(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/289 20210101AFI20221206BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20221206BHJP
H01M 50/242 20210101ALI20221206BHJP
H01G 11/10 20130101ALI20221206BHJP
【FI】
H01M50/289 101
H01M50/209
H01M50/242
H01G11/10
(21)【出願番号】P 2018057074
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 駿
(72)【発明者】
【氏名】歳岡 芳昌
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-115481(JP,A)
【文献】特開2009-277575(JP,A)
【文献】国際公開第2014/203342(WO,A1)
【文献】特開2017-098107(JP,A)
【文献】特開2014-107217(JP,A)
【文献】特開2016-152203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
H01G 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子と、
スペーサと、
前記蓄電素子及び前記スペーサの間に配置され、前記蓄電素子及び前記スペーサを接合する接合部材と、を備え、
前記スペーサは、
前記接合部材が配置される第一面と、
前記第一面から前記蓄電素子に向けて突出する第一突出部と、を有し、
前記接合部材は、前記第一突出部の、互いに交差する少なくとも2つの方向に位置する少なくとも2つの部位を有し、
前記2つの部位は、前記第一突出部に沿って、互いに交差する2つの方向に延び
、かつ、前記蓄電素子及び前記スペーサの間に配置され、前記蓄電素子及び前記スペーサを接合する
蓄電装置。
【請求項2】
前記接合部材は、さらに、前記2つの部位とで前記第一突出部を挟む位置に配置される他の2つの部位を有する
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記2つの部位及び前記他の2つの部位は、前記第一突出部の全周を囲むように配置される
請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記接合部材は、前記蓄電素子及び前記スペーサを接着する接着層である
請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記第一突出部は、前記蓄電素子の中央部に対向して配置される中央突出部を有する
請求項1~
4のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記蓄電素子は、接合部が設けられた容器を有し、
前記第一突出部は、前記接合部に対向して配置される接合突出部を有する
請求項1~
5のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記第一突出部は、前記スペーサの前記第一面を有する部位よりも、耐熱性が高い
請求項1~
6のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項8】
前記第一突出部は、前記スペーサの前記第一面を有する部位よりも、硬度が高い
請求項1~
7のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項9】
前記スペーサは、さらに、
前記第一面とは反対側の第二面と、
前記第一突出部の反対側に配置され、前記第二面から突出する第二突出部と、を有する
請求項1~
8のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子とスペーサとを備える蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電素子とスペーサとを備える蓄電装置が広く知られている。例えば、特許文献1には、蓄電素子(電池セル)とスペーサとを備え、接着剤からなる接着部で蓄電素子にスペーサを接着した構成の蓄電装置(電池モジュール)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のような構成の蓄電装置では、蓄電素子の膨れを抑制することができない場合があるという問題がある。例えば、上記特許文献1に開示されたような蓄電素子に接着部でスペーサを接着した構成では、蓄電素子が劣化等によって膨れようとした場合に、蓄電素子が膨れる力で接着部が圧縮されると、当該接着部が圧縮された分、蓄電素子が膨れてしまう。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、蓄電素子の膨れを抑制することができる蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電装置は、蓄電素子と、スペーサと、前記蓄電素子及び前記スペーサの間に配置され、前記蓄電素子及び前記スペーサを接合する接合部材と、を備え、前記スペーサは、前記接合部材が配置される第一面と、前記第一面から前記蓄電素子に向けて突出する第一突出部と、を有する。
【0007】
これによれば、蓄電装置は、蓄電素子及びスペーサを接合する接合部材を備えており、スペーサは、接合部材が配置される第一面から蓄電素子に向けて突出する第一突出部を有している。このように、接合部材で蓄電素子及びスペーサを接合する構成において、スペーサに、接合部材が配置される第一面から蓄電素子に向けて突出する第一突出部を設ける。これにより、蓄電素子が膨れようとした場合に、蓄電素子が膨れる力で接合部材が圧縮されても、第一突出部が蓄電素子の膨れを抑制することができる。
【0008】
また、前記第一突出部は、前記蓄電素子の中央部に対向して配置される中央突出部を有することにしてもよい。
【0009】
これによれば、スペーサにおいて、第一突出部は、蓄電素子の中央部に対向して配置される中央突出部を有している。つまり、蓄電素子は、中央部が比較的大きく膨れるため、スペーサの第一突出部を蓄電素子の中央部に対向して配置する。これにより、蓄電素子の比較的大きく膨れる箇所において、蓄電素子の膨れを抑制することができる。
【0010】
また、前記蓄電素子は、接合部が設けられた容器を有し、前記第一突出部は、前記接合部に対向して配置される接合突出部を有することにしてもよい。
【0011】
これによれば、スペーサにおいて、第一突出部は、蓄電素子の容器の接合部に対向して配置される接合突出部を有している。つまり、蓄電素子の容器の接合部は、蓄電素子が膨れた場合に、比較的損傷しやすい部分であるため、スペーサの第一突出部を当該接合部に対向して配置する。これにより、当該接合部を押さえて当該接合部にかかる負荷を低減することで、当該接合部を補強することができるため、蓄電素子が損傷するのを抑制することができる。
【0012】
また、前記第一突出部は、前記スペーサの前記第一面を有する部位よりも、耐熱性が高いことにしてもよい。
【0013】
これによれば、スペーサにおいて、第一突出部は、スペーサの第一面を有する部位よりも耐熱性が高い。このように、スペーサの第一突出部を耐熱性が高い部材で形成することで、蓄電素子側方における耐熱性を向上させることができる。これにより、蓄電素子の異常な高温時(例えば600℃等)においても、スペーサの第一突出部が変形したり溶融したりして損傷するのを抑制することができる。このため、第一突出部が有する蓄電素子の膨れ抑制等の機能を維持することができ、蓄電素子の異常な高温時における不具合を抑制することができる。
【0014】
また、前記第一突出部は、前記スペーサの前記第一面を有する部位よりも、硬度が高いことにしてもよい。
【0015】
これによれば、スペーサにおいて、第一突出部は、スペーサの第一面を有する部位よりも硬度が高い。このように、スペーサの第一突出部を硬度が高い部材で形成することで、第一突出部が蓄電素子の膨れを効果的に抑制することができる。
【0016】
また、前記スペーサは、さらに、前記第一面とは反対側の第二面と、前記第一突出部の反対側に配置され、前記第二面から突出する第二突出部と、を有することにしてもよい。
【0017】
これによれば、スペーサは、さらに、第一突出部の反対側に、第一面とは反対側の第二面から突出する第二突出部を有している。このように、スペーサが、第一突出部の反対側にも第二突出部を有していることで、蓄電素子が膨れようとした場合に、第一突出部及び第二突出部によって、蓄電素子の膨れをさらに抑制することができる。また、第二突出部に対向して他の蓄電素子が配置されている場合には、当該他の蓄電素子の膨れも抑制することができる。
【0018】
なお、本発明は、このような蓄電装置として実現することができるだけでなく、当該蓄電装置が備えるスペーサとしても実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明における蓄電装置によれば、蓄電素子の膨れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る蓄電装置を分解した場合の各構成要素を示す分解斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る蓄電素子の構成を示す斜視図である。
