(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/06 20060101AFI20221206BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20221206BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221206BHJP
C08G 18/61 20060101ALI20221206BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20221206BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20221206BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20221206BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L75/04
C08K3/013
C08G18/61
C08G18/48
C08G18/40 009
C08G18/76
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2018136753
(22)【出願日】2018-07-20
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】須藤 友規
(72)【発明者】
【氏名】岡松 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 悠一郎
(72)【発明者】
【氏名】三原 諭
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/124502(WO,A1)
【文献】特開2019-199597(JP,A)
【文献】特開2014-062168(JP,A)
【文献】特開2014-055230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
B60C 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンブタジエンゴムを含有するジエン系ゴム100質量部と、
無機充填剤20質量部以上と、
水酸基を有するシリコーンとイソシアネートと
ポリエーテルポリオールとの重合体であるポリウレタン1~30質量部とを含有
し、
前記ポリウレタンにおいて、前記水酸基を有するシリコーンに由来する繰り返し単位と前記ポリエーテルポリオールに由来する繰り返し単位との合計に対する、前記ポリエーテルポリオールに由来する繰り返し単位の質量比が、70質量%以下である、タイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記イソシアネートが、芳香族系ポリイソシアネートである、請求項
1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ジエン系ゴムがスチレンブタジエンゴムを含有し、
前記ジエン系ゴム中の前記スチレンブタジエンゴムの含有量が30質量%以上である、請求項
1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて製造された、空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤのタイヤトレッド部に用いられるゴム組成物として、ジエン系ゴムとシリカとシリコーンとを含有する組成物が知られている(特許文献1等)。上記特許文献1には、上記組成物を用いることで優れた耐摩耗性能を示すタイヤが得られる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、求められる安全レベルの向上に伴い、タイヤに対して、耐摩耗性能及びWET性能(ウェットグリップ性能)のさらなる向上が求められている。
このようななか、本発明者らが特許文献1を参考にタイヤ用ゴム組成物を調製し、その耐摩耗性能及びWET性能を評価したところ、今後さらに高まるであろう要求を考慮するとさらなる改善が望ましいことが明らかになった。
【0005】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、タイヤにしたときに耐摩耗性能及びWET性能に優れるタイヤ用ゴム組成物、並びに、上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造された空気入りタイヤを提供することを目的とする。
なお、以下、「タイヤにしたときに耐摩耗性能に優れる」ことを単に「耐摩耗性能に優れる」とも言い、また、「タイヤにしたときにWET性能に優れる」ことを単に「WET性能に優れる」とも言う。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、シリコーンの代わりに、水酸基を有するシリコーンとイソシアネートとの重合体であるポリウレタンを用いることで上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
(1) ジエン系ゴム100質量部と、
無機充填剤20質量部以上と、
水酸基を有するシリコーンとイソシアネートとの重合体であるポリウレタン1~30質量部とを含有する、タイヤ用ゴム組成物。
(2) 上記ポリウレタンが、水酸基を有するシリコーンとイソシアネートとポリエーテルポリオールとの重合体である、上記(1)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(3) 上記ポリウレタンにおいて、上記水酸基を有するシリコーンに由来する繰り返し単位と上記ポリエーテルポリオールに由来する繰り返し単位との合計に対する、上記ポリエーテルポリオールに由来する繰り返し単位の質量比が、70質量%以下である、上記(2)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(4) 上記イソシアネートが、芳香族系ポリイソシアネートである、上記(1)~(3)のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
(5) 上記ジエン系ゴムがスチレンブタジエンゴムを含有し、
上記ジエン系ゴム中の上記スチレンブタジエンゴムの含有量が30質量%以上である、上記(1)~(4)のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
(6) 上記(1)~(5)のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて製造された、空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、タイヤにしたときに耐摩耗性能及びWET性能に優れるタイヤ用ゴム組成物、並びに、上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造された空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表す部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のタイヤ用ゴム組成物及び上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造された空気入りタイヤについて説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明のタイヤ用ゴム組成物が含有する各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
【0011】
[タイヤ用ゴム組成物]
本発明のタイヤ用ゴム組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、
ジエン系ゴム100質量部と、
無機充填剤20質量部以上と、
水酸基を有するシリコーンとイソシアネートとの重合体であるポリウレタン(以下、「特定ポリウレタン」とも言う)1~30質量部とを含有する。
【0012】
本発明の組成物はこのような構成をとるため、上述した効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないがおよそ以下のとおりと推測される。
【0013】
ゴム組成物にシリコーンを配合した場合、シリコーンの撥水効果によりWET性能の向上が期待される。しかしながら、ゴム成分とシリコーンとの親和性が低いため、単にゴム組成物にシリコーンを配合してもシリコーンがゴム成分から分離してしまい、WET性能が十分に向上しないことが本発明者らの検討から分かっている。また、シリコーンがゴム成分から分離することで耐摩耗性能が低下する傾向があることも分かっている。
一方、本発明で使用される特定ポリウレタンはシリコーンとイソシアネートとの重合体であるため、イソシアネートに由来する構造がゴム成分との親和性に寄与し、シリコーンがゴム成分と分離することなくシリコーンの撥水効果が発現される。結果として、本発明の組成物はタイヤにしたときに優れたWET性能を示すものと考えられる。また、シリコーンがゴム成分から分離することがないため、耐摩耗性能も維持されるものと考えられる。
【0014】
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
【0015】
〔ジエン系ゴム〕
本発明の組成物に含有されるジエン系ゴムは特に限定されず、その具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。上記ジエン系ゴムは、1種のジエン系ゴムを単独で用いても、2種以上のジエン系ゴムを併用してもよい。
【0016】
上記ジエン系ゴムとしては、本発明の効果がより優れる理由から、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴムを用いることが好ましく、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体とともにブタジエンゴム(BR)を併用することがより好ましい。
また、上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴムとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレン共重合体ゴムなどが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、スチレンブタジエンゴム(SBR)であることが好ましい。
【0017】
上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の芳香族ビニル含有量(例えば、スチレン含有量)は、本発明の効果がより優れる理由から、20~45質量%であることが好ましく、23~42質量%であることがより好ましい。
また、上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の共役ジエン中のビニル結合量は、本発明の効果がより優れる理由から、10~50%であることが好ましく、25~48%であることがより好ましい。ここで、ビニル結合量とは、共役ジエンの結合様式であるシス-1,4-結合、トランス-1,4-結合および1,2-ビニル結合のうち、1,2-ビニル結合の割合をいう。
【0018】
上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体は、その製造方法について特に限定されず、従来公知の方法で製造することができる。
また、上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体を製造する際に使用される単量体としての、芳香族ビニル、共役ジエンは特に限定されない。
ここで、上記共役ジエン単量体としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンなどが挙げられる。
一方、上記芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、tert-ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4-ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0019】
上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体を用いる場合、上記ジエン系ゴム中の上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、50~100質量%であることが好ましく、55~95質量%であることがより好ましく、60~90質量%であることがさらに好ましい。
また、上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体とともに上記ブタジエンゴム(BR)を併用する場合、上記ジエン系ゴム中の上記ブタジエンゴム(BR)の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、5~50質量%であることが好ましく、10~45質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることがさらに好ましい。
【0020】
上記ジエン系ゴム(特に、上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体)の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、取り扱いの観点から、100,000~1,500,000であることが好ましく、600,000~1,300,000であることがより好ましい。なお、ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
【0021】
上記ジエン系ゴム(特に、上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体)のTg(ガラス転移温度)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、-70~-10℃であることが好ましく、-40~-20℃であることがより好ましい。
【0022】
〔無機充填剤〕
本発明の組成物に含有される無機充填剤は特に制限されないが、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、層状又は板状粘土鉱物、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウムなどの無機充填剤が挙げられ、こちらのうち1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なお、本明細書において、カーボンブラックは無機充填剤に該当しないものとする。
【0023】
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、無機充填剤としてシリカを含有するのが好ましい。
上記シリカは特に制限されないが、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシリカを用いることができる。
シリカの具体例としては、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、湿式シリカが好ましい。上記シリカは、1種のシリカを単独で用いても、2種以上のシリカを併用してもよい。
シリカのCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)吸着比表面積は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、100~300m2/gであることが好ましく、150~200m2/gであることがより好ましい。なお、本明細書において、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0024】
本発明の組成物において、無機充填剤(特にシリカ)の含有量は、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、20質量部以上である。上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、150質量部以下であることが好ましい。無機充填剤の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、50~100質量部であることが好ましい。
【0025】
〔特定ポリウレタン〕
上述のとおり、本発明の組成物は、水酸基を有するシリコーン(以下、「特定シリコーン」とも言う)とイソシアネートとの重合体であるポリウレタン(特定ポリウレタン)を含有する。
特定ポリウレタンは、特定シリコーンが有する水酸基とイソシアネートが有するイソシアネート基(-NCO)とが反応することで得られる重合体である。
特定ポリウレタンは、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、本発明の効果がより優れる理由から、直鎖状であることが好ましい。
【0026】
<特定シリコーン>
特定シリコーンは、水酸基を有するシリコーンであれば特に制限されない。
ここで、シリコーンとは、主鎖にシロキサン構造(-Si-O-)を2つ以上有する化合物をいう。
シリコーンは特に制限されないが、その具体例としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ジメチルシリコーンなどが挙げられる。
【0027】
特定シリコーンは、本発明の効果がより優れる理由から、水酸基を2つ以上有するシリコーンであることが好ましい。
特定シリコーンは、本発明の効果がより優れる理由から、末端に水酸基有するシリコーンであることが好ましく、両末端に水酸基を有するシリコーンであることが好ましい。
【0028】
特定シリコーンの水酸基価は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10~100であることが好ましく、30~50であることがより好ましい。
なお、本明細書において水酸基価とは、JIS K 0070:1992に記載の水酸基価であり、試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数である。
【0029】
特定シリコーンの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1,000~100,000であることが好ましく、2,000~50,000であることがより好ましい。
なお、本明細書において重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値である。
【0030】
(好適な態様)
特定シリコーンは、本発明の効果がより優れる理由から、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0031】
【0032】
上記式(1)中、Rは炭化水素基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表し、nは繰り返し単位の数を表す。複数存在するRは同一であっても異なっていてもよい。複数存在するLは同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
上述のとおり、式(1)中、Rは炭化水素基を表す。
上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はこれらを組み合わせた基などが挙げられる。上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、直鎖状又は分岐状のアルキル基(好ましくは炭素数1~10)、直鎖状又は分岐状のアルケニル基(好ましくは炭素数2~10)、直鎖状又は分岐状のアルキニル基(好ましくは炭素数2~10)などが挙げられる。上記芳香族炭化水素基としては、例えば、アリール基、ナフチル基などが挙げられる。上記アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、炭素数1~10(好ましくは、炭素数1~3)の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、メチル基がより好ましい。
【0034】
上述のとおり、式(1)中、Lは単結合又は2価の連結基を表す。
上記2価の連結基としては、2価の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキレン基。好ましくは炭素数1~8)、2価の芳香族炭化水素基(例えば、アリーレン基。好ましくは炭素数6~12)、アルキレンオキシ基、-O-、-S-、-SO2-、-N(R)-(R:アルキル基)、-CO-、-NH-、-COO-、-CONH-、又はこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
【0035】
上述のとおり、式(1)中、nは繰り返し単位(カッコ内の繰り返し単位)の数を表す。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、1~1,000の整数であることが好ましく、10~500の整数であることがより好ましい。
【0036】
<イソシアネート>
上記イソシアネートは、イソシアネート基(-NCO)を有する化合物であれば特に制限されない。
上記イソシアネートは、イソシアネート基を2つ以上有する化合物であることが好ましい。
イソシアネートの具体例としては、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族系ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどの脂肪族系ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート体、ビューレット体、アダクト体;等が挙げられる。
イソシアネートは、本発明の効果がより優れる理由から、芳香族系ポリイソシアネートであることが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートであることがより好ましい。
【0037】
<好適な態様>
特定ポリウレタンは、本発明の効果がより優れる理由から、水酸基を有するシリコーン(特定シリコーン)とイソシアネートとポリエーテルポリオールとの重合体であることが好ましい。
特定ポリウレタンが特定シリコーンとイソシアネートとポリエーテルポリオールとの重合体である場合、特定ポリウレタンは、特定シリコーン及びポリエーテルポリオールが有する水酸基と、イソシアネートが有するイソシアネート基(-NCO)とが反応することで得られる重合体である。
特定シリコーン及びイソシアネートについては上述のとおりである。
【0038】
(ポリエーテルポリオール)
上記ポリエーテルポリオールは、主鎖としてポリエーテルを有し、水酸基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。ポリエーテルとは、エーテル結合を2以上有する構造であり、その具体例としては、例えば、構造単位-Ra-O-Rb-を合計して2個以上有する構造が挙げられる。ここで、上記構造単位中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭化水素基を表す。炭化水素基は特に制限されない。例えば、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンジオール(ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレンジオール(ポリプロピレングリコール:PPG)、ポリオキシプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコールのようなポリオキシアルキレンポリオール;ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、PPGが好ましい。
【0039】
上記ポリエーテルポリオールは、本発明の効果がより優れる理由から、両末端に水酸基を有するポリエーテルポリオールであることが好ましい。
【0040】
上記ポリエーテルポリオールの水酸基価は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10~100であることが好ましく、20~75であることがより好ましい。
【0041】
上記ポリエーテルポリオールの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1,000~100,000であることが好ましく、2,000~20,000であることがより好ましい。
【0042】
(ポリエーテルポリオール含有率)
特定ポリウレタンが特定シリコーンとイソシアネートとポリエーテルポリオールとの重合体である場合、特定シリコーンに由来する繰り返し単位と上記ポリエーテルポリオールに由来する繰り返し単位との合計に対する、上記ポリエーテルポリオールに由来する繰り返し単位の質量比(以下、「ポリエーテルポリオール含有率」とも言う)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、90質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。下限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。
【0043】
<接触角>
特定ポリウレタンの水の接触角は、本発明の効果がより優れる理由から、80~160°であることが好ましく、90~150°であることがより好ましい。
なお、特定ポリウレタンの水の接触角は、特定ポリウレタンを用いてガラスプレート上に作製したフィルムの水の接触角である。
【0044】
<特定ポリウレタンの製造方法>
特定ポリウレタンを製造する方法は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述した特定シリコーンと上述したイソシアネートとを重合する方法(方法1)、又は、上述した特定シリコーンと上述したポリエーテルポリオールと上述したイソシアネートとを重合する方法(方法2)が好ましい。
この場合、イソシアネートのイソシアネート基(-NCO)と、特定シリコーン及びポリエーテルポリオールの合計の水酸基(-OH)との当量比(モル比)(-NCO/-OH)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、0.5~1.5であることが好ましく、0.75~1.25であることがより好ましい。
また、上記重合では、ジオクチル錫等の触媒を用いるのが好ましい。
【0045】
<含有量>
本発明の組成物において、特定ポリウレタンの含有量は、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、1~30質量部である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、5~20質量部であることが好ましい。
【0046】
また、本発明の組成物において、特定ポリウレタンの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述した無機充填剤の含有量に対して、1~50質量%であることが好ましく、5~40質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることがさらに好ましい。
【0047】
〔任意成分〕
本発明の組成物は、必要に応じて、その効果や目的を損なわない範囲でさらに他の成分(任意成分)を含有することができる。
上記任意成分としては、例えば、カーボンブラック、シランカップリング剤、テルペン樹脂(例えば、芳香族変性テルペン樹脂)、熱膨張性マイクロカプセル、充填剤、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加工助剤、オイル、液状ポリマー、熱膨張性マイクロカプセル、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤などが挙げられる。
【0048】
<カーボンブラック>
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、カーボンブラックを含有するのが好ましい。
上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF等の各種グレードのものを使用することができる。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50~200m2/gであることが好ましく、70~150m2/gであることがより好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(N2SA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0049】
上記カーボンブラックの含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上記ジエン系ゴム100質量部に対して1~100質量部であることが好ましく、5~50質量部であることがより好ましい。
【0050】
<シランカップリング剤>
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、シランカップリング剤を含有するのが好ましい。シランカップリング剤は、加水分解性基および有機官能基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。
上記加水分解性基は特に制限されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~16であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0051】
上記有機官能基は特に制限されないが、有機化合物と化学結合を形成し得る基であることが好ましく、例えば、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、スルフィド基(特に、ポリスルフィド基(-Sn-:nは2以上の整数))、メルカプト基、ブロックメルカプト基(保護メルカプト基)(例えば、オクタノイルチオ基)などが挙げられ、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、スルフィド基(特に、ジスルフィド基、テトラスルフィド基)、メルカプト基、ブロックメルカプト基が好ましい。
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
上記シランカップリング剤は、本発明の効果がより優れる理由から、硫黄含有シランカップリング剤であることが好ましい。
【0053】
上記シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル-メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル-メタクリレート-モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述した無機充填剤(特にシリカ)の含有量に対して2~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
【0055】
〔タイヤ用ゴム組成物の調製方法〕
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混練する方法などが挙げられる。本発明の組成物が硫黄又は加硫促進剤を含有する場合は、硫黄及び加硫促進剤以外の成分を先に高温(好ましくは100~155℃)で混合し、冷却してから、硫黄又は加硫促進剤を混合するのが好ましい。
また、本発明の組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0056】
[空気入りタイヤ]
本発明の空気入りタイヤは、上述した本発明の組成物を用いて製造された空気入りタイヤである。なかでも、本発明の組成物をタイヤトレッド(キャップトレッド)に用いた(配置した)空気入りタイヤであることが好ましい。
図1に、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表す空気入りタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明の空気入りタイヤは
図1に示す態様に限定されるものではない。
【0057】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
なお、タイヤトレッド部3は上述した本発明の組成物により形成されている。
【0058】
本発明の空気入りタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。また、空気入りタイヤに充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
〔合成例〕
以下のとおり、特定ポリウレタン1~4を合成した。
【0061】
<特定ポリウレタン2の合成>
反応容器に、特定シリコーンとして両末端サイラプレーンFM4425(両末端に水酸基を有する反応性シリコーン、下記構造(式中、Meはメチル基を表し、nは繰り返し単位の数を表す)、重量平均分子量:10,000、JNC社製)と、ポリエーテルポリオールとしてEXCENOL3020(両末端に水酸基を有するポリプロピレングリコール(PPG)、水酸基数:2、重量平均分子量:3000、水酸基価:37.4)とを、99/1の質量比で入れた。オーブンにて原料(両末端サイラプレーンFM4425、EXCENOL3020)の水分を除去した後、80℃のオイルバスを用いて上記原料をメチルエチルケトン(MEK)(関東化学社製)に溶解させた。
原料が溶解した後、イソシアネートとしてジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、触媒としてネオスタンU-810(ジオクチル錫、日東化成社製)を加えた。このとき、イソシアネートのイソシアネート基(-NCO)と、特定シリコーン及びポリエーテルポリオールの合計の水酸基(-OH)との当量比(モル比)(-NCO/-OH)が1.05になるようにイソシアネートを加えた。
容器内を窒素置換して重合反応を開始した。重合反応は蓋を閉めたままの閉鎖系で5時間実施した。
このようにして、特定シリコーンとイソシアネートとポリエーテルポリオールとの重合体を得た。得られた重合体のポリエーテルポリオール含有率は1質量%であった。また、水の接触角は115°であった。
【0062】
【0063】
<特定ポリウレタン1の合成>
ポリエーテルポリオールを使用しなかったこと以外は、上述した特定ポリウレタン2と同様の手順に従って重合を行った。
このようにして、特定シリコーンとイソシアネートとの重合体を得た。得られた重合体のポリエーテルポリオール含有率は0質量%であった。また、水の接触角は115°であった。
【0064】
<特定ポリウレタン3の合成>
特定シリコーンとポリエーテルポリオールとの質量比を75/25に変更した以外は、上述した特定ポリウレタン2と同様の手順に従って重合を行った。
このようにして、特定シリコーンとイソシアネートとポリエーテルポリオールとの重合体を得た。得られた重合体のポリエーテルポリオール含有率は25質量%であった。また、水の接触角は110°であった。
【0065】
<特定ポリウレタン4の合成>
特定シリコーンとポリエーテルポリオールとの質量比を10/90に変更した以外は、上述した特定ポリウレタン2と同様の手順に従って重合を行った。
このようにして、特定シリコーンとイソシアネートとポリエーテルポリオールとの重合体を得た。得られた重合体のポリエーテルポリオール含有率は90質量%であった。また、水の接触角は105°であった。
【0066】
〔タイヤ用ゴム組成物の調製〕
下記表1に示される成分を同表に示される割合(質量部)で配合した。具体的には、まず、下記表1に示す成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーを用いて150℃付近に温度を上げてから、5分間混合した後に放出し、室温まで冷却してマスターバッチを得た。さらに、上記バンバリーミキサーを用いて、得られたマスターバッチに硫黄および加硫促進剤を混合し、タイヤ用ゴム組成物を得た。
なお、ジエン系ゴムが油展品である場合、質量部はゴムの正味の量(オイルを除いた量)を表す。
【0067】
〔評価〕
得られたタイヤ用ゴム組成物を所定の金型中で、170℃で10分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。そして、得られた加硫ゴム試験片について、以下の評価を行った。
【0068】
<耐摩耗性能>
加硫ゴム試験片について、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所社製)を用いて、JIS K6264-2:2005に準拠し、付加力4.0kg/cm3(=39N)、スリップ率30%、摩耗試験時間4分、試験温度を室温の条件で摩耗試験を行い、摩耗質量を測定した。そして、下記のとおり指数を算出した。結果を表1に示す。指数が大きいほど摩耗量が少なく、タイヤにしたときに耐摩耗性能に優れる。耐摩耗性能の観点から、指数は98以上であることが好ましい。
指数=(標準例の試験片の摩耗質量/各例の摩耗質量)×100
【0069】
<WET性能>
加硫ゴム試験片について、JIS K6394:2007に準じ、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度0℃の条件でtanδ(0℃)を測定した。
結果を表1に示す。結果は標準例のtanδ(0℃)を100とする指数で表した。指数が大きいほどtanδ(0℃)が大きく、タイヤにしたときにWET性能(ウェットグリップ性能)に優れる。WET性能の観点から、指数は100超であることが好ましい。
【0070】
【0071】
表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
・SBR:TUFDENE E581(SBR、ガラス転移温度:-36℃、スチレン含有量:35.6質量%、ビニル結合量:41.3%、油展品(油展量:37.5質量%)、旭化成ケミカルズ社製)
・BR:NIPOL BR1220(BR、日本ゼオン社製)
・カーボンブラック:ショウブラックN339(キャボットジャパン社製)
・シリカ:ZEOSIL 1165MP(CTAB吸着比表面積:159m2/g、ローディア社製)
・シランカップリング剤:Si69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニックデグッサ社製)
・オイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・特定ポリウレタン1:上述のとおり合成した特定ポリウレタン1(ポリエーテルポリオール含有率:0質量%)
・特定ポリウレタン2:上述のとおり合成した特定ポリウレタン2(ポリエーテルポリオール含有率:1質量%)
・特定ポリウレタン3:上述のとおり合成した特定ポリウレタン3(ポリエーテルポリオール含有率:25質量%)
・特定ポリウレタン4:上述のとおり合成した特定ポリウレタン4(ポリエーテルポリオール含有率:90質量%)
・シリコーン:両末端サイラプレーンFM4425(両末端に水酸基を有する反応性シリコーン、上述した構造、重量平均分子量:10,000、JNC社製)
【0072】
表1から分かるように、特定ポリウレタンを含有する実施例1~7は、いずれも優れた耐摩耗性能及びWET性能を示した。なかでも、特定ポリウレタンの含有量がジエン系ゴム100質量部に対して20質量部以下である実施例1及び3~7は、より優れた耐摩耗性を示した。
実施例1及び3~5の対比(ジエン系ゴム中のSBRの含有量が85質量%であり、且つ、特定ポリウレタンの含有量がジエン系ゴム100質量部に対して15質量部の態様同士の対比)から、特定ポリウレタンが特定シリコーンとイソシアネートとポリエーテルポリオールとの重合体である実施例1及び4~5は、より優れたWET性能を示した。なかでも、特定ポリウレタンのポリエーテルポリオール含有率が70質量%以下である実施例1及び4は、さらに優れたWET性能を示した。なかでも、特定ポリウレタンのポリエーテルポリオール含有率が20質量%以下である実施例1は、特に優れたWET性能を示した。
また、実施例1及び6~7の対比(特定ポリウレタンとして特定ポリウレタン2を含有し、且つ、特定ポリウレタンの含有量がジエン系ゴム100質量部に対して15質量部の態様同士の対比)から、ジエン系ゴム中のスチレンブタジエンゴムの含有量が70質量%以上である実施例1及び6は、より優れたWET性能を示した。なかでも、ジエン系ゴム中のスチレンブタジエンゴムの含有量が80質量%以上である実施例1は、さらに優れたWET性能を示した。
【0073】
一方、特定ポリウレタンを含有しない標準例、特定ポリウレタンの代わりにシリコーンを含有する比較例1、及び、特定ポリウレタンを含有するが特定ポリウレタンの含有量がジエン系ゴム100質量部に対して30質量部を超える比較例2は、耐摩耗性能及びWET性能を少なくとも一方が不十分であった。
【符号の説明】
【0074】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション