(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 3/00 20060101AFI20221205BHJP
B66B 11/02 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
B66B3/00 G
B66B3/00 L
B66B11/02 F
B66B11/02 P
(21)【出願番号】P 2021144904
(22)【出願日】2021-09-06
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 貴子
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/149696(WO,A1)
【文献】特開2012-056755(JP,A)
【文献】特開2007-276961(JP,A)
【文献】特開2009-062105(JP,A)
【文献】特開平04-266386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00- 3/02
B66B 11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗りかごの内部を撮像する撮像装置と、
前記乗りかごの内部の音声を収集する集音装置と、
利用者を識別するための利用者識別情報と、前記利用者に提供する提供対象または前記提供対象を特定する提供情報とを対応付けて記憶する記憶装置と、
前記乗りかごの内部に設けられ、前記提供情報を出力する出力装置と、
前記出力装置を制御する制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、
前記撮像装置によって撮像された画像及び前記集音装置によって収集された音声を解析し、前記乗りかごの内部の利用者が不快感を持っているか否かを判定する解析部と、
前記解析部によって前記利用者が不快感を持っていると判定された場合、前記利用者の前記利用者識別情報に対応付けられて前記記憶装置に記憶された前記提供対象または前記提供情報で特定される前記提供対象を前記出力装置に出力させる制御部と、
を有
し、
前記記憶装置は、前記利用者識別情報と、前記提供情報としての画像情報と、を対応づけて記憶し、
前記解析部は、不快感を持っていると判定した利用者の視線の方向を、前記撮像装置によって撮像された画像から検出し、
前記制御部は、前記乗りかごの壁面のうち、前記利用者から見て前記視線の方向にある壁面に対し、前記利用者の前記利用者識別情報に対応する前記画像情報を前記出力装置に投影表示させる、
エレベータシステム。
【請求項2】
前記解析部は、前記撮像装置によって撮像された画像から前記利用者の動きの大きさが所定の大きさ以上であることが検出された場合、前記画像から前記利用者が顔をしかめていることが検出された場合、前記集音装置によって収集された音声から前記利用者が泣き声を発していることが検出された場合、及び前記音声から前記利用者がため息をついていることが検出された場合、のうち少なくともいずれかの場合に、前記利用者が不快感を持っていると判定する、請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記出力装置は、乗りかごの内部に複数設けられ、
前記解析部は、前記乗りかごの内部の複数の利用者について不快感を持っていると判定し、
前記制御部は、前記複数の出力装置のそれぞれに、前記複数の利用者のうち互いに異なる利用者の前記利用者識別情報に対応付けられて前記記憶装置に記憶された提供対象または提供情報で特定される前記提供対象を出力させる、請求項1
または2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記記憶装置は、乗り場において前記乗りかごの呼び登録が行われる際に、利用者が指定した提供対象または前記提供対象を特定する提供情報を前記利用者の携帯端末から受信し、前記利用者の前記利用者識別情報と受信した前記提供対象または前記提供情報で特定される前記提供対象とを対応付けて記憶する、請求項1から
3のいずれか1項に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記記憶装置は、前記制御装置と接続されたネットワークに接続され、
前記制御部は、前記ネットワークを介して前記記憶装置から取得した前記提供対象または前記提供情報で特定される前記提供対象を出力させる、請求項1から
4のいずれか1項に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記記憶装置は、前記利用者識別情報と、前記提供情報としての音声情報または前記音声情報を特定するための提供情報と、を対応づけて記憶し、
前記出力装置は、音声出力装置であり、
