(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】常用兼駐車ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
B60T 13/74 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
B60T13/74 G
(21)【出願番号】P 2018125565
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中野 啓太
(72)【発明者】
【氏名】武谷 弘隆
(72)【発明者】
【氏名】石丸 善隆
【審査官】田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/150449(WO,A1)
【文献】特開2018-090098(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150682(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダにシリンダ軸線周りの回転が規制された状態で該軸線方向に移動可能に組付けられて、該シリンダ内に第一液圧室を形成するピストンと、
このピストンが前記第一液圧室に供給されるブレーキ液によって押し出されることにより押動されて被制動回転体に係合し、該被制動回転体を制動する制動部材と、
モータの回転運動を直線運動に変換し、この直線運動によって前記ピストンを介し前記制動部材を押し出し、前記被制動回転体を制動させる電動力伝達機構と、を備え、
前記電動力伝達機構が、前記第一液圧室の液圧による前記ピストンの移動に応じ前記シリンダ軸線方向に伸縮するよう構成されていることを特徴とする常用兼駐車ブレーキ装置。
【請求項2】
前記電動力伝達機構は、
前記第一液圧室内にて前記ピストンに一体的に設けられて前記シリンダ軸線方向に延び、所定のリードを有する第一ねじ要素と、
前記モータからの回転運動を受け回転する回転運動伝達部に一体的に設けられ前記第一ねじ要素に螺合される第二ねじ要素と、を備えるとともに、
前記電動力伝達機構は、前記第一液圧室の液圧による前記ピストンの前記シリンダ軸線方向の移動に基づいて前記第二ねじ要素が前記第一ねじ要素と相対的に回転することで前記シリンダ軸線方向に伸縮可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の常用兼駐車ブレーキ装置。
【請求項3】
前記第二ねじ要素と連動して回転するラチェット歯車と、
前記ラチェット歯車に対して移動可能に配置され、前記ラチェット歯車と噛み合うことで該ラチェット歯車の回転を規制可能なつめ部材と、
通電により前記つめ部材と前記ラチェット歯車とが噛み合った状態と噛み合わない状態とを切替可能なアクチュエータと、を備えたことを特徴とする請求項2に記載の常用兼駐車ブレーキ装置。
【請求項4】
前記電動力伝達機構は、
前記第二ねじ要素と前記シリンダとの相対回転を制限する摩擦クラッチを備え、
前記モータの駆動により発生する前記電動力伝達機構に加わる前記シリンダ軸線方向の力制動反力が所定より大きい場合に、前記摩擦クラッチが前記シリンダと前記第二ねじ要素の相対回転を制限するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の常用兼駐車ブレーキ装置。
【請求項5】
前記電動力伝達機構は、
前記第一液圧室内にて前記ピストンに一体的に設けられ前記シリンダ軸線方向に延び第二液圧室を区画する押圧部材と、
この押圧部材に前記シリンダ軸線周りの回転が規制された状態で該軸線方向に移動可能に組付けられて、前記第二液圧室を区画するピストン部と、
このピストン部に一体的に設けられ前記シリンダ軸線方向に延び、所定のリードを有する第一ねじ要素と、
前記モータからの回転運動を受け回転する回転運動伝達部に一体的に設けられ前記第一ねじ要素に螺合される第二ねじ要素と、
前記第一ねじ要素と前記第二ねじ要素との前記シリンダ軸線方向の相対位置関係により前記第一液圧室と前記第二液圧室とを繋ぐ液路を開閉する弁体と、を備え、
前記第一液圧室の液圧による前記ピストンの前記シリンダ軸線方向の移動に伴い前記押圧部材が移動して前記第二液圧室を拡大、又は縮小することにより、前記電動力伝達機構が伸縮可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の常用兼駐車ブレーキ装置。
【請求項6】
