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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】電子装置および電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20221206BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20221206BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20221206BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20221206BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20221206BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20221206BHJP
【FI】
H01L23/30 B
H01L23/28 L
H05K3/28 G
H05K3/28 B
C08L63/00
C08K3/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018058055
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2019068030
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2017188094
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】柳原 一欽
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-054667(JP,A)
【文献】特開平11-054662(JP,A)
【文献】特開昭64-037075(JP,A)
【文献】特開2015-126181(JP,A)
【文献】特開2015-156466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 23/28
H05K 3/28
C08L 63/00
C08K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品(3、4)がはんだ(5、6)を用いて実装されたプリント基板(2、20)と、
前記プリント基板が格納される筐体(1)と、
前記筐体内に形成され、前記プリント基板の両面にそれぞれ実装された前記電子部品に対してそれぞれ前記プリント基板から離間した方向に前記電子部品を含む部分を覆う第1樹脂層(7a、8a)、および、前記第1樹脂層に対して前記プリント基板から離間した方向に接する第2樹脂層(7b、8b)を有する第1封止部(7)および第2封止部(8)とを備え、
前記第1および第2封止部は、前記第1樹脂層の線膨張率が、前記第2樹脂層の線膨張率よりも小さくなるように形成され
前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とは、同一の材料から成る電子装置。
【請求項2】
前記第1樹脂層は、線膨張率が20ppm以下に設定されている請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記プリント基板(20)は、基材の弾性率が5~15GPaの範囲に設定されている請求項1または2記載の電子装置。
【請求項4】
前記プリント基板の一方の面には、前記電子部品を囲む枠状部材(12)が設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項5】
電子部品(3、4)がはんだ(5、6)を用いて実装されたプリント基板(2、20)を筐体内に格納し、前記プリント基板を封止部で覆うように形成する電子装置の製造方法において、
前記プリント基板の一方の面に、前記電子部品を覆う高さで液状樹脂を充填し、前記液状樹脂を硬化させて下層に第1樹脂層(8a)およびその上層に第2樹脂層(8b)を有する第2封止部(8)を形成する過程と、
前記プリント基板を、前記第2封止部を下側に向けて前記筐体内に組み付ける過程と、
前記筐体内に液状樹脂を充填し、前記液状樹脂を硬化させて前記プリント基板の他方の面と接する第1樹脂層(7a)および前記第1樹脂層に積層される第2樹脂層(7b)を有する第1封止部(7)を形成するとともに、前記プリント基板の一方の面に形成された前記第2封止部を覆うように第3封止部(9)を形成する過程とを備え、