前記制御部は、前記利用者の前記利用者識別情報に対応する前記音声情報または前記提供情報で特定される前記音声情報を、前記音声出力装置から乗りかごの内部に出力するように制御する、請求項1または2に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記記憶装置は、前記利用者識別情報と、前記提供情報としての芳香を特定するための前記提供情報として
の芳香剤の種類と、を対応づけて記憶し、
前記出力装置は、送風機であり、
前記制御部は、前記利用者の前記利用者識別情報に対応する前記種類の芳香を、前記送風機から乗りかごの内部に送り込むように制御する、請求項1または2に記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗りかごの内部は狭い空間であり、子供等の弱者は、利用することを苦痛、不快に感じる場合がある。特に気圧変動が起こる高層エレベータにおいては苦痛、不快を顕著に感じられる場合がある。また、不快、苦痛を感じている利用者と乗り合わせた他の利用者も不安を感じることがある。
【0003】
特許文献1には、乗りかごの内部の画像から利用者が子供であることを判定し、子供用の画像案内又は子供用の音声案内を出力することにより、子供がエレベータを円滑かつ安全に利用できるようにする技術が記載されている。
【0004】
特許文献2には、故障により乗りかごに閉じ込められた利用者の属性を画像から取得し、属性に合わせてコンテンツを表示することにより、利用者の不安を軽減する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-100159号公報
【文献】特開2018-70273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1及び特許文献2に記載の技術は、利用者の属性に合わせてコンテンツを出力するものである。一方で、コンテンツの好みは各個人で異なり、属性だけでは判断できない場合がある。
【0007】
本実施形態が解決しようとする課題は、エレベータの利用者の好みに合った提供対象を提供し、不快感を軽減させることができるエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態のエレベータシステムは、エレベータの乗りかごの内部を撮像する撮像装置と、前記乗りかごの内部の音声を収集する集音装置と、利用者を識別するための利用者識別情報と、前記利用者に提供する提供対象または前記提供対象を特定する提供情報とを対応付けて記憶する記憶装置と、前記乗りかごの内部に設けられ、前記提供情報を出力する出力装置と、前記出力装置を制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記撮像装置によって撮像された画像及び前記集音装置によって収集された音声を解析し、前記乗りかごの内部の利用者が不快感を持っているか否かを判定する解析部と、前記解析部によって前記利用者が不快感を持っていると判定された場合、前記利用者の前記利用者識別情報に対応付けられて前記記憶装置に記憶された前記提供対象または前記提供情報で特定される前記提供対象を前記出力装置に出力させる制御部と、を有し、前記記憶装置は、前記利用者識別情報と、前記提供情報としての画像情報と、を対応づけて記憶し、前記解析部は、不快感を持っていると判定した利用者の視線の方向を、前記撮像装置によって撮像された画像から検出し、前記制御部は、前記乗りかごの壁面のうち、前記利用者から見て前記視線の方向にある壁面に対し、前記利用者の前記利用者識別情報に対応する前記画像情報を前記出力装置に投影表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るエレベータシステムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る記憶装置及び制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、画像の出力方法を説明する図である。
【
図4】
図4は、変形例に係るエレベータシステムの構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る制御装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[実施形態]
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。
【0012】
(エレベータシステムの構成例)
図1は、実施形態に係るエレベータシステム1の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、エレベータシステム1は、乗りかご10、駆動装置21、カウンタウェイト22、ロープ23、かご位置検出装置24、制御盤25、昇降路26、記憶装置30及び制御装置40を備える。
【0013】
昇降路26は、建物の各階を繋ぐよう建物内の上下方向に設けられる。昇降路26の内部には乗りかご10が配置されている。
【0014】
