(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 23/00 20060101AFI20221206BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20221206BHJP
F02B 37/007 20060101ALI20221206BHJP
F02B 37/18 20060101ALI20221206BHJP
F02D 21/08 20060101ALI20221206BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20221206BHJP
F02M 26/08 20160101ALI20221206BHJP
F02M 26/43 20160101ALI20221206BHJP
【FI】
F02D23/00 J
F02B37/00 302F
F02B37/00 400C
F02B37/007
F02B37/18 A
F02D21/08 311B
F02D43/00 301N
F02D43/00 301R
F02M26/08 301
F02M26/43
(21)【出願番号】P 2018189745
(22)【出願日】2018-10-05
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】保崎 一司
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-120354(JP,A)
【文献】特開2004-308487(JP,A)
【文献】特開2007-247612(JP,A)
【文献】特開2008-101530(JP,A)
【文献】特開2008-111388(JP,A)
【文献】特開2009-174377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00
F02D 21/08
F02D 23/00
F02D 43/00
F02M 26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒からなる第1気筒群が第1バンク側に配置され、複数の気筒からなる第2気筒群が第2バンク側に配置され、前記第1バンク側及び前記第2バンク側のそれぞれに、吸気通路及び排気通路に跨る過給機が配置され、前記第1バンク側の前記排気通路における前記過給機よりも排気上流側から前記吸気通路にまで排気再循環通路が延びており、前記排気再循環通路には、当該排気再循環通路の流路面積を調整する排気再循環バルブが取り付けられている内燃機関に適用される制御装置であって、
前記第1バンク側における前記過給機のウェイストゲートバルブの開度を、前記排気再循環バルブの開度
が変更されるか否かに関係なく前記内燃機関の運転状態に基づいて制御する一方で、前記第2バンク側における前記過給機のウェイストゲートバルブの開度を、前記排気再循環バルブの開度が大きいほど大きい開度に制御する
内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたV型の内燃機関においては、複数の気筒からなる第1気筒群が第1バンク側に配置され、複数の気筒からなる第2気筒群が第2バンク側に配置されている。第1バンク側の吸気通路と排気通路とには、これら吸気通路と排気通路とに跨って、吸気を過給する過給機が配置されている。また、第1バンク側の排気通路における過給機よりも上流側からは、排気再循環通路が延びている。排気再循環通路は、第1バンク側の吸気通路に接続されている。第2バンク側の吸気通路と排気通路とには、第1バンク側と同様に、過給機と排気再循環通路とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2つのバンクを有する内燃機関において、一方のバンク側にのみ排気再循環通路が設けられている場合がある。