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特許7187769眼科装置、および眼科装置制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】眼科装置、および眼科装置制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
A61B3/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017189226
(22)【出願日】2017-09-28
(65)【公開番号】P2019063043
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】有川 徹
【審査官】佐藤 秀樹
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/12
3/13-3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼を検査する眼科装置であって、
前記被検眼を検査するための検眼手段と、
前記被検眼に対して前記検眼手段を3次元的に相対移動させる駆動手段と、
左右の被検眼のうち少なくとも一方を含む顔画像を撮影する顔撮影手段と、
前記被検眼の前眼部画像を撮影する前眼撮影手段と、
前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記前眼撮影手段によるアライメント可能領域を前記顔撮影手段と前記被検眼とを結ぶ直線上に移動させた後、前記顔画像に基づいて算出した前記被検眼と前記顔撮影手段との3次元的相対方向に前記検眼手段を移動させている間に、前記前眼撮影手段によって撮影された前記前眼部画像から前記被検眼の瞳孔を検出し、前記瞳孔の中心が前記前眼撮影手段の光軸と重なるように前記駆動手段を制御することによって、前記被検眼のXY座標を算出し、前記3次元的相対方向と、前記XY座標と、に基づいて、前記被検眼のZ座標を算出し、前記Z座標に基づいて前記検眼手段をZ方向に移動させることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記被検眼の角膜にアライメント指標を投影する指標投影手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記Z座標に基づいて前記検眼手段をZ方向に移動させるとともに、前記前眼部画像に対する前記アライメント指標の検出処理を並行して行い、前記検出処理によって検出された前記アライメント指標の位置に基づいて前記被検眼に対する前記検眼手段のアライメントを行うことを特徴とする請求項1の眼科装置。
【請求項3】
被検眼を検査する眼科装置おいて実行される眼科装置制御プログラムであって、前記眼科装置のプロセッサによって実行されることで、
左右の被検眼のうち少なくとも一方を含む顔画像を顔撮影手段によって撮影する顔撮影ステップと、
前記被検眼の前眼部画像を前眼撮影手段によって撮影する前眼撮影ステップと、
前記被検眼に対して検眼手段を3次元的に相対移動させる駆動手段を制御し、前記前眼撮影手段によるアライメント可能領域を前記顔撮影手段と前記被検眼とを結ぶ直線上に移動させた後、前記顔画像に基づいて算出した前記被検眼と前記顔撮影手段との3次元的相対方向に前記検眼手段を移動させている間に、前記前眼撮影手段によって撮影された前記前眼部画像から前記被検眼の瞳孔を検出し、前記瞳孔の中心が前記前眼撮影手段の光軸と重なるように前記駆動手段を制御することによって、前記被検眼のXY座標を算出し、前記3次元的相対方向と、前記XY座標と、に基づいて、前記被検眼のZ座標を算出する算出ステップと、
前記駆動手段を制御し、前記Z座標に基づいて前記検眼手段をZ方向に移動させる制御ステップと、
