(3)を満足することが確認された。従い、いずれの光源も本発明の白色光源に相応しい特性を有するものであり、前記4種類の白色光を混合して得られる白色光もまた、本発明の白色光源に相応しく、太陽光の再現が可能なものである。
【0177】
また、4種類の白色光源を混合して得られる混合白色光について、前記関係式(2)および(5)で得られるP(λ)/B(λ)値について確認した。一例として、4種類の光源を以下の強度比率、光源7:光源8:光源9:光源10=0.14:0.41:0.34:0.11、となる様に混合し、光源11を得た。混合白色光源の相関色温度は6000K+0.001duvであった。そして同じ色温度の黒体輻射のスペクトルと形状を比較すると、
図44の通りである。
図44からわかる通り、P(λ)/B(λ)値は1.17となり、関係式(2)および関係式(5)のいずれをも満足する光源であることが確認された。
【0178】
ところで、
図39から
図42に示される通り、本発明の白色光源の発光スペクトルは、380nmから780nmの波長範囲に亘って、途切れることのない連続スペクトルを示すことができる。ここで連続スペクトルとは、前記波長範囲において、発光強度が実質的にゼロとなる平坦な波長域が存在しないことである。
【0179】
本発明の白色光源の発光スペクトルの特徴を確認する為に、例えば本発明の光源である
図39の発光スペクトルと、実施例1で作成した比較例1の光源の
図17の発光スペクトル形状を比較してみる。両スペクトル共にそのスペクトル曲線に1~3個の凹部が観察される。この様な凹部は近接する2種類の発光スペクトルの隙間により生じたものだが、凹部の底の発光強度がゼロにならないのは、短波長側の発光スペクトルの長波長端と、長波長側の発光スペクトルの短波長端が重なっている為である。比較例の光源に比べて本発明の光源の方が、スペクトル曲線の凹凸の程度が少ないのは、発光スペクトル同士の重なる面積が大きい為であり、この様な効果は、半値幅の大きな発光スペクトル同士を、なるべく近接させることにより生じるものである。この様な組み合わせで、更に蛍光体の種類を選択することで、蛍光体同士の再吸収が起こりやすくなると共に、2重励起等も起こりやすくなり、光源を連続点灯中の発光色変化をできるだけ低く抑えることができる。また、凹凸の少ない平滑な曲線が得られることから、黒体輻射の発光スペクトルを再現しやすくなり演色性等の改善されることは当然である。特に本発明の光源は、380nmの近紫外域や、780nmの深赤色領域でも発光強度がゼロにならないことが特徴である。一方、比較例の
図17の光源では、400nm以下および750nm以上で平坦な曲線を示し、その強度は実質的にゼロと看做せるレベルである。この様に本発明の白色光源は、演色評価指数の評価対象となる380nmから780nmの全ての波長域に亘って、発光強度が実質的にゼロとなる平坦な波長域が存在しない。従って、本発明の白色光源は平均評価数Raのみならず、R
1からR
15の全てに亘って、高い数値を示すことができる。具体的には表9に示す通りである。380nmから780nmの全ての波長域に亘って、途切れることのない連続スペクトルを示す、つまり、発光強度が実質的にゼロとなる平坦な波長域が存在しない発光スペクトルの他の例として、例えば、
図18~
図20が挙げられる。
【0180】
【0181】
白色光源7~12について、連続点灯中の発光色変化について、u‘v’色度図上の動きを測定し、評価した。白色光源7~12の発光スペクトルを積分球を用いて測定した後、計算によりu’、v’色度値を求めた。初期点灯時から1時間後のu’、v’を測定し、次に、そのまま6000時間連続点灯させた後、6000時間経過時点のu’、v’を測定した。なお、測定は室温25℃、湿度60%の室内環境で行った。1時間後の(u’、v’)と6000時間経過後の(u’、v’)から、それぞれ差分△u’、△v’を求め、色度変化の大きさを、[(△u’)2+(△v’)2]1/2として計算した。結果を表10に示す。
【0182】
【0183】
表中、白色光源12は、特性比較のために試作した比較例の光源である。LEDモジュールの基本構成は実施例Aの光源7~10と同じだが、LEDとして455nmに発光ピークを有するInGaNを使用し、組み合わせる蛍光体にはセリウム付活イットリウムアルミニウムガーネット蛍光体を用いた。また比較例の光源12からは、5300Kの色温度の白色光が出射される様、蛍光体層の膜厚と蛍光体量を調整した。具体的には0.15mmの膜厚とし、蛍光体層中の蛍光体粉末の含有量は10質量%とした。
