(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】超音波脱脂管理
(51)【国際特許分類】
C23G 3/02 20060101AFI20221205BHJP
B21B 45/02 20060101ALI20221205BHJP
B08B 3/12 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
C23G3/02
B21B45/02 330
B08B3/12 B
B08B3/12 D
(21)【出願番号】P 2021521088
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(86)【国際出願番号】 IB2019059490
(87)【国際公開番号】W WO2020095198
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-05-12
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2018/058707
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リシェ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】スポネム,フロラン
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-511754(JP,A)
【文献】米国特許第03638666(US,A)
【文献】特開2001-170583(JP,A)
【文献】特開平08-010731(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0063145(KR,A)
【文献】特開平10-001800(JP,A)
【文献】特表2014-525998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23G 3/00-3/04
B08B 3/12
B21B 45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄設備内で移動しているストリップを連続的に洗浄するための方法であって、洗浄設備は、水溶液を含むタンクと、前記ストリップを前記タンクに誘導するための、前記水溶液に浸漬された少なくとも1つのローラと、少なくとも1つの超音波放射手段と、前記タンク内に水溶液を供給するための手段と、前記タンクを空にするための手段と、タンク内の水溶液レベルを推定するための手段と、各超音波放射手段について、水溶液レベルまでの超音波放射手段の距離を計算するための手段と、前記少なくとも1つの超音波放射手段の出力を制御するための手段と、を備え、連続的に実行される、
タンク内の水溶液レベルを推定する工程と、
各超音波放射手段について、水溶液レベルまでの超音波放射手段の距離を計算する工程と、
各超音波放射手段について、水溶液レベルまでの超音波放射手段の距離を、決定されている閾値と比較する工程と、
前記決定されている閾値を下回る水溶液レベルまでの距離を有する超音波放射手段の出力を減少させる工程と、
を備える方法。
【請求項2】
前記水溶液レベルは、全ての超音波放射手段を、前記決定されている閾値に少なくとも等しい距離に浸漬するように連続的に調整されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法はまた、
水溶液レベルまでの距離が前記決定されている閾値以上であるときに、超音波放射手段の、以前に減少された出力を増大させる工程を備える、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記ストリップが金属ストリップである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶液は、10グラム毎リットル~40グラム毎リットルのアルカリ生成物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水溶液が30℃~80℃の温度にある、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記連続洗浄設備が、ストリップ速度を測定するための手段を備え、超音波放射手段は、ストリップ速度が5m・s
-1未満のときにオフにされる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ストリップ(S)の連続洗浄のための機器(1)であって、
水溶液(3)を含むタンク(2)と、
少なくとも1つのローラ(4)と、
少なくとも1つの超音波放射手段(5)と、
前記タンク内に水溶液を供給するための手段(6)と、
タンクを空にするための手段(7)と、
水溶液レベルを推定するための手段(8)と、
