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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】計器装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20221206BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B60R16/02 645Z
B60R16/02 640K
B60K35/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018156489
(22)【出願日】2018-08-23
(65)【公開番号】P2020029203
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂口 茂
(72)【発明者】
【氏名】宮部 博之
(72)【発明者】
【氏名】米田 皓大
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/099006(WO,A1)
【文献】特開2013-151288(JP,A)
【文献】特開2014-054911(JP,A)
【文献】特開2004-130912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される計器装置であって、
車両情報を表示する計器と、
前記表示を制御する制御部と、
少なくとも前記制御部へ給電を行う給電状態と、前記給電を停止する停電状態とを有する給電部と、
起動要求信号に基づいて前記給電部を前記給電状態としながら車両情報に関する通信を行う起動状態と、休止状態とを切替可能な送受信部と、
を備え、
前記送受信部は、
少なくとも前記車両に備わるパワートレインの情報に関する通信を行う第一の送受信部と、
前記車両に備わるパワートレイン以外の情報に関する通信を行う第二の送受信部と、
を有し、
所定状況下では、前記制御部が前記給電部の給電状態を維持する
計器装置。
【請求項2】
前記所定状況は、前記起動要求信号が入力されていない状況である
請求項1に記載の計器装置。
【請求項3】
さらに前記所定状況は、前記制御部が終了シークエンスを行う状況である
請求項2に記載の計器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、計器装置としては例えば特許文献1に示すようなものがあった。すなわち、計器装置(1)に備わる制御部(100)がCAN(Controller Area Network)トランシーバICを介して計器装置(1)の外部のECU(Electronic Control Unit)と通信を行う計器装置(1)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-024444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CAN通信の仕様上、通信を行う場合には制御部または送受信部が起動している必要ある。しかし、起動状態を長く維持していると消費電力が増大してしまう。
そこで本発明の目的とするところは、上述課題に着目し、消費電力を低減した計器装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る計器装置は、
車両に搭載される計器装置であって、
車両情報を表示する計器と、
前記表示を制御する制御部と、
少なくとも前記制御部へ給電を行う給電状態と、前記給電を停止する停電状態とを有する給電部と、
起動要求信号に基づいて前記給電部を前記給電状態としながら車両情報に関する通信を行う起動状態と、休止状態とを切替可能な送受信部と、
を備え、
前記送受信部は、
少なくとも前記車両に備わるパワートレインの情報に関する通信を行う第一の送受信部と、
前記車両に備わるパワートレイン以外の情報に関する通信を行う第二の送受信部と、
を有し、
所定状況下では前記制御部が前記給電部の給電状態を維持する
計器装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば消費電力を低減した計器装置を提供することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】車両1に計器装置10が組み付けられている様子を示す図。
図2】車両1に搭載される電子機器の電気的接続関係を示す回路図。
