(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】液体吐出装置、及び液体吐出装置のメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20221206BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20221206BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20221206BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/165 101
B41J2/165 211
B41J2/14 501
B41J2/17
B41J2/165
B41J2/14 305
B41J2/01 401
(21)【出願番号】P 2018183209
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【氏名又は名称】松川 直宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 次郎
(72)【発明者】
【氏名】小出 祥平
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 啓太
(72)【発明者】
【氏名】片山 寛
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-114511(JP,A)
【文献】特開2010-069635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1ノズル、及び
複数の第2ノズルが形成されたノズルプレートであって、前記
複数の第1ノズル及び前記
複数の第2ノズルが開口するノズル面を有するノズルプレートと、
前記ノズルプレートに対して、前記ノズル面方向と直交する第1方向に重ねられた流路基板であって、前記
複数の第1ノズルと連通する第1流路、及び前記
複数の第2ノズルと連通し前記第1流路とは連通しない第2流路が形成された流路基板と、
前記流路基板に対して前記第1方向に重ねられた圧電アクチュエータであって、前記第1流路と少なくとも部分的に前記第1方向に重なり、前記第1流路内の第1液体に吐出エネルギーを付与して前記第1液体を前記
複数の第1ノズルから吐出させる圧電アクチュエータと、
前記第1流路に連通し、前記第1流路及び前記
複数の第1ノズルに前記第1液体を供給する第1液体供給部と、
第2液体を貯留するタンクと、
前記タンク及び前記第2流路に接続され、前記タンクから前記第2流路に供給される前記第2液体が通過する供給流路と、
前記タンク及び前記第2流路に接続され、前記第2流路から前記タンクに回収される前記第2液体が通過する回収流路と、
前記供給流路及び前記回収流路の少なくとも一方に設けられ、前記タンクと前記第2流路との間で前記第2液体を循環させる循環ポンプとを備え
、
前記第1流路は、前記ノズル面に沿って第2方向に延びるマニホールドを含み、
前記マニホールドの前記第2方向の一方側の端部は、前記第1液体供給部から前記第1液体が供給される供給口と連通し、
前記複数の第1ノズルは、前記第2方向に沿うノズル列を形成し、
前記複数の第2ノズルは、前記ノズル列に対して、前記第2方向の他方側にのみ配置されている、液体吐出装置。
【請求項2】
前記圧電アクチュエータは、前記第2流路とは前記第1方向に重ならないことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第2液体を加熱するヒータ及び前記第2液体を冷却するクーラーの少なくとも一方をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第2流路は、前記供給流路が接続される供給口と、前記回収流路が接続される排出口とを備え、
前記
複数の第2ノズルは、前記第2流路における、前記供給口と前記排出口との間の部分と連通していることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記ノズル面と対向する底面と、前記底面から前記ノズル面に向かって前記第1方向に突出するリップ部とを有し、前記底面及び前記リップ部によって、前記
複数の第1ノズルの開口及び前記
複数の第2ノズルの開口を共通に覆うキャップを更に備える請求項1~4の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
液体吐出装置のメンテナンス方法であって、
前記液体吐出装置は、
複数の第1ノズル、及び
複数の第2ノズルが形成されたノズルプレートであって、前記
複数の第1ノズル及び前記
複数の第2ノズルが開口するノズル面を有するノズルプレートと、
前記ノズルプレートに対して、前記ノズル面方向と直交する第1方向に重ねられた流路基板であって、前記
複数の第1ノズルと連通する第1流路、及び前記
複数の第2ノズルと連通し前記第1流路とは連通しない第2流路が形成された流路基板と、
前記流路基板に対して前記第1方向に重ねられた圧電アクチュエータであって、前記第1流路と少なくとも部分的に前記第1方向に重なり、前記第1流路内の第1液体に吐出エネルギーを付与して前記第1液体を前記
複数の第1ノズルから吐出させる圧電アクチュエータと、
前記第1流路に連通し、前記第1流路及び前記
複数の第1ノズルに前記第1液体を供給する第1液体供給部と、
第2液体を貯留するタンクと、
前記タンク及び前記第2流路に接続され、前記タンクから前記第2流路に供給される前記第2液体が通過する供給流路と、
前記タンク及び前記第2流路に接続され、前記第2流路から前記タンクに回収される前記第2液体が通過する回収流路と、
前記供給流路及び前記回収流路の少なくとも一方に設けられ、前記タンクと前記第2流路との間で前記第2液体を循環させる循環ポンプと、
前記供給流路及び前記回収流路の少なくとも一方に設けられたバルブと、
