(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】ノイズキャンセルシステムにおけるアクティブサウンド管理
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20221205BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
G10K11/178 140
B60R11/02 S
(21)【出願番号】P 2021559043
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 US2020025752
(87)【国際公開番号】W WO2020205756
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-11-24
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤシャール・アヴァル
(72)【発明者】
【氏名】シアマク・ファラバクシュ
(72)【発明者】
【氏名】デニス・ディー・クルグ
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-327540(JP,A)
【文献】特開平7-175490(JP,A)
【文献】特表2016-541024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境内のノイズを低減する方法であって、
低減されるべきノイズを表す基準信号を受信することと、
前記基準信号に基づいてノイズキャンセル信号を提供することと、
前記環境内の残留ノイズを表すフィードバック信号を受信することと、
前記環境に関連付けられた回転機器の回転速度に基づいて、前記基準信号、前記ノイズキャンセル信号、又は前記フィードバック信号のうちの少なくとも1つをフィルタリングすることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記回転機器の回転速度に基づいて、前記基準信号、前記ノイズキャンセル信号、又は前記フィードバック信号のうちの少なくとも1つをフィルタリングすることが、前記回転速度の変化に基づいて周波数の帯域幅をフィルタリングして除去することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の時間における第1の回転速度を決定することと、第2の時間における第2の回転速度を決定することと、前記回転速度の前記変化として前記第1の回転速度と前記第2の回転速度との間の差を決定することと、を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記周波数の帯域幅の範囲が、前記回転速度の前記変化の範囲に線形に関連する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
回転機器の回転速度に基づいて前記基準信号、前記ノイズキャンセル信号、又は前記フィードバック信号のうちの少なくとも1つをフィルタリングすることが、前記回転速度の変化率に基づいて周波数の帯域幅をフィルタリングして除去することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
回転機器の回転速度に基づいて前記基準信号、前記ノイズキャンセル信号、又は前記フィードバック信号のうちの少なくとも1つをフィルタリングすることが、前記回転速度に基づいてある周波数を中心とする周波数のノッチをフィルタリングして除去することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ある周波数が、前記回転速度の高調波である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ノイズキャンセルシステムであって、
環境内の低減されるべきノイズを表す基準信号を提供するように構成されたノイズセンサと、
前記ノイズセンサに結合されて前記基準信号を受信し、前記基準信号に基づいてノイズキャンセル信号を提供するコントローラと、
前記コントローラに結合され、前記ノイズキャンセル信号を前記環境内の音響信号に変換するトランスデューサと、
前記コントローラに結合されたフィルタであって、前記環境に関連付けられた回転機器の回転速度に基づいて、選択された信号をフィルタリングする、フィルタと、を含む、ノイズキャンセルシステム。
【請求項9】
前記環境内の残留ノイズを表すフィードバック信号を提供するフィードバックセンサを更に備え、前記選択された信号が、前記基準信号、前記ノイズキャンセル信号、及び前記フィードバック信号のうちの少なくとも1つである、請求項8に記載のノイズキャンセルシステム。
【請求項10】
回転機器の回転速度に基づいて、選択された信号をフィルタリングすることが、前記回転速度の変化に基づいて周波数の帯域幅をフィルタリングして除去することを含む、請求項8に記載のノイズキャンセルシステム。
【請求項11】
前記コントローラが、第1の時間における第1の回転速度を決定し、第2の時間における第2の回転速度を決定し、前記回転速度の前記変化として前記第1の回転速度と前記第2の回転速度との間の差を決定する、請求項10に記載のノイズキャンセルシステム。
【請求項12】
前記周波数の帯域幅の範囲が、前記回転速度の前記変化の範囲に線形に関連する、請求項10に記載のノイズキャンセルシステム。
【請求項13】
回転機器の回転速度に基づいて、選択された信号をフィルタリングすることが、前記回転速度の変化率に基づいて周波数の帯域幅をフィルタリングして除去することを含む、請求項8に記載のノイズキャンセルシステム。
