(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/34 20170101AFI20221206BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221206BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221206BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221206BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20221206BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20221206BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20221206BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20221206BHJP
A61K 31/5415 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A61K47/34
A61K45/00
A61K9/08
A61K9/14
A61K31/519
A61K31/445
A61K31/7048
A61K38/12
A61K31/5415
(21)【出願番号】P 2020503001
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(86)【国際出願番号】 EP2018069439
(87)【国際公開番号】W WO2019016233
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-06-25
(32)【優先日】2017-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520017823
【氏名又は名称】メディンセル
【氏名又は名称原語表記】MEDINCELL
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100214259
【氏名又は名称】山本 睦也
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ロベルジュ
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー レッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-マヌエル クロス
(72)【発明者】
【氏名】ミリアム アッバーシ
(72)【発明者】
【氏名】アドルフォ ロペス-ノリエガ
(72)【発明者】
【氏名】リー ペブル
(72)【発明者】
【氏名】オードリー ペティット
(72)【発明者】
【氏名】ジュリエット セリンドゥー
【審査官】松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-502613(JP,A)
【文献】特表2015-522001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む生分解性の薬物デリバリー組成物:
(i)少なくとも3種の異なったブロック・コポリマーの混合物、ここで各ブロック・コポリマーは以下である:
(a)次式を有する生分解性のトリブロック・コポリマー:
A
v-B
w-A
x
式中、Aはポリエステルである、Bはポリエチレン・グリコールである、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数である、並びにv=x若しくはv≠xである;又は
(b)次式を有する生分解性のジブロック・コポリマー:
C
y-A
z
式中、Aはポリエステルである、Cはエンドキャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコールである、y及びzは繰り返し単位の数である、yは2~250の範囲である、並びにzは1~3,000の範囲である;並びに
ここで、前記混合物は、少なくとも1種の(a)及び少なくとも1種の(b)を含み;並びに(a)と(b)との間の重量比は1:19~5:1であり;並びに
(ii)少なくとも1種の薬学的な活性成分。
【請求項2】
(a)又は(b)に定義されるコポリマーを含む、請求項1に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物、ここで、前記ポリエステルAが、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレン・アジピン酸塩、ポリヒドロキシアルカノエート、及びそれらの混合物の群から選択され、任意選択的に前記エンドキャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコールがメトキシ・ポリエチレン・グリコールである。
【請求項3】
少なくとも1種の有機溶媒を更に含む、請求項1又は2に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項4】
少なくとも1種の生分解性のトリブロック・コポリマー(a)について、AがPLAである、請求項
1~3の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項5】
少なくとも1種の生分解性のジブロック・コポリマー(b)について、AがPLAである、請求項
1~4の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項6】
請求項
1~5の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物であって、前記組成物が更に以下を含む:
(a)次式を有する生分解性のトリブロック・コポリマー:
PLA
v-PEG
w-PLA
x
式中、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数である、並びにv=x若しくはv≠xである;並びに/又は
(b)次式を有する生分解性のジブロック・コポリマー:
mPEG
y-PLA
z
式中、y及びzは繰り返し単位の数である、yは2~250の範囲である、並びにzは1~3,000の範囲である、
生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項7】
以下を含む、請求項1~6の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物:
(a)次式を有する生分解性のトリブロック・コポリマー:
PLA
v-PEG
w-PLA
x
式中、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数である、並びにv=x若しくはv≠xである;並びに
(b)次式をそれぞれが有する2、3又は4種の生分解性のジブロック・コポリマー:
mPEG
y-PLA
z
式中、y及びzは繰り返し単位の数である、yは2~250の範囲である、並びにzは1~3,000の範囲である;並びに
ここで式中、(a)と(b)との重量比は1:19~5:1である。
【請求項8】
以下を含む、請求項1~7の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物:
(a)次式をそれぞれが有する2種の異なった生分解性のトリブロック・コポリマー:
PLA
v-PEG
w-PLA
x
式中、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数である、並びにv=x若しくはv≠xである;並びに
(b)次式をそれぞれが有する1、2、3又は4種の生分解性のジブロック・コポリマー:
mPEG
y-PLA
z
式中、y及びzは繰り返し単位の数である、yは2~250の範囲である、並びにzは1~3,000の範囲である;並びに
ここで式中、(a)と(b)との重量比は1:19~5:1である。
【請求項9】
前記組成物が、注射可能な液体である、及び体内に注射したときにデポ(depot)を形成するのに適している、又は小さな固形粒子若しくは棒状のインプラント(rod implant)若しくは空間的製剤(spatial formulation)である、請求項
1~8の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項10】
前記ポリエチレン・グリコール鎖の質量が、180 g/mol~12 kg/mol又は194 g/mol~12 kg/mol又は200 g/mol~12 kg/molの範囲である、及び前記エンドキャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコール鎖の分子量が100 g/mol~2 kg/molの範囲である、請求項
1~9の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項11】
前記ポリエチレン・グリコール鎖の質量が、100 g/mol~4 kg/molの範囲である、及び前記エンドキャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコール鎖の分子量が100 g/mol~2 kg/molの範囲である、請求項1~9の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項12】
前記ポリエチレン・グリコール鎖の質量が、180 g/mol~12 kg/mol又は194 g/mol~12 kg/mol又は200 g/mol~12 kg/molの範囲である、及び前記エンドキャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコール鎖の分子量が164 g/mol~10 kg/molの範囲である、請求項1~9の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項13】
前記ポリエチレン・グリコール鎖の質量が、100 g/mol~4 kg/molの範囲である、及び前記エンドキャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコール鎖の分子量が164 g/mol~10 kg/molの範囲である、請求項1~9の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項14】
薬学的に許容可能な担体を更に含み、任意選択的に、ここで前記薬学的に許容可能な担体が溶媒である、請求項
1~13の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項15】
前記薬学的な活性成分が疎水性である、請求項
1~14の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項16】
前記薬学的な活性成分がリスペリドン、ブピバカイン、イベルメクチン、オクトレオチド、メロキシカム又はそれらの組み合わせである、請求項
1~15の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1種の薬学的な活性成分が、全組成物の0.05%~60%(w/w%)、任意選択的に0.05%~40%、任意選択的に0.05%~30%、任意選択的に0.05%~10%、任意選択的に0.05%~7%、任意選択的に0.05%~2%の量で存在する、請求項
1~16の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項18】
注射可能な液体である、及び前記少なくとも1種の薬学的な活性成分が、0.05%~60%(w/w%)の量で存在する、請求項
17に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項19】
棒状のインプラント(rod implant)である、及び前記少なくとも1種の薬学的な活性成分が50%~80%(w/w%)の量で存在する、請求項
1から16に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項20】
前記
少なくとも3種の異なったブロック・コポリマー
の混合物が全組成物の2%~60%(w/w%)、任意選択的に10%~50%、任意選択的に20%~40%、任意選択的に20%~35%、任意選択的に30%~50%の量で存在する、請求項
1~19の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項21】
前記1種以上のトリブロック・コポリマーが、全組成物の1%~50%(w/w%)、任意選択的に5%~40%の量で存在する、請求項
1~20の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項22】
前記1種以上のジブロック・コポリマーが、全組成物の1%~57%(w/w%)、2.5%~45%の量で存在する、請求項
1~21の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項23】
前記生分解性の薬物デリバリー組成物中において、(a)の生分解性のトリブロック・コポリマーの合計と(b)の生分解性のジブロック・コポリマーの合計に関する重量比が1:5~3:1である、請求項
1~22の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項24】
前記組成物中のポリエステル繰り返し単位とエチレン・オキシドのモル比が、トリブロック中で0.5~22.3、任意選択的に0.5~10、任意選択的に0.5~3.5である、及びジブロック中で0.8~15、任意選択的に1~10である、請求項
1~23の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項25】
請求項
1~24に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物であって、前記組成物は、請求項
1~24の何れか一項に定義された3種の異なるブロック・コポリマー、又は請求項
1~24の何れか一項に定義された4種の異なるブロック・コポリマー、又は請求項
1~24の何れか一項に定義された5種の異なるブロック・コポリマー、又は請求項
1~24の何れか一項に定義された6種の異なるブロック・コポリマー、を含む、生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項26】
請求項
1~25の何れか一項に定義された1種の生分解性のトリブロック・コポリマー、又は請求項
1~25の何れか一項に定義された2種の異なる生分解性のトリブロック・コポリマー、又は請求項
