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特許7187704ブレーキアセンブリおよびブレーキアセンブリを制御するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】ブレーキアセンブリおよびブレーキアセンブリを制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/18 20060101AFI20221205BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20221205BHJP
   B60T 13/02 20060101ALI20221205BHJP
   B60T 13/10 20060101ALI20221205BHJP
   F16D 121/24 20120101ALN20221205BHJP
   F16D 129/04 20120101ALN20221205BHJP
   F16D 129/02 20120101ALN20221205BHJP
   F16D 129/08 20120101ALN20221205BHJP
   F16D 121/02 20120101ALN20221205BHJP
【FI】
F16D65/18
B60T13/74 G
B60T13/02
B60T13/10
F16D121:24
F16D129:04
F16D129:02
F16D129:08
F16D121:02
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021538902
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2019073093
(87)【国際公開番号】W WO2020057931
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】18195250.8
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヤーノシュ サボ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ブレッシング
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト トリンペ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング パーレ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス クリングナー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ブーフ
(72)【発明者】
【氏名】アンドラス スィポス
(72)【発明者】
【氏名】フーバ ネーメト
(72)【発明者】
【氏名】チャバ コクレヘル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトル ティハニー
(72)【発明者】
【氏名】チャバ ムリナールチェク
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0321771(US,A1)
【文献】特開2015-001238(JP,A)
【文献】特開2017-165181(JP,A)
【文献】実公平07-023622(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
B60T 13/00-17/22
F16D 49/00-71/04
F16D 121/24
F16D 129/04
F16D 129/02
F16D 129/08
F16D 121/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキアセンブリ(100)であって、
車両のホイールに回転係合しているブレーキディスク(9)と、
アクチュエータ(1)力が加えられると、前記ブレーキディスク(9)に摩擦係合するブレーキパッド(11)と、
前記ブレーキパッド(11)と前記ブレーキディスク(9)とを前記摩擦係合の状態にするために、前進方向(F)および後退方向(R)に駆動される出力軸(2)を有するアクチュエータ(1)と、
所定の動作状況の場合に前記出力軸(2)に前記後退方向(R)で作用する力を吸収するエネルギー吸収および/または蓄積ユニット(33)と、
を備えるブレーキアセンブリ(100)。
【請求項2】
前記エネルギー吸収および/または蓄積ユニット(33)は、吸収された前記力を散逸させるように適合させられている、請求項1記載のブレーキアセンブリ(100)。
