(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】処理装置および処理方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20221206BHJP
B60S 1/08 20060101ALI20221206BHJP
G08G 1/13 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G08G1/01 A
B60S1/08 D
G08G1/13
(21)【出願番号】P 2018184599
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】大角 良太
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 紀明
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-240433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60S 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両において取得されたワイパーの作動モードを示す作動モードデータを収集するデータ収集部と、
作動モードデータと降水量データとの相関度を車両ごとに導出する相関度導出部と、
収集した作動モードデータにもとづいて降水の強さを表す降水指標を推定する推定処理部と、を備え、
前記推定処理部は、相関度が相対的に高い車両から収集した作動モードデータにもとづいて降水指標を推定する、
ことを特徴とする処理装置。
【請求項2】
車両において取得されたワイパーの作動モードを示す作動モードデータを収集するデータ収集部と、
作動モードデータと降水量データとの相関度を車両ごとに導出する相関度導出部と、
収集した作動モードデータにもとづいて降水の強さを表す降水指標を推定する推定処理部と、を備え、
前記推定処理部は、相関度が所定の閾値以上である車両から収集した作動モードデータにもとづいて降水指標を推定する、
ことを特徴とする処理装置。
【請求項3】
コンピュータによって実行されるデータの処理方法であって、
データ収集部が、車両において取得されたワイパーの作動モードを示す作動モードデータを収集するステップと、
相関度導出部が、作動モードデータと降水量データとの相関度を車両ごとに導出するステップと、
推定処理部が、収集した作動モードデータにもとづいて降水の強さを表す降水指標を推定するステップと、を含み、
前記推定するステップでは、
前記推定処理部が、相関度が相対的に高い車両から収集した作動モードデータにもとづいて降水指標を推定する、
ことを特徴とする処理方法。
【請求項4】
コンピュータによって実行されるデータの処理方法であって、
データ収集部が、車両において取得されたワイパーの作動モードを示す作動モードデータを収集するステップと、
相関度導出部が、作動モードデータと降水量データとの相関度を車両ごとに導出するステップと、
推定処理部が、収集した作動モードデータにもとづいて降水の強さを表す降水指標を推定するステップと、を含み、
前記推定するステップでは、
前記推定処理部が、相関度が所定の閾値以上である車両から収集した作動モードデータにもとづいて降水指標を推定する、
ことを特徴とする処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両で取得された情報を用いてワイパーの作動モードと降水量の関係を導出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、現在の時刻情報や位置情報とともにワイパー動作の有無を示す情報を管理装置に送信するカーナビゲーション装置を開示する。管理装置は、自動車のワイパー動作の有無を示す情報を受信することで、太陽光発電装置が設置された観測地点の天候を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワイパーは複数種類の作動モードを持ち、降水量が増すほど高速でワイプする作動モードが使用される。本発明者らはワイパーの作動モードと降水量との関係に着目し、ワイパーの作動モードから降水の強さを表す指標を導出することを見出した。