1~25の何れか一項に定義された3種の異なる生分解性のトリブロック・コポリマー、又は請求項
1~25の何れか一項に定義された4種の異なる生分解性のトリブロック・コポリマー、を含む、請求項
1~25の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項27】
請求項
1~26の何れか一項に定義された1種の生分解性のジブロック・コポリマー、又は請求項
1~26の何れか一項に定義された2種の異なる生分解性のジブロック・コポリマー、又は請求項
1~26の何れか一項に定義された3種の異なる生分解性のジブロック・コポリマー、又は請求項
1~26の何れか一項に定義された4種の異なる生分解性のジブロック・コポリマー、を含む、請求項
1~26の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項28】
全組成物の1%~50%(w/w%)の量で存在するトリブロック・コポリマー、全組成物の1%~57%(w/w%)の量で存在するジブロック・コポリマー、及び各々が全組成物の0.2~20、任意選択的に0.5~20(w/w%)の量で存在する1種以上の更なるジブロック又はトリブロック・コポリマーとを含む、請求項
1~27の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項29】
本願明細書の実施例3、表1~6に定義された
組成物番号16, 28, 29, 290, 45, 46, 49, 64, 115, 119, 124, 126, 163, 又は 199に係る組成物である、請求項
1~28の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項30】
少なくとも1種の活性成分の放出を変調させることができる、請求項
1~29の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項31】
少なくとも1日間、任意選択的に少なくとも3日間、任意選択的に少なくとも7日間、任意選択的に少なくとも30日間、任意選択的に少なくとも90日間、任意選択的に少なくとも1年間、対象に活性成分を、任意選択的に治療有効量の活性成分を、デリバリーするのに適している、請求項
1~30の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項32】
非経口投与に適している、請求項
1~31の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項33】
前記ブロック・コポリマーが水溶液に実質的に不溶であり、任意選択的に、前記ブロック・コポリマーが水溶液中で5%未満、任意選択的に1%(w/w)未満の溶解度を有する、請求項
1~32の何れか一項に記載の生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項34】
医薬で使用するための、請求項1~33の何れか一項に定義された生分解性の薬物デリバリー組成物。
【請求項35】
請求項34に記載の、医薬で使用するための、生分解性の薬物デリバリー組成物、ここで、前記使用は、少なくとも1種の活性成分が放出される動態を変調させる
こと、
を含む、ここで、前記生分解性の薬物デリバリー組成物から前記少なくとも1種の活性成分が放出される動態が、前記生分解性の薬物デリバリー組成物の1種以上の物理的パラメータに影響を与えることなく、変調される。
【請求項36】
前記1種以上の物理的パラメータが、前記生分解性の薬物デリバリー組成物を注射する前の注射可能性及び粘性、並びに前記生分解性の薬物デリバリー組成物を注射した後のデポ(depot)の頑健性である、請求項
35に記載の
、医薬で使用するための、生分解性の薬物デリバリー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル及びポリ(エチレン・オキシド)ブロックで構成されるトリブロック及びジブロック・コポリマー(2つのポリエステル・ブロックの間に1つのポリ(エチレン・オキシド)ブロックを含むトリブロック・コポリマー、及びポリエステル・ブロック及び1種のエンド-キャップされたポリ(エチレン・グリコール)を含むジブロック・コポリマー)の中から選択される、少なくとも3種のブロック・コポリマーの混合物、並びに少なくとも1種の薬学的な活性成分、を含む生分解性の薬物デリバリー組成物に関する。この製剤中のジブロック・コポリマーに対するトリブロック・コポリマーの重量比は、少なくとも1種の活性成分に関する薬物放出動態を変調させるために、1:19~5:1である。ブロック・コポリマーに組み込まれる場合、ポリ(エチレン・オキシド)又はポリオキシエチレン(PEO)は、しばしばポリ(エチレン・グリコール) (PEG)とも呼ばれ、この用語は本発明の目的のために互換的に使用することがある。
【背景技術】
【0002】
持続的な薬物デリバリーの分野において、ジブロック又はトリブロック・コポリマーに基づくシステムは、様々な薬物をデリバリーするために使用されてきており、一般に、疎水性薬物であるか親水性薬物であるかにかかわらず、特定の薬物をデリバリーするために製剤化される。前記薬物の物理化学的特性によって、薬物製剤は、ポリマー濃度、利用するポリマーの種類、前記ポリマーの分子量及び前記製剤に使用する溶媒を異にする。
【0003】
又、薬物がデリバリーされる環境の種類も、薬物デリバリー・システムを製剤化する際における、重要な考慮事項である。従って、温度感受性ポリマー、相感受性ポリマー、pH感受性ポリマー及び光感受性ポリマーを用いて調製される薬物デリバリー組成物が存在する。例えば、K. Al-Tahami and J. Singh “Smart Polymer Based Delivery Systems for Peptide and Proteins,” Recent Patents on Drug Delivery & Formulation, 1: pages: 65-71 Bentham Science Publishers, LTD. 2007を参照されたい。
【0004】
米国特許第6,592,899号は、疎水性薬物の親水性環境への溶解性を高めるための、ブロック・コポリマーと組み合わせたPLA/PLGAオリゴマーを記載している。
【0005】
米国特許第6,541,033号は、生物学的活性薬剤を持続的にデリバリーするためのPLA又はPLGA及びPEGのブロック・コポリマーからなる、熱感受性、生分解性のハイドロゲルに基づく徐放性医薬組成物を記載している。
【0006】
トリブロック・コポリマーを含むハイドロゲルは、米国特許第6,350,812号に記載されている。
【0007】
米国特許第9,023,897 B2号は、トリブロック・コポリマー及びジブロック・コポリマー及び薬学的な活性成分を含む、生分解性の薬物組成物を記載する。
【0008】
しかしながら、少なくとも1種の活性成分の放出速度を変調させることに関して、改良された特性を有するジブロック及びトリブロック・コポリマーを含む、生分解性の薬物デリバリー組成物を提供する必要性が依然として存在する。例えば、ジブロック及びトリブロック・コポリマーを含む既知の薬物デリバリー組成物と比較して、活性成分の放出速度が増加した組成物を提供することが望ましい場合がある。前記組成物によって、その製剤の物理的パラメータに悪影響を与えることなく、少なくとも1種の活性成分の放出を、ある時間期間にわたって、コントロールすることが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
更に、本発明の生分解性の薬物デリバリー組成物を、薬物の初期バースト放出が減少し、一次又はゼロ次又は疑似的ゼロ次動態に従って、経時的に前記薬物の放出速度が変調される、長時間作用型製剤であるように製剤化することができる。この現象は、薬物放出曲線が平坦化することで、例示される。
【0010】
更に、前記生分解性の薬物デリバリー組成物を、この組成物の注射可能性に悪影響を与えることなく、変調させることができる。
【0011】
従って、本発明の目的の1つは、注射の前及び/又は後で、製剤の物理的パラメータに悪影響を与えることなく、又は改善することによって、トリブロック/ジブロックの生分解性のデポ(depot)から、少なくとも1種の薬学的な活性成分が放出される動態を変調させる方法、である。
【0012】
「改善」とは、前記製剤の注射可能性の値及び粘性のいずれか又は両方が、低下することを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下を含む生分解性の薬物デリバリー組成物:
(i)少なくとも3種の異なったブロック・コポリマーの混合物、ここで各ブロック・コポリマーは以下である:
(a)次式を有する生分解性のトリブロック・コポリマー:
Av-Bw-Ax
式中、Aはポリエステルである、Bはポリエチレン・グリコールである、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数である、並びにv=x若しくはv≠xである;又は
(b)次式を有する生分解性のジブロック・コポリマー:
Cy-Az
式中、Aはポリエステルである、Cはエンドキャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコールである、y及びzは繰り返し単位の数である、yは2~250の範囲である、並びにzは1~3,000の範囲である;並びに
前記混合物は、少なくとも1種の(a)及び少なくとも1種の(b)を含み;並びに(a)と(b)との間の重量比は1:19~5:1であり;並びに
(ii)少なくとも1種の薬学的な活性成分、
を提供する。
【0014】
好ましい実施形態では、前記ポリエステル Aは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレン・アジピン酸塩、ポリヒドロキシアルカノエート、及びそれらの混合物の群から選択され、任意選択的に前記エンドキャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコールがメトキシ・ポリエチレン・グリコールである。
【0015】
ある実施形態では、前記組成物は少なくとも1種の有機溶媒を更に含む。一般に、前記有機溶媒は、薬学的に許容可能な溶媒である。この有機溶媒を、前記組成物中に残しておくことがある、又は投与前に蒸発させることがある。
【0016】
生分解性の薬物デリバリー組成物のある実施形態では、少なくとも1種の生分解性のトリブロック・コポリマー(a)について、AがPLAである。
【0017】
生分解性の薬物デリバリー組成物のある実施形態では、少なくとも1種の生分解性のジブロック・コポリマー(b)について、AがPLAである。
【0018】
ある実施形態では、前記組成物が更に以下を含む:
(a)次式を有する生分解性のトリブロック・コポリマー:
PLAv-PEGw-PLAx
式中、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数である、並びにv=x若しくはv≠xである;並びに/又は
(b)次式を有する生分解性のジブロック・コポリマー:
mPEGy-PLAz
式中、y及びzは繰り返し単位の数である、yは2~250の範囲である、並びにzは1~3,000の範囲である。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記組成物が以下を含む:
(a)次式を有する生分解性のトリブロック・コポリマー:
PLAv-PEGw-PLAx
式中、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数である、並びにv=x若しくはv≠xである;並びに
(b)次式をそれぞれが有する2、3又は4種の生分解性のジブロック・コポリマー:
mPEGy-PLAz
式中、y及びzは繰り返し単位の数である、yは2~250の範囲である、並びにzは1~3,000の範囲である;並びに
ここで式中、(a)と(b)との重量比は1:19~5:1である。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記組成物が以下を含む:
(a)次式をそれぞれが有する2種の異なった生分解性のトリブロック・コポリマー:
PLAv-PEGw-PLAx
式中、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数である、並びにv=x若しくはv≠xである;並びに
(b)次式をそれぞれが有する1、2、3又は4種の生分解性のジブロック・コポリマー:
mPEGy-PLAz
式中、y及びzは繰り返し単位の数である、yは2~250の範囲である、並びにzは1~3,000の範囲である;並びに
ここで式中、(a)と(b)との重量比は1:19~5:1である。
【0021】
一般に、前記組成物が、注射可能な液体である、及び体内に注射したときにデポ(depot)を形成するのに適している、又は小さな固形粒子若しくは棒状のインプラント(rod implant)若しくは空間的製剤(spatial formulation)である。
【0022】
一般に、前記ポリエチレン・グリコール鎖の質量が、180 g/mol~12 kg/mol又は194 g/mol~12 kg/mol又は200 g/mol~12 kg/mol又は100 g/mol~4 kg/molの範囲である、及び前記エンドキャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコール鎖の分子量が100 g/mol~2 kg/mol又は164 g/mol~10 kg/molの範囲である。
【0023】
前記生分解性の薬物デリバリー組成物は、溶媒等の薬学的に許容可能な担体を更に含むこともある。
【0024】
ある実施形態では、前記薬学的な活性成分が疎水性である。
【0025】
ある実施形態では、前記薬学的な活性成分がリスペリドン、ブピバカイン、イベルメクチン、オクトレオチド、メロキシカム又はそれらの組み合わせである。
【0026】
別の実施形態では、前記少なくとも1種の薬学的な活性成分が、全組成物の0.05%~60%(w/w%)、任意選択的に0.05%~40%、任意選択的に0.05%~30%、任意選択的に0.05%~10%、任意選択的に0.05%~7%、任意選択的に0.05%~2%の量で存在する。
【0027】
ある実施形態では、前記生分解性の薬物デリバリー組成物は、注射可能な液体である、及び前記少なくとも1種の薬学的な活性成分が、0.05%~60%(w/w%)の量で存在する。
【0028】
別の実施形態では、前記生分解性の薬物デリバリー組成物は、棒状のインプラント(rod implant)である、及び前記少なくとも1種の薬学的な活性成分が50%~80%(w/w%)の量で存在する。
【0029】
更なる実施形態では、前記コポリマーが全組成物の2%~60%(w/w%)、任意選択的に10%~50%、任意選択的に20%~40%、任意選択的に20%~35%、任意選択的に30%~50%の量で存在する。
