(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】密封搬送装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20221206BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H01L21/68 T
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2021069984
(22)【出願日】2021-04-16
【審査請求日】2021-04-16
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】520238428
【氏名又は名称】台灣電鏡儀器股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】洪仁奕
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼祖緯
(72)【発明者】
【氏名】謝▲徳▼宇
(72)【発明者】
【氏名】楊麗巧
(72)【発明者】
【氏名】陳志▲ウェイ▼
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-110309(JP,A)
【文献】特開2007-173265(JP,A)
【文献】特開2002-222852(JP,A)
【文献】特開2010-056261(JP,A)
【文献】特表2002-543628(JP,A)
【文献】国際公開第2013/157462(WO,A1)
【文献】特開2008-130369(JP,A)
【文献】特開2010-067468(JP,A)
【文献】特開2011-237292(JP,A)
【文献】特開2014-085211(JP,A)
【文献】国際公開第2012/046775(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/037136(WO,A1)
【文献】特開2003-258079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子顕微鏡の真空チャンバー内で用いられる密封搬送装置であって、
測定対象物を収容するための収容空間、及び開口部を有する本体と、
前記収容空間に配置されている載置モジュールと、
前記載置モジュールに接続されており、前記載置モジュールの少なくとも一部が移動して前記収容空間から離れるように駆動することによって、前記測定対象物を前記収容空間から移出させる駆動装置と
を含み、
前記載置モジュールは、
前記本体の前記開口部に対応して配置されて、前記収容空間を密封するためのカバー部と、
前記カバー部から延在して、前記収容空間の中に配置されて、前記測定対象物を載置するための載置部と、
を含み、
ここで、前記載置モジュールが移動して前記収容空間から離れると、前記収容空間は、密封状態から非密封状態に変わる、
密封搬送装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、前記載置モジュールを前記収容空間から離すように引っ張るかまたは押す弾性素子を含む、請求項1に記載の密封搬送装置。
【請求項3】
前記弾性素子は、引張ばねまたはプレストレスト力ばねを含む、請求項2に記載の密封搬送装置。
【請求項4】
前記載置モジュールを前記本体の前記収容空間の中にロックおよび固定するロックアセンブリを更に含み、前記ロックアセンブリがアンロックされると、前記弾性素子は前記載置モジュールを前記収容空間から離すように引っ張るかまたは押す、請求項2または3に記載の密封搬送装置。
【請求項5】
前記駆動装置は、
前記載置モジュールに接続されており、前記載置モジュールを前記収容空間の中にロックおよび固定するネジアセンブリと、
前記ネジアセンブリに接続されており、前記ネジアセンブリを回転させて、前記載置モジュールを前記収容空間から離すように駆動するモーター装置と、
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の密封搬送装置。
【請求項6】
前記カバー部は、前記収容空間を外部環境から気密に隔離するための密封素子をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の密封搬送装置。
【請求項7】
前記本体に配置されており、前記収容空間内の空気圧を制御するための空気圧制御装置をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の密封搬送装置。
【請求項8】