前記第二液室のブレーキ液を逃がすリリーフ弁を備えた、請求項5に記載の常用兼駐車ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、常用兼駐車ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータによって駆動される回転部材の回転を直動部材の直動に変換し、当該直動部材によってピストンを介してパッドをディスクに押し付ける電動ブレーキが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の技術では、より応答性の高い電動ブレーキが得られれば、有益である。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、電動ブレーキにおける応答性をより高めることを可能とするようなより改善された新規な構成を備えたブレーキ装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の常用兼駐車ブレーキ装置は、例えば、シリンダにシリンダ軸線回りの回転が規制された状態で該軸線方向に移動可能に組付けられて、該シリンダ内に第一液圧室を形成するピストンと、このピストンが上記第一液圧室に供給されるブレーキ液によって押し出されることにより押動されて被制動回転体に係合し、該被制動回転体を制動する制動部材と、モータの回転運動を直線運動に変換し、この直線運動によって上記ピストンを介し上記制動部材を押し出し、上記被制動回転体を制動させる電動力伝達機構と、を備え、上記電動力伝達機構が、上記第一液圧室の液圧による上記ピストンの移動に応じ上記シリンダ軸線方向に伸縮するよう構成される。
【0007】
上記常用兼駐車ブレーキ装置では、モータの回転運動を直線運動に変換し、この直線運動によってピストンを介し制動部材を押し出し、被制動回転体を制動させる電動力伝達機構が、第一液圧室の液圧によるピストンの移動に応じシリンダ軸線方向に伸縮するよう構成されている。このような構成によれば、例えば、液圧による制動が行われた後には、第一液圧室の液圧の上昇によってピストンが被制動回転体側に移動するとこれに伴い電動力伝達機構がシリンダ軸線方向に伸長するため、該電動力伝達機構による制動開始時において、該機構がピストンを押し出すまでの無効なストローク動作(空走)が減り、応答性が良好となる。また、例えば、制動部材のライニングの摩耗が進展しピストンのシリンダからの突出量の増加に依存して無効なストロークが長くなっていた従来構成と比べて当該ストロークをより短くすることができるので、モータ駆動にかかる電動ブレーキの応答性をより高めることができる。また、被制動回転体の熱変形によりピストンが引き込み側に移動する場合にあっても、同様の効果が得られる。このため、従来構成で行われていた余裕を持った回転回数あるいは時間でモータを回転させ、ピストンと直動部との間に余分に隙間ができるように戻す制御が、不要になる。よって、制動位置からリトラクト位置への直動部およびピストンのストロークおよびリトラクト位置から制動位置への直動部およびピストンのストロークをより短くすることができ、電動ブレーキ機能における応答性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態のブレーキ装置の模式的かつ例示的な断面図であって、制動状態を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のブレーキ装置の模式的かつ例示的な断面図であって、リトラクト状態を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態のブレーキ装置の模式的かつ例示的な断面図であって、
図1よりもライニングがすり減った場合におけるリトラクト状態を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の変形例のブレーキ装置の模式的かつ例示的な断面図であって、制動状態を示す図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態のブレーキ装置の模式的かつ例示的な断面図であって、リトラクト状態を示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態のブレーキ装置の模式的かつ例示的な断面図であって、電動ブレーキによる制動状態を示す図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態のブレーキ装置の模式的かつ例示的な断面図であって、
図5よりもライニングがすり減った場合におけるリトラクト状態を示す図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態のブレーキ装置の模式的かつ例示的な断面図であって、
図8と同様にライニングがすり減った場合における電動ブレーキによる制動状態を示す図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の変形例のブレーキ装置の模式的かつ例示的な断面図であって、電動ブレーキによる制動状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0010】
