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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】電池用集電体および電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20221205BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M4/70 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021142192
(22)【出願日】2021-09-01
(62)【分割の表示】P 2016203133の分割
【原出願日】2016-10-14
(65)【公開番号】P2021184400
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390003193
【氏名又は名称】東洋鋼鈑株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 興
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-170554(JP,A)
【文献】特開2006-164883(JP,A)
【文献】特開2006-269362(JP,A)
【文献】特開2008-098094(JP,A)
【文献】特開2009-004363(JP,A)
【文献】特開平06-310147(JP,A)
【文献】国際公開第2012/091060(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/024443(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第2011-0097410(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64-4/84
H01M 4/00-4/62
H01M 10/05-10/0587
C25D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu、Fe及びNiのうちから選ばれる金属からなる第1金属めっき層と、
前記第1金属めっき層上に積層され、前記第1金属めっき層とは異なる金属からなる金属めっきであって前記Cu、Fe及びNiのうちから選ばれる金属からなる第2金属めっき層と、を少なくとも具備する電池用集電体であって、
前記電池用集電体の厚みが4~10μmであり、
前記第1金属めっき層と前記第2金属めっき層の積層界面における、JISB0601-1994規格に準拠した測定手法によって測定した粗度がRa≧0.12μmであり、
前記第1金属めっき層及び前記第2金属めっき層のうちの一方はNiであり、
前記電池用集電体の厚みに対する前記Niの厚みの割合が50%以下である、
電池用集電体。
【請求項2】
Cuからなる第1金属めっき層と、
前記第1金属めっき層上に積層され、前記第1金属めっき層とは異なる金属からなる金属めっきであってFeからなる第2金属めっき層と、を少なくとも具備する電池用集電体であって、
前記電池用集電体の厚みが4~10μmであり、
前記第1金属めっき層と前記第2金属めっき層の積層界面における、JISB0601-1994規格に準拠した測定手法によって測定した粗度がRa≧0.12μmである、
電池用集電体。
【請求項3】
更に前記積層界面における粗度が、Ry≧0.1μmである請求項1又は2に記載の電池用集電体。
【請求項4】
更に前記積層界面における粗度が、Rz≧0.4μmである請求項1~3のいずれか一項に記載の電池用集電体。
【請求項5】
前記積層界面における測定視野の表面積に対する実測表面積の比をSとし、
前記積層界面における界面粗さ指数をRa/Sとした場合、
前記界面粗さ指数(Ra/S)≧0.06である請求項1~4のいずれか一項に記載の電池用集電体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の電池用集電体を具備する電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層金属箔に関し、さらにはリチウムイオン二次電池などに好適な電池用集電体およびこの集電体を具備する電池に関する。
【背景技術】
【0002】
世界に先駆けて乾電池が日本で誕生して以来、携帯が可能で持ち運びが容易な電池は、電機分野を筆頭に各種の産業において重要な役割を果たしてきている。特に近年における電子機器の小型化は目覚ましく、携帯電話や携帯情報端末などの携帯型電子機器が広く普及している。このような携帯型電子機器においては、その電力源として充電が可能で繰り返し使用できる二次電池が搭載されている。
【0003】
二次電池は、上記した携帯型電子機器に搭載されるに留まらず、ガソリンの枯渇問題や環境問題などが相俟ってハイブリッド自動車や電気自動車などの車両へも徐々に搭載されてきている。そして上記した携帯型電子機器あるいは自動車に搭載される二次電池においては、高出力で長寿命な高性能電池としてリチウムイオン二次電池(以下、「LiB」とも称する)が着目されている。
また、携帯機器用途では上記したLiBが主役となってきているものの、車載用途や定置型電池としては安全性と長期信頼性の観点からニッケル水素二次電池も引き続き採用されて改良検討がなされている。
【0004】
特に自動車分野においては電気自動車へのニーズが急速に高まってきており、本格的な普及に向けて、車載されるリチウムイオン二次電池の高容量化・急速充放電対応の開発が加速している。また、ハイブリット自動車など向けにニッケル水素二次電池の高性能化も盛んな状況である。
ここで、リチウムイオン二次電池およびニッケル水素電池をはじめとする電池の高容量化には集電体の薄型化が有効であるが、集電体を薄型化すると強度が低下してしまい、集電体の変形や破損の懸念が生じてしまうという課題もある。
【0005】
これに対して例えば特許文献1では、リチウム化合物の形成能の低い金属材料からなる電解箔の少なくとも一面に、ニッケル塩及びアンモニウム塩を含むめっき浴を用いた電解めっきを施すことで、電解箔表面に硬質ニッケルめっき層を形成する技術が提案されている。
また、例えば特許文献2では、負極集電体として用いられる銅箔に銅の残留応力が少ないニッケルめっきを施すことで、銅の硫化物の生成を抑えて且つ導電性に優れた負極集電体を提供するという技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-197205号公報
【文献】特開2016-9526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した特許文献に記載の技術では、集電体としてある程度の強度は向上するが、少なくとも下記の点において改善の余地は未だにあると言える。
すなわち、近年の電池性能への要求は一段と高くなっており、集電体自体にも薄型化すればその分だけ活物質量を増加できることから、この集電体の薄型化に伴う製造時の破れや千切れなどを抑制できるだけの強度を有することが望まれている。
さらに、例えば負極の集電体については、炭素に代替し得るシリコンなど新たな活物質の特性に追従可能な高い強度を具備することが希求されてきている。
