(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】熱伝導性複合材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20221206BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20221206BHJP
C08K 3/28 20060101ALI20221206BHJP
C08K 9/02 20060101ALI20221206BHJP
C01B 21/064 20060101ALI20221206BHJP
C01B 21/072 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/38
C08K3/28
C08K9/02
C01B21/064 J
C01B21/072 R
(21)【出願番号】P 2018176559
(22)【出願日】2018-09-20
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慈
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋充
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 亮
(72)【発明者】
【氏名】出口 昌孝
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-123265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性フィラーをマトリックス中に分散させてなる熱伝導性複合材料であって、
前記熱伝導性フィラーとして、窒化ホウ素微粒子と、窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子とが前記複合材料に含有されており、
前記窒化ホウ素微粒子(BN微粒子)の含有量と、前記窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子(BN/AlN複合微粒子)の含有量との比率([BN微粒子]:[BN/AlN複合微粒子])が、体積比で、30:70~95:5であり、
前記窒化ホウ素微粒子の少なくとも一部が、窒化ホウ素微粒子が部分的に劈開した部分劈開窒化ホウ素微粒子であり、
前記部分劈開窒化ホウ素微粒子の劈開空隙中に前記マトリックスが充填されて膨潤した膨潤窒化ホウ素微粒子が前記複合材料に含有されて
おり、
前記マトリックスが、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及び絶縁性のオイルからなる群から選択される少なくとも一種である、
ことを特徴とする熱伝導性複合材料。
【請求項2】
前記複合材料の断面基準で、前記膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積が、前記複合材料の断面面積に対して1~50%であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性複合材料。
【請求項3】
前記窒化ホウ素微粒子と、前記窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子との合計含有量が、前記複合材料の全量に対して10~90体積%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱伝導性複合材料。
【請求項4】
前記窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子(BN/AlN複合微粒子)における、前記窒化アルミニウム(AlN)の含有量に対する前記窒化ホウ素(BN)の含有量の比率([BN]/[AlN])が、体積比で、5/95~70/30であることを特徴とする請求項1~
3のうちのいずれか一項に記載の熱伝導性複合材料。
【請求項5】
窒化ホウ素粒子を含有する流体を高圧でノズルから噴射させて湿式衝突粉砕することにより、窒化ホウ素微粒子が部分的に劈開した部分劈開窒化ホウ素微粒子を含む窒化ホウ素微粒子を得る工程と、
前記部分劈開窒化ホウ素微粒子を含む窒化ホウ素微粒子と窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子と熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及び絶縁性のオイルからなる群から選択される少なくとも一種のマトリックスとを、前記窒化ホウ素微粒子(BN微粒子)の含有量と前記窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子(BN/AlN複合微粒子)の含有量との比率([BN微粒子]:[BN/AlN複合微粒子])が体積比で30:70~95:5となるように混合して、前記窒化ホウ素微粒子と、
前記窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子とを熱伝導性フィラーとして
前記マトリックス中に分散させて、前記部分劈開窒化ホウ素微粒子の劈開空隙中に前記マトリックスが充填されて膨潤した膨潤窒化ホウ素微粒子とすることにより、請求項1~
4のうちのいずれか一項に記載の熱伝導性複合材料を得る工程と、
を含むことを特徴とする熱伝導性複合材料の製造方法。
【請求項6】
前記高圧が30~250MPaの圧力であり、前記流体を前記ノズルから噴射させる際の流速が200~800m/sであることを特徴とする請求項
5に記載の熱伝導性複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性複合材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ホウ素は熱伝導性の高い高絶縁性の材料として知られており、窒化ホウ素粒子を熱伝導性フィラーとしてマトリックス中に分散させた様々な熱伝導性複合材料が開発されている。例えば、特開2010-260225号公報(特許文献1)では、平均粒子径が相違する2種類の窒化ホウ素粉末を熱伝導性フィラーとして含有するシリコーン積層体を積層方向から切断してなる熱伝導性成形体が開示されている。
【0003】
また、国際公開2008/042446号公報(特許文献2)では、少なくとも2種類の異なるタイプの窒化ホウ素粉体材料として、プレートレット窒化ホウ素粉体材料と窒化ホウ素粉体材料の球状凝集体とを含むポリマー組成物が開示されている。
【0004】
さらに、特開2015-6985号公報(特許文献3)では、窒化ホウ素凝集粒子中の一次粒子同士がカードハウス構造を有している窒化ホウ素凝集粒子よりなるフィラーと樹脂とを含む組成物が開示されている。
【0005】
しかしながら、このような従来の熱伝導性複合材料であっても、熱伝導性の向上に限界があり、必ずしも十分な熱伝導性を達成できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-260225号公報
【文献】国際公開2008/042446号公報
【文献】特開2015-6985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、優れた熱伝導性を有する熱伝導性複合材料及びその製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、窒化ホウ素粒子を含有する流体を高圧でノズルから噴射させて湿式衝突粉砕することにより得られる部分劈開窒化ホウ素微粒子を含有する窒化ホウ素微粒子と、窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子とを熱伝導性フィラーとしてマトリックス中に分散させることにより、優れた熱伝導性を有する熱伝導性複合材料が得られるようになることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の熱伝導性複合材料は、熱伝導性フィラーをマトリックス中に分散させてなる熱伝導性複合材料であって、
前記熱伝導性フィラーとして、窒化ホウ素微粒子と、窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子とが前記複合材料に含有されており、
前記窒化ホウ素微粒子(BN微粒子)の含有量と、前記窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子(BN/AlN複合微粒子)の含有量との比率([BN微粒子]:[BN/AlN複合微粒子])が、体積比で、30:70~95:5であり、
前記窒化ホウ素微粒子の少なくとも一部が、窒化ホウ素微粒子が部分的に劈開した部分劈開窒化ホウ素微粒子であり、
前記部分劈開窒化ホウ素微粒子の劈開空隙中に前記マトリックスが充填されて膨潤した膨潤窒化ホウ素微粒子が前記複合材料に含有されており、
前記マトリックスが、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及び絶縁性のオイルからなる群から選択される少なくとも一種である、
ことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の熱伝導性複合材料においては、前記複合材料の断面基準で、前記膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積が、前記複合材料の断面面積に対して1~50%であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の熱伝導性複合材料においては、前記窒化ホウ素微粒子と、前記窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子との合計含有量が、前記複合材料の全量に対して10~90体積%であることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の熱伝導性複合材料においては、前記窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子(BN/AlN複合微粒子)における、前記窒化アルミニウム(AlN)の含有量に対する前記窒化ホウ素(BN)の含有量の比率([BN]/[AlN])が、体積比で、5/95~70/30であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の熱伝導性複合材料の製造方法は、
窒化ホウ素粒子を含有する流体を高圧でノズルから噴射させて湿式衝突粉砕することにより、窒化ホウ素微粒子が部分的に劈開した部分劈開窒化ホウ素微粒子を含む窒化ホウ素微粒子を得る工程と、
前記部分劈開窒化ホウ素微粒子を含む窒化ホウ素微粒子と窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子と熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及び絶縁性のオイルからなる群から選択される少なくとも一種のマトリックスとを、前記窒化ホウ素微粒子(BN微粒子)の含有量と前記窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子(BN/AlN複合微粒子)の含有量との比率([BN微粒子]:[BN/AlN複合微粒子])が体積比で30:70~95:5となるように混合して、前記窒化ホウ素微粒子と、前記窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子とを熱伝導性フィラーとして前記マトリックス中に分散させて、前記部分劈開窒化ホウ素微粒子の劈開空隙中に前記マトリックスが充填されて膨潤した膨潤窒化ホウ素微粒子とすることにより、前記本発明の熱伝導性複合材料を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
【0015】
本発明の熱伝導性複合材料の製造方法においては、前記高圧が30~250MPaの圧力であり、前記流体を前記ノズルから噴射させる際の流速が200~800m/sであることが好ましい。
【0016】
なお、本発明の熱伝導性複合材料によって優れた熱伝導性が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、本発明の熱伝導性複合材料においては、熱伝導性フィラーとして用いられる窒化ホウ素微粒子のうちの少なくとも一部が、部分的に劈開して粒子の内部や端部に劈開面を有する部分劈開窒化ホウ素微粒子となっており、このような部分劈開窒化ホウ素微粒子は熱伝導性フィラーとしてマトリックス中に分散させる際に劈開空隙中にマトリックスが入り込んで膨潤した状態となる。そのため、部分的な劈開が形成されていない窒化ホウ素微粒子と比較して、このように膨潤した窒化ホウ素微粒子は見掛けの平均直径が増大するとともに変形しやすくなり、それによって複合材料中で窒化ホウ素微粒子間の接触が生じやすくなるとともに密着性が向上し、窒化ホウ素微粒子間の接触部位を通じて熱が拡散する熱伝導パスのネットワーク構造が効率良く形成されるとともに微粒子間の界面熱抵抗が大幅に低減するため、得られる複合材料の熱伝導性が向上して優れた熱伝導性が達成されるようになると本発明者らは推察する。また、窒化ホウ素微粒子内部の未劈開部分は、劈開前の窒化ホウ素粒子の高熱伝導性構造を保持しているため、粒子内部の熱の伝達も効率良く行うことができ、高熱伝導性の複合材料とした際に有利である。
【0017】
また、熱伝導性フィラーをマトリックス中に分散せしめた複合材料における熱伝導はフィラー粒子が接触した部位を通じて熱が伝達されるが、窒化アルミニウム微粒子等の高熱伝導性微粒子は、粒子内熱抵抗が小さいという利点があるものの、概して硬い粒子であることから、粒子間接触する際に粒子が変形することなく接触面積が小さい点接触になり、粒子間熱抵抗(界面熱抵抗)が大きくなる。そのため、従来はこのような高熱伝導性微粒子を分散せしめた複合材料としても、高熱伝導性微粒子による熱伝導性の向上効果を十分に引き出すことが困難であった。それに対し、本発明の熱伝導性複合材料においては、窒化アルミニウム微粒子を窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子とし、前記部分劈開窒化ホウ素微粒子と共存させることで、界面熱抵抗が十分に低減され、窒化アルミニウム微粒子の優れた粒子内熱伝導性が効果的に発揮されるようになる。すなわち、窒化ホウ素は高熱伝導材料の中では比較的柔らかい材料であり、粒子間接触する際に変形し、点接触の場合よりも大きな接触面積を確保することが可能となる。本発明の熱伝導性複合材料においては、前述のようにそれ自体は界面熱抵抗が大きい窒化アルミニウム微粒子の表面が窒化ホウ素で被覆されているので、粒子間接触は基本的に界面抵抗が小さい窒化ホウ素同士の接触となる。そのため、本発明の熱伝導性複合材料においては、粒子間における界面抵抗は十分に低減されると共に、高熱伝導性フィラーである窒化アルミニウム微粒子の優れた粒子内熱伝導性が効果的に発揮されるようになると本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、優れた熱伝導性を有する熱伝導性複合材料及びその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例及び比較例で作製した円柱状の複合材料及びそれから切り出した熱伝導率測定用試料を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0021】