【0184】
比較例の光源12は、連続点灯後の色度変化が0.01を超える大きなものであった。これは、光源12の白色光はLEDの青色光と、蛍光体の黄色光の混合により得られるものだが、連続点灯中のLEDの輝度低下と蛍光体の輝度低下のスピードが異なる為に、大きな変化を示したものである。一方、本発明の白色光源7~11では、白色光の構成成分は全て蛍光体の発光を利用している上、使用した蛍光体はLEDと蛍光体により2重励起され、しかも蛍光体間の再吸収が生じる組み合わせを採用したため、各蛍光体の輝度低下スピードが平均化され、結果として色変化の小さくなる効果が生じたものである。本発明の白色光源における、色度変化の大きさは、いずれも0.01以下で小さなものであった。
(実施例B)
アルミナ基板の吸水率とシリコーン樹脂の密着強度の関係を調べるため、白色光源を作成した。光源を作成するための使用部材は、基板材料を除いて実施例Aの光源7と同じものを使用した。LEDモジュールの基本構造も光源7と同様のものとしたが、樹脂膜の強度を評価するために構造を単純化し、LEDのチップ配列をマトリックス状とせず、一列のみの線状配列とした。
【0185】
光源13の基板として、吸水率が5.8%のアルミナ基板(形状:8×3×0.38mm)を用意した。このアルミナ基板は基板焼成時の温度を1480℃とすることにより吸水率を5.8%に調整したものである。この基板上に3個のLEDチップを線状に配列し、直列に接続した。これらのLEDチップ上に、3個のLEDチップが同時に被覆される様、4種類の蛍光体及びシリコーン樹脂含むスラリーを塗布し、140℃の温度で熱処理してシリコーン樹脂を硬化させた。この様にして縦6.5mm、横2.5mm、厚さ1.9mmとなる柱状の蛍光体層を形成した。
【0186】
光源14、15の基板として、吸水率が夫々、38%、59%のアルミナ基板を用意し、光源13と同様のLEDモジュールを作成した。
【0187】
また光源16として、透明なシリコーン樹脂層と蛍光体層との二層構造を有するLEDモジュールを作製した。吸水率が11%のアルミナ基板に3個のLEDチップを実装した後、蛍光体を含まないシリコーン樹脂を塗布した。次いで、光源13用に調製した蛍光体スラリーを塗布した。これを140℃の温度で熱処理してシリコーン樹脂を硬化させることによって、透明なシリコーン樹脂層の厚さが3mm、蛍光体層の厚さが0.5mmとなる二層膜を形成した。
【0188】
光源17として、以下に説明するモジュールを作成した。基板材料として吸水率が0%のアルミナ基板を用いた以外は、光源13と同様の方法により作成した。以上の5種類の白色光源13~17及び実施例Aの光源10に20mAの電流を流し、各光源の発光効率を測定した後、シリコーン樹脂層と基板の密着強度を所定の方法により測定した。結果を表11に示す。水分吸収率が5%~60%の範囲内にあるアルミナ基板を用いた実施例Aの光源10及び実施例Bの光源13~16では、シリコーン樹脂層と基板間の密着強度が1Nを超える特性を示し、樹脂層の剥離のない、取扱い性の良好な光源とすることができた。
【0189】
【0190】
(実施例C)
LEDモジュールの構成部材である透明樹脂層の特性効果と、透明樹脂層に含有される無機微粒子粉末の特性効果を確認するための白色光源を作成した。
【0191】
まずは、透明樹脂層の効果を評価した。光源を作成するための使用部材は、実施例Aの光源7と全く同じものを使用した。LEDの配列や基板形状、更には透明樹脂層等については、評価を目的に独自の構成とした。
【0192】
光源18では、配線パターン電極を備えたアルミナ基板(縦8.0mm×横3.0mm)に、3つの紫色発光LEDチップ(GaN)をそれぞれ2.0mmの間隔でハンダペースト等によってダイボンドした。接合されたLEDチップを金ワイヤーを用いて配線パターンにワイヤーボンドして接合した。LEDの点灯を確認後、LEDおよび金ワイヤーを熱硬化性透明シリコーン樹脂にて被覆した。被覆方法は、前記樹脂をディスペンサ、マスク等を用いて必要量を、中央のLEDチップが中心部になり、前記3つのLEDが共通の連続した透明樹脂層で被覆されるように塗布し、100~150℃の温度で加熱硬化させ、透明樹脂層を形成した。透明樹脂層の大きさは縦5.5mm×横2.5mmであり、厚さは1.2mmとした。次に、透明樹脂層の表面に、蛍光体を含むシリコーン樹脂を塗布し、加熱硬化させることによって蛍光体層(縦7.5mm×横3.0mm×厚さ1.5mm)を形成して、実施例CのLEDモジュールを作成した。
