(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】荷電装置
(51)【国際特許分類】
B03C 3/74 20060101AFI20221206BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20221206BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20221206BHJP
F24F 7/003 20210101ALI20221206BHJP
H01T 15/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B03C3/74 E
A61L9/00 Z
B03C3/40 A
F24F7/003 100
H01T15/00 A
(21)【出願番号】P 2018069229
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永吉 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】栗田 加奈絵
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-222678(JP,A)
【文献】登録実用新案第3198890(JP,U)
【文献】特開平07-108192(JP,A)
【文献】特開平11-151454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00 - 3/88
A61L 9/00 - 9/22
F24F 7/00 - 7/007
F24F 11/00 - 11/89
H01T 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極と、
前記放電電極に対向して配置される対向電極と、
前記放電電極に電圧を印加する電圧印加部と、
前記放電電極と前記対向電極間の放電電圧値を計測する放電電圧計測部、および、前記放電電極と前記対向電極間の放電電流値を計測する放電電流計測部、および、前記放電電極と前記対向電極間の放電抵抗値を計測する放電抵抗計測部のうちの少なくとも一つを含む計測部と、
前記計測部で
分単位の時間間隔で計測された複数の計測値を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記複数の計測値において、計測値が複数回連続して増加する単調増加から計測値が複数回連続して減少する単調減少へ変化、または、計測値が複数回連続して減少する単調減少から計測値が複数回連続して増加する単調増加へ変化する、変化点の有無を判定するとともに、前記変化点を有すると判定された場合に、前記放電電極に付着した付着物の量が多いと判定する判定部と、
を備えることを特徴とする荷電装置。
【請求項2】
前記電圧印加部への通電開始から前記変化点が生じるまでの経過時間を計時する計時部を備え、
前記判定部は、前記計時部で計時された前記経過時間に基づいて、前記放電電極に付着した付着物の量の程度を判定することを特徴とする請求項1に記載の荷電装置。
【請求項3】
前記放電電極に付着した付着物を除去する第1の除去部を備え、
前記第1の除去部は、前記放電電極への高電圧印加によりスパッタリングを発生させる第1の除去運転を行うことを特徴とする請求項2に記載の荷電装置。
【請求項4】
前記経過時間が所定の閾値の範囲内である場合には、前記第1の除去部による前記第1の除去運転を行い、前記経過時間が所定の閾値の範囲外である場合には、前記放電電極の清浄化を要することを報知部により報知する、もしくは、前記放電電極に付着した付着物を除去する第2の除去部による第2の除去運転を行う、ことを特徴とする請求項3に記載の荷電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放電電極と対向電極との間でコロナ放電を発生させ、空気中の微粒子を帯電させる荷電装置が知られている。このような荷電装置は、荷電された微粒子を集塵する電気集塵装置や、放電によって発生するオゾンを用いた空気清浄機などに用いられている。このような荷電装置の放電電極に、タバコの煙などの油煙といった付着物が付着すると、放電が発生しにくくなって荷電効率が低下し、集塵性能や脱臭性能が低下する。そこで、放電電極に付着した付着物を除去するためのクリーニング運転を行うことで、荷電効率を維持させる技術が開示されている(例えば特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-069450号公報
【文献】特開平11-151454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、放電電極に付着している付着物が少ないときには、荷電効率の低下はほとんどないため、クリーニング運転を行う必要はほとんどない。そこで、上述の特許文献1および2では、クリーニング運転を開始する判断基準として、放電電流や放電電圧を計測し、計測値が予め設定された閾値を超えた場合に付着物が多いと判定してクリーニング運転を行う。しかしながら、放電電流や放電電圧は湿度の高さなどの運転環境の違いにより変動しやすく、上述の特許文献1および2では、予め設定された閾値とすべき値が運転環境に応じて変動するため、判定する際に誤判定しやすいという問題がある。また、放電電流や放電電圧は、運転開始直後の変動量が大きいため、判定に用いる計測値が安定するまでに時間を要するという問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、放電電極に付着した付着物を除去する必要があるか否かの判定を適切に行いつつ、判定にかかる時間を短くすることができる荷電装置、荷電装置を備える電気集塵装置、および空気清浄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明の実施形態の荷電装置の一例は、放電電極と、放電電極に対向して配置される対向電極と、放電電極に電圧を印加する電圧印加部と、放電電極と対向電極間の放電電圧値を計測する放電電圧計測部、および、放電電極と対向電極間の放電電流値を計測する放電電流計測部、および、放電電極と対向電極間の放電抵抗値を計測する放電抵抗計測部のうちの少なくとも一つを含む計測部と、計測部で計測された計測値の時間による変化を記憶する記憶部と、記憶部に記憶された計測値が、単調増加から単調減少へ変化、または、単調減少から単調増加へ変化する、変化点の有無を判定するとともに、変化点を有すると判定された場合に、放電電極に付着した付着物の量が多いと判定する判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態の一例によれば、放電電極に付着した付着物を除去する必要があるか否かの判定を適切かつ速やかに行うことができる荷電装置、荷電装置を備える電気集塵装置、および空気清浄機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の空気清浄機の概略構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態の電気集塵装置の概略構成図である。
