(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
B60C11/03 300B
(21)【出願番号】P 2018182966
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 光志
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-118604(JP,A)
【文献】特開2012-011981(JP,A)
【文献】特開平04-024105(JP,A)
【文献】特開2014-121918(JP,A)
【文献】実開昭63-072024(JP,U)
【文献】特開2017-197120(JP,A)
【文献】特開2017-114384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部のトレッド面にタイヤ周方向に沿ってジグザグ状に連続して設けられてタイヤ幅方向外側にショルダー陸部を区画すると共にタイヤ幅方向内側にセンター陸部を区画する1対のショルダー主溝と、
前記トレッド面に1対の前記ショルダー主溝の間においてタイヤ周方向に沿ってジグザグ状に連続して延在して設けられて前記センター陸部をタイヤ幅方向で複数に分断する少なくとも1つのセンター主溝と、
前記ショルダー陸部をタイヤ周方向で複数のブロックに分断して設けられた複数のショルダー副溝と、
前記センター陸部をタイヤ周方向で複数のブロックに分断して設けられた複数のセンター副溝と、
を備え、
前記センター副溝は、前記センター陸部の全体を直線状に突き抜けて貫通するシースルー構造を有
し、
前記センター主溝のジグザグ状のピッチ長λceと前記ショルダー主溝のジグザグ状のピッチ長λshとがλce<λshの関係を満たす、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
トレッド部のトレッド面にタイヤ周方向に沿ってジグザグ状に連続して設けられてタイヤ幅方向外側にショルダー陸部を区画すると共にタイヤ幅方向内側にセンター陸部を区画する1対のショルダー主溝と、
前記トレッド面に1対の前記ショルダー主溝の間においてタイヤ周方向に沿ってジグザグ状に連続して延在して設けられて前記センター陸部をタイヤ幅方向で複数に分断する少なくとも1つのセンター主溝と、
前記ショルダー陸部をタイヤ周方向で複数のブロックに分断して設けられた複数のショルダー副溝と、
前記センター陸部をタイヤ周方向で複数のブロックに分断して設けられた複数のセンター副溝と、
を備え、
前記センター副溝は、前記センター陸部の全体を直線状に突き抜けて貫通するシースルー構造を有
し、
前記センター主溝のジグザグ状のピッチ長λceと前記ショルダー主溝のジグザグ状のピッチ長λshとが2≦λsh/λceの関係を満たす、
空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記センター副溝は、シースルー構造のタイヤ周方向に対する延在角度が40°以上60°以下の範囲である請求項1
または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記トレッド部の接地幅TWと前記センター副溝がなすシースルー構造のタイヤ幅方向寸法AWとが0.6≦AW/TW≦0.9の関係を満たす請求項1
~3のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記センター陸部のタイヤ幅方向寸法CWと前記センター副溝がなすシースルー構造のタイヤ幅方向寸法AWとが1.2≦AW/CW≦1.6の関係を満たす請求項1~
4のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記センター主溝のジグザグ状の振幅Aceと前記ショルダー主溝のジグザグ状の振幅AshとがAce<Ashの関係を満たす請求項1~
5のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記トレッド部の接地幅TWと前記ショルダー主溝のジグザグ状の振幅Ashとが0.05≦Ash/TW≦0.25の関係を満たす請求項1~
6のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記トレッド部の接地幅TWと前記センター主溝のジグザグ状の振幅Aceとが0.01≦Ace/TW≦0.10の関係を満たす請求項1~
7のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記ショルダー主溝は、両溝壁がタイヤ周方向から視てタイヤ幅方向でオーバーラップしており、前記ショルダー主溝の溝幅Aと前記ショルダー主溝のオーバーラップしたタイヤ幅方向寸法Bとが0.1≦B/A≦0.4の関係を満たす請求項1~
8のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記センター主溝と前記センター副溝と前記ショルダー主溝と前記ショルダー副溝とが前記センター主溝からタイヤ幅方向外側に向かって連通して設けられ、前記センター主溝からタイヤ幅方向外側に向かって溝幅が漸増して形成されている請求項1~
9のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
接地端において、前記ショルダー副溝の溝幅LLと前記ショルダー副溝のピッチ長PLとが0.2≦LL/PL≦0.5の関係を満たす請求項1~
10のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記ショルダー陸部および前記センター陸部は、前記トレッド面に各前記主溝および各前記副溝よりも溝幅が細く溝深さが浅く設けられて各前記ブロックを貫通する細浅溝が形成されている請求項1~
11のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記細浅溝は、少なくとも2箇所に屈曲部を有することを特徴とする請求項