【請求項14】
回転機器の回転速度に基づいて、選択された信号をフィルタリングすることが、前記回転速度に基づいてある周波数を中心とする周波数のノッチをフィルタリングして除去することを含む、請求項8に記載のノイズキャンセルシステム。
【請求項15】
記憶された命令を有する非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記命令が、好適なプロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
環境内の低減されるべきノイズを表す基準信号を受信することと、
前記基準信号に基づいてノイズキャンセル信号を提供することと、
前記環境に関連付けられた回転機器の回転速度に基づいて、選択された信号をフィルタリングすることと、を含む、方法を実行させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記プロセッサに、前記環境内の残留ノイズを表すフィードバック信号を受信させる命令を更に含み、前記選択された信号が、前記基準信号、前記ノイズキャンセル信号、及び前記フィードバック信号のうちの少なくとも1つである、請求項15に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項17】
回転機器の回転速度に基づいて、選択された信号をフィルタリングすることが、前記回転速度の変化に基づいて周波数の帯域幅をフィルタリングして除去することを含む、請求項15に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記プロセッサに、第1の時間における第1の回転速度を決定させ、第2の時間における第2の回転速度を決定させ、前記回転速度の前記変化として前記第1の回転速度と前記第2の回転速度との間の差を決定させる命令を更に含む、請求項17に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記周波数の帯域幅の範囲が、前記回転速度の前記変化の範囲に線形に関連する、請求項17に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項20】
回転機器の回転速度に基づいて、選択された信号をフィルタリングすることが、前記回転速度に基づいてある周波数を中心とする周波数のノッチをフィルタリングして除去することを含む、請求項15に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年4月1日に出願された「ACTIVE SOUND MANAGEMENT IN NOISE CANCELATION SYSTEMS」と題する米国仮特許出願第62/827,554号に関連し、その利益を主張するものであり、その全体は、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
例示的なロードノイズキャンセル(road noise cancella、RNC)システムが、ロードノイズに対抗するように意図されたオーディオ信号を生成し得、車両内の様々な位置の加速度計を使用して、ロードノイズ基準源を提供し得る。フィードバックマイクロフォンが、車両室内で結果として生じる音響エネルギーを監視し、適応フィードフォワードフィルタなどのロードノイズキャンセルシステムの様々な動作特性を調整し得る。加えて、アクティブサウンド管理(active sound management、ASM)システムが、エンジン高調波キャンセル(engine harmonic cancellation、EHC)及び/又はエンジン高調波増強(engine harmonic enhancement、EHE)(まとめて、EHx)などによって、車両の動作の知覚される音を増強するか、さもなければ変更するように動作し得る。様々な実施例では、ASMシステム又はRNCシステムによって生成される信号は相互作用し得、例えば、いずれかのシステムが、他のシステムに動作を変更させ得る。例えば、ASMシステムによって生成されたアクティブサウンドは、RNCシステムによってロードノイズとして知覚され得、それにより、RNCシステムは、ASMシステムがアクティブに動作して生成する音を低減しようとし得る。こうした悪影響は、エンジン振動がRNCシステムの加速度計によってとらえられた場合に更に悪化し得る。したがって、ASMとRNCシステムの相互作用を解決又は低減する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書に開示されるシステム及び方法は、ノイズキャンセルシステムによって動作される様々な信号から、エンジンの回転に関連するものなどの選択された信号成分を取り除き、ノイズキャンセルシステムがエンジンに関連する音響音に干渉することなく動作することを可能にするノイズキャンセルシステム、方法、及びアプリケーションを対象とする。
【0004】
一態様によれば、低減されるべきノイズを表す基準信号を受信することと、その基準信号に基づいてノイズキャンセル信号を提供することと、環境内の残留ノイズを表すフィードバック信号を受信することと、環境に関連付けられた回転機器の回転速度に基づいて、基準信号、ノイズキャンセル信号、又はフィードバック信号のうちの少なくとも1つをフィルタリングすることと、を含む、ノイズキャンセル方法が提供される。
【0005】
様々な実施例では、回転機器の回転速度に基づいて、基準信号、ノイズキャンセル信号、又はフィードバック信号のうちの少なくとも1つをフィルタリングすることは、回転速度の変化に基づいて周波数の帯域幅をフィルタリングして除去することを含む。