前記第1および第2封止部の前記第1樹脂層の線膨張率は、添加材の沈降により、前記第2樹脂層の線膨張率よりも小さくなるように形成される電子装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1封止部および前記第2封止部の前記第1樹脂層の線膨張率は、いずれも20ppm以下となるように形成する請求項5に記載の電子装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とは、同一の材料から成る請求項5または6に記載の電子装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2封止部を形成する過程に先立って、前記プリント基板の一方の面に前記電子部品を囲む枠状部材(11、12)を設ける過程を設けた請求項5から7のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置および電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置として、プリント基板などに電子部品を実装してケース内に配置した状態で樹脂封止をする構成のものがある。樹脂封止をするのは、電子部品を実装したプリント基板を樹脂で封止することで、防水、防塵、耐振動性を向上させるためである。この場合、一般に封止樹脂では、密着させるプリント基板・はんだ・ケースとの熱膨張による歪みを小さくするため、樹脂に無機フィラを添加している。
【0003】
しかしながら、樹脂層として液状封止材を用いる場合に、ケース内への樹脂注入から硬化までの間に、そのフィラが沈降するため、樹脂上面にはフィラを含まない層が形成されることがある。プリント基板に電子部品を両面実装で配置する電子装置を樹脂封止する場合には、プリント基板の裏面側すなわち下面側では、樹脂とプリント基板の界面にフィラを含まない層が形成される。このため、フィラを含まない樹脂層の熱膨張の歪みが大きく、電子部品を実装する部分に設けているはんだは、寿命が低下しやすくなるという課題がある。
【0004】
これに対して材料組成を変更することにより、樹脂中のフィラの沈降を抑制することができるようにした技術がある。しかし、完全に樹脂上面のフィラの沈降を抑制することは難しく、しかも、コスト面でも実用化には課題が残るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-203431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的は、樹脂に添加するフィラが樹脂硬化の際に沈降する場合でも、はんだ実装した電子部品の応力の影響によるはんだ寿命の低下を抑制できるようにした電子装置および電子装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の電子装置は、電子部品がはんだを用いて実装されたプリント基板と、前記プリント基板が格納される筐体と、前記筐体内に形成され、前記プリント基板の両面にそれぞれ実装された前記電子部品に対してそれぞれ前記プリント基板から離間した方向に前記電子部品を含む部分を覆う第1樹脂層、および、前記第1樹脂層に対して前記プリント基板から離間した方向に接する第2樹脂層を有する第1封止部および第2封止部とを備え、前記第1および第2封止部は、前記第1樹脂層の線膨張率が、前記第2樹脂層の線膨張率よりも小さくなるように形成されている。また第1樹脂層と前記第2樹脂層とは、同一の材料から成っている。
【0008】
上記構成を採用することにより、プリント基板の両面に実装した電子部品は、第1封止部および第2封止部により樹脂封止する場合に、いずれの電子部品も添加材の沈降によって線膨張率が小さく設定された第1樹脂層で覆うように形成されているので、電子部品を実装するためのはんだの劣化による不具合の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態を示す縦断側面図
図2】作用説明図(その1)
図3】作用説明図(その2)
図4】製造工程の説明図(その1)
図5】製造工程の説明図(その2)
図6】製造工程の説明図(その3)
図7】製造工程の説明図(その4)
図8】製造工程の説明図(その5)
図9】第2実施形態を示す縦断側面図
図10】製造工程の説明図(その1)
図11】製造工程の説明図(その2)
図12】製造工程の説明図(その3)
図13】第3実施形態を示す縦断側面図
図14】プリント基板の縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図1図8を参照して説明する。
電子装置の全体構成の断面を示す図1において、筐体1は、上面が開口された矩形容器状をなす樹脂製のもので、内部には2段に凹部1a、1bが形成される。開口側の凹部1aの底部に凹部1aよりも開口が狭い凹部1bが設けられている。凹部1aと凹部1bとの間に、プリント基板2を載置可能な段差部が形成される。プリント基板2には、表面2aに複数の電子部品3が実装され、裏面2bに複数の電子部品4が実装されている。プリント基板2は、例えば弾性率が16GPa程度の材料で形成されている。