【
図4】実施の形態に係るスペーサ(中間スペーサ)の構成を示す斜視図及び断面図である。
【
図5】実施の形態に係るスペーサ(エンドスペーサ)の構成を示す斜視図及び断面図である。
【
図6】実施の形態に係るインシュレータの構成を示す斜視図及び平面図である。
【
図7】実施の形態に係るサイドプレートの構成を示す斜視図である。
【
図8】実施の形態に係る蓄電素子、スペーサ、エンド部材、インシュレータ、及び、サイドプレートの位置関係を示す平面図及び断面図である。
【
図9】実施の形態に係る蓄電素子、スペーサ、エンド部材、インシュレータ、及び、サイドプレートの位置関係を示す斜視図である。
【
図10】実施の形態に係る蓄電素子、スペーサ、インシュレータ、及び、サイドプレートの位置関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る蓄電装置について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。
【0022】
また、以下の説明及び図面中において、1つの蓄電素子における一対の電極端子の並び方向、1つの蓄電素子の容器における一対の短側面の対向方向、インシュレータの並び方向、サイドプレートの並び方向、または、インシュレータとサイドプレートとの並び方向をX軸方向と定義する。また、蓄電素子の並び方向、スペーサ(中間スペーサ、エンドスペーサ)の並び方向、エンド部材の並び方向、蓄電素子とスペーサとエンド部材との並び方向、1つの蓄電素子の容器における一対の長側面の対向方向、または、蓄電素子、スペーサ若しくはエンド部材の厚み方向をY軸方向と定義する。また、蓄電素子の容器本体と蓋との並び方向、蓄電素子とバスバーとバスバー保持部材との並び方向、または、上下方向をZ軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。また、以下の説明において、例えば、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。
【0023】
(実施の形態)
[1 蓄電装置10の全般的な説明]
まず、蓄電装置10の構成について、説明する。
図1は、本実施の形態に係る蓄電装置10の外観を示す斜視図である。また、
図2は、本実施の形態に係る蓄電装置10を分解した場合の各構成要素を示す分解斜視図である。
【0024】
蓄電装置10は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電することができる装置である。例えば、蓄電装置10は、電力貯蔵用途や電源用途などに使用される電池モジュール(組電池)である。具体的には、蓄電装置10は、例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)またはプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等の自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、スノーモービル、農業機械、建設機械などの移動体の駆動用またはエンジン始動用のバッテリ等として用いられる。
【0025】
図1及び
図2に示すように、蓄電装置10は、複数(本実施の形態では12個)の蓄電素子100と、複数のスペーサ200及び300(本実施の形態では11個のスペーサ200及び一対のスペーサ300)と、一対のエンド部材400と、一対のインシュレータ600と、一対のサイドプレート700と、バスバー800と、バスバー保持部材900とを備えている。また、蓄電素子100とスペーサ200との間には接合部材510が配置され、蓄電素子100とスペーサ300との間には接合部材520が配置され、スペーサ300とエンド部材400との間には接合部材530が配置されている。また、バスバー800には、蓄電装置10の端子である一対の外部端子810(正極外部端子及び負極外部端子)が接続されている。なお、蓄電装置10は、蓄電素子100の電圧計測用の配線、温度計測用の配線、及び、サーミスタ等も備えているが、これらの図示は省略し、詳細な説明も省略する。また、蓄電装置10は、蓄電素子100の充電状態や放電状態を監視するための回路基板やリレー等の電気機器なども備えていてもよい。
【0026】
蓄電素子100は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池(単電池)であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。蓄電素子100は、扁平な直方体形状(角形)の形状を有しており、スペーサ200、300に隣接して配置されている。つまり、複数の蓄電素子100のそれぞれが、複数のスペーサ200、300のそれぞれと交互に配置され、Y軸方向に並べられている。本実施の形態では、12個の蓄電素子100のうちの隣り合う蓄電素子100同士の間に11個のスペーサ200がそれぞれ配置され、12個の蓄電素子100のうちの端部の蓄電素子100を挟む位置に一対のスペーサ300が配置されている。
【0027】
なお、蓄電素子100の個数は12個には限定されず、12個以外の個数であってもよい。また、蓄電素子100の形状は、直方体形状には限定されず、直方体形状以外の多角柱形状であってもよいし、ラミネート型の蓄電素子とすることもできる。また、蓄電素子100は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。また、蓄電素子100は、二次電池ではなく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。さらに、蓄電素子100は、固体電解質を用いた電池であってもよい。この蓄電素子100の構成の詳細な説明については、後述する。
【0028】
スペーサ200及び300は、蓄電素子100の側方(Y軸プラス方向またはY軸マイナス方向)に配置され、蓄電素子100と他の部材とを絶縁する矩形状かつ板状のスペーサである。具体的には、スペーサ200は、隣り合う2つの蓄電素子100の間に配置され、当該2つの蓄電素子100間を絶縁する中間スペーサである。さらに具体的には、スペーサ200のY軸方向両側には接合部材510が配置されており、接合部材510によって、スペーサ200とY軸方向両側の蓄電素子100とが接合されている。なお、本実施の形態では、12個の蓄電素子100に対応して11個のスペーサ200が配置されているが、蓄電素子100の個数が12個以外の場合には、スペーサ200の個数も蓄電素子100の個数に応じて変更される。
【0029】
スペーサ300は、端部の蓄電素子100とエンド部材400との間に配置され、当該端部の蓄電素子100とエンド部材400との間を絶縁するエンドスペーサである。具体的には、スペーサ300の蓄電素子100側には接合部材520が配置されており、接合部材520によって、スペーサ300と蓄電素子100とが接合されている。また、スペーサ300のエンド部材400側には接合部材530が配置されており、接合部材530によって、スペーサ300とエンド部材400とが接合されている。これらスペーサ200及び300の構成の詳細な説明については、後述する。
【0030】
エンド部材400及びサイドプレート700は、複数の蓄電素子100の並び方向(Y軸方向)において、蓄電素子100を外方から圧迫する部材である。つまり、エンド部材400及びサイドプレート700は、複数の蓄電素子100を当該並び方向の両側から挟み込むことで、複数の蓄電素子100に含まれるそれぞれの蓄電素子100を当該並び方向の両側から圧迫する。
【0031】
具体的には、エンド部材400は、複数の蓄電素子100のY軸方向両側に配置され、複数の蓄電素子100を、当該複数の蓄電素子100の並び方向(Y軸方向)の両側から挟み込んで保持する扁平なブロック状のエンドプレート(挟持部材)である。エンド部材400は、強度の観点等から、例えば鋼やステンレス等の金属製(導電性)の部材で形成されている。なお、エンド部材400の材質は特に限定されず、例えば強度の高い絶縁性の部材で形成されていてもよいし、絶縁処理が施されていたりしていてもよい。エンド部材400は、蓄電素子100の側方に配置される側方部材の一例である。
【0032】
サイドプレート700は、両端がエンド部材400に取り付けられて、複数の蓄電素子100を拘束する長尺状かつ平板状の拘束部材(拘束バー)である。つまり、サイドプレート700は、当該複数の蓄電素子100及び複数のスペーサ200、300を跨ぐようにY軸方向に延設されて配置され、当該複数の蓄電素子100及び複数のスペーサ200、300に対してこれらの並び方向(Y軸方向)における拘束力を付与する。本実施の形態では、複数の蓄電素子100のX軸方向両側方において、蓄電素子100(具体的には、後述の容器第二面111a)とでインシュレータ600を挟む位置に、2つのサイドプレート700が配置されている。そして、当該2つのサイドプレート700のそれぞれが、Y軸方向両端部において、2つのエンド部材400のX軸方向端部に取り付けられている。これにより、2つのサイドプレート700は、複数の蓄電素子100及び複数のスペーサ200、300を、X軸方向の両側及びY軸方向の両側から挟み込んで拘束する。
【0033】