【0030】
ある実施形態では、前記1種以上のトリブロック・コポリマーが、全組成物の1%~50%(w/w%)、任意選択的に5%~40%の量で存在する。
【0031】
ある実施形態では、前記1種以上のジブロック・コポリマーが、全組成物の1%~57%(w/w%)、2.5%~45%の量で存在する。
【0032】
追加の実施形態では、前記生分解性の薬物デリバリー組成物中において、(a)の生分解性のトリブロック・コポリマーの合計と(b)の生分解性のジブロック・コポリマーの合計に関する重量比が1:5~3:1である。
【0033】
一般に、前記組成物中のポリエステル繰り返し単位とエチレン・オキシドのモル比が、トリブロック中で0.5~22.3、任意選択的に0.5~10、任意選択的に0.5~3.5である、及びジブロック中で0.8~15、任意選択的に1~10である。
【0034】
前記組成物は、上記に定義された3種の異なるブロック・コポリマー、又は上記に定義された4種の異なるブロック・コポリマー、又は上記に定義された5種の異なるブロック・コポリマー、又は上記に定義された6種の異なるブロック・コポリマー、を含むことがある。
【0035】
前記組成物は、上記に定義された1種の生分解性のトリブロック・コポリマー、又は上記に定義された2種の異なる生分解性のトリブロック・コポリマー、又は上記に定義された3種の異なる生分解性のトリブロック・コポリマー、又は上記に定義された4種の異なる生分解性のトリブロック・コポリマー、を含むことがある。
【0036】
前記組成物は、上記に定義された1種の生分解性のジブロック・コポリマー、又は上記に定義された2種の異なる生分解性のジブロック・コポリマー、又は上記に定義された3種の異なる生分解性のジブロック・コポリマー、又は上記に定義された4種の異なる生分解性のジブロック・コポリマー、を含むことがある。
【0037】
ある実施形態では、前記組成物は、全組成物の1%~50%(w/w%)の量で存在するトリブロック・コポリマー、全組成物の1%~57%(w/w%)の量で存在するジブロック・コポリマー、及び各々が全組成物の0.5~20(w/w%)の量で存在する1種以上の更なるジブロック又はトリブロック・コポリマーとを含む。
【0038】
好ましい実施形態では、前記生分解性の薬物デリバリー組成物は、表1~6の何れかに定義された組成物である。
【0039】
一般に、前記組成物によって、少なくとも1種の活性成分の放出は変調される。
【0040】
ある実施形態では、前記組成物は、少なくとも1日間、任意選択的に少なくとも3日間、任意選択的に少なくとも7日間、任意選択的に少なくとも30日間、任意選択的に少なくとも90日間、任意選択的に少なくとも1年間、対象に活性成分を、任意選択的に治療有効量の活性成分を、デリバリーするのに適している。
【0041】
ある実施形態では、前記組成物は非経口投与に適している。
【0042】
ある実施形態では、前記ブロック・コポリマーが水溶液に実質的に不溶であり、任意選択的に、前記ブロック・コポリマーが水溶液中で5%未満、任意選択的に1%(w/w)未満の溶解度を有する。
【0043】
更なる態様では、本発明は、少なくとも1種の活性成分が放出される動態を変調させる方法を提供し、前記方法は、先行する請求項の何れか一項に定義された生分解性の薬物デリバリー組成物を対象に投与することを含み、ここで、前記生分解性の薬物デリバリー組成物から前記少なくとも1種の活性成分が放出される動態が、前記生分解性の薬物デリバリー組成物の1種以上の物理的パラメータに影響を与えることなく、変調される、方法、を提供する。
【0044】
一般に、前記1種以上の物理的パラメータは、前記生分解性の薬物デリバリー組成物を注射する前の注射可能性及び粘性、並びに前記生分解性の薬物デリバリー組成物を注射した後のデポ(depot)の頑健性である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1は、3種類の異なる製剤からリスペリドンがin vitroで放出される経時的な累計の割合を示すグラフである。製剤F28(〇)は、10.00%の活性成分(API)及び60.00%のDMSOと共に、25.00%のP1R6トリブロック・コポリマー、1.25%のdP2R3ジブロック・コポリマー、1.25%のdP0.35R8.5ジブロック・コポリマー、1.25%のdP0.35R5ジブロック・コポリマー、1.25%のdP2R0.5ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が5である。製剤F29(×)は、10.00%の活性成分(API)及び60.00%のDMSOと共に、1.50%のP1R6トリブロック・コポリマー、7.125%のdP2R3ジブロック・コポリマー、7.125%のdP0.35R8.5ジブロック・コポリマー、7.125%のdP0.35R5ジブロック・コポリマー、7.125%のdP2R0.5ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が0.05である。製剤F16(□)は、60.00%の活性成分(API)及び35.00%のDMSOと共に、1.00%のP1R4トリブロック・コポリマー、1.50%のP1R6トリブロック・コポリマー、1.50%のdP2R3ジブロック・コポリマー及び1.00%のdP0.35R8.5ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が1である。具体的なブロック・コポリマーの配合を以下の表1に示す。 ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計は、放出変調に影響を与える。実際、F28及びF29の曲線は、2種の異なる放出プロファイルを示す。 興味深いことに、少量のポリマー含有量(5.00%)と大量のAPI(60.00%)とによって、疑似的ゼロ次動態プロファイルとなった。実際、F16の曲線は疑似的ゼロ次放出プロファイルを示す。
【
図2】
図2は、4種類の異なる製剤からブピバカインがin vitroで放出される経時的な累計の割合を示すグラフである。製剤F289(〇)は、2.00%の活性成分(API)及び58.00%のDMSOと共に、20.00%のP1R4トリブロック・コポリマー及び20.00%のdP1R4ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が1である。製剤F290(△)は、2.00%の活性成分(API)及び58.00%のDMSOと共に、20.00%のP1R4トリブロック・コポリマー、10.00%のdP1R4ジブロック・コポリマー、10.00%のdP0.35R8.5ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が1である。製剤F291(□)は、2.00%の活性成分(API)及び58.00%のDMSOと共に、20.00%のP1R4トリブロック・コポリマー及び20.00%のdP0.35R8.5ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が1である。製剤F292(◇)は、2.00%の活性成分(API)及び48.00%のDMSOと共に、25.00%のP1R4トリブロック・コポリマー及び25.00%のdP1R4ジブロック・コポリマー25.00%を含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が1である。具体的なブロック・コポリマーの配合を以下の表2に示す。 表7に示すように、追加的な生分解性のブロック・コポリマーを添加すると、製剤の注射可能性に悪影響を与えることなく、放出変調に影響を与える。実際、F289及びF290の曲線は、2種の異なる変調された放出プロファイルを示す。更に、この生分解性のジブロック・コポリマーを追加することによって、前記放出をより良くコントロールすることが可能になる。実際、F289の曲線は、コントロールされていない初期バーストを示し、これは、複数の実験間での大きなバラツキによって強調される。F289及びF290の標準偏差値は、デポ(depot)形成の2日後でそれぞれ、13.3及び2.8であった。 独特のジブロック・コポリマーとして、上記の追加的な生分解性のブロック・コポリマーを使用すると、最初の製剤と比較して放出が変調されるようになる。F289及びF291の曲線は、2種の異なる放出プロファイルを示す。しかし、F291製剤由来のデポ(depot)は、初期の時点で、有意なデポ(depot)の破砕を伴い、非最適な頑健性を示す。この非最適な頑健性は、望ましくない及び初期にデポ(depot)が破砕することによって、各々の複数の実験間での大きなバラツキを誘導する。実際、F290及びF291は、デポ(depot)形成の10日後にそれぞれ、5.7及び9.7の標準偏差値を示す。 総ポリマー含量の増大は、放出変調に影響を与える。F292は、F289と比較して、変調された放出のプロファイルを示す。しかし、総ポリマー含量の増加は、表7に示すように製剤の注射可能性に影響を与える。結果として、F289及びF292は、それぞれ4.8 N及び14.5 Nの注射可能性の値である。 F291及びF292では放出を変調できたが、組成を変えると、それぞれデポ(depot)及び製剤の物理的パラメータにネガティブな影響があった。従って、これらのデータは、F290の様に、追加的な生分解性のブロック・コポリマーを添加することは、予測可能な変調を提供する効率的な方法であることを意味している。
【
図3】
図3は、4種類の異なる製剤からブピバカインがin vitroで放出される経時的な累計の割合を示すグラフである。製剤F289(〇)は、2.00%の活性成分(API)及び58.00%のDMSOと共に、20.00%のP1R4トリブロック・コポリマー、20.00%のdP1R4ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が1である。製剤F290(△)は、2.00%の活性成分(API)及び58.00%のDMSOと共に、20.00%のP1R4トリブロック・コポリマー、10.00%のdP1R4ジブロック・コポリマー、10.00%のdP0.35R8.5ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が1である。製剤F293(×)は、4.00%の活性成分(API)及び56.00%のDMSOと共に、20.00%のP1R4トリブロック・コポリマー及び20.00%のdP1R4ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が1である。製剤F294(X)は、6.00%の活性成分(API)及び54.00%のDMSOと共に、20.00%のP1R4トリブロック・コポリマー及び20.00%のdP1R4ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が1である。具体的なブロック・コポリマーの配合を以下の表2に示す。 API負荷の合計量が増加すると、放出変調に影響が及ぶ。APIをそれぞれ4.00%及び6.00%含むF293及びF294は、F289及びF290と比較すると、放出プロファイルが異なる。製剤中のAPIの量が増加するにつれて、放出動態は減少する。しかし、得られたプロファイルは、類似の望ましくない放出傾向を示し、高い初期バーストがある。又、表7に示すように、API含有量に伴い注射可能性の値も増加することから、これは妥当な戦略ではない。
【
図4】
図4は、4種類の異なる製剤からブピバカインがin vitroで放出される経時的な累計の割合を示すグラフである。製剤F45(〇)は、1.00%の活性成分(API)及び49.00%のDMSOと共に、41.70%のP1R4トリブロック・コポリマー、4.15%のdP2R0.5ジブロック・コポリマー、4.15%のdP0.35R8.5ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が5である。製剤F46(×)は、1.00%の活性成分(API)及び49.00%のDMSOと共に、2.50%のP1R4トリブロック・コポリマー、23.75%のdP2R0.5ジブロック・コポリマー、23.75%のdP0.35R8.5ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が0.05である。製剤F49(□)は、1.00%の活性成分(API)及び39.00%のDMSOと共に、3.00%のP1R4トリブロック・コポリマー、28.50%のdP2R0.5ジブロック・コポリマー、28.50%のdP0.35R8.5ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が0.05である。製剤F64(※)は、1.00%の活性成分(API)及び39.00%のDMSOと共に、3.00%のP1R4トリブロック・コポリマー、28.50%のdP0.35R5ジブロック・コポリマー、28.50%のdP0.35R8.5ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が0.05である。具体的なブロック・コポリマーの配合を以下の表3に示す。 ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計は、放出変調に影響を与える。実際、F45及びF46の曲線は、2種の異なる変調された放出プロファイルを示す。 前記製剤組成物中で、ブロック・コポリマーを置換すると、放出変調は重大な影響を受ける。実際、F49及びF64の曲線は、2種の異なる変調された放出プロファイルを示す。 このように、結果によれば、追加的な生分解性のブロック・コポリマー添加することが、放出動態を変調させる効率的な方法であることと示される。
【
図5】
