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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/13 20190101AFI20221206BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20221206BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20221206BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221206BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20221206BHJP
   B60L 7/14 20060101ALN20221206BHJP
【FI】
B60L58/13
B60L9/18 J
G01C21/26 A
H02J7/00 P
H02J7/02 H
H02J7/00 B
B60L7/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018103719
(22)【出願日】2018-05-30
(65)【公開番号】P2019208338
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤竹 良徳
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-270404(JP,A)
【文献】特開2013-074706(JP,A)
【文献】国際公開第2010/103667(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/046250(WO,A1)
【文献】特開2013-239279(JP,A)
【文献】特開2017-154604(JP,A)
【文献】特開2009-118697(JP,A)
【文献】特開2014-231290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
G01C 21/26
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両であって、
蓄電装置と、
前記蓄電装置に蓄えられた電力を用いて走行トルクを発生可能であり、かつ、前記蓄電装置を充電するための電力を発生可能に構成されたモータジェネレータと、
前記蓄電装置のSOCが所定の制御上限を超えないように前記蓄電装置の充電を制御する制御装置とを備え、
前記蓄電装置は、
複数のセルと、
前記複数のセルの各々を個別に放電可能に構成され、前記複数のセルの蓄電量を均等化するための均等化回路とを含み、
前記制御装置は、
登坂路において前記モータジェネレータが登坂方向の走行トルクを発生しつつ前記電動車両が降坂方向へ移動する場合には、前記SOCが前記制御上限を超える充電を許容し、
前記SOCが前記制御上限を超える充電を許容したことにより前記SOCが前記制御上限を超えている場合に、前記電動車両のパワースイッチが操作されることによって前記電動車両の停止が要求されたとき、前記停止が要求されてから所定時間の経過後に前記蓄電装置を放電させる放電処理を実行し、
前記所定時間の経過前に、前記パワースイッチが操作されることによって前記電動車両の起動が要求された場合には、前記放電処理を実行せず、
前記SOCが前記制御上限を超える充電を許容したことにより前記SOCが前記制御上限を超えた状態において、前記パワースイッチの操作による前記電動車両の停止が要求されないときは、前記放電処理を実行せず、
前記放電処理は、前記均等化回路を作動させる処理、又は前記蓄電装置から電力を受ける電気機器を作動させることで前記蓄電装置を放電させる処理である、電動車両。
【請求項2】
電動車両であって、
蓄電装置と、
前記蓄電装置に蓄えられた電力を用いて走行トルクを発生可能であり、かつ、前記蓄電装置を充電するための電力を発生可能に構成されたモータジェネレータと、
前記蓄電装置のSOCが所定の制御上限を超えないように前記蓄電装置の充電を制御する制御装置と
地図情報を有するナビゲーション装置とを備え、
前記蓄電装置は、
複数のセルと、
前記複数のセルの各々を個別に放電可能に構成され、前記複数のセルの蓄電量を均等化するための均等化回路とを含み、
前記制御装置は、
登坂路において前記モータジェネレータが登坂方向の走行トルクを発生しつつ前記電動車両が降坂方向へ移動する場合には、前記SOCが前記制御上限を超える充電を許容し、
前記SOCが前記制御上限を超える充電を許容したことにより前記SOCが前記制御上限を超えている場合に、前記電動車両のパワースイッチが操作されることによって前記電動車両の停止が要求されたとき、前記ナビゲーション装置から前記電動車両の現在位置の情報を取得し、
前記現在位置が、前記パワースイッチの操作による前記電動車両の停止後に長時間の停車が予想される位置として予め設定された位置である場合に、前記蓄電装置を放電させる放電処理を実行し、
前記現在位置が前記設定された位置でない場合には、前記放電処理を実行せず、
前記SOCが前記制御上限を超える充電を許容したことにより前記SOCが前記制御上限を超えた状態において、前記パワースイッチの操作による前記電動車両の停止が要求されないときは、前記放電処理を実行せず、
前記放電処理は、前記均等化回路を作動させる処理、又は前記蓄電装置から電力を受ける電気機器を作動させることで前記蓄電装置を放電させる処理である、電動車両。
【請求項3】
前記制御装置は、登坂路において前記モータジェネレータが登坂方向の走行トルクを発生しつつ前記電動車両が降坂方向へ移動する場合に、前記蓄電装置が受入可能な電力の最大値を示す許容充電電力による前記蓄電装置の充電の制限を解除する、請求項1又は請求項2に記載の電動車両。
【請求項4】
前記蓄電装置と前記電気機器との間に設けられるシステムリレーをさらに備え
前記制御装置は、前記パワースイッチの操作に応じて前記システムリレーがオフされた後、前記均等化回路を作動させる処理を実行する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項5】
前記制御装置は、前記パワースイッチの操作に応じて前記システムリレーがオフされるまでは、前記電気機器を作動させることで前記蓄電装置を放電させる処理を実行する、請求項4に記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動車両に関し、特に、蓄電装置に蓄えられた電力を用いて走行トルクを発生するモータジェネレータを備えた電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
