(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】液体吐出装置及び液体吐出装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20221206BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/01 401
B41J2/165 101
B41J2/01 305
(21)【出願番号】P 2018130786
(22)【出願日】2018-07-10
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】知野 徹
(72)【発明者】
【氏名】深澤 洸貴
(72)【発明者】
【氏名】玉木 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 俊明
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-307749(JP,A)
【文献】特開平10-147029(JP,A)
【文献】特開平10-202914(JP,A)
【文献】特開2003-334961(JP,A)
【文献】特開2003-001852(JP,A)
【文献】特開2007-261136(JP,A)
【文献】特開2018-047635(JP,A)
【文献】特開平04-086264(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0252670(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される媒体に液体を吐出可能な吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドと前記吐出ヘッドに供給される液体を収容する液体収容体とを搭載し、第1軸方向に移動するキャリッジと、
前記第1軸方向において、前記媒体が搬送される範囲である搬送領域の外側に配置され、前記吐出ヘッドのノズルが開口するノズル面に接触可能なキャップと、
前記キャリッジが、前記第1軸方向において、前記搬送領域における前記キャップ側の側端と、前記キャップとの間の領域に前記ノズル面が対向する第1位置にあるとき、前記キャリッジのうち、搬送される前記媒体側の面であるキャリッジ面に接触可能な突起と、
前記キャリッジの移動を制御する制御部と、を備え、
前記キャリッジが、前記第1位置にある状態で、前記キャリッジ面と前記突起とが接触するとき、前記ノズル面と前記ノズル面に対向する面との間に隙間があり、
前記制御部は、前記液体収容体の交換又は前記液体収容体への液体補充に係る補助動作において、
前記キャリッジを前記第1位置
に位置させ
る、ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
搬送される媒体に液体を吐出可能な吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドと前記吐出ヘッドに供給される液体を収容する液体収容体とを搭載し、第1軸方向に移動するキャリッジと、
前記媒体を、前記第1軸方向と交差する第2軸方向に搬送する搬送部と、
前記第1軸方向において、前記媒体が搬送される範囲である搬送領域の外側に配置され、前記吐出ヘッドのノズルが開口するノズル面に接触可能なキャップと、
前記キャリッジの移動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記液体収容体の交換又は前記液体収容体への液体補充に係る補助動作において、前記第1軸方向において、前記搬送領域における前記キャップ側の側端と、前記キャップとの間の領域に前記ノズル面が対向する第1位置に前記キャリッジを位置させる
とともに、前記補助動作において、前記媒体を搬送させて当該媒体のうち前記吐出ヘッドにより液体が吐出された領域を前記第2軸方向におけるノズル面対向領域の外側へ退避させる退避動作を行う、ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
前記媒体を、前記第1軸方向と交差する第2軸方向に搬送する搬送部を備え、
前記制御部は、前記補助動作において、前記媒体を搬送させて当該媒体のうち前記吐出ヘッドにより液体が吐出された領域を前記第2軸方向
におけるノズル面対向領域の外側へ退避させる退避動作を行
う、ことを特徴とする請求項
1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記補助動作は、前記液体収容体の交換に係る補助動作であり、
前記制御部は、前記補助動作において、前記退避動作後に前記液体収容体の交換が完了したことを検出したとき、前記退避動作における前記媒体の搬送方向と逆方向へ媒体を搬送し、前記逆方向へ搬送された前記媒体に前記液体を吐出させる、ことを特徴とする請求項
2又は請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記補助動作は、前記液体収容体への液体補充に係る補助動作であり、
前記制御部は、前記補助動作において、前記退避動作後に前記液体収容体への液体補充が完了したことを検出したとき、前記退避動作における前記媒体の搬送方向と逆方向へ媒体を搬送し、前記逆方向へ搬送された前記媒体に前記液体を吐出させる、ことを特徴とする請求項
2又は請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記退避動作において、前記液体が吐出された領域を、前記第2軸方向において前記ノズル面と対向可能な領域よりも、前記吐出ヘッドにより前記液体が吐出される前の領域と反対側に位置させる、ことを特徴とする請求項
2~請求項5のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体が吐出された前記媒体が排出される排出口を有する筐体を備え、
前記制御部は、前記退避動作において、前記液体が吐出された領域を、前記排出口から前記筐体の外に位置させる、ことを特徴とする請求項
2~請求項6のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
搬送される媒体に液体を吐出可能な吐出ヘッドと
、液体収容体と前記吐出ヘッドとを搭載し、第1軸方向に移動するキャリッジと、
前記第1軸方向において、前記媒体が搬送される範囲である搬送領域の外側に配置され、前記吐出ヘッドのノズル面に接触可能なキャップと、前記媒体を、前記第1軸方向と交差する第2軸方向に搬送する搬送部と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、
前記液体収容体の交換又は前記液体収容体への液体補充に係る補助動作において、前記キャリッジを移動させて、前記ノズル面を、前記第1軸方向において、前記媒体の
前記搬送領域における前記キャップ側の側端と、前記キャップとの間の領域に対向する位置に位置させるとともに、前記補助動作において、前記媒体を搬送させて当該媒体のうち前記吐出ヘッドにより液体が吐出された領域を前記第2軸方向におけるノズル面対向領域の外側へ退避させる退避動作を行う、ことを特徴とする液体吐出装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に対して液体を吐出する吐出ヘッドと、吐出ヘッドを移動させるキャリッジと、吐出ヘッドに供給される液体を収容する液体収容体がキャリッジに搭載される液体吐出装置及び液体吐出装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の液体吐出装置として、吐出ヘッドが液体の一例としてのインクを吐出して、用紙等の媒体に文書又は画像を印刷するインクジェット式の記録装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された記録装置においては、液体収容体の一例であるインクカートリッジを交換する際のインクの飛散によりプラテンが汚れることを回避するカートリッジ交換方法を採用する。この記録装置では、カートリッジ交換時モードが指示されると、給紙カセット内の記録紙一枚が給紙され、記録ヘッドとプラテンとの間に配置される。カートリッジが交換位置にある状態で、使用者によりカートリッジが取り外され、新しいカートリッジに交換される。カートリッジ交換後は、記録ヘッドとプラテンとの間に載置された記録紙を排出すると共に、キャリッジをカートリッジの交換位置からメンテナンス位置まで移動し、記録ヘッドのクリーニングを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の記録装置では、カートリッジ交換時に記録紙等の媒体が一枚無駄になってしまう。また、ロール紙等のロール体から繰り出された連続紙等の連続媒体に印刷する場合、印刷の途中で液体エンドになったときに搬送領域に媒体を残したままでカートリッジ交換が行われる。カートリッジ交換時は、カートリッジの取り外し時のインクの飛散以外に、カートリッジ装着時にキャリッジにかかる押し込み圧の影響で、吐出ヘッドのノズルから液体が漏れ出てノズル面に液体が付着したり液滴が落下したりする場合がある。カートリッジ交換後は、カートリッジの交換位置から吐出ヘッドをメンテナンス装置が有するキャップと対向するメンテナンス位置まで移動する途中で、吐出ヘッドから媒体への液滴の落下、又は浮き上がった媒体に吐出ヘッドのノズル面が擦れて媒体を液体で汚す虞があるという課題がある。
【0005】