を前記眼科装置に実行させること特徴とする眼科装置制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼を検査するための眼科装置、および眼科装置制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の眼科装置としては、例えば、眼屈折力測定装置、角膜曲率測定装置、眼圧測定装置、眼底カメラ、OCT、SLO等が知られている。これらの眼科装置では、例えば、ジョイスティック等の操作による手動アライメントと、前眼部画像の輝点検出による自動アライメントなどによって、被検眼に対して検眼部を所定の位置にアライメントすることが一般的である(特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2では、被検者の顔を撮影した画像に基づいて被検眼に対する検眼部の位置合わせを行う装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-066760
【文献】特開平10-216089
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の装置において、例えば、前眼部画像の輝点が検出できなかった場合などに、Z方向のアライメントに時間がかかる可能性があった。
【0006】
本開示は、従来の問題点に鑑み、Z方向のアライメントをスムーズに行える眼科装置、及び眼科装置制御プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0008】
(1) 被検眼を検査する眼科装置であって、前記被検眼を検査するための検眼手段と、前記被検眼に対して前記検眼手段を3次元的に相対移動させる駆動手段と、左右の被検眼のうち少なくとも一方を含む顔画像を撮影する顔撮影手段と、前記被検眼の前眼部画像を撮影する前眼撮影手段と、前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記前眼撮影手段によるアライメント可能領域を前記顔撮影手段と前記被検眼とを結ぶ直線上に移動させた後、前記顔画像に基づいて算出した前記被検眼と前記顔撮影手段との3次元的相対方向に前記検眼手段を移動させている間に、前記前眼撮影手段によって撮影された前記前眼部画像から前記被検眼の瞳孔を検出し、前記瞳孔の中心が前記前眼撮影手段の光軸と重なるように前記駆動手段を制御することによって、前記被検眼のXY座標を算出し、前記3次元的相対方向と、前記XY座標と、に基づいて、前記被検眼のZ座標を算出し、前記Z座標に基づいて前記検眼手段をZ方向に移動させることを特徴とする。
(2) 被検眼を検査する眼科装置おいて実行される眼科装置制御プログラムであって、前記眼科装置のプロセッサによって実行されることで、左右の被検眼のうち少なくとも一方を含む顔画像を顔撮影手段によって撮影する顔撮影ステップと、前記被検眼の前眼部画像を前眼撮影手段によって撮影する前眼撮影ステップと、前記被検眼に対して検眼手段を3次元的に相対移動させる駆動手段を制御し、前記前眼撮影手段によるアライメント可能領域を前記顔撮影手段と前記被検眼とを結ぶ直線上に移動させた後、前記顔画像に基づいて算出した前記被検眼と前記顔撮影手段との3次元的相対方向に前記検眼手段を移動させている間に、前記前眼撮影手段によって撮影された前記前眼部画像から前記被検眼の瞳孔を検出し、前記瞳孔の中心が前記前眼撮影手段の光軸と重なるように前記駆動手段を制御することによって、前記被検眼のXY座標を算出し、前記3次元的相対方向と、前記XY座標と、に基づいて、前記被検眼のZ座標を算出する算出ステップと、前記駆動手段を制御し、前記Z座標に基づいて前記検眼手段をZ方向に移動させる制御ステップと、を前記眼科装置に実行させること特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施例の外観を示す概略図である。
図2】本実施例の制御系を示すブロック図である。
図3】本実施例の光学系を示す概略図である。
図4】本実施例の制御動作を示すフローチャートである。
図5】本実施例の撮影部と被検眼の位置関係を説明するための図である。
図6】検眼部の移動方法について説明するための図である。
図7】検眼部の移動方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