【0193】
光源19では、透明樹脂層以外は、光源18と全く同じ構成の光源を作成した。透明樹脂層については、3個のLEDチップを連続した透明樹脂層で被覆するのではなく、各々のLEDチップを個別の独立した透明樹脂層で被覆する様にした。蛍光体層については、3個の透明樹脂膜を同一の連続した蛍光体層で被覆し、光源18と同様の蛍光体層(縦7.5mm×横3.0mm×厚さ1.5mm)を形成した。
【0194】
光源20を作成した。光源20は光源18や光源19と同一の構成としたが、LEDと蛍光体層の中間に、透明樹脂層を形成しなかった。
【0195】
上記3種類の光源と実施例Aの光源10の評価は以下の手順で行った。
図43に示される様に、蛍光体層84上の9つの測定点A~Iを決め、各測定点上の輝度をコニカミノルタ社製二次元色彩輝度計CA-2000によって測定した。各測定点の輝度の測定値から各半導体発光装置の輝度むらを評価した。結果は表12に示される通りである。表中の数値は輝度(Cd/m
2)であり、( )内の数値はE点における輝度を100とした場合の相対値を表す。中心点Eとその周囲の各点との輝度比較を行うと、各実施例における中心部と周囲部の輝度差は、少なく、実施例A及び実施例Cの発光装置が、ほぼ均一な輝度特性を有していることがわかる。
【0196】
【0197】
(実施例D)
次に、透明樹脂層中に分散する無機微粒子粉末の種類について評価した。評価は、種々の無機微粒子粉末を透明樹脂層中に分散した光源を作成し、得られた光源の発光効率を測定することにより行った。発光効率の測定はラブズフェア社製の積分球を用いて測定した。なお前記光源21~25において、LEDの装置構成は、透明樹脂層中の無機微粒子粉末の有無以外は、前記実施例Cの光源18と同一とした。結果を表13に示す。表13には、実施例Aの光源10の結果を併記する。
表13から明らかな様に、最大粒子径がLEDチップの発光ピーク波長(405nm)の1/4以下の無機微粒子粉末を用いた実施例Aの光源10及び実施例Dの光源21~23は、最大粒子径がLEDチップの発光ピーク波長(405nm)の1/4を超える無機微粒子粉末を用いた実施例Dの光源24,25に比べて、発光効率の優れていることがわかる。特に、最大粒子径25μmのフェームドシリカを用いた光源10及び光源21が、優れた特性を示した。
【0198】
【0199】
(実施例E)
最後に、透明樹脂層中の無機微粒子粉末について、最適含有量を確認した。評価には、最も優れた特性を示すフェームドシリカを中心に、含有量を変化させた光源を利用した。光源の細部構成は、無機微粒子粉末の含有量を変化させた以外は、光源21、23と同一である。結果は表14に示す通りである。表14には、実施例Aの光源10の結果を併記する。透明樹脂層中に無機微粒子粉末を分散させることにより、光源の発光効率を高めることができる。無機微粒子粉末の望ましい含有量は、0.1質量%以上5質量%以下であり、より望ましい含有量は、1質量%以上5質量%以下であった。
【0200】
【0201】
(実施例3~7)
実施例1の表1-2に記載した白色光源1~6のうち、少なくとも2種類の光源からの光を任意に混合することにより、様々な相関色温度を再現できる本発明の白色光源システムを作成した。このシステムでは、各光源の示す6個の発光色度点で構成された六角形の内面の色度点を全て再現することができるため、2000Kから6500Kの全ての色温度に亘り、±0.005duv以下の範囲内の相関色度点を全て再現することができる。そして各光源は実施例1と同じものを使用しており、この白色光源システムで再現される白色光は、他の実施例と同じ特徴、すなわち演色性や発光スペクトル形状等の特徴を発揮できるのは当然である。
【0202】
実施例3~7では、この白色光源システムを用いて、各地における太陽光の一日の変化を再現した。各地における相関色温度と照度の変化は
図22から
図26に示す通りである。
【0203】
実施例3 春の日本、稚内(北海道)における太陽光の1日の変化
実施例4 夏の台湾、台北における太陽光の1日の変化
実施例5 夏の米国、ロサンゼルスにおける太陽光の1日の変化
実施例6 秋の日本、堺市(大阪)における太陽光の1日の変化
実施例7 冬の日本、那覇市(沖縄)における太陽光の1日の変化