環境に配慮した車両として、電気自動車(EV:Electric Vehicle)やハイブリッド自動車(HV:Hybrid Vehicle)等の電動車両が知られている。電動車両は、バッテリ等の蓄電装置に蓄えられた電力を用いて走行トルクを発生する走行用モータを備える。走行用モータは、車両の制動時等に回生トルクを発生して発電可能なモータジェネレータ(以下「MG(Motor Generator)として構成されており、車両の制動時等に走行用モータをジェネレータとして作動させて蓄電装置を充電することが行なわれている。
【0003】
特開2013-48523号公報(特許文献1)には、このような電動車両において、充電ステーションからバッテリを満充電状態まで充電することが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-48523号公報
【文献】特開2013-81355号公報
【文献】国際公開第2013/046250号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓄電装置は、充電状態(SOC:State Of Charge)が高い状態で長時間放置されると劣化が促進されるため、そのような劣化促進を抑制するためにSOCの制御上限が設定され、SOCが制御上限を超えないようにSOCが制御される。具体的には、SOCが制御上限に達すると、蓄電装置が満充電状態に達したものとする等して、蓄電装置の充電が不可とされる。
【0006】
ここで、上記のような電動車両において、登坂時にMGが登坂方向のトルクを出力しているにも拘わらず車両が降坂方向に後退する場合(以下、このような状況を「ずり下がり」と称する。)、MGが発生する登坂方向のトルクとMGの回転速度とが逆符号になるので、MGは回生モード(発電)となる。この場合に、蓄電装置が充電されてSOCが制御上限に達すると、蓄電装置は充電不可とされるので、回生モードのMGは登坂方向のトルクを出すことができなくなる。一旦ブレーキをかけて車両を停止させた後、力行モードでMGを作動させることも考えられるが、この場合は、ブレーキ操作が必要となることから対応が遅れる可能性もあり、ブレーキ操作を行なうことなくこのような状況が直ちに解消されることが望ましい。
【0007】
本開示の内容は、かかる問題を解決するものであり、本開示の目的は、登坂路での車両のずり下がり状態を直ちに解消可能であり、かつ、蓄電装置の劣化を抑制可能な電動車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示における電動車両は、蓄電装置と、MGと、制御装置とを備える。MGは、蓄電装置に蓄えられた電力を用いて走行トルクを発生可能であり、かつ、蓄電装置を充電するための電力を発生可能に構成される。制御装置は、蓄電装置のSOCが所定の制御上限を超えないように蓄電装置の充電を制御する。制御装置は、登坂路においてMGが登坂方向の走行トルクを発生しつつ電動車両が降坂方向へ移動する場合(ずり下がり状態)には、SOCが制御上限を超える充電を許容する。さらに、制御装置は、SOCが制御上限を超えている場合に電動車両のシステム停止が要求されたとき、蓄電装置を放電させる放電処理を実行する。
【0009】
この電動車両においては、登坂路において車両のずり下がり状態が生じた場合に、SOCが制御上限を超える充電が許容されるので、SOCが制御上限に達したために蓄電装置が充電不可となることによりMGが登坂方向のトルク(回生トルク)を出せない状況が回避される。これにより、MGが登坂方向のトルクを出力可能となり、ずり下がり状態を脱することが可能となる。
【0010】
そして、SOCが制御上限を超える充電が許容されることにより、SOCが制御上限を超えた状態(以下、単に「高SOC状態」とも称する。)で長時間放置されると、蓄電装置の劣化が促進されるところ、この電動車両においては、高SOC状態において車両のシステム停止が要求されたときは、高SOC状態で長時間放置される可能性が高いとして、蓄電装置を放電させる放電処理が実行される。たとえば、放電処理によってSOCを制御上限まで低下させる。これにより、高SOC状態で放置されることによる蓄電装置の劣化促進を抑制することができる。
【0011】
なお、システム停止が要求されることなく単に高SOC状態である場合には(たとえば、SOCが制御上限を超える充電が許容されることによりずり下がり状態が解消した直後等)、その後の走行によってMGが蓄電装置に蓄えられた電力を消費することにより高SOC状態は解消方向へ向かうので、上記の放電処理は実行されない。
【0012】
制御装置は、登坂路においてモータジェネレータが登坂方向の走行トルクを発生しつつ電動車両が降坂方向へ移動する場合(ずり下がり状態)に、蓄電装置が受入可能な電力の最大値を示す許容充電電力(Win)による蓄電装置の充電の制限を解除するようにしてもよい。
【0013】
これにより、大きな充電電力が許容されるので、MGが発生する登坂方向のトルク(回生トルク)を増大させることができる。したがって、車両のずり下がりを解消して登坂可能とすることができる。
【0014】
電動車両は、蓄電装置と蓄電装置から電力を受ける電気機器との間に設けられるシステムリレーをさらに備えてもよい。蓄電装置は、複数のセルと、複数のセルの各々を個別に放電可能に構成され、複数のセルの蓄電量を均等化するための均等化回路とを含んでもよい。そして、放電処理は、システム停止の要求に従ってシステムリレーがオフされた後、均等化回路を作動させる処理を含んでもよい。
【0015】
このような構成により、システム停止の要求に従ってシステムリレーがオフされた後であっても、均等化回路を用いて蓄電装置を放電させることができる。
【0016】
制御装置は、システム停止が要求されると、所定の処理の実行後にシステムリレーをオフにし、放電処理は、システム停止の要求に従ってシステムリレーがオフされるまでは、電気機器を作動させることで蓄電装置を放電させる処理を含んでもよい。
【0017】
これにより、システム停止の要求に従ってシステムリレーがオフされる前においても、蓄電装置に蓄えられた電力を電気機器が消費したり蓄えたりすることで蓄電装置を放電させることができる。したがって、この電動車両によれば、システム停止の要求後、速やかに放電処理を行なってシステムを停止させることができる。
【0018】
制御装置は、SOCが制御上限を超えている場合にシステム停止が要求されたとき、システム停止が要求されてから所定時間の経過後に放電処理を実行し、所定時間の経過前に電動車両のシステム起動が要求された場合には、放電処理を実行しないように構成されてもよい。