【0008】
しかしながら上記した特許文献1や特許文献2では、ニッケル皮膜を用いて複層化する技術思想を開示するに留まっており、上述したごとき強度を高いレベルで実現するための具体的な層間における構造についてまでは開示がない。
【0009】
本発明は、かような課題を解決することを鑑みてなされたものであり、薄型化に伴って懸念される製造時の破れや千切れを抑制できるだけの充分な強度を備えた電池用集電体および該電池用集電体を具備する電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかる電池用集電体は、(1)Cu、Fe及びNiのうちから選ばれる金属からなる第1金属めっき層と、前記第1金属めっき層上に積層され、前記第1金属めっき層とは異なる金属からなる金属めっきであって前記Cu、Fe及びNiのうちから選ばれる金属からなる第2金属めっき層と、を少なくとも具備する電池用集電体であって、前記電池用集電体の厚みが4~10μmであり、前記第1金属めっき層と前記第2金属めっき層の積層界面における、JISB0601-1994規格に準拠した測定手法によって測定した粗度がRa≧0.12μmであり、前記第1金属めっき層及び前記第2金属めっき層のうちの一方はNiであり、前記電池用集電体の厚みに対する前記Niの厚みの割合が50%以下である。
【0011】
また、上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかる電池用集電体は、(2)Cu又はFeからなる第1金属めっき層と、前記第1金属めっき層上に積層され、前記第1金属めっき層とは異なる金属からなる金属めっきであって前記Cu又は前記Feからなる第2金属めっき層と、を少なくとも具備する電池用集電体であって、前記電池用集電体の厚みが4~10μmであり、前記第1金属めっき層と前記第2金属めっき層の積層界面における、JISB0601-1994規格に準拠した測定手法によって測定した粗度がRa≧0.12μmである。
【0012】
なお、上記した(1)又は(2)に記載の電池用集電体においては、(3)更に前記積層界面における粗度が、Ry≧0.1μmであることが好ましい。
【0013】
また、上記した(1)~(3)のいずれかに記載の電池用集電体においては、(4)更に前記積層界面における粗度が、Rz≧0.4μmであることが好ましい。
【0014】
また、上記した()~(4)のいずれかに記載の電池用集電体においては、(5)前記積層界面における測定視野の表面積に対する実測表面積の比をSとし、前記積層界面における界面粗さ指数をRa/Sとした場合、前記界面粗さ指数(Ra/S)≧0.06であることが好ましい。
【0015】
また、上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかる電池は、上記した(1)~(8)のいずれかに記載の電池用集電体を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記した第1金属層と第2金属層の積層界面における粗度をRa≧0.12とすることで、理論値を上回る高い強度(引張強度)を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る電池Cとその構成物を模式的に示した図である。
図2】本実施形態に係る電池用負極集電体30Aの断面図である。
図3】本実施形態に係る電池用負極集電体の製造方法を説明する模式図である。
図4】本実施形態の他の例に係る電池用負極集電体30Bの断面図である。
図5】特定の実施例及び比較例において引張強度を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪第1実施形態≫
以下、本発明を実施するための実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る電池Cとその構成物を模式的に示した図である。同図に示すように、本実施形態の電池Cは、いわゆるセル構造を採用するリチウムイオン二次電池であり、正極1、セパレータ2、負極3および不図示の電解液を少なくとも含んで構成されている。
【0019】
なお、電池Cとして以下ではリチウムイオン二次電池を例にして説明するが、本発明の電池としてはリチウムイオン二次電池に限られず、例えばニッケル水素や鉛蓄電池など他の二次電池や、マンガン電池など一次電池に適用してもよい。
【0020】
正極1は、リチウムイオンの供給源であり、一般的には集電体とこの集電体上に塗布された活物質とで構成されている。このうち正極の好適な集電体としては、導電性のある金属の中でも、高電位環境下で電気化学的に安定なアルミニウム箔が例示される。また、正極の好適な活物質としては、種々の公知の活物質が適用可能であり、例えばLiMOなどの層状酸化物系や、LiMなどのスピネル系、LiMO-LiMOなどの固溶体系などが例示できる。
【0021】
セパレータ2は、電解液中のリチウムイオンの往来を阻害せずに正極1と負極3とを分離する。このセパレータ2としては、種々の公知の材料が適用可能であり、例えばポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン不織布が例示できる。
【0022】
電解液(電解質)は、正極1と負極3の間のイオン移動を担う。かような電解液としては、特に制限はなく、例えば炭酸エチレンとジアルキル炭酸エステルを混合した溶媒にLiPFを溶解させた電解液など公知の種々の電解液を用いてもよい。
【0023】
負極3は、正極1と同様に集電体と活物質から構成されている。このうち負極の好適な集電体としては、例えば銅箔が適用可能である。また、負極の活物質としては、固体炭素材料が好適であり、より具体的に例えばハードカーボンやソフトカーボンのごとき非晶質炭素、ダイヤモンドやグラファイトなどのごとき三次元結晶炭素、ナノチューブやフラーレンなどのナノカーボン材などを用いてもよい。
【0024】
<集電体の構造>
次に図2を用いて負極3のうち集電体の詳細な構造について更に詳述する。なお、以下では集電体の例として負極集電体について説明するが、本発明は負極に限られず正極の集電体にも適用してもよい。また、この図2では、後述する積層界面の粗度を強調するため誇張された図となっているが、実際は目視上では図2ほどの粗さはない(図4も同様)。
【0025】
上述したとおり電池Cの負極3は集電体を含んで構成されており、本実施形態では以下に示すとおり複数の金属層が積層された形態となっている。すなわち、同図に示すように、電池用負極集電体としての集電体30Aは、第1金属層31、第2金属層32、および第3金属層33を含んで構成されている。
【0026】
この集電体30Aの全体としての厚みは、4~20μmであり、より好ましくは4~10μmである。20μmを超える厚みでは、そもそも薄型化による高容量化を目指す背景から設計思想に合わず、さらには公知の圧延箔に対してコスト的なメリットが減退してしまう。一方で4μmよりも薄い厚みでは、充放電に伴う影響に対して充分な強度を有することが困難となるばかりでなく、製造時のハンドリング性が著しく悪くなってしまう。また、4μmよりも薄い厚みでは、例えばフレキシブルプリント基板用途などのキャリア付きCu箔のように、キャリアや支持体を要するためコストが高くなるからである。