また、サイドプレート700は、Z軸方向に並ぶ複数の固定部材701によって、エンド部材400に固定されている。本実施の形態では、固定部材701は、サイドプレート700を貫通してエンド部材400に接合されるボルトである。なお、サイドプレート700のエンド部材400への取り付けは、ボルトによる固定には限定されず、溶接や接着等で接合されていてもかまわない。また、サイドプレート700は、エンド部材400と同様に、強度の観点等から、例えば鋼やステンレス等の金属製(導電性)の部材で形成された導電部材であるが、例えば強度の高い絶縁性の部材で形成されていてもよいし、絶縁処理が施されていたりしていてもよい。サイドプレート700は、蓄電素子100とで絶縁部材を挟む導電部材、または、蓄電素子100を押圧する押圧部材のうちの外側に配置される外側部の一例である。このサイドプレート700の構成の詳細な説明については、後述する。
【0034】
インシュレータ600は、複数の蓄電素子100のX軸方向両側に配置され、かつ、Y軸方向に延設される長尺状かつ平板状の絶縁部材である。つまり、インシュレータ600は、複数の蓄電素子100及び複数のスペーサ200、300を跨ぐように、当該複数の蓄電素子100及び複数のスペーサ200、300とサイドプレート700との間に配置され、蓄電素子100とサイドプレート700とを絶縁する。インシュレータ600は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ・エーテル・サルフォン(PES)、ABS樹脂、セラミック、及びそれらの複合材料などの絶縁性の材料で形成されている。なお、インシュレータ600は、絶縁性を有する部材であればどのような材質で形成されていてもよく、また、2つのインシュレータ600が異なる材質の部材で形成されていてもかまわない。
【0035】
また、インシュレータ600は、複数の蓄電素子100をZ軸マイナス方向に押圧する機能も有している。つまり、複数の蓄電素子100は、冷却装置20(
図10参照)に載置されて冷却される構成を有しており、インシュレータ600は、複数の蓄電素子100を冷却装置20に向けて押圧する。冷却装置20は、例えば水冷により、蓄電装置10(複数の蓄電素子100)を冷却する装置である。なお、蓄電装置10は、冷却装置20ではなく、例えば、蓄電装置10を搭載する車の車体、または、蓄電装置10を収容する外装体等に載置される構成を有しており、インシュレータ600は、複数の蓄電素子100を当該車体または外装体等に向けて押圧するように構成されていてもよい。インシュレータ600は、蓄電素子100のX軸方向側に配置される第一絶縁部材、蓄電素子100に当接する当接部材、または、蓄電素子100を押圧する押圧部材のうちの内側に配置される内側部の一例である。このインシュレータ600の構成の詳細な説明については、後述する。
【0036】
バスバー800は、複数の蓄電素子100上に配置され、複数の蓄電素子100の電極端子同士を電気的に接続する導電性の板状部材である。本実施の形態では、バスバー800は、隣り合う蓄電素子100の正極端子と負極端子とを順に接続することで、複数の蓄電素子100を直列に接続している。また、端部に配置されるバスバー800には、正極及び負極の外部端子810が接続されている。バスバー800は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属製の導電部材で形成されている。なお、蓄電素子100の接続形態は特に限定されず、いずれかの蓄電素子100が並列接続されていることにしてもよい。
【0037】
バスバー保持部材900は、バスバー800や、その他配線類等(図示せず)を保持し、当該バスバー800等と他の部材との絶縁、及び、当該バスバー800等の位置規制を行うことができる板状部材(バスバープレート、バスバーフレーム)である。具体的には、バスバー保持部材900は、本体部分と蓋部分とを有しており、蓋部分を開いて本体部分に当該バスバー800等を載置した後に当該蓋部分を閉じることで、当該バスバー800等を収容できる構成になっている。バスバー保持部材900は、例えば、PC、PP、PE、PPS、PET、PEEK、PFA、PTFE、PBT、PES、ABS樹脂、セラミック、及びそれらの複合材料などの絶縁性の材料で形成されている。
【0038】
[2 蓄電素子100の詳細な説明]
次に、蓄電素子100の構成について、詳細に説明する。
図3は、本実施の形態に係る蓄電素子100の構成を示す斜視図である。
【0039】
図3に示すように、蓄電素子100は、容器110と、2つの電極端子120(正極端子及び負極端子)と、2つのガスケット121と、絶縁シート130とを備えている。また、容器110の内方には、電極体、集電体(正極集電体及び負極集電体)、及び電解液(非水電解質)等が収容されているが、これらの図示は省略する。なお、当該電解液としては、蓄電素子100の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。また、容器110(後述の蓋体112)と集電体との間にもガスケットが配置され、集電体の側方等にはスペーサが配置されているが、これらの図示も省略する。
【0040】
容器110は、開口が形成された容器本体111と、容器本体111の開口を閉塞する蓋体112とを有する直方体形状(角形)の容器である。蓋体112は、容器110の蓋部を構成する矩形状の板状部材であり、容器本体111のZ軸プラス方向側に配置されている。ここで、蓋体112は、電極端子120が配置される容器第一面112aを有している。容器第一面112aは、蓋体112のZ軸プラス方向側に配置されたX軸方向に延びる矩形状の平面(外面または上面)である。また、蓋体112には、容器110内方の圧力が上昇した場合に当該圧力を開放するガス排出弁113、及び、容器110内方に電解液を注液するための注液部114等も設けられている。
【0041】
容器本体111は、容器110の本体部を構成する矩形筒状で底を備える部材であり、X軸方向両側の側面に2つの容器第二面111aを有し、Z軸マイナス方向側に容器第三面111bを有し、Y軸方向両側の側面に2つの容器第四面111cを有している。容器第二面111aは、容器110の短側面を形成する矩形状の平面である。言い換えれば、容器第二面111aは、容器第一面112a、容器第三面111b及び容器第四面111cに隣接し、容器第四面111cよりも面積が小さい面である。また、容器第三面111bは、容器110の底面を形成する矩形状の平面である。言い換えれば、容器第三面111bは、容器第一面112aに対向し、かつ、容器第二面111a及び容器第四面111cに隣接する面である。容器第四面111cは、容器110の長側面を形成する矩形状の平面である。言い換えれば、容器第四面111cは、容器第一面112a、容器第二面111a及び容器第三面111bに隣接し、容器第二面111aよりも面積が大きい面である。なお、容器本体111は、容器第二面111aと容器第四面111cとの境界部分に、湾曲状の容器角部111dを有している。
【0042】
このような構成により、容器110は、電極体等を容器本体111の内方に収容後、容器本体111と蓋体112とが溶接等によって接合されて接合部115が形成されることにより、内部が密封される構造となっている。つまり、容器110の側面(X軸方向両側及びY軸方向両側の面)には、容器本体111と蓋体112とが互いに接合された接合部115が形成されている。なお、容器110(容器本体111及び蓋体112)の材質は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板など溶接可能(接合可能)な金属であるのが好ましい。
【0043】
電極端子120は、容器110の容器第一面112aに配置される蓄電素子100の端子(正極端子及び負極端子)であり、集電体を介して、電極体の正極板及び負極板に電気的に接続されている。つまり、電極端子120は、電極体に蓄えられている電気を蓄電素子100の外部空間に導出し、また、電極体に電気を蓄えるために蓄電素子100の内部空間に電気を導入するための金属製の部材である。なお、電極端子120は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などで形成されている。
【0044】
ガスケット121は、電極端子120の周囲、かつ、電極端子120と容器110の蓋体112との間に配置され、電極端子120と容器110との間の絶縁性及び気密性を確保するための部材である。ガスケット121は、例えば、PP、PE、PPS、PET、PEEK、PFA、PTFE、PBT、PES、ABS樹脂などの絶縁性の材料で形成されている。
【0045】
ここで、電極端子120及びガスケット121は、容器110の容器第一面112aから突出する凸部である。つまり、電極端子120またはガスケット121は、蓄電素子100が有する凸部の一例であり、蓄電素子100は、容器第一面112aのX軸方向両側に2つの当該凸部を有している。本実施の形態では、蓄電素子100は、当該凸部として、ガスケット121を有している。
【0046】