【請求項3】
前記エネルギー吸収および/または蓄積ユニット(33)は、吸収された前記力を蓄積するように適合させられている、請求項1または2記載のブレーキアセンブリ(100)。
【請求項4】
前記エネルギー吸収および/または蓄積ユニット(33)は、前記出力軸(2)に前記後退方向(R)で作用する前記力によって生じた前記出力軸(2)の運動エネルギーが、前記エネルギー吸収および/または蓄積ユニット(33)の運動エネルギー、熱および/または電気的エネルギーに転換されるように、前記所定の動作状況において前記出力軸(2)に前記後退方向(R)で作用する前記力を打ち消すように適合させられている、請求項1から3までのいずれか1項記載のブレーキアセンブリ(100)。
【請求項5】
前記エネルギー吸収および/または蓄積ユニット(33)は、前記アクチュエータ(1)が、前記出力軸(2)を駆動するための電気機械を備え、前記電気機械が、前記力を吸収するように適合させられた発電機モードで動作可能であることで実現されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のブレーキアセンブリ(100)。
【請求項6】
前記ブレーキアセンブリ(100)は、前記ブレーキパッド(11)と前記ブレーキディスク(9)とが摩擦係合される制動終端位置と、前記ブレーキパッド(11)と前記ブレーキディスク(9)との係合が解除される休止終端位置とを有し、前記休止終端位置を越える前記後退方向(R)への前記出力軸(2)の軸方向運動を制限するように、停止要素が配置されており、前記エネルギー吸収および/または蓄積ユニット(33)は、前記停止要素への前記出力軸(2)の衝突が防止されるように配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のブレーキアセンブリ(100)。
【請求項7】
前記エネルギー吸収および/または蓄積ユニット(33)は、前記休止終端位置から前記後退方向(R)への前記出力軸(2)の運動に際して、逆向きのばね力および/または減衰力が前記出力軸(2)に加えられるように、前記停止要素に関連付けられたばね部材(4)または粘性減衰器を備える、請求項6記載のブレーキアセンブリ(100)。
【請求項8】
前記エネルギー吸収および/または蓄積ユニット(33)は、前記所定の動作状況の場合に、前記出力軸(2)の力を吸収するために自動的に作動させられるように、電気的に作動させられかつ/または前記アクチュエータ(1)に連結される、請求項1から7までのいずれか1項記載のブレーキアセンブリ(100)。
【請求項9】
前記エネルギー吸収および/または蓄積ユニット(33)は渦電流ブレーキを備え、前記後退方向への前記出力軸(2)の移動に際して、コイル(43)によって電流が誘導され、前記電流は、前記エネルギー吸収および/または蓄積ユニット(33)によって蓄積されるかまたは散逸させられる、請求項1から8までのいずれか1項記載のブレーキアセンブリ(100)。
【請求項10】
前記アクチュエータ(1)は、前記エネルギー吸収および/または蓄積ユニット(33)に連結され、前記エネルギー吸収および/または蓄積ユニット(33)によって吸収された前記力が前記アクチュエータによって散逸させられるように構成されており、前記アクチュエータ(1)は電気抵抗器を備える、請求項1から9までのいずれか1項記載のブレーキアセンブリ(100)。
【請求項11】
前記アクチュエータ(1)は、空気圧式、電気機械式または液圧式のアクチュエータである、請求項1から10までのいずれか1項記載のブレーキアセンブリ(100)。
【請求項12】
前記出力軸(2)は、アクチュエータ力が加えられると、前記ブレーキパッド(11)と前記ブレーキディスク(9)とを摩擦係合の状態にするために、前進方向(F)および後退方向(R)に駆動される、請求項1から11までのいずれか1項記載のブレーキアセンブリ(100)。
【請求項13】
前記所定の動作状況は前記アクチュエータ(1)の故障である、請求項1から12までのいずれか1項記載のブレーキアセンブリ(100)。
【請求項14】
前記ブレーキパッド(11)は、前記出力軸(2)の前進方向(F)および後退方向(R)にオフセットを伴って配置されており、特に、前記ブレーキパッド(11)の動きは、前記出力軸(2)に結合されたレバー機構(3)によって実現されている、請求項1から13までのいずれか1項記載のブレーキアセンブリ(100)。
【請求項15】
前記ブレーキアセンブリ(100)は、ダイナミック制動動作を実行する、請求項1から14までのいずれか1項記載のブレーキアセンブリ(100)。
【請求項16】