前記本体はさらに窓を含み、前記窓の材料は、可視光または電子ビームを通過させることができる材料を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の密封搬送装置。
【請求項9】
前記載置部は、前記測定対象物の位置を変更するために水平移動または垂直移動を実行する変位ユニットをさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の密封搬送装置。
【請求項10】
前記本体と前記載置モジュールとの間に制御電圧または電流を伝送するための電気部品をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の密封搬送装置。
【請求項11】
温度を制御するために前記載置部に配置される温度制御素子をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の密封搬送装置。
【請求項12】
電子顕微鏡の真空チャンバー内で用いられる密封搬送装置であって、
測定対象物を収容するための収容空間、及び開口部を有する本体と、
前記収容空間に配置されている載置モジュールと、
前記載置モジュールに接続されており、前記載置モジュールの少なくとも一部が移動して前記収容空間から離れるように駆動することによって、前記測定対象物を前記収容空間から移出させる駆動装置と
を含み、
前記載置モジュールは、
前記本体の前記開口部に対応して配置されて、前記収容空間を密封するためのカバー部と、
前記カバー部から延在して、前記収容空間の中に配置されて、前記測定対象物を載置するための載置部と、
を含み、
ここで、前記載置モジュールが移動して前記収容空間から離れる
と同時に、前記測定対象物は、前記収容空間から離れる、
密封搬送装置。
【請求項13】
前記駆動装置は、前記載置モジュールを前記収容空間から離すように引っ張るかまたは押す弾性素子を含む、請求項12に記載の密封搬送装置。
【請求項14】
前記弾性素子は、引張ばねまたはプレストレスト力ばねを含む、請求項13に記載の密封搬送装置。
【請求項15】
前記載置モジュールを前記本体の前記収容空間の中にロックおよび固定するロックアセンブリを更に含み、前記ロックアセンブリがアンロックされると、前記弾性素子は前記載置モジュールを前記収容空間から離すように引っ張るかまたは押す、請求項13または14に記載の密封搬送装置。
【請求項16】
前記駆動装置は、
前記載置モジュールに接続されており、前記載置モジュールを前記収容空間の中にロックおよび固定するネジアセンブリと、
前記ネジアセンブリに接続されており、前記ネジアセンブリを回転させて、前記載置モジュールを前記収容空間から離すように駆動するモーター装置と、
を含む、請求項12から15のいずれか一項に記載の密封搬送装置。
【請求項17】
前記本体と前記載置モジュールとの間に制御電圧または電流を伝送するための電気部品をさらに含む、請求項12から16のいずれか一項に記載の密封搬送装置。
【請求項18】
温度を制御するために前記載置部に配置される温度制御素子をさらに含む、請求項12から17のいずれか一項に記載の密封搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封搬送装置に関し、特に真空環境で開くことができる密封搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
科学技術の発展に伴って、電子顕微鏡は、広く使われている測定ツールとなっている。基材構造、パッケージ構造、印刷回路板などの半導体及びマイクロエレクトロニクス分野においても、スラリー成分分析、化学機械研磨、セラミック構造分析などの材料の化学工業分野においても、各種繊維或いは金属構造分析の工業製造及び精密加工分野においても、全部は、電子顕微鏡が適用できる範囲である。
【0003】
しかし、場合によっては、測定対象物は、酸化、湿気や他の粒子汚染などの問題によるサンプルの破損や汚染を避けるために、大気環境に曝されてはいけない。例えば、リチウム電池の材料分析研究においては、測定対象物は材料「リチウム」を含む。この材料は大気環境に触れると急速に酸化されてしまう。そこで、大気環境に曝されてはいけない上記のような測定対象物を電子顕微鏡に入れて測定を行うために、良好な気密機能を備えるとともに、電子顕微鏡の真空室で急速に開くことができる搬送装置が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここでは、真空環境で開いて、搬送される測定対象物を曝すように、測定対象物を載置するための載置モジュールを移動させる密封搬送装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、本体、載置モジュール、および駆動装置を含む密封搬送装置を提供することである。本体は、測定対象物を収容するための収容空間、及び開口部を有する。載置モジュールは、収容空間に配置されており、本体の開口部に対応して配置されて収容空間を密封するためのカバー部と、カバー部から延在して、収容空間の中に配置されて、測定対象物を載置するための載置部と、を含んでよい。駆動装置は、載置モジュールの少なくとも一部が移動して収容空間から離れるように駆動することによって、測定のために測定対象物を収容空間から移出させてよい。ここで、載置モジュールが移動して収容空間から離れると、収容空間は、密封状態から非密封状態に変わる。