【
図3】
図3は、実施形態の空気清浄機の荷電部用高圧電源および制御基板の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態の空気清浄機の制御手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態の空気清浄機の放電抵抗初期値記憶処理を示すサブルーチンである。
【
図6】
図6は、実施形態の空気清浄機の放電抵抗計算処理を示すサブルーチンである。
【
図7】
図7は、実施形態の空気清浄機の変化点判定処理を示すサブルーチンである。
【
図8】
図8は、実施形態の空気清浄機のクリーニングモード運転処理を示すサブルーチンである。
【
図9】
図9は、実施形態の空気清浄機のお手入れ報知処理を示すサブルーチンである。
【
図10】
図10は、荷電部放電電極の汚れ量と電圧との関係を示す図である。
【
図11】
図11は、汚れが付着した放電電極の通電後の放電特性の変化を示す図である。
【
図12】
図12は、付着した汚れが少ない場合の放電電流の通電後の放電特性の変化を示す図である。
【
図13】
図13は、付着した汚れが多い場合の放電電極の通電後の放電特性の変化を示す図である。
【
図14】
図14は、汚れが付着した放電電極の荷電量の経過時間に応じた変化を示す図である。
【
図15】
図15は、放電電極の放電抵抗の経過時間に応じた変化を示す図である。
【
図16】
図16は、モニタ電圧の経過時間に応じた変化を示す図である。
【
図17】
図17は、放電電極の放電電流の経過時間に応じた変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付して説明する。以下の実施形態では、開示の技術にかかる荷電装置を、空気清浄機が備える電気集塵装置に適用した場合を示す。しかし、これに限られず、開示の技術にかかる荷電装置を、例えば、放電によりオゾンを発生させる空気清浄機に適用してもよい。
【0010】
図1は、実施形態の空気清浄機の概略構成図であり、
図2は、実施形態の電気集塵装置の概略構成図である。
図1および
図2に示すように、空気清浄機1は、室内の空気を吸引する吸込口2と、吸引された空気から大きな塵埃を除去するプレフィルタ3と、プレフィルタ3を通過した空気中の塵埃を集塵する複数の電気集塵装置4と、電気集塵装置4を通過した空気を脱臭処理する脱臭フィルタ5と、脱臭フィルタ5の下流側に配置されるファン6(送風機)と、ファン6を回転させるファンモータ7と、プレフィルタ3と電気集塵装置4と脱臭フィルタ5により清浄された空気を室内に吹き出す吹出口8と、電気集塵装置4やファンモータ7を制御する制御部93を有する制御基板9と、電気集塵装置4の荷電部41に電力を供給する荷電部用高圧電源10(荷電用電源部)と、電気集塵装置4の集塵部42に電力を供給する集塵部用高圧電源11(集塵用電源部)と、運転開始操作、運転停止操作、風量設定などを行う操作表示基板12と、吸込口2から吸引された空気の塵埃濃度を検出する埃センサ13(塵埃検出手段)と、を備える。荷電部用高圧電源10は複数の電気集塵装置4の各々が備える荷電部41、つまり複数の荷電部41に対し個別に電力を供給するもので、この荷電部用高圧電源10に電力を供給するものが本発明の電源部94である。
【0011】
そして、空気清浄機1は、ファンモータ7により駆動されるファン6の回転により、吸込口2から室内空気を吸引し、プレフィルタ3、電気集塵装置4、脱臭フィルタ5を通過しながら空気を清浄し、清浄された空気を吹出口8より室内に吹き出す。
【0012】
なお、本実施形態の空気清浄機1には、電気集塵装置4が3個内蔵されているが、電気集塵装置4の個数は3個に限定されるものではなく、1個や2個でもよいし、4個以上であってもよい。また、空気清浄機1の風量設定には、操作表示基板12の操作に基づいて手動で風量を切換える手動風量設定と、埃センサ13の検出信号と、予め記憶されている埃閾値1と埃閾値2(埃閾値1<埃閾値2)を比較して、適切な風量に自動で切換える自動風量設定とがあり、いずれか一方を選択することができる。
【0013】
図2に示すように、電気集塵装置4は、荷電部41と集塵部42とを備える。荷電部41は、ワイヤやニードルなど、細くまたは鋭利な形状をした荷電部放電電極41aと、荷電部放電電極41aと異なる極性をもった平板状の荷電部対向電極41bとを所定の間隔をあけて交互に配置されている。集塵部42は、平板電極を多数枚平行に配列し、交互に異なる極性の高電圧が印加されるよう電気的に接続した構造であり、本実施例においては、荷電部放電電極41aと同極性のものを集塵部高圧電極42b、荷電部対向電極41bと同極性のものを集塵部捕集電極42aと呼ぶ。
【0014】
荷電部41の荷電部放電電極41aと荷電部対向電極41bは、電源14から電源部94を介して荷電部用高圧電源10により高電圧が印加される。荷電部用高圧電源10は、制御基板9に搭載された制御部93により荷電部スイッチ91a、91b、91cを介して駆動、制御される。
【0015】
集塵部42の集塵部捕集電極42aと集塵部高圧電極42bは、電源14から電源部94を介して集塵部用高圧電源11により高電圧が印加される。集塵部用高圧電源11は、制御基板9に搭載された制御部93により集塵部スイッチ92を介して駆動、制御される。
【0016】
荷電部用高圧電源10は、電気集塵装置4の内蔵個数と同数が設けられており、各電気集塵装置4の荷電部41と1対1に対応して接続される。集塵部用高圧電源11は、電気集塵装置4の内蔵個数に拘らず1つであり、すべての集塵部42が並列に接続される。
【0017】