本実施形態を図面に基づいて簡単に説明する。本実施形態の眼科装置(例えば、眼科装置1)は、例えば、被検眼を検査する。例えば、眼科装置は、被検眼の眼屈折力、角膜曲率、眼圧等を測定してもよいし、被検眼の前眼部、眼底等の画像を撮影してもよい。眼科装置は、例えば、検眼部(例えば、検眼部2)と、駆動部(例えば、駆動部4)と、顔撮影部(例えば、顔撮影部90)と、前眼撮影部(例えば、前眼撮影光学系60)と、制御部(例えば、制御部70)等を備える。検眼部は、例えば、被検眼を検査する。検眼部は、例えば、眼屈折力測定光学系、角膜曲率測定光学系、眼圧測定光学系、眼底撮影光学系、断層像撮影光学系など、種々の検査光学系の少なくとも一つを備えてもよい。駆動部は、被検眼に対して検眼部を3次元的に相対移動させる。顔撮影部は、例えば、左右の被検眼のうち少なくとも一方を含む顔の画像を撮影する。前眼撮影部は、例えば、被検眼の前眼部の画像を撮影する。
【0011】
制御部は、駆動部の駆動を制御する。制御部は、例えば、顔画像に基づいて被検眼と顔撮影部との3次元的相対方向を算出する。また、制御部は、前眼部画像に基づいて被検眼のXY座標を算出する。そして、制御部は、被検眼と顔撮影部との3次元的相対方向と、被検眼のXY座標に基づいて、被検眼のZ座標を算出する。制御部は、算出した被検眼のZ座標に基づいて検眼部をZ方向に移動させる。これによって、本実施形態の眼科装置は、前眼部画像によってXY方向のアライメント量だけが検出できる場合であっても、被検眼に対する検眼部のZアライメントを効率的に行える。
【0012】
なお、制御部は、顔画像に基づいて算出した被検眼と顔撮影部との3次元的相対方向に検眼部を移動させている間に、前眼撮影部によって前眼部画像を撮影してもよい。また、このとき撮影された前眼部画像に基づいて、被検眼のXY座標を取得してもよい。
【0013】
なお、XY方向のアライメント量だけが検出できる場合とは、例えば、前眼部画像からアライメント輝点は検出できないが、瞳孔が検出できる場合などである。この場合、制御部は、前眼部画像から瞳孔を検出することによって、被検眼のXY座標を算出してもよい。
【0014】
なお、眼科装置は、指標投影部(例えば、指標投影光学系50)をさらに備えてもよい。指標投影部は、例えば、被検眼の角膜にアライメント指標(輝点)を投影する。この場合、制御部は、算出した被検眼のZ座標に基づいて検眼部をZ方向に移動させるとともに、前眼部画像に対するアライメント指標の検出処理を並行して行ってもよい。そして、制御部は、検出処理によって検出されたアライメント指標の位置に基づいて被検眼に対する検眼部の最終的なアライメントを行ってもよい。これによって、例えば、制御部は、算出したZ座標にずれがある場合であっても、アライメント指標を検出することによってより正確な被検眼のZ座標を求めることができる。なお、算出したZ座標にずれがある場合とは、例えば、顔撮影部によって顔画像を撮影した時点と、前眼部画像を撮影した時点で、被検眼が動いた場合などである。
【0015】
なお、制御部は、記憶部(例えば、記憶部74)に記憶された眼科装置制御プログラムを実行してもよい。眼科装置プログラムは、例えば、顔撮影ステップと、前眼撮影ステップと、算出ステップと、制御ステップとを含む。顔撮影ステップは、例えば、左右の被検眼のうち少なくとも一方を含む顔画像を撮影するステップである。前眼撮影ステップは、例えば、被検眼の前眼部画像を撮影するステップである。算出ステップは、例えば、顔画像に基づいて算出した被検眼と顔撮影部との3次元的相対方向と、前眼部画像に基づいて算出した被検眼のXY座標と、に基づいて、被検眼のZ座標を算出するステップである。被検眼に対して検眼部を3次元的に相対移動させる駆動部を制御し、Z座標に基づいて検眼部をZ方向に移動させるステップである。
【0016】
<実施例>
本開示に係る眼科装置を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、眼科装置として眼屈折力測定装置を例に説明するが、角膜曲率測定装置、角膜形状測定装置、眼圧測定装置、眼軸長測定装置、眼底カメラ、OCT(optical coherence tomography)、SLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)等の他の眼科装置にも適用可能である。
【0017】
本実施例の眼科装置は、例えば、被検眼を検査する。例えば、本実施例の眼科装置は、片眼毎に検査を行ってもよいし、両眼同時に(両眼視で)検査を行う装置であってもよい。
【0018】
<外観>
