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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】樹脂製継手および排水配管構造
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/12 20060101AFI20221205BHJP
【FI】
E03C1/12 E
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022067975
(22)【出願日】2022-04-18
【審査請求日】2022-04-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 納入した場所:三興バルブ継手株式会社本社倉庫(福岡県福岡市博多区石城町12-1) 納品日:令和3年4月21日 納入した場所:杉中工業株式会社(大阪府大阪市西成区北津守3-1-32) 納品日:令和3年4月23日 納入した場所:三興バルブ継手株式会社鹿児島支店(鹿児島県鹿児島市天保山町7-4) 納品日:令和3年4月27日 納入した場所:タカラ通商株式会社物流センター(大阪府大阪市大正区三軒家東3-2-15) 納品日:令和3年5月24日 納入した場所:冨士機材株式会社三郷物流センター(埼玉県三郷市インター南1-3-4) 納品日:令和3年6月24日 納入した場所:三興バルブ継手株式会社熊本営業所(熊本県熊本市中央区上水前寺1-3-18) 納品日:令和3年7月9日 納入した場所:冨士機材株式会社西淀川倉庫(大阪府大阪市西淀川区百島1-3-80) 納品日:令和3年9月16日 納入した場所:武蔵鋼管株式会社(広島県広島市中区十日市町2-6-17) 納品日:令和3年10月30日 納入した場所:クリエイト株式会社大阪配送センター(大阪府大阪市大正区小林東1-1-25) 納品日:令和3年11月1日 納入した場所:クリエイト株式会社大阪配送センター(大阪府大阪市大正区小林東1-1-25) 納品日:令和3年11月26日 納入した場所:冨士機材株式会社神奈川物流センター(神奈川県横浜市瀬谷区目黒町15-5) 納品日:令和3年11月30日 納入した場所:クリエイト株式会社大阪配送センター(大阪府大阪市大正区小林東1-1-25) 納品日:令和4年1月18日 納入した場所:クリエイト株式会社東京配送センター(東京都江東区有明3-15-12) 納品日:令和4年4月8日 納入した場所:株式会社安謝鋳物商事(沖縄県浦添市当山1-3-8) 納品日:令和4年4月8日 納入した場所:丸栄工業株式会社上尾配送センター(埼玉県上尾市上野995) 納品日:令和4年4月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】特許業務法人安田岡本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 博史
(72)【発明者】
【氏名】三浦 琢夢
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-020705(JP,A)
【文献】特開2021-055417(JP,A)
【文献】特開2020-33702(JP,A)
【文献】特開2016-69982(JP,A)
【文献】特開2001-26955(JP,A)
【文献】特開2004-278099(JP,A)
【文献】特開2000-8468(JP,A)
【文献】特開2015-048661(JP,A)
【文献】特開2015-86612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側の上立て管に接続可能な上方立て管接続部を上端に、横枝管に接続可能な横枝管接続部を側面に、下流側の配管部材に接続可能な下方配管接続部を下端に、それぞれ有する本体部を含む最下階用樹脂製継手であって、
前記横枝管接続部よりも上流側において、前記本体部の内周面、または、前記上方立て管接続部に接続される上方部材の内周面に1以上の突起が形成され、
前記樹脂製継手は、排水が前記突起にあたったことに起因する前記横枝管への排水の流入を防止する流入防止機構を備えることを特徴とする、樹脂製継手。
【請求項2】
前記流入防止機構は、前記横枝管接続部より上流側において、前記上立て管の内径よりも前記突起が出っ張っていないことにより実現されることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂製継手。
【請求項3】
前記横枝管接続部より上流側において、前記上立て管の内径よりも前記突起が出っ張るとともに、
前記流入防止機構は、前記樹脂製継手の上面視において、前記横枝管接続部に接続される横枝管と対面する領域に前記突起が存在しないことにより実現されることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂製継手。
【請求項4】
前記流入防止機構は、前記横枝管の管芯を水平方向または垂直方向とした前記樹脂製継手の上面視において、前記上方立て管接続部に接続される上立て管の断面を、前記上立て管の管芯を中心として90度間隔で前記横枝管の管芯の延長線を線対称軸として4分割して、45度回転させた扇型形状の4領域の中で、前記上立て管の管芯まで延長した前記延長線を含む領域に対して180度回転させた領域に前記突起が存在しないことにより実現されることを特徴とする、請求項3に記載の樹脂製継手。
【請求項5】