しかしながら、ワイパーの作動モードは降水量に関わらず運転者の好みで設定されることがあり、収集したワイパーの作動モードデータをそのまま用いて降水指標を推定すると運転者の好みが降水指標の推定に影響するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、車両ごとのワイパーの作動モードと降水量の関係を示す情報を導出する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の処理装置は、車両において取得されたワイパーの作動モードを示す作動モードデータを収集するデータ収集部と、作動モードデータと降水量データとの相関度を車両ごとに導出する相関度導出部と、収集した作動モードデータにもとづいて降水の強さを表す降水指標を推定する推定処理部と、を備える。推定処理部は、相関度が相対的に高い車両から収集した作動モードデータにもとづいて降水指標を推定する。
【0007】
この態様によれば、ワイパーの作動モードデータと降水量データとの相関度の高い車両を抽出できる。
本発明の別の態様は、処理装置である。この処理装置は、車両において取得されたワイパーの作動モードを示す作動モードデータを収集するデータ収集部と、作動モードデータと降水量データとの相関度を車両ごとに導出する相関度導出部と、収集した作動モードデータにもとづいて降水の強さを表す降水指標を推定する推定処理部と、を備える。推定処理部は、相関度が所定の閾値以上である車両から収集した作動モードデータにもとづいて降水指標を推定する。
【0008】
本発明の別の態様は、コンピュータによって実行されるデータの処理方法である。この方法は、データ収集部が、車両において取得されたワイパーの作動モードを示す作動モードデータを収集するステップと、相関度導出部が、作動モードデータと降水量データとの相関度を車両ごとに導出するステップと、推定処理部が、収集した作動モードデータにもとづいて降水の強さを表す降水指標を推定するステップと、を含む。推定するステップでは、推定処理部が、相関度が相対的に高い車両から収集した作動モードデータにもとづいて降水指標を推定する。
【0009】
この態様によれば、ワイパーの作動モードデータと降水量データとの相関度の高い車両を抽出できる。
本発明の別の態様は、コンピュータによって実行されるデータの処理方法である。この方法は、データ収集部が、車両において取得されたワイパーの作動モードを示す作動モードデータを収集するステップと、相関度導出部が、作動モードデータと降水量データとの相関度を車両ごとに導出するステップと、推定処理部が、収集した作動モードデータにもとづいて降水の強さを表す降水指標を推定するステップと、を含む。推定するステップでは、推定処理部が、相関度が所定の閾値以上である車両から収集した作動モードデータにもとづいて降水指標を推定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両ごとのワイパーの作動モードと降水量の関係を示す情報を導出する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の情報処理システムの概要を示す図である。
【
図3】降水指標を推定する単位エリアを示す図である。
【
図4】処理装置の降水指標推定部の機能ブロックを示す図である。
【
図5】データ収集部により収集された作動モードデータの例を示す図である。
【
図6】各車両において取得された作動モードの数を種類ごとに集計した結果を示す図である。
【
図7】記憶部に記憶された降水量レベル対応表を示す図である。
【
図8】記憶部に記憶された重み対応表を示す図である。
【
図9】処理装置の相関出力部の機能ブロックを示す図である。
【
図10】相関度導出部による相関度の導出方法について説明するための図であり、降水量とワイパー作動モードデータの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、実施形態の情報処理システム1の概要を示す。情報処理システム1は、サーバ装置3と、サーバ装置3に接続する処理装置10と、ユーザに天気情報を提示する天気情報提示装置7と、複数の無線局4と、複数の車両5とを備える。サーバ装置3、天気情報提示装置7および無線局4は、インターネットなどのネットワーク2を介して接続されてよい。
【0013】
車両5には制御装置6が搭載され、制御装置6は無線通信機能を有して、基地局である無線局4経由でサーバ装置3と接続する。車両5の台数は3台に限るものではなく、実施形態の情報処理システム1では、多数の車両5が車両状態情報を生成し、サーバ装置3に所定の周期で車両状態情報を送信する状況を想定している。
【0014】
