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特許7187966信号伝送システム、送信装置及び通信ユニット
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  • 特許-信号伝送システム、送信装置及び通信ユニット 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】信号伝送システム、送信装置及び通信ユニット
(51)【国際特許分類】
   H04B 3/02 20060101AFI20221206BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H04B3/02
H04R3/00 310
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018195651
(22)【出願日】2018-10-17
(65)【公開番号】P2020065152
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】北野 幹夫
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-106663(JP,A)
【文献】特表2016-535489(JP,A)
【文献】特開2004-112577(JP,A)
【文献】特表2006-527549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/02
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1出力信号を出力する第1の出力アンプと、前記第1の出力アンプと伝送線との間に設けられる一又は複数のリアクタンス素子を有し、第1の帯域のインピーダンスが前記第1の帯域以外の帯域と比較して小さい第1のインピーダンス回路と、を備えた第1送信装置と、
第2出力信号を出力する第2の出力アンプと、前記第2の出力アンプと伝送線との間に設けられる一又は複数のリアクタンス素子を有し、前記第1の帯域と異なる第2の帯域のインピーダンスが前記第2の帯域以外の帯域と比較して小さい第2のインピーダンス回路と、を備えた第2送信装置と、を備え、
前記第1の帯域において、前記第1の出力アンプから前記第2の出力アンプに流れる電流の値が前記第2の出力アンプの最大出力電流値以下となり、
前記第2の帯域において、前記第2の出力アンプから前記第1の出力アンプに流れる電流の値が前記第1の出力アンプの最大出力電流値以下となる、
信号伝送システム。
【請求項2】
前記第1送信装置は、前記第1の帯域より広い帯域で周波数成分を有する第1入力信号が供給され、前記第1入力信号の前記第1の帯域以外の周波数成分を減衰させて前記第1の出力アンプに出力する第1の送信フィルタを有する請求項1に記載の信号伝送システム。
【請求項3】
前記第2送信装置は、前記第2の帯域より広い帯域で周波数成分を有する第2入力信号が供給され、前記第2入力信号の前記第2の帯域以外の周波数成分を減衰させて前記第2の出力アンプに出力する第2の送信フィルタを有する請求項2に記載の信号伝送システム。
【請求項4】
前記伝送線と接続され、前記第1の帯域及び前記第2の帯域において前記伝送線のインピーダンスより入力インピーダンスが大きい第1受信装置と、
前記伝送線と接続され、前記第1の帯域及び前記第2の帯域において前記伝送線のインピーダンスより入力インピーダンスが大きい第2受信装置と、
を備える請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の信号伝送システム。
【請求項5】
前記第2受信装置は、前記第2の帯域の周波数成分を通過させ前記第2の帯域以外の周波数成分を減衰させる第2の受信フィルタを備え、前記第2の受信フィルタを用いて、前記第2出力信号の周波数成分を取り出して第2の受信信号を生成する請求項4に記載の信号伝送システム。
【請求項6】
前記第1受信装置は、前記第1の帯域の周波数成分を通過させ前記第1の帯域以外の周波数成分を減衰させる第1の受信フィルタを備え、前記第1の受信フィルタを用いて前記第1出力信号の周波数成分を取り出して第1の受信信号を生成する請求項5に記載の信号伝送システム。
【請求項7】
前記第1出力信号は、音信号であり、
前記第1受信装置は、スピーカであり、
前記伝送線は、前記スピーカに前記第1出力信号を供給するスピーカケーブルである、
請求項4又は請求項5に記載の信号伝送システム。
【請求項8】
前記伝送線は、ラインケーブルであり、
前記第1送信装置はラインレベルの前記第1出力信号を前記伝送線に出力する、
請求項4から請求項6までのうちいずれか1項に記載の信号伝送システム。
【請求項9】
前記第1の帯域の上限周波数は、前記第2の帯域の下限周波数より低く、
前記第1のインピーダンス回路に用いる一又は複数のリアクタンス素子はインダクタであり、
前記第2のインピーダンス回路に用いる一又は複数のリアクタンス素子はキャパシタである、
請求項1から請求項8までのうちいずれか1項に記載の信号伝送システム。
【請求項10】
第3出力信号を出力する第3の出力アンプと、前記第3の出力アンプと前記伝送線との間に設けられるインダクタとキャパシタとを有し、前記第1の帯域の上限周波数より高域、かつ前記第2の帯域の下限周波数より低域の第3の帯域のインピーダンスが前記第3の帯域以外の帯域と比較して小さい第3のインピーダンス回路と、を有する第3送信装置を備える、
請求項9に記載の信号伝送システム。
【請求項11】
第4出力信号を出力する第4の出力アンプと、前記第4の出力アンプと伝送線との間に設けられる一又は複数のリアクタンス素子を有し、前記第2の帯域のインピーダンスが前記第2の帯域以外の帯域と比較して小さい第4のインピーダンス回路と、を備えた第4送信装置を備え、
前記第2送信装置と前記第4送信装置とは、前記第2出力信号と前記第4出力信号とを排他的に前記伝送線に出力する、
請求項1から請求項10までのうちいずれか1項に記載の信号伝送システム。
【請求項12】
前記伝送線にインダクタを介して接続され、直流電圧を給電する給電装置と、
