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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】内部検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/04 20060101AFI20221206BHJP
   G01N 29/12 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G01N29/04
G01N29/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019076450
(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公開番号】P2020173221
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】浜野 亮太
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-091685(JP,A)
【文献】特開2018-013348(JP,A)
【文献】特開平05-333079(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108241024(CN,A)
【文献】特開2008-151538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨が矩形状に枠組みされて躯体が形成され、縦横及び上下に配置されることで前記躯体が建物の躯体を形成する建物用ユニットにおいて、前記躯体に取付けられた第1部材に第2部材が接合されると共に、該第2部材に下地材が接合されていることで前記第2部材及び前記第2部材の前記第1部材への接合箇所が下地材により外部から見えなくされた検査対象に対し、前記下地材が加振手段により加振されることで前記第1部材及び前記第2部材と共に振動される前記下地材の振動状態を検出し、前記検査対象の振動特徴情報を取得する取得部と、
前記検査対象について前記第1部材と前記第2部材とが適切に接合されて得られる振動特徴情報が合格特徴情報として予め記憶された記憶部と、
前記取得部において取得された前記検査対象の振動特徴情報と前記合格特徴情報とに基づき、前記検査対象における前記第1部材と第2部材との接合状態が適切か否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果を出力する出力部と、
を含む内部検査装置。
【請求項2】
前記判定部において適切と判定されなかった前記検査対象に対し、前記第1部材と前記第2部材との接合状態の適否が確認された確認結果を受け付ける受付部と、
前記受け付けた確認結果が適切である場合に、前記検査対象から取得された前記振動特徴情報を前記記憶部に記憶して、前記合格特徴情報を更新する更新部と、
を含む請求項1に記載の内部検査装置。
【請求項3】
前記判定部において適切と判定されなかった前記検査対象に対し、前記第1部材と前記第2部材との接合状態が確認された確認結果を受け付ける受付部を含み、
前記受け付けた確認結果が適切と判定されなかった原因に関する原因情報を含む場合に、前記原因情報と前記検査対象から取得された前記振動特徴情報とを関連付けて前記記憶部に記憶し、
前記判定部は、前記取得部において取得された前記振動特徴情報と前記合格特徴情報とに基づき、前記第1部材と第2部材との接合状態が適切と判定されなかった前記検査対象について、前記取得部において取得された該検査対象の前記振動特徴情報に基づいて適切と判定されなかった原因を判定する、
ことを含む請求項1又は請求項2に記載の内部検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象の内部の接合状態を検査する内部検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の振動検査装置では、コンクリート構造物などを検査対象として、検査対象に放射したミリ波電波の反射波を受信し、受信信号を直交位相検波した信号から検査対象の変位量を求めて、検査対象の内部の欠陥を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-161452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、住宅には、軽量鉄骨が用いられて直方体枠状に形成された建物用ユニットを縦横及び上下に配列し、隣接した建物用ユニットを結合することで、鉄骨ラーメン構造の躯体が構成されたユニット式の住宅がある。