この場合、一方のバンク側でのみ、過給機よりも上流側で排気が吸気通路に再循環されることから、第1バンク側と第2バンク側とで、過給機に向かう排気の量に差が生じることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための内燃機関の制御装置は、複数の気筒からなる第1気筒群が第1バンク側に配置され、複数の気筒からなる第2気筒群が第2バンク側に配置され、前記第1バンク側及び前記第2バンク側のそれぞれに、吸気通路及び排気通路に跨る過給機が配置され、前記第1バンク側の前記排気通路における前記過給機よりも排気上流側から前記吸気通路にまで排気再循環通路が延びており、前記排気再循環通路には、当該排気再循環通路の流路面積を調整する排気再循環バルブが取り付けられている内燃機関に適用される制御装置であって、前記第1バンク側における前記過給機のウェイストゲートバルブの開度を、前記排気再循環バルブの開度が変更されるか否かに関係なく前記内燃機関の運転状態に基づいて制御する一方で、前記第2バンク側における前記過給機のウェイストゲートバルブの開度を、前記排気再循環バルブの開度が大きいほど大きい開度に制御する。
【0006】
上記構成では、排気再循環バルブの開度が大きくなって第1バンク側の排気通路から吸気通路へと排気が還流されたときには、その還流された分の排気が過給機のタービンに供給されなくなる。このとき、上記構成によれば、第2バンク側における過給機のウェイストゲートバルブの開度が大きくなるため、第2バンク側においても過給機のタービンに供給される排気が少なくなる。したがって、排気再循環バルブが開状態にある場合に、第1バンク側と第2バンク側とでタービンに流れる排気の量の差を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】第2ウェイストゲートバルブ制御処理の処理手順を表したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、内燃機関の制御装置の一実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。先ず、内燃機関の概略構成について説明する。
図1に示すように、内燃機関100は、いわゆるV型の内燃機関100である。内燃機関100の機関本体10は、燃料を燃焼させるための気筒11を複数(本実施形態では6つ)備えている。機関本体10の第1バンク10A側においては、3つの気筒11が一列に並んでいる。これら3つの気筒11は、第1気筒群を構成している。また、機関本体10の第2バンク10B側においては、3つの気筒11が一列に並んでいる。これら3つの気筒11は、第2気筒群を構成している。
【0009】
機関本体10の6つの気筒11には、吸気の脈動を低減するためのサージタンク16が接続されている。サージタンク16には、第1吸気通路15A及び第2吸気通路15Bが接続されている。第1吸気通路15A及び第2吸気通路15Bを流通した吸気は、サージタンク16内において混合され、それぞれの気筒11に供給される。
【0010】
第1気筒群を構成する3つの気筒11には、第1排気通路25Aが接続されている。第1排気通路25Aは、途中で1つの通路に集合している。同様に、第2気筒群を構成する3つの気筒11には、第2排気通路25Bが接続されている。第2排気通路25Bは、途中で1つの通路に集合している。
【0011】
第1吸気通路15A及び第1排気通路25Aには、これら第1吸気通路15A及び第1排気通路25Aに跨るようにして、第1過給機12Aが取り付けられている。第1過給機12Aにおける第1排気通路25A側には、第1過給機12Aの第1タービン14Aが配置されている。第1タービン14Aは排気の流れを利用して回転する。第1過給機12Aにおける第1吸気通路15A側には、第1過給機12Aの第1コンプレッサ13Aが配置されている。第1コンプレッサ13Aは、第1タービン14Aと一体的に回転し、吸気を気筒11側へと送り出す。
【0012】
第1吸気通路15Aにおける第1過給機12Aよりも吸気下流側には、吸気を冷却する第1インタークーラ23Aが配置されている。第1吸気通路15Aにおける第1インタークーラ23Aよりも吸気下流側には、当該第1吸気通路15Aの流路面積を可変とする第1スロットルバルブ22Aが取り付けられている。第1吸気通路15Aにおける第1スロットルバルブ22Aよりも吸気下流側は、サージタンク16に接続されている。
【0013】
