(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】個室空間の環境制御システム
(51)【国際特許分類】
H05B 47/105 20200101AFI20221206BHJP
H05B 47/175 20200101ALI20221206BHJP
H04N 9/64 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H05B47/105
H05B47/175
H04N9/64 F
(21)【出願番号】P 2018184093
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早田 哲弘
(72)【発明者】
【氏名】高尾 綾
(72)【発明者】
【氏名】木塚 里子
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雄太
(72)【発明者】
【氏名】松井 春奈
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 俊洲
(72)【発明者】
【氏名】永石 昌之
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-334283(JP,A)
【文献】特開2018-056012(JP,A)
【文献】特開2009-000207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/00
H04N 9/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個室空間内に設置され、該個室空間内の照度または色温度を変更可能な照明装置と、
前記個室空間内に映像を出力する映像出力装置と、
前記照明装置及び前記映像出力装置に制御指示を送信可能な通信装置を備えた制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
前記照明装置の照度または色温度を変更することで前記個室空間内の照度または色温度を低下させる照明リラックス制御、及び前記映像出力装置により第1の映像を出力する映像リラックス制御を実行した後、前記照明装置の照度または色温度を変更することで前記個室空間内の照度または色温度を上昇させる照明覚醒制御、及び前記映像出力装置により第1の映像とは異なる第2の映像を出力する映像覚醒制御を実行する制御であるリフレッシュ制御を有
し、
前記個室空間は、該個室空間内の使用者による操作を受け付ける操作装置を備え、
前記制御装置は、前記照明リラックス制御、前記照明覚醒制御、前記映像リラックス制御及び前記映像覚醒制御に関する制御設定が記憶された記憶部を備え、
前記操作装置は、前記通信装置を介して前記記憶部に記憶された前記制御設定に基づく制御指示を前記照明装置及び前記映像出力装置に送信する第1の制御信号と、前記通信装置を介さずに前記操作装置に対する操作に基づく制御指示を前記照明装置または前記映像出力装置に送信する第2の制御信号とを生成することを特徴とする個室空間の環境制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記照明リラックス制御、前記照明覚醒制御、前記映像リラックス制御及び前記映像覚醒制御に関する制御設定が記憶された記憶部を備え、前記記憶部に記憶された制御設定は、更新可能であることを特徴とする請求項1に記載の個室空間の環境制御システム。
【請求項3】
制御装置は、個室空間の外部に設けられることを特徴とする請求項
2に記載の個室空間の環境制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個室空間の環境制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、仕事や職業生活に関して強い不安、悩み又はストレスを感じている労働者が5割を超える状況にある中、「ストレスへの対処法」が多くの人の関心事となっている。しかし、「ストレス対処法の実戦経験と意向」に関するアンケート結果を見てみると、実践してみたいという回答は50%を超えているのに対して、実践したことがあるという回答は僅か10%~20%に留まっていた。ストレス対処法を実践してみたいという意向がありながら実践したことがないという人達からは、特別な知識を身に着けることなく手軽に実践できるストレス対処法が欲しいという強い要望があった。
【0003】
これに対して、従来、使用者の緊張をほぐすリラックス制御を実行した後、使用者の意識の水準を高める覚醒制御を実行することで、特別な知識を身に着けることなく単に休憩をするだけよりも高いリフレッシュ効果を得ることで、ストレスを解消することが可能なストレス解消ルームが知られている(特許文献1、参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたストレス解消ルームは、精神的な緊張感を除去するような香りを発生する芳香発生装置と、内外の物音をマスキングするホワイトノイズ発生装置とを備えたリラックス誘導装置、及び、低温の風によって刺激を与える涼風吹き出し装置と、高照度の光により緊張感を与える高照度照明装置とを備えたリフレッシュ誘導装置を必要とする特殊な個室である。