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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】湯水混合水栓
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/044 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
E03C1/044
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018150424
(22)【出願日】2018-08-09
(65)【公開番号】P2020026632
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝田 稔
(72)【発明者】
【氏名】窪園 幸徳
(72)【発明者】
【氏名】岡本 満
(72)【発明者】
【氏名】天本 直樹
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-172772(JP,A)
【文献】特開2004-239020(JP,A)
【文献】特開平09-317911(JP,A)
【文献】特開平11-094113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部流路が形成された内部流路ユニットと、
前記内部流路ユニットが挿入される外郭部材と、
前記外郭部材と、湯を供給する給湯管とを接続する継ぎ手と、
前記継ぎ手に挿入され、前記給湯管から前記内部流路に前記湯を流入させる断熱部材と、
を備え、
前記断熱部材は、挿入部を一体に備え、
前記挿入部は、前記内部流路ユニットに形成される挿入孔に挿入される
ことを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項2】
前記継ぎ手は、前記外郭部材に形成される挿入孔を囲むように設けられる筒部を備え、
前記断熱部材の給湯菅側の端部は、前記筒部の給湯管側の端部よりも前記給湯管側へ延出している
ことを特徴とする請求項1に記載の湯水混合水栓。
【請求項3】
前記継ぎ手と前記断熱部材との間には、前記断熱部材における湯の流れ方向に対して直交する面方向において隙間が形成される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の湯水混合水栓。
【請求項4】
前記給湯管と前記断熱部材との間に設けられたシール部材
を備え、
前記断熱部材は、
前記給湯管側の端から前記継ぎ手に向けて突出し、前記給湯管側の面が前記シール部材に当接し、前記内部流路ユニット側の面が前記継ぎ手に当接するフランジ
を備えることを特徴とする請求項に記載の湯水混合水栓。
【請求項5】
前記内部流路ユニットと前記断熱部材との間、または前記給湯管と前記断熱部材との間に設けられたシール部材
を備え、
前記シール部材は、前記断熱部材における湯の流れ方向に対して直交する面方向へのずれを許容する
ことを特徴とする請求項に記載の湯水混合水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、湯水混合水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湯と水とを混合可能な内部部材を外郭部材に挿入し、例えば、湯と水とを混合した混合水を吐水する湯水混合水栓が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-228040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、外郭部材に内部部材を挿入する湯水混合水栓においては、鉛溶出規制の厳格化や冷凍組み立てなどの特殊な製法の将来的な廃止などの理由から、外郭部材と内部部材との間に水を流さずに、吐水可能とすることが望まれている。
【0005】
しかしながら、このような湯水混合水栓では、内部部材の外側に(冷)水を回すことで外郭部材の温度上昇を防いでいたが、鉛溶出規制等や組み立て性を向上しようとすると、内部部材の外側に水を回せなくなり外郭部材の温度が高くなるおそれがある。とくに、湯を供給する給湯管の温度が上昇した場合、従来であれば、給湯管と接続される外郭部材は冷水により冷却されていたが、水の流路を形成できなくなってしまうと、外郭部材そのものの温度が高くなるおそれがある。
【0006】