なお、この種の課題は、キャリッジに搭載される液体収容体がタンクであり、キャリッジに搭載されたまま液体収容体に液体を注入するタイプでも、液体注入時のボトルの押し付け圧や液体注入後に液体収容体の注入口に栓部を嵌めるときの押し込み圧などの影響で吐出ヘッドのノズルから液体が漏れ出る場合がある。よって、液体収容体を搭載可能なキャリッジを備えた液体吐出装置において、上記の課題は概ね共通する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する液体吐出装置は、搬送される媒体に液体を吐出可能な吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドと前記吐出ヘッドに供給される液体を収容する液体収容体とを搭載し、第1軸方向に移動するキャリッジと、前記第1軸方向において、前記媒体が搬送される範囲である搬送領域の外側に配置され、前記吐出ヘッドのノズルが開口するノズル面に接触可能なキャップと、前記キャリッジの移動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記液体収容体の交換又は前記液体収容体への液体補充に係る補助動作において、前記第1軸方向において、前記搬送領域における前記キャップ側の側端と、前記キャップとの間の領域に前記ノズル面が対向する第1位置に前記キャリッジを位置させる。
【0007】
上記課題を解決する液体吐出装置の制御方法は、搬送される媒体に液体を吐出可能な吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドのノズル面に接触可能なキャップと、液体収容体と前記吐出ヘッドとを搭載し、第1軸方向に移動するキャリッジと、を備える液体吐出装置の制御方法であって、前記液体収容体の交換又は前記液体収容体への液体補充に係る補助動作において、前記キャリッジを移動させて、前記ノズル面を、前記第1軸方向において、前記媒体の搬送領域における前記キャップ側の側端と、前記キャップとの間の領域に対向する位置に位置させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態における液体吐出装置を示す斜視図。
【
図2】液体吐出装置のメンテナンスカバーを開けた状態を示す斜視図。
【
図3】液体吐出装置の
図1における3-3線で破断した模式側断面図。
【
図4】液体吐出装置の内部を示し、キャリッジがホーム位置にあるときの平面図。
【
図5】液体吐出装置の内部を示し、キャリッジがカートリッジ交換を行う第1位置にあるときの平面図。
【
図6】キャリッジがホーム位置にあるときの模式正面図。
【
図7】キャリッジが第1位置にあるときの模式正面図。
【
図8】液体カートリッジを装着するときの模式正面図。
【
図10】吐出ヘッドに対するワイピング動作を示す模式正面図。
【
図11】吐出ヘッドのワイピング終了時の位置を示す模式正面図。
【
図12】液体エンドによる印刷中断時の吐出ヘッドと媒体とを示す模式平面図。
【
図14】印刷を再開するときの媒体の復帰位置を示す模式平面図。
【
図15】液体吐出装置の電気的構成を示すブロック図。
【
図16】カートリッジ交換に係る補助動作の制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、液体吐出装置の一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態の液体吐出装置は、用紙等の媒体に対して液体の一例であるインクを噴射して媒体に文字や画像等を印刷するインクジェット式のプリンターである。
【0010】
図1では、液体吐出装置11が水平面上に置かれているものとして鉛直方向をZ軸で示し、水平面に沿う方向をX軸方向及びY軸方向として図示する。すなわち、液体吐出装置11を正面から見た場合において幅方向になるX軸方向と、奥行方向になるY軸方向と、鉛直方向になるZ軸方向とは、それぞれが異なる方向であり、相互に直交する。奥行方向は、一端側を前面側もしくは前側、一端側とは反対の他端側を背面側もしくは後側ということもある。なお、X軸方向が第1軸方向の一例に相当し、Y軸方向が第2軸方向の一例に相当する。
【0011】
図1に示すように、液体吐出装置11は、略直方体状の筐体12を備える。筐体12の上面には、後側に位置する給紙カバー13と前側に位置するメンテナンスカバー14とが開閉可能に設けられている。筐体12の上面におけるメンテナンスカバー14とX軸方向で隣り合う位置には、液体吐出装置11の各種の操作を行うための操作パネル15が設けられている。
【0012】
図1に示すように、筐体12内には、キャリッジ20がX軸方向に移動可能に設けられている。キャリッジ20には、搬送される媒体Mにインク等の液体を吐出可能な吐出ヘッド21が搭載されている。吐出ヘッド21は、搬送される媒体Mと対向可能にキャリッジ20の底部に固定されている。キャリッジ20がX軸方向に往復移動しながら吐出ヘッド21から液体を媒体Mに向かって吐出することで、媒体Mには液滴が吐出される領域である印刷領域IAに画像又は文書が印刷される。液体吐出装置11は、筐体12の前面に排出口16を備える。筐体12内で吐出ヘッド21が液体を吐出して画像等が形成された印刷済みの媒体Mが、排出口16から排出される。本実施形態では、X軸方向は、キャリッジ20の移動方向である走査方向に一致する。
【0013】
図2に示すように、メンテナンスカバー14は、後端部を軸に開閉可能である。メンテナンスカバー14を開けると、筐体12の上面に設けられた開口12Aから、キャリッジ20及びキャリッジ20の移動領域MAが露出する。また、開口12Aからは、キャリッジ20をX軸方向に移動させる移動機構22の一部も露出する。移動機構22は、キャリッジ20の動力源であるキャリッジモーター23と、一対のプーリー24と、一対のプーリー24に巻き掛けられその一部がキャリッジ20に固定されたタイミングベルト25等により構成される。キャリッジモーター23が正逆転駆動されることで、キャリッジ20は移動領域MAをX軸方向に往復移動し、移動中に吐出ヘッド21から液体を吐出することで媒体Mに印刷する。また、キャリッジ20の移動経路に沿ってリニアエンコーダーよりなる第1エンコーダー26が張設されている。キャリッジ20は、第1エンコーダー26から出力されるパルス信号に基づいて速度制御及び位置制御される。
【0014】
キャリッジ20には、吐出ヘッド21に供給するインク等の液体が収容される液体収容体の一例である液体カートリッジ27を着脱可能に装着される。キャリッジ20は、複数の液体カートリッジ27と吐出ヘッド21とを搭載し、X軸方向に移動する。液体カートリッジ27は、キャリッジ20において吐出ヘッド21よりも上方位置に装着される。キャリッジ20は、複数の液体カートリッジ27を収容可能な本体20Aと、本体20Aに収容された複数の液体カートリッジ27を上側から被うカバー20Bとを有している。液体カートリッジ27は、例えばシアン、マゼンタ、イエロー、黒の4色を含む複数色のインクをそれぞれ収容する複数個が装着される。例えば黒1色の液体カートリッジ27が1つ装着されるだけの構成でもよい。なお、液体収容体は、液体カートリッジ27に限らず、キャリッジ20に搭載され、液体が収容されるタンク又はアダプターでもよい。
【0015】
キャリッジ20は印刷が行われないときは、
図2に示すホーム位置HPで待機する。ホーム位置HPにあるときのキャリッジ20の下方には、吐出ヘッド21に対してメンテナンスを行うメンテナンス装置28が設けられている。メンテナンス装置28は、キャップ29、ポンプ30、
図6に示すワイパー31等を備える。キャップ29は、キャリッジ20の移動領域MAにおいてキャリッジ20と共にX軸方向に移動する吐出ヘッド21が媒体Mに液体を吐出して移動する範囲よりも外側に配置されている。換言すれば、X軸方向において、吐出ヘッド21が媒体Mに液体を吐出して移動する範囲に対して、当該範囲の境界よりも外側に、キャップ29が配置される。キャリッジ20がホーム位置HPに待機するときに、吐出ヘッド21はキャップ29が接触することでキャッピングされる。キャッピングにより吐出ヘッド21のノズル内のインクの増粘又は乾燥が抑制される。
【0016】
図3に示すように、液体吐出装置11は、筐体12内にX軸方向に延伸するガイド軸32を備える。ガイド軸32は、筐体12内におけるZ軸方向の所定の高さ位置にフレーム18に支持された状態で架設されている。本例では、ガイド軸32の上方となる高さ位置でX軸方向に延びるレール部33を有する。レール部33はフレーム18の一部を曲げ加工して形成され、ガイド軸32と共に支軸として機能する。キャリッジ20は、ガイド軸32及びレール部33に案内されてガイド軸32の延伸方向であるX軸方向に移動可能となっている。吐出ヘッド21は、キャリッジ20に支持されてX軸方向にキャリッジ20と共に往復移動する。吐出ヘッド21は、インク等の液体を吐出するノズルNが開口するノズル面21Aを有する。なお、
図3では、ノズルNを模式的に4つ図示するが、例えばY軸方向に100~500個の範囲内の所定数設けられている。
【0017】
また、液体吐出装置11は、キャリッジ20を移動させる移動機構22を備える。移動機構22は、キャリッジ20を支持するガイド軸32及びレール部33の他、キャリッジ20の動力源であるキャリッジモーター23と、キャリッジモーター23の動力で回転するプーリー24に巻き掛けられたタイミングベルト25等により構成される。キャリッジ20は、タイミングベルト25の一部に固定されており、キャリッジモーター23が正逆転駆動されることによりX軸方向に往復移動する。また、液体吐出装置11は、キャリッジ20のX軸方向における移動位置を検出するための第1エンコーダー26を備えている。
【0018】
液体吐出装置11は、媒体Mを給送する給送部35を備える。給送部35は、媒体Mを円筒状に巻き重ねたロール体Rを装填可能かつ回転可能な給送軸36を備える。給送軸36の動力源である
図13に示す給送モーター37が駆動されて給送軸36と共にロール体Rが
図3における反時計方向に回転することで、媒体Mが繰り出される。ロール体Rから繰り出された媒体Mは、例えば連続紙である。また、給送部35は、
図2において二点鎖線で示すように、供給口17を介して、例えば単票紙よりなる媒体Mも供給可能である。
【0019】
また、
図3に示すように、液体吐出装置11は、給送部35から給送される媒体Mをガイドするガイド部材38と、ガイド部材38にガイドされる媒体Mを搬送する搬送部40とを備える。搬送部40は、媒体Mを、少なくとも、X軸方向と交差する方向である第2軸方向の一例であるY軸方向に搬送する。搬送部40は、
図13に示す搬送モーター41を動力源とする。また、液体吐出装置11は、搬送部40に搬送される媒体Mを支持する支持台42を備える。支持台42の上面は、媒体Mが載置される載置面42Aとなっている。搬送部40は、吐出ヘッド21のX軸方向と交差する方向に媒体Mを搬送する。なお、本実施形態では、X軸方向は、Y軸方向に搬送される媒体Mの幅方向に一致する。
【0020】
搬送部40は、媒体Mが搬送される搬送経路において、吐出ヘッド21よりも上流側に位置する搬送ローラー対43と、吐出ヘッド21よりも下流側に位置する中継ローラー対44と、中継ローラー対44よりも下流側に位置する排出ローラー対45とを備える。搬送ローラー対43は、媒体Mを挟み込む状態で回転することにより、媒体Mを支持台42に向けて搬送する。中継ローラー対44は、支持台42よりも下流側に配置され、排出ローラー対45に向けて媒体Mを送り出す。搬送経路の搬送ローラー対43と排出ローラー対45との間において、媒体Mは、吐出ヘッド21から吐出されるインク滴の吐出方向を法線とする面内に含まれる軸方向に搬送される。本実勢形態においては、インク滴の吐出方向はZ方向であり、媒体Mの搬送方向はX軸方向に直交するため、搬送経路の搬送ローラー対43と排出ローラー対45との間における媒体Mの搬送方向は、Y軸方向に平行である。
【0021】
吐出ヘッド21は、媒体Mにおける支持台42に支持された部分に液体を吐出して画像等を印刷する。吐出ヘッド21は、ノズルNが開口するノズル面21Aが支持台42の載置面42Aと対向する姿勢でキャリッジ20に搭載されている。吐出ヘッド21は、キャリッジ20と共にX軸方向に移動しながら、載置面42Aに載置される媒体Mに対してインク等の液体を吐出して印刷する印刷処理を行うインクジェットヘッドである。液体吐出装置11は、吐出ヘッド21が吐出したインク滴を媒体Mに付着させてドット群よりなる画像を印刷する。
【0022】
また、液体吐出装置11は、吐出ヘッド21により記録された媒体Mを切断可能な切断部46を備える。切断部46は、回転可能な一対の回転刃46Aを有する。一対の回転刃46Aは、媒体Mを上下で挟み込み可能な位置に配置されている。切断部46は、回転刃46Aが上下で媒体Mを挟み込んで切り込みながら、X軸方向に移動することによって、ロール体Rから供給された印刷後の媒体Mを所望の長さに切断する。切断部46により、印刷後の媒体Mは、中継ローラー対44と排出ローラー対45とにニップされた間の切断位置で切断される。媒体Mが供給口17から供給された単票紙である場合、切断部46は駆動されない。排出ローラー対45は、媒体Mを挟み込む状態で回転することにより、媒体Mを排出口16から排出する。吐出ヘッド21、ガイド部材38、搬送部40、支持台42及び切断部46は、筐体12に収容されている。また、筐体12内には、液体吐出装置11を制御する制御部60が配置されている。
【0023】
図4に示すように、キャリッジ20は、非印刷時にはキャリッジ20の走査範囲におけるX軸方向の一端部に設定された
図4に示すホーム位置HPで待機する。キャリッジ20は、
図4に実線で示すホーム位置から
図4に二点鎖線で示す反ホーム位置までの移動領域MAの範囲で移動可能である。筐体12には、キャリッジ20の移動経路の下方に相当する位置に支持台42が配置されている。給送部35は、給送モーター37により給送軸36が回転駆動することで給送軸36に装填されたロール体Rから媒体Mを搬送経路の下流側へ繰り出す。ロール体Rはその外周面上側から、X軸方向に複数配設された押さえローラー39により複数箇所で押さえられる。また、搬送経路における給送部35と支持台42との間の位置には、搬送部40の一部を構成する複数の押さえローラー40Aが複数配設されている。ロール体Rから繰り出された媒体Mは、各ローラー39,40Aに案内されつつ搬送モーター41の動力で駆動される搬送部40により支持台42の載置面42A上に供給される。媒体Mは、X軸方向において媒体Mを搬送できる搬送領域FAの範囲内で搬送される。また、キャリッジ20は、印刷時は、キャリッジモーター23の駆動によりホーム位置HPと反ホーム位置APとの間の移動領域MAのうち吐出ヘッド21が液体を吐出できる印刷処理領域PAの範囲内でX軸方向に往復移動する。キャリッジ20がホーム位置HPにあるとき、吐出ヘッド21は、搬送領域FAおよび印刷処理領域PAよりもX軸方向の外側に位置する。
【0024】
ここで、搬送領域FAとは、媒体Mが搬送される最大範囲の領域であり、最大幅の媒体Mが搬送される領域に相当する。また、印刷処理領域PAは、最大幅の媒体Mに印刷される印刷範囲であり、最大幅の媒体Mに縁無し印刷をするときの印刷範囲に相当する。なお、本実施形態では、搬送領域FAと印刷処理領域PAはX軸方向の寸法がほぼ同じであるが、厳密には、はみ出し印刷に対応する機種では印刷処理領域PAの方が搬送領域FAよりもそのはみ出し量に相当する分だけ若干長い。
【0025】
図5は、キャリッジ20が液体カートリッジ27を交換するときの第1位置P1に配置された状態を示す。本実施形態では、第1位置P1は、キャリッジ20が第1位置P1に位置するときに、ノズル面21Aが媒体Mの搬送領域FAのホーム位置HP側の側端、つまり、搬送された最大幅の媒体Mのホーム位置HP側の側端M1と、ホーム位置HPとの間に位置するような、位置に設定されている。この第1位置P1は、印刷処理領域PAのホーム位置HP側の側端、つまり、搬送された最大幅の媒体Mに縁無し印刷が施される領域である印刷処理領域PAのホーム位置HP側の側端と、ホーム位置HPとの間の位置であってもよい。
【0026】
図6に示すように、ホーム位置HPにあるキャリッジ20と対向する下方位置には、メンテナンス装置28が配置されている。メンテナンス装置28は、ホーム位置HPに配置された吐出ヘッド21と対向する位置にキャップ29を備える。キャップ29は昇降可能であり、
図7に示す退避位置と、
図6に示すキャッピング位置との間で鉛直方向Zに移動する。キャリッジ20がホーム位置HPで待機するときは、キャップ29が上昇してノズル面21Aに接触し、吐出ヘッド21をキャッピングする。
【0027】
また、メンテナンス装置28は、ポンプ30及びワイパー31を備える。ワイパー31はキャップ29よりも印刷処理領域PA側に位置する。ポンプ30は例えば、吸引ポンプであり、
図6に示すキャップ29がノズル面21Aに接触して吐出ヘッド21をキャッピングする状態で駆動されることでキャップ29内の空気を排出する。メンテナンス装置28は、ノズル面21Aとキャップとで囲まれた閉空間を負圧にすることでノズルNから液体を強制的に吸引排出する吸引クリーニングを行う。クリーニングは、吸引クリーニングに限らず、吐出ヘッド21内の液体流路の上流側から液体カートリッジ27等の液体供給源の液体を加圧ポンプで加圧することでノズルNから液体を強制的に排出する加圧クリーニングでもよい。クリーニングは、定期又は不定期に行われる他、液体カートリッジ27の交換時にも実施される。これは、液体カートリッジ27の交換時にキャリッジ20側の液体流路に気泡が混入する場合があるからである。また、交換する液体カートリッジ27を装着するときに液体カートリッジ27をキャリッジ20に押し込むため、そのときの押し込み力によってキャリッジ20が変形して液体流路が加圧されると、ノズルNから液体が漏れ出る場合がある。ノズルNから漏れ出た液体は、ノズル面21Aに付着したり液滴となって落下したりする。ノズル面21Aに付着した液体は、ノズルNから吐出される液滴と接触して液滴の飛行曲がりの原因となる。このため、液体カートリッジ27の交換後は、クリーニング及びワイパー31でノズル面21Aを払拭するワイピングが行われる。
【0028】
メンテナンス装置28が備えるワイパー31は、キャップ29と独立して昇降可能に構成されている。ワイパー31は、
図6、
図7に示す退避位置と、
図11に示す払拭位置とに鉛直方向Zに移動可能となっている。
図10に示すように、ワイパー31は払拭位置に配置された状態でキャリッジ20がX軸方向の一方側(+X方向)に移動することで、ワイパー31によりノズル面21Aを払拭する。
【0029】
図7は、キャリッジ20が、カートリッジ交換が行われる第1位置P1に配置された状態を示す。
図7に示すように、第1位置P1は、X軸方向において、媒体Mの搬送領域FAにおけるキャップ29側の側端M1と、キャップ29における搬送領域FA側の側端C1との間の領域PCAに、ノズル面21Aを対向させたキャリッジ20の位置に設定されている。換言すれば、第1位置P1は、ノズル面21Aが、搬送領域FAとキャップ29との間の領域PCAに対向するキャリッジ20の位置に設定されている。また、本実施形態の第1位置P1は、ノズル面21Aが、印刷処理領域PAとキャップ29との間の領域PCAに対向するキャリッジ20の位置でもある。キャリッジ20が第1位置P1に配置されたとき、ノズル面21Aは、媒体Mがどのサイズであっても、鉛直方向Zに媒体Mと重ならない。また、キャリッジ20が第1位置P1に配置されたとき、ノズル面21Aは、鉛直方向Zにキャップ29と重ならない。
【0030】
また、
図10、
図11に示すように、キャップ29には、その上側及び周囲に亘ってヘッドガイド部材55が設けられている。ヘッドガイド部材55はキャップ29共に昇降可能であり、上昇する過程で吐出ヘッド21をキャップ29に誘導する。ヘッドガイド部材55を有する構成では、第1位置P1は、X軸方向において搬送領域FAの側端M1と、ヘッドガイド部材55の搬送領域FA側の側端C2との間の領域にノズル面21Aを対向させたキャリッジ20の位置に設定されることが好ましい。
【0031】
ここで、液体カートリッジ27を交換する第1位置P1は、少なくとも媒体Mの搬送領域FAからノズル面21Aがキャップ29側に外れていることが条件である。また、ノズル面21Aが印刷処理領域PAからキャップ29側に外れていてもよい。また、キャップ29よりも外側に外れてもよいが、液体吐出装置11のX軸方向の装置寸法が増大するので好ましくない。また、吐出ヘッド21がキャップ29と重なる位置であると、カートリッジ交換時の押し込み力によって吐出ヘッド21が下側へ変位した際にキャップ29に接触してキャップ29に負荷を与えるので好ましくない。よって、第1位置P1は、最大幅の媒体Mのキャップ29側の側端M1よりも外側、つまり搬送領域FAよりも外側の領域であり、かつキャップ29と重ならないキャップ29よりも内側となる領域PCAで、ノズル面21Aが対向できるキャリッジ20の位置であることが好ましい。このため、第1位置P1は、X軸方向において媒体Mの搬送領域FAにおけるキャップ側の側端M1と、キャップ29の搬送領域FA側の側端C1との間の領域PCA内に、ノズル面21Aの全体が収まる条件を満たす位置であることが好ましい。