そのため、装置の導入に必要な金額や空間を考慮すると、手軽に実践できるストレス対処法が欲しいという使用者のニーズを満たすものではなかった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するものであり、特別な知識を身に着けることなく手軽にストレスを解消することが可能であり、且つシステム導入のハードルが低い個室空間の環境制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、第1の発明の態様に係る個室空間の環境制御システムは、個室空間内に設置され、その個室空間内の照度または色温度を変更可能な照明装置と、個室空間内に映像を出力する映像出力装置と、照明装置及び映像出力装置に制御指示を送信可能な通信装置を備えた制御装置と、を有し、制御装置は、照明装置の照度または色温度を変更することで個室空間内の照度または色温度を低下させる照明リラックス制御及び映像出力装置により第1の映像を出力する映像リラックス制御を実行した後、照明装置の照度または色温度を変更することで個室空間内の照度または色温度を上昇させる照明覚醒制御及び映像出力装置により第1の映像とは異なる第2の映像を出力する映像覚醒制御を実行する制御であるリフレッシュ制御を有し、個室空間は、該個室空間内の使用者による操作を受け付ける操作装置を備え、制御装置は、照明リラックス制御、照明覚醒制御、映像リラックス制御及び映像覚醒制御に関する制御設定が記憶された記憶部を備え、操作装置は、通信装置を介して記憶部に記憶された制御設定に基づく制御指示を照明装置及び映像出力装置に送信する第1の制御信号と、通信装置を介さずに操作装置に対する操作に基づく制御指示を照明装置または映像出力装置に送信する第2の制御信号とを生成する。
【0008】
個室空間内の照明装置を制御することで変更する照度または色温度に基づく視覚刺激は、大脳皮質を経由して大脳辺縁系に伝達されることで血圧を変動させ、自律神経に影響を及ぼす。また、個室空間内に出力する映像内容に基づく視覚刺激は、使用者の記憶や感性などの既存の脳内情報と結合して精神生理反応を引き起こすことで自律神経に影響を及ぼす。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、個室空間内に設置された照明装置に加え、個室空間内に映像を出力する映像出力装置を備えることで、照明と映像による異なる複数の視覚刺激を手軽に使用者に与えることが可能になる。そして、照明と映像によって使用者をリラックスさせる視覚刺激を与えた後、同様に照明と映像によって使用者を覚醒させる視覚刺激を与える制御であるリフレッシュ制御を実行することによって、単に休憩をするだけよりも高いリフレッシュ効果を使用者に与えることが可能となる。これによって、特別な知識を身に着けることなく手軽にストレスを解消することが可能であり、且つシステム導入のハードルが低い個室空間の環境制御システムを提供することができる。また、使用者は、記憶部に記憶された制御設定に基づく制御を実行する第1の制御信号を生成するか、操作装置に対する操作に基づく制御を実行する第2の制御信号を生成するかを操作装置に対する操作で決定することができる。そのため、記憶部に記憶された制御設定が使用者の好みに合う制御である場合、使用者は第1の制御信号を生成することでストレスを解消することが可能であり、使用者がその日の気分に合わせて記憶部に記憶された制御設定とは異なる制御を実行したい場合、使用者は第2の制御信号を生成することでストレスを解消することが可能となる。これによって、使用者にとって使い勝手が良く、手軽にストレスを解消することが可能な個室空間の環境制御システムを提供することができる。
【0010】
なお、本発明において記載している個室空間内の照度または色温度は、照明装置の鉛直下方向に存在する床面に照度計を配置し、その照度計の受光部を照明装置に向けることで計測している。
【0011】
第2の発明の態様に係る個室空間の環境制御システムは、第1の発明において、制御装置は、照明リラックス制御、照明覚醒制御、映像リラックス制御及び映像覚醒制御に関する制御設定が記憶された記憶部を備え、記憶部に記憶された制御設定は更新可能である。
【0012】
使用者のストレスを解消するために照明と映像による視覚刺激を利用している本発明において、単に休憩する場合に比べて高いリフレッシュ効果を、複数回の使用に亘って使用者に与え続けるためには、各制御による視覚刺激に対して使用者に慣れを感じさせないことが重要な課題となる。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、照明リラックス制御や照明覚醒制御を実行する際の照明装置の照度または色温度の設定や、映像リラックス制御や映像覚醒制御を実行する際に出力する映像の内容、各制御を実行する順番、又は各制御の実行期間の長さなどの制御設定を更新可能である。これによって、本発明によって実行される各制御による視覚刺激に対して使用者が慣れを感じてしまうおそれを低減することができ、複数回の使用に亘って単に休憩をする場合に比べて高いリフレッシュ効果を使用者に与えることが可能な個室空間の環境制御システムを提供することができる。
【0018】
第3の発明の態様に係る個室空間の環境制御システムは、第2の発明において、制御装置は、個室空間の外部に設けられる。
【0019】
本発明の第3の態様によれば、制御装置が個室空間の外部に設けられているため、制御装置のメンテナンスや記憶部に記憶された制御設定の更新のために、使用者またはシステムの管理者がいちいち個室空間に入る必要がなくなる。これによって、使用者にとってさらに使い勝手が良い個室空間の環境制御システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、特別な知識を身に着けることなく手軽にストレスを解消することが可能であり、且つシステム導入のハードルが低い個室空間の環境制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る個室空間の環境制御システムをブロック図で模式的に示した図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る個室空間の環境制御システムをブロック図で模式的に示した図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る個室空間の環境制御システムにおいて、制御装置が実行する制御の概念図を模式的に示した図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る個室空間の環境制御システムにおいて、制御装置が実行する制御の一例を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態に係る個室空間の環境制御システムにおいて、制御装置がリフレッシュ制御中に実行するリラックス制御の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態に係る個室空間の環境制御システムにおいて、制御装置がリフレッシュ制御中に実行する覚醒制御の一例を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施形態に係る個室空間の環境制御システムにおいて、制御装置が実行するリフレッシュ制御の一例を示すタイムチャートである。
【
図8】本発明に係る個室空間の環境制御システムの実証試験において、制御装置が実行するリフレッシュ制御に対する被験者の生理測定の結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下で説明する実施形態は、いずれも本開示の一実施形態を示すものである。以下の実施形態で示される構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などはあくまで一例であり、本発明を限定するものではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面において同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合がある。
【0023】
図1及び
図2は、本発明の実施形態に係る個室空間の環境制御システムをブロック図で模式的に示した図である。
図1は、本発明の実施形態に係る個室空間の環境制御システムの全ての構成を個室空間内に設けたものであり、
図2は、制御装置を個室空間の外部に設けた点で相違する。以下、
図1及び
図2を参照して、本発明の個室空間の環境制御システムが備える各構成について説明する。
【0024】
図1及び
図2に示すように、個室空間の環境制御システム100は、照明装置200と、映像出力装置300と、制御装置400とを有する。さらに、操作装置500と、使用者検知装置600とを有することが好ましい。
【0025】
照明装置200は、個室空間内に設置され、個室空間内の照度または色温度を変更可能な照明である。このために、照明装置200は、例えば、異なる照度または色温度に調光可能な単一のLEDや、異なる照度または色温度を有する複数のLEDなどの照明機器を備える。また、照明装置200は、個室空間の上方側に設けられる電球形状の照明機器に限られず、個室空間の壁面に設けられるパネル形状の照明機器であってもよい。なお、照明装置200は、個室空間内への単数の配置であってもよいが、複数設置することにより視覚的効果を得ることができる。
【0026】
映像出力装置300は、個室空間内に静止画または動画による映像を出力する装置である。このために、映像出力装置300は、例えば、個室空間内の壁面に取り付けられるLCD(液晶ディスプレイ)やOLED(有機ELディスプレイ)等の表示装置や、個室空間内に映像を投影するプロジェクタなどを備える。表示装置の表示面のサイズやプロジェクタにより投影する映像のサイズに制限はないが、使用者の視野全体に広がる大きなサイズとするとより視覚的効果を得ることができる。なお、映像出力装置300は出力する映像に関連する音を映像と共に出力してもよい。
【0027】
制御装置400は、照明装置200の照度または色温度、及び映像出力装置300が出力する静止画または動画による映像の出力を制御する装置である。制御装置400は、操作装置500に対する使用者による操作指示、又は使用者検知装置600による検知を起点とする自動操作に基づいて、照明装置200及び映像出力装置300を制御する。そのため、操作装置500から生成される制御信号、又は使用者検知装置600からの検知結果を受信する受信部と、照明装置200及び映像出力装置300に制御指示を送信する送信部とを備えた通信装置402を有する。
【0028】
また、制御装置400は、制御装置400が実行する各制御に関する設定が記憶されている記憶部404を有する。記憶部404には、具体的には、照明リラックス制御設定421、映像リラックス制御設定423、照明覚醒制御設定441、及び映像覚醒制御設定443が記憶されている。
【0029】