前記伝送線にインダクタを介して接続され、前記直流電圧を受電する受電装置とを
備え、
前記第1のインピーダンス回路は、前記第1の出力アンプと前記伝送線との間に直列に接続されるキャパシタを含み、
前記第2のインピーダンス回路は、前記第2の出力アンプと前記伝送線との間に直列に接続されるキャパシタを含む、
請求項1から請求項8までのうちいずれか1項に記載の信号伝送システム。
【請求項13】
第1の帯域の周波数成分が前記第1帯域以外の帯域の周波数成分と比較して大きい第1出力信号が供給される伝送線に接続される送信装置であって、
第2出力信号を出力する第2の出力アンプと、
前記第2の出力アンプと前記伝送線との間に設けられ、
前記第1の帯域と異なる第2の帯域のインピーダンスが前記第1の帯域のインピーダンスと比較して小さく、前記伝送線から流れ込み前記第2の出力アンプに流れ出る前記第1出力信号の電流の値を前記第2の出力アンプの最大出力電流値以下とする第2のインピーダンス回路と、
を備える送信装置。
【請求項14】
前記第2のインピーダンス回路は、前記第2の出力アンプと前記伝送線との間に接続された一又は複数のリアクタンス素子を有する請求項13に記載の送信装置。
【請求項15】
前記第2の帯域より広い帯域で周波数成分を有する第2入力信号が供給され、前記第2入力信号の前記第2の帯域以外の周波数成分を減衰させて前記第2の出力アンプに出力する第2の送信フィルタを有する請求項13または14に記載の送信装置。
【請求項16】
請求項13から請求項15までのうちいずれか1項に記載の送信装置と、
前記伝送線と接続され、前記第1の帯域及び前記第2の帯域において前記伝送線のインピーダンスより入力インピーダンスが大きい第2受信装置と、
を備える通信ユニット。
【請求項17】
前記第2受信装置は、前記第2の帯域の周波数成分を通過させ前記第2の帯域以外の周波数成分を減衰させる第2の受信フィルタを備え、前記第2の受信フィルタを用いて、前記第2出力信号の周波数成分を取り出して第2の受信信号を生成する請求項16に記載の通信ユニット。
【請求項18】
前記伝送線には、インダクタを介して直流電圧を給電する給電装置が接続され、
前記伝送線にインダクタを介して接続され、前記直流電圧を受電し、電力を前記送信装置に供給する受電装置を備え、
前記第2のインピーダンス回路は、第1の出力アンプと前記伝送線との間に直列に接続されるキャパシタを含む、
請求項16に記載の通信ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号伝送システム、送信装置及び通信ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、低域の音信号と高域のデータ信号とを合成部で合成し、合成した信号をスピーカから放音する装置と、マイクロホンで収音した音に基づいて音声信号とデータ信号とを再生するガイド端末とを備えたナビゲーションシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010ー86112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のナビゲーションシステムでは、帯域が異なる信号を合成してスピーカから放音させることによって、高域の信号と低域の信号をガイド端末に向けて一方向に伝送することはできるが、高域の信号を一方向に伝送し、低域の信号を逆方向に伝送することはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様の信号伝送システムは、第1出力信号を出力する第1の出力アンプと、前記第1の出力アンプと伝送線との間に設けられる一又は複数のリアクタンス素子を有し、第1の帯域のインピーダンスが前記第1の帯域以外の帯域と比較して小さい第1のインピーダンス回路と、を備えた第1送信装置と、第2出力信号を出力する第2の出力アンプと、前記第2の出力アンプと伝送線との間に設けられる一又は複数のリアクタンス素子を有し、前記第1の帯域と異なる第2の帯域のインピーダンスが前記第2の帯域以外の帯域と比較して小さい第2のインピーダンス回路と、を備えた第2送信装置と、を備え、前記第1の帯域において、前記第1の出力アンプから前記第2の出力アンプに流れる電流の値が前記第2の出力アンプの最大出力電流値以下となり、前記第2の帯域において、前記第2の出力アンプから前記第1の出力アンプに流れる電流の値が前記第1の出力アンプの最大出力電流値以下となる構成を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】本発明の第1実施形態に係る信号伝送システム10の全体の構成を示すブロック図である。
図1B】n個の送信装置20-1~20-nが出力する信号のレベルの一例を示すグラフである。
図2】出力アンプ26-1と出力アンプ26-2との間を流れる電流I_1及び電流I_2を説明するための説明図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る信号伝送システム10Aの全体の構成を示すブロック図である。
図4】信号伝送システム10Aに用いる送信装置20-2aの構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る信号伝送システム10Bの全体の構成を示すブロック図である。
図6】応用例に係る会議室管理システム10Cの全体の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[1.第1実施形態]
[1-1. 信号伝送システム10の全体の構成]
本発明に係る第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る信号伝送システム10の全体の構成を示すブロック図である。