前記説明では、地球上の数か所における太陽光の変化を再現したのみだが、システムに保存したデータの中から、利用者が特定箇所の特定季節の太陽光のデータを指定することにより、それら地域の太陽光の変化を良好に再現することができる。つまり、本発明の白色光源の発光スペクトルは、太陽光と同じ色温度の黒体輻射の発光スペクトルと、可視光領域において良好な一致を示すことができる。その上で、単に黒体輻射のスペクトル形状を再現するだけでなく、黒体輻射(太陽)による発光が地球上の各地点に届く間に受ける影響度合いを、黒体輻射の色温度からの偏差として定量化し、その偏差を含めた色温度の白色光を再現することができた。これにより、特定地域の太陽光を再現できる上、太陽光より遥かに微弱な紫外線しか含有しないため、例えば美術館等の展示物の照明として用いた場合、従来の光源に比べて、絵画等を痛めることが無く、かつ非常に高い精度で展示物本来の体色を再現することができる。そして本発明の白色光源は、絵画や人体への悪影響が懸念される青色光の発光成分強度を従来の人工光源に比べて十分に低減された白色光を放射することができ、太陽光同様の高い演色効果が得られた上で、人体のサーカディアンリズムを好適に維持できる、人体等に優しい光源とすることも可能である。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 黒体輻射の軌跡上の特定色温度の白色光および、前記黒体輻射の軌跡からの特定偏差のズレを有する相関色温度の白色光を再現可能な白色光源システムにおいて、前記白色光源システムから出射される白色光の発光スペクトルをP(λ)、対応する色温度の黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)とした場合に、λが380nm乃至780nmの波長領域において、P(λ)、B(λ)、V(λ)が下記式(1)を満たす時、前記P(λ)及び前記B(λ)は、波長範囲400nmから495nmにおいて、下記式(2)を満たすことを特徴とする白色光源システム。
【数12】
P(λ)/B(λ)≦1.8 (2)
[2] [1]記載の白色光源システムにおいて、前記P(λ)及び前記B(λ)は、波長範囲400nmから495nmにおいて、下記式(5)を満たすことを特徴とする白色光源システム。
P(λ)/B(λ)≦1.5 (5)
[3] [1]乃至[2]記載の白色光源システムにおいて、前記P(λ)が、380nmから780nmの波長範囲に亘って、途切れることのない連続的な発光スペクトルを示すことを特徴とする白色光源システム。
[4] [1]乃至[3]記載の白色光源システムにおいて、黒体輻射の軌跡上の特定範囲の色温度の白色光と、前記白色光の色温度からの偏差が±0.005duvの範囲内にある何れかの相関色温度の白色光を再現可能な白色光源システム。
[5] [4]記載の白色光源システムにおいて、黒体輻射の軌跡上の2000K乃至6500Kの色温度の白色光と、前記白色光の色温度からの偏差が±0.005duvの範囲内にある何れかの相関色温度の白色光を再現可能な白色光源システム。
[6] [1]乃至[5]記載の白色光源システムにおいて、P(λ)×V(λ)が最大となる波長をλmax1、B(λ)×V(λ)が最大となる波長をλmax2としたとき、下記式(3)を満たすことを特徴とする白色光源システム。
-0.2≦[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))-
(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]≦+0.2 (3)
[7] [6]記載の白色光源システムにおいて、下記式(4)を満たすことを特徴とする白色光源システム。
-0.1≦[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))-
(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]≦+0.1 (4)
[8] 黒体輻射の軌跡上の特定範囲の色温度の白色光と、前記黒体輻射の軌跡から特定偏差のズレを有する相関色温度の白色光を再現可能な白色光源システムにおいて、前記白色光源システムから出射される白色光の平均演色評価数Raが95以上、演色評価数R
1からR
8および特殊演色評価数R
9からR
15の全てが85以上であること特徴とする白色光源システム。
[9] [8]記載の白色光源システムにおいて、前記白色光源システムから出射される白色光の平均演色評価数Raが97以上、演色評価数R
1からR
8および特殊演色評価数R