前記ノズル面と対向する底面と、前記底面から前記ノズル面に向かって前記第1方向に突出するリップ部とを有し、前記底面と前記リップ部とによって前記
複数の第1ノズルの
複数の第1開口及び前記
複数の第2ノズルの
複数の第2開口を共通に覆うキャップと、
前記キャップに接続された吸引ポンプとを備え、
前記第1流路は、前記ノズル面に沿って第2方向に延びるマニホールドを含み、
前記マニホールドの前記第2方向の一方側の端部は、前記第1液体供給部から前記第1液体が供給される供給口と連通し、
前記複数の第1ノズルは、前記第2方向に沿うノズル列を形成し、
前記複数の第2ノズルは、前記ノズル列に対して、前記第2方向の他方側にのみ配置され、
前記液体吐出装置のメンテナンス方法は、
前記キャップの前記リップ部を前記ノズル面に密着させて、前記
複数の第1開口及び前記
複数の第2開口を前記キャップで覆うことと、
前記
複数の第1開口及び前記
複数の第2開口を前記キャップで覆った後、前記バルブを開いた状態で、前記循環ポンプを駆動して、前記タンクと前記第2流路との間で前記第2液体を循環させることと、
前記循環ポンプを停止し、前記バルブを閉じることと、
前記
複数の第1開口及び前記
複数の第2開口を前記キャップで覆った状態で、前記吸引ポンプを駆動して、前記
複数の第1開口から前記
複数の第1ノズル内の前記第1液体を吸引することと、
前記
複数の第1開口及び前記
複数の第2開口を前記キャップで覆った状態で、前記吸引ポンプを停止し、前記バルブを開き、前記循環ポンプを駆動することと、
前記バルブを開き、前記循環ポンプを駆動した後に、前記キャップのリップ部を前記ノズル面から離隔して、前記
複数の第1開口及び前記
複数の第2開口を前記キャップから開放することとを含む液体吐出装置のメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、及びそのメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ノズルを含む流路ユニットと、ノズルからインクを吐出するための吐出エネルギーを付与する圧電アクチュエータと、ノズルに供給するインクの温度を調整する温度調整ユニットとを備える液体吐出装置が知られている。流路ユニットには、インクが流れるインク流路とは別に、温度調整用流体が流れる循環路が形成されている。そして、温度調整ユニットは、流路ユニットに形成された循環路に温度調整用流体を流して循環させることにより、ノズルに供給するインクの温度を調整する(特許文献1参照)。
【0003】
また、ノズルが開口したノズル開口面を有する液体吐出ヘッドと、加湿用液を液体吐出ヘッドの開口面側に供給する加湿用液供給手段とを備える液体吐出装置が知られている。液体吐出ヘッドのノズル開口面には、ノズルとは別に、加湿用液供給手段から加湿用液が供給される加湿用穴が形成されている。加湿用液は、表面張力によって加湿用穴に保持される(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-82901号公報
【文献】特開2011-224780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている液体吐出装置では、ノズルに供給するインクの温度調整については考慮されているものの、ノズル開口面の加湿については考慮されていない。一方、特許文献2に開示されている液体吐出装置では、ノズル開口面の加湿については考慮されているものの、ノズルに供給するインクの温度調整については考慮されていない。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ノズルに供給する液体の温度を調整しつつ、ノズル開口面を加湿することができる液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に従えば、第1ノズル、及び第2ノズルが形成されたノズルプレートであって、前記第1ノズル及び前記第2ノズルが開口するノズル面を有するノズルプレートと、前記ノズルプレートに対して、前記ノズル面方向と直交する第1方向に重ねられた流路基板であって、前記第1ノズルと連通する第1流路、及び前記第2ノズルと連通し前記第1流路とは連通しない第2流路が形成された流路基板と、前記流路基板に対して前記第1方向に重ねられた圧電アクチュエータであって、前記第1流路と少なくとも部分的に前記第1方向に重なり、前記第1流路内の第1液体に吐出エネルギーを付与して前記第1液体を前記第1ノズルから吐出させる圧電アクチュエータと、前記第1流路に連通し、前記第1流路及び前記第1ノズルに前記第1液体を供給する第1液体供給部と、第2液体を貯留するタンクと、前記タンク及び前記第2流路に接続され、前記タンクから前記第2流路に供給される前記第2液体が通過する供給流路と、前記タンク及び前記第2流路に接続され、前記第2流路から前記タンクに回収される前記第2液体が通過する回収流路と、前記供給流路及び前記回収流路の少なくとも一方に設けられ、前記タンクと前記第2流路との間で前記第2液体を循環させる循環ポンプとを備える液体吐出装置が提供される。
【0008】
本発明の第2の態様に従えば、液体吐出装置のメンテナンス方法であって、前記液体吐出装置は、第1ノズル、及び第2ノズルが形成されたノズルプレートであって、前記第1ノズル及び前記第2ノズルが開口するノズル面を有するノズルプレートと、前記ノズルプレートに対して、前記ノズル面方向と直交する第1方向に重ねられた流路基板であって、前記第1ノズルと連通する第1流路、及び前記第2ノズルと連通し前記第1流路とは連通しない第2流路が形成された流路基板と、前記流路基板に対して前記第1方向に重ねられた圧電アクチュエータであって、前記第1流路と少なくとも部分的に前記第1方向に重なり、前記第1流路内の第1液体に吐出エネルギーを付与して前記第1液体を前記第1ノズルから吐出させる圧電アクチュエータと、前記第1流路に連通し、前記第1流路及び前記第1ノズルに前記第1液体を供給する第1液体供給部と、第2液体を貯留するタンクと、前記タンク及び前