【0019】
蓄電装置は、高SOC状態になると直ちに劣化が促進されるものでもなく、高SOC状態で長時間放置されると劣化が促進される。そこで、上記のような構成により、高SOC状態で長時間放置されることによる劣化の促進を抑制しつつ、システム停止後短時間でシステム起動が要求された場合には、蓄電装置に蓄えられた電力をシステム起動後に有効利用することができる。
【0020】
なお、放電処理を実行するか否かを決定する所定時間は、設計等の段階で予め定められた時間であってもよいし、当該電動車両を利用するユーザが設定可能としてもよい。
【0021】
電動車両は、地図情報を有するナビゲーション装置をさらに備えてもよい。そして、制御装置は、SOCが制御上限を超えている場合にシステム停止が要求されたとき、ナビゲーション装置から電動車両の現在位置の情報を取得し、現在位置が設定された所定地である場合に放電処理を実行し、現在位置が所定地でない場合には放電処理を実行しないように構成されてもよい。
【0022】
たとえば、自宅や会社等でシステム停止が要求されるような場合は、システム停止後の長時間の停車が予想される一方、コンビニエンスストアの駐車場等でシステム停止が要求されるような場合は、システム停止後短時間でシステム起動が再度行なわれることが予想される。そこで、この電動車両においては、SOCが制御上限を超えている場合にシステム停止が要求されたときに放電処理を行なう場所を所定地として設定可能とし(たとえば、長時間の停車が予想される自宅や会社等)、現在位置が所定地でない場合には、システム停止後短時間でシステム起動が再度行なわれる可能性が高いものとして、放電処理が実行されない。これにより、高SOC状態で長時間放置されることによる劣化の促進を抑制しつつ、システム停止後短時間でシステム起動が要求される場合には、蓄電装置の蓄えられた電力をシステム起動後に有効利用することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本開示に従う電動車両によれば、登坂路での車両のずり下がり状態を直ちに解消し、かつ、蓄電装置の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この実施の形態に従う電動車両の全体構成を示す図である。
図2】登坂路において電動車両のずり下がりが生じている様子を示す図である。
図3】MGの出力トルク及び回転速度の正負を4象限に分けて示した図である。
図4】蓄電装置の許容充電電力とSOCとの関係の一例を示す図である。
図5】車両のずり下がりが生じた場合の許容充電電力とSOCとの関係の一例を示す図である。
図6】蓄電装置の回路構成の一例を示す図である。
図7図6に示す放電回路の構成の一例を示す図である。
図8】ECUにより実行されるSOC制御上限拡大処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図9】SOCが制御上限を超えている場合に車両のシステム停止が要求されたとき、ECUにより実行される放電処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図10】変形例1における放電処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図11】変形例2における放電処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図12】変形例3における放電処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0026】
<電動車両の全体構成>
図1は、この実施の形態に従う電動車両の全体構成を示す図である。なお、以下では、電動車両がエンジンを搭載しない電気自動車(EV)である場合について代表的に説明されるが、本開示に従う電動車両は、エンジンを搭載するハイブリッド自動車(HV)であってもよい。
【0027】
図1を参照して、電動車両1は、蓄電装置10と、センサユニット15と、システムメインリレー(以下「SMR(System Main Relay)」と称する。)20と、パワーコントロールユニット(以下「PCU(Power Control Unit)」と称する。)30と、モータジェネレータ(以下「MG(Motor Generator)」と称する。)40と、駆動軸45と、駆動輪50とを備える。また、電動車両1は、電動エアコン55と、DC/DCコンバータ60と、補機70と、受電部75と、充電器80と、充電リレー85とをさらに備える。さらに、電動車両1は、パワースイッチ90と、ナビゲーション装置95と、電子制御装置(以下「ECU(Electronic Control Unit)」と称する。)100とをさらに備える。
【0028】
蓄電装置10は、充放電可能に構成された電力貯蔵要素である。蓄電装置10は、たとえば、リチウムイオン電池或いはニッケル水素電池等の二次電池や、電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を含んで構成される。なお、リチウムイオン二次電池は、リチウムを電荷担体とする二次電池であり、電解質が液体の一般的なリチウムイオン二次電池のほか、固体の電解質を用いた所謂全固体電池も含み得る。
【0029】
蓄電装置10は、MG40を駆動するための電力を蓄えており、PCU30を通じてMG40へ電力を供給することができる。また、蓄電装置10は、車両制動時等のMG40の発電時にPCU30を通じてMG40の発電電力を受けて充電される。さらに、蓄電装置10は、車両外部の電源200から受電部75を通じて供給される電力を受けて充電され得る(以下、電源200による蓄電装置10の充電を「外部充電」とも称する。)。
【0030】
センサユニット15は、蓄電装置10の状態を監視するためのセンサを含んで構成され、センサユニット15は、たとえば電圧センサ及び電流センサを含む。電圧センサは、蓄電装置10の電圧VBを検出し、電流センサは、蓄電装置10に流れる電流IBを検出する。各センサの検出値は、ECU100へ送信される。
【0031】
システムメインリレー20は、蓄電装置10と電力線対PL1,NL1との間に設けられ、ECU100によってオン/オフされる。
【0032】
PCU30は、コンバータ32と、インバータ34とを含んで構成される。コンバータ32は、電力線対PL1,NL1と電力線対PL2,NL2との間に設けられ、ECU100からの駆動信号に基づいて、電力線対PL2,NL2間の電圧を電力線対PL1,NL1間の電圧以上に昇圧する。コンバータ32は、たとえば、電流可逆型の昇圧チョッパ回路によって構成される。
