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特許7187767フィールド機器、システム、および波形データ出力方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】フィールド機器、システム、および波形データ出力方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/32 20220101AFI20221206BHJP
   G01R 13/20 20060101ALI20221206BHJP
   G08C 15/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G01F1/32 T
G01R13/20 R
G08C15/00 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017168990
(22)【出願日】2017-09-01
(65)【公開番号】P2019045320
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-08-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】中垣 憲一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 森之介
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-153698(JP,A)
【文献】特開2015-090290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B~G01W
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置と通信可能なフィールド機器であって、
物理量を検知してセンサー信号として出力するセンサーと、
前記センサー信号を処理して処理結果信号として出力する信号処理部と、
前記処理結果信号に基づいて出力値データを求める演算処理部と、
前記出力値データを外部に出力する出力部と、
前記処理結果信号と、前記信号処理部内における処理過程の信号である処理過程信号とを多重化するマルチプレクサと、
前記マルチプレクサによって多重化された前記処理結果信号および前記処理過程信号の波形データを記憶する波形取得部と、
を具備し、
前記信号処理部は、前記センサー信号の周波数解析を行って渦信号を抽出し、抽出した前記渦信号をパルス化したパルス信号を出力し、
前記波形取得部は、前記渦信号の波形に同期した前記パルス信号の波形を記憶し、
前記マルチプレクサは、前記処理結果信号および前記処理過程信号のうちのいずれかを選択するための信号選択の信号を前記演算処理部から受信し、前記信号選択の信号を所定期間ごとに順次変更していくことにより、前記処理結果信号と前記処理過程信号とを多重化し、
前記演算処理部は、演算周期内の第1から第n(nは自然数)の期間のうちの第nの期間の後の期間において、波形取得コマンドを前記波形取得部に送信して、前記波形取得部から前記演算周期内の第1から第nの期間における波形データを取得し、
前記演算処理部は、前記波形取得部に前記波形データの取込み周期を設定し、または、前記波形データの取込みの開始を制御し、
前記フィールド機器が前記端末装置から波形要求コマンドを受信すると、前記演算処理部は、前記取込み周期または前記開始に応じて、前記波形取得部から前記処理結果信号および前記処理過程信号の前記波形データを取得して、前記出力部を介して前記端末装置に前記波形データを送信する、
フィールド機器。
【請求項2】
前記演算処理部は、前記波形取得部に、前記波形データの取得を開始するよう指示し、また前記波形データの取得を停止するよう指示する、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィールド機器。
【請求項3】
前記演算処理部は、無線通信または有線通信により、前記出力部を介して前記波形データを外部に出力する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフィールド機器。
【請求項4】
前記演算処理部は、該フィールド機器から取り出し可能な記録媒体に前記波形データを書き込む、
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載のフィールド機器。
【請求項5】
前記センサーは、
流体に発生する渦波形を検知するための圧電素子と、
前記圧電素子から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器と、
を含み、
前記信号処理部は、前記センサーから出力される前記渦波形のデジタル信号に基づき前記渦波形のデジタル信号の周期を有するパルス信号を出力するものであり、
前記演算処理部は、前記パルス信号の頻度と、予め設定された流路の情報とに基づいて、前記流体の流量を前記出力値データとして算出する、
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載のフィールド機器。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載のフィールド機器と、
前記フィールド機器から出力された波形データを画面に表示する外部機器と、
を含んで構成されるシステム。
【請求項7】
センサーが、物理量を検知してセンサー信号として出力し、
信号処理部が、前記センサー信号を処理して処理結果信号として出力し、
演算処理部が、前記処理結果信号に基づいて出力値データを求め、
出力部が、前記出力値データを外部に出力する、
フィールド機器からの波形データ出力方法であって、
マルチプレクサが、前記処理結果信号と、前記信号処理部内における処理過程の信号である処理過程信号とを多重化し、
波形取得部が、前記マルチプレクサによって多重化された前記処理結果信号および前記処理過程信号の波形データを記憶し、
前記信号処理部が、前記センサー信号の周波数解析を行って渦信号を抽出し、抽出した前記渦信号をパルス化したパルス信号を出力し、
前記波形取得部が、前記渦信号の波形に同期した前記パルス信号の波形を記憶し、
前記マルチプレクサが、前記処理結果信号および前記処理過程信号のうちのいずれかを選択するための信号選択の信号を前記演算処理部から受信し、前記信号選択の信号を所定期間ごとに順次変更していくことにより、前記処理結果信号と前記処理過程信号とを多重化し、
前記演算処理部が、演算周期内の第1から第n(nは自然数)の期間のうちの第nの期間の後の期間において、波形取得コマンドを前記波形取得部に送信して、前記波形取得部から前記演算周期内の第1から第nの期間における波形データを取得し、
前記演算処理部が、前記波形取得部に前記波形データの取込み周期を設定し、または、前記波形データの取込みの開始を制御し、
前記フィールド機器が端末装置から波形要求コマンドを受信すると、前記演算処理部が、前記取込み周期または前記開始に応じて、前記波形取得部から前記処理結果信号および前記処理過程信号の前記波形データを取得して、前記出力部を介して前記端末装置に前記波形データを送信する、
波形データ出力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィールド機器、システム、および波形データ出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、物理量を把握して出力回路からその物理量のデータを出力するフィールド機器が存在する。ここで、物理量とは、様々な種類の量であり得るが、例えば、プラント制御に用いるための、流体の流量、温度、圧力などが挙げられる。このようなフィールド機器は、例えば、センサーを用いて検知した電気信号をデジタル化し、そのデジタル信号を基に必要に応じて演算処理を行うことによって出力値を求める。
【0003】
特許文献1には、フィールド機器の一種である渦流量計の構成例が開示されている。特に、特許文献1の図1に渦流量計の機能ブロック図が記載されている。