各超音波放射手段について、水溶液レベル(9)までの超音波放射手段の距離を計算するための手段(10)と、
少なくとも1つの超音波放射手段(5)の出力を制御するための手段(11)と、
前記少なくとも1つの超音波放射手段(5)の出力を制御するための手段(11)と、少なくとも1つの超音波放射手段(5)とを接続するワイヤ(W)と、を備え、
前記出力を制御するための手段(11)は、前記距離があらかじめ決定されていた閾値を下回る場合に、出力を減少する、機器。
【請求項9】
前記少なくとも1つの超音波放射手段(5)は、少なくとも1つの圧電変換器(160)によって振動する共振器ロッド(15)である、請求項8に記載の機器。
【請求項10】
前記共振器ロッド(15)の長さがストリップ幅に平行である、請求項9に記載の機器。
【請求項11】
前記ストリップ(S)が2つの対向する表面を有し、前記機器が、前記表面の各々に面する少なくとも1つの超音波放射手段を備える、請求項8~10のいずれか一項に記載の機器。
【請求項12】
前記機器は、5ワット毎リットル~25ワット毎リットルの出力密度を有する、請求項
9または10に記載の機器。
【請求項13】
前記共振器ロッド(15)およびストリップ(S)は、40mmと250mmとの間に含まれる距離だけ離間される、請求項12のいずれか一項に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いてタンク内のストリップを連続的に洗浄するための機器に関する。本発明は、前記洗浄タンクの全体的な管理を容易にする。
【背景技術】
【0002】
冶金分野では、表面品質の高いストリップを製造することが非常に重要である。圧延工程において、鉄、金属粒子、塵芥およびグリースが金属ストリップに付着する。そのような付着物は、コーティングの下に閉じ込められ、したがって表面が滑らかにならないため、コーティング後のストリップ表面品質の低下を引き起こす。このような欠点を回避するために、コーティング工程の前にストリップが洗浄される。一般的に、それは圧延動作の後で、かつ焼きなましまたはコーティングの前に発生する。そのために、ほとんどの洗浄ラインは、洗浄動作の中で電解プロセスを使用する。しかしながら、H2が蓄積し、結果として火災などの安全上の問題が発生することに起因して、このような手法は、安全上の高いリスクを呈する。その結果、超音波を使用した洗浄ラインが電解プロセスに代わるものとして開発された。当然、特に超音波放射手段の管理に関して、新たな問題が生じている。通常、振動電気エネルギーを機械的エネルギーに変換するトランスデューサが使用され、超音波が生じる。これらの新たな問題にもかかわらず、そのようなラインは、より安全で、生じる副産物が少なく、出力消費量が少なく、したがってより環境に優しいため、興味深いものである。
【0003】
超音波洗浄は、水溶液を介した超音波(またはより一般的には音波)の伝播によって機能し、この伝播は水溶液の圧力の局所的な変動を引き起こす。負圧が十分に低い(水溶液の蒸気圧よりも低い)とき、水溶液の凝集力が崩壊し、気泡(キャビテーション気泡とも呼ばれる)が形成される。次に、これらの気泡は(音波の伝播に起因して)圧力変動下に置かれ、崩壊するまで連続的に膨張および収縮する。超音波は熱効果を誘発するが、キャビテーションに起因する機械的効果も誘発する。実際、キャビテーション気泡が崩壊すると、2つの現象、すなわち、
気泡内に存在するガスの激しい圧縮による衝撃波、
マイクロジェットが発生し、固体表面の近傍で気泡の爆縮が非対称になり、結果として生じる衝撃波が、固体表面に向けられる水溶液マイクロジェットを生成する。固体表面へのマイクロジェットの影響はエネルギーが豊富であり、この機械的効果は、冷間圧延後のストリップ表面の洗浄のための亜鉛メッキに使用されることができる。
【0004】
韓国公開特許第2005-0063145号公報は、鋼板を洗浄する装置を開示している。前記鋼板は、通過するシートの両側に配置されたボックス内に超音波放射手段が配置されている、アルカリ性溶液で満たされたタンクに通される。
【0005】
しかしながら、上記の方法およびその機器を使用することによって、超音波放射手段の出力は効率的に管理されることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国公開特許第2005-0063145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前述の問題を解決する解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載の方法を提供することによって達成される。この方法はまた、請求項2~7の任意の特性を具備することもできる。この目的はまた、請求項8~13に記載の装置を提供することによって達成される。
【0009】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0010】