ユニット式の住宅に用いられる建物用ユニットは、製造工場において製造される際、予め決定されている住宅の間取り等に基づいて、床下地、天井下地、壁下地や外壁などが施工される。また、建物用ユニットに対しては、工場出荷に先立って各部位が適切に施工されているか否かの検査が行われる。このような建物用ユニットの検査においては、目視のみではなく、例えば、仕切り壁の内部の部材が固定されているか否か、適切な位置で固定されているか否かなどの確認も要求される。
【0005】
しかしながら、間仕切り壁に壁板が取り付けられていると、間仕切り壁の内部の施工状態を確認することができないという問題がある。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、検査対象の内部の部材が適切に接合されているか否かを検査する内部検査装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様の内部検査装置は、外部から見えない箇所で第1部材と第2部材とが接合され加振手段によって加振されることで前記第1部材と前記第2部材と共に振動される検査対象の振動状態を検出し、前記検査対象の振動特徴情報を取得する取得部と、前記検査対象について前記第1部材と前記第2部材とが適切に接合されて得られる振動特徴情報が合格特徴情報として予め記憶された記憶部と、前記取得部において取得された前記検査対象の振動特徴情報と前記合格特徴情報とに基づき、前記検査対象における前記第1部材と第2部材との接合状態が適切か否かを判定する判定部と、判定結果を出力する出力部と、を含む。
【0008】
第1の態様の内部検査装置では、外部から見えない箇所において第1部材と第2部材とが接合され第1部材と第2部材と共に振動される検査対象について、取得部が、加振手段によって加振されることで振動する検査対象の振動状態を検出し、検出した振動状態から検査対象の振動特徴情報を取得する。判定手段は、検査対象における第1部材と第2部材との接合状態が適切か否かを判定し、判定結果を出力部が出力する。
【0009】
ここで、記憶部には、検査対象について第1部材と第2部材とが適切に接合されていることで得られる振動特徴情報が合格特徴情報として予め記憶されており、判定部は、取得部において取得された検査対象の振動特徴情報と合格特徴情報とに基づき、検査対象における第1部材と第2部材との接合状態が適切か否かを判定する。
【0010】
これにより、外部から見えない検査対象の内部において、第1部材と第2部材とが適切に接合されているか否かを、検査対象を分解することなく判定できる。
【0011】
第2の態様の内部検査装置は、第1の態様の内部検査装置において、前記判定部において適切と判定されなかった前記検査対象に対し、前記第1部材と前記第2部材との接合状態の適否が確認された確認結果を受け付ける受付部と、前記受け付けた確認結果が適切である場合に、前記検査対象から取得された前記振動特徴情報を前記記憶部に記憶して、前記合格特徴情報を更新する更新部と、を含む。
【0012】
第2の態様の内部検査装置では、受付部が判定部において適切と判定されなかった検査対象に対し、第1部材と前記第2部材との接合状態の適否が確認された確認結果を受け付ける。また、更新部は、受付部において受け付けた確認結果が適切である場合に、検査対象から取得された振動特徴情報を記憶部に記憶して、合格特徴情報を更新する。
【0013】
このようにして更新された合格特徴情報を用いることで、第1部材と第2部材とが適切に接合されているにもかかわらず、第1部材と第2部材との接合状態が適切とはいえないと判定されてしまうのを抑制できて、判定部の判定精度を向上できる。
【0014】
第3の態様の内部検査装置は、第1又は第2の態様の内部検査装置において、前記判定部において適切と判定されなかった前記検査対象に対し、前記第1部材と前記第2部材との接合状態が確認された確認結果を受け付ける受付部を含み、前記受け付けた確認結果が適切と判定されなかった原因に関する原因情報を含む場合に、前記原因情報と前記検査対象から取得された前記振動特徴情報とを関連付けて前記記憶部に記憶し、前記判定部は、前記適切と判定されなかった前記検査対象について、前記取得部において取得された該検査対象の前記振動特徴情報に基づいて適切と判定されなかった原因を判定する。