図1に基づいて、眼科装置の外観を説明する。図1に示すように、本実施例の眼科装置1は、検眼部2と、顔撮影部90と、駆動部4と、を主に備える。検眼部2は、被検眼を検査する。検眼部2は、例えば、被検眼の眼屈折力、角膜曲率、眼圧等を測定する光学系を備えてもよい。また、検眼部2は、被検眼の前眼部、眼底等を撮影するための光学系等を備えてもよい。本実施例では、屈折力を測定する検眼部2を例に説明する。顔撮影部90は、例えば、被検眼の顔を撮影する。顔撮影部90は、例えば、左右の被検眼のうち少なくとも一方を含む顔を撮影する。駆動部4は、例えば、検眼部2および顔撮影部90を基台5に対して上下左右前後方向(3次元方向)に移動させる。
【0019】
さらに、本実施例の眼科装置1は、例えば、筐体6、表示部7、操作部8、顔支持部9等を備えてもよい。例えば、筐体6は、検眼部2、顔撮影部90、駆動部4等を収納する。表示部7は、例えば、被検眼の観察画像および測定結果等を表示させる。表示部7は、例えば、装置1と一体的に設けられてもよいし、装置とは別に設けられてもよい。眼科装置1は、操作部8を備えてもよい。操作部8は、装置1の各種設定、測定開始時の操作に用いられる。操作部8には、検者による各種操作指示が入力される。例えば、操作部8は、タッチパネル、ジョイスティック、マウス、キーボード、トラックボール、ボタン等の各種ヒューマンインターフェイスであってもよい。顔支持部9は、例えば、額当て10と顎台11を備えてもよい。顎台11は、顎台駆動部12の駆動によって上下方向に移動されてもよい。
【0020】
<制御系>
図2に示すように、本装置1は制御部70を備える。制御部70は、本装置1の各種制御を司る。制御部70は、例えば、一般的なCPU(Central Processing Unit)71、ROM72、RAM73等を備える。例えば、ROM72には、眼科装置を制御するための眼科装置制御プログラム、初期値等が記憶されている。例えば、RAMは、各種情報を一時的に記憶する。制御部70は、検眼部2、顔撮影部90、駆動部4、表示部7、操作部8、顎台駆動部12、記憶部(例えば、不揮発性メモリ)74等と接続されている。記憶部74は、例えば、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、着脱可能なUSBフラッシュメモリ等を記憶部74として使用することができる。
【0021】
<検眼部>
検眼部2は、被検眼の測定,検査,撮影などを行う。検眼部2は、例えば、被検眼の屈折力を測定する測定光学系を備えてもよい。例えば、図3に示すように、検眼部2は、測定光学系20と、固視標呈示光学系40と、指標投影光学系50と、前眼撮影光学系60と、を備えてもよい。
【0022】
測定光学系20は、投影光学系(投光光学系)20aと、受光光学系20bと、を有してもよい。投影光学系20aは、被検眼の瞳孔を介して眼底Efに光束を投影する。また、受光光学系20bは、瞳孔周辺部を介して眼底Efからの反射光束(眼底反射光)をリング状に取り出し、主に屈折力の測定に用いるリング状の眼底反射像を撮像してもよい。
【0023】
例えば、投影光学系20aは、測定光源21と、リレーレンズ22と、ホールミラー23と、対物レンズ24と、を光軸L1上に有している。光源21は、リレーレンズ22から対物レンズ24、および、瞳孔中心部を介して眼底Efにスポット状の光源像を投影する。光源21は、移動機構33によって光軸L1方向に移動される。ホールミラー23には、リレーレンズ22を介した光源21からの光束を通過させる開口が設けられている。ホールミラー23は、被検眼の瞳孔と光学的に共役な位置に配置されている。
【0024】
例えば、受光光学系20bは、ホールミラー23と、対物レンズ24と、を投影光学系20aと共用する。また、受光光学系20bは、リレーレンズ26と、全反射ミラー27と、を有している。更に、受光光学系20bは、受光絞り28と、コリメータレンズ29と、リングレンズ30と、撮像素子32と、をホールミラー23の反射方向の光軸L2上に有している。撮像素子32には、エリアCCD等の二次元受光素子を用いることができる。受光絞り28、コリメータレンズ29、リングレンズ30、及び撮像素子32は、移動機構33によって、投影光学系20aの測定光源21と一体的に光軸L2方向に移動される。移動機構33によって光源21が眼底Efと光学的に共役な位置に配置される場合、受光絞り28及び撮像素子32も、眼底Efと光学的に共役な位置に配置される。
【0025】