本発明を説明するために、特に添付の図を参照して、非限定的な例の様々な実施形態および試行が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】超音波放射手段を有するタンクの一実施形態の側面図である。
【
図1B】超音波放射手段を有するタンクの一実施形態の正面図である。
【
図2A】超音波放射手段を有するタンクの第2の実施形態の側面図である。
【
図2B】超音波放射手段を有するタンクの第2の実施形態の正面図である。
【
図3A】管状圧電トランスデューサの2つの実施形態の内の1つを示す図である。
【
図3B】管状圧電トランスデューサの2つの実施形態の内の1つを示す図である。
【
図4A】超音波放射手段が上下に配置された超音波タンクの2つの実施形態の内の1つの側面図である。
【
図4B】超音波放射手段が上下に配置された超音波タンクの2つの実施形態の内の1つの側面図である。
【
図6】超音波放射手段のタイプが洗浄効率に及ぼす影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、洗浄設備内で移動しているストリップを連続的に洗浄するための方法に関するものであって、洗浄設備は、水溶液を含むタンクと、前記ストリップを前記タンクに誘導するための、前記水溶液に浸漬された少なくとも1つのローラと、少なくとも1つの超音波放射手段と、前記タンク内に水溶液を供給するための手段と、前記タンクを空にするための手段と、タンク内の水溶液レベルを推定するための手段と、各超音波放射手段について、水溶液レベルまでの超音波放射手段の距離を計算するための手段と、前記少なくとも1つの超音波放射手段の出力を制御するための手段と、を備え、方法は、連続的に実行される、
タンク内の水溶液レベルを推定する工程と、
各超音波放射手段について、水溶液レベルまでの超音波放射手段の距離を計算する工程と、
各超音波放射手段について、水溶液レベルまでの超音波放射手段の距離を、決定されている閾値と比較する工程と、を備える。
【0013】
図1Aおよび
図1Bに示されるように、通過するストリップSの洗浄設備1は、タンク2、前記タンク内の水溶液3を備える。洗浄設備はまた、前記水溶液3に浸漬された少なくとも1つのローラ4と、少なくとも1つの超音波放射手段5と、水溶液を供給するための手段6と、タンクを空にするための手段7とを備える。さらに、洗浄設備はまた、水溶液レベル9を推定するための手段8と、各超音波放射手段について、水溶液レベルまでの超音波放射手段の距離を計算するための手段10と、少なくとも1つの超音波放射手段5の出力を制御するための手段11とを備える。
【0014】
供給手段6は、優先的にはタンクの上側部分内またはタンクの頂部に配置され、タンクのより良好な充填を可能にし、そのため、洗浄時間およびストリップが水溶液に通される距離が増大される。空にする手段7は、タンクを可能な限り空にするために、タンクの下側部分内に、優先的にはその底部に配置され、そのような手段は、放出、リサイクルまたは再生プロセスに接続されたパイプおよびバルブとすることができる。
【0015】
少なくとも1つの浸漬ローラ4は、優先的にはタンクの底部にあるが、空にする手段7の上にあり、そのような構成は、ストリップSによって水溶液3を通って移動される距離および洗浄時間を増大させ、したがって洗浄を改善する。
【0016】
水溶液3は、パイプおよびバルブなどの供給手段6によってタンクに導入され、優先的には、溶液で満たされた別のタンク(図示せず)に接続される。
【0017】
洗浄設備1は、好ましくは、前記タンク2の上に配置された少なくとも2つの外部ローラ12を備え、少なくとも1つはタンクの各側に、例えば、1つは超音波洗浄設備の上流側13に、もう1つは下流側14にある。ローラ12および4は、優先的には同じ向きを有し、例えば、それらの回転軸は平行である。ローラの位置決めは、ストリップSがねじれることなく水溶液3を通過することを可能にするべきものとする。
【0018】
水溶液レベル9を推定するための手段8は、差圧捕捉器または静水圧法で使用される任意の手段とすることができる。水溶液レベルを測定するための手段8はまた、いくつかの水溶液レベルインジケータから構成されることができ、水溶液レベルインジケータは、水溶液の存否を示す槽高さに沿って配置され、2つのインジケータ間の水溶液レベルを推定することを可能にする。このようなレベルインジケータは、振動するレベルスイッチとすることができる。
【0019】
少なくとも1つの超音波放射手段5は、供給手段6の下で、好ましくは浸漬ローラ4の上で、前記タンク2の内部に配置される。
【0020】
少なくとも1つの超音波放射手段の出力を制御するための手段11は、各超音波放射手段をオンにするかまたはオフにするか、例えば、超音波放射手段が超音波を発生するか否かを、個別に制御する。
【0021】