第1排気通路25Aにおける各気筒11からの分岐管の合流部分よりも排気下流側には、上記第1過給機12Aの第1タービン14Aが配置されている。第1排気通路25Aにおける第1タービン14Aよりも排気上流側からは第1バイパス通路28Aが延びている。第1バイパス通路28Aは、第1排気通路25Aにおける第1タービン14Aよりも排気下流側に接続されている。すなわち、第1バイパス通路28Aは、第1過給機12Aの第1タービン14Aを迂回している。第1バイパス通路28Aと第1排気通路25Aとの合流箇所には、当該第1バイパス通路28Aの流路を開閉する第1ウェイストゲートバルブ29Aが設けられている。図示は省略するが、第1ウェイストゲートバルブ29Aは、電動モータによって駆動される。また、第1ウェイストゲートバルブ29Aの近傍には、当該第1ウェイストゲートバルブ29Aの開度WP1を検出するための第1開度センサ42Aが配置されている。第1排気通路25Aにおける第1バイパス通路28Aの下流端との接続箇所よりも排気下流側には、排気を浄化する第1触媒27Aが設けられている。
【0014】
第1排気通路25Aからは、排気を吸気側に再循環させる排気再循環通路30が延びている。詳細には、排気再循環通路30は、第1排気通路25Aにおける第1バイパス通路28Aの上流端との接続箇所よりも排気上流側から延びている。排気再循環通路30は、サージタンク16に接続されている。排気再循環通路30の途中には、排気を冷却する排気再循環クーラ34が配置されている。排気再循環通路30における、排気再循環クーラ34よりも排気の流通方向下流側には、排気再循環通路30の流路を開閉する排気再循環バルブ32が取り付けられている。図示は省略するが、排気再循環バルブ32は、電動モータによって駆動される。また、排気再循環バルブ32の近傍には、当該排気再循環バルブ32の開度EPを検出するための再循環バルブ用開度センサ36が配置されている。
【0015】
第2吸気通路15B及び第2排気通路25Bには、これら第2吸気通路15B及び第2排気通路25Bに跨るようにして、第2過給機12Bが取り付けられている。第2過給機12Bにおける第2排気通路25B側には、第2過給機12Bの第2タービン14Bが配置されている。第2タービン14Bは排気の流れを利用して回転する。第2過給機12Bにおける第2吸気通路15B側には、第2過給機12Bの第2コンプレッサ13Bが配置されている。第2コンプレッサ13Bは、第2タービン14Bと一体的に回転し、吸気を気筒11側へと送り出す。
【0016】
第2吸気通路15Bにおける第2過給機12Bよりも吸気下流側には、吸気を冷却する第2インタークーラ23Bが配置されている。第2吸気通路15Bにおける第2インタークーラ23Bよりも吸気下流側には、当該第2吸気通路15Bの流路面積を可変とする第2スロットルバルブ22Bが取り付けられている。第2吸気通路15Bにおける第2スロットルバルブ22Bよりも吸気下流側は、サージタンク16に接続されている。
【0017】
第2排気通路25Bにおける各気筒11からの分岐管の合流部分よりも排気下流側には、上記第2過給機12Bの第2タービン14Bが配置されている。第2排気通路25Bにおける第2タービン14Bよりも排気上流側からは第2バイパス通路28Bが延びている。第2バイパス通路28Bは、第2排気通路25Bにおける第2タービン14Bよりも排気下流側に接続されている。すなわち、第2バイパス通路28Bは、第2過給機12Bの第2タービン14Bを迂回している。第2バイパス通路28Bと第2排気通路25Bとの合流箇所には、当該第2バイパス通路28Bの流路を開閉する第2ウェイストゲートバルブ29Bが設けられている。図示は省略するが、第2ウェイストゲートバルブ29Bは、電動モータによって駆動される。また、第2ウェイストゲートバルブ29Bの近傍には、当該第2ウェイストゲートバルブ29Bの開度WP2を検出するための第2開度センサ42Bが配置されている。第2排気通路25Bにおける第2バイパス通路28Bの下流端との接続箇所よりも排気下流側には、排気を浄化する第2触媒27Bが設けられている。
【0018】
以上のように、内燃機関100における第1バンク10A側及び第2バンク10B側の吸気構造及び排気構造は、第1バンク10A側にのみ排気再循環通路30及び排気再循環バルブ32が設けられている点を除いて、対称的な構造になっている。
【0019】
次に、第1ウェイストゲートバルブ29Aについて説明する。なお、第2ウェイストゲートバルブ29Bの構造は、第1ウェイストゲートバルブ29Aと同じであるので、説明を省略する。