以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、同様の構成要素については共通の符号が付与され、重複する説明が省略される。複数の実施形態では、同様の構成要素に基づく同様の作用および効果が得られる。
【0011】
また、各図において、ピストン43がパッド45を押圧する方向である第一方向は、矢印Xの指示方向であり、X方向とも称される。第二方向は、矢印Xの指示方向とは反対の方向であり、X方向の反対方向と称される。また、以下では、回転部51の回転の中心軸Axの軸方向は単に軸方向と称され、中心軸Axの径方向は単に径方向と称され、中心軸Axの周方向は単に周方向と称される。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態のブレーキ装置10の制動状態における断面図であり、
図2は、ブレーキ装置10の非制動状態(リトラクト状態)における断面図である。
図1に例示されるブレーキ装置10は、車両用ブレーキであって、ECU11(electronic control unit)と、モータ20と、回転伝達機構30と、回転直動変換機構50を内蔵するキャリパ40と、を備えている。常用兼駐車ブレーキ装置10は、常用の液圧ブレーキとして作動することができるとともに、駐車用の電動ブレーキとしても作動することができる。キャリパ40は、液圧ブレーキの構成要素であり、ECU11、モータ20、回転伝達機構30、回転直動変換機構50、およびキャリパ40は、電動ブレーキの構成要素である。ブレーキ装置10は、電動ブレーキ機能による制動状態が駐車時に維持されるよう、構成されている。ただし、電動ブレーキは、走行時や一時停止時に作動してもよい。ECU11は、制御装置の一例である。
【0013】
モータ20の作動は、ECU11によって制御される。モータ20のシャフト21の回転は、例えばギヤ31,32のような複数の回転要素を有した回転伝達機構30を介して、回転直動変換機構50の回転部51に伝達される。回転伝達機構30は、減速機構とも称されうる。回転伝達機構30及び回転直動変換機構50は、本発明の電動力伝達機構を構成し、回転部51は、本発明の回転運動伝達部を構成する。
【0014】
キャリパ40は、ボディ(不図示)、シリンダ42、およびピストン43を有している。シリンダ42は、ボディに設けられている。シリンダ42は、X方向に開放された有底円筒状の形状を有している。シリンダ42の内周面42aは、中心軸Axを中心とした円筒内面状の形状を有している。中心軸Axは、シリンダ42の中心軸線(シリンダ軸線)と一致する。
【0015】
ピストン43は、シリンダ42に中心軸Ax周りの回転が規制された状態で該中心軸Axに沿って往復動可能に収容されている。シリンダ42には第一液圧室R1が設けられている。第一液圧室R1における液圧の上昇に伴い、ピストン43はパッド45の裏板45aをX方向に押し、ライニング45bを被制動回転体90(ブレーキディスク)に押し付ける。これにより、被制動回転体90と一体に回転する車両のホイール(不図示)が制動された、液圧ブレーキによる制動状態が得られる。具体的に、ピストン43は、円筒外面状の外周面43aと、第一液圧室R1とは反対側(X方向)の端面43bと、を有している。ピストン43の外周面43aとシリンダ42の内周面42aとの間には微小な隙間(クリアランス)が設定されており、外周面43aは、当該隙間にブレーキ液が存在する潤滑状態で、内周面42aと摺動する。シール71は、外周面43aと内周面42aとの間に介在し、第一液圧室R1から隙間を介してのブレーキ液の漏れを抑制する。パッド45は、制動部材の一例である。
【0016】
また、シール71は、第一液圧室R1における液圧の下降に伴ってピストン43にシリンダ42内に引き込む方向(X方向の反対方向)に弾性力を作用させ、
図2に示されるように、ピストン43の端面43bをパッド45から離間させる。この機能は、リトラクト機能と称される。第一液圧室R1の液圧の低下に伴い、ピストン43の裏板45aへの押圧が解除されると、ピストン43によるライニング45bのディスクへの押し付けが解除され、これにより液圧ブレーキによる制動解除状態が得られる。このように、キャリパ40は、液圧ブレーキとして作動することができる。
【0017】
また、キャリパ40内、本実施形態ではシリンダ42内には、回転直動変換機構50が設けられている。回転直動変換機構50は、回転部(回転運動伝達部)51と直動部52とを有している。
【0018】