記第2流路に接続され、前記タンクから前記第2流路に供給される前記第2液体が通過する供給流路と、前記タンク及び前記第2流路に接続され、前記第2流路から前記タンクに回収される前記第2液体が通過する回収流路と、前記供給流路及び前記回収流路の少なくとも一方に設けられ、前記タンクと前記第2流路との間で前記第2液体を循環させる循環ポンプと、前記供給流路及び前記回収流路の少なくとも一方に設けられたバルブと、前記ノズル面と対向する底面と、前記底面から前記ノズル面に向かって前記第1方向に突出するリップ部とを有し、前記底面と前記リップ部とによって前記第1ノズルの第1開口及び前記第2ノズルの第2開口を共通に覆うキャップと、前記キャップに接続された吸引ポンプとを備え、前記液体吐出装置のメンテナンス方法は、前記キャップの前記リップ部を前記ノズル面に密着させて、前記第1開口及び前記第2開口を前記キャップで覆うことと、前記第1開口及び前記第2開口を前記キャップで覆った後、前記バルブを開いた状態で、前記循環ポンプを駆動して、前記タンクと前記第2流路との間で前記第2液体を循環させることと、前記循環ポンプを停止し、前記バルブを閉じることと、前記第1開口及び前記第2開口を前記キャップで覆った状態で、前記吸引ポンプを駆動して、前記第1開口から前記第1ノズル内の前記第1液体を吸引することと、前記第1開口及び前記第2開口を前記キャップで覆った状態で、前記吸引ポンプを停止し、前記バルブを開き、前記循環ポンプを駆動することと、前記バルブを開き、前記循環ポンプを駆動した後に、前記キャップのリップ部を前記ノズル面から離隔して、前記第1開口及び前記第2開口を前記キャップから開放することとを含む液体吐出装置のメンテナンス方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
【
図2】インクジェットプリンタの電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【
図6】インクジェットヘッドのメンテナンス処理を示すフローチャートである。
【
図7】インクジェットヘッドの変形例の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<インクジェットプリンタ1の概略構成>
本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ1の概略構成について説明する。インクジェットプリンタ1は液体吐出装置の一例である。このプリンタ1は、
図1に示す姿勢で使用される。そして、プリンタ1は、プラテン2、キャリッジ3、インクジェットヘッド4、4つのタンク装着部5、給紙ローラ6、排紙ローラ7、パージ装置8、フラッシング受け9、加湿温調ユニット10、及びコントローラ100等を備えている。尚、以下では、
図1の紙面手前側をプリンタ1の「上方」、紙面向こう側をプリンタ1の「下方」と定義する。また、
図1に示す前後方向及び左右方向を、プリンタ1の「前後方向」及び「左右方向」と定義する。以下、前後、左右、上下の各方向語を適宜使用して説明する。また、以下では「左右方向」を「走査方向」とも呼び、後から前に向かう方向を「搬送方向」とも呼ぶ。
【0011】
プラテン2の上面には、記録媒体である用紙Pが載置される。また、プラテン2の上方には、左右方向に平行に延びる2本のガイドレール15,16が設けられる。
【0012】
キャリッジ3は、2本のガイドレール15,16に取り付けられ、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール15,16に沿って左右方向に移動可能である。また、キャリッジ3には、駆動ベルト17が取り付けられている。駆動ベルト17は、2つのプーリ18,19に巻き掛けられた無端状のベルトである。一方のプーリ18は
図2に示すキャリッジ駆動モータ20に連結されている。キャリッジ駆動モータ20によってプーリ18が回転駆動されることで駆動ベルト17が走行し、これにより、キャリッジ3が左右方向に往復移動する。また、このとき、キャリッジ3上に搭載されたインクジェットヘッド4は、このキャリッジ3とともに左右方向に往復移動する。
【0013】
4つのタンク装着部5は、キャリッジ3及びインクジェットヘッド4よりも前方において、左右方向に並んで配置されている。各タンク装着部5には、インクタンク30が着脱可能に装着される。4つのタンク装着部5に装着される4つのインクタンク30には、それぞれ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが貯溜されている。各インクは第1液体の一例である。
【0014】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ3に搭載されている。インクジェットヘッド4は、ヘッド本体13と、バッファタンク14とを有する。バッファタンク14にはチューブジョイント21が一体的に設けられている。そして、チューブジョイント21には、4本の供給チューブ22それぞれの一端が着脱可能に接続されている。4本の供給チューブ22それぞれの他端は、4つのタンク装着部5にそれぞれ接続されている。4つのタンク装着部5に装着された4つのインクタンク30内のインクは、供給チューブ22を経て、バッファタンク14に供給される。
【0015】
ヘッド本体13は、バッファタンク14の下部に取り付けられている。ヘッド本体13は、流路ユニット44と圧電アクチュエータ45とを有する。流路ユニット44には、複数のノズル46を含む内部流路が形成されている。
図3に示すように、複数のノズル46は、流路ユニット44の下面であるノズル面44aにおいて開口している。各ノズル46は、第1ノズルの一例である。内部流路は、バッファタンク14と連通している。バッファタンク14から内部流路を介して供給されたインクが、複数のノズル46から吐出される。複数のノズル46は、ノズル面44aにおいて、左右方向に並ぶ4列のノズル列47を形成する。各ノズル列47は、前後方向に沿って形成されている。4列のノズル列47からは、最も右側のノズル列47から順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。圧電アクチュエータ45は、各ノズル46に連通する圧力室76(