【0020】
図2に示すように、第1ウェイストゲートバルブ29Aは、第1バイパス通路28Aと第1排気通路25Aとの合流箇所に位置している。第1ウェイストゲートバルブ29Aは、いわゆるスイングバルブである。詳細には、第1ウェイストゲートバルブ29Aは、第1バイパス通路28Aの出口を外側から塞ぐ略円盤状の弁体50を備えている。弁体50における外周部分の一部は、棒状のシャフト52の外周面に接続されている。シャフト52は、当該シャフト52の中心軸線を中心として回動可能になっている。このシャフト52が回動することによって、弁体50がスイングし、第1バイパス通路28Aの出口を塞いだ状態と、第1バイパス通路28Aの出口を開放した状態とに態様が変更される。
【0021】
ここで、本実施形態では、第1ウェイストゲートバルブ29Aの弁体50が、第1バイパス通路28Aの出口まわり(弁座)に当接した状態での開度WP1を「0」としている。そして、第1ウェイストゲートバルブ29Aの弁体50が、第1バイパス通路28Aの出口から離れる側に最もスイングした状態での開度WP1を「100」としている。また、
図3に示すように、第1バイパス通路28Aの流路内から第1バイパス通路28Aの軸線方向に第1バイパス通路28Aの出口を平面視(
図2の3矢印方向の平面視)したときに、第1バイパス通路28Aの出口の開口縁28p(バイパス通路28の内壁)と、第1ウェイストゲートバルブ29Aの弁体50の外縁50aとで囲まれる隙間Sの面積が、第1バイパス通路28Aの流路面積WA1に相当する。第1バイパス通路28Aの流路面積WA1は、第1ウェイストゲートバルブ29Aの開度WP1が大きくなるほど、大きくなる。
【0022】
次に、排気再循環バルブ32について説明する。
図4に示すように、排気再循環バルブ32は、排気再循環通路30の内壁に設けられた弁座60と、弁座60に対して動作するバルブ本体62とを備えている。詳細には、排気再循環通路30の途中において、当該排気再循環通路30の内壁からは、径方向内側に向けて弁座60が突出している。弁座60は、排気再循環通路30の軸線方向からの平面視で、リング状になっている。そのため、弁座60の径方向内側には、排気再循環通路30の軸線方向に貫通孔60aが貫通している。
【0023】
弁座60の貫通孔60aには、バルブ本体62のシャフト63が挿通されている。シャフト63の径は、貫通孔60aの径よりも小さくなっており、シャフト63の外周面と貫通孔60aの内壁との間は空隙となっている。詳しい図示は省略するが、シャフト63は、貫通孔60a内を排気再循環通路30の軸線方向に往復移動可能に支持されている。排気再循環通路30における排気の流通方向上流側を一方側としたとき、シャフト63の一方側の先端からは、略円錐形状の弁体64が突出している。弁体64は、シャフト63の先端から上記一方側に離れるほど径が大きくなっている。弁体64における円錐の底面の径は、貫通孔60aの径よりも大きくなっている。
【0024】
排気再循環バルブ32は、バルブ本体62が排気再循環通路30の軸線方向に動作することによって、弁体64における円錐の側面が弁座60に当接して当該弁座60の貫通孔60aの一方側の出口を塞いだ状態と、弁体64の側面が当該弁座60から離れて弁座60の貫通孔60aの一方側の出口を開放した状態とに態様が変更される。ここで、本実施形態では、排気再循環バルブ32に関して、弁体64における円錐の側面が弁座60に当接した状態での開度EPを「0」としている。そして、弁体64が弁座60から最も離間した状態での開度EPを「100」としている。また、弁座60の貫通孔60aにおける一方側の出口の開口縁と、弁体64の円錐の側面との間の、排気再循環通路30の軸線方向に関する距離Lを、周方向に亘って積分した面積が、排気再循環通路30の流路面積EAに相当する。排気再循環通路30の流路面積EAは、排気再循環バルブ32の開度が大きいほど、大きくなる。
【0025】
図1に示すように、第1ウェイストゲートバルブ29A、第2ウェイストゲートバルブ29B、及び排気再循環バルブ32の開度は、内燃機関100に搭載されている電子制御ユニット110(制御装置)で制御される。電子制御ユニット110は、各種のプログラム(ソフトウェア)が格納された不揮発性のROM、プログラムの実行に際してデータが一時的に記憶される揮発性のRAM等を備えたコンピュータである。電子制御ユニット110には、第1開度センサ42A、第2開度センサ42B、及び再循環バルブ用開度センサ36からの信号が入力される。また、電子制御ユニット110には、内燃機関100の各種部位に取り付けられている他のセンサからの信号も入力される。