【0006】
好ましくは、駆動装置は、載置モジュールを引っ張るかまたは押して収容空間から離す弾性素子を含んでよい。
【0007】
好ましくは、弾性素子は、引張ばねまたはプレストレスト力ばねを含んでよい。
【0008】
好ましくは、本発明に係る密封搬送装置は、載置モジュールを本体の収容空間の中にロックおよび固定するロックアセンブリを更に含む。ロックアセンブリがアンロックされると、弾性素子は、載置モジュールを引っ張るかまたは押して収容空間から離すことができる。
【0009】
好ましくは、駆動装置は更に、ネジアセンブリとモーター装置を含んでよい。ネジアセンブリは、載置モジュールに接続されており、載置モジュールを収容空間の中にロックおよび固定することができる。モーター装置は、ネジアセンブリに接続されており、ネジアセンブリを回転させて、載置モジュールを収容空間から離すように駆動することができる。
【0010】
好ましくは、載置モジュールのカバー部は、収容空間を外部環境から気密に隔離するための密封素子をさらに含んでよい。
【0011】
好ましくは、本発明に係る密封搬送装置は、本体に配置されており、収容空間内の空気圧を制御するための空気圧制御装置をさらに含んでよい。
【0012】
好ましくは、本体はさらに窓を含み、窓の材料は、可視光または電子ビームを通過させることができる材料を含んでよい。
【0013】
好ましくは、載置部は、前記測定対象物の位置を変更するために水平移動または垂直移動を実行する変位ユニットをさらに含んでよい。
【0014】
好ましくは、密封搬送装置は、本体と前記載置モジュールとの間に制御電圧または電流を伝送するための電気部品をさらに含んでよい。
【0015】
好ましくは、密封搬送装置は、温度を制御するために前記載置部に配置される温度制御素子をさらに含んでよい。
【0016】
本発明の別の目的は、本体、載置モジュール、および駆動装置を含む密封搬送装置を提供することである。主体は、測定対象物を収容するための収容空間、及び開口部を有する。載置モジュールは、収容空間に配置されており、本体の開口部に対応して配置されて収容空間を密封するためのカバー部と、カバー部から延在して収容空間に配置されて測定対象物を載置するための載置部とを含んでよい。駆動装置は、載置モジュールに接続されており、載置モジュールの少なくとも一部が移動して収容空間から離れるように駆動することによって、測定対象物を収容空間から移出させることができる。ここで、載置モジュールが移動して収容空間から離れる同時に、測定対象物は、収容空間から離れる。
【0017】
好ましくは、駆動装置は、前記載置モジュールを前記収容空間から離すように引っ張るかまたは押す弾性素子を含んでよい。
【0018】
好ましくは、弾性素子は、引張ばねまたはプレストレスト力ばねを含んでよい。
【0019】
好ましくは、本発明に係る密封搬送装置は、載置モジュールを前記本体の前記収容空間の中にロックおよび固定するロックアセンブリを更に含んでよい。ロックアセンブリがアンロックされると、前記弾性素子は前記載置モジュールを前記収容空間から離すように引っ張るかまたは押すことができる。
【0020】
好ましくは、駆動装置はネジアセンブリとモーター装置を含んでよい。ネジアセンブリは、載置モジュールに接続されており、前記載置モジュールを前記収容空間の中にロックおよび固定することができる。モーター装置は、ネジアセンブリに接続されており、前記ネジアセンブリを回転させて、前記載置モジュールを前記収容空間から離すように駆動することができる。
【0021】
好ましくは、密封搬送装置は、本体と前記載置モジュールとの間に制御電圧または電流を伝送するための電気部品をさらに含んでよい。
【0022】
好ましくは、温度を制御するために前記載置部に配置される温度制御素子をさらに含んでよい。
【0023】
以下、本発明の目的、技術内容、特徴及びその達成された効果をより容易に理解するために、具体的な実施形態によって添付の図面に合わせて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る密封搬送装置の分解図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る密封状態の密封搬送装置の側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る非密封状態の密封搬送装置の側面図である。