9からR
15の全てが90以上であること特徴とする白色光源システム。
[10] [8]乃至[9]記載の白色光源システムにおいて、前記白色光源システムから出射される白色光の発光スペクトルをP(λ)とした時、前記P(λ)が、380nmから780nmの波長範囲に亘って、途切れることのない連続的な発光スペクトルを示すことを特徴とする白色光源システム。
[11] [8]乃至[10]記載の白色光源システムにおいて、黒体輻射の軌跡上の2000K乃至6500Kの色温度の白色光と、前記白色光の色温度からの偏差が±0.005duvの範囲内にある何れかの相関色温度の白色光を再現可能な白色光源システム。
[12] [8]乃至[11]記載の白色光源システムにおいて、前記白色光源システムから出射される白色光の発光スペクトルをP(λ)、対応する色温度の黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)、P(λ)×V(λ)が最大となる波長をλmax1、B(λ)×V(λ)が最大となる波長をλmax2としたとき、下記式(3)を満たすことを特徴とする白色光源システム。
-0.2≦[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))-(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]≦+0.2 (3)
[13] [12]記載の白色光源システムにおいて、下記式(4)を満たすことを特徴とする白色光源システム。
-0.1≦[(P(λ)×V(λ))/(P(λmax1)×V(λmax1))-(B(λ)×V(λ))/(B(λmax2)×V(λmax2))]≦+0.1 (4)
[14] [8]乃至[13]記載の白色光源システムにおいて、前記白色光源システムから出射される白色光の発光スペクトルをP(λ)、対応する色温度の黒体輻射の発光スペクトルをB(λ)、分光視感効率のスペクトルをV(λ)とした場合に、λが380nm乃至780nmの波長領域において、P(λ)、B(λ)、V(λ)が下記式(1)を満たす時、前記P(λ)及び前記B(λ)は、波長範囲400nmから495nmにおいて、下記式(2)を満たすことを特徴とする白色光源システム。
【数13】
P(λ)/B(λ)≦1.8 (2)
[15] [14]記載の白色光源システムにおいて、前記P(λ)及び前記B(λ)は、波長範囲400nmから495nmにおいて、下記式(5)を満たすことを特徴とする白色光源システム。
P(λ)/B(λ)≦1.5 (5)
[16] [1]乃至[15]記載の白色光源システムにおいて、前記白色光源は、発光ピーク波長が360nm~420nmである紫外ないし紫色の一次光を出射するLEDと、前記LEDからの一次光を吸収して白色の二次光を出射する蛍光体とを含むことを特徴とする白色光源システム。
[17] [16]記載の白色光源システムにおいて、前記蛍光体及び樹脂を含む蛍光体層をさらに含むことを特徴とする白色光源システム。
[18] [17]記載の白色光源システムにおいて、前記蛍光体層の膜厚が0.07mm以上、1.5mm以下であることを特徴とする白色光源システム。
[19] [17]乃至[18]記載の白色光源システムにおいて、前記蛍光体層中の前記蛍光体の質量比が60質量%以上90質量%以下であることを特徴とする白色光源システム。
[20] [16]乃至[19]記載の白色光源システムにおいて、前記蛍光体の平均粒子径が5μm以上50μm以下であることを特徴とする白色光源システム。
[21] [17]乃至[20]記載の白色光源システムにおいて、前記蛍光体層が前記LEDを覆うように形成されており、前記白色光源システムから出射されるLED一次光の強度が0.4mW/lm(ルーメン)以下であることを特徴とする白色光源システム。
[22] [16]乃至[21]記載の白色光源システムにおいて、前記蛍光体が、青色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体、赤色蛍光体のうち、少なくとも3種類の蛍光体の混合物であることを特徴とする白色光源システム。
[23] [22]記載の白色光源システムにおいて、前記蛍光体が、青色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体及び赤色蛍光体からなる群から選択される少なくとも4種類の蛍光体の混合物であることを特徴とする白色光源システム。