【0011】
電子部品3、4は、図1ではそれぞれ1個を代表で示しているが、複数個実装されている。電子部品3、4は、トランジスタ、抵抗、コイル、コンデンサなどの種々の電子部品であり、ここでは、後述するように、それぞれはんだ5、6により面実装されている。プリント基板2は、筐体1の凹部1a内に格納され、上面2aは凹部1a内、下面2bは凹部1b内にそれぞれ面する状態とされている。
【0012】
筐体1の凹部1a内には第1封止部7が充填形成され、凹部1b内には第2封止部8および第3封止部9が形成されている。第1封止部7、第2封止部8、第3封止部9は、エポキシなどの液状樹脂にシリカなどの同じ材料からなるフィラ7c、8c、9cをそれぞれに添加材として添加したもので、同一の材料である液状樹脂を充填した状態で硬化させて形成されている。なお、第1封止部7および第3封止部9は後述するように同一の工程で形成される。
【0013】
第2封止部8は、プリント基板2の裏面2b側の表面に実装された電子部品4を覆うように設けられ、この裏面2bに接する部分が、第1樹脂層8aとして形成され、この第1樹脂層8aに重なるように第2樹脂層8bが形成されている。第1樹脂層8aにはフィラ8cが多く充填され、第2樹脂層8bにはフィラ8cがほとんど含まれていない。
【0014】
第1封止部7および第3封止部9は、同じく後述するように、プリント基板2の表面2aを上にして、筐体1内に載置した状態で液状樹脂を凹部1a、1b内に充填して硬化形成している。第1封止部7は、凹部1a内に形成され、プリント基板2の表面2aおよび電子部品3を覆うように第1樹脂層7aが形成され、この上部に接するように第2樹脂層7bが形成されている。第1封止部7に添加されたフィラ7cは硬化時に沈降するので、第1樹脂層7aにはフィラ7cが多く充填され、第2樹脂層7bにはフィラ7cがほとんど含まれていない状態となっている。
【0015】
同様に、第3封止部9は、凹部1b内に形成されるが、筐体1の内底面部に第1樹脂層9aが形成され、この上部に第2樹脂層9bが形成されている。第3封止部9に添加されたフィラ9cは硬化時に沈降し、凹部1a内からはフィラ7cがほとんど供給されないので、第1樹脂層9aにはフィラ9cが多く充填され、第2樹脂層9bにはフィラ9cがほとんど含まれない状態となっている。なお、この状態で、プリント基板2の裏面2bおよび電子部品4を覆う部分には、第2封止部8の第1樹脂層8aが形成されているので、第2樹脂層9bは、第2封止部8を除いた領域を充填するように形成されている。
【0016】
上記構成において、第1封止部7、第2封止部8、第3封止部9においては、それぞれフィラ7c、8c、9cが多く含有された部分つまり第1樹脂層7a、8a、9aでは、線膨張率αが20ppm以下となっている。これに対して、第2樹脂層7b、8b、9bでは、線膨張率αが20ppm以下とならず、20ppmを超えて例えば50ppmの範囲に及ぶ大きい値となっている。すなわち、フィラ7c、8c、9cが含有されているか否かによって線膨張率αの大きさに大きな差が発生する。第2樹脂層7b、8b、9bは、樹脂硬化の過程でフィラ7c、8c、9cが沈降することで、フィラ7c、8c、9cがほとんど含まれない状態となり、線膨張率αが大きくなる傾向にある。
【0017】
この構成においては、筐体1内におけるプリント基板2は、表面2aおよび裏面2bのそれぞれに実装されている電子部品3、4は、いずれも第1封止部7、第2封止部8の第1樹脂層7a、8aにより覆われた状態に設けられている。つまり、電子部品3、4が実装された部分には、フィラ7c、8cが充填された線膨張率αが20ppm以下の第1樹脂層7a、8aが設けられている。
【0018】
図2および図3は、プリント基板2に実装した電子部品3および4の近傍の第1封止部7、第2封止部8について、その構成を断面で模式的に示している。プリント基板2には、表面2aに電子部品3、裏面2bに電子部品4がそれぞれはんだ5、6により面実装されている。この場合、プリント基板2には、表面2aおよび裏面2bに、銅箔などをパターニングして形成したランド5a、6aが電子部品3、4に対応して配置されている。電子部品3および4は、それぞれの電極3a、4aとプリント基板2のランド5a、6aとの間を、はんだ5、6により電気的に接続された状態に実装されている。
【0019】
図2に示すように、第2封止部8は、プリント基板2の裏面2bを上向きに配置し、上から液状樹脂を供給配置して硬化させて形成している。このとき、電子部品4を配置した領域は、後述するように、液状樹脂が流れないように囲いが装着されている。フィラ8cを添加した液状樹脂をプリント基板2の裏面2b上に供給配置して硬化する際に、液状樹脂内に包含されている気泡8dは上方に浮かびあがり、フィラ8cは重力により沈降する傾向にある。
【0020】
