(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
G03G15/20 505
(21)【出願番号】P 2017145005
(22)【出願日】2017-07-27
【審査請求日】2020-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正和
(72)【発明者】
【氏名】小林 丈太
(72)【発明者】
【氏名】中尾 元春
(72)【発明者】
【氏名】永田 靖
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-122558(JP,A)
【文献】特開2003-077621(JP,A)
【文献】特開2009-199862(JP,A)
【文献】特開2016-212132(JP,A)
【文献】特開2006-092831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環するベルト部材と、
前記ベルト部材に接触し、前記ベルト部材との間を移動する記録媒体を加圧する加圧部材と、
前記ベルト部材の内面に介在する潤滑
剤と、
基材上に複数の抵抗発熱体と前記複数の抵抗発熱体及び前記複数の抵抗発熱体の間隙を覆う絶縁体を有し、前記ベルト部材の内面を加熱する加熱源と、を備え、
前記加熱源は、前記複数の抵抗発熱体の位置で前記加圧部材に向けて凸状となり、前記複数の抵抗発熱体の間隙においては前記凸状よりも幅広で前記抵抗発熱体の延びる方向に沿って連続した凹状で、前記
間隙の中央部において凸状となるように形成されている、
ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記加熱源は、前記ベルト部材と前記加圧部材とが接触する接触部のうち、前記複数の抵抗発熱体の前記間隙において、圧力が前記記録媒体の移動方向の下流側と上流側よりも相対的に高くなるように前記ベルト部材を内側から支持する、
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記複数の抵抗発熱体の前記間隙の幅は、前記抵抗発熱体の幅よりも長い、
ことを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記絶縁体の厚みは、前記抵抗発熱体を覆う部分が前記基材を覆う部分よりも薄い、
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記絶縁体の厚みは、前記抵抗発熱体を覆う部分が前記基材を覆う部分よりも厚い、
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項6】
前記絶縁体の厚みは、前記複数の抵抗発熱体の間にある基材を覆う部分が前記抵抗発熱体よりも外側にある前記基材を覆う部分よりも薄い、
ことを特徴とする請求項4又は5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記潤滑剤は、少なくとも前記ベルト部材と前記
間隙との間に介在する、
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項8】
記録媒体への画像形成を行う画像形成手段と、
前記画像形成手段により画像が形成された前記記録媒体への前記画像を定着する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の定着装置と、を備えた、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱・絶縁性材料で形成される長尺平板状の基板の長手方向に発熱抵抗体と該発熱抵抗体に電力を供給するための電極を形成し、基板および発熱抵抗体上にガラスペーストを印刷・焼成して形成したオーバーコート層を施したセラミックヒータにおいて、オーバーコート層に発生する気泡の大きさを、基板上を発熱抵抗体上よりも大きくすることで、オーバーコート層の表面の凹凸を小さくしたセラミックヒータが知られている(特許文献1)。
【0003】
基板上に、対の電極を一定間隔を置いて並設し、各対の電極を接続する抵抗体を設け、抵抗体と電極の一部を被覆する保護外装を施した多連抵抗素子構造において、各対の電極と抵抗体とで構成される抵抗素子と抵抗素子との間に、抵抗体と基板表面との段差を埋めるための補填層を設けた多連抵抗素子構造も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-92831号公報