【0026】
電子制御ユニット110は、排気再循環バルブ32の開度EPを制御するための排気再循環バルブ制御処理を実行する。詳細には、電子制御ユニット110は、所定周期毎に、機関回転数や機関負荷といった内燃機関100の運転状態に基づいて、排気再循環バルブ32の目標開度EGを算出する。そして、電子制御ユニット110は、排気再循環バルブ32の開度EPが目標開度EGとなるように、排気再循環バルブ32を制御する(電動モータに信号を送る)。
【0027】
電子制御ユニット110は、第1ウェイストゲートバルブ29Aの開度WP1を制御するための第1ウェイストゲートバルブ制御処理を実行する。電子制御ユニット110は、第1ウェイストゲートバルブ制御処理においては、排気再循環バルブ32の開度EPに依らずに、第1ウェイストゲートバルブ29Aの開度WP1を制御する。詳細には、電子制御ユニット110は、所定周期毎に、機関回転数や機関負荷といった内燃機関100の運転状態に基づいて、第1ウェイストゲートバルブ29Aの目標開度WG1を算出する。そして、電子制御ユニット110は、第1ウェイストゲートバルブ29Aの開度WP1が目標開度WG1となるように、第1ウェイストゲートバルブ29Aを制御する(電動モータに信号を送る)。
【0028】
電子制御ユニット110は、第2ウェイストゲートバルブ29Bの開度WP2を制御するための第2ウェイストゲートバルブ制御処理を実行する。電子制御ユニット110は、第2ウェイストゲートバルブ制御処理においては、排気再循環バルブ32の開度EPに応じて、第2ウェイストゲートバルブ29Bの開度WP2を制御する。具体的には、電子制御ユニット110は、第2ウェイストゲートバルブ制御処理においては、排気再循環バルブ32の開度EPが大きいほど第2ウェイストゲートバルブ29Bの開度WP2を大きい開度に制御する。
【0029】
次に、第2ウェイストゲートバルブ制御処理を詳述する。電子制御ユニット110は、第1ウェイストゲートバルブ制御処理を実行するのと同一の周期毎に、第2ウェイストゲートバルブ制御処理を実行する。
【0030】
図5に示すように、電子制御ユニット110は、第2ウェイストゲートバルブ制御処理を開始すると、ステップS10の処理を実行する。ステップS10において、電子制御ユニット110は、機関回転数や機関負荷といった内燃機関100の運転状態に基づいて、第2ウェイストゲートバルブ29Bの目標開度WG2の基本値VBを算出する。この実施形態では、基本値VBは、同一サイクルにおける第1ウェイストゲートバルブ29Aの目標開度WG1と同じ値になっている。ステップS10の処理の後、電子制御ユニット110は、処理をステップS20に進める。
【0031】
ステップS20において、電子制御ユニット110は、排気再循環通路30の流路面積EAを算出する。具体的には、電子制御ユニット110は、先ず、再循環バルブ用開度センサ36からの信号に基づいて、現在の排気再循環バルブ32の開度EPを検出する。ここで、電子制御ユニット110は、排気再循環バルブ32の開度EPと、排気再循環通路30の流路面積EAとの関係性を表した再循環バルブ変換マップを記憶している。再循環バルブ変換マップは、排気再循環通路30及び排気再循環バルブ32の寸法関係等に基づいたシミュレーションによって予め作成されている。電子制御ユニット110は、再循環バルブ変換マップを参照して、現在の排気再循環バルブ32の開度EPに対応する排気再循環通路30の流路面積EAを算出する。ステップS20の処理の後、電子制御ユニット110は、処理をステップS30に進める。
【0032】
ステップS30において、電子制御ユニット110は、ステップS20で算出した排気再循環通路30の流路面積EAを、後述する第2ウェイストゲートバルブ29Bの目標開度WG2の補正値VCを算出するための補正用面積VCAに設定する。ステップS30の処理の後、電子制御ユニット110は、処理をステップS40に進める。
【0033】