【0032】
図7に示すように、第1位置P1に停止したキャリッジ20の底面は、底部フレーム19と対向する。液体吐出装置11は、ノズル面21Aが第1位置P1に位置するとき、キャリッジ20のうち、液体が吐出される方向(-Z方向)側のキャリッジ面20Cと接触可能な突起の一例としての第1突起51を有する。第1突起51は、底部フレーム19の上面から鉛直方向Zの上方に向かって突出している。キャリッジ20のキャリッジ面20Cと突起51とが接触するとき、ノズル面21Aとノズル面21Aに対向する位置にある底部フレーム19の上面とが離間する。本例では、キャリッジ20の底面には吐出ヘッド21以外の部分に、キャリッジ20が第1位置P1に停止した状態で第1突起51と対向する位置に下方へ向かって突出する第2突起52が形成されている。
図9に示すように、第2突起52は、キャリッジ20の底面に吐出ヘッド21をY軸方向に挟む両側の位置に一対突設されている。
【0033】
図8に示すように、ユーザーが液体カートリッジ交換時に新品又は液体注入後の液体カートリッジ27をキャリッジ20に装着する際に押し込むと、その押し込んだ力によってキャリッジ20等の合成樹脂製の部品が一瞬変形する。このとき、吐出ヘッド21のノズル面21Aが一瞬下降するが、第1突起51とキャリッジ面20Cとが当接してノズル面21Aのそれ以上の下降が規制される。本例では、第1突起51と第2突起52とが当接してノズル面21Aのそれ以上の下降が規制される。この結果、ノズル面21Aと底部フレーム19との間に隙間GHが確保され、両者が接触することが回避される。本実施形態では、キャリッジ20側に第2突起52を形成しているため、
図8に示すように、第2突起52の下端面がキャリッジ面20Cとなっている。キャリッジ20側に第2突起52を形成することで、底部フレーム19側の第1突起51の突出高さを低く抑えることができる。なお、第2突起52を無くし、第1突起51がキャリッジ20の底面よりなるキャリッジ面に直接当たる構成でもよい。
【0034】
図9に示すように、吐出ヘッド21のノズル面21Aには、キャリッジ20に装着される液体カートリッジ27の数と同数のノズル列NRが設けられている。ノズル列NRは、Y軸方向に所定のノズルピッチで配列されたM個のノズルNの群よりなる。但し、Mは、例えば100~500の範囲内の所定値である。ここで、ノズル列NRを構成する複数のノズルNが形成された範囲のY軸方向の寸法をノズル列寸法NL、ノズル面21AのY軸方向の寸法をノズル面寸法PLとする。
【0035】
図10に示すように、キャリッジ20がホーム位置HPから搬送領域FA側へ移動する過程で、払拭位置に配置されたワイパー31によってノズル面21Aは払拭される。このとき、エラストマー又はゴム等の弾性部材よりなるワイパー31は、
図10に示すように、ノズル面21Aに当たって湾曲した状態でノズル面21Aを払拭する。払拭が終わってノズル面21Aから外れた際に湾曲した状態から一気に伸びて元の状態に復元するとき、ワイパー31が掻き取った液体が周辺に飛散し、その周辺及び媒体Mを液体で汚す恐れがある。このため、ワイパー31を払拭時の湾曲した状態から伸びた状態へ緩やかに復元させるため、キャリッジ20には、吐出ヘッド21におけるワイパー31の払拭下流側の隣の位置に斜面53が形成されている。斜面53はノズル面21Aから離れるに連れて鉛直方向Zの位置が徐々に高くなる向きに傾斜している。
【0036】
ここで、単にノズル面21Aを払拭するだけであれば、キャリッジ20をワイピング時にワイパー31よりも印刷処理領域PA側へノズル面21Aの幅寸法だけ移動させればよい。しかし、斜面53を有するキャリッジ20である場合、斜面53のX軸方向における寸法分だけ余分にキャリッジ20を印刷処理領域PA側へ移動させる必要がある。本例の場合、ワイピングに必要な位置までキャリッジ20を印刷処理領域PA側へ移動させた場合、
図11に示すように、ノズル面21Aが媒体Mと対向する位置まで移動することになる。
【0037】
図11に示すように、ワイパー31による払拭時に斜面53を利用するためには、吐出ヘッド21のX軸方向の寸法であるヘッド幅HLに、斜面53のX軸方向の寸法である斜面寸法WLを加えた寸法以上の払拭ストロークを確保する必要がある。この払拭ストロークでワイパー31が払拭動作した場合、払拭終了位置まで吐出ヘッド21が移動し終わったとき、鉛直方向Zにおいて吐出ヘッド21と媒体Mとが対向する位置関係となる。すなわち、媒体Mの側端M1側の一部が、ノズル面21Aと鉛直方向Zに対向する。
【0038】
このとき、媒体Mにおける吐出ヘッド21から吐出された液体が付着した印刷領域IAが、液体により膨潤して浮き上がっていると、吐出ヘッド21が
図11に示す払拭終了位置まで移動する過程で、ノズル面21Aが、媒体M上の印刷領域IAと擦れる心配がある。また、
図12に示すように、ノズル面21Aと対向するノズル面対向領域HAに媒体Mの印刷領域IAが位置していると、払拭時に払拭終了位置まで移動したノズル面21Aが、インクを吸収した媒体Mが膨潤して波打つ現象であるコックリング等により媒体Mの浮き上がった部分と接触する心配がある。ノズル面21Aが媒体Mの印刷領域IAと接触すると、ノズル面21Aが印刷面を擦って印刷品質が低下したり、クリーニング直後のノズル面21AのノズルNの整えられたばかりの液体メニスカスが破壊されて液滴を適切に吐出できなくなる吐出不良が発生したりする心配がある。
【0039】
そのため、本実施形態では、カートリッジ交換時には、払拭過程の吐出ヘッド21と印刷領域IAとが対向しない位置まで媒体MをY軸方向に退避させるようにしている。そのため、本実施形態では、印刷領域IAをノズル面対向領域HAから退避させ、クリーニング後のワイピング時に仮にノズル面21Aが媒体Mと対向する位置まで移動しても、ノズル面21Aは媒体Mに対してコックリング等で浮き上がり易い印刷領域IA以外の部分と対向するため、媒体Mとの接触が回避される。
【0040】
図12~
図14は、カートリッジ交換時の動作を説明する。液体エンドになると印刷を中断し、例えば
図12に示す状態で印刷を停止する。このとき、印刷領域IAの一部は、吐出ヘッド21のノズル面21Aに対向可能なノズル面対向領域HAにある。媒体Mの印刷領域IAの一部がノズル面対向領域HAにある場合、コックリング等の原因で印刷領域IAの部分で媒体Mが浮き上がっていると、吐出ヘッド21が払拭終了位置まで移動したときにノズル面21Aと印刷領域IAとが擦れる心配がある。
【0041】
そのため、本実施形態では、印刷領域IAをノズル面対向領域HAからY軸方向に退避させる。本例では、制御部60は、退避動作において、インクが付着した印刷領域IAを、ノズル面対向領域HAよりも搬送経路の下流側に移動させる。換言すれば、退避動作により、インクが付着した印刷領域IAは、Y軸方向において+Y側に移動する。このとき、+Y側に向かう方向は、ノズル面対向領域HAに対して、媒体Mのうちインクが付着する前の領域が位置する-Y側と反対側に向かう方向である。すなわち、印刷領域IAは、ノズル面対向領域HAよりも、液体が吐出される前の領域と反対側に移動される。なお、ロール体Rに巻き取られる手前の位置までの範囲であれば、印刷領域IAを搬送経路の上流側、すなわち-Y側に退避させてもよい。印刷領域IAが、ノズル面対向領域HAよりも+Y側に移動するとき、媒体Mのうちインクが付着する前の領域がノズル面対向領域HAに位置する。媒体Mのうちインクが付着する前の領域は、インクが付着した領域と比較して浮き上がりにくい。したがって、吐出ヘッド21が払拭終了位置まで移動したときにノズル面21Aと印刷領域IAとが擦れる虞が、より低減される。
【0042】
制御部60は、液体カートリッジ27の交換が指示されたとき、媒体Mを搬送して、媒体Mのうち吐出ヘッド21により吐出されたインクが付着した印刷領域IAを退避させる退避動作を行う。媒体Mを搬送経路の下流側へ移動し、ノズル面21Aと対向するノズル面対向領域HAから、媒体M上の印刷領域IAを+Y側に退避させる退避動作を行う。ここで、退避動作において、Y軸方向における媒体Mの搬送量は、ノズル面21AのY軸方向の寸法であるノズル面寸法PL(
図9を参照)より大きい。この結果、
図13に示すように、媒体Mの印刷領域IAは、Y軸方向においてノズル面対向領域HAの外側へ退避する。
【0043】
特に本例では、
図13に示すように、制御部60は、退避動作において、液体が吐出された印刷領域IAを、排出口16から筐体12の外側に位置させる。退避動作で搬送される媒体Mの搬送量FL(
図13を参照)は、印刷領域IAの全体を排出口16よりも搬送経路の下流側、つまり筐体12の外側へ退避できる値に設定されている。このため、退避動作によって印刷領域IAは筐体12の外側に排出される。ここで、筐体12内は、インク等の液体が吐出されるため、筐体12の外側に比べ湿度が高い。このため、印刷領域IAを外側へ退避させることで、筐体12内にあるときよりも印刷領域IAのインクの乾燥が促進される。
【0044】
本実施形態では、制御部60が印刷領域IAの全体をノズル面対向領域HAの外側へ退避させるが、制御部60が印刷領域IAのうち、少なくとも液体が吐出された直後の領域をノズル面対向領域HAの外側へ退避させる構成としてもよい。この「液体が吐出された直後の領域」とは、例えば、
図12が示す、印刷が中断された時点で、ノズル面対向領域HAに位置する領域、である。媒体Mは、液体が吐出された直後が最も膨潤しやすく、浮き上がる可能性が高い。したがって、この構成によれば、印刷領域IAの全体をノズル面対向領域HAの外側に退避させる構成に比べて、媒体Mの移動量を抑えながら、ノズル面21Aと媒体Mとが接触する虞が低減される。