先ず、本発明の熱伝導性複合材料について説明する。本発明の熱伝導性複合材料は、熱伝導性フィラーをマトリックス中に分散させてなる熱伝導性複合材料であって、前記熱伝導性フィラーとして、窒化ホウ素微粒子と、窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子とが前記複合材料に含有されており、前記窒化ホウ素微粒子の少なくとも一部が、窒化ホウ素微粒子が部分的に劈開した部分劈開窒化ホウ素微粒子であり、前記部分劈開窒化ホウ素微粒子の劈開空隙中に前記マトリックスが充填されて膨潤した膨潤窒化ホウ素微粒子が前記複合材料に含有されている、ことを特徴とするものである。
【0022】
本発明において一方の熱伝導性フィラーとして用いられる窒化ホウ素微粒子(BN微粒子)は、窒化ホウ素(BN)の微粒子であり、窒化ホウ素には六方晶系の常圧相や立方晶系の高圧相等があるが、劈開のしやすさや熱伝導性の観点から六方晶系の板状窒化ホウ素微粒子であることが好ましい。
【0023】
また、前記窒化ホウ素微粒子の大きさは特に制限されないが、平均粒子径が1~100μmであることが好ましく、2~50μmであることがより好ましく、3~30μmであることが特に好ましい。窒化ホウ素微粒子の平均粒子径が前記下限未満では、得られる複合材料において窒化ホウ素微粒子間の粒界抵抗及び複合材料中の粒界数が増大するため熱伝導性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる複合材料における熱伝導性フィラーの分散均一性及び充填率が低下して熱伝導性が低下する傾向にある。なお、本明細書において、「平均粒子径」は、原料粒子等に関するカタログ値を除き、走査型電子顕微鏡(SEM)観察等により任意に抽出した300個以上の粒子の粒子径の平均値を意味する。また、粒子が球形状(断面が円形状)でない場合は、粒子(断面)の外接円を想定し、その外接円の直径を粒子径とする。
【0024】
本発明においては、前記窒化ホウ素微粒子のうちの少なくとも一部が、窒化ホウ素微粒子が部分的に劈開した部分劈開窒化ホウ素微粒子となっていることが必要である。このような部分劈開窒化ホウ素微粒子は、窒化ホウ素微粒子が部分的に劈開して粒子の内部や端部に劈開面を有するものであり、熱伝導性フィラーとしてマトリックス中に分散させる際に劈開空隙(対向する劈開面の間の空隙)中にマトリックスが入り込んで膨潤した状態(膨潤窒化ホウ素微粒子)となる。
【0025】
なお、このような部分劈開窒化ホウ素微粒子は、得られる複合材料の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真において膨潤窒化ホウ素微粒子として観察され、明度と形状に基づいて、劈開されずに未劈開のまま残っている未劈開窒化ホウ素粒子や、窒化ホウ素粒子が劈開により完全に分割されて得られた内部や端部に劈開面を有していない完全劈開窒化ホウ素微粒子と区別することができる。さらに、FIB-SEM(集束イオンビーム-走査型電子顕微鏡)による三次元分散構造観察によっても区別が可能である。以下、このような未劈開窒化ホウ素粒子と完全劈開窒化ホウ素微粒子とを合わせて「非膨潤窒化ホウ素微粒子」と総称する。
【0026】
本発明の熱伝導性複合材料においては、前記部分劈開窒化ホウ素微粒子の含有率が、前記窒化ホウ素微粒子の全量(前記部分劈開窒化ホウ素微粒子と前記未劈開窒化ホウ素粒子と前記完全劈開窒化ホウ素微粒子との総量)に対して5体積%以上となっていることが好ましい。前記部分劈開窒化ホウ素微粒子の含有率が5体積%未満では、得られる複合材料中で窒化ホウ素微粒子間の接触部位を通じて熱が拡散する熱伝導パスのネットワーク構造が十分に形成されず、得られる複合材料の熱伝導性が十分に向上しない傾向にある。また、得られる複合材料の熱伝導性がより向上するという観点から、前記部分劈開窒化ホウ素微粒子の含有率が前記窒化ホウ素微粒子の全量に対して10体積%以上であることがより好ましく、20体積%以上であることが特に好ましい。
【0027】
なお、本発明の熱伝導性複合材料に含有される前記窒化ホウ素微粒子の全量に対する前記部分劈開窒化ホウ素微粒子の含有率は、以下のようにして求められる。すなわち、得られる複合材料の断面の走査型電子顕微鏡写真(SEM像)において、明度と形状に基づいて、
(i)前記膨潤窒化ホウ素微粒子(前記部分劈開窒化ホウ素微粒子とその劈開空隙に取り込まれたマトリックス)に相当する領域と、
(ii)前記非膨潤窒化ホウ素微粒子(前記未劈開窒化ホウ素粒子及び前記完全劈開窒化ホウ素微粒子)に相当する領域と、
(iii)マトリックスのうち前記膨潤窒化ホウ素微粒子中に取り込まれずに存在するマトリックスに相当する領域と、
を区別して認識し、公知の二値化等の画像解析手法によりそれぞれの領域の面積を求めることができる。したがって、得られる複合材料の断面について、例えば、横60μm以上、縦40μm以上の測定領域を任意に10箇所以上抽出し、それぞれの測定領域のSEM像において(ii)前記非膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積を求め、当該測定領域における全ての窒化ホウ素が未劈開窒化ホウ素粒子である場合の全窒化ホウ素粒子に相当する領域の合計面積との関係から当該領域における窒化ホウ素微粒子の全量に対する部分劈開窒化ホウ素微粒子の含有率を求めることができる。そして、全ての測定領域の平均値を算出することにより、用いた前記窒化ホウ素微粒子の全量に対する前記部分劈開窒化ホウ素微粒子の含有率(平均値)が求められる。
【0028】
このように本発明の熱伝導性複合材料に含有される前記窒化ホウ素微粒子は、前記部分劈開窒化ホウ素微粒子を所定量以上含有する前記窒化ホウ素微粒子からなるものであるが、マトリックスへの分散性をより向上させる観点から、窒化ホウ素微粒子の表面に水酸基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、アミノ基等の官能基が結合していてもよい。
【0029】
本発明の熱伝導性複合材料においては、熱伝導性フィラーとして、前記窒化ホウ素微粒子と共に、窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子が含有されている。
【0030】
本発明において他方の熱伝導性フィラーとして用いられる窒化ホウ素(BN)で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子(BN/AlN複合微粒子)は、窒化アルミニウム(AlN)の微粒子の表面が窒化ホウ素(BN)により被覆されたものであり、このような窒化ホウ素としては、熱伝導性の観点から六方晶系の板状窒化ホウ素微粒子であることが好ましい。
【0031】