リングレンズ30は、対物レンズ24からコリメータレンズ29を介して導かれる眼底反射光を、リング状に整形するための光学素子である。リングレンズ30は、リング状のレンズ部と、遮光部と、を有している。また、受光絞り28及び撮像素子32が、眼底Efと光学的に共役な位置に配置される場合、リングレンズ30は、被検眼の瞳孔と光学的に共役な位置に配置される。撮像素子32では、リングレンズ30を介したリング状の眼底反射光(以下、リング像という)が受光される。撮像素子32は、受光したリング像の画像情報を、制御部70に出力する。その結果、制御部70では、表示部7でのリング像の表示、およびリング像に基づく屈折力の算出等が行われる。
【0026】
また、図3に示すように、本実施例では、対物レンズ24と被検眼との間に、ダイクロイックミラー39が配置されている。ダイクロイックミラー39は、光源21から出射された光、および、光源21からの光に応じた眼底反射光を透過する。また、ダイクロイックミラー39は、後述の固視標呈示光学系40からの光束を被検眼に導く。更に、ダイクロイックミラー39は、後述の指標投影光学系50からの光の前眼部反射光を反射して、その前眼部反射光を前眼撮影光学系60に導く。
【0027】
図3に示すように、被検眼の前方には、指標投影光学系50が配置されてもよい。指標投影光学系50は、主に、被検眼に対する光学系の位置合わせ(アライメント)に用いられる指標を前眼部に投影する。ここで、指標投影光学系50は、眼Eの前眼部を照明する前眼部照明としても用いられてもよい。
【0028】
指標投影光学系50は、被検眼にアライメント指標を投影する。例えば、指標投影光学系50は、第1指標投影光学系51と、第2指標投影光学系52と、を備えてもよい。第1指標投影光学系51は、被検者眼Eの角膜に拡散光を投影し、有限遠の指標を投影する。第1指標投影光学系51は、本実施例の眼科装置1では、被検眼Eの前眼部を照明する前眼部照明としても用いられる。第2指標投影光学系52は、被検眼の角膜に平行光を投影し、無限遠の指標を投影する。制御部70は、前眼部画像第1指標光学系51と第2指標投影光学系によって被検眼に投影された輝点の位置を検出することによって、被検眼の位置情報を取得する。
【0029】
視標呈示光学系40は、被検眼を固視させるための視標呈示光学系であってもよい。視標呈示光学系40は、例えば、光源41、固視標42を少なくとも備える。図3では、光源41、固視標42、リレーレンズ43は、反射ミラー46の反射方向の光軸L4上に設けられている。固視標42は、他覚屈折力測定時に被検眼を固視させるために使用される。例えば、光源41によって固視標42が照明されることによって、被検眼に呈示される。
【0030】
光源41及び固視標42は、駆動機構48によって光軸L4の方向に一体的に移動される。光源41及び固視標42の移動によって、固視標の呈示位置(呈示距離)を変更してもよい。これによって、被検眼に雲霧をかけて屈折力測定を行うことができる。
【0031】
前眼撮影光学系60は、被検眼の前眼部画像を撮像するために設けられてもよい。例えば、前眼撮影光学系60は、撮像レンズ61と、撮像素子62とを少なくとも備える。図3では、撮像レンズ61と、撮像素子62が、ハーフミラー63の反射方向の光軸L3上に設けられている。撮像素子62は、被検眼の前眼部と光学的に共役な位置に配置される。撮像素子62は、指標投影光学系51によって照明される前眼部を撮像する。撮像素子62からの出力は、制御部70に入力される。その結果、撮像素子62によって撮像される被検眼の前眼部画像P1が、表示部7に表示される(図2参照)。また、撮像素子62では、指標投影光学系50によって被検眼の角膜に形成されるアライメント指標(本実施例では、有限遠指標および無限遠指標)が撮像される。その結果、制御部70は、撮像素子62の撮像結果に基づいてアライメント指標を検出できる。また、制御部70は、アライメント状態の適否を、アライメント指標が検出される位置に基づいて判定できる。例えば、制御部70は、有限遠指標と無限遠指標との位置関係に基づいて、作動距離を検出してもよい。なお、前眼撮影光学系60の光軸L3は、ハーフミラー63およびダイクロイックミラー39によって測定光軸L1と同軸とされる。
【0032】
<顔撮影部>
顔撮影部90は、例えば、左右の被検眼のうち少なくとも一方を含む顔を撮影するための光学系を備えてもよい。例えば、図3に示すように、本実施例の顔撮影部90は、例えば、撮像素子91と、撮像レンズ92を主に備える。
【0033】