この渦流量計は、概ね次のような構成を有する。即ち、流体の流れを遮るように渦棒が配置されている。流体の流れにより、その渦棒の後方(下流側)に流量に応じたカルマン渦が発生する。渦流量計は、そのカルマン渦をカウントし、そのカウント値を流量に変換する。より具体的な構成例として、渦流量計では、カルマン渦により発生する交番揚力を検出するための手段として圧電素子を用いる場合がある。圧電素子で検出した電荷信号は、チャージアンプにて電圧信号に変換され、アナログ・デジタル変換される。そして、デジタル変換された信号を基に、周波数解析部の信号処理により渦信号(正弦波に近い)が抽出される。抽出された渦信号は、シュミットトリガ回路にてパルス化され、カウント回路が所定時間内におけるパルス数をカウントする。そして、マイクロプロセッサ(CPU、中央処理装置)は、単位時間当たりのパルス数のデータに基づいて、周波数演算、流量演算、補正演算等を行う。そして、マイクロプロセッサによる演算結果の数値を表す信号は、出力回路において所望の形態に変換され、出力される。
【0004】
プラント設備等の配管に直接取り付けられる渦流量計においては、配管振動、その他の機械振動、プロセス流体に起因した脈動、電気的なノイズ等によって、出力された流量が期待される値と異なる場合や流量が安定しない場合が少なくない。その際、最終的な出力値だけではなく、渦流量計が検出した渦波形を直接観測して、不具合解析をしたい場合がある。その場合、検出した渦波形やパルス信号の状態を確認するには、機器内に用意した観測端子にオシロスコープ等の測定器を接続する。
【0005】
また、渦流量計に限らず、フィールド機器一般においても、最終的な出力値だけではなく、処理過程における各種信号の波形を直接観測することが望まれる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-153698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フィールド機器の内部における信号波形を観測するにはオシロスコープ等の測定器が必要になるが、一般的にオシロスコープ等の測定器は高価であるため、必ずしも使用者側で用意されているとは限らない。フィールド機器の設置場所が奥まっている場合などにおいては、そのフィールド機器の近くまでオシロスコープ等を持ち込んで人が作業することが困難な場合もある。さらに、フィールド機器の使用場所が防爆エリアである場合も多く、オシロスコープ等の測定器が非防爆品である場合には、その場所まで持ち込むことができない。このような場合には、フィールド機器にオシロスコープを接続して、フィールド機器の設置現場でオシロスコープ等により信号波形を確認することが非常に困難である。
【0008】
フィールド機器が渦流量計である場合にも、同じ理由で、渦流量計の設置現場にオシロスコープ等を持ち込んで渦波形を観測することが困難な状況があり得る。
【0009】
本発明は、上記の課題認識に基づいて行なわれたものであり、フィールド機器の近くで作業をしたり、フィールド機器にオシロスコープ等の測定器を直接接続したりことが困難な状況においても、フィールド機器の内部の信号波形を容易に取得することのできるフィールド機器、システム、および波形データ出力方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]上記の課題を解決するため、本発明の一態様によるフィールド機器は、物理量を検知してセンサー信号として出力するセンサーと、前記センサー信号を処理して処理結果信号として出力する信号処理部と、前記処理結果信号に基づいて出力値データを求める演算処理部と、前記出力値データを外部に出力する出力部と、前記センサー信号と、前記処理結果信号と、前記信号処理部内における処理過程の信号である処理過程信号と、のすくなくともいずれかの信号の波形データを記憶する波形取得部と、を具備し、前記演算処理部は、前記波形取得部から前記波形データを取得して、前記出力部を介して前記波形データを出力する、ことを特徴とする。
【0011】
[2]また、本発明の一態様は、上記のフィールド機器において、前記センサー信号と、前記処理結果信号と、前記処理過程信号とのうちの複数の信号を入力とし、それら複数の信号を多重化して前記波形取得部に渡すマルチプレクサ、をさらに具備することを特徴とする。
【0012】
[3]また、本発明の一態様は、上記のフィールド機器において、前記演算処理部は、前記波形取得部に、前記波形データの取得を開始するよう指示し、また前記波形データの取得を停止するよう指示する、ことを特徴とする。
【0013】
[4]また、本発明の一態様は、上記のフィールド機器において、前記演算処理部は、無線通信または有線通信により、前記出力部を介して前記波形データを外部に出力する、ことを特徴とする。
【0014】
[5]また、本発明の一態様は、上記のフィールド機器において、前記演算処理部は、該フィールド機器から取り出し可能な記録媒体に前記波形データを書き込む、ことを特徴とする。
【0015】
[6]また、本発明の一態様は、上記のフィールド機器において、前記センサーは、流体に発生する渦波形を検知するための圧電素子と、前記圧電素子から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器と、を含み、前記信号処理部は、前記センサーから出力される前記渦波形のデジタル信号に基づき前記渦波形のデジタル信号の周期を有するパルス信号を出力するものであり、前記演算処理部は、前記パルス信号の頻度と、予め設定された流路の情報とに基づいて、前記流体の流量を前記出力値データとして算出する、ことを特徴とする。
【0016】
[7]また、本発明の一態様は、上記[1]から[6]までのいずれかに記載のフィールド機器と、前記フィールド機器から出力された波形データを画面に表示する外部機器と、を含んで構成されるシステムである。
【0017】
[8]また、本発明の一態様は、センサーが、物理量を検知してセンサー信号として出力し、信号処理部が、前記センサー信号を処理して処理結果信号として出力し、演算処理部が、前記処理結果信号に基づいて出力値データを求め、出力部が、前記出力値データを外部に出力する、フィールド機器からの波形データ出力方法であって、波形取得部が、前記センサー信号と、前記処理結果信号と、前記信号処理部内における処理過程の信号である処理過程信号と、のすくなくともいずれかの信号の波形データを記憶し、前記演算処理部が、前記波形取得部から前記波形データを取得して、前記出力部を介して前記波形データを出力する、波形データ出力方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フィールド機器が、内部の信号の波形を表す波形データを、外部に出力することができる。これにより、例えば人がフィールド機器の近くで作業をすることができない場合や、防爆上などの理由によりフィールド機器を測定器(オシロスコープ等)で直接測定できない状況においても、波形を観測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態による計測システムの概略機能構成を示すブロック図である。
図2】同実施形態によるフィールド機器内においてCPUが波形データを取得するための処理の手順を示すフローチャートである。
図3】同実施形態による波形取得メモリが波形データを取得してメモリ内に格納する処理の手順を示すフローチャートである。
図4】同実施形態によるポータブル型端末8の概略機能構成を示すブロック図である。
図5】同実施形態による計測システムを構成する装置間におけるネットワーク接続の形態を示す概略図である。
図6】同実施形態によるCPUが信号処理部20および波形取得メモリ40との間でやりとりする通信データのシーケンスを示すタイミングチャートである。
図7】同実施形態によるCPUが上位機器との間でやりとりする通信データのシーケンスを示すタイミングチャートである。
図8】同実施形態によるポータブル型端末とフィールド機器との間の通信のシーケンスを示すシーケンスチャートである。
図9】同実施形態によるフィールド機器がプロセス値を出力する際の信号のタイミングを示すタイミングチャートである。