ブレーキディスクと、ブレーキパッド(11)と、前進方向(F)および後退方向に駆動される出力軸(2)を有するアクチュエータ(1)と、を備えるブレーキアセンブリ(100)を制御するための方法であって、所定の動作状況の場合に前記出力軸(2)に前記後退方向(R)で作用する力を吸収する、方法。
【請求項17】
請求項1から15までのいずれか1項に記載のブレーキアセンブリ(100)を実現するように構成された、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記出力軸(2)は、アクチュエータ力が加えられると、前記ブレーキパッド(11)と前記ブレーキディスク(9)とを係合させるために、前進方向(F)に駆動される、
請求項16または17記載の方法。
【請求項19】
前記所定の動作状況は前記アクチュエータ(1)の故障である、請求項16から18までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキアセンブリに関する。さらに、本発明は、ブレーキアセンブリを制御するための方法を提供する。
【0002】
一般に、車両のホイールブレーキのアクチュエータには、2つの主要な課題がある。第一に、特に電気機械的な原理を用いるホイールブレーキのアクチュエータは、極めて大きな慣性、すなわち、作動終端位置における停止エネルギーに関連する。第二に、ホイールブレーキのアクチュエータは、特に車両の重量増加および制動効率に関する要求の高まりにより、極めて動的な作動運動を行わなければならない。
【0003】
故障または電力喪失の場合に、特にホイールブレーキのアクチュエータを高速で動作させると、ホイールブレーキの部品が損傷してしまうことが判った。例えば、ブレーキパッドとブレーキディスクとの間の摩擦係合を実現して制動力を発生させるために、アクチュエータに接続される出力軸は、故障または電力喪失が起こると、出力軸に連結されている部品が、作動終端位置を規定する接触要素に激しく衝突してしまう。
【0004】
本発明の目的は、先行技術の欠点を克服することであり、特に慣性および/または高い動的な作動によるブレーキアセンブリ部品の損傷が防止されるブレーキアセンブリを提供することである。
【0005】
この目的は、独立請求項1および12の主題によって解決される。
【0006】
本発明のある態様によれば、ブレーキアセンブリは、車両のホイールに回転係合しているブレーキディスクを備える。したがって、ブレーキディスクは、車の走行中に車両のホイールの回転によって回転運動する。さらに、ブレーキパッドは、好ましくは、ダイナミック制動動作または常用制動動作を行うために、アクチュエータ力がブレーキパッドに加えられると、ブレーキディスクに摩擦係合する。また、ブレーキアセンブリは、ブレーキパッドとブレーキディスクとを、ブレーキアセンブリのブレーキ位置を規定する摩擦係合の状態にするために、前進方向に駆動される出力軸を有するアクチュエータを備える。アクチュエータは、例えば、電気モータと、伝達部材であって、電気モータの、好ましくは電気モータのロータの回転運動が、伝達部材によって出力軸の軸方向の並進運動に変換されるように、出力軸に連結された伝達部材とを備えてもよい。また、出力軸は、ブレーキパッドとブレーキディスクとの係合を解除し、ブレーキパッドを休止位置に移動させるために、前進方向とは反対の後退方向に駆動されてもよい。休止位置は、アクチュエータ力または制動力が加えられない位置および/または制動動作、好ましくはダイナミック制動動作の後にブレーキパッドが移動する位置として規定されてもよい。ブレーキパッドの移動方向は、出力軸の移動方向と必ずしも同軸上に定められないが、出力軸の前進方向運動が、好ましくは、ブレーキディスクとの摩擦係合へのブレーキパッドの前進方向運動につながり、出力軸の後退方向運動が、好ましくは、ブレーキディスクとの摩擦接触の係合を解除するためのブレーキディスクの後退方向運動につながる。
【0007】
本発明によれば、ブレーキアセンブリは、所定の動作状況の場合に出力軸に後退方向で作用する力を吸収するように、好ましくは吸収しているように適合させられたエネルギー吸収および/または蓄積ユニットを備える。好ましくは、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、エネルギー、好ましくは吸収されたエネルギーを再利用のために蓄積するように適合させられる。エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、ブレーキアセンブリまたはブレーキアセンブリ部品の損傷を防止するため、保護ユニットと呼ばれる場合もある。特にアクチュエータ、特に電気機械式のアクチュエータによって発生する極めて動的な作動運動は、例えば、応力ピーク、誤作動またはブレーキアセンブリの電力喪失などのブレーキアセンブリの故障の場合に、出力軸に作用する極めて大きな慣性力に関連する。本発明によるエネルギー吸収および/または蓄積ユニットの構成は、ブレーキアセンブリ部品の損傷を防止する。このことは、所定の動作状況の場合に後退方向に向けたアクチュエータ軸の力を吸収することにより、特に後退方向に移動するときの出力軸の並進運動に関連する運動エネルギーを吸収することにより達成される。