ステップS40において、電子制御ユニット110は、補正用面積VCAに基づいて、第2ウェイストゲートバルブ29Bの目標開度WG2の補正値VCを算出する。具体的には、電子制御ユニット110は、第2ウェイストゲートバルブ29Bの開度WP2と、第2バイパス通路28Bの流路面積WA2との関係性を表したウェイストゲートバルブ変換マップを記憶している。ウェイストゲートバルブ変換マップは、第2バイパス通路28B及び第2ウェイストゲートバルブ29Bの寸法関係等に基づいたシミュレーションによって予め作成されている。電子制御ユニット110は、ウェイストゲートバルブ変換マップを参照して、第2バイパス通路28Bの流路面積WA2が補正用面積VCAである場合における、第2ウェイストゲートバルブ29Bの開度WP2を、補正値VCとして算出する。ステップS40の処理の後、電子制御ユニット110は、処理をステップS50に進める。
【0034】
ステップS50において、電子制御ユニット110は、第2ウェイストゲートバルブ29Bの目標開度WG2の基本値VBを補正する。具体的には、電子制御ユニット110は、第2ウェイストゲートバルブ29Bの目標開度WG2の基本値VBに、補正値VCを加算する。補正後の第2ウェイストゲートバルブ29Bの目標開度WG2である補正後目標開度WG2Fが、最終的な第2ウェイストゲートバルブ29Bの目標開度WG2となる。ステップS50の処理の後、電子制御ユニット110は、処理をステップS60に進める。
【0035】
ステップS60において、電子制御ユニット110は、第2ウェイストゲートバルブ29Bの開度WP2が補正後目標開度WG2Fとなるように、第2ウェイストゲートバルブ29Bを制御する(電動モータに信号を送る)。ステップS60の処理を実行すると、電子制御ユニット110は、一連の処理を一旦終了する。
【0036】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
本実施形態の内燃機関100においては、排気再循環通路30が第1バンク10A側にのみ設けられている。こうした内燃機関100においては、第1バンク10A側でのみ排気が還流するため、第1タービン14Aと第2タービン14Bとに供給される排気の量に差が生じ得る。具体的には、仮に、排気再循環バルブ32が開いた状態になっていて、かつ、第1ウェイストゲートバルブ29A及び第2ウェイストゲートバルブ29Bが閉じた状態になっているものとする。この場合、排気再循環通路30を通じて第1排気通路25Aの排気がサージタンク16に戻される。そのため、この還流された分の排気が、第1タービン14Aに供給されなくなる。一方で、第2ウェイストゲートバルブ29Bが閉じていることから、第2タービン14Bに供給される排気が減少することはない。
【0037】
本実施形態の第2ウェイストゲートバルブ制御処理によれば、排気再循環バルブ32の開度EPに応じて第2ウェイストゲートバルブ29Bの開度WP2が大きくされる。このことから、排気再循環通路30を通じて第1排気通路25Aの排気がサージタンク16に戻される場合には、第2排気通路25Bの排気が第2バイパス通路28Bを通じて第2タービン14Bを迂回するようになる。したがって、第2タービン14Bに供給される排気も少なくなる。
【0038】
ここで、上記のとおり、排気再循環バルブ32が直線運動するタイプであるのに対し、第2ウェイストゲートバルブ29Bは回転運動するタイプである。つまり、排気再循環バルブ32と第2ウェイストゲートバルブ29Bとでは、バルブの構造が異なっており、開度及び通路の流路面積の関係が互いに異なっている。そのため、仮に、第2ウェイストゲートバルブ制御処理において、排気再循環バルブ32の開度EPをそのまま第2ウェイストゲートバルブ29Bの目標開度WG2の補正値VCに設定し、排気再循環バルブ32の開度EPの分だけ第2ウェイストゲートバルブ29Bの開度WP2を変更した場合、必ずしも、排気再循環通路30を通じて還流する排気の量に応じた分だけ、第2バイパス通路28Bに流す(第2タービン14Bを迂回する)排気の量を増やすには至らない。
【0039】