図10】同実施形態によるフィールド機器が波形データを出力する際の信号のタイミングを示すタイミングチャートである。
図11】第2実施形態による計測システムの概略機能構成を示すブロック図である。
図12】第3実施形態による計測システムの概略機能構成を示すブロック図である。
図13】第4実施形態による計測システムの概略機能構成を示すブロック図である。
図14】第5実施形態による計測システムの概略機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態による計測システムの概略機能構成を示すブロック図である。図示するように、この計測システムは、フィールド機器1と、ポータブル型端末8と、制御システム9とを含んで構成される。なお、計測システムが、他の装置を含んで構成されるようにしてもよい。そして、フィールド機器1は、センサー10と、信号処理部20と、マルチプレクサ(MUX)30と、波形取得メモリ40と、CPU・50と、出力回路60とを含んで構成される。これらの各機能部は、例えば、電子回路を用いて実現される。また、各機能部は、必要に応じて、半導体メモリ等の記憶手段を内部に備えてよい。なお、波形取得メモリ40は「波形取得部」とも呼ばれる。また、CPU・50は「演算処理部」とも呼ばれる。また、出力回路60は「出力部」とも呼ばれる。ここに図示する各部の機能は、次に説明する通りである。
なお、信号の波形を表すデータを、以下において「波形データ」または「波形のデータ」と呼ぶ場合がある。この波形データは、標本点における信号波形の標本値の連続として表される。つまり、1つの信号の波形データは時系列の数値データである。
【0022】
フィールド機器1は、物理量を検知し、必要に応じてその物理量に基づく演算を行い、その物理量ないしは演算結果のデータを出力する装置である。本実施形態によるフィールド機器1は、さらに、出力データ(プロセス値)を求める前の処理過程での信号波形のデータをも出力する。なお、図において1台のフィールド機器1のみを示しているが、計測システムが複数台のフィールド機器1を含んで構成されていてもよい。
【0023】
ポータブル型端末8は、フィールド機器1からデータを受信する端末装置である。ポータブル型端末8は、例えば、パーソナルコンピューター、スマートフォン(スマホ)、タブレット端末、腕時計型端末、ウェアラブル端末などを用いて実現される。
制御システム9もまた、フィールド機器1からデータを受信する端末装置である。制御システム9は、例えば、パーソナルコンピューター、サーバー型コンピューターなどを用いて実現される。制御システム9は、複数の装置を接続して構成されるシステムであってもよい。
図1では、ポータブル型端末8と制御システム9の両方を示しているが、計測システムが、ポータブル型端末8と制御システム9のいずれか一方のみを含む構成であってもよい。
【0024】
ポータブル型端末8や制御システム9は、フィールド機器1の外部に存在する機器であるという意味で、「外部機器」とも呼ばれる。ポータブル型端末8や制御システム9は、それぞれ、CPUを備えており、CPUがプログラムを実行することができる。そのプログラムは、フィールド機器1から送信されるデータ(プロセス値のデータや、波形データ)を受信する機能と、受信した波形データが表す波形を画面上などに描画する機能とを含む。フィールド機器1から出力される波形データは、時系列の数値のデータである。上記プログラムは、この時系列の数値データに基づいて、元の信号波形を再現し、画面に表示させる機能を有する。
【0025】
次に、フィールド機器1が含む各部の機能について説明する。
センサー10は、物理量あるいは物理的状況を検知し、電気信号(センサー信号)として出力するものである。センサー10は、A/D変換(analog-to-digital)機能を含んでいてもよい。本実施形態におけるセンサー10はデジタル化された電気信号を出力するものであるが、デジタル化する前のアナログ信号を出力するセンサーを用いてもよい。
信号処理部20は、センサー10から出力された信号を適宜処理し、所望の信号(処理結果信号)を出力する。本実施形態の信号処理部20は、処理過程において複数の段階を含んでおり、その各段階における信号を出力することもできる。一例として、信号処理部20が、信号の周波数解析処理を行いその周波数解析処理機能の後段にシュミットトリガ回路を設ける場合、上記の周波数解析処理からの出力信号をマルチプレクサ30に渡すこともできる。
【0026】
マルチプレクサ(MUX)30は、センサー10から出力される信号や信号処理部20から出力される信号などを入力とし、多重化し、波形取得メモリ40に供給する。本実施形態では、マルチプレクサ30は、信号処理部20内の複数の箇所からの信号を入力する。ただし、マルチプレクサ30への入力線(図1)のうちの一部を省略する構成としてもよい。つまり、マルチプレクサ30は、センサー10から出力されるセンサー信号と、信号処理部20から出力される処理結果信号と、信号処理部20の処理過程の信号である処理過程信号とのうちの複数の信号を入力とし、それら複数の信号を多重化して波形取得メモリ40に渡す。マルチプレクサ30がCPU・50から受信する「信号選択」の信号は、その時点で選択される入力信号を指し示すものである。この「信号選択」の信号を所定期間ごとに順次変更していくことにより、マルチプレクサ30は入力される信号を多重化する。なお、入力される信号のうちの一部の信号を「信号選択」の信号が指示することにより、それら一部の信号のみを選択し、多重化して出力することもできる。また、マルチプレクサ30に入力されるすべての信号を常に多重化して出力するようにしてもよい。
なお、フィールド機器1がマルチプレクサ30を持たない構成としてもよい。波形取得メモリ40が取得するための信号線が1本だけの場合には、マルチプレクサ30を設ける必要はない。
【0027】
波形取得メモリ40は、上流側から(例えばマルチプレクサ30から)の信号を取得し、その信号波形のデータを記憶する。波形取得メモリ40は、データを記憶するための記憶手段(半導体メモリ等)そのものと、記憶手段を制御するための制御手段とを備えている。この制御手段は、外部からデータを受け取ってそのデータを上記記憶手段に書き込んだり、上記記憶手段からデータを読み出してそのデータを外部に渡したりするための機能を含む。また、波形取得メモリ40は、多重化されている複数の信号を取得し、それら複数の信号波形のデータを記憶するようにしてもよい。つまり、波形取得メモリ40は、デマルチプレクサの機能も内部に備える。波形取得メモリ40が記憶するデータは、信号ごとの時系列の数値である。この時系列の数値データに基づき、元の波形を再現することが可能である。波形取得メモリ40は、外部から(例えばCPU・50から)の読み出し信号に基づいて、任意の信号の任意の時点からの波形データを出力することができる。また、波形取得メモリ40は、外部から(例えばCPU・50から)の制御信号に基づいて、波形データの取込み周期の設定を受け付けることができる。この取込み周期は、CPU・50が波形取得メモリ40から波形データを取り込む周期である。また、波形取得メモリ40は、外部から(例えばCPU・50から)の制御信号に基づいて、波形データの取込みの開始あるいは終了を制御できる。
【0028】
CPU・50は、信号処理部20から出力される信号に基づき、また必要に応じてあらかじめ設定されたパラメーター値を用いて、所定の演算を行い、演算結果の数値データ(出力値データ,プロセス値)を出力回路60に渡す。一例として、フィールド機器1が渦流量計である場合、CPU・50は、信号処理部20から出力されるパルス(カルマン渦の周期に対応したパルス)のカウント値と、パラメーター値(例えば、流路のサイズや形状に関する値)とに基づいて、流体の流量の数値を算出する。
また、CPU・50は、波形取得メモリ40に対して制御信号ないしはコマンドを送り、波形取得メモリ40から波形データ(取込みデータ)を取得する。
また、CPU・50は、出力回路60を介して外部機器からのコマンドを受信し、そのコマンドに応じて、プロセス値のデータや波形データを出力回路60経由で外部機器側に送信する。