顔撮影部90は、例えば、検眼部2が初期位置にある場合に被検眼の両眼を撮影できる位置に設けられる。本実施例において、検眼部2の初期位置は、右眼を検査し易いように検眼部2の検査光軸に対して右側にずれた位置に設定される。したがって、顔撮影部90は、検眼部2が右側にずれた初期位置にある状態で、被検眼の両眼を撮影できる位置に設けられる。例えば、顔撮影部90は、検眼部2が初期位置にある状態で機械中心に配置される。初期位置は、例えば、瞳孔間距離の半分、つまり片眼瞳孔間距離に基づいて設定される場合、顔撮影部90は、装置本体の機械中心に対して片眼瞳孔間距離だけ左右にずれた位置に配置されてもよい。なお、片眼瞳孔間距離の平均値はおよそ32mmである。
【0034】
また、顔撮影部90は、種々の装置の光学系に配慮して配置されてもよい。装置によっては、中央の検眼窓2aの左右に光源・レンズ・受光素子等の光学素子が設けられる場合がある。また、検眼窓の上下において光学素子が設けられる場合がある。また、眼圧測定用の空気噴出ノズルが設けられる場合がある。これらの場合を考慮して顔撮影部90は、検眼窓の上下方向と左右方向を避け、斜め方向に取り付けてもよい。本実施例では、斜め左に取り付けられる。このように、顔撮影部90の配置を種々の装置の光学系に配慮してもよい。もちろん、機種によっては検眼窓2aの回りのどの方向に取り付けてもよい。
【0035】
本実施例の顔撮影部90は、駆動部4によって検眼部2とともに移動される。もちろん、顔撮影部90は、例えば、基台5に対して固定され、移動しない構成でもよい。
【0036】
<顔照明光学系>
顔照明光学系80は、被検眼の顔を照明する。顔照明光学系80は、被検者の両眼を含む被検者の顔を照明するために設けられてもよい。顔照明光学系80は、例えば、照明光源81を備える。照明光源81は、赤外光を発する。なお、顔照明光学系80は、顔撮影部90の光軸の周辺を均一に被検眼の顔を照明できるとよい。本実施例では、検眼窓の左右の位置に照明光源81が設けられている。なお、顔照明光学系80は、顔撮影部90を基準として対称的な位置に設けられてもよい。例えば、顔撮影部90を中心として左右対称な位置に設けられてもよいし、上下対称な位置に設けられてもよい。なお、顔照明光学系80は、アライメント用の指標光源よりも指向性の低い光源が用いられる。
【0037】
<制御方法>
以下、本装置1の制御動作について説明する。本装置1は、例えば、被検眼を検査するために、検眼部2と被検眼との位置合わせ(アライメント)を自動で行う。本実施例の眼科装置1は、例えば、前眼撮影光学系60の輝点検出と顔撮影部90での眼検出を並行して行う。制御部70は、前眼部画像P1(図2参照)から輝点(アライメント指標)Tを検出した場合、輝点の位置からXYZ方向のアライメント位置を求めることができる。顔画像P2から被検眼が検出できた場合は、顔画像P2における被検眼の座標と顔撮影部90の情報(例えば、位置情報、カメラパラメータなど)から実質空間の顔撮影部90から見た被検眼の方向が分かる。本実施例ではこの2種類を利用する。前眼撮影光学系60で輝点Tが検出できるまでは顔画像P2で求めた被検眼の方向に基づいて検眼部2を移動させる。制御部70は、例えば、前眼撮影光学系60で輝点が検出できた後は、輝点Tに基づいてアライメントし、アライメントが完了すると測定を開始する。図3のフローチャートに基づいて、制御の流れを説明する。なお、被検者の顔は顔支持部9によって支持されているとする。
【0038】
(ステップS1:顔撮影)
制御部70は、顔支持部9に支持された被検者の顔を顔撮影部90によって撮影する。
【0039】
(ステップS2:顔撮影部から見た被検眼方向の算出)
制御部70は、顔撮影部90によって撮影された顔画像P2に基づいて、顔撮影部90から見た被検眼Eの方向を求める。被検眼の方向は、例えば、3次元的な方向(例えば、空間ベクトル)である。制御部70は、顔画像P2上の被検眼(例えば、瞳孔U)の座標(xe,ye)を求める。例えば、顔画像P2の輝度、エッジ等を解析することによって、被検眼の座標を求めてもよい。
【0040】
ここで、被検眼Eの3次元座標を(Xe,Ye,Ze)とすると、顔画像P2上の座標(xe,ye)と、実際の被検眼Eの座標(Xe,Ye,Ze)との関係は数1のように表される。
【数1】
【0041】
なお、数1において、
【数2】