【文献】特開平5-251220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、潤滑剤の濡れ性を担保してベルト部材の摺動特性を向上させることができる定着装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の定着装置は、
循環するベルト部材と、
前記ベルト部材に接触し、前記ベルト部材との間を移動する記録媒体を加圧する加圧部材と、
前記ベルト部材の内面に介在する潤滑剤と、
基材上に複数の抵抗発熱体と前記複数の抵抗発熱体及び前記複数の抵抗発熱体の間隙を覆う絶縁体を有し、前記ベルト部材の内面を加熱する加熱源と、を備え、
前記加熱源は、前記複数の抵抗発熱体の位置で前記加圧部材に向けて凸状となり、前記複数の抵抗発熱体の間隙においては前記凸状よりも幅広で前記抵抗発熱体の延びる方向に沿って連続した凹状で、前記間隙の中央部において凸状となるように形成されている、
ことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の定着装置において、
前記加熱源は、前記ベルト部材と前記加圧部材とが接触する接触部のうち、前記複数の抵抗発熱体の前記間隙において、圧力が前記記録媒体の移動方向の下流側と上流側よりも相対的に高くなるように前記ベルト部材を内側から支持する、
ことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の定着装置において、
前記複数の抵抗発熱体の前記間隙の幅は、前記抵抗発熱体の幅よりも長い、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1に記載の定着装置において、
前記絶縁体の厚みは、前記抵抗発熱体を覆う部分が前記基材を覆う部分よりも薄い、
ことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1に記載の定着装置において、
前記絶縁体の厚みは、前記抵抗発熱体を覆う部分が前記基材を覆う部分よりも厚い、
ことを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項4又は5に記載の定着装置において、
前記絶縁体の厚みは、前記複数の抵抗発熱体の間にある基材を覆う部分が前記抵抗発熱体よりも外側にある前記基材を覆う部分よりも薄い、
ことを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の定着装置において、
前記潤滑剤は、少なくとも前記ベルト部材と前記間隙との間に介在する、
ことを特徴とする。
【0013】
前記課題を解決するために、請求項8に記載の画像形成装置は、
記録媒体への画像形成を行う画像形成手段と、
前記画像形成手段により画像が形成された前記記録媒体への前記画像を定着する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の定着装置と、を備えた、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、加熱源が複数の抵抗発熱体の位置で加圧部材に向けて凸状となるように形成されていない構成に比べて、潤滑剤の濡れ性を担保してベルト部材の摺動特性を向上させることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、ベルト部材の内面との間に潤滑剤が介在する領域を複数形成することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、ベルト部材の内面との間に潤滑剤が介在する領域を複数形成することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、絶縁体の抵抗発熱体を覆う部分が基材を覆う部分よりも厚い構成に比べて、ベルト部材への伝熱効率の低下を抑制することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、絶縁体の抵抗発熱体を覆う部分が基材を覆う部分よりも薄い構成に比べて、ベルト部材の摺動性の低下を抑制することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、絶縁体の複数の抵抗発熱体の間にある基材を覆う部分が抵抗発熱体よりも外側にある基材を覆う部分よりも厚い構成に比べて、ベルト部材の内面との間に潤滑剤が介在する領域を増大することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、ベルト部材の内面に対する潤滑剤の濡れ性を担保することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、抵抗発熱体の間に潤滑剤を保持する隙間を形成することができる。