サーバ装置3はデータセンタに設置されて、車両5の制御装置6から送信される車両状態情報を受信する。車両状態情報は、車載ナビゲーション装置により生成される交通情報と、車両内部のCAN(Controller Area Network)上を流れるCAN情報とを含む。処理装置10は、サーバ装置3が受信した車両状態情報に含まれるワイパーの作動モードデータを収集して、所定期間ごとの降水の強さを表す降水指標の推定処理を実施する。なお実施形態において降水指標の推定処理は、降水量に関連する指標を推定する処理を含み、たとえば降水量の推定レベルを導出してもよい。サーバ装置3と処理装置10とは一体に構成されてよく、サーバ装置3に処理装置10の降水指標推定機能が搭載されてもよい。
【0015】
処理装置10は、信頼できる車両のワイパーの作動モードデータにもとづいて、たとえば4分ごとに複数エリアのそれぞれにおける降水指標を推定する降水推定部12と、ワイパーの作動モードデータを収集して降水指標を推定する際に、信頼できる車両を特定する相関出力部14とを備える。処理装置10は、推定した降水指標データをサーバ装置3を介して天気情報提示装置7に提供する。サーバ装置3と天気情報提示装置7とは、専用回線で接続されてもよい。天気情報提示装置7は、処理装置10から送信される降水指標データや、全国各地に設けた雨雲レーダから取得した雨雲の状態等をもとに、複数エリアのそれぞれにおける現在の降水量の推定値を生成し、ウェブページ等からユーザに提示する。天気情報提示装置7は、処理装置10で車両状態情報をもとに推定された降水指標データを加味することで、現在の降水量の推定値を高精度に求めることができる。
【0016】
図2は、車両状態情報の例を示す。車両状態情報は、交通情報8およびCAN情報9を含む。
図2(a)は、交通情報8に含まれる項目を示す。交通情報8は、車両識別番号(VIN:Vehicle Identification Number)、走行した道路リンクID、道路リンク進入日時、走行した道路の渋滞度、平均車速などの項目を含む。車両5において、車載ナビゲーション装置が交通情報8を生成する。制御装置6は、所定の第1の周期で交通情報8をサーバ装置3に送信する。第1の周期は数分であってよい。送信される交通情報8には、前回の送信タイミング以降に通過した道路リンクに関する情報が含まれる。
【0017】
図2(b)は、CAN情報9に含まれる項目を示す。CAN情報9は、車両識別番号(VIN)、日時、緯度・経度、車速、加速度、操作データ、ワイパー作動モードデータ、シートベルト状態などの項目を含む。制御装置6は、各項目に関するデータを取得して、CAN情報9を生成する。制御装置6は、所定の第2の周期でCAN情報9をサーバ装置3に送信する。第2の周期は数十秒から1分程度であってよい。CAN情報9に含まれる緯度・経度は、車両の位置情報を示す。
【0018】
各項目のデータのサンプリング周期は、それぞれ異なってよい。たとえば車速や加速度のデータは数100m秒周期で取得され、ワイパー作動モードデータは数10秒周期で取得されてよい。車速、加速度、操作データ、ワイパー作動モードデータ、シートベルト状態などの項目のデータには、取得した日時および緯度・経度が関連づけられる。
【0019】
CAN情報9に含まれるワイパー作動モードデータは、降水の強さを表す降水指標を推定するためのデータであり、処理装置10による降水指標の推定処理に利用される。
【0020】
車両5のワイパーは、フロントガラス等の雨滴を払拭するための装置であり、複数種類の作動モードをもつ。実施形態のワイパーは以下の4種類の作動モードをもち、CAN情報9に含まれる作動モードデータは、4種類の作動モードの中から選択された作動モードを示す。
(1)停止モード
ワイパーの作動スイッチがオフとされているモードである。停止モードで、ワイパーは作動しない。
(2)間欠モード
間欠モードで、ワイパーは一定の間隔をおいて作動する。間欠モードは1時間における降水量が0mm以上10mm未満であるような弱い雨(小雨)のときに選択されることが多い。
(3)低速モード
低速モードで、ワイパーは低速で連続作動する。低速モードは、1時間における降水量が10mm以上20mm未満であるような、やや強い雨のときに選択されることが多い。
(4)高速モード
高速モードで、ワイパーは高速で連続作動する。高速モードは、1時間における降水量が20mm以上となる大きな強度の雨のときに選択されることが多い。
【0021】
処理装置10は、車両5から送信される車両状態情報を取得して、所定期間内の所定エリアにおける降水の強さを表す降水指標を推定する機能をもつ。