上流側の上立て管に接続可能な上方立て管接続部を上端に、横枝管に接続可能な横枝管接続部を側面に、下流側の配管部材に接続可能な下方配管接続部を下端に、それぞれ有する本体部を含む樹脂製継手であって、
前記横枝管接続部よりも上流側において、前記本体部の内周面、または、前記上方立て管接続部に接続される上方部材の内周面に1以上の突起が形成され、
前記樹脂製継手は、排水が前記突起にあたったことに起因する前記横枝管への排水の流入を防止する流入防止機構を備え、
前記横枝管接続部より上流側において、前記上立て管の内径よりも前記突起が出っ張るとともに、
前記流入防止機構は、前記樹脂製継手の側面視において、前記横枝管接続部に接続される横枝管の上方側を覆う構造物が、前記突起よりも下方に存在することにより実現されることを特徴とする、樹脂製継手。
【請求項6】
前記構造物は、前記本体部に設けられた庇であることを特徴とする、請求項5に記載の樹脂製継手。
【請求項7】
前記樹脂製継手は、前記本体部とは別部材であって、前記本体部の横枝管接続部に接続される枝管受口をさらに含み、
前記構造物は、前記枝管受口に設けられた庇であることを特徴とする、請求項5に記載の樹脂製継手。
【請求項8】
前記樹脂製継手は、前記本体部とは別部材であって、前記本体部の横枝管接続部に接続される枝管受口と、前記本体部と前記枝管受口との間に設置される接続部材とをさらに含み、
前記構造物は、前記接続部材に設けられた庇であることを特徴とする、請求項5に記載の樹脂製継手。
【請求項9】
前記樹脂製継手は、前記本体部とは別部材であって、前記本体部の横枝管接続部に接続される枝管受口をさらに含み、
前記枝管受口には横枝管が接続され、
前記構造物は、前記横枝管に設けられた庇であることを特徴とする、請求項5に記載の樹脂製継手。
【請求項10】
前記樹脂製継手は、前記本体部とは別部材であって、前記本体部の横枝管接続部に接続される枝管受口をさらに含み、
前記枝管受口には横枝管が接続され、
前記構造物は、前記枝管受口と前記横枝管との間に設置される接続部材に設けられた庇であることを特徴とする、請求項5に記載の樹脂製継手。
【請求項11】
前記樹脂製継手は、前記本体部とは別部材であって、前記本体部の横枝管接続部に接続される枝管受口、および、前記本体部の上方立て管接続部に接続される立て管受口を前記上方部材としてさらに含み、
前記立て管受口は、略円筒形状を備えるとともに、内周面に前記突起が設けられ、
前記構造物は、前記立て管受口における前記略円筒形状の下方が前記本体部まで伸長された管壁であって、
前記樹脂製継手の側面視において、前記枝管受口の管芯を上下方向の基準として、前記突起の上端は上側に、前記管壁の下端は下側に、位置することを特徴とする、請求項5に記載の樹脂製継手。
【請求項12】
前記管壁は、前記略円筒形状の周方向における前記枝管受口が存在する部分についての前記略円筒形状の下方が延長され、前記立て管受口の管芯に垂直な断面が円弧状であることを特徴とする、請求項11に記載の樹脂製継手。
【請求項13】
前記横枝管接続部より上流側において、前記上立て管の内径よりも前記突起が出っ張るとともに、
前記流入防止機構は、前記樹脂製継手の側面視において、前記横枝管接続部の下面から140mm以上の上側に前記突起を存在させることにより実現されることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂製継手。
【請求項14】
前記樹脂製継手は、前記本体部とは別部材であって、前記本体部の上方立て管接続部に接続される立て管受口を前記上方部材としてさらに含み、
前記突起は、前記立て管受口に設けられることを特徴とする、請求項13に記載の樹脂製継手。
【請求項15】
前記樹脂製継手は、前記本体部とは別部材であって、前記本体部の上方立て管接続部に接続される立て管受口と、前記本体部と前記立て管受口との間に設置される前記上方部材としての接続部材とをさらに含み、
前記突起は、前記接続部材に設けられることを特徴とする、請求項13に記載の樹脂製継手。
【請求項16】
請求項1~請求項15のいずれかに記載の樹脂製継手を最下階または最下階以外の床スラブに施工したことを特徴とする、排水配管構造。
【請求項17】
前記下方配管接続部に、熱膨張性耐火材料を含む樹脂組成物を成形することによって作製された配管部材が接続されたことを特徴とする、請求項16に記載の排水配管構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の床スラブを貫通して設けられる樹脂製継手に関し、特に、排水流により形成される筒状(筒型)の水膜を突起により分断しつつ、上階からの排水がその突起にあたり横枝管に入る可能性を低減させることのできる樹脂製継手および排水配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅やオフィスビルなどには、給水設備および排水設備が設けられる。このうちの排水設備は、建物の各階層を上下に貫く縦管(立て管、上立て管、下立て管)と、各階層内に設置される横管(横枝管、枝管)と、これらを接続する排水配管継手とを備えた排水配管構造が代表的なものとして広く知られている。
そして、このような排水配管継手は、建築物に施工された際に、床スラブの貫通孔に配置される管本体(本体部)を備え、本体部は、上流側の上立て管に接続可能な上方立て管接続部を上端に、横枝管に接続可能な横枝管接続部を側面に、下流側の配管部材に接続可能な下方配管接続部を下端に、それぞれ有する。また、このような排水配管継手として、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成されたものが広く知られている。