電極体は、正極板と負極板とセパレータとが積層されて形成された蓄電要素(発電要素)である。ここで、電極体が有する正極板は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などの金属からなる長尺帯状の集電箔である正極基材層上に正極活物質層が形成されたものである。また、負極板は、銅または銅合金などの金属からなる長尺帯状の集電箔である負極基材層上に負極活物質層が形成されたものである。また、正極活物質層に用いられる正極活物質、負極活物質層に用いられる負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能なものであれば、適宜公知の材料を使用できる。また、集電体は、電極端子120と電極体とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材(正極集電体及び負極集電体)である。なお、正極集電体は、正極板の正極基材層と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金などで形成され、負極集電体は、負極板の負極基材層と同様、銅または銅合金などで形成されている。
【0047】
絶縁シート130は、容器110の外面に配置され、容器110の外面を覆う絶縁性のシート状部材である。絶縁シート130の材質は、蓄電素子100に必要な絶縁性を確保できるものであれば特に限定されないが、例えば、PC、PP、PE、PPS、PET、PBTまたはABS樹脂等の絶縁性の樹脂、エポキシ樹脂、カプトン、テフロン(登録商標)、シリコン、ポリイソプレン、及びポリ塩化ビニルなどを例示することができる。
【0048】
具体的には、絶縁シート130は、容器110の容器第三面111bの全面と、容器第二面111a及び容器第四面111cのほぼ全面と、容器第一面112aの一部とを覆うように配置された1枚の絶縁シートである。このように、絶縁シート130は、蓋体112のガス排出弁113、注液部114及び電極端子120を露出させた状態で、容器110の外面に配置されている。絶縁シート130は、容器第三面111bを覆う第二絶縁部材の一例である。
【0049】
[3 スペーサ200の詳細な説明]
次に、スペーサ200の構成について、詳細に説明する。
図4は、本実施の形態に係るスペーサ200の構成を示す斜視図及び断面図である。具体的には、
図4の(a)は、スペーサ200を分解して各構成要素を接合部材510とともに示す斜視図である。また、
図4の(b)は、
図4の(a)のスペーサ200の第二部材210をIVbc-IVbc線で切断した場合における上部(Z軸プラス方向側の部位)の構成を示す断面図であり、
図4の(c)は、下部(Z軸マイナス方向側の部位)の構成を示す断面図である。なお、
図4の(b)及び
図4の(c)では、説明の便宜のため、第二部材210以外の構成要素も破線で示している。
【0050】
図4に示すように、スペーサ200は、第一部材201と、第二部材210とを備えている。第一部材201は、蓄電素子100のY軸方向側の側面である容器第四面111cに当接する位置に配置される部材であり、第一板部220と、第二板部230と、第一板部220及び第二板部230を接合する接合部材240とを有している。第二部材210は、第一部材201のY軸方向に交差する方向側に配置され、第一部材201のY軸方向に交差する方向の端部を支持する部材である。具体的には、第二部材210の中央位置には、Y軸方向に貫通する矩形状の貫通孔である開口部212が形成されており、開口部212内に第一部材201が配置されることで、第二部材210が第一部材201の周囲を支持する構成となっている。
【0051】
さらに具体的には、後述の
図10にも示されるように、第二部材210は、本体部211と、第一突起213と、第二突起214と、第三突起215とを有している。本体部211は、中央位置に上述の開口部212が形成された矩形環状かつ板状の部位である。また、本体部211には、スペーサ第一面211aと、接合突出部211bと、第一凹部211cと、挟込部211dと、第二凹部211eと、スペーサ第二面211fとが設けられている。
【0052】
スペーサ第一面211aは、本体部211のY軸マイナス方向側かつ開口部212の周囲に配置された環状の平面であり、Y軸マイナス方向側の接合部材510が配置される。つまり、スペーサ第一面211aに4枚の矩形状の接合部材510が配置されて、スペーサ200とY軸マイナス方向側の蓄電素子100とが接合される。また、スペーサ第二面211fは、スペーサ第一面211aとは反対側(Y軸プラス方向側)かつ開口部212の周囲に配置された環状の平面であり、Y軸プラス方向側の接合部材510が配置される。つまり、スペーサ第二面211fに4枚の矩形状の接合部材510が配置されて、スペーサ200とY軸プラス方向側の蓄電素子100とが接合される。
【0053】
ここで、接合部材510は、蓄電素子100及びスペーサ200の間に配置され、蓄電素子100及びスペーサ200を接合する部材であり、本実施の形態では、両面テープ等の接着層である。なお、接合部材は、両面テープには限定されず、接着剤等の接着層でもよく、溶着によって接合した際の溶着部分、溶接によって接合した際の溶接部分、かしめや嵌合等の機械的に接合された部分、または、その他の接合部分であってもよい。
【0054】
接合突出部211bは、スペーサ第一面211a及びスペーサ第二面211fからY軸方向両側に突出して配置されるX軸方向に長尺な突出部分であり、Y軸方向両側の蓄電素子100の容器110の接合部115に対向して配置される。具体的には、接合突出部211bは、スペーサ200に隣接して蓄電素子100が配置された場合に、蓄電素子100の容器110の接合部115に当接する位置に配置されている。つまり、接合突出部211bは、蓄電装置10の製造時点で接合部115に当接している、または、蓄電装置10の使用中に蓄電素子100の容器110が膨れてきた際に、接合部115に当接する。
【0055】
第一凹部211cは、開口部212の周囲に沿って形成され、かつ、Y軸プラス方向に向けて凹んだ環状の凹部である。つまり、第二部材210は、開口部212に沿った端部に第一凹部211cを有しており、この第一凹部211cに、第一部材201がY軸方向で係合する。具体的には、第一凹部211cは、第一部材201の第一板部220の端部に配置される係合部221と係合することで、第二部材210に対して第一部材201が配置される。なお、第一部材201が第一凹部を有し、第二部材210が当該第一凹部に係合する係合部を有している構成でもよい。つまり、第一部材201及び第二部材210のいずれか一方が、端部に第一凹部を有し、他方が、第一凹部にY軸方向で係合する係合部221を有していればよい。
【0056】
挟込部211dは、第一凹部211cの内壁から開口部212の内方に向けて突出する突起であり、第一部材201を挟み込む機能を有している。本実施の形態では、第一部材201のX軸方向両側及びZ軸方向両側に、合計8個の挟込部211dが設けられている。つまり、X軸方向において、2対の挟込部211dが第一部材201を挟み込み、Z軸方向においても、2対の挟込部211dが第一部材201を挟み込む構成となっている。具体的には、挟込部211dは、第一部材201のX軸方向両側及びZ軸方向両側の端面に係合することで、第一部材201をX軸方向及びZ軸方向において挟み込む。なお、挟込部211dの形状、個数及び配置位置は、上記には限定されない。
【0057】
第二凹部211eは、スペーサ第一面211a及びスペーサ第二面211fからY軸方向に凹んだ凹部であり、第一部材201の側方に配置され、かつ、第一部材201の周囲に沿って長尺状に形成されている。具体的には、第二凹部211eは、スペーサ第一面211aにおいては、挟込部211dと隣り合う位置に配置され、スペーサ第二面211fにおいては、スペーサ第一面211aに形成された第二凹部211eよりも内側(第一部材201側)に配置されている。なお、第二凹部211eの形状、個数及び配置位置は、上記には限定されない。また、第二凹部211eの代わりに、本体部211をY軸方向に貫通する貫通孔が形成されていてもよい。
【0058】
このような構成により、挟込部211d及び第二凹部211eは、Y軸方向において、スペーサ第一面211aからスペーサ第二面211fまでの範囲内に配置されている。つまり、挟込部211d及び第二凹部211eは、スペーサ第一面211aからY軸マイナス方向に突出する形状を伴うことなく形成され、かつ、スペーサ第二面211fからY軸プラス方向に突出する形状を伴うことなく形成されている。言い換えると、スペーサ第一面211a及びスペーサ第二面211fは、Y軸方向から見て挟込部211dと重なる位置において、凹んでいる、または、隣り合う面と同一平面で形成されている。同様に、スペーサ第一面211a及びスペーサ第二面211fは、Y軸方向から見て第二凹部211eと重なる位置において、凹んでいる、または、隣り合う面と同一平面で形成されている。
【0059】
第一突起213は、本体部211のZ軸プラス方向側の端部から、Y軸方向両側に向けて突出した長尺状の突出部である。本実施の形態では、X軸方向に並んで2対の第一突起213が配置されている。第一突起213は、蓄電素子100の凸部(本実施の形態では、ガスケット121)のX軸方向側に対向し、かつ、当該凸部に沿って突出して配置される。これについての詳細な説明は、後述する。
【0060】
第二突起214は、本体部211のX軸方向両側かつZ軸プラス方向側の部位から、X軸方向両側に突出した突出部である。ここで、第二突起214には、X軸方向の端部に凹部及び凸部の少なくとも一方を有する凹凸部が形成されている。具体的には、当該凹凸部は、Y軸プラス方向に突出する凸部214aと、凸部214aの裏側に形成され第二突起214の端部の表面が凹んだ凹部214bとを有している(
図8参照)。これについての詳細な説明は、後述する。
【0061】
第三突起215は、本体部211のZ軸マイナス方向側の端部から、蓄電素子100の底面(容器第三面111b)側に向かう方向であるZ軸マイナス方向側に突出した突出部である。第三突起215は、本体部211のX軸方向における両端部に配置され、インシュレータ600に載置される。これについての詳細な説明は、後述する。