図3は、所定期間における降水指標を推定する単位エリアを示す。処理装置10は、地図を縦線および横線で区分けした単位エリアごとに、所定期間内の降水指標を推定する。複数のエリアは、それぞれ実質的に等しいサイズとなるように区分けされてよいが、エリアサイズは、たとえば人口密度等に依存して異なってもよい。
【0022】
地図の分割手法は任意であってよく、
図3に示す例では、地図を緯度・経度にもとづいてほぼ同じ大きさの網の目(メッシュ)に分けている。日本には、地域の統計に用いる目的で緯度・経度に基づいて設定した標準地域メッシュが存在しており、処理装置10は、この標準地域メッシュを、降水指標推定の単位エリアとして利用してよい。なお標準地域メッシュでは、大きさの異なる第1次メッシュから第3次メッシュまでが定められており、第3次メッシュの1辺の長さは約1kmである。処理装置10は、第3次メッシュを降水指標を推定する単位エリアとして定めてよいが、より小さいメッシュまたは大きいメッシュを、降水指標を推定する単位エリアとして定めてよい。
【0023】
図4は、処理装置10の降水推定部12の機能ブロックを示す。降水推定部12は、車両状態情報取得部20、複数のデータ収集部30a、30b、・・・、30z(以下、特に区別しない場合には「データ収集部30」と呼ぶ)、複数の推定処理部40a、40b、・・・、40z(以下、特に区別しない場合には「推定処理部40」と呼ぶ)を備える。データ収集部30は、所定期間内のワイパー作動モードデータを収集する機能を有し、推定処理部40は、収集したワイパー作動モードデータを統計処理して、所定期間内の降水の強さを表す降水指標を推定する機能を有する。
【0024】
推定処理部40は、統計処理部42、降水指標推定部48および記憶部54を備える。統計処理部42はワイパー作動モードデータを統計処理する機能を有し、割合導出部44および指標導出部46を備える。
【0025】
処理装置10の各機能は、ハードウェア的には、回路ブロック、メモリ、その他のLSIで構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたシステムソフトウェアやアプリケーションプログラムなどによって実現される。したがって処理装置10の各機能はハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。
【0026】
車両状態情報取得部20は、サーバ装置3が受信した全ての車両状態情報を取得する。サーバ装置3が、車両5から車両状態情報を受信して所定の記憶装置に格納すると、車両状態情報取得部20は、即時に当該記憶装置から車両状態情報を読み出して取得してよい。処理装置10がサーバ装置3の一機能として設けられる場合、車両状態情報取得部20は、サーバ装置3の受信部から車両状態情報を提供されてよい。
【0027】
データ収集部30および推定処理部40の組合せが、単位エリアに対して割り当てられる。たとえばデータ収集部30aと推定処理部40aの組合せは、第1のエリアの降水指標の推定を担当し、データ収集部30bと推定処理部40bの組合せは、第2のエリアの降水指標の推定を担当する。したがってデータ収集部30と推定処理部40の組合せの数は、地図を分割して生成されたエリアの数だけ存在する。
【0028】
データ収集部30は、所定期間内に所定エリアに位置する1以上の車両で取得されたワイパー作動モードデータを収集する。具体的にデータ収集部30は、車両状態情報取得部20により取得されたCAN情報9から、担当するエリア内で取得されたワイパー作動モードデータを収集する。
図2(b)に示すように、ワイパー作動モードデータには、ワイパー作動モードデータを取得した日時および緯度・経度が関連づけられており、データ収集部30は、担当エリア内の緯度・経度を関連づけられたワイパー作動モードデータを収集する。
【0029】
降水指標推定部48は、収集した作動モードデータから導出される複数種類の作動モードのそれぞれが占める割合にもとづいて、所定期間内の所定エリアにおける降水の強さを表す降水指標を推定する。降水指標推定部48が、統計処理により求められる各作動モードの割合を利用することで、所定期間内の降水指標を高精度に推定できる。
【0030】
図5は、データ収集部30により収集された作動モードデータの例を示す。データ収集部30は、「XXXXXX」のエリアIDを有するエリア内に位置する1以上の車両において15:00:00~15:03:59の間に取得された作動モードデータを、車両状態情報取得部20で取得された車両状態情報の中から収集する。