例えば、超音波放射手段がどの高さに位置決めされているかなどの超音波放射手段の位置と、水溶液レベルを推定するための手段による水溶液レベルとを知ることで、少なくとも1つの超音波放射手段5の出力を制御するための手段11は、各超音波放射手段5について、水溶液レベルまでのその距離を決定し、この距離を、決定されている閾値と比較する。前記決定されている閾値は、超音波放射手段を損傷することも破壊することなく使用するために、超音波放射手段5が水溶液3に浸漬されるべき最小距離に等しい。
【0022】
複数の水溶液インジケータが使用される場合、各水溶液レベルインジケータは、優先的には、超音波放射手段の上方で、少なくとも決定されている閾値に少なくとも等しい距離に配置される。したがって、各超音波放射手段について、水溶液レベルまでの超音波放射手段の距離を計算するための手段10は、各超音波放射手段について、少なくとも決定されている閾値に等しい距離において水溶液レベルを下回っているか否かを決定する。
【0023】
超音波放射手段の出力を制御するための手段11に、超音波放射手段5を接続するワイヤは、ラック内に配置されることができる。このような配置により、ワイヤが切断または損傷されることに起因する危険性およびラインの停止を防ぐことが可能になる。
【0024】
従来技術では、超音波放射手段の出力は手動で管理されなければならないと考えられる。逆に、本発明による方法では、水溶液レベルに応じて超音波出力が自動的に管理されることができると考えられる。
【0025】
図2Aおよび
図2Bは、ストリップSが主に水溶液を通して水平に移動される、連続洗浄設備の第2の好ましい実施形態の側面図および上面図を示している。
【0026】
好ましくは、前記方法はまた、水溶液レベルまでの距離が前記決定されている閾値を下回る超音波放射手段の出力を減少させる工程を備える。そのような方法は、水溶液の上方の超音波放射手段が通過するストリップを洗浄せず、消費エネルギーをより少なくすることに起因してエネルギー損失を防ぐため、以前に提示された方法を改善する。明らかに、そのような方法はまた、それが少なくとも決定されている閾値に浸されていないときに、超音波放射手段の破損および/または過熱を防止する。超音波放射手段がオフにされるために、出力は優先的に減少される。
【0027】
好ましくは、前記水溶液レベルは、すべての超音波放射手段を、少なくとも決定されている閾値に等しい距離に浸漬するように連続的に調整されている。全ての超音波放射手段が使用されており、そのため設置が最大限に活用されるため、洗浄性能が向上する。連続洗浄設備において、出力を制御するための手段11は、水溶液レベル9を測定するための手段8および超音波放射手段管理システム11に接続されるだけでなく、供給手段6および空にする手段7にも接続される。
【0028】
好ましくは、前記方法はまた、水溶液レベルまでの距離が前記決定されている閾値以上であるときに、超音波放射手段の、以前に減少された出力を増大させる工程を含む。効率的に使用されることができる全ての超音波放射手段が使用され、したがって、洗浄が可能な限り効率的になるため、この工程は、説明された方法を改善する。超音波放射手段がその最大出力で使用されるために、出力は優先的に増大される。
【0029】
好ましくは、前記ストリップは金属ストリップである。より好ましくは、前記金属ストリップは鋼ストリップである。
【0030】
好ましくは、前記水溶液は、10グラム毎リットル~40グラム毎リットルのアルカリ生成物を含む。明らかに、この範囲内のアルカリ生成物濃度は、洗浄を改善し、アルカリ生成物を効率的に使用する。酸性または中性溶液などの他の溶液が使用されてもよく、溶液の選択は、基質および汚染物質によって異なる。
【0031】
好ましくは、前記水溶液は、30℃~80℃の温度にある。明らかに、洗浄液の温度が高いほど、プロセスの洗浄効率は高くなるが、超音波放射手段の寿命は短くなる。この範囲は、洗浄効率と超音波放射手段の寿命との間の最良の妥協点と考えられる。
【0032】
好ましくは、前記連続洗浄設備1は、ストリップ速度を測定するための手段を備え、超音波放射手段は、ストリップ速度が5m・s-1未満のときにオフにされる。さらにより好ましくは、超音波放射手段は、ストリップ速度が0m・s-1であるときにオフにされる。これにより、ラインに問題が発生した場合のエネルギー消費を削減することが可能になる。そうするために、ストリップ速度は、超音波放射手段管理システム11(図示せず)に送られる。
【0033】
本発明はまた、ストリップSの連続洗浄のための機器1であって、
水溶液3を含むタンク2と、
少なくとも1つのローラ4と、
少なくとも1つの超音波放射手段5と、
前記タンク内に水溶液を供給するための手段6と、
タンクを空にするための手段7と、
水溶液レベルを推定するための手段8と、
各超音波放射手段について、水溶液レベル9までの超音波放射手段の距離を計算するための手段10と、
少なくとも1つの超音波放射手段5の出力を制御するための手段11と、
前記少なくとも1つの超音波放射手段5の出力を制御するための手段11と、少なくとも1つの超音波放射手段5とを接続するワイヤWと、を備える機器にも関する。