【0006】
いくつかの例は、第1の時間における第1の回転速度を決定することと、第2の時間における第2の回転速度を決定することと、回転速度の変化として第1の回転速度と第2の回転速度との間の差を決定することと、を含む。
【0007】
特定の実施例では、周波数の帯域幅の範囲は、回転速度の変化の範囲に線形に関連する。
【0008】
様々な実施例では、回転機器の回転速度に基づいて、基準信号、ノイズキャンセル信号、又はフィードバック信号のうちの少なくとも1つをフィルタリングすることは、回転速度の変化率に基づいて周波数の帯域幅をフィルタリングして除去することを含む。
【0009】
いくつかの実施例では、回転機器の回転速度に基づいて、基準信号、ノイズキャンセル信号、又はフィードバック信号のうちの少なくとも1つをフィルタリングすることは、回転速度に基づいてある周波数を中心とする周波数のノッチをフィルタリングして除去することを含む。周波数は、特定の実施例において、回転速度の高調波であってもよい。
【0010】
別の態様によれば、環境内で低減されるべきノイズを表す基準信号を提供するように構成されたノイズセンサと、ノイズセンサに結合されて基準信号を受信し、ノイズセンサに結合されて基準信号に基づいてノイズキャンセル信号を提供するコントローラと、コントローラに結合されてノイズキャンセル信号を環境内の音響信号に変換するトランスデューサと、コントローラに結合されたフィルタであって、環境に関連付けられた回転機器の回転速度に基づいて、選択された信号をフィルタリングするフィルタと、を含む、ノイズキャンセルシステムが提供される。
【0011】
いくつかの実施例は、環境内の残留ノイズを表すフィードバック信号を提供するためのフィードバックセンサを含み、選択された信号は、基準信号、ノイズキャンセル信号、及びフィードバック信号のうちの少なくとも1つである。
【0012】
様々な実施例では、回転機器の回転速度に基づいて、選択された信号をフィルタリングすることは、回転速度の変化に基づいて周波数の帯域幅をフィルタリングして除去することを含む。
【0013】
いくつかの実施例では、コントローラは、第1の時間における第1の回転速度を決定し、第2の時間における第2の回転速度を決定し、回転速度の変化として第1の回転速度と第2の回転速度との間の差を決定する。
【0014】
特定の実施例では、周波数の帯域幅の範囲は、回転速度の変化の範囲に線形に関連する。
【0015】
様々な実施例では、回転機器の回転速度に基づいて、選択された信号をフィルタリングすることは、回転速度の変化率に基づいて周波数の帯域幅をフィルタリングして除去することを含む。
【0016】
いくつかの実施例では、回転機器の回転速度に基づいて、選択された信号をフィルタリングすることは、回転速度に基づいてある周波数を中心とする周波数のノッチをフィルタリングして除去することを含む。
【0017】
別の態様によれば、格納された命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体が提供され、その命令は、好適なプロセッサによって実行されると、プロセッサに、環境内で低減されるべきノイズを表す基準信号を受信させ、基準信号に基づいてノイズキャンセル信号を提供させ、環境に関連付けられた回転機器の回転速度に基づいて、選択された信号をフィルタリングさせる。
【0018】
いくつかの実施例では、プロセッサはまた、環境内の残留ノイズを表すフィードバック信号を受信し、選択された信号は、基準信号、ノイズキャンセル信号、及びフィードバック信号のうちの少なくとも1つである。
【0019】
様々な実施例では、回転機器の回転速度に基づいて、選択された信号をフィルタリングすることは、回転速度の変化に基づいて周波数の帯域幅をフィルタリングして除去することを含む。
【0020】
いくつかの実施例では、プロセッサは、第1の時間における第1の回転速度を決定し、第2の時間における第2の回転速度を決定し、回転速度の変化として第1の回転速度と第2の回転速度との間の差を決定し得る。
【0021】
特定の実施例では、周波数の帯域幅の範囲は、回転速度の変化の範囲に線形に関係する。
【0022】
様々な実施例において、回転機器の回転速度に基づいて、選択された信号をフィルタリングすることは、回転速度に基づいてある周波数を中心とする周波数のノッチをフィルタリングして除去することを含む。
【0023】
これらの例示的態様及び例に関する更なる他の態様、例、及び利点を、以下で詳細に考察する。本明細書で開示する例は、本明細書に開示される原理の少なくとも1つと整合する任意の方法で、他の例と組み合わせることができ、更に、「一例(an example)」、「いくつかの実施例(some examples)」、「代替例(an alternate example)」、「様々な実施例(various examples)」、「1つの例(one example)」等への言及は、必ずしも互いに独占的ではなく、説明される特定の特徴、構造、又は特性は、少なくとも1つの例に含まれ得ることを示すよう意図する。本明細書におけるこうした用語の出現は、必ずしも全てが同じ例を示すわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
少なくとも1つの例に関する様々な態様を、添付図面を参照して、以下で考察するが、これらの図面は、縮尺とおりに描かれることを意図しない。図面は、様々な態様及び実施例の図示、及び更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成するが、本発明を限定する定義として意図していない。図面において、様々な図面に図示される同一の、又はほぼ同一の構成要素は、同様の参照数字によって表され得る。説明を明瞭にするために、全ての図において、構成要素全てが、必ずしも符号付けされていない場合がある。図中、