図5は、6種類の異なる製剤からイベルメクチンがin vitroで放出される経時的な累計の割合を示すグラフである。製剤F105(〇)は、1.00%の活性成分(API)及び49.00%のDMSOと共に、20.00%のP2R3.5トリブロック・コポリマー、及び30.00%のdP0.35R8.5ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が0.67である。製剤F119(×)は、1.00%の活性成分(API)及び49.00%のDMSOと共に、10.00%のP12R0.7トリブロック・コポリマー、10.00%のP0.19R18トリブロック・コポリマー及び30.00%のdP0.35R8.5ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が0.67である。製剤F124(△)は、1.00%の活性成分(API)及び74.10%のDMSOと共に、4.20%のP1R4トリブロック・コポリマー、4.20%のP1R6トリブロック・コポリマー、5.50%のdP0.35R5ジブロック・コポリマー、5.50%のdP2R3ジブロック・コポリマー及び5.50%のdP0.35R8.5ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が0.5である。製剤F126(▽)は、1.00%の活性成分(API)及び74.10%のDMSOと共に、2.80%のP1R4トリブロック・コポリマー、2.80%のP1R6トリブロック・コポリマー、2.80%のP2R3.5トリブロック・コポリマー、5.50%のdP0.35R5ジブロック・コポリマー、5.50%のdP2R3ジブロック・コポリマー及び5.50%のdP0.35R8.5ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が0.5である。製剤F115(□)は、1.00%の活性成分(API)及び74.10%のDMSOと共に、8.30%のP2R3.5トリブロック・コポリマー、8.30%のdP0.16R1ジブロック・コポリマー及び8.30%のdP2R10ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が0.5である。製剤F110( )は、1.00%の活性成分(API)及び74.10%のDMSOと共に、8.30%のP2R3.5トリブロック・コポリマー、及び16.70%のdP2R3ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が0.5である。具体的なブロック・コポリマーの配合を以下の表4に示す。 12700g/mol分子量のP2R3.5トリブロックを、25700g/molと5800g/mol分子量をそれぞれ有するP12R0.7とP0.19R18の2種のトリブロック・コポリマーの混合物の同量で置換すると、放出動態は影響を受ける。ここで、F119のトリブロックの合計の分子量は、F115とほぼ同じ範囲である(15800g/mol対12700g/mol)。 同様に、11800g/mol分子量のdP2R3を、34700g/molと420g/mol分子量をそれぞれ有するdP2R10とdP0.16R1の2種のジブロック・コポリマーの混合物の同量で置換すると、放出動態は影響を受ける。実際、F110及びF115の曲線は、2種の異なる変調された放出プロファイルを示す。 追加的な生分解性のトリブロック・コポリマーを添加すると、放出動態プロファイルの変調が誘導される。実際、F126の曲線は、F124の曲線と比較すると、より遅い放出を示す。 このように、データによれば、1種のブロック・コポリマーを、全分子量がほぼ等しい他の2種のブロック・コポリマーにより置換することが、放出動態を変調させる効率的な方法であることと示される。
【
図6】
図6は、3種類の異なる製剤からオクトレオチド酢酸エステルがin vitroで放出される経時的な累計の割合を示すグラフである。製剤F163(〇)は、4.00%の活性成分(API)及び56.00%のDMSOと共に、10.00%のP1R4トリブロック・コポリマー、10.00%のP1R6トリブロック・コポリマー、10.00%のdP1R4ジブロック・コポリマー、及び10.00%のdP0.35R8.5ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が1である。製剤F165(□)は、4.00%の活性成分(API)及び56.00%のDMSOと共に、20.00%のP1R6トリブロック・コポリマー、20.00%のdP0.35R8.5ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が1である。製剤F166(△)は、4.00%の活性成分(API)及び56.00%のDMSOと共に、20.00%のP1R4トリブロック・コポリマー、20.00%のdP1R4ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が1である。具体的なブロック・コポリマーの配合を以下の表5に示す。 F163は、F165及びF166の2種のトリブロック及び2種のジブロックを組合せると、中間的な放出動態を生じることを示し、観察された4種のブロック・コポリマー組成物に基づく変調は、F165とF166の寄与から生じるようである。
【
図7】
図7は、2種類の異なる製剤からメロキシカムがin vitroで放出される経時的な累積を示す。製剤F197(□)は、2.00%の活性成分(API)及び38.00%のDMSOと共に、50.00%のP0.19R2トリブロック・コポリマー及び10.00%のdP0.35R8.5ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が5である。製剤F199(▽)は、2.00%の活性成分(API)及び38.00%のDMSOと共に、25.00%のP0.19R2トリブロック・コポリマー、25.00%のP2R3.5トリブロック・コポリマー及び10.00%のdP0.35R8.5ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が5である。製剤F365は、2.00%の活性成分(API)及び38.00%のDMSOと共に、50.00%のP2R3.5トリブロック・コポリマー及び10.00%のdP0.35R8.5ジブロック・コポリマーを含み、ジブロックに対するトリブロックの重量比の合計が5である。F365は、非常に高い注射可能性の値(53.6 N)を示し、注射の操作を妨げるため、in vitroでの試験を行わなかった。具体的なブロック・コポリマーの配合を以下の表6に示す。 F199の放出動態はF197のそれと比較して変調されている。25.00%のP0.19R2(F197中では50.00%で最初に存在した)を同量のP2R3.5で置換すると、放出動態が強力に変調されるようになる。実際、P2R3.5トリブロック・コポリマーを、F199における追加的な生分解性のブロック・コポリマーとして追加すると、放出の総持続時間が増大することに繋がる。更に、初期バーストは有意に減少し、F199の放出プロファイルに見られる放出100日後に動態が再加速すること、はない。
【
図8】
図8は、F197、F199及びF365で測定された注射可能性のデータを表す。データによれば、F365において、P0.19R2をP2R3.5によって完全に置換すると、当初のF197製剤の注射可能性は劇的な影響を受け、ほとんど注射できない製剤になるが、F199において、P0.19R2をP2R3.5によって部分的に置換すると、注射可能性の値の増大は許容可能である。実際、F365は、F197と比較して注射可能性がはるかに高い。表8は、これらの製剤についての注射可能性の値を示す。 これらの結果によって、追加的な生分解性のブロック・コポリマーを添加することが、注射可能性等の製剤の物理的パラメータを有意に変化させることなく、放出動態を変調させる効率的な方法であることが、確認される。又、これらの結果によって、高い負荷量で2種のブロック・コポリマーのみを扱う場合、前記放出動態を変調させることは非常に困難であることが、示される。従って、前記製剤に少なくとも1種のブロック・コポリマーを添加することは、効率的な方法でこの変調をできるようにするための、有益な製剤化ツールとなりことがある。
【発明を実施するための形態】
【0046】
好ましい実施形態の説明
本明細書中で使用する場合、用語「生分解性」は、前記ポリエステルがin vivoで加水分解を受けてその構成オリゴマー又はモノマーになることを意味し、例えば、PLAは加水分解を受けて乳酸になる。
【0047】
用語「非経口投与」は、筋肉内、腹腔内(intraperitoneal)、腹腔内(intra-abdominal)、皮下、静脈内及び動脈内を包含する。又、皮内、海綿体内、硝子体内、大脳内(intracerebral)、くも膜下腔(intrathecal)、硬膜外(epidurall)及び骨内(intraosseous)投与を包含する。
【0048】
用語「動物」は、動物界の全てのメンバーを包含する。前記動物は、ヒト又は非ヒト動物であることがある。
【0049】
本明細書中で使用する場合、前記「植物」は、植物界の全てのメンバーを包含する。
【0050】
「活性成分」とは、様々な医学的疾患を治療又は予防するための薬物(drug)又は医薬(medicine)をいう。本願において、用語「活性成分(active principle)」は、「活性成分(active ingredient)」と同じ意味を有する。従って、活性成分(active ingredient)、活性成分(active principle)、薬物又は医薬という用語は、互換的に使用する。「活性薬剤成分(Active Pharmeceutical Ingredient)」又は「API」という用語も使用する。用語薬物又は活性成分は、本明細書で使用する場合、動物又は植物の体内で、局所的に又は全身的に作用する生理学的な又は薬理学的な活性物質を、限定することなく、含む。本発明の生分解性の薬物組成物には、少なくとも1種の活性成分が存在する。
【0051】
本明細書中で使用する場合、「疾患(disease)」とは、感染、食事、又はプロセスの不完全な機能によって引き起こされる、ヒト、動物又は植物におけるあらゆる障害を意味する。
【0052】
用語「インプラント(implant)」とは、体外で形成され、外科的処置によって体内に入れられる、あらゆる固形物を意味する。インプラントは、永久的に留置する、又は、必要であれば及び状況に応じて、取り除かれることがある。これらの処置には、限定されるものではないが、動物の体に小さな切れ込みを入れ、固形物又はトロカールを挿入することが含まれる。トロカールとは、栓塞子(金属又はプラスチックの尖った又は刃がついていないチップ)、カニューレ、シールでできている医療デバイスである。トロカールは、その後に、動物の体内に前記インプラントを配置するための入り口(ポータル)として機能する。
【0053】
用語「デポ(depot)注射」は、流動性の医薬組成物を注射(一般に皮下、皮内又は筋肉内の注射)し、「デポ(depot)」と呼ばれる固形塊等の限局して存在する塊に薬物を沈着させることをいう。前記デポ(depot)は、本明細書に定義される場合、注射した時に、そこで形成される。従って、その製剤を液体又は微粒子として調製することがあり、及び体内に注射することがある。
【0054】
ヒトで使用する注射又は点滴の方法にはいくつかあり、皮内、皮下、筋肉内
、静脈内、骨内(intraosseous)、腹腔内、くも膜下腔(intrathecal)、硬膜外(epidurall)
、心臓内、関節内、海綿体内(intracavernous)、及び硝子体内が含まれる。
【0055】
用語「空間的製剤(spatial formulation)」は、動物又は植物の体表又は体内に適用することができ、及び必ずしもシリンジを通して投与する必要がない任意の製剤を包含する。
【0056】
本明細書中で使用する場合、「繰り返し単位」は、ポリマーの基本的な反復単位である。
【0057】
「エンド-キャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコール」(cPEG)とは、一方の末端水酸基が反応したPEGを指し、アルコキシ-キャップされたPEG、ウレタン-キャップされたPEG、エステル-キャップされたPEG等の化合物が含まれる。キャッピング基は、ラクチド、グリコラクチド、カプロラクトン等のような環状エステル、又は他のエステル並びにそれらの混合物と反応しやすい化学官能基を含まない化学基である。エンド-キャップされた(end-capped)PEGポリマーとラクチドとの反応によって、ジブロックcPEG-PLAコポリマーが生成される。
【0058】
本明細書中で使用する場合、「ポリエチレン・グリコール」は、本出願全体を通してPEGと略して、ポリ(エチレン・オキシド)又はポリ(オキシエチレン)を指すことがあり、前記用語は本発明において互換的に使用する。
【0059】
「PLA」の略語はポリ(乳酸)を指す。
【0060】
「PLGA」の略語はポリ(乳酸-コ-グリコール酸)を指す。
【0061】
「PCLA」の略語はポリ(ε-カプロラクトン-コ-ラクチド)を指す。
【0062】
略語「PE」は、ポリエステルを指す。
【0063】
略語「T」又は「TB」はトリブロック・コポリマーを指し、略語「D」又は「DB」はジブロック・コポリマーを指す。
【0064】
本明細書中で使用する場合、用語「ジブロック」は、例えば、エンド-キャップされた(end-capped)PEG-ポリエステル・コポリマーを指す。「mPEG」はメトキシ・ポリエチレン・グリコールを指す。
【0065】
用語「トリブロック」は、例えば、ポリエステル-PEG-ポリエステル・コポリマーを指す。
【0066】
Rモル比は、生分解性の薬剤デリバリー組成物中に存在する、ポリエステル単位の数(PE)対エチレン・オキシド単位の数(EO)を指す。例えば、ポリエステル単位の数は、ラクトイル単位の数(LA)、又はグリコリド単位の数(G)、又はカプロラクトン単位の数(CL)、又はそれらの混合物の数を指すことがある。
【0067】
このRモル比は、NMRによって実験的に測定される。前記トリブロック・コポリマーのRモル比は、0.5~22.3、任意選択的に0.5~10、任意選択的に0.5~3.5の範囲であることがある。別の態様では、本明細書に記載の生分解性の薬剤デリバリー組成物中において、前記トリブロック中のRモル比が0.5~2.5の範囲であることがある。
【0068】
前記ジブロック中のRモル比は、前記生分解性の薬剤デリバリー組成物中において、0.8~15、任意選択的に1~10、任意選択的に2~6、任意選択的に3~5の範囲であることがある。
【0069】
重合度又はDPは、重合反応中の時刻tにおける、平均的なポリマー鎖内にある繰り返し単位の数である。例えば、前記トリブロックのPEGの重合度は3~300であり、前記ジブロックのPEGの重合度は2~250である。PLAについては、前記トリブロックの重合度は1~3,000であり、前記ジブロックの重合度は同じ値の1~3,000である。
【0070】
本明細書中で使用する場合、「少なくとも3種の」ブロック・コポリマーは、前記生分解性の薬物デリバリー組成物中の、3、4、5、6、7、8、9又は10種の異なったブロック・コポリマーの混合物を意味することがある。本発明の実施形態では、混合物中に少なくとも1種のトリブロック・コポリマー及び少なくとも1種のジブロック・コポリマーが存在するならば、3~10種のトリブロック及びジブロック・コポリマーの任意の組合せを配合することがある。他の例としては、3~5又は4~8又は4~6、3~7、4~9種等のトリブロック及びジブロック・コポリマーの混合物を、本明細書に記載する生分解性の薬物組成物中で使用することがある、ことが挙げられる。
【0071】
「少なくとも1種の活性成分が放出される動態を変調させること」とは、in vivoに投与した後に、デポ(depot)から少なくとも1種の活性成分が放出される速度を変調させることを意味する。この点に関して、前記動態は、作製された製剤に依存して、一次動態又は疑似的ゼロ次動態であることがある。