【0045】
さらに、制御部60が媒体Mを搬送経路の下流側へ移動させる代わりに、制御部60が媒体Mを搬送経路の上流側へ移動させることで、印刷領域IA全体、もしくは少なくとも液体が吐出された直後の領域をノズル面対向領域HAの外側に退避させる構成としてもよい。この構成によれば、通常の印刷においては排出口16から筐体12の外側に排出されていないはずの印刷領域IAが筐体12の外側に排出されることにより、何らかの外部要因で印刷品質が低下する虞が低減される。
【0046】
また、
図14に示すように、媒体Mの退避動作の後、液体カートリッジ27の交換の終了を検出すると、媒体Mを搬送経路における上流側へ移動させる。換言すれば、退避動作における媒体Mの搬送方向である+Y側に向かう方向と逆の-Y側に向かう方向へ媒体Mを搬送する。制御部60は、Y軸方向において、退避動作で媒体Mを+Y側に搬送した搬送量FLに相当する分の搬送量だけ、媒体Mを-Y側に搬送する。この結果、媒体Mを、液体エンドで印刷を中断した際の元の搬送位置まで戻す。制御部60は、媒体Mを-Y側へ搬送して元の搬送位置に戻すと、印刷再開のため、キャリッジ20を第1位置P1から印刷処理領域PA側へ移動させて吐出ヘッド21のノズルNから媒体Mにインクを吐出する。
【0047】
本実施形態では、液体カートリッジ27の交換に係る補助動作の1つとして、媒体Mをノズル面対向領域HAの外側に退避させる退避動作や、媒体Mを、印刷を中断した際の元の搬送位置まで戻す動作が行われるが、これに限られない。例えば、ユーザーの指示等により印刷を所定期間中断し、その後印刷を再開する場合に、媒体Mをノズル面対向領域HAの外側に退避させる動作や、媒体Mを、印刷を中断した際の元の搬送位置まで戻す動作が行われてもよい。
【0048】
媒体Mの印刷再開位置は、媒体Mが退避する前の印刷領域IAに一部重なる領域、もしくは印刷領域IAの上流側に隣接する領域とされる。よって、液体カートリッジ交換後の印刷は、印刷領域IAに一部重なる領域、もしくは印刷領域IAの上流側に隣接する領域から再開される。なお、前者の場合、Y軸方向に一部重なる寸法ΔL(
図14)は、ノズルNから液体が吐出されて形成されるドットの単位で、1~3ドット分の範囲内の値が好ましい。これにより、印刷中断の前後で印刷される両領域IAを一部重複させることで、バンディング(筋)等を目立ちにくくする。なお、寸法ΔLは、X軸方向において、1列分のノズルNと対向するノズル対向領域NAと、印刷領域IAとの重なる部分のY軸方向の寸法である。
【0049】
次に、
図15を参照して、液体吐出装置11の電気的構成を説明する。
図15に示すように、液体吐出装置11は、不図示のホスト装置から受信した印刷データに基づく画像を媒体Mに印刷する。液体吐出装置11は、キャリッジ20の移動制御を含む各種の制御を司る制御部60を備える。制御部60には、吐出ヘッド21、キャリッジモーター23、給送モーター37及び搬送モーター41が電気的に接続されている。また、制御部60には、操作パネル15、カバーセンサー57、第1エンコーダー26、第2エンコーダー58及び媒体検出器59が接続されている。操作パネル15は表示部15Aを備える。
【0050】
制御部60は、印刷データに基づいて吐出ヘッド21を制御することでノズルNからインク滴を吐出する。また、制御部60は、キャリッジモーター23を制御することで、キャリッジ20の位置制御及び速度制御を行う。制御部60は、キャリッジモーター23を正転駆動させると、キャリッジ20がホーム位置HPから遠ざかる+X方向に往動し、キャリッジモーター23を逆転駆動させると、キャリッジ20がホーム位置HPに近づく-X方向に復動する。さらに制御部60は、給送モーター37を制御することで、給送部35を駆動し、供給口17を介して単票紙よりなる媒体Mを給送したり、ロール体Rを繰り出して連続媒体よりなる媒体Mを給送したりする。また、制御部60は、搬送モーター41を制御することで、搬送部40を駆動し、給送された媒体Mを各ローラー対43~44の駆動によりY軸方向に搬送する。
【0051】
制御部60は、操作パネル15の表示部15Aに、メニュー及び各種のメッセージを表示する。制御部60は、液体カートリッジ27の液体残量を管理しており、液体残量が液体エンドに達すると、表示部15Aに液体エンドの旨のメッセージを表示してその旨をユーザーに報知する。
【0052】
キャリッジ20は液体カートリッジ27の装着面に不図示の端子を有する。液体カートリッジ27は、記憶素子を実装しており、被装着面に端子を有している。液体カートリッジ27をキャリッジ20から取り外すと両端子が離れて電気的に非接触状態になり、一方、液体カートリッジ27をキャリッジ20に装着すると、両端子が電気的に接続される。制御部60は、液体カートリッジ27とキャリッジ20との両端子の接続及び非接続を介して液体カートリッジ27の装着および取外しを検出する。また、制御部60は、液体カートリッジ27がキャリッジ20に装着された状態で両端子の接続を介して記憶素子に対する読取り及び書込みが可能である。液体カートリッジ27の記憶素子には、品番情報、液体色情報、液体残量情報などの液体関連情報が記憶されている。制御部60は、液体吐出装置11が印刷等で消費した液体消費量を管理しており、記憶素子から読み取った残量情報から液体消費量を減算することで、現在の液体残量を管理している。液体吐出装置11の電源オン時に記憶素子から液体残量を読み出し、液体吐出装置11の電源オフ時にそれまで測定した液体残量の情報を記憶素子に書き込む。
【0053】
制御部60は、液体残量が液体エンドに達したか否かを定期的に判定し、液体エンドに達すると、その旨を報知する。また、制御部60は、液体エンドを検出して液体エンドの旨を報知した後、メモリー65に液体エンドフラグが立つ状態の下で、ユーザーがメンテナンスカバー14を開けたことを検知したカバーセンサー57からの検知信号の入力をもって、液体カートリッジ27の交換が指示されたものとする。
【0054】
制御部60は、CPU61、第1カウンター62、第2カウンター63、タイマー64及びメモリー65を備える。メモリー65には、CPU61が実行する各種のプログラムが記憶されている。プログラムには
図16にフローチャートで示されるカートリッジ交換制御用のプログラムが含まれる。CPU61は、メモリー65に記憶された印刷制御用のプログラムを実行することにより各種の印刷制御を行う。また、CPU61は、
図16にフローチャートで示されるプログラムを実行することによりカートリッジ交換時制御を行う。ここで、カートリッジ交換時制御とは、ユーザーによる液体カートリッジ27の交換を支援するとともに、カートリッジ交換が印刷途中に行われる場合にその印刷の中断による印刷品質の低下を抑制する制御である。カートリッジ交換時制御は、キャリッジ20のカートリッジ交換が行われる第1位置P1への移動、媒体Mの退避動作などを含む。
【0055】
第1カウンター62は、CPU61の指示で、キャリッジ20のホーム位置HPを原点として、第1エンコーダー26からのパルス信号のパルスエッジの数を計数することでキャリッジ位置を示す計数値を取得する。詳しくは、制御部60は、第1エンコーダー26からのパルス信号に含まれる2つの位相を比較してキャリッジ20の移動方向を取得する。そして、制御部60は、第1エンコーダー26からの入力信号にパルスエッジを検出する度にホーム位置HPから遠ざかる往動方向(+X方向)であれば第1カウンター62の計数値をインクリメントし、ホーム位置HPに近づく復動方向(-X方向)であれば第1カウンター62の計数値をデクリメントする。
【0056】
第2カウンター63は、CPU61の指示で、搬送経路上の媒体検出器59が媒体Mを検知した位置を原点位置として、第2エンコーダー58からのパルス信号のパルスエッジの数を計数することで媒体Mの搬送位置を示す計数値を取得する。詳しくは、制御部60は、第2エンコーダー58からのパルス信号に基づいて搬送ローラー対43の回転方向を取得し、パルス信号のパルスエッジを検出する度に正転方向であれば第2カウンター63の計数値をインクリメントし、逆転方向であれば第2カウンター63の計数値をデクリメントする。
【0057】
メモリー65には、前述のプログラムの他、媒体種と乾燥時間DTとの対応関係を示すテーブルデータよりなる乾燥時間テーブルTDが記憶されている。制御部60は、後述するカートリッジ交換制御を行うときに乾燥時間テーブルTDを参照して媒体種に応じた乾燥時間DTを取得する。
【0058】
制御部60は、液体カートリッジ27の交換が指示されたとき、第1軸方向Xにおいて、媒体Mの搬送領域FAにおけるキャップ29側の側端M1と、キャップ29との間の領域PCAに、ノズル面21Aが対向する第1位置P1に、キャリッジ20を位置させる。第1位置P1は、ユーザーが液体カートリッジ27を交換する位置である。
【0059】
また、制御部60は、液体カートリッジ27の交換が指示されたとき、媒体Mを搬送して、媒体Mのうち吐出ヘッド21により吐出された液体が付着した印刷領域IAを退避させる退避動作を行う。退避動作における媒体Mの搬送量は、Y軸方向におけるノズル面21Aの寸法より大きい。ここで、液体カートリッジ27の交換時に媒体Mを退避させることなくそのまま放置すると、媒体Mが液体を吸収して膨潤することでカールし、媒体Mの特に印刷領域IAの部分が載置面42Aから浮き上がる虞がある。媒体Mの浮き上がり部分は、吐出ヘッド21のノズル面21Aと接触し易い。そこで、制御部60は、媒体Mの退避動作によって、媒体Mのうち印刷領域IAを、ノズル面21Aが対向するノズル面対向領域HAから退避させることで、媒体Mと吐出ヘッド21との擦れを防ぐ。
【0060】
制御部60は、退避動作後に液体カートリッジ27の交換が完了したことを検出したとき、退避動作における媒体Mの搬送方向である+Y側に向かう方向と逆の-Y側に向かう方向へ媒体Mを搬送し、-Y側へ搬送された媒体Mにインクを吐出させる。ユーザーは、液体カートリッジ27を交換し終わると、キャリッジ20のカバー20Bを閉じ、次いでメンテナンスカバー14を閉じる。制御部60は、液体カートリッジ27の装着を電気的に検出し、かつメンテナンスカバー14が閉じられたことをカバーセンサー57が検知すると、液体カートリッジ交換が完了したことを検出する。なお、ユーザーが操作パネル15のボタン操作により液体吐出装置11にカートリッジ交換作業の完了を通知する構成でもよい。