【
図4】本発明の別の実施形態に係る密封状態の密封搬送装置の側面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る非密封状態の密封搬送装置の側面図である。
【
図8】本発明の更なる実施形態に係る密封状態の密封搬送装置の側面図である。
【
図9】本発明の更なる実施形態に係る非密封状態の密封搬送装置の側面図である。
【
図10】本発明の別の実施形態に係る密封状態の密封搬送装置の側面図である。
【
図11】本発明の別の実施形態に係る非密封状態の密封搬送装置の側面図である。
【
図12】本発明の他の実施形態に係る密封搬送装置の概略図である。
【
図13】本発明の更なる実施形態に係る密封搬送装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の各実施形態について詳細に説明し、例として図面を使用する。これらの詳細な説明に加えて、本発明は、他の実施形態でも広く実施することができる。実施形態のいずれかの容易な置換、修正、および同等の変更は、本発明の範囲に含まれ、特許請求の範囲に依存する。本明細書の説明では、読者が本発明をより完全に理解できるようにするために、多くの特定の詳細が提供されている。しかし、本発明は、特定の詳細の一部または全部を省略することを前提としても実施することができる。さらに、本発明に対する不必要な限定を回避するために、周知のステップまたは要素は詳細に説明されていない。図面内の同じまたは類似の要素は、同じまたは類似の符号で表される。特別に注意すべきなのは、図面は説明のみを目的としており、部品の実際のサイズや数量を表すものではない。図面を簡潔にするために、一部の詳細が完全に描かれていない場合がある。
【0026】
図1~
図3を参照して、本発明の一実施形態に係る密封搬送装置100は、本体10、載置モジュール30、および駆動装置40を含む。本体10は、測定対象物20を収容するための収容空間11と開口部12を有する。載置モジュール30は、移動可能に収容空間11に配置され、カバー部31および載置部32を含む。カバー部31は、収容空間11を密封するように本体10の開口部12に対応して配置される。載置部32は、カバー部31から(本体10に対する)移動可能な方向に沿って延在して、移動可能に収容空間11内に設置され、測定対象物20を載置する。一実施形態では、カバー部31に、載置部32に、またはカバー部31と載置部32との間には更に、密封素子(図示せず)が含まれてもよい。例えば、密封素子は、O形リングまたはシールリングとして、圧着または摩擦によって、載置モジュール30と本体を互いに密封し、ひいては収容空間11を外部環境から気密に隔離することができる。
【0027】
測定対象物20を載置している載置モジュール30が収容空間11に収容されている場合、駆動装置40は、載置モジュール30に接続しており、載置モジュール30の少なくとも一部が収容空間11から離れるように駆動することによって、測定対象物20を収容空間11から移出させることができる。ここで、載置モジュール30が収容空間11から離れると、収容空間11は、開口部12を密封するカバー部31を経由して本体10から離脱する。これに伴って、密封状態から非密封状態に変更する。ここで、駆動装置40は、載置モジュール30のカバー部31、またはカバー部31と載置部32の両方が同時に収容空間11から離れるように駆動することができる。これについては後述する。
【0028】
実際には、本発明に係る密封搬送装置の本体10、載置モジュール30、および駆動装置40は、一緒に移動しない構成要素であってもよい。たとえば、測定対象物が大気に曝されるのを防ぐために、さまざまな環境条件(大気からの隔離、不活性ガスの充満、低水分の制御など)のグローブボックスにおいて、先に、測定対象物を密封搬送装置の載置モジュール30に載置し、圧着または摩擦によって載置モジュール30と本体10とを互いに密封し、ひいては密封搬送装置の収容空間を外部環境から気密に隔離する。次に、密封された密封搬送装置をグローブボックスから移出させて、電子顕微鏡の真空チャンバー内に入れる。ここで、駆動装置40は、事前に真空チャンバー内に配置され、密封搬送装置の載置モジュール30に接続しており、載置モジュール30の少なくとも一部が収容空間11から離れるように駆動することができる。このような設計によれば、本発明に係る密封搬送装置は、測定対象物が大気に曝されることを回避しながら、測定のために測定対象物を電子顕微鏡に搬送することができる。
【0029】
