(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/40 20180101AFI20221206BHJP
F21S 41/148 20180101ALI20221206BHJP
F21S 41/151 20180101ALI20221206BHJP
F21S 41/20 20180101ALI20221206BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20221206BHJP
【FI】
F21S41/40
F21S41/148
F21S41/151
F21S41/20
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2018106120
(22)【出願日】2018-06-01
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 悠二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英治
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-037298(JP,A)
【文献】特開2016-039021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/40
F21S 41/148
F21S 41/151
F21S 41/20
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
すれ違い用配光パターンを形成する光を出射する第1光源と、
前記第1光源よりも光軸方向前側に設けられて走行用配光パターンを形成する光を出射する第2光源と、
前記第1光源から出射された光を反射するリフレクタと、
前記リフレクタで反射された光を光軸方向前側に投影して前記すれ違い用配光パターンを形成する投影レンズと、
前記リフレクタよりも光軸方向前側に設けられ、前記リフレクタで反射された光の一部を
先端縁で遮光して前記すれ違い用配光パターンにおけるカットオフラインを形成するシェードと、
前記シェードの下方に設けられ、前記第2光源から出射された光の一部を前記投影レンズ側に導く導光部と、を備え、
前記第2光源は、前記第1光源と同一平面上に設けられ、
前記導光部は、前記第2光源の近傍を第1焦点とするとともに前記シェードの前記先端縁の近傍を第2焦点とする楕円を基本とする自由曲面とされた導光部反射面を有し、
前記シェードは、
下面に設けられたシェード反射面により前記第2光源から出射された光の他部を前記投影レンズ側に反射
し、
前記投影レンズは、前記導光部反射面で反射された光を光軸方向前側に投影して前記すれ違い用配光パターンの上方に前記走行用配光パターンを形成するとともに、前記シェード反射面で反射された光を光軸方向前側に投影して前記走行用配光パターンの上方に補助配光パターンを形成することを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第2光源は、光軸方向および上下方向に直交する幅方向に複数の光源部が並列されて形成され、
前記走行用配光パターンは、複数の前記光源部のそれぞれからの光が前記投影レンズにより投影されて形成された複数の走行用配光部が前記幅方向に並列されて形成され、前記走行用配光部毎に点灯および消灯が可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記導光部は、前記第2光源から出射された光の一部を入射させる透過部材で形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記導光部は、前記第2光源から出射された光の一部を反射させる
反射部材で形成されていることを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、光源からの光を用いて所定の配光パターンを形成する。
【0003】
このような車両用灯具は、第1光源からの光ですれ違い用配光パターンを形成するとともに、第2光源からの光で走行用配光パターンを形成するものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。この車両用灯具は、第1光源から出射されてリフレクタで反射された光と、第1光源よりも前方に設けられた第2光源から出射されて透光部材により導かれた光と、を投影レンズで車両の前方へ向けて出射させることで、すれ違い用配光パターンと走行用配光パターンとを上下に並べて形成している。この車両用灯具は、第2光源よりも後方に設けた第1光源から出射されてリフレクタで反射された光を効率良く利用するために、シェードによる意図的な遮光を除くと、リフレクタと投影レンズとの間で光の進行を妨げることのない配置としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の車両用灯具は、透光部材内に設けた反射面で投影レンズへと反射することで、透光部材が第2光源から出射された光の全てを投影レンズに導いている。このため、従来の車両用灯具は、第2光源からの光の全てを投影レンズへと反射させる反射面を設けることを可能とするように透光部材を形成する必要があり、透光部材が大きくなってしまう。これにより、従来の車両用灯具は、第1光源よりも第2光源を下方に位置するように第1光源と第2光源とを段差を付けて設けている。このため、従来の車両用灯具は、第1光源および第2光源が取り付けられる部材の形状の複雑化を招くとともに、第1光源および第2光源に個別の基板を設ける必要がある。