【0008】
所定の動作状況は、例えば、エネルギー供給の予期せぬ停止またはブレーキアクチュエータの内部故障の際など、ブレーキアセンブリの制御されていない状況で生じる場合がある。制動中、ブレーキアセンブリの力伝達部品には、制動力レベルによって予荷重が加えられる。制御された状況では、アクチュエータは、初期の無圧位置、好ましくは休止位置に力伝達部品を戻し、力伝達部品の運動を円滑に制動して抑える。保護ユニットを使用しないブレーキダウン運動中に故障や電力喪失などのエラーが生じた場合、ブレーキアクチュエータ部品は、予圧ブレーキアセンブリ部品、好ましくはキャリパユニットによってさらに加速され、運動終端位置で打撃のような衝突または衝撃によって停止され、それにより、ブレーキアセンブリ部品、好ましくはアクチュエータが損傷する。
【0009】
本発明の例示的な実施形態では、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、所定の動作状況の場合に、吸収された力、好ましくは、出力軸に作用する力に関連する吸収されたエネルギーを散逸させるように適合させられる。例えば、吸収された力または吸収されたエネルギーは、摩擦、電子抵抗、粘性減衰などによって散逸させられてもよい。エネルギー吸収ユニットの構成および機能により、特に、所定の動作状況の場合に出力軸に後退方向で作用する力の散逸により、損傷を防止するために過剰な力または過剰なエネルギーがブレーキアセンブリシステムから除去される。摩擦は、互いに対して摺動する固体表面、流体層、および材料要素の相対的な運動に抵抗する力、例えば、クーロンモデル摩擦、または流体摩擦や潤滑摩擦などの粘性摩擦などと呼ばれる場合がある。
【0010】
本発明の例示的な実施形態では、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、吸収された力を蓄積するように適合させられる。好ましくは、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、ばね部材、アキュムレータまたはバッテリを備える。蓄積された力、特に蓄積された吸収エネルギーは、車両のエネルギー回生システム、好ましくはブレーキアセンブリのエネルギー回生システムに供給されてもよい。この場合、蓄積された吸収エネルギーは、その後の制動動作において、アクチュエータのためのエネルギー入力として使用されてもよい。
【0011】
本発明の更なる例示的な実施形態では、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、所定の動作状況において出力軸に後退方向で作用する力を打ち消すように適合させられる。更なる発展では、打ち消す力は、出力軸に後退方向で作用する力によって生じた出力軸の運動エネルギーが、吸収ユニットの運動エネルギー、熱および/または電気的エネルギーに転換されるように作用する。したがって、利用可能なエネルギー蓄積スペースまたは後続の制動動作に必要となるエネルギーに応じて、出力軸の吸収された力の少なくとも一部を蓄積し、出力軸の吸収された力の少なくとも一部を散逸させることが可能である。
【0012】
本発明の例示的な実施形態では、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、アクチュエータが、出力軸を後退方向および前進方向に駆動するための電気機械を備えることで実現される。電気機械は、所定の動作状況において出力軸の力を吸収するように適合させられた発電機モードで動作可能であってもよい。発電機モードは、機械的エネルギー、好ましくは、例えば出力軸またはアクチュエータの別の駆動する出力軸の運動エネルギーが、電力または電気的エネルギーに変換される動作モードとして理解されてもよい。したがって、所定の動作状況において存在する過剰なエネルギーは、発電機モードに供給するために使用されてもよく、エネルギー吸収ユニットによって吸収されたエネルギーを車両の更なる電気部品に供給するために使用されてもよい。
【0013】