次に、電気集塵装置4内における塵埃の捕集作用について説明する。
【0018】
荷電部41の荷電部放電電極41aに正極の高電圧を印加し、荷電部対向電極41bを荷電部用高圧電源10の接地極に接続すると、コロナ放電が起こり、この電極間には、電子と空気分子が正に帯電したイオンが満たされる。このうち電子は、荷電部放電電極41aに到達し、荷電部用高圧電源10に向かって流れる。このときの荷電部41全体での電流を0.025mAとすると、電極間にはこの電流値に対応してイオンが発生する。また、電流が0.025mAとなるようにコロナ放電を安定に起こす電圧が5kVを下回るように、荷電部放電電極41aの形状、例えばワイヤ形状の場合に、線径を0.1mmにするなど、設定することが可能である。
【0019】
この正イオンで満たされた空間を塵埃が通過する際、その通過時間と荷電部放電電極41aと荷電部対向電極41bとで作られる電界の強さに応じて、イオンと塵埃の衝突による電荷の移動が起こり、塵埃に正の電荷が帯電する。
【0020】
一方、集塵部42の集塵部高圧電極42bに例えば5kVを印加し、集塵部捕集電極42aを集塵部用高圧電源11の接地極に接続すると、両電極の間隔が2mmであれば、25kV/cmの静電界が形成される。荷電部41で正に帯電した塵埃は、集塵部42に移動すると、静電界により塵埃と反対極性の集塵部捕集電極42aに吸引される方向に力を受ける。
【0021】
空気中を浮遊する塵埃は、空気抵抗により直ちに終端速度に到達し、流れ方向と集塵部捕集電極42a方向の速度成分を持った等速運動となる。集塵部捕集電極42a方向の速度成分は、塵埃の電荷量と電界強度に比例し、流れ方向の速度と集塵部42の奥行で定まる集塵部42の通過時間内に、集塵部捕集電極42aに到達した塵埃が捕集される。空気中を浮遊する塵埃は十分に小さく、拡散の影響を受けるので、集塵部捕集電極42aから遠ざかる方向に動くものもあり、集塵部42を通過している間にすべての塵埃が捕集されるわけではないが、空気清浄機1の運転中、捕集されなかった塵埃は繰り返し空気清浄機1内に取り込まれて電気集塵装置4を通過することになるので、捕集されずに集塵部42を通過する塵埃の量は、空気清浄機1の運転開始からの時間の経過にともない指数関数的に減少していく。
【0022】
ここで、捕集率を高める方法のひとつは、塵埃の電荷量を高めることであり、荷電部41内のイオンの数を増やすことである。安定した集塵能力を得るため、荷電部用高圧電源10には、荷電部放電電極41aに印加する正極の高電圧を一定に保つ特性が求められる。
【0023】
捕集率を高める別の方法は、集塵部42の電界の強度を上げることであり、異常放電を起こさない範囲で極力高く、集塵部高圧電極42bと集塵部捕集電極42aとの間の電位差を保つため、集塵部用高圧電源11には、出力電圧を一定に保つ特性が求められる。また、家庭用空気清浄機で処理する空気の塵埃濃度は、例えば0.1mg/m3と低いので、集塵部42で捕集される塵埃の電荷量により流れる電流は小さく、集塵部用高圧電源11の電流容量は例えば0.01mAのように小さくてよい。
【0024】
家庭用空気清浄機において必要とされる処理風量、例えば3~8m3/分は、上記出力の荷電部用高圧電源10に対応する電気集塵装置4を1~3個内蔵することで対応可能であるが、本発明はこれに限定したものではなく、4個以上など空気清浄機が必要とされる能力に応じて電気集塵装置4の個数を適宜変更してもよい。または、荷電部41を2以上複数個設けて、集塵部42を1個だけにして、集塵部42の風上側に複数の荷電部41を配置するようにしてもよい。
【0025】
次に、
図3を用いて、本発明の空気清浄機1の荷電部用高圧電源10および制御基板9について説明する。
図3は、実施形態の空気清浄機の荷電部用高圧電源および制御基板の構成を示すブロック図である。なお、制御基板9には、荷電部用高圧電源10、集塵部用高圧電源11、およびファンモータ7へ電力を供給するファンモータ電源(不図示)を制御する制御部が含まれるが、
図3では、荷電部用高圧電源10を制御する制御部93以外の図示を省略している。
【0026】
荷電部用高圧電源10は、入力部10a、昇圧部10b、出力部10c、電圧検出部10d、電流検出部10eを有する。入力部10aには、電源14から例えば12Vの直流電源電圧が入力される。昇圧部10bは、入力部10aを介して入力された直流電源電圧を、スイッチング制御により第1の電圧に昇圧する。昇圧部10bで昇圧された直流電圧は、出力部10cを介して荷電部41の荷電部放電電極41aと荷電部対向電極41bに印加される。
【0027】
また、昇圧部10bは、入力部10aが制御部93から出力された後述の「クリーニングモード運転信号」の入力を受け付けている間は、空気清浄機1の電源が自動または手動でオフにされたとしても、入力部10aを介して入力された直流電源電圧を、スイッチング制御により第1の電圧よりも高い第2の電圧に昇圧し、出力部10cを介して荷電部41の荷電部放電電極41aと荷電部対向電極41bに印加し続ける。このようにして、空気清浄機1において、荷電部放電電極41aに付着した付着物の除去を、荷電粒子によるスパッタリング(放電電極に高電圧を印加することにより、荷電粒子が放電電極の表面を覆う付着物に穴を開け、さらに継続的に高電圧を印加することで、付着物にできた穴が徐々に広がり、付着物が除去される現象)により行うクリーニング(清浄化)モード運転が実行される。
【0028】
ここで、実施形態の空気清浄機1は、油分が少なくサラサラした性状の塵埃のみならず、タバコの煙のような油煙も捕集対象としている。このため、荷電部放電電極41aに付着する付着物は、タバコの煙などのような油煙を含んだ塵埃となる。
【0029】
次に、制御基板9について説明する。制御基板9は、制御部93、記憶部93dを有する。記憶部93dは、揮発性半導体記憶装置を一例とする内部記憶装置または半導体を記憶媒体とする不揮発性の外部記憶装置である。記憶部93dは、湿度換算表(不図示)を格納する。湿度換算表は、放電抵抗が湿度に応じて変化するため、湿度センサ93eにより取得された現在の湿度における放電抵抗値を、所定の基準湿度における放電抵抗値へ補正するための補正値を、各々の湿度に対応付けて格納しているテーブルである。また、記憶部93dは、後述するように、各種の計測値、取得値、算出値(放電抵抗初期値、電圧値/電流値、放電抵抗値Rtなど)、変化点フラグ、閾値超過フラグ、カウンタ、各種閾値などを記憶する記憶領域(不図示)を有する。各種の計測値、取得値、算出値は、計測タイミング、取得タイミング、算出タイミング毎に、時系列で記憶部93dに記憶される。