【0015】
第3の態様では、受付部が受け付けた確認結果が適切と判定されなかった原因に関する原因情報を含む場合に、検査対象から取得された振動特徴情報と原因情報とを関連付けて記憶部に記憶する。また、判定部は、適切と判定されなかった検査対象について、取得部において取得された該検査対象の振動特徴情報に基づいて、適切と判定されなかった原因を判定する。
【0016】
これにより、第1部材と第2部材との接合状態が適切と判定されなかった検査対象に対して、適切と判定されない原因が得られるので、第1部材と第2部材との接合状態を適切に改修することが容易になる。
【0017】
本発明の態様は、第3の態様において、検査対象の振動特徴情報と原因情報とを学習用データとして複数の学習用データを記憶する学習用データ記憶部と、学習用データ記憶部に記憶された複数の学習用データに基づき、振動特徴情報を原因情報に反映させた学習済モデルを生成する学習部と、学習済モデルを記憶した学習済モデル記憶部と、含むことができる。これにより、判定部は、振動特徴情報から検査対象における接合状態が適切とはいえないと判定して出力する際、適切と判定されない原因を明確にできる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明の第1の態様の内部検査装置によれば、検査対象において外部から見えない箇所における第1部材と第2部材の接合状態が適切か否かを、検査対象を分解することなく判定できる、という効果を有する。
【0019】
第2の態様の内部検査装置によれば、検査対象の内部の第1部材と第2部材とが適切な接合状態であると判定する際の判定精度を向上できる、という効果を有する。
【0020】
第3の態様の内部検査装置によれば、検査対象の内部の第1部材と第2部材との接合状態が適切とは判定されなった際、適切と判定されなかった原因を提示できて、接合状態を適切にするのを容易にできる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る施工検査装置の機能ブロック図である。
図2】施工検査装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】検査対象とする建物用ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図4】(A)及び(B)は、各々検査対象部位の主要部を示す概略図であり、(A)は、図3の4A-4A線に沿う断面図を示している。
図5】検査工程の概略を示す流れ図である。
図6】(A)~(G)は、各々検査対象部位が不合格とされる施工状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1には、本実施形態に係る内部検査装置としての施工検査装置10の概略構成が機能ブロック図にて示され、図2には、施工検査装置10の概略構成(ハードウェア構成)がブロック図にて示されている。
【0023】
図2に示すように、施工検査装置10は、パーソナルコンピュータ(PC)12を含んでいる。パーソナルコンピュータ12は、CPU14、ROM16、RAM18、及び入出力ポート20を備え、これらがアドレスバス、データバス及び制御バス等のバス22を介して相互に接続されている。
【0024】
また、パーソナルコンピュータ12では、ディスプレイ24、キーボード26、マウス28等の入出力デバイスと共に、記憶デバイスとしてのHDD(半導体メモリでもよい)30、及び通信デバイスとしての通信インターフェイス(通信I/F)32等が入出力ポート20に接続されている。パーソナルコンピュータ12は、入出力ポート20又は通信I/F32を介して印刷出力デバイスとしてのプリンタ34が接続されている。
【0025】
また、パーソナルコンピュータ12には、検出部を構成する検出手段としての振動検出器36が接続されている。振動検出器36は、振動センサ38を備えており、振動センサ38は、振動検出器36に一体にされていてもよい。振動検出器36は、振動センサ38によって振動状態(例えば、可聴域及び非可聴域を含む振動音など)を検出する。
【0026】
パーソナルコンピュータ12は、CPU14がROM16及びHDD30に記憶されたプログラムを読み出し、RAM18を作業メモリとして使用しながら各種の処理を実行する。パーソナルコンピュータ12のROM16及びHDD30には、検査対象の振動状態を検出し、振動状態から検査対象の施工状態が適切か否か(合否)を判定するために実行される各種のプログラム(検査プログラム)が記憶されている。
【0027】
CPU14がROM16及びHDD30に記憶された検査プログラムを読み出して実行することで、パーソナルコンピュータ12が施工検査装置10として機能する。なお、プログラムは、通信I/F32が接続されるネットワークを介して取得されてもよく、半導体記憶媒体としてのメモリカード、USBメモリ、可搬式記録媒体としてのディスク等を介して取得されてHDD30に格納されてもよい。
【0028】
図1に示すように、施工検査装置10には、振動検出部40、振動解析部42、記憶部44、判定部46、及び出力部48が形成されている。また、施工検査装置10には、受付部50及び学習部52が形成されている。
【0029】
振動検出部40は、振動検出器36によって実現され、振動検出器36は、検査対象の振動状態を振動センサ38によって検出し、検出した振動状態の振動データ(振動波形データ)を出力する。
【0030】
振動解析部42は、振動検出部40が取得した振動データ(振動波形データ)を解析(例えば周波数解析)することで、振動データの特徴量(例えば、振動波形に含まれる複数の特徴的な周波数成分及び各々の周波数成分のレベル等)含む振動特徴情報を抽出する。
【0031】
記憶部44は、HDD30によって実現され、記憶部44には、振動解析部42において抽出された検査対象の振動状態の振動特徴情報が記憶される。また、本実施形態では、合格と判定される検査対象の振動状態(振動情報)から得られる振動特徴情報が予め合格特徴情報として取得されて記憶部44に記憶される。また、記憶部44には、学習用データ記憶部54及び学習済モデル記憶部56が設けられている。
【0032】
判定部46は、検査対象の振動特徴情報と記憶部44に記憶された合格特徴情報とに基づき、検査対象についての判定を行う。判定部46における判定は、振動特徴情報と合格特徴情報との間で特徴量(特徴的な周波数成分)が同様とみなされる場合を「合格」とし、同様とみなせるとまではいえない状態を「不合格」としている。判定部46において合格判定された場合には、合格と判定された検査対象の振動特徴情報が、合格特徴情報として記憶部44に記憶されて、合格特徴情報の更新が行われる。
【0033】
出力部48は、ディスプレイ24やプリンタ34によって実現され、出力部48は、判定部46の判定結果を出力する。
【0034】
一方、本実施形態では、判定部46によって不合格と判定された検査対象について、分解調査が行われて、不合格と判定された原因(不合格箇所)が調査される。また、不合格箇所が明らかになると、その不合格箇所の改修が行われる。
【0035】
施工検査装置10の受付部50は、ディスプレイ24、キーボード26及びマウス28等によって実現され、受付部50は、不合格と判定された検査対象について調査された調査結果が入力されることで、入力された調査結果を受け付ける。受付部50は、例えば、ディスプレイ24に所定のUI(ユーザインターフェイス)を表示し、表示したUIに応じてキーボード26及びマウス28が操作されて入力される情報を受け付ける。
【0036】
受付部50では、不合格と判定された検査対象について原因調査の結果、不合格にする原因(不合格箇所)がないにもかかわらず不合格とみなされた場合に、合格判定への訂正を受付ける。受付部50では、不合格とされた検査対象について合格に訂正されると、合格に訂正された検査対象の振動特徴情報を合格特徴情報として記憶部44に記憶させて、合格特徴情報の更新を行う。
【0037】
また、受付部50では、不合格と判定された検査対象について、不合格と判定された原因(不合格箇所及び不合格と判定されるべき理由)に関する原因情報を受け付けると、検査対象の振動特徴情報と共に原因情報を学習用データとして、学習用データ記憶部54に記憶させる。これにより、学習用データ記憶部54には、検査対象について不合格と判定された複数の振動特徴情報及び原因情報を表すデータが学習用データとして記憶される。
【0038】
学習部52は、学習用データ記憶部54に記憶された複数の学習用データに基づいて、振動特徴情報から不合格とされた原因を導出するためのモデルを学習させ、学習済モデルを得る。学習用データは、振動特徴情報と原因情報とに対応するデータであり、振動特徴情報及び原因情報の各々の特徴量が反映されたモデルが学習済モデルとして学習済モデル記憶部56に記憶される。これにより、判定部46において、検査対象について合格と判定されない場合に、学習済モデルを用いて振動特徴情報から合格と判定されなかった原因の導出を可能にしている。
【0039】
一方、建物(住宅)には、ユニット式住宅(ユニット式の建物)がある。ユニット式住宅では、建物用ユニットが用いられ、ユニット式住宅では、複数の建物用ユニットが間取りに応じて縦横及び上下に配列され、隣接する建物用ユニット同士が連結されて躯体が構成される。建物用ユニットは、製造工場において製造される際、住宅の間取りに応じて天井、床、間仕切り壁及び外壁等が施工され、製造された建物用ユニットは、製造製品として製造工場から出荷(搬出)される。
【0040】
本実施形態では、製造工場において製造される建物用ユニットの壁、床、天井等の各部位を検査対象としている。図3には、本実施形態に係る建物用ユニット60の主要部が斜視図にて示されている。
【0041】
図3に示すように、建物用ユニット60は、直方体枠状(箱枠状)に形成されている。建物用ユニット60には、各々が角型とされた4本のフレーム支柱62が設けられており、フレーム支柱62の各々は、長手方向が上下方向にされて、互いに平行に配置されている。4本のフレーム支柱62の上部には、天井フレーム64が形成されており、4本のフレーム支柱62の下部には、床フレーム66が形成されている。
【0042】
天井フレーム64には、各々が天井大梁68とされる一対の桁天井大梁68A及び一対の妻天井大梁68Bが設けられており、桁天井大梁68A及び妻天井大梁68Bには、例えば溝形鋼が用いられている。天井フレーム64は、桁天井大梁68A及び妻天井大梁68Bの各々の端部がフレーム支柱62の上部の接合部62Aに剛接合されて矩形枠状に形成されている。また、天井フレーム64の桁天井大梁68Aの間には、各々が妻天井大梁68Bに平行とされた複数の天井小梁70が配置されており、天井小梁70には、例えばリップ溝形鋼(C形鋼)が用いられ、天井小梁70の各々の端部が桁天井大梁68Aに接合されている。これにより、天井フレーム64が略梯子状に形成されている。
【0043】
床フレーム66には、各々が床大梁72とされる一対の桁床大梁72A及び一対の妻床大梁72Bが設けられており、桁床大梁72A及び妻床大梁72Bには、例えば溝形鋼が用いられている。床フレーム66は、桁床大梁72A及び妻床大梁72Bの各々の端部がフレーム支柱62の下部の接合部62Bに剛接合されて矩形枠状に形成されている。また、床フレーム66の桁床大梁72Aの間には、各々が妻床大梁72Bに平行とされた複数の床小梁74が配置されており、床小梁74には、例えば一般構造用角形鋼管が用いられ、床小梁74の各々の端部が桁床大梁72Aに接合されている。これにより、床フレーム66が略梯子状に形成されている。
【0044】
建物用ユニット60には、天井フレーム64の天井小梁70を天井下地として又は天井小梁70から吊り下げられて設けられた天井下地に、天井を形成するための天井下地材76(天井板でもよい)が取り付けられる。また、建物用ユニット60には、床フレーム66の床小梁74を床下地として又は床小梁74に配置された図示しない根太を床下地として、床を形成するための床下地材78(床板でもよい)が取り付けられる。なお、床は、床フレーム66に配置した根太の間に断熱材を敷き詰めて、断熱材の上に複数枚の板材(床下地材78と床板)が重ねられて形成されてもよい。
【0045】
また、建物用ユニット60には、屋外側となる面に外壁材(外壁パネル、図示省略)が取り付けられる。さらに、建物用ユニット60には、建築する建物の間取り(室内レイアウト)に応じて間仕切り壁80が取り付けられる。図4(A)及び図4(B)の各々には、間仕切り壁80の主要部が概略図にて示されている。なお、図4(A)には、間仕切り壁80が天井大梁68の長手方向視の断面図にて示され、図4(B)には、図4(A)とは異なる方向から見た間仕切り壁80の内部が示されている。
【0046】
図4(A)に示すように、天井大梁68(桁天井大梁68A又は妻天井大梁68B)の下側(フランジの下面)には、天井大梁68の長手方向に野縁82が配置される。また、野縁82の下側に例えば石膏ボードなどが用いられた天井下地材76が重ねられ、天井下地材76と野縁82とが、ねじなどが用いられた留付具84によって天井大梁68に取り付けられる。
【0047】
また、間仕切り壁80は、内壁下地材86の間に角材(又は金属製ランナー)が用いられた下地88が配置されており、下地88には、ねじなどが用いられた留付具90がねじ込まれて(螺合されて)いる。これにより、下地88は、留付具90によって天井下地材76に固定(接合)されて取り付けられている。本実施形態において、天井下地材76が第1部材の一例とされ、下地88が第1部材の一例とされている。