また、CPU・50が波形取得メモリ40に、波形データの取得の開始または停止を指示する信号を送るようにしてもよい。また、CPU・50が波形取得メモリ40に、波形データの取込み周期の設定を指示する信号を送るようにしてもよい。
CPU・50と、周辺の機能部あるいは回路との間のデータのやり取りの手順については、後で別の図面を参照しながら説明する。
【0029】
出力回路60は、外部機器との間の通信インターフェースの機能を有する回路である。出力回路60は、CPU・50から渡されるデータ(出力値データおよび波形データ)を、ポータブル型端末8や制御システム9に対して送信する。また、出力回路60は、不図示の「通信受信部」を内部に備え、ポータブル型端末8や制御システム9からのコマンド等を受信し、CPU・50に渡す。出力回路60を介した双方向の通信のやり取りについては後で詳細に説明する。
なお、出力回路60が、4-20mAの規格で出力値を出力する機能を備えていてもよい。
【0030】
図2は、フィールド機器1内においてCPU・50が波形データを取得するための処理の手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに沿って説明する。
ステップS11において、CPU・50は、波形取得メモリ40に対して、波形データ取得コマンドを送信する。波形取得メモリ40は、この波形データ取得コマンドを受信する。この波形データ取得コマンドは、波形メモリ40に波形データの取得を指示するコマンドである。
ステップS12において、波形取得メモリ40は、上記の波形データ取得コマンドに基づいて、波形取得メモリへのデータの取り込みを行う。具体的には、波形取得メモリ40は、マルチプレクサ30から波形データを取得する。言い換えれば、CPU・50は、波形取得メモリ40側でのデータ取得の機能を呼び出す。なお、本ステップの処理の詳細について、後で図3を参照しながら説明する。
【0031】
ステップS13において、CPU・50は、波形取得メモリ40のステータスを確認する。波形取得メモリ40のステータスが「busy」(ビジー、つまりアクセス不可)ならば、ステップS14に進む。波形取得メモリ40のステータスが「not busy」(ノット・ビジー、つまり、アクセス可能)ならば、ステップS15に進む。なお、後述するように、波形取得メモリ40がデータをメモリに格納している処理の間には、ステータスは「busy」(ビジー)となる。
ステップS14に進んだ場合、同ステップにおいて、CPU・50は、所定時間待つ(ウェイトする)。その時間の経過後は、ステップS13に戻る。
【0032】
ステップS15に進んだ場合、同ステップにおいて、CPU・50は、波形取得メモリ40に、取得波形取込みコマンドを送信する。波形取得メモリ40は、この取得波形取込みコマンドを受信する。言い換えれば、CPU・50は、波形取得メモリ40からの波形データの取込みを開始する指示をする。
ステップS16において、CPU・50は、波形取得メモリ40から、取得波形データを受信する。言い換えれば、取込みデータが、波形取得メモリ40からCPU・50に転送される。本ステップの処理が終了すると、フィールド機器1は、本フローチャート全体の処理を終了する。
以上の処理によってCPU・50が取得したデータは、出力回路60から外部に送信することが可能となる。
なお、波形メモリ40に波形データの取得を終了させる場合には、CPU・50は、波形データ取得終了コマンドを波形メモリ40に送信する。
また、CPU・50が波形メモリ40からの取得波形データの取込みを終了する場合には、CPU・50は、取得波形取込み終了コマンドを波形メモリ40に送信する。
【0033】
図3は、波形取得メモリ40が波形データを取得してメモリ内に格納する処理の手順を示すフローチャートである。本図に示す処理は、図2のステップS12において呼び出される処理である。以下、このフローチャートに沿って説明する。
ステップS21において、波形取得メモリ40は、波形取得メモリ40のステータスを「busy」(ビジー、つまりアクセス不可)に変更する。
次に、ステップS22において、波形取得メモリ40は、波形のデータを取得し、メモリ内に格納する。所定のデータをメモリに格納し終えると、次のステップに移る。
次に、ステップS23において、波形取得メモリ40は、波形取得メモリ40のステータスを「not busy」(ノット・ビジー、つまり、アクセス可能)に変更する。本ステップの処理が終了すると、本フローチャート全体の処理を終了する。
【0034】
次に、計測システムの構成要素であるポータブル型端末8の機能について説明する。
図4は、ポータブル型端末8の概略機能構成を示すブロック図である。図示するように、ポータブル型端末8は、制御装置81と、演算装置82と、電源装置83と、マンマシンインターフェース部84と、機器接続インターフェース部85と、表示器86とを含んで構成される。
【0035】
制御装置81は、ポータブル型端末8の全体を制御する。
演算装置82は、与えられるプログラムを実行する。また、演算装置82は、マンマシンインターフェース部84を介して、利用者の操作の情報を受け付けたり、利用者に対して提示する情報を出力したりする。
電源装置83は、外部から電力を取り入れ、ポータブル型端末8の各部に電力を供給する。または、電源装置83は、内蔵の電池を備え、ポータブル型端末8の各部に電力を供給する。
マンマシンインターフェース部84は、例えばキーボードやマウスなどによる操作やタッチ操作による信号を受け付け、演算装置82に伝える。また、マンマシンインターフェース部84は、演算装置82から出力される情報を表示器86に表示させる。
機器接続インターフェース部85は、ポータブル型端末8と他の機器との接続を可能にする。機器接続インターフェース部85は、例えば、フィールド機器1との間で双方向の通信を行う。機器接続インターフェース部85の機能により、ポータブル型端末8は、信号線等でフィールド機器1に直結することもでき、また通信ネットワークを介してフィールド機器1に接続することもできる。
表示器86は、マンマシンインターフェース部84から渡される情報を画面として表示する。表示器86としては、例えば液晶ディスプレイ装置やその他の表示手段を用いることができる。
【0036】
上記の構成により、ポータブル型端末8は、フィールド機器1から渡される波形データを受信し、必要に応じてその波形データを保存する。また、ポータブル型端末8は、波形データ(時系列の数値データ)に基づき、波形を再現し、画面に表示させることができる。波形データを受信して画面に波形を表示させる機能を有するプログラムは、内部の記憶部に記憶される。ポータブル型端末8内の演算装置82がそのプログラムを実行することにより、フィールド機器1で取得された信号波形を表示することができる。
【0037】
なお、ここでは、ポータブル型端末8が波形データを取得して波形を表示する処理について説明したが、制御システム9も、同様の処理を行うことにより波形を表示することができる。
【0038】
図5は、計測システムを構成する装置間におけるネットワーク接続の形態を示す概略図である。
同図(a)は、フィールド機器1と、ポータブル型端末8と、制御システム9(DCS)と、機器管理システム101が、LAN(ローカルエリアネットワーク)100に接続されている形態を示す。なお、複数のフィールド機器1が存在し、LAN・100に接続されていてもよい。この場合、フィールド機器1とポータブル型端末8との間の相互の通信は、LAN・100を介して行われる。LAN・100上では例えばIP(インターネットプロトコル)を用いた通信が行われる。
同図(b)は、ポータブル型端末8が、1台のフィールド機器との間でLAN・100を介さずに直接(即ち、LAN・100以外の通信手段を介して)接続されている形態を示す。この場合、フィールド機器1とポータブル型端末8との間の相互の通信は、LAN・100を介さずに行われる。フィールド機器1とポータブル型端末8との間では、例えば、独自に定められた通信手順による通信を行うことができる。
【0039】
なお、前述の通り、ポータブル型端末8あるいは制御システム9側では、搭載されたプログラムを実行させることにより、フィールド機器1から受信した波形データに基づく波形を描き、その画面に表示することができる。