【0030】
湿度センサ93eは、空気清浄機1の外部周辺の相対湿度を取得するためのセンサである。報知部93fは、空気清浄機1の使用者に対して、空気清浄機1の運転状態や荷電部41への通電が継続していることを示す情報やお手入れ報知を含む後述の各種報知を行う。あるいは、報知部93fは、後述の変化点を有する場合には荷電部放電電極41aに付着物が付着していると報知し、後述の変化点を有さない場合には荷電部放電電極41aに付着物が付着していないと報知する。例えば、報知部93fは、LED(Light Emitting Diode)、ディスプレイ、音声出力部などを含む。湿度センサ93eおよび報知部93fは、空気清浄機1に設けられ、制御部93に接続されている。
【0031】
制御部93は、マイクロプロセッサなどの処理装置である。制御部93は、放電抵抗計算部93a、変化点判定部93b、運転制御部93cを有する。放電抵抗計算部93aは、後述の放電抵抗初期値記憶処理(
図5参照)、放電抵抗計算処理(
図6参照)を実行する。変化点判定部93bは、後述の変化点判定処理(
図7参照)を実行する。運転制御部93cは、後述のクリーニングモード運転処理(
図8参照)、お手入れ報知処理(
図9参照)や、空気清浄機1の空気清浄処理の運転制御を行う。
【0032】
[空気清浄機の制御手順]
図4は、実施形態の空気清浄機の制御手順を示すフローチャートである。実施形態の空気清浄機1の制御手順は、制御部93により、空気清浄機1の運転開始を契機として実行される。なお、以下の
図4~
図9のフローチャートでは、一例として、放電抵抗が単調増加から単調減少へ転じる点を後述の変化点としている。変化点の有無を確認する対象の測定値が荷電部用高圧電源10の電圧(モニタ電圧)である場合には、変化点の態様は放電抵抗と同様になる(後述の
図15および
図16参照)。その一方、変化点の有無を確認する対象の測定値が荷電部41の放電電流である場合には、変化点の態様は、放電抵抗の特性とは反転した、単調減少から単調増加へ転じる点となる(後述の
図17参照)。
【0033】
先ず、制御部93の運転制御部93cは、空気清浄機1の運転開始に応じて、電気集塵装置4の運転を開始する(ステップS10)。次に、制御部93の放電抵抗計算部93aは、放電抵抗初期値記憶処理を実行する(ステップS20)。放電抵抗初期値記憶処理の詳細は、後述する。
【0034】
次に、制御部93の変化点判定部93bは、変化点フラグ=0および閾値超過フラグ=0のように、これらのフラグをリセットする(ステップS30)。次に、放電抵抗計算部93aは、放電抵抗計算処理を実行する(ステップS40)。放電抵抗計算処理の詳細は、後述する。
【0035】
次に、変化点判定部93bは、後述する変化点判定処理を実行する(ステップS50)。次に、運転制御部93cは、空気清浄機1の運転停止指示が入力されたか否かを判定する(ステップS60)。運転制御部93cは、空気清浄機1の運転停止指示が入力された場合には(ステップS60:Yes)、ステップS70へ処理を移す。一方、運転制御部93cは、空気清浄機1の運転停止指示が入力されていない場合には(ステップS60:No)、ステップS40へ処理を移す。
【0036】
次に、変化点判定部93bは、変化点フラグ=1または変化点フラグ=2であるか否かを判定する(ステップS70)。変化点判定部93bは、変化点フラグ=1または変化点フラグ=2である場合には(ステップS70:Yes)、ステップS80へ処理を移す。一方、変化点判定部93bは、変化点フラグ=1および変化点フラグ=2のいずれでもない場合には(ステップS70:No)、ステップS90へ処理を移す。
【0037】
ステップS80では、運転制御部93cは、クリーニングモード運転信号を荷電部用高圧電源10へ出力する。次に、運転制御部93cは、空気清浄機1の運転停止に応じて、電気集塵装置4の運転を停止する(ステップS90)。
【0038】
[空気清浄機の放電抵抗初期値記憶処理]
図5は、実施形態の空気清浄機の放電抵抗初期値記憶処理を示すサブルーチンである。放電抵抗計算部93aは、放電抵抗初期値が記憶部93dに記憶されているか否かを判定する(ステップS21)。ステップS21は、放電抵抗初期値が記憶部93dに記憶されていないと判定した場合には空気清浄機1の初回の使用時であり、放電抵抗初期値が記憶部93dに記憶されていると判定した場合には空気清浄機1の2回目以降の使用時であると判断する処理である。放電抵抗計算部93aは、放電抵抗初期値が記憶部93dに記憶されている場合には(ステップS21:Yes)、放電抵抗初期値記憶処理を終了し、
図4のステップS30へ処理を移す。一方、放電抵抗計算部93aは、放電抵抗初期値が記憶部93dに記憶されていない場合には(ステップS21:No)、ステップS22へ処理を移す。
【0039】
ステップS22では、放電抵抗計算部93aは、空気清浄機1の通電の累積時間が所定時間(例えば24時間)経過したか否かを判定する。ステップS22は、空気清浄機1の初回運転時には、荷電部放電電極41aと荷電部対向電極41bに各々の製作時にできたバリの影響で荷電部41の放電特性が安定せず、放電抵抗を精度よく測定できないため、空気清浄機1の通電の累積時間が所定時間を経過して放電特性が安定するのを待つ処理である。放電抵抗計算部93aは、空気清浄機1の通電の累積時間が所定時間(例えば24時間)経過した場合には(ステップS22:Yes)、ステップS23へ処理を移す。一方、放電抵抗計算部93aは、空気清浄機1の通電の累積時間が所定時間(例えば24時間)経過していない場合には(ステップS22:No)、ステップS22を繰り返す。
【0040】
ステップS23では、放電抵抗計算部93aは、今回の通電の継続時間が所定時間(例えば1時間)経過したか否かを判定する(ステップS23)。ステップS23は、空気清浄機1の初回の使用時であり、通電累積時間が所定時間経過していたとしても、運転の開始直後は荷電部41の放電特性が安定しないため、空気清浄機1の今回の通電の継続時間が所定時間を経過して放電特性が安定するのを待つ処理である。放電抵抗計算部93aは、今回の通電の継続時間が所定時間(例えば1時間)経過した場合には(ステップS23:Yes)、ステップS24へ処理を移す。一方、放電抵抗計算部93aは、今回の通電の継続時間が所定時間(例えば1時間)経過していない場合には(ステップS23:No)、ステップS23を繰り返す。なお、ステップS23では、今回の通電の継続時間が1時間である場合に限られず、3~5分もしくは1~10分であってもよい。