回転部51は、一体的に構成された、シャフト51aと、フランジ51bと、を有する。シャフト51aは、中心軸Axに沿って延びている。フランジ51bは、シャフト51aの軸方向の中間部から、径方向外方に張り出している。回転部51は、ボディ(不図示)に中心軸Ax回りに回転可能に支持されている。シャフト51aは、回転伝達機構30のギヤ32と一体に回転する。シャフト51aの、フランジ51bよりもパッド45に近い部位の外周面には、雄ねじ51cが設けられている。雄ねじ51cは、本発明の回転運動伝達部に一体的に設けられる第二ねじ要素を構成する。フランジ51bと、シリンダ42の底壁42bとの間には、スラストベアリング72およびワッシャ73が設けられている。スラストベアリング72は、例えば、ボールベアリングやニードルベアリングである。ワッシャ73は、板状かつ円環状の形状を有し、スラストベアリング72と底壁42bとの間に位置されている。
【0019】
直動部52は、雄ねじ51cと噛み合う雌ねじ52aを有している。ピストン43は、パッド45と面する端壁43cと、当該端壁43cからパッド45から離れるように突出した内筒43dと、を有している。雌ねじ52aは、内筒43dに設けられた孔43eの内周面に設けられている。雌ねじ52aは、ピストン43に一体的に設けられる本発明の第一ねじ要素を構成する。該雌ねじ52a及び雄ねじ51cは共に所定のリードを有して形成され螺合されるものである。
本実施形態では、直動部52は、ピストン43と一体に設けられている。言い換えると、直動部52は、ピストン43の一部である。よって、直動部52とピストン43とは、X方向およびX方向の反対方向に連動する。
【0020】
ピストン43の中心軸Ax回りの回転は、例えばシール71との摩擦により、制限されている。よって、回転部51の回転に伴い、直動部52およびピストン43は軸方向に往復することができる。
【0021】
ここで、本実施形態では、回転直動変換機構50の雄ねじ51cおよび雌ねじ52aは、負荷によるセルフロック機能を有さないねじ、例えばボールねじやすべりねじのような低摩擦ねじである。また、セルフロック機能を有さないねじは、上記以外にも、例えば、リードを長く設定することによっても得ることができる。よって、回転直動変換機構50は、第一液圧室R1における液圧の上昇およびリトラクトに伴うピストン43の軸方向の往復を妨げない。なお、液圧ブレーキの作動中にあっては、モータ20とバッテリ(不図示)とが電気的に接続されないよう、構成されている。
【0022】
上述したように、回転直動変換機構50は、低摩擦ねじを有しているため、第一液圧室R1における液圧の上昇およびリトラクトに伴うピストン43の軸方向の往復を妨げない。したがって、第一液圧室R1内に液圧が作用した状態では、
図1に示されるように、ピストン43は、パッド45と接する押圧位置Pp1(突出位置、制動位置)に位置される。また、第一液圧室R1内の液圧が低下した(解除された)状態にあっては、
図2に示されるように、ピストン43は、押圧位置Pp1から距離δだけX方向の反対方向へ離れたリトラクト位置Pr1(非押圧位置、非制動位置)に位置される(リトラクト状態)。よって、電動ブレーキの作動時にあっては、モータ20の回転開始に伴い直動部52および当該直動部52と一体のピストン43は、X方向にリトラクト位置Pr1から押圧位置Pp1へ距離δだけ移動し、電動ブレーキによる制動状態が得られる。
すなわち、本実施形態の電動力伝達機構(30,50)は、第一液圧室R1の液圧によるピストン43のX方向又はこれと反対方向の移動に基づいて回転部51が直動部52と相対的に回転することで中心軸Ax方向に伸縮可能に構成されている。
【0023】
図3は、
図1,2よりもライニング45bがすり減ったブレーキ装置10の非制動状態(リトラクト状態)における断面図である。
図1,2よりもライニング45bがすり減った場合も、第一液圧室R1内に液圧が作用した状態(不図示)では、ピストン43は、パッド45と接する押圧位置Pp2(突出位置、制動位置)に位置される。第一液圧室R1内の液圧が低下した(解除された)状態にあっては、
図3に示されるように、ピストン43は、押圧位置Pp2から距離δだけX方向の反対方向へ離れたリトラクト位置Pr2(非押圧位置、非制動位置)に位置される(リトラクト状態)。
【0024】
上述したように、第一液圧室R1内に液圧が作用した状態では、ピストン43は、パッド45に接するように位置されるため、