乗りかご10とカウンタウェイト22とはロープ23によって連結されている。ロープ23は駆動装置21に架け渡されている。駆動装置21は例えば巻上機等であり、駆動装置21が駆動することで乗りかご10を昇降路26内で上下に走行させることができる。
【0015】
駆動装置21には、乗りかご10の位置を検出するかご位置検出装置24が設けられている。かご位置検出装置24は、例えば巻上機である駆動装置21の回転数をカウントするパルスジェネレータ等を有し、パルスジェネレータのカウント数から乗りかご10の移動量を特定することで、乗りかご10の位置を検出する。
【0016】
駆動装置21及びかご位置検出装置24は、各種信号の授受が可能に有線又は無線で制御盤25と接続されている。
【0017】
制御装置40は、乗りかご10内に設けられた出力装置13を制御することができる。制御装置40は、記憶装置30に記憶されている各種情報を読み出して、各種情報に基づいて出力装置13を制御させることができる。
【0018】
記憶装置30は、制御装置40による記憶内容の読み取りが可能に有線又は無線で制御装置40と接続されている。
【0019】
制御盤25は、各種信号の授受が可能に制御装置40と接続されている。制御盤25と制御装置40とは独立した装置として配置され、無線により接続していてもよい。また、制御装置40は制御盤25の内部に組み込まれていてもよい。
【0020】
制御盤25は、エレベータの通常運行時、かご位置検出装置24から乗りかご10の現在位置を示す位置情報を取得する。また、制御盤25は、例えばかご位置検出装置24から取得した位置情報に基づいて、駆動装置21を駆動させて、乗りかご10を所望の目的階に移動させる。
【0021】
かご位置検出装置24は、上述のように、例えば巻上機の回転数等で表される駆動装置21の駆動量に基づいて、昇降路26における乗りかご10の位置を検出する。また、かご位置検出装置24は、乗りかご10の位置に関する位置情報を生成する。生成された位置情報は制御盤25によって取得される。
【0022】
駆動装置21は、自身が駆動することにより昇降路26内で乗りかご10を走行させる。このとき、駆動装置21は、制御盤25から受信した制御量に応じて駆動する。これにより、乗りかご10は制御量に応じた距離を制御量に基づく方向に移動する。
【0023】
乗りかご10には、撮像装置11、集音装置12及び出力装置13が備えられる。撮像装置11、集音装置12及び出力装置13は、それぞれ1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0024】
撮像装置11は、エレベータの乗りかご10の内部を撮像する。例えば、撮像装置11はカメラである。例えば、撮像装置11は乗りかご10の天井又は天井付近の壁面に設置される。
【0025】
実施形態では、撮像装置11は、利用者の顔を撮像するために用いられる。撮像装置11によって撮像された利用者の顔の画像は、後述する制御装置40による解析に用いられる。なお、複数の撮像装置11を乗りかご10に設けることで、死角を減らし、利用者の顔をより確実に撮像することができる。
【0026】
集音装置12は、乗りかご10の内部の音声を収集する。例えば、集音装置12はマイクロフォンである。
【0027】
出力装置13は、乗りかご10の内部に設けられ、提供情報としての画像情報を出力する。例えば、出力装置13は、乗りかご10の壁面14に出力用画像を投影するプロジェクタである。
【0028】
図2は、実施形態に係る記憶装置及び制御装置の構成例を示すブロック図である。記憶装置及び制御装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等を備えるコンピュータとして構成されている。
【0029】
図2に示すように、記憶装置30は、利用者情報31を記憶する。利用者情報31は、認証情報311及び画像情報312を含む。
【0030】
認証情報311は、利用者を識別するためのID等の情報と、利用者を認識するための情報を含む。認証情報311は、利用者識別情報の一例である。
【0031】
例えば、利用者を認識するための情報は、各利用者の顔の特徴を表す情報であり、ディープラーニング等の機械学習手法によって作成された画像認識モデルが利用者を認識するために用いられる。
【0032】
また、利用者を識別するためのIDは、エレベータシステム1が設置された集合住宅の住民を特定する部屋番号等の情報であってもよい。この場合、鍵と部屋番号を紐付けておき、集合住宅のオートロックシステムにおける鍵の開閉状況を取得することで、エレベータの利用者を特定することができる。
【0033】
画像情報312は、利用者の認証情報311に対応付けられた画像である。画像情報312として利用者のお気に入りの画像を用いることができる。画像情報312は、動画像であってもよいし、静止画像であってもよいし、音声と画像の組み合わせであってもよい。なお、提供対象としての画像情報312の代わりに、提供対象である画像情報312を特定する情報、例えば、画像情報312の保存場所へのリンクを示す情報を提供情報として登録するように構成してもよい。