【0006】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、すれ違い用配光パターンと走行用配光パターンとを重ねて形成しつつ第1光源と第2光源とを段差なく設けることのできる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の車両用灯具は、すれ違い用配光パターンを形成する光を出射する第1光源と、前記第1光源よりも光軸方向前側に設けられて走行用配光パターンを形成する光を出射する第2光源と、前記第1光源から出射された光を反射するリフレクタと、前記リフレクタで反射された光を光軸方向前側に投影して前記すれ違い用配光パターンを形成する投影レンズと、前記リフレクタで反射された光の一部を遮光して前記すれ違い用配光パターンにおけるカットオフラインを形成するシェードと、前記シェードの下方に設けられ、前記第2光源から出射された光の一部を前記投影レンズ側に導く導光部と、を備え、前記第2光源は、前記第1光源と同一平面上に設けられ、前記シェードは、前記第2光源から出射された光の他部を前記投影レンズ側に反射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の車両用灯具によれば、すれ違い用配光パターンと走行用配光パターンとを重ねて形成しつつ第1光源と第2光源とを段差なく設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示に係る車両用灯具の一実施形態に係る一例としての車両用灯具の構成を示す説明図である。
【
図2】走行用配光パターンおよびすれ違い用配光パターンを示す説明図である。
【
図3】走行用配光パターンにおいて一部の走行用配光部が消灯された様子を示す
図2と同様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る車両用灯具の一実施形態としての車両用灯具10の実施例1について
図1から
図3を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0011】
車両用灯具10は、自動車等の車両に用いられる灯具として用いられるもので、例えば、ヘッドランプやフォグランプ等に用いられる。車両用灯具10は、車両の前部の左右両側で、ランプハウジングの開放された前端がアウターレンズで覆われて形成される灯室に、上下方向用光軸調整機構や幅方向用光軸調整機構を介して設けられる。以下の説明では、車両用灯具10において、車両の直進時の進行方向であって光を照射する方向を光軸方向とし、車両に搭載された状態での鉛直方向を上下方向とし、光軸方向および上下方向に直交する方向を幅方向とする。
【0012】
車両用灯具10は、
図1に示すように、第1光源11と第2光源12とヒートシンク部材13とリフレクタ14とシェード15と補助レンズ16と投影レンズ17とを備え、プロジェクタタイプの前照灯ユニットを構成する。
【0013】
第1光源11は、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子で構成され、基板20に実装されている。その基板20は、ヒートシンク部材13の上面13aに固定されている。この第1光源11は、点灯制御回路から電力が供給されて適宜点灯される。
【0014】
第2光源12は、LED等の発光素子で構成され、第1光源11よりも光軸方向の前側(車両用灯具10から光を照射する側)で基板21に実装されている。その基板21は、基板20よりも光軸方向の前側でヒートシンク部材13の上面13aに固定されている。このため、第2光源12は、第1光源11と同一平面上に設けられている。この第2光源12は、点灯制御回路から電力が供給されて適宜点灯される。実施例1の第2光源12は、基板21上で幅方向に5つの光源部12a(
図1では手前側の1つのみ図示している)が整列されて設けられている。各光源部12aは、発光素子で構成されて点灯制御回路から電力が供給されることで、適宜一斉にまたは個別に点灯される。なお、光源部12aの数は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0015】