【0003】
このような排水縦管と横枝管を接続した排水集合継手において、排水縦管から排水集合継手の内部に勢い良く排水が流れ込む場合、排水流が筒型の水膜を形成したまま排水集合継手の内部を流れ落ちる場合がある。この場合、筒型の水膜となった排水流が横枝管との接続部を遮るように通過するので、横枝管から排水集合継手に流れ込む排水の障害となる問題点がある。また、排水縦管から排水集合継手に流れた側の排水流が正圧側となり、横枝管から排水集合継手に流れようとする排水流が負圧側となるおそれがあり、横枝管への排水の逆流が生じる問題点も懸念される。
【0004】
このような問題点に対して、特開2021-055417号公報(特許文献1)は、縦管から継手管本体に流れ込む水の流れに突起により切れ目を生成し、横枝管から継手管本体側に確実に水が流れ込むようにした管継手を開示する。この特許文献1に開示された管継手は、上流側の縦管に接続可能な縦管接続部を一端に有し、横枝管に接続可能な横枝管接続部を側面に有する継手管本体を備え、前記継手管本体において、前記横枝管接続部よりも上流側の前記縦管接続部側の内周面に1つ以上の突起が形成されたことを特徴とする(特許文献1の請求項1)。そして、この管継手によると、縦管接続部から継手管本体側に筒状をなして流下する水膜を生じたとしても、突起により水膜に分断部分を形成することができる。横枝管接続部から継手管本体に流れ込もうとする水は、この分断部分を介し継手管本体内に流れ込むことが可能となるため、横枝管接続部近傍の継手管本体内において内圧が必要以上に高くなることを抑制し、横枝管側への水の逆流を防止できる(特許文献1の第0021段落)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-055417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された管継手では、突起により、排水流により形成される筒状(筒型)の水膜を分断(水膜を切断または水膜切断と記載する場合がある)することができるとしても、上階からの排水がその突起にあたり横枝管に入る(逆流する)可能性が生じるという問題点がある。
本発明は、上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、排水流により形成される筒状(筒型)の水膜を突起により分断しつつ、上階からの排水がその突起にあたり横枝管に入る可能性を低減させることのできる樹脂製継手および排水配管構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る樹脂製継手は以下の技術的手段を講じている。
本発明のある局面に係る樹脂製継手は、上流側の上立て管に接続可能な上方立て管接続部を上端に、横枝管に接続可能な横枝管接続部を側面に、下流側の配管部材に接続可能な下方配管接続部を下端に、それぞれ有する本体部を含む最下階用樹脂製継手であって、前記横枝管接続部よりも上流側において、前記本体部の内周面、または、前記上方立て管接続部に接続される上方部材の内周面に1以上の突起が形成され、前記樹脂製継手は、前記突起による前記横枝管への排水の流入を防止する流入防止機構を備えることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、最下階用樹脂製継手において、前記流入防止機構は、前記横枝管接続部より上流側において、前記上立て管の内径よりも前記突起が出っ張っていないことにより実現されるように構成することができる。
さらに好ましくは、最下階用樹脂製継手において、前記横枝管接続部より上流側において、前記上立て管の内径よりも前記突起が出っ張るとともに、前記流入防止機構は、前記樹脂製継手の上面視において、前記横枝管接続部に接続される横枝管と対面する領域に前記突起が存在しないことにより実現されるように構成することができる。
【0009】
さらに好ましくは、最下階用樹脂製継手において、前記流入防止機構は、前記横枝管の管芯を水平方向または垂直方向とした前記樹脂製継手の上面視において、前記上方立て管接続部に接続される上立て管の断面を、前記上立て管の管芯を中心として90度間隔で前記横枝管の管芯の延長線を線対称軸として4分割して、45度回転させた扇型形状の4領域の中で、前記上立て管の管芯まで延長した前記延長線を含む領域に対して180度回転させた領域に前記突起が存在しないことにより実現されるように構成することができる。
【0010】
本発明の別の局面に係る樹脂製継手は、上流側の上立て管に接続可能な上方立て管接続部を上端に、横枝管に接続可能な横枝管接続部を側面に、下流側の配管部材に接続可能な下方配管接続部を下端に、それぞれ有する本体部を含む(最下階用に限定されない)樹脂製継手であって、前記横枝管接続部よりも上流側において、前記本体部の内周面、または、前記上方立て管接続部に接続される上方部材の内周面に1以上の突起が形成され、前記樹脂製継手は、前記突起による前記横枝管への排水の流入を防止する流入防止機構を備え、前記横枝管接続部より上流側において、前記上立て管の内径よりも前記突起が出っ張るとともに、前記流入防止機構は、前記樹脂製継手の側面視において、前記横枝管接続部に接続される横枝管の上方側を覆う構造物が、前記突起よりも下方に存在することにより実現されることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、最下階用に限定されない樹脂製継手において、前記構造物は、前記本体部に設けられた庇であるように構成することができる。