【0061】
次に、液体吐出装置11の作用について説明する。以下、制御部60が
図16にフローチャートで示されるプログラムを所定時間間隔で実行して行われるカートリッジ交換に係る補助動作の制御について説明する。例えば液体カートリッジ27の液体残量が液体エンドに達すると、制御部60は操作パネル15の表示部15A又はホスト装置の表示部に、液体エンドの旨の表示とカートリッジ交換を促す旨のメッセージを表示する。このメッセージを見たユーザーは、メンテナンスカバー14を開け、液体カートリッジ27の交換作業を行う。制御部60は、液体カートリッジ27の残量管理及びカートリッジ交換時の不具合を回避する各種制御を行う。以下、
図16を参照して制御部60が行うカートリッジ交換に係る補助動作の制御について説明する。
【0062】
まずステップS11では、制御部60は、液体エンドに達したか否かを判定する。制御部60は、液体カートリッジ27に実装された記憶素子から読み込んだ液体残量情報から、液体カートリッジ27の液体残量を取得する。制御部60は、液体残量から、吐出ヘッド21が消費した液体の消費量を減算して現在の液体残量を把握している。制御部60は、この現在の液体残量を用いて液体エンドに達したか否かを判定する。液体エンドでなければ当該ルーチンを終了し、液体エンドであればステップS12に進む。
【0063】
ステップS12では、制御部60は、印刷を中断する。制御部60は、印刷途中であっても、キャリッジ20の現在の1パス分の印刷を終えた段階で印刷を中断する。
ステップS13では、制御部60は、キャリッジ20をホーム位置HPへ移動し、吐出ヘッド21をキャッピングする。制御部60は、キャリッジモーター23を逆転駆動させてキャリッジ20をホーム位置まで移動させる。制御部60は、第1カウンター62の計数値でキャリッジ20の位置を把握し、計数値が減速開始位置の値に達すると、逆転駆動中のキャリッジモーター23の減速を開始する。そして、制御部60は、第1カウンター62の計数値が原点の値に達すると、キャリッジモーター23の駆動を停止させることで、キャリッジ20をホーム位置HPに停止させる。
【0064】
ステップS14では、制御部60は、媒体Mの印刷領域IAを退避させる退避動作を行う。詳しくは、制御部60は、液体カートリッジ27の交換が指示されたとき、媒体Mを搬送経路の下流側へ所定の搬送量FLで搬送し、媒体Mのうち吐出ヘッド21により液体が吐出された印刷領域IAを、+Y側へノズル面対向領域HAから退避させる退避動作を行う。ここで、退避動作における媒体Mの搬送量FL(
図13を参照)は、ノズル面21AのY軸方向の寸法であるノズル面寸法PL(
図9を参照)より大きい。この結果、
図13に示すように、媒体Mは+Y側に搬送され、印刷領域IAはノズル面対向領域HAの外側へ退避する。特に本例では、退避動作時の媒体Mの搬送量FLは、印刷領域IAの全体を排出口16よりも搬送経路における下流側まで退避できる値に設定されている。このため、退避動作によって印刷領域IAは筐体12の外側に排出される。ここで、インク等の液体が吐出される処理がなされる筐体12内は、筐体12の外側に比べ湿度が高い。このため、印刷領域IAを筐体12の外側へ退避させることで、筐体12内にあるときよりも印刷領域IAの液体の乾燥が促進される。
【0065】
ステップS15では、制御部60は、計時を開始する。すなわち、制御部60は、タイマー64による計時を開始させる。これにより印刷領域IAが筐体12の外側へ排出されてからの経過時間、つまり印刷領域IAを筐体12の外側で乾燥させる乾燥時間DTの計時が開始される。
【0066】
ステップS16では、制御部60は、液体カートリッジ交換指示があったか否かを判断する。本実施形態では、操作パネル15の表示部15A等に表示されたメッセージから液体エンドを知ったユーザーがメンテナンスカバー14を開けたことをカバーセンサー57が検知したことをもって液体カートリッジ交換指示を受け付ける。つまり、制御部60は、液体エンドフラグが立つ状態の下で、ユーザーによってメンテナンスカバー14が開けられたことを検知したカバーセンサー57からの検知信号の入力をもって、液体カートリッジ交換指示があったものとする。制御部60は、液体カートリッジ交換指示があればステップS17に進み、液体カートリッジ交換指示がなければそのまま待機する。なお、本実施形態においては、カバーセンサー57からの検知信号の入力をもって、液体カートリッジ交換指示があったものとするが、操作パネル15に対する所定の操作があった場合に、液体カートリッジ交換指示があったものと判断してもよい。さらに、液体エンドフラグが立った場合に液体カートリッジ交換指示があったものと判断する構成としてもよい。
【0067】
ステップS17では、制御部60は、キャリッジ20を、カートリッジ交換を行うべき第1位置P1まで移動させる。詳しくは、制御部60は、
図6に示す吐出ヘッド21のノズル面21Aに接触するキャッピング状態にあるキャップ29を下降させた後、キャリッジモーター23を正転駆動させ、キャリッジ20を
図6に示すホーム位置HPから、
図7に示す第1位置P1まで移動させる。第1位置P1は、X軸方向において、媒体Mの搬送領域FAにおけるキャップ29側の側端M1と、キャップ29との間の領域PCAに、ノズル面21Aが対向する位置である。ユーザーは、キャリッジ20が第1位置P1に停止すると、キャリッジ20のカバー20Bを開け、液体エンドの液体カートリッジ27をキャリッジ20から取り外す。次にユーザーは、新品の液体カートリッジ27をキャリッジ20に装着するか、又は液体カートリッジ27が注入式である場合は液体カートリッジ27に液体を注入した後、その注入により液体が補充された液体カートリッジ27をキャリッジ20に装着する。ユーザーが液体カートリッジ27を装着するとき、
図8に示すように液体カートリッジ27を押し込むことになる。液体カートリッジ27をキャリッジ20に装着する際に押し込むと、その押し込んだ力によってキャリッジ20等の合成樹脂製の部品が一瞬変形する。このとき、キャリッジ20の変形によって吐出ヘッド21が一瞬下降するが、第1突起51と第2突起52とが当接してノズル面21Aのそれ以上の下降が規制される。この結果、ノズル面21Aと、ノズル面21Aに対向する底部フレーム19の上面との間に隙間GHが確保され、ノズル面21Aと底部フレーム19との接触が回避される。ユーザーは液体カートリッジ27を交換し終わると、カバー20Bを閉じ、さらにメンテナンスカバー14を閉じる。
【0068】
ステップS18では、制御部60は、液体カートリッジ27の交換を検知したか否かを判断する。退避動作後に液体カートリッジ27の交換を検知したか否かを判断する。制御部60は、カートリッジ交換前後の各液体カートリッジ27の記憶素子との電気的な遮断と再接続とにより液体カートリッジ27の交換を検知する。カートリッジ交換作業を終えると、ユーザーは、カバー20Bを閉じ、さらにメンテナンスカバー14を閉じる。
【0069】
ステップS19では、制御部60は、メンテナンスカバー14の閉状態を検知したか否かを判断する。メンテナンスカバー14の閉状態を検知すればステップS20に進み、メンテナンスカバー14の閉状態を検知しなければそのまま待機する。
【0070】
ステップS20では、制御部60は、キャリッジ20をホーム位置HPへ移動させる。
ステップS21では、制御部60は、クリーニングを実行させる。制御部60は、キャリッジ20がホーム位置HPに停止すると、キャップ29を上昇させて吐出ヘッド21のノズル面21Aをキャッピングする。そして、制御部60は、メンテナンス装置28を駆動してポンプ30により、ノズル面21Aとキャップ29との間の閉空間を空気の排出により負圧にすることで、ノズル面21Aに開口するノズルNからインクを強制的に吸引排出するクリーニングを行う。クリーニングによってカートリッジ交換時にキャリッジ20側のインク流路に混入した気泡等がノズルNからインクと共に排出除去される。クリーニングを終えると、吐出ヘッド21のノズルNから印刷とは関係のない液体を吐出するフラッシング及びノズル面21Aをワイパー31で払拭するワイピングが所定の順序で行われる。
【0071】
このとき、ワイパー31でノズル面21Aを払拭する過程では、ワイパー31による払拭時に斜面53を利用するため、ヘッド幅HLと斜面寸法WLとを加えた寸法以上の払拭ストロークでワイパー31が払拭動作をする。払拭終了位置まで吐出ヘッド21が移動し終わったとき、鉛直方向Zにおいて吐出ヘッド21と媒体Mとが対向する位置関係となる。しかし、印刷領域IAはノズル面対向領域HAから既に退避しているので、ノズル面21Aが印刷領域IAと擦れることはない。
【0072】
ステップS22では、制御部60は、媒体種に応じた乾燥時間DTを経過したか否かを判断する。制御部60は、印刷データに含まれる媒体種情報から取得した媒体種を基に、乾燥時間テーブルTDを参照して媒体種に応じた乾燥時間DTを取得する。クリーニング動作をワイピングまで終了した現時点で、経過時間が乾燥時間DTを経過していなければ、経過するまで待機する。一方、経過時間が乾燥時間DTを経過していれば、ステップS23に進む。
【0073】
ステップS23では、制御部60は、媒体Mを退避前の位置に復帰させる。すなわち、制御部60は、搬送モーター41を逆転駆動させて、乾燥時間DTを経過して乾燥した媒体Mを、退避位置から搬送方向である+Yに向かう方向と逆の-Y側に向かう方向に搬送させて退避前の元の位置に復帰させる。なお、退避前の位置は、制御部60が媒体Mを退避させる際にメモリー65に記憶した値を読み出して取得する。また、媒体Mを乾燥後に戻す位置は、厳密に退避前の位置に限らず、印刷画素のピッチの1~10倍の距離の範囲内の所定距離だけ多めに戻す。本例では、1~3ドットの範囲内の所定の重なる寸法ΔL(