【0034】
利用者は、携帯端末等(例えば、スマートフォン)を介して、好みの画像を画像情報312としてあらかじめ登録しておくことができる。なお、利用者が子供である場合、子供の保護者によって画像情報312が登録されてもよい。
【0035】
また、利用者は、特定の画像を選択して画像情報として記憶装置30に予め登録してもよいし、画像に関する一部の情報(例えば、アニメーションに登場するキャラクタ)を登録してもよい。
【0036】
このように、実施形態では、利用者は自身の属性にかかわらず好みの提供情報を事前に登録しておき、乗りかご10の内部において登録した提供情報の提供を受けることができる。
【0037】
制御装置40は、解析部41及び制御部42を有する。例えばROM等に格納されたプログラムが読み出されてRAMに展開され、それをCPUが実行することにより、上記の解析部41及び制御部42の機能が実現される。また、制御装置40は、出力装置13を制御する。
【0038】
解析部41は、撮像装置11によって撮像された画像から、乗りかご10の内部に登録済みの利用者が乗っているか否かを判定する。
【0039】
例えば、解析部41は、学習済みの画像認識モデルを用いて、撮像装置11によって撮像された画像に写る顔の特徴と、記憶装置30に記憶された利用者の顔の特徴との合致度合いを計算し、当該合致度合いが閾値以上であれば乗りかご10の内部に登録済みの利用者が乗っていると判定する。
【0040】
解析部41は、撮像装置11によって撮像された画像及び集音装置12によって収集された音声を解析し、乗りかご10の内部の利用者が不快感を持っているか否かを判定する。
【0041】
解析部41は、撮像装置11によって撮像された画像、又は集音装置12によって収集された音声を認識し、利用者の行動を検出する。そして、解析部41は、特定の行動が検出された場合に利用者が不快感を持っていると判定する。
【0042】
例えば、解析部41は、撮像装置11によって撮像された画像から利用者の動きの大きさが所定の大きさ以上であることが検出された場合、画像から利用者が顔をしかめていることが検出された場合、集音装置12によって収集された音声から利用者が泣き声を発していることが検出された場合、及び音声から利用者がため息をついていることが検出された場合、のうち少なくともいずれかの場合に、利用者が不快感を持っていると判定する。
【0043】
制御部42は、解析部41によって利用者が不快感を持っていると判定された場合、利用者の認証情報に対応付けられて記憶装置30に記憶された画像情報312を出力装置13に出力させる。制御部42は、不快感を持った利用者が乗りかご10を降りた場合は、画像の出力を終了させる。
【0044】
このように、制御装置40は、利用者ごとにあらかじめ登録された画像情報(お気に入り画像)を、利用者がエレベータの乗りかごの内部で不快感を持っているときに提供することで、不快感を軽減させることができる。
【0045】
(変形例1)
解析部41は、不快感を持っていると判定した利用者の視線の方向を、撮像装置11によって撮像された画像から検出してもよい。この場合、制御部42は、乗りかご10の壁面のうち、利用者から見て視線の方向にある壁面に対し、画像情報312を出力装置13に投影表示させる。
【0046】
図3は、画像情報312の出力方法を説明する図である。
図3の壁面14N、壁面14E、壁面14S、壁面14Wは、それぞれ乗りかご10の北、東、南、西に位置する。壁面には、プロジェクタが画像を投影可能なシートが貼り付けられていてもよい。
【0047】
図3の例では、解析部41は、利用者が西側を向いていることを検出する。そして、解析部41は、西側の壁面14Wに画像を投影表示させる。
【0048】
例えば、子供が不快感を持って泣き出している場合、特定の壁面にお気に入りの画像情報312が投影されたとしても、すぐに落ち着いてその方向を向くとは限らない。変形例1のように、利用者が向いている方向の壁面に画像を投影表示することで、利用者により確実に画像を見せることができる。
【0049】
(変形例2)
乗りかご10の内部には画像を出力する複数の出力装置13が設けられてもよい。この場合、解析部41は、乗りかご10の内部の複数の利用者について不快感を持っていると判定する。
【0050】
そして、制御部42は、複数の出力装置13のそれぞれに、複数の利用者のうち互いに異なる利用者の認証情報に対応付けられて記憶装置30に記憶された画像情報312を出力させる。例えば、制御部42は、乗りかご10の内部の複数の壁面に互いに異なる画像を投影表示させてもよい。
【0051】
これにより、複数の利用者が同時に不快感を持っている場合であっても、それぞれの利用者に応じた画像を提供することができる。
【0052】
さらに、複数の利用者が同時に不快感を持っていると判定された場合、制御部42は、各利用者に対応付けられた画像を交互に出力させてもよい。
【0053】