図3参照)の容量を変化させることにより、各ノズル46内のインクに個別に、吐出エネルギーを付与する。圧電アクチュエータ45の構成については後述する。
【0016】
また、インクジェットヘッド4は、タンク装着部5に装着されたインクタンク30よりも、上方に配置されている。これにより、ノズル46内のインクと、インクタンク30内のインクの液面との間に水頭差が生じ、ノズル46内のインクにインクタンク30側への負圧が付与される。その結果、印刷が行われていないときに、ノズル46から、インクが吐出されるのを防止することができる。
【0017】
給紙ローラ6と排紙ローラ7は、
図2に示される搬送モータ29によってそれぞれ同期して回転駆動される。給紙ローラ6と排紙ローラ7は協働して、プラテン2に載置された用紙Pを搬送方向に搬送する。
【0018】
そして、プリンタ1は、給紙ローラ6と排紙ローラ7によって用紙Pを搬送方向に搬送する動作と、キャリッジ3とともにインクジェットヘッド4を左右方向に移動させながらインクを吐出させる吐出動作とを交互に繰り返し行うことにより、用紙Pに所望の画像等を印刷する。即ち、本実施形態のプリンタ1は、シリアル式のインクジェットプリンタである。
【0019】
フラッシング受け9は、プラテン2の左側に配置されている。キャリッジ3を移動させてインクジェットヘッド4をフラッシング位置に位置付けたとき、複数のノズル46が、フラッシング受け9と上下に対向する。プリンタ1は、インクジェットヘッド4をフラッシング位置に位置付けた状態で、インクジェットヘッド4のアクチュエータ45を駆動する。このとき、ノズル46からフラッシング受け9に向けて、増粘したインク等が排出される。つまり、フラッシングが行われる。
【0020】
パージ装置8は、ノズル46の吐出性が低下するのを抑制し、吐出性を回復させるための、メンテナンス動作を行う。パージ装置8は、キャップユニット50、吸引ポンプ51、及び廃液タンク52等を備えている。
【0021】
キャップユニット50は、プラテン2の右側に配置されている。キャリッジ3がプラテン2の右側に移動したときには、複数のノズル46がキャップユニット50と上下に対向する。また、キャップユニット50は、
図2に示されるキャップ昇降モータ53により駆動されて、上下方向に昇降可能である。キャップユニット50は、インクジェットヘッド4に接触した状態で装着される、キャップ55を備えている。キャップ55は、例えばゴム材料によって構成されている。キャップ55は、略矩形状の底面55aと、底面55aの周縁に沿って底面55aから上方に突出するリップ部55bとから構成される。
【0022】
キャリッジ3がプラテン2の右側に移動してインクジェットヘッド4がキャップユニット50と対向した状態では、キャップ55がヘッド本体13の下面であるノズル面44aと対向する。この状態で、キャップ昇降モータ53を駆動することにより、キャップユニット50は、インクジェットヘッド4よりも下方の離間位置からインクジェットヘッド4と接触するキャッピング位置まで上昇し、インクジェットヘッド4に装着される。このとき、キャップ55により、4列のノズル列47に属する全てのノズル46と、後述する全ての加湿用ノズル150が共通に覆われる。また、キャップ55は、ロータリーポンプである吸引ポンプ51に接続されている。
【0023】
複数のノズル46がキャップ55で覆われた状態で、コントローラ100が吸引ポンプ51を駆動することにより、キャップ55内を減圧して複数のノズル46からそれぞれインクを吸引する、吸引パージが行われる。吸引パージにより、ノズル46内で粘度が高くなったインクがノズル46から強制的に排出されて、ノズル46の吐出性を回復させることができる。吸引パージによって排出されたインクは、廃液タンク52に貯留される。
【0024】
なお、キャップユニット50は、インクジェットヘッド4が使用されない場合等にも、ノズル46内のインクが乾燥するのを防ぐためにインクジェットヘッド4に装着される。
【0025】
加湿温調ユニット10は、ノズル46が長時間キャップ55によって覆われることによりノズル46の開口付近のインクが乾燥するのを防ぐため、キャップ55とヘッド本体13の下面によって形成される空間を加湿する。また、加湿温調ユニット10は、ノズル46に供給されるインクの温度調節を行う。加湿温調ユニット10は、供給チューブ121、回収チューブ122、循環機構123、バルブ124、及び循環液タンク125等を備えている。
【0026】
コントローラ100は、
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)104等を含む。ROM102には、CPU101が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAM103には、印刷データ等、プログラム実行時に必要なデータが一時的に記憶される。ASIC104は、インクジェットヘッド4、キャリッジ駆動モータ20等、プリンタ1の様々な装置あるいは駆動部と接続されている。また、ASIC104は、通信インターフェース110を介してPC等の外部装置200と接続されている。さらに、ASIC105には、USBインターフェース111が接続されている。USBメモリ250に記憶されているプログラム250a等は、USBインターフェース111を介して、コントローラ100にインストールされる。
【0027】
CPU101は、外部装置200から受信した印刷指示に基づいて、インクジェットヘッド4やキャリッジ駆動モータ20等を制御し、用紙Pに画像等を印刷する印刷処理を実行する。また、CPU101は、インクジェットヘッド4のノズル46からインクを排出させる排出処理を実行する。排出処理には、パージ装置9による吸引パージや、インクジェットヘッド4のアクチュエータ45によるフラッシングが含まれる。