【
図1】例示的なロードノイズキャンセルシステムの概略ブロック図である。
【
図2】
図1のロードノイズキャンセルシステムに関連付けられ得る例示的な信号フローの概略ブロック図である。
【
図3】例示的なオーディオシステムの概略ブロック図である。
【
図4】別の例示的なオーディオシステムの概略ブロック図である。
【
図5】ノッチフィルタの例示的な伝達関数のグラフである。
【
図6】フィルタポール及びゼロ点の例示的なセットのグラフである。
【
図7】ΔRPMとノッチフィルタ帯域幅との間の例示的な関連のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ノイズキャンセルシステムは、音響空間内の様々な音を音響的に低減(すなわち、「キャンセル」)しようとする。車両では、例えば、ロードノイズキャンセル(RNC)システムは、車両の室内のロードノイズを低減、すなわち「後追い」しようとすることがある。エンジン高調波キャンセル(EHC)システム及びエンジン高調波増強(EHE)システムなどのアクティブサウンド管理(ASM)システムは、車両の動作に関連するエンジン(又は他の回転機器)の音を調整しようとする。本開示の態様は、エンジン又は他の回転機器に関連する信号成分など、ノイズキャンセルシステムの選択された信号成分を取り除く、すなわち低減するために車両に使用するのに好適なシステム及び方法を対象とし、それにより、ノイズキャンセルシステムは、選択された信号成分を後追いすることにはならず、すなわち低減しようとすることになる。
【0026】
例えば、本開示の利益がなければ、RNCシステムが、室内のエンジン音を変化させるすなわち低減することがあるが、これは望ましくないことがある。RNCシステム及びEHEシステムが並列に動作するとき、RNCシステムは、EHEシステムが生成するエンジン高調波をキャンセルしようとすることがあり、特に、加速度計からの基準信号がこれらの高調波を含む場合がそうである。RNCシステム及びEHCシステムが並行して動作するとき、両方の適応システムが様々なエンジン高調波をキャンセルしようとするために安定性に負の効果を及ぼすことがある。
【0027】
本明細書に開示される様々な実施例は、RNCシステムの様々な信号からエンジン高調波をフィルタリングする(例えば、取り除く)。様々な実施例では、取り除かれるべきエンジン高調波は、RPM情報によって及び/又はEHxシステムによって識別され得る。様々な実施例にわたって、こうしたフィルタは、1つ以上の基準信号、1つ以上のスピーカ信号(スピーカコマンド若しくはコマンド信号とも呼ばれる)、例えば、フィードバックマイクロフォンからの1つ以上のエラー若しくはフィードバック信号、又はこれらの任意の組み合わせに直接適用され得る。
【0028】
本明細書で論じられる方法及び装置の実施例は、以下の記載に述べるか、又は添付の図に示される構成要素の構成及び配列の詳細に適用することに限定されないことが、理解されよう。本発明の方法及び機器は、他の例で実装可能であり、様々な方法で実施又は遂行可能である。具体的な実施例は、例示目的のみのために本明細書で提供され、限定を意図するものではない。具体的には、任意の1つ以上の実施例に関連して論じられる機能、構成要素、素子、及び特徴は、他の任意の実施例において同様の役割から除外されることを意図していない。
【0029】
本明細書で開示する例は、本明細書に開示される原理の少なくとも1つと整合する任意の方法で、他の例と組み合わせることができ、更に、「一例(an example)」、「いくつかの実施例(some examples)」、「代替例(an alternate example)」、「様々な実施例(various examples)」、「1つの例(one example)」等への言及は、必ずしも互いに独占的ではなく、説明される特定の特徴、構造、又は特性は、少なくとも1つの例に含まれ得ることを示すよう意図する。本明細書におけるこうした用語の出現は、必ずしも全てが同じ例を示すわけではない。
【0030】
また、本明細書で使用される表現及び用語は、説明目的のみを目的としており、限定的であるとみなされるべきではない。本明細書において単数で言及されるシステム及び方法の実施例、構成要素、素子、行為、又は機能に対する任意の言及は、複数を含む実施形態をも包含してもよく、本明細書における任意の実施例、構成要素、素子、行為、又は機能に対する任意の言及は、単数のみを含む実施例をも包含してもよい。したがって、単数形又は複数形での言及は、本開示のシステム又は方法、それらの構成要素、行為、又は素子を制限することを意図するものではない。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」、並びに、それらの変形形態の使用は、以下で列挙する項目とその等価物、並びに、他の項目を包含することを意味する。「又は(or)」への言及は、「又は(or)」で記載された全ての用語が、記載された用語の単一、2つ以上、及び、全ての用語のいずれかを示せるよう、包括的であると解釈され得る。前後、左右、上下、上下、及び縦横への言及は、説明の便宜のためであり、本システムと方法、あるいは、それらの構成要素を、何らかの1つの位置的か、又は空間的方向に限定するものではない。
【0031】
図1は、ノルム計算を実行し得る例示的なノイズキャンセルシステム100の概略図である。具体的には、ノイズキャンセルシステム100は、車両室などの所定のボリューム104内の少なくとも1つのキャンセルゾーン102内の望ましくない音と破壊的に干渉するように構成される。高レベルでは、ノイズキャンセルシステム100の一実施形態は、基準センサ106、フィードバックセンサ108、トランスデューサ110、及びコントローラ112を含み得る。
【0032】
一実施形態では、基準センサ106は、所定の容積104内の、望ましくない音、又は望ましくない音の発生源を表す基準信号114を生成するように構成されている。例えば、
図1に示されるように、基準センサ106は、車両構造116を通して伝達される振動を検出するように取り付けられ及び構成された加速度計であってもよい。車両構造116を通して伝達される振動は、構造によって車両室内の望ましくない音(ロードノイズとして知覚される)に変換され、したがって構造に取り付けられた加速度計は、望ましくない音を表す信号を提供する。
図1のノイズキャンセルシステム100は、単一の基準センサ106を有する実施例を示しているに過ぎないが、様々な実施例は、複数の基準センサ106を含み得る。
【0033】
トランスデューサ110は、例えば、所定の容積の周囲の別々の位置に分散されたスピーカであってもよい。一例では、4つ以上のスピーカが車両室内に配設されてもよく、4つのスピーカの各々は、車両のそれぞれのドア内に配置され、音を車両室内に投射するように構成される。代替的な実施形態では、スピーカは、ヘッドレスト内、又は車両室内の他の場所に配置されてもよい。
【0034】
ノイズキャンセル信号118は、コントローラ112によって生成され、所定の容積内の1つ以上のスピーカに提供されてもよく、スピーカはノイズキャンセル信号118を音響エネルギー(すなわち、音波)に変換する。ノイズキャンセル信号118の結果として生成される音響エネルギーは、キャンセルゾーン102内の望ましくない音と約180°位相がずれており、したがって、その望ましくない音と相殺する。ノイズキャンセル信号118から生成された音波と所定の容積内の望ましくないノイズとの組み合わせは、キャンセルゾーン内のリスナによって知覚される、望ましくないノイズのキャンセルをもたらす。
【0035】
所定の容積内に配設されたフィードバックセンサ108は、ノイズキャンセル信号118から生成された音波とキャンセルゾーン内の望ましくない音との組み合わせから生じる残留ノイズの検出に基づいて、フィードバックセンサ信号120を生成する。フィードバック信号120は、フィードバックとしてコントローラ112に提供され、フィードバック信号120は、ノイズキャンセル信号及び他の音響エネルギーによってキャンセルされない残留ノイズを表す。エラーセンサ108は、例えば、車両室内に(例えば、ルーフ、ヘッドレスト、ピラー、又は室内の他の場所に)装着された少なくとも1つのマイクロフォンであってもよい。
【0036】
キャンセルゾーンは、フィードバックセンサ108から遠隔に位置決めされてもよいことに留意されたい。この場合、フィードバックセンサ信号120は、キャンセルゾーン内の残留ノイズの推定値を表すように変換され得る。
【0037】
一実施形態では、コントローラ112は、非一時的記憶媒体122及びプロセッサ124を備え得る。一実施形態では、非一時的記憶媒体122はプログラムコードを記憶し得、このプログラムコードは、プロセッサ124によって実行されると、以下に記載の様々なフィルタ及びアルゴリズムを履行する。コントローラ112は、ハードウェア及び/又はソフトウェア内に実装されてもよい。例えば、コントローラは、SHARC浮動小数点DSPプロセッサによって実装されてもよいが、コントローラは、任意の他のプロセッサ、FPGA、ASIC、又は他の好適なハードウェアによって実装され得ることを理解されたい。
【0038】
図2を参照すると、コントローラ112によって実装されるフィルタ構成要素を含む、ノイズキャンセルシステム100の一実施形態のブロック図が示されている。図示のように、コントローラ112は、適応フィルタ126及び適応処理モジュール128を含む制御システムを画定し得る。
【0039】
適応フィルタ126は、基準センサ106の基準信号114を受信し、ノイズキャンセル信号118を生成するように構成されている。ノイズキャンセル信号118は、上述のように、トランスデューサ110に入力され、そこで、所定のキャンセルゾーン102内の望ましくない音と相殺するノイズキャンセルオーディオ信号に変換される。適応フィルタ126は、多入力多出力(multi-input multi-output、MIMO)有限インパルス応答(finite impulse response、FIR)フィルタなど、任意の好適な線形フィルタとして実装され得る。適応フィルタ126は、基準信号114に応答してノイズキャンセル信号118を画定する一組の係数を採用し、一組の係数は、ロード入力(又は非車両ノイズキャンセルコンテキストにおける他の入力に対する)に対する車両応答の変化する挙動に適応するように調整され得る。
【0040】
適応フィルタ126の係数に対する調整は、適応処理モジュール128によって実行され得、適応処理モジュール128は、入力としてフィードバック信号120及び基準信号114を受信し、これらの入力を使用してフィルタ更新信号130を生成する。フィルタ更新信号130は、適応フィルタ126に実装されるフィルタ係数に対する更新である。更新された適応フィルタ126によって生成されるノイズキャンセル信号118は、フィードバック信号120(又はその突出若しくは変形)を最小限に抑え、その結果、キャンセルゾーン内の望ましくないノイズを低減する。
【0041】
図3は、例えば、サブシステムとして、ノイズキャンセルシステム100を含み、更に、アクティブサウンド管理システム310をも含み、トランスデューサ110によって変換され得る追加のオーディオ信号を提供する、例示的なオーディオシステム300を示している。様々な実施例は、トランスデューサ110によってもトランスデューサによって変換されるオーディオ信号を提供する、娯楽、ナビゲーション、及びドライバ警告システムなど、追加のオーディオ源を含み得る。
【0042】
アクティブサウンド管理システム310は、音響トランスデューサ110によってレンダリングされる1つ以上のアクティブサウンド信号314を提供し得る。アクティブサウンド管理システム310の実施例は、エンジン及び/又は変速機高調波のキャンセル及び/又は増強など、様々な音響の低減システム又は増強システムを含み得る。こうしたシステムは、音を生成して、エンジン及びパワートレイン、連続可変変速機、電気車両などの内部音響シグネチャを増強若しくは低減し、及び/又は、様々な音響特性を模倣若しくはマスクして、車両の動作に関連する異なった音響体験を作成し得る。
【0043】
様々な実施例では、低減又は増強された音は、エンジン高調波又はドライブトレーン高調波に関連することがあり、こうしたシステムは、一般に、エンジン高調波キャンセル(EHC)及び/又はエンジン高調波増強(EHE)システムと呼ばれることがある。こうしたシステムはまた、高調波に関連しない車両音を増強若しくは低減するか、又はサウンド発生器などの新しい音を作成して、バックファイヤ、アフターファイヤ、クラックル音効果などの音効果を作成するシステムを指すことがある。また、アクティブサウンド管理システム310は、例えば、ガソリン車に似た電気自動車音を生み出すか、又はギアシフトなどに似た連続可変変速機音を生み出すか、又は完全に新しい機械音を生み出すなど、別のものに似たあるものの音を生み出すことを意図した音響環境を作成し得る。
【0044】
アクティブサウンド管理システムは、任意の数の入力信号312を受信してもよい。EHE/EHCシステムの例示的な入力信号312は、車両回転機器(エンジン、変速機、車輪など)のいずれかの、毎分回転数(rotations per minute、RPM)、トルク、負荷、温度などの表示、又は、増強若しくはキャンセル音を生成するための基準となり得る車両機器のいずれかの他の動作状態(例えば、アクセルペダル若しくは制御の位置、ブレーキペダル若しくは制御の位置、ステアリングホイール位置、ギア及び/若しくはギアチェンジ、又は他のオペレータ制御入力)を含み得る。
【0045】
様々な実施例では、アクティブサウンド信号314は、トランスデューサ110によって変換されるべきノイズキャンセル信号118と組み合わされる。他の実施例では、アクティブサウンド信号314及びノイズキャンセル信号118は、別個のトランスデューサ110によって変換されてもよい。いずれの場合でも、フィードバックセンサ108は、ノイズキャンセル信号118及びアクティブサウンド信号314のそれぞれによって提供され得る環境内の音響エネルギーを検出する。上述のように、アクティブサウンド信号314の成分は、エンジン高調波、及び/又は、ドライブトレーン及び/又は車輪などの車両の回転機器の他の部分の高調波に関連し得る。加えて、基準センサ106は、これらの高調波に関連する振動を検出し得、基準信号114内の成分をこれらの高調波に関連させる。したがって、ノイズキャンセルシステム100は、これらの高調波成分が車両室内でのそれらの存在を低減しようとすることに後追いすることがあり、同時に、アクティブサウンド管理システム310は、車両室内のこれらの高調波成分を増加しようとすることがある。このように、これらの2つのシステムは、最善の場合でも、互いに対して不利に働き得る。ノイズキャンセルシステム及びアクティブサウンド管理システムのそれぞれはまた、適応動作を含んでもよく、したがって、これらの2つのシステムは、最悪の場合でも、互いに不安定性を引き起こし得る。
【0046】
図4は、オーディオシステム300のものからの例示的な変形形態を含む例示的なオーディオシステム400を示しており、実装に応じて、エンジン又は車両の他の回転機器の音を変更し得るノイズキャンセルシステム100による作用を解決する。したがって、
図4の例示的なオーディオシステム400はまた、ノイズキャンセルシステム100とアクティブサウンド管理システム310との間の相互作用を解決し得る。様々な実施例では、RPM450に基づいて構成された1つ以上のノッチフィルタは、フィードバック信号120、基準信号114、ノイズキャンセル信号118、又はこれらの信号の組み合わせのうちの少なくとも1つに対して動作する。例えば、フィルタ410を含み、フィードバック信号120を修正して、RPM450に関連する高調波成分を取り除き得る。代替的に又は追加的に、フィルタ420を含み、基準信号114を修正して、RPM450に関連する高調波成分を取り除き得る。フィルタ410、420のいずれか又は両方に加えて、又はその代わりに、フィルタ430を含み、ノイズキャンセル信号118を修正して、RPM450に関連する高調波成分を取り除き得る。フィルタ410、420、430のうちの任意の1つ以上は、RPM450に関連する取り除かれた高調波成分に対するノイズキャンセルシステム100の効果を低減し得る。
【0047】
例えば、フィルタ410は、フィードバック信号120から高調波成分を取り除き、高調波成分を除去していないときに高調波成分を取り除くことが成功したとノイズキャンセルシステム100に事実上思わせる。フィルタ420は、基準信号114から高調波成分を取り除き、高調波成分が、作用しているノイズ源ではないとノイズキャンセルシステム100に事実上思わせる。フィルタ430は、ノイズキャンセル信号118から高調波成分を取り除き、ノイズキャンセルシステム100が車両室内の高調波成分に影響を及ぼすのを事実上阻止する。
【0048】
様々なフィルタ位置のそれぞれは、ノイズキャンセルシステム100の性能を低下させるか、又は不安定性を引き起こす可能性がある。例えば、基準信号114をフィルタリングすることにより、ノイズキャンセルシステム100が高調波の周波数で適応フィルタ値をブーストすることを促進することができる。ノイズキャンセル信号118をフィルタリングすることは、それが二次経路を変更するためにシステムに安定性を引き起こし得る。これらの課題を克服するために、様々な実施例では、高調波フィルタ410、420、430は、所望の成分の取り除きを達成するために可能な限り狭くなるように設計される。
【0049】
こうしたフィルタリングにおける課題は、RPMが急速に変化するとき(例えば、性能限界運転シナリオ)に生じ、その間、エンジン高調波が狭帯域の性質により偏差することがあり、したがって狭いノッチフィルタを含まなくてもよい。この偏差が考慮されない場合、ノイズキャンセルシステムはエンジン音を変更し得、これは、例えば、RPMが急速に変化している急加速中など、増強されたエンジン音が望まれる正確な週間に特に望ましくないことがある。
【0050】
本明細書に開示されるものによる様々な実施例は、ノイズキャンセルシステム内の1つ以上の信号経路位置において1つ以上のノッチフィルタを調整する。ノッチフィルタの周波数及び帯域幅は、RPM、RPM変動、及びトルクなどの車両動作パラメータに基づく。フィルタは、例えば、単純なIIRフィルタとすることができ、フィスタのポール及びゼロ点は、エンジンの高調波周波数及びRPM変化率によって選択される。様々な実施例では、高調波成分のフィルタリングされる低減は、それほど深くする必要はない。例えば、RNCによって室内で再生される弱化された高調波が、実際のエンジン音及び/又はアクティブサウンド管理システムによってマスクされ得るため、10dB以下の低減で十分であり得る。
【0051】
いくつかの実施例によれば、ノッチフィルタ430は、ノイズキャンセル信号118によって動作し、ノッチは、安定性の問題が観察されないように十分に狭くされ得、例えば、ノッチフィルタ430は、ノイズキャンセルシステムが周波数分解能/粒度のこうしたレベルに適応することができないスペクトルの狭い十分な部分を取り除くように設計され得る。
【0052】
特定の実施例では、二次経路が知られており、RNCシステムがこれらの周波数で利得をブーストするのを防止するために、フィルタリングされ除去された信号の突出がフィードバック信号に追加され得る。
【0053】
様々な実施例では、複数の高調波を取り除くために複数のノッチフィルタがカスケードされ得る。
【0054】
図5は、例えば、フィルタ410、420、430のいずれかであり得る、例示的なノッチフィルタの伝達関数500を示している。ノッチフィルタは、中心周波数f
cを中心とし、低周波数f
lから高周波f
hまで延びるノッチ帯域幅510を有する狭い範囲の周波数を取り除き(減衰し)、例示的なノッチフィルタでは、この範囲外の周波数における名目0利得から3dBだけ低下して画定される。様々な実施例では、ノッチ帯域幅は、他の量の低減によって画定されてもよく、及び/又は中心周波数の両側に対称応答を有しないことがある。
【0055】
様々な実施例では、中心周波数はRPMにリンクされ、ノッチ帯域幅510は、RPM変動率に比例的にリンクされる。RPMが急速に変化するとき、エンジン高調波は、より広い帯域幅を占有し、多くの場合、より大きくなり得る。RPMが変化しているとき、ノッチ帯域幅を広げることは、これらの状態時の高調波の適切な緩和を支援する。更に、ノッチ帯域幅を変化させることは、RPMが実質的に変化していないとき、RNC信号における大部分の情報を保存す際の柔軟性を与える。例えば、本質的に一定のRPMで走行しているとき、より狭いノッチはより少ない信号コンテンツを取り除き、こうした場合、ロードノイズは、最有力のノイズ源であり得、ノイズキャンセルシステム100は、可能な限りノイズスペクトルを追跡することが可能になる。
【0056】
車両が本質的に一定のRPMで走行しているとき、狭いノッチ帯域幅510は、例えば、適応フィルタ126の周波数分解能よりも狭いノッチフィルタ帯域幅510を有することによって、適応フィルタ126がフィルタリングされた高調波レベルに適応することを防止する。これらのシナリオでは、RPMがゆっくりと変化するとすれば、ノッチフィルタは、様々な実施例において適応フィルタ126の分解能よりも数桁狭くされ得る。
【0057】
車両が加速又は減速しており、RPMが変化しているとき、より広いノッチ帯域幅510は、変化する高調波を受け入れる。様々な実施例では、高次高調波のためのフィルタ伝達関数500は、低次高調波よりも広い(より広い)ノッチ帯域幅510を有し得る。例えば、5番目の高調波は、2番目の高調波より広い帯域幅を示してもよく、5番目の高調波を減衰させることが意図されたフィルタ伝達関数500は、2番目の高調波を減衰させることを意図したものよりも広いノッチ帯域幅510を有し得る。加えて、ノッチフィルタの中心周波数は、RPMに対して調整され、したがって、こうしたシナリオにおいて変化する。したがって、適応フィルタ126は、ノッチフィルタ、例えばフィルタ410、420及び/又は430の任意の特定の動作に適応する時間を有していない。
【0058】
加えて、フィルタ410、420及び/又は430のいずれかは、それが動作する信号の位相を変更してもよい。したがって、伝達関数500は、様々な実施例において比較的狭く、それにより、ノッチフィルタは、狭い範囲の位相誤差のみを取り入れる。
【0059】
図6は、様々な実施例で使用され得る例示的なデジタルフィルタ設計600を示している。フィルタ設計600は、回転速度、例えば、RPMに基づく中心周波数にゼロ点を有し、及び回転速度の変化量又は変化率に基づくゼロ点からオフセットされたポールを有する、二次フィルタを表す。例えば、所与の高調波周波数f
nについて、1秒当たりラジアンで表した中心周波数ω
oは、等式1にしたがって表され得る。
【数1】
式中、f
sはデジタルシステムにおけるサンプリング周波数であり、f
nは対象の高調波周波数であり、それぞれがヘルツなどの同じ単位で表される。それぞれのポールとゼロ点との間のオフセットは、等式2にしたがって表され得る。
【数2】
式中、帯域幅BWは、上述したノッチ帯域幅であり、Hertzなどのサンプリング周波数f
sと同じ単位で表される。様々な実施例は、RPMがどれくらい速く変化しているかの尺度に基づいて帯域幅BWを選択し、そのうちの少なくとも1つの実施例が、
図7に関して以下でより詳細に記載される。
図6に示されるフィルタ設計600は、それぞれのゼロ点と原点との間の実質的に線形位置にあるポールを示しているが、実際の実装形態は、図示されるように近似的にのみ配置され得る。フィルタ設計600は、狭い範囲の周波数を事実上減衰させ得るフィルタ設計の一実施例に過ぎない。
【0060】
図7は、所与のΔRPM(x軸)に対する選択されたノッチ帯域幅(y軸)の相関又はマッピング700の一実施例を示している。この例では、選択されたノッチ帯域幅は、ΔRPMに線形に関連するが、最小帯域幅と最大帯域幅との間に制限される。様々な実施例では、ΔRPMは、例えば、時間に対するRPMの変化率であると理解され得るが、これは、ΔRMPは2つの異なる時間におけるRPMの差であるが、様々な実施例では、時間差ΔTは一定に保たれてもよいからである。例えば、いくつかの実施例では、ΔRPMの値は、現在のRPMと100ミリ秒前のRPM値との間の差として、100ミリ秒ごとに決定され得る。他の実施例では、ΔRPMの値は、10ミリ秒ごとに、現在のRPMと10ミリ秒前のRPM値との間の差として、10ミリ秒ごとに決定され得る。様々な実施例では、ΔRPMの値は、10~100ミリ秒ごとの範囲で決定され得る。
【0061】
RPM信号又はΔRPM信号のいくつかのフィルタリングを適用して、その精度又は平滑さを改善し得る。実施例には、平滑化(ノイズ低減のため)、予測(RPMを報告する際の車両の遅延を補償するため)、補間(ノイズを低減するため)、補外(予測を追加するため)、又はΔRPMの精度を向上させるための任意の他の処理を含む。特定の場合では、ΔRPMは、エンジン回転当たり特定の数のパルスを含む信号などのアナログ信号源から直接計算することができる。
【0062】
毎分回転数(RPM)は、回転速度の測定の従来の単位であり、様々な実施例では、回転速度は、RPMに基づいて、又は分以外の時間尺度に基づいて、及び/又は他の単位に基づいて測定され得る。回転速度の変化は、正(増加)又は負(減少)であり得る。様々な実施例では、回転速度の変化(又は回転速度の変化率)の絶対値が、ノッチ帯域幅510を選択するための基礎として採用され得る。
【0063】
上述のように、様々な実施例によれば、所与のフィルタ伝達関数500のためのノッチ帯域幅510は、ノッチフィルタがターゲットとするように意図される高調波に依存し得る。したがって、ΔRPMをノッチ帯域幅510にマッピングする様々な実施例は、それが向けられる高調波に基づいて変化し得る。加えて、任意の所与の高調波の周波数帯域幅は、高調波の中心周波数に依存し得、例えば、80Hzの1番目の高調波は、80Hzの2番目の高調波とは異なる幅を有し得、ノッチ帯域幅510が適宜選択され得る。
【0064】
動作中、様々な実施例は、2つ以上のノッチフィルタをカスケードすることによって、多数の高調波にしたがってなど、多数のノッチをフィルタリングして除去し得る。したがって、様々な実施例では、フィルタ410、420、430のいずれかは、例えば、それ自体の中心周波数及びノッチ帯域幅をそれぞれ有する複数のノッチを減衰又は取り除くフィルタであり得る。
【0065】
様々な実施例では、ノッチフィルタ周波数及びノッチ帯域幅は、アクティブサウンド管理システム310などのアクティブサウンド管理システムによってより直接的に制御され得る。アクティブサウンド管理システムは、どのノッチ及び帯域幅が、アクティブサウンド管理システムが管理している音とノイズキャンセルシステムとの相互作用を低減するのに最も適しているかを判定し得る。アクティブサウンド管理システムは、これらを回転速度に基づかせてもよく、基づかせなくてもよい。
【0066】
様々な実施例が、主に、車両エンジンに関して上述されてきたが、本明細書のノイズキャンセルシステム及び方法は、電気車両のモータ、ドライブトレーン、変速機、トランスアクスル、車輪などの任意の回転機器に適用されてもよい。
【0067】
様々な実施例が車両に関して上述されてきたが、本明細書に開示されるノイズキャンセルシステム及び方法は、産業環境、大量輸送機器など、回転機器が、低減することが望ましいことがあるノイズを生成し得る、任意の環境に適用されてもよい。
【0068】
少なくとも1つの実施例に関するいくつかの態様について述べてきたが、当業者であれば、様々な変更、修正、並びに、改良が容易に思い付くことは、理解されているであろう。こうした変更、修正、及び改善は、本開示の一部であり、本発明の範囲内であることが意図される。したがって、前述の説明及び図面は、例に過ぎず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の適切な構成、並びに、その等価物から判定されるはずである。
【符号の説明】
【0069】
100 ノイズキャンセルシステム
110 トランスデューサ
120 フィードバックセンサ信号
130 フィルタ更新信号
300 オーディオシステム
310 アクティブサウンド管理システム