【0027】
なお、後述するとおり、例えば金属層がCuとNiの積層、又はCuとFeの積層である場合には、上限の厚みが10μmであることが好ましい。また、金属層がNiとFeの積層である場合には、上限の厚みが20μmであることが好ましい。
【0028】
第1金属層31は、Cu、Fe及びNiから選ばれる金属を少なくとも含んで構成されている。なお、本実施形態における金属層は、上記した金属の単体(例えばNi単体、Cu単体あるいはFe単体)の形態に限られず、これら金属を含む合金(例えばNi合金、Cu合金あるいはFe合金)の形態であってもよい。
【0029】
この第1金属層31の厚みとしては、上記した集電体30A全体の厚みを超えない限度で、例えば1~10μmである。なお、後述するとおり第1金属層31がめっきで形成される場合には、第1金属めっき層として上記したCuは、既知の硫酸銅めっき浴を用いて種々の光沢剤を添加しないCuめっき層(便宜的に「無光沢Cuめっき層とも称する)でも、更に上記の光沢剤(半光沢用の光沢剤も含む)など添加剤を添加する光沢Cuめっき層でもよい。なお、上記した光沢又は無光沢は、目視外観上の評価に依拠しており厳密な数値での区分けは困難であり、さらには後述する浴温などの他のパラメータに依っても変化し得る。したがって、本実施形態で用いる「光沢」「無光沢」は、あくまでも添加剤(光沢剤)のパラメータに着目した場合の定義付けである。
【0030】
なお、後述するとおり、集電体30Aの製造時には、第1金属層31から順に第2金属層32、第3金属層33・・と積層されていくので、この第1金属層31が一番下層に位置付けられる。しかしながら上記した積層の順序は一例であって、昇順で積層していく形態に限られずに降順で積層していく形態としてもよい。
【0031】
また、第1金属層31は、必ずしも最外層に位置付けられる必要はない。例えば上記のごとく昇順で積層されていく形態において、第1金属層31の下側に別途異なる金属層(例えば第2金属層32や他の金属で構成される層など)を設けてもよい。また、降順で積層される形態であっても、第1金属層31の上側に上記した異なる金属層を別途設けてもよい。
以下では、各金属層が昇順で積層されていく形態を例にして説明を継続する。
【0032】
第2金属層32は、第1金属層31上に積層され、この第1金属層31とは異なる金属であってCu、Fe及びNiから選ばれる金属を少なくとも含んで構成されている。なお、この第2金属層32の厚みとしては、上記した集電体30A全体の厚みを超えない限度で、例えば1~10μmである。また、第1金属層31と同様に第2金属層32がめっきで形成される場合には、第2金属めっき層として上記したCuは、光沢Cuめっき層又は無光沢Cuめっき層を適用することができる。
【0033】
なお、本実施形態においては、第1金属層31及び第2金属層32のうちの一方は、Niを含んでいてもよい。従って、例えば第1金属層31がCuの場合には、第2金属層32はNiとなる。また、第1金属層31がNiの場合には第2金属層32は例えばCuとなる。このとき、負極集電体の厚みに対するNiの厚みの割合が50%以下であってもよい。
【0034】
なお本発明は種々の電池に適用が可能であるため、例えば第1金属層31がCuの場合に第2金属層32がFeであってもよい。換言すれば、本実施形態における第1金属層31と第2金属層32は、次の表1に示す組み合わせが例示できる。なお、この場合において、第1金属層31の下側に異なる金属層を更に設けてもよいし、第2金属層32の上側にも異なる金属層を更に設けてもよいのは既述のとおりである(以降についても同様)。また、これらの金属には合金も含まれることは既述のとおりである。
【0035】
【表1】
【0036】
第3金属層33は、第2金属層32上に形成される。この第3金属層33の厚みとしては、上記した集電体30A全体の厚みを超えない限度で、例えば1~8μmである。なお、第3金属層33は必須ではなく、第1金属層31と第2金属層32の2層構造であってもよい。
【0037】
本実施形態においては、第3金属層33は、上記した第1金属層31と同じ種類の材料で形成されている。換言すれば、本実施形態においては、第2金属層32が第1金属層31(=第3金属層33)で挟まれているとも言える。従って、本実施形態における第1金属層31、第2金属層32及び第3金属層33は、次の表2に示す組み合わせが例示できる。なお、これらの金属には合金も含まれることは既述のとおりである。
【0038】
【表2】
【0039】
なお、本実施形態では、第1金属層31と第3金属層33は同種の金属層又は金属めっき層となっているが、この形態に限られず、第1金属層31と第3金属層33が互いに異なる種類の金属で構成されていてもよい。この場合においては、例えば次の表3に示す組み合わせが例示できる。なお、これらの金属には合金も含まれることは既述のとおりである。
【0040】
【表3】
【0041】
<積層界面における粗度>
上述のとおり本実施形態の集電体30Aは、複数の金属層が積層された形態となっているが、複数の金属層を積層すること自体は上記した特許文献にも開示されている。
これに対して本発明者らは、電池用集電体として、異種金属のめっき層からなる積層箔について検討する中で、金属の組み合わせ・トータル厚み・厚み構成比が同じであっても、その積層構造によって最終的な金属積層箔の引張強度が、かなり異なることを見出した。一例として、図5に後述の実施例・比較例から、Cu層とNi層の積層材の特徴的な例について、引張強度のグラフを示す。
【0042】
第1の例として、まず、比較例5と実施例5のグラフを参照する。このグラフから理解できるとおり、両者はともにCu層の厚さが14μm、Ni層の厚さが6μm、積層材としてのトータル厚さが20μmである。しかしながらCu層の上にNi層をめっきした場合(比較例5)と、逆にNi層の上にCu層をめっきした場合(実施例5)とでは、その引張強度は後者が3割強も高くなる。
【0043】
次に、第2の例として、比較例2と実施例20のグラフを参照する。このグラフから理解できるとおり、両者はどちらも、積層材としてのトータル厚さが20μmで、このうちNi層の厚さ10μmである。しかしながら、比較例2が10μmのCu層の上にNi層を10μmの厚みでめっきした2層構成であるのに対し、実施例20では厚さ5μmのCu層の上に厚さ10μmのNi層をめっきして更にその上に厚さ5μmのCu層をめっきした3層構成となっている。このように、比較例2と実施例20のどちらについても、Cu層の合計厚さは10μmで同じであるが、引張強度は2割以上も異なることが判明した。
【0044】
さらに第3の例として、比較例2と実施例36のグラフを参照する。このグラフから理解できるとおり、実施例36は、Cu層の上にNi層とCu層を交互に設けた5層構成であり、Cu層に比べて引張強度の高いNi層の合計厚さ比率が40%となっている。しかしながら実施例36では、Ni層の合計厚さ比率が比較例2の50%に比べやや低いにも関わらず、引張強度は2層構成の比較例2よりも2割以上も高い。
このような積層金属箔の引張強度の違いに対して本発明者らは、積層された金属層間の構造、すなわち積層界面における粗度に着目した結果、高強度の積層金属箔を高いレベルで実現するには金属層間で最適な粗度となることが重要であることに帰結した。