【0028】
尚、上記の説明では、コントローラ100が行う各種処理は、CPU101が行うものとして説明したが、CPU101と、ASIC104との協動により行ってもよい。また、コントローラ100が複数のCPU101を備え、複数のCPU101によって処理を分担して行ってもよい。また、コントローラ100が複数のASIC104を備え、複数のASIC104によって処理を分担してもよい。あるいは、1つのASIC104が単独で処理を行ってもよい。
【0029】
<インクジェットヘッド4の構成>
次に、
図3~5を参照しつつ、インクジェットヘッド4の構成について説明する。インクジェットヘッド4は、ノズル46を含む流路ユニット44と、流路ユニット44の上面に接合される圧電アクチュエータ45とを備える。流路ユニット44は、
図3に示すように、ノズル46が形成されたノズルプレート61と、流路構造体62とを有する。流路構造体62は流路基板の一例である。流路構造体62の下面には、ノズルプレート61が接合されている。また、圧電アクチュエータ45が流路構造体62の上面に接続されている。なお、流路構造体62の上面は、流路ユニット44の上面でもある。また、ノズルプレート61の下面はノズル面44aである。
【0030】
ノズルプレート61は、ポリイミド樹脂等の樹脂材料で形成されている。流路構造体62は、圧力室プレート71、キャビティプレート72及びマニホールドプレート73を備えている。圧力室プレート71、キャビティプレート72及びマニホールドプレート73は、ステンレス鋼等の金属から成る。また、圧力室プレート71、キャビティプレート72及びマニホールドプレート73は、上下方向に積層状態でそれぞれ接合されている。
【0031】
圧力室プレート71は、左右方向に延びる圧力室76を備えている。圧力室プレート71には、圧力室プレート71を貫通する圧力室76が形成されている。キャビティプレート72には、キャビティプレート72を貫通するアパーチャー75と、貫通孔77aとが形成されている。マニホールドプレート73には、マニホールド74と貫通孔77bとが形成されている。マニホールド74は、
図3に示すように、上下方向において圧力室76の下方に配置されている。また、マニホールド74は、キャビティプレート72に形成されるアパーチャー75を通じて、圧力室76と連通されている。貫通孔77aは、マニホールドプレート73に形成される貫通孔77bとともに、ディセンダ77を構成する。
【0032】
以上のように、流路構造体62には、マニホールド74、アパーチャー75、圧力室76、及びディセンダ77からなり、複数のノズル46とそれぞれ連通するインク流路78が形成されている。
【0033】
圧電アクチュエータ45は、
図3に示すように、圧力室プレート71の上面に接合されている。圧電アクチュエータ45は、複数枚の圧電層81、複数の個別電極82、共通電極83及び振動板84により構成されている。複数枚の圧電層81は上下方向に積層状態で接合されている。また、複数の個別電極82と共通電極83とが、圧電層81に配置されている。個別電極82は、圧電アクチュエータ45の上面に露出する端子85と繋がっている。
【0034】
圧電層81は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であり、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなる。振動板84も同様に圧電材料で形成されている。ただし、振動板84は、上下方向において個別電極82と共通電極83とに挟まれておらず、上下方向への電界は振動板84に発生しない。
【0035】
流路ユニット44は、
図4に示すように、複数の圧力室76が前後方向に並んで圧力室列を構成しており、複数の圧力室列は、左右方向に並んで配置されている。また、マニホールド74が、複数の圧力室76と重なるように前後方向に延在している。流路構造体62は、インク供給口79を有しており、インク供給口79はマニホールド74と連通している。また、インク供給口79は、供給チューブ22を介してインクタンク30と連通する。
【0036】
圧電アクチュエータ45は、
図4に示すように、前後方向に並ぶ複数の個別電極82を有している。複数の個別電極82は、平面視で複数の圧力室76に対応して配置されている。個別電極82は、圧力室76よりも一回り小さい略楕円形状をしており、平面視で圧力室76の中央に配置されている。また、端子85が個別電極82の先端部82aに設けられている。端子85は、図示しないフレキシブルプリント基板等の配線部材に接続されている。フレキシブルプリント基板は、図示しない印刷制御回路とも接続されており、印刷制御回路と個別電極82とを繋いでいる。印刷制御回路は、複数の個別電極82に対して、選択した個別電極82のみに所定の駆動電圧を付与する。なお、印刷制御回路は、プリンタ1に関する印刷動作全ての制御を司る。
【0037】
以上の構成を有する圧電アクチュエータ45の動作原理について説明する。共通電極83は、圧電アクチュエータ45の図示しないアース端子と繋がれており、グランド電位に維持される。電圧が印加されていない個別電極82は、共通電極83との間で電位差が無い。そして、個別電極82に所定の駆動電圧が付与されると、個別電極82と共通電極83との間には電位差が生じる。個別電極82と共通電極83との間に電位差が生じると、上下方向の電界が圧電層81に発生する。圧電層81の分極方向と電界の向きとが等しい場合には、圧電層81は上下方向に伸び、上下方向と直交する左右方向に収縮する。この圧電層81の収縮変形に伴って、振動板84が上下方向において凸変形する。つまり、ユニモルフ変形が生じる。
【0038】