【0031】
図5に示す例では、15:00:00~15:03:59の間に、エリアID「XXXXXX」内を走行していた車両5が、車両A、B、C、D、Eの5台存在する。このうち車両A、B、C、Dは、15:00:00~15:03:59の4分間、当該エリア内を走行しており、車両Eは、15:03:00から当該エリア内を走行している。
【0032】
割合導出部44は、収集した作動モードデータが示す作動モードの数を種類ごとに集計して、複数種類の作動モードのそれぞれが占める割合を導出する。
図6は、各車両において取得された作動モードの数を種類ごとに集計した結果を示す。たとえば車両Aでは、4分の間、停止モード、間欠モード、低速モードを示す作動モードデータは取得されておらず、高速モードを示す作動モードデータが12回取得されている。
【0033】
割合導出部44は、全車両において取得された作動モードの種類ごとの回数を以下のように集計する。
・停止モード 0回
・間欠モード 3回
・低速モード 9回
・高速モード 39回
【0034】
以上の集計結果をふまえて、割合導出部44は、複数種類の作動モードのそれぞれが占める割合を、以下のように導出する。
・停止モード 0.000
・間欠モード 0.059
・低速モード 0.176
・高速モード 0.765
降水指標推定部48は、各作動モードの割合にもとづいて、担当エリアにおける所定期間内の降水指標を推定する。
【0035】
図7は、記憶部54に記憶された降水量レベル対応表を示す。降水量レベル対応表では、作動モードに対する推定降水量レベルが定義される。降水指標推定部48は、最も割合の高い作動モードに対応する推定降水量レベルを記憶部54から読み出して、降水指標として導出してよい。この例では、高速モードの割合が最も高いため、降水指標推定部48は、推定降水量レベル「強い」を記憶部54から読み出して、担当エリアの降水量レベルを「強い」に決定する。
【0036】
各推定処理部40は、15:00:00~15:03:59の4分間の作動モードデータから各担当エリアの降水指標(この例では、降水量レベル)を推定する。処理装置10は、所定期間における全エリアの降水指標データをサーバ装置3に供給し、サーバ装置3は、全エリアの降水指標データを天気情報提示装置7に転送する。実施形態で処理装置10が、全エリアの降水指標データを4分おきに天気情報提示装置7に提供することで、天気情報提示装置7は、高精度なリアルタイム天気情報を4分おきに更新してユーザに提示できる。
【0037】
降水指標推定部48は、統計処理部42による別の統計処理の結果にもとづいて、降水指標を推定してもよい。この推定手法によると、降水指標推定部48が、統計処理により導出されるワイパーの作動モード指標を利用することで、降水指標の推定精度を高めることができる。
【0038】
具体的には統計処理部42において、指標導出部46が、複数種類の作動モードのそれぞれが占める割合にもとづいて、ワイパーの作動モードの段階を示す作動モード指標を導出する。各作動モードには指標を算出するための重みが定義され、指標導出部46は、各作動モードの割合と重みの乗算値を積算して、作動モードの段階を示す作動モード指標を算出してよい。
【0039】
図8は、記憶部54に記憶された重み対応表を示す。重み対応表では、作動モードに対する指標算出用重みが定義される。指標導出部46は、重み対応表を参照して、以下の計算式により作動モードの段階を示す指標(作動モード指標)を算出する。なお作動モード指標の最小値は0、最大値は10である。
(作動モード指標)=Σ(各作動モードの割合)×(各作動モードの重み)
【0040】
図6に示す作動モード種類の割合を用いて計算すると、
(作動モード指標)=0.000×0+0.059×2+0.176×6+0.765×10
=8.824
この作動モード指標は、降水指標の推定に利用される。算出された指標は、小数点以下を四捨五入されて、整数値に変換されてもよい。
【0041】
全てのワイパーの作動モードが高速モードであるとき、作動モード指標は最大値である10となる。算出される作動モード指標は、最大値に対するワイパーの作動状態の程度を表現し、降水量と相関の高い指標となる。降水指標推定部48は、指標導出部46により導出された作動モード指標から、所定期間内の担当エリアにおける降水指標を推定する。たとえば天気情報提示装置7が、降水量を10段階表現してユーザに提示する場合、降水指標推定部48は、降水指標データとして、作動モード指標に相当する降水量の段階値を導出してよい。記憶部54が、作動モード指標と降水量段階値との対応表を保持し、降水指標推定部48が、当該対応表を参照して降水指標となる降水量段階値を導出してもよい。また降水指標推定部48は、作動モード指標を所定の補正関数で補正した降水量段階値を求めてもよい。