図2,3に示されるように、ライニング45bの摩耗に伴う裏板45aの中心軸Ax方向の位置の変化に伴い、ピストン43の押圧位置Pp1,Pp2(軸方向の位置)が変化し、当該ピストン43と一体に設けられた直動部52の中心軸Ax方向の位置も変化する。具体的には、ライニング45bが摩耗して薄くなり、裏板45aがX方向の前方に位置するほど、ピストン43および直動部52はX方向の前方に位置する。また、ピストン43のリトラクト位置Pr1,Pr2は、ピストンの押圧位置Pp1,Pp2から、シール71のスペック等によって定まる距離δだけX方向の反対方向に離れた(引っ込んだ)位置となるから、リトラクト状態における直動部52の軸方向の位置は、押圧状態における直動部52の軸方向の位置から距離δだけX方向の反対方向に離れた位置である。例えば、従来の技術に見られるような、ピストンと直動部とが別体とされて、かつ、第一液圧室の液圧によってピストンは移動しても直動部が移動しない(すなわち電動力伝達機構が伸縮しない)態様では、上述のようにライニングの摩耗によってピストンのリトラクト位置がX方向の前方に変位すると、その分だけ、電動力伝達機構による制動開始時において、該機構がピストンを押し出すまでの無効なストロークが大きくなる。その点、第一液圧室の液圧によって電動力伝達機構が伸縮する本発明では、上述のようにライニング45の摩耗によってピストン43のリトラクト位置がX方向の前方に変位したとしても、電動力伝達機構がピストン43の移動に伴い伸長するため、該電動力伝達機構による制動開始時において、該機構がピストン43を押し出すまでの無効なストローク動作は皆無であり、応答性は良好である。本実施形態によれば、リトラクト状態において、モータ20が、ピストン43の位置によらず、回転開始から少なくとも直動部52およびピストン43が距離δに対応する回転回数だけ回転することにより、電動ブレーキによる制動状態が得られる。また、被制動回転体90の熱変形によりピストン43が引き込み側に移動する場合にあっても、同様の効果が得られる。このため、従来構成で行われていた余裕を持った回転回数あるいは時間でモータを回転させ、ピストン43と直動部52との間に余分に隙間ができるように戻す制御が、不要になる。よって、本実施形態によれば、制動位置からリトラクト位置へのピストン43および直動部52のストロークおよびリトラクト位置から制動位置へのピストン43および直動部52のストロークをより短くすることができ、電動ブレーキ機能における応答性を高めることができる。
【0025】
このように、直動部52の軸方向の位置が、パッド45の摩耗に応じて変化するという作用は、直動部52とピストン43とが軸方向(X方向およびX方向の反対方向)に連動するように接続されるとともに、回転部51と直動部52とがセルフロック機能を有さないねじであることによって得られる。このように構成された回転直動変換機構50は、直動部52の軸方向の位置を変化させる第一可変機構とも称されうる。なお、本実施形態では、直動部52がピストン43と一体に設けられている、言い換えると直動部52がピストン43の一部として構成されているため、電動ブレーキによる制動状態を得るためのモータ20の回転開始、すなわち直動部52のX方向への移動開始から、直動部52とピストン43とは一体に移動する。しかしながら、直動部52およびピストン43はそのような構成には限定されず、例えば、直動部52とピストン43とは別部材であり例えばばねやリンクのような機械要素を介して接続される構成であってもよく、その場合には、例えば、電動ブレーキによる制動状態を得るためのモータ20の回転開始から所定回転数経過以降、すなわち直動部52がX方向への移動開始(初期位置)から所定距離(一定距離)移動した以降、直動部52とピストン43とが一体化される。
【0026】
また、本実施形態では、回転直動変換機構50のねじは、負荷に対抗できるセルフロック機能を有していないため、負荷に対する緩み止め機構として、ロック機構60を有している。
図1に例示されるロック機構60は、ボディ61と可動部材62とを有している。ボディ61内には、ECU11によって作動を制御される例えば電磁ソレノイドを備えた電動アクチュエータ61aが収容されている。可動部材62(つめ部材)は、電動アクチュエータ61aの作動に応じて、回転部51と連動して回転するギヤ32(ラチェット歯車)と噛み合って当該ギヤ32ひいては回転部51の回転を止める制限位置Pssと、ギヤ32と噛み合わず当該ギヤ32の回転を制限しないリリース位置Psrと、の間で往復移動可能に構成されている。ECU11によって制御された電動アクチュエータ61aは、電動ブレーキによる制動状態において、可動部材62を制限位置Pssに位置させる。これにより、負荷入力によりピストン43がX方向の反対方向へ移動し制動状態が解除されるのを抑制することができる。ロック機構60は、制限機構の一例であり、ギヤ32は、回転要素の一例であり、電動アクチュエータ61aは、アクチュエータの一例である。なお、ロック機構60は、電動ストッパや、ラッチ機構等とも称されうる。
【0027】
以上、説明したように、本実施形態では、液圧による制動が行われた後には、第一液圧室R1の液圧の上昇によってピストン43が被制動回転体90側に移動するとこれに伴い電動力伝達機構(30,50)が中心軸Ax方向に伸長するため、該電動力伝達機構による制動開始時において、該機構がピストン43を押し出すまでの無効なストローク動作(空走)が減り(本実施形態では0)、応答性が良好となる。また、例えば、制動部材のライニングの摩耗が進展しピストンがシリンダから突出するほど無効なストロークが長くなっていた従来構成と比べて当該ストロークをより短くすることができるので、モータ駆動にかかる電動ブレーキの応答性をより高めることができる。これにより、例えば、何らかの原因により液圧によるブレーキ機能が低下あるいは損なわれたような場合にあっても、電動ブレーキによってより迅速に制動状態を得ることができる。