図3】計器装置10の挙動を表すフローチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の計器装置を車両1に搭載された実施形態及び変形例として例にあげ、添付図面を用いて次の順序で説明する。
[第一実施形態]
<1-1.構成の説明>
<1-2.給電状態に関わる挙動の説明>
<1-3.変形例>
【0009】
[効果例]
[第一実施形態]
<1-1.構成の説明>
【0010】
図1に示すように、計器装置10は車両1のインパネ2内部に組み付けられている。計器18は2つのアナログメータ(例えば回動する指針と目盛りによるもの)と1つの画像を表示できる表示器(例えばTFT液晶モジュールによるもの)で構成されており、車両1に関する各種情報(車両情報)を乗員(利用者)に報知する複合計器装置として構成されている。
【0011】
図2に示すように、計器装置10はバッテリ20及び外部機器30と電気的に接続した状態で組み付けられている。バッテリ20は、電源ポート10bを介して計器装置10と接続されており、本開示では12[V]の車載電源として機能する。また外部機器30は、具体的には車両1に搭載されるセンサー機器や通信機器などの計器装置10外部の機器であり、車速、エンジン回転数、位置情報といった車両情報を計器装置10へ送信している。外部機器30はCAN(Controller Area Network)と、通信ポート10cを介して接続されている。
【0012】
計器装置10は、制御部12、給電部14、第一の送受信部16、第二の送受信部17、計器18を備える。図示しないが、制御部12、給電部14、第一の送受信部16、第二の送受信部17は筐体に保持されたプリント基板上に、後述の接続関係で電気的に接続されている。
【0013】
制御部12はプログラムや入力されたデータ、演算経過、演算結果等を保持する記憶部、記憶部に保持された情報に基づいて所定の演算処理を行う演算部、また他機器と接続するための接続用インターフェース等を設けたマイクロコンピュータで構成し得る。
Vcc端子では給電部14のSW端子と接続されており、ここから5[V]電力の供給を受ける。電力が供給されている状態(起動状態)では、入力された車両情報に基づいて、車両情報を計器18に表示するべく所定の動作で演算処理を行う。
X1/X2端子では、後述の送受信部(第一の送受信部16及び第二の送受信部17)のXD端子(XD1及びXD2)と接続されており、制御部12と送受信部16,17の間のデータの授受を行っている。送受信部はCAN通信を行って外部機器30から取得した車両情報を制御部12へ出力することができ、制御部12はこれを受信できる。また一方、制御部12が外部機器30へデータ送信を行う際には先ず送受信機へデータを送信できる。従ってこれは受信用/送信用の複数の配線で構成することが望ましい。
Hold端子では制御部12が起動状態の場合に給電部14のEN端子へ維持要求信号を出力することができる。これにより、制御部12が起動状態にある場合には制御部12自身が給電部14の給電状態を維持することができる。
OUT端子では計器18と接続されており、車両情報を計器18に表示するための電気信号がこの端子から出力できる。
【0014】
給電部14にはDC/DCコンバータを適用でき、本実施形態ではVin端子でバッテリ20と接続されている。給電部14はバッテリ20から送電される12[V]から、制御部12の駆動電圧である5[V]に降圧する。
EN端子は給電要求信号を受信する入力端子であって、制御部12のHold端子及び送受信部のINH端子(INH1及びINH2)に接続されている。この端子に給電要求信号が入力されている場合は給電状態となり、されていないの場合は停電状態となる。
本開示での信号とは、ある閾値電圧に対し高電位または低電位であることで電子機器の動作を決定する電気信号であり、高電位側が入力されることだけを指したものではない。
SW端子は制御部12に接続されている。給電部14が給電状態にある場合は降圧後の電圧である5[V]がこの端子から出力され、停電状態にある場合は0[V]となる。
【0015】
送受信部である第一の送受信部16及び第二の送受信部17は、CANトランシーバICが適用できる。本開示では例えば第一の送受信部16ではエンジン回転数や車速といったパワートレインに関するCAN通信の送受信を行っている。また第二の送受信部17では車両装備の不良情報などのメータで警告として表示される様な情報に関するCAN通信の送受信を行っている。これら送受信部16,17は、CAN端子(CAN1及びCAN2)を介してCANに接続されており、CANに接続されている他の電子機器、例えば上述の外部機器30があり、それらとCAN通信を行っている。