[24] [22]乃至[23]記載の白色光源システムにおいて、前記蛍光体の混合物に青緑色蛍光体が更に含有されていることを特徴とする白色光源システム。
[25] [22]乃至[24]記載の白色光源システムにおいて、前記蛍光体の混合物に含まれる各蛍光体の発光スペクトルのピークが、隣り合うピークとのピーク波長間隔を150nm以下とすることを特徴とする白色光源システム。
[26] [22]乃至[25]記載の白色光源システムにおいて、前記蛍光体の混合物に含まれる各蛍光体が50nm以上の半値幅を有する発光スペクトルを示すことを特徴とする白色光源システム。
[27] [22]乃至[26]記載の白色光源システムにおいて、前記蛍光体の混合物に含まれる各蛍光体の発光スペクトルが異なるピーク波長を有し、かつ各発光スペクトルの一部が他の発光スペクトルと重なる波長領域を少なくとも1か所有することを特徴とする白色光源システム。
[28] [22]乃至[27]記載の白色光源システムにおいて、前記青色蛍光体が、発光ピーク波長が480乃至500nmであるユーロピウム付活ストロンチウムアルミン酸塩蛍光体、及び発光ピーク波長が440乃至460nmであるユーロピウム付活アルカリ土類リン酸塩蛍光体のうち、少なくとも1種であることを特徴とする白色光源システム。
[29] [22]乃至[28]記載の白色光源システムにおいて、前記緑色蛍光体が、発光ピーク波長が520乃至550nmであるユーロピウム付活オルソ珪酸塩蛍光体、及び発光ピーク波長が535~545nmであるユーロピウム付活βサイアロン蛍光体、及び発光ピーク波長が520乃至540nmであるユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体のうち、少なくとも1種であることを特徴とする白色光源システム。
[30] [22]乃至[29]記載の白色光源システムにおいて、前記黄色蛍光体が、発光ピーク波長が550乃至580nmであるユーロピウム付活オルソ珪酸塩蛍光体、及び発光ピーク波長が550~580nmであるセリウム付活希土類アルミニウムガーネット蛍光体のうち、少なくとも1種であることを特徴とする白色光源システム。
[31] [22]乃至[30]記載の白色光源システムにおいて、前記赤色蛍光体が、発光ピーク波長が600~630nmであるユーロピウム付活ストロンチウムサイアロン蛍光体、及び発光ピーク波長が620~660nmであるユーロピウム付活カルシウムニトリドアルミノシリケート蛍光体、及び発光ピーク波長が640~660nmであるマンガン付活マグネシウムフロロジャーマネート蛍光体のうち、少なくとも1種であることを特徴とする白色光源システム。
[32] [22]乃至[31]記載の白色光源システムにおいて、前記白色光源システムの点灯初期と連続6000時間点灯後の色度変化を、CIE色度図上の色度の変化で表す時、前記色度変化が0.01未満であることを特徴とする白色光源システム。
[33] [1]乃至[32]記載の白色光源システムにおいて、黒体軌跡のプラス側に偏差を有するxy色度図上の少なくとも2点と、黒体軌跡のマイナス側に偏差を有するxy色度図上の少なくとも2点の色度点それぞれの白色発光を示す少なくとも4種類のLEDモジュールと、前記少なくとも4種類のLEDモジュールの発光強度を制御する制御部を備え、任意の強度に制御された前記少なくとも4種類のLEDモジュールからの発光を混合することにより、黒体輻射の軌跡上の特定範囲の色温度の白色光と、前記白色光の色温度からの偏差が±0.005duvの範囲内にある何れかの相関色温度の白色光を再現可能なことを特徴とする白色光源システム。
[34] [1]乃至[32]記載の白色光源システムにおいて、黒体軌跡のプラス側に偏差を有するxy色度図上の少なくとも3点と、黒体軌跡のマイナス側に偏差を有するxy色度図上の少なくとも3点の色度点それぞれの白色発光を示す少なくとも6種類のLEDモジュールと、前記少なくとも6種類のLEDモジュールの発光強度を制御する制御部を備え、任意の強度に制御された前記少なくとも6種類のLEDモジュールからの発光を混合することにより、黒体輻射の軌跡上の2000K乃至6500Kの色温度の白色光と、前記白色光の色温度からの偏差が±0.005duvの範囲内にある何れかの相関色温度の白色光を再現可能なことを特徴とする白色光源システム。
[35] [33]乃至[34]記載の白色光源システムにおいて、前記LEDモジュールが、基板と、前記基板上に実装された紫外乃至紫色の一次光を出射するLEDと、前記LEDからの一次光を吸収して白色の二次光を出射する蛍光体とを含むことを特徴とする白色光源システム。