信号伝送システム10は、n個の送信装置20-1、20-2、・・・20-nと、n個の受信装置40-1、40-2、・・・40-nと、伝送線100とを備える。但し、nは2以上の自然数である。信号伝送システム10では、n個の送信装置20-1~20-nの各々が、互いに異なる帯域の信号を伝送線100に出力する。図1Bにn個の送信装置20-1~20-nが出力する信号のレベルの一例を示す。この図に示されるように、信号伝送システム10では、n個の帯域B1~Bnに周波数成分を有する出力信号Vo_1~Vo_nが伝送線100を介して伝送される。また、n個の受信装置40-1~40-nの各入力インピーダンスは、いわゆるハイインピーダンスであり、伝送線100のインピーダンスと比較して大きい。
【0008】
以下、送信装置20-k及び受信装置40-kについて説明する。但しkは1≦k≦nを充足する自然数である。送信装置20-kは、送信フィルタ24-k、出力アンプ26-k、インピーダンス回路28-k、及び出力端子29-kを備える。送信フィルタ24-kには、入力信号Vinが供給される。送信装置20-kは、帯域Bkの周波数成分が帯域Bk以外の帯域の周波数成分と比較して大きい信号を伝送線100に出力する。この信号は帯域Bkについて周波数成分有する。送信フィルタ24-kは、入力信号Vi_kに対して帯域Bk以外の周波数成分を減衰させて出力アンプ26-kに出力する。従って、入力信号Vi_kが帯域Bkより広い帯域で周波数成分を有する場合に、入力信号Vi_kの帯域Bk以外の周波数成分を減衰させることができる。送信フィルタ24-kを用いることによって、帯域Bk以外の信号に与える影響を低減することができる。
【0009】
出力アンプ26-kは、送信フィルタ24-kを介して供給される入力信号Vi_kを増幅して出力信号Vo_kを生成する。出力アンプ26-kの典型例は、電力を増幅するパワーアンプであるが、これに限定されない。また、出力アンプ26-kは、過電流を保護するための保護回路を備える。保護回路は、出力アンプ26-kに最大出力電流が流れると、出力電流を制限する回路である。
【0010】
インピーダンス回路28-kは、出力アンプ26-kと出力端子29-kとの間に設けられる一又は複数のリアクタンス素子を備える。ここで、リアクタンス素子とは、周波数によってそのリアクタンスが変化する素子を意味し、周波数が大きくなると、印加する電圧と流れる電流の比が大きくなる誘導性リアクタンスを示す素子及び周波数が大きくなると印加する電圧と流れる電流の比が小さくなる容量性リアクタンスを示す素子を含む。例えばインダクタ又はキャパシタがリアクタンス素子に該当する。
【0011】
リアクタンス素子が有するリアクタンスは、複素インピーダンスの虚数部の値であり、電圧と電流の比であって、単位はオームである。リアクタンス素子を有するインピーダンス回路28-kは、少なくとも当該回路内にはリアクタンス素子が含まれることによって、当該回路の複素インピーダンスの虚数部にリアクタンスが含まれる結果、そのインピーダンスの値が印加する信号の周波数に応じて変動する特性を有している。インピーダンス回路28-k内にリアクタンス素子が一つの場合もあれば複数の場合もあり、例えばインダクタとキャパシタとの双方が接続されている場合も含まれる。
【0012】
また、インピーダンス回路28-kの入力と出力との間のインピーダンスは、帯域Bkのインピーダンスが帯域Bk以外の帯域と比較して小さい。従って、出力アンプ26-kから出力される出力信号Vo_kは、帯域Bkにおいて、ローインピーダンスで伝送線100に出力される。
なお、送信フィルタ24-kは、帯域Bkの周波数成分を通過させ、他の周波数成分を減衰させる目的で用いられる。このため、入力信号Vi_kから通過させるべき周波数成分以外の他の周波数成分を減衰させる必要がない場合には、設ける必要はない。即ち、入力信号Vi-kの周波数成分が帯域Bkより狭い場合には、送信フィルタ24-kを設ける必要はない。
【0013】
受信装置40-kは、伝送線100と接続されるバッファ回路44-kと、受信フィルタ46-kとを備え、受信信号Vr_kを出力する。バッファ回路44-kの入力インピーダンスは、いわゆるハイインピーダンスであり、n個の帯域B1~Bnにおいて伝送線100のインピーダンスよりも大きい。バッファ回路44-kは伝送線100を介して受信した信号を電圧増幅して出力する。なお、バッファ回路44-kは、電圧のゲインが「1」で電流増幅をしてもよい。受信装置40-kにおいて受信すべき信号の帯域は帯域Bkである。受信フィルタ46-kは、帯域Bkの周波数成分を通過させ、帯域Bk以外の周波数成分を減衰させる。受信フィルタ46-kによって、送信装置20-kから送信される出力信号Vo_kの周波数成分が取り出され、受信信号Vr-kが生成される。
なお、受信フィルタ46-kは、帯域Bkの周波数成分を通過させ、他の周波数成分を減衰させる目的で用いられる。このため、バッファ回路44-kに入力される信号から通過させるべき周波数成分以外の他の周波数成分を減衰させる必要がない場合には、設ける必要はない。
【0014】
伝送線100は、音信号を伝送する場合には、スピーカケーブル、ピンケーブルと呼ばれるオーディケーブルが好ましいが、電気信号を伝送することができるケーブルであれば、あらゆるケーブルを用いることができ、オーディオケーブルに限らない。
【0015】
上述した信号伝送システム10では、n個の送信装置20-1~20-nは、同時に出力信号Vo_1~Vo_nを伝送線100に対して出力することがある。インピーダンス回路28-1~28-nは、出力信号Vo_1~Vo_nが伝送線100に同時に出力されても各出力アンプ26-1~26-nの最大出力電流を超えないように、一又は複数のリアクタンス素子のインダクタンス又はキャパシタンスが設定されている。
【0016】
例えば、送信装置20-1(第1送信装置の一例)から出力信号Vo_1が出力され、送信装置20-n(第2送信装置の一例)から出力信号Vo_nが出力される場合を想定する。図2に示すように、出力アンプ26-1(第1の出力アンプの一例)、インピーダンス回路28-1(第1のインピーダンス回路の一例)、伝送線100、インピーダンス回路28-n(第2のインピーダンス回路の一例)の経路で電流I_1が出力アンプ26-n(第2の出力アンプの一例)に流れ込む。また、出力アンプ26-n、インピーダンス回路28-n、伝送線100、インピーダンス回路28-1の経路で電流I_nが出力アンプ26-1に流れ込む。仮に、インピーダンス回路28-1及びインピーダンス回路28-nが設けられていないと、出力アンプ26-1と出力アンプ26-nとが直接接続されることになる。即ち、出力アンプ26-1及び出力アンプ26-nの負荷がローインピーダンスとなり、最大出力電流値を超える電流が流れる。