12に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に記載された重荷重用空気入りタイヤは、雪上トラクション性能を確保してなお、氷上制動性能および氷雪上の耐横滑り性能のそれぞれを高めることを目的としている。この重荷重用空気入りタイヤは、トレッド接地部に、タイヤ周方向にジグザグ状に連続する複数の周方向溝を有し、周方向溝に隣接してブロックがタイヤ周方向に離間して配列されたブロック列を有するブロックパターンタイヤであって、ブロック列の各ブロックに、一本または二本のサイプを設けている。
【0003】
また、従来、例えば、特許文献2に記載された氷雪路用重荷重タイヤは、氷雪路上での廻頭性の向上と、乾燥路走行での直進安定性および操縦安定性の向上と、を両立することを目的としている。この氷雪路用重荷重タイヤは、トレッドに周方向に延びる主溝を少なくとも2本備え、主溝と主溝に交差する副溝とによって多数のブロックに分割されたパターンを有したものであり、ブロックには、それぞれサイプが設けられている。
【0004】
また、従来、例えば、特許文献3に記載された空気入りタイヤは、溝底にクラックが発生することなく、低騒音で、かつ偏摩耗しにくいことを目的としている。この空気入りタイヤは、トレッド部に、タイヤ周方向に沿って延びる複数の周溝を配設し、該周溝によりトレッド部を複数の陸部に区分し、該周溝内であって周溝の両溝壁から離隔した溝底部に、偏摩耗犠牲部としての段差陸部を配設してなる。
【0005】
また、従来、例えば、特許文献4に記載された重荷重用タイヤは、溝底でのクラックの発生やウエット性の低下を抑えながら、石噛み性能を向上させることを目的としている。この重荷重用タイヤは、トレッド部に、タイヤ周方向に沿って延びる複数の周方向溝と、周方向溝の間を多数のブロックに区分する横溝と、を備え、周方向溝は、ジグザグ状をなしている。
【0006】
また、従来、例えば、特許文献5に記載された空気入りタイヤは、スノー性能を犠牲にすることなくノイズ性能を向上させることを目的としている。この空気入りタイヤは、ピッチ長さがPcのジグザグ状のセンター周方向主溝と、ピッチ長さがPsのジグザグ状のショルダー周方向主溝と、角度θcで傾斜するセンター傾斜横溝と、角度θsで傾斜するショルダー傾斜横溝とを備え、Ps>Pc、かつθs<θcである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平3-136911号公報
【文献】特開平6-278413号公報
【文献】特開2008-174198号公報
【文献】特開2011-230643号公報
【文献】特開2016-113066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ダンプトラックのような重荷重車両の駆動軸に装着されるタイヤは、主にオフロードでのトラクション性能が求められているが、近年では、環境性能の面から低騒音化が望まれており、双方の両立が求められている。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、オフロードでのトラクション性能と静粛性能とを両立することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る空気入りタイヤは、トレッド部のトレッド面にタイヤ周方向に沿ってジグザグ状に連続して設けられてタイヤ幅方向外側にショルダー陸部を区画すると共にタイヤ幅方向内側にセンター陸部を区画する1対のショルダー主溝と、前記トレッド面に1対の前記ショルダー主溝の間においてタイヤ周方向に沿ってジグザグ状に連続して延在して設けられて前記センター陸部をタイヤ幅方向で複数に分断する少なくとも1つのセンター主溝と、前記ショルダー陸部をタイヤ周方向で複数のブロックに分断して設けられた複数のショルダー副溝と、前記センター陸部をタイヤ周方向で複数のブロックに分断して設けられた複数のセンター副溝と、を備え、前記センター副溝は、前記センター陸部の全体を直線状に突き抜けて貫通するシースルー構造を有する。
【0011】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記センター副溝は、シースルー構造のタイヤ周方向に対する延在角度が40°以上60°以下の範囲であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記トレッド部の接地幅TWと前記センター副溝がなすシースルー構造のタイヤ幅方向寸法AWとが0.6≦AW/TW≦0.9の関係を満たすことが好ましい。
【0013】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記センター陸部のタイヤ幅方向寸法CWと前記センター副溝がなすシースルー構造のタイヤ幅方向寸法AWとが1.2≦AW/CW≦1.6の関係を満たすことが好ましい。
【0014】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記センター主溝のジグザグ状のピッチ長λceと前記ショルダー主溝のジグザグ状のピッチ長λshとがλce<λshの関係を満たすことが好ましい。
【0015】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記センター主溝のジグザグ状のピッチ長λceと前記ショルダー主溝のジグザグ状のピッチ長λshとが2≦λsh/λceの関係を満たすことが好ましい。
【0016】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記センター主溝のジグザグ状の振幅Aceと前記ショルダー主溝のジグザグ状の振幅AshとがAce<Ashの関係を満たすことが好ましい。