【0033】
インバータ34は、電力線対PL2,NL2とMG40との間に設けられ、ECU100からの駆動信号に基づいてMG40を駆動する。インバータ34は、たとえば、三相分のスイッチング素子を含むブリッジ回路によって構成される。
【0034】
MG40は、交流回転電機であり、たとえば、ロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機である。MG40は、インバータ34により駆動されて回転駆動力を発生する。MG40が発生した駆動力は、駆動軸45を通じて駆動輪50に伝達される。車両の制動時等には、MG40は、ジェネレータとして作動し発電する。MG40が発電した電力は、PCU30を通じて蓄電装置10に供給される。
【0035】
電動エアコン55は、電力線対PL1,NL1に接続され、電力線対PL1,NL1から電力を受けて作動するように構成される。電動エアコン55は、ECU100からの制御信号に基づいて、電動車両1の車室内の温度調節を行なう。
【0036】
DC/DCコンバータ60は、電力線対PL1,NL1に接続され、ECU100からの制御信号に基づいて、電力線対PL1,NL1から受ける電力を補機電圧レベルに降圧して補機70へ供給するように構成される。補機70は、電動車両1に搭載される各種補機類及び補機バッテリを総括的に示したものである。
【0037】
受電部75は、車両外部の電源200から供給される電力を受電して充電器80へ出力する。受電部75は、電源200に接続される充電ケーブルのコネクタを接続可能なインレットによって構成してもよいし、電源200側に設けられる送電コイルから磁界を通じて非接触で受電可能な受電コイルによって構成してもよい。
【0038】
充電器80は、充電リレー85を介して電力線対PL1,NL1に接続される。充電器80は、電源200から受電部75を通じて供給される電力を蓄電装置10の電圧レベルに変換し、電力線対PL1,NL1を通じて蓄電装置10へ出力する。充電器80は、たとえば、電源200から受ける交流電力を直流に変換するAC/DCコンバータと、AC/DCコンバータの出力を蓄電装置10の電圧レベルに変換するDC/DCコンバータとを含んで構成される。
【0039】
充電リレー85は、充電器80と電力線対PL1,NL1との間に設けられ、外部充電の実行時にECU100によってオンされる。
【0040】
パワースイッチ90は、電動車両1を利用するユーザが操作可能なスイッチである。車両のシステム停止中に所定の操作を伴なってパワースイッチ90が操作されると、システム起動処理が実行され、SMR20がオンされるとともに各種電気機器が作動可能となる。また、システム起動中に所定の操作を伴なってパワースイッチ90が操作されると、システム停止処理が実行され、各種電気機器が作動停止するとともにSMR20がオフされる。なお、外部充電時は、たとえば、電源200の充電ケーブルが受電部75に接続されると、パワースイッチ90が操作されることなくSMR20及び充電リレー85がオンされるとともに充電器80が作動可能となる。
【0041】
ナビゲーション装置95は、地図情報を記憶している。また、ナビゲーション装置95は、人工衛星からの電波に基づいて電動車両1の現在位置を特定するGPS(Global Positioning System)受信機を含む。ナビゲーション装置95は、ECU100からの要求に従って、GPS受信機により特定される現在位置を示す現在地情報をECU100へ出力する。
【0042】
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリ(ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory))と、入出力バッファとを含んで構成される(いずれも図示せず)。CPUは、ROMに格納されているプログラムをRAM等に展開して実行する。ROMに格納されているプログラムには、ECU100の処理が記されている。
【0043】
<ずり下がり状態の説明>
図2は、登坂路において電動車両1のずり下がりが生じている様子を示す図である。図2を参照して、登坂方向の車両駆動トルクが登坂に必要とされるトルクよりも小さい場合、電動車両1は降坂方向へ後退する(ずり下がり状態)。このずり下がり状態においては、MG40の出力トルクは、車両を前進させる方向(以下「正方向」とする。)であるのに対し、MG40の回転方向は、車両が後退する方向(以下「負方向」とする。)となる。
【0044】
図3は、MG40の出力トルクTm及び回転速度Nmの正負を4象限に分けて示した図である。図3を参照して、出力トルクTm及び回転速度Nmの双方が正である第1象限では、出力トルクTmと回転速度Nmとの方向(符号)が一致するので、MG40は力行モード(電力消費)となる。出力トルクTmが負であり回転速度Nmが正である第2象限では、出力トルクTmと回転速度Nmとの方向(符号)が異なるので、MG40は回生モード(発電)となる。同様に、出力トルクTm及び回転速度Nmの双方が負である第3象限では、MG40は力行モード(電力消費)となり、出力トルクTmが正であり回転速度Nmが負である第4象限では、MG40は回生モード(発電)となる。
【0045】
再び図2を参照して、図示の状況では、MG40の出力トルクは正であり、MG40の回転速度は負であるので、MG40は回生モードとなり発電する(図3の第4象限)。なお、図示しないが、ずり下がり状態は、電動車両1がバックでの登坂時に降坂方向へ移動する場合にも生じる(図3の第2象限)。
【0046】
ずり下がり状態が生じると、MG40が回生モードとなることにより、蓄電装置10が充電されてSOCが上昇する。蓄電装置10は、高SOC状態で長時間放置されると劣化が促進されるため、この実施の形態では、そのような劣化促進を抑制するためのSOCの制御上限が設定され、ECU100は、SOCが制御上限を超えないように蓄電装置10の充電を制御する。
【0047】
図4は、蓄電装置10の許容充電電力WinとSOCとの関係の一例を示す図である。許容充電電力Winは、蓄電装置10が受入可能な電力の最大値を示し、許容充電電力Winが0であることは、蓄電装置10の充電が不可であることを意味する。なお、この図4では、車両のずり下がりが生じていない場合の許容充電電力WinとSOCとの関係の一例が示されている。
【0048】
図4を参照して、SOCが所定値(所定値<制御上限)を超えると、SOCが上昇するにつれて許容充電電力Winの大きさが小さくなる。そして、SOCが制御上限に達すると、許容充電電力Winは0となり、蓄電装置10の充電が不可となる。
【0049】