は、カメラ内部パラメータで、fx,fyは焦点距離、sはスキュー歪み、(cx,cy)は画像上の光学中心である。これらは予め顔撮影部90のキャリブレーションを行うことで取得される。また、
【数3】

は顔撮影部90のカメラ外部パラメータで、
【数4】

は顔撮影部90の回転成分である。(tX,tY,tZ)は顔撮影部90の平行移動成分(顔撮影部90の位置)である。また、hは任意のスケールである。
【0042】
ここで、顔撮影部90から見た被検眼Eの位置をE'=(Xe',Ye',Ze')=(Xe-tX,Ye-tY,Ze-tZ)とする。すると、顔撮影部90から見た被検眼の方向はE'の方向ベクトルVとなる。ここで、数1より数5が成り立つ。
【数5】

ここで、E'の方向ベクトルVを求めるためにはXe':Ye':Ze'の比が分かればよいから、数5において、Xe'=mZe,Ye'=nZeとおくと数6となる。
【数6】

ただし、h'=h/Zeとする。ここで、未知数はh',m,nの3つであり、数6を展開した連立方程式を解くことによってm,nが求まる。これによって、Xe':Ye':Ze'の比が求まり、その結果E’の方向ベクトルVが求まる。このようにして、制御部70は、顔撮影部90から見た被検眼の方向を求める。
【0043】
(ステップS3:被検眼方向に移動しながら前眼部撮影)
制御部70は、検出された被検眼の方向に基づいて駆動部4を制御し、検眼部2を移動させる。例えば、制御部70は、前眼撮影光学系60によるアライメント可能領域Aaを顔撮影部90と被検眼とを結ぶ直線K上に移動させる。ここで、アライメント可能領域Aaは、例えば、ある位置において前眼撮影光学系60によって撮影された前眼部画像P1から被検眼の3次元的な位置を検出できる領域である。顔撮影部90の位置(tX,tY,tZ)と、前眼撮影光学系60によるアライメント可能領域Aaとの位置関係は、装置の設計上既知であるため、制御部70は、駆動部4によってアライメント可能領域Aaを直線Kに移動させることができる。例えば、制御部70は、図6のように、アライメント可能領域Aaの領域内に直線Kが含まれるように、前眼撮影光学系60を位置Q1から位置Q2に移動させる。ここで、位置Q2は、例えば、直線Kにおいて検眼部2による測定が可能な測定可能範囲Eaの最も顔撮影部90側の位置G1がアライメント可能領域Aaの重心と一致する位置である。なお、測定可能範囲Eaは、例えば、検眼部2の作動距離と駆動部4の駆動範囲によって定まる。
【0044】
制御部70は、例えば、前眼撮影光学系60を位置Q2に移動させ、アライメント可能領域Aaを直線K上に位置させる。そして、制御部70は、前眼撮影光学系60によって被検眼の撮影を行いながら、前眼撮影光学系60をさらに直線Kに基づく方向に移動させる。例えば、図7のように、前眼撮影光学系60を位置Q2から位置Q3に向けて移動させる。ここで、位置Q3は、例えば、測定可能範囲Eaの原点Oと最も離れた位置G2がアライメント可能領域Aaの重心と一致する位置である。
【0045】
制御部70は、例えば、アライメント可能領域Aaが直線Kの少なくとも一部を含むように、前眼撮影光学系60を直線Kに沿う方向に移動させることによって、位置Q2から位置Q3に移動する間にアライメント可能領域Aaに被検眼を位置させることができる。アライメント可能領域Aaに被検眼が入った場合、制御部70は、前眼撮影光学系60によって撮影された前眼部画像P1から被検眼と検眼部2のアライメントを行うことができる。
【0046】
(ステップS4:前眼部画像から輝点、または瞳孔検出)
制御部70は、被検眼に方向に移動しながら撮影される前眼部画像P1を随時解析し、指標投影光学系50によって被検眼に投影された輝点T、または瞳孔Uを検出する。例えば、制御部70は、前眼部画像P1の輝度情報に基づいて輝点Tを検出する。また、制御部70は、前眼部画像P1のエッジを検出し、その形状などに基づいて瞳孔Uを検出する。
【0047】
(ステップS5:輝点有無判定)
制御部70は、例えば、ステップS4の検出結果に基づいて前眼部画像P1に輝点Tがあるか否か判定する。例えば、制御部70は、閾値以上の輝度が検出された場合に輝点Tが検出されたと判定し、閾値以上の輝度Tが検出されなかった場合は、輝点Tが検出されなかったと判定してもよい。制御部70は、輝点Tがあった場合はステップS6の処理に進み、輝点Tが無かった場合は、ステップS8の処理に進む。
【0048】