【0017】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記トレッド部の接地幅TWと前記ショルダー主溝のジグザグ状の振幅Ashとが0.05≦Ash/TW≦0.25の関係を満たすことが好ましい。
【0018】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記トレッド部の接地幅TWと前記センター主溝のジグザグ状の振幅Aceとが0.01≦Ace/TW≦0.10の関係を満たすことが好ましい。
【0019】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記ショルダー主溝は、両溝壁がタイヤ周方向から視てタイヤ幅方向でオーバーラップしており、前記ショルダー主溝の溝幅Aと前記ショルダー主溝のオーバーラップしたタイヤ幅方向寸法Bとが0.1≦B/A≦0.4の関係を満たすことが好ましい。
【0020】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記センター主溝と前記センター副溝と前記ショルダー主溝と前記ショルダー副溝とが前記センター主溝からタイヤ幅方向外側に向かって連通して設けられ、前記センター主溝からタイヤ幅方向外側に向かって溝幅が漸増して形成されていることが好ましい。
【0021】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、接地端において、前記ショルダー副溝の溝幅LLと前記ショルダー副溝のピッチ長PLとが0.2≦LL/PL≦0.5の関係を満たすことが好ましい。
【0022】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記ショルダー陸部および前記センター陸部は、前記トレッド面に各前記主溝および各前記副溝よりも溝幅が細く溝深さが浅く設けられて各前記ブロックを貫通する細浅溝が形成されていることが好ましい。
【0023】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記細浅溝は、少なくとも2箇所に屈曲部を有することを特徴とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、センター副溝がシースルー構造を有することから、センター陸部をほぼ直線状に貫通するエッジ成分が確保されて、エッジ効果を十分に発揮できる。この結果、オフロードでのトラクション性能を向上できる。また、ショルダー主溝15Aおよびセンター主溝15Bがタイヤ周方向に沿ってジグザグ状に形成されていることで、タイヤ周方向への音の通過を抑制できる。この結果、静粛性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。また、以下の実施形態で説明する構成要素は組み合わせることができるし、一部の構成要素を用いないこともできる。
【0027】
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。
図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤの平面図である。
【0028】
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤ1のタイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLに向かう方向をいい、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる方向をいう。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とは、タイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう方向をいい、タイヤ径方向外側とは、タイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる方向をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心として回転する方向をいう。
【0029】
タイヤ赤道面CLとは、タイヤ回転軸と直交しタイヤ幅方向の中心を通る平面をいい、タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CLと空気入りタイヤ1のトレッド部2の表面(トレッド面3)とが交差するセンターラインをいう。本実施形態では、タイヤ赤道面CLおよびタイヤ赤道線に同じ符号「CL」を付す。
【0030】
本実施形態における空気入りタイヤ1は、チューブレスタイヤである。また、本実施形態における空気入りタイヤ1は、トラックおよびバスに装着される重荷重用空気入りタイヤである。トラックおよびバス用タイヤ(重荷重用空気入りタイヤ)とは、日本自動車タイヤ協会(Japan Automobile Tire Manufacturers Association:JATMA)から発行されている「日本自動車タイヤ協会規格(JATMA YEAR BOOK)」のC章に定められるタイヤをいう。なお、空気入りタイヤ1は、乗用車に装着されてもよいし、小型トラックに装着されてもよい。
【0031】
本実施形態の空気入りタイヤ1は、
図1に示すように子午断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にゴム材からなるトレッド部2が配設されている。トレッド部2の表面、即ち、空気入りタイヤ1が装着される車両の走行時に路面と接触する部分は、トレッド面3として形成されている。
【0032】
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両端は、ショルダー部4として形成されており、ショルダー部4から、タイヤ径方向内側の所定の位置までは、サイドウォール部5が配設されている。つまり、サイドウォール部5は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2ヶ所に配設されている。