次に、インクジェットヘッド4がインクを吐出する際の、圧電アクチュエータ45の動作について説明する。圧電アクチュエータ45は、インクジェットヘッド4がインクを吐出しない状態では、個別電極82に駆動電圧が付与され続ける。このため、圧電層81及び振動板84は、圧力室76側の下方向に凸変形した状態で維持される。そして、インクを吐出するときには、印刷制御回路は、個別電極82への駆動電圧の付与を停止し、それに伴って、個別電極82がグランド電位となる。個別電極82がグランド電位となったとき、振動板84が前記凸変形した状態から平面形状に変形して圧力室76内の容積が増大し、圧力室76内に圧力波が発生する。圧力波は、左右方向において圧力室76の一方の方向に伝播する。伝播した圧力波は、所定時間経過後に圧力室76の内壁と衝突し、位相が逆転する。圧力室76内の圧力は、圧力波の位相の逆転により、負の圧力から正の圧力に変わる。そこで、印刷制御回路は、圧力室76内の圧力が正になるタイミングで再び個別電極82へ駆動電位を付与する。圧力室76の容積増大により発生する圧力波と、振動板84が圧力室76側に凸変形する際に生じる圧力波とが合成され、この合成された圧力波が圧力室76内のインクに吐出エネルギーとして付与されて、インクが吐出される。このように、2つの圧力波を合成して圧力室76内のインクに付与することができるので、1つの圧力波を圧力室76内のインクに付与する場合に比べ、非常に大きな圧力を付与できる。
【0039】
<加湿温調ユニット10の構成>
次に、加湿温調ユニット10の構成について、
図3~
図5を参照しつつ説明する。
図3及び
図4に示すように、加湿温調ユニット10は、マニホールドプレート73に形成された循環路140と、循環路140に形成された供給口142及び排出口143と、ノズルプレート61に形成され、循環路140に連通する加湿用ノズル150と、循環機構123と、一端が供給口142、他端が循環機構123と繋がる供給チューブ121と、一端が排出口143、他端が循環機構123と繋がる回収チューブ122と、供給チューブ121に設けられたバルブ124a及び回収チューブ122に設けられたバルブ124bと、循環機構123に接続された循環液タンク125とを備える。加湿用ノズル150は、第2ノズルの一例である。
【0040】
図3に示すように、マニホールドプレート73には、貫通孔140aが形成されている。そして、マニホールドプレート73の貫通孔140aが、マニホールドプレート73の上面に接合されるキャビティプレート72、及びマニホールドプレート73の下面に接合されるノズルプレート61によって塞がれることにより、循環路140が形成されている。なお、循環路140は、インク流路78とは連通していない。また、ノズルプレート61の、貫通孔140aと対向する位置には、ノズルプレート61を貫通する加湿用ノズル150が形成されている。つまり、循環路140は加湿用ノズル150と連通している。
【0041】
図4に示すように、循環路140は、流路構造体62の最外端部と圧電アクチュエータ45の最外端部との間に、前後及び左右方向に延在して配置されている。また、
図4及び
図5に示すように、複数の加湿用ノズル150は、循環路140と重なるように、前後及び左右方向に等間隔に配置されている。つまり、複数の加湿用ノズル150は、循環路140における、供給口142と排出口143との間の部分と連通している。また、キャップユニット50がインクジェットヘッド4に装着された状態では、ノズルプレート61に形成された全てのノズル46及び全ての加湿用ノズル150は、キャップ55の底面55a及びリップ部55bによって共通に覆われる。つまり、
図5に示されるように、ノズル面44aにおいて、複数の加湿用ノズル150は、全てのノズル46に対して、左側、後側、及び右側を囲むように開口している。そして、全てのノズル46及び全ての加湿用ノズル150は、ノズル面44aにおいて、キャップ55のリップ部55bが接触する領域の内側に開口している。
【0042】
循環液タンク125には、第2液体の一例である循環液が貯留されている。循環液は、インクジェットヘッド4内のインクの温度を調整するとともに、キャップユニット50がインクジェットヘッド4に装着される場合に、複数の加湿用ノズル150に保持されることによりノズル面44aの湿度を高めるための液体である。循環液としては、例えば、純水やインクの溶媒などを用いることができる。ノズル面44aを加湿する観点から、循環液には、インクの揮発成分を一種類以上含むことが望ましい。
【0043】
循環機構123は、循環ポンプ126と、温度調整部127と、温度センサ128と、循環制御回路129とを主に備えている。循環ポンプ126は、循環液タンク125に貯留された循環液を供給口142に供給するとともに、排出口143から排出された循環液を循環液タンク125に回収する。温度調整部127は、循環液を熱するヒータと、循環液を冷却するクーラーとを備える。循環液を熱するヒータとしては、例えば、電気ヒータを用いることができる。また、循環液を冷却するクーラーとしては、例えば、ラジエータやファンを用いることができる。温度センサ128は、インクジェットヘッド4に搭載されており、インクジェットヘッド4の温度を計測する。循環制御回路129は、循環ポンプ126、温度調整部127及び温度センサ128と接続されている。
【0044】
ここで、循環制御回路129による制御動作について説明する。循環制御回路129は、温度センサ128により計測されたインクジェットヘッド4の温度に基づいて、インクジェットヘッド4内のインクの温度を推定する。そして、循環制御回路129は、インクの温度が所望の温度よりも低いと判断した場合には、温度調整部127に備えられたヒータを作動させて、循環液を加熱する。循環制御回路129は、加熱された循環液を循環路140に流すため、循環ポンプ126を駆動させる。これにより、加熱された循環液は循環路140内を流れ、インクジェットヘッド4内のインクを温める。
【0045】
また、循環制御回路129は、インクの温度が所望の温度よりも高いと判断した場合には、温度調整部127に備えられたクーラーを作動させて、循環液を冷却する。循環制御回路129は、冷却された循環液を循環路140に流すため、循環ポンプ126を駆動させる。これにより、冷却された循環液が循環路140内を流れ、インクジェットヘッド4内のインクを冷却する。
【0046】