【0034】
好ましくは、
図3Aおよび
図3Bに示されるように、前記少なくとも1つの超音波放射手段は、少なくとも1つの圧電変換器160によって振動する共振器ロッド15である。そのような超音波放射手段は、プッシュプルトランスデューサ5’とすることができる。そのような超音波放射手段は、超音波の全方向性放射を可能にする。その結果、超音波放射手段を含むボックスと比較されると、洗浄効率が向上する。
図3Aに示されるように、それらの超音波放射手段、すなわちプッシュプルトランスデューサは、一般に、少なくとも1つの圧電変換器160を一般に含む2つの超音波駆動ヘッド16によって囲まれる中央共振器ロッド15を有する。前記駆動ヘッドは、一般に、いくつかの圧電変換器を含む。さらにより好ましくは、それらは25kHzの周波数において動作し、2kWを生成する。しかしながら、超音波放射手段5’’はまた、
図3Bに示されるように、1つの駆動ヘッド16’、および、先のとがった端部17を有する共振器ロッドのみから構成されることができる。
【0035】
浸漬可能なボックスを備えたものと比較されると、プッシュプルトランスデューサなどのトランスデューサを備えた洗浄タンクの効率が改善されていることを実証するために、いくつかのテストが行われた。これらのテストでは、ストリップサンプルの清浄度が洗浄工程の前後に測定されている。これらの実験では、ストリップが、65°Cにある10gL-1のNaOHを有する洗浄槽と、2kWの出力を有する2つのプッシュプル圧電変換器のセットまたは2kWの出力を有する浸漬可能なボックスとを含むボックスに24秒間浸漬される。ストリップ部分は、水溶液を介した変位に起因して実験時間の4分の1の間だけ、超音波放射手段に向き合うため、上記実験条件における24秒の浸漬時間は、約6秒の直接暴露時間に対応すると想定される。
【0036】
以下の表に示すように、洗浄効率は、「洗浄工程前の推定清浄度」を「洗浄工程後の推定清浄度」で除算した値である。清浄度を推定するために、3M 595 Scoth(TM)接着剤が、鉄の微粉および油を接着剤に付着させるために、ストリップ表面に押し付けられる。次に、scotchの反射率が反射率計によって測定される。この反射率は、1平方メートルあたりの鉄の微粉の密度に関連している。接着剤に付着された鉄の微粉が多いほど、その反射率は低くなる。したがって、接着剤の反射率が高いほど、ストリップは清浄になる。以下の表は、実験の主なパラメータを含む。
図6において、様々なストリップ速度について、プッシュプルチューブと浸漬可能なボックスの両方のタイプの超音波放射手段の洗浄効率がプロットされている。
【0037】
【0038】
好ましくは、前記共振器ロッドは、その長さがストリップ幅に平行である。さらにより優先的には、ロッドは、
図1Bに見られるように、ストリップ幅全体をカバーするようにストリップ幅と平行に位置決めされる。そのような配置は、ストリップ幅に沿って洗浄効率および洗浄均一性を改善するはずである。タンクが、ストリップ幅よりも短い共振器ロッド長さを有する少なくとも2つの共振器ロッドを備える場合、共振器ロッドは、ストリップ幅全体をカバーするためにシフトされる。
【0039】
駆動ヘッドは、
図1Aおよび
図1Bに示すように、タンクの壁に、または、槽内に配置された専用ラックに固定または取り付けられることができる。いずれの場合も、危険を防ぐためにワイヤWに特別な注意が払われる必要がある。
【0040】
好ましくは、
図4Aおよび
図4Bに示されるように、洗浄されるストリップSは、2つの対向する表面を有し、本発明による機器は、好ましくは、前記表面の各々に面する少なくとも1つの超音波放射手段5を備える。ストリップの片側に配置されている超音波放射手段が両側を洗浄するが、両側に超音波放射手段を配置すると洗浄品質が向上する。より有利には、ストリップがタンク内で垂直または準垂直に通され、少なくとも1つの超音波放射手段が、ストリップ表面の上下の経路の両側に配置される場合、
図4Aおよび
図4Bに示されるように、少なくとも4つの放射手段が、前記槽の中に配置される。
【0041】
好ましくは、前記機器は、5ワット毎リットル~25ワット毎リットルの出力密度を有する。さらにより優先的には、1リットルあたりの出力は10~20W・L-1である必要がある。この範囲内の出力密度を使用することは、十分な洗浄とエネルギー節約との間の最良の妥協点であると考えられ、ストリップの適切で十分な洗浄を可能にし、エネルギーの浪費を回避する。
【0042】
好ましくは、前記共振器ロッドおよびストリップSは、40mmと250mmとの間、さらにより優先的には60mmと200mmとの間に含まれる距離だけ離間される。そのような離間は、超音波放射手段を効率的に使用することを可能にする。間隔が40mm未満である場合、例えばストリップの曲がりまたはストリップの平坦度の不規則性に起因して超音波放射手段が最終的にストリップによって破壊されるため、そのような離間距離は、設備を改善する。しかし、間隔が200mmより大きい場合、超音波放射手段の洗浄出力の効率は大幅に減少されると考えられる。