実施形態の一態様は、外郭部材の温度上昇を抑制する湯水混合水栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る湯水混合水栓は、内部流路が形成された内部流路ユニットと、前記内部流路ユニットが挿入される外郭部材と、前記外郭部材と、湯を供給する給湯管とを接続する継ぎ手と、前記継ぎ手に挿入され、前記給湯管から前記内部流路に前記湯を流入させる断熱部材とを備えることを特徴とする。
【0008】
外郭部材と給湯管とを接続する継ぎ手に断熱部材を挿入し、給湯管から内部流路に断熱部材によって湯を流入させることで、継ぎ手の温度上昇を抑制することができる。結果として、給湯管から外郭部材への伝熱を抑制することができ、使用者が触れる可能性の高い外郭部材の温度上昇を抑制することができる。
【0009】
また、湯水混合水栓は、前記継ぎ手と前記断熱部材との間には、前記断熱部材における湯の流れ方向に対して直交する面方向において隙間が形成されることを特徴とする。
【0010】
継ぎ手と断熱部材との間に隙間を形成することで、外郭部材への伝熱を抑制することができ、外郭部材の温度上昇を抑制することができる。
【0011】
また、湯水混合水栓は、前記給湯管と前記断熱部材との間に設けられたシール部材を備え、前記断熱部材は、前記給湯管側の端から前記継ぎ手に向けて突出し、前記給湯管側の面が前記シール部材に当接し、前記内部流路ユニット側の面が前記継ぎ手に当接するフランジを備えることを特徴とする。
【0012】
フランジの給湯管側の面をシール部材に当接し、内部流路ユニット側の面を継ぎ手に当接することで、断熱部材の内部流路ユニット側への移動を規制し、断熱部材や、内部流路ユニットが変形することを抑制することができる。また、フランジによってシール部材のつぶし代を確保することができ、湯の漏れを防止することができる。
【0013】
また、湯水混合水栓は、前記内部流路ユニットと前記断熱部材との間、または前記給湯管と前記断熱部材との間に設けられたシール部材を備え、前記シール部材は、前記断熱部材における湯の流れ方向に対して直交する面方向へのずれを許容することを特徴とする。
【0014】
断熱部材における湯の流れ方向に対して直交する面方向へのずれを許容するシール部材を設けることで、断熱部材の位置が湯の流れ方向に対して直交する面方向へずれた場合であっても、湯の漏れを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
実施形態の一態様によれば、外郭部材の温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、吐水装置の斜視図である。
図2図2は、吐水装置の正面図である。
図3図3は、図2のIII-III断面図である。
図4図4は、内部流路ユニットの一部の分解斜視図である。
図5図5は、図3における第1接続部材付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する湯水混合水栓の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
吐水装置1は、湯と水とを混合可能な湯水混合水栓である。吐水装置1について、図1図3を参照し説明する。図1は、吐水装置1の斜視図である。図2は、吐水装置1の正面図である。図3は、図2のIII-III断面図である。
【0019】
図1図3では、説明の便宜上、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。なお、直交座標系は、他の図においても図示している。
【0020】
直交座標系は、X軸の正方向を「左方」と規定し、X軸の負方向を「右方」と規定している。また、直交座標系は、Y軸の正方向を「前方」と規定し、Y軸の負方向を「後方」と規定している。また、直交座標系は、Z軸の正方向を「上方」と規定し、Z軸の負方向を「下方」と規定している。このため、以下の説明では、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という場合がある。
【0021】
吐水装置1は、水栓本体2と、温度調整ハンドル3と、流量調整ハンドル4と、内部流路ユニット5と、吐水管6と、ハンドシャワー(不図示)とを備える。吐水装置1は、吐水管6、またはハンドシャワーから、水と湯とを混合した混合水、または水を吐水する。
【0022】
水栓本体2は、円筒状であり、左右方向に延設される。水栓本体2は、金属部材で構成される。水栓本体2には、左右方向に直交する断面が円形である内周壁2aが形成される。水栓本体2の軸方向は、左右方向に一致する。なお、水栓本体2の外形は、円筒状に限られず、例えば、矩形状であってもよい。水栓本体2は、外郭部材を構成する。
【0023】