(S6:輝点でアライメント)
制御部70は、ステップS4で検出された輝点Tの位置に基づいて、駆動部4を制御し、被検眼に対する検眼部2のXYZ方向のアライメントを行う。
【0049】
(S7:測定)
制御部70は、XYZ方向のアライメントが完了すると、検眼部2によって被検眼の測定を開始する。例えば、検眼部2は被検眼の眼屈折力の測定を行う。もちろん、屈折力の測定に限らず、検眼部の種類に応じた種々の測定・撮影等が実行されてもよい。
【0050】
(ステップS8:瞳孔有無判定)
制御部70は、例えば、ステップS4の検出結果に基づいて前眼部画像P1に瞳孔Uがあるか否かを判定する。制御部70は、瞳孔Uが検出された場合はステップS9の処理に進み、瞳孔Uが検出されなかった場合はステップS3の処理に戻り、再度、前眼部画像を撮影しながら被検眼方向への移動を続ける。
【0051】
(ステップS9:瞳孔アライメント)
制御部70は、ステップ4において検出された瞳孔Uの位置に基づいてXY方向のアライメントを行う。例えば、瞳孔中心が前眼撮影部60の光軸L3と重なるように駆動部4を制御する。XYアライメントが完了すると、制御部70は、ステップS10に進む。
【0052】
(ステップS10:Z座標算出)
XY方向のアライメントが完了すると、制御部70は、被検眼のZ座標を算出する。XY方向のアライメントが完了している、つまり、光軸L3上に被検眼があるということは、被検眼のX,Y座標は装置の設計値から既知となる。例えば、前眼撮影光学系60のX,Y座標が、被検眼のXe,Yeと等しくなる。被検者の顔は顔支持部9で固定されているため、被検眼の位置はステップS1から変化がないと仮定すると、数1において未知数はh,Zeとなるため、数1を展開して得られる連立方程式を解くことでZeが求まる。
【0053】
(ステップS11:Zアライメント)
被検眼のZ座標Zeが求まると、制御部70は、駆動部4を制御し、Z方向のアライメントを完了させる。例えば、制御部70は、被検眼のZ座標Zeと、前眼撮影光学系60のZ座標との間の距離が適正な作動距離となるように、検眼部2を移動させる。Z方向のアライメントが完了すると、制御部70は、ステップS7に進み、被検眼の測定を行う。なお、ステップS11の後に再度ステップS4に戻ってもよい。例えば、制御部70は、ステップS10で算出したZ座標Zeに基づいて検眼部2をZ方向に移動させつつ前眼部画像P1に対する輝点の検出処理を行い、輝点が検出された時点で輝点の位置に基づくXYZ方向のアライメントを行うようにしてもよい。
【0054】
上記のように、本実施例の眼科装置1は、例えば、アライメント輝点によるXYZ方向のアライメントができなかった場合でも、瞳孔検出によって得られた被検眼のXY座標と、顔撮影部90から見た被検眼の方向に基づいて、被検眼のZ座標を算出し、Z方向のアライメントを行うことができる。これによって、アライメント輝点が検出できなかった場合であっても、スムーズにXYZ方向のアライメントを行うことができる。
【0055】
例えば、アライメント輝点が検出できるまで検眼部2を可動範囲内で前後方向に移動させる方法は、アライメントのずれが大きくなる方向に移動する可能性があるため、時間がかかる場合があった。また、例えば、前眼部画像の鮮明さを表す画像特徴量を利用して、鮮明度合いが高くなる方向に移動する方法は、ある程度移動してから近づいたか、または遠くなったかの判定を行うため、時間がかかる場合があった。しかしながら、本実施例の方法では、あらかじめZ座標を算出できるため、前後方向の無駄な移動を低減することができる。
【0056】
なお、画像から被検眼を検出する方法としては、例えば、赤外撮影による瞳孔検出、輝度値のエッジ検出等の種々の画像処理方法が挙げられる。例えば、被検者の顔を赤外撮影した場合、肌は白く写り、瞳孔は黒く写る。したがって、制御部70は、赤外撮影によって得られた赤外画像から丸くて黒い(輝度の低い)部分を瞳孔として検出してもよい。上記のような方法を用いて、制御部70は、顔画像P2から被検眼を検出し、その2次元位置情報を取得する。
【符号の説明】
【0057】
1 眼科装置
2 検眼部
4 駆動部
5 基台
6 筐体
9 顔支持部
60 前眼撮影光学系
70 制御部
71 CPU
72 ROM
73 RAM
90 顔撮影部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7