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特許7187970バリアコーティングを備えた延伸成形構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】バリアコーティングを備えた延伸成形構造体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20221206BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20221206BHJP
   B29C 49/22 20060101ALI20221206BHJP
   B29B 11/04 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B32B27/18 Z
B29C49/06
B29C49/22
B29B11/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018199059
(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公開番号】P2020066147
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】村松 かんな
(72)【発明者】
【氏名】山田 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】澤 芳樹
【審査官】静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-536731(JP,A)
【文献】特開2016-210181(JP,A)
【文献】特開2018-051902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29B 7/00-11/14
13/00-15/06
B29C 31/00-31/10
37/00-37/04
49/00-49/46
49/58-49/68
49/72-51/28
51/42
51/46
71/00-71/02
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸成形基体と、該延伸成形基体表面に形成され且つ延伸追随性を有する被酸化性有機化合物を含有するバリアコーティングとを含む延伸成形構造体であって、
前記バリアコーティングが、前記被酸化性有機化合物を75質量%以上含む非バインダ型コーティングであることを特徴とする延伸成形構造体。
【請求項2】
前記バリアコーティングが、前記被酸化性有機化合物を90質量%以上含む非バインダ型コーティングである請求項1に記載の延伸成形構造体。
【請求項3】
前記延伸成形基体のバリアコーティング上に、カバー成形体が重ね合わされた二重構造を有している請求項1または2に記載の延伸成形構造体。
【請求項4】
前記カバー成形体が、延伸成形体である請求項3に記載の延伸成形構造体。
【請求項5】
前記被酸化性有機化合物が、延伸成形温度で流動性を示す請求項1~4の何れかに記載の延伸成形構造体。
【請求項6】
前記被酸化性有機化合物が、100℃での粘度が1~30000mPa・sの範囲にある請求項4に記載の延伸成形構造体。
【請求項7】
前記被酸化性有機化合物が、下記式(1):
【化1】
式中、環Xは、1つの不飽和結合を有する脂肪族環であり、
Yは、アルキル基である、
で表わされる酸無水物、該酸無水物から誘導されるエステル、アミド、イミド又はジカルボン酸、及び該酸無水物に由来する構成単位を有する重合体からなる群より選択された少なくとも一種である請求項6に記載の延伸成形構造体。
【請求項8】
前記バリアコーティングが、遷移金属触媒フリーのコーティングである請求項1~7の何れかに記載の延伸成形構造体。
【請求項9】
前記延伸成形基体が、エチレンテレフタレート系ポリエステルより形成されている請求項1~8の何れかに記載の延伸成形構造体。
【請求項10】
第1の延伸成形用プリフォームと、該第1の延伸成形用プリフォームに重ね合わされた第2の延伸成形用プリフォームとからなる二重構造延伸成形用プリフォームにおいて、
該第1の延伸成形用プリフォームと該第2の延伸成形用プリフォームとの間に被酸化性有機成分を含み且つ延伸追随性を有するバリアコーティングが存在しており、
前記バリアコーティングが、前記被酸化性有機化合物を75質量%以上含む非バインダ型コーティングであることを特徴とする二重構造延伸成形用プリフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリアコーティングを備えた延伸成形構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年において、プラスチックは、種々の形状に容易に成形できることから、各種の用途に使用されている。しかしながら、プラスチック製品は、金属製品やガラス製品に比してガスバリア性が劣っている。
このため、容器やフィルムなどの包装材として使用されるプラスチック製品のように、酸素等に対するバリア性が要求される用途に使用されるものでは、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂等のパッシブバリア材の層を用いた多層構造が導入されている。
一方、最近では、被酸化性有機化合物のようなアクティブバリア材も開発されており(例えば特許文献1~2参照)、包装材等の分野で使用されるようになっている。
【0003】
ところで、従来公知のアクティブバリア材は、包装材料などに使用される各種の熱可塑性樹脂ほどの成形性を有していないため、基材熱可塑性樹脂とブレンドした樹脂組成物の形態で使用に供され、各種樹脂成形体中の中間層として存在させることにより、酸素に対するバリア性を発現させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-115776号公報