各制御に関する設定項目としては、照明装置200の照度または色温度や、映像出力装置300が出力する映像の内容、各制御の実行順序、各制御の実行期間の長さ等が挙げられる。また、これらの各制御に関する設定項目は、通信装置402を介して更新可能であることが好ましい。各制御に関する設定を定期的に更新することによって、本システムを複数回に亘って使用者が使用したとしても、本システムが実行する制御に伴う視覚刺激に使用者が慣れてしまうおそれを低減することが可能となる。これによって、毎回高いリフレッシュ効果を使用者に与えることが可能となる。このために、記憶部404は、例えば、不揮発性の半導体メモリや磁気ディスク、USBメモリ等の電磁的記録手段、クラウドコンピュータの記憶領域により実現される。
【0030】
そして、
図2に示したように、制御装置400は個室空間の外部に設けられることが好ましい。制御装置400が個室空間の外部に設けられることによって、制御装置400のメンテナンスや記憶部404に記憶された各制御設定の更新のために、使用者またはシステムの管理者がいちいち個室空間内に立ち入る必要がなくなる。
【0031】
操作装置500は、個室空間内の使用者によって生成される制御信号を受け付ける装置である。操作装置500が生成する制御信号は、制御装置400が備える通信装置402を介して照明装置200及び映像出力装置300に送信される第1の制御信号と、制御装置400が備える通信装置402を介さずに照明装置200または映像出力装置300に送信される第2の制御信号とを有する。このために、操作装置500は、例えば、制御装置400に対して無線接続されると共に、照明装置200または映像出力装置300に対して有線接続されることが好ましい。
【0032】
使用者検知装置600は、個室空間内の使用者を検知する装置である。使用者検知装置600は、個室空間内における使用者の有無などを検知したりする。このために、使用者検知装置600は、例えば、ドアセンサや人体検知センサなどを用いることができる。そのため、例えば、個室空間が浴室空間であれば、浴槽内の使用者の生体情報を検知する電極などを用いることも可能であり、個室空間がトイレ空間であれば、便座に対する着座を検知する着座検知センサなどを用いることも可能であり、個室空間が洗面空間であれば、洗面空間に入退室する使用者を検知するカメラなどを用いることも可能である。
【0033】
ドアセンサとしては、例えば、個室空間のドアにマグネットセンサや変位センサ、振動センサなどの検出手段を用いることができる。また、人体検知センサとしては、例えば、赤外線ラインセンサやマイクロ波センサなどの検出手段を用いることができる。
【0034】
図3は、本発明の実施形態に係る個室空間の環境制御システムにおいて、制御装置が実行する制御の概念図を模式的に示した図である。以下、
図3を参照しつつ、本発明の制御装置が実行するリフレッシュ制御について説明する。
【0035】
リフレッシュ制御460は、使用者を一度リラックス状態にするためにリラックス制御420を実行した直後に、使用者を再び集中して作業を行うことが可能な集中状態にするために覚醒制御440を実行する制御である。
【0036】
リラックス制御420は、照明装置200による照明リラックス制御422と、映像出力装置300による映像リラックス制御424と、照明リラックス制御422及び映像リラックス制御424を実行する期間を重複させる複合リラックス制御426とを備える。
【0037】
照明リラックス制御422は、照明装置200の照度を低照度に変更したり、色温度を暖色系などの低い色温度に変更したりすることで、個室空間内の使用者に与える視覚刺激を低下させる制御である。これによって、人の精神状態を副交感神経が優位なリラックス側へ導き生体を鎮静化させる。
【0038】
映像リラックス制御424は、アルファ波減衰試験(Alpha Attenuation Test:AAT)を行った際に、アルファ波の出現量が少なく、アルファ波の減衰が顕著に表れなかった映像(第1の映像)を映像出力装置300に出力させる制御である。これによって、人の精神状態を副交感神経が優位なリラックス側へ推移させる。
【0039】
なお、アルファ波減衰試験とは、閉眼安静時のアルファ波出現量と、開眼時のアルファ波の減衰が、生体の活性度に対応して変動する特性を利用し、安静状態で閉眼と開眼を反復することによって生じるアルファ波の出現量、及び、アルファ波の減衰から生体の活性度を数値指標化する評価手法である。例えば、所定期間任意の映像を見せた後にこの試験を実施して生体の活性度を判定することで、映像リラックス制御に適した映像を選定することができる。
【0040】
この試験を行った結果、映像リラックス制御424において出力する映像として適した映像とは、例えば、自然の森の映像のように、色温度が低く、動きが無い又は動きが殆ど無いことから視覚刺激の少ない映像や、平均的な人に安らぎや平穏といったものを想起させることで生体をリラックス側へ導く精神生理的反応を引き起こす映像であった。
【0041】
複合リラックス制御426は、照明リラックス制御422及び映像リラックス制御424を実行する期間を重複させて行う制御である。これによって、照明装置200と映像出力装置300による複数の異なる視覚刺激が連動し、相乗効果を得ることが可能となる。そのため、複合リラックス制御426を実行することで、照明リラックス制御422または映像リラックス制御424のみを実行するときよりも短期間で使用者の生体を鎮静化させることが可能となる。
【0042】
覚醒制御440は、照明装置200による照明覚醒制御442と、映像出力装置300による映像覚醒制御444と、照明覚醒制御442及び映像覚醒制御444を実行する期間を重複させる複合覚醒制御446とを備える。
【0043】
照明覚醒制御442は、照明装置200の照度を高照度に変更したり、色温度を寒色系などの高い色温度に変更したりすることで、個室空間内の使用者に与える視覚刺激を上昇させる制御である。これによって、人の精神状態を交感神経が優位な覚醒側へ導き生体を活性化させる