またこれら送受信部16,17は、CANからCAN WAKE-UP REQUEST信号(起動要求信号)が入力されている場合は起動状態となるが、入力されていない場合は休止状態となる。起動状態であるときは、INH端子から給電要求信号を出力することで給電部14を給電状態とすることができる。
本開示の起動要求信号は閾値電圧より高い状態が維持されている状態が起動要求信号が入力されている状態、低い状態が維持されている状態が起動要求信号が入力されていない状態であるとする。しかし、これは本発明を限定するものではなく、適宜立ち上がりや立ち下がりを用いるなどしてもよい。また、本開示では起動要求信号とはすなわち稼働状態を継続するために出力することを意味している。これに対して起動と休止をそれぞれ信号により要求する構成であっても、本開示とは本質的には何ら差異の無いものである。
本開示の送受信部16,17はCANトランシーバとして例示しているが、LIN(Local Interconnect Network)のような他の車載ネットワークトランシーバであってもよい。XD端子(XD1及びXD2)は上述のように制御部12と電気的に接続されたデータ通信線である。
<1-2.給電状態に関わる挙動の説明>
【0016】
給電部14の給電状態及び停電状態に関わる、計器装置10の挙動を、図3のフローチャートを用いて説明する。
S1:起動要求
【0017】
ステップS1では、送受信部16,17が外部機器30からCANを介してCAN1とCAN2のうち少なくとも片方にCAN WAKE-UP REQUEST信号(起動要求信号)が入力されているかを判別する。
S2:給電要求
【0018】
ステップS1で、送受信部16,17が起動要求信号を入力されている場合には、このステップS2に移行する。ステップS2では、先ず起動要求信号を受信した送受信部16,17が起動状態となり、INH端子から第一の給電要求信号を出力する。
S21:第一の給電状態
【0019】
ステップS21では、ステップS2で出力された給電要求信号が給電部14のEN端子に入力され、給電部14は給電状態となる。もしくはもともと給電状態であった場合は給電状態を維持することになる。給電状態ではSW端子から変圧後の電圧(本実施形態では5[V])が出力されることとなる。
S22:給電維持要求
【0020】
ステップ22ではステップ21で給電部14が給電状態となったことにより、制御部12に電力が供給される。制御部12は電力を供給されると起動する。制御部12は起動されたと同時に、Hold端子から第二の給電要求信号(維持要求信号)が出力され始める。
これにより、後に詳述する給電状態の維持を行うことができる。
S3:第一の給電要求停止
【0021】
ステップS1で起動要求信号が入力されていなかった場合にはこのステップS3に移行する。ステップS3では送受信部16,17は休止状態になり、INH端子から第一の給電要求信号の出力を停止する。もしくはもともと停止していた場合は停止を維持することになる。CAN端子が起動要求信号を入力されていない情報は、XD端子からX端子を介して制御部12へも送信される。
S4:維持信号判別
【0022】
ステップS4では制御部がHold端子から維持要求信号を出力しているか判別する。これは制御部12が起動しているかを判別することと同義でもある。
S41:制御部終了
【0023】
ステップS4で起動要求信号が入力されていない状況で維持要求信号が出力されていることを制御部12が判別した場合は、制御部12は終了(シャットダウン)シークエンスに移行する。シャットダウンと言っても、本フローチャートを実行できない終了状態に陥るのではなく、計器18への表示制御フローを停止したり、XD端子でのCAN通信フローを停止したりする、いわばスリープ状態に移行することを意味する。
外部機器30からの起動要求信号が無い状態では制御部12の機能を制限することで、消費電力の低減を達することができる。
S42:維持要求信号停止
【0024】
制御部12が終了シークエンスを完了し、シャットダウンできる状態になった後にHold端子からの給電要求信号を停止する。
換言すると、このステップは外部機器30からの起動要求信号が無くなった上で制御部12が起動している状態では、終了シークエンスが完了するまで給電部14の給電状態を維持することを意味する。
このフローが無い場合、制御部12が起動している時に外部機器30からの起動要求信号が無くなった場合に給電部14の給電状態を維持できない可能性がある。これによって制御部12が起動しているにもかかわらず電力が供給されなくなり、正しい終了シークエンスを踏まずに停止してしまう可能性があった。