ずり下がり状態が生じている場合にSOCが制御上限に達すると、蓄電装置10は充電不可とされるので、このままでは、回生モードのMG40は登坂方向のトルクを出すことができなくなる。MG40が登坂方向のトルクを出すことができない状況は、直ちに解消されることが望まれる。
【0050】
そこで、この実施の形態に従う電動車両1では、登坂路においてずり下がり状態が生じた場合に、ECU100は、SOCが制御上限を超える蓄電装置10の充電を許容する。これにより、SOCが制御上限に達したために蓄電装置10が充電不可となってMG40が登坂方向のトルク(回生トルク)を出せない状況が回避される。したがって、MG40は、登坂方向のトルク(回生トルク)を出力可能となり、ずり下がり状態を脱することが可能となる。
【0051】
図5は、ずり下がり状態における許容充電電力WinとSOCとの関係の一例を示す図である。図5を参照して、ずり下がり状態が生じると、図示されるように、許容充電電力Winが高SOC側に拡大される。具体的には、SOCが制御上限を超える充電が許容される。SOCの制御上限は、高SOC状態での長時間放置による蓄電装置10の劣化促進を抑制するために設定される制限値であり、制御上限を超える充電自体は可能である。そこで、本実施の形態では、ずり下がり状態が生じた場合に、許容充電電力Winが高SOC側に拡大される。これにより、SOCが制御上限を超える充電が許容される。
【0052】
なお、ずり下がり状態が生じた場合に、許容充電電力Winを高SOC側に拡大するとともに、許容充電電力Winによる蓄電装置10の充電の制限を解除するようにしてもよい。具体的には、許容充電電力Winの大きさを拡大してもよい。これにより、大きな充電電力が許容されるので、MG40が発生する登坂方向のトルク(回生トルク)を増大させることができる。したがって、車両のずり下がりを解消して登坂可能とすることができる。
【0053】
なお、ずり下がり状態が解消すると、許容充電電力Winは、高SOC側に拡大される前の状態に復帰する。ずり下がり状態の解消後は、MG40は、電力を消費して力行トルクを発生し(図3の第1又は第3象限)、蓄電装置10は放電状態となるので、SOCが制御上限を超えている状態で許容充電電力Winを復帰させても、蓄電装置10及びMG40の出力には影響しない。
【0054】
ずり下がり状態が解消すると、蓄電装置10は放電するので、SOCは基本的に低下する。しかしながら、SOCが制御上限以下に低下する前に、目的地に到着する等して車両システムが停止される場合もある。SOCが制御上限を超える高SOC状態で長時間放置されると、蓄電装置10の劣化が促進されてしまう。
【0055】
そこで、この実施の形態に従う電動車両1では、高SOC状態において車両のシステム停止が要求されると、高SOC状態で長時間放置される可能性が高いとして、蓄電装置10を放電させる放電処理が実行される。たとえば、放電処理によってSOCを制御上限まで低下させる。これにより、高SOC状態で長時間放置されることによる蓄電装置10の劣化促進を抑制することができる。
【0056】
このシステム停止時に実行される放電処理には、各種手法を用いることができる。一例として、この実施の形態では、蓄電装置10に設けられている均等化回路を用いて上記の放電処理を実行することができる。この均等化回路は、蓄電装置10に設けられているので、システム停止の要求に基づきSMR20がオフされて蓄電装置10が電気システムから切離された後であっても、蓄電装置10内で均等化回路を用いて蓄電装置10を放電させることができる。
【0057】
詳しくは、蓄電装置10は、複数のセルを含んで構成された組電池であり、均等化回路は、元来、セル間の蓄電量がアンバランスとなった場合にセル間の蓄電量を均等化するために設けられている。この均等化回路を用いて、蓄電装置10の高SOC状態を解消することができる。
【0058】
図6は、蓄電装置10の回路構成の一例を示す図である。図6を参照して、蓄電装置10は、直列接続された複数のセル11と、複数のセル11に並列に設けられる複数の放電回路12とを含む。この複数の放電回路12が、均等化回路に相当する。
【0059】
図7は、図6に示した放電回路12の構成の一例を示す図である。図7を参照して、放電回路12は、抵抗素子13と、抵抗素子13に直列に接続されるスイッチ素子14とを含む。スイッチ素子14は、ECU100によって制御され、スイッチ素子14をオンにすることによってセル11を放電することができる。
【0060】
再び図6を参照して、センサユニット15は、セル11毎の電圧を検出する複数の電圧センサ16と、セル11に流れる電流IBを検出する電流センサ17とを含む。たとえば、特定のセル11の電圧が他のセル11の電圧よりも高く、その特定のセル11の蓄電量が他のセル11の蓄電量よりも多いと判断されるときは、その特定のセル11に対応する放電回路12を作動させることによって特定のセル11を放電させる。これにより、特定のセル11の蓄電量を低下させて、他のセル11の蓄電量と均等化することができる。
【0061】
このように、均等化回路は、各セル11を放電可能であることから、本実施の形態では、この均等化回路を用いて、システム停止時に蓄電装置10を放電させる放電処理が実行される。たとえば、高SOC状態において車両のシステム停止が要求されたとき、全ての放電回路12を一律に作動させてもよいし、他のセル11よりも相対的に蓄電量の多いセル11に対応する放電回路12を優先的に作動させてもよい。
【0062】
システム停止時に実行される放電処理には、上記の均等化回路のほか、MG40や電動エアコン55等の電気負荷を用いることもできる。たとえば、インバータ34を制御してMG40に電流を流すことにより蓄電装置10を放電させることができる。MG40に電流を流す場合には、d軸電流のみが流れるようにインバータ34を制御することにより、MG40に回転トルクを発生させることなく蓄電装置10を放電させることができる。また、電動エアコン55のコンプレッサを作動させることによっても蓄電装置10を放電させることができる。なお、図示していないが、蓄電装置10に蓄えられた電力を用いる暖房用のヒータ等が設けられている場合には、当該ヒータ等を作動させることにより蓄電装置10を放電させることも可能である。
【0063】
これらの電気負荷は、SMR20がオフされると蓄電装置10から給電を受けることができなくなるため、これらの電気負荷を用いた放電処理は、パワースイッチ90が操作されてシステム停止が要求された後、SMR20がオフされるまでの間に実施される。なお、パワースイッチ90が操作されることによりシステム停止が要求されても、SMR20は直ちにオフされず、所定のシステム終了処理が実行されてからSMR20はオフされる。したがって、上記の電気負荷を用いた放電処理は、パワースイッチ90が操作されてシステム停止が要求された後であっても実行可能である。