なお、本実施形態の粗度は、JISB0601-1994規格に準拠した測定手法によって測定した値を用いるものとする。
【0045】
より具体的に本実施形態においては、積層界面における粗度のうち、まず、第1金属層31と第2金属層32の積層界面における粗度がRa(算術平均粗さ)≧0.12であることが重要である。これにより、複合材料の複合則で算出される理論強度よりも高い強度(引張強度)を実現することができる。なお、この作用効果に関する物理的なメカニズムは完全に解明されているわけではないが、積層界面における結晶粒レベルの凹凸が材料変形における転位に影響しているものと推測される。
【0046】
Ra及び後述するRy(最大高さ)やRz(十点平均粗さ)等の粗度を制御する手法としては、例えば、(a)めっき厚(通電量)、(b)めっき浴の浴温、(c)めっき浴の電流密度、(d)浴組成(添加剤:光沢剤有無)、および(e)めっき浴中でのCuやNi、Feの各イオン濃度、のいずれかのパラメータを調整することが考えられる。このうち、以下では(a)及び(d)を制御してRa等の粗度を目標の値に調整する例を示すが、本発明はこの態様に限られず他のパラメータを用いて上記粗度を目標の値に調整してもよい。
【0047】
また、3層以上の多層構成の場合には、必ずしも第1金属層31と第2金属層32との間の界面における粗度がRa≧0.12である必要はなく、第2金属層32と第3金属層33との界面などいずれかの層間の界面の粗度がRa≧0.12となればよい。なお、このことは、他のRy、Rz、界面粗さ指数についても同様である。
【0048】
また、本実施形態においては、積層界面における粗度のうち、さらに第1金属層31と第2金属層32の積層界面における粗度がRy≧0.1であることが望ましい。
また、本実施形態においては、積層界面における粗度のうち、さらに第1金属層31と第2金属層32の積層界面における粗度がRz≧0.4であることが望ましい。
【0049】
[界面粗さ指数について]
本実施形態の積層界面における粗度は、上記したRa、RyおよびRzに限られず、以下に説明する界面粗さ指数を用いてもよい。
すなわち、上記粗度を測定する測定装置の測定視野に対する実測表面積の比をSとし、上記したRaをこのSで除算した値を「界面粗さ指数(Ra/S)」として定義する。
【0050】
この場合において、本実施形態の界面粗さ指数(Ra/S)は以下の式(1)で示される関係を有することが望ましい。
界面粗さ指数(Ra/S)≧0.06 ・・・(1)
これにより、上記した効果に加え、例えば計測機器の個体差などによる誤差も抑制して適正な積層界面における粗度を算出することが可能となる。
また、上記した積層界面における粗度は、次に示す関係を有していてもよい。
Ra/Ry≧0.06
Ra/Rz≧0.07
【0051】
<集電体の引張強度>
上述したとおり、本実施形態の集電体30Aは、理論強度比1.1~1.4倍程度の高い引張強度を発現している。
ここで、本実施形態の理論引張強度は、単体の状態でそれぞれ異なる厚みで計測した引張強度の値を測定し、これらの値を用いて材料の複合則に従って算出した。具体的には、例えばCu層(厚さ10μm)とNi層(厚さ10μm)から成る総箔厚さ20μmの積層箔の場合は、単体のCu箔(厚さ20μm)の引張強度(A)と、単体のNi箔(厚さ20μm)の引張強度(B)とを測定し、それに積層箔の各層の厚さ比率を乗じて加えた
A×(10/20)+B×(10/20)
の値をもって積層箔の理論強度とした。
なお、後述の実施例・比較例において、積層箔の総厚みが12μm、15μmの場合については、対応する各金属単体の引張強度は、厚さ10μmの場合の引張強度を代用して理論強度を計算した。積層箔の総厚みが4~10μm、20μmの場合については、積層箔総箔厚みに対応する単体金属の引張強度の値を用いて理論強度を計算した。
【0052】
表4に、無光沢Niめっき、光沢Niめっき、無光沢Cuめっき、光沢Cuめっき、およびFeめっきについて、それぞれ単層で引張試験器(ORIENTEC製 万能材料試験機 テンシロンRTC-1350A)によって計測した実測引張強度の値を示す。
なお本実施形態における集電体の引張強度は、JIS K 6251(2010年)の引張試験方法に準じて測定した値を用いるものとする。また、集電体の引張強度は、25℃において測定した時の値である。
【0053】
【表4】
【0054】
<集電体の製造方法>
次に本実施形態の負極集電体(集電体30A)の製造方法について説明する。本実施形態の負極集電体の製造方法については特に制限はないが、例えばめっき(電解箔)を用いて形成することが望ましい。より具体的には、例えば図3に示すようなステップで、コイル状に巻かれた基材を引き出して搬送する過程で順次表面処理を実施するロールtoロール方式で行ってもよい。このとき基材としては、例えばTiやSUSなどの金属が適用できる。
【0055】
このうち、光沢Cuめっきの条件は次に示すとおりである。
[光沢Cuめっき条件]
・浴組成:硫酸銅を主成分とする公知の硫酸銅浴(下記に一例を記載)に公知の光沢剤(添加剤)を添加
硫酸銅:150~250g/L
硫酸:30~60g/L
塩酸(35%として):0.1~0.5ml/L
・温度:25~50℃
・pH:1以下
・撹拌:空気撹拌もしくは噴流撹拌
・電流密度:1~30A/dm
なお、本発明における添加剤は、主として上記した積層界面における粗度を制御する目的で使用される。従って、光沢剤の種類を問わず公知の種々の添加剤を用いることができ、これにより積層界面における粗度を目的の値に調整することができる。
【0056】
また、無光沢Cuめっきの条件は次に示すとおりである。
[無光沢Cuめっき条件]
・浴組成:硫酸銅を主成分とする公知の硫酸銅浴(下記に一例を記載)
硫酸銅:150~250g/L
硫酸:30~60g/L
塩酸(35%として):0.1~0.5ml/L
・温度:25~70℃
・pH:1以下
・撹拌:空気撹拌もしくは噴流撹拌
・電流密度:1~30A/dm
【0057】
また、無光沢Niめっきの条件は次に示すとおりである。
[無光沢Niめっき条件]
・浴組成:公知のスルファミン酸ニッケルめっき浴(下記に一例を記載)
スルファミン酸ニッケル:150~300g/L
塩化ニッケル:1~10g/L
ホウ酸:5~40g/L
なお、浴組成については、上記したスルファミン酸ニッケルめっき浴の他、公知のワット浴を用いてもよい。
また、目的の積層界面における粗度が得られる限りにおいて、更に公知の光沢剤(光沢を得るために必要な有機物)などの添加剤をめっき浴に添加して光沢Niめっき又は半光沢Niめっきとしてもよい。
【0058】
また、Feめっきの条件は次に示すとおりである。
[Feめっき条件]
・浴組成:公知の塩化物系鉄めっき浴(下記に一例を記載)
塩化第一鉄:800~1000g/L
塩酸(35%として):5~30g/L
・温度:70~95℃
・pH:1以下
・撹拌:空気撹拌もしくは噴流撹拌
・電流密度:1~20A/dm
【0059】
なお、本実施形態では、ロールtoロール方式で基材に対してCuめっき、FeめっきやNiめっきを順次実施する例について説明したが、本発明はこの態様に限られない。すなわち、本実施形態の負極集電体(集電体30A)は、すべての金属層がめっき層で形成されておらずともよく、例えば一部の層が圧延箔などめっき以外の手法で形成されていてもよい。
【0060】