図14)だけ重複して印刷される位置まで戻す。このように、再印刷開始位置から印刷される領域が、媒体Mが退避する前に、液体が付着した印刷領域IAに一部重なることになる再印刷開始位置まで媒体Mを戻すことが好ましい。なお、再印刷開始位置から印刷される領域が、領域IAの下流側に隣接する領域となる再印刷開始位置まで媒体Mを戻してもよい。
【0074】
ステップS24では、制御部60は、印刷を再開する。液体カートリッジ27の交換のために印刷を中断した中断位置の続きから印刷が再開される。本例では、媒体Mが退避する前に液体が付着した印刷領域IAに対して所定の寸法ΔLだけ一部重ねて印刷が再開される。よって、再印刷開始箇所にバンディングが発生しにくい。
【0075】
以上詳述した第1実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)液体吐出装置は、搬送される媒体Mに液体を吐出可能な吐出ヘッド21と、吐出ヘッド21と吐出ヘッド21に供給される液体を収容する液体カートリッジ27ととを搭載し、第1軸方向に移動するキャリッジ20と、を備える。また、液体吐出装置11は、第1軸方向において、媒体Mが搬送される範囲である搬送領域FAの外側に配置され、吐出ヘッド21のノズルNが開口するノズル面21Aに接触可能なキャップ29と、キャリッジ20の移動を制御する制御部60と、を備える。制御部60は、液体カートリッジ27の交換に係る補助動作において、第1軸方向において、搬送領域FAにおけるキャップ29側の側端M1と、キャップ29との間の領域PCAに、ノズル面21Aが対向する第1位置P1にキャリッジ20を位置させる。よって、液体カートリッジ27の交換が行われるときは、補助動作によりキャリッジ20が第1位置P1に位置する。液体カートリッジ27を交換するユーザーによってキャリッジ20が吐出ヘッド21側に押し込まれた結果、その押し込み圧の影響でノズルNからノズル面21Aに液体が漏れ出ても、ノズル面21Aと対向する位置には媒体Mが存在しないうえ、吐出ヘッド21がメンテナンス位置まで移動する過程で媒体Mの上方を通らない。よって、吐出ヘッド21から媒体Mへの液滴の落下や、ノズル面21Aと浮き上がった媒体Mとの擦れの心配がない。また、キャップ29以外の場所で液体カートリッジ27の交換が行われるので、吐出ヘッド21とキャップ29との接触も回避できる。よって、印刷途中で液体エンドになったときなど、媒体Mが搬送領域FAに存在する状態でも、液体カートリッジ27の交換を、媒体Mを液体で汚すことなく適切に行うことができる。
【0076】
(2)液体吐出装置11は、キャリッジ20が第1位置P1にあるとき、キャリッジ20のうち搬送される媒体M側の面であるキャリッジ面20Cに接触可能な突起51を有し、キャリッジ面20Cと突起51とが接触するとき、ノズル面21Aとノズル面21Aに対向する面との間に隙間GHがある。よって、液体カートリッジ27の交換時にキャリッジ20にかかる押し込み圧の影響で吐出ヘッド21が下方へ変位しても、対向する面などと接触する事態を防ぐことができる。
【0077】
(3)液体吐出装置11は、媒体Mを、X軸方向と交差するY軸方向に搬送する搬送部40を備える。制御部60は、前記補助動作において、媒体Mを搬送させて当該媒体Mのうち吐出ヘッド21により吐出された液体が付着した印刷領域IAをY軸方向へ退避させる退避動作を行う。退避動作における媒体Mの搬送量は、ノズル面21AのY軸方向の寸法より大きい。よって、媒体Mのうち液体が付着した印刷領域IAは、液体の膨潤等が原因で浮き上がる虞がある。退避動作により媒体Mにおける液体が吐出された印刷領域IAが、ノズル面21AのY軸方向の寸法より大きな搬送量FLで退避する。このため、吐出ヘッド21のノズル面21Aと対向可能なノズル面対向領域HAには、媒体Mの印刷領域IAは位置せず、液体が吐出されていない媒体Mの領域が位置する。例えば、吐出ヘッド21がメンテナンスあるいは印刷の再開のために、液体カートリッジ27の交換が行われた第1位置P1よりも、X軸方向にキャップ29と反対側へ移動したとしても、吐出ヘッド21のノズル面21Aと媒体Mの印刷領域IAとの擦れを防ぐことができる。
【0078】
(4)補助動作は、液体カートリッジ27の交換に係る補助動作である。制御部60は、補助動作において、退避動作後に液体カートリッジ27の交換が完了したことを検出したとき、退避動作における媒体Mの搬送方向と逆方向へ媒体Mを搬送し、逆方向へ搬送された媒体Mに液体を吐出させる。よって、印刷途中で液体エンドになっても、補助動作において媒体Mの退避動作が行われるため、媒体Mと吐出ヘッド21との接触に起因する媒体Mの液体汚れ等を防ぎつつ、液体カートリッジ27の交換後は液体エンド時の続きから印刷を再開できる。なお、再印刷は、退避前に液体吐出が行われた印刷領域IAと一部重複する位置から再開されるか、もしくは印刷領域IAの上流側に隣接する領域から再開される。よって、再印刷開始箇所にバンディング(白筋)が発生することを防止できる。
【0079】
(5)制御部60は、退避動作において、液体が吐出された印刷領域IAを、搬送方向においてノズル面21Aに対向可能なノズル面対向領域HAよりも、吐出ヘッド21により液体が吐出される前の領域と反対側に位置させる。よって、退避動作の後に、媒体Mのうちノズル面21Aに対向可能なノズル面対向領域HAにある部分が、未印刷領域なので、退避動作後に吐出ヘッド21がメンテナンスのために第1位置P1よりも搬送領域FA側へ移動しても、ノズル面21Aと媒体Mとの擦れを低減できる。また、液体が吐出された印刷領域IAを、吐出ヘッド21により液体が吐出される前の未印刷領域と反対側に退避させるので、搬送部40を構成する搬送ローラー対43への媒体Mの印刷領域IAからの液体の転写を回避できる。例えば、媒体Mにおける液体が吐出される前の未印刷領域を、その後、搬送部40が媒体Mを搬送する際に搬送ローラー対43に転写された液体で汚すことを回避できる。
【0080】
(6)液体が吐出された媒体Mが排出される排出口16を有する筐体12を備える。制御部60は、退避動作において、液体が吐出された印刷領域IAを、排出口16から筐体12の外に位置させる。よって、筐体12内は吐出ヘッド21による液体の吐出が行われるため、筐体12の外に比べ湿度が高い。媒体Mの液体が吐出された印刷領域IAを、筐体12内に比べ湿度の低い筐体12の外に位置させることで、媒体Mの液体が吐出された印刷領域IAの乾燥が促進される。媒体Mが逆搬送で筐体12内に戻される途中又は戻された後に、媒体Mと吐出ヘッド21との擦れを低減できる。
【0081】
(7)搬送される媒体Mに液体を吐出可能な吐出ヘッド21と、吐出ヘッド21のノズル面21Aに接触可能なキャップ29と、液体カートリッジ27と吐出ヘッド21とを搭載し、第1軸方向に移動するキャリッジ20と、を備える液体吐出装置の制御方法である。この制御方法では、液体カートリッジ27の交換に係る補助動作において、キャリッジ20を移動させて、ノズル面21Aを、X軸方向において、媒体Mにおけるキャップ29側に位置する側端M1と、キャップ29との間の領域PCAに対向する位置に位置させる。この液体吐出装置11の制御方法によれば、上記(1)の効果を同様に得ることができる。
【0082】
上記実施形態は、以下に示す変更例のように変更してもよい。上記実施形態に含まれる構成と、下記変更例に含まれる構成とを任意に組み合わせてもよいし、下記変更例に含まれる構成同士を任意に組み合わせてもよい。
【0083】
・液体収容体は液体カートリッジ27に限定されず、キャリッジ20の上部に搭載されたアダプター又はタンクでもよい。アダプター又はタンクである場合、液体の補充は、キャリッジ20に搭載したまま行うタイプでもよいし、キャリッジ20から取り外して行うタイプでもよい。アダプター又はタンクは液体を注入するための注入口を有し、注入口の栓部を取り外して、再充填容器の一例であるボトルから、キャリッジ20上のアダプター又はタンクの注入口にボトルの注出部を差し込んで、アダプター又はタンクにインクを補充する。キャリッジ20に搭載したままアダプター又はタンクに液体を補充する場合、ユーザーがボトルの注出部をアダプター又はタンクの注入口に差し込んで液体を注入するときにキャリッジ20を下側へ押圧したり、液体の注入が終わって注入口に栓部を嵌めるときにキャリッジ20を下側へ押し込んだりする場合がある。このときの押し込み圧の影響によるキャリッジ20の変形によって吐出ヘッド21のノズルNから漏れ出た液体がノズル面21Aに付着したり液滴として落下したりする場合がある。また、キャリッジ20から取り外して液体を注入するタイプでは、キャリッジ20から取り外されたアダプター又はタンクに液体を補充した後、アダプター又はタンクをキャリッジ20に装着するときにキャリッジ20が下側に押し込まれる。このときの押し込み圧の影響によるキャリッジ20の変形によって吐出ヘッド21のノズルNから漏れ出た液体がノズル面21Aに付着したり液滴として落下したりする場合がある。このようなアダプター又はタンクのような液体収容体であっても、制御部60は、液体収容体の交換又は液体補充が指示されたとき、第1軸方向において、媒体Mにおけるキャップ29側の側端M1と、キャップ29との間の領域PCAにノズル面21Aを対向させた位置にキャリッジ20を位置させる。よって、液体収容体の交換又は液体補充を行うときに、吐出ヘッド21から媒体Mへの液滴の落下や、浮き上がった媒体Mとノズル面21Aとの擦れの心配がない。また、キャップ29と対向しない位置で液体収容体の交換又は液体補充が行われるので、キャリッジ20に押し込み圧が加わった際に、吐出ヘッド21とキャップ29との接触も回避できる。さらに、突起51があれば、液体収容体の交換又は液体補充時にキャリッジ面が突起51に当たることで、ノズル面21Aとノズル面21Aに対向する面との接触を防止できる。吐出ヘッド21のノズル面21Aの擦れによりノズル面21Aに施された撥液層の撥液特性の低下を回避できる。なお、液体収容体は、キャリッジ20に搭載されるインクパックなどの袋体でもよい。また、液体収容体への液体補充が行われる場合、ステップS16に示される、液体カートリッジ交換指示があったか否かの判断と同様に、操作パネル15の表示部15A等に表示されたメッセージから液体エンドを知ったユーザーがメンテナンスカバー14を開けたことをカバーセンサー57が検知したことをもって液体補充指示を受け付ける。つまり、制御部60は、液体エンドフラグが立つ状態の下で、ユーザーによってメンテナンスカバー14が開けられたことを検知したカバーセンサー57からの検知信号の入力をもって、液体補充指示があったものとする。この変更例では、補助動作は、液体収容体への液体補充に係る補助動作である。制御部60は、補助動作において、退避動作後に液体収容体への液体補充が完了したことを検出したとき、退避動作における媒体の搬送方向と逆方向へ媒体Mを搬送し、逆方向へ搬送された媒体Mに液体を吐出させる。よって、印刷の途中で液体エンドになっても、補助動作において媒体Mの退避動作が行われるため、媒体Mと吐出ヘッド21との接触に起因する媒体の液体汚れ等を防ぎつつ、液体収容体への液体補充を終えた後は、媒体に対する印刷処理を液体エンド時の続きから再開できる。