これにより、硬化後の第2封止部8は、気泡8dが少なくフィラ8cが多く充填された第1樹脂層8aと、フィラ8cが少ない第2樹脂層8bとが積層した状態に形成される。この場合、第1樹脂層8aは、電子部品4およびこれを実装するためのはんだ6を内包した状態に形成されている。
【0021】
次に、図3に示すように、第1封止部7は、プリント基板2の表面2aを上向きにして筐体1内に配置し、上から液状樹脂を供給配置して硬化させて形成している。フィラ7cを添加した液状樹脂をプリント基板2の裏面2b上に供給配置して硬化させる際に、液状樹脂内に包含されている気泡は上方に浮かびあがり、フィラ7cは重力により沈降する。
【0022】
これにより、硬化後の第1封止部7は、気泡が少なくフィラ7cが多く充填された第1樹脂層7aと、フィラ7cが少ない第2樹脂層7bとが積層した状態に形成される。この場合、第1樹脂層7aは、電子部品3およびこれを実装するためのはんだ5を内包した状態に形成されている。
【0023】
上記のようにプリント基板2の表面2aおよび裏面2bのいずれの電子部品3、4についても、第1樹脂層7a、8aで覆われた状態に設けられるので、熱応力による歪がはんだ5、6に与える影響を低減することができ、この結果、はんだクラック率を低減させて長寿命化を図ることができる構成とすることができる。
【0024】
次に、図4図8を参照して本実施形態における電子装置の製造方法について説明する。なお、以下の説明では、樹脂封止の工程を主として述べる。図4は、プリント基板2に電子部品3および4をはんだ5および6により実装した状態を示している。プリント基板2の裏面2bを上にして、プリント基板2よりも狭い領域で、すべての電子部品4を含む領域に囲いとなる成形用の枠体11を配置している。枠体11は、枠状部材として設けられるもので、プリント基板2の裏面2bに密着させるように装着される。
【0025】
この後、図5に示すように、プリント基板2の裏面2b上にエポキシ系の液状樹脂を供給配置する。液状樹脂は、枠体11の高さを超えない量を供給する。液状樹脂にはフィラ8cが添加されている。液状樹脂が硬化していく過程で、フィラ8cは沈降する傾向にあるので、同一の材料を用いてフィラ8cを多く含む第1樹脂層8aとその上部のフィラ8cが少ない第2樹脂層8bが積層された第2封止部8が形成される。電子部品4ははんだ6とともにほぼ第1樹脂層8aに包含された状態に形成される。
【0026】
次に、図6に示すように、プリント基板2の裏面2bに装着した枠体11を取り外し、形成された第2封止部8を裏面2b上に残した状態とする。
続いて、図7に示すように、プリント基板2の表面2aを上に向けた状態で、筐体1内に収容する。プリント基板2の表面2aが凹部1a内に上向きに配置され、裏面2が凹部1b内に下向きに配置された状態となる。
【0027】
次に、図8に示すように、筐体1の凹部1a、1b内に液状樹脂を供給する。このとき、凹部1bには図示しない隙間を介して凹部1aから液状樹脂が流入して充填される。この場合、液状樹脂が硬化する過程で、凹部1a側のフィラ7cは凹部1a内で沈降するが、凹部1b側に移動する量は少ない。
【0028】
この結果、凹部1b内では、プリント基板2の裏面2bに近い部分ではフィラ9cが沈降により少なくなり、凹部1b底面側に移動した状態となる。これにより、筐体1の凹部1a内に第1封止部7が形成される。また、筐体1の凹部1b内に第2封止部8を包囲するように第3封止部9が形成される。
【0029】
このような第1実施形態によれば、プリント基板2の表面2a、裏面2bのそれぞれに電子部品3、4を実装したものに対して、電子部品3を含んだ部分にフィラ7cを沈降させた第1樹脂層7aを有する第1封止部7を設け、電子部品4を含んだ部分にフィラ8cを沈降させた第1樹脂層8aを有する第2封止部8を設ける構成とした。
【0030】
これにより、電子部品3、4を実装するはんだ5、6の部分に線膨張率αが小さい第1樹脂層7a、8aを設けることで、プリント基板2の両面において、実装している電子部品3、4のはんだクラック率の低減を抑制でき、長寿命化を図ることができる。
【0031】
また、プリント基板2の裏面2b側に第2封止部8を予め形成するので、プリント基板2を筐体1内に配置して液状樹脂で封止を行う際に、凹部1b側でフィラ9cが沈降しても電子部品4のはんだ6の部分は、第2封止部8の第1樹脂層8aを確保できる。
【0032】
(第2実施形態)
図9から図12は第2実施形態を示すもので、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。図9に示すように、この実施形態では、第1実施形態の構成に加えて、プリント基板2の裏面2bに設けた第2封止部8の側面周囲を囲うように枠体12を接着固定した構成としている。第3封止部9は、第2封止部8および枠体12を包囲するように一体に形成されている。枠体12は、枠状部材として設けられるものである。
【0033】