【0017】
これに対して、本実施形態では、帯域B1において流れる電流の値が最大出力電流値を超えないようにインピーダンス回路28-nのインピーダンスが定められており、帯域Bnにおいて流れる電流の値が最大出力電流値を超えないようにインピーダンス回路28-1のインピーダンスが定められる。
【0018】
インピーダンス回路28-1のインピーダンスをZ1、インピーダンス回路28-2のインピーダンスをZ2、伝送線100のインピーダンスをZxとすると、出力アンプ26-1から出力アンプ26-2を見たインピーダンス及び出力アンプ26-2から出力アンプ26-1を見たインピーダンスは、Z1+Zx+Z2となる。送信装置20-2から送信装置20-1に流れ込む電流I_2について検討する。まず、送信装置20-2の出力信号Vo_2は、帯域B2の周波数成分が大きく、帯域B2以外の周波数成分が小さい。従って、電流I_2に起因する出力アンプ26-1の過電流は、帯域B2の周波数成分を検討すればよい。帯域B2においてインピーダンス回路28-2は、出力信号Vo_2を伝送線100に出力するために、インピーダンスが低く設定されている。従って、帯域Bnにおける出力アンプ26-2から出力アンプ26-1までのインピーダンスは、Z1、Zx、及びZ2のうち、Z1が支配的になる。このため、インピーダンス回路28-1のインピーダンスZ1は、帯域B2において流れる電流I_2の値が出力アンプ26-1の最大出力電流値以下となるように定められる。換言すれば、インピーダンス回路28-1によって、伝送線100からインピーダンス回路28-1に流れ込み出力アンプ26-1に流れ出る出力信号Vo_2の電流I_2の値が出力アンプ26-1の最大出力電流値以下となる。
【0019】
次に、送信装置20-1から送信装置20-2に流れ込む電流I_1について検討する。まず、送信装置20-1の出力信号Vo_1は、帯域B1の周波数成分が大きく、帯域B1以外の周波数成分が小さい。従って、電流I_1に起因する出力アンプ26-2の過電流は、帯域B1の周波数成分を検討すればよい。帯域B1におけるインピーダンスは、Z1、Zx、及びZ2のうち、Z2が支配的になる。このため、インピーダンス回路28-2のインピーダンスZ2は、帯域B1において流れる電流I_1の値が出力アンプ26-2の最大出力電流値以下となるように定められる。換言すれば、インピーダンス回路28-2を構成する一又は複数のリアクタンス素子のリアクタンス値は、伝送線100からインピーダンス回路28-1に流れ込み出力アンプ26-1に流れ出る電流I_2の値が出力アンプ26-1の最大出力電流値以下となるように定められる。インピーダンス回路28-2によって、伝送線100からインピーダンス回路28-2に流れ込み出力アンプ26-2に流れ出る出力信号Vo_1の電流I_1の値が出力アンプ26-1の最大出力電流値以下となる。
以上の検討は、2個の送信装置20-1及び20-2だけを備えるシステムに限られず、n個の送信装置20-1~20-nを備える信号伝送システム10においても同様である。
【0020】
インピーダンス回路28-1のインピーダンスを帯域B1においてローインピーダンスとなり帯域B2においてハイインピーダンスとなるように設定したので、帯域B1において電流I_1を送信装置20-1から送信装置20-2に向けて流しても出力アンプ26-2に過電流が流れない。また、インピーダンス回路28-2のインピーダンスを帯域B2においてローインピーダンスとなり帯域B1においてハイインピーダンスとなるように設定したので、帯域B2において電流I_2を送信装置20-2から送信装置20-1に向けて流しても出力アンプ26-1に過電流が流れない。よって、信号伝送システム10は、伝送線100を介して帯域の異なる信号を双方向に伝送することができる。
【0021】
また、信号伝送システム10において、出力信号Vo_1~Vo_kのうち、最も周波数が低いのは帯域B1に対応する出力信号Vo_1であり、最も周波数が高いのは帯域Bnに対応する出力信号Vo_nである。このため、インピーダンス回路28-1(第1のインピーダンス回路の一例)に用いるリアクタンス素子としてインダクタを採用してもよい。また、インピーダンス回路28-n(第2のインピーダンス回路の一例)に用いるリアクタンス素子としてキャパシタを採用してもよい。さらに、インピーダンス回路28-2からインピーダンス回路28-n-1までに用いるリアクタンス素子として、直列に接続されたインダクタ及びキャパシタを採用してもよい。この場合、インピーダンス回路28-1はローパスフィルタとして機能し、インピーダンス回路28-nはハイパスフィルタとして機能し、インピーダンス回路28-2からインピーダンス回路28-n-1まではバンドパスフィルタとして機能する。ここで、帯域B1(第1の帯域の一例)の上限周波数は帯域Bn(第2の帯域の一例)の下限周波数より低い。また、帯域B3(第3の帯域の一例)は、帯域B1の上限周波数より高域、かつ帯域Bnの下限周波数より低域である。送信装置20-3(第3送信装置の一例)は、出力信号Vo_3(第3出力信号の一例)を出力する出力アンプ26-3(第3の出力アンプの一例)とインピーダンス回路28-3(第3のインピーダンス回路の一例)を備える。インピーダンス回路28-3は、出力アンプ26-3と伝送線100との間に設けられるインダクタとキャパシタとを有し、帯域B3のインピーダンスが帯域B3以外の帯域と比較して小さい。
【0022】
上述した第1実施形態では、送信装置の個数と受信装置の個数が一致したが不一致であってもよい。mを1以上の自然数とした場合、信号伝送システム10は、n個の送信装置とm個の受信装置とを備えてもよい。例えば、送信装置20-kから出力される帯域Bkの出力信号Vo_kを複数の受信装置40-kで受信してもよい。この場合、出力信号Vo_kに複数の受信装置40-kのうち一つを特定する識別信号を含ませてもよい。複数の受信装置40-kの各々は、識別信号が自己の受信装置に割り当てられた識別信号であるかを判定する判定部を備える。出力信号Vo_kを複数の受信装置40-kで受信すると、判定部の判定結果が一致を示す場合に受信信号Vr_kを出力し、判定部の判定結果が不一致を示す場合に受信信号Vr_kを出力しない。