【文献】WO2013/099921号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来公知のようなアクティブバリア材の使用形態では、他の樹脂成分との溶融混練が必要であるため、実際に使用に供されている樹脂成形体中に存在しているアクティブバリア材は、溶融混練による熱履歴により劣化している状態にあり、その性能を十分に発揮しているとは言い難い。
【0006】
従って、本発明の目的は、アクティブバリア材、即ち、酸素と反応することにより酸素捕捉性を示す被酸化性有機化合物が、溶融混練や溶融成形を経ることなく使用されて酸素遮断性が発揮されている構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、延伸成形基体と、該延伸成形基体表面に形成され且つ延伸追随性を有する被酸化性有機化合物を含有するバリアコーティングとを含む延伸成形構造体であって、
前記バリアコーティングが、前記被酸化性有機化合物を75質量%以上含む非バインダ型コーティングであることを特徴とする延伸成形構造体が提供される。
【0008】
本発明の延伸成形構造体においては、次の態様を好適に採用することができる。
(1)前記バリアコーティングが、前記被酸化性有機化合物を90質量%以上含む非バインダ型コーティングであること。
(2)前記延伸成形基体のバリアコーティング上に、カバー成形体が重ね合わされた二重構造を有していること。
(3)前記カバー成形体が、延伸成形体であること。
(4)前記被酸化性有機化合物が、延伸成形温度で流動性を示すこと。
(5)前記被酸化性有機化合物が、100℃での粘度が1~30000mPa・sの範囲にあること。
(6)前記被酸化性有機化合物が、下記式(1):
【化1】
式中、環Xは、1つの不飽和結合を有する脂肪族環であり、
Yは、アルキル基である、
で表わされる酸無水物、該酸無水物から誘導されるエステル、アミド、イミド又はジカルボン酸、及び該酸無水物に由来する構成単位を有する重合体からなる群より選択された少なくとも一種であること。
(7)前記バリアコーティングが、遷移金属触媒フリーのコーティングであること。
(8)前記延伸成形基体が、エチレンテレフタレート系ポリエステルより形成されていること。
【0009】
本発明によれば、また、第1の延伸成形用プリフォームと、該第1の延伸成形用プリフォームに重ね合わされた第2の延伸成形用プリフォームとからなる二重構造延伸成形用プリフォームにおいて、
該第1の延伸成形用プリフォームと該第2の延伸成形用プリフォームとの間に被酸化性有機成分を含み且つ延伸追随性を有するバリアコーティングが存在しており、
前記バリアコーティングが、前記被酸化性有機化合物を75質量%以上含む非バインダ型コーティングであることを特徴とする二重構造延伸成形用プリフォームが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の延伸成形構造体は、被酸化性有機化合物(即ち、アクティブバリア材)が延伸によって引き延ばされているバリアコーティングが、延伸成形基体の表面に設けられている点に重要な特徴を有する。
即ち、かかる延伸成形構造体では、被酸化性有機化合物が他の樹脂との溶融混練や溶融成形を経ることなく、コーティング(塗布)により形成されているため、溶融混練や溶融成形に起因する劣化が有効に回避され、その酸素吸収による酸素バリア機能が最大限に発揮される。
【0011】
また、上記バリアコーティングを形成する被酸化性有機化合物は、延伸追随性を有しており、延伸成形温度で流動性を有している。このため、延伸成形基体を成形するためのプリフォームの表面に塗布しておくことができる。このため、このプリフォームを延伸成形することにより、得られる延伸成形基体の表面には、この延伸に追随して薄く引き伸ばされた均一な厚みの被酸化性有機化合物によるバリアコーティングをひび割れ等を生じることなく延伸成形体表面に密着した状態で形成することができ、被酸化性有機化合物が示すバリア機能を効果的に発現させることができる。
【0012】
さらに、このバリアコーティングは、例えば、被酸化性有機化合物を75質量%以上含む非バインダ型のコーティングであり、実質上、被酸化性有機化合物そのものにより形成された層となっている。このため、被酸化性化合物が分散された樹脂組成物により形成された従来のバリア層と比較すると、各段に高い酸素遮断性を示し、これも、本発明の大きな利点である。
【0013】
本発明の延伸成形構造体は、上記の被酸化性有機化合物によるバリアコーティングによる酸素遮断機能を効率よく実施するために、このバリアコーティング上に、カバー成形体を重ね合わせて、二重構造成形体として使用に供することが好適である。
即ち、被酸化性有機化合物によるバリアコーティングが直接大気中に露出している形態では、被酸化性有機化合物の酸素吸収能が短期間で消耗してしまうが、この上にカバー成形体を重ねておくことにより、被酸化性有機化合物の酸素吸収能の消耗を有効に緩和させることができる。
【0014】
本発明においては、被酸化性有機化合物が延伸追随性を有しているため、カバー成形体として延伸成形体を使用し、延伸成形基体とカバー成形体と得るための延伸成形を同時に行うことができる。即ち、延伸成形基体を形成するためのプリフォーム(第1のプリフォーム)の表面にバリアコーティングを形成し、このバリアコーティングを覆うように、カバー成形体を形成するためのプリフォーム(第2のプリフォーム)を重ねてスタックプリフォームを形成し、このスタックプリフォームについて延伸成形を行うことにより、1回の延伸成形により二重構造を有する延伸成形構造体を得ることができる。このような二重構造容器は、内容器内への酸素の透過が有効に防止され、内容器内に収容されている内容物の鮮度をより効果的に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の延伸成形体の構造を説明するための概略断面図。