【0062】
ここで、第二部材210は、例えば、PC、PP、PE、PPS、PET、PEEK、PFA、PTFE、PBT、PES、ABS樹脂、及びそれらの複合材料などの絶縁性の材料で形成されている。なお、第二部材210は、絶縁性を有する部材であればどのような材質で形成されていてもよく、また、複数のスペーサ200が有する全ての第二部材210が同じ材質の部材で形成されていてもよいし、いずれかの第二部材210が異なる材質の部材で形成されていてもかまわない。
【0063】
第一部材201は、第二部材210よりも耐熱性が高い部材で形成されている。また、第一部材201は、第二部材210よりも硬度が高い部材で形成されているのが好ましい。また、第一部材201は、第二部材210よりも断熱性も高い部材で形成されているのがさらに好ましい。例えば、第一部材201を構成する耐熱性等が高い第一板部220及び第二板部230として、マイカ片を集積し、結合することで構成されるダンマ材によって形成されたマイカ板(熱分解温度が例えば600℃~800℃程度)等が挙げられる。なお、第一板部220及び第二板部230は、耐熱性等が高い部材であればどのような材質で形成されていてもよいし、第一板部220と第二板部230とが異なる材質で形成されていてもよい。接合部材240の材質等は、接合部材510の材質等と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0064】
ここで、耐熱性が高いとは、高温にさらされた場合にも影響を受けにくく、物性を維持(または形状を維持)することができることをいい、例えば、ガラス転移温度、荷重たわみ温度(熱変形温度)、または、融点が高いことをいう。なお、2つの部材についてガラス転移温度、荷重たわみ温度(熱変形温度)及び融点を比較した場合に、数値が逆転するものがある場合には、融点が高い部材を耐熱性が高い部材と定義する。また、硬度が高いとは、硬くて変形しにくいことをいい、例えば、ビッカース硬度が高いことをいう。また、断熱性が高いとは、熱を伝えにくいことをいい、例えば、熱伝導率が低いことをいう。これら耐熱性等(耐熱性、硬度及び断熱性)の比較は、適宜公知の方法により計測して判断することができる。
【0065】
なお、上記実施の形態では、第一板部220及び第二板部230は、全てが耐熱性等が高い部材で形成されていることとしたが、一部が耐熱性等が高い部材で形成されていることにしてもよい。例えば、第一板部220及び第二板部230は、樹脂製の基材の表面に耐熱性等が高い部材(塗料等)が配置(塗布)されている構成によって、耐熱性等が高い部材を形成していることにしてもかまわない。
【0066】
具体的には、第一板部220及び第二板部230は、スペーサ200に隣接して蓄電素子100が配置された場合に、蓄電素子100の容器第四面111cに当接する位置に配置される矩形状かつ平板状の部材である。つまり、第一板部220及び第二板部230は、蓄電装置10の製造時点で容器第四面111cに当接している、または、蓄電装置10の使用中に蓄電素子100の容器110が膨れてきた際に、容器第四面111cに当接する。また、第一板部220は、第二板部230よりも、X軸方向及びZ軸方向の幅が大きく、かつ、Y軸方向の厚みが厚く形成されている。
【0067】
さらに具体的には、第一板部220は、スペーサ第一面211aからY軸マイナス方向側の蓄電素子100に向けて突出し、かつ、Y軸マイナス方向側の蓄電素子100の中央部に対向して配置される。また、第二板部230は、第一板部220の反対側(Y軸プラス方向側)に配置される。つまり、第二板部230は、スペーサ第二面211fからY軸プラス方向側の蓄電素子100に向けて突出し、かつ、Y軸プラス方向側の蓄電素子100の中央部に対向して配置される。なお、第一板部220は、Y軸マイナス方向側の接合突出部211bよりもY軸マイナス方向に突出して配置され、第二板部230は、Y軸プラス方向側の接合突出部211bよりもY軸マイナス方向に凹んで配置されている。このように、第一部材201は、厚みが、第二部材210の本体部211の厚みと略同一、または、本体部211の厚みよりも厚く形成されている。
【0068】
なお、第一板部220は中央突出部の一例であり、この中央突出部(第一板部220)及びY軸マイナス方向側の接合突出部211bは、第一突出部の一例である。また、第二板部230も中央突出部の一例であり、この中央突出部(第二板部230)及びY軸プラス方向側の接合突出部211bは、第二突出部の一例である。このため、中央突出部は、第二部材210よりも、耐熱性が高く、また、硬度が高いのが好ましく、断熱性が高いのがさらに好ましい。言い換えれば、第一突出部及び第二突出部は、スペーサ200のスペーサ第一面211a及びスペーサ第二面211fを有する部位よりも、耐熱性が高い部位を有しており、また、硬度が高い部位を有するのが好ましく、断熱性が高い部位を有するのがさらに好ましい。
【0069】
[4 スペーサ300の詳細な説明]
次に、スペーサ300の構成について、詳細に説明する。
図5は、本実施の形態に係るスペーサ300の構成を示す斜視図及び断面図である。具体的には、
図5の(a)は、
図2におけるY軸プラス方向側のスペーサ300を接合部材520及び530とともに示す斜視図である。また、
図5の(b)は、
図5の(a)のスペーサ300をVbc-Vbc線で切断した場合における上部(Z軸プラス方向側の部位)の構成を示す断面図であり、
図5の(c)は、下部(Z軸マイナス方向側の部位)の構成を示す断面図である。なお、
図5の(b)及び
図5の(c)では、説明の便宜のため、接合部材520及び530についても破線で示している。なお、
図2におけるY軸マイナス方向側のスペーサ300も、同様の構成を有している。
【0070】
図5に示すように、スペーサ300は、本体部310と、第一突起320と、第二突起330と、第三突起340とを備えている。本体部310は、矩形状かつ板状の部位であり、スペーサ第一面311と、中央突出部312a及び接合突出部312bを有する第一突出部312と、スペーサ第二面313とが設けられている。なお、スペーサ300は、スペーサ200の第二部材210と同様の材質で形成されている。
【0071】
スペーサ第一面311は、本体部310のY軸マイナス方向側かつ中央突出部312aの周囲に配置された環状の平面であり、接合部材520が配置される。つまり、スペーサ第一面311に4枚の矩形状の接合部材520が配置されて、スペーサ300とY軸マイナス方向側の蓄電素子100とが接合される。また、スペーサ第二面313は、中央突出部312aの反対側(Y軸プラス方向側)に配置された矩形状の平面であり、接合部材530が配置される。つまり、スペーサ第二面313に矩形状の接合部材530が配置されて、スペーサ200とY軸プラス方向側の蓄電素子100とが接合される。
【0072】
ここで、接合部材520は、蓄電素子100及びスペーサ300の間に配置され、蓄電素子100及びスペーサ300を接合する部材であり、接合部材530は、エンド部材400及びスペーサ300の間に配置され、エンド部材400及びスペーサ300を接合する部材である。接合部材520、530の材質等は、接合部材510の材質等と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0073】
第一突出部312の中央突出部312aは、スペーサ第一面311からY軸マイナス方向側の蓄電素子100に向けて突出し、かつ、Y軸マイナス方向側の蓄電素子100の中央部に対向して配置される部位である。また、接合突出部312bは、スペーサ第一面311からY軸マイナス方向側に突出して配置されるX軸方向に長尺な突出部分であり、Y軸マイナス方向側の蓄電素子100の容器110の接合部115に対向して配置される。具体的には、中央突出部312a及び接合突出部312bは、スペーサ300に隣接して蓄電素子100が配置された場合に、蓄電素子100の容器110の容器第四面111c及び接合部115に当接する位置に配置されている。つまり、中央突出部312a及び接合突出部312bは、蓄電装置10の製造時点で容器第四面111c及び接合部115に当接している、または、蓄電装置10の使用中に蓄電素子100の容器110が膨れてきた際に、容器第四面111c及び接合部115に当接する。なお、接合突出部312bは、Y軸マイナス方向に向けて、中央突出部312aと同じ位置まで突出している。
【0074】
第一突起320は、本体部310のZ軸プラス方向側の端部から、Y軸マイナス方向側に向けて突出した長尺状の突出部である。なお、第一突起320は、スペーサ200の第一突起213と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【0075】
第二突起330は、本体部310のX軸方向両側かつZ軸プラス方向側の部位から、X軸方向両側に突出した突出部である。ここで、第二突起330には、X軸方向の端部に凹部及び凸部の少なくとも一方を有する凹凸部が形成されている。具体的には、当該凹凸部は、第二突起330の端部の表面が凹んだ凹部331、332を有している(
図8参照)。これについての詳細な説明は、後述する。
【0076】
第三突起340は、本体部310のZ軸マイナス方向側の端部から、蓄電素子100の底面(容器第三面111b)側に向かう方向であるZ軸マイナス方向側に突出した突出部である。なお、第三突起340は、スペーサ200の第三突起215と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【0077】