【0023】
[1-2. 信号伝送システム10の具体例]
次に、信号伝送システム10の具合例である信号伝送システム10Aについて説明する。この例では、帯域B1(第1の帯域の一例)と帯域Bn(第2の帯域の一例)とで信号を伝送する。また、帯域B1の下限周波数は0Hzであり、帯域B1の上限周波数は8kHzである。帯域B2の下限周波数は18kHz-30Hzであり、帯域B2の上限周波数は18kHz+30Hzである。
【0024】
図3は信号伝送システム10Aの構成例を示すブロック図である。この図に示されるように信号伝送システム10Aは、通信ユニットU1~U3と、スピーカ50-1及び50-2と、伝送線100とを備える。この例の伝送線100は、ツイストペア又は平行2芯のスピーカケーブルである。スピーカ50-1及び50-2の入力インピーダンスはハイインピーダンスであり、例えば、10kオームである。
【0025】
通信ユニットU1は、出力信号Vo_1を伝送線100に出力する。出力信号Vo_1は帯域B1の周波数成分が帯域B1以外の帯域の周波数成分と比較して大きい。通信ユニットU2及びU3は、出力信号Vo_2a及びVo_2bを伝送線100に出力する。出力信号Vo_2a及びVo_2bは、帯域B2の周波数成分が帯域B2以外の帯域の周波数成分と比較して大きい。通信ユニットU1の入力信号Vi_1は、20Hz~20kHの周波数成分を有する音信号である。通信ユニットU2及びU3の入力信号Vi_2a及びVi_2bは18kHzのキャリア信号を変調したデータ信号である。即ち、信号伝送システム10Aでは、伝送線100として音信号を伝送するスピーカケーブルに、データ信号を重畳して通信する。通信ユニットU2及びU3は、同じ帯域B2において通信するため、出力信号Vo_2a及びVo_2bを排他的に伝送線100に出力する。この例では、通信ユニットU2はマスター装置として機能し、通信ユニットU3はスレーブ装置として機能する。
【0026】
通信ユニットU1は、上述した送信装置20-1を備える。送信装置20-1の送信フィルタ24-1において、入力信号Vi_1の周波数成分が帯域B1に制限される。通信ユニットU2は送信装置20-2aと受信装置40-2aとを備え、通信ユニットU3は送信装置20-2bと受信装置40-2bとを備える。送信装置20-2a及び20-2bは、同一の構成である。また、受信装置40-2a及び40-2bは、同一の構成であり、例えば、受信装置40-2である。
【0027】
図4は送信装置20-2aの構成を示すブロック図である。同図において、図1に示す送信装置20-2と同一の構成には、同一の符号を付し、説明を省略する。送信装置20-2aは、制御回路27を備える点で送信装置20-2と相違する。なお、送信装置20-2aの制御回路27は、通信ユニットU2をマスター装置として機能させ、送信装置20-2bの制御回路27は、通信ユニットU3をスレーブ装置として機能させる。
【0028】
制御回路27は、出力アンプ26-2の出力をハイインピーダンス状態とするかローインピーダンス状態にするかを制御する。出力アンプ26-2の出力がローインピーダンス状態に制御されると出力信号Vo_2aが伝送線100に出力され、出力アンプ26-2の出力がハイインピーダンス状態に制御されると、出力信号Vo_2aが伝送線100に出力されない。
【0029】
マスター装置として機能する送信装置20-2aの制御回路27が、出力アンプ26-2の出力をローインピーダンス状態とする期間において、送信装置20-2bの制御回路27は出力アンプ26-2の出力をハイインピーダンス状態とする。また、スレーブ装置として機能する送信装置20-2bの制御回路27が、出力アンプ26-2の出力をローインピーダンス状態とする期間において、送信装置20-2aの制御回路27は出力アンプ26-2の出力をハイインピーダンス状態とする。
【0030】
このように、送信装置20-2aと送信装置20-2bとは、出力信号Vo_2aと出力信号Vo_2bとを排他的に伝送線100に出力するので、帯域B2において送信装置20-2aの出力アンプ26-2と送信装置20-2bの出力アンプ26-2とが短絡されることはない。なお、送信装置20-2a及び20-2bにおいて、出力アンプ26-2から出力端子29-2までの経路にリレーを設け、制御回路27がリレーをオン状態にするかオフ状態にするかを制御してもよい。
【0031】
スピーカ50-1及び50-2には、帯域B1の出力信号Vo_1と、帯域B2の出力信号Vo_2a及びVo_2bが供給される。スピーカ50-1及び50-2は、帯域B2の出力信号Vo_2a及びVo_2bを、十分再生できない場合もある。また、スピーカ50-1及び50-2が、帯域B2の出力信号Vo_2a及びVo_2bを、再生できても、人の聴覚では聞き取りづらい。このため、スピーカ50-1及び50-2からは、実質的に帯域B1の音が放音される。
【0032】
ここで、スピーカ50-1及び50-2は、出力信号Vo_1、Vo_2a及びVo_2bを受信する。スピーカ50-1及び50-2の入力インピ-ダンスは10kオームであり、伝送線100のインピーダンスより大きい。即ち、スピーカ50-1及び50-2は、伝送線100と接続され、帯域B1及び帯域B2において伝送線100のインピーダンスより入力インピーダンスが大きい受信装置として機能する。
【0033】
送信装置20-1のインピーダンス回路28-1は、インダクタで構成される。インダクタのインダクタンスは、例えば、1mHである。また、送信装置20-2a及び20-2bのインピーダンス回路28-2は、キャパシタで構成される。キャパシタのキャパシタンスは例えば0.01μFである。
【0034】