≪第2実施形態≫
次に図4を用いて本実施形態の第2実施形態について説明する。
上記した第1実施形態では集電体30Aは2層構造または3層構造であったが、本実施形態では4層以上の構造である点に特徴がある。
【0061】
より具体的に本実施形態の集電体30Bは、5層構造となっており、下層から順次、第1金属層31、第2金属層32、第3金属層33、第4金属層34および第5金属層35が積層されている。
このとき、第1金属層31、第3金属層33及び第5金属層35は同種の金属であり、第2金属層32及び第4金属層34が同種の金属となっていてもよい。従って換言すれば、第3金属層33及び第5金属層35は実質的に第1金属層31であり、さらに第4金属層34は実質的に第2金属層32であるといえる。
【0062】
このように本実施形態では、Cu、Ni及びFeから選ばれる組み合わせで異なる金属層が少なくとも4層以上に交互積層されていてもよい。すると本実施形態における第1金属層31~第5金属層35は、次の表5に示す組み合わせが例示できる。なお、これらの金属には合金も含まれることは既述のとおりである。
また、本実施形態の集電体30Bは5層構造としたが、これに限られず4層または6層以上の構造となっていてもよい。
さらに本実施形態では、上記した各層がすべてめっき層で形成されていてもよい。
【0063】
【表5】
【0064】
≪実施例≫
以下に、実施例を挙げて本発明について、より具体的に説明する。
<実施例1>
第1金属層31として無光沢Cuを選択し、第2金属層32としてNiを選択した。より具体的には、まず、集電体がその上面に形成される基材として公知のTi基材を用い、このTi基材を酸洗及び水洗などの公知の前処理を施した。
次いで前処理したTi基材を以下に示す無光沢Cuめっき浴に含浸し、電解箔として厚さ2μmの第1金属層31(無光沢Cuめっき層)をTi基材上に形成した。
【0065】
[無光沢Cuめっき条件]
・浴組成:硫酸銅200g/Lを主成分とする硫酸銅めっき浴
硫酸銅:200g/L
硫酸:45g/L
塩酸:0.3ml/L
・温度:50℃
・pH:1以下
・撹拌:空気撹拌
・電流密度:20A/dm
【0066】
第1金属層31がTi基材上に形成された後、水洗を行ってから以下に示す非接触式の表面粗さ測定装置を用いて第1金属層31の表面粗さ(Ra、Ry、Rz)を測定した。上述のとおり、実施例1における粗度は、JISB0601-1994規格に準拠した測定手法によって測定した。また、別途、設定した下記の測定視野に対する実測値も表面積として記録した。
・測定装置:OLYMPUS製レーザ顕微鏡LEXT OLS3500
・測定視野:100μm×100μm
次いで、第1金属層31が形成されたTi基材を以下に示すNiめっき浴に含浸させることで、第1金属層31上に厚さ2μmの第2金属層32(Niめっき層)を形成した。
【0067】
[Niめっき条件]
・浴組成:スルファミン酸ニッケル浴
スルファミン酸ニッケル:300g/L
塩化ニッケル:10g/L
ホウ酸:20g/L
・温度:50℃
・pH:4
・撹拌:空気撹拌
・電流密度:20A/dm
なお、本実施例ではめっき浴に添加剤は特に添加しなかったが、必要な上記粗度が得られる限りにおいて、公知の光沢剤(光沢を得るために必要な有機物)などの添加剤をめっき浴に添加して光沢Niめっきとしてもよい(以下の実施例2~5、9~27、31~37および比較例1~6も同様)。
【0068】
次いで、電着させた第1金属層31及び第2金属層32を充分に乾燥させた後に、Ti基材からこれらを剥離して積層金属箔(本実施例では電池用集電体)を得た。
そして、得られた集電体で上記と同様に引張試験機(ORIENTEC製 万能材料試験機 テンシロンRTC-1350A)で引張試験を行って機械的強度(引張強度)を測定した。上述のとおり、実施例1における引張強度は、JIS K 6251(2010年)の引張試験方法に準じて測定した。
【0069】
<実施例2>
第1金属層31(無光沢Cuめっき層)の厚みを5μmとし、第2金属層32(Niめっき層)の厚みを5μmとした以外は、実施例1と同様に行った。
【0070】
<実施例3>
第1金属層31(無光沢Cuめっき層)の厚みを10μmとし、第2金属層32(Niめっき層)の厚みを10μmとした以外は、実施例1と同様に行った。
【0071】
<実施例4>
第1金属層31として光沢Cuめっき層を選択し、第2金属層32としてNiめっき層を選択した。より具体的には、まず、集電体がその上面に形成される基材として公知のTi基材を用い、このTi基材を酸洗及び水洗などの公知の前処理を施した。
次いで前処理したTi基材を以下に示す光沢Cuめっき浴に含浸し、電解箔として厚さ2μmの第1金属層31(光沢Cuめっき層)をTi基材上に形成した。
【0072】
[光沢Cuめっき条件]
・浴組成:硫酸銅200g/Lを主成分とする硫酸銅めっき浴に光沢剤(添加剤)を添加
硫酸銅:200g/L
硫酸:45g/L
塩酸:0.3g/L
光沢剤:公知の装飾用硫酸銅めっき用光沢剤を適量(0.3ml~10ml/L程度)
・温度:30℃
・pH:1以下
・撹拌:空気撹拌
・電流密度:5A/dm
なお、上記した光沢剤は一例であって、金属層間の界面における粗度を目的の値とするため、他の公知の光沢剤を適宜用いてもよいことは既述のとおりである。
【0073】
第1金属層31がTi基材上に形成された後、水洗を行ってから実施例1と同様に第1金属層31の表面粗さ(Ra、Ry、Rz)などを測定した。
次いで、第1金属層31が形成されたTi基材を実施例1と同様のNiめっき浴に含浸させることで、第1金属層31上に厚さ2μmの第2金属層32(Niめっき層)を形成した。
【0074】
次いで、電着させた第1金属層31及び第2金属層32を充分に乾燥させた後に、Ti基材からこれらを剥離して積層金属箔(本実施例では電池用集電体)を得た。そして、得られた積層金属箔で上記と同様に引張試験を行って機械的強度(引張強度)を測定した。
【0075】
<実施例5>
第1金属層31をNiめっき層とし、第2金属層32を光沢Cuめっき層とし、第1金属層31(Niめっき層)の厚みを6μmとし、第2金属層32(光沢Cuめっき層)の厚みを14μmとした以外は、実施例4と同様に行った。
【0076】
<実施例6>
第1金属層31を無光沢Cuめっき層とし、第2金属層32をFeめっき層とした。まず実施例1と同様の無光沢Cuめっき浴にTi基材を含浸させて厚さ5μmの第1金属層31をTi基材上に形成した。
第1金属層31がTi基材上に形成された後、水洗を行ってから実施例1と同様に第1金属層31の表面粗さ(Ra、Ry、Rz)などを測定した。
次いで、水洗などを行った後に、第1金属層31が形成されたTi基材を以下に示すFeめっき浴に含浸させることで、第1金属層31上に厚さ5μmの第2金属層32(Feめっき層)を形成した。
【0077】
[Feめっき条件]
・浴組成:公知の塩化物系鉄めっき浴
塩化第一鉄:1000g/L
塩酸:10ml/L
・温度:85℃以上
・pH:1以下
・撹拌:噴流撹拌又は空気撹拌
・電流密度:15A/dm
【0078】
次いで、形成した第1金属層31及び第2金属層32を充分に乾燥させた後に、Ti基材からこれらを剥離して積層金属箔(本実施例では電池用集電体)を得た。そして、得られた積層金属箔で上記と同様に引張試験を行って機械的強度(引張強度)を測定した。