本発明の別の例示的な実施形態では、ブレーキアセンブリは、ブレーキパッドとブレーキディスクとが摩擦係合される制動終端位置を有する。さらに、ブレーキパッドとブレーキディスクとの係合が解除される、ブレーキアセンブリの休止終端位置が与えられる。休止位置を越える後退方向への出力軸の軸方向運動を制限するように、停止要素が配置されてもよい。このことは、停止要素が、後退方向において休止位置に対してずらして配置されることを意味する。さらに、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、停止要素への出力軸の衝突を防止し、それによって、ブレーキアセンブリの損傷を防止するように配置されてもよい。
【0014】
本発明の更なる発展では、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、休止位置から後退方向への出力軸の運動に際して、好ましくは逆向きのばね力および/または減衰力が出力軸に加えられるように、停止要素に関連付けられたばね部材または粘性減衰器を備える。発生したばね力および/または減衰力は、所定の動作状況の出力軸に後退方向で作用する限界力を打ち消す。それゆえ、出力軸の後退方向の軸方向運動が減速され、好ましくは停止される。
【0015】
本発明の例示的な実施形態によれば、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、電気的エネルギー吸収および/または蓄積ユニットである。好ましくは、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、所定の動作状況の場合に、出力軸の力を吸収するために自動的に作動させられるように、電気的に作動させられるかまたは停止されかつ/またはアクチュエータに連結される。本発明の更なる発展によれば、所定の動作状況の場合に、アクチュエータにエネルギーが供給されていなくても、アクチュエータは、対応する保護回路(すなわち、吸収されたエネルギーの少なくとも一部を散逸させるための電子抵抗器の点でかつ/または吸収されたエネルギーの少なくとも一部を蓄積するための電子アキュムレータの点で)に係合する。
【0016】
本発明の別の例示的な実施形態では、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットは、例えば、出力軸の運動エネルギーを熱として散逸させることにより、出力軸の軸方向運動を減速または停止させる渦電流ブレーキ(誘導ブレーキ、電気ブレーキまたは電気リターダとしても知られている)を備える。所定の動作状況において、好ましくは休止位置を越える後退方向への出力軸の移動に際して、好ましくは、エネルギー吸収ユニット、好ましくは渦電流ブレーキのコイルによって電流が誘導され、特に、誘導電流が、エネルギー吸収ユニットによって蓄積されるかまたは散逸させられてもよい。渦電流ブレーキの機能原理によれば、アクチュエータの移動部品、例えば出力軸に作用する外部磁界のため、電流が誘導され、誘導電流は外部磁界とは逆向きの磁界を誘導する。元の磁界とは逆向きの磁界により、出力軸の運動は減速され、好ましくは停止され、それにより、ブレーキアクチュエータの大きな慣性と大きな動力によるブレーキ部品の損傷が防止される。電気抵抗器は、アクチュエータ自体によって内部的に実現されてもよいし、別個の電子抵抗器部品によって外部的に実現されてもよい。内部的に実現されたエネルギー吸収および/または蓄積ユニットの場合、電子抵抗器は、アクチュエータの電気モータのロータ巻線によって実現されてもよい。
【0017】
本発明の例示的な実施形態では、アクチュエータは、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットに連結され、エネルギー吸収および/または蓄積ユニットによって吸収された力がアクチュエータによって散逸させられるように構成されており、特に、アクチュエータは電気抵抗器を備える。例えば、本実施形態によれば、デフォルトでは常閉電気回路に接続され、通常動作モード、好ましくは所定の動作状況が生じない場合には、スイッチによって能動的に切断され得るブレーキ抵抗器が設けられる。代替的または付加的に、吸収されたエネルギーを好ましくは再利用のために蓄積するために、回路にコンデンサを接続してもよい。
【0018】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、アクチュエータは、空気圧式、電気機械式または液圧式のアクチュエータであってよい。したがって、本発明による発明概念が、対応するブレーキアセンブリに使用される特定のタイプのアクチュエータに限定されないことは明らかである。
【0019】