さらに好ましくは、最下階用に限定されない樹脂製継手において、前記樹脂製継手は、前記本体部とは別部材であって、前記本体部の横枝管接続部に接続される枝管受口をさらに含み、前記構造物は、前記枝管受口に設けられた庇であるように構成することができる。
さらに好ましくは、最下階用に限定されない樹脂製継手において、前記樹脂製継手は、前記本体部とは別部材であって、前記本体部の横枝管接続部に接続される枝管受口と、前記本体部と前記枝管受口との間に設置される接続部材とをさらに含み、前記構造物は、前記接続部材に設けられた庇である
ように構成することができる。
【0012】
さらに好ましくは、最下階用に限定されない樹脂製継手において、前記樹脂製継手は、前記本体部とは別部材であって、前記本体部の横枝管接続部に接続される枝管受口をさらに含み、前記枝管受口には横枝管が接続され、
前記構造物は、前記横枝管に設けられた庇であるように構成することができる。
さらに好ましくは、最下階用に限定されない樹脂製継手において、前記樹脂製継手は、前記本体部とは別部材であって、前記本体部の横枝管接続部に接続される枝管受口をさらに含み、前記枝管受口には横枝管が接続され、前記構造物は、前記枝管受口と前記横枝管との間に設置される接続部材に設けられた庇であるように構成することができる。
【0013】
さらに好ましくは、最下階用に限定されない樹脂製継手において、前記樹脂製継手は、前記本体部とは別部材であって、前記本体部の横枝管接続部に接続される枝管受口、および、前記本体部の上方立て管接続部に接続される立て管受口を前記上方部材としてさらに含み、前記立て管受口は、略円筒形状を備えるとともに、内周面に前記突起が設けられ、前記構造物は、前記立て管受口における前記略円筒形状の下方が前記本体部まで伸長された管壁であって、前記樹脂製継手の側面視において、前記枝管受口の管芯を上下方向の基準として、前記突起の上端は上側に、前記管壁の下端は下側に、位置するように構成することができる。
【0014】
さらに好ましくは、最下階用に限定されない樹脂製継手において、前記管壁は、前記略円筒形状の周方向における前記枝管受口が存在する部分についての前記略円筒形状の下方が延長され、前記立て管受口の管芯に垂直な断面が円弧状であるように構成することができる。
さらに好ましくは、最下階用樹脂製継手において、前記横枝管接続部より上流側において、前記上立て管の内径よりも前記突起が出っ張るとともに、前記流入防止機構は、前記樹脂製継手の側面視において、前記横枝管接続部の下面から140mm以上の上側に前記突起を存在させることにより実現されるように構成することができる。
【0015】
さらに好ましくは、最下階用樹脂製継手において、前記樹脂製継手は、前記本体部とは別部材であって、前記本体部の上方立て管接続部に接続される立て管受口を前記上方部材としてさらに含み、前記突起は、前記立て管受口に設けられるように構成することができる。
さらに好ましくは、最下階用樹脂製継手において、前記樹脂製継手は、前記本体部とは別部材であって、前記本体部の上方立て管接続部に接続される立て管受口と、前記本体部と前記立て管受口との間に設置される前記上方部材としての接続部材とをさらに含み、前記突起は、前記接続部材に設けられるように構成することができる。
【0016】
本発明のさらに別の局面に係る排水配管構造は、上述したいずれかの樹脂製継手を最下階または最下階以外の床スラブに施工したことを特徴とする。
さらに好ましくは、排水配管構造において、前記下方配管接続部に、熱膨張性耐火材料を含む樹脂組成物を成形することによって作製された配管部材が接続されたように構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、排水流により形成される筒状(筒型)の水膜を突起により分断しつつ、上階からの排水がその突起にあたり横枝管に入る可能性を低減させることのできる樹脂製継手および排水配管構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る樹脂製継手100(100A)の二面図(上面図および側面を示す半断面図)である。
図2】本発明の実施の形態に係る樹脂製継手100(100B)の二面図(上面図および側面を示す半断面図)である。
図3】本発明の実施の形態に係る樹脂製継手100(100X)の二面図(上面図および側面を示す半断面図)である。
図4】本発明の実施の形態に係る樹脂製継手100(100B)における突起150が存在しない領域を説明するための図である。
図5】本発明の実施の形態に係る樹脂製継手100(100C)の二面図(上面図および側面を示す半断面図)である。
図6】本発明の実施の形態に係る樹脂製継手100(100E)の二面図(上面図および側面を示す半断面図)である。
図7】本発明の実施の形態に係る樹脂製継手100(100D)の二面図(上面図および側面を示す半断面図)である。
図8】本発明の実施の形態に係る樹脂製継手100(100F1)の二面図(上面図および側面を示す半断面図)である。
図9】本発明の実施の形態に係る樹脂製継手100(100F2)の二面図(上面図および側面を示す半断面図)である。
図10】本発明の実施の形態に係る樹脂製継手100(100I)の二面図(上面図および側面を示す半断面図)である。
図11】本発明の実施の形態に係る樹脂製継手100(100H)の二面図(上面図および側面を示す半断面図)である。