【0079】
<実施例7>
第1金属層31(無光沢Cuめっき層)の厚みを10μmとし、第2金属層32(Feめっき層)の厚みを10μmとした以外は、実施例6と同様に行った。
【0080】
<実施例8>
第1金属層31(無光沢Cuめっき層)の厚みを5μmとし、第2金属層32(Feめっき層)の厚みを10μmとした以外は、実施例6と同様に行った。
【0081】
<実施例9>
第1金属層31をNiめっき層とし、第2金属層32をFeめっき層とした。まず実施例5と同様にTi基材をNiめっき浴に含浸して厚さ3μmの第1金属層31を形成した。次いで、他の実施例と同様に第1金属層31の表面粗さを測定した後、実施例6と同様に第2金属層32(Feめっき層)を厚さ3μmで第1金属層31上に形成した。
次いで、形成した第1金属層31及び第2金属層32を充分に乾燥させた後に、Ti基材からこれらを剥離して積層金属箔(本実施例では電池用集電体)を得た。そして、得られた積層金属箔で上記と同様に引張試験を行って機械的強度(引張強度)を測定した。
【0082】
<実施例10>
第1金属層31(Niめっき層)の厚みを5μmとし、第2金属層32(Feめっき層)の厚みを5μmとした以外は、実施例9と同様に行った。
【0083】
<実施例11>
第1金属層31(Niめっき層)の厚みを10μmとし、第2金属層32(Feめっき層)の厚みを10μmとした以外は、実施例9と同様に行った。
【0084】
<実施例12>
実施例9の層構造とは逆の層構造で行った。すなわち、第1金属層31をFeめっき層とし、第2金属層32をNiめっき層とした以外は、実施例9と同様に行った。
【0085】
<実施例13>
第1金属層31(Feめっき層)の厚みを5μmとし、第2金属層32(Niめっき層)の厚みを5μmとした以外は、実施例12と同様に行った。
【0086】
<実施例14>
第1金属層31(Feめっき層)の厚みを10μmとし、第2金属層32(Niめっき層)の厚みを10μmとした以外は、実施例12と同様に行った。
【0087】
<実施例15>
第1金属層31として無光沢Cuめっき層を選択し、第2金属層32としてNiめっき層を選択し、第3金属層33として無光沢Cuめっき層を選択した。
まず実施例2と同様に厚さ5μmの第1金属層31(無光沢Cuめっき層)をTi基材上に形成して表面粗さの計測などを行った後、実施例3と同様に第1金属層31上に厚さ10μmの第2金属層32(Niめっき層)を形成した。
次いで、この第2金属層32の表面粗さを計測した後に、再び実施例2と同様に厚さ5μmの第3金属層33(無光沢Cuめっき層)を第2金属層32上に形成した。
そして形成した第1金属層31~第3金属層33を充分に乾燥させた後に、Ti基材からこれらを剥離して積層金属箔(本実施例では電池用集電体)を得て、上記と同様に引張試験を行って機械的強度(引張強度)を測定した。
【0088】
<実施例16>
第1金属層31(無光沢Cuめっき層)の厚みを2.5μmとし、第2金属層32(Niめっき層)の厚みを5μmとし、第3金属層33(無光沢Cuめっき層)の厚みを2.5μmとした以外は、実施例15と同様に行った。
【0089】
<実施例17>
第1金属層31(無光沢Cuめっき層)の厚みを1μmとし、第2金属層32(Niめっき層)の厚みを2μmとし、第3金属層33(無光沢Cuめっき層)の厚みを1μmとした以外は、実施例15と同様に行った。
【0090】
<実施例18>
第1金属層31(無光沢Cuめっき層)の厚みを8μmとし、第2金属層32(Niめっき層)の厚みを4μmとし、第3金属層33(無光沢Cuめっき層)の厚みを8μmとした以外は、実施例15と同様に行った。
【0091】
<実施例19>
第1金属層31(無光沢Cuめっき層)の厚みを4μmとし、第2金属層32(Niめっき層)の厚みを2μmとし、第3金属層33(無光沢Cuめっき層)の厚みを4μmとした以外は、実施例15と同様に行った。
【0092】
<実施例20>
第1金属層31として光沢Cuめっき層を選択し、第2金属層32としてNiめっき層を選択し、第3金属層33として光沢Cuめっき層を選択した。
まず実施例4と同様に厚さ5μmの第1金属層31(光沢Cuめっき層)をTi基材上に形成して表面粗さの計測などを行った後、実施例3と同様に第1金属層31上に厚さ10μmの第2金属層32(Niめっき層)を形成した。
次いで、この第2金属層32の表面粗さを計測した後に、再び実施例4と同様に厚さ5μmの第3金属層33(光沢Cuめっき層)を第2金属層32上に形成した。
そして形成した第1金属層31~第3金属層33を充分に乾燥させた後に、Ti基材からこれらを剥離して積層金属箔(本実施例では電池用集電体)を得て、上記と同様に引張試験を行って機械的強度(引張強度)を測定した。
【0093】
<実施例21>
第1金属層31(光沢Cuめっき層)の厚みを2.5μmとし、第2金属層32(Niめっき層)の厚みを5μmとし、第3金属層33(光沢Cuめっき層)の厚みを2.5μmとした以外は、実施例20と同様に行った。
【0094】
<実施例22>
第1金属層31(光沢Cuめっき層)の厚みを1μmとし、第2金属層32(Niめっき層)の厚みを2μmとし、第3金属層33(光沢Cuめっき層)の厚みを1μmとした以外は、実施例20と同様に行った。
【0095】
<実施例23>
第1金属層31(光沢Cuめっき層)の厚みを8μmとし、第2金属層32(Niめっき層)の厚みを4μmとし、第3金属層33(光沢Cuめっき層)の厚みを8μmとした以外は、実施例20と同様に行った。
【0096】
<実施例24>
第1金属層31(光沢Cuめっき層)の厚みを4μmとし、第2金属層32(Niめっき層)の厚みを2μmとし、第3金属層33(光沢Cuめっき層)の厚みを4μmとした以外は、実施例20と同様に行った。
【0097】
<実施例25>
第1金属層31(光沢Cuめっき層)の厚みを2μmとし、第2金属層32(Niめっき層)の厚みを1μmとし、第3金属層33(光沢Cuめっき層)の厚みを2μmとした以外は、実施例20と同様に行った。
【0098】
<実施例26>
実施例25の層構造と逆の層構造で行った。すなわち、第1金属層31としてNiめっき層を選択し、第2金属層32として光沢Cuめっき層を選択し、第3金属層33としてNiめっき層を選択した。
まず実施例4と同様に厚さ5μmの第1金属層31(Niめっき層)をTi基材上に形成して表面粗さの計測などを行った後、実施例4と同様に第1金属層31上に厚さ10μmの第2金属層32(光沢Cuめっき層)を形成した。
次いで、この第2金属層32の表面粗さを計測した後に、再び実施例4と同様に厚さ5μmの第3金属層33(Niめっき層)を第2金属層32上に形成した。
そして形成した第1金属層31~第3金属層33を充分に乾燥させた後に、Ti基材からこれらを剥離して積層金属箔(本実施例では電池用集電体)を得て、上記と同様に引張試験を行って機械的強度(引張強度)を測定した。
なお、このとき、第2金属層32と第3金属層33との間の積層界面における粗度Rzが0.401であった。よって、本発明におけるRyの最小値は小数第三位を四捨五入して0.4とし、これによりRz≧0.4を導出した。
【0099】
<実施例27>
第1金属層31(Niめっき層)の厚みを1μmとし、第2金属層32(光沢Cuめっき層)の厚みを8μmとし、第3金属層33(Niめっき層)の厚みを1μmとした以外は、実施例26と同様に行った。