本発明の別の態様によれば、ブレーキアセンブリを制御するための方法が提供される。ブレーキアセンブリは、ブレーキディスクと、ブレーキパッドと、前進方向に駆動されてブレーキパッドとブレーキディスクとを摩擦係合の状態にする出力軸を有するアクチュエータと、を備える。ブレーキパッドとブレーキディスクとの摩擦係合の位置は、制動位置と呼ばれる。出力軸は、後退方向に駆動されて、ブレーキパッドとブレーキディスクとの係合を解除し、ブレーキパッドを休止位置に移動させてもよい。休止位置は、アクチュエータ力または制動力が加えられない位置と呼ばれ、また、特にダイナミックまたは常用制動動作中の制動動作後にブレーキパッドが戻るアイドル位置と呼ばれる場合もある。
【0020】
本発明によれば、所定の動作状況の場合に出力軸に後退方向で作用する力が吸収される。特に、アクチュエータ、特に電気機械式のアクチュエータによって発生する極めて動的な作動運動は、例えば、応力ピーク、誤作動またはブレーキアセンブリの電力喪失などのブレーキアセンブリの故障の場合に、出力軸に作用する極めて大きな慣性力に関連する。本発明によるエネルギー吸収および/または蓄積ユニットの構成は、ブレーキアセンブリ部品の損傷を防止する。このことは、所定の動作状況の場合に後退方向に向けたアクチュエータ軸の力を吸収することにより、特に後退方向に移動するときの出力軸の並進運動に関連する運動エネルギーを吸収することにより達成される。
【0021】
所定の動作状況は、例えば、エネルギー供給の予期せぬ停止またはブレーキアクチュエータの内部故障の際など、ブレーキアセンブリの制御されていない状況で生じる場合がある。制動中、ブレーキアセンブリの力伝達部品には、制動力レベルによって予荷重が加えられる。制御された状況では、アクチュエータは、初期の無圧位置、好ましくは休止位置に力伝達部品を戻し、力伝達部品の運動を円滑に制動して抑える。保護ユニットを使用しないブレーキダウン運動中に故障や電力喪失などのエラーが生じた場合、ブレーキアクチュエータ部品は、予圧ブレーキアセンブリ部品、好ましくはキャリパユニットによってさらに加速され、運動終端位置で打撃のような衝突または衝撃によって停止され、それにより、ブレーキアセンブリ部品、好ましくはアクチュエータが損傷する。
【0022】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の対象となる。
【0023】
本発明による方法は、本発明の説明された態様によるコントローラおよび/またはディスプレイデバイスを実現するように規定することができ、またその逆も可能であることに留意されたい。
【0024】
以下の詳細な説明は、添付の図面を参照している。同じ参照番号が、同一または類似の要素を特定するために異なる図面で使用される場合がある。以下の説明では、限定ではなく説明の目的で、請求項に記載された本発明の様々な態様を完全に理解するために、特定の構造、機能性などの具体的な詳細について記載する。
【0025】
しかし、請求項に記載された本発明の様々な態様が、これらの具体的な詳細から外れた他の例で実施され得ることは、本開示の恩恵を受ける当業者にとって明らかであろう。特定の例では、不要な詳細によって本発明の説明を不明瞭にしないように、周知の装置および方法の説明を省略している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明によるブレーキアセンブリを示す概略図である。
図2】本発明によるブレーキアセンブリの更なる実施形態を示す概略図である。
【0027】
図1には、ブレーキアセンブリ100の能動的な制動動作が示されている。制動動作中、ブレーキパッド11が、車両のホイール(図示せず)に回転係合しているブレーキディスク9に摩擦係合している。制動動作では、ブレーキパッド11によってブレーキディスク9に締付け力が加えられる。ブレーキパッド11の作動は、レバー機構13によって実現される。レバー機構13は、アクチュエータ1によって作動され得る出力軸2に連結される。レバー機構13は、出力軸2の末端部15に配置された連結部材6によって、出力軸に形状嵌合および/または圧力嵌合で連結されてもよい。レバー機構13は、レバー7の一方の端部19によって、通常は車両のシャーシ(図示せず)に固定的に配置された取付け部17に、枢動可能に取り付けられた枢動部材7を備える。端部19とは正反対に配置されたレバー7の別の端部21において、レバー7は、レバー7が取付け部17に対して枢動し得るように、また、出力軸2が前進方向Fおよび後退方向Rに並進運動し得るように、好ましくは連結部材6により、出力軸2に連結される。本発明の目的で、前進方向Fは、ブレーキパッド9を、制動動作位置にする、またはブレーキディスク9と摩擦係合の状態にする、移動方向を規定する。さらに、後退方向Rは、反対の方向、すなわち、ブレーキパッド11を、ブレーキディスク9の係合を解除して、制動力が加えられない休止位置に移動させるときの移動方向を規定する。
【0028】