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、加熱源が複数の抵抗発熱体の位置で加圧部材に向けて凸状となるように形成されていない構成に比べて、潤滑剤の濡れ性を担保してベルト部材の摺動特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】画像形成装置の内部構成を示す断面模式図である。
【
図4】加熱源の構成を説明する
図3におけるA-A拡大断面模式図である。
【
図5】(a)は定着装置における加熱源の構成を示す断面模式図、(b)は定着ニップ内での圧力分布の一例を示す図である。
【
図6】(a)は抵抗発熱の間隙の距離が広い場合の定着ニップを示す断面模式図、(b)は定着ニップ内での圧力分布の一例を示す図である。
【
図7】絶縁体の厚さを説明する加熱源の拡大断面模式図である。
【
図8】(a)は変形例2に係る加熱源の絶縁体の厚さを説明する断面模式図、(b)は定着ニップ内での圧力分布の一例を示す図である。
【
図9】変形例2に係る加熱源の絶縁体の厚さを説明する断面模式図である。
【
図10】変形例3に係る加熱源の絶縁体の厚さを説明する断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に図面を参照しながら、以下に実施形態及び具体例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態及び具体例に限定されるものではない。
また、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
尚、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、左右方向をX軸方向、前後方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とする。
【0025】
「第1実施形態」
(1)画像形成装置の全体構成及び動作
図1は本実施形態に係る画像形成装置1の内部構成を示す断面模式図である。
以下、図面を参照しながら、画像形成装置1の全体構成及び動作を説明する。
【0026】
画像形成装置1は、制御装置10、給紙装置20、感光体ユニット30、現像装置40、転写装置50、定着装置60、電源装置70を備えて構成されている。画像形成装置1の上面(Z方向)には、画像が記録された用紙が排出・収容される排出トレイ1aが形成されている。
【0027】
制御装置10は、画像形成装置1の動作を制御する画像形成装置制御部11と、印刷処理要求に応じた画像データを準備するコントローラ部12、露光装置LHの点灯を制御する露光制御部13等を有する。
【0028】
コントローラ部12は、外部の情報送信装置(例えばパーソナルコンピュータ等)から入力された印刷情報を潜像形成用の画像情報に変換して予め設定されたタイミングで、駆動信号を露光装置LHに出力する。本実施形態の露光装置LHは、複数の発光素子(LED:Light Emitting Diode)が主走査方向に沿って線状に配列されたLEDヘッドにより構成されている。
【0029】
画像形成装置1の底部には、給紙装置20が設けられている。給紙装置20は、用紙積載板21を備え、用紙積載板21の上面には多数の記録媒体としての用紙Pが積載される。用紙積載板21に積載され、規制板(不図示)で幅方向位置が決められた用紙Pは、上側から1枚ずつ用紙引き出し部22により前方(X方向)に引き出された後、レジストローラ対23のニップ部まで搬送される。
【0030】
感光体ユニット30は、給紙装置20の上方(Z方向)に、それぞれが並列して設けられ、回転駆動する像保持体としての感光体ドラム31を備えている。感光体ドラム31の回転方向にそって、帯電ローラ32、露光装置LH、現像装置40、一次転写ローラ52、クリーニングブレード34が配置されている。帯電ローラ32には、帯電ローラ32の表面をクリーニングするクリーニングローラ33が対向、接触して配置されている。
【0031】
現像装置40は、内部にトナーとキャリアからなる現像剤が収容される現像ハウジング41を有する。現像ハウジング41内には、感光体ドラム31に対向して配置された現像剤保持体としての現像ローラ42と、この現像ローラ42の背面側斜め下方には現像剤を現像ローラ42側へ撹拌搬送する一対のオーガ44、45が配設されている。現像ローラ42には、現像剤の層厚を規制する層規制部材46が近接配置されている。