【0100】
<実施例28>
第1金属層31として無光沢Cuめっき層を選択し、第2金属層32としてFeめっき層を選択し、第3金属層33として無光沢Cuめっき層を選択した。
まず実施例6と同様に厚さ5μmの第1金属層31(無光沢Cuめっき層)をTi基材上に形成して表面粗さの計測などを行った後、実施例7と同様に第1金属層31上に厚さ10μmの第2金属層32(Feめっき層)を形成した。
次いで、この第2金属層32の表面粗さを計測した後に、再び実施例6と同様に厚さ5μmの第3金属層33(無光沢Cuめっき層)を第2金属層32上に形成した。
そして形成した第1金属層31~第3金属層33を充分に乾燥させた後に、Ti基材からこれらを剥離して積層金属箔(本実施例では電池用集電体)を得て、上記と同様に引張試験を行って機械的強度(引張強度)を測定した。
【0101】
<実施例29>
第1金属層31(無光沢Cuめっき層)の厚みを2.5μmとし、第2金属層32(Feめっき層)の厚みを5μmとし、第3金属層33(無光沢Cuめっき層)の厚みを2.5μmとした以外は、実施例28と同様に行った。
【0102】
<実施例30>
第1金属層31(無光沢Cuめっき層)の厚みを1.5μmとし、第2金属層32(Feめっき層)の厚みを7μmとし、第3金属層33(無光沢Cuめっき層)の厚みを1.5μmとした以外は、実施例28と同様に行った。
【0103】
<実施例31>
第1金属層31としてNiめっき層を選択し、第2金属層32としてFeめっき層を選択し、第3金属層33としてNiめっき層を選択した。
まず実施例10と同様に厚さ5μmの第1金属層31(Niめっき層)をTi基材上に形成して表面粗さの計測などを行った後、実施例11と同様に第1金属層31上に厚さ10μmの第2金属層32(Feめっき層)を形成した。
次いで、この第2金属層32の表面粗さを計測した後に、再び実施例10と同様に厚さ5μmの第3金属層33(Niめっき層)を第2金属層32上に形成した。
そして形成した第1金属層31~第3金属層33を充分に乾燥させた後に、Ti基材からこれらを剥離して積層金属箔(本実施例では電池用集電体)を得て、上記と同様に引張試験を行って機械的強度(引張強度)を測定した。
【0104】
<実施例32>
第1金属層31(Niめっき層)の厚みを2.5μmとし、第2金属層32(Feめっき層)の厚みを5μmとし、第3金属層33(Niめっき層)の厚みを2.5μmとした以外は、実施例31と同様に行った。
【0105】
<実施例33>
第1金属層31(Niめっき層)の厚みを1.5μmとし、第2金属層32(Feめっき層)の厚みを7μmとし、第3金属層33(Niめっき層)の厚みを1.5μmとした以外は、実施例31と同様に行った。
【0106】
<実施例34>
第1金属層31として無光沢Cuめっき層を選択し、第2金属層32としてNiめっき層を選択し、第3金属層33として無光沢Cuめっき層を選択し、第4金属層34としてNiめっき層を選択し、第5金属層35として無光沢Cuめっき層を選択した。換言すれば、本実施例では、第1金属層31から第5金属層35にかけて、Cuめっき層とNiめっき層とが交互に積層された形態となっている。
【0107】
まず実施例2と同様に厚さ4μmの第1金属層31(無光沢Cuめっき層)をTi基材上に形成して表面粗さの計測などを行った後、実施例3と同様に第1金属層31上に厚さ4μmの第2金属層32(Niめっき層)を形成した。
次いで、この第2金属層32の表面粗さを計測した後に、再び実施例2と同様に厚さ4μmの第3金属層33(無光沢Cuめっき層)を第2金属層32上に形成した。
次いで、この第3金属層33の表面粗さを計測した後に、再び実施例3と同様に厚さ4μmの第4金属層34(Niめっき層)を第3金属層33上に形成した。
【0108】
さらに次いで、この第4金属層34の表面粗さを計測した後に、再び実施例2と同様に厚さ4μmの第5金属層35(無光沢Cuめっき層)を第4金属層34上に形成した。
そして形成した第1金属層31~第5金属層35を充分に乾燥させた後に、Ti基材からこれらを剥離して積層金属箔(本実施例では電池用集電体)を得て、上記と同様に引張試験を行って機械的強度(引張強度)を測定した。
【0109】
<実施例35>
第1金属層31(無光沢Cuめっき層)の厚みを2μmとし、第2金属層32(Niめっき層)の厚みを2μmとし、第3金属層33(無光沢Cuめっき層)の厚みを2μmとし、第4金属層34(Niめっき層)の厚みを2μmとし、第5金属層35(無光沢Cuめっき層)の厚みを2μmとした以外は、実施例34と同様に行った。
【0110】
<実施例36>
第1金属層31として光沢Cuめっき層を選択し、第2金属層32としてNiめっき層を選択し、第3金属層33として光沢Cuめっき層を選択し、第4金属層34としてNiめっき層を選択し、第5金属層35として光沢Cuめっき層を選択した。
すなわち、第1金属層31を光沢Cuめっき層とし、第3金属層33を光沢Cuめっき層とし、第5金属層35を光沢Cuめっき層とした以外は、実施例34と同様に行った。
なお、このとき、第3金属層33と第4金属層34との間の積層界面における粗度Ryが0.096であった。よって、本発明におけるRyの最小値は小数第三位を四捨五入して0.1とし、これによりRy≧0.1を導出した。
【0111】
<実施例37>
第1金属層31としてNiめっき層を選択し、第2金属層32としてFeめっき層を選択し、第3金属層33としてNiめっき層を選択し、第4金属層34としてFeめっき層を選択し、第5金属層35としてNiめっき層を選択した。換言すれば、本実施例では、第1金属層31から第5金属層35にかけて、Niめっき層とFeめっき層とが交互に積層された形態となっている。
【0112】
まず実施例31と同様に厚さ4μmの第1金属層31(Niめっき層)をTi基材上に形成して表面粗さの計測などを行った後、第1金属層31上に厚さ4μmの第2金属層32(Feめっき層)を形成した。
次いで、この第2金属層32の表面粗さを計測した後に、再び実施例31と同様に厚さ4μmの第3金属層33(Niめっき層)を第2金属層32上に形成した。次いで、この第3金属層33の表面粗さを計測した後に、厚さ4μmの第4金属層34(Feめっき層)を第3金属層33上に形成した。
【0113】
さらに次いで、この第4金属層34の表面粗さを計測した後に、厚さ4μmの第5金属層35(Niめっき層)を第4金属層34上に形成した。
そして形成した第1金属層31~第5金属層35を充分に乾燥させた後に、Ti基材からこれらを剥離して積層金属箔(本実施例では電池用集電体)を得て、上記と同様に引張試験を行って機械的強度(引張強度)を測定した。
【0114】
<比較例1>
第1金属層31(光沢Cuめっき層)の厚みを5μmとし、第2金属層32(Niめっき層)の厚みを5μmとし、添加する光沢剤の量を調整した以外は、実施例4と同様に行った。
このとき、第2金属層32と対向する側の第1金属層31の表面粗さ(換言すれば第1金属層31と第2金属層32の積層界面における粗度)は、Ra=0.098であった。
【0115】
<比較例2>
第1金属層31(光沢Cuめっき層)の厚みを10μmとし、第2金属層32(Niめっき層)の厚みを10μmとし、添加する光沢剤の量を調整した以外は、比較例1と同様に行った。