【0028】
また、本実施形態では、制動状態において回転部51の回転を制限するロック機構60(制限機構)を備えている。このような構成によれば、例えば、負荷入力によってピストン43がX方向の反対方向(第二方向)に移動し電動ブレーキによる制動状態が解除されるのを抑制することができる。
【0029】
また、本実施形態では、電磁ソレノイドのような電動アクチュエータ61a(アクチュエータ)と、当該電動アクチュエータ61aの作動に応じて回転部51と連動して回転するギヤ32と噛み合って回転部51の回転を止める制限位置Pssとギヤ32の回転を制限しないリリース位置Psrとの間で往復移動可能な可動部材62と、を有したロック機構60である。このような構成によれば、例えば、制限機構を比較的簡素な構成として実現することができる。
【0030】
[第1実施形態の変形例]
図4に示すように、本変形例のブレーキ装置10は、制限機構として、ロック機構60に替えて、摩擦抵抗機構(摩擦クラッチ)60Aを備えている。摩擦抵抗機構60Aは、フランジ51bのX方向の反対方向の端面51b1と、シリンダ42に設けられ端面51b1と隙間をあけて軸方向に面した端面42cと、ワッシャ73と底壁42bとの間に介在し端面51b1と端面42cとが互いに離間する方向に回転部51およびシリンダ42を付勢するコイルスプリング63と、を有している。コイルスプリング63は、シャフト51aの周囲に隙間をあけて巻回されており、ワッシャ73(回転部51)および底壁42b(シリンダ42)に軸方向に離間する方向に弾性反発力を与えることが可能な圧縮ばねとして構成されている。このような構成においては、電動ブレーキによる制動状態において、パッド45からピストン43への閾値(設計値、設定値)を超えた負荷の入力により回転部51がX方向の反対方向へ移動し、フランジ51bの端面51b1とシリンダ42の端面42cとが当接する。この状態においては、端面51b1と端面42cとの摩擦抵抗により、回転部51の回転が制限されるため、直動部52およびピストン43のX方向の反対方向(第二方向)への移動が制限される。本変形例によれば、例えば、制限機構を比較的簡素な構成として実現することができる。
【0031】
[第2実施形態]
図5は、本実施形態のブレーキ装置10Aの非制動状態(リトラクト状態)における断面図、
図6は、直動部52Aの一部の拡大図、また、
図7は、ブレーキ装置10Aの電動ブレーキによる制動状態における断面図である。
【0032】
本実施形態では、ピストン43Aと直動部52Aとは別部材として分離されている。ピストン43Aには、X方向の反対方向に向けて第一液圧室R1に開放された有底孔43fを備えた押圧部材43jが一体的に設けられている。押圧部材43jの有底孔43fは、中心軸Axを中心とし該中心軸Ax方向に延びる円筒内面状の内周面43gと、当該内周面43gのX方向の端部と隣接し軸方向と直交した略円形状の底面43hと、によって構成されている。なお、押圧部材43jは、ピストン43Aとは一体であってもよいし、別部材であってもよい。
【0033】
回転直動変換機構50Aは、回転部(回転運動伝達部)51と、直動部(ピストン部)52Aとを有している。直動部52Aの外周面52bと押圧部材43jの内周面43gとの間には微小な隙間(クリアランス)が設定されており、外周面52bは、当該隙間にブレーキ液が存在する潤滑状態で、内周面43gと摺動する。外周面52bと内周面43gとの間にはカップシール53が介在する。このような構成において、直動部52Aは、ピストン43Aをシリンダとするピストン部として機能し、ピストン43Aと直動部52Aとの間には、第二液圧室R2が区画形成されている。なお、カップシール53は、外周面52bと内周面43gとの隙間を介しての第一液圧室R1から第二液圧室R2へのブレーキ液の流入を許容する一方で第二液圧室R2から第一液圧室R1へのブレーキ液の流出を抑制する。
【0034】
直動部52Aには、X方向に開放された第一有底孔52cと、X方向の反対方向に開放された第二有底孔52dとが設けられている。
図6に示されるように、第一有底孔52cは、中心軸Axを中心とする円筒内面状の内周面52c1と、当該内周面52c1のX方向の反対方向の端部と隣接し軸方向と直交した略円形状の底面52c2と、によって構成されている。第二有底孔52dは、中心軸Axを中心とする円筒内面状の内周面52d1と、当該内周面52d1のX方向の端部と隣接し軸方向と直交した略円形状の底面52d2と、によって構成されている。第一有底孔52cは、直動部52AのX方向の端部に固定された板状のカバー52eによって覆われている。カバー52eには、複数の穴52fが設けられている。第二有底孔52dの内周面52d1には、雌ねじ52aが設けられている。また、直動部52Aには、第二有底孔52dと第一液圧室R1とを接続する穴52gが設けられている。