以上説明したように、信号伝送システム10において、送信装置20-1は、出力信号Vo_1(第1出力信号の一例)を出力する出力アンプ26-1(第1の出力アンプの一例)と、出力アンプ26-1と伝送線100との間に設けられる一又は複数のリアクタンス素子を有し、帯域B1(第1の帯域の一例)のインピーダンスが帯域B1以外の帯域と比較して小さいインピーダンス回路28-1(第1のインピーダンス回路の一例)と、を備える。また、送信装置20-2(第2送信装置の一例)は、出力信号Vo_2(第2出力信号の一例)を出力する出力アンプ26-2(第2の出力アンプの一例)と、出力アンプ26-2と伝送線100との間に設けられる一又は複数のリアクタンス素子を有し、帯域B1と異なる帯域B2(第2の帯域の一例)のインピーダンスが帯域B2以外の帯域と比較して小さいインピーダンス回路28-2(第2のインピーダンス回路の一例)とを備える。信号伝送システム10では、帯域B1において、出力アンプ26-1から出力アンプ26-2に流れる電流I_1の値が出力アンプ26-2の最大出力電流値以下となる。また、帯域B2において、出力アンプ26-2から出力アンプ26-1に流れる電流I_2の値が出力アンプ26-1の最大出力電流値以下となる。
【0035】
従って、帯域B1において電流I_1を送信装置20-1から送信装置20-2に向けて流しても出力アンプ26-2に過電流が流れない。帯域B2において電流I_2を送信装置20-2から送信装置20-1に向けて流しても出力アンプ26-1に過電流が流れない。よって、信号伝送システム10は、伝送線100を介して帯域の異なる信号を双方向に伝送することができる。
【0036】
また、送信装置20-1(第1送信装置の一例)は、帯域B1より広い帯域で周波数成分を有する入力信号Vi_1(第1入力信号の一例)が供給され、入力信号Vi_1の帯域B1以外の周波数成分を減衰させて出力アンプ26-1に出力する送信フィルタ24-1(第1の送信フィルタの一例)を有する。送信フィルタ24-1を用いることによって、帯域B1以外の信号に与える影響を低減することができる。
【0037】
また、送信装置20-2(第2送信装置の一例)は、帯域B2より広い帯域で周波数成分を有する入力信号Vi_2(第2入力信号の一例)が供給され、入力信号Vi_2の帯域B2以外の周波数成分を減衰させて出力アンプ26-2に出力する送信フィルタ24-2(第2の送信フィルタの一例)を有する。送信フィルタ24-2を用いることによって、帯域B2以外の信号に与える影響を低減することができる。
【0038】
また、信号伝送システム10は、伝送線100と接続され、帯域B1及び帯域B2において伝送線100のインピーダンスより入力インピーダンスが大きいスピーカ50-1(第1受信装置の一例)と、伝送線100と接続され、帯域B1及び帯域B2において伝送線100のインピーダンスより入力インピーダンスが大きい受信装置40-2(第2受信装置の一例)とを備える。この態様によれば、送信装置20-1及び送信装置20-2a(第2送信装置の一例)から送信される信号を効率よく受信することができる。
【0039】
また、受信装置40-2は、帯域B2の周波数成分を通過させ帯域B2以外の周波数成分を減衰させる受信フィルタ46-2(第2の受信フィルタの一例)を備え、受信フィルタ46-2を用いて、出力信号Vo_2b(第2出力信号の一例)の周波数成分を取り出して受信信号Vr_2a(第2の受信信号に一例)を生成する。このため、出力信号Vr_2bのノイズが低減される。
【0040】
また、受信装置40-1(第1受信装置の一例)は、帯域B1の周波数成分を通過させ帯域B1以外の周波数成分を減衰させる受信フィルタ46-1(第1の受信フィルタの一例)を備え、受信フィルタ46-1を用いて、出力信号Vo_1(第1出力信号の一例)の周波数成分を取り出して受信信号Vr_1(第1の受信信号に一例)を生成する。このため、受信信号Vr_1のノイズが低減される。
【0041】
また、送信装置20-2b(第4送信装置の一例)は、図4に示す送信装置20-2aと同一の構成であるので、出力信号Vo_2(第4出力信号の一例)を出力する出力アンプ26-2(第4の出力アンプの一例)と、出力アンプ26-2と伝送線100との間に設けられる一又は複数のリアクタンス素子を有し、帯域B2のインピーダンスが帯域B2以外の帯域と比較して小さいインピーダンス回路28-2(第4のインピーダンス回路の一例)とを備える。そして、図3に示す信号伝送システム10Aにおいて、送信装置20-2aと送信装置20-2bとは、出力信号Vo_2aと出力信号Vo_2bとを排他的に伝送線100に出力する。従って、同じ帯域の信号は同時に伝送線100に出力されないので、送信装置20-2aと送信装置20-2bとに過電流が流れることを抑制できる。
【0042】
[2.第2実施形態]
上述した第1実施形態において、信号伝送システム10及び10Aは、伝送線100を介して信号を伝送した。これに対して、第2実施形態において、信号伝送システム10Bは、伝送線100を介して信号及び電力を伝送する。
【0043】
図5は、第2実施形態に係る信号伝送システム10Bのブロック図である。同図において図4と同一の構成には、同一の符号を付し、その説明を省略する。信号伝送システム10Bは、通信ユニットU1aに設けられた給電装置60おいて直流電圧を発生し、伝送線100を介して、通信ユニットU2aに設けられた受電装置70a及び通信ユニットU2aに設けられた受電装置70bに直流電圧を供給する。
【0044】
通信ユニットU1aは、キャパシタ21-1、給電装置60、及びインダクタ61を備える点を除いて、図4に示す通信ユニットU1と同一の構成である。給電装置60は、送信装置20-1に直流電圧を電源電圧として供給する。また、給電装置60はインダクタ61を介して伝送線100に接続される。インダクタ61のインダクタンスは、給電装置60が送信装置20-1、20-2a及び20-2bの負荷とならように設定される。インダクタ61のインダクタンスは、例えば、100mHである。
【0045】
キャパシタ21-1は、送信装置20-1と伝送線100との間に設けられる。キャパシタ21-1によって、出力アンプ26-1(図1参照)に直流電圧が印加されない。なお、送信装置20-1のインピーダンス回路28-1のリアクタンス素子としてキャパシタが含まれる場合、キャパシタ21-1を省略することができる。キャパシタ21-1のキャパシタンスは、例えば、100μFである。
【0046】