一般に、ブレーキアセンブリ100の動作中、例えば電気機械式のアクチュエータであり得るアクチュエータ1は、アクチュエータ力を発生させ、このアクチュエータ力は、ブレーキパッド11とブレーキディスク9とを、ブレーキ位置を規定する摩擦係合の状態にするために出力軸2を前進方向Fに駆動し、また、ブレーキパッド11とブレーキディスク9との係合を解除して摩擦係合を解除するために出力軸2を後退方向Rに駆動する。出力軸2の一方の軸方向終端位置は、ブレーキパッド11とブレーキディスク9との摩擦係合によって、または図1に示すようなブレーキ位置によって規定される。出力軸2は、前進方向Fに駆動されて取付け部17に対してレバー7を枢動させ、かつ一方の端部25が枢動レバー7に接続され、他方の端部27がブレーキパッド11に接続されたシフトレバー23に、前進方向Fでの出力軸2の軸方向運動を、前進方向Fでのブレーキパッド9の軸方向運動に転換させ、ブレーキディスク9との摩擦係合に転換させる。図1からは、取付け部17に対して枢動レバー7を枢動させることにより、レバー23ひいてはブレーキパッド11が軸方向運動することが明らかである。
【0029】
ブレーキアセンブリ100は、好ましくは機械式の遊び調整器である遊び調整器29をさらに備えてもよく、この遊び調整器は、ブレーキパッド11の休止位置におけるブレーキパッド11とブレーキディスク9との間の所定の軸方向遊び距離を調整するように適合させられる。遊び調整器29は、ブレーキパッド11とブレーキディスク9との間の軸方向遊び距離を調整するのに適した任意の調整装置であってもよい。説明の目的で、遊び調整器29は、シフトレバー23に配置されている。しかし、遊び調整器29をブレーキアセンブリ100の他の部品に関連付けてもよいことは明らかであろう。遊び調整手順の機能、特に開始については、図2および図3を参照してより詳細に説明する。
【0030】
図1では、ブレーキパッド11または出力軸2の他方の軸方向終端位置が、好ましくは車両のシャーシ(図示せず)に固定的に取り付けられた、固定式のエンドストップ3によって示されている。エンドストップ3は、好ましくは金属製である、薄肉のプレートまたはディスクであってもよい。エンドストップ3は、アクチュエータ1による作動に際して、出力軸がエンドストップ3に対して前進方向Fおよび後退方向Rで相対的に並進運動するように、また、後退方向Rで出力軸の軸方向運動がエンドストップ3によって制限されるように、出力軸2に対して配置される。例えば、エンドストップ3は、出力軸2の前進方向および後退方向の運動方向と同心状に配置された貫通孔1を備えてもよい。
【0031】
図示するように、所定の動作状況の場合に出力軸2に後退方向Rに作用する力を吸収するために、エネルギー吸収および/または蓄積ユニット33が設けられる。エネルギー吸収および/または蓄積ユニット33は、ブレーキアセンブリ100の通常動作中またはダイナミック制動動作中に、ブレーキパッド11または出力軸2がエンドストップ3に到達しないように配置される。エネルギー吸収および/または蓄積ユニット33は、出力軸2が休止位置を越えて後退方向Rに移動する場合に、前進方向Fに向けた力を出力軸2に加える。
【0032】
ブレーキパッド11とブレーキディスク9との間の軸方向遊び距離を調整するために、例えばレバー機構13に、遊び調整器29を配置してもよい。エネルギー吸収および/または蓄積ユニット33は、ばねユニット4によって実現される。ばねユニット4は、固定式のエンドストップ3にて一方の端部が支持され、ばねユニット4の変形によって移動し得る作動プレート5にて他方の端部が支持される。休止位置は、アクチュエータの制動力が加わらない、またはブレーキパッド11とブレーキディスク9との間の摩擦係合が生じない、受動位置とも呼ばれ、アクチュエータ1が制動動作するために出力軸2に作動力を加えるときのブレーキパッド11の開始位置を規定する。また、例えば、ブレーキパッド11および/またはブレーキディスク9の望ましくない実際の遊び値および/または望ましくない損耗レベルにより、遊び調整が必要である場合に、ブレーキパッド11は、まず休止位置にされる。ブレーキアセンブリ100は、例えば、ブレーキパッド11および/またはブレーキディスク9の実際の遊び値および/または実際の損耗レベルを測定するためのセンサユニット(図示せず)を備えてもよい。さらに、ブレーキアセンブリ100またはアクチュエータ1は、遊び調整手順を電子的に引き起こすための制御ユニット35を備える。制御ユニット35は、センサユニットが望ましくない損耗レベルおよび/または望ましくない遊び値を検出した場合に、アクチュエータ1の制御ユニット35が調整手順を開始するように、センサユニットに接続されてもよい。したがって、遊び調整手順は、必要な場合にのみ開始される。不要な調整は防止される。
【0033】