水栓本体2には、内部流路ユニット5が左右方向に挿入される。すなわち、内部流路ユニット5の挿入方向は、左右方向に一致する。水栓本体2には、下方から吐水管6を内部流路ユニット5に取り付けるための第1挿入孔(不図示)が左右方向における中央付近に形成される。水栓本体2には、後方からシャワーホース7を内部流路ユニット5に取り付けるための第2挿入孔2bが左右方向における中央付近に形成される。
【0024】
水栓本体2の左方端付近には、継ぎ手10を介して後方から給湯管8が取り付けられ、第3挿入孔2cが形成される。第3挿入孔2cには、給湯管8から湯を供給する第1接続部材18が挿入される。水栓本体2の右方端付近には、継ぎ手11を介して後方から給水管9が取り付けられ、第4挿入孔2dが形成される。第4挿入孔2dには、給水管9から水を供給する第2接続部材19が挿入される。
【0025】
水栓本体2の左方端には、温度調整ハンドル3が取り付けられる。水栓本体2の右方端には、流量調整ハンドル4が取り付けられる。
【0026】
温度調整ハンドル3は、水栓本体2に対して回動可能に取り付けられる。温度調整ハンドル3は、回動位置に応じて吐水管6、またはハンドシャワーから吐水される流体の種類を、水、または混合水に切り替える。具体的には、温度調整ハンドル3は、水に湯を混合するか否かを切り替える。また、温度調整ハンドル3は、吐水管6、またはハンドシャワーから混合水を吐水する場合に、回動位置に応じて混合水の温度を設定する。
【0027】
流量調整ハンドル4は、水栓本体2に対して回動可能に取り付けられる。流量調整ハンドル4は、回動位置に応じて、水、または混合水の吐水先を、吐水管6、またはハンドシャワーに切り替える。また、流量調整ハンドル4は、回動位置に応じて、吐水管6、またはハンドシャワーから吐水される水、または混合水の流量を調整する。
【0028】
ここで、内部流路ユニット5について、図3、および図4を参照し説明する。図4は、内部流路ユニット5の一部の分解斜視図である。
【0029】
内部流路ユニット5は、給水管9から供給される水を水栓本体2と、内部流路ユニット5との間を流入させずに流すユニットである。すなわち、内部流路ユニット5は、内部で流路が完結するユニットである。内部流路ユニット5は、内部ケース15と、温度調整機構16と、流量調整機構17とを備える。
【0030】
内部ケース15は、温度調整機構16、および流量調整機構17を収容する。内部ケース15は、水栓本体2の内周壁2aに合わせて、略円筒状に形成される。
【0031】
内部ケース15には、左後方に第1挿入孔15aが形成される。第1挿入孔15aには、給湯管8から湯を供給する第1接続部材18が挿入される。内部ケース15には、右後方に第2挿入孔15bが形成される。第2挿入孔15bには、給水管9から水を供給する第2接続部材19が挿入される。
【0032】
内部ケース15には、水、湯、または混合水が流れる内部流路20が形成される。内部流路20は、内部流路ユニット5と水栓本体2との間に水を流さずに、吐水管6、またはハンドシャワーから水、または混合水を吐水させる流路である。内部流路20は、湯流通流路21と、水流通流路22と、吐水流路23とによって構成される。
【0033】
湯流通流路21は、第1接続部材18を介して給湯管8から供給された湯が流れる。湯流通流路21は、内部ケース15と、温度調整機構16の第2支持ケース36と、温度調整機構16の弁体30と、隔離壁37とによって形成される。
【0034】
水流通流路22は、第2接続部材19を介して給水管9から供給された水が流れる。水流通流路22は、第1流路22aと、第2流路22bと、第3流路22cとによって構成される。
【0035】
第1流路22aは、内部ケース15と、流量調整機構17の支持ケース42とによって形成され、第2接続部材19から水が流入する。
【0036】
第2流路22bは、第1流路22a、および第3流路22cに連通する。第2流路22bは、内部ケース15の前方の中央付近に形成された凹部15cと、凹部15cを覆う蓋部15dとによって形成される。蓋部15dと凹部15cとの間には、シール部材60が設けられる。
【0037】
蓋部15dは、内部流路ユニット5が水栓本体2に挿入された状態では、水栓本体2の内周壁2aによって押さえられている。そのため、第2流路22bに水が流入し、第2流路22b内の水圧が大きくなった場合であっても、蓋部15dは、内周壁2aによって前方への移動が規制される。従って、第2流路22bからの漏水の発生を防止することができる。
【0038】
第2流路22bは、右方に形成された第1流通孔15eを介して第1流路22aに連通し、第1流路22aから水が流入する。また、第2流路22bは、左方に形成された第2流通孔15fを介して第3流路22cに連通し、第3流路22cに水を流入させる。