【0041】
次に、放電抵抗計算部93aは、放電抵抗計算処理を実行する(ステップS24)。放電抵抗計算処理の詳細は、後述する。次に、放電抵抗計算部93aは、ステップS24で計算した放電抵抗を記憶部93dに記憶させる放電抵抗初期値記憶処理を実行する(ステップS25)。
【0042】
[空気清浄機の放電抵抗計算処理]
図6は、実施形態の空気清浄機の放電抵抗計算処理を示すサブルーチンである。
図6に示す放電抵抗計算処理は、
図4のステップS40、
図5のステップS24、
図8のステップS81で実行される処理である。
【0043】
先ず、放電抵抗計算部93aは、電圧検出部10dにより出力部10cを介して検出された荷電部41に印加されている電圧値、および、電流検出部10eにより出力部10cを介して検出された荷電部41を流れている電流値から電圧値/電流値を計算することにより、放電抵抗値を算出する(ステップS41)。次に、放電抵抗計算部93aは、湿度センサ93eを介して相対湿度を取得する。
【0044】
次に、放電抵抗計算部93aは、ステップS42で取得した相対湿度をもとに、記憶部93dに格納されている図示しない湿度換算表から放電抵抗値の補正値を取得し、取得した補正値でステップS41で計算した放電抵抗値を補正する(ステップS43)。次に、放電抵抗計算部93aは、ステップS41~S43で取得されるデータを、例えば1分間に10データ取得する(ステップS44)。次に、放電抵抗計算部93aは、ステップS44で取得した10データの平均を算出し、算出した平均を放電抵抗値R
tとする(ステップS45)。ただし、放電抵抗値R
tの添え字tは、空気清浄機1の運転開始後の経過時間t[分]を表し、t=1、2、3・・・である。例えばR
1は、空気清浄機1の運転開始直後の1分間において平均した放電抵抗値である。ステップS45が終了すると、放電抵抗計算部93aは、呼び出し元の
図4のステップS40、
図5のステップS24、
図8のステップS81のいずれかへ処理を戻す。
【0045】
[空気清浄機の変化点判定処理]
図7は、実施形態の空気清浄機の変化点判定処理を示すサブルーチンである。先ず、変化点判定部93bは、変化点フラグ=0か否かを判定する(ステップS51)。変化点判定部93bは、変化点フラグ=0である場合には(ステップS51:Yes)、ステップS52へ処理を移す。一方、変化点判定部93bは、変化点フラグ=0でない場合には(ステップS51:No)、ステップS57へ処理を移す。
【0046】
ステップS52では、変化点判定部93bは、R2>R1かつR3>R2であるか否かを判定する。つまり、ステップS52では、変化点判定部93bは、空気清浄機1の運転開始後の時刻t=1の放電抵抗値R1、時刻t=2の放電抵抗値R2、時刻t=3の放電抵抗値R3について、時間経過とともに放電抵抗値が大きくなっているか否かを判定する。変化点判定部93bは、R2>R1かつR3>R2である場合には(ステップS52:Yes)、ステップS53へ処理を移す。一方、変化点判定部93bは、R2>R1かつR3>R2でない場合には(ステップS52:No)、ステップS57へ処理を移す。
【0047】
ステップS53では、変化点判定部93bは、空気清浄機1の運転開始後の最新の連続する3つの時刻t=m-2、時刻t=m-1、時刻t=m[分]それぞれにおける放電抵抗値Rm-2、Rm-1、Rmについて、Rm-1<Rm-2かつRm<Rm-1であるか否かを判定する。つまり、ステップS53では、変化点判定部93bは、空気清浄機1の運転開始後の最新の3つの放電抵抗値Rm、放電抵抗値Rm-1、放電抵抗値Rm-2について、時間経過とともに放電抵抗値が小さくなっているか否かを判定する。ステップS53では、ステップS52で単調増加していた放電抵抗が極大値を取った後に単調減少に転じたか否かを判定する。ステップS53での変化点判定部93bは、Rm-1<Rm-2かつRm<Rm-1である場合には(ステップS53:Yes)、ステップS54へ処理を移す。一方、変化点判定部93bは、Rm-1<Rm-2かつRm<Rm-1でない場合には(ステップS53:No)、ステップS57へ処理を移す。
【0048】
ステップS54では、変化点判定部93bは、ステップS53での経過時間tが所定の閾値T未満であるか否かを判定する。本実施例での閾値Tは、クリーニングモード運転処理で汚れを除去可能な汚れ量に応じた時間である。すなわち、ステップS54では、ステップS53で放電抵抗が単調減少に転じるまでの時間が、クリーニングモード運転処理で汚れを除去可能な汚れ量に応じた時間よりも長いか否かを判定する。変化点判定部93bは、ステップS53での経過時間tが所定の閾値T未満である場合には(ステップS54:Yes)、ステップS55へ処理を移す。変化点判定部93bは、ステップS53での経過時間tが所定の閾値T以上である場合には(ステップS54:No)、ステップS56へ処理を移す。
【0049】
ステップS55では、変化点判定部93bは、変化点フラグ=1とセットする。また、ステップS56では、変化点判定部93bは、変化点フラグ=2とセットする。例えば、放電抵抗が運転開始後の最初の3分間(t=1、2、3)で増加し、その後停止までの間に3分間(t=n-2、n-1、n(nは、停止以前のある時刻))で連続して減少すると、最初に変化点が判定された時刻t(運転開始時点をゼロとした経過時間)に応じて、荷電部41に付着している付着物の量の程度を判定できる。ステップS54において、最初に変化点が判定された時刻t<閾値T(すなわち、変化点が生じるまでの経過時間が所定の閾値の範囲内)であれば、荷電部41に付着している付着物の量はクリーニングモード運転処理で荷電部41の付着物を除去して荷電効率を回復させることができる程度の量である(つまり、付着物の量は中程度に多い)として、変化点フラグ=1とセットする。一方、ステップS54において、最初に変化点が判定された時刻t≧閾値T(すなわち、変化点が生じるまでの経過時間tが所定の閾値の範囲外)であれば、荷電部41に付着している付着物の量はクリーニングモード運転処理では荷電部41の付着物を除去して荷電効率を回復させることができない程度の量である(つまり、付着物の量は非常に多い)として、変化点フラグ=2とセットする。ステップS55またはステップS56が終了すると、変化点判定部93bは、変化点判定処理を終了し、