【0064】
なお、蓄電装置10とSMR20との間に、システム停止時に蓄電装置10が高SOC状態である場合に蓄電装置10を放電させる放電回路を別途設けてもよい(図示せず)。これにより、蓄電装置10が均等化回路を備えていない場合であっても、SMR20のオフ後に蓄電装置10を放電させることができる。このような放電回路は、たとえば、直列接続される抵抗素子及びスイッチ素子を、蓄電装置10に接続される正極線及び負極線間に接続することによって構成することができる。
【0065】
図8は、ECU100により実行されるSOC制御上限拡大処理の手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、車両システムが起動されている間、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0066】
図8を参照して、ECU100は、蓄電装置10のSOCが制御上限以上であるか否かを判定する(ステップS10)。上述のように、SOCの制御上限は、高SOC状態での長期間放置による蓄電装置10の劣化促進を抑制するための制限値であり、任意の設計値(たとえば90%)である。
【0067】
なお、SOCは、センサユニット15からの検出値に基づいて算出される。SOCの算出方法については、OCV(Open Circuit Voltage)とSOCとの関係を示すOCV-SOCカーブ(マップ等)を用いた手法や、充放電電流の積算値を用いた手法等、公知の各種手法を用いることができる。
【0068】
ステップS10においてSOCが制御上限よりも低いと判定されたときは(ステップS10においてNO)、以降の一連の処理は実行されず、リターンへと処理が移行される。ステップS10においてSOCが制御上限以上であると判定されると(ステップS10においてYES)、ECU100は、車両のずり下がり状態が生じているか否かを判定する(ステップS15)。
【0069】
ずり下がり状態が生じているかは、選択されているシフト位置と車両の速度とから判定される。具体的には、前進ポジション(DポジションやBポジション)が選択されており、かつ、速度が負(後退)であるとき、ずり下がり状態が生じていると判定される。また、後進ポジション(Rポジション)が選択されており、かつ、速度が正であるときも、ずり下がり状態が生じていると判定される。
【0070】
なお、ずり下がり状態の判定は、これに限定されるものではない。車両の速度に代えて、MG40や駆動軸45等の回転方向を用いてもよい。或いは、MG40のトルク指令値とMG40の回転方向とに基づいて、両者の符合が異なる場合にずり下がり状態が生じていると判定してもよい。
【0071】
ずり下がり状態が生じていない場合は(ステップS15においてNO)、SOCが制御上限に達していることから、蓄電装置10の充電が禁止される(ステップS20)。具体的には、ずり下がり状態が生じていない場合は、図4に示した許容充電電力WinとSOCとの関係を示すマップが選択され、このマップに従って許容充電電力Winが0とされる。
【0072】
一方、ステップS15において、ずり下がり状態が生じていると判定されると(ステップS15においてYES)、ECU100は、SOCが制御上限を超えることを許容する(ステップS20)。この例では、ECU100は、図5に示したように許容充電電力Winを高SOC側に拡大する。これにより、制御上限を超える充電が許容される。なお、制御上限を超える充電を許容するために、蓄電装置10の電圧上限も必要に応じて高められる。許容充電電力Winを高SOC側に拡大しても、蓄電装置10の電圧VBが上限に達すると、充電が制限されるからである。
【0073】
なお、上記では、ステップS10においてSOCが制御上限以上であると判定された場合にずり下がり状態が生じているか否かが判定され、ずり下がり状態が生じている場合に、SOCが制御上限を超える充電が許容されるものとしたが、ステップS10の処理は省略してもよい。すなわち、SOCが制御上限以上であるか否かに拘わらず、ずり下がり状態が生じている場合には、SOCが制御上限を超える充電を許容するようにしてもよい。
【0074】
図9は、SOCが制御上限を超えている場合に車両のシステム停止が要求されたとき、ECU100により実行される放電処理の手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、SOCが制御上限を超えると実行される。
【0075】
図9を参照して、ECU100は、システム停止のための所定の操作を伴なってパワースイッチ90が操作されたか否かを判定する(ステップS110)。なお、特に図示しないが、パワースイッチ90が操作される前にSOCが制御上限以下となった場合には、以降の一連の処理は実行されずにエンドへと処理が移行される。そして、所定の操作を伴なってパワースイッチ90が操作されると(ステップS110においてYES)、ECU100は、所定のシステム停止処理を開始する(ステップS115)。
【0076】
次いで、ECU100は、SMR20を通じて蓄電装置10から受電する電気負荷を用いた放電処理を実行する(ステップS120)。たとえば、ECU100は、MG40に電流が流れるように(好ましくは、トルクが発生しないd軸電流のみが流れるように)インバータ34を駆動させたり、電動エアコン55のコンプレッサを駆動させたりする。蓄電装置10に蓄えられた電力をこれらの電気負荷で消費することで、蓄電装置10を放電させるものである。
【0077】
続いて、ECU100は、SOCが制御上限以下となったか否かを判定する(ステップS125)。SOCが制御上限よりも高い場合は(ステップS125においてNO)、ECU100は、SMR20が遮断されたか否かを判定する(ステップS130)。SMR20が遮断されていなければ(ステップS130においてNO)、ECU100は、ステップS120へ処理を戻し、電気負荷を用いた放電処理を継続する。
【0078】
電気負荷を用いた放電処理によりSOCが制御上限以下になると(ステップS125においてYES)、ECU100は、放電処理を停止する(ステップS150)。具体的には、ECU100は、ステップS120において蓄電装置10の放電のために作動させた電気負荷を停止する。その後、SMR20が遮断されると(ステップS155においてYES)、ECU100は、エンドへと処理を移行する。
【0079】
ステップS130においてSMR20が遮断されたと判定されると(ステップS130においてYES)、ECU100は、電気負荷を用いた放電処理を終了し、蓄電装置10の均等化回路による放電処理を実行する(ステップS135)。具体的には、ECU100は、均等化回路を駆動し、均等化回路によって各セル11を放電させる。