図2】本発明の延伸成形体の好適な形態である二重構造体を説明するための概略断面図。
図3】本発明の延伸成形体の好適例である二重構造体が適用される二重構造容器の成形直後における概略側断面図。
図4図3の二重構造容器の製造に用いる第1のプリフォーム(内容器成形用プリフォーム)と第2のプリフォーム(外容器成形用プリフォーム)とを示す概略側断面図。
図5】第1のプリフォームが第2のプリフォーム内に収容されて保持されているスタックプリフォームを示す概略側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照して、本発明の延伸成形構造体100は、延伸成形基体101と、延伸成形基体の表面に形成されているバリアコーティング103とを有している。
【0017】
延伸成形基体101は、延伸成形されたものである限り、用途に応じた任意の形状を有していてよい。
また、このような延伸成形構造体100は、図2に示されているように、通常、延伸成形基体101上に形成されているバリアコーティング103を覆うように、カバー成形体105が重ねられた形で使用に供される。
【0018】
<延伸成形基体101>
バリアコーティング103の下地となる第1の延伸成形体101は、その用途に応じて、適宜の形状を有してればよい。例えば、この延伸構造体100を包装等の用途に使用する場合、包装される物質の形態に応じて、フィルムないしはシート等の形態を有していてよいし、また、容器のような形態を有するものであってもよい。
【0019】
また、この延伸成形体101は、延伸成形可能な各種の熱可塑性樹脂により形成されているものであり、その具体例としては、以下のものを例示することができる。
オレフィン系樹脂、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体、環状オレフィン共重合体など;
エチレン・ビニル系共重合体、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等;
スチレン系樹脂、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α-メチルスチレン・スチレン共重合体等;
ビニル系樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等;
ポリアミド樹脂、例えば、ナイロン6、ナイロン6-6、ナイロン6-10、ナイロン11、ナイロン12等;
ポリエステル樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリトリメチレンフラノエート(PTF)及びこれらの共重合ポリエステル等;
ポリカーボネート樹脂;
ポリフエニレンオキサイド樹脂;
生分解性樹脂、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)及びこれらの共重合体等;
勿論、成形性が損なわれない限り、これらの熱可塑性樹脂のブレンド物を使用することもできる。
また、包装材の分野では、特に上記の中でも、ポリエチレンテフタレート等のポリエステルや、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が好適であり、延伸による耐熱性向上等の利点が顕著に生じるという点で、エチレンテレフタレート系ポリエステルが最も好適に使用される。
【0020】
上記の熱可塑性樹脂の成形体について延伸成形を行うことにより、配向結晶化が生じ、耐熱性等の特性が向上した延伸成形基体101が得られるわけであるが、この延伸成形は、それ自体公知の手段で行われる。即ち、目的とする形状に応じて、樹脂のガラス転移点以上、融点未満の成形温度で、ブロー延伸、真空成形(プラグアシスト成形)等によって1軸方向或いは2軸方向への延伸操作を行うことにより、シート状、ボトル状、カップ状等の形態を有する延伸成形基体101が得られる。
延伸倍率等は、用途に応じて、適宜設定される。
【0021】
<バリアコーティング103>
本発明においては、延伸成形基体101の酸素透過を抑制するために、バリアコーティング103が設けられるが、かかるバリアコーティング103は、被酸化性有機化合物のコーティングにより形成される。即ち、被酸化性有機化合物が酸素と反応して酸化されることにより酸素の透過が遮断され、所謂アクティブバリア材としての機能を示すわけである。
【0022】
このような被酸化性有機化合物は、それ自体公知であり、不飽和脂肪族結合を有する種々の化合物、例えば、ポリブタジエンやポリイソプレン等の脂肪族不飽和結合を有するポリエン重合体、オレイン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和脂肪酸や、該不飽和脂肪酸から誘導されるエステル、アミド、アミン、イミドなどや、不飽和脂肪族環を有する酸無水物、及び該酸無無水物から誘導されるエステル、アミド、アミン、イミド、さらには、これらの混合物などが代表的であるが、本発明では、これらの中でも、延伸追随性を有するもの、具体的には、延伸成形時に流動性を示す化合物が使用される。即ち、このような延伸追随性を有する被酸化性有機化合物を用いることにより、上記のバリアコーティング103を、延伸成形基体101を形成するためのプリフォームに形成し、この状態に延伸成形を行うことにより、クラックや剥がれなどを生じることなく、しかも延伸成形体101の特性を損なうことなく、その表面にバリアコーティング103を有する延伸成形基体101(延伸成形構造体100)を得ることができる。
【0023】