図12】本発明の実施の形態に係る樹脂製継手100(100G)の二面図(上面図および側面を示す半断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下において、本発明の実施の形態に係る樹脂製継手100について、図1図12を参照して詳しく説明する。なお、本発明の実施の形態に係る排水配管構造は、これらの図1図12に示す樹脂製継手100を最下階または最下階以外の床スラブに施工したものであって、床スラブの位置に熱膨張材110が存在するように施工される。なお、以下の説明において、外周面と外表面と外側、外層側と外周側と外側、内層側と内周側と内側、熱膨張材と熱膨張性耐火材、とは、明確に区別して記載していない場合がある。また、断面図においてハッチングの種類により異なる部材を明確に区別していない場合がある。さらに、本実施の形態に係る樹脂製継手100は、符号100にアルファベットまたはアルファベット+数字を付与することにより、(厳密には)異なる構造を備える樹脂製継手を区別している。ここで、異なる構造を備えるものの同じ機能を備える場合には、単に樹脂製継手100と記載する。
【0020】
<樹脂製継手100(最下階用に限定される)>
図1図4および図11図12を参照して、最下階用に限定される樹脂製継手100について詳しく説明する。
これらの図に示すように、この樹脂製継手100は、上流側の上立て管200に接続可能な上方立て管接続部102を上端に、横枝管400に接続可能な横枝管接続部104を側面に、下流側の配管部材(一例として図示した下立て管300、脚部継手に接続される接続部材302)に接続可能な下方配管接続部103を下端に、それぞれ有する本体部を含む最下階用樹脂製継手である。この樹脂製継手100は、横枝管接続部104よりも上流側において、本体部の内周面、または、上方立て管接続部102に接続される上方部材(図11に示す立て管受口120H、図12に示す立て管アダプタ122等)の内周面に1以上の水膜切断用の突起150が形成され、樹脂製継手100は、立て管を流下する排水が突起150にあたったことに起因する横枝管400への排水の流入を防止する(詳しくは後述する)流入防止機構を備える。なお、上方立て管接続部102には立て管受口120が設けられて立て管受口120を介して上方立て管接続部102に立て管200が接続され、横枝管接続部104には枝管受口140が設けられて枝管受口140を介して横枝管接続部104に横枝管400が接続される。また、これら以外に、図11に示す接続アダプタ121、図9に示すソケット144が樹脂製継手100を構成する部材として含まれる場合がある。
【0021】
ここで、下流側の配管部材は、下立て管300も、脚部継手に接続される接続部材302も、脚部継手に接続される延長管等も含み、図3に示すように下方配管接続部103が受口である場合も含む。
以下において、最下階用樹脂製継手における流入防止機構について説明する。
図1に示すように、この流入防止機構は、一例ではあるが、横枝管接続部104より上流側において、上立て管200の内径よりも突起150が出っ張っていないことにより実現されるものである。すなわち、図1に示す樹脂製継手100Aにおいては、図1(A)に点線(隠れ線)で示すように、本体部の内周面に60度間隔で6個の突起150を備える。
【0022】
この図1に示すように、上立て管200の内径よりも突起150が出っ張っていないために、上階からの排水がその突起150にあたり横枝管400に入る可能性を低減させることができる。なお、上立て管200の内径よりも突起150が出っ張っていなくても、たとえば立て管200の下端から突起150の位置までにある程度の距離が存在するとその距離において排水は立て管200の内径よりも広がりながら流下するために、上立て管200の内径よりも突起150が出っ張っていなくても水膜を分断することができる可能性がある。
【0023】
図2に示すように、一例ではあるが、この樹脂製継手100において横枝管接続部104より上流側において、上立て管200の内径よりも突起150が出っ張るとともに、流入防止機構は、図2(A)に示す樹脂製継手100(ここでは樹脂製継手100B)の上面視において、横枝管接続部104に接続される横枝管400と対面する領域に突起150が存在しないことにより実現されるものである。なお、図2(A)においては、3個の突起150としているが、これに限定されるものではなく、後述する突起150が存在しない(存在してはいけない)領域(逆に言えば突起150が存在しても良い領域)を満足すれば、突起150の個数および形状は限定されるものではない。
【0024】
さらに、図3に示すように、この流入防止機構は、一例ではあるが、横枝管接続部104より上流側において、上立て管200の内径よりも突起152が出っ張るとともに、流入防止機構は、図3(A)に示す樹脂製継手100(ここでは樹脂製継手100X)の上面視において、横枝管接続部104に接続される横枝管400と対面する領域に突起152が存在しないことにより実現されるものである。なお、図3(A)および図3(C)においては、1つの突起152としているが、これに限定されるものではなく、後述する突起152が存在しない(存在してはいけない)領域(逆に言えば突起152が存在しても良い領域)を満足すれば、突起152の個数および形状は限定されるものではない。
【0025】
これらの図2および図3に示す流入防止機構における突起150または突起152が存在しない領域について、図2の樹脂製継手100(ここでは樹脂製継手100B)を代表させて図4を参照して説明する。