【0042】
以上の手法では、割合導出部44が、所定期間内に取得されたワイパーの作動モードデータの全数から、複数種類の作動モードのそれぞれが占める割合を導出した。この統計処理手法により、所定期間におけるワイパー作動モードの選択傾向が導出される。
【0043】
ところでワイパーの作動モードは、運転者の好みが反映される傾向があり、降水量に関わらず運転者の好みで高速モードや低速モードに設定されることがある。このような車両のワイパーの作動モードデータは、降水指標を推定する際のノイズとなり、運転者の好みが降水指標に反映されるおそれがある。
【0044】
そこで、相関出力部14は、ワイパー作動モードデータと実際の降水量との相関度が高い信頼できる車両を見出し、降水推定部12は、相関度の高い車両のワイパー作動モードデータをもとに降水指標を推定する。これにより、信頼できるワイパー作動モードデータを用いて降水指標を精度良く推定できる。
【0045】
図9は、処理装置10の相関出力部14の機能ブロックを示す。相関出力部14は、データ保持部60および相関度導出部62を有する。相関出力部14は、車両ごとに作動モードデータと実際の降水量データとの相関度を導出し、降水推定部12に出力する。降水推定部12がリアルタイムで降水指標を推定するのに対し、相関出力部14は例えば1ヶ月周期で事後的に相関度を導出してよい。
【0046】
データ保持部60は、車両ごとにワイパー作動モードデータと降水量データとを関連付けて保持する。データ保持部60は、ワイパー作動モードデータを降水推定部12のデータ収集部30から取得し、降水量データを天気情報提示装置7から取得する。ワイパー作動モードデータには、そのときの車両の位置情報と時刻が関連付けられており、降水量データにも、位置情報と時刻が関連付けられている。なお、降水量データは、降水推定部12により推定された降水指標であってもよい。また、データ保持部60は、ワイパー作動モードデータに他の車両情報、例えば車速を関連付けて保持する。
【0047】
相関度導出部62は、車両ごとにワイパー作動モードデータと降水量データとの相関度を導出する。ワイパー作動モードと理想的な降水量との関係は、例えば下記のように予め定められており、下記の定義からずれていれば相関度が低いと判定され、下記の定義を満たしていれば相関度が高いと判定される。
停止モードであれば、1時間における降水量は0mmである。
間欠モードであれば、1時間における降水量は0mm以上10mm未満である。
低速モードであれば、1時間における降水量が10mm以上20mm未満である。
高速モードであれば、1時間における降水量が20mm以上である。
【0048】
相関度導出部62は、車両ごとのワイパー作動モードデータと降水量データとの相関度を、上記のワイパー作動モードデータと降水量データとの関係が一致する度合いによって導出する。
【0049】
図10は、相関度導出部62による相関度の導出方法について説明するための図である。
図10(a)および
図10(b)には、1時間における降水量と、車両ごとのワイパー作動モードデータとの関係を示す。
【0050】
図10(a)では、いずれも1時間あたりの降水量が15mmであるためワイパー作動モードデータが低速モードであれば、高い相関度が導出される。車両Yは、ワイパー作動モードデータと降水量データとの関係が全て一致するため、相関度導出部62は相対的に高い相関度を導出し、例えば10段階評価でレベル10を導出する。
【0051】
車両Xは、ワイパー作動モードデータと降水量データとの関係が全て一致しないため、相関度導出部62は相対的に低い相関度を導出し、例えば10段階評価でレベル1を導出する。車両Zは、ワイパー作動モードデータと降水量データとの関係の一部が一致しており、相関度導出部62は中程度の相関度を導出し、例えば10段階評価でレベル5を導出する。
【0052】
このように、相関度導出部62により導出された車両ごとの相関度は、推定処理部40により降水指標を推定する際に用いられ、例えば推定処理部40は、相関度がレベル5以上の車両のワイパー作動モードデータを用いて降水指標を推定してよい。相関度が高い車両のデータを用いることで推定の精度を高めることができる。
【0053】