図4のステップS60へ処理を移す。
【0050】
[実施形態の空気清浄機のクリーニングモード運転処理]
図8は、実施形態の空気清浄機のクリーニングモード運転処理を示すサブルーチンである。実施形態の空気清浄機のクリーニングモード運転処理では、運転制御部93cは、一例として、空気清浄機1の風量を最小にし、荷電部放電電極41aで付着物を除去するスパッタリングが発生するように、クリーニング運転制御信号を荷電部用高圧電源10へ入力し、空気清浄機1の通常の運転時よりもさらに高い電圧印加を荷電部41に対して継続的に行う。なお、クリーニングモード運転の態様はこれに限られるものではなく、荷電部放電電極41aから付着物を除去するいずれの手段であってもよい。また、荷電部用高圧電源10は、空気清浄機1の電源が自動または手動でオフにされたとしても、クリーニング運転制御信号が入力される限りは、高電圧印加を荷電部41へ行う。
【0051】
先ず、運転制御部93cは、放電抵抗計算部93aを制御して放電抵抗計算処理を実行する(ステップS81)。次に、運転制御部93cは、記憶部93dに記憶されている、
図4のステップS20で算出した放電抵抗初期値に対するステップS81で算出した放電抵抗の比である放電抵抗初期比が閾値2より大であるか否かを判定する(ステップS82)。運転制御部93cは、放電抵抗初期比が閾値2より大である場合には(ステップS82:Yes)、ステップS83へ処理を移す。一方、運転制御部93cは、放電抵抗初期比が閾値2以下である場合には(ステップS82:No)、クリーニングモード運転処理を終了し、
図4のステップS80へ処理を移す。この閾値2は、例えば汚れが付着していない状態での放電抵抗初期比とすればよく、本実施例においては1.00~1.01もしくは1.02~1.04である。
【0052】
ステップS83では、運転制御部93cは、クリーニングモード運転処理を開始してから所定時間(例えば6時間)経過したか否かを判定する。運転制御部93cは、所定時間の計時を、タイマを用いて行う。運転制御部93cは、クリーニングモード運転処理を開始してから所定時間経過した場合には(ステップS83:Yes)、ステップS84へ処理を移す。一方、運転制御部93cは、クリーニングモード運転処理を開始してから所定時間経過していない場合には(ステップS83:No)、ステップS81へ処理を移す。
【0053】
ステップS84では、運転制御部93cは、変化点フラグ=1であるか否かを判定する。運転制御部93cは、変化点フラグ=1である場合には(ステップS84:Yes)、ステップS85へ処理を移す。一方、運転制御部93cは、変化点フラグ≠1である場合には(ステップS84:No)、ステップS84へ処理を移す。
【0054】
ステップS85では、運転制御部93cは、クリーニングモード運転で放電特性が十分に回復できなかった回数をカウントするカウンタを、+1だけインクリメントする。次に、運転制御部93cは、ステップS85で+1だけインクリメントしたカウンタが例えば10より大の値となったか否かを判定する(ステップS86)。運転制御部93cは、ステップS85で+1だけインクリメントしたカウンタが10より大の値となった場合には(ステップS86:Yes)、ステップS84へ処理を移す。一方、運転制御部93cは、ステップS85で+1だけインクリメントしたカウンタが10以下の値である場合には(ステップS86:No)、クリーニングモード運転処理を終了し、
図4のステップS80へ処理を移す。
【0055】
ステップS87では、運転制御部93cは、お手入れ報知処理を実行する。お手入れ報知処理は、荷電部41への電圧印加により荷電部放電電極41aに付着している付着物の除去が見込めず、荷電部放電電極41aの放電特性が回復しない場合に、空気清浄機1の使用者に人手による荷電部放電電極41aに付着している付着物の除去を行うように報知する処理である。お手入れ報知処理の詳細は、後述する。ステップS87が終了すると、運転制御部93cは、荷電部用高圧電源10へのクリーニングモード運転信号の出力を停止するとともに、クリーニングモード運転処理を終了し、
図4のステップS80へ処理を移す。
【0056】
なお、ステップS82およびステップS83は、放電抵抗初期比>閾値2である(ステップS82:Yes)場合に、所定時間(例えば6時間)にわたり、クリーニングモード運転処理を継続することを示す。そして、所定時間(例えば6時間)にわたってクリーニングモード運転処理を実行しても、ステップS82のクリーニングモード運転処理の終了判定で終了条件が充足されなかったとき、強制的にクリーニングモード運転処理を終了する。ただし、ステップS84で変化点フラグ=1(荷電部41に付着した付着物をクリーニングモード運転処理で除去することができる程度の汚れ)である場合には、所定時間(例えば6時間)のクリーニングモード運転処理を所定回数(例えば10回)継続してもなお、ステップS82のクリーニングモード運転処理の終了判定で終了条件が充足されなかったときに、ステップS87の人手によるクリーニングの報知へと移る。なお、ステップS84で変化点フラグ=2(荷電部41に付着した付着物をクリーニングモード運転処理で除去することができない程度の汚れ)である場合には、所定時間(例えば6時間)のクリーニングモード運転処理を所定回数(例えば1回)継続し、ステップS82のクリーニングモード運転処理の終了判定で終了条件が充足されなかったときに、直ちにステップS87の人手によるクリーニングの報知へと移る。
【0057】
[実施形態の空気清浄機のお手入れ報知処理]
図9は、実施形態の空気清浄機のお手入れ報知処理を示すサブルーチンである。変化点フラグ=2(荷電部41に付着した付着物をクリーニングモード運転処理で除去することができない程度の汚れ)である場合には、荷電部41でのスパッタリングを発生させることができないので、お手入れ報知処理によりお手入れが報知される。変化点フラグ=2とセットされるのは、
図7のステップS54で“t≧閾値T”(すなわち、変化点が生じるまでの時刻tが所定の閾値の範囲外)の場合である。
【0058】
運転制御部93cは、操作表示基板12の表示部(不図示)または音声出力部(不図示)などを介して、空気清浄機1の使用者に対して、人手による電気集塵装置4のお手入れ(クリーニング)を行うように報知する(ステップS87-1)。次に、運転制御部93cは、
図8のステップS85およびステップS86で用いたカウンタをカウンタ=0として初期化する(ステップS87-2)。ステップS87-2が終了すると、運転制御部93cは、