【0035】
第一有底孔52cと第二有底孔52dとの間、言い換えると底面52c2と底面52d2との間には、隔壁52hが設けられている。隔壁52hは、軸方向と直交した円板状の形状を有している。隔壁52hの径方向の中心には、軸方向に延びて第一有底孔52cと第二有底孔52dとを接続する貫通孔52iが設けられている。貫通孔52iは、第一有底孔52cと第二有底孔52dとを繋ぐ液路である。第一有底孔52cは、穴52fを介して第二液圧室R2と接続され、第二有底孔52dは、穴52gを介して第一液圧室R1と接続されている。
【0036】
直動部52Aは、貫通孔52iの開閉を切り替える開閉弁54を有している。開閉弁54は、弁座としての第一有底孔52cの底面52c2と、当該底面52c2にX方向の反対方向に着座する弁体54aと、弁体54aを着座方向、すなわちX方向の反対方向に付勢するコイルスプリング54bと、を有している。コイルスプリング54bは、付勢部材の一例である。
【0037】
図5に示されるように弁体54aが底面52c2から離れた開弁状態にあっては、第二液圧室R2と第一液圧室R1とは、穴52f、第一有底孔52c、貫通孔52i、第二有底孔52d、および穴52gを介して接続される。他方、
図7に示されるように、弁体54aが底面52c2と接した閉弁状態にあっては、貫通孔52iが弁体54aによって覆われるため、第二液圧室R2と第一液圧室R1とは遮断される。上述したように、直動部52Aの外周面52bとピストン43Aの内周面43gとの間の隙間は、カップシール53によってシールされているため、
図7に示される開閉弁54の閉弁状態においては、第二液圧室R2は、第一液圧室R1とは遮断され、密閉される。言い換えると、第二液圧室R2内にブレーキ液が閉じ込められる。
【0038】
また、開閉弁54は、
図5に示されるように、直動部52Aが初期位置Pl1に位置されている状態では、弁体54aが回転部51から相対的にX方向に押されて開弁する。具体的に、弁体54aは、
図6に示されるように、ボディ54a1と、当該ボディ54a1からX方向の反対方向に延びて貫通孔52iを軸方向に貫通したロッド54a2を有している。
図5に示されるように、直動部52Aが初期位置Pl1に位置されている状態では、ロッド54a2のX方向の反対方向の先端が回転部51のX方向の端部51dと当接する。この状態では、コイルスプリング54bによってX方向の反対方向に付勢される弁体54aは、ロッド54a2が回転部51の端部51dに支持されることにより、言い換えると、ロッド54a2が回転部51の端部51dによってX方向に相対的に押圧されることにより、弁座としての底面52c2から離間した状態、すなわち開弁状態となる。端部51dは、押圧部の一例である。
【0039】
また、開閉弁54は、
図7に示されるように、直動部52Aが初期位置Pl1からX方向に離間した電動ブレーキの作動位置Pl2に位置されている状態では、回転部51の端部51dによる弁体54aに対するX方向への相対的な押圧が解除されるよう、構成されている。上述したように、弁体54aは、コイルスプリング54bによってX方向の反対方向へ付勢されているため、回転部51の端部51dによる弁体54aに対するX方向への相対的な押圧が解除された状態では、弁座としての底面52c2に着座する。
【0040】
図5の状態では、開閉弁54が開いているため、ブレーキ液は第一液圧室R1と第二液圧室R2との間で往来することができる。よって、この状態では、ピストン43Aは、直動部52Aに対して相対的に、X方向およびX方向の反対方向に移動することができる。液圧による制動状態(不図示)では、直動部52Aは初期位置Pl1に位置される。これにより、ピストン43Aは、第一液圧室R1および第二液圧室R2の液圧によりX方向に押圧される。
【0041】
他方、
図7の状態では、開閉弁54が閉じているため、第二液圧室R2内にブレーキ液が閉じ込められる。よって、電動ブレーキの作動時において、ピストン43Aは、X方向に移動する直動部52Aに連動し、直動部52Aとピストン43Aとは一体的にX方向へ移動する。
【0042】
また、直動部52Aが作動位置Pl2から初期位置P11に戻るよう駆動されX方向の反対方向へ移動し、弁体54aのロッド54a2が回転部51の端部51dに押接されると、開閉弁54が開状態となる。
【0043】
図8は、
図5,7よりもライニング45bがすり減ったブレーキ装置10Aの非制動状態(リトラクト状態)における断面図であり、
図9は、