[36] [35]記載の白色光源システムにおいて、前記LEDが、InGaN系LED、GaN系LEDまたはAlGaN系LEDであり、かつ発光ピーク波長が360nmから420nmの紫外乃至紫色光の発光ダイオードであることを特徴とする白色光源システム。
[37] [35]乃至[36]記載の白色光源システムにおいて、前記基板がアルミナ板もしくはガラスエポキシ板からなることを特徴とする白色光源システム。
[38] [35]乃至[37]記載の白色光源システムにおいて、前記基板上に形成された導電部を含むことを特徴とする白色光源システム。
[39] [38]記載の白色光源システムにおいて、前記導電部は、Ag、Pt、Ru、PdおよびAlよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含むことを特徴とする白色光源システム。
[40] [39]記載の白色光源システムにおいて、前記導電部の表面に形成されたAu膜を含むことを特徴とする白色光源システム。
[41] [35]乃至[40]記載の白色光源システムにおいて、前記LEDは複数のLEDチップを含み、前記複数のLEDチップが線状もしくは格子状に配列されていることを特徴とする白色光源システム。
[42] [41]記載の白色光源システムにおいて、前記複数のLEDチップが線状に配列されたチップ列を含み、前記チップ列が少なくとも1列以上形成されていることを特徴とする白色光源システム。
[43] [41]乃至[42]記載の白色光源システムにおいて、前記複数のLEDチップのうちの少なくとも一つのLEDチップの上面または側面を覆うように設けられたシリコーン樹脂含有層と、前記シリコーン樹脂含有層中に分散され、前記少なくとも一つのLEDチップから出射された光により可視光を発する蛍光体とを備えることを特徴とする白色光源システム。
[44] [43]記載の白色光源システムにおいて、前記シリコーン樹脂含有層が複数層からなり、シリコーン樹脂と前記シリコーン樹脂中に分散された蛍光体とを含む蛍光体層と、前記蛍光体層の内面もしくは外面と対向し、シリコーン樹脂を含む透明樹脂層が形成されていることを特徴とする白色光源システム。
[45] [44]記載の白色光源システムにおいて、前記透明樹脂層は、前記透明樹脂層を通過する光の波長の1/4以下の最大粒子径を有する無機化合物粉末を含有することを特徴とする白色光源システム。
[46] [45]記載の白色光源システムにおいて、前記無機化合物粉末はシリカ粉末もしくはアルミナ粉末から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする白色光源システム。
[47] [45]乃至[46]記載の白色光源システムにおいて、前記透明樹脂層中の前記無機化合物粉末の含有量が0.1質量%以上5質量%以上の範囲であることを特徴とする白色光源システム。
[48] [43]乃至[44]記載の白色光源システムにおいて、
前記LEDモジュールを覆うように形成された外囲器と、
前記外囲器の一部に形成された、光取り出しの可能な透明部と、
前記透明部の内面または外面、もしくは前記シリコーン樹脂含有層の外面に形成された、無機材料の粉末を含有する膜と
をさらに含むことを特徴とする白色光源システム。
[49] [48]記載の白色光源システムにおいて、前記無機材料が酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化アルミニウムよりなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする白色光源システム。
[50] [48]記載の白色光源システムにおいて、前記無機材料が酸化ケイ素及び酸化ジルコニウムのうち少なくとも1種を含有することを特徴とする白色光源システム。 [51] [48]記載の白色光源システムにおいて、前記膜が2層以上の多層膜であり、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化アルミニウムよりなる群から選択される少なくとも1種と有機樹脂とを含む第1の層と、酸化ケイ素及び酸化ジルコニウムのうち少なくとも1種と有機樹脂とを含む第2の層とを含むことを特徴とする白色光源システム。