しかし本開示のフローに依れば、外部機器30からの起動要求信号が無くなった場合でも、制御部12が自己の終了シークエンス完了までHold端子から維持要求信号を出力することで正しい終了シークエンスを行った後にシャットダウンできる。
また、不具合や誤った起動要求信号の出力に因って送受信部16,17が給電要求信号を出力できない場合に、意図せず制御部12が休止してしまう可能性を低減している。
S43:給電停止
【0025】
ステップS43で維持要求信号が停止したので、このステップでは給電部14が給電を停止し、停電状態に移行する。これは制御部12が正しく終了シークエンスを踏んだ後に制御部12への給電を停止することを意味する。終了シークエンスとしては、計器装置10に備わる電子部品(例えば計器18が有するアナログメータの回動動力及び表示器、並びに図示しないブザーやスピーカー、インジケータ用LED駆動ドライバ)の初期化や、制御部12の起動状態に影響を与えない電力供給の停止などを行うことを指す。
この終了シークエンスを経ずに給電の停止に因って制御部12が停止してしまうと、次回起動時の計器装置10に備わる電子部品の初期状態が不定となってしまい、動作が不安定なものになってしまう。
S5:給電停止維持
【0026】
ステップS4で起動要求信号が入力されていない状況で維持要求信号も出力されていないことを制御部12が判別した場合は、給電部14が停電状態を維持することとなる。
【0027】
本開示では送受信部として第一の送受信部16、第二の送受信部17として2つの送受信部を並列に設けているのは、エラーに対する冗長性を担保するためでもある。すなわち、冗長性の高いライン型ネットワーク(ネットワークプロトコル)(例えばCAN)では、ライン上にある各ノードのデータが一致しないと通信不成立とするものがある。CANもそのネットワークの一種であるが、送受信部が2つある構成では、もし片一方が何らかの不具合で正しく受信できなかった場合に、もう一度通信を試行する挙動を示すため、より確実に通信を行うことに寄与している。
<1-3.変形例>
【0028】
本開示の計器装置を上述した実施形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに表示の変更が可能なことは勿論である。
例えば、給電部14のSW端子から電力の供給を受ける部材は制御部12であって、この電位を駆動電圧としてそれぞれのVcc端子に印加する構成を例示した。しかし本発明は他の被給電部材へ電力を供給する給電部であっても効果を達することができる。例えば、計器18やヘッドアップディスプレイに付随する表示装置の駆動ドライバや、外光照度センサなど計器装置に付随し、外部機器30からの起動要求信号を入力されているときに起動していればよい部材がそれにあたる。
【0029】
また、上述の通りCAN以外の車載ネットワークであっても同様の効果を達する事ができる。すなわち、起動要求信号に基づき、給電部の給電状態/停電状態を切り替え、加えて制御手段から維持要求信号を送信できる構成であればよい。
[効果例]
【0030】
本開示の計器装置は、第一に、車両1に搭載される計器装置10であって、
車両情報を表示する計器18と、
表示を制御する制御部12と、
少なくとも制御部12へ給電を行う給電状態と、給電を停止する停電状態とを有する給電部14と、
計器装置10の外部の電子機器である外部機器30が出力する起動要求信号に基づき給電部14を給電状態としながら車両情報に関する通信を行う起動状態と、休止状態とを切替可能な送受信部16,17と、
を備え、
所定状況下では、制御部12が給電部14の給電状態を維持する
計器装置10である。
この構成に依れば、上述のように、消費電力を低減した計器装置10を提供することを達する。
【0031】
第二に所定状況は、起動要求信号が入力されていない状況である
計器装置である。
この構成に依れば、上述のように、意図せず制御部12が休止状態となる可能性を低減した計器装置10を提供することを達する。
【0032】
第三に所定状況は、制御部が終了シークエンスを行う状況である
計器装置である。
この構成に依れば、上述のように、より安定な動作の計器装置10を提供することを達する。
【符号の説明】
【0033】
1 車両
10 計器装置
10b 電源ポート
10c 通信ポート
12 制御部
14 給電部
16 第一の送受信部
17 第二の送受信部
18 計器
20 バッテリ
30 外部機器
図1
図2
図3