【0080】
そして、ECU100は、SOCが制御上限以下となったか否かを判定する(ステップS140)。SOCがまだ制御上限よりも高い場合は(ステップS140においてNO)、ECU100は、ステップS135へ処理を戻し、均等化回路による放電処理を継続する。
【0081】
均等化回路による放電処理によりSOCが制御上限以下になると(ステップS140においてYES)、ECU100は、放電処理を停止する(ステップS145)。具体的には、ECU100は、均等化回路を非作動状態にする。その後、ECU100は、エンドへと処理を移行する。
【0082】
以上のように、この実施の形態においては、登坂路においてずり下がり状態が生じた場合に、SOCが制御上限を超える充電が許容されるので、MG40が登坂方向のトルク(回生トルク)を出すことができない状況が回避される。これにより、MG40が登坂方向のトルクを出力可能となり、ずり下がり状態を脱することが可能となる。
【0083】
そして、SOCが制御上限を超える充電が許容されることにより高SOC状態で長時間放置されると、蓄電装置10の劣化が促進されるところ、この実施の形態では、高SOC状態において車両のシステム停止が要求されたときは、蓄電装置10を放電させる放電処理が実行される。これにより、高SOC状態で放置されることによる蓄電装置10の劣化促進を抑制することができる。
【0084】
また、この実施の形態では、システム停止の要求に従ってSMR20がオフされた後、蓄電装置10の均等化回路を用いて放電処理が実行される。したがって、システム停止の要求に従ってSMR20がオフされた後であっても、蓄電装置10を放電させることができる。
【0085】
また、この実施の形態では、システム停止の要求に従ってSMR20がオフされるまでは、MG40や電動エアコン55等の電気負荷を用いて放電処理が実行される。これにより、システム停止の要求に従ってSMR20がオフされる前においても蓄電装置10を放電させることができる。したがって、システム停止の要求後、速やかに放電処理を行なってシステムを停止させることができる。
【0086】
[変形例1]
上記の実施の形態では、MG40や電動エアコン55を用いた放電処理が行なわれるものとしたが、蓄電装置10からDC/DCコンバータ60を通じて補機70へ給電することで蓄電装置10を放電させてもよい。補機70の補機バッテリに充電の余裕がある場合には、蓄電装置10から放電された電力を捨てることなく補機バッテリに蓄えることができる。
【0087】
図10は、この変形例1における放電処理の手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、上記の実施の形態で説明した図9に対応するものである。図10を参照して、このフローチャートに示されるステップS210,S215及びS225~S255の処理は、それぞれ図9に示したステップS110,S115及びS125~S155の処理と同じである。そして、このフローチャートは、図9のフローチャートに示したステップS120に代えてステップS220を含む。
【0088】
すなわち、ステップS215において所定のシステム停止処理が開始されると、ECU100は、補機70への放電処理を実行する(ステップS220)。具体的には、ECU100は、蓄電装置10からDC/DCコンバータ60を通じて補機70へ給電が行なわれるようにDC/DCコンバータ60を駆動する。その後、ECU100は、ステップS225へ処理を移行する。このDC/DCコンバータ60の駆動は、SOCが制御上限まで低下するか(ステップS225においてYES)、又はSMR20が遮断されるまで(ステップS230においてYES)継続される。
【0089】
なお、補機70の補機バッテリに充電の余裕がない場合(たとえば、補機バッテリの電圧が上限に達している場合等)には、補機70への放電処理に代えて、MG40や電動エアコン55の電気負荷を用いた放電処理を行なうようにしてもよい。
【0090】
この変形例1によれば、システム停止の要求に従ってSMR20がオフされる前の放電処理について、電気負荷に代えて補機70を用いることにより、蓄電装置10に蓄えられた電力を捨てることなく放電処理を行なうことができる。
【0091】
[変形例2]
上記の実施の形態及び変形例1では、高SOC状態でシステム停止が要求されると、直ちに放電処理が行なわれるものとしたが、蓄電装置は、高SOC状態になると直ちに劣化が促進されるものでもなく、高SOC状態で長時間放置されると劣化が促進される。そこで、この変形例2では、高SOC状態でシステム停止が要求された場合、時間をおいてから放電処理が実行され、放電処理が実行される前にシステムが起動されたときは、放電処理を実行しない。これにより、高SOC状態で長時間放置されることによる劣化の促進を抑制しつつ、システム停止後短時間でシステムが起動されたときは、蓄電装置に蓄えられた電力をシステム起動後の走行等に有効利用することができる。
【0092】
図11は、この変形例2における放電処理の手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートも、上記の実施の形態で説明した図9に対応するものである。図11を参照して、このフローチャートに示されるステップS310,S315及びS330~S340の処理は、それぞれ図9に示したステップS110,S115及びS135~S145の処理と同じである。そして、このフローチャートは、図9のフローチャートに示したステップS120~S130,S150,S155に代えて、ステップS320,S325,S340,S350を含む。
【0093】
すなわち、ステップS315において所定のシステム停止処理が開始されると、ECU100は、SMR20が遮断されたか否かを判定する(ステップS320)。そして、SMR20が遮断されると(ステップS320においてYES)、ECU100は、パワースイッチ90の操作(ステップS310での操作)から設定時間が経過したか否かを判定する(ステップS325)。
【0094】
この設定時間は、放電処理を実行するタイミングを規定する時間であり、高SOC状態で放置された場合の蓄電装置10の劣化促進状況に基づいて設計等の段階で予め設定された時間であってもよいし、車両の利用状況に基づいてユーザが設定する時間であってもよい。
【0095】