ここで、循環路140は複数の加湿用ノズル150と連通している。このため、循環路140を流れる循環液は、複数の加湿用ノズル150に流入する。そこで、本実施形態において、各加湿用ノズル150の開口の径は、循環液の表面張力や循環路140を流れる循環液の流速等を考慮し、当該加湿用ノズル150に流入した循環液が当該加湿用ノズル150の開口からは漏れない程度の大きさに設計されている。このため、各加湿用ノズル150に流入した循環液は、加湿用ノズル150の開口から滴下することなく、加湿用ノズル150に保持される。
【0047】
<印刷処理と温度調整処理との関係>
次に、本実施形態のインクジェットヘッド4の印刷動作と、循環機構123による温度調整処理との関係について説明する。循環制御回路129は、ユーザが、プリンタ1と接続されるPC等の外部装置200を操作したり、プリンタ1に設けられた印刷スイッチを押すことにより、印刷制御回路129が印刷指令を受け付けたときには、循環ポンプ126や温度調整部127を駆動して、印刷実行前にインクの温度の調整を行う。具体的には、循環制御回路129は、印刷指令を受けた後、温度センサ128が計測する温度を確認し、確認時点でのインクの温度と所望の温度とを比較する。確認時点でのインクの温度が所望の温度に対して低いと判断した場合には、循環制御回路129は、温度調整部127により循環液を加熱し、加熱された循環液を循環ポンプ126により循環路140に供給する。循環液を循環路140に供給している間、循環制御回路129は、インクジェットヘッド4内のインクの温度を確認する。インクの温度が所望の温度となったことを確認したときには、循環制御回路129は、循環ポンプ126を停止させるとともに、温度調整部127も停止させる。その後、循環制御回路129がコントローラ100に温度調整終了の信号を入力すると、コントローラ100は、インクジェットヘッド4を駆動して印刷処理を実行する。
【0048】
また、循環制御回路129は、温度センサ128が計測する温度が所望の温度に対して高いと判断した場合には、温度調整部127により循環液を冷却して、冷却された循環液を循環ポンプ126により循環路140に供給する。そして、循環制御回路129は、インクの温度が所望の温度となったことを確認したとき、循環ポンプ126を停止するとともに、温度調整部127も停止する。その後、循環制御回路129がコントローラ100に温度調整終了の信号を入力すると、コントローラ100は、インクジェットヘッド4を駆動して印刷処理を実行する。
【0049】
<メンテナンス処理>
次に、
図6を参照しつつ、メンテナンス処理の流れについて説明する。メンテナンス処理とは、例えば、インクジェットプリンタ1の電源がONにされた場合や、インクジェットヘッド4が最後に印刷処理を実行してから所定時間が経過した場合等に行われる処理であり、前述した吸引パージやフラッシングを含む。本実施形態において、インクジェットプリンタ1の電源がOFFにされている状態、及び、インクジェットプリンタ1の電源がONであり且つインクジェットヘッド4が印刷処理を実行していない状態では、キャップユニット50がインクジェットヘッド4に装着されている。
【0050】
まず、インクジェットプリンタ1の電源がONの状態にされると、コントローラ100は、バルブ124a,124bを開くとともに、循環機構123を制御して循環液を循環路140に循環させる(ステップS10)。
【0051】
次に、コントローラ100は、吸引パージを実行するための所定の条件が満たされたか判断する(ステップS20)。ここで、吸引パージを実行するための所定の条件が満たされる場合とは、例えば、インクジェットプリンタ1の入力部を介して、コントローラ100が、ユーザからのメンテナンス処理実行指示を受け付けた場合や、インクジェットヘッド4が最後に印刷処理を実行してから所定時間が経過した場合等を意味する。
【0052】
吸引パージを実行するための所定の条件が満たされていないと判断した場合(ステップS20:No)、コントローラ100は所定の条件が満たされるまで待機する。一方、吸引パージを実行するための所定の条件が満たされたと判断した場合(ステップS20:Yes)、コントローラ100は、バルブ124a,124bを閉じるとともに、循環機構123を制御して循環液の循環を停止する(ステップS30)。
【0053】
次に、コントローラ100は、吸引ポンプ51を駆動して、吸引パージを実行する(ステップS40)。吸引ポンプ51の駆動を停止して吸引パージを終了すると、コントローラ100は、バルブ124a,124bを開くとともに、循環機構123を制御して循環液の循環を再開する(ステップS50)。その後、コントローラ100は、キャップ昇降モータ53を駆動してキャップ55を下降させることにより、キャップ55をノズル面44aから引き離し、ノズル面44aを大気に開放する。コントローラ100は、キャップ55がノズル面44aから引き離された状態で、再び吸引ポンプ51を駆動し、吸引パージによってキャップ55内に排出されたインクを吸引する。つまり、空吸引を実行する(ステップS60)。
【0054】
空吸引が終了すると、コントローラ100は、キャリッジ駆動モータ20を駆動してキャリッジ3を走査方向に移動させることにより、図示しないワイパによりノズル面44aをワイプする。そして、コントローラ100は、キャリッジ駆動モータ20をさらに駆動してキャリッジ3を走査方向に移動させることにより、インクジェットヘッド4をフラッシング位置に位置付けて、フラッシングを実行する。フラッシングを実行した後、コントローラ100は、再びキャリッジ駆動モータ20を駆動して、インクジェットヘッド4がキャップユニット50と対向する位置までキャリッジ3を移動させ、キャップ昇降モータ53を駆動して、キャップユニット50をキャッピング位置に移動させる(ステップS80)。そして、コントローラ100は、吸引パージを実行するための条件が満たされるまで、待機する。
【0055】