また、制御部42は、不快感を持つ複数の利用者のうち、不快の度合いが最も大きい利用者に対応付けられた画像を出力させてもよい。これは、不快の度合いが大きい利用者の行動は、さらに他の利用者の不快感を増大させてしまう恐れがあるためである。
【0054】
(変形例3)
利用者は、乗りかご10の呼び登録を行う際に、携帯端末に保存されている画像を選択し、登録することができる。登録された画像は、利用者が乗りかご10の内部で不快感を持つと判定された場合に提供される。
【0055】
このとき、携帯端末は、乗り場において乗りかご10の呼び登録が行われる際に、利用者が選択した画像を記憶装置30に送信する。そして、記憶装置30は、利用者の認証情報と画像情報312とを対応付けて記憶する。
【0056】
これにより、利用者は、エレベータに乗る直前の気分に合わせて画像情報を登録することができる。
【0057】
(変形例4)
記憶装置は、制御装置と接続されたネットワーク上に備えられてもよい。例えば、
図4に示すように、記憶装置30aは、制御装置40と接続されたネットワークNに接続されて設けられる。
図4は、変形例に係るエレベータシステムの構成例を示す図である。変形例4におけるエレベータシステムをエレベータシステム1aとする。記憶装置30aは、記憶装置30と同様の構成を有する。
【0058】
この場合、制御部42は、ネットワークNを介して記憶装置30aから取得した画像情報312を出力させる。ネットワークNは、例えばインターネットである。
【0059】
これにより、利用者は、建物2の外部から画像情報を登録することができる。また、建物2と異なる建物に備えられたエレベータシステムから、記憶装置30aを参照することができる。
【0060】
(制御装置の処理の例)
図5を用いて、制御装置40の処理について説明する。
図5は、実施形態に係る制御装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0061】
図5に示すように、まず、制御装置40は、乗りかごの内部の画像及び音声を取得する(ステップS101)。次に、制御装置40は、取得した画像から利用者の顔を認識する(ステップS102)。
【0062】
認識の結果、登録済みの利用者が画像に写っていなかった場合(ステップS103、No)、制御装置40は処理を終了する。
【0063】
認識の結果、登録済みの利用者が画像に写っていた場合(ステップS103、Yes)、制御装置40は、画像と音声から乗りかごの内部の利用者が不快感を持っているか否かを判定する(ステップS104)。
【0064】
例えば、制御装置40は、取得した画像又は音声から、利用者の特定の行動が検出された場合に、当該利用者が不快感を持っていると判定する。例えば、特定の行動は、体を大きく動かすこと(揺れ、よじらせ、しゃがみ込み)、顔をしかめること、泣くこと、ため息をつくこと、高い声(悲鳴、奇声)を発すること等である。
【0065】
制御装置40は、利用者が不快感を持っていないと判定した場合(ステップS105、No)、処理を終了する。
【0066】
一方、制御装置40は、利用者が不快感を持っていると判定した場合(ステップS105、Yes)、利用者に対応付けられた画像を乗りかご10に設置された出力装置13に出力させる(ステップS106)。
【0067】
これまで説明してきたように、撮像装置11は、エレベータの乗りかご10の内部の画像を撮像する。集音装置12は、乗りかご10の内部の音声を収集する。記憶装置30は、利用者識別情報としての認証情報311、利用者に提供される提供対象(例えば、画像情報312)または提供対象を特定するための提供情報とを対応付けて記憶する。出力装置13は、乗りかご10の内部に設けられ、提供対象(例えば、画像情報312)を出力する。制御装置40は、出力装置13を制御する。解析部41は、撮像装置11によって撮像された画像及び集音装置12によって収集された音声を解析し、乗りかご10の内部の利用者が不快感を持っているか否かを判定する。制御部42は、解析部41によって利用者が不快感を持っていると判定された場合、利用者の認証情報に対応付けられて記憶装置30に記憶された提供対象(例えば、画像情報312)を出力装置13に出力させる。
【0068】
このように、エレベータシステム1は、利用者が不快感を持った際に、利用者ごとにあらかじめ登録された提供対象(例えば、画像情報312)を出力する。これにより、エレベータの利用者の好みに合った提供対象を提供し、不快感を軽減させることができる。
【0069】
また、解析部41は、撮像装置11によって撮像された画像から利用者の動きの大きさが所定の大きさ以上であることが検出された場合、画像から利用者が顔をしかめていることが検出された場合、集音装置12によって収集された音声から利用者が泣き声を発していることが検出された場合、及び音声から利用者がため息をついていることが検出された場合、のうち少なくともいずれかの場合に、利用者が不快感を持っていると判定する。
【0070】
これにより、利用者が不快感を持っているか否かを、画像及び音声から自動的に判定することができる。
【0071】