【0072】
「放出変調」は、本明細書で使用する場合、前記デポ(depot)から経時的に放出される少なくとも1種の活性成分の量が変化することとして定義される。ここで求められる変化とは、初期動態から、放出が増加すること又は減少すること、即時的又は長期間にわたって持続的であることがある。その放出プロファイルを変えることは、いくつかの期間に影響を与えることがある;放出のごく最初の数時間では、例えば、初期「バースト」が増加すること若しくは減少することを誘導すること、又はより経過した時間では、放出が再加速されること若しくは急激に減少することを避けること、若しくは放出を持続させること。製剤化の変調とは、特定の放出プロファイル及び特定の治療用途に対して放出の総持続時間を最適化することができる、プロセスである。
【0073】
本明細書中で使用する場合、「一次動態」とは、薬物の放出過程が、その過程に関与する薬物の濃度に正比例することを意味する。
【0074】
本明細書中で使用する場合、「疑似的ゼロ次動態」は、薬物の放出過程が、一定の速度で起こることを意味する。
【0075】
本明細書中で使用する場合、用語「物理的パラメータ」は、前記製剤を臨床的に利用するために重要である前記組成物の物理的特性を指すことが意図されている。中でも、前記製剤の粘性、より具体的には動的粘性、前記製剤を注射した後のデポ(depot)の膨潤及び頑健性は、前記製剤を最適化するときに制御するべき重要なパラメータである。前記製剤の鍵となる物理的パラメータは、注射可能性、即ち注射投与に対する適合性、である。
【0076】
デポ(depot)は、それが早期に破砕されてバラバラになると、"頑健性を欠く"ようになる。この破砕は、バーストやバラツキ等の、放出に関する予期せぬ及び制御不能な変化につながる可能性がある。この破砕を、前記デポ(depot)中、in vitroで視覚的に測定することができる。前記デポ(depot)が早期に物理的な破砕を起こすことにより頑健性を欠くようになることは、前記デポ(depot)においてポリマーが正常に分解(例えば、ポリマーの加水分解、これは、ポリマー基質の細孔を通って活性成分が拡散していくことと共に、活性成分の放出が可能となる重要なメカニズムである)していくこととは区別される。好ましくは、前記デポ(depot)を形成するポリマーが完全に加水分解することは、活性成分の全て、又は実質的に全て(例えば、90重量%、若しくは99重量%)、が前記デポ(depot)から放出されるまで、起こらない。
【0077】
本明細書中で使用する場合、「膨潤」は、水を取り込むことに関連して、形成されたデポ(depot)の体積が増加することである。動物の体内に注射する場合には、当初のデポ(depot)の体積は3~5倍又は1.1~3倍に増加することがある。この膨潤はin vitroで視覚的に測定される。
【0078】
製剤の「注射可能性」は、本明細書で使用する場合、予め決めておいたパラメータを用いて製剤を注射するのに要する力(ニュートン(N))によって定義される。これらのパラメータには:注射速度、注射量、注射時間、シリンジのタイプ又は針のタイプ等が含まれる。これらのパラメータは、使用する少なくとも1種の薬学的な活性成分、又は所望の投与方法(皮下、眼内、関節内等)に基づいて、変わることがある。それらを、前記製剤内に存在する少なくとも1種の薬学的な活性成分に基づいて調整し、製剤間の差や変動を観察できるようにすることがある。注射可能性の値は、資格を有する医療専門家が許容可能な時間内で容易に投与できるように、低く抑えなければならない。理想的な注射可能性の値は、以下の計測方法を用いて、0.1 N~10 Nであることがある。許容可能な注射可能性の値は10 N~20 Nであることがある。最適ではない注射可能性は20 N~30 Nであることがある。製剤は、30~40 Nでは、ほとんど注射できず、40 Nより大きいと、注射不可能である。注射可能性の値は、テクスチュロメーター、好ましくはLloyd Instruments FTプラス・テクスチュロメーターを用いて、以下の分析条件を用いて測定することができる: 500 μLの製剤を、1 mLのシリンジ、23G 1” テルモの針、によって、1 mL/分の流速、で注射する。
【0079】
「粘性(Viscosity))」とは、本明細書で定義し、使用する場合、液体が流れること及びせん断応力又は引張強度によって緩やかに変形することへの抵抗の尺度である。それは、流れる液体の内部摩擦を表す。液体については、「粘性(thickness)」という正式ではない概念に対応する。「動的粘性(dynamic viscosity)」とは、加えた力のもとで液体が流れることへの抵抗の尺度を意味する。動的速度(dynamic velocity)は、1 mPa.sから3000 mPa.s又は5 mPa.sから2500 mPa.s又は10 mPa.sから2000 mPa.s又は20 mPa.sから1000 mPa.sの範囲であることがある。動的粘性を、コーン・プレート測定装置を備えたアントン・パール・レオメーター(Anton Paar Rheometer)を用いて測定する。一般に、250μLの試験製剤を測定プレート上に置く。その温度を、+25℃で制御する。使用する測定装置は、直径25 mm、コーン角度2度(CP25-2/S)のコーン・プレートである。作動範囲は10~1000秒-1である。10秒間ボルテックスした後、製剤をへらを用いて温度を調節した測定プレートの中心に置く。この測定システムを下げて、前記測定システムとその測定プレートとの間に0.051mmのギャップを残す。10~1000秒-1のずり速度域の範囲中、11点で粘性測定を行う。記載した値は100秒-1で得られた値である。
【0080】
本発明は、物理的パラメータ等の重要な製剤の特性に悪影響を与えることなく、トリブロック/ジブロックの生分解性の医薬組成物から少なくとも1種の活性成分が放出される動態を変調させることに関する。当初のTB/DB混合物に、少なくとも1種類の追加的な生分解性のブロック・コポリマーを添加することによって、注射可能性に影響を与えることなく(影響を与えるならば、前記組成物を、標準的なデバイスを用いて注射できることが、妨げられることがある)放出動態を調整することが可能となる。少なくとも3種のブロック・コポリマーを組合せることによって、少なくとも1種の活性成分の放出が可能になる範囲が増幅し、より効率的な変調様式でそうなる。
【0081】
従って、本発明は、トリブロック・コポリマー及びジブロック・コポリマーの中から選ばれる少なくとも3種のコポリマーの混合物を含む生分解性の薬物組成物に関する。その生分解性のトリブロック・コポリマーは次の式を有する:Av-Bw-Ax,、式中、Aはポリエステルである、Bはポリエチレン・グリコールである、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数である、並びにv=x若しくはv≠xである。DP-PEGの重合度は、PEG分子量をEO単位分子量(44 g/mol)で割ることによって算出する。v + xは、PLAの重合度(繰り返し単位の数)に等しい。DP-PLAはDP-PEGにR比を乗じて算出する。
【0082】
しかしながら、前記トリブロック組成物中のv、w及びxという繰り返し単位の数は、目標とする活性成分の放出時間及び活性成分そのものの種類により変わる可能性がある。従って、v、w及びxというトリブロック中の繰り返し単位の数は、1~3,300又は60~2,800又は300~1,700又は500~1,250及びv=x又はv≠xとなることがある。例えば、wは273、v + xは682、又はwは136、v + xは273、又はwは45.5、v + xは546、又はwは273、v + xは136であることがある。
【0083】
前記トリブロック中のPEGの分子量は180 g/mol~12,000 g/molであることがある。
【0084】
トリブロック中のポリエステルは、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレン・アジピン酸塩(PEA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、及びそれらの混合物であることがある。ある実施形態では、使用するポリエステルはポリ乳酸である。別の実施形態では、前記ポリエステルはポリ(乳酸-コ-グリコール酸)である。
【0085】
次いで、生分解性のトリブロック・コポリマーを、以下の式を有する生分解性のジブロック・コポリマーと組み合わせる:Cy-Az、式中、Aはポリエステルである、Cはエンドキャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコールである、y及びzは繰り返し単位の数である、yは1~3,000の範囲である、並びにzは1~300の範囲である。この組成物は、トリブロック・コポリマー対ジブロック・コポリマーの重量比の合計が1:19から5:1の範囲である。
【0086】
エンド-キャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコールの例としては、メトキシPEG又はエトキシPEGのようなアルコキシ-キャップされたPEG、ウレタン-キャップされたPEG、エステル-キャップされたPEG、アミン-キャップされたPEG及びアミド-キャップされたPEGが挙げられる。このエンド-キャップされたPEGのリストは網羅的ではなく、当業者であれば、リストに記載されていない追加のエンド-キャップされたPEGを認識するであろう。
【0087】
更に、前記ジブロック組成物中のy及びzの繰り返し単位の数(重合度(DP))が変化することもある。その結果、yは、例えば、8~500又は150~850又は200~500又は30~1,200の範囲であることがあり、zは、32~123又は7~250の範囲であることがある。例えば、yは32である。DP-PEGの重合度は、キャップされたPEGのPEG分子量をEO単位分子量(44 Da)で割ることで算出する。DP-PLAはDP-PEGにR比を乗じて算出する。
【0088】
前記ジブロック中のポリエステルは、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレン・アジピン酸塩(PEA)、ポリグリコール酸(PGA)、又はポリヒドロキシアルカノエート(PHA)及びその混合物であることがある。
【0089】
ある実施形態では、使用するポリエステルはポリ乳酸である。別の実施形態では、前記ポリエステルはポリ(乳酸-コ-グリコール酸)である。
【0090】
本発明の好ましい実施形態は、以下のポリマーの組合せのいずれかを含む:
1) (a)次式を有する生分解性のトリブロック・コポリマー:
PLAv-PEGw-PLAx
式中、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数である、並びにv=x若しくはv≠xである;並びに
(b)次式をそれぞれが有する2、3又は4種の生分解性のジブロック・コポリマー:
mPEGy-PLAz
式中、y及びzは繰り返し単位の数である、yは2~250の範囲である、並びにzは1~3,000の範囲である;並びに
ここで式中、(a)と(b)との重量比は1:19~5:1である。
【0091】
2) (a)次式をそれぞれが有する2種の異なった生分解性のトリブロック・コポリマー:
PLAv-PEGw-PLAx
式中、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数である、並びにv=x若しくはv≠xである;並びに
(b)次式をそれぞれが有する1、2、3又は4種の生分解性のジブロック・コポリマー:
mPEGy-PLAz
式中、y及びzは繰り返し単位の数である、yは2~250の範囲である、並びにzは1~3,000の範囲である;並びに
式中、(a)と(b)との重量比は1:19~5:1である。
【0092】
少なくとも3種のブロック・コポリマーを、薬学的に許容可能な溶媒中で室温で一緒に溶解することによって組み合わせる。これらを組み合わせて、これらの少なくとも3種のブロック・コポリマーが、全組成の2%~60% (w/w%)、又は全組成の、任意選択的に10%~50%、任意選択的に20%~40%、任意選択的に20%~35%、任意選択的に30%~50%、の最終濃度で含まれるようにする。ある態様では、薬学的に許容可能な溶媒は有機溶媒である。この有機溶媒を、前記組成物中に残しておくことがある、又は投与前に蒸発させることがある。
【0093】
本明細書で使用する場合、「少量」とは、生分解性の薬物組成物中の他の2種のブロック・コポリマーの合計量よりも少ないコポリマーの量と定義する。この少量の少なくとも1種の追加的な生分解性のブロック・コポリマーは、総ポリマー含量に追加するものではなく、既に存在する2種のブロック・コポリマー組成物を代替するブロック・コポリマーとして添加される。前記製剤内のブロック・コポリマーの総量又はTB/DB比を変化させることなく、前記製剤組成物に、少なくとも1種の追加的な生分解性のブロック・コポリマーを添加することは、関連する物理的パラメータに影響を与えることなく放出プロファイルを変える適切な方法である。例えば、少なくとも1種の追加的な生分解性のブロック・コポリマーは、総ブロック・コポリマー含有量の25%未満であることがある、又は、例えば、5%未満であることがある。別の実施形態では、「少量」は、総ブロック・コポリマー含有量の1%~25%、又は総ブロック・コポリマー含有量の2.5%~15%、又は総ブロック・コポリマー含有量の3.5%~12%の範囲であることがある。
【0094】
本発明は、前記デポ(depot)の頑健性、又は前記製剤の注射可能性若しくは粘性等の物理的パラメータ等を含む、重要な製剤特性に悪影響を与えることなく、トリブロック/ジブロックの生分解性の医薬組成物から少なくとも1種の活性成分が放出される動態を変調させることに関する。当初のTB/DB混合物に、追加的な生分解性のブロック・コポリマーを添加することによって、注射可能性に影響を与えることなく(影響を与えるならば、前記組成物を、標準的なデバイスを用いて注射できることが、妨げられることがある)放出動態を調整することが可能となる。
【0095】
好ましい実施形態では、少なくとも3種のブロック・コポリマーの組合せることによって、少なくとも1種の活性成分の放出が可能になる範囲が増幅し、より効率的な変調様式でそうなる。
【0096】
この製剤によって、当初製剤の物理的パラメータに有意な影響を与えることなく、放出動態に関して経時的に増加すること又は減少することを誘導する、少なくとも1種の活性成分の放出プロファイルの変調が可能になる。前記製剤中の総ポリマー含有量並びに少なくとも1種の活性成分の総含有量は、依然として変化しておらず、前記製剤では、注射可能性又はデポ(depot)の頑健性等、関連パラメータは同じである。このアプローチの目標は、当初のトリブロック及びジブロックPEG-PLAコポリマーによりもたらされる利点(注射可能性、デポ(depot)の頑健性等)を保ちながら、放出動態を変えることである。