【0048】
また、図4(B)に示すように、下地88には、長手方向(天井大梁68の長手方向)に予め設定された間隔で留付具90がねじ込まれており、下地88は、天井下地材76を介して野縁82に固定される。
【0049】
間仕切り壁80では、下地88に内壁下地材86が接合されており、間仕切り壁80は、内壁下地材86の内部において下地88が天井下地材76を介して野縁82に接合されて、天井大梁68に取り付けられている。なお、下地88は、間仕切り壁80の下側にも配置されて、床大梁72に取り付けられ、内壁下地材86が接合される(図示省略)。
【0050】
以下に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態では、製造工場において製造された建物用ユニット60について、搬出に先立って適切に施工されているか否か検査する(製品検査)。以下では、建物用ユニット60の間仕切り壁80の天井側部分を検査対象とし、検査対象について施工検査装置10を用いた製品検査(施工検査)を説明する。図5には、施工検査装置10を用いた検査作業が流れ図にて示されている。
【0051】
なお、製品検査においては、留付具90を用いた下地88と天井下地材76との接合状態が適切か否かを検査する。この際、目視等により検査が可能な部位は、適切に施工されているものとし、目視等により検査が可能な部位を除く部位として、間仕切り壁80内の下地88と天井下地材76との接合状態(施工状態)を検査する。また、接合状態が適切な場合(図4(A)及び図4(B)参照)を合格、接合状態が適切と言い切れない場合を不合格としている。また、図6(A)~図(G)には、不合格と判定される接合状態の例が示されている。
【0052】
図4(A)に示すように、施工検査装置10を用いた製品検査においては、検査対象とする間仕切り壁80の上部を加振し、加振されることで間仕切り壁80に発生する振動を振動センサ38によって検出する。間仕切り壁80(検査対象)の加振には、木槌やプラスチックハンマーなどの加振器92が用いられ、加振器92によって所定の力で間仕切り壁80を叩くことで加振する。なお、施工検査装置10には、適切に施工された複数の間仕切り壁80から取得した振動特徴情報が合格特徴情報とされ、合格特徴情報が予め記憶部44に記憶されている。
【0053】
図5に示すように、ステップ100において建物用ユニット60が製造される(製品製造)と、製造された建物用ユニット60の検査対象としての間仕切り壁80を加振し、振動検出を行う(ステップ102)。間仕切り壁80の振動検出において、施工検査装置10では、振動検出部40が振動センサ38によって間仕切り壁80の振動状態を検出し、振動状態に応じた振動データを取得する。
【0054】
ステップ104では、取得した振動データに基づいて施工状態の判定を行う。すなわち、施工検査装置10では、振動解析部42が振動データ(振動波形データ)の解析処理(例えば周波数解析)を行うことで、振動データの特徴量(例えば、振動波形データに含まれる特徴的な周波数成分及びその周波数成分のレベル等)を含む振動特徴情報を抽出する。
【0055】
判定部46は、振動特徴情報と記憶部44に記憶されている合格特徴情報とを対比し、合格か否かを判定する。記憶部44には、複数の合格特徴情報が記憶されており、合格と判定される振動特徴情報の範囲が複数の合格特徴情報によって示される。判定部46は、例えば、振動特徴情報に含まれる特徴的な周波数成分或いは周波数成分の組み合わせが合格特徴情報の範囲に含まれるか否かを判定する。次のステップ106では、判定結果が合格か否かを確認し、判定結果の確認には、出力部48の出力結果から確認される。
【0056】
ここで、間仕切り壁80の振動特徴情報が合格特徴情報の範囲内である場合、ステップ106において肯定判定される。これにより、ステップ108では、間仕切り壁80の適切に施工されているとして、間仕切り壁80が設けられた建物用ユニット60を製造製品として出荷(搬出)する。
【0057】
一方、間仕切り壁80の振動特徴情報における特徴量が複数の合格特徴情報によって示される範囲を外れていると、ステップ106において否定判定される。これにより、製造工場では、ステップ110に移行し、間仕切り壁80を分解調査して不合格となった原因調査を行い、ステップ112では、不合格に該当する箇所の有無が判定される。