例えば、延伸追随性を有していない被酸化性有機化合物では、延伸成形によるクラックや、膜剥がれなどが生じてしまうため、その酸素吸収による酸素遮断性を十分に発揮させることができない。従って、既に延伸成形により製造された延伸成形基体101の表面に、直接或いは有機溶媒等を用いて被酸化性有機化合物を塗布することによりバリアコーティング103を形成することとなるが、この場合には、乾燥による熱や有機溶媒との接触等により、延伸によるひずみの収縮が生じ、形状や剛性などの特性が損なわれてしまうおそれがある。しかるに、延伸追随性を有する被酸化性有機化合物を用いることにより、延伸に先立って、延伸成形基体101を成形するためのプリフォームやプレート、シートにバリアコーティング103を形成しておくことができるため、上記のような不都合を有効に回避することができる。
【0024】
また、上記の説明から理解されるように、延伸追随性を有するとは、延伸成形温度で適度な流動性を有することを意味する。例えば、エチレンテレフタレート系ポリエステルでは、一般に90~120℃程度の温度で延伸成形が行われることから、用いる被酸化性有機化合物としては、100℃での粘度が1~30000mPa・sの範囲にあるものが好適に使用される。即ち、上記範囲よりも高粘度の化合物では、延伸追随性が不満足となり、延伸成形に際して、クラックや膜剥がれ等を生じ易くなってしまう。
【0025】
本発明においては、アクティブバリア材として公知の被酸化性有機化合物の中から、上記のような粘度を示すものを用いてバリアコーティング103が形成されるが、本発明では、特に下記式(1):
【化2】
式中、環Xは、1つの不飽和結合を有する脂肪族環であり、
Yは、アルキル基である、
で表わされる酸無水物、該酸無水物から誘導されるエステル、アミド、イミド又はジカルボン酸、及び該酸無水物に由来する構成単位を有する重合体からなる群より選択された少なくとも一種の中から、上記のような粘度を有するものを使用することが好ましい。このような化合物は、酸素との反応により臭い等の原因となるアルデヒドやケトン等の低分子化合物が生成しないという利点がある。
【0026】
上記の式(1)において、脂肪族環Xは、一つの不飽和結合を有する6員環、即ち、シクロヘキセン環であり、不飽和結合の位置は、3位及び4位の何れでもよいが、特に3位であることが被酸化性の観点から好適である。また、アルキル基としては、特に制限されないが、一般的には、合成上及び被酸化性の観点から、炭素数が3以下の低級アルキル基、特にメチル基が好ましく、その結合位置は、一般に3位或いは4位の何れでもよい。このような酸無水物は、アルキルテトラヒドロ無水フタル酸であり、無水マレイン酸とジエンとのディールスアルダー反応により得られ、それぞれ異性体の混合物の形態で得られ、その混合物のまま、機能性材料として使用することができる。
本発明において、上記酸無水物の最も好適な例としては、下記式(2)で表される3-メチル-Δ-テトラヒドロフタル酸無水物、及び下記式(3)で表される4-メチル-Δ-テトラヒドロフタル酸無水物を挙げることができる。
【0027】
【化3】
【0028】
【化4】
【0029】
また、上記の酸無水物は、それ自体公知の方法で誘導体を形成し得るが、不飽和脂環構造が維持されている限り、このような誘導体を酸素吸収成分(B)として使用することができる。即ち、上記の酸無水物から誘導されるエステル、アミド、イミド、或いはジカルボン酸を、被酸化性の機能性材料して使用することができる。
【0030】
上記のエステルは、アルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物と各種アルコールと反応させて得られるエステルであり、エステル化に用いるアルコールとしては、特に制限されず、メチルアルコールやエチルアルコールやプロピルアルコール等の脂肪族アルコールやフェノールやベンジルアルコール等の芳香族アルコールの何れも使用することができる。さらにグリコール等の多価アルコールも使用することができる。この場合には、1分子中のアルコールの数に相当する数の不飽和脂環構造を導入することができる。
また、かかるエステルは、上記酸無水物の部分エステルであってもよい。
即ち、このようなエステルは、例えば下記式で表される。
R-O-OC-Z-CO-O-R
HOOC-Z-CO-O-R
或いは
HOOC-Z-CO-O-R-O-CO-Z-COOH
式中、Zは、酸無水物が有する不飽和脂環であり、
Rは、反応に用いたアルコールに由来する有機基である。
【0031】
また、上記のアミドは、アルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物と各種アミン化合物と反応させて得られるものである。
用いるアミンは、特に制限されず、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン等の脂肪族アミンや、フェニルアミン等の芳香族アミンの何れも使用することができ、酸無水物基を形成している2個のカルボニル基の内の一方がアミド化されたものであってもよいし、両方がアミド化されたものであってもよい。さらに、モノアミンに限定されず、ジアミン、トリアミン等の多価アミンも使用することができ、この場合には、1分子中のアミンの数に相当する数の不飽和脂環構造を導入することができる。
【0032】
また、イミドは、上記のアミドを熱処理してイミド化したものであり、例えば、下記式;
HOOC-Z-CONH-R
或いは
HOOC-Z-CONH-R-CONH-Z-COOH
式中、Zは、酸無水物が有する不飽和脂環であり、
Rは、反応に用いたアミンに由来する有機基である、
で表されるアミドを熱処理することにより得られ、下記式;
Z-(CO)-N-R
或いは
Z-(CO)-N-R-N-(CO)-Z
式中、Z及びRは、上記と同じである、
で表される。
【0033】
さらに、ジカルボン酸は、酸無水物が加水分解して酸無水物基が開裂したものであり、下記式で表される。
HOOC-Z-COOH
式中、Z及びRは、上記と同じである。
【0034】