【0044】
映像覚醒制御444は、アルファ波減衰試験(Alpha Attenuation Test:AAT)を行った際に、アルファ波の出現量が多く、アルファ波の減衰が顕著に表れた映像(第2の映像)を映像出力装置300に出力させる制御である。これによって、人の精神状態を交感神経が優位な覚醒側へ推移させる。
【0045】
この試験を行った結果、映像覚醒制御444において出力する映像として適した映像とは、例えば、自然の海の映像の様に、色温度が高く、映像に動きがあることから視覚刺激の多い映像や、平均的な人に緊張や不安、あるいは好奇心や探求心といったものを想起させることで生体を覚醒側へ導く精神生理的反応を引き起こす映像であった。
【0046】
複合覚醒制御446は、照明覚醒制御442及び映像覚醒制御444を実行する期間を重複させて行う制御である。これによって、照明装置200と映像出力装置300による複数の異なる視覚刺激が連動し、相乗効果を得ることが可能となる。そのため、複合覚醒制御446を実行することで、照明覚醒制御442または映像覚醒制御444のみを実行するときよりも短時間で使用者の生体を活性化させることが可能となる。
【0047】
図4は、本発明の実施形態に係る個室空間の環境制御システムにおいて、制御装置が実行するリフレッシュ制御の一例を示すフローチャートである。以下、
図4を参照しつつ、本発明の実施形態にかかる個室空間の環境制御システムにおける制御フローを説明する。
【0048】
ステップS401において、使用者検知装置600によって個室空間内における使用者の存在を検知する。これによって、個室空間内に使用者が入室したことが検知されたとき、次のステップS402に移行する。
【0049】
ステップS402において、制御装置400に、使用者検知装置600の検知結果に基づいて自動で実行する制御が記憶されている場合(ステップS402、Yes)、ステップS405に移行し、記憶部404に記憶された各制御に関する制御設定を参照する。
【0050】
ステップS402において、制御装置400に、使用者検知装置600の検知結果に基づいて自動で実行する制御が記憶されていない場合(ステップS402、No)、ステップS403及びステップS404に移行し、操作装置500が生成する制御信号を受け付けるまで待機する。
【0051】
ステップS403において、使用者から記憶部404に記憶された制御設定に基づく制御を実行する第1の制御信号が生成された場合(ステップS403、Yes)、ステップS405に移行し、記憶部404に記憶された各制御に関する制御設定を参照する。
【0052】
ステップS404において、使用者から操作装置500に対する操作に基づく制御を実行する第2の制御信号が生成された場合(ステップS404、Yes)、ステップS406に移行し、操作装置500に対する使用者の操作を参照する。
【0053】
ステップS405において、制御装置400は、記憶部404に記憶された照明リラックス制御422や照明覚醒制御442を実行する際の照明装置200の照度または色温度の設定、映像リラックス制御424や映像覚醒制御444を実行する際に出力する映像の内容、各制御を実行する順番や各制御の実行期間の長さなどの制御設定を参照する。
【0054】
そして、制御装置400は、ステップS405において参照した制御設定に基づいて、リフレッシュ制御460の実行を開始する(ステップS407~ステップS414)。
【0055】
リフレッシュ制御460は、初めにリラックス制御420を実行した後(ステップS408~ステップS410)、覚醒制御440を実行する(ステップS411~ステップS413)。
【0056】
リラックス制御420または覚醒制御440を実行中に、使用者から操作装置500に対する操作に基づく制御を実行する第2の制御信号が生成された場合(ステップS409またはステップS412、Yes)、ステップS406に移行する。
【0057】
ステップS406においては、使用者による操作装置500に対する操作によって照明装置200及び映像出力装置300を制御することが可能である。これによって、例えば、記憶部404に記憶された制御設定に基づくリラックス制御420または覚醒制御440が使用者の好みに合わなかった場合、使用者がその日の気分に合わせて記憶部404に記憶された制御設定とは異なる制御を実行したり、途中で照明装置200または映像出力装置300に対する制御指示を切断するなどして、各制御自体を途中で終了したりすることが可能となる。
【0058】
図5は、本発明の実施形態に係る個室空間の環境制御システムにおいて、制御装置がリフレッシュ制御中に実行するリラックス制御の一例を示すフローチャートである。
図6は、本発明の実施形態に係る個室空間の環境制御システムにおいて、制御装置がリフレッシュ制御中に実行する覚醒制御の一例を示すフローチャートである。
以下、
図5および
図6を参照しつつ、本発明の実施形態にかかる個室空間の環境制御システムにおけるリラックス制御および覚醒制御の制御フローを説明する。
【0059】
第1の制御信号または自動操作に基づいて、リフレッシュ制御460を実行するとき、制御装置400は、照明リラックス制御設定421に対応する制御指示を照明装置200に送信し、照明リラックス制御422を実行する(ステップS502)。また、リラックス制御420を実行後、制御装置400は、照明覚醒制御設定441に対応する制御指示を照明装置200に送信し照明覚醒制御442を実行する(ステップS602)。