この点、上記構成では、排気再循環バルブ32の開度EPを排気再循環通路30の流路面積EAに換算した上で第2ウェイストゲートバルブ29Bの開度WP2を調整している。詳細には、排気再循環通路30の流路面積EAの分だけ第2バイパス通路28Bの流路面積WA2が大きくなるように、第2ウェイストゲートバルブ29Bの開度WP2を大きくしている。そのため、排気再循環通路30を通じて還流する排気の量に応じた分だけ、第2バイパス通路28Bに流す排気の量を増やすことができる。したがって、第1タービン14Aと第2タービン14Bとに流れる排気の量の差を低減できる。
【0040】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・排気再循環バルブ32の開度EPを排気再循環通路30の流路面積EAに換算することなく、第2ウェイストゲートバルブ29Bの開度WP2を調整してもよい。具体的には、排気再循環バルブ32の開度EPをそのまま第2ウェイストゲートバルブ29Bの目標開度WG2の補正値VCに設定してもよい。この場合、排気再循環バルブ32の開度EPの分だけ第2ウェイストゲートバルブ29Bの開度WP2が大きくなる。したがって、排気再循環バルブ32が開いている場合には、第2ウェイストゲートバルブ29Bの開度WP2は、当該第2ウェイストゲートバルブ29Bの目標開度WG2の基本値VBを補正しない場合よりも大きくなる。すなわち、排気再循環通路30を通じて排気が還流する場合には、第2バイパス通路28Bを流れる排気の量が、上記還流する排気の量を少なからず補償した量に増量される。
【0041】
・上記実施形態における再循環バルブ変換マップは、排気再循環バルブ32の開度EPと、排気再循環通路30の流路面積EAとの関係性を関係式で表したものであってもよい。
【0042】
・上記実施形態におけるウェイストゲートバルブ変換マップは、第2ウェイストゲートバルブ29Bの開度WP2と、第2バイパス通路28Bの流路面積WA2との関係性を関係式で表したものであってもよい。
【0043】
・排気再循環バルブの構造を変更してもよい。排気再循環バルブの構造を変更した場合でも、その構造に応じた再循環バルブ変換マップを、電子制御ユニット110に記憶しておけばよい。排気再循環バルブの構造を変更した場合における排気再循環通路30の流路面積EAは、排気再循環バルブを通過する際の排気の流路面積として適切なものを定めればよい。
【0044】
・第2ウェイストゲートバルブの構造を変更してもよい。第2ウェイストゲートバルブの構造を変更した場合でも、その構造に応じたウェイストゲートバルブ変換マップを、電子制御ユニット110に記憶しておけばよい。第2ウェイストゲートバルブの構造を変更した場合における第2バイパス通路28Bの流路面積WA2は、第2ウェイストゲートバルブを通過する際の排気の流路面積として適切なものを定めればよい。
【0045】
・第2ウェイストゲートバルブ29Bと同様に、第1ウェイストゲートバルブ29Aの構造を変更してもよい。
・同サイクルにおける、第1ウェイストゲートバルブ29Aの目標開度WG1と、第2ウェイストゲートバルブ29Bの目標開度WG2の基本値VBとが異なることもある。例えば、デポジット等の付着によって、目標開度に対する実際の開度が第1ウェイストゲートバルブ29Aと第2ウェイストゲートバルブ29Bとで異なる場合には、第1ウェイストゲートバルブ29Aの目標開度WG1と、第2ウェイストゲートバルブ29Bの目標開度WG2の基本値VBとを異なる値にすることもあり得る。
【0046】
・上記実施形態の内燃機関100の構成は、あくまでも概略的に例示したものであり、当該内燃機関100の構成は適宜変更可能である。例えば、排気再循環通路30は、サージタンク16よりも吸気上流側(但し、スロットルバルブよりも吸気下流側)で第1吸気通路15Aに接続されていたり、サージタンク16よりも吸気下流側でインテークマニホールドに接続されていたりしてもよい。また、例えば、第1吸気通路15Aと第2吸気通路15Bとは、それぞれのコンプレッサよりも吸気下流側、且つそれぞれのスロットルバルブよりも吸気上流側において互いに合流していてもよい。そして、合流した共通通路において、スロットルバルブを一つ設けてもよい。
【符号の説明】
【0047】
11…気筒、15A…第1吸気通路、15B…第2吸気通路、12A…第1過給機、12B…第2過給機、25A…第1排気通路、25B…第2排気通路、29A…第1ウェイストゲートバルブ、29B…第2ウェイストゲートバルブ、30…排気再循環通路、32…排気再循環バルブ、100…内燃機関、110…電子制御ユニット。