【0043】
(実施例)
以下の説明は、金属ストリップの連続洗浄のための2つの設備に関するものである。しかし、本発明は、超音波放射手段を備える水溶液で満たされたタンクを通過することによってバンドが洗浄されるすべてのプロセスに適用可能である。
【0044】
この洗浄プロセスは、以前に巻かれたストリップをほどくことから始まる。次に、ストリップは、脱脂前浴、ブラッシング、およびすすぎ工程に通されることができるが、必ずしも通される必要はない。その後、ストリップは設備における超音波洗浄プロセスを受ける。最終的に、ストリップは乾燥され、したがって、必要に応じて焼きなましおよびコーティングされる準備が整う。
【0045】
(実施例1)
第1の特定の実施形態において、本発明の教示を使用して、以下の設備が使用される。
図5に示されるように、この設備は10個の超音波放射手段を使用する。これらは、各々が25kHzと2kWで使用される、共振器ロッド15’の各端に取り付けられた2つの超音波駆動ヘッド16’’から構成される。プッシュプルトランスデューサは、鋼ストリップS’とタンク壁との間でタンク2’内に斜めに設置され、200mmごとに配置され、途中でストリップ面に面している。それらはストリップから100mmに等しい距離だけ離間される。ロッドの長さは1500mmであり、通過するストリップの幅は1400mmである。前記タンクは、それぞれタンクの頂部および底部に供給手段(図示せず)および排出手段7’が設けられる。水溶液は、25g・L
-1のアルカリ生成物を含む55℃に加熱された溶液である。
【0046】
水溶液レベルを測定するための手段は、差圧捕捉器(図示せず)である。
【0047】
各駆動ヘッド16’は、タンクに取り付けられたプラットフォーム18によって両側で支持され、片側にはラック19が設置され、トランスデューサを支持するワイヤを通すことが可能になっている。ワイヤは、各トランスデューサを、槽の外側に配置されたトランスデューサの出力を制御するための手段11に接続する。水溶液レベルを測定するための手段は、同じく超音波放射手段の出力を制御するための手段11に接続される、水溶液レベルまでの各超音波放射手段の距離を計算するための手段に接続される。前記超音波放射手段の出力を制御するための手段11は、前に説明されたように、槽レベルに依存する。
【0048】
(実施例2)
図1Aおよび
図1Bに示されるものと同様の第2の特定の実施形態では、本発明の教示を使用して、以下の設備が使用される。この設備は、24個の超音波放射デバイスを使用する。24個の超音波デバイスは、各々6個のデバイスから成る4つの列を形成する。上に2つ、下に2つあるストリップの各面は、その前に超音波装置の列を有する。列の6つのデバイスは、垂直方向に位置合わせされ、各々200mmだけ離間される。各列は、ストリップの152mmのところに配置される。これらは、各々が25kHzと2kWで使用される、共振器ロッドの各端にある2つの超音波ドライバヘッドから構成される。ロッドの長さは1500mmであり、通過するストリップの幅は1450mmである。前記タンクは、それぞれタンクの頂部および底部に供給手段および空にする手段が設けられ、超音波デバイスは、供給手段と空にする手段との間にある。水溶液は、20g.L
-1のアルカリ生成物を含む45℃に加熱された溶液である。
【0049】
水溶液レベルを測定するための手段は、振動レベルスイッチである。それらの内の6つは、各超音波放射デバイスの上に1つあるように設置される。各振動レベルスイッチとその下の超音波放射デバイスとの間の垂直距離は、この場合は4cmである、決定されている閾値に等しい。
【0050】
各超音波放射手段は、タンクに取り付けられたプラットフォームによって両側で支持され、片側には各列についてラックが設置され、トランスデューサを支持するワイヤを通すことが可能になっている。ワイヤは、各トランスデューサを、槽の外側に配置された超音波放射手段の出力を制御するための手段に接続する。水溶液レベルを測定するための手段は、同じく超音波放射手段の出力を制御するための手段に接続される、水溶液レベルまでの各共振器ロッドの距離を計算するための手段に接続される。前記超音波放射手段の出力を制御するための手段は、前に説明されたように、槽レベルに依存する。
【0051】
本発明は、現在実用的であると同時に好ましいと思われる実施形態に関して上で説明されてきた。しかしながら、本発明は、本明細書に開示された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲および本明細書全体から読み取られることができる本発明の要旨または思想から逸脱しない範囲内で適切に変更されることができ、そのような変更を加えた熱間圧延鋼板の製造方法および熱間圧延鋼板の製造装置も、本発明の技術的範囲に含まれることを理解されたい。