以上説明してきた実施形態によれば、温度調整された循環液を、流路ユニット44に形成された循環路140に流すことにより、インクジェットヘッド4内のインクの温度を適切に調整することができる。また、循環路140は、複数の加湿用ノズル150とも連通しており、循環路140を流れる循環液は、複数の加湿用ノズル150に流入する。ここで、各加湿用ノズル150の開口の径は、循環液の表面張力や循環路140を流れる循環液の流速等を考慮し、当該加湿用ノズル150に流入した循環液が当該加湿用ノズル150の開口からは漏れない程度の大きさに設計されている。このため、各加湿用ノズル150に流入した循環液は、加湿用ノズル150の開口から滴下することなく、加湿用ノズル150に保持される。このため、インクジェットヘッド4にキャップユニット50が装着された状態であっても、加湿用ノズル150に保持された循環液により、ノズル面44aとキャップ55の内面とで形成された空間を加湿することができる。つまり、循環液を、インクの温度を調整するためだけでなく、ノズル面44aとキャップ55の内面とで形成された空間を加湿するためにも使用することができる。また、循環路140に複数の加湿用ノズル150を連通させた簡易な構成の流路を、インクの温度を調整するためだけでなく、ノズル面44aとキャップ55の内面とで形成された空間を加湿するためにも使用することができる。
【0056】
インクジェットヘッド4にキャップユニット50が装着された状態では、キャップ55のリップ部55bがノズル面44aに接触しているが、キャップ55はゴム材料により構成されているため、密閉性は完全ではない。このため、ノズル46がキャップ55で長期間覆われる場合、リップ部55bに近い側に配置されているノズル46ほど乾燥し易い。そこで、本実施形態では、複数の加湿用ノズル150の開口は、最も右側のノズル列47よりも右側、最も左側のノズル列47よりも左側、及び最も後側に配置されたノズル46よりも後側に配置されている。これにより、ノズル46がキャップ55で長期間覆われる場合であっても、リップ部55bに近い側に配置されたノズル46の乾燥を防ぐことができる。
【0057】
本実施形態において、複数の加湿用ノズル150の開口は、全てのノズル46の開口を囲むように配置されている。そして、全てのノズル46及び全ての加湿用ノズル150は、ノズル面44aにおいて、キャップ55のリップ部55bが接触する領域の内側に開口している。このため、キャップユニット50がインクジェットヘッド4に装着された状態では、全てのノズル46及び全ての加湿用ノズル150が、キャップ55により共通に覆われる。この状態で吸引パージを行うと、ノズル46内の粘度が高くなったインクがノズル46から排出されるだけでなく、排出する必要のない循環液も加湿用ノズル150から排出される。そこで、本実施形態では、加湿温調ユニット10の供給チューブ121及び回収チューブ122にそれぞれ、バルブ124a及びバルブ124bが設けられている。そして、本実施形態のメンテナンス処理では、吸引パージ(ステップS40)を行う前に、バルブ124a,124bを閉じるとともに、循環機構123を制御して循環液の循環を停止する(ステップS30)。これにより、吸引パージ時の循環液の排出を抑えることができる。
【0058】
また、吸引パージが終了した時点では、キャップ55で覆われた空間は負圧となっており、キャップ55をノズル面44aから引き離すことにより、ノズル面44aは大気に開放される。このとき、吸引パージによってノズル面44aに付着したインクが、加湿用ノズル150に流入する可能性がある。そこで、本実施形態のメンテナンス処理では、吸引パージが終了した後、バルブ124a,124bを開き循環液の循環を再開してから(ステップS50)、キャップ55をノズル面44aから引き離し、ノズル面44aを開放する(ステップS60)。ノズル面44aを開放する際、循環路140には循環液が既に流れているので、ノズル面44aに付着したインクが加湿用ノズル150に流入するのを防ぐことができる。
【0059】
<変形例>
以上説明した実施形態では、複数の加湿用ノズル150は、全てのノズル46に対して、左側、後側、及び右側を囲むように、循環路140に沿って開口していた。そして、ノズル面44aに対して垂直な方向から見た場合、全てのノズル46の開口、全ての加湿用ノズル150の開口、及び循環路140は、キャップ55のリップ部55bが接触する矩形領域の内側に配置されていた。しかし、これに限られない。例えば、マニホールド74の、インク供給口79に近い部分と連通しているノズル46と比べると、インク供給口79から遠い部分と連通しているノズル46は乾燥し易い。つまり、搬送方向下流側のノズル46よりも、搬送方向上流側のノズル46の方が乾燥し易い。そこで、複数の加湿用ノズル150は、
図7に示すように、全てのノズル46に対して搬送方向上流側にのみ開口していてもよい。この場合、循環路140の左側及び右側と重なる位置には加湿用ノズル150が開口していないので、キャップ55の走査方向の幅を小さくしても、全てのノズル46及び複数の加湿用ノズル150をキャップ55で共通に覆うことができる。
【0060】
また、以上説明した実施形態では、複数の加湿用ノズル150は前後及び左右方向に等間隔に配置されていたが、これには限られない。例えば、ノズル46が乾燥し易い搬送方向上流側は、搬送方向下流側よりも、加湿用ノズル150の間隔が密になっていてもよい。
【0061】
以上説明した実施形態及び変形例は、本発明を、記録用紙にインクを吐出して画像等を印刷するインクジェットヘッドに適用したものであるが、画像等の印刷以外の様々な用途で使用される液体吐出装置にも本発明は適用されうる。例えば、基板に導電性の液体を吐出して、基板表面に導電パターンを形成する液体吐出装置にも、本発明を適用することは可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 インクジェットプリンタ
4 インクジェットヘッド
8 パージ装置
10 加湿温調ユニット
50 キャップユニット
55 キャップ
78 インク流路
121 供給チューブ
122 回収チューブ
123 循環機構
124 バルブ
125 循環液タンク
140 循環路
150 加湿用ノズル