ヒートシンク部材13は、第1光源11および第2光源12で発生する熱を外部に逃がす放熱部材である。このヒートシンク部材13では、上面13aに基板20および基板21が設けられるとともに、その両基板(20、21)を覆うように上面13aにリフレクタ14が設けられる。実施例1のヒートシンク部材13は、両基板(20、21)を介して第1光源11および第2光源12が設けられる上面13aを、投影レンズ17の光学中心位置よりも上下方向の下側に設けられている。これにより、上面13aに設けられた第1光源11から出射される光のうち、強度の大きい光を有効に利用することができる。
【0016】
リフレクタ14は、基板20および基板21すなわちそれらに実装された第1光源11および第2光源12を覆うようにヒートシンク部材13(上面13a)に取り付けられている。リフレクタ14は、上面13aに対向する反射面22を有する。反射面22は、第1光源11から出射した光を投影レンズ17へと反射するために設けられている。反射面22は、第1光源11を第1焦点とするとともにシェード15の後述する先端縁15aの近傍を第2焦点とする楕円を基本とした自由曲面とされている。
【0017】
シェード15は、ヒートシンク部材13に設けられており、上下方向に直交しつつ幅方向に伸びる板状とされている。実施例1のシェード15は、光軸方向の前側に向かうに連れて上下方向の厚さが小さくなるように形成され、幅方向に直交する断面において光軸方向の前側の先端縁15aが尖る(尖端状)ものとされている。その先端縁15aは、光軸方向での位置の異なる2つの水平エッジが傾斜エッジで繋ぎ合わされた形状とされている。シェード15は、第1光源11から出射されてリフレクタ14の反射面22で反射された光の一部を先端縁15aで遮ることで、後述するすれ違い用配光パターンLPの上縁に2つの水平ラインを傾斜ラインで繋ぎ合わせたカットオフラインCl(
図2参照)を形成する。
【0018】
シェード15は、上下方向の下側の面が反射面15b(シェード反射面)とされている。この反射面15bは、後述する補助配光パターンAPを形成するもので、後述する入射面16aから補助レンズ16に入射しその出射面16cから出射された光を投影レンズ17側に反射する。反射面15bは、シェード15における下面に表面処理が施されて形成されている。この表面処理は、形成する補助配光パターンAPをぼやけさせたり主に上下方向に拡散させたりするもので、光を拡散させつつ反射するように行われる。なお、表面処理は、形成する補助配光パターンAPに求められる大きさや形状や明るさ等に応じて、拡散の度合いや反射率を適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0019】
補助レンズ16は、第2光源12から出射された光の一部を集光して、光軸方向の前側すなわち投影レンズ17側に進行させる。実施例1の補助レンズ16は、光の透過を許す無色の透明な樹脂材料(透過部材)で形成されている。ここで、無色の透明な材料とは、第2光源12(各光源部12a)から出射された光の色を変化させることなく透過させることをいう。また、実施例1の補助レンズ16は、上下方向で可能な限りシェード15に近接させて設けられている。補助レンズ16は、平坦な入射面16aと、湾曲された内部反射面16b(導光部反射面)と、平坦な出射面16cと、を有する。
【0020】
入射面16aは、第2光源12(各光源部12a)と上下方向で対向して設けられ、その第2光源12から出射された光を補助レンズ16内に入射させる。この入射面16aから補助レンズ16内に入射された光は、一部が内部反射面16bに進行し、他部(残りの一部)が直接出射面16cに進行する。
【0021】
内部反射面16bは、補助レンズ16内において、入射面16aから入射した光の一部を出射面16cへと反射する。内部反射面16bは、その裏面すなわち補助レンズ16の外表面にアルミニウムが蒸着される等の反射処理が施されて形成されている。内部反射面16bは、入射面16aでの屈折を考慮しつつ光学的に第2光源12の近傍を第1焦点とするとともにシェード15の先端縁15aの近傍を第2焦点とする楕円を基本とする自由曲面とされている。内部反射面16bは、入射面16aから入射した光の一部を出射面16cへと反射する。なお、内部反射面16bは、上記したように反射するものであれば、例えば反射処理が施すことなく全反射を利用するものでもよく、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0022】
出射面16cは、投影レンズ17と光軸方向で対向して設けられ、内部反射面16bで反射された光や、入射面16aから入射された光のうちの内部反射面16bには入射しなかった光である他部を補助レンズ16の外方に出射させる。出射面16cは、内部反射面16bで反射された光を、投影レンズ17に進行するように出射させる。このため、補助レンズ16は、第2光源12から出射された光の一部を投影レンズ17側に導く導光部として機能する。また、出射面16cは、入射面16aから入射された光の他部を、シェード15の反射面15bに進行するように出射させる。この光の他部は、反射面15bで反射されることで投影レンズ17に進行する。
【0023】
実施例1の補助レンズ16は、第2光源12が5つの光源部12aで構成されていることに対応して、幅方向に伸びつつ光軸方向のみに屈折力を持つシリンドリカルレンズで形成されてヒートシンク部材13に設けられている。補助レンズ16は、5つの光源部12aに沿うように幅方向に伸びる焦線を有するものとされている。なお、補助レンズ16は、第2光源12から出射された光の一部を投影レンズ17へと導く導光部として機能するものであればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0024】
投影レンズ17は、後側焦点をシェード15の先端縁15aの近傍に設定させている。投影レンズ17は、第1光源11から出射されてリフレクタ14の反射面22で反射された光を車両の前方へ投影して、すれ違い用配光パターンLP(
図2参照)を形成する。また、投影レンズ17は、補助レンズ16の内部反射面16bで反射された第2光源12から出射された光の一部を、車両の前方へ投影して、走行用配光パターンHP(
図2参照)を形成する。さらに、投影レンズ17は、シェード15の反射面15bで反射された第2光源12から出射された光の他部を、車両の前方へ投影して、補助配光パターンAP(
図2参照)を形成する。
【0025】
この投影レンズ17は、レンズホルダに支持される。レンズホルダは、第1光源11や第2光源12やリフレクタ14やシェード15に補助レンズ16に対して投影レンズ17を位置決めした状態で、ヒートシンク部材13に組み付けられる。
【0026】
この車両用灯具10は、点灯制御回路からの電力を基板20から第1光源11に供給することで、第1光源11を適宜点灯させる。この点灯により、車両用灯具10は、第1光源11からの光をリフレクタ14の反射面22で反射して投影レンズ17で投影することで、上縁にカットオフラインClを有するすれ違い用配光パターンLP(
図2参照)を形成する。
【0027】
また、車両用灯具10は、点灯制御回路からの電力を基板21から第2光源12の各光源部12aに供給することで、第2光源12(その各光源部12a)を適宜点灯させる。この点灯により、車両用灯具10は、第2光源12からの光の一部を、入射面16aから補助レンズ16に入射させて内部反射面16bで反射して、出射面16cから補助レンズ16の外方に出射させて投影レンズ17へと進行させる。そして、車両用灯具10は、その光を投影レンズ17で投影することで、すれ違い用配光パターンLPの上端部に下端部を重ねるように走行用配光パターンHP(
図2参照)を形成する。
【0028】
さらに、車両用灯具10は、点灯させた第2光源12(各光源部12a)からの光の他部を、入射面16aから補助レンズ16に入射させ出射面16cから補助レンズ16の外方に出射させてシェード15の反射面15bへと進行させる。そして、車両用灯具10は、その光を反射面15bで反射して投影レンズ17へと進行させて投影レンズ17で投影することで、走行用配光パターンHPの大略上半分に重ねつつ走行用配光パターンHPよりも上方までも照らすように補助配光パターンAP(
図2参照)を形成する。なお、車両用灯具10は、第2光源12からの光の他部をシェード15の反射面15bで反射して投影レンズ17で投影することで補助配光パターンAPを形成するものであれば、補助レンズ16に入射させることなく反射面15bに直接進行させるものでもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0029】
実施例1の車両用灯具10は、ADB(Adaptive Driving Beam(配光可変型前照灯))とされており、第2光源12の5つの光源部12aを点灯すると、各光源部12aからの光がそれぞれ走行用配光部hpを形成する(
図2参照)。その5つの走行用配光部hpは、幅方向に並んで一体に形成されて、走行用配光パターンHPを形成する(
図2参照)。そして、車両用灯具10は、第2光源12の各光源部12aを個別に点灯および消灯することで、5つの走行用配光部hpのうちの特定の方向の部分的な消灯を可能としている(
図3参照)。これにより、車両用灯具10は、各光源部12aを個別に点灯および消灯することで、走行用配光パターンHPにおける任意の方向の部分的な消灯を可能としている。
【0030】
このとき、実施例1の車両用灯具10は、走行用配光パターンHPが特定の方向を部分的に消灯した場合であっても、走行用配光パターンHPの大略上半分に重ねて形成する補助配光パターンAPでは部分的な消灯が生じないものとしている。これは、車両用灯具10は、シェード15の下面に表面処理を施して反射面15bを形成しており、走行用配光パターンHPの各走行用配光部hpのようには補助配光パターンAPを光源部12a毎に分割して形成したものではないことによる。これにより、車両用灯具10は、走行用配光パターンHPの任意の方向を部分的に消灯した場合でも、その上方に補助配光パターンAPを残すことができ、乗員に違和感を与えることを抑制できる。なお、車両用灯具10は、走行用配光パターンHPの各走行用配光部hpのように、補助配光パターンAPを光源部12a毎に分割して形成するものとしてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0031】
このため、車両用灯具10は、第1光源11を点灯することで、カットオフラインClを有するすれ違い用配光パターンLPを形成でき、第2光源12の各光源部12aを点灯することで、走行用配光パターンHPおよび補助配光パターンAPを形成できる(
図2参照)。車両用灯具10は、第1光源11や第2光源12の各光源部12aを点灯制御することで、すれ違い用配光パターンLPと、走行用配光パターンHPおよび補助配光パターンAPと、を同時にまたは一方のみを適宜形成できる。また、車両用灯具10は、第2光源12の各光源部12aのうち、任意の向きに位置する光源部12aを消灯することで、対応する方向の走行用配光部hpのみを形成しないことができ、ADBの機能を実現できる(
図3参照)。
【0032】
このように、車両用灯具10は、第2光源12の上方に設けた補助レンズ16を、第2光源12が出射した光の一部のみを投影レンズ17へと導くものとし、第2光源12が出射した光の他部をシェード15の反射面15bでの反射により投影レンズ17へと進行させている。このため、車両用灯具10は、従来技術の透光部材のように第2光源12からの光の全てを投影レンズ17側に反射させる必要がないので、補助レンズ16における入射面16aや内部反射面16bや出射面16cの構成を必要最低限にでき、補助レンズ16を小さな構成とすることができる。ここで、第2光源12からの光の全てとは、第2光源12から出射される光のうちの所定の強度を超えたものであって所定の配光パターンを形成するために制御対象とされた光である。これにより、車両用灯具10は、第2光源12を第1光源11と上下方向で同じ位置(同一平面上)に設けても、第1光源11から出射されリフレクタ14で反射されて投影レンズ17へと向かう光の進行を、補助レンズ16が妨げることを防止できる。よって、車両用灯具10は、第1光源11および第2光源12が取り付けられる箇所(実施例1では上面13a)を平坦にでき、それらが取り付けられる部材(実施例1ではヒートシンク部材13)の形状を簡易なものにでき、第1光源11および第2光源12を同一平面上に設けることができる。なお、基板20と基板21とは、同一平面となる上面13a上に設けられているので、一体化した単一の基板としてもよい。
【0033】
特に、実施例1の車両用灯具10は、基板20および基板21を介して第1光源11および第2光源12をヒートシンク部材13に取り付けている。ここで、一般的にヒートシンクでは、熱源から放射状に熱が伝達するので、熱源を中心とする同心球状に大きな体積となる箇所を確保することで冷却性能を高めることができる。車両用灯具10は、ヒートシンク部材13の上面13aを平坦にしているので、上面13aに段差を設けることと比較して、段差に起因して部分的に欠けたりすることなく第1光源11および第2光源12のそれぞれの下方に大きな体積を有する同心球状の箇所の確保が容易となる。このため、車両用灯具10は、ヒートシンク部材13において第1光源11および第2光源12のそれぞれに対して熱伝達させるための体積を確保することができ、第1光源11や第2光源12を適切に冷却することができる。
【0034】
また、車両用灯具10は、シェード15の先端縁15aが尖るものとするとともに、そのシェード15に近接させて補助レンズ16を設けている。このため、車両用灯具10は、投影レンズ17の後側焦点の近傍に、すれ違い用配光パターンLPを形成する光路と走行用配光パターンHPを形成する光路とを近接させて設定できるので、すれ違い用配光パターンLPと走行用配光パターンHPとを重ねて形成できる。
【0035】
実施例1の車両用灯具10は、以下の各作用効果を得ることができる。
【0036】
車両用灯具10は、第2光源12から出射された光の一部を導光部としての補助レンズ16が投影レンズ17側に導くとともに、第2光源12から出射された光の他部を補助レンズ16の上方に設けたシェード15で投影レンズ17側に反射する。このため、車両用灯具10は、第2光源12が出射した光を、補助レンズ16とシェード15とで分担して投影レンズ17へと進行させている。このため、車両用灯具10は、補助レンズ16を小さな構成にでき、第1光源11と第2光源12とを上下方向で同じ位置(同一平面上)に設けても、第1光源11から出射されて反射面22で反射されて投影レンズ17へと向かう光を補助レンズ16が妨げることを防止できる。これにより、車両用灯具10は、第1光源11および第2光源12が取り付けられる部材の形状を簡易なものにできる。また、車両用灯具10は、第1光源11および第2光源12を、基板20と基板21とを一体化した共通の基板に設けることもできる。
【0037】
車両用灯具10は、第1光源11および第2光源12をヒートシンク部材13の上面13aに設けている。このため、車両用灯具10は、上面13aに段差を設ける必要がないので、第1光源11や第2光源12を適切に冷却することができる。
【0038】
車両用灯具10は、投影レンズ17が、補助レンズ16により導かれた光を光軸方向前側に投影してすれ違い用配光パターンLPの上方に走行用配光パターンHPを形成するとともに、シェード15の反射面15bにより反射された光を光軸方向前側に投影して走行用配光パターンHPの大略上半分に重ねつつその上方に補助配光パターンAPを形成する。このため、車両用灯具10は、走行用配光パターンHPを形成する光路と補助配光パターンAPを形成する光路とを、シェード15(その先端縁15a)すなわちすれ違い用配光パターンLPを形成する光路に近接させて設定できる。これにより、車両用灯具10は、すれ違い用配光パターンLPと走行用配光パターンHPとを重ねて形成できるとともに、その走行用配光パターンHPに補助配光パターンAPを重ねて形成できる。
【0039】
車両用灯具10は、第2光源12の複数の光源部12aのそれぞれからの光が形成する複数の走行用配光部hpを幅方向に並列させて走行用配光パターンHPを形成している。このため、車両用灯具10は、適切に冷却した第2光源12の各光源部12aを個別に点灯および消灯することで、複数の走行用配光部hpのうちの特定の方向の走行用配光部hpを部分的に消灯することができ、より適切にADBの機能を実現できる。
【0040】
車両用灯具10は、導光部を、第2光源12から出射された光の一部を入射させる透過部材で形成した補助レンズ16で構成している。このため、車両用灯具10は、簡易な構成で、第2光源12から出射された光の一部を補助レンズ16に入射させて投影レンズ17側に導くことができる。
【0041】
したがって、本開示に係る車両用灯具10としての実施例1の車両用灯具10は、すれ違い用配光パターンLPと走行用配光パターンHPとを重ねて形成しつつ第1光源11と第2光源12とを段差なく設けることができる。
【0042】
以上、本開示の車両用灯具を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0043】
なお、実施例1では、走行用配光パターンHPにおける任意の走行用配光部hpを形成しないことでADBの機能を実現できるものとしている。しかしながら、車両用灯具10は、第1光源11からの光をリフレクタ14で反射し投影レンズ17で投影してすれ違い用配光パターンLPを形成し、第2光源12からの光を導光部で導き投影レンズ17で投影して走行用配光パターンHPを形成するものであればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0044】
また、実施例1では、導光部を、第2光源12から出射された光の一部を入射させる透過部材で形成した補助レンズ16で構成している。しかしながら、導光部は、第2光源12から出射された光の一部を導光部(16)が投影レンズ17側に導くものであればよく、実施例1の構成に限定されない。この他の例としては、導光部を、第2光源12から出射された光の一部を反射させるミラー等の反射部材で形成することができる。この場合、導光部(反射部材)は、内部反射面16bと同様の反射面のみを有するものにできるので、より簡易な構成とすることができるとともに、第2光源12が出射した光の他部を入射面16aや出射面16cを通ることなく直接シェード15(その反射面15b)へと進行させることができ、光学的な設定をより簡易にできる。
【0045】
また、実施例1では、補助レンズ16をシリンドリカルレンズとしている。しかしながら、補助レンズ16は、第2光源12の複数(実施例1では5つ)の光源部12aに対応するものであればよく、実施例1の構成に限定されない。その他の例としては、例えば、各光源部12aに個別に対応して複数のレンズを設けるものとしてもよく、光源部12a毎に入射面と出射面が設計された自由曲面レンズを設けるものとしてもよい。その自由曲面レンズは、光源部12a毎に別体で設けるものとしてもよく、各光源部12aに対応するものを一体化したものとしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 車両用灯具 11 第1光源 12 第2光源 12a 光源部 14 リフレクタ 15 シェード 16 (導光部の一例としての)補助レンズ 17 投影レンズ AP 補助配光パターン Cl カットオフライン HP 走行用配光パターン hp 走行用配光部 LP すれ違い用配光パターン