【0033】
さらに、それぞれのサイドウォール部5のタイヤ径方向内側には、ビード部10が位置している。ビード部10は、サイドウォール部5と同様に、タイヤ赤道面CLの両側2ヶ所に配設されている。即ち、一対のビード部10が、タイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向両側に配設されている。一対のビード部10のそれぞれには、ビードコア11とビードフィラー12が設けられている。ビードコア11は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0034】
ビード部10は、15°テーパーの規定リムに装着することができるように構成されている。ここでいう規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、或いはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。即ち、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、ビード部10と嵌合する部分が回転軸に対して15°の傾斜角で傾斜する規定リムに装着することが可能になっている。
【0035】
トレッド部2のタイヤ径方向内側には、ベルト層7が設けられている。ベルト層7は、例えば、4層のベルト71,72,73,74を積層した多層構造をなしている。ベルト71,72,73,74は、スチールから成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成される。また、ベルト71,72,73,74のタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば15°以上70°以下の範囲に設定されている。4層のベルト71,72,73,74のうち一部は層間でベルトコードが交差するように配置されている。強度層として機能するタイヤ内周側から2層目と3層目のベルト72,73間でベルトコードが互いに交差し、タイヤ内周側から1層目と2層目のベルト71,72間ではベルトコードが同方向に傾斜し、タイヤ内周側から3層目と4層目のベルト73,74間でもベルトコードが同方向に傾斜している。
【0036】
このベルト層7のタイヤ径方向内側、およびサイドウォール部5の内部にラジアルプライのコードを内包するカーカス層6が連続して設けられている。このカーカス層6は、一対のビードコア11に支持される。カーカス層6は、1枚のカーカスプライから成る単層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設されるビードコア11間でタイヤ周方向にトロイダル状に架け渡されて空気入りタイヤ1の骨格を構成する。詳しくは、カーカス層6は、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部10のうち、一方のビード部10から他方のビード部10にかけて配設されており、ビードコア11とビードフィラー12を包み込むようにビード部10でビードコア11とビードフィラー12に沿ってタイヤ幅方向外側に巻き返されている。即ち、カーカス層6は、ビードコア11のタイヤ幅方向内側からビードコア11のタイヤ径方向内側を通り、ビードコア11とビードフィラー12のタイヤ幅方向外側にかけて配設されるように、ビード部10でビードコア11とビードフィラー12周りに折り返されている。このように配設されるカーカス層6のカーカスプライは、スチールから成るカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成されている。
【0037】
また、カーカス層6の内側、或いは、カーカス層6の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ8がカーカス層6に沿って形成されている。インナーライナ8は、タイヤ内面、即ち、カーカス層6の内周面であって、各タイヤ幅方向両端部が一対のビード部10のビードコア11の下部やビードトウに至り、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されて貼り付けられている。インナーライナ8は、空気分子の透過を抑制するためのものでコードを有さない。
【0038】
以下、トレッドパターンについて説明する。
図1および
図2に示すように、トレッド部2のトレッド面3には、タイヤ周方向に沿って連続して延びる主溝15がタイヤ幅方向に複数形成されている。主溝15は、トレッド面3に少なくとも3つあればよい。主溝15は、タイヤ周方向に沿ってジグザグ状に連続して設けられている。また、主溝15は、タイヤ幅方向両最外側に設けられた1対のショルダー主溝15Aと、各ショルダー主溝15Aの間に設けられた少なくとも1つ(本実施形態では1つ)のセンター主溝15Bと、を有する。
【0039】
各ショルダー主溝15Aは、そのタイヤ幅方向外側にショルダー陸部16を区画している。また、各ショルダー主溝15Aは、その間であってタイヤ幅方向内側にセンター陸部17を区画している。
【0040】
センター主溝15Bは、各ショルダー主溝15Aの間においてセンター陸部17をタイヤ幅方向で複数(本実施形態では2つ)に分断する。本実施形態において、センター主溝15Bは、1つ設けられてタイヤ赤道面CL上に配置されている。なお、図には明示しないが、センター主溝15Bは、複数であってもよく、タイヤ赤道面CL上に配置されていなくてもよい。
【0041】
図2に示すように、ショルダー陸部16のトレッド面3には、ショルダー副溝18が設けられている。ショルダー副溝18は、タイヤ周方向に複数並設され、一端がショルダー主溝15Aに開口して連通し、他端が接地端Tに開口することで、ショルダー陸部16をタイヤ周方向で複数のショルダーブロック16Aに分断する。ショルダー副溝18は、一端がジグザグ状のショルダー主溝15Aにおけるタイヤ幅方向外側の屈曲部に開口して連通している。