設定時間が経過するまでは(ステップS325においてNO)、ECU100は、システム起動のための所定の操作を伴なってパワースイッチ90が操作されたか否かを判定する(ステップS345)。そして、システム起動のための所定の操作を伴なってパワースイッチ90が操作されると(ステップS345においてYES)、ECU100は、所定のシステム起動処理を実行し(ステップS350)、その後、エンドへと処理を移行する。すなわち、システム停止後(パワースイッチ90の操作後)、設定時間が経過する前にシステム起動が行なわれた場合には、ステップS330の放電処理は実行されない。
【0096】
一方、ステップS325において設定時間が経過したものと判定されると(ステップS325においてYES)、ECU100は、ステップS330へ処理を移行し、均等化回路による放電処理が実行される。これにより、高SOC状態で長時間放置されることによる劣化の促進抑制することができる。
【0097】
この変形例2によれば、高SOC状態で長時間放置されることによる劣化の促進を抑制しつつ、システム停止後短時間でシステム起動が要求された場合には、蓄電装置10に蓄えられた電力をシステム起動後に有効利用することができる。
【0098】
[変形例3]
この変形例3では、高SOC状態でシステム停止が要求された場合、ナビゲーション装置95により取得される現在位置に基づいて放電処理を実行するか否かが判断される。たとえば、自宅や会社等でシステム停止が要求されるような場合は、システム停止後の長時間の停車が予想される。一方、コンビニエンスストアの駐車場等でシステム停止が要求されるような場合は、システム停止後短時間でシステム起動が再度行なわれることが予想される。
【0099】
そこで、この変形例3では、高SOC状態でシステム停止が要求されたときに放電処理を行なう場所が所定地として設定される。所定地には、たとえば、長時間の停車が予想される自宅や会社等を設定することができる。そして、高SOC状態でシステム停止が要求された場合でも、現在位置が所定地でない場合には、システム停止後短時間でシステム起動が再度行なわれる可能性が高いものとして、放電処理は実行されない。
【0100】
これにより、自宅や会社等において高SOC状態で長時間放置されることによる劣化の促進を抑制しつつ、所定地として設定されていないコンビニエンスストア等に駐車した場合のように、システム停止後短時間でシステム起動が要求される場合には、蓄電装置10に蓄えられた電力をシステム起動後に有効利用することが可能となる。
【0101】
図12は、この変形例3における放電処理の手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートも、上記の実施の形態で説明した図9に対応するものである。図12を参照して、このフローチャートに示されるステップS410,S415,S430~S455,S465,S470の処理は、それぞれ図9に示したステップS110~S155の処理と同じである。そして、このフローチャートは、図9のフローチャートに対してステップS420,S425,S460をさらに含む。
【0102】
すなわち、ステップS415において所定のシステム停止処理が開始されると、ECU100は、ナビゲーション装置95から電動車両1の現在位置の情報を取得する(ステップS420)。次いで、ECU100は、取得された現在位置が設定された所定地であるか否かを判定する(ステップS425)。所定地には、上述のように、たとえば、長時間の停車が予想される自宅や会社等が設定される。
【0103】
そして、現在位置が所定地であると判定された場合は(ステップS425においてYES)、ECU100は、ステップS430へ処理を移行し、電気負荷による放電処理が実行される。
【0104】
一方、ステップS425において、現在位置は設定された所定地ではないと判定されると(ステップS425においてNO)、ECU100は、SMR20が遮断されたか否かを判定する(ステップS460)。そして、SMR20が遮断されると(ステップS460においてYES)、ECU100は、エンドへと処理を移行する。すなわち、現在位置が所定地ではない場合には、ステップS430やステップS445の放電処理は実行されない。
【0105】
なお、上記では、ステップS430において、電気負荷による放電処理が実行されるものとしているが、変形例1のように、電気負荷による放電処理に代えて、補機70への放電処理を採用してもよい。
【0106】
この変形例3によれば、自宅や会社等において高SOC状態で長時間放置されることによる劣化の促進を抑制しつつ、所定地として設定されていないコンビニエンスストア等での駐車のように、システム停止後短時間でシステム起動が要求される場合には、蓄電装置10に蓄えられた電力をシステム起動後に有効利用することができる。
【0107】
なお、上記の実施の形態及び各変形例では、電動車両1は電気自動車(EV)として説明したが、本開示に従う電動車両は、ハイブリッド自動車(HV)であってもよい。HVは、車両外部の電源から蓄電装置を充電可能な所謂プラグインHVであってもよい。
【0108】
たとえば、MGを複数搭載するシリーズ方式やシリーズ・パラレル方式(スプリット方式とも称される。)のHVでは、エンジン停止中に車両のずり下がり状態が生じた場合に、走行用のMG(以下「第1MG」とする。)とは別のMG(以下「第2MG」とする。)が力行トルクを出力して燃料カット状態のエンジンを連れ回すことで電力を消費する状況を作り出し、これにより、車両のずり下がりに伴なって第1MGが発電する電力を第2MGに消費させることで第1MGのトルク出力を確保することも可能である。しかしながら、第2MGが出力するトルクは、エンジンフリクション分に相当する分だけであるので、第1MGが発電する電力を第2MGで十分に消費できず、その結果、ずり下がり状態を脱するだけのトルクを第1MGが出力できない可能性もある。
【0109】
本開示によれば、上述のように、SOCが制御上限を超える充電が許容されるので、第1MGによる登坂方向のトルクを確保してずり下がり状態を脱することが可能となり、さらに、高SOC状態で放置されることによる蓄電装置10の劣化促進を抑制することができる。
【0110】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0111】
1 電動車両、10 蓄電装置、11 セル、12 放電回路、13 抵抗素子、14 スイッチ素子、15 センサユニット、16 電圧センサ、17 電流センサ、20 SMR、30 PCU、32 コンバータ、34 インバータ、40 MG、45 駆動軸、50 駆動輪、55 電動エアコン、60 DC/DCコンバータ、70 補機、75 受電部、80 充電器、85 充電リレー、90 パワースイッチ、95 ナビゲーション装置、100 ECU、200 電源。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12