【0060】
そして、照明装置200によって変更された個室空間内の照度または色温度が、照明リラックス制御設定421に記憶されている照度または色温度に至った場合(ステップS503、Yes)、制御装置400は、映像リラックス制御設定423に記憶されている映像内容を映像出力装置300に送信し、映像リラックス制御424を実行する(ステップS504)。
【0061】
また、照明装置200によって、個室空間内の照度または色温度が照明覚醒制御設定441に記憶されている照度または色温度に至った場合(ステップS603、Yes)、制御装置400は、映像覚醒制御設定443に記憶されている映像内容を映像出力装置300に送信し、映像リラックス制御424を実行する(ステップS604)。
【0062】
なお、制御装置400が、照明装置200及び映像出力装置300に制御指示を送信する順番は、映像出力装置300が先で照明装置200が後であっても構わない。
【0063】
その後、制御装置400は、記憶部404に記憶された各制御の実行期間に関する制御設定に従って、所定期間に亘って、照明装置200及び映像出力装置300による各制御を実行する(ステップS505及びステップS605)。
【0064】
そして、映像リラックス制御設定423または映像覚醒制御設定443に記憶されている実行期間を経過後、制御装置400は、映像出力装置300に対して停止指示を送信し、映像リラックス制御424または映像覚醒制御444の実行を終了する(ステップS506またはステップS606)。
【0065】
同様に、映像リラックス制御設定423または映像覚醒制御設定443に記憶されている実行期間経過後、制御装置400は、照明装置200に対して停止指示を送信し、照明リラックス制御422または照明覚醒制御442の実行を終了する(ステップS507またはステップS607)。
【0066】
図7は、本発明の実施形態に係る個室空間の環境制御システムにおいて、制御装置が実行するリフレッシュ制御のタイムチャートの一例を示す図である。以下、
図9を参照しつつ、本発明の実施形態にかかる個室空間の空間制御システムにおけるリフレッシュ制御のタイムチャートを説明する。
【0067】
使用者が個室空間に設けられた照明装置200の電源をOFFからONにする操作を行ったとき、照明装置200は平常時の照度及び色温度で点灯する(t0)。このときの平常時の個室空間内の照度及び色温度は、例えば、160Lx(ルクス)及び色温度4000K(ケルビン)である。
【0068】
その後、操作装置500に対して第1の制御信号が生成された場合、または使用者検知装置600によって個室空間内にいる使用者の存在が検知されたことを起点とする自動操作が記憶されていた場合、制御装置400は、記憶部404に記憶されている制御設定を参照しリフレッシュ制御460の実行を開始する。
【0069】
制御装置400は、照明リラックス制御設定421に基づく制御指示を照明装置200に送信することで照明装置200の照度または色温度を制御し、個室空間内の照度または色温度を低下させる照明リラックス制御422の実行を開始する(t1)。照明リラックス制御422において、制御装置400は、リラックス制御420を実行する前である平常時の照度または色温度よりも低くなるように制御する。このとき、照明装置200によって低下された個室空間内の照度および色温度は、例えば、60Lx及び色温度2700Kである。
【0070】
なお、照明リラックス制御422において、個室空間内の照度をゼロにまで低下させないことが好ましい。個室空間内の照度をゼロに近づけるほど視覚刺激が少なくなることにより生体を鎮静化させる効果を高めることができるが、その一方で完全な暗闇は、使用者に不安感を与えるおそれが有るためである。
【0071】
そして、照明リラックス制御422の実行期間が予めプログラムされた所定期間を経過したとき、又は照明リラックス制御422によって低下された個室空間内の照度または色温度が予めプログラムされた照度または色温度に至ったとき、制御装置400は、映像リラックス制御設定423に基づく制御指示を映像出力装置300に送信する。そして、暖色系などの低い色温度の映像や、人に安らぎや平穏といった精神生理的反応を引き起こす効果がある映像を出力する映像リラックス制御424を開始する(t2)。このとき、映像出力装置300が出力する映像は、例えば、森の映像などである。
【0072】
その後、制御装置400は、記憶部404に記憶された各制御設定の実行期間に基づいて、照明リラックス制御422及び映像リラックス制御424を実行する期間を重複させて行う複合リラックス制御426を実行する(t2~t3)。このとき、複合リラックス制御426は、例えば、3.5分間にわたって実行される。
【0073】
複合リラックス制御426を実行後、記憶部404に記憶された各制御の実行期間を満了後、制御装置400は、映像出力装置300に停止指示を送信し、映像リラックス制御424を終了する(t3)。このとき、制御装置400は、照明覚醒制御設定441に基づく制御指示を照明装置200に送信することで照明装置200の照度または色温度を制御し、個室空間内の照度または色温度を上昇させる照明覚醒制御442の実行を開始する。
【0074】
なお、照明リラックス制御422の実行期間中に、映像覚醒制御444を実行してしまうと、個室空間内の照度と映像出力装置300が出力する映像との照度差が大きくなることにより、使用者が強すぎる視覚刺激を受けてしまうおそれがある。そのため、照明リラックス制御設定421に記憶される照明リラックス制御422の実行期間と、映像覚醒制御設定443に記憶される映像覚醒制御444を実行期間とは被らないように設定することが好ましい。