【0042】
ここで、接地端Tとは、空気入りタイヤ1を規定リムに装着して規定内圧を充填した状態で、規定荷重の100%をかけたとき、トレッド面3が平面と接地する領域のタイヤ幅方向の両最外端である。また、このときのトレッド面3が平面と接地する領域のタイヤ幅方向寸法であって両接地端Tの間のタイヤ幅方向寸法を接地幅TWという。規定内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。規定荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
【0043】
図2に示すように、各センター陸部17のトレッド面3には、センター副溝19が設けられている。センター副溝19は、タイヤ周方向に複数並設され、一端がショルダー主溝15Aに開口して連通し、他端が当該ショルダー主溝15Aのタイヤ幅方向で隣接するセンター主溝15Bに開口することで、各センター陸部17をタイヤ周方向で複数のセンターブロック17Aに分断する。センター副溝19は、一端がジグザグ状のショルダー主溝15Aにおけるタイヤ幅方向内側の屈曲部に開口して連通し、他端がジグザグ状のセンター主溝15Bにおけるタイヤ幅方向外側の屈曲部に開口して連通している。
【0044】
なお、図には明示しないが、センター副溝19は、センター主溝15Bが複数設けられている場合、タイヤ幅方向で互いに隣接するセンター主溝15Bの間において、一端が一方のセンター主溝15Bに開口して連通し、他端が他方のセンター主溝15Bに開口して連通することで、タイヤ幅方向で互いに隣接するセンター主溝15Bの間で区画されたセンター陸部17をタイヤ周方向で複数のセンターブロック17Aに分断する。この場合、センター副溝19は、タイヤ幅方向で互いに隣接するジグザグ状のセンター主溝15Bにおける相互に向く各屈曲部に一端および他端が開口して連通する。
【0045】
図2に示すように、各ブロック16A,17Aのトレッド面3には、細浅溝20が設けられている。細浅溝20は、ショルダーブロック16Aにおいて一端がショルダー主溝15Aに開口して連通し、他端が接地端Tに開口することで、ショルダーブロック16Aをタイヤ周方向で分断する。細浅溝20は、センターブロック17Aにおいてタイヤ幅方向で隣接する各主溝15の一方に一端が開口して連通し、各主溝15の他方に他端が開口して連通することで、センターブロック17Aをタイヤ周方向で分断する。本実施形態において、細浅溝20は、1つのブロック16A,17Aに1つ設けられているが、複数設けられていてもよい。また、細浅溝20は、その途中が屈曲した屈曲部20Aを有している。屈曲部20Aは、少なくとも2箇所に設けられている。
【0046】
細浅溝20は、各主溝15および副溝18,19に対し、溝幅が細く溝深さが浅く形成されたもので、具体的には、溝幅が2mm以下で溝深さが2mm以下に形成されている。センター主溝15Bは、段部31を介して溝深さが変化している。センター主溝15Bは、段部31で区画された部分において、溝深さが6mm以上12mm以下(本実施形態では9mm)で、溝幅が7mm以上13mm以下(本実施形態では10mm)である。センター主溝15Bは、段部31で区画されてセンター副溝19に繋がる部分がセンター副溝19と同様であり、溝深さが13mm以上19mm以下(本実施形態では16mm)で、溝幅が7mm以上13mm以下(本実施形態では10mm)である。ショルダー主溝15Aは、センター副溝19との間で段部32を介して相互の溝深さが変化している。また、ショルダー主溝15Aは、段部33および段部34を介して部分的に溝深さが変化している。ショルダー副溝18は、段部32,33,34を介してショルダー主溝15Aの一部と溝深さが同等であり、センター副溝19やショルダー主溝15Aの一部と溝深さが変化している。ショルダー主溝15Aの一部は、段部33,34で区画された部分において、溝深さが10mm以上17mm以下(本実施形態では13mm)で、溝幅が15mm以上19mm以下(本実施形態では17mm)である。また、ショルダー主溝15Aの一部およびショルダー副溝18は、段部32,33,34で区画された部分において溝深さが18mm以上24mm以下(本実施形態では21mm)で、溝幅が21mm以上27mm以下(本実施形態では接地端Tにおいて24mm)である。
【0047】
本実施形態の空気入りタイヤ1は、センター副溝19が、センター陸部17の全体を直線状に突き抜けて貫通するシースルー構造を有する。即ち、センター副溝19は、1対のショルダー主溝15Aの間に区画されたセンター陸部17を両ショルダー主溝15Aに至り貫通しており、センター副溝19を延在方向で視た場合に、センター副溝19の両溝壁に邪魔されることなく一方のショルダー主溝15A側から他方のショルダー主溝15A側が直線状に突き抜けて見えるようにシースルー構造を有している。なお、センター副溝19のシースルー構造は、ショルダー陸部16を貫通するショルダー副溝18と共に両接地端Tに至り貫通し、ショルダー副溝18およびセンター副溝19を延在方向で視た場合に、ショルダー副溝18およびセンター副溝19の両溝壁に邪魔されることなく一方の接地端T側から他方の接地端T側が直線状に突き抜けて見えるように構成されていてもよい。
【0048】
この空気入りタイヤ1によれば、センター副溝19がシースルー構造を有することから、センター陸部17をほぼ直線状に貫通するエッジ成分が確保されて、エッジ効果を十分に発揮できる。この結果、オフロードでのトラクション性能を向上できる。また、この空気入りタイヤ1によれば、ショルダー主溝15Aおよびセンター主溝15Bがタイヤ周方向に沿ってジグザグ状に形成されていることで、タイヤ周方向への音の通過を抑制できる。この結果、静粛性能(耐車外騒音性能)を向上できる。