また、スピーカ50-1と伝送線100との間にキャパシタ51-1が設けられ、スピーカ50-2と伝送線100との間にキャパシタ51-2が設けられる。キャパシタ51-1及びキャパシタ51-2によって、伝送線100に直流電圧が重畳してもスピーカ50-1及びスピーカ50-2に直流電圧が印加されない。
【0047】
通信ユニットU2aは、キャパシタ41-2a、インダクタ71a、及び受電装置70aを備える点を除いて、通信ユニットU2と同一の構成である。受信装置40-2aと伝送線100との間にはキャパシタ41-2aが設けられる。キャパシタ21-2aによって、受信装置40-2aに直流電圧が印加されない。なお、送信装置20-2aのインピーダンス回路28-2はキャパシタを含むので、出力アンプ26-2に直流電圧は印加されない。
【0048】
受電装置70aはインダクタ71aを介して伝送線100に接続される。インダクタ71aのインダクタンスは、受電装置70aが送信装置20-1、20-2a及び20-2bの負荷とならように設定される。インダクタ71aのインダクタンスは、例えば、100mHである。受電装置70は、通信ユニットU2aの電源回路として機能し、受信装置40-2aと送信装置20-2aに電源電圧を給電する。
【0049】
通信ユニットU3aは、キャパシタ41-2b、インダクタ71b、及び受電装置70bを備える点を除いて、通信ユニットU3と同一の構成である。受信装置40-2bと伝送線100との間にはキャパシタ41-2bが設けられる。キャパシタ21-2bによって、受信装置40-2bに直流電圧が印加されない。なお、送信装置20-2bのインピーダンス回路28-2はキャパシタを含むので、出力アンプ26-2に直流電圧は印加されない。
【0050】
受電装置70bはインダクタ71bを介して伝送線100に接続される。インダクタ71bのインダクタンスは、受電装置70bが送信装置20-1、20-2a及び20-2bの負荷とならように設定される。インダクタ71bのインダクタンスは、例えば、100mHである。受電装置70bは、通信ユニットU3bの電源回路として機能し、受信装置40-2bと送信装置20-2bに電源電圧を給電する。
【0051】
信号伝送システム10Bは、伝送線100にインダクタ61を介して接続され、直流電圧を給電する給電装置60と、伝送線100にインダクタを介して接続され、直流電圧を受電する受電装置70aとを備え、送信装置20-2aのインピーダンス回路28-1(第1のインピーダンス回路の一例)は、出力アンプ(第1の出力アンプの一例)と伝送線100との間に直列に接続されるキャパシタを含み、送信装置20-2bのインピーダンス回路28-1(第2のインピーダンス回路の一例)は、出力アンプ(第2の出力アンプの一例)と伝送線100との間に直列に接続されるキャパシタを含む。従って、直流電圧が出アンプの出力に印加されない。
【0052】
信号伝送システム10Bによれば、伝送線100を用いて直流電圧を伝送できるので、通信ユニット2a及び3aに、電源回路を設ける必要が無くなる。この結果、構成を簡素化することができる。
【0053】
[3.応用例]
次に、上述した信号伝送システム10の応用した会議室管理システム10Cについて説明する。図6は会議室管理システム10Cの構成を示すブロック図である。会議室管理システム10Cは、複数の会議室の各々について、温度と照明を集中して管理するとともに、複数の会議室の全てに音声の放送を提供する。
【0054】
図6に示されるように、会議室管理システム10Cは、管理装置80、j個の部屋ユニットUx-1~Ux-j、及び伝送線100を備える。但し、jは1以上の自然数である。この例では、j個の会議室の各々に部屋ユニットUx-1~Ux-jのいずれかが設けられている。部屋ユニットUx-1~Ux-jは同一の構成である。また、伝送線100としてスピーカケーブルが用いられる。
なお、図3を参照して説明した信号伝送システム10Aと同一の構成には、同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0055】
管理装置80は、送信装置20-1a及び20-2a、受信装置40-2a、処理装置81、入力装置82、表示装置83、記憶装置84、並びにバス85を備える。送信装置20-1aは、帯域B1に周波数成分を有する出力信号Vo_1を伝送線に100に出力する。帯域B1の下限周波数は0Hzであり、帯域B1の上限周波数は8kHzである。送信装置20-2aは、帯域B2に周波数成分を有する出力信号Vo_2を伝送線100に出力する。帯域B2の下限周波数は18kHz-30Hzであり、帯域B2の上限周波数は18kHz+30Hzである。出力信号Vo_1は音信号であり、出力信号Vo_2はデータ信号である。
【0056】
処理装置81は、管理装置80の全体を制御するプロセッサである。処理装置81は、例えば、周辺装置とのインタフェース、演算装置及びレジスタ等を含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)で構成される。
【0057】
記憶装置84は、処理装置81が読取可能な記録媒体であり、処理装置81が実行する管理プログラム、及び処理装置81が使用する各種のデータを記憶する。記憶装置84は、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)等の記憶回路の1種類以上で構成される。
【0058】
入力装置82は、各種の情報を入力するための機器であり、例えば、キーボード及びマイクロホンなどが該当する。管理者は、キーボードを用いて会議室の使用予定を入力し、あるいは、マイクロホンを用いて緊急時の放送音声を入力する。入力装置82によって入力された情報は、処理装置81に出力される。表示装置83は、処理装置81による制御のもとで各種の画像を表示する。
【0059】
処理装置81は、管理プログラムを実行することにより、予めユーザーが入力した会議室を使用するスケジュールに従って、各会議室の環境を制御する。例えば、管理装置80は、会議室の使用予定時間の前から当該会議室の温度を監視し、使用予定時間に適切な温度となるように、当該会議室の空調装置94を制御する。また、管理装置80は、会議室の照度を監視し、使用予定時間を過ぎても照度が高い場合に、当該会議室の照明装置92をオフするように制御する。また、処理装置81は、緊急時の放送音声を示す音信号を送信装置20-1aを介して伝送線100に出力する。