現像装置40各々は、現像ハウジング41に収容される現像剤を除いて同様に構成され、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。
【0032】
回転する感光体ドラム31の表面は、帯電ローラ32により帯電され、露光装置LHから出射する潜像形成光により静電潜像が形成される。感光体ドラム31上に形成された静電潜像は現像ローラ42によりトナー像として現像される。
【0033】
転写装置50は、各感光体ユニット30の感光体ドラム31にて形成された各色トナー像が多重転写される中間転写ベルト51、各感光体ユニット30にて形成された各色トナー像を中間転写ベルト51に順次転写(一次転写)する一次転写ローラ52、中間転写ベルト51上に重畳して転写された各色トナー像を用紙Pに一括転写(二次転写)する二次転写ローラ53から構成されている。
【0034】
各感光体ユニット30の感光体ドラム31に形成された各色トナー像は、画像形成装置制御部11により制御される電源装置70から所定の転写電圧が印加された一次転写ローラ52により中間転写ベルト51上に順次静電転写(一次転写)され、各色トナーが重畳された重畳トナー像が形成される。
【0035】
中間転写ベルト51上の重畳トナー像は、中間転写ベルト51の移動に伴って二次転写ローラ53が配置された領域(二次転写部T)に搬送される。重畳トナー像が二次転写部Tに搬送されると、そのタイミングに合わせて給紙装置20から用紙Pが二次転写部Tに供給される。そして、二次転写ローラ53には、画像形成装置制御部11により制御される電源装置70から所定の転写電圧が印加され、レジストローラ対23から送り出され、搬送ガイドにより案内された用紙Pに中間転写ベルト51上の多重トナー像が一括転写される。
【0036】
感光体ドラム31表面の残留トナーは、クリーニングブレード34により除去され、廃現像剤収容部に回収される。感光体ドラム31の表面は、帯電ローラ32により再帯電される。尚、クリーニングブレード34で除去しきれず帯電ローラ32に付着した残留物は、帯電ローラ32に接触して回転するクリーニングローラ33表面に捕捉され、蓄積される。
【0037】
定着装置60は、加熱源を備えた加熱モジュール61と加圧モジュール62を有し、加熱モジュール61と加圧モジュール62の圧接領域によって定着ニップN(定着領域)が形成される。
【0038】
転写装置50においてトナー像が転写された用紙Pは、トナー像が未定着の状態で搬送ガイドを経由して定着装置60に搬送される。定着装置60に搬送された用紙Pは、一対の加熱モジュール61と加圧モジュール62により、圧着と加熱の作用でトナー像が定着される。
定着トナー像が形成された用紙Pは、搬送ローラ対68を介して排出ローラ対69から画像形成装置1上面の排出トレイ1aに排出される。
【0039】
(2)定着装置60の構成
図2は定着装置60の構成を示す断面模式図、
図3は加熱源612の構成を示す平面模式図、
図4は加熱源612の構成を説明する
図3におけるA-A拡大断面模式図、
図5(a)は定着装置60における加熱源612の構成を示す断面模式図、(b)は定着ニップN内での圧力分布の一例を示す図である。
【0040】
(2.1)定着装置の全体構成
定着装置60には、加熱モジュール61と加圧モジュール62から構成されている。
加熱モジュール61には、用紙Pへのトナー像の定着に用いられるベルト部材の一例としての定着ベルト611が設けられている。定着ベルト611は、図中反時計回り方向(
図2中 矢印R参照)に回転する。
【0041】
定着ベルト611は、両端部が開放された無端状のベルト部材であり、ポリイミド(PI)等の耐熱樹脂で薄肉円筒状に形成されたベルト基材の表面に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂を含む離形層が形成された多層構造となっている。
【0042】
定着ベルト611の内側には、
図3に示すように、定着ベルト611の移動方向(X方向)、および、定着ベルト611の幅方向(Y方向)に沿って延びる板状の加熱源612が設けられている。加熱源612は面状発熱体であり、この加熱源612により定着ベルト611が所定の温度になるように加熱される。
【0043】