[52] [43]乃至[51]記載の白色光源システムにおいて、前記基板が吸水率が5%以上60%以下のアルミナ基板であり、かつ前記アルミナ基板と前記シリコーン樹脂含有層との密着強度が1N以上であることを特徴とする白色光源システム。
[53] [1]乃至[52]記載の白色光源システムにおいて、地球上の特定地点における緯度、経度、および固有環境の違いに応じて変化する太陽光を、特定の相関色温度を有する白色光として再現すると共に、時々刻々変化する前記相関色温度を連続的に再現することを特徴とする白色光源システム。
[54] [53]記載の白色光源システムにおいて、国内外の主要地域における経時変化に伴って変化する太陽光のスペクトルを保存したデータベースを備え、前記データベース中の所望の太陽スペクトルデータに基づき、複数個のLEDモジュールの発光強度を制御して、特定地域の特定時期に相当する太陽光を再現できる白色光源システム。
[55] [53]乃至[54]記載の白色光源システムが、オフィス、病院あるいは家庭用の照明に使用されることを特徴とする白色光源システム。
[56] [53]乃至[54]記載の白色光源システムが、展示物の照明に使用されることを特徴とする白色光源システム。
[57] [56]記載の白色光源システムにおいて、前記展示物が美術工芸品であることを特徴とする白色光源システム。
【符号の説明】
【0204】
1…相関色温度の変化を示す曲線、2…照度の変化を示す曲線、3…夕方の太陽光の発光スペクトル(相関色温度2990K-0.004duv)、4…朝の太陽光の発光スペクトル(相関色温度4236K+0.004duv)、5…昼の太陽光の発光スペクトル(相関色温度5704K+0.001duv)、6…光源Aの発光スペクトル、7…光源Bの発光スペクトル、8…光源Cの発光スペクトル、9…補正後の黒体輻射スペクトルB(λ)を示す曲線、10…補正後の白色光源発光スペクトルP(λ)を示す曲線、11…補正後の黒体輻射スペクトルB(λ)を示す曲線、12…補正後の白色光源発光スペクトルP(λ)を示す曲線、13…補正後の黒体輻射スペクトルB(λ)を示す曲線、14…補正後の白色光源発光スペクトルP(λ)を示す曲線、15…相関色温度の変化を示す曲線、16…照度の変化を示す曲線、17…補正後の黒体輻射スペクトルB(λ)を示す曲線、18…補正後の白色光源発光スペクトルP(λ)を示す曲線、19…補正後の黒体輻射スペクトルB (λ)を示す曲線、20…補正後の白色光源発光スペクトルP(λ)を示す曲線、21…白色光源部、22…制御部、23…基板、24…複数の白色光源、25…発光装置外囲器、26…LEDチップ、27…蛍光膜(蛍光体層)、28…コントロール部、29…メモリー部、30…データ入出力部、31…配線、32…補正後の黒体輻射スペクトルB(λ)を示す曲線、33…補正後の白色光源発光スペクトルP(λ)を示す曲線、34…補正後の黒体輻射スペクトルB(λ)を示す曲線、35…補正後の白色光源発光スペクトルP(λ)を示す曲線、36…補正後の黒体輻射スペクトルB(λ)を示す曲線、37…補正後の白色光源発光スペクトルP(λ)を示す曲線、38…相関色温度の変化を示す曲線、39…照度の変化を示す曲線、40…相関色温度の変化を示す曲線、41…照度の変化を示す曲線、42…相関色温度の変化を示す曲線、43…照度の変化を示す曲線、44…相関色温度の変化を示す曲線、45…照度の変化を示す曲線、46…相関色温度の変化を示す曲線、47…照度の変化を示す曲線、50…LEDモジュール、51…基板、52…LEDチップ、53…ワイヤ、54…電極、55…蛍光体層、56…透明樹脂層、57…発光スペクトルを示す曲線、58…励起スペクトルを示す曲線、59…発光スペクトルを示す曲線、60…励起スペクトルを示す曲線、61…補正後の黒体輻射スペクトルB(λ)を示す曲線、62…補正後の白色光源発光スペクトルP(λ)を示す曲線、70…LEDモジュール、71…基板、72…LEDチップ、73…蛍光体層、74…ダム、75…導電部、76…補正後の黒体輻射スペクトルB(λ)を示す曲線、77…補正後の白色光源発光スペクトルP(λ)を示す曲線、78…補正後の黒体輻射スペクトルB(λ)を示す曲線、79…補正後の白色光源発光スペクトルP(λ)を示す曲線、80…補正後の黒体輻射スペクトルB(λ)を示す曲線、81…補正後の白色光源発光スペクトルP(λ)を示す曲線、82…補正後の黒体輻射スペクトルB(λ)を示す曲線、83…補正後の白色光源発光スペクトルP(λ)を示す曲線、84…蛍光体層、85…補正後の黒体輻射スペクトルB(λ)を示す曲線、86…補正後の白色光源発光スペクトルP(λ)を示す曲線。