【0097】
前記物理パラメーターは2種のブロック・コポリマーの製剤とは有意に異なることがあるため、2種のブロック・コポリマーの製剤のままによる放出変調は、少なくとも1種の追加的なブロック・コポリマーを添加することとは異なる。この点で、物理的パラメーターに影響がある可能性がある。
【0098】
少なくとも3種のトリブロック・コポリマー及びジブロック・コポリマーの混合物は、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレン・アジピン酸塩(PEA)、ポリグリコール酸(PGA)、又はポリヒドロキシアルカノエート(PHA)及びその混合物のような任意のポリエステルを含むことがある。従って、前記トリブロックは、例えば、PCL-PEG-PCL又はPEA-PEG-PEA又はPGA-PEG-PGA又はPHA-PEG-PHA又はPLA-PEG-PLA又はPLA-PEG-PCL、PCLy-PEGw-PCLAx又はPHA-PEG-PEAを含むことがある。前記ジブロックは、例えば、エンド-キャップされたPEG-PLA又はエンド-キャップされたPEG-PCL又はエンド-キャップされたPEG-PEA又はエンド-キャップされたPEG-PGA又はエンド-キャップされたPEG-PLGA又はエンド-キャップされたPEG-PHA又はエンド-キャップされたPEG-PCLAを含むことがある。
【0099】
従って、具体的な実施形態では、少なくとも3種のトリブロック・コポリマー及びジブロック・コポリマーの混合物を含む生分解性の薬物デリバリー組成物は、PLA-PEG-PLAのトリブロック・コポリマー及びPCL-PEG-PCLのトリブロック・コポリマーと混合されたmPEG-PLGAのジブロック・コポリマー及びmPEG-PLAのジブロック・コポリマーを含むことがある。もう一つ別の例は、トリブロックのコポリマーPEA-PEG-PEA及びPLA-PEG-PLAのトリブロック・コポリマーと混合されたmPEG-PEAのジブロック・コポリマー及びm-PEG-PLGAのジブロック・コポリマーである。更に別の例は、PLA-PEG-PCLのトリブロック・コポリマー及びエンド-キャップされたPEG-PCLを有するブロック・コポリマー及びPLA-PEG-PLAのトリブロック・コポリマー、又はPLA-PEG-PLAのトリブロック・コポリマー及びエンド-キャップされたPEG-PLAのジブロック・コポリマー及びエンド-キャップされたPEG-PLGAのジブロック・コポリマー、又はPCLA-PEG-PCLAのトリブロック・コポリマー及びエンド-キャップされたPEG-PLAのジブロック・コポリマー及びエンド-キャップされたPEG-PCLAのジブロック・コポリマーである。
【0100】
前記生分解性の薬物デリバリー組成物中における、前記生分解性のトリブロック・コポリマーと前記生分解性のジブロック・コポリマーの合計の重量比は、1:19~5:1、任意選択的に1:5~3:1、任意選択的に1:2~3:1である。従って、この比は、例えば、1:5、1:10、1:19、4:1、3:1又は2:1であることがある。
【0101】
ポリエステル鎖の長さは、そのポリエステル対エチレン・オキシドのモル比によって定義され、これは、前記トリブロック・コポリマーについては0.5~22.3、任意選択的に0.5~10、任意選択的に0.5~3.5、任意選択的に0.5~2.5である、及び前記ジブロック・コポリマーについては0.8~15、任意選択的に0.8~13、任意選択的に1~10、任意選択的に3~5、任意選択的に2~6である。従って、例えば、ポリ乳酸が使用される場合、その鎖長は乳酸/エチレン・オキシドのモル比によって定義される。同様に、ポリグリコール酸を用いる場合、鎖長はポリグリコール酸/エチレン・オキシドのモル比、又はポリカプロラクトン/エチレン・オキシドのモル比、又はポリヒドロキシアルカノエート/エチレン・オキシドのモル比によって定義される。ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)を用いた場合、その鎖長はR比で定義される。
【0102】
エンド-キャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコールの重さは、120 g/mol~10,000 g/mol又は164 g/mol~2,000 g/mol又は100 g/mol~2 kg/mol又は200 g/mol~8,000 g/mol又は194 g/mol~7,500 g/mol又は100 g/mol~6,500 g/mol又は164 g/mol~9,500 g/molであることがある。それは、より低い130~300 g/molの範囲又は125 g/mol~800 g/molの範囲であることがある。
【0103】
ポリエチレン・グリコール鎖の分子量は、前記生分解性の薬物デリバリー組成物では180 g/mol~12 kg/mol、又は400 g/mol~12 kg/mol、又は194 g/mol~12 kg/molである。
【0104】
ポリマー総量は、前記組成物の総重量の2%~60% (w/w%)、任意選択的に1%~50% (w/w%)、任意選択的に10%~50%、任意選択的に20%~40%、任意選択的に20%~35%、任意選択的に30%~50%である。別の実施形態では、前記生分解性の薬物組成物中に存在するポリマーの総重量は、前記組成物の総重量の30%~50% (w/w%)又は10%~35% (w/w%)である。更に別の実施形態では、前記ポリマーは、前記組成物の総重量の40%~50% (w/w%)又は20%~45% (w/wt%)で、前記生分解性の薬物組成物中に存在する。
【0105】
従って、前記トリブロック・コポリマーは、前記組成物の総重量の1%~50% (w/w%)又は3%~45% (w/w%)の量で存在する。別の態様では、前記トリブロック・コポリマーは、前記組成物の総重量の6%~10% (w/w%)の量で存在する。更に別の態様では、前記トリブロック・コポリマーは、前記組成物の総重量の20%~40% (w/w%)の量で存在する。更に別の態様では、前記トリブロックは、全組成物の5%~40% (w/w%)の量で存在する。
【0106】
同様に、前記ジブロック・コポリマーは、前記組成物の総重量の1%~57% (w/w%)の量で、前記生分解性の薬物組成物中に存在することがある。別の態様では、前記ジブロック・コポリマーは、前記組成物の総重量の2.5%~45% (w/w%)の量で存在する。更に別の態様では、前記ジブロック・コポリマーは、前記組成物の総重量の5%~40% (w/w%)の量で存在する。更に別の態様では、前記ジブロックは、全組成物の8%~20% (w/w%)の量で存在する。
【0107】
3番目又はそれ以上の生分解性のブロック・コポリマーは、全組成の少なくとも0.5~20、任意選択的に0.2~20(w/w%)の量で、前記生分解性の薬物組成物中に存在することがある。別の例では、前記ジブロック・コポリマーは、1~10(w/wt%)の範囲で存在することがあり、更に別の例では、全組成物の2~8(w/w%)の範囲であることがある。更に別の態様では、少なくとも1種の追加的な生分解性のブロック・コポリマーは、全組成物の3~5(w/w%)の量で存在することがある。
【0108】
少なくとも1種の薬学的な活性成分を、少なくとも3種のトリブロックとジブロックの生分解性の薬物デリバリー組成物の混合物中に捕捉する。本発明に使用される代表的な薬物及び生物学的な活性薬剤は、限定されるものではないが、ペプチド薬物、タンパク質薬物、脱感作薬剤、抗原、ワクチン、ワクチン抗原、抗感染薬、抗うつ薬、興奮剤、鎮静剤、抗精神病薬、非定型抗精神病薬、緑内障治療薬、抗不安薬、抗不整脈薬、抗菌薬(antibacterial)、抗凝固剤、抗痙攣薬(anticonvulsant)、抗うつ薬、制吐剤、抗真菌薬、抗腫瘍薬、抗ウィルス薬、抗生物質、抗菌剤(antimicrobial)、抗アレルギー剤(antiallergenic)、抗糖尿病薬、ステロイド性抗炎症剤、充血除去剤(decongestant)、縮瞳薬、抗コリン薬、交感神経作動薬、鎮静薬、催眠薬、精神的活性剤、精神安定薬、アンドロゲン・ステロイド、エストロゲン、黄体ホルモン薬、体液性薬剤、プロスタグランジン、鎮痛薬、コルチコステロイド、抗痙攣剤(antispasmodic)、抗マラリア剤、抗ヒスタミン剤、心臓作用薬、非ステロイド性抗炎症剤、抗パーキンソン病薬、抗高血圧薬、ベータ‐アドレナリン遮断薬、栄養剤、ゴナドトロピン放出ホルモン作用薬、殺虫剤、抗蠕虫薬、又はこれらの組み合わせ、が含まれる。
【0109】
薬学的な活性成分は、リスペリドン、ブピバカイン、イベルメクチン、オクトレオチド、メロキシカム、又はそれらの組み合わせであることがある。
【0110】
本発明の生分解性の薬物デリバリー組成物においては、薬物の配合剤を使用することがある。例えば、エリテマトーデスを治療する必要がある場合、本発明において、非ステロイド性抗炎症剤及びコルチコステロイドを一緒に投与することがある。
【0111】
動物用の虫体を治療するための医薬品又はワクチンのような獣医学的薬剤も本発明の一部である。
【0112】
ポティウイルス科、ジェミニウイルス科、トスポウイルス属のブニヤウイルス科由来のウイルス及びバナナ・ストリーク・ウイルス等の植物用のウイルス医薬品も本発明に含まれる。又、タバコ・モザイク・ウイルス、カブのしわ、オオムギ黄萎病、輪紋病のスイカ及びキュウリ・モザイク・ウイルス用の医薬品を、本発明の生分解性の薬物デリバリー組成物に使用することもある。
【0113】
当業者は、水性環境中に放出されることがある他の薬物又は生物学的に活性がある薬剤を、本記載のデリバリー・システムにおいて利用することがある。又、様々な形状の薬剤又は生物学的に活性がある薬剤を使用することもある。これらには、限定されるものではないが、非荷電分子、分子複合体、塩、エーテル、エステル、アミド等の形態が含まれ、これらは、動物若しくは植物に注射したときに生物学的に活性化される、又は動物若しくは植物の体表若しくは体内に適用できるような空間的製剤(spatial formulation)として、若しくは棒状のインプラント(rod implant)として使用される。
【0114】
活性成分の薬学的に有効な量は、その活性成分、動物又は植物の医学的な症状の程度及び前記活性成分をデリバリーするのに必要な時間に応じて変化することがある。ポリマー液に取り込ませる活性成分の量に関しては、注射針を通して注射するために許容可能な溶液の量又は分散粘性を除いて、上限はない。そして、動物若しくは植物に過量投与することなく、効果的に病状を治療することができる。デリバリー・システムに取り込ませる活性成分の下限は、ひとえに活性成分の活性及び処置に必要な時間の長さに依存する。
【0115】
一般に、薬学的な活性成分は、前記組成物の総重量の0.05%~60% (w/w%)の量で存在する。別の実施形態では、前記活性成分は、前記組成物の総重量の1%~40% (w/w%)で存在する。別の実施形態では、前記活性成分は、前記組成物の総重量の2%~4% (w/w%)で存在する。更に別の実施形態では、低分子である活性成分は、前記組成物の総重量の1%~20% (w/w%)の量で存在する。
【0116】
本発明の生分解性の薬物デリバリー組成物中において、薬学的な有効量は、長期間にわたって徐々に放出されることがある。この緩徐的に放出されることは、連続的又は非連続的、線形又は非線形であることがあり、前記トリブロック・コポリマー及びジブロック・コポリマーの構成により変化することがある。
【0117】
前記活性成分は、必要とされる治療の種類及び使用する生分解性の薬物デリバリー組成物に応じて、1日から1年以上持続して放出されることがある。ある実施形態では、前記生分解性の薬物デリバリー組成物は、前記活性成分を少なくとも1日間、任意選択的に少なくとも3日間、任意選択的に少なくとも7日間デリバリーすることがある。別の実施形態では、前記生分解性の薬物デリバリー組成物は、前記活性成分を少なくとも30日間デリバリーすることがある。ある実施形態では、前記生分解性の薬物デリバリー組成物は、前記活性成分を少なくとも90日間デリバリーすることがある。更に別の実施形態では、前記生分解性の薬物デリバリー組成物は、前記活性成分を1年以上デリバリーすることがある。
【0118】
前記生分解性の薬物デリバリー組成物を、好ましくは室温で、注射可能な液体とすることができ、過剰な力を加えることなくシリンジを通して注射することができる。これらの生分解性の薬物デリバリー組成物は又、その場で形成され、生分解性であり、動物又は植物に注射されると固形デポ(depot)に変わる。シリンジを介して注射できる微粒子として調製することもある。
【0119】
或いは、前記生分解性の薬物組成物を、固体として製造し、小さな粒子として調製し(その大きさのために注射できない)、傷害部位に散布する粉末として調製する。その固形インプラントは、体内への適用に望ましい、任意の形状に、製剤化することがある。
【0120】
別の態様では、前記薬物デリバリー組成物は棒状のインプラント(rod implant)であり、これを皮膚下又は体内の別の区画に埋め込むことがある。別の態様では、前記薬物デリバリー組成物をフィルムとして調製し、適用することがある。更に別の態様では、前記生分解性の薬物デリバリー組成物は、動物若しくは植物の体表若しくは体内に適用することができるような空間的製剤(spatial formulation)として使用することがある。眼等を含め、体の任意の場所に適用するすることがある。
【0121】
前記生分解性の薬物デリバリー組成物は、薬学的に許容可能な担体、アジュバント又は媒体を更に含むことがある。許容可能な担体は、生理食塩水、バッファー化生理食塩水等であることがある。薬物、及びトリブロック・コポリマーとジブロック・コポリマーの中から選択される、少なくとも3種類のコポリマーの混合物とで生分解性の薬物デリバリー組成物を製剤化した後で、許容可能な担体をその生分解性の薬物デリバリー組成物に加えることがある。
【0122】
前記アジュバントを、前記薬物を混合する際に、同時に配合することがある。この点に関して、使用可能なアジュバンは、ミョウバン、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、MPL登録商標、CpGモチーフ、改変トキシン、サポニン、サイトカイン等の内在性の刺激性アジュバント、フロイント完全及び不完全アジュバン、ISCOMタイプ・アジュバント、ムラミル・ペプチド等である。
【0123】
生分解性の薬物デリバリー組成物中において、前記媒体は、必要な場合に前記活性成分のデリバリーを変化させることができる、任意の希釈剤、追加的な溶媒、充填剤又はバインダーであることがある。例としては、トリアセチン又はトリプロピオニン等の少量のトリグリセリドが挙げられる。本発明の生分解性の薬物デリバリー組成物で用いることがある量は、12%~20% (w/w%)で変わることがある。ある態様では、トリアセチンは17% (w/w%)で前記製剤中に添加することがある。別の態様では、トリプロピオニン(ここではトリプロと略す)を16% (w/w%)で添加することがある。