加熱源612は、耐熱・電気絶縁性材料である酸化アルミニウムからなり加熱源612からの熱を受ける熱受け板613を介して、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの耐熱性を有する合成樹脂により構成された保持部材614で保持されている。そして、保持部材614が、合成樹脂で構成され大きな曲げ強度を有する支持部材615で支持されている。
【0044】
さらに、加熱モジュール61には、温度センサSNRが設けられている。温度センサSNRは、保持部材614及び熱受け板613を貫通して加熱源612に接触配置され、加熱源612の温度を検出する。
また、保持部材614と支持部材615の両端部には、定着ベルト611の開放された両端部の内周面を回転可能に支持する一対のベルトガイド部材616(不図示)が設けられている。
【0045】
このように構成される加熱モジュール61は、加熱源612と定着ベルト611に内面との間に潤滑剤Sを介在させる(
図5(a)参照)ことで定着ベルト611と加熱源612との摺動性を確保している。潤滑剤Sは、その主成分(50質量%以上)として、アミン当量50,000g/mol以下の潤滑性オイル(アミン潤滑性オイル)を含むことが定着ベルト611の内周面からの潤滑剤の離脱を抑制して、定着ベルト611の摩耗を抑制できる点で好ましい。
【0046】
加圧モジュール62は、加圧ローラ621と、加圧ローラ621を加熱モジュール61に押圧する押圧ばね(不図示)を含む押圧機構(不図示)から構成されている。
加圧ローラ621は、例えば、金属製の円筒状の芯材622と、芯材622の外周面に被覆された耐熱性弾性体層623(例えばシリコーンゴム層や、フッ素ゴム層等)と、さらに、必要に応じて、例えばPFA等の耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆による表面離型層624とが積層されて構成される。
【0047】
加圧ローラ621は、両端部が押圧ばね(不図示)によって定着ベルト611を介して熱受け板613に押圧され定着ニップNを形成する。また、移動機構(不図示)によって、定着ベルト611の外周面と接離可能に支持されている。定着動作時は、定着ベルト611に従動して
図2の矢印R方向に回転し、定着ニップNに未定着トナー像を保持した用紙Pを通過させることで、熱および圧力を加えて未定着トナー像を用紙Pに定着する。
【0048】
(2.2)加熱源の構成
加熱源612は、
図4に示すように、基材612A上に、絶縁層612B、複数の抵抗発熱体612C、絶縁体612Dが積層されて構成されている。
基材612Aは、例えばステンレス鋼(SUS)やセラミックで形成された長尺平板であり加熱源612の支持体となる。基材612Aの表面側にはガラスペーストを印刷・焼成して形成した絶縁層612Bを介して抵抗発熱体612Cが設けられ、更に抵抗発熱体612Cは絶縁体612Dで覆われている。
【0049】
抵抗発熱体612Cは、
図3に示すように、基材612Aの表面側の定着ベルト611の移動方向に対して交差(直交)する長手方向(Y方向)に沿って平行に、銀(Ag)/パラジウム(Pd)合金を主成分とする金属ペーストを印刷して焼成することで所定の抵抗値を有する帯状の抵抗発熱体である。
抵抗発熱体612Cは、一端が重層形成した例えばAg/Pd合金による良導電体膜からなる給電電極612Eを有し、不図示の電源に接続されて給電を受ける。
【0050】
複数の抵抗発熱体612Cの間隙Gの幅Lは、
図4に示すように、それぞれの抵抗発熱体612Cの幅Wよりも長く形成されている。そして、給電電極612Eを残した複数の抵抗発熱体612C及び複数の抵抗発熱体612Cの間隙G上には、ガラスペーストを厚膜として印刷して焼成することで絶縁体612Dが形成されている。絶縁体612Dは、抵抗発熱体612Cを覆う領域のみが定着ベルト611の内面に向かって凸になるように形成されている。
【0051】
その結果、加熱源612は、定着ベルト611の内面と抵抗発熱体612Cの領域でより強く接触することになり、
図5(b)に示すように、定着ニップN内での圧力分布は、発熱する抵抗発熱体612Cの領域がそれ以外の領域よりも高い二山状になる。
【0052】
これにより、複数の抵抗発熱体612Cの間隙Gの領域に潤滑剤Sを保持して定着ベルト611の内面の濡れ性を効果的に担保して、加熱源612と接触しながら周回移動する定着ベルト611の内周面の摺動特性を向上させることができる。
【0053】
また、抵抗発熱体612Cを覆う領域の凸状絶縁体612Dは、複数の抵抗発熱体612Cの間隙Gの幅Lとの関係において、突出高さHがL≦α・H(αは所定の定数:α=60~240)、L≧絶縁距離、になるように形成されていることが好ましい。