【0040】
図6は、CPU・50が信号処理部20および波形取得メモリ40との間でやりとりする通信データのシーケンスを示すタイミングチャートである。同図(a)は、CPU・50が出力するコマンドを示す。また、同図(b)は、CPU・50への応答(CPU・50に返送されるデータ)を示す。同図において横軸は時間である。同図は、1演算周期分のシーケンスを示している。CPU・50は、演算設定コマンド(図中の演算設定1から演算設定nまで。ただし、nは自然数)を信号処理部20に対して送信する。また、CPU・50は、波形取得コマンドを波形取得メモリ40に対して送信する。まず、演算周期内の第1の期間において、CPU・50は、コマンド「演算設定1」を送信する。また、その第1の期間において、信号処理部20は、コマンド「演算設定1」に応じて、出力値演算用データ11から出力値演算用データm1までのm個のデータを、CPU・50に送信する。以後も同様であり、第iの期間(ただし、1≦i≦n)において、CPU・50は、コマンド「演算設定i」を送信する。また、その第iの期間において、信号処理部20は、コマンド「演算設定i」に応じて、出力値演算用データ1iから出力値演算用データmiまでのm個のデータを、CPU・50に送信する。第nの期間の後の期間において、CPU・50は、波形取得コマンドを、波形取得メモリ40に送信する。また、この期間において、波形取得メモリ40は、取得波形データ1から取得波形データmまでを、CPU・50に送信する。その後、次の演算周期に移る。このようなデータの送受信が演算周期ごとに繰り返される。これにより、CPU・50は、信号処理部20から、出力値を演算するための出力値演算用データを取得するとともに、波形取得メモリ40から、マルチプレクサ30で適宜選択された信号の波形のデータを取得する。
【0041】
図7は、CPU・50が上位機器との間でやりとりする通信データのシーケンスを示すタイミングチャートである。同図(a)は、CPU・50が上位機器から受信するコマンドを示す。また、同図(b)は、CPU・50からの上位機器に対する応答(上位機器に返送されるデータ)を示す。ここで、上位機器とは、例えば、ポータブル型端末8や制御システム9などである。同図において横軸は時間である。同図は、1制御信号更新周期分のシーケンスを示している。CPU・50は、上位機器から、データ要求コマンドおよび波形取得要求コマンドを受信する。また、CPU・50は、受信したコマンドに対応するデータを上位機器に対して送信する。時間に沿って説明すると、まず、制御信号更新周期内の第1の期間において、上位機器は、CPU・50に対して、コマンド「データ要求1」を送信する。CPU・50は、このコマンド「データ要求1」を受信する。また、その第1の期間において、CPU・50は、上位機器に対して「データ返送1」を送信する。この「データ返送1」は、フィールド機器1の出力値を含むデータである。以後も同様であり、第iの期間(ただし、1≦i≦n)において、上位機器は、CPU・50に対して、コマンド「データ要求i」を送信する。CPU・50は、このコマンド「データ要求i」を受信する。また、その第iの期間において、CPU・50は、上位機器に対して「データ返送i」を送信する。第nの期間の後の期間において、上位機器は、取得波形要求コマンドを、CPU・50に送信する。CPU・50は、この取得波形要求コマンドを受信する。また、この期間において、CPU・50は、上位機器に対して、「取得波形返送」のデータを送信する。「取得波形返送」のデータには、選択された信号の波形を表す数値データの集合が含まれている。これにより、上位機器は、フィールド機器1からの出力値を取得するとともに、適宜選択された信号の波形のデータを取得することができる。また、上位機器は、受信した波形データを用いて、画面等にその信号の波形を描画することができる。
【0042】
図8は、ポータブル型端末8とフィールド機器1との間の通信のシーケンスを示すシーケンスチャートである。同図において、縦軸は時間である。なお、同図における通信受信部はフィールド機器1が有する機能であるが、この通信受信部は、図1においては記載が省略されている。以下、このシーケンスチャートに沿って説明する。
【0043】
まずステップS51において、ポータブル型端末8(上位機器)は、波形要求コマンド(図7における取得波形要求)をフィールド機器1に送信する。フィールド機器1の通信受信部がそのコマンドを含んだ通信信号を受信する。
次にステップS52において、フィールド機器1の通信受信部は、波形要求コマンドを含んだ通信信号を復調する。
次にステップS53において、上記の波形要求コマンドを解釈したCPU・50は、波形取得メモリ40に、読み出し要求(図6における波形取得コマンド)を送信する。波形取得メモリ40は、この読み出し要求を受信する。
次にステップS54において、波形取得メモリ40は、ステップS53で受信した読み出し要求に対応して、波形データ(図6における取得波形データ)をCPU・50に対して送信する。CPU・50は、受信した波形データを出力回路60から出力させる。
次にステップS55において、出力回路60は、CPU・50から渡された波形データを含むよう、通信信号を変調する。
そしてステップS56において、出力回路60は、ポータブル型端末8に対して、ステップS55において変調された通信信号を送信する。つまり、出力回路60は、ポータブル型端末8に対して波形データ(図7における取得波形返送)を送信する。
以上、ステップS51からS56までの一連の処理により、ポータブル型端末8は、フィールド機器1から波形データを取得する。
【0044】
そして、ステップS57以後は、ポータブル型端末8がプロセス値を取得するための処理である。
ステップS57において、ポータブル型端末8は、フィールド機器1に対してプロセス値要求(図7におけるデータ要求1からデータ要求nまでの要求の1つ)のコマンドを送信する。フィールド機器1の通信受信部がそのコマンドを含んだ通信信号を受信する。
次にステップS58において、フィールド機器1の通信受信部は、プロセス値要求コマンドを含んだ通信信号を復調する。上記のプロセス値要求コマンドを解釈したCPU・50は、算出したプロセス値を出力回路60から出力させる。
次にステップS59において、出力回路60は、CPU・50から渡されたプロセス値データを用いて、通信信号を変調する。
そしてステップS60において、出力回路60は、ポータブル型端末8に対して、ステップS59において変調された通信信号を送信する。つまり、出力回路60は、ポータブル型端末8に対してプロセス値データ(図7におけるデータ返送1からデータ返送nまでのデータの1つ)を送信する。
以上、ステップS57からS60までの一連の処理により、ポータブル型端末8は、フィールド機器1からプロセス値データを取得する。
【0045】
次に、フィールド機器1がデータを出力する際にやりとりされる信号のタイミングについて説明する。
図9および図10は、フィールド機器1の構成要素が送受信する信号のタイミングを示すタイミングチャートである。図9は、フィールド機器1がプロセス値を出力する際の信号のタイミングを示す。また、図10は、フィールド機器1が波形データを出力する際の信号のタイミングを示す。図9および図10において、横方向が時間軸である。また、(a)は外部機器(例えば、ポータブル型端末8等)と出力回路60との間の通信を表す。外部機器と出力回路60との間では、例えば、4-20mA(ミリアンペア)信号ラインを用いた通信が行われる。(b)は、出力回路60とCPU・50との間の通信を表す。(c)は、CPU・50と波形取得メモリ40との間の通信であって、CPU・50側から信号を送信する(Tx)通信を表す。(d)は、CPU・50と波形取得メモリ40との間の通信であって、CPU・50側が信号を受信する(Rx)通信(即ち、波形取得メモリ40側からの送信)を表す。(e)は、CPU・50の内部において出力値を演算する処理を表す。以下、図9および図10のチャートの時系列に沿って説明する。
【0046】
図9において、時刻t1から始まる期間に、CPU・50は、プロセス値を演算する。