【0058】
分解調査の結果、不合格に該当する箇所がなく、合格と判定されるべきであった場合、ステップ112で否定判定してステップ114へ移行する。ステップ114では、調査のために分解した間仕切り壁80を元通りに復旧させる。この後、ステップ116において間仕切り壁80の分解調査結果を施工検査装置10に入力する。これと共に、ステップ108に移行して、復旧させた間仕切り壁80が設けられた建物用ユニット60を製造製品として出荷(搬出)する。
【0059】
また、分解調査の結果、不合格に該当する箇所が発見された場合、ステップ112で肯定判定してステップ118に移行する。ステップ118では、調査のために分解した間仕切り壁80について、不合格に該当する箇所に対して改修作業を行い、間仕切り壁80の再施工を行う。この後、ステップ120において間仕切り壁80の分解調査結果(不合格の原因を含む原因情報)を施工検査装置10に入力する。これと共に、ステップ102に移行して、改修した間仕切り壁80に対して再検査を行う。なお、改修することで間仕切り壁80が適切に施工されていると判断できる場合には、間仕切り壁80について再検査を行わずに、間仕切り壁80を改修した建物用ユニット60を製造製品として出荷(搬出)してもよい。
【0060】
ここで、施工検査装置10では、合格していないと判定された間仕切り壁80について、分解調査の調査結果が入力されると、受付部50において調査結果を受け付ける。受付部50が受け付けた調査結果が合格に訂正されるものである場合、該当する間仕切り壁80の振動特徴情報が合格特徴情報として記憶部44に記憶されて、合格特徴情報が更新される。
【0061】
これにより、合格特徴情報の範囲が適切に広げられ、この合格特徴情報に基づいた判定部46の判定精度が向上される。すなわち、施工状態が適切であっても、振動特徴情報が合格特徴情報によって定まる範囲から外れている場合には不合格と判定されるが、分解調査の結果、合格と判断される振動特徴情報が新たに合格特徴情報に含ませる。この結果、更新された合格特徴情報に基づいた合格判定の精度を向上できる。
【0062】
また、受付部50が受け付けた調査結果が、不合格と判定された原因に関する原因情報がある場合、受け付けた原因情報が、該当する間仕切り壁80の振動特徴情報に関連付けられ、学習用データとして学習用データ記憶部54に記憶されて、学習用データが学習用データ記憶部54に蓄積される。
【0063】
施工検査装置10には、学習部52が設けられており、学習部52は、学習用データ記憶部54に記憶された複数の学習用データに基づいて、振動特徴情報から不合格原因を導出するためのモデルを学習させ、学習済モデルを得る。また、得られた学習済モデルは、学習済モデル記憶部56に記憶される。
【0064】
間仕切り壁80の内部において、留付具90を用いた下地88と天井下地材76との接合における不合格に該当する状態には、各種の状態がある。例えば、不合格に該当する状態には、留付具90が下地84の下側から外れた位置にねじ込まれている状態(図6(A)参照)や、留付具90が浅くて天井下地材76に確実にねじ込まれていない状態(図6(B)参照)がある。また、不合格に該当する状態には、留付具90が下地88から斜めにねじ込まれている状態(図6(C)参照)や、2本の留付具90で下地88が天井下地材76に止められている状態(図6(D)参照)や、留付具90による止め忘れ(図6(E)などがある。
【0065】
さらに、不合格に該当する状態には、2本の留付具90の下地88の長手方向の間隔が広くなりすぎている状態(図6(F)参照)や、2本の留付具90の下地88の長手方向の間隔が狭くなりすぎている状態(図6(G)参照)などがある。
【0066】
一方、間仕切り壁80が加振された際の振動状態は、各部材の属性(材質や厚さ、サイズなど)、各部材同士の接合状態に応じて変化し、振動状態から得られる振動波形に含まれる特徴的な周波数成分も変化する。
【0067】
下地88と天井下地材76とが留付具90によって適切に接合された際の振動状態と、図6(A)~図6(G)の何れの状態における振動状態とは異なるのは勿論、図6(A)~図6(G)の間においても互いの振動状態にも相違が現われる。これらの振動状態の相違は、振動波形データにおける特徴的な周波数成分の相違や、特徴的な周波数成分におけるレベル(例えば振幅)の相違に現われる。
【0068】