上記に基づいて、駆動装置40を事前に電子顕微鏡の真空チャンバーに配置しておくことにより、密封搬送装置をより軽量かつ費用節約にすることができる。希望に応じて、複数の密封搬送装置が一つの駆動装置を共用することも可能である。グローブボックスと電子顕微鏡の間の距離が遠い場合、複数の測定対象物を一括で複数の密封搬送装置にロードし、集団で移動してから、一つずつ電子顕微鏡の真空チャンバーで開いて観察してもよい。クロスカントリーまたはリモート実験に適用できる。
【0030】
また、測定対象物に照射された電子ビームによって蓄積された電荷の抽出を加速するために、測定対象物と接触する載置モジュールを導電性材料で作製してよい。導線を本体に貫通させて配置してもよいし、又は、本体の少なくとも一部を導電性材料で作製してもよい。よって、電荷を密封搬送装置の外部に放出する。
【0031】
しかしながら、本発明は、上記に限定されるものではない。本発明に係る密封搬送装置の本体10、載置モジュール30、および駆動装置40は、一緒に移動できる構成要素であってもよい。例えば、密封搬送装置の本体10、載置モジュール30、および駆動装置40は、様々な環境条件(大気からの隔離、不活性ガスの充満、低湿気又は低酸素濃度の制御などの異なる環境条件)のグローブボックス内に一緒に配置されて測定対象物を載置し、その後、一緒に電子顕微鏡の真空チャンバーに移動する。続いては、駆動装置40は、載置モジュール30が収容空間11から離れるように駆動する。このような設計によれば、本発明に係る密封搬送装置は、測定対象物が大気環境に曝されることを回避しながら、測定のために測定対象物を電子顕微鏡に搬送することができる。
【0032】
この実施形態では、測定対象物に照射された電子ビームによって蓄積された電荷の抽出を加速するために、測定対象物と接触する載置モジュールを導電性材料で作製してよい。導線を本体に貫通させて配置してもよいし、又は、本体の少なくとも一部を導電性材料で作製してもよい。よって、電荷を密封搬送装置の外部に放出する。
【0033】
図2および
図3を参照して、本発明の一実施形態に係る密封搬送装置の密封状態および非密封状態の側面図である。ここで、駆動装置40は、載置モジュール30(カバー部31および載置部32を含む。)を引っ張るかまたは押すことによって収容空間11から離すための弾性素子を含んでもよい。一実施形態では、
図2および
図3に示すように、弾性素子は、引張ばね41を含んでもよい。引張ばね41は、載置モジュール30のカバー部31と互いに接続されており、引張ばね41が載置モジュール30のカバー部31を引っ張ると、カバー部31と載置部32の両方が移動して収容空間11から離れて、測定対象物20を収容空間11から移出させる。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、密封搬送装置は更に、ロックアセンブリ50を含んでもよい。ロックアセンブリ50は、載置モジュール30を本体10の収容空間11の中にロックおよび固定することによって、密封搬送装置を密封状態に維持させることができる。
図2に示すように、本実施形態では、ロックアセンブリ50は、電子ロックまたは電気制御ロックを含んでもよいが、これに限定されず、必要に応じて他の種類のロックアセンブリに置換してもよい。ロックアセンブリ50がアンロックされると、弾性素子は、載置モジュール30を引っ張るか又は押して収容空間11から離して、密封搬送装置を密封状態から非密封状態に変えることができる。
図3に示すように、引張ばね41は、載置モジュール30を引っ張って収容空間11から離すことができる。
【0035】
本発明の別の実施形態によれば、
図4~7を参照して、弾性素子は、プレストレスト力ばね42を含んでもよい。例えば、それは、収容空間11内に配置されて、載置モジュール30と互いに接続してよい。本実施形態では、プレストレスト力ばね42は、一端が載置部32と互いに接続し、他端が本体10の壁面に固定される。プレストレスト力ばね42の変形方向は、載置部32の移動方向と一致する。
図4および
図6に示すように、プレストレスト力ばね42は、載置モジュール30を押して収容空間11から離すと、測定対象物20が収容空間11から移出する。別の実施形態によれば、密封搬送装置は更に、ロックアセンブリ60を含んでもよい。これは、ファスナー61とドライバー62を含む。フアスナー61は、
図5に示すように、載置モジュール30を本体10の収容空間11の中にロックして固定する。
図7に示すように、ロックアセンブリ60をアンロックしようとする場合、例えば、ドライバー62は、ファスナー61を載置モジュールから外すようにファスナー61を回転させることができる。
図6に示すように、プレストレスト力ばね42は、載置モジュール30を押して収容空間11から離し、その結果、密封搬送装置は、密封状態から非密封状態に変わる。注意すべきこととして、本実施形態におけるファスナーおよびドライバーの動作は、単なる例示である。ドライバーは、回転以外の方法でファスナーをアンロックすることもできる。一方、必要に応じて、他の種類のロックアセンブリに置換してもよい。