【0124】
ある実施形態では、前記組成物は有機溶媒を含むことがある。前記有機溶媒は、以下の群から選択されることがある:ベンジル・アルコール、ベンジル・ベンゾエート、ジメチル・イソソルビド(DMI)、ジメチル・スルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロール・ホルマール、メチル・エチル・ケトン、メチル・イソブチル・ケトン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ピロリドン-2、テトラグリコール、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン(トリプロ)、及びそれらの混合物。ある実施形態では、DMSO、NMP、トリプロ又はその混合物を溶媒として使用することがある。
【0125】
更なる態様において、トリブロック・コポリマーとジブロック・コポリマーの中から選択される、少なくとも3種類のコポリマーの混合物を含む生分解性の薬物デリバリー組成物を調製するための方法が提供され、これも又、本発明にも包含される。この方法は以下を含む:
(i)以下を含む少なくとも3種のトリブロック及びジブロック・コポリマーを有機溶媒に溶解すること:
(a)次式を有する生分解性のトリブロック・コポリマー:
Av-Bw-Ax
式中、Aはポリエステルである、Bはポリエチレン・グリコールである、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数である、並びにv=x若しくはv≠xである;並びに
(b)次式を有する生分解性のジブロック・コポリマー:
Cy-Az
式中、Aはポリエステルである、Cはエンドキャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコールである、y及びzは繰り返し単位の数である、yは2~250の範囲である、並びにzは1~3,000の範囲である、ポリマー混合物を形成する;
ここで、(a)と(b)との間の重量比は1:19~5:1である;並びに
(ii)少なくとも1種の薬学的な活性成分を前記ポリマー混合物に添加すること。
【0126】
この方法において、少なくとも1種のジブロック及び少なくとも1種のトリブロック、例えば3~10種のブロック・コポリマーを含む、少なくとも3種のブロック・コポリマーの組合せを製剤化することがある。例えば、2種のトリブロック・コポリマーを1種のジブロックと組み合わせる、又は1種のトリブロック・コポリマーを2種のジブロックと組み合わせることがある。5種のトリブロック・コポリマーを5種のジブロックと組み合わせることがある、又は3種のトリブロック・コポリマーを7種のジブロック・コポリマーと組み合わせることがある。4種のトリブロックを3種のジブロック等と組み合わせることがある。
【0127】
前記トリブロック中のポリエステルは、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレン・アジピン酸塩(PEA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、及びそれらの混合物であることがある。ある実施形態では、使用するポリエステルはポリ乳酸である。
【0128】
前記ジブロック中のポリエステルは、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレン・アジピン酸塩(PEA)、ポリグリコール酸(PGA)、又はポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、及びそれらの混合物であることがある。ある実施形態では、使用するポリエステルはポリ乳酸である。別の実施形態では、前記ポリエステルはポリ(乳酸-コ-グリコール酸)である。
【0129】
本明細書に記載する方法で使用することがある有機溶媒は、以下の群から選択されることがある:ベンジル・アルコール、ベンジル・ベンゾエート、ジメチル・イソソルビド(DMI)、ジメチル・スルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロール・ホルマール、メチル・エチル・ケトン、メチル・イソブチル・ケトン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ピロリドン-2、テトラグリコール、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン(トリプロ)、及びそれらの混合物。ある実施形態では、DMSO、NMP、トリプロ又はその混合物を溶媒として使用することがある。
【0130】
前記有機溶媒は、一般に、全組成物の35%~75% (w/w%)の量で存在する。別の実施形態では、前記生分解性の薬物デリバリー組成物を調製する際に使用する有機溶媒は、全組成物の50%~60% (w/w%)の量で存在する。更に別の実施形態では、前記生分解性の薬物デリバリー組成物を調製する際に使用する溶媒は、全組成物の25%~90% (w/w%)の量で存在する。別の実施形態における有機溶媒の量は、蒸発させれば0%とすることができる。
【0131】
この有機溶媒を、前記組成物中に残しておくことがある、又は投与前に蒸発させることがある。
【0132】
一部のmPEG-OHは、少量のOH-PEG-OHが混じっている可能性がある。本発明の方法に従うことにより、及びその混じりものがあるmPEG-OHを使用することにより、最終生成物は、少量のPLA-PEG-PLAが混じったmPEG-PLAであることがあり、これは本発明に包含される。
【0133】
更なる態様では、本発明は、少なくとも1種の活性成分が放出される動態を変調させる方法を提供し、前記方法は、以下を含むトリブロック及びジブロック・コポリマーの中から選択される、少なくとも3種の異なったブロック・コポリマーの混合物を含む生分解性の薬物デリバリー組成物を投与することを、含む:
(a)次式を有する生分解性のトリブロック・コポリマー:
Av-Bw-Ax
式中、Aはポリエステルである、Bはポリエチレン・グリコールである、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数である、並びにv=x若しくはv≠xである;
(b)次式を有する生分解性のジブロック・コポリマー:
Cy-Az
式中、Aはポリエステルである、Cはエンドキャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコールである、y及びzは繰り返し単位の数である、yは2~250の範囲である、並びにzは1~3,000の範囲である;
ここで、(a)と(b)との間の重量比は1:19~5:1である;並びに
(c)少なくとも1種の薬学的な活性成分。
【0134】
少なくとも1種の活性成分が放出される動態を変調させるこの方法では、前記トリブロック及びジブロックにおけるポリエステルは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-ラクチド)、ポリエチレン・アジピン酸塩、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)酸、ポリヒドロキシアルカノエート及びそれらの混合物の群から選択されることがある。そして、エンド-キャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコールは、メトキシ・ポリエチレン・グリコールであることがある。ある態様では、本明細書に記載されるように、前記生分解性の薬物組成物に関して、前記トリブロックはPLA-PEG-PLAであり、前記ジブロックはmPEG-PLAである。
【0135】
少なくとも1種の活性成分が放出される動態を変調させるこの方法では、前記ポリエチレン・グリコール鎖の分子量は180 g/mol~12 kg/mol又は194 g/mol~12 kg/molであることがあり、前記エンド-キャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコール鎖の分子量は100 g/mol~4 kg/mol又は164 g/mol~10 kg/molである。
【0136】
本方法の別の実施形態では、前記方法で使用する少なくとも1種の薬学的な活性成分は、全組成物の0.05%~60% (w/w%)、任意選択的に0.05%~40%、任意選択的に0.05%~30%、任意選択的に0.05%~10%、任意選択的に0.05%~7%、任意選択的に0.05%~2%の量で存在する。
【0137】
前記方法のある実施形態では、前記生分解性の薬物デリバリー組成物は注射可能な液体であり、少なくとも1種類の薬学的な活性成分が0.05%~60% (w/w%)の量で存在する。
【0138】
前記方法の別の実施形態では、前記生分解性の薬物デリバリー組成物は棒状のインプラント(rod implant)であり、少なくとも1種の薬学的な活性成分が50%から80% (w/w%)の量で存在する。
【0139】
前記方法の更なる実施形態では、前記コポリマーは、全組成物の2%~60% (w/w%)の量で存在し、任意選択的に10%~50%、任意選択的に20%~40%、任意選択的に20%~35%、任意選択的に30%~50%の量で存在する。
【0140】
前記方法のある実施形態では、1種以上のトリブロック・コポリマーは、全組成物の1%~50% (w/w%)、任意選択的に5%~40%の量で存在する。
【0141】
前記方法のある実施形態では、1種以上のジブロック・コポリマーは、全組成物の1%~57% (w/w%)、2.5%~45%の量で存在する。
【0142】
前記方法の更なる実施形態では、前記生分解性の薬物デリバリー組成物中において、(a)の生分解性のトリブロック・コポリマーの合計と(b)の生分解性のジブロック・コポリマーの合計に関する重量比は、1:5~3:1である。
【0143】
一般に、前記方法で用いる前記組成物中におけるポリエステルの繰り返し単位対エチレン・オキシドのモル比は、前記トリブロック中で、0.5~22.3、任意選択的に0.5~10、任意選択的に0.5~3.5、及び前記ジブロック中で0.8~15、任意選択的に1~10である。
【0144】
本明細書中に記載されるように、少なくとも1種の活性成分が放出される動態を変調させる方法において、前記組成物は、例えば、注射可能な液体又は微粒子であることがあり、そして体内に注射された場合にデポ(depot)を、若しくは固体を形成することがあり、又は固体として製剤化され、そして例えば、トロカールを使用して体内に配置されることがある小さな固体粒子、若しくは棒状のインプラント(rod implant)、若しくは空間的製剤(spatial formulation)であることがある。
【0145】
本明細書に記載されるように、少なくとも1種の活性成分が放出される動態を変調させるために、前記生分解性の薬物デリバリー組成物を使用することは、本発明の別の態様である。
【0146】
以下を含む薬物デリバリー構成物:
(i)少なくとも3種の異なったブロック・コポリマーの混合物、ここで各ブロック・コポリマーは以下である:
(a)次式を有する生分解性のトリブロック・コポリマー:
Av-Bw-Ax
式中、Aはポリエステルである、Bはポリエチレン・グリコールである、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数である、並びにv=x若しくはv≠xである;又は
(b)次式を有する生分解性のジブロック・コポリマー:
Cy-Az
式中、Aはポリエステルである、Cはエンドキャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコールである、y及びzは繰り返し単位の数である、yは2~250の範囲である、並びにzは1~3,000の範囲である;並びに
ここで、前記混合物は、少なくとも1種の(a)及び少なくとも1種の(b)を含む;並びに(a)と(b)との間の重量比は1:19~5:1である;並びに
(ii)少なくとも1種の薬学的な活性成分、
が提供される。
【0147】
又、少なくとも1種の活性成分が放出される動態を変調させる方法も提供され、前記方法は、対象に前記定義の薬物デリバリー組成物を投与することを含み、ここで、前記薬物デリバリー組成物から少なくとも1種の活性成分が放出される動態は、前記薬物デリバリー組成物の1種以上の物理的パラメータに影響を与えることなく、変調される。
【0148】
少なくとも1種の活性成分が放出される動態を変調させるための、前記定義の薬物デリバリー組成物の使用が更に提供される。
【0149】
本発明の多くの実施形態及び/又は態様を記載してきた。それにもかかわらず、様々な変更が本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われうることは理解されるだろう。
【0150】
他の態様及び実施形態は、以下に記載されるか、又は好ましい実施形態の以下の記載から容易に生じるであろう。
【0151】
以下を含む少なくとも3種のトリブロック・コポリマーとジブロック・コポリマーの混合物を含む生分解性の薬物デリバリー組成物:
(a)次式を有する生分解性のトリブロック・コポリマー:
Av-Bw-Ax
式中、Aはポリエステルである、Bはポリエチレン・グリコールである、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数である、並びにv=x若しくはv≠xである;
(b)次式を有する生分解性のジブロック・コポリマー:
Cy-Az
式中、Aはポリエステルである、Cはエンドキャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコールである、y及びzは繰り返し単位の数である、yは2~250の範囲である、並びにzは1~3,000の範囲である、ここで、前記生分解性の薬物組成物中における、(a)の生分解性のトリブロック・コポリマーと(b)の生分解性のCAジブロック・コポリマーの合計の重量比は1:19~5:1である;
(c)少なくとも1種の追加的な生分解性のブロック・コポリマー;並びに
(d)少なくとも1種の薬学的な活性成分、ここで、前記生分解性の薬物デリバリー組成物から前記少なくとも1種の活性成分が放出される動態が、前記生分解性の薬物組成物の物理的パラメータに影響を与えることなく、変調される、
が記載される。
【0152】
以下を含む少なくとも3種のトリブロック・コポリマーとジブロック・コポリマーの混合物を含む生分解性の薬物デリバリー組成物:
(a)次式を有する生分解性のトリブロック・コポリマー:
Av-Bw-Ax
式中、Aはポリエステルである、Bはポリエチレン・グリコールである、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数である、v及びxはエステルの繰り返し単位である、wはエチレン・オキシドの繰り返し単位である、並びにv=x若しくはv≠xである;