学習部52では、例えば、モデルとしてニューラルネットワークを用い、学習アルゴリズムとしてディープラーニングを用いて、振動特徴情報から原因情報を導入するための学習済モデルを構築する。学習済モデル記憶部56には、合格と判定されなかった振動特徴情報(例えば、特徴的な周波数成分の相違、特徴的な周波数成分の組合せの相違)とその原因情報が用いられて学習された学習済モデルが生成される。すなわち、学習用データは、振動特徴情報と原因情報とに対応するデータであり、振動特徴情報及び原因情報が反映されたモデルが学習済モデルとして学習済モデル記憶部56に記憶される。
【0069】
ここで、判定部46では、間仕切り壁80から取得した振動特徴情報を合格特徴情報と対比して、間仕切り壁80の施工状態の合否を判定する。また、判定部46では、合格と判定されなかった間仕切り壁80の振動特徴情報について、学習済モデル記憶部56に記憶された学習済モデルを用いて原因情報の導出を行う。導出された原因情報が出力部48から出力される。
【0070】
このように、施工検査装置10では、間仕切り壁80を加振することにより得られる振動状態(振動特徴情報)から間仕切り壁80の内部の施工状態の適否(合否)を判定できる。このため、施工検査装置10では、間仕切り壁80を分解することなく、間仕切り壁80の内部の施工状態を検査することができて、適切に施工された建物用ユニット60の製品検査ができると共に、不合格の懸念がある建物用ユニット60が出荷されるのを抑制できる。
【0071】
また、施工検査装置10では、不合格と判定された間仕切り壁80に対して原因調査が行われて得られた調査結果が入力された際、合格に訂正された振動特徴情報を用いて、合格特徴情報の更新を行う。これにより、施工検査装置10では、合格と判定されるべき間仕切り壁80が不合格と判定されるのを抑制できて、適切な合格判定を行なうことができる。
【0072】
また、施工検査装置10では、不合格と判定された間仕切り壁80の振動特徴情報と原因情報が記憶されるので、判定部46において不合格と判定する際に、判定結果と共に原因情報(原因)の出力が可能になる。
【0073】
さらに、施工検査装置10では、不合格と判定した間仕切り壁80の振動特徴情報と原因情報とを表すデータが学習用データとして用いられて、振動特徴情報から原因情報を導入する学習済モデルが構築される。これにより、判定部46において不合格と判定する際の判定精度を向上できると共に、精度の高い原因情報を出力できて、間仕切り壁80における不合格に該当する箇所の改修が容易になる。
【0074】
なお、以上説明した本実施形態では、振動特徴情報と合格特徴情報とに基づいて間仕切り壁80が合格か否かの判定を行った。しかしながら、合格特徴情報を用いて、振動特徴情報から合格か否かを導出する学習モデルを構築し、この学習モデルを用いて振動特徴情報から合格か否かを判定するようにしてもよく、これにより、一層精度の高い合格判定を行うことができる。
【0075】
また、本実施形態では、間仕切り壁80の内部の下地88と天井下地材76との施工状態を検査した。しかしながら、間仕切り壁80の振動特徴情報は、下地88と内壁下地材86との接合状態や下地88と天井下地材76との接合状態によって相違する。ここから、検査対象の内部の接合状態のみでなく、内部の部材と外部の部材との接合状態を含めて合格判定を行うと共に、不合格と判定される場合の原因の特定を行ってもよい。
【0076】
また、本実施形態では、下地88と天井下地材76とを留付具90によって接合した。しかしながら、第1部材と第2部材との接合は、これに限らず、第1部材及び第2部材の属性に応じた接合方法が適用されればよい。
【0077】
さらに、本実施形態では、建物用ユニット60の間仕切り壁80を検査対象とした。しかしながら、検査対象は、建物用ユニット60の他の部位であってもよい。また、内部検査装置は、検査対象が建物用ユニット60に限らず、内部に第1部材と第2部材とが接合された任意の構成を適用でき、これにより、内部検査装置は、検査対象の内部を分解することなく、第1部材と第2部材との接合状態が適切か否かを判定できる。
【符号の説明】
【0078】
10 施工検査装置(内部検査装置)
36 振動検出器(取得部)
40 振動検出部(取得部)
42 振動解析部(取得部)
44 記憶部
46 判定部
48 出力部
50 受付部(受付部、更新部)
52 学習部
54 学習用データ記憶部
56 学習済モデル記憶部
60 建物用ユニット
76 天井下地材(第1部材及び第2部材の一方)
80 間仕切り壁(検査対象)
88 下地(第1部材及び第2部材の他方)
図1
図2
図3
図4
図5
図6