【0049】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター副溝19は、シースルー構造のタイヤ周方向に対する延在角度θが40°以上60°以下の範囲である。シースルー構造は、センター副溝19を延在方向で視た場合に、センター副溝19の両溝壁に邪魔されることなく一方のショルダー主溝15A側から他方のショルダー主溝15A側が突き抜けて見える構造であり、平面視で一方のショルダー主溝15A側から他方のショルダー主溝15A側も突き抜けて延在する2本の平行線によりなる。
図2においては、シースルー構造が微細な幅であるため1本の線で示されている。シースルー構造の延在角度θは、この平面視で一方のショルダー主溝15A側から他方のショルダー主溝15A側も突き抜ける線のタイヤ周方向に対する角度である。この延在角度θは、シースルー構造が一方の接地端T側から他方の接地端T側へ突き抜ける場合も含む。
【0050】
この空気入りタイヤ1によれば、センター副溝19におけるシースルー構造のタイヤ周方向に対する延在角度θを40°以上とすることで、センターブロック17Aが路面に接地した際の打音をタイヤ周方向でずらすことができる。この結果、静粛性能を向上できる。また、センター副溝19におけるシースルー構造のタイヤ周方向に対する延在角度θを60°以下とすることで、タイヤ周方向に対するエッジ成分が確保されて、エッジ効果を十分に発揮できる。この結果、オフロードでのトラクション性能を向上できる。なお、センター副溝19におけるシースルー構造のタイヤ周方向に対する延在角度θを45°以上55°以下の範囲とすることが上記効果を得るうえで好ましい。
【0051】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、トレッド部2の接地幅TWとセンター副溝19がなすシースルー構造のタイヤ幅方向寸法AWとが0.6≦AW/TW≦0.9の関係を満たす。
【0052】
0.6≦AW/TW≦0.9の関係は、シースルー構造のタイヤ幅方向寸法AWがトレッド部2の接地幅TWよりも小さいことを示し、シースルー構造が一方の接地端T側から他方の接地端T側へ突き抜ける場合を含まず、接地幅TWの内側で終端していることを意味する。即ち、シースルー構造のタイヤ幅方向寸法AWは、両ショルダー陸部16に至るシースルー構造の最大寸法である。この空気入りタイヤ1によれば、シースルー構造が接地幅TWの内側で終端することで、タイヤ幅方向外側への音の通過を抑制することができる。この結果、静粛性能を向上できる。そして、AW/TWを0.6以上とすることで、シースルー構造のタイヤ幅方向寸法AWを確保して、オフロードでのトラクション性能を確保することができる。一方、この空気入りタイヤ1によれば、AW/TWを0.9以下とすることで、タイヤ幅方向外側への音の通過を抑制する効果を確保し、静粛性能を向上することができる。なお、接地幅TWとシースルー構造のタイヤ幅方向寸法AWとは、0.7≦AW/TW≦0.8の関係を満たすことが上記効果を得るうえで好ましい。
【0053】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター陸部17のタイヤ幅方向寸法CWとセンター副溝19がなすシースルー構造のタイヤ幅方向寸法AWとが1.2≦AW/CW≦1.6の関係を満たす。ここで、センター陸部17のタイヤ幅方向寸法CWは、タイヤ幅方向の最大寸法である。
【0054】
この空気入りタイヤ1によれば、AW/CWを1.2以上とすることで、センター陸部17のタイヤ幅方向寸法CWに対してシースルー構造のタイヤ幅方向寸法AWを確保し、オフロードでのトラクション性能を確保することができる。一方、この空気入りタイヤ1によれば、AW/CWを1.6以下とすることで、タイヤ幅方向外側への音の通過を抑制する効果を確保し、静粛性能を向上することができる。なお、センター陸部17のタイヤ幅方向寸法CWとシースルー構造のタイヤ幅方向寸法AWとは、1.3≦AW/CW≦1.5の関係を満たすことが上記効果を得るうえで好ましい。
【0055】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター主溝15Bのジグザグ状のピッチ長λceとショルダー主溝15Aのジグザグ状のピッチ長λshとがλce<λshの関係を満たす。ここで、センター主溝15Bのジグザグ状のピッチ長λceやショルダー主溝15Aのジグザグ状のピッチ長λshは、最大振幅を示す。
【0056】
この空気入りタイヤ1によれば、ショルダー主溝15Aのジグザグ状のピッチ長λshをセンター主溝15Bのジグザグ状のピッチ長λceよりも大きくしたことで、ショルダー主溝15Aにおけるエッジ効果を十分に発揮できる。この結果、オフロードでのトラクション性能を向上できる。また、この空気入りタイヤ1によれば、ショルダー主溝15Aのジグザグ状のピッチ長λshと、センター主溝15Bのジグザグ状のピッチ長λceとを異ならせることで、路面に接地した際の打音について、共鳴を抑制するとともに、ピッチ長λceの小さいセンター主溝15Bの打音が高周波帯域となるため、車外騒音を低下できる。この結果、静粛性能を向上できる。
【0057】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター主溝15Bのジグザグ状のピッチ長λceとショルダー主溝15Aのジグザグ状のピッチ長λshとが2≦λsh/λceの関係を満たす。
【0058】