また、窒化アルミニウム(AlN)は、熱伝導率が150~350W/mK程度の高熱伝導性材料であり、窒化アルミニウム微粒子の大きさは特に制限されないが、平均粒子径が1~30μmであることが好ましく、1~10μmであることがより好ましい。前記窒化アルミニウム微粒子の平均粒子径が前記下限未満では、得られる複合材料において熱伝導性フィラー間の粒界抵抗及び複合材料中の粒界数が増大するため熱伝導性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる複合材料における熱伝導性フィラーの分散均一性及び充填率が低下して熱伝導性が低下する傾向にある。なお、本明細書中における熱伝導率とは、室温(20℃)における熱伝導率である。
【0032】
さらに、窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子の大きさも特に制限されず、平均粒子径が1~50μmであることが好ましく、1~20μmであることがより好ましい。前記窒化アルミニウム複合微粒子の平均粒子径が前記下限未満では、得られる複合材料において熱伝導性フィラー間の粒界抵抗及び複合材料中の粒界数が増大するため熱伝導性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる複合材料における熱伝導性フィラーの分散均一性及び充填率が低下して熱伝導性が低下する傾向にある。
【0033】
また、前記窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子(BN/AlN複合微粒子)における、窒化アルミニウム(AlN)の含有量に対する窒化ホウ素(BN)の含有量の比率([BN]/[AlN])は、体積比で、5/95~70/30であることが好ましく、10/90~60/40であることがより好ましく、20/80~50/50であること特に好ましい。前記比率([BN]/[AlN])が前記未満では、得られる複合材料において窒化アルミニウム微粒子の表面上の窒化ホウ素による粒子間界面抵抗の低減が十分に発揮されないため熱伝導性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる複合材料における窒化アルミニウム微粒子の粒子内熱伝導性が十分に発揮されないため熱伝導性が低下する傾向にある。
【0034】
なお、必ずしも全ての窒化アルミニウム微粒子が窒化ホウ素により被覆されていなくてもよいが、前記窒化ホウ素で被覆されている窒化アルミニウム複合微粒子の含有率が、前記窒化アルミニウム微粒子の全量に対して50体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましい。また、必ずしも窒化アルミニウム微粒子の全表面が窒化ホウ素により被覆されていなくてもよいが、窒化アルミニウム微粒子の表面の80%以上が被覆されていることが好ましく、窒化アルミニウム微粒子の全表面が被覆されていることが特に好ましい。
【0035】
本発明の熱伝導性複合材料においては、前記部分劈開窒化ホウ素微粒子を含有する前記窒化ホウ素微粒子(BN微粒子)と、前記窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子(BN/AlN複合微粒子)とが、熱伝導性フィラーとしてマトリックス中に分散して配置されており、前記部分劈開窒化ホウ素微粒子はその劈開空隙中に前記マトリックスが充填されて膨潤した膨潤窒化ホウ素微粒子となっている。
【0036】
このような本発明の熱伝導性複合材料におけるマトリックスとしては、好ましくは絶縁性の樹脂や絶縁性のオイルが用いられ、具体的には特に制限されないが、樹脂としては例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリオレフィンエラストマー、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、オイルとしては例えば、シリコーンオイル、フルオロエーテルオイル、鉱物油、動植物性天然油、パラフィン等が挙げられる。これらの樹脂やオイルは、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0037】
本発明の熱伝導性複合材料においては、その断面基準で、前記膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積が、前記複合材料の断面面積に対して1~50%となっていることが好ましい。前記膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積の比率が1%未満では、複合材料中で窒化ホウ素微粒子間の接触部位を通じて熱が拡散する熱伝導パスのネットワーク構造が十分に形成されず、得られる複合材料の熱伝導性が十分に向上しない傾向にある。一方、前記膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積の比率が50%を超えると、複合材料にする際にフィラーがかさ高くなって取り扱いが困難となる傾向にある。また、複合材料の熱伝導性がより向上するという観点から、前記膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積の比率が、前記複合材料の断面面積に対して5~45%であることがより好ましく、10~40%であることがさらにより好ましく、15~35%であることが特に好ましい。
【0038】
なお、複合材料の断面基準で、前記膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積の比率(前記複合材料の断面面積に対する比率)は、以下のようにして求められる。すなわち、前述のとおり、複合材料の断面の走査型電子顕微鏡写真(SEM像)において、明度と形状に基づいて、
(i)前記膨潤窒化ホウ素微粒子(前記部分劈開窒化ホウ素微粒子とその劈開空隙に取り込まれたマトリックス)に相当する領域と、
(ii)前記非膨潤窒化ホウ素微粒子(前記未劈開窒化ホウ素粒子及び前記完全劈開窒化ホウ素微粒子)に相当する領域と、
(iii)マトリックスのうち前記膨潤窒化ホウ素微粒子中に取り込まれずに存在するマトリックスに相当する領域(BN/AlN複合微粒子に相当する領域を含む)と、
を区別して認識し、公知の二値化等の画像解析手法によりそれぞれの領域の面積を求めることができる。したがって、複合材料の断面について、例えば、横60μm以上、縦40μm以上の測定領域を任意に10箇所以上抽出し、それぞれの測定領域のSEM像において(i)前記膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積を求め、当該測定領域の面積に対する比率として当該領域における前記膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積の比率を求めることができる。そして、全ての測定領域の平均値を算出することにより、測定対象の熱伝導性複合材料について、その断面基準で、前記膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積の比率(前記複合材料の断面面積に対する比率、平均値)が求められる。
【0039】
本発明の熱伝導性複合材料においては、前記窒化ホウ素微粒子(BN微粒子)と、前記窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子(BN/AlN複合微粒子)との合計含有量が、前記複合材料の全量に対して10~90体積%であることが好ましく、15~80体積%であることがより好ましく、20~70体積%であることが特に好ましい。前記合計含有量が前記下限未満では、複合材料中でBN微粒子及びBN/AlN複合微粒子の粒子間の接触部位を通じて熱が拡散する熱伝導パスのネットワーク構造が十分に形成されず、得られる複合材料の熱伝導性が十分に向上しない傾向にある。一方、前記合計含有量が前記上限を超えると、膨潤窒化ホウ素微粒子領域にマトリックスが十分に浸透せず、空隙が生じやすくなり、フィラーの部分劈開による高熱伝導化の効果が相殺されてしまい、また、粒子同士の立体的な干渉により充填率が低下してしまう傾向にある。
【0040】
また、本発明の熱伝導性複合材料においては、前記窒化ホウ素微粒子(BN微粒子)の含有量と、前記窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子(BN/AlN複合微粒子)の含有量との比率([BN微粒子]:[BN/AlN複合微粒子])が、体積比で、5:95~95:5であることが好ましく、30:70~90:10であることがより好ましく、50:50~85:15であることが特に好ましい。前記BN微粒子の含有量の比率が前記未満では、得られる複合材料において前記膨潤窒化ホウ素微粒子による粒子間界面抵抗の低減が十分に発揮されないため熱伝導性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる複合材料における窒化アルミニウム微粒子の粒子内熱伝導性が十分に発揮されないため熱伝導性が低下する傾向にある。
【0041】
次に、本発明の熱伝導性複合材料の製造方法について説明する。
【0042】
本発明の熱伝導性複合材料の製造方法は、
窒化ホウ素粒子を含有する流体を高圧でノズルから噴射させて湿式衝突粉砕することにより、窒化ホウ素微粒子が部分的に劈開した部分劈開窒化ホウ素微粒子を含む窒化ホウ素微粒子を得る工程(湿式粉砕工程)と、
前記部分劈開窒化ホウ素微粒子を含む窒化ホウ素微粒子と、窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子とを熱伝導性フィラーとしてマトリックス中に分散させて、前記部分劈開窒化ホウ素微粒子の劈開空隙中に前記マトリックスが充填されて膨潤した膨潤窒化ホウ素微粒子とすることにより、前記本発明の熱伝導性複合材料を得る工程(複合工程)と、
を含むことを特徴とする方法である。
【0043】
本発明の熱伝導性複合材料の製造方法の前段工程である湿式粉砕工程においては、原料粒子としての窒化ホウ素粒子を含有する流体を高圧でノズルから噴射させることにより、粒子同士が衝突あるいはせん断流動により微細化することによって結晶構造の破壊や過度の微細化を抑制しつつ湿式粉砕されるとともに、粒子が流体中で高圧でせん断流動圧縮させた状態から急激に圧力を低下させることにより、粒子に対して加わっていた圧力が急激に消失することで粒子内部から外部に向かって膨張する力が働き、それに伴って粒子が外側に引っ張られることによって粒子の内部や端部に部分的な劈開が生じて前述の部分劈開窒化ホウ素微粒子が得られるようになる。
【0044】
このような湿式粉砕工程に用いる装置としては、特に制限されず、原料粒子を含有する流体を高圧でノズルから噴射させて湿式衝突粉砕させて微細化する原理に基づく市販の湿式粉砕装置(湿式微細化装置)を用いることができる。また、窒化ホウ素粒子の結晶構造の破壊や過度の微細化を抑制しつつ湿式粉砕するという観点から、ストレート型のノズルを備える湿式粉砕装置を用いることが好ましい。
【0045】
また、原料粒子として用いる窒化ホウ素粒子も特に制限されず、目的とする窒化ホウ素微粒子の平均粒子径等に応じて、平均粒子径が2~200μm(より好ましくは10~60μm)程度の市販の窒化ホウ素粉末(好ましくは六方晶系の板状窒化ホウ素粉末)を用いることができる。
【0046】
また、前記窒化ホウ素粒子とともにノズルから噴射させる流体の分散媒も特に制限されず、例えば、水;N-メチル-2-ピロリドン、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロフェノール、フェノール、テトラヒドロフラン、スルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、γ-ブチロラクトン、N-ジメチルピロリドン、ペンタン、ヘキサン、ネオペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ジエチルエーテル等の有機溶媒;シリコーンオイル、流動パラフィン等のオイル類が挙げられる。
【0047】
さらに、前記窒化ホウ素粒子を含有する流体(分散液)の濃度も特に制限されないが、前記窒化ホウ素粒子の含有率が0.1~20体積%が好ましく、0.5~10体積%がより好ましい。前記分散液の濃度が前記下限未満では劈開窒化ホウ素微粒子の収率が小さくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると分散液の粘度が高くなり粉砕処理が困難となる傾向にある。
【0048】
また、前記湿式粉砕処理の際の諸条件としては、特に制限されるものではないが、前記部分劈開窒化ホウ素微粒子が効率良く得られるという観点から、以下の諸条件が好ましい。
噴射前圧力:30~250MPa(より好ましくは50~200MPa)
噴射後圧力:常圧
ノズル径:0.1~0.5mm
流量:0.1~7.0L/min(より好ましくは0.5~1.1L/min)
ノズル噴射流速:200~800m/s(より好ましくは300~700m/s)。
【0049】
前記湿式粉砕処理における噴射前圧力や流量やノズル噴射流速が前記下限未満では、前記窒化ホウ素粒子の劈開が進行しにくくなり、前記部分劈開窒化ホウ素微粒子が十分に得られなくなる傾向にある。他方、前記湿式粉砕処理における噴射前圧力や流量やノズル噴射流速が前記上限を超えると、前記窒化ホウ素粒子の劈開が進行し過ぎてしまい、大半の窒化ホウ素粒子が劈開により完全に分割されて前記完全劈開窒化ホウ素微粒子となり、前記部分劈開窒化ホウ素微粒子が十分に得られなくなる傾向にある。
【0050】
さらに、前記窒化ホウ素粒子に前記湿式粉砕処理を施す回数は1回でもよいが、前記窒化ホウ素粒子に前記湿式粉砕処理を繰り返し施して所望量の前記部分劈開窒化ホウ素微粒子を含む窒化ホウ素微粒子を得るようにしてもよい。このように前記湿式粉砕処理を繰り返し施す場合、その繰り返す回数(パス数)は2~20回(より好ましくは2~10回)程度が好ましい。湿式粉砕処理を繰り返す回数(パス数)が前記上限を超えると、前記窒化ホウ素粒子の劈開が進行し過ぎてしまい、大半の窒化ホウ素粒子が劈開により完全に分割されて前記完全劈開窒化ホウ素微粒子となり、前記部分劈開窒化ホウ素微粒子が十分に得られなくなる傾向にある。
【0051】
前記湿式粉砕工程においては、前記湿式粉砕処理の後に、必要に応じてろ過、洗浄、及び乾燥処理を施して前記部分劈開窒化ホウ素微粒子を含む前記窒化ホウ素微粒子を得るが、かかるろ過、洗浄、及び乾燥処理としてはいずれも特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。
【0052】
次に、本発明の熱伝導性複合材料の製造方法の後段工程である複合工程においては、前記部分劈開窒化ホウ素微粒子を含む窒化ホウ素微粒子(BN微粒子)と、窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子(BN/AlN複合微粒子)とを熱伝導性フィラーとしてマトリックス中に分散させて、前記部分劈開窒化ホウ素微粒子の劈開空隙中に前記マトリックスが充填されて膨潤した膨潤窒化ホウ素微粒子とすることにより、前記本発明の熱伝導性複合材料を得る。
【0053】
このような本発明にかかる複合工程においては、先ず、前記BN微粒子と前記BN/AlN複合微粒子とマトリックスとを混合する。その際、得られる複合材料中のBN微粒子及びBN/AlN複合微粒子の含有率がそれぞれ目的の含有率となるようにBN微粒子とBN/AlN複合微粒子とマトリックスとの混合割合を定める。また、混合する方法は特に制限されず、公知の混合方法が適宜用いられる。
【0054】
このようなマトリックスとして前記オイルを用いる場合は、前記BN微粒子と前記BN/AlN複合微粒子と前記オイルとを混合して均一スラリーとすることにより前記熱伝導性複合材料を得ることができる。すなわち、このように前記BN微粒子と前記BN/AlN複合微粒子と前記オイルとを混合する過程において、前記部分劈開窒化ホウ素微粒子の劈開空隙中に前記オイルが入り込んで膨潤窒化ホウ素微粒子となり、前記膨潤窒化ホウ素微粒子を含有する熱伝導性複合材料が得られる。
【0055】
また、このようなマトリックスとして前記樹脂を用いる場合は、前記BN微粒子と前記BN/AlN複合微粒子と前記樹脂とを混合して均一混合物とし、得られた混合物を成形することにより前記熱伝導性複合材料を得ることができる。すなわち、このように前記BN微粒子と前記BN/AlN複合微粒子と前記樹脂とを混合及び成形する過程において、前記部分劈開窒化ホウ素微粒子の劈開空隙中に前記樹脂が入り込んで膨潤窒化ホウ素微粒子となり、前記膨潤窒化ホウ素微粒子を含有する熱伝導性複合材料が得られる。
【0056】
このように前記BN微粒子と前記BN/AlN複合微粒子と前記樹脂とを混合して均一混合物とする際に、分散媒を更に加えて均一スラリーとしてもよく、その場合は真空乾燥等の公知の方法で分散媒を除去した後に成形することが好ましい。このような分散媒としては特に制限されず、前記窒化ホウ素粒子とともにノズルから噴射させる流体の分散媒として挙げた有機溶媒と同様の有機溶媒を適宜用いてもよい。
【0057】
また、前記混合物を成形する際に加圧して圧縮することが好ましい。このような圧縮方法としては特に制限されず、一軸圧縮であっても二軸圧縮であってもよい。また、静水圧で等方的に圧縮してもよい。また、圧縮時の圧力も特に制限はないが、5~20MPaが好ましい。圧縮時の圧力が前記下限未満になると、得られる複合材料に空隙が残存しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる複合材料内のフィラーの配向制御が困難となり、残留ひずみが発生する傾向にある。
【0058】
さらに、前記混合物を成形する際に樹脂を固化させる方法としては特に制限はなく、公知の方法、例えば、樹脂として熱可塑性樹脂を用いた場合には放冷等の冷却による方法、各種(熱、光、水)硬化性樹脂を用いた場合にはそれぞれ適切な硬化方法を採用することができる。また、このような固化は、成形時又は成形後のいずれにおいて実施してもよい。
【0059】
なお、前述の窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子(BN/AlN複合微粒子)を製造する方法は、必ずしも限定されるものではないが、例えば、以下の方法でBN/AlN複合微粒子を得ることが可能である。
【0060】
すなわち、先ず、窒化アルミニウム微粒子と窒化ホウ素前駆体とを、例えばボールミル(分散媒としてアセトンを使用)に仕込み12時間、混合する。ここで用いられる窒化ホウ素前駆体としては、特に制限されず、例えば、メラミン-ホウ酸錯体、尿素-ホウ酸混合物が挙げられる。次に、得られた混合物から、エバポレーションにより分散媒(例えばアセトン)を留去する。次いで、得られた混合物を、300~950℃で熱処理した後、1750~1950℃で焼成し、窒化ホウ素を結晶化せしめることにより、窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子(BN/AlN複合微粒子)が得られる。なお、前記熱処理の時間は特に制限されないが、0.5~8時間程度が好ましい。また、前記熱処理の雰囲気も特に制限されないが、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中が好ましい。さらに、前記焼成処理の時間は特に制限されないが、0.5~4時間程度が好ましい。また、前記焼成処理の雰囲気も特に制限されないが、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中が好ましい。
【0061】
また、前述の本発明の熱伝導性複合材料の製造方法においては湿式粉砕法により前記部分劈開窒化ホウ素微粒子を含む窒化ホウ素微粒子を得ているが、部分劈開窒化ホウ素微粒子を含む窒化ホウ素微粒子は、窒化ホウ素微粒子を硫酸等の酸に膨潤させた後に急速に加熱する方法や、窒化ホウ素微粒子を超臨界状態の二酸化炭素に浸漬した後に急激に圧力を低下させる方法によって得ることも可能である。
【実施例】
【0062】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
<BN微粒子の作製>
原料粒子としての窒化ホウ素粒子としてモメンティブ社製「窒化ホウ素(BN)パウダー PT110」(平均粒子径:40μm、六方晶板状窒化ホウ素(BN)粒子)を用い、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を分散媒とする5体積%分散液を得た。次いで、市販のストレート型ノズルを備えた湿式粉砕装置を用い、噴射前のチャンバー内圧力を100MPaとし、前記窒化ホウ素粒子を含有する分散液をノズル(ノズル径:0.2mm)から流量0.756L/min、流速447m/sで噴射させ、高圧でせん断流動圧縮された状態から常圧まで急激に圧力を低下させることにより、1回目の湿式粉砕処理が施された分散液を得た。さらに、得られた分散液を再び同じ条件でノズルから噴射させる湿式粉砕処理を計2回繰り返し(パス数:2回)、湿式粉砕された窒化ホウ素微粒子を含有する分散液を得た。そして、得られた分散液から窒化ホウ素微粒子をろ過し、メタノールで洗浄した後に真空乾燥して、湿式粉砕された窒化ホウ素微粒子(BN微粒子)を得た。得られたBN微粒子の平均粒子径は17μmであった。
【0064】
<BN/AlN複合微粒子の作製>
先ず、500mlのフラスコ中、ホウ酸6gを200mlの水と共に撹拌下95℃に加熱し、約10分後に均一溶液となったことを確認した後、メラミン4gを加えた。さらに加熱撹拌を継続し、約10分後に均一溶液となったことを確認した時点で加熱撹拌を停止し、フラスコを5時間水冷してメラミン-ホウ酸錯体を析出させ、得られた析出物をろ過し、50~80℃で一晩真空乾燥して、メラミン-ホウ酸錯体6.5gを得た。
【0065】
次に、原料粒子としての窒化アルミニウム微粒子として古河電子株式会社製「高熱伝導AlNフィラー FAN-f05」(平均粒子径:5μm)を用い、得られるBN/AlN複合微粒子におけるAlNの含有量に対するBNの含有量の比率([BN]/[AlN])が50/50(体積比)となるように窒化アルミニウム微粒子とメラミン-ホウ酸錯体とをボールミル(分散媒としてアセトンを使用)に仕込み、12時間混合した。そして、得られた混合物からエバポレーションによりアセトンを留去した後、窒素雰囲気中で350℃で1時間及び900℃で4時間熱処理し、さらに窒素雰囲気中で1800℃で1時間焼成することにより、窒化ホウ素結晶で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子(BN/AlN複合微粒子)を得た。得られたBN/AlN複合微粒子の平均粒子径は3μmであった。
【0066】
<熱伝導性複合材料の作製>
前記窒化ホウ素微粒子(BN微粒子)と前記窒化ホウ素結晶で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子(BN/AlN複合微粒子)とを熱伝導性フィラーとし、一液熱硬化型エポキシ樹脂(セメダイン社製「エポキシ樹脂 EP160」)をマトリックスとして、以下のようにして複合材料を得た。すなわち、先ず、得られる複合材料中のBN微粒子とBN/AlN複合微粒子との合計含有率が60体積%、BN微粒子の含有量とBN/AlN複合微粒子の含有量との比率([BN微粒子]:[BN/AlN複合微粒子])が80:20(体積比)となるように、前記エポキシ樹脂のジクロロメタン溶液(濃度:6.0体積%)とBN微粒子とBN/AlN複合微粒子とを混合し、得られたスラリーを撹拌しながらジクロロメタンを揮発させた後に約15分真空乾燥してジクロロメタンを完全に除去して、前記BN微粒子及び前記BN/AlN複合微粒子が前記エポキシ樹脂中に分散した混合物を得た。次いで、得られた混合物を、110℃に予熱した円筒容器(内径:14mmφ)中に成形後の厚みが35mmとなるように充填し、円筒容器の長手方向に7.5MPaの圧力で圧縮した状態で110℃に30分維持してエポキシ樹脂を硬化せしめて円柱状の熱伝導性複合材料を得た。得られた複合材料の空隙率は0%であった。
【0067】
<熱伝導率測定>
図1に示すように、円柱状の複合材料1から熱伝導率測定用試料2(z軸方向厚さ:3mm、直径:14mmφ)を切り出し、前記試料の厚さ方向(z軸方向)を熱流方向としてキセノンフラッシュアナライザー(NETZSCH社製「LFA 447 NanoFlash」)を用いて圧縮方向に平行な方向(z軸方向)の熱拡散率を測定した。
【0068】
また、前記試料の比熱を熱振動型示差走査熱量測定装置(ティー・エイ・インスツル社製)を用いてDSC法により測定した。さらに、前記試料の密度を水中置換法(アルキメデス法)により求めた。これらの結果から次式:
熱伝導率(W/(m・K))=比熱(J/(kg・K))×密度(kg/m3)×熱拡散率(m2/秒)
により、圧縮方向に平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0069】
<断面の電子顕微鏡観察及び構造解析>
円柱状の複合材料から断面の電子顕微鏡観察用の試料を切り出し、任意の10箇所の断面測定領域(実施例1においては縦40ミクロン、横60ミクロンの領域)について研磨機(ビューラー社製「ミニメットTM1000」)を用いて機械研磨を施した後に走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製「NB-5000」)を用いて断面の電子顕微鏡観察を行った。
【0070】
次いで、得られた各測定領域のSEM像において、明度と形状に基づいて、
(i)膨潤窒化ホウ素微粒子(部分劈開窒化ホウ素微粒子とその劈開空隙に取り込まれたマトリックス)に相当する領域と、
(ii)非膨潤窒化ホウ素微粒子(未劈開窒化ホウ素粒子及び完全劈開窒化ホウ素微粒子)に相当する領域と、
(iii)マトリックスのうち前記膨潤窒化ホウ素微粒子中に取り込まれずに存在するマトリックスに相当する領域(BN/AlN複合微粒子に相当する領域を含む)と、
を区別して認識し、二値化により(i)膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積を求め、当該測定領域の面積に対する比率として当該領域における膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積の比率を求めた。そして、全ての測定領域の平均値を算出することにより、得られた複合材料における膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積の比率(前記複合材料の断面面積に対する比率、平均値)を求めた。得られた結果を表2に示す。
【0071】
また、得られた各測定領域のSEM像において、同様に二値化により(ii)非膨潤窒化ホウ素微粒子(未劈開窒化ホウ素粒子及び完全劈開窒化ホウ素微粒子)に相当する領域の合計面積を求め、当該測定領域における全ての窒化ホウ素が未劈開窒化ホウ素粒子である場合の全窒化ホウ素粒子に相当する領域の合計面積との関係から、当該領域における窒化ホウ素微粒子の全量に対する部分劈開窒化ホウ素微粒子の含有率を求めた。そして、全ての測定領域の平均値を算出することにより、得られた複合材料に用いたフィラーにおける窒化ホウ素微粒子の全量に対する部分劈開窒化ホウ素微粒子の含有率(平均値)を求めた。得られた結果を表2に示す。
【0072】
(実施例2)
得られるBN/AlN複合微粒子におけるAlNの含有量に対するBNの含有量の比率([BN]/[AlN])が35/65(体積比)となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして熱伝導性複合材料を得た。そして、得られた複合材料について実施例1と同様にして熱伝導率測定を行い、圧縮方向に平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0073】
また、得られた複合材料について実施例1と同様にして断面の電子顕微鏡観察及び構造解析を行い、得られた複合材料における窒化ホウ素微粒子の全量に対する部分劈開窒化ホウ素微粒子の含有率[体積%]及び複合材料の断面面積に対する膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積の比率[%]を求めた。得られた結果を表2に示す。
【0074】
(実施例3)
得られるBN/AlN複合微粒子におけるAlNの含有量に対するBNの含有量の比率([BN]/[AlN])が20/80(体積比)となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして熱伝導性複合材料を得た。そして、得られた複合材料について実施例1と同様にして熱伝導率測定を行い、圧縮方向に平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0075】
また、得られた複合材料について実施例1と同様にして断面の電子顕微鏡観察及び構造解析を行い、得られた複合材料における窒化ホウ素微粒子の全量に対する部分劈開窒化ホウ素微粒子の含有率[体積%]及び複合材料の断面面積に対する膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積の比率[%]を求めた。得られた結果を表2に示す。
【0076】
(実施例4)
BN微粒子の含有量とBN/AlN複合微粒子([BN]/[AlN]=50/50(体積比))の含有量との比率([BN微粒子]:[BN/AlN複合微粒子])が60:40(体積比)となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして熱伝導性複合材料を得た。そして、得られた複合材料について実施例1と同様にして熱伝導率測定を行い、圧縮方向に平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0077】