このとき、第2金属層32と対向する側の第1金属層31の表面粗さ(換言すれば第1金属層31と第2金属層32の積層界面における粗度)は、Ra=0.033であった。
【0116】
<比較例3>
第1金属層31(光沢Cuめっき層)の厚みを6μmとし、第2金属層32(Niめっき層)の厚みを4μmとし、添加する光沢剤の量を調整した以外は、比較例1と同様に行った。
このとき、第2金属層32と対向する側の第1金属層31の表面粗さ(換言すれば第1金属層31と第2金属層32の積層界面における粗度)は、Ra=0.075であった。
【0117】
<比較例4>
第1金属層31(光沢Cuめっき層)の厚みを14μmとし、第2金属層32(Niめっき層)の厚みを6μmとし、添加する光沢剤の量を調整した以外は、比較例1と同様に行った。
このとき、第2金属層32と対向する側の第1金属層31の表面粗さ(換言すれば第1金属層31と第2金属層32の積層界面における粗度)は、Ra=0.028であった。
【0118】
<比較例5>
第1金属層31(光沢Cuめっき層)の厚みを5μmとし、第2金属層32(Niめっき層)の厚みを10μmとした以外は、比較例1と同様に行った。
このとき、第2金属層32と対向する側の第1金属層31の表面粗さ(換言すれば第1金属層31と第2金属層32の積層界面における粗度)は、Ra=0.098であった。
【0119】
<比較例6>
第1金属層31として光沢Cuめっき層を選択し、第2金属層32としてFeめっき層を選択した。
まず添加する光沢剤の量を調整した以外は実施例20と同様に厚さ5μmの第1金属層31(光沢Cuめっき層)をTi基材上に形成して表面粗さの計測などを行った後、同じく添加する光沢剤の量を調整した以外は実施例10と同様に第1金属層31上に厚さ5μmの第2金属層32(Feめっき層)を形成した。
そして形成した第1金属層31及び第2金属層32を充分に乾燥させた後に、Ti基材からこれらを剥離して集電体を得て、上記と同様に引張試験を行って機械的強度(引張強度)を測定した。
【0120】
<比較例7>
第1金属層31(光沢Cuめっき層)の厚みを10μmとし、第2金属層32(Feめっき層)の厚みを10μmとし、添加する光沢剤の量を調整した以外は、比較例7と同様に行った。
【0121】
<比較例8>
第2金属層32(Feめっき層)の厚みを10μmとした以外は、比較例7と同様に行った。
【0122】
<比較例9>
第1金属層31(光沢Cuめっき層)の厚みを8μmとし、第2金属層32(Feめっき層)の厚みを4μmとし、添加する光沢剤の量を調整した以外は、比較例7と同様に行った。
【0123】
<比較例10>
第1金属層31として光沢Niを選択し、第2金属層32として光沢Cuを選択した。
より具体的には、まず、集電体がその上面に形成される基材として公知のTi基材を用い、このTi基材を酸洗及び水洗などの公知の前処理を施した。
次いで前処理したTi基材を以下に示す光沢Niめっき浴に含浸し、電解箔として厚さ10μmの第1金属層31(光沢Niめっき層)をTi基材上に形成した。
【0124】
[光沢Niめっき条件]
・浴組成:スルファミン酸ニッケル浴に下記添加剤を適量添加
スルファミン酸ニッケル:300g/L
塩化ニッケル:10g/L
ホウ酸:20g/L
・温度:50℃
・pH:4
・撹拌:空気撹拌
・電流密度:20A/dm
・添加剤:ニッケルめっき用光沢剤5~15ml/L
【0125】
第1金属層31がTi基材上に形成された後、水洗を行ってから上記と同様に第1金属層31の表面粗さ(Ra、Ry、Rz)などを測定した。
次いで、第1金属層31が形成されたTi基材を比較例8と同様の光沢Cuめっき浴に含浸させることで、第1金属層31上に厚さ10μmの第2金属層32(光沢Cuめっき層)を形成した。
【0126】
次いで、電着させた第1金属層31及び第2金属層32を充分に乾燥させた後に、Ti基材からこれらを剥離して積層金属箔(電池用集電体)を得た。そして、得られた積層金属箔で上記と同様に引張試験を行って機械的強度(引張強度)を測定した。
このとき、第2金属層32と対向する側の第1金属層31の表面粗さ(換言すれば第1金属層31と第2金属層32の積層界面における粗度)は、Ra=0.057であった。
【0127】
<比較例11>
第2金属層32を無光沢Cuめっき層とした以外は、比較例11と同様に行った。
このとき、第2金属層32と対向する側の第1金属層31の表面粗さ(換言すれば第1金属層31と第2金属層32の積層界面における粗度)は、Ra=0.057であった。
【0128】
<比較例12>
第2金属層32を、比較例11で示した光沢Niめっき条件によって厚さ10μmの光沢Niめっき層とした以外は、実施例20と同様に行った。
このとき、第2金属層32と対向する側の第1金属層31の表面粗さ(換言すれば第1金属層31と第2金属層32の積層界面における粗度)はRa=0.098であり、同様に第3金属層33と対向する側の第2金属層32の表面粗さはRa=0.062であった。
【0129】
<比較例13>
第1金属層31及び第3金属層33を、比較例11で示した光沢Niめっき条件によってそれぞれ厚さ5μmの光沢Niめっき層とした以外は、実施例26と同様に行った。
このとき、第2金属層32と対向する側の第1金属層31の表面粗さ(換言すれば第1金属層31と第2金属層32の積層界面における粗度)はRa=0.102であり、同様に第3金属層33と対向する側の第2金属層32の表面粗さはRa=0.007であった。
【0130】
[実用性の評価]
上記した各実施例および比較例で得られた集電体について、以下のとおり評価指標を設定し、計測した引張強度が理論強度の105%以上のものを次世代電池などに有用であるという意図で実用性有と評価した。
≪評価指標≫
○:引張強度が理論強度の105%以上
×:引張強度が理論強度の105%未満
【0131】
以上説明した各実施例及び比較例に関する仕様値、積層界面における粗度、機械的性質および実用性評価結果を表6~表10に示す。
【0132】
【表6】
【0133】
【表7】
【0134】
【表8】
【0135】
【表9】
【0136】
【表10】
【0137】
各実施例は、理論値を上回る高い強度(引張強度)を備えていることが確認された。一方で比較例においては、この特性を備えるものはなかったことが確認された。
また、特に実施例26などからも明らかなとおり、積層された金属層における積層界面のいずれか一面が、Ra≧0.12であれば上記した本発明の効果を奏することが可能であることが分かる。なお、このことはRyおよびRzについても同様である。
【0138】
なお上記した実施形態と各実施例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
また、上記した実施形態と実施例は主として電池用集電体として説明したが、本発明は集電体に限られず積層金属箔として他の用途にも適用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0139】
以上説明したように、本発明の積層金属箔、電池用集電体および電池は、自動車や電子機器など広い分野の産業への適用が可能である。
【符号の説明】
【0140】
C 電池
1 正極
2 セパレータ
3 負極
31 第1金属層
32 第2金属層
33 第3金属層
34 第4金属層
35 第5金属層

図1
図2
図3
図4
図5