ところで、ワイパーの作動モードは、同じ降水量であっても車速によって異なるモードに設定される可能性があり、例えば車速が大きくなると高速モードに設定されることが多くなる。つまり、1時間あたりの降水量が15mmでも車速が60km/hであれば高速モードでワイパーが作動される可能性が高い。そこで、相関度導出部62は、車速に応じて作動モードを変換し、変換したワイパー作動モードデータを用いて相関度を導出してよい。
【0054】
図10(b)に示すワイパー作動モードデータと降水量データとの関係は、
図10(a)に示すワイパー作動モードデータを相関度導出部62が車速をもとに変換したものを示す。相関度導出部62は、車速をもとにワイパー作動モードデータを変換するための変換テーブルを有する。例えば、相関度導出部62は、車速50km/h以上であれば、実際の作動モードを1段階下げるよう変換する。
【0055】
図10(b)では、車両Zが17:03以降において、車速50km/h以上で走行しており、ワイパー作動モードデータが高速モードから低速モードに変換されている。相関度導出部62は、車速をもとにワイパー作動モードデータを変換した後、変換したワイパー作動モードデータと降水量の相関度を導出する。変換後では、車両Zは、ワイパー作動モードデータと降水量データとの関係が一致しており、相関度導出部62は高いの相関度を導出し、例えば10段階評価でレベル10を導出する。このように、相関度導出部62は、車速とワイパー作動モードデータと降水量データとにもとづいて相関度を導出することで、精度を高めることができる。
【0056】
また、相関度導出部62は、所定車速以上であるときに検出されたワイパー作動モードデータを相関度の導出に用いず、所定車速未満であるときに検出されたワイパー作動モードデータをもとに降水量との相関度を導出してよい。これにより、車速の影響が少ない状態でのワイパー作動モードデータを用いることができる。
【0057】
相関出力部14により導出された車両ごとの相関度は降水推定部12に送られる。降水推定部12の推定処理部40は、相関度が相対的に高い車両から作動モードデータにもとづいて降水指標を推定する。これにより、降水指標の推定精度を高めることができる。推定処理部40は、車速をもとにワイパー作動モードデータを変換した後、変換したワイパー作動モードデータにもとづいて降水指標を推定してよい。
【0058】
推定処理部40は、例えば単位エリア内にて相関度が相対的に高い車両のワイパー作動モードデータを優先的に収集し、収集したワイパー作動モードデータが所定のサンプル数以上になれば、そのサンプル数のワイパー作動モードデータで降水指標を推定する。これにより、単位エリア内のワイパー作動モードデータが膨大にある場合に、推定処理部40は降水量との相関度が高い車両からワイパー作動モードデータを抽出して降水指標を推定でき、処理負荷を抑え、精度良く推定できる。
【0059】
推定処理部40は、相関度が所定の閾値以上である車両から収集したワイパー作動モードデータにもとづいて降水指標を推定してよい。例えば推定処理部40は、相関度がレベル5以上の車両から収集したワイパー作動モードデータをもとに降水指標を推定する。これにより、処理負荷を抑えつつ、精度良く推定できる。所定の閾値は、単位エリア内でのワイパー作動モードデータのサンプル数に応じて設定されてよい。
【0060】
単位エリア内のワイパー作動モードデータが所定のサンプル数以下である場合、推定処理部40は、相関度に応じて重み付けをしたワイパー作動モードデータにもとづいて降水指標を推定してよい。例えば、推定処理部40は、相関度が高いほどその車両のワイパー作動モードデータが全体のサンプル数に占める割合が大きくなるように、相関度に応じてワイパー作動モードデータに重み付けをして、重み付けしたワイパー作動モードデータをもとに降水指標を推定する。これにより、サンプル数が少ない場合に、相関度が低い車両のワイパー作動モードデータを捨てることなく用いつつも、重み付けにより精度良く推定できる。
【0061】
以上、本発明を実施形態および複数の実施例をもとに説明した。本発明は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 情報処理システム、 3 サーバ装置、 7 天気情報提示装置、 10 処理装置、 12 降水推定部、 14 相関出力部、 20 車両状態情報取得部、 30 データ収集部、 40 推定処理部、 42 統計処理部、 44 割合導出部、 46 指標導出部、 48 降水指標推定部、 54 記憶部、 60 データ保持部、 62 相関度導出部。