図2では、本発明によるブレーキアセンブリ100の代替的な例示的な実施形態が示されている。簡略化の目的で、以下の説明では、図1に関して先に説明した例示的な実施形態との相違点についてのみ言及する。同じ部品には、同じ参照数字を付している。
【0034】
見てのとおり、図1のばね部材のエネルギー吸収および/または蓄積ユニット33(4,5)は、図2によれば、以下でより詳細に説明する、電気的エネルギー吸収および/または蓄積ユニットとして実現される、エネルギー吸収および/または蓄積ユニット33の別の例示的な実施形態によって置き換えられている。
【0035】
出力軸2を前進方向Fおよび後退方向Rに駆動するためのアクチュエータ1は、電気的エネルギー吸収および/または蓄積ユニット33を構成および/または実現する電気力学式の作動ユニット37と、ブレーキパッド11とブレーキディスク9とを摩擦係合の状態にするために、またブレーキパッド11とブレーキディスク9との摩擦係合を解除するために、アクチュエータ1および電気力学式のアクチュエータ8の回転運動を出力軸2の並進運動に伝達するように適合させられた伝達ユニット39とにより、高度化される。伝達ユニット39は、回転式の作動運動を並進式の作動運動に変換できる任意の適切な機械部品であってもよい。アクチュエータ1は、出力軸41を回転駆動し、その回転方向は矢印Tで示されている。見てのとおり、回転する出力軸41は、電気力学式のアクチュエータ37および伝達ユニット39に力伝達可能に連結されており、伝達ユニット39は、既に説明したように、回転方向Tにおける出力軸41の回転運動を、前進方向Fおよび後退方向Rにおける出力軸2の軸方向運動に伝達する。
【0036】
ブレーキアセンブリの故障や電力喪失などの所定の動作状況の場合に、特に、ブレーキアセンブリ100の移動部品の大きな作動動力および慣性により、出力軸2に作用する力がブレーキアセンブリ100の部品に損傷を与える場合がある。例えば、連結部材6は、損傷をもたらし得る大きな力にエンドストップ3および連結部材6が耐えねばならない打撃のような衝突により、エンドストップ3によって停止される場合があり、または回転する駆動軸41は、所定の動作状況によって生じた角速度の増加によって損傷する場合がある。
【0037】
図1のばね部材のエネルギー吸収および/または蓄積ユニット33と同様に、図2に示す電気的エネルギー吸収および/または蓄積ユニット33は、ブレーキアセンブリ100の損傷を防止する。図2による実施形態では、電気力学式のアクチュエータ37は、コンデンサやアキュムレータなどのエネルギー蓄積器45に電気的に接続されたコイル43を備える。エネルギー蓄積器45の代わりに、エネルギー吸収および/または蓄積ユニット33によって吸収されたエネルギーを散逸させるための電気抵抗器を設けてもよい。吸収されたエネルギーの少なくとも一部が抵抗器によって散逸させられ、吸収されたエネルギーの少なくとも一部がエネルギー蓄積器45に蓄積されるように、エネルギー蓄積器と電気抵抗器との間に並列接続部を設け得ることも可能である。このエネルギー分配は、更なる制御電子機器(図示せず)によって制御されてもよい。極めて動的な動作中、電気力学式のアクチュエータ37は、コイル43に電流を誘導する。さらに、回転する出力軸41の領域には、外部磁界(図示せず)が提供される。コイル43中の誘導電流は、誘導電流を生じさせた、外部磁界または出力軸41の運動方向の変化に対抗する磁界を形成する。それゆえ、回転する磁気的な出力軸41に、出力軸41の回転運動に対抗する磁気抗力が発生するように、誘導電流が磁界の発生源に逆に反応し、それにより、出力軸41の回転速度または出力軸2の並進運動速度を減速させることによってエネルギー吸収機能を発揮する。さらに、電気的エネルギー吸収および/または蓄積ユニット33は、ブレーキアセンブリ部品の損傷のリスクを低減するために、例えば、連結部材6がエンドストップ3に強く接触することが防止されるように配置される。
【0038】
上記の説明、図、および特許請求の範囲に開示される特徴は、本発明の異なる実施形態を個別に、または任意の組み合わせで実現するために重要となり得る。
【符号の説明】
【0039】
1 アクチュエータ
2 出力軸
3 エンドストップ
4 ばね部材
5 作動プレート
6 連結部材
7 レバー
9 ブレーキディスク
11 ブレーキパッド
13 レバー機構
15 端部
17 取付け部
19,21 端部
23 レバー
25,27 端部
29 遊び調整器
31 貫通孔
33 エネルギー吸収および/または蓄積ユニット
35 制御ユニット
37 電気力学式のアクチュエータ
39 伝達ユニット
41 出力軸
43 コイル
45 エネルギー蓄積または散逸器
100 ブレーキアセンブリ
F 前進方向
R 後退方向
T 回転方向
図1
図2