さらに、前述した酸無水物に由来する構成単位を有する重合体も、酸素吸収性を示すため、粘度が前述した範囲内にある限り、使用することができる。即ち、前述した式(1)で表される酸無水物は、ポリエステルを形成する二塩基酸成分として使用することができる。このような共重合ポリエステルは、分子鎖中に不飽和脂環構造を有しており、従って、所定の酸素吸収性(被酸化性)を示すため、酸素遮断性を付与する機能性材料として使用することが可能となるわけである。
【0035】
また、本発明においては、上述した一般式で表される酸無水物、或いは該酸無水物から誘導される化合物の中でも、特に分子量が2000以下、より好ましくは1000以下の非ポリマー型の化合物(即ち、繰り返し単位を分子中に有していない化合物)が、粘度が前述した範囲内あるものが多く、しかも、分子の運動性が高いため、特に酸素との反応性が高く、高い酸素吸収性を示す上で好適である。
さらに、このような低分子量の非ポリマー型の化合物の中でも、特に前記一般式(1)の酸無水物とアミンとの反応物であるアミドを熱処理して得られるイミド化合物が特に高い酸素吸収能を示す。
【0036】
このようなイミド化合物の製造に使用される前記アミンとしては、脂肪族アミン及び芳香族アミンのいずれも使用することができる。
【0037】
なお、上記の脂肪族アミン及び芳香族アミンの例としては、メチルアミン、メチレンジアミン、プロピルアミン、プロピレンジアミン、ブチルアミン、ブチレンジアミン、ペンチルアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプチルアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクチルアミン、オクタメチレンジアミン、ノニルアミン、ノナメチレンジアミン、デシルアミン、デカメチレンジアミン、ウンデシルアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデシルアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデシルアミン、トリデカメチレンジアミン、テトラデシルアミン、テトラデカメチレンジアミン、ペンタデシルアミン、ペンタデカメチレンジアミン、ヘキサデシルアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、ヘプタデシルアミン、ヘプタデカメチレンジアミン、オクタデシルアミン、オクタデカメチレンジアミン、ノナデシルアミン、ノナデカメチレンジアミン、エイコシルアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、トリス(2-アミノエチル)アミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,4,6-トリアミノー1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリアミノピリミジン等を挙げることができる。
【0038】
特に、本発明においては、特に高い酸素遮断性を示し、しかも、粘度が前述した範囲にあるという観点から、一般式(1)の酸無水物から誘導されるメタキシリレンビスイミド(100℃での粘度:1347mPa・s)、ヘキサメチレンビスイミド(100℃での粘度:97.5mPa・s)がもっとも好適に使用される。
【0039】
さらに、上述した被酸化性有機化合物からなるバリアコーティング103は、特に、非バインダ型であり、バインダとなるような樹脂は使用されておらず、被酸化性有機化合物自体の塗布により形成される。即ち、このバリアコーティング103は、樹脂等の高融点材料との溶融混練や、押出成形や射出成形などの溶融成形により形成されるものではないため、被酸化性有機化合物の劣化が有効に回避されているという大きな利点を有している。
【0040】
また、バリアコーティング103は、実質的に被酸化性有機化合物を主体としているため、例えばポリエステル等の熱可塑性樹脂にブレンドされた樹脂組成物から形成されたバリア層と比較して、極めて大きな酸素遮断性を示す。即ち、バリアコーティング103そのものが、被酸化性有機化合物から形成されているといってよいからである。
【0041】
さらに、本発明において、上記のバリアコーティング103には、その特性を損なわない範囲内で、例えば、バリアコーティング103中に75質量%以上、特に90質量%以上の量で被酸化性有機化合物が含まれている限りにおいて、種々の配合剤が添加されていてよい。
【0042】
このような配合剤として代表的なものは、遷移金属触媒である。遷移金属触媒は、所謂触媒量という非常に微量(例えば、被酸化性有機化合物当り、遷移金属換算で1000ppm以下)で酸素との反応性を高めることができるため、このような遷移金属触媒をバリアコーティング103中に存在させることは可能である。
しかるに、上述したバリアコーティング103は、ほとんど被酸化性有機化合物そのものによって形成されており、それ自体で高い酸素吸収性を示すため、コストの低減などを考慮すれば、遷移金属触媒フリーとすることが好適である。
【0043】
かかる遷移金属触媒は、遷移金属の低価数の無機塩、有機塩或いは錯塩の形で使用される。
かかる遷移金属触媒において、遷移金属としては、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族金属が好適であるが、他に銅、銀等の第I族金属、錫、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウム等の第V族金属、クロム等の第VI族金属、マンガン等の第VII族金属等であってもよい。これらの中でも特にコバルトは、酸素吸収性(酸化性有機成分の酸化)を著しく促進させるため、特に好適である。
【0044】
また、上記遷移金属の無機塩としては、塩化物などのハライド、硫酸塩等のイオウのオキシ塩、硝酸塩などの窒素のオキシ酸塩、リン酸塩などのリンオキシ塩、ケイ酸塩等が挙げられる。