【0036】
図8~9を参照し、本発明の別の実施形態によれば、駆動装置は、駆動機能とロック機能の両方を有してもよい。本実施形態では、駆動装置70は、ネジアセンブリ71およびモーター装置72を含んでよい。そのうち、ネジアセンブリ71は、載置モジュール30に接続されており、載置モジュールを収容空間11の中にロックして固定することができる。本実施形態では、ネジアセンブリ71は、カバー部31およびモーター装置72に接続されており、モーター装置72によってネジアセンブリ71を回転させて、載置モジュール30を駆動/引っ張って、収容空間11から離す。
【0037】
本発明の別の実施形態では、
図10および
図11に示すように、駆動装置70のネジアセンブリ71は、載置部32およびモーター装置72に接続してもよく、モーター装置72によってネジアセンブリ71を回転させて、載置モジュール30を駆動/押して収容空間から移出させる。
【0038】
説明すべきこととして、上記の実施形態では、駆動装置は、載置モジュールのカバー部と載置部の両方を駆動して、同時に収容空間から離して、測定対象物を移出させることができる。しかしながら、別の実施形態では、
図10および11に示すように、先に駆動装置によって載置モジュールのカバー部を収容空間から離すように駆動することによって本体10の開口部12を露出させ、次に別の駆動装置を介して、載置モジュールを収容空間から離すように駆動することによって測定対象物を移出させる。ここで、カバー部の移動は、図面のように限定されず、必要に応じて異なる方法または異なる方向に開くことができる。
【0039】
図1に戻って、本発明に係る密封搬送装置は更に、空気圧制御装置80を含んでもよい。これは、本体10に配置されており、収容空間11内の空気圧を制御する(
図2参照)。説明すべきこととして、本発明の図面においては、説明の便宜上、
図1のみに空気圧制御装置80が描かれているが、本発明はこれに限定されず、本発明の範囲に含まれる上記実施形態の任意の容易な交換、修正、または同等の変更はいずれも、必要に応じて空気圧制御装置80を含むことができる。例えば、空気圧制御装置80は、ベント、ベントパイプ、空気供給パイプ、ベントバルブ、または電気バルブであってよく、収容空間11(
図2参照)を低圧環境または真空環境に制御し、測定対象物に必要な環境条件に応じて、収容空間内の空気圧を調整またはバランスを取ることができる。
【0040】
図1を参照し続けて、一実施形態では、密封搬送装置100がグローブボックス内に密封された後、本体10の収容空間は、グローブボックスの制御環境と同じガス組成および圧力で充満される。密封搬送装置100が電子顕微鏡まで移動された後、電子顕微鏡の真空チャンバー内の残留ガスが測定対象物に影響を与えることや密封搬送装置100の本体10内のガスが迅速に電子顕微鏡に進入して汚染または損傷を引き起こすことを防ぐために、空気圧制御装置80を使用して、電子顕微鏡の真空チャンバーと密封搬送装置100の収容空間の両方のガス組成および空気圧のバランスを取るか、または調整することができる。例えば、密封搬送装置100が電子顕微鏡内に移動された後、電子顕微鏡のドアを閉じて、先に電子顕微鏡の真空チャンバーを排気してチャンバーを真空にし、次に本体および電子顕微鏡を貫通するベントパイプによって密封搬送装置100の収容空間内のガスを排出する。以上の操作によれば、収容空間と電子顕微鏡の真空チャンバーが同じ真空度に達した場合、残留ガスや圧力差はなくなる。載置モジュール30が収容空間を離れるように駆動して、密封搬送装置100は、密閉状態から非密閉状態に変わる。電子顕微鏡による観察が終了した後、駆動装置を使用して、密封搬送装置100を閉じて密封状態に戻してから、密封搬送装置をグローブボックスに戻すことができる。空気圧の逆バランスが取れた後、グローブボックス内で他の操作を実行するために、駆動装置を使用して密封搬送装置を密閉状態から非密閉状態に変更する。
【0041】
長期保管を容易にし、または反応を促進するように、測定対象物が大気環境に曝されない状態でも収容空間内のガス組成、圧力、含水率または湿度を変えるためには、空気圧制御装置80のベントパイプや空気供給パイプなどを利用して、密封搬送装置の本体に特定のガスまたは水蒸気または液体を注入し、圧力値を調整することができる。
【0042】