[5 インシュレータ600の詳細な説明]
次に、インシュレータ600の構成について、詳細に説明する。
図6は、本実施の形態に係るインシュレータ600の構成を示す斜視図及び平面図である。具体的には、
図6の(a)は、
図2におけるX軸プラス方向側のインシュレータ600を示す斜視図であり、
図6の(b)は、
図6の(a)のインシュレータ600を裏側から見た場合の構成を示す斜視図である。また、
図6の(c)は、
図6の(a)の破線で囲った部分を拡大して示す拡大斜視図である。また、
図6の(d)は、
図6の(b)のインシュレータ600のY軸マイナス方向側かつZ軸プラス方向側の端部を、X軸マイナス方向側から見た場合の構成を拡大して示す平面図である。なお、
図2におけるX軸マイナス方向側のインシュレータ600も、同様の構成を有している。
【0078】
図6に示すように、インシュレータ600は、インシュレータ本体部610と、インシュレータ第一壁部620と、インシュレータ第二壁部630とを備えている。インシュレータ本体部610は、蓄電素子100のX軸プラス方向側に配置され、Y軸方向に延設されるYZ平面に平行な矩形状かつ板状の部位である。インシュレータ第一壁部620は、インシュレータ本体部610のZ軸プラス方向側の端部からX軸マイナス方向側に突出し、かつ、Y軸方向に延設される長尺状かつ板状の部位であり、蓄電素子100のZ軸プラス方向側に配置される。インシュレータ第二壁部630は、インシュレータ本体部610のZ軸マイナス方向側の端部からX軸マイナス方向側に突出し、かつ、Y軸方向に延設される長尺状かつ板状の部位であり、蓄電素子100のZ軸マイナス方向側に配置される。
【0079】
具体的には、インシュレータ本体部610は、対向部611と、延設部612とを有している。対向部611は、蓄電素子100の容器第二面111aに対向して容器第二面111aのX軸方向側に配置され、Y軸方向に延設されるYZ平面に平行な矩形状かつ板状の部位である。延設部612は、対向部611の電極端子120側(Z軸プラス方向側)の部分から、対向部611の電極端子120とは反対側(Z軸マイナス方向側)の部分よりも、Y軸方向に延設して配置される部位である。つまり、インシュレータ本体部610には、Y軸方向両側の端部のZ軸プラス方向側の部位が、Y軸方向両側に突出した形状を有している。
【0080】
また、延設部612は、凹部613と、リブ614とを有している。凹部613は、延設部612のZ軸プラス方向側の外縁が、Z軸マイナス方向に凹んだ切り欠き状の凹部である。リブ614は、延設部612の表面から突出する突出部であり、凹部613を囲うように配置されている。具体的には、リブ614は、凹部613の周囲に沿って、Z軸方向に延びる第一リブ614aと、Y軸方向に延びる第二リブ614bとを有している。なお、本実施の形態では、リブ614は、延設部612の外面から外方に突出しているが、延設部612の内面から内方に突出していてもよい。
【0081】
また、インシュレータ本体部610の内面には、第三リブ615が設けられている。第三リブ615は、対向部611のZ軸プラス方向側の端部の内面から、内方に向けて突出する突出部であり、Z軸方向に延設されて配置されている。本実施の形態では、Y軸方向に複数(11個)の第三リブ615が、等間隔で並んで配置されている。
【0082】
インシュレータ第一壁部620は、複数の押圧部である第一押圧部621及び第二押圧部622を有している。この複数の押圧部(第一押圧部621及び第二押圧部622)は、複数の蓄電素子100それぞれに対応して配置され、複数の蓄電素子100それぞれを押圧する部位であり、詳細には、対応する蓄電素子100に向けて突出する凸部である。具体的には、インシュレータ第一壁部620は、複数の押圧部として、少なくとも2つの第一押圧部621と、第二押圧部622とを有している。本実施の形態では、複数の蓄電素子100のうちの両端部の蓄電素子100に対応して、2つの第一押圧部621が配置され、当該2つの第一押圧部621の間に、複数(10個)の第二押圧部622が配置されている。
【0083】
具体的には、第一押圧部621及び第二押圧部622は、インシュレータ第一壁部620のZ軸プラス方向側の面が凹み、かつ、Z軸マイナス方向側の面が膨出した凸部であり、Y軸方向に等間隔で並んで(第三リブ615と交互に並んで)配置されている。ここで、第一押圧部621は、第二押圧部622よりも、当該凸部の突出高さが高く形成されている。つまり、第一押圧部621の突出高さH1が、第二押圧部622の突出高さH2よりも大きくなるように形成されている(
図6の(d)参照)。これにより、第一押圧部621は、第二押圧部622よりも、対応する蓄電素子100を大きな力で押圧する。なお、第一押圧部621が対応する蓄電素子100に当接し、第二押圧部622は、対応する蓄電素子100には当接しない構成でもかまわない。
【0084】
インシュレータ第二壁部630は、蓄電素子100及びスペーサ200、300が載置される部位である。これについての詳細な説明は、後述する。
【0085】
[6 サイドプレート700の詳細な説明]
次に、サイドプレート700の構成について、詳細に説明する。
図7は、本実施の形態に係るサイドプレート700の構成を示す斜視図である。具体的には、
図7の(a)は、
図2におけるX軸プラス方向側のサイドプレート700を示す斜視図であり、
図7の(b)は、
図7の(a)のサイドプレート700を裏側から見た場合の構成を示す斜視図である。なお、
図2におけるX軸マイナス方向側のサイドプレート700も、同様の構成を有している。
【0086】
図7に示すように、サイドプレート700は、サイドプレート本体部710と、サイドプレート第一壁部720と、サイドプレート第二壁部730と、サイドプレート第三壁部740とを備えている。
【0087】
サイドプレート本体部710は、インシュレータ本体部610のX軸プラス方向側に配置され、Y軸方向に延設されるYZ平面に平行な矩形状かつ板状の部位である。サイドプレート第一壁部720は、サイドプレート本体部710のY軸方向両側の端部からX軸マイナス方向側に突出し、かつ、Z軸方向に延設される長尺状かつ板状の部位であり、エンド部材400に固定される。サイドプレート第二壁部730は、サイドプレート本体部710のZ軸プラス方向側の端部からX軸マイナス方向側に突出し、かつ、Y軸方向に延設される長尺状かつ板状の部位であり、インシュレータ第一壁部620に挿入されて配置される(
図10の(b)参照)。サイドプレート第三壁部740は、サイドプレート本体部710のZ軸マイナス方向側の端部からX軸マイナス方向側に突出し、かつ、Y軸方向に延設される長尺状かつ板状の部位であり、インシュレータ第二壁部630に挿入されて配置される(
図10の(c)参照)。
【0088】
ここで、サイドプレート本体部710は、Y軸方向の両端部に、Z軸プラス方向側の外縁が凹んだ凹部711と、Z軸マイナス方向側の外縁が凹んだ凹部712とを有している。つまり、凹部711は、サイドプレート本体部710のZ軸プラス方向側の外縁が、Z軸マイナス方向に凹んだ切り欠き状の凹部であり、曲線状の外縁形状を有している。凹部712は、サイドプレート本体部710のZ軸マイナス方向側の外縁が、Z軸プラス方向に凹んだ切り欠き状の凹部であり、曲線状の外縁形状を有している。
【0089】
[7 各構成要素の位置関係の説明]
次に、蓄電素子100、スペーサ200、300、エンド部材400、インシュレータ600、及び、サイドプレート700の位置関係について、詳細に説明する。
図8は、本実施の形態に係る蓄電素子100、スペーサ200、300、エンド部材400、インシュレータ600、及び、サイドプレート700の位置関係を示す平面図及び断面図である。具体的には、
図8の(a)は、上記構成要素のY軸マイナス方向側をZ軸プラス方向から見た場合の平面図であり、
図8の(b)は、
図8の(a)の各構成要素のX軸マイナス方向側かつZ軸プラス方向側の部位の断面図である。なお、各構成要素のX軸プラス方向側の部位とX軸マイナス方向側の部位とは同様の構成を有し、Y軸プラス方向側の部位とY軸マイナス方向側の部位とは同様の構成を有している。以下についても同様である。
【0090】
また、
図9は、本実施の形態に係る蓄電素子100、スペーサ200、300、エンド部材400、インシュレータ600、及び、サイドプレート700の位置関係を示す斜視図である。具体的には、
図9の(a)は、上記構成要素のX軸プラス方向側かつY軸マイナス方向側の部位を示す斜視図であり、
図9の(b)は、
図9の(a)からサイドプレート700を取り外した場合の構成を示す斜視図である。
【0091】
また、
図10は、本実施の形態に係る蓄電素子100、スペーサ200、インシュレータ600、及び、サイドプレート700の位置関係を示す断面図である。具体的には、
図10の(a)は、上記構成要素をXZ平面で切断した場合の断面をY軸マイナス方向から見た場合の図である。また、
図10の(b)は、
図10の(a)のX軸プラス方向側かつZ軸プラス方向側の部位を拡大して示す図であり、
図10の(c)は、
図10の(a)のX軸プラス方向側かつZ軸マイナス方向側の部位を拡大して示す図である。なお、
図10の(b)及び
図10の(c)は、
図10の(a)からスペーサ200を取り外した場合の構成を示している。
【0092】
まず、