【0039】
第3流路22cは、内部ケース15と、温度調整機構16の第1支持ケース35と、温度調整機構16の弁体30と、隔離壁37とによって形成される。第3流路22cは、左右方向において隔離壁37を挟んで湯流通流路21と隣り合うように形成される。
【0040】
吐水流路23は、湯流通流路21や、水流通流路22よりも内部ケース15の径方向内側に、温度調整機構16の第1支持ケース35、第2支持ケース36などによって形成される。吐水流路23は、水流通流路22の第3流路22cに連通し、第3流路22cから水が流入する。
【0041】
また、吐水流路23は、温度調整ハンドル3の回動に応じた温度調整機構16の弁体30の移動によって湯流通流路21に連通可能である。吐水流路23は、湯流通流路21に連通し、湯流通流路21から湯が流入した場合には、水と湯とを混合し、混合水を生成する。
【0042】
吐水流路23は、左右方向の中央付近で内部ケース15に形成された第1吐水口(不図示)を介して吐水管6に連通可能である。また、吐水流路23は、左右方向の中央付近で内部ケース15に形成された第2吐水口15gを介してシャワーホース7に連通可能である。吐水流路23には、第1吐水口や、第2吐水口15gを開閉する流量調整機構17の切替弁41が設けられる。
【0043】
なお、湯流通流路21、水流通流路22、および吐水流路23を構成する部材には、各流路21~23から水などが漏れないようにシール部材が設けられている。
【0044】
このように、内部流路ユニット5は、水流通流路22を有しており、給水管9から供給される水を内部流路ユニット5の外部、具体的には、内部流路ユニット5と水栓本体2との間を流すことなく、吐水流路23に流すことができる。
【0045】
温度調整機構16は、弁体30と、感温ばね31と、バイアスばね32と、ライナ33と、スピンドル34とを備える。
【0046】
感温ばね31は、左右方向の中央側に設けられた第1支持ケース35に収容される。感温ばね31は、吐水流路23に設けられる。感温ばね31は、温度に応じてばね定数が変化するばねであり、例えば、形状記憶合金によって構成される。感温ばね31は、弁体30を左方に向けて付勢する。
【0047】
バイアスばね32は、第1支持ケース35よりも左方に設けられた第2支持ケース36に収容される。バイアスばね32は、吐水流路23に設けられる。バイアスばね32は、温度に対してばね定数がほぼ一定のばねである。バイアスばね32は、弁体30を右方に向けて付勢する。
【0048】
弁体30は、第1支持ケース35と、第2支持ケース36との間に設けられる。弁体30は、左右方向に移動可能となるように隔離壁37を介して内部ケース15に支持される。隔離壁37は、左右方向において湯流通流路21と、水流通流路22の第3流路22cとを隔離する。弁体30には、左右方向に貫通する貫通孔(不図示)が形成され、水や、混合水を左右方向に流通させることができる。
【0049】
弁体30は、バイアスばね32の付勢力と、感温ばね31の付勢力と応じて左右方向に移動し、湯流通流路21と吐水流路23との連通状態を調整する。
【0050】
具体的には、弁体30は、感温ばね31の付勢力がバイアスばね32の付勢力よりも大きい場合には、左方に移動する。弁体30が左方に移動し、第2支持ケース36に当接すると、湯流通流路21と吐水流路23との連通が遮断される。この場合、湯は吐水流路23に流入しない。
【0051】
また、弁体30は、バイアスばね32の付勢力が感温ばね31の付勢力よりも大きい場合には、右方に移動する。例えば、弁体30が第2支持ケース36に当接した状態から、バイアスばね32の付勢力が大きくなり、第2支持ケース36から離間すると、湯流通流路21と吐水流路23とが連通する。これにより、湯が吐水流路23に流入する。
【0052】
弁体30は、第2支持ケース36から離間した状態では、バイアスばね32の付勢力と、感温ばね31の付勢力とが釣り合う位置に保持される。弁体30と第2支持ケース36との距離が長くなるほど、吐水流路23に流入する湯量が多くなる。また、弁体30と第2支持ケース36との距離が長くなるほど、弁体30と第1支持ケース35との距離が短くなり、吐水流路23に流入する水量が少なくなる。
【0053】
ライナ33は、弁体30とは反対側のバイアスばね32の端に当接し、スピンドル34を介して温度調整ハンドル3に接続される。スピンドル34は、第2支持ケース36に回動可能に支持され、温度調整ハンドル3の回動運動をライナ33の左右方向における直進運動に変換する。そのため、ライナ33は、温度調整ハンドル3の回動に応じて、左右方向に移動する。