また、時刻t2から始まる期間に、外部機器と出力回路60との間で通信が行われ、プロセス値コマンド(図7におけるデータ要求であり、図8におけるプロセス値要求)が外部機器から出力回路60に送られる。前述の通り、出力回路60は通信受信部を備えており、この通信受信部が外部機器からのプロセス値コマンドを受信する。
また、時刻t3から始まる期間に、出力回路60とCPU・50との間で通信が行われ、上記のプロセス値コマンドが出力回路60からCPU・50に渡される。また、CPU・50は、時刻t1から始まる期間に既に算出したプロセス値を、出力回路60に渡す。
また、時刻t4から始まる期間に、出力回路60と外部機器との間で通信が行われ、プロセス値返信(図7におけるデータ返送であり、図8におけるプロセス値データ)が、出力回路60から外部機器に送られる。
以上で、プロセス値を出力する1周期分の処理が終了する。また、この1周期分の処理と同様の処理が、時刻t5以後に引き続き、実行される。即ち、時刻t5から始まる期間には時刻t1から始まる期間と同様の処理が行われる。時刻t6から始まる期間には時刻t2から始まる期間と同様の処理が行われる。時刻t7から始まる期間には時刻t3から始まる期間と同様の処理が行われる。時刻t8から始まる期間には時刻t4から始まる期間と同様の処理が行われる。図9に示すように、この処理の周期はT(時刻t1から始まるプロセス値更新の終了時刻と、時刻t5から始まるプロセス値更新の終了時刻との差)である。Tは、例えば、数百ミリ秒(100ミリ秒以上1秒以下の範囲内)である。例えば、Tの長さを予め設定可能としておいてもよい。
【0047】
図10において、時刻t21から始まる期間に、外部機器と出力回路60との間で通信が行われ、外部機器から出力回路60(通信受信部)に波形要求コマンド(図7における取得波形要求であり、図8における波形要求)が送信される。
また、時刻t22から始まる期間に、出力回路60とCPU・50との間で通信が行われ、出力回路60からCPU・50に波形要求コマンドが送信される。
また、時刻t23から始まる期間に、CPU・50と波形取得メモリ40との間で通信が行われ、CPU・50から波形取得メモリ40に波形要求コマンド(図6における波形取得であり、図8における読み出し要求)が送信される。この波形要求コマンドに応じて、波形取得メモリ40は、記憶されている記憶データを読み出す。
そして、時刻t24から始まる期間に、波形取得メモリ40とCPU・50との間で通信が行われ、波形取得メモリ40からCPU・50に波形データ返信(図6における取得波形データであり、図8における波形データ出力)が送信される。
また、時刻t25から始まる期間に、CPU・50と出力回路60との間で通信が行われ、CPU・50から出力回路60に波形データ返信が送信される。
そして、時刻t26から始まる期間に、出力回路60と外部機器との間で通信が行われ、出力回路60から外部機器に、波形データ返信(図7における取得波形返送であり、図8における波形データ)が送信される。
外部機器による波形データの取得の周期は、例えば、数百ミリ秒あるいは数秒(100ミリ秒以上10秒以下の範囲内)である。例えば、波形データ取得の周期の長さを予め設定可能としておいてもよい。
【0048】
なお、フィールド機器1は、例えば、渦流量計、超音波流量計、コリオリ流量計、電磁流量計、圧力計、差圧計などといった機器であるが、ここに列挙されたものには限定されない。
なお、渦流量計としての実施形態については、第2実施形態以後で説明する。
超音波流量計は、流体内を伝達する超音波の伝搬時間や、流体内を伝搬する超音波の周波数偏移(ドップラー効果)等に基づいて流量を演算する装置である。
コリオリ流量計は、流体に作用するコリオリの力を検知して、流量を演算する装置である。
電磁流量計は、磁界を印加した被測定流体内に発生する起電力を少なくとも1つの電極で検知して、検知した起電力に基づいて流量を演算する装置である。
圧力計は、流体の圧力を測定する装置である。
差圧計は、複数の点における流体の圧力の差に基づいて、流量を演算する装置である。
ここに挙げた各機器の動作原理や実装方法自体は、従来技術によるものであるが、本実施形態をこれら各機器に適用することにより、オシロスコープ等の測定機器を直接接続することなく、各機器の処理過程における信号波形を、人が目で見て確認することができるようになる。
【0049】
以上説明したように、フィールド機器1は、出力値(プロセス値)を得るまでの過程の処理における信号の波形のデータを、外部機器に対して送信することができる。また、外部機器は、その波形データを受信し、波形データに基づいて波形を画面上などに表示することができる。つまり、フィールド機器1と外部機器との間の通信手段を適切に設けることによって、フィールド機器1から離れた場所に存在する外部機器で、フィールド機器内の処理過程の信号波形を確認することができる。また、外部機器として例えば汎用のパーソナルコンピューターやスマートフォンやタブレット端末等を用いることにより、特別な測定器がない場合にも、上記の波形を簡単に観測することができる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。なお、前実施形態において既に説明した事項については以下において説明を省略する場合がある。ここでは、本実施形態に特有の事項を中心に説明する。
図11は、本実施形態による計測システムの概略機能構成を示すブロック図である。図示するように、この計測システムは、フィールド機器2と、ポータブル型端末8と、制御システム9とを含んで構成される。本実施形態におけるフィールド機器2は、渦流量計である。即ち、フィールド機器2は、カルマン渦により発生する交番揚力を検出し、その渦信号を処理することによって、渦信号の周波数と設定されたパラメーターとに基づいて流量を算出し、出力する。このフィールド機器2は、圧電素子11と、チャージアンプ12と、A/D変換器13と、周波数解析部21と、シュミットトリガ回路22と、波形取得メモリ40と、CPU50と、出力回路60とを含んで構成される。ここに図示する各部の機能について、下で説明する。
【0051】
なお、本実施形態によるフィールド機器2は、第1実施形態におけるフィールド機器1の一特殊形態と捉えることもできる。その場合、圧電素子11と、チャージアンプ12と、A/D変換器13とが、第1実施形態のセンサー10に対応する。また、周波数解析部21と、シュミットトリガ回路22とが、第1実施形態の信号処理部20に対応する。なお、本実施形態によるフィールド機器2では、波形取得メモリ40が1種類の波形データのみを取得するため、第1実施形態におけるマルチプレクサ30が設けられていない。
【0052】
圧電素子11は、流体のカルマン渦により発生する交番揚力を検出し、電荷信号として出力する。圧電素子11は、例えば、プラント等の配管内の流体の流れを遮るように配置された渦棒の後方(下流側)に設置され、または渦棒に内蔵される。
チャージアンプ12は、圧電素子11が出力した電荷信号を電圧信号に変換する。
A/D(analog-to-digital)変換器13は、チャージアンプから出力された電圧信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。
つまり、流体の渦波形を検知するための圧電素子11と、圧電素子11からの出力を電圧信号に変換するチャージアンプ12と、チャージアンプ12から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器13とは、第1実施形態におけるセンサー10に対応するものとして機能する。
【0053】
周波数解析部21は、A/D変換器13が出力したデジタル信号を基に周波数解析を行い、渦信号を抽出する。周波数解析部21によって抽出される渦信号は、正弦波に近い信号である。周波数解析部21は、抽出された渦信号を出力する。渦信号は、渦波形を表す信号である。
シュミットトリガ回路22は、周波数解析部21から出力される渦信号をパルス化し、パルス信号を出力する。このパルス信号の周波数は、上記の渦信号の周波数に対応している。つまり、このパルス信号の周波数は、元の圧電素子11で検出されたカルマン渦の周波数に対応している。シュミットトリガ回路22が出力するパルス信号は、CPU・50に渡される。