【0075】
そして、照明覚醒制御442の実行期間が予めプログラムされた所定期間を経過したとき、又は照明覚醒制御442によって上昇された個室空間内の照度または色温度が予めプログラムされた照度または色温度に至ったとき、制御装置400は映像覚醒制御設定443に基づく制御指示を映像出力装置300に送信する。そして、寒色系などの高い色温度の映像や、人に緊張や不安、あるいは好奇心や探求心といった精神生理的反応を引き起こす効果がある映像を出力する映像覚醒制御444を開始する(t4)。このとき、照明装置200によって上昇された個室空間内の照度及び色温度は、例えば、400Lxおよび色温度4800Kであり、映像出力装置300が出力する映像は、例えば、海の映像などである。
【0076】
なお、照明覚醒制御442において、個室空間内の照度を高めると視覚刺激が大きくなることにより生体を活性化させる効果を高めることができる。そのため、照明覚醒制御設定441に記憶される照度は、少なくとも、平常時の個室空間内の照度よりも大きくなるように設定することが好ましい。つまり、平常時の個室空間の照度<照明覚醒制御442時の個室空間の照度となるように設定することが好ましい。
【0077】
さらに言えば、照明リラックス制御設定421及び照明覚醒制御設定441に記憶される照度の関係は、平常時の照度と照明リラックス制御設定421に記憶される照度との差である第1の照度差よりも、平常時の照度と照明覚醒制御設定441に記憶される照度との差である第2の照度差の方が大きくなるように設定することが好ましい。つまり、第1の照度差(平常時の個室空間内の照度-照明リラックス制御422時の個室空間内の照度)<第2の照度差(照明覚醒制御442時の個室空間内の照度-平常時の個室空間内の照度)となるように設定することが好ましい。これによって、リフレッシュ効果を高めることができる。
【0078】
その後、制御装置400は、記憶部404に記憶された各制御設定の実行期間に基づいて、照明覚醒制御442及び映像覚醒制御444を実行する期間を重複させて行う複合覚醒制御446を実行する(t4~t5)。このとき、複合覚醒制御446は、例えば、1.5分間にわたって実行される。
【0079】
なお、照明リラックス制御設定421及び照明覚醒制御設定441に記憶される各制御設定の関係は、平常時の個室空間内の照度と照明リラックス制御設定421に記憶される照度との差である第1の照度差に照明リラックス制御設定421に記憶される実行期間を乗算した結果であるリラックス刺激値よりも、照明リラックス制御設定421に記憶される照度と照明覚醒制御設定441に記憶される照度との差である第3の照度差に照明覚醒制御設定441に記憶される実行期間を乗算した結果である覚醒刺激値の方が大きくなるよう設定することが好ましい。つまり、リラックス刺激値(第1の照度差×照明リラックス制御422の実行期間)<覚醒刺激値(第3の照度差×照明覚醒制御442の実行期間)となるように設定することが好ましい。これによって、リフレッシュ効果を更に高めることができる。
【0080】
また、生体を活性化する効果のある覚醒制御440は、使用者に対する視覚刺激を大きくする制御であるため生体が即座に反応するのに対して、生体を鎮静化させる効果のあるリラックス制御420は使用者に対する視覚刺激を小さくする制御であるため生体が緩慢に反応する。
【0081】
そのため、照明リラックス制御設定421及び照明覚醒制御設定441に記憶される実行期間の関係は、照明リラックス制御422の実行期間の長さが、照明覚醒制御442の実行期間以下の長さになるように設定することが好ましい。つまり、照明リラックス制御422の実行期間≧照明覚醒制御442の実行期間となるように設定することが好ましい。これによって、比較的長い期間を必要とするリラックス制御420にかける期間が長くなるため、使用者の生体を短期間且つ効果的に鎮静化することが可能となる。
【0082】
複合覚醒制御446を実行後、記憶部404に記憶された各制御の実行期間を満了後、制御装置400は、照明装置200及び映像出力装置300に停止指示を送信し、照明覚醒制御442及び映像覚醒制御444を終了する(t5)。
【0083】
そして、個室空間内の照度または色温度が、平常時の照度または色温度に至ることで、制御装置400によるリフレッシュ制御460は終了する(t6)。
【0084】
図8は、本発明に係る個室空間の環境制御システムの実証試験において、制御装置が実行するリフレッシュ制御に対する被験者の生理測定の結果を示した図である。以下、
図8を参照しつつ、実証試験の結果を説明する。
【0085】
本件発明者らは、上述したリフレッシュ制御460による効果を検証するために、脈波に基づく生理測定を行った。
【0086】
本件発明者らは、実証試験の環境として、照明装置200と映像出力装置300を設置した個室を用意した。被験者には試験中、できるだけ身体を動かさないように指示した。そして、被験者の指先に、BRCバイオリサーチセンター株式会社製の脈波測定器具TN1012/STを付けることで脈波を計測した。
【0087】
脈波に基づく生理測定は、計測した脈波を低周波成分(LF)と高周波成分(HF)に分け、LFの割合が高いほど交感神経優位で覚醒状態になっている、HFの割合が高いほど副交感神経優位でリラックス状態になっているとした。
【0088】
個室空間内の照度および色温度は、照明装置200の鉛直下方向に存在する床面に、コニカミノルタ株式会社製の分光放射照度計CL-500Aを配置し、その受光部を照明装置200に向けることで計測した。