空気圧制御装置は、密封搬送装置の外に接続されたベントパイプや空気供給パイプに限定されない。別の実施形態では、空気圧制御装置は、収容空間の容積を変更することによって圧力を調整するための構造部品(図示せず)であってもよい。例えば、本体に連通された可変容量のピストン空間(可動壁を有する。)またはエラストマー空間(ゴムまたはシリコーンなどの弾性膜を有する。)を使用することができる。他の駆動装置を使用してピストン空間の壁またはエラストマー空間の弾性膜を押す場合、空間を圧縮すると、収容空間の空気圧が上昇し、空間を拡大すると、収容空間の空気圧が降下する。
図1に示すように、本発明の別の実施形態によれば、本体10は、検出窓90をさらに含んでもよい。検出窓90の材料は、可視光または電子ビームまたはX線が通過することを可能にする材料を含んでもよい。例えば、検出窓90の材料は、ガラスまたは電子透過性フィルムであってよい。したがって、検出窓を介しては、光学顕微鏡検出、電子ビーム検出、または特性X線エネルギースペクトル検出が直接実行できるようになる。注意すべきこととして、
図1において、検出窓の位置、形状、およびサイズは単なる例示的であり、本発明はこれに限定されず、使用要求に応じて調整することができる。
【0043】
本発明の更なる実施形態によれば、載置部はさらに、変位ユニット(図示せず)を含んでもよい。載置モジュールが収容空間から離れるとき、変位ユニットは、より多くの検出角度を提供するために、水平または垂直に移動して、測定対象物の位置を変更することができる。
【0044】
本発明の更なる実施形態によれば、本発明に係る密封搬送装置はさらに、電気部品を含んでもよい。そのうち、電気部品は、導電性プローブ301を含んでもよい。
図12に示すように、それは、別の充電および放電装置/電池および載置部32に接続されてもよい。これによって、制御電圧または電流を本体の電極またはアクチュエータ(図示せず)に伝送して、測定対象物20に電気刺激を提供し(例えば、測定対象物20に必要な特定の電圧または電流を提供する。)、または測定対象物の位置や方向を変更するために機械的ストレッチを提供することができる。或いは、本体のセンサーの読み取り値や電気信号を読み取って、収容空間の状態を監視したり、測定対象物を測定したりすることにも適用できる。
【0045】
本発明の別の実施形態によれば、本発明に係る密封搬送装置はさらに、電気部品を含んでもよい。そのうち、電気部品は、温度制御素子および導電性プローブ301を含んでもよい。
図13に示すように、温度制御素子は、例えば、加熱チップ302であり、載置部32の中または上(
図12参照)に配置される。導電性プローブ301は、別の充電および放電装置/電池および加熱チップ302の電極に接続されており、温度を制御するために、通電によって加熱チップ302の温度を上昇させるように駆動する。例えば、測定対象物20を加熱するか、または測定対象物20に必要な特定の温度を提供する。ここで、温度制御素子は、加熱チップに限定されず、電気的に温度を調整できる任意の素子を含む。
【0046】
説明すべきこととして、本発明は、上記の2つの実施形態に限定されない。電気部品は、複数の導電性プローブ302を含んでもよい。そのうち、1つの導電性プローブは、別の充電および放電装置/電池および載置部32に接続されており、もう一つの導電性プローブ301は、別の充電および放電装置/電池および加熱チップ302の電極に接続されてよい。すなわち、複数の導電性プローブはそれぞれ、異なる電気部品に接続することができる。また、電気部品はさらに、それぞれの通電機能に互いに影響を与えることなく、複数の導電性プローブ302を別々に隔離するための絶縁部材303を含んでもよい。また、図面に示す各部品の構成は例示的であり、必要に応じてそれらの部品のサイズや相対位置を調整することもできる。
【0047】
要するに、本発明に係る密封搬送装置は、良好な気密機能を有し、電子顕微鏡の真空チャンバー内で迅速に開くことができる。このような設計によれば、大気環境に曝されるのを回避する必要のある測定対象物を輸送または安置するために適用できる。移動中にサンプルが酸化、湿気、その他の粒子汚染などの影響による測定結果のエラーを回避できるようになる。
【0048】
上記の実施形態は、本発明の技術的アイデアおよび特徴を説明するためだけのものであり、それらの目的は、当業者が本発明の内容を理解したうえで実施できるようにすることであり、本発明の特許範囲を限定してはいけない。すなわち、本発明の趣旨に従って行われるすべての等しい変更または修正は、依然として本発明の特許範囲によってカバーされるべきである。
【符号の説明】
【0049】
10 本体
11 収容空間
12 開口部
20 測定対象物
30 載置モジュール
31 カバー部
32 載置部
40、70 駆動装置
41 引張ばね
42 プレストレスト力ばね
50、60 ロックアセンブリ
61 フアスナー
62 ドライバー
71 ネジアセンブリ
72 モーター装置
80 空気圧制御装置
90 窓
100 密封搬送装置
301 導電性プローブ
302 加熱チップ
303 絶縁部材