図8の(a)に示すように、スペーサ200、300の第一突起213、320は、蓄電素子100の凸部(電極端子120またはガスケット121)に沿って突出して配置されている。本実施の形態では、第一突起213、320は、ガスケット121に沿って、長尺状に延設されて配置されている。つまり、第一突起213、320は、ガスケット121のX軸方向側に対向し且つガスケット121に沿って突出する突起である。具体的には、X軸方向に並ぶ2つの第一突起213が、1つの蓄電素子100が有する2つのガスケット121の間に、当該2つのガスケット121に沿って配置されている。第一突起320についても同様である。なお、当該2つの第一突起213または当該2つの第一突起320は、2つのガスケット121を挟む位置に、2つのガスケット121に沿って配置されていてもよい。
【0093】
さらに具体的には、第一突起213、320の突出量は、蓄電素子100の容器第一面112aのY軸方向における幅の半分よりも小さく形成されている。これにより、Y軸方向において隣り合う第一突起213及び第一突起320、または、2つの第一突起213は、互いに対向して配置され、かつ、離間して配置されている。つまり、蓄電素子100を挟む2つのスペーサを一のスペーサ及び他のスペーサとし、一のスペーサは一の第一突起を有し、他のスペーサは他の第一突起を有するとした場合、一の第一突起と他の第一突起とは、互いに対向して配置され、かつ、離間して配置されている。
【0094】
また、
図8の(b)に示すように、スペーサ200、300は、X軸方向において、蓄電素子100から突出していない位置に配置されている。つまり、スペーサ200、300は、Y軸方向から見て、X軸方向において蓄電素子100の内方に配置されている。言い換えれば、スペーサ200、300は、X軸方向における幅が、蓄電素子100よりも小さく形成されている。または、スペーサ200は、容器第二面111aに対向する部位を有していないとも言える。
【0095】
また、スペーサ200、300の第二突起214、330に形成された凹凸部は、蓄電素子100と離間して配置されている。具体的には、第二突起214の凹凸部は、Y軸プラス方向側に凸部214aを有し、凸部214aのY軸マイナス方向側に凹部214bを有し、凸部214a及び凹部214bは、蓄電素子100と離間して配置されるように形成されている。さらに具体的には、凸部214aは、蓄電素子100の容器角部111dに沿って、Y軸プラス方向に突出して配置されている。つまり、凸部214aは、当該容器角部111dと離間した状態で、当該容器角部111dに向けて湾曲状に突出して形成されている。また、インシュレータ600の第三リブ615が、スペーサ200と対向する位置に配置されて、凹部214bにX軸方向から挿入されている。
【0096】
スペーサ300については、第二突起330の凹凸部は、Y軸プラス方向側に凹部331を有し、Y軸マイナス方向側に凹部332を有し、凹部331及び332は、蓄電素子100と離間して配置されるように形成されている。
【0097】
また、
図9の(a)に示すように、サイドプレート700の凹部711は、インシュレータ600の凹部613よりも大きく切り欠かれたような形状を有しており、凹部711からインシュレータ600が露出した状態となっている。つまり、凹部711は、サイドプレート本体部710のZ軸プラス方向側の外縁がインシュレータ600よりも凹んだ凹部である。
【0098】
具体的には、凹部711は、インシュレータ600のリブ614が露出するように、大きく凹んで形成されている。つまり、リブ614は、凹部711内に配置されている。これにより、第一リブ614aは、サイドプレート700よりも延設部612の延設方向側(
図9ではY軸マイナス方向側)に配置される。また、第二リブ614bは、サイドプレート700よりも電極端子120側(
図9ではZ軸プラス方向側)に配置される。
【0099】
さらに、凹部711は、エンド部材400のX軸方向側(
図9ではX軸プラス方向側)に配置されている。このため、
図9の(b)に示すように、インシュレータ600の延設部612、凹部613及びリブ614も、エンド部材400のX軸方向側に配置されている。ここで、
図8の(b)にも示したように、エンド部材400は、蓄電素子100側(Y軸プラス方向側)の角部である第一角部410と、蓄電素子100とは反対側(Y軸マイナス方向側)の角部である第二角部420とを有している。そして、第一角部410の方が、第二角部420よりも、外縁の曲率半径が大きく形成されている。つまり、第一角部410は、第二角部420よりも大きなアール形状の外縁を有している。そして、凹部711は、第一角部410よりも、外縁の曲率半径が大きく形成されている。つまり、凹部711は曲線状の外縁を有しており、当該曲線状の外縁の曲率半径が、第一角部410の外縁の曲率半径よりも大きく形成されている。
【0100】
また、
図10の(a)及び(c)に示すように、スペーサ200の本体部211のZ軸マイナス方向側の端縁は、蓄電素子100の容器110のZ軸マイナス方向側の面(容器第三面111b)よりも、Z軸マイナス方向とは反対側に配置されている。つまり、スペーサ200は、本体部211が蓄電素子100からZ軸マイナス方向側に突出しないように配置されている。ここで、スペーサ200の第三突起215のZ軸マイナス方向側の端縁は、蓄電素子100の容器第三面111bと同一平面上(
図10の(a)及び(c)の同一平面P上)に配置されている。つまり、スペーサ200は、第三突起215も、蓄電素子100からZ軸マイナス方向側に突出しないように配置されている。言い換えれば、第三突起215は、蓄電素子100のZ軸マイナス方向側の面に当接しない形状を有している。
【0101】
このような構成により、蓄電素子100のZ軸マイナス方向側の面(容器第三面111b)は、インシュレータ600のインシュレータ第二壁部630に当接して配置される。また、スペーサ200の第三突起215も、インシュレータ第二壁部630に当接して配置される。つまり、容器第三面111bと第三突起215のZ軸マイナス方向側の端縁とは、同一平面P上に配置されているため、これらをインシュレータ第二壁部630上に載置している。また、インシュレータ600は、さらに、蓄電素子100のX軸方向側の面(容器第二面111a)にも当接して配置される。なお、インシュレータ第二壁部630は、サイドプレート第三壁部740が挿入されて、蓄電素子100に対して固定されている。
【0102】
また、
図10の(a)及び(b)に示すように、インシュレータ600のインシュレータ第一壁部620に設けられた第一押圧部621及び第二押圧部622は、蓄電素子100のX軸方向の両端部をZ軸マイナス方向に向けて押圧する。なお、インシュレータ第一壁部620は、サイドプレート第二壁部730が挿入されて、蓄電素子100に対して固定されている。これにより、蓄電素子100は、容器第三面111bが冷却装置20に押し付けられて、冷却される。ここで、複数の蓄電素子100が1つのインシュレータ600によって押圧されて、インシュレータ第二壁部630上に押し付けられるため、複数の蓄電素子100の容器第三面111bが同一平面P上に揃えられて配置される。これにより、複数の蓄電素子100の容器第三面111bが冷却装置20に均等に押し付けられて、冷却される。
【0103】
なお、
図10では、スペーサ200について説明したが、スペーサ300についても同様の構成を有する。
【0104】
[8 効果の説明]
以上のように、本実施の形態に係る蓄電装置10によれば、蓄電素子100及びスペーサ200、300を接合する接合部材510、520を備えており、スペーサ200、300は、接合部材510、520が配置されるスペーサ第一面211a、311から蓄電素子100に向けて突出する第一突出部を有している。このように、接合部材510、520で蓄電素子100及びスペーサ200、300を接合する構成において、スペーサ200、300に、接合部材510、520が配置されるスペーサ第一面211a、311から蓄電素子100に向けて突出する第一突出部を設ける。これにより、蓄電素子100が膨れようとした場合に、蓄電素子100が膨れる力で接合部材510、520が圧縮されても、第一突出部が蓄電素子100の膨れを抑制することができる。また、接合部材510、520の硬度が高い等によって蓄電素子100が膨れる力で接合部材510、520が圧縮されない場合でも、蓄電素子100が接合部材510、520以外の部位に向けて膨れるおそれがある。しかし、この場合でも、第一突出部が配置されていることで、蓄電素子100が接合部材510、520以外の部位に向けて膨れるのを抑制することができる。
【0105】
また、スペーサ200、300において、第一突出部は、蓄電素子100の中央部に対向して配置される中央突出部(第一板部220、第二板部230及び中央突出部312a)を有している。つまり、蓄電素子100は、中央部が比較的大きく膨れるため、スペーサ200、300の第一突出部を蓄電素子100の中央部に対向して配置する。これにより、蓄電素子100の比較的大きく膨れる箇所において、蓄電素子100の膨れを抑制することができる。
【0106】
また、スペーサ200、300において、第一突出部は、蓄電素子100の容器110の接合部115に対向して配置される接合突出部211b、312bを有している。つまり、蓄電素子100の容器110の接合部115は、蓄電素子100が膨れた場合に、比較的損傷しやすい部分であるため、スペーサ200、300の第一突出部を接合部115に対向して配置する。これにより、接合部115を押さえて接合部115にかかる負荷を低減することで、接合部115を補強することができるため、蓄電素子100が損傷するのを抑制することができる。