この空気入りタイヤ1によれば、λsh/λceを2以上とし、ショルダー主溝15Aのジグザグ状のピッチ長λshをセンター主溝15Bのジグザグ状のピッチ長λceよりも大きくしたことで、ショルダー主溝15Aにおけるエッジ効果を十分に発揮できる。この結果、オフロードでのトラクション性能を向上できる。また、この空気入りタイヤ1によれば、λsh/λceを2以上とし、ショルダー主溝15Aのジグザグ状のピッチ長λshと、センター主溝15Bのジグザグ状のピッチ長λceとを異ならせることで、トレッド面3が路面に接地した際の打音について、共鳴を抑制するとともに、ピッチ長λceの小さいセンター主溝15Bの打音が高周波帯域となるため、車外騒音を低下できる。この結果、静粛性能を向上できる。なお、ピッチ長λceとピッチ長λshとは、2≦λsh/λce≦4の関係を満たすことが好ましい。λsh/λceが4を超えるとショルダー主溝15Aが直線状に近くなったりセンター主溝15Bのジグザグ状が細かくなったりすることでトラクション性能が低下する傾向となる。
【0059】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター主溝15Bのジグザグ状の振幅Aceとショルダー主溝15Aのジグザグ状の振幅AshとがAce<Ashの関係を満たす。ここで、センター主溝15Bのジグザグ状の振幅Aceやショルダー主溝15Aのジグザグ状の振幅Ashは、最大振幅を示す。
【0060】
この空気入りタイヤ1によれば、ショルダー主溝15Aのジグザグ状の振幅Ashを大きくすることで、ショルダー主溝15Aにおけるエッジ効果を十分に発揮でき、オフロードでのトラクション性能を向上できる。また、この空気入りタイヤ1によれば、センター主溝15Bのジグザグ状の振幅Aceを小さくすることで、トレッド面3が路面に接地した際のセンター主溝15Bの打音を小さくでき、静粛性能を向上できる。なお、各振幅Ash,Aceは、2≦Ash/Ace≦4の関係を満たすことが上記効果を得るうえで好ましく、2.5≦Ash/Ace≦3.5の関係を満たすことが上記効果を得るうえでより好ましい。
【0061】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、トレッド部2の接地幅TWとショルダー主溝15Aのジグザグ状の振幅Ashとが0.05≦Ash/TW≦0.25の関係を満たす。
【0062】
この空気入りタイヤ1によれば、Ash/TWを0.05以上とすることでショルダー主溝15Aにおけるエッジ効果を発揮でき、オフロードでのトラクション性能を向上できる。一方、この空気入りタイヤ1によれば、Ash/TWを0.25以下にすることでトレッド面3が路面に接地した際のショルダー主溝15Aにおける打音を抑制でき、静粛性能を確保できる。なお、接地幅TWと振幅Ashとは、0.10≦Ash/TW≦0.20の関係を満たすことが上記効果を得るうえで好ましい。
【0063】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、トレッド部2の接地幅TWとセンター主溝15Bのジグザグ状の振幅Aceとが0.01≦Ace/TW≦0.10の関係を満たす。
【0064】
この空気入りタイヤ1によれば、Ace/TWを0.01以上とすることでセンター主溝15Bにおけるエッジ効果を発揮でき、オフロードでのトラクション性能を向上できる。一方、この空気入りタイヤ1によれば、Ace/TWを0.10以下にすることでトレッド面3が路面に接地した際のセンター主溝15Bにおける打音を抑制でき、静粛性能を確保できる。なお、接地幅TWと振幅Aceとは、0.04≦Ace/TW≦0.06の関係を満たすことが上記効果を得るうえで好ましい。
【0065】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、ショルダー主溝15Aの溝幅Aとショルダー主溝15Aの両溝壁がオーバーラップしたタイヤ幅方向寸法Bとが0.1≦B/A≦0.4の関係を満たす。ここで、ショルダー主溝15Aの溝幅Aは、最大溝幅であり、タイヤ幅方向寸法Bは、最大寸法である。
【0066】
この空気入りタイヤ1によれば、B/Aを0.1以上とすることで、ショルダー主溝15Aによるトラクション性能への寄与を確保しつつ、ショルダー主溝15Aのオーバーラップ構造によるタイヤ周方向への音の通過を抑制する効果を確保して静粛性能を向上することができる。一方、この空気入りタイヤ1によれば、B/Aを0.4以下とすることで、オーバーラップ構造が過剰となってショルダー主溝15Aのジグザグ状が大きくなることによるトレッド面3が路面に接地した際の打音の増大を抑制して静粛性能を確保することができる。なお、ショルダー主溝15Aの溝幅Aとショルダー主溝15Aのオーバーラップしたタイヤ幅方向寸法Bとは、0.2≦B/A≦0.3の関係を満たすことが上記効果を得るうえで好ましい。
【0067】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター主溝15Bとセンター副溝19とショルダー主溝15Aとショルダー副溝18とがセンター主溝15Bからタイヤ幅方向外側に向かって連通して設けられ、センター主溝15Bからタイヤ幅方向外側に向かって溝幅が漸増して形成されている。
【0068】
この空気入りタイヤ1によれば、センター主溝15Bとセンター副溝19とショルダー主溝15Aとショルダー副溝18とがセンター主溝15Bからタイヤ幅方向外側に向かって連通して設けられていることで、タイヤ幅方向でのエッジ成分を確保し、タイヤ幅方向外側に向かって溝幅が漸増することで、ショルダー側でのエッジ効果を確保して、オフロードでのトラクション性能を向上することができる。
【0069】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、接地端Tにおいて、ショルダー副溝18の溝幅LLとショルダー副溝18のピッチ長PLとが0.2≦LL/PL≦0.5の関係を満たす。ここで、ショルダー副溝18の溝幅LLやショルダー副溝18のピッチ長PLは、接地端Tにおける最大寸法を示す。
【0070】