あるいは、シュミットトリガ回路22とCPU・50との間にカウント回路を設け、このカウント回路がカウントしたパルス数の信号を、CPU・50に渡すようにしてもよい。
つまり、周波数解析部21とシュミットトリガ回路22とは、センサーから出力される渦波形の信号に基づき渦波形の周期に対応する周期を有するパルス信号を得て出力するものである。即ち、周波数解析部21とシュミットトリガ回路22は、第1実施形態における信号処理部20に対応するものとして機能する。
【0054】
CPU・50は、シュミットトリガ回路22から出力されるパルス信号を取り込む。あるいは、上記のカウント回路が設けられている場合には、そのカウント回路から出力されるパルス数の信号を取り込む。そして、CPU・50は、所帯時間内に入力されるパルスの数に基づいて、周波数演算、流量演算、補正演算等を行い、流量を示す流量信号を出力する。カルマン渦に対応するパルス信号に基づいて流量を算出する過程自体としては、従来技術を用いることができる。CPU・50は、この流量信号を、例えばパルス信号として出力回路60に渡す。
出力回路60は、CPU・50から渡される流量信号を所定の形態に変換し、出力する。出力信号は、流量信号を、例えば、4-20mAアナログ計装信号やデジタル計装信号などとして出力する。
本実施形態におけるCPU・50が算出する流量の値が、第1実施形態におけるプロセス値の一種である。
【0055】
波形取得メモリ40は、上記の周波数解析部21からシュミットトリガ回路22に渡される渦信号(信号処理部20の処理過程の信号)を渦波形データとして取り込む。波形取得メモリ40は、取得した波形データを、逐次保存していく。また、波形取得メモリ40は、CPU・50からの波形取得の要求に応じて、蓄積した波形データをCPU・50に渡す。
CPU・50は、例えば上位機器からの要求に基づいて、波形取得メモリ40から波形データを読み出す。そして、CPU・50は、読み出した波形データを出力回路60に渡す。
出力回路60は、CPU・50から渡された波形データを、所定の形態に変換し出力する。
【0056】
なお、フィールド機器2と、ポータブル型端末8あるいは制御システム9との接続に関しては、有線工業規格の通信による接続に限らず、機器固有の出力口を設けて機器固有の通信規格を用いるようにしてもよい。
【0057】
以上説明したように、フィールド機器2が備えるCPU・50は、流量値(プロセス値)のデータと波形データとを、出力回路60を経由して外部に出力する。これら流量値のデータと波形データとは、例えば、ポータブル型端末8や制御システム9等に送られる。
ポータブル型端末8あるいは制御システム9側では、搭載されたプログラムを実行させることにより、フィールド機器2から受信した波形データに基づく波形(渦波形)を描き、その画面に表示することができる。
【0058】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。なお、前実施形態までにおいて既に説明した事項については以下において説明を省略する場合がある。ここでは、本実施形態に特有の事項を中心に説明する。
図12は、本実施形態による計測システムの概略機能構成を示すブロック図である。図示するように、この計測システムは、フィールド機器3と、ポータブル型端末8と、制御システム9とを含んで構成される。本実施形態におけるフィールド機器3もまた、第2実施形態と同様に渦流量計である。このフィールド機器3は、圧電素子11と、チャージアンプ12と、A/D変換器13と、周波数解析部21と、シュミットトリガ回路22と、マルチプレクサ(MUX)30と、波形取得メモリ40と、CPU50と、出力回路60とを含んで構成される。
【0059】
本実施形態によるフィールド機器3の特徴の一つは、波形取得メモリ40の前段にマルチプレクサ30を備えることである。これにより、フィールド機器内の特定の箇所の信号だけではなく、様々な箇所の信号の波形を取得できる。
マルチプレクサ30は、フィールド機器3内の信号処理過程の複数の段階における信号を入力とし、それらの信号を多重化して波形取得メモリ40に供給する。また、それら複数の段階における信号を適宜選択することもできる。マルチプレクサ30は、CPU・50から「信号選択」の信号を受け取り、この信号選択に基づいて、出力する信号を選択する。この場合、マルチプレクサ30は、選択された信号のみを波形取得メモリ40に供給する。なお、図12に示す構成例では、マルチプレクサ30に入力される信号は、A/D変換器13からの出力信号と、周波数解析部21における処理過程の信号と、周波数解析部21からシュミットトリガ回路22に出力される信号の3種類である。
CPU・50は、マルチプレクサ30に適宜、「信号選択」の信号を供給する。
【0060】
また、本実施形態の他の特徴は、波形取得メモリ40に、CPU・50からの制御信号が入力される点である。具体的には、波形取得メモリ40は、CPU・50から「取込み周期設定」の信号を受け取ることにより、波形を取り込む周期を設定する。つまり、CPU・50側から、波形取得の周期を任意に設定することができる。また、波形取得メモリ40は、CPU・50から、波形の取込みの開始/停止を制御する信号を受け取る。波形取得メモリ40は、波形の取込みの開始/停止の信号に基づいて、波形の取込みを開始したり停止したりする。
これにより、例えば外部機器からの制御により、波形データが必要なときのみ波形の取得/転送を行うことができるようになり、出力回路60から出力される情報の量をコントロールしたり、フィールド機器3が消費する電力を抑制したりすることが可能となる。
あるいは、例えば、CPU・50が行う判定処理に基づいて異常が検知されたときだけ波形を取得するように、CPU・50の自律的制御に基づいた波形読込みの開始または停止を行うことが可能となる。
また、CPU・50の制御によって、波形メモリ取得部40に、波形データを常時取得させるようにしてもよい。そして、CPU・50は、波形メモリ取得部40から任意のタイミングで波形データを取得するようにしてもよい。
【0061】
また、本実施形態の波形取得メモリ40は、シュミットトリガ回路22から出力されたパルス信号の波形を取得し、保存する。これにより、渦信号等の波形に同期させる形でパルス信号を出力することができるようになる。これにより、外部機器は、渦信号等の各種波形と、シュミットトリガ回路22から出力されるパルス信号とを、例えば画面上で重ねて表示することができるようになり、より一層、フィールド機器3の解析を行いやすくなる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態では、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態によるフィールド機器3(流量計)は、複数の信号を多重化して、各信号の波形データを取得し、出力できる。また、フィールド機器3(流量計)は、複数の信号のうち必要な信号の波形データのみを選択し、出力できる。
また、フィールド機器3によれば、外部からの制御により、あるいはCPU・50の自律的制御により、波形取得を開始したり停止したりすることもできる。
【0063】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。なお、前実施形態までにおいて既に説明した事項については以下において説明を省略する場合がある。ここでは、本実施形態に特有の事項を中心に説明する。
図13は、本実施形態による計測システムの概略機能構成を示すブロック図である。図示するように、この計測システムは、フィールド機器4と、ポータブル型端末8と、制御システム9とを含んで構成される。本実施形態におけるフィールド機器4もまた、第2実施形態等と同様に渦流量計である。このフィールド機器4は、圧電素子11と、チャージアンプ12と、A/D変換器13と、周波数解析部21と、シュミットトリガ回路22と、マルチプレクサ(MUX)30と、波形取得メモリ40と、CPU50と、無線出力回路61(出力部)とを含んで構成される。
【0064】
本実施形態によるフィールド機器4の特徴は、第3実施形態における出力回路60に代えて、無線出力回路61を備える点である。