【0107】
また、スペーサ200、300において、第一突出部は、スペーサ200、300のスペーサ第一面211a、311を有する部位よりも耐熱性が高い。このように、スペーサ200、300の第一突出部を耐熱性が高い部材で形成することで、蓄電素子100側方における耐熱性を向上させることができる。これにより、蓄電素子100の異常な高温時(例えば600℃等)においても、スペーサ200、300の第一突出部が変形したり溶融したりして損傷するのを抑制することができる。このため、第一突出部が有する蓄電素子100の膨れ抑制や断熱性等の機能を維持することができ、蓄電素子100の異常な高温時における不具合を抑制することができる。
【0108】
また、スペーサ200、300において、第一突出部は、スペーサ200、300のスペーサ第一面211a、311を有する部位よりも硬度が高い。このように、スペーサ200、300の第一突出部を硬度が高い部材で形成することで、第一突出部が蓄電素子100の膨れを効果的に抑制することができる。
【0109】
また、スペーサ200は、第一突出部の反対側に、スペーサ第一面211aとは反対側のスペーサ第二面211fから突出する第二突出部(接合突出部211b)を有している。このように、スペーサ200が、第一突出部の反対側にも第二突出部を有していることで、蓄電素子100が膨れようとした場合に、第一突出部及び第二突出部によって、第一突出部側の蓄電素子100の膨れをさらに抑制することができる。また、第二突出部側にも蓄電素子100が配置されているため、第二突出部側の蓄電素子100の膨れも抑制することができる。
【0110】
また、スペーサ200、300に、蓄電素子100の凸部(ガスケット121)に沿って突出する第一突起213、320を形成することで、蓄電素子100の側面を挟み込むような部位をスペーサ200、300に設けることなく、蓄電素子100とスペーサ200、300との位置決めを行うことができる。これにより、蓄電装置10の幅が大きくなるのを抑制することができ、蓄電装置10の小型化を図ることができる。
【0111】
また、スペーサ200において、蓄電素子100の側面に当接する位置に耐熱性が高い第一部材201を配置することで、蓄電素子100が高温になった場合でも、スペーサ200が変形したり溶融したりするのを抑制することができる。また、スペーサ200は、蓄電素子100を絶縁したり保持したりするために、複雑な形状になることが多いが、一般的に、耐熱性の高い部材を複雑な形状に加工するのは困難である。このため、スペーサ200が、耐熱性が高い第一部材201の端部を支持する第二部材210を有する構成とすることで、第二部材210を、蓄電素子100を絶縁したり保持したりすることができるように形成すれば、第一部材201を複雑な形状に加工する必要がない。特に、第二部材210は樹脂で形成されており、複雑な形状に形成可能であるため、蓄電素子100を絶縁したり保持したりする構造に容易に形成することができる。これにより、スペーサ200に、耐熱性の高い第一部材201を容易に配置することができる。以上のように、蓄電素子100の異常等で蓄電素子100が高温(例えば600℃等)になった場合でも、第一部材201によってスペーサ200が変形したり溶融したりするのを抑制することができるため、スペーサ200が有する蓄電素子100の膨れ抑制や断熱性等の機能を維持することができ、不具合が生じるのを抑制することができる。
【0112】
また、スペーサ200、300に、蓄電素子100のZ軸マイナス方向側に突出するが、蓄電素子100のZ軸マイナス方向側の面には当接しない形状の第三突起215、340を設け、第三突起215、340によって、スペーサ200、300の本体部211、310を、蓄電素子100のZ軸マイナス方向側の面よりも突出しない位置に配置する。これにより、スペーサ200、300の本体部211、310及び第三突起215、340が邪魔することなく、蓄電素子100のZ軸マイナス方向側の面を冷却装置20に当接させることができるため、蓄電素子100を容易に冷却することができる。
【0113】
また、スペーサ200、300を、X軸方向において蓄電素子100の内方に配置(つまり、X軸方向において蓄電素子100から突出しないように形成)することで、蓄電装置10のX軸方向の幅が大きくなるのを抑制することができる。また、スペーサ200、300のX軸方向の端部に、蓄電素子100とは離間した凹凸部を形成することで、スペーサ200、300のX軸方向の端部において、蓄電素子100と他の部材(隣りの蓄電素子100等)との間の沿面距離を長くすることができる。これにより、蓄電素子100のX軸方向の端部における絶縁を図りつつ、蓄電装置10の小型化を図ることができる。
【0114】
また、蓄電素子100において、電流が流れるのは電極端子120であるため、蓄電素子100と導電部材(サイドプレート700)との間の絶縁性を確保するには、蓄電素子100の電極端子120と当該導電部材との間の絶縁性を確保することが重要である。このため、蓄電素子100と当該導電部材との間の第一絶縁部材(インシュレータ600)において、電極端子120側の部分を延設する。これにより、蓄電素子100の電極端子120と当該導電部材との沿面距離を長くすることができるため、蓄電素子100と当該導電部材との間の絶縁性の向上を図ることができる。
【0115】
また、当該導電部材(サイドプレート700)に、Z軸プラス方向側(電極端子120側)の外縁が凹んだ凹部711を形成する。これにより、蓄電素子100の電極端子120と当該導電部材との沿面距離を長くすることができるため、蓄電素子100と当該導電部材との間の絶縁性の向上を図ることができる。
【0116】
また、押圧部材(インシュレータ600及びサイドプレート700)において、全ての蓄電素子100を大きな力で押圧するには、全ての押圧部で全ての蓄電素子100を大きな力で押し付けるように配置する必要があり、押圧部材を構成するのが困難になるおそれがあるため、押圧部による押圧力を異ならせる。このように、全ての押圧部で全ての蓄電素子100を大きな力で押し付ける必要がないため、複数の蓄電素子100を押圧する押圧部材を容易に構成することができる。
【0117】
[9 変形例の説明]
以上、本実施の形態に係る蓄電装置10について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0118】
例えば、上記実施の形態では、第一突出部は、中央突出部及び接合突出部の双方を有していることとしたが、中央突出部及び接合突出部のいずれか一方しか有していないことにしてもよい。
【0119】
また、上記実施の形態では、容器110の接合部115は、容器本体111と蓋体112との接合部であることとした。しかし、容器110が、例えば板状部材が折り畳まれる等により、2つの部位が接合されて形成されているような場合には、接合部115には、当該2つの部位が接合されて形成された接合部も含まれる。
【0120】
また、上記実施の形態では、スペーサ200の第二部材210は、第一部材201の全周に配置されていることとした。しかし、第二部材210は、第一部材201の上側の端部、右側の端部など、一部の端部にしか配置されず、当該一部の端部しか支持していない構成でもよい。
【0121】
また、上記実施の形態では、スペーサ200の第二部材210は、第一部材201とY軸方向において係合し、かつ、第一部材201を挟み込んで支持していることとした。しかし、第二部材210は、第一部材201とX軸方向またはZ軸方向において係合していることにしてもよいし、第一部材201を嵌合等によって支持していることにしてもよい。
【0122】
また、上記実施の形態では、全てのスペーサ200が上記の構成を有していることとしたが、いずれかのスペーサ200が上記と異なる構成を有していることにしてもよい。スペーサ300や、蓄電素子100、インシュレータ600及びサイドプレート700についても同様である。
【0123】
また、上記実施の形態及びその変形例が備える各構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0124】
また、本発明は、このような蓄電装置10として実現することができるだけでなく、スペーサ200、300としても実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子を備えた蓄電装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0126】
10 蓄電装置
100 蓄電素子
110 容器
111a 容器第二面
111b 容器第三面
111c 容器第四面
111d 容器角部
112a 容器第一面
115 接合部
120 電極端子
121 ガスケット
200、300 スペーサ
201 第一部材
210 第二部材
211、310 本体部
211a、311 スペーサ第一面
211b、312b 接合突出部
211c 第一凹部
211d 挟込部
211e 第二凹部
211f、313 スペーサ第二面
212 開口部
213、320 第一突起
214、330 第二突起
214a 凸部
214b、331、332 凹部
215、340 第三突起
221 係合部
240、510、520、530 接合部材
312 第一突出部
312a 中央突出部
600 インシュレータ