【0060】
次に、部屋ユニットUx-1は、スピーカ50-1、送信装置20-2b、受信装置40-2b、制御装置91、照明装置92、照度センサ93、空調装置94、温度センサ95、記憶装置96及びバス97を備える。送信装置20-2bは、帯域B2に周波数成分を有する出力信号Vo_2bを伝送線100に出力する。出力信号Vo_2bは帯域B2に周波数成分を有するデータ信号である。受信装置40-2bは、帯域B2に周波数成分を有するデータ信号を受信する。スピーカ50-1には、伝送線100を介して音信号とデータ信号が重畳した信号が供給される。このうちデータ信号は帯域B2の周波数成分を有するので、スピーカ50-1から放音される音に含まれるデータ信号の成分は、人の聴覚で殆ど認識することができない。従って、人が認識するスピーカ50-1から放音される音は、音信号に基づく音になる。
【0061】
制御装置91は、部屋ユニットUx-1の全体を制御するプロセッサである。制御装置91は、例えば、周辺装置とのインタフェース、演算装置及びレジスタ等を含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)で構成される。
【0062】
記憶装置96は、制御装置91が読取可能な記録媒体であり、制御装置91が実行する管理プログラム、及び制御装置91が使用する各種のデータを記憶する。記憶装置96は、例えば、ROM、EPROM、EEPROM、RAM等の記憶回路の1種類以上で構成される。
【0063】
照明装置92は、蛍光灯などの発光装置を含み、制御装置91の制御の下、発光装置のオン又はオフを切り替える。照度センサ93は、会議室の照度を検出する。空調装置94は、制御装置91の制御の下、冷房と暖房とを切り替える。温度センサ95は会議室の温度を検出する。
【0064】
制御装置91は、管理装置80の送信装置20-2aから送信されるデータ信号を受信装置40-2bを介して取得し、データ信号に含まれるコマンドに従って、照明装置92及び空調装置94を制御する。また、制御装置91は、データ信号に含まれるコマンドに従って、照度センサ93が検出した照度を示す照度データ及び温度センサ95が検出した温度を示す温度データを、送信装置20-2bを介して管理装置80に送信する。
【0065】
従って、管理装置80はマスター装置として機能し、各部屋ユニットUx-1~Ux-jはスレーブ装置として機能する。上述した会議室管理システム10Cによれば、各会議室に設けられるスピーカ50-1に音信号を供給するスピーカケーブルを用いて、データ信号を双方向に伝送することができる。
【0066】
上述した会議室管理システム10Cにおいて、第2実施形態で説明した給電装置60と受電装置70aとを適用してもよい。この場合、管理装置80に給電装置60を設け、部屋ユニットUx-1~Ux-jの各々に受電装置70aを設けてもよい。さらに、スピーカ50-1を収納するスピーカユニットに、受電装置70a、送信装置20-2b、受信装置40-2b、照度センサ93、及び温度センサ95、記憶装置96及びバス97を設けてもよい。そして、スピーカユニットと照明装置92とを第1の配線で接続し、スピーカユニットと空調装置94とを第2の配線で接続してもよい。この態様によれば、各会議室にスピーカユニットを取り付けて、各スピーカユニットと管理装置80とをスピーカケーブルで接続すればよいので、簡易に会議室管理システム10Cを構築できる。しかも、スピーカユニットに含まれる各構成要素に電力を供給するために、電源回路を個別に用意する必要もない。
【0067】
[4.変形例]
本発明は、以上に例示した実施形態に限定されない。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を併合してもよい。
【0068】
上述した実施の形態においては、伝送線100としてスピーカケーブルを例示したが、伝送線100はオーディオ機器を接続するためのラインケーブルであってもよい。例えば、プリアンプとメインアンプとをラインケーブルで接続し、ラインケーブルを用いて音信号にデータ信号を重畳した信号をラインレベルで伝送してもよい。ラインレベルはラインケーブルを用いてオーディオ機器間で伝送される信号のレベルである。ラインレベルはオーディオ機器の仕様、あるいはオーディオ機器間の信号伝送に関する規格によって定まる。この態様によれば、プリアンプとメインアンプとの間で双方向にデータ信号を伝送することが可能となる。
【0069】
また、上述した実施の形態として説明した信号伝送システム10Aに用いられる送信装置20-1は、出力信号Vo_1(第1出力信号の一例)を出力する出力アンプ26-1(第1の出力アンプの一例)と、出力アンプ26-1と伝送線100との間に設けられる一又は複数のリアクタンス素子を有し、帯域B1(第1の帯域の一例)のインピーダンスが帯域B1以外の帯域と比較して小さいインピーダンス回路28-1(第1のインピーダンス回路の一例)と、を備える。これにより帯域B1以外の信号を減衰させることができ、他の送信装置から送信装置20-1に向けて電流を流しても、出力アンプ26-1に過電流が流れないようにすることができる。
さらに、送信装置20-1(第1送信装置の一例)は、帯域B1より広い帯域で周波数成分を有する入力信号Vi_1(第1入力信号の一例)が供給され、入力信号Vi_1の帯域B1以外の周波数成分を減衰させて出力アンプ26-1に出力する送信フィルタ24-1(第1の送信フィルタの一例)を有してもよい。送信フィルタ24-1を用いることによって、帯域B1以外の信号に与える影響を低減することができる。
【符号の説明】
【0070】
10,10A,10B…信号伝送システム、20-1~20-n…送信装置、24-k…送信フィルタ、26-k…出力アンプ、28-1~28-n…インピーダンス回路、29-k…出力端子、40-k…受信装置、46-1…受信フィルタ、50-1…スピーカ、60…給電装置、70…受電装置。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6