無線出力回路61は、ポータブル型端末8や制御システム9との間で、無線信号を用いて、双方向の通信を行う。具体的には、無線出力回路61は、Wi-Fi、Bluetooth(ブルートゥース,登録商標)、IrDA(Infrared Data Association)、ISA100、WirelessHART、ZigBeeなどといった無線通信技術の既存の規格を用いて、ポータブル型端末8や制御システム9との間でデータの送受信を行う。なお、無線出力回路61が外部機器との間で行う通信に関して、上位層(物理層よりも上位の層)における手順は、第2実施形態等における出力回路60が実行する手順と同様のものである。
つまり、出力部は、有線通信だけでなく、無線通信によっても、波形データを外部機器に対して送信する。
【0065】
フィールド機器4の、無線出力回路61以外の各部の機能および処理手順は、第3実施形態において対応する各部の機能および処理手順と同様である。
【0066】
本実施形態では、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態によるフィールド機器4(流量計)は、無線出力回路61を備えることにより、波形データを無線信号で外部機器に送信することができる。つまり、外部機器をフィールド機器4から離れた位置に置いた場合にも、両装置間の通信線等を這わせる必要がない。
【0067】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明する。なお、前実施形態までにおいて既に説明した事項については以下において説明を省略する場合がある。ここでは、本実施形態に特有の事項を中心に説明する。
図14は、本実施形態による計測システムの概略機能構成を示すブロック図である。図示するように、この計測システムは、フィールド機器5と、ポータブル型端末8と、制御システム9とを含んで構成される。本実施形態におけるフィールド機器4もまた、第2実施形態等と同様に渦流量計である。このフィールド機器5は、圧電素子11と、チャージアンプ12と、A/D変換器13と、周波数解析部21と、シュミットトリガ回路22と、マルチプレクサ(MUX)30と、波形取得メモリ40と、CPU50と、出力回路60と、機器固有の通信ポート62(出力部)と、取り出し可能な外部メモリ63(出力部)と、を含んで構成される。
【0068】
本実施形態によるフィールド機器5の特徴は、第3実施形態における出力回路60に加えて、機器固有の通信ポート62および取り出し可能な外部メモリ63を備える点である。機器固有の通信ポート62や取り出し可能な外部メモリ63は、出力回路60と同等の機能を有する。あるいは、機器固有の通信ポート62や取り出し可能な外部メモリ63が、外部からコマンド等を受信することなく、データを一方向に出力するためだけの機能を有するものであってもよい。
機器固有の通信ポート62は、当該フィールド機器5に固有のインターフェース仕様に基づく通信ポートである。機器固有の通信ポート62を用いることにより、フィールド機器5に固有の方式で外部機器と通信することが可能となる。フィールド機器5は、機器固有の通信ポート62を介して、外部機器との間で、コマンドやデータ(出力値データや波形データ等)を通信することができる。
取り出し可能な外部メモリ63は、可搬型記録媒体とその読み書き用の装置(または回路)とで構成される。取り出し可能な外部メモリ63として、例えば、SDメモリカード(SDは「secure digital」の略)や、USBメモリ(USBは、「Universal Serial Bus」の略)や、コンパクトフラッシュカード(「コンパクトフラッシュ」は登録商標)や、光学ディスクなどといった記録媒体を利用できる。CPU・50からは、所定のインターフェースを介して、これらの記録媒体にデータを書き込むことができる。取り出し可能な外部メモリ63を用いることにより、フィールド機器5と外部機器との間の通信接続が困難な状況においても、取り出し可能な外部メモリ63にデータ(波形データやプロセス値データ(算出された流量データ))を書き込んでいくことができる。そして、取り出し可能な外部メモリ63をフィールド機器5から取り出すことにより、他の機器(例えば、汎用のパーソナルコンピューター等)が、書き込まれているデータを読み出して利用できる。
つまり、出力部は、取り出し可能な(可搬型の)記録媒体に前記波形データを書き込む。
【0069】
本実施形態では、第3実施形態等と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態によるフィールド機器5(流量計)は、機器固有の通信ポートから波形データを出力することができる。また、本実施形態によるフィールド機器5(流量計)は、取り出し可能な外部メモリに波形データを書き込むことができる。これにより、有線あるいは無線での通信が困難な設置場所等においても、外部機器が波形データを取得し、波形を表示させることが可能となる。
【0070】
[変形例]
以上、複数の実施形態を説明したが、次のような変形例として実施してもよい。
例えば、出力回路60や無線出力回路61や機器固有の通信ポート62からデータ(波形データ等)を出力する場合、あるいは取り出し可能な外部メモリ63にデータを書き込む場合、誤り検出や誤り訂正のための符号化を行ってもよい。具体的には、例えば、チェックサムを付けたり、巡回冗長検査符号(CRC)を付けたりする。これにより、データを利用する外部機器の側では、データの正確性を確認することができる。
また、波形取得メモリ40がアナログ波形を取得して、その波形データを記憶するようにしてもよい。この場合、波形取得メモリ40は、入力されるアナログ信号の標本値をデジタルデータ化するA/D変換器を内部に備える。
また、上で説明した複数の実施形態および複数の変形例を、組み合わせ可能な場合には組み合わせて実施してもよい。一例として、第2実施形態のフィールド機器(マルチプレクサ30を持たない)における出力回路60に代えて、第4実施形態の無線出力回路61を設けてもよい。他の組み合わせに関しても同様である。
【0071】
なお、上述した実施形態におけるフィールド機器やポータブル型端末や制御システム等の機器の機能(またはその一部)をコンピューターとプログラムで実現するようにしても良い。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピューター読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピューターシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、DVD-ROM、USBメモリ等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバーやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。また、上記プログラムは、いわゆるファームウェアであても良い。
【0072】
以上、この発明の実施形態およびその変形例について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、例えば、計測用あるいは制御用の機器等に利用することができる。ただし、本発明の用途はこれらには限定されない。
【符号の説明】
【0074】
1…フィールド機器、2,3,4,5…フィールド機器(渦流量計)、8…ポータブル型端末、9…制御システム、10…センサー、11…圧電素子、12…チャージアンプ、13…A/D変換器、20…信号処理部、21…周波数解析部、22…シュミットトリガ回路、30…マルチプレクサ(MUX)、40…波形取得メモリ(波形取得部)、50…CPU(演算処理部)、60…出力回路(出力部)、61…無線出力回路(出力部)、62…機器固有の通信ポート(出力部)、63…取り出し可能な外部メモリ(出力部)、81…制御装置、82…演算装置、83…電源装置、84…マンマシンインターフェース部、85…機器接続インターフェース部、86…表示器、100…LAN、101…機器管理システム
図1
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図14