【0045】
遷移金属の有機塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩などが挙げられるが、本発明においては、カルボン酸塩が好適である。その具体例としては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ギ酸、シュウ酸、スルファミン酸、ナフテン酸等の遷移金属塩を挙げることができる。
【0046】
遷移金属の錯体としては、β-ジケトンまたはβ-ケト酸エステルとの錯体が挙げられる。
【0047】
また、上記の遷移金属触媒以外には、例えば被酸化性有機化合物の延伸追随性を高めるために、粘度調整剤などを配合することもでき、さらに、その特性を損なわない範囲内で、消泡剤、充填剤、着色剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、金属セッケン、ワックス、改質用樹脂乃至ゴム、等の公知の配合剤を、それ自体公知の処方に従って配合できる。
【0048】
本発明において、上述したバリアコーティング103は、例えば、被酸化性有機化合物を加熱して適宜の流動性を付与した塗布液或いはエタノール等の揮発性有機溶媒に被酸化性有機化合物を溶解乃至分散させることにより調製された塗布液を、スプレー噴霧、ディッピング、ロールコート等を用いて、必要に応じ塗布性を高めるための表面処理やアンカーコートを施した延伸成形基体101の表面或いは延伸成形基体101を得るためのプリフォームの表面に塗布し、適宜乾燥することにより形成される。
また、先にも述べたように、このバリアコーティング103は、延伸成形基体101を得るためのプリフォームの表面に塗布し、次いで、延伸成形を行って延伸成形基体101を成形することにより、バリアコーティング103を形成することが、このバリアコーティング103の特性を活かす上で最も好適である。
【0049】
尚、図1には、延伸成形基体1の一方の表面にバリアコーティング103が形成されているが、使用形態によっては、延伸成形基体1両面にバリアコーティング103が形成されていてもよい。
【0050】
<カバー成形体105>
ところで、前述したバリアコーティング103は、被酸化性有機化合物から形成されているため、酸素吸収による酸素遮断性が極めて高いが、このバリアコーティング103が直接大気中に露出していると、その酸素吸収能が短期間で消耗してしまう。このため、図2に示されているように、このバリアコーティング103を覆うように、カバー成形体105を設けた二重構造とすることが好ましい。
【0051】
本発明において、このカバー成形体105は、バリアコーティング103が直接大気中に露出しないように設けるものであるため、種々の樹脂フィルム(例えばシュリンクフィルムや印刷フィルムなど)、蒸着等により酸化珪素等の金属酸化物の蒸着膜が設けられた樹脂フィルム、或いは金属箔などであってよいが、延伸追随性を有しているバリアコーティング103の機能を最大限に発揮させるため、延伸成形基体101と同様、延伸成形体であることが最も好適である。
即ち、カバー成形体105が延伸成形体により形成されている場合、このカバー成形体を得るためのプリフォームを、バリアコーティング103が設けられた延伸成形体101用のプリフォームに重ね合わせたスタックプリフォームとし、このスタックプリフォームを用いての延伸により、カバー成形体5を、バリアコーティング103を備えた延伸成形基体101と同時に得ることができるからである。
【0052】
<二重構造を利用した延伸構造体100の好適な形態>
上述した図2に示されているような二重構造を有する延伸構造体100は、種々の形態に適用することができるが、特に二軸延伸ブロー成形によって成形される二重構造容器として好適に使用される。
【0053】
このような二重構造容器の形態は、例えば図3に示されている。
図3において、上記の二重構造を有する延伸構造体100が適用された二重構造容器は、全体として10で示されており、外容器1と、外容器1の内部に収容されている内容器3とから構成されており、外容器1の内面と、内容器3の外面との間にバリアコーティング5が設けられている。この例では、外容器1がカバー成形体105に、内容器3が延伸成形基体101に対応してもよいし、またその逆でもよい。また、図3におけるバリアコーティング5は、図2のバリアコーティング103と同じである。
【0054】
図3において、外容器1は、首部1a、首部1aに連なる胴部1b及び胴部1bの下端を閉じている底部1cとから形成されており、胴部1b及び底部1cがブロー延伸されている部分であり、首部1aは、ブロー延伸されていない固定部であり、ブロー延伸による薄肉化はされていない。また、首部1aには必要により空気導入口7が形成され、胴部1bの中央部分には、スクイズし易いように、凹んだスクイズ領域が形成されている。
【0055】
また、図3の例では、外容器1の首部1aの外面にサポートリング1dが形成されている。
【0056】
一方、内容器3は、非延伸部である首部3aと、ブロー延伸されて薄肉となっている胴部3bとを有しており、成形直後の段階では、胴部3bの外面は、外容器1の胴部1b及び底部1cの内面に密着している。
このような内容器3において、首部3aは、外容器1の首部1a内に嵌めこまれており、図3の例では、この首部3aの上方部分が外容器1の首部1aから突出しており、この突出した部分に、キャップを螺子固定するための螺子3cが形成されており、さらに、螺子3cの下方部分に、内容器3が外容器1内に深く侵入しないように、ストッパーとなる突起3dが形成されている。
勿論、本発明が適用される二重構造容器10の形態は、図3に示されている形態に限定されるものではなく、例えば、内容器3の首部3aの上端に、ストッパーとなる突起3dのみを設け、外容器1の首部1aの外面(サポートリング1dの上方部)に、キャップを装着するための螺子を設けることもできる。