【0089】
実証試験では、初めに、被験者にオフィスで働いている時と同様の精神状態を再現してもらうために、個室空間の外部にてオフィスを模した音声付きの動画を出力すると共に、所定数から二桁の数を引き続ける算術問題に5分間、口頭で回答することを課した。このとき、被験者には、扉を開けることで開空間とした個室空間の内部からその音声付きの動画を見てもらった。なお、このときの個室空間内の照度および色温度は、平常時の個室空間内の照度および色温度を模して160Lxおよび色温度3400Kとした。
【0090】
次に、オフィスを模した音声付きの動画の出力を停止すると共に、扉を閉めることで個室空間を閉空間とした。なお、このときの個室空間内の照度および色温度は、160Lxおよび色温度3400Kのままとした。
【0091】
その後に引き続き行う実証試験において、照明リラックス制御422を実行したことによる使用者の精神状態を再現するときは、照明装置200を制御し個室空間内の照度を60Lx、色温度を2700Kまで低下させた。そして、映像リラックス制御424を実行したことによる使用者の精神状態を再現するときは、映像出力装置300を制御し個室空間内に森の映像を出力した。
【0092】
また、照明覚醒制御442を実行したことによる使用者の精神状態を再現する時は、照明装置200を制御し個室空間内の照度を400Lx、色温度を4800Kまで上昇させた。そして、映像覚醒制御444を実行したことによる使用者の精神状態を再現するときは、映像出力装置300を制御し個室空間内に海の映像を出力した。
【0093】
リフレッシュ制御460の評価条件は3条件とし、すべての評価条件で、リラックス制御420及び覚醒制御440の実行期間を5分間とした。評価を行った3条件の詳細は以下の通りである。
評価条件1では、リラックス制御420において照明リラックス制御422のみを実行し、覚醒制御440において照明覚醒制御442のみを実行した。
評価条件2では、リラックス制御420において映像リラックス制御424のみを実行し、覚醒制御440において映像覚醒制御444のみを実行した。
評価条件3では、リラックス制御420において照明リラックス制御422及び映像リラックス制御424を実行し、覚醒制御440において照明覚醒制御442及び映像覚醒制御444を実行した。
【0094】
図8に示した、初期条件の値は、リフレッシュ制御460を実行する直前2.5分間の測定値であり、実証試験後の値は、リラックス制御420及び覚醒制御440における後半2.5分間の測定値である。なお、
図7に示した結果は、特に顕著に差異が現れた2名の被験者のデータを採用した。
【0095】
評価条件1において、被験者1は、初期条件からリラックス制御420間の変化はリラックス側へ推移し、リラックス制御420から覚醒制御440間の変化は覚醒側へ微弱に推移していた。一方、被験者2は、初期条件からリラックス制御420間の変化は覚醒側へ推移し、リラックス制御420から覚醒制御440間の変化はリラックス側へ推移していた。
つまり、照明装置200のみによるリフレッシュ制御460において、被験者2は、各制御で狙っている精神状態とは相反する側の精神状態へと推移する結果となり、リフレッシュ効果を得られていないことが確認された。
【0096】
評価条件2において、被験者1は、初期条件からリラックス制御420間の変化は覚醒側へ推移し、リラックス制御420から覚醒制御440間の変化は覚醒側へ推移していた。一方、被験者2は、初期条件からリラックス制御420間の変化はリラックス側へ推移し、リラックス制御420から覚醒制御440間の変化は覚醒側へ推移していた。
つまり、映像出力装置300のみによるリフレッシュ制御460において、被験者1は、映像リラックス制御422で狙っている精神状態とは相反する側の精神状態へと推移する結果となり、リフレッシュ効果が得られていないことが確認された。
【0097】
評価条件3において、被験者1及び被験者2は、初期条件からリラックス制御420間の変化はリラックス側へ推移し、リラックス制御420から覚醒制御440間の変化は覚醒側へ推移していた。
つまり、被験者1及び被験者2は共に、照明装置200及び映像出力装置300によるリラックス制御420及び覚醒制御440を実行することによって、狙っている精神状態へと推移する結果となり、リフレッシュ効果が得られていることが確認された。
【0098】
以上の実証実験の結果から、本件発明者らは、照明装置200のみを用いたリフレッシュ制御460によってリフレッシュ効果を得ることができる人もいれば、映像出力装置300のみを用いたリフレッシュ制御460によってリフレッシュ効果を得ることができる人もいることを確認できた。そして、照明装置200及び映像出力装置300を用いたリフレッシュ制御460によって、より多くの人がリフレッシュ効果を得ることができることを確認できた。
【符号の説明】
【0099】
100・・・個室空間の環境制御システム
200・・・照明装置
300・・・映像出力装置
400・・・制御装置
402・・・通信装置
404・・・記憶部
420・・・リラックス制御
421・・・照明リラックス制御設定
422・・・照明リラックス制御
423・・・映像リラックス制御設定
424・・・映像リラックス制御
426・・・複合リラックス制御
440・・・覚醒制御
441・・・照明覚醒制御設定
442・・・照明覚醒制御
443・・・映像覚醒制御設定
444・・・映像覚醒制御
446・・・複合覚醒制御
460・・・リフレッシュ制御
500・・・操作装置
600・・・使用者検知装置