解析部41は、不快感を持っていると判定した利用者の視線の方向を、撮像装置11によって撮像された画像から検出する。制御部42は、乗りかご10の壁面のうち、利用者から見て視線の方向にある壁面に対し、画像情報312を出力装置13に投影表示させる。
【0072】
これにより、不快感を持った利用者により確実に画像を見せることができる。
【0073】
乗りかご10の内部には画像情報312等の提供対象を出力する複数の出力装置13が設けられる。解析部41は、乗りかご10の内部の複数の利用者について不快感を持っていると判定する。制御部42は、複数の出力装置13のそれぞれに、複数の利用者のうち互いに異なる利用者の認証情報に対応付けられて記憶装置30に記憶された画像情報312等の提供対象を出力させる。
【0074】
これにより、不快感を持った複数の利用者に同時に画像情報等の提供対象を出力して、各利用者の不快感を軽減させることができる。
【0075】
携帯端末は、乗り場において乗りかご10の呼び登録が行われる際に、利用者が選択した画像情報312等の提供対象を記憶装置30に送信する。記憶装置30は、利用者と画像情報312等の提供対象とを対応付けて記憶する。
【0076】
これにより、利用者は自身の気に入った画像情報312等の提供対象を、乗り場にいる時点での気分に合わせて容易に登録することができる。
【0077】
また、記憶装置30は、制御装置40と接続されたネットワーク上に備えられる。制御部42は、ネットワークを介して記憶装置30から取得した画像情報312等の提供対象を出力させる。
【0078】
これにより、エレベータシステム1が備えらえた建物の外部から画像情報312等の提供対象を登録することができる。
【0079】
(変形例5)
上述の実施形態の他、次の変形例5も考えられる。
変形例5では、出力装置13は、提供対象として、画像情報312以外にも、音声、芳香等を出力することで利用者の不快感を低減させることができる。例えば、音声を出力する場合には、出力装置13は、乗りかご10に備えられたスピーカ等の音声出力装置を用いることができる。そして、記憶装置30に、画像情報312の代わりに、提供対象として音声情報、若しくは音声情報を特定するための提供情報として音声情報の保存場所へのリンクを、利用者の認証情報311と対応づけて記憶装置3に保存しておけばよい。この場合、制御部42は、記憶装置30に利用者の認証情報311に対応づけられて登録されている音声情報若しくは音声情報へのリンク(提供情報)から音声情報を取得して、当該音声情報をスピーカ等の音声出力装置から乗りかご10の内部に出力するように制御する。
【0080】
また、芳香剤の場合には、例えば、出力装置13は、乗りかご10に備えられた送風機を用い、芳香剤から発せられる芳香を乗りかご10の内部に送り込むものを用いることができる。そして、記憶装置30には、画像情報312の代わりに利用者向けの提供対象を特定するための提供情報としての情報が保存されてもよい。すなわち、提供対象としての芳香を特定するための芳香剤の種類の情報を提供情報として、利用者の認証情報311と対応づけて記憶されている。この場合、制御部42は、記憶装置30に利用者の認証情報311に対応づけられて登録されている芳香剤の種類を取得して、当該芳香剤の種類の芳香を送風機から乗りかご10の内部に送り込むように制御する。
【0081】
このような変形例5によっても実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0082】
以上のように、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1,1a…エレベータシステム、2…建物、10…乗りかご、11…撮像装置、12…集音装置、13…出力装置、14,14N,14E,14S,14W…壁面、21…駆動装置、22…カウンタウェイト、23…ロープ、24…かご位置検出装置、25…制御盤、26…昇降路、30,30a…記憶装置、31…利用者情報、40…制御装置、41…解析部、42…制御部、311…認証情報、312…画像情報。
【要約】
【課題】エレベータの利用者の好みに合った提供対象を提供し、不快感を軽減させること。
【解決手段】実施形態のエレベータシステムは、利用者を識別するための利用者識別情報と、前記利用者に提供する提供対象または前記提供対象を特定する提供情報とを対応付けて記憶する記憶装置と、前記乗りかごの内部に設けられ、前記提供情報を出力する出力装置と、前記出力装置を制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、撮像装置によって撮像された画像及び集音装置によって収集された音声を解析し、前記乗りかごの内部の利用者が不快感を持っているか否かを判定する解析部と、前記解析部によって前記利用者が不快感を持っていると判定された場合、前記利用者の前記利用者識別情報に対応付けられて前記記憶装置に記憶された前記提供対象または前記提供情報で特定される提供対象を前記出力装置に出力させる制御部と、を有する。
【選択図】
図1