【0084】
・前記実施形態において、キャリッジ20に装着される液体収容体の一例としての液体カートリッジ27は1つでもよい。例えば黒1色のカートリッジをキャリッジに1つ装着する構成でもよい。
【0085】
・液体は、インクである場合、一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体組成物を包含する。
・液体は、インクに限らず、液体吐出装置から吐出できるものであればよい。例えば、洗浄液又は紫外線硬化性樹脂でもよい。さらに液体は、機能性材料の粒子が分散する状態に含有する液状体も含まれる。
【0086】
・媒体は、ロール体から繰り出される連続媒体に限定されない。例えば印刷途中で液体エンドになった場合に液体収容体の交換又は液体補充後に、液体エンド時の続きから印刷を再開する機能を備えた液体吐出装置であれば、例えば大判の単票紙でもよい。
【0087】
・媒体は、用紙に限定されず、合成樹脂製のフィルムやシート、織物、不織布、ラミネートシート、金属製のホイル(箔)等であってもよい。
以下、前記実施形態及び変更例から把握される技術思想を効果と共に移載する。
【0088】
液体吐出装置は、搬送される媒体に液体を吐出可能な吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドと前記吐出ヘッドに供給される液体を収容する液体収容体とを搭載し、第1軸方向に移動するキャリッジと、前記第1軸方向において、前記媒体が搬送される範囲である搬送領域の外側に配置され、前記吐出ヘッドのノズルが開口するノズル面に接触可能なキャップと、前記キャリッジの移動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記液体収容体の交換又は前記液体収容体への液体補充に係る補助動作において、前記第1軸方向において、前記搬送領域における前記キャップ側の側端と、前記キャップとの間の領域に前記ノズル面が対向する第1位置に前記キャリッジを位置させる。
【0089】
この構成によれば、液体収容体の交換又は液体収容体への液体補充が行われるときは、キャリッジが第1位置に位置する。液体収容体の交換又は液体収容体への液体補充のためにキャリッジが吐出ヘッド側に押し込まれた結果、その押し込み圧の影響でノズルからノズル面に液体が漏れ出ても、ノズル面と対向する位置には媒体が存在しないうえ、吐出ヘッドがメンテナンス位置まで移動する過程で媒体の上方を通らない。よって、吐出ヘッドから媒体への液滴の落下や、ノズル面と浮き上がった媒体との擦れの心配がない。また、キャップ以外の場所で液体収容体の交換又は液体補充が行われるので、吐出ヘッドとキャップとの接触も回避できる。よって、媒体が搬送領域に存在する状態でも、液体収容体の交換又は液体補充を、媒体を液体で汚すことなく適切に行うことができる。
【0090】
上記液体吐出装置では、前記キャリッジが前記第1位置にあるとき、前記キャリッジのうち、搬送される前記媒体側の面であるキャリッジ面に接触可能な突起を有し、前記キャリッジ面と前記突起とが接触するとき、前記ノズル面と前記ノズル面に対向する面との間に隙間があるとよい。
【0091】
この構成によれば、液体収容体の交換又は液体収容体への液体補充のときにキャリッジにかかる押し込み圧の影響で吐出ヘッドが下方へ変位しても、対向する面などと接触する事態を防ぐことができる。
【0092】
上記液体吐出装置では、前記媒体を、前記第1軸方向と交差する第2軸方向に搬送する搬送部を備え、前記制御部は、前記補助動作において、前記媒体を搬送させて当該媒体のうち前記吐出ヘッドにより液体が吐出された領域を前記第2軸方向へ退避させる退避動作を行い、前記退避動作における前記媒体の搬送量は、前記ノズル面の前記第2軸方向の寸法より大きいとよい。
【0093】
この構成によれば、媒体のうち液体が付着した領域は、液体の膨潤等が原因で浮き上がる虞がある。退避動作により媒体における液体が吐出された領域が、ノズル面の第2軸方向の寸法より大きな搬送量で退避する。このため、吐出ヘッドが第1軸方向に移動したときにノズル面が対向可能な領域に媒体の液体付着領域が存在しない。例えば吐出ヘッドがメンテナンスあるいは液体吐出処理の再開のために、液体収容体の交換又は液体収容体への液体補充が行われた位置よりも、第1軸方向にキャップと反対側へ移動したとしても、吐出ヘッドのノズル面と媒体の液体付着部分との擦れを防ぐことができる。
【0094】
上記液体吐出装置では、前記補助動作は、前記液体収容体の交換に係る補助動作であり、前記制御部は、前記補助動作において、前記退避動作後に前記液体収容体の交換が完了したことを検出したとき、前記退避動作における前記媒体の搬送方向と逆方向へ媒体を搬送し、前記逆方向へ搬送された前記媒体に前記液体を吐出させるとよい。
【0095】
この構成によれば、液体吐出処理の途中で液体エンドになっても、補助動作において媒体の退避動作にが行われるため、媒体と吐出ヘッドとの接触に起因する媒体の汚れ等を防ぎつつ、液体収容体の交換を終えた後は、媒体に対する液体吐出処理を液体エンド時の続きから再開できる。
【0096】
上記液体吐出装置では、前記補助動作は、前記液体収容体への液体補充に係る補助動作であり、前記制御部は、前記補助動作において、前記退避動作後に前記液体収容体への液体補充が完了したことを検出したとき、前記退避動作における前記媒体の搬送方向と逆方向へ媒体を搬送し、前記逆方向へ搬送された前記媒体に前記液体を吐出させるとよい。
【0097】
この構成によれば、液体吐出処理の途中で液体エンドになっても、補助動作において媒体の退避動作が行われるため、媒体と吐出ヘッドとの接触に起因する媒体の液体汚れ等を防ぎつつ、液体収容体への液体補充を終えた後は、媒体に対する液体吐出処理を液体エンド時の続きから再開できる。
【0098】
上記液体吐出装置では、前記制御部は、前記退避動作において、前記液体が吐出された領域を、前記第2軸方向において前記ノズル面と対向可能な領域よりも、前記吐出ヘッドにより前記液体が吐出される前の領域と反対側に位置させるとよい。
【0099】
この構成によれば、退避動作の後に、媒体のうちノズル面と対向可能な領域にある部分が、未印刷の部分なので、ノズル面と対向可能な領域での媒体の浮きが生じにくい。よって、キャリッジがメンテナンスのために第1位置よりも搬送領域側へ移動しても、吐出ヘッドのノズル面と媒体との接触を回避できる。また、液体が吐出された領域を、吐出ヘッドにより液体が吐出される前の領域と反対側に退避させるので、搬送部の構成部材への媒体からの液体の転写を回避できる。例えば、媒体における液体が吐出される前の領域を、その後、搬送部が搬送する際に転写された液体で汚すことを回避できる。
【0100】
上記液体吐出装置では、前記液体が吐出された前記媒体が排出される排出口を有する筐体を備え、前記制御部は、前記退避動作において、前記液体が吐出された領域を、前記排出口から前記筐体の外に位置させるとよい。
【0101】
この構成によれば、筐体内は吐出ヘッドによる液体の吐出が行われるため、筐体の外に比べ湿度が高い。媒体の液体が吐出された領域を、筐体内に比べ湿度の低い筐体の外に位置させることで、媒体の液体が吐出された領域の乾燥が促進される。媒体が逆搬送で筐体内に戻される途中又は戻された後に、媒体と吐出ヘッドとの擦れを低減できる。
【0102】
液体吐出装置の制御方法は、搬送される媒体に液体を吐出可能な吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドのノズル面に接触可能なキャップと、液体収容体と前記吐出ヘッドとを搭載し、第1軸方向に移動するキャリッジと、を備える液体吐出装置の制御方法であって、前記液体収容体の交換又は前記液体収容体への液体補充に係る補助動作において、前記キャリッジを移動させて、前記ノズル面を、前記第1軸方向において、前記媒体の搬送領域における前記キャップ側の側端と、前記キャップとの間の領域に対向する位置に位置させる。この方法によれば、上記液体吐出装置と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0103】
11…液体吐出装置、12…筐体、16…排出口、20…キャリッジ、20A…キャリッジ本体、20B…カバー、20C…キャリッジ面、21…吐出ヘッド、21A…ノズル面、27…液体収容体の一例としての液体カートリッジ、22…移動機構、23…キャリッジモーター、26…第1エンコーダー、27…液体収容体の一例としての液体カートリッジ、28…メンテナンス装置、29…キャップ、40…搬送部、55…ヘッドガイド部材、58…第2エンコーダー、41…搬送モーター、51…突起の一例としての第1突起、52…第2突起、60…制御部、61…CPU、62…第1カウンター、63…第2カウンター、64…タイマー、65…メモリー、X…第1軸方向の一例としてのX軸方向(走査方向)、Y…第2軸方向の一例としてのY軸方向(搬送方向)、Z…鉛直方向、M…媒体、M1…側端、N…ノズル、NR…ノズル列、HP…ホーム位置、P1…第1位置、FA…搬送領域、PCA…領域、GH…隙間、PL…ノズル面寸法、NL…ノズル列寸法、HA…ノズル面対向領域、TD…乾燥時間テーブル、FL…搬送量、PA…印刷処理領域、IA…印刷領域。