【0057】
本発明において、上述した外容器1及び内容器3は、ブロー成形可能な熱可塑性樹脂、例えば、包装材に好適に使用されるオレフィン系樹脂やポリエステル樹脂、特にエチレンテレフタレート系ポリエステル等により形成されている。
【0058】
本発明が適用される二重構造容器10では、図3に示されているように、外容器1の内面と内容器3の外面との間に、バリアコーティング103に相当するバリアコーティング5が存在しているわけである。
即ち、このコーティング5により、内容器3内への酸素の透過が有効に抑制され、内容器3内に収容される内容物の酸化劣化を有効に回避し、その鮮度を長期にわたって維持することができる。
【0059】
上述した二重構造容器10は、上記のようなコーティング5が設けられるため、所謂スタックプリフォーム法により製造される。
即ち、外容器1用の樹脂を用いての射出成形により得られた第1のプリフォーム(外容器成形用プリフォーム)と、内容器3用の樹脂を用いての射出成形により得られた第2のプリフォーム(内容器成形用プリフォーム)を使用し、第2のプリフォームを第1のプリフォーム内に挿入して多重構造のスタックプリフォームを形成し、このスタックプリフォームについて二軸延伸ブロー成形を行うという方法により製造される。
即ち、かかる方法によれば、第2のプリフォームの外面もしくは第1のプリフォームの内面に、コーティング5を容易に形成することができる。
【0060】
上記のスタックプリフォーム法を説明するための図4及び図5において、図3の二重構造容器成形用のスタックプリフォームは、図5において全体として20で示されており、図4に示されているように何れも試験管形状を有している第1のプリフォーム11(図4(a)参照)と第2のプリフォーム13(図4(b)参照)とから形成される。
即ち、第1のプリフォーム11が外容器成形用のプリフォーム、第2のプリフォーム13が内容器成形用のプリフォームであり、第2のプリフォーム13を第1のプリフォーム内に挿入して嵌合保持することにより、ブロー延伸工程に供されるスタックプリフォーム20が組み合立てられる。
【0061】
図4から理解されるように、第1のプリフォーム11及び第2のプリフォーム13は、何れも外容器1の首部1a及び内容器3の首部3aに相当する部分を有している。即ち、これらの部分は、何れも延伸成形されない部分であり、第1のプリフォーム11は、サポートリング1d、第2のプリフォーム13は、螺子3c及び突起3dを有している。
また、第1のプリフォーム11の首部1aの下方部分の下端が閉じられた胴部11bが延伸成形される部分であり、ブロー延伸により、外容器1の胴部1b及び底部1cの形態に賦形される。
さらに、第2のプリフォーム13の首部3aの下方部分の下端が閉じられた胴部13bが延伸成形される部分であり、ブロー延伸により、内容器3の胴部3bの形態に賦形される。即ち、延伸成形により胴部3となる部分に、被酸化性有機化合物によるコーティング5(バリアコーティング103)が塗布により形成されることとなる。
【0062】
このような第1のプリフォーム11内に、第2のプリフォーム13を挿入することによって図5に示す形態のスタックプリフォーム20を組み立て、ブロー金型内に配置し、所定の治具で首部1a,3aを含む部分を固定し(図5においてXで示す領域)、高周波加熱等により、このスタックプリフォーム20を延伸成形可能な温度(プリフォーム11,13を形成している樹脂のガラス転移点温度以上、融点未満)に加熱し、このスタックプリフォーム20(第2のプリフォーム13)内に、ストレッチロッド(図示せず)を挿入して一軸方向に延伸し、さらに、エア等のブロー流体を供給し、周方向に膨張させることにより、図3に示す形態の二重構造容器10が得られる。即ち、図5において、スタックプリフォーム20のYで示す領域が延伸成形される部分となる。
【0063】
本発明においては、上記のような方法により二重構造容器10を成形することにより、バリアコーティング5を容易に、外容器1と内容器3との間に形成することができ、樹脂との溶融混練や溶融成形を経ることなく形成することができる。即ち、被酸化性有機化合物の劣化を生じることなく、この酸素吸収による酸素遮断性を有効に発揮させることができる。
かかるブロー延伸成形に際しては、コーティング5は延伸追随性を有しているため、膜切れ等を生じることなく、第1のプリフォーム11及び第2のプリフォーム13と共に引き延ばされ、所定の領域に均一な厚みのコーティング5を設けることができる。
【0064】
上記のようにして製造された二重構造容器10は、予め、もしくは後加工により外容器1の内面と内容器3の外面との間に空気を導入するための経路を設けることで、内容器3の胴部3bに内容物を収容した後、この外容器1の首部1aに、それ自体公知の逆止弁付キャップを装着することによりエアレス容器としての使用に供することもできる。
【0065】
このような本発明が適用された二重構造容器10では、内3に充填された内容物は、例えば、外容器1の胴部1bの凹んでいる部分(スクイズ領域)をスクイズ(押圧)することにより、押圧されて凹んだ分ずつ排出されていき、内容物が排出されて内容器3の胴部3bが減容するが、その分空気導入口7から胴部3bと外容器1の胴部1bの内面との間に空気が導入されて空気層が形成されるため、その後の内容物の排出も有効に行われる。
かかるボトルでは、内容器3の胴部3bからの内部への酸素の侵入がコーティング5により有効に抑制防止でき、内容物の酸化劣化を有効に防止できる。
【実施例
【0066】
本発明を次の例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
次に実施例及び比較例で使用した材料及び試験方法を示す。
【0067】
1.材料
<ポリエステル樹脂(A)>
イソフタル酸(共重合比率=1.8mol%)共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(5015W:新光合繊製、IV=0.83)