まず、横枝管400の管芯を水平方向または垂直方向とした樹脂製継手100Bの上面視(この上面視を図4(A)に示す)において、上方立て管接続部102に接続される上立て管200の断面を、上立て管200の管芯を中心として90度間隔で横枝管400の管芯の延長線を線対称軸として4分割する。このように4分割した領域を、上左領域UL、上右領域UR、下左領域DL、下右領域DRとして図4(A)に示す。
【0026】
次に、図4(B)に示すように、4分割した上左領域UL、上右領域UR、下左領域DL、下右領域DRを、45度回転させた扇型形状の4領域とする。このように45度回転させた領域を、上領域U、下領域D、左領域L、右領域Rとして図4(B)に示す。
そして、上述した横枝管接続部104に接続される横枝管400と対面する領域に突起150が存在しないとは、上立て管200の管芯まで延長した延長線(横枝管400の管芯の延長線)を含む領域に対して180度回転させた領域に突起150が存在しないことであることについて説明する。図4(C)に示すように、上立て管200の管芯まで延長した横枝管400の管芯の延長線を含む左領域L、右領域R、下領域Dに対して180度回転させた、右領域R、左領域L、上領域Uに突起150が存在しないで、下領域Dのみに突起150が存在する。
【0027】
すなわち、樹脂製継手100に横枝管400が3本接続されていると3つの領域に突起150が存在しないで(存在させてはならなく)、1つの領域のみに突起150が存在しても良く、樹脂製継手100に横枝管400が2本接続されていると2つの領域に突起150が存在しないで(存在させてはならなく)、2つの領域に突起150が存在しても良く、樹脂製継手100に横枝管400が1本接続されていると1つの領域に突起150が存在しないで(存在させてはならなく)、3つの領域に突起150が存在しても良い。
【0028】
これらの図2図4に示すように、このように、上立て管200の内径よりも突起150が出っ張っているために水膜を分断することができるとともに、その突起150は横枝管接続部104に接続される横枝管400と対面する領域に存在しない。このため、上立て管200の内径よりも突起150が出っ張っていて上階からの排水がその突起にあたっても、その対面には横枝管が存在しないために上階からの排水が横枝管に入る可能性を低減させることができる。
【0029】
図11および図12に示すように、一例ではあるが、この樹脂製継手において横枝管接続部104より上流側において、上立て管200の内径よりも突起150が出っ張るとともに、流入防止機構は、図11(B)および図12(B)に示す樹脂製継手100の側面視において、横枝管接続部104の下面(枝管受口140の下面でも略同義である)からL以上の上側に突起150を存在させることにより実現されるものである。ここでは、一例ではあるが、上立て管200の呼び径を100Aとして、下立て管300の呼び径を125Aとして、横枝管400の最大呼び径を100Aとして、Lは140mmである。より具体的には以下のような構成を備える。
【0030】
図11に示すように、樹脂製継手100(ここでは樹脂製継手100H)は、本体部とは別部材であって、本体部の上方立て管接続部102に接続される立て管受口120Hを上方部材としてさらに含み、突起150は、この立て管受口120Hに設けられる。このときにも、この突起150は、横枝管接続部104の下面からL以上の上側に存在するものである。また、図11(A)に示すように、樹脂製継手100Hにおいては、限定されるものではないが、立て管受口120Hの内周面に60度間隔で6個の突起150を備える。
【0031】
なお、図11(C)に示すように、この樹脂製継手100Hの本体部の上方立て管接続部102には、接続アダプタ121を介して立て管受口120Hが接続されているが、図11(D)に示すように、このような接続アダプタ121を用いることなく、樹脂製継手100Hの本体部の上方立て管接続部102に立て管受口120H2が接続されていても構わない。ただし、立て管受口120Hも立て管受口120H2もその内周に設けられる突起150は横枝管接続部104の下面からL以上の上側に存在する。
【0032】
図12に示すように、樹脂製継手100(ここでは樹脂製継手100G)は、本体部とは別部材であって、本体部の上方立て管接続部102に接続される立て管受口120と、本体部と立て管受口120との間に設置される上方部材としての接続部材である立て管アダプタ122とをさらに含み、突起150は、この接続部材である立て管アダプタ122に設けられる。このときにも、この突起150は、横枝管接続部104の下面からL以上の上側に存在するものである。また、図12(A)に示すように、樹脂製継手100Gにおいては、限定されるものではないが、立て管アダプタ122の内周面に60度間隔で6個の突起150を備える。
【0033】
これらの図11および図12に示すように、上立て管200の内径よりも突起150が出っ張っているために水膜を分断することができるとともに、その突起150は横枝管400とL以上の距離(より正確には突起150は横枝管接続部104の下面からL以上の上側に設けられる)を備えるために、上立て管200の内径よりも突起150が出っ張っていて上階からの排水がその突起にあたっても横枝管400までの距離があるために、上階からの排水が横枝管に入る可能性を低減させることができる。
【0034】
<樹脂製継手100(最下階用に限定されない)>
図5図10を参照して、最下階用に限定されない樹脂製継手100について詳しく説明する。