(b)次式を有する生分解性のジブロック・コポリマー:
Cy-Az
式中、Aはポリエステルである、Cはエンドキャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコールである、y及びzは繰り返し単位の数である、yは2~250の範囲である、並びにzは1~3,000の範囲である、yはエチレン・オキシドの繰り返し単位の数及びzはエステルの繰り返し単位の数である、ここで、前記生分解性の薬物組成物中における、(a)の生分解性のトリブロック・コポリマーと(b)の生分解性のCAジブロック・コポリマーの合計の重量比は1:19~5:1である;
(c)少なくとも1種の追加的な生分解性のブロック・コポリマー;並びに
(d)少なくとも1種の薬学的な活性成分、ここで、前記生分解性の薬物デリバリー組成物から前記少なくとも1種の活性成分が放出される動態が、前記生分解性の薬物組成物の物理的パラメータに影響を与えることなく、変調される、
が記載される。
【0153】
以下を含む少なくとも3種のトリブロック・コポリマーとジブロック・コポリマーの混合物を含む生分解性の薬物デリバリー組成物:
(a)次式を有する生分解性のトリブロック・コポリマー:
PLAv-PEGw-PLAx
式中、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数である、並びにv=x若しくはv≠xである;
(b)次式を有する生分解性のジブロック・コポリマー:
mPEGy-PLAz
式中、y及びzは繰り返し単位の数である、yは2~250の範囲である、並びにzは1~3,000の範囲である、ここで、前記生分解性の薬物組成物中における、(a)の生分解性のトリブロック・コポリマーと(b)の生分解性のジブロック・コポリマーの合計の重量比は1:19~5:1である;
(c)少なくとも1種の追加的な生分解性のブロック・コポリマー;並びに
(d)少なくとも1種の薬学的な活性成分、ここで、前記生分解性の薬物デリバリー組成物から前記少なくとも1種の活性成分が放出される動態が、前記生分解性の薬物組成物の物理的パラメータに影響を与えることなく、変調される、
が記載される。
【0154】
以下を含む少なくとも3種のトリブロック・コポリマーとジブロック・コポリマーの混合物を含む生分解性の薬物デリバリー組成物:
(a)次式を有する、全組成物の1%~50% (w/w%)の量で存在する生分解性のトリブロック・コポリマー:
PLAv-PEGw-PLAx
式中、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数である、並びにv=x若しくはv≠xである;
(b)次式を有する、全組成物の1%~57% (w/w%)の量で存在する生分解性のジブロック・コポリマー:
mPEGy-PLAz
式中、y及びzは繰り返し単位の数である、yは2~250の範囲である、並びにzは1~3,000の範囲である、ここで、前記生分解性の薬物組成物中における、(a)の生分解性のトリブロック・コポリマーと(b)の生分解性のジブロック・コポリマーの合計の重量比は1:19~5:1である;
(c)少なくとも1種の追加的な生分解性のブロック・コポリマー;並びに
(d)全組成物の0.05%~60% (w/w%)の量で存在する少なくとも1種の薬学的な活性成分、ここで、前記生分解性の薬物デリバリー組成物から前記少なくとも1種の活性成分が放出される動態が、前記生分解性の薬物組成物の物理的パラメータに影響を与えることなく、変調される、
が記載される。
【0155】
少なくとも1種の活性成分が放出される動態を変調させる方法、前記方法は、以下を含む少なくとも3種のトリブロック・コポリマーとジブロック・コポリマーの混合物を含む生分解性の薬物デリバリー組成物を投与することを含む:
(a)次式を有する生分解性のトリブロック・コポリマー:
Av-Bw-Ax
式中、Aはポリエステルである、Bはポリエチレン・グリコールである、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数である、並びにv=x若しくはv≠xである;
(b)次式を有する生分解性のジブロック・コポリマー:
Cy-Az
式中、Aはポリエステルである、Cはエンドキャップされた(end-capped)ポリエチレン・グリコールである、y及びzは繰り返し単位の数である、yは2~250の範囲である、zは1~300~250の範囲である、zは1~3,000の範囲である、ここで、前記生分解性の薬物組成物中における、(a)の生分解性のトリブロック・コポリマーと(b)の生分解性のCAジブロック・コポリマーの合計の重量比は1:19~5:1である;
(c)少なくとも1種の追加的な生分解性のブロック・コポリマー;並びに
(d)少なくとも1種の薬学的な活性成分、ここで、前記生分解性の薬物デリバリー組成物から前記少なくとも1種の活性成分が放出される動態が、前記生分解性の薬物組成物の物理的パラメータに影響を与えることなく、変調される、
が記載される。
【実施例】
【0156】
実施例1‐ポリマーの合成
ブロック・コポリマーを、米国特許第6,350,812号(参照により本明細書に取りこまれる)に記載されている方法に従って、軽微な改変を加えて合成した。一般に、必要量のPEG(トリブロック・コポリマー中)又はメトキシ-PEG (ジブロック・コポリマー中)を80℃で加熱し、反応容器内で30分間減圧乾燥する。DL-ラクチド(目標とするLA/EOモル比に対応)と乳酸亜鉛(ラクチド量の1/1000)を添加した。まず、前記反応混合物を2回の短い減圧/N2サイクルで脱水した。前記反応混合物を一定の窒素流量(0.2 bar)下で140℃で加熱した。反応を停止させた後、前記ブロック・コポリマーを容器から取り出し、固化するまで室温で放置した。得られた生成物を、1H-NMRにより、その乳酸含量に関して、解析した。1H NMRスペクトロスコピーを、ブルッカー・アドバンス300MHzスペクトロメーターを用いて実施した。
【0157】
すべての1H NMRスペクトログラムについて、ピークの積分とその解析にはMestReNovaソフトウェアを使用した。化学シフトはCDCl3のΔ=7.26ppm溶媒値を基準とした。
【0158】
エチレン・オキシド単位に対する乳酸単位間の比(LA/EO)を表すR比を求めるために、全てのピークを別々に積分した。前記シグナルの強さ(積分値)は、前記シグナルを生成する水素の数に正比例する。従って、R比(LA/EO比)を測定するためには、前記積分値は均一であり、プロトンの数を表す必要がある(例えば、全てのシグナル値を、1Hに対して決定する)。次にPLA及び1種のPEGの特徴的なピークを用いて、LA/EO比を決定する。この方法は、1000 g/molより大きいPEGの分子量に対して有効であり、そこではポリマーの末端官能基について得られるシグナルを無視できる。
【0159】
本明細書に記載したトリブロック・ポリマーをPxRyと名付けた。ここでxはPEG鎖の分子量をkDaで表し、yはポリエステル・モノマー/エチレン・オキシドのモル比、例えば乳酸/エチレン・オキシド(LA/EO)のモル比である。本明細書に記載のジブロックmPEG-PLAポリマー(ここで、dPxRyと名付けた、ここで、xはPEG鎖の分子量をkDaで表し、yはポリエステル・モノマー/エチレン・オキシドのモル比、例えば乳酸/エチレン・オキシド(LA/EO)のモル比、である)。
【0160】
実施例2‐メロキシカムの具体的な製剤の調製
本明細書に記載した製剤F197は、APIとしてメロキシカムを含む、ブロック・コポリマーの有機溶液に基づくものとした。ジブロックの合計に対するトリブロックの合計の重量比が表6に示すように規定されるジブロックとトリブロック・コポリマーの混合物である、1800ミリグラムのブロック・コポリマーを、室温で一晩かけて、かつ一定の磁気撹拌下で、1140ミリグラムのDMSOに溶解した。翌日、60ミリグラムの薬物をこのブロック・コポリマー液に加え、得られた溶液が完全にホモゲナイゼーションされるまで攪拌した。前記製剤を、使用前にシリンジに充填した。
【0161】
実施例3‐製剤の調製
実施例1及び2の後、以下の製剤を下記の表1~6に示すように調製した:表1~6の全ての組成物は、溶媒としてDMSOを用いて、100%に合わせた。
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
実施例4‐種々の組成物の注射可能性
注射可能性の測定を、Lloyd Instruments FTプラス・テクスチュロメーターを用いて、以下の分析条件を用いて実施する:
セットアップ1:
500 μLの検討する製剤を、1 mLのコダン・シリンジ、23G 1"テルモ針によって、1 mL/分の流量で注射する。サンプルを6回反復して解析する。
N (ニュートン)として得られた値は、記載した条件で製剤を注射するのに要した力と相関する。
セットアップ2:
500 μLの検討する製剤を、1 mLのコダン・シリンジ、23G 5/8" BD針によって、1 mL/分の流量で注射する。サンプルを6回反復して解析する。
N (ニュートン)として得られた値は、記載した条件で製剤を注射するのに要した力と相関する。
【0169】
図2と
図3の実施例:
F289、F290及びF291は、トリブロック(TB) P1R4及びジブロック(DB) dP1R4の混合物、又はトリブロック(TB) P1R4、ジブロック(DB) dP1R4及びdP0.35R8.5の混合物、又はトリブロック(TB) P1R4及びジブロック(DB) dP0.35R8.5の混合物であり、表3に示すように、それぞれ40%の総ポリマー含有量である。表7に示すように、F289、F290及びF291の注射可能性の平均値は、それぞれ4.8N及び4.4N及び4.3Nである。注射可能性の測定を、セットアップ1に従い、実施した。
【0170】
図2に示すように、データは、追加的な生分解性のブロック・コポリマーを添加すると放出変調が誘導されるが、注射可能性は影響されないこと、を示している。
【0171】
F292は、表2に示すように、50%の総ポリマー含有量に対して、トリブロック(TB) P1R4とジブロック(DB) dP1R4の混合物である。表7に示すように、F292の注射可能性の平均値は14.5Nである。
【0172】
図2に示すように、データは、総ポリマー含有量が40%から50%に上昇すると放出変調が誘導されること、を示している。しかし、この増加によって、F289とF292の注射可能性の値は、それぞれ4.8Nから14.5Nに上昇する。
【0173】
F293及びF294は、表2に示すように、40%の総ポリマー含有量に対して、トリブロック(TB) P1R4及びジブロック(DB) dP1R4の混合物であり、それぞれ4%及び6%のAPI負荷量を含む。表7に示すように、F293及びF294の注射可能性の平均値は4.8N及び5.3Nである。
【0174】
図3に示すように、データは、合計したAPIの負荷量を4%から6%に増やすと、放出変調が誘導されること、を示している。しかし、この変調は、高い初期バーストがあるために、最適ではない。
【0175】
【0176】
図7及び8の実施例:
F197、F199及びF325は、表8に示すように、60%の総ポリマー含有量に対して、ジブロック(DB) dP0.35R8.5及びトリブロック(TB) P0.19R2及び/又はP2R3.5の混合物である。表8に詳述するように、F197、F199及びF325の注射可能性の平均値は、それぞれ2.5N、8.6N及び53.6Nである。
【0177】
図7に示すように、データは、追加的な生分解性のブロック・コポリマーを添加すると、放出変調が誘導され、製剤は注射可能な状態に保たれること、を示している。
【0178】
注射可能性の測定を、セットアップ2に従い、実施した。
【0179】
【0180】
実施例5‐粘性測定
動的粘性はコーン・プレート測定システムを備えたアントン・パール・レオメーターを用いて測定する。粘性の測定には一般に、以下の設定を用いる:
【0181】
250μLの試験製剤を測定プレート上に置く。温度を、+25℃で制御する。測定システムは、直径25 mm、2度のコーン角度のコーン・プレート(CP25-2/S)を使用する。
【0182】
作動範囲は10~1000秒-1である。
【0183】
10秒間ボルテックスした後、製剤を、へらを用いて、温度を調節した測定プレートの中心に置く。その測定システムを下げ、測定システムと測定プレートの間に0.051 mmのギャップを残す。
【0184】
10~1000秒-1のずり速度域の範囲中、11点で、粘性測定を行う。記載する値は、100秒-1で得られた値である。
【0185】
実施例6‐in vitro放出アッセイ
50 mlの生理的バッファーに50 mgのブピバカイン製剤を加える。使用する生理学的バッファーは、pH 7.4の50 mlのクレブス/リンゲル/トリス(KRT)バッファーを含むKRTであり、これは143 mMの塩化ナトリウム、5.1 mMの塩化カリウム、2.7 mMの塩化カルシウム、1.34 mMの硫酸マグネシウム、25 mMのトリス-Cl pH 7.4及び0.1%のアジ化ナトリウムである。注射すると、この溶媒は前記製剤から離れて拡散し、残りのポリマーは水環境内で、in situ デポ(depot)を形成する。
【0186】
薬物放出に関して、シンク条件を維持するために、放出媒体を、37℃、180 rpm (Unimax 1010装置、Heidolph)で一定の振とう下に置いた。所定の時間間隔で、媒体を採取し、UPLCにより分析する。検量線から、製剤から放出されるブピバカインの量を計算する。ブピバカイン濃度は0~150 μg/mlである。
【0187】
ポリマー溶液中に取り込まれたブピバカインは、固まるにつれてポリマー・マトリックス内に封入される。
【0188】
実施例7‐In vivo試験
本発明による組成物を、関連する動物種(ラット、イヌ、ミニブタ)における薬物動態研究において試験することがある。本明細書中の製剤の動物あたりx mgの薬物を含有する組成物を、動物に皮下投与することがある。血液サンプルを、種々の時点で、(抗凝固剤が有り又は無しで)チューブに採取し、任意選択的に遠心分離し、それぞれの時点のマトリックス(血漿、プラズマ、全血)を得た。前記サンプルをLC/MS/MSによって分析し、薬物含量について定量する。結果を、経時的に測定したマトリックスに関して、ng/ml又はpg/mlとして示す。治療ウィンドウ内で、薬物のマトリックス・レベルが持続しているという結果は、本発明による組成物がXヶ月までの時間にわたって、徐放性を持続するのに有効であることを意味する。
【0189】
種々の好ましい実施形態に関して本発明を記載してきたが、当業者は、種々の改変、置換、省略及び変更が、本発明の範囲から逸脱することなく、なされ得ることを理解するであろう。従って、本発明の範囲は、その均等物を含め、特許請求の範囲によって限定されることが意図されている。