【0068】
<コーティング成分(B)>
(1)被酸化性有機化合物の合成
<被酸化性有機成分原料(BX)>
4-メチル-Δ3-テトラヒドロ無水フタル酸を45重量%およびcis-3-メチル-Δ4-テトラヒドロ無水フタル酸を21重量%含有するメチルテトラヒドロ無水フタル酸混合物(HN-2200:日立化成製)を被酸化性有機化合物の原料とした。
【0069】
(合成例1)
攪拌装置、窒素導入管、滴下漏斗を備えた1000mLの4ツ口セパラブルフラスコに酸素吸収成分原料;(BX)250gを仕込んだ。ここへエタノール200mLに溶解させたアミン成分;メタキシレンジアミン(東京化成工業製)101gを徐々に加えた。全量投入後、窒素雰囲気下120℃~180℃で、生成する水を取り除きながら約5時間反応させることにより被酸化性有機化合物(B1)を得た。
(合成例2)
【0070】
仕込みを(BX)250g、ヘキサメチレンジアミンを87.1g、エタノール200mLとした以外は、合成例1と同様に合成を行い、被酸化性有機化合物(B2)を得た。
【0071】
(合成例3)
攪拌装置、窒素導入管、Dean-Stark型水分離器を備えた3Lのセパラブルフラスコに、酸成分として(BX)をモル比0.9、その他酸成分として無水コハク酸をモル比0.1、ジオール成分として1,4-ブタンジオールをモル比1.3、重合触媒としてイソプロピルチタ ナートを300ppm仕込み、窒素雰囲気中150℃~200℃で生成する水を除きなが ら約6時間反応させた。引き続いて0.1kPaの減圧下、200~220℃で約3時間 重合を行い、被酸化性ポリエステル樹脂(B3)を得た。被酸化性ポリエステル樹脂(B3)のMnは5200であり、Mwは76600であった。
【0072】
(2)その他の被酸化性有機化合物
その他の被酸化性有機化合物として、オレイン酸(和光純薬製)(B4)、アスコルビン酸(和光純薬製)(B5)を用いた。
【0073】
(3)その他の使用材料
流動パラフィン(キシダ化学製)(B6)を用いた。
【0074】
2.測定・評価方法
(1)溶存酸素濃度
無酸素水製造器(LOW DISSOLVED OXYGEN:三浦工業(株)製)で酸素濃度が0.1ppm以下である無酸素水を作成し、これを成形したボトルに満注充填し、プラスチックキャップで密封した。23℃50%RHで28日間保管した後のボトル内水中溶存酸素濃度を非破壊高感度酸素濃度計(Oxy-4 Trace v3:Presens社製)で測定した。酸素バリア性の判断として、このときの溶存酸素濃度が比較例1より明らかに下回っているもの(2.00ppm未満)を○、比較例1と同等のもの(2.00ppm以上)を×とした。
【0075】
(2)粘度
被酸化性有機化合物のうち100℃で液体であるものについて、100℃における粘度をブルックフィールド回転式粘度計(RV-DV2T:ブルックフィールド社製)で測定をした。スピンドルはSC4-27を使用し、回転数は被酸化性有機化合物(B1)では150rpm、被酸化性ポリエステル樹脂(B3)では5rpmだった以外は200rpmで測定を行った。
【0076】
(3)延伸追随性
作製した二軸延伸ブローボトルを目視で観察し、内容器と外容器の間のコーティングがクラック無く一様に延伸されていた場合は「○」、コーティングにクラックが生じていた場合は「×」とした。
【0077】
(実施例1)
前記使用材料に記載したポリエステル樹脂(A)を用い、二重構造容器用の17gの外容器成形用プリフォームと12gの内容器成形用プリフォームを射出成形により得た。次いで、内容器成形用プリフォームの外面にエタノールに溶解させた被酸化性有機化合物(B1)を塗布し、ドライヤーで乾燥させ、外容器成形用プリフォームを重ねて500mL用ボトルに二軸延伸ブロー成形した。
【0078】
(実施例2)
被酸化性有機化合物を(B2)に変更し、有機溶剤を使用せず塗布したこと以外は実施例1と同様の方法で二軸延伸ブローボトルを得た。
【0079】
(実施例3)
被酸化性有機化合物を(B3)に変更し、酢酸エチルに溶解させて塗布したこと以外は実施例1と同様の方法で二軸延伸ブローボトルを得た。
【0080】
(実施例4)
あらかじめ内容器成形用プリフォームの外面に酸素プラズマ処理を施し、被酸化性有機成分を(BX)に変更したこと以外は実施例2と同様の方法で二軸延伸ブローボトルを得た。
【0081】
(実施例5)
酸素吸収成分を(B4)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で二軸延伸ブローボトルを得た。
【0082】
(比較例1)
内容器成形用プリフォームの外面にコーティングを施さずに作製したこと以外は実施例1と同様の方法で二軸延伸ブローボトルを得た。
【0083】
(比較例2)
あらかじめ内容器成形用プリフォームの外面に酸素プラズマ処理を施し、被酸化性有機化合物を(B5)に変更し、(B5)を水溶液の状態で塗布したこと以外は実施例1と同様の方法で二軸延伸ブローボトルを得た。しかし、(B5)によるコーティング層は延伸に追随せず、コーティング層全体に目視で確認出来るクラックが生じた。
【0084】
(比較例3)
内容器成形用プリフォームの外面にコーティングする成分を(B6)に変更したこと以外は実施例2と同様の方法で二軸延伸ブローボトルを得た。
【0085】
使用したコーティング成分の重量及び、二軸延伸ボトルを作製した際のコーティング層の延伸追随性と無酸素水法により23℃で28日間保管したボトルの溶存酸素濃度を表1に示す。
【0086】
【表1】
【符号の説明】
【0087】
100:延伸構造体
101:延伸成形基体
103:バリアコーティング
105:カバー成形体
1:外容器
3:内容器
5:コーティング(バリアコーティング103)
7:空気導入口
10:二重構造容器
11:第1のプリフォーム
13:第2のプリフォーム
図1
図2
図3
図4
図5