図10から図12は製造工程を示すもので、以下簡単に説明する。図10に示すように、プリント基板2は、電子部品3および4をはんだ5および6により実装した状態を示している。プリント基板2の裏面2bを上にして、プリント基板2よりも狭い領域で、すべての電子部品4を含む領域に囲いとなる枠体12が接着固定されている。枠体12は、例えば第1封止部7、第2封止部8、第3封止部9の線膨張率αを考慮して同程度の線膨張率αを有する樹脂製の材料を使用しており、プリント基板2の裏面2bに密着させ、内部に封止樹脂8を充填形成する高さに対応した高さに接着されている。
【0034】
次に、図11に示すように、プリント基板2の裏面2b上にエポキシ系の液状樹脂を供給配置する。液状樹脂は、枠体12の高さを超えない量を供給する。液状樹脂にはフィラ8cが添加されている。液状樹脂が硬化していく過程で、フィラ8cは沈降する傾向にあるので、フィラ8cを多く含む第1樹脂層8aとその上部のフィラ8cが少ない第2樹脂層8bが積層された第2封止部8が形成される。電子部品4ははんだ6とともにほぼ第1樹脂層8aに包含された状態に形成される。なお、この実施形態では、プリント基板2の裏面2bに装着した枠体12はそのまま残した状態とする。
【0035】
続いて、図12に示すように、プリント基板2の表面2aを上に向けた状態で、筐体1内に収容する。プリント基板2の表面2aが凹部1a内に上向きに配置され、裏面2が凹部1b内に下向きに配置された状態となる。この状態で、筐体1の凹部1a、1b内に液状樹脂を供給し、第1実施形態と同様にして第1封止部7および第3封止部9を形成する。この結果、図9に示した構成の電子装置が形成される。
【0036】
このような第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、この実施形態では、枠体12をプリント基板2に装着したまま第1封止部7および第3封止部9を形成するので、枠体12を取り外す手間を省くことができる。
【0037】
(第3実施形態)
図13および図14は第3実施形態を示すもので、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、プリント基板2に代えて、プリント基板20を用いる構成としている。
【0038】
全体の構成としては、図13に示すように、プリント基板20を用いる構成としたことを除くと、第1実施形態の構成とほぼ同じである。プリント基板20は、図14にも断面で示すように、基材21、22、23を有する三層構造となっている。
【0039】
基材21は、プリント基板20のコア層を構成するもので、例えば弾性率が16GPa程度のものを用いている。この場合、基材21は、第1実施形態で使用したプリント基板2とほぼ同じ材料を用いている。基材22、23は、基材21の両面に貼り合わせるように設けられた層で、弾性率が基材21よりも小さく、5~15GPa程度のものを用いている。
【0040】
上記のようなプリント基板20を用いることで、プリント基板20に実装した電子部品3、4について、はんだ5、6に対する封止樹脂7、8からの応力を受けたときに、基材22、23が、従来相当のプリント基板2の弾性率である16GPaのものよりも小さい弾性率5~15GPa程度の範囲に設定されているので、はんだ5、6への応力を緩和することができる。これによって、さらにはんだクラック率を低減して長寿命化を図ることができるようになる。
【0041】
(他の実施形態)
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能であり、例えば、以下のように変形または拡張することができる。
【0042】
上記各実施形態においては、筐体1の凹部1a、1bを上面に向けた状態を基準としてプリント基板2、20の表面2a、20a、裏面2b、20bを規定したが、電子装置として筐体1を図1のように配置して使用することを前提とするものではなく、適宜の配置状態を適用することができる。
【0043】
第1実施形態で示した枠体11や第2実施形態で示した枠体12は、プリント基板2の裏面2bに配置して第2封止部8を形成することができれば、適宜の形状のものを使用することができる。
第3実施形態で使用したプリント基板20は、第2実施形態においてもプリント基板2に代えて使用することができる。
【0044】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0045】
図面中、1は筐体、1a、1bは凹部、2、20はプリント基板、3、4は電子部品、5、6ははんだ、7は第1封止部、8は第2封止部、9は第3封止部、7a、8a、9aは第1樹脂層、7b、8b、9bは第2樹脂層、7c、8c、9cはフィラ(添加材)、11、12は枠体(枠状部材)、21、22、23は基材である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14