また、得られた複合材料について実施例1と同様にして断面の電子顕微鏡観察及び構造解析を行い、得られた複合材料における窒化ホウ素微粒子の全量に対する部分劈開窒化ホウ素微粒子の含有率[体積%]及び複合材料の断面面積に対する膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積の比率[%]を求めた。得られた結果を表2に示す。
【0078】
(実施例5)
BN微粒子の含有量とBN/AlN複合微粒子([BN]/[AlN]=35/65(体積比))の含有量との比率([BN微粒子]:[BN/AlN複合微粒子])が60:40(体積比)となるようにしたこと以外は実施例2と同様にして熱伝導性複合材料を得た。そして、得られた複合材料について実施例1と同様にして熱伝導率測定を行い、圧縮方向に平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0079】
また、得られた複合材料について実施例1と同様にして断面の電子顕微鏡観察及び構造解析を行い、得られた複合材料における窒化ホウ素微粒子の全量に対する部分劈開窒化ホウ素微粒子の含有率[体積%]及び複合材料の断面面積に対する膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積の比率[%]を求めた。得られた結果を表2に示す。
【0080】
(実施例6)
BN微粒子の含有量とBN/AlN複合微粒子([BN]/[AlN]=20/80(体積比))の含有量との比率([BN微粒子]:[BN/AlN複合微粒子])が60:40(体積比)となるようにしたこと以外は実施例3と同様にして熱伝導性複合材料を得た。そして、得られた複合材料について実施例1と同様にして熱伝導率測定を行い、圧縮方向に平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0081】
また、得られた複合材料について実施例1と同様にして断面の電子顕微鏡観察及び構造解析を行い、得られた複合材料における窒化ホウ素微粒子の全量に対する部分劈開窒化ホウ素微粒子の含有率[体積%]及び複合材料の断面面積に対する膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積の比率[%]を求めた。得られた結果を表2に示す。
【0082】
(比較例1)
実施例1において得られた湿式粉砕された窒化ホウ素微粒子(BN微粒子)のみを熱伝導性フィラーとして用い、得られる複合材料中のBN微粒子の含有率が60体積%となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして熱伝導性複合材料を得た。そして、得られた複合材料について実施例1と同様にして熱伝導率測定を行い、圧縮方向に平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0083】
また、得られた複合材料について実施例1と同様にして断面の電子顕微鏡観察及び構造解析を行い、得られた複合材料における窒化ホウ素微粒子の全量に対する部分劈開窒化ホウ素微粒子の含有率[体積%]及び複合材料の断面面積に対する膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積の比率[%]を求めた。得られた結果を表2に示す。
【0084】
(比較例2)
実施例1において得られたBN/AlN複合微粒子([BN]/[AlN]=50/50(体積比))のみを熱伝導性フィラーとして用い、得られる複合材料中のBN/AlN複合微粒子の含有率が60体積%となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして熱伝導性複合材料を得た。そして、得られた複合材料について実施例1と同様にして熱伝導率測定を行い、圧縮方向に平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0085】
(比較例3)
実施例2において得られたBN/AlN複合微粒子([BN]/[AlN]=35/65(体積比))のみを熱伝導性フィラーとして用い、得られる複合材料中のBN/AlN複合微粒子の含有率が60体積%となるようにしたこと以外は実施例2と同様にして熱伝導性複合材料を得た。そして、得られた複合材料について実施例1と同様にして熱伝導率測定を行い、圧縮方向に平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0086】
(比較例4)
実施例3において得られたBN/AlN複合微粒子([BN]/[AlN]=20/80(体積比))のみを熱伝導性フィラーとして用い、得られる複合材料中のBN/AlN複合微粒子の含有率が60体積%となるようにしたこと以外は実施例3と同様にして熱伝導性複合材料を得た。そして、得られた複合材料について実施例1と同様にして熱伝導率測定を行い、圧縮方向に平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0087】
(比較例5)
実施例1におけるBN/AlN複合微粒子に代えて、実施例1において原料粒子として用いた窒化アルミニウム微粒子(古河電子株式会社製「高熱伝導AlNフィラー FAN-f05」、平均粒子径:5μm)をBNで被覆することなくそのまま用いるようにしたこと以外は実施例1と同様にして熱伝導性複合材料を得た。そして、得られた複合材料について実施例1と同様にして熱伝導率測定を行い、圧縮方向に平行な方向(z軸方向)の熱伝導率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0088】
【0089】
【0090】
表1及び表2に示した結果から明らかな通り、本発明の熱伝導性複合材料の製造方法により得られた実施例1~6の熱伝導性複合材料においては、いずれも部分劈開窒化ホウ素微粒子の含有率が窒化ホウ素微粒子の全量に対して5体積%以上であり、かつ、複合材料の断面基準で膨潤窒化ホウ素微粒子に相当する領域の合計面積が複合材料の断面面積に対して1~50%の範囲内にあるものであった。
【0091】
また、表1に示した結果から明らかな通り、本発明の熱伝導性複合材料の製造方法により得られた実施例1~6の熱伝導性複合材料はいずれも、湿式粉砕された窒化ホウ素微粒子(BN微粒子)のみを熱伝導性フィラーとして用いた比較例1の熱伝導性複合材料や、窒化ホウ素で被覆された窒化アルミニウム複合微粒子(BN/AlN複合微粒子)のみを熱伝導性フィラーとして用いた比較例2~4の熱伝導性複合材料や、湿式粉砕された窒化ホウ素微粒子(BN微粒子)と窒化ホウ素で被覆されていない窒化アルミニウム微粒子(AlN微粒子)とを熱伝導性フィラーとして用いた比較例5の熱伝導性複合材料に比べて、熱伝導率が非常に高いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上説明したように、本発明によれば、優れた熱伝導性を有する熱伝導性複合材料と、その製造方法とを提供することが可能となる。したがって、本発明の複合材料は、熱伝導性に優れているため、例えば、自動車用放熱材料、ヒーター材料等として有用である。
【0093】
また、本発明の複合材料として、高い熱伝導性を有していると共に絶縁性のものが得られることから、電気系部品等と組み合わせて使用する場合に絶縁シート等を用いることなく本発明の複合材料のみによって熱を拡散・伝達することが可能となる。したがって、本発明の熱伝導性複合材料は、インバーター、コンバーター等の電力変換器に用いられるパワーデバイスやCPU等の発熱性電子部品の熱を放熱部材に伝達する中間部材(熱インターフェース材)等としても非常に有用である。
【符号の説明】
【0094】
1:熱伝導性複合材料、2:熱伝導率測定用試料。