これらの図に示すように、この樹脂製継手100は、上流側の上立て管200に接続可能な上方立て管接続部102を上端に、横枝管400に接続可能な横枝管接続部104を側面に、下流側の配管部材(一例として上述した下立て管300、脚部継手に接続される接続部材302)に接続可能な下方配管接続部103を下端に、それぞれ有する本体部を含む樹脂製継手である。この樹脂製継手100は、横枝管接続部104よりも上流側において、(図5図9に示すように)本体部の内周面、または、上方立て管接続部102に接続される上方部材(図10に示す下端が延長された立て管受口120I等)の内周面に1以上の水膜切断用の突起150が形成され、樹脂製継手100は、立て管を流下する排水が突起150にあたったことに起因する横枝管400への排水の流入を防止する(詳しくは後述する)流入防止機構を備える。なお、上方立て管接続部102には立て管受口120が設けられて立て管受口120を介して上方立て管接続部102に立て管200が接続され、横枝管接続部104には枝管受口140が設けられて枝管受口140を介して横枝管接続部104に横枝管400が接続される。また、これら以外に、図7に示す環状アダプタ142、図9に示すソケット144が樹脂製継手100を構成する部材として含まれる場合がある。
【0035】
ここで、下流側の配管部材は、下立て管300も、脚部継手に接続される接続部材302も、脚部継手に接続される延長管等も含み、図3に示すように下方配管接続部103が受口である場合も含む点は上述した通りである。
以下において、最下階用に限定されない樹脂製継手100における流入防止機構について説明する。
図5図9に示すように、この流入防止機構は、一例ではあるが、この樹脂製継手100において横枝管接続部104より上流側において、上立て管200の内径よりも突起150が出っ張るとともに、流入防止機構は、樹脂製継手100の側面視において、横枝管接続部104に接続される横枝管400の上方側を覆う構造物(詳しくは後述する庇105C等、下端が延長された立て管受口120I)が、突起150よりも下方に存在することにより実現されるものである。
【0036】
このように、上立て管200の内径よりも突起150が出っ張っているために水膜を分断することができるとともに、横枝管接続部104に接続される横枝管400の上方側を覆う構造物(詳しくは後述する庇105C等、延長された立て管受口120I)が、突起150よりも下方に存在するために、上立て管200の内径よりも突起150が出っ張っていて上階からの排水がその突起にあたっても横枝管400の上方側を覆う構造物が存在するために上階からの排水が横枝管に入る可能性を低減させることができる。
図5に示すように、この構造物は、一例ではあるが、樹脂製継手100の本体部に設けられた庇105Cである。
【0037】
また、図6に示すように、樹脂製継手100(ここでは樹脂製継手100E)は、本体部とは別部材であって、本体部の横枝管接続部104に接続される枝管受口140Eをさらに含み、この構造物は、一例ではあるが、枝管受口140Eに設けられた庇105Eである。
また、図7に示すように、樹脂製継手100(ここでは樹脂製継手100D)は、本体部とは別部材であって、本体部の横枝管接続部104に接続される枝管受口140と本体部と枝管受口140との間に設置される接続部材としての環状アダプタ142とをさらに含み、この構造物は、一例ではあるが、接続部材としての環状アダプタ142に設けられた庇105Dである。
【0038】
また、図8に示すように、樹脂製継手100(ここでは樹脂製継手100F1)は、本体部とは別部材であって、本体部の横枝管接続部104に接続される枝管受口140をさらに含み、枝管受口140には横枝管402が接続され、この構造物は、一例ではあるが、横枝管402に設けられた庇105F1である。
また、図9に示すように、樹脂製継手100(ここでは樹脂製継手100F2)は、本体部とは別部材であって、本体部の横枝管接続部104に接続される枝管受口140をさらに含み、枝管受口140には横枝管400が接続され、この構造物は、一例ではあるが、枝管受口140と横枝管400との間に設置される接続部材としてのソケット144に設けられた庇105F2である。
【0039】
これらの図5図9に示すように、上立て管200の内径よりも突起150が出っ張っているために水膜を分断することができるとともに、横枝管接続部104に接続される横枝管400の上方側を覆う構造物(上述した庇105C、庇105E、庇105D、庇105F1、庇105F2であってこれらを纏めて庇105と記載する場合がある)が、突起150よりも下方に存在するために、上立て管200の内径よりも突起150が出っ張っていて上階からの排水がその突起にあたっても横枝管400の上方側を覆う構造物としての庇105が存在するために上階からの排水が横枝管に入る可能性を低減させることができる。なお、図5図9に示す庇105と横枝管400内面下端との距離Φdは、横枝管400の最大呼び径を100Aとしてその略半分以上の44mm以上が、上階からの排水が横枝管に入る可能性を低減させることができて、かつ、横枝管から樹脂製継手へ抵抗なく合流できる点で好ましい。なお、この距離Φdについては、以下に示す事項も44mm以上と設定している理由でもある。樹脂製継手100の横枝管接続部104に接続される横枝管400は、便器に接続される場合があり、この便器はJIS A 5207(8.2.1.2 排出性能試験 d)試験操作 1)ボールパス性能試験)に規定される通りΦ44mm以上の球が便器外に排出される(問題なく通過可能な)開口が必要である。この規定を考慮して、庇105と横枝管400内面下端との距離Φdは44mm以上と設定している。また、この庇105の開放端側形状は、上階からの排水が横枝管に入る可能性を低減させることができて、かつ、横枝管から樹脂製継手へ抵抗なく合流できる形状であれば(さらに横枝管400は、便器に接続される場合を考慮すれば上記のJISに規定するボールパス性能試験を満足できれば)特に限定されるものではない。