一例として、間隙Gの幅Lが2mm、定数αが100~150の範囲に於いて突出高さHは13μm~20μmの突出量となり、発熱する抵抗発熱体612Cの領域で定着ニップN内での圧力分布がその周囲よりも比較的強くなり定着ベルト611の内面への密着性が向上し、間隙Gの領域では圧力分布が低くなることで摩擦抵抗の増加が抑制される。
【0054】
「変形例」
図6(a)は抵抗発熱体612Cの間隙Gの幅Lが広い場合の定着ニップNを示す断面模式図、(b)は定着ニップN内での圧力分布の一例を示す図、
図7(a)は変形例に係る加熱源612を示す断面模式図、(b)は定着ニップN内での圧力分布の一例を示す図、
図8は絶縁体612Dの厚さを説明する加熱源612の拡大断面模式図である。
【0055】
複数の抵抗発熱体612Cの間隙Gの幅Lが広い場合には、加圧ローラ621で定着ベルト611の内周面が加熱源612側へ押圧されて定着ベルト611の内周面が間隙Gを覆う絶縁体612Dの中央部と接触して定着ニップN内での圧力分布は、発熱する抵抗発熱体612Cの領域と間隙Gの中央部がそれ以外の領域よりも高い三山状になる。そのために、複数の抵抗発熱体612Cの間隙Gの複数の領域G1、G2において潤滑剤Sを保持することができ、定着ベルト611の内周面の摺動特性をより向上させることができる。
【0056】
一方、加熱源612が小型である場合には、複数の抵抗発熱体612Cの間隙Gの幅Lも狭くなり、定着ニップN内での圧力分布は、三山状にはなりにくい。
図7(a)に示すように、変形例に係る加熱源612は、絶縁体612Dが複数の抵抗発熱体612Cの間隙Gの中央部において凸状に形成されている。
そのために、定着ニップN内での圧力分布は、
図7(b)に示すように、発熱する抵抗発熱体612Cの領域と間隙Gの中央部がそれ以外の領域よりも高い三山状になり、複数の抵抗発熱体612Cの間隙Gの複数の領域G1、G2において潤滑剤Sを保持することができる。これにより、定着ベルト611の内周面の摺動特性をより確実に向上させることができる。
【0057】
図8に示すように、絶縁体612Dの厚みは、抵抗発熱体612Cを覆う部分の厚みt1が基材612Aを覆う部分の厚みt2よりも薄く形成されている。
これにより、抵抗発熱体612Cを覆う部分の厚みt1が基材612Aを覆う部分の厚みt2よりも厚く形成されている場合に比べて、加熱源612から定着ベルト611への絶縁体612Dによる伝熱効率の低下を抑制することができる。
【0058】
「変形例2」
図9は変形例2に係る加熱源612の絶縁体612Dの厚さを説明する断面模式図である。
図9に示すように、変形例2に係る加熱源612においては、絶縁体612Dの厚みは、抵抗発熱体612Cを覆う部分の厚みt1が基材612Aを覆う部分の厚みt2よりも厚く形成されている。
【0059】
これにより、抵抗発熱体612Cを覆う部分の厚みt1が基材612Aを覆う部分の厚みt2よりも薄く形成されている場合に比べて、複数の抵抗発熱体612Cの間隙Gの領域に潤滑剤Sを保持できる窪みが形成されて、定着ベルト611の内面の濡れ性を効果的に担保して周回移動する定着ベルト611の内周面の摺動特性を向上させることができる。
【0060】
「変形例3」
図10は変形例3に係る加熱源612の絶縁体612Dの厚さを説明する断面模式図である。
図10に示すように、変形例3に係る加熱源612においては、絶縁体612Dの厚みは、抵抗発熱体612Cの間隙Gを覆う部分の厚みt2が抵抗発熱体612Cよりも外側の基材612Aを覆う部分の厚みt3よりも薄く形成されている。
【0061】
これにより、抵抗発熱体612Cの間隙Gを覆う部分の厚みt2が抵抗発熱体612Cよりも外側の基材612Aを覆う部分の厚みt3よりも厚く形成されている場合に比べて、複数の抵抗発熱体612Cの間隙Gの領域に形成される潤滑剤Sを保持できる窪みを増大させて、定着ベルト611の内面の濡れ性をより効果的に担保して周回移動する定着ベルト611の内周面の摺動特性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0062】
1・・・画像形成装置
10・・・制御装置
20・・・給紙装置
30・・・感光体ユニット
31・・・感光体ドラム
40・・・現像装置
42・・・現像ローラ
50・・・転写装置
51・・・中間転写ベルト
53・・・二次転写ローラ
60・・・定着装置
61・・・加熱モジュール
611・・・定着ベルト
612・・・加熱源
612A・・・基材
612B・・・絶縁層
612C・・・抵抗発熱体
612D・・・絶縁体
G・・・間隙
S・・・潤滑剤
N・・・定着ニップ