この空気入りタイヤ1によれば、LL/PLを0.2以上とすることで、ショルダー副溝18のピッチ長PLに対して溝幅LLを確保して、オフロードでのトラクション性能を向上することができる。一方、この空気入りタイヤ1によれば、LL/PLを0.5以下とすることで、ショルダー副溝18のピッチ長PLに対して溝幅LLが過剰に大きくなることを抑制して、タイヤ幅方向外側への音の通過を抑制する効果を確保し、静粛性能を向上することができる。なお、ショルダー副溝18の溝幅LLとショルダー副溝18のピッチ長PLとは、0.3≦LL/PL≦0.4の関係を満たすことが上記効果を得るうえで好ましい。
【0071】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、ショルダー陸部16およびセンター陸部17は、トレッド面3に各主溝15および各副溝18,19よりも溝幅が細く溝深さが浅く設けられて各ブロック16A,17Aを貫通する細浅溝20が形成されている。
【0072】
この空気入りタイヤ1によれば、細浅溝20により各ブロック16A,17Aのトレッド面3においてエッジ効果を確保して、オフロードでのトラクション性能を向上することができる。
【0073】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、細浅溝20は、少なくとも2箇所に屈曲部20Aを有する。
【0074】
この空気入りタイヤ1によれば、少なくとも2箇所に屈曲部20Aにより、細浅溝20の延在長さを延長し、エッジ効果をより確保して、オフロードでのトラクション性能を向上することができる。
【0075】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、ショルダー主溝15Aのジグザグ状のピッチ数Pshとセンター主溝15Bのジグザグ状のピッチ数PceとがPsh<Pceの関係を満たしている。センター主溝15Bが複数の場合は少なくとも1つのセンター主溝15Bに対し上記関係を満たせばよいが、全てのセンター主溝15Bに対し上記関係を満たすことが好ましい。さらに、本実施形態の空気入りタイヤ1では、ショルダー主溝15Aは、両溝壁がタイヤ周方向から視てタイヤ幅方向でオーバーラップしており、その延在方向に直線状に突き抜けて貫通するシースルー構造を有さない。
【0076】
この空気入りタイヤ1によれば、ショルダー主溝15Aのジグザグ状のピッチ数Pshをセンター主溝15Bのジグザグ状のピッチ数Pceよりも少なくしたことで、ショルダー主溝15Aのジグザグ状のピッチ長λshを大きくとることができ、ショルダー主溝15Aにおけるエッジ効果を十分に発揮できる。この結果、オフロードでのトラクション性能を向上できる。また、この空気入りタイヤ1によれば、ショルダー主溝15Aのジグザグ状のピッチ数Pshと、センター主溝15Bのジグザグ状のピッチ数Pceとを異ならせることで、トレッド面3が路面に接地した際の打音について、共鳴を抑制するとともに、ピッチ数Pceの多いセンター主溝15Bの打音が高周波帯域となるため、車外騒音を低下できる。さらに、この空気入りタイヤ1によれば、ショルダー主溝15Aおよびセンター主溝15Bがタイヤ周方向に沿ってジグザグ状に形成されていることと、ショルダー主溝15Aがシースルー構造を有さないことにより、タイヤ周方向における音の伝達を抑制できる。これらの結果、静粛性能を向上できる。
【実施例】
【0077】
本実施例では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、オフロードでのトラクション性能および静粛性能に関する性能試験が行われた(
図3および
図4参照)。
【0078】
この性能試験では、タイヤサイズ11R22.5の空気入りタイヤ(重荷重用空気入りタイヤ)を、規定リムに組み付け、規定空気圧を充填し、試験車両(2-DDトラック)の駆動軸に装着した。
【0079】
トラクション性能の評価は、オフロード(砂利路)を試験車両で速度30km/hで走行し、試験車両の速度と試験車両における駆動軸の回転速度との差が計測される。そして、測定結果に基づいて、従来例の測定値(速度差)を基準値(100)とした指数評価が行われる。この評価は、速度差が小さく数値が大きいほどオフロードでのトラクション性能が優れていることを示す。
【0080】
静粛性能の評価は、ISO(International Organization for Standardization)路面のテストコースを試験車両で70km/hで走行したときの通過音(車外騒音)が測定される。そして、従来例の測定値(通過音dB)を基準値(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど通過音が小さく静粛性能が優れていることを示す。
【0081】
図3および
図4において、従来例、および各実施例は、
図2に示すトレッドパターンに基づく。従来例は、センター副溝がシースルー構造を有さない。一方、各実施例は、センター副溝がシースルー構造を有している。
【0082】
図3および
図4の試験結果に示すように、各実施例の空気入りタイヤは、オフロードでのトラクション性能および静粛性が改善されていることがわかる。
【符号の説明】
【0083】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 トレッド面
15 主溝
15A ショルダー主溝
15B センター主溝
16 ショルダー陸部
16A ショルダーブロック
17 センター陸部
17A センターブロック
18 ショルダー副溝
19 センター副溝
20 細浅溝
20A 屈曲部
CL タイヤ赤道面
Pce センター主溝のピッチ数
Psh ショルダー主溝のピッチ数
Ace センター主溝の振幅
Ash ショルダー主溝の振幅
λce センター主溝のピッチ長
λsh ショルダー主溝のピッチ長
T 接地端
TW 接地幅
AW センター副溝がなすシースルー構造のタイヤ幅方向寸法
θ センター副溝がなすシースルー構造の延在角度
CW センター陸部のタイヤ幅方向寸法
A ショルダー主溝の溝幅
B ショルダー主溝の両溝壁がオーバーラップしたタイヤ幅方向寸法
LL 接地端におけるショルダー副溝の溝幅
PL 接地端におけるショルダー副溝のピッチ長