【0040】
次に、これらの図5図9に示した庇105とは異なる、横枝管接続部104に接続される横枝管400の上方側を覆う構造物について、図10を参照して詳しく説明する。なお、この図10に示す樹脂製継手100(詳しくは樹脂製継手100I)は、図5図9に示す樹脂製継手100と同じく最下階用に限定されない。
図10に示すように、樹脂製継手100(ここでは樹脂製継手100I)は、本体部とは別部材であって、本体部の横枝管接続部104に接続される枝管受口140、および、本体部の上方立て管接続部102に接続される立て管受口120Iを上方部材としてさらに含み、この立て管受口120Iは、略円筒形状を備えるとともに、内周面に(上立て管200の内径よりも突起150が出っ張る)水膜切断用の突起150が設けられている。そして、この樹脂製継手100Iが備える流入防止機構における構造物は、一例ではあるが、立て管受口120Iにおける略円筒形状の下方が本体部まで伸長された管壁105Iであって、図10(B)に示すように、樹脂製継手100Iの側面視において、枝管受口140の管芯を上下方向の基準として、突起150の上端は上側に、管壁105Iの下端は下側に、位置するものである。なお、上側および下側を、図10(B)に白抜き矢示で示す。
【0041】
また、図10に示すように、この管壁105Iは、立て管受口120Iの略円筒形状の周方向における枝管受口140が存在する部分についての立て管受口120Iの略円筒形状の下方が延長され、立て管受口120Iの管芯に垂直な断面が円弧状である。すなわち、枝管受口140が存在する部分にのみ(たとえば立て管受口120Iの管芯に垂直な断面が中心角90度の円弧状の)構造物としての管壁105Iが、立て管受口120Iの略円筒形状の下方が延長されて実現されている。なお、立て管受口120Iの管芯に垂直な断面が円弧状であることに限定されず、全円状であっても構わない。すなわち、上立て管200の管芯を中心として全周360度に亘り構造物としての管壁105Iが存在しても構わない。
【0042】
この図10に示すように、上立て管200の内径よりも突起150が出っ張っているために水膜を分断することができるとともに、横枝管接続部104に接続される横枝管400の上方側を覆う構造物(上述した立て管受口120Iの略円筒形状の下方が延長されて形成された管壁105I)が、突起150よりも下方に存在するために、上立て管200の内径よりも突起150が出っ張っていて上階からの排水がその突起にあたっても横枝管400の上方側を覆う構造物としての庇が存在するために上階からの排水が横枝管に入る可能性を低減させることができる。
【0043】
以上のようにして、本実施の形態に係る樹脂製継手100および樹脂製継手100を最下階または最下階以外の床スラブに施工した排水配管構造によると、排水流により形成される筒状(筒型)の水膜を突起により分断しつつ、上階からの排水がその突起にあたり横枝管に入る可能性を低減させることができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0044】
たとえば、このような変更として、下方配管接続部103に、熱膨張性耐火材料を含む樹脂組成物を成形することによって作製された(下流側の)配管部材が接続された排水配管構造であっても構わない。この下流側の配管部材には、下立て管300も、脚部継手に接続される接続部材302も、脚部継手に接続される延長管等も含み、図3に示すように下方配管接続部103が受口である場合も含む点は上述した通りである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、建築物の床スラブを貫通して設けられる樹脂製継手に好ましく、排水流により形成される筒状(筒型)の水膜を突起により分断しつつ、上階からの排水がその突起にあたり横枝管に入る可能性を低減させることのできる点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0046】
100 樹脂製継手
102 上方立て管接続部
103 下方配管接続部
104 横枝管接続部
105 庇
120 立て管受口1
140 枝管受口
200 上立て管
300 下立て管
400 横枝管
【要約】
【課題】排水流により形成される筒状(筒型)の水膜を突起により分断しつつ、上階からの排水がその突起にあたり横枝管に入る可能性を低減させる樹脂製継手を提供する。
【解決手段】樹脂製継手100は、上流側の上立て管200に接続可能な上方立て管接続部102を上端に、横枝管400に接続可能な横枝管接続部104を側面に、下流側の配管部材に接続可能な下方配管接続部103を下端に、それぞれ有する本体部を含む。この樹脂製継手100は、横枝管接続部104よりも上流側において、上方立て管接続部102に接続される立て管受口120Iの内周面に60度間隔で6個の水膜切断用の突起150が形成され、樹脂製継手100は、突起150による横枝管400への排水の流入を防止する流入防止機構として、立て管受口120Iの略円筒形状の下方が延長されて形成された管壁105Iを備える。
【選択図】図10
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12