【0054】
温度調整機構16では、温度調整ハンドル3の回動位置に合わせて、ライナ33が左右方向に移動し、バイアスばね32の左方端の位置が変更される。そのため、温度調整機構16は、温度調整ハンドル3の回動位置に合わせて、バイアスばね32の付勢力と、感温ばね31の付勢力とが釣り合う弁体30の位置を変更することができる。従って、温度調整機構16は、混合水を吐水する場合に、混合水の温度を、温度調整ハンドル3の回動位置に応じた設定温度とすることができる。
【0055】
また、混合水を吐水する場合に、例えば、湯の温度が変わり混合水の温度が変化すると、混合水の温度に応じて感温ばね31が伸縮し、弁体30が左右方向に移動し、弁体30の釣り合い位置が自動的に変更される。これにより、吐水流路23に流入する湯量、および水量が調整され、混合水の温度が自動的に調整される。
【0056】
流量調整機構17は、回動軸40と、切替弁41とを備える。回動軸40は、支持ケース42に回動可能に支持される。回動軸40の一方の端は、流量調整ハンドル4に接続され、もう一方の端は、切替弁41に接続される。
【0057】
切替弁41は、吐水流路23に設けられる。切替弁41は、有底の円筒状であり、流量調整ハンドル4の回動に合わせて回動軸40とともに回動する。切替弁41には、連通口41aが形成される。切替弁41は、内部ケース15に形成された第1吐水口、および第2吐水口15gと向かい合うように設けられる。切替弁41は、流量調整ハンドル4の回動に合わせて回動することで、連通口41aと、第1吐水口、および第2吐水口15gとの連通状態を切り替える。
【0058】
具体的には、流量調整ハンドル4が所定の止水位置にある場合には、連通口41aは、第1吐水口、および第2吐水口15gとは連通しない。そのため、流量調整ハンドル4が所定の止水位置にある場合には、水、または混合水は、吐水管6、およびハンドシャワーから吐水されない。
【0059】
流量調整ハンドル4が、止水位置から後方に向けて回動した場合には、例えば、連通口41aが第2吐水口15gと連通する。これにより、水、または混合水は、第2吐水口15gからシャワーホース7に流入し、ハンドシャワーから吐水される。
【0060】
また、流量調整ハンドル4が、止水位置から前方に向けて回動した場合には、例えば、連通口41aが第1吐水口と連通する。これにより、水、または混合水は、第1吐水口から吐水管6に流入し、吐水管6から吐水される。
【0061】
切替弁41は、流量調整ハンドル4の回動位置に応じて連通口41aと、第1吐水口、または第2吐水口15gとが連通する面積を変更することができる。すなわち、流量調整機構17は、流量調整ハンドル4の回動位置に合わせて吐水管6、またはハンドシャワーから吐水される水、または混合水の流量を調整することができる。
【0062】
次に、継ぎ手10、および第1接続部材18について図5を参照し説明する。図5は、図3における第1接続部材18付近の拡大図である。
【0063】
継ぎ手10は、円筒状に形成され、金属部材によって構成される。継ぎ手10は、給湯管8を水栓本体2に取り付ける。すなわち、継ぎ手10は、給湯管8と水栓本体2とを接続する。継ぎ手10には、第1接続部材18が挿入される。
【0064】
継ぎ手10は、筒部10aと、ナット10bとを備える。筒部10aは、水栓本体2の第3挿入孔2cを囲むように設けられ、水栓本体2に溶接され、水栓本体2に取り付けられる。筒部10aは、水栓本体2から後方に向けて突出する。
【0065】
ナット10bは、筒部10aの外周に設けられ、筒部10aと給湯管8とを締結する。継ぎ手10では、径方向、すなわち前後方向に直交する面方向へのナット10bの移動が許容される。これにより、給湯管8と筒部10aとの位置が前後方向に直交する面方向にずれた場合でも、ナット10bによって筒部10aと給湯管8とを締結することができる。
【0066】
なお、継ぎ手10の形状は、円筒状に限定されるものではない。例えば、継ぎ手10は、筒部10aの一部を矩形筒状としてもよい。
【0067】
第1接続部材18は、水栓本体2や、継ぎ手10などの金属部材よりも熱伝導率が小さい断熱部材である。第1接続部材18は、例えば、樹脂によって構成される。第1接続部材18は、給湯管8と内部流路ユニット5とを接続し、後方から前方に向けて湯を流し、給湯管8から湯流通流路21に湯を流入させる。第1接続部材18を断熱部材によって構成することで、継ぎ手10の温度上昇を抑制することができ、水栓本体2への伝熱を抑制することができる。従って、使用者が触れる可能性が高い水栓本体2の温度上昇を抑制することができる。