図8と同じライニング45bがすり減ったブレーキ装置10Aの電動ブレーキによる制動状態における断面図である。
図5,7よりもライニング45bがすり減った場合も、電動ブレーキによる制動時において、ECU11は、
図8に示されるリトラクト状態から、
図7の場合と同じ直動部52Aのストロークsを得るのに必要な所定の回転回数だけモータ20を回転させることにより、直動部52Aを初期位置Pl1から作動位置Pl2までX方向に移動させ、
図9に示される電動ブレーキによる制動状態を得ることができる。
図5と
図8との比較、および
図7と
図9との比較により、直動部52Aが初期位置Pl1に位置されている液圧による制動状態(不図示)では開閉弁54が開状態でありピストン43Aの位置に応じて第二液圧室R2の軸方向の長さが長くなることができるため、ピストン43Aの位置に応じて直動部52Aの初期位置Pl1および作動位置Pl2を変更する必要が無いことが、理解できよう。
本実施形態では、回転伝達機構30(
図4参照)、回転直動変換機構50A、押圧部材43j、カップシール53及び開閉弁54によって、本発明の電動力伝達機構が構成される。
【0044】
以上、説明したように、本実施形態では、液圧による制動が行われた後には、第一液圧室R1の液圧の上昇によってピストン43Aが被制動回転体90側に移動するとこれに伴い電動力伝達機構(30,50A,43j,53,54)が中心軸Ax方向に伸長するため、該電動力伝達機構による制動開始時において、該機構がピストン43Aを押し出すまでの無効なストローク動作(空走)が減り、応答性が良好となる。また、例えば、制動部材のライニングの摩耗が進展しピストンがシリンダから突出するほど無効なストロークが長くなっていた従来構成と比べて当該ストロークをより短くすることができるので、モータ駆動にかかる電動ブレーキの応答性をより高めることができる。これにより、例えば、何らかの原因により液圧によるブレーキ機能が低下あるいは損なわれたような場合にあっても、電動ブレーキによってより迅速に制動状態を得ることができる。
【0045】
[第2実施形態の変形例]
図10は、ブレーキ装置10Bの電動ブレーキによる制動状態における断面図である。
図10に示されるように、本変形例では、上記第2実施形態の構成に、第二液圧室R2の液圧が閾値を超えた場合に当該第二液圧室R2の液圧を第一液圧室R1に逃がすリリーフ弁80が追加されている。リリーフ弁80は、弁座81と、弁体82と、コイルスプリング83と、を有している。コイルスプリング83は、弁体82をX方向に付勢し、弁体82は、弁座81にX方向に着座することにより、隔壁52hに設けられた貫通孔52jをX方向に覆う(閉状態)。第二液圧室R2内の液圧が過度に上昇して閾値を超えると、コイルスプリング83によるX方向への付勢力に抗って弁体82が弁座81からX方向の反対方向へ離れ、第一有底孔52cのブレーキ液が貫通孔52jを介して第二有底孔52dへ流出する。コイルスプリング83は、付勢部材の一例である。
【0046】
本変形例によれば、リリーフ弁80を設けたことにより、
図10に示されるように、直動部52Aを、
図7,9の作動位置Pl2よりもX方向に離れピストン43Aを直接押圧する押圧位置Pl3に位置させることができる。仮に、上記第2実施形態の構成により、駐車状態を得ようとすると、その時間経過によっては、第二液圧室R2からの作動液の漏れにより、制動力が減少してしまう虞がある。この点、本変形例によれば、駐車時において電動ブレーキによるより確実な駐車状態を得ることができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。例えば、回転直動変換機構や、回り止め機構は、種々の構成として実現されうる。
【0048】
例えば、回転直動変換機構の構成は、上記実施形態には限定されず、例えば、回転部に雌ねじが設けられ、直動部に雄ねじが設けられるようなものであってもよい。また、開閉弁のスペックは、上記実施形態には限定されず、例えば、弁座が円錐内面状の形状を有してもよいし、例えば、回転部の端部に設けられたロッドが弁体を押圧する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
10,10A,10B…常用兼駐車ブレーキ装置、20…モータ、32…ギヤ(ラチェット歯車)、42…シリンダ、43,43A…ピストン、45…パッド(制動部材)、50,50A…回転直動変換機構(電動力伝達機構)、51…回転部、51c…雄ねじ(第二ねじ要素)、51d…端部(押圧部)、52,52A…直動部、52c2…底面(弁座)、52i…貫通孔、54…開閉弁、54a…弁体、60…ロック機構(制限機構)、60A…摩擦抵抗機構(制限機構)、61a…電動アクチュエータ(アクチュエータ)、62…可動部材(つめ部材)、80…リリーフ弁、90…被制動回転体、R1…第一液圧室、R2…第二液圧室、X…方向(第一方向)、Y…方向(第二方向)。