図8へ処理を戻すとともに、
図4のステップS80へ処理を移す。
【0059】
なお、空気清浄機1は、ブラシなどを含む洗浄装置を有してもよい。そして、運転制御部93cは、ステップS87-1に代えて、電気集塵装置4の荷電部放電電極41aを洗浄装置で強制的にクリーニングを行ってもよい。
【0060】
[放電電極の汚れ量と荷電部電圧との関係]
図10は、荷電部放電電極の汚れ量と電圧との関係を示す図である。
図10は、荷電部41の入力電流を一定となるよう制御した場合における荷電部放電電極41aの汚れ量と荷電部41の電圧との関係を示した図である。
図10において、横軸は、正方向で荷電部放電電極41aの汚れ量の多さを示し、縦軸は、正方向で荷電部41の電圧の大きさを示す。
図10に示すように、荷電部放電電極41aの汚れ量が多いほど、荷電部41の電圧が上昇していることが分かる。荷電部41の入力電流を一定となるよう制御すると、荷電部41の電圧と荷電部41の放電抵抗とは比例関係にあることから、荷電部放電電極41aの汚れ量が多いほど、荷電部41の放電抵抗が上昇することになる。つまり、荷電部放電電極41aの汚れ量と荷電部41の放電抵抗とは、正の相関関係がある。
【0061】
[汚れが付着した放電電極の通電後の放電特性の変化]
図11は、汚れが付着した放電電極の通電後の放電特性の変化を示す図である。
図11は、荷電部41の入力電流を一定となるよう制御した場合における荷電部用高圧電源10の電圧(モニタ電圧)の時間(通電時間)的変化を示した図である。
図11において、横軸は、正方向で時間の経過を示し、縦軸は、正方向でモニタ電圧の大きさを示す。
図11に示すように、通電時間とともにいったん単調増加していたモニタ電圧は、例えば経過時間=30分で極大値(第1の変化点)を取り、その後、単調減少に転じる。荷電部41の入力電流を一定となるよう制御すると、荷電部41の電圧と荷電部41の放電抵抗とは比例関係にあることから、通電時間の経過に応じて、モニタ電圧が最初に単調増加して第1の変化点で極大値を取った後、単調減少に転じるということは、荷電部放電電極41aの放電抵抗が最初に単調増加して第1の変化点で極大値を取った後、単調減少に転じることと同値である。
【0062】
[付着した汚れが少ない場合の放電電流の通電後の放電特性の変化]
図12は、付着した汚れが少ない場合の放電電流の通電後の放電特性の変化を示す図である。
図12は、荷電部放電電極41aに付着している付着物の量が所定量未満の少ないとき、荷電部41の入力電圧を一定となるよう制御した場合における荷電部41の放電電流の時間(通電時間)的変化を示した図である。
図12において、横軸は、正方向で時間の経過を示し、縦軸は、正方向で放電電流の大きさを示す。
図12に示すように、荷電部放電電極41aに付着している付着物の量が所定量未満の少ないときは、通電時間とともに放電電流は単調増加するが、例えば経過時間=30分以降で、概ね一定値となる。すなわち、荷電部41の入力電圧を一定となるよう制御すると、荷電部41の電圧と荷電部41の放電電流とは反比例の関係にあることから、荷電部放電電極41aに付着している付着物の量が所定量未満の少ない場合と推定されるときには、通電開始後の所定時間経過後に放電抵抗が安定し、その結果、放電電流も安定することになる。
【0063】
荷電部放電電極41aに付着している付着物の量が所定量未満の少ない場合には、
図12に示すように、放電が継続するにつれて、水分と油分の混合である付着物の汚れ層が剥がれて穴が開き、荷電部放電電極41aの金属部分が露出、または汚れ層に突起が形成され、放電抵抗が低下し、放電電流が増加する。
【0064】
[付着した汚れが多い場合の放電電極の通電後の放電特性の変化]
図13は、付着した汚れが多い場合の放電電流の通電後の放電特性の変化を示す図である。
図13は、荷電部放電電極41aに付着している付着物の量が所定量以上の多いとき、荷電部41の入力電圧を一定となるよう制御した場合における荷電部41の放電電流の時間(通電時間)的変化を示した図である。
図13において、横軸は、正方向で時間の経過を示し、縦軸は、正方向で放電電流の大きさを示す。
図13に示すように、荷電部放電電極41aに付着している付着物の量が所定量以上の多いときは、通電時間とともにいったん放電電流は単調減少するが、経過時間が例えば8分以降で、単調増加に転じる。すなわち、荷電部41の入力電圧を一定となるよう制御すると、荷電部41の電圧と荷電部41の放電電流とは反比例の関係にあるが、荷電部放電電極41aに付着している付着物の量が所定量以上の多いときには、通電開始後の所定時間経過後に放電抵抗が単調増加するものの、その後、放電抵抗が単調減少することから、それに応じて放電電流もいったん単調減少し、その後、単調増加することになる。
【0065】
荷電部放電電極41aに付着している付着物の量が所定量以上の多い場合には、
図13に示すように、放電が継続しても、水分と油分の混合である付着物の汚れ層が厚く穴が開くのに時間がかかり、また、汚れ層から水分が蒸発して導電率が低下し放電抵抗が上昇するため、経過時間の初期において放電電流がいったん低下する。その後、汚れ層から水分が蒸発して油分だけになった状態になると、印加電圧によりスパッタリングが発生しやすくなるため、油分のみの汚れ層が剥がれていくことから放電抵抗が低下し、放電電流が増加する。
【0066】
[汚れが付着した放電電極の荷電量の経過時間に応じた変化]
図14は、汚れが付着した放電電極の荷電量の経過時間に応じた変化を示す図である。
図14は、荷電部放電電極41aに付着物が付着していないときの荷電部41の荷電量を1として、荷電部放電電極41aに付着している付着物の量が所定量以上の多い場合と推定される場合の荷電量の比(荷電量のロス)の時間的変化を示す。
図14に示すように、荷電量は、通電開始直後に低下するが、通電時間の経過とともに回復していくことが分かる。つまり、荷電部41の荷電量と荷電部41の集塵性能とは、正の相関があることが分かる。
【0067】
【0068】
[放電電極の放電抵抗の経過時間に応じた変化]
図15は、放電電極の放電抵抗の経過時間に応じた変化を示す図である。
図15は、経過時間を横軸とした放電抵抗の時間的変化を、荷電部放電電極41aに付着している付着物(汚れ)の量が、それぞれ、“汚れ(多)”、“汚れ(中)”、“汚れ(少)”である場合について示したものである。
図15に示すように、“汚れ(多)”の場合には、放電抵抗が経過時間の初期に単調増加するものの、時刻t11における変化点において単調減少に転じる。また、
図15に示すように、“汚れ(中)”の場合には、“汚れ(多)”の場合と比較して放電抵抗の値は全般的に低いものの、“汚れ(多)”の場合と同様に放電抵抗が経過時間の初期に単調増加し、時刻t12における変化点において単調減少に転じる。“汚れ(多)”および“汚れ(中)”の場合は、変化点が現れているため、荷電部放電電極41aに付着した付着物の除去(クリーニング)が必要な状態であると判定できる。
【0069】
一方、
図15に示すように、“汚れ(少)”の場合には、放電抵抗は、経過時間の初期から一貫して単調減少し、変化点が現れないため、荷電部放電電極41aに付着した付着物の除去(クリーニング)は必要ない状態であると判定できる。
【0070】
[モニタ電圧の経過時間に応じた変化]
図16は、モニタ電圧の経過時間に応じた変化を示す図である。荷電部用高圧電源10の電圧(モニタ電圧)の時間(通電時間)的変化は、荷電部放電電極41aの放電電流I=一定とした場合に、モニタ電圧が荷電部放電電極41aの放電抵抗に比例するため、
図15に示す放電抵抗の時間(通電時間)的変化と同様になる。
【0071】
すなわち、
図16に示すように、“汚れ(多)”の場合には、モニタ電圧が経過時間の初期に単調増加するものの、時刻t21における変化点において単調減少に転じる。また、
図16に示すように、“汚れ(中)”の場合には、“汚れ(多)”の場合と比較してモニタ電圧の値は全般的に低いものの、“汚れ(多)”の場合と同様にモニタ電圧が経過時間の初期に単調増加し、時刻t22における変化点において単調減少に転じる。“汚れ(多)”および“汚れ(中)”の場合は、変化点が現れているため、荷電部放電電極41aに付着した付着物の除去(クリーニング)が必要な状態であると判定できる。
【0072】
一方、
図16に示すように、“汚れ(少)”の場合には、モニタ電圧は、経過時間の初期から一貫して単調減少し、変化点が現れないため、荷電部放電電極41aに付着した付着物の除去(クリーニング)は必要ない状態であると判定できる。
【0073】
[放電電極の放電電流の経過時間に応じた変化]
図17は、放電電極の放電電流の経過時間に応じた変化を示す図である。荷電部放電電極41aの放電電流の時間(通電時間)的変化は、荷電部用高圧電源10の電圧(モニタ電圧)V=一定とした場合に、荷電部放電電極41aの放電電流が荷電部放電電極41aの放電に反比例するため、
図17に示すようになる。
図17は、経過時間を横軸とした放電電流の時間的変化を、荷電部放電電極41aに付着している付着物(汚れ)の量が、それぞれ、“汚れ(多)”、“汚れ(中)”、“汚れ(少)”である場合について示したものである。
図17に示すように、“汚れ(多)”の場合には、放電電流が経過時間の初期に単調減少するものの、時刻t31における変化点において単調増加に転じる。また、
図17に示すように、“汚れ(中)”の場合には、“汚れ(多)”の場合と比較して放電電流の値は全般的に高いものの、“汚れ(多)”の場合と同様に放電抵抗が経過時間の初期に単調減少し、時刻t32における変化点において単調増加に転じる。“汚れ(多)”および“汚れ(中)”の場合は、変化点が現れているため、荷電部放電電極41aに付着した付着物の除去(クリーニング)が必要な状態であると判定できる。
【0074】
一方、
図17に示すように、“汚れ(少)”の場合には、放電抵抗は、経過時間の初期から一貫して単調増加し、変化点が現れないため、荷電部放電電極41aに付着した付着物の除去(クリーニング)は必要ない状態であると判定できる。
【0075】
すなわち、
図15~
図17に示すように、荷電部放電電極41aの放電抵抗もしくは荷電部用高圧電源10のモニタ電圧が単調増加から単調減少へ変化する変化点、または、荷電部放電電極41aの放電電流が単調減少から単調増加へ変化する変化点のうちの少なくとも一つの変化点が存在する場合に、荷電部放電電極41aに付着している付着物(汚れ)の除去(クリーニング)の必要があると判定できる。
【0076】
以上の実施形態によれば、放電電極と放電電極に対向して配置される対向電極との間で発生する放電の放電電圧値、および、放電電流値、および、放電抵抗値のうちのいずれかの計測値に基づいて、計測値が単調増加から単調減少へ変化、または、単調減少から単調増加へ変化する変化点の有無から、放電電極に付着している付着物の量が多いか否か、すなわち、放電電極に付着している付着物の除去の要否を判定する。放電抵抗は、湿度の影響を受けるが、実施形態は、このような運転環境の影響を排除するので、放電電極に付着している付着物の除去の要否の誤判定を防止できる。
【0077】
また、変化点は、クリーニングモード運転処理の要否を数時間単位で判定していた従来技術と比較して、計測値が安定する以前のより短い時間で現れる。このため、放電電極に付着している付着物の量が多いか否かを従来技術よりもより短い時間で判定できる。よって、空気清浄機1を短時間で運転停止したり、断続的に運転したりする場合であっても、放電電極に付着している付着物の除去の要否の判定を行うことができる。
【0078】
上述の実施形態および図示の具体的名称、処理、制御、各種のデータやパラメータを含む情報については、一例を示すに過ぎず、特記する場合を除いて適宜変更することができる。また、上述の実施形態における各部もしくは各装置の構成は、処理負荷や実装効率等から適宜分散または統合されてもよい。また、上述の実施形態における各処理は、処理負荷や実装効率等から、処理順序を適宜入れ替えて実行されてもよい。
【0079】
上述の実施形態のより広範な態様は、上述のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 空気清浄機
2 吸込口
3 プレフィルタ
4 電気集塵装置
5 脱臭フィルタ
6 ファン
7 ファンモータ
8 吹出口
9 制御基板
10 荷電部用高圧電源
10a 入力部
10b 昇圧部
10c 出力部
10d 電圧検出部
10e 電流検出部
11 集塵部用高圧電源
12 操作表示基板
13 埃センサ
14 電源
41 荷電部
41a 荷電部放電電極
41b 荷電部対向電極
42 集塵部
42a 集塵部捕集電極
42b 集塵部高圧電極
91a 荷電部スイッチ
92 集塵部スイッチ
93 制御部
93a 放電抵抗計算部
93b 変化点判定部
93c 運転制御部
93d 記憶部
93e 湿度センサ
93f 報知部
94 電源部