【0068】
第1接続部材18は、左右方向に対して交差する方向から内部流路ユニット5に挿入される。具体的には、第1接続部材18は、後方から内部流路ユニット5に挿入される。第1接続部材18は、挿入部材を構成する。第1接続部材18を左右方向に対して交差する方向から内部流路ユニット5に挿入することで、吐水装置1を組み立てる場合に、水栓本体2に対する内部流路ユニット5の位置を固定することができ、吐水装置1の組み立て性を向上させることができる。また、吐水装置1の一部を用いて水栓本体2に対する内部流路ユニット5の位置を固定することができる。
【0069】
第1接続部材18は、本体部50と、挿入部51と、縮径部52と、ストッパー53と、フランジ54とを備える。
【0070】
本体部50は、円筒状に形成され、内部に逆止弁55が設けられる。逆止弁55は、給湯管8から湯流通流路21への湯の流れを許容し、第1流路22aから給湯管8への湯の流れを禁止する。
【0071】
挿入部51は、円筒状に形成され、本体部50よりも径が小さい。挿入部51は、内部流路ユニット5の内部ケース15に形成された第1挿入孔15aに挿入される。挿入部51の外周には、シール部材61が設けられる。本体部50と挿入部51との間には、挿入部51側となるにつれて径が小さくなる縮径部52が形成される。
【0072】
ストッパー53は、縮径部52の前端から左方に向けて突出する。ストッパー53は、左方から水栓本体2に挿入される挟持部材62と内部ケース15とによって挟持され、第1接続部材18の後方への抜けを防止する。
【0073】
フランジ54は、本体部50の後端から本体部50の径方向外側、すなわち継ぎ手10に向けて突出する。フランジ54は、本体部50の全周に形成される。フランジ54と給湯管8との間には、シール部材63が設けられる。フランジ54は、給湯管8側の面、すなわち後方の面がシール部材63に当接し、水栓本体2側の面、すなわち前方の面が継ぎ手10の筒部10aに当接する。
【0074】
フランジ54は、継ぎ手10によって給湯管8と水栓本体2とが接続された場合に、給湯管8と継ぎ手10の筒部10aとによってシール部材63を介して挟持される。これにより、第1接続部材18は、継ぎ手10の筒部10aによって前方への移動が規制される。そのため、第1接続部材18の本体部50や、挿入部51に対して前方へ押す力が発生することを抑制し、本体部50や、内部流路ユニット5が変形することを抑制することができる。
【0075】
また、フランジ54によってシール部材63のつぶし代を確保することができ、湯の漏れを防止することができる。
【0076】
上記したように、継ぎ手10は、筒部10aと給湯管8との位置が前後方向に直交する面方向へずれた場合であっても、筒部10aと給湯管8とを締結するように構成されている。そのため、フランジ54と給湯管8との位置が前後方向に直交する面方向にずれる場合がある。このような場合であっても、シール部材63がフランジ54と給湯管8とによって前後方向で挟持されることで、湯の漏れを防止することができる。
【0077】
すなわち、シール部材63は、前後方向に直交するフランジ54の面と、給湯管8の前端の面との間に設けられ、湯の流れ方向である前後方向に直交する面方向へのずれを許容する面シールである。
【0078】
継ぎ手10、および第1接続部材18では、第1接続部材18の本体部50と継ぎ手10の筒部10aとの間に、第1接続部材18における湯の流れ方向に対して直交する面方向、すなわち本体部50の径方向(継ぎ手10の径方向)において第1所定隙間が形成される。また、第1接続部材18のフランジ54と継ぎ手10のナット10bとの間には本体部50の径方向において第1所定隙間よりも大きい第2所定隙間が形成される。第1所定隙間、および第2所定隙間は、第1接続部材18や、継ぎ手10の寸法公差や、継ぎ手10の筒部10aを水栓本体2に溶接する際に生じた取り付け誤差よりも大きい。
【0079】
これにより、第1接続部材18や、継ぎ手10の寸法公差や、継ぎ手10の筒部10aを水栓本体2に溶接する際に生じた取り付け誤差が生じた場合でも、継ぎ手10に第1接続部材18を挿入し、第1接続部材18を内部流路ユニット5に取り付けることができる。
【0080】
なお、取り付け誤差などが生じた場合でも、シール部材63によって湯の漏れを防止することができる。
【0081】
また、第1所定隙間、および第2所定隙間を設けることで、水栓本体2への伝熱を抑制することができ、水栓本体2の温度上昇を抑制することができる。
【0082】
第2接続部材19は、第1接続部材18と同様の構成であり、詳しい説明は省略する。なお、第2接続部材19は、ストッパー53が右方に向けて突出する。第2接続部材19を第1接続部材18と同様の構成とすることで、同じ部材を第1接続部材18、および第2接続部材19として用いることができる。なお、第2接続部材19は、断熱部材ではなく、例えば、金属部材によって構成されてもよい。
【0083】
上記実施形態の内部流路ユニット5を有さない比較例に係る吐水装置では、例えば、水栓本体と流路ユニットとの間に水が流れる流路が形成される。そして、比較例に係る吐水装置では、水栓本体と流路ユニットとの間を流れた水を流路ユニットに流入させる。
【0084】
しかし、比較例に係る吐水装置は、吐水される水などに、水栓本体などから鉛が溶出するおそれがある。
【0085】
また、比較例に係る吐水装置は、水栓本体と流路ユニットとの間に形成される流路から水が漏れないように水栓本体と流路ユニットとの間にシール部材が設けられる。比較例に係る吐水装置は、水栓本体に対する流路ユニットの挿入性を向上させるために、例えば、シール部材を圧縮して冷凍した状態でシール部材と流路ユニットとを水栓本体に挿入している。
【0086】
しかし、比較例に係る吐水装置は、シール部材を圧縮して冷凍する装置などが必要となり、コストが高くなる。
【0087】
これに対し、実施形態に係る吐水装置1は、内部流路ユニット5を用いることで、鉛の溶出を抑制することができる。また、実施形態に係る吐水装置1は、水栓本体2に内部流路ユニット5を容易に挿入することができ、コストを抑制することができる。
【0088】
また、実施形態に係る吐水装置1は、水栓本体2と給湯管8とを接続する継ぎ手10に挿入され、給湯管8から湯流通流路21に湯を流入させる断熱部材である第1接続部材18を備える。これにより、吐水装置1は、継ぎ手10の温度上昇を抑制することができる。そのため、吐水装置1は、水栓本体2への伝熱を抑制し、使用者が触れる可能性が高い水栓本体2の温度上昇を抑制することができる。
【0089】
また、実施形態に係る吐水装置1は、継ぎ手10と第1接続部材18との間に、継ぎ手10の径方向において第1所定隙間を形成する。これにより、吐水装置1は、水栓本体2への伝熱を抑制し、水栓本体2の温度上昇を抑制することができる。
【0090】
また、実施形態に係る吐水装置1は、例えば、第1接続部材18のフランジ54の給湯管8側の面をシール部材63に当接させ、水栓本体2側の面を継ぎ手10の筒部10aに当接させる。これにより、吐水装置1は、第1接続部材18の前方への移動を規制し、第1接続部材18の本体部50や、内部流路ユニット5が変形することを抑制することができる。また、吐水装置1は、フランジ54によってシール部材63のつぶし代を確保することができ、湯の漏れを防止することができる。
【0091】
また、実施形態に係る吐水装置1は、前後方向に直交する面方向へのずれを許容するシール部材63を備える。これにより、吐水装置1は、例えば、フランジ54と給湯管8との位置が前後方向に直交する面方向にずれた場合であっても、湯の漏れを防止することができる。
【0092】
変形例に係る吐水装置1は、例えば、第1接続部材18と内部流路ユニット5との間に前後方向に直交する面方向へのずれを許容するシール部材を設けてもよい。この場合、例えば、変形例に係る吐水装置1は、本体部50と挿入部51との間に段部を設け、段部と内部流路ユニット5との間にシール部材を設ける。これにより、変形例に係る吐水装置1は、第1接続部材18と給湯管8との接続位置が前後方向に直交する面方向にずれた場合であっても、湯の漏れを防止することができる。
【0093】
このように、吐水装置1は、例えば、第1接続部材18と給湯管8との間、第1接続部材18と内部流路ユニット5との間の少なくとも一方に、前後方向に直交する面方向へのずれを許容するシール部材を設ける。これにより、吐水装置1は、第1接続部材18と給湯管8との接続位置が前後方向に直交する面方向にずれた場合であっても、湯の漏れを防止することができる。
【0094】
また、変形例に係る吐水装置1は、内部流路ユニット5に挿入される部材として、給水管9の接続部材を用いてもよい。これによっても、変形例に係る吐水装置1は、吐水装置1を組み立てる場合に、水栓本体2に対する内部流路ユニット5の位置を固定することができる。
【0095】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 吐水装置
2 水栓本体(外郭部材)
2a 内周壁
5 内部流路ユニット
10 継ぎ手
11 継ぎ手
18 第1接続部材(断熱部材)
19 第2接続部材
20 内部流路
21 湯流通流路
22 水流通流路
23 吐